説明

表示装置

【課題】消費電力の上昇を抑えつつ、輝度を向上させると共に広い視野角を確保することが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】発光領域15Aの開口率が相対的に小さな正面輝度優先の第1領域(例えば画素101)と、発光領域15Aの開口率が相対的に大きな視野角輝度優先の第2領域(例えば画素102)と、第1領域および第2領域を駆動する駆動手段とを備えている。第1領域および第2領域それぞれの開口率の大きさに対応して、第1領域では第2領域と比較して発光領域15Aから表示面側に取り出される光は広がりにくくなり、第2領域では発光領域15Aからの取り出し光の広がりは第1領域と比較して広くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子などを表示素子として備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機層を含む自発光型の有機発光素子を用いた有機ELディスプレイが実用化されている。有機ELディスプレイは、自発光型であるので、液晶などと比較して視野角が広く、また、高精細度の高速ビデオ信号に対応しても十分な応答性を有するものである。
【0003】
このような有機ELディスプレイに用いられる有機発光素子では、一対の電極の間に、発光層を含む有機層を有し、電極間に電圧を印加することにより、発光層において正孔と電子とが再結合し、発光する。この発光光は、一方の電極から取り出される。
【0004】
この有機ELディスプレイでは、消費電力の上昇を抑えつつ、輝度を向上させるための種々の検討がなされている。例えば、有機発光素子の光取り出し側に、側壁に反射膜を有する開口を備えたリフレクタ構造を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このリフレクタ構造を設けた有機ELディスプレイでは、発光素子からの光は開口の側壁の反射面により表示面に対して垂直方向に反射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−531102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したリフレクタ構造を有するディスプレイでは、正面輝度を向上させことができる一方、視野角を確保することが難しいという問題がある。その理由は以下の通りである。表示面に対して垂直方向の輝度を確保しようとすると、リフレクタ構造の開口を狭くする(開口率を小さくする)必要がある。この場合には、表示面に対して斜め方向の輝度が低下することになるため、視野角が狭くなる。その一方で、表示面に対して斜め方向の輝度を確保しようとすると、リフレクタ構造の開口を広くする(開口率を大きくする)必要がある。この場合には、視野角は確保されやすくなるが、表示面に対して垂直方向に取り出される光量が十分に得られにくくなるため、高い駆動電圧を印加する必要がある。
【0007】
すなわち、従来の有機ELディスプレイでは、消費電力を上昇させずに正面輝度を確保しようとすると斜め方向の輝度が低下し、斜め方向の輝度を確保しようとすると正面輝度が低下しやすかった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、消費電力の上昇を抑えつつ、輝度を向上させると共に広い視野角を確保することが可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表示装置は、発光領域の開口率が相対的に小さな正面輝度優先の第1領域と、発光領域の開口率が相対的に大きな視野角輝度優先の第2領域と、第1領域および第2領域を駆動する駆動手段とを備えたものである。
【0010】
本発明の表示装置では、正面輝度優先の第1領域において発光領域の開口率が相対的に小さく、視野角輝度優先の第2領域において発光領域の開口率が相対的に大きくなっている。このため、第1領域では、少なくとも第2領域と比較して発光領域から表示面側に取り出される光(取り出し光)は広がりにくくなる。その一方で、第2領域では、発光領域からの取り出し光の広がりは第1領域と比較して広くなる。よって、駆動手段によって第1領域および第2領域が同様に駆動されると、第1領域および第2領域からの取り出し光が合わさって、表示面に対して正面方向の光量が増加する一方で、斜め方向の光量も確保される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表示装置によれば、発光領域の開口率が相対的に小さな正面輝度優先の第1領域と、発光領域の開口率が相対的に大きな視野角輝度優先の第2領域と、第1領域および第2領域を駆動する駆動手段とを備えているので、表示面に対して正面方向および斜め方向の輝度のバランスが良好なるため、消費電力の上昇を抑えつつ、輝度を向上させると共に、広い視野角を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の回路構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の構成を表す平面図である。
【図4】図3に示した正面輝度優先の画素の断面構成(図4(A))、視野角輝度優先の画素の断面構成(図4(B))を表す図である。
【図5】図4に示した有機層を拡大して表す断面図である。
【図6】図4に示した画素回路形成層の平面構成を表す図である。
【図7】図4に示した画素回路形成層の他の断面構成を表す図である。
【図8】図3に示した画素を駆動する場合のタイミングチャートである。
【図9】図3に示した画素を駆動する場合の他のタイミングチャートである。
【図10】図3に示した画素の表示面に対する正面方向および斜め方向の輝度分布を表す特性図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る表示装置に設けられた画素の平面構成を表す図である。
【図12】図11に示した画素を駆動するための画素駆動回路の一例を表す図である。
【図13】図12に示した画素駆動回路の平面構成を表す図である。
【図14】各実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図15】各実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図16】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図17】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図18】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図19】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。説明する順序は以下の通りである。
1.第1の実施の形態(正面輝度優先の画素と視野角輝度優先の画素とを有する例)
2.第2の実施の形態(1画素に正面輝度優先の領域および視野角輝度優先の領域を含む例)
3.モジュールおよび適用例
【0014】
