説明

表示装置

【課題】白色または中間色の色度の視野角依存性を低減することが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの自発光素子の、発光領域11R,11G,11B端から遮光膜22の開口24までの表示面内方向の離間距離1/2(LBM−LEL)を、他の自発光素子とは異ならせる。遮光膜22の遮光に起因する輝度低下を各色で異ならせることにより、各色の視野角特性の差を小さくし、白色または中間色の視野角による色度変化を抑制する。共振器構造の共振器効果あるいは干渉効果などを利用している場合、または、経時変化による輝度バランスの崩れを補うために青色の発光領域11Bの幅を他の色よりも大きくしている場合などに有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electroluminescence)または無機ELなどの自発光素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子などの自発光素子を用いた表示装置では、一対の基板の一方に自発光素子を設け、他方に遮光性のブラックマトリクスを設けている(例えば、特許文献1参照。)。このような従来のフルカラー表示装置においては、単色の自発光素子の混色によって白色または中間色の表示がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−73219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の表示装置では、各色の視野角特性が異なるとホワイトバランスが崩れ、白色または中間色に、視野角による色度変化が生じるという問題があった。各色の視野角特性が異なる主な原因としては、光取り出し効率向上のために共振器効果や干渉効果を利用すること、あるいは、経時変化による輝度バランスの崩れを補うために発光領域寸法を各色で異ならせていること、等が挙げられる。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、白色または中間色の色度の視野角依存性を低減することが可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による表示装置は、以下の(A)〜(C)の構成要素を備えたものである。
(A)対向配