<1.第1の実施の形態(正面輝度優先の画素と視野角輝度優先の画素とを有する例)>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の回路構成を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられるものであり、基体11に表示領域110が形成されている。表示領域110の周辺には、例えば映像表示用のドライバである信号線駆動回路120、走査線駆動回路130および電源供給線駆動回路140が形成されている。
【0015】
表示領域110には、マトリクス状に二次元配置された複数の有機発光素子10R,10G,10Bと、それらを駆動するための画素駆動回路150とが形成されている。画素駆動回路150において、列方向には複数の信号線120A(120A1,120A2,・・・,120Am,・・・)が配置され、行方向には複数の走査線130A(130A1,・・・,130An,・・・)および複数の電源供給線140A(140A1,・・・,140An,・・・)が配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの各交差点に、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つが対応して設けられている。各信号線120Aは信号線駆動回路120に接続され、各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、各電源供給線140Aは電源供給線駆動回路140に接続されている。
【0016】
信号線駆動回路120は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧を、信号線120Aを介して選択された有機発光素子10R,10G,10Bに供給するものである。
【0017】
走査線駆動回路130は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。走査線駆動回路130は、各有機発光素子10R,10G,10Bへの映像信号の書き込みに際し行単位でそれらを走査し、各走査線130Aに走査信号を順次供給するものである。
【0018】
電源供給線駆動回路140は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。電源供給線駆動回路140は、走査線駆動回路130による行単位の走査と同期して、各電源供給線140Aに対し互いに異なる第1電位および第2電位のいずれかを適宜供給する。これにより、後述する駆動トランジスタTr1の導通状態または非導通状態の選択が行われる。
【0019】
図2は、画素駆動回路150の一例を表したものである。この画素駆動回路150は、後述する第1電極12の下層に形成され、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、電源供給線140Aおよび共通電源供給線(GND)の間において駆動トランジスタTr1と直列に接続された有機発光素子10R(または10G,10B)とを有するアクティブ型の駆動回路である。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0020】
書き込みトランジスタTr2は、例えばドレイン電極が信号線120Aと接続されており、信号線駆動回路120からの映像信号が供給されるようになっている。また、書き込みトランジスタTr2のゲート電極は走査線130Aと接続されており、走査線駆動回路130からの走査信号が供給されるようになっている。さらに、書き込みトランジスタTr2のソース電極は、駆動トランジスタTr1のゲート電極と接続されている。
【0021】
駆動トランジスタTr1は、例えばドレイン電極が電源供給線140Aと接続されており、電源供給線駆動回路140による第1電位または第2電位のいずれかに設定される。駆動トランジスタTr1のソース電極は、有機発光素子10R(または10G,10B)と接続されている。
【0022】
保持容量Csは、駆動トランジスタTr1のゲート電極(書き込みトランジスタTr2のソース電極)と、駆動トランジスタTr1のソース電極との間に形成されるものである。
【0023】
図3に、表示領域110の平面構成の一例を表す。表示領域110には、正面輝度優先の画素101と視野角輝度優先の画素102とが隣り合い、全体としてマトリックス状に二次元配置されている。各画素101,102には、基体11の上に、赤色の光を発生する有機発光素子10Rと、緑色の光を発生する有機発光素子10Gと、青色の光を発生する有機発光素子10Bとが形成されている。画素101の有機発光素子10R,10G,10Bの上には、第1のリフレクタ構造20Aが形成されている。このリフレクタ構造20Aは、側壁に反射面22Aを有する複数の円形状の開口21Aを有するものである。これにより画素101における発光領域15Aの開口率は相対的に小さくなっている。画素102の有機発光素子10R,10G,10Bの上には、第2のリフレクタ構造20Bが形成されている。このリフレクタ構造20Bは、側壁に反射面22Bを有する矩形状の開口21Bを有するものである。これにより発光領域15Aの開口率が相対的に大きくなっている。このため、画素101では、少なくとも画素102と比較して、発光領域15Aから表示面側に取り出される光(取り出し光)は、広がりにくくなる。その一方で、画素102では、発光領域15Aからの取り出し光の広がりは第1領域と比較して広くなる。よって、画素101,102が同時に駆動されると、画素101,102それぞれの取り出し光が合わさって、表示面に対して正面方向の光量が増加する一方で、斜め方向の光量も確保される。
【0024】
次に、図3と共に図4,図5を参照して、画素101,102における有機発光素子10R,10G,10Bおよびリフレクタ構造20A,20Bの詳細な構成について説明する。なお、画素101,102では、リフレクタ構造20A,20Bの構成が異なることを除き、他は共通の構成を有している。また、画素101,102それぞれに形成された有機発光素子10R,10G,10Bでは、有機層14の構成が一部異なることを除き、他は共通の構成を有している。よって、以下では、共通の部分については、代表として有機発光素子10Rについて説明する。
【0025】
図4は画素101,102の断面構成を表したものであり、詳細には図4(A)は図3に示した画素101のIV(A)−IV(A)線に沿った断面図であり、図4(B)は図3に示した画素102のIV(B)−IV(B)線に沿った断面図である。図5は図4に示した有機層14を拡大して表す断面図である。
【0026】
有機発光素子10Rは、基体11の側から順に、陽極としての第1電極12と、電極間絶縁膜13および発光層14Cを含む有機層14と、陰極としての第2電極15とを含んでいる。有機層14の電極間絶縁膜13に取り囲まれた領域が発光領域15Aとなり、その発光領域15Aからの光取り出し側に画素101ではリフレクタ構造20A、画素102ではリフレクタ構造20Bがそれぞれ設けられている。リフレクタ構造20A,20Bはそれぞれ光取り出し用の開口21A,21Bを有している。開口21A,21Bの内部およびリフレクタ構造20A,20Bの上には保護層25が形成され、この保護層25の上に封止基板26が設けられて封止されている。また、有機発光素子10Rは補助配線113によって取り囲まれている。
【0027】
有機発光素子10Rでは、第1電極12は光反射性を有する反射膜として機能する一方、第2電極15は光透過性を有する透過膜あるいは半透過膜として機能を発揮する。これら第1電極12および第2電極15により、発光層14Cにおいて発生した光が封止基板26側から取り出される。
【0028】
第1電極12は、高い反射率を有する材料によって構成されることが発光効率を高める上で望ましい。第1電極12は、例えば厚さが100nm以上1000nm以下であり、銀(Ag),アルミニウム(Al),クロム(Cr),チタン(Ti),鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni),モリブデン(Mo),銅(Cu),タンタル(Ta),タングステン(W),白金(Pt),ネオジウム(Nd)あるいは金(Au)などの金属元素の単体またはそれらの合金により構成されている。第1電極12は、光反射性を有していれば多層構造を有していてもよい。多層構造を有する第1電極12は、例えば上記した高い反射率の金属材料により構成された層の上あるいは下に、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)あるいは酸化スズ(SnO2 )などの透明導電材料によって構成された層を有していてもよい。第1電極12は、基体11の表面の一部を覆うと共に接続孔114を充填するように形成されている。これにより、第1電極12は、接続孔114を介して駆動トランジスタTr1(のうちの金属層216S)と導通された状態となる。
【0029】
電極間絶縁膜13は、各第1電極12同士の間の隙間を埋めると共に第1電極12の端面および周縁部の上面を覆うように設けられている。この電極間絶縁膜13により、第1電極12と第2電極15との絶縁性を確保すると共に、有機発光素子10Rの発光領域15Aの開口を正確に所望の形状とする。電極間絶縁膜13の材料としては、例えばポリイミド等の有機材料が挙げられる。
【0030】
有機層14は、第1電極12の上面に設けられ、例えば図5に示したように、第1電極12の側から順に、正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14C、および電子輸送層14Dを有している。以上は有機発光素子10G,10Bについても同様である。
【0031】
正孔注入層14Aは、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、電流のリークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層14Bは、発光層14Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層14Cは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層14Dは、発光層14Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。なお、電子輸送層14Dと第2電極15との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。
【0032】
有機層14は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっている。以下、有機発光素子10R,10G,10Bそれぞれの有機層14の詳細について説明する。
【0033】
有機発光素子10Rの正孔注入層14Aは、例えば、厚さが5nm以上300nm以下であり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。有機発光素子10Rの正孔輸送層14Bは、例えば、厚さが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機発光素子10Rの発光層14Cは、例えば、厚さが10nm以上100nm以下であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層14Dは、例えば、厚さが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0034】
有機発光素子10Gの正孔注入層14Aは、例えば、厚さが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Gの正孔輸送層14Bは、例えば、厚さが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Gの発光層14Cは、例えば、厚さが10nm以上100nm以下であり、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Gの電子輸送層14Dは、例えば、厚さが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0035】
有機発光素子10Bの正孔注入層14Aは、例えば、厚さが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Bの正孔輸送層14Bは、例えば、厚さが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Bの発光層14Cは、例えば、厚さが10nm以上100nm以下であり、スピロ6Φ(spiro6Φ)により構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層14Dは、例えば、厚さが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0036】
第2電極15は、例えば、厚さが5nm以上50nm以下であり、例えばアルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。第2電極15は、例えば全ての有機発光素子10R,10G,10Bに共通に設けられており、各有機発光素子10R,10G,10Bの第1電極12と対向配置されている。さらに第2電極15は、有機発光素子10R(または10G,10B)の第1電極12を取り囲む補助配線113と電気的に接続されている。補助配線113は銅(Cu)の電気抵抗の低い導電性材料により構成され、第2電極15の電圧降下を抑制するためのものである。
【0037】
リフレクタ構造20A,20Bは、いずれも基材21および反射膜22により構成されている。
【0038】
リフレクタ構造20Aは、発光領域15Aからの光を表示面に対して正面方向(垂直方向)に効率よく取り出すためのものである。このため、リフレクタ構造20Aは、図3に示したように平面形状が円形状、図4(A)に示したように断面形状がテーパ状の開口21Aを複数有している(ここでは各発光領域15Aの上に2列×6行の開口21Aを有する)。開口21Aの側壁には反射膜22が設けられており、反射面22Aとなっている。すなわち、リフレクタ構造20Aでは、各開口21Aは、封止基板26側の開口径が第2電極15側の開口径よりも大きくなるように反射面22Aが傾斜している。これにより、画素101の発光領域15Aから表示面に対して正面方向に射出された光はそのまま正面方向に取り出され、斜め方向に射出された光は開口21Aの側壁に反射されて正面方向に取り出される。その結果、画素101では表示面に対して斜め方向の輝度よりも、正面輝度がより高くなる。
【0039】
一方、リフレクタ構造20Bは、発光領域15Aからの光を表示面に対して正面方向および斜め方向に効率よく取り出すためのものである。このため、リフレクタ構造20Bは、図3に示したように平面形状が発光領域15Aと相似形(矩形状)、図4(B)に示したように断面形状がテーパ状の開口21Bを有している。開口21Bの側壁にも反射膜22が設けられており、反射面22Bとなっている。すなわち、リフレクタ構造20Bでは、開口21Bの開口面積は各開口21Aの開口面積よりも大きく、言い換えればリフレクタ構造20Aよりも発光領域15の開口率が大きくなっている。この結果、画素102では、画素101と比較して、正面輝度は低くなるが、表示面に対して斜め方向の輝度が高くなる。
【0040】
リフレクタ構造20A,20Bの基材21は、開口21A,21Bの形状を所望のものとするためのものであり、例えば紫外線硬化型の樹脂や、熱硬化型の樹脂により構成されている。反射膜22は、発光領域15Aからの光を表示面側に効率よく反射させるためのものであり、例えば、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)あるいは銀(Ag)の単体、またはそれらのうちの1種あるいは2種以上を含む合金などにより構成されている。
【0041】
保護層25は、有機層14に水分などが侵入することを防止するためのものであり、透過水性および吸水性の低い材料により構成されると共に十分な厚さを有している。また、保護層25は、発光層14Cで発生した光に対する透過性が高く、例えば80%以上の透過率を有する材料により構成されている。このような保護層25は、例えば、厚さが2μmないし3μm程度であり、無機アモルファス性の絶縁性材料により構成されている。具体的には、アモルファスシリコン(α−Si),アモルファス炭化シリコン(α−SiC),アモルファス窒化シリコン(α−Si1-x x (0<x<1))およびアモルファスカーボン(α−C)が好ましい。これらの無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを構成しないので透水性が低く、良好な保護層25となる。また、保護層25は、ITOのような透明導電材料により構成されていてもよい。
【0042】
封止基板26は、保護層25の上に接着層(図示せず)を介して接着されている。封止基板26は、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。なお、封止基板26には、例えば、カラーフィルタ(図示せず)が設けられていてもよい。これにより、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、有機発光素子10R,10G,10Bならびにリフレクタ構造20A,20Bなどにおいて反射された外光を吸収し、コントラストが改善される。
【0043】
カラーフィルタは、封止基板26のどちら側の面に設けられてもよいが、有機発光素子10R,10G,10Bの側に設けられることが好ましい。カラーフィルタが表面に露出せず、接着層により保護されるからである。また、リフレクタ構造20A,20Bの上端とカラーフィルタとの間の距離が狭くなることにより、発光層14Cから射出した光が隣接する他の色のカラーフィルタに入射して混色を生じることを避けることができるからである。カラーフィルタは、赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタ(いずれも図示せず)を有しており、有機発光素子10R,10G,10Bに対応して順に配置されている。赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤、緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0044】
次に、図3,図4に加え、図6,図7を参照して、基体11の詳細な構成を説明する。図6は図4に示した画素駆動回路形成層12の平面構成を表し、図3に示した有機発光素子10R(または10G,10B)の平面図に対応する画素駆動回路150を表す概略図である。図7は、有機発光素子10R(または10G,10B)を含む階層において、図6中のVII(A)−VII(A)線における断面構成(図7(A))および図6中のVII(B)−VII(B)線における断面構成(図7(B))を表している。なお、図6中のIV−IV線における断面構成は、図4(A)または図4(B)の断面図に対応している。
【0045】
基体11は、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる基板111の上に、画素駆動回路150を含む画素駆動回路形成層112が設けられたものである。基板111の表面には、第1階層の金属層として、駆動トランジスタTr1のゲート電極である金属層211Gと、書き込みトランジスタTr2のゲート電極である金属層221Gと、信号線120Aとがそれぞれ設けられている。これら金属層211G,221Gおよび信号線120Aは、窒化ケイ素や酸化ケイ素などからなるゲート絶縁膜212によって覆われている。ゲート絶縁膜212上の、金属層211G,221Gに対応する領域には、アモルファスシリコンなどの半導体薄膜からなるチャネル層213,223が設けられている。チャネル層213,223上には、その中心領域であるチャネル領域213R,223Rを占めるように絶縁性のチャネル保護膜214,224が設けられており、その両側の領域には、n型アモルファスシリコンなどのn型半導体薄膜からなるソース領域215S,225Sおよびドレイン領域215D,225Dが設けられている。これらのドレイン領域215D,225Dおよびソース領域215S,225Sは、チャネル保護膜214,224によって互いに分離されており、それらの端面がチャネル領域213R,223Rを挟んで互いに離間している。さらに、ドレイン領域215D,225Dおよびソース領域215S,225Sをそれぞれ覆うように、第2階層の金属層として、ドレイン配線およびドレイン電極としての金属層216D,226D、ならびにソース配線およびソース電極としての金属層216S,226Sが設けられている。金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sは、例えばチタン(Ti)層、アルミニウム(Al)層、およびチタン層を順に積層した構造を有するものである。第2階層の金属層としては、上記の金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sの他に、走査線130Aおよび電源供給線140Aが設けられている。さらに、全体が窒化ケイ素などからなるパッシベーション膜217によって覆われ、その上にポリイミド等の有機材料あるいは酸化シリコン(SiO2 )等の無機材料からなる平坦化絶縁膜218が設けられている。なお、ここでは、逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)の駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2について説明したが、スタガー構造(いわゆるトップゲート型)のものであってもよい。
【0046】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0047】
まず、基板111の上に、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2を含む画素駆動回路150を形成する。具体的には、まず、基板111上に、例えばスパッタリングにより金属膜を形成する。そののち、例えばフォトリソグラフィ法やドライエッチング、あるいはウェットエッチングによりその金属膜をパターニングして、図6,図7に示した金属層211G,221Gおよび信号線120Aを基板111上に形成する。次いで、全面をゲート絶縁膜212によって覆う。続いて、ゲート絶縁膜212の上に、チャネル層213,223、チャネル保護膜214,224、ドレイン領域215D,225Dおよびソース領域215S,225S、ならびに金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sを順に、所定の形状に形成する。ここで、金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sの形成と併せて、走査線130Aおよび電源供給線140Aを第2の金属層として各々形成する。その際、金属層221Gと走査線130Aとを接続する接続部、金属層226Dと信号線120Aとを接続する接続部、金属層226Sと金属層211Gとを接続する接続部を予め形成しておく。これにより画素駆動回路150が形成される。そののち、全体をパッシベーション膜217で覆う。続いて、パッシベーション膜217の上に平坦化絶縁膜218を形成することにより、画素駆動回路形成層112が形成され、基体11が完成する。
【0048】
次に、有機発光素子10R,10G,10Bを形成する。具体的には、例えばフォトリソグラフィ法やドライエッチング、あるいはウェットエッチングにより、平坦化絶縁膜218に接続孔114となる開口を設ける。続いて、例えばスパッタリングによって上述の第1電極12の構成材料からなる金属膜を全面成膜したのち、その金属膜上に所定のマスクを用いて所定形状のレジストパターンを形成し、さらにそのレジストパターンをマスクとして用い、金属膜の選択的なエッチングを行う。これにより第1電極12および補助配線113を形成する。その際、第1電極12については、接続孔114を充填するように形成する。そののち、補助配線113の第2電極15との接続部を除いて、補助配線113と第1電極12の周縁とを覆うように電極間絶縁膜13を形成する。続いて、第1電極12を完全に覆うように正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14Cおよび電子輸送層14Dを順次積層することにより、有機層14を形成する。続いて、補助配線113の第2電極15との接続部に堆積した有機層14を、例えばレーザ光を照射することにより除去する。こののち、有機層14を挟んで第1電極12と対向し、かつ、補助電極113を覆うように全面に亘って第2電極15を形成する。この際、補助電極113と第2電極15とが接続される。以上により、有機発光素子10R,10G,10Bが完成する。
【0049】
続いて、リフレクタ構造20A,20Bを形成する。具体的には、まず、例えば基材21の構成材料により、基材層を形成する。続いて、フォトリソグラフィ法やエッチング法により基材層をパターニングすることにより、画素101となる有機発光素子10R,10G,10Bの発光領域15Aの上には複数の円形状の開口、画素102となる有機発光素子10R,10G,10Bの発光領域15Aの上には矩形状の開口を形成する。こののち、これらの開口の側壁を選択的に覆うように反射膜22を形成する。これにより、円形状の開口21Aを複数備えたリフレクタ構造20Aと共に、矩形状の開口21Bを備えたリフレクタ構造20Bが完成する。
【0050】
最後に、リフレクタ構造20A,20Bの開口21A,21Bの内部およびリフレクタ構造20A,20Bの上部を覆うように保護層25を形成したのち、保護層25の上に、接着層を形成し、この接着層を間にして封止基板26を貼り合わせる。以上により、表示装置が完成する。
【0051】
この表示装置では、以下のようにして映像が表示される。各画素101,102に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極(金属層221G)を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。その一方で、電源供給線駆動回路140が、走査線駆動回路130による行単位の走査と同期して、各電源供給線140Aに対し第2電位よりも高い第1電位を供給する。これにより駆動トランジスタTr1の導通状態が選択され、各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第1電極12により反射されると共に第2電極15により透過される。第2電極15を透過した光は、開口21A,21B内の保護層25と、その上に設けられた封止基板26とを透過して取り出され、この取り出し光に基づいて映像が表示される。
【0052】
この表示装置では、信号線130Aに沿った、隣り合う画素101,102を一組として、同時に駆動させると広い視野角を確保することができ、異なるタイミングで駆動させると視野を正面方向に狭めることができる。詳細には図8,図9を参照して説明する。図8は広い視野角を確保する場合において画素101,102を駆動するためのタイミングチャートを表し、図9は視野を正面方向に狭める場合において画素101,102を駆動するためのタイミングチャートを表している。
【0053】
まず、図8を参照して広い視野角を確保する場合について説明する。この場合には、列方向に隣り合った画素101,102を一組として、以下のように一組の画素101,102を駆動する。まず、列方向に隣り合った一組の画素101,102に対して走査線駆動回路130から、画素101の書き込みトランジスタTr2に対して第2電位(Low)よりも高い第1電位(High)の走査信号WS1を供給する(図8(B))と共に、画素102の書き込みトランジスタTr2に対して第2電位(Low)よりも高い第1電位(High)の走査信号WS2を供給する(図8(C))。これらの第1電位の走査信号WS1,WS2と同期して、電源供給線駆動回路140が、画素101,102の各行の電源供給線140Aに対して第2電位(Low)よりも高い第1電位(High)を供給する(図8(A))。これにより、画素101,102双方の駆動トランジスタTr1のゲート電位とソース電位とが所定の電位に上昇したのち、一定になる(図8(E))。ここで、一旦、第2電位の走査信号WS1,WS2を書き込みトランジスタTr1,Tr2に対して供給したのち(図8(B),(C))、信号線駆動回路120から画素101,102の列の信号線120Aに第2電位(Low)よりも高い第1電位(High)の画像信号Vsigを供給する(図8(D))。この第1電位の画像信号Vsigが供給されたのち、第1電位の走査信号WS1,WS2を同じ書き込み時間となるように供給する(図8(B),(C))。これにより、画素101,102双方の駆動トランジスタTr1のゲート電位とソース電位とがさらに上昇し、画素101,102双方の駆動トランジスタTr1の導通状態が選択される。画素101,102双方の駆動トランジスタTr1の導通状態が選択されると、画素101,102双方の駆動トランジスタTr1のゲート電位とソース電位との電位差ΔV(図8(E))に応じて、画素101,102の各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入され、画素101,102の発光領域15Aが発光する。発光領域15Aからの光は、画素101ではリフレクタ構造20Aにより表示面に対して正面方向(垂直方向)に効率よく取り出され、画素102ではリフレクタ構造20Bにより表示面に対して正面方向および斜め方向に取り出される。よって、図10に示したように、正面方向および斜め方向の輝度が確保される。図10は、表示面に対して垂直方向を0°とした場合の各方向(−200°〜200°)における、正面輝度優先の画素101の輝度分布(C101)と視野角輝度優先の画素102の輝度分布(C102)とを表している。
【0054】
その一方で、視野を正面方向に狭める場合(図9参照)には、列方向に隣り合った画素101,102を一組として以下のように駆動する。まず、広い視野角を確保する場合と同様に、列方向に隣り合った一組の画素101,102に第1電位の走査信号WS1,WS2(図9(B),(C))と共に、画素101,102の行の電源供給線140Aに対し第1電位(図9(A))を供給する。次いで、この場合も同様に、一旦、第2電位の走査信号WS1,WS2を供給したのち(図9(B),(C))、信号線駆動回路120から画素101,102の列に第1電位の画像信号Vsigを供給する(図9(D))。この第1電位の画像信号Vsigが供給されたのち、視野を正面方向に狭める場合には、第1電位の走査信号WS1を、第1電位の走査信号WS2よりも短い書き込み時間となるように供給する(図9(B),(C))。これにより、画素101の駆動トランジスタTr1のゲート電位とソース電位との電位差ΔV(図9(E))が大きくなる一方で、画素102の駆動トランジスタTr1のゲート電位とソース電位との電位差ΔVが画素101の駆動トランジスタTr1の電位差よりも小さくなる(図9(F))。これによって、選択的に画素101が駆動されることになり、画素101の発光領域15Aが主に発光する。その結果、画素101の発光領域15Aからの光は、リフレクタ構造20Aにより表示面に対して正面方向に効率よく取り出されるため、視野が正面方向に狭まる。
【0055】
このように本実施の形態の表示装置では、画素101,102と、画素101,102を駆動するための画素駆動回路150などの駆動手段とを備えている。画素101は発光領域15Aの開口率が相対的に小さな正面輝度優先の領域を含み、画素102は発光領域15Aの開口率が相対的に大きな視野角輝度優先の領域を含んでいる。画素101,102はそれぞれ隣り合い、画素101は、側壁が反射面22Aの複数の円形状の開口21Aを備えたリフレクタ構造20Aを有し、画素102は、側壁が反射面22Bの矩形状の開口21Bを備えたリフレクタ構造20Bを有する。このため、画素101では少なくとも画素102と比較して発光領域15Aから表示面側に取り出される光は広がりにくくなり、一方、画素102では、発光領域15Aからの取り出し光の広がりは画素101と比較して広くなる。よって、例えば図8に示したように画素101,102が同様に駆動されると、画素101,102それぞれの取り出し光が合わさって、表示面に対して正面方向の光量が増加する一方で、斜め方向の光量も確保される。従って、表示面に対して正面方向および斜め方向の輝度のバランスが良好になるため、消費電力の上昇を抑えつつ、輝度を向上させると共に広い視野角を確保することができる。
【0056】
特に、本実施の形態では、画素101を駆動するための駆動手段と、画素102を駆動する駆動手段とを別々に備えている。これにより、例えば図9に示したように駆動することによって、画素101,102が個別に駆動されるため、視野角を正面方向に狭めたり、広い視野角を確保するようにしたり、表示装置の視野角を制御できる。よって、例えば携帯端末機器のディスプレイとして用いた場合に、のぞき見防止フィルタなどの視野角を制御するための各種フィルタを表示面に貼らなくてもよい。その上、フィルタによる光吸収が生じないことから、低消費電力型のディスプレイとすることもできる。
【0057】
なお、本実施の形態では、画素101のリフレクタ構造20Aは、複数の円形状の開口21Aを有する場合について説明したが、開口21Aの形状および開口21Aの数は画素102側との関係で相対的に小さな開口率を有するようにすればよい。例えば、開口21Aの平面形状は、四角形や多角形であってもよいし、楕円形状であってもよいが、正面輝度を高めるためには、円形状であることが望ましい。開口21Aの数は、2つ以上であることが望ましい。
【0058】
また、本実施の形態では、画素102がリフレクタ構造20Bを有する場合について説明したが、視野角を優先する画素102にはリフレクタ構造20Bを設けなくてもよい。この場合においても上記した表示装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
<2.第2の実施の形態(画素に正面輝度優先の領域と視野角輝度優先の領域とを含む例>
次に、図11〜図13を参照して第2の実施の形態に係る表示装置を説明するが、第1の実施の形態と共通の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。図11は本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の表示領域110に設けられた画素201の平面構成を表している。本実施の形態の表示装置は、表示領域110において、画素201に正面輝度優先の領域と視野角輝度優先の領域とを含んでいる。すなわち、本実施の形態では、正面輝度優先の画素101および視野角輝度優先の画素102に代えて画素201を設けたことを除き、第1の実施の形態の表示装置と同様の構成を有している。
【0060】
この表示装置では、表示領域110に画素201がマトリックス状に設けられ、画素201には、後述する画素駆動回路250が設けられた基体11の上に、赤色の光を発生する有機発光素子50Rと、緑色の光を発生する有機発光素子50Gと、青色の光を発生する有機発光素子50Bとがこの順に並んで形成されている。有機発光素子50R,50G,50Bは、それぞれ発光領域55A,55Bを有している。有機発光素子50R,50G,50Bの発光領域55Aの上には、リフレクタ構造60Aが形成されている。このリフレクタ構造60Aは、側壁が反射面(反射膜;図示せず)の複数の円形状の開口61Aを有するものである。これにより発光領域55Aの開口率が相対的に小さくなっている。発光領域55Bの上には、リフレクタ構造60Bが形成されている。このリフレクタ構造60Bは、側壁が反射面(図示せず)の矩形状の開口61Bを有するものである。これにより発光領域55Bの開口率が相対的に大きくなっている。なお、図11中のA−A線に沿った断面構成は図4(A)に示した断面構成に対応し、図11中のB−B線に沿った断面構成は図4(B)に示した断面構成に対応する。
【0061】
すなわち、画素201では、発光領域55Aから表示面側に取り出される光はリフレクタ構造60Aにより広がりにくくなり、一方、発光領域55Bからの取り出し光はリフレクタ構造60Bにより発光領域55Aからの取り出し光と比較して斜め方向にも広がることになる。よって、画素201では、発光領域55A,55Bからの取り出し光が合わさって、表示面に対して正面方向の光量が増加する一方で斜め方向の光量も確保される。
【0062】
有機発光素子50R,50G,50Bの発光領域55A,55Bは、それぞれ基体11側から順に、陽極としての第1電極、電極間絶縁膜、有機層および陰極としての第2電極(いずれも図示せず)を有している。有機発光素子50R,50G,50Bの第1電極、電極間絶縁膜、有機層および第2電極は、有機発光素子10R,10G,10Bの第1電極12、電極間絶縁膜13、有機層14および第2電極15とそれぞれ同様の構成を有している。
【0063】
リフレクタ構造60A,60Bは、上記したリフレクタ構造20A,20Bと同様の構成を有している。
【0064】
有機発光素子50R,50G,50Bおよびリフレクタ構造60A,60Bは、第1の実施の形態の表示装置と同様に、保護層および封止基板(いずれも図示せず)により封止されている。
【0065】
図12は、有機発光素子50R(または50G,50B)に対応した画素駆動回路250の一例を表したものである。この画素駆動回路250は、上記した画素駆動回路150と同様にアクティブ型の駆動回路であり、有機発光素子50R(または50G,50B)の発光領域55A,55Bそれぞれの第1電極の下層に形成されている。この画素駆動回路250は、駆動トランジスタDr1および書き込みトランジスタWr1と、その間の保持容量Cs1と、電源供給線140Aおよび共通電源供給線(GND)の間において駆動トランジスタDr1と直列に接続された有機発光素子50R(または50G,50B)の発光領域55Aと共に、駆動トランジスタDr2および書き込みトランジスタWr2と、その間のキャパシタCs2と、電源供給線140Aおよび共通電源供給線の間において駆動トランジスタDr2と直列に接続された有機発光素子50R(または50G,50B)の発光領域55Bを有している。
【0066】
書き込みトランジスタWr1,Wr2は、例えばそれぞれのドレイン電極が同じ信号線120Aと接続されており、信号線駆動回路120からの映像信号が供給されるようになっている。また、書き込みトランジスタWr1,Wr2それぞれのゲート電極は同じ走査線130Aと接続されており、走査線駆動回路130からの走査信号が供給されるようになっている。さらに、書き込みトランジスタWr1のソース電極は駆動トランジスタDr1のゲート電極、書き込みトランジスタWr2のソース電極は駆動トランジスタDr2のゲート電極と接続されている。
【0067】
駆動トランジスタDr1,Dr2は、例えばそれぞれのドレイン電極が電源供給線140Aと接続されており、電源供給線駆動回路140による第1電位または第2電位のいずれかに設定される。駆動トランジスタDr1のソース電極は有機発光素子50R(または50G,50B)の発光領域55A、駆動トランジスタDr2のソース電極は有機発光素子50R(または50G,50B)の発光領域55Bと接続されている。具体的には、駆動トランジスタDr1のソース電極は発光領域55Aに対応する第1電極と接続孔271を介して接続し、駆動トランジスタDr2のソース電極は発光領域55Bに対応する第1電極と接続孔272を介して接続している。
【0068】
保持容量Cs1は、駆動トランジスタDr1のゲート電極(書き込みトランジスタWr1のソース電極)と、駆動トランジスタDr1のソース電極との間に形成されるものである。保持容量Cs2は、駆動トランジスタDr2のゲート電極(書き込みトランジスタWr2のソース電極)と、駆動トランジスタDr2のソース電極との間に形成されるものである。
【0069】
次に、図11,図12に加え、図13を参照して、有機発光素子50R(または50G,50B)が形成される基体11の詳細な構成を説明する。ここでの基体11も、基板111に、画素駆動回路250を含む画素駆動回路形成層112が設けられたものである。
【0070】
基板111の表面には、第1階層の金属層として、駆動トランジスタDr1のゲート電極である金属層231Gと、駆動トランジスタDr2のゲート電極である金属層241Gと、書き込みトランジスタWr1のゲート電極である金属層251Gと、書き込みトランジスタWr2のゲート電極である金属層261Gと、信号線120Aとがそれぞれ設けられている。これら金属層231G,241G,251G,261Gおよび信号線120Aは、窒化ケイ素や酸化ケイ素などからなるゲート絶縁膜によって覆われている。ゲート絶縁膜上の、金属層231G,241G,251G,261Gに対応する領域には、アモルファスシリコンなどの半導体薄膜からなるチャネル層がそれぞれ設けられている。駆動トランジスタDr1,Dr2および書き込みトランジスタWr1,Wr2それぞれのチャネル層上には、その中心領域であるチャネル領域を占めるように絶縁性のチャネル保護膜が設けられており、各チャネル保護膜両側の領域には、n型アモルファスシリコンなどのn型半導体薄膜からなるソース領域およびドレイン領域が設けられている。これらのドレイン領域およびソース領域は、チャネル保護膜によって互いに分離されており、それらの端面がチャネル領域を挟んで互いに離間している。さらに、駆動トランジスタDr1,Dr2および書き込みトランジスタWr1,Wr2それぞれのドレイン領域およびソース領域をそれぞれ覆うように、第2階層の金属層として、ドレイン配線およびドレイン電極としての金属層232D,242D,252D,262Dならびにソース配線およびソース電極としての金属層232S,242S,252S,262Sが設けられている。金属層232D,242D,252D,262Dおよび金属層232S,242S,252S,262Sは、例えばチタン層、アルミニウム層、およびチタン層を順に積層した構造を有するものである。第2階層の金属層としては、上記の金属層232D,242D,252D,262Dおよび金属層232S,242S,252S,262Sのほか、走査線130Aおよび電源供給線140Aが設けられている。このような画素駆動回路250は、画素駆動回路150と同様にパッシベーション膜217によって覆われ、その上に平坦化絶縁膜218が設けられている。
【0071】
この表示装置は、上記した第1の実施の形態における表示装置と同様に製造することができる。
【0072】
この表示装置では、画素201に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタWr1,Wr2のゲート電極(金属層231G,241G)を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタWr1,Wr2を介して保持容量Cs1,Cs2に保持される。その一方で、電源供給線駆動回路140が、走査線駆動回路130による行単位の走査と同期して、電源供給線140Aに対し第2電位よりも高い第1電位を供給する。これにより駆動トランジスタDr1,Dr2の導通状態が選択され、各有機発光素子50R,50G,50Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第1電極により反射されると共に第2電極により透過される。第2電極を透過した光は、開口61A,61B内の保護層と、その上に設けられた封止基板を透過して取り出される。
【0073】
このように本実施の形態の表示装置では、複数の画素201と、画素201を駆動するための画素駆動回路250等とを備えている。画素201は、発光領域55Aの開口率が相対的に小さな正面輝度優先の領域と、発光領域55Bの開口率が相対的に大きい視野角輝度優先の領域とを含んでいる。画素201の発光領域55Aの光取り出し側には、側壁が反射面の複数の円形状の開口61Aを備えたリフレクタ構造60A、発光領域55Bの光取り出し側には、側壁が反射面の矩形状の開口61Bを備えたリフレクタ構造60Bが設けられている。このため、画素201では、発光領域55Aから表示面側に取り出される光は広がりにくくなり正面方向に射出され、一方、発光領域55Bからの取り出し光は発光領域55Bからの取り出し光と比較して斜め方向にも広がることになる。よって、画素201では、発光領域55A,55Bからの取り出し光が合わさって、表示面に対して正面方向の光量が増加する一方で、斜め方向の光量も確保される。従って、表示面に対して正面方向および斜め方向の輝度のバランスが良好になるため、消費電力の上昇を抑えつつ、輝度を向上させると共に広い視野角を確保することができる。この場合、各画素201が正面輝度優先の領域と視野角輝度優先の領域とを含んでいるので、それぞれの領域を個別の画素とする場合と比較して、表示される映像の解像度を向上させることができる。
【0074】
なお、本実施の形態では、画素駆動回路250において書き込みトランジスタWr1,Wr2のゲート電極である金属層251G,261Gを同じ走査線130Aに接続する場合について説明したが、別々の走査線130Aに接続するようにしてもよい。これにより、発光領域55A,55Bを個別に駆動することができるため、第1の実施の形態の表示装置と同様に、視野角を正面方向に狭めたり、広い視野角を確保するようにしたり、視野角を制御できる。
【0075】
<3.モジュールおよび適用例>
以下、上述した各実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記各実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0076】
(モジュール)
上記各実施の形態の表示装置は、例えば、図14に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基体11の一辺に、封止基板26および接着層から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0077】
(適用例1)
図15は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0078】
(適用例2)
図16は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0079】
(適用例3)
図17は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510、文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0080】
(適用例4)
図18は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610、この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620、撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0081】
(適用例5)
図19は、上記各実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740、サブディスプレイ750、ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0082】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、有機発光素子の第1電極を陽極、第2電極を陰極とする場合について説明したが、陽極および陰極を逆にして、第1電極を陰極、第2電極を陽極としてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、赤色、緑色および青色の有機発光素子それぞれの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。例えば、第1電極と有機層との間に、酸化クロム(III)(Cr2 3 )やITOなどからなる正孔注入用薄膜層を備えていてもよい。
【0084】
さらにまた、上記実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記実施の形態等で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、信号線駆動回路や走査線駆動回路のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10R,10G,10B,50R,50G,50B…有機発光素子、11…基体、12…第1電極、13…電極間絶縁膜、14…有機層、14A…正孔注入層、14B…正孔輸送層、14C…発光層、14D…電子輸送層、15…第2電極、15A,55A,55B…発光領域、20A,20B,60A,60B…リフレクタ構造、21…基材、21A,21B,61A,61B…開口、22…反射膜、22A,22B…斜面、25…保護層、26…封止基板、101,102,201…画素、110…表示領域、111…基板、112…画素駆動回路形成層、113…補助配線、114,271,272…接続孔、120…信号線駆動回路、120A(120A1〜120Am)…信号線、130…走査線駆動回路、130A(130A1〜130An)…走査線、140…電源供給線駆動回路、140A(140A1〜140An)…電源供給線、150,250…画素駆動回路、Tr1,Dr1,Dr2…駆動トランジスタ、Tr2,Wr1,Wr2…書き込みトランジスタ、Cs,Cs1,Cs2…保持容量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光領域の開口率が相対的に小さな正面輝度優先の第1領域と、
発光領域の開口率が相対的に大きな視野角輝度優先の第2領域と、
前記第1領域および第2領域を駆動する駆動手段と
を備えた表示装置。
【請求項2】
複数の画素を有し、
前記第1領域および前記第2領域は、各々異なる画素に含まれている
請求項1記載の表示装置
【請求項3】
複数の画素を有し、
前記第1領域および第2領域は同一の画素内に含まれている
請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1領域は、有機発光素子の上に、側壁が反射面の複数の開口を備えた第1リフレクタ構造を有する
請求項2または請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2領域は、有機発光素子の上に、側壁が反射面の開口を備えた第2リフレクタ構造を有し、
前記第2リフレクタ構造の開口の数は、前記第1リフレクタ構造の開口の数よりも少ない
請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1リフレクタ構造の各開口の平面形状は円形状であり、
前記第2リフレクタ構造の開口の平面形状は矩形状である
請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記駆動手段は、前記第1領域を駆動する第1駆動手段と、前記第2領域を駆動する第2駆動手段とを有し、前記第1領域と第2領域とを同時に駆動する
請求項1記載の表示装置。
【請求項8】
前記駆動手段は、前記第1領域を駆動する第1駆動手段と、前記第2領域を駆動する第2駆動手段とを有し、前記第1領域と第2領域とを異なるタイミングで駆動する
請求項1記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−23240(P2011−23240A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168096(P2009−168096)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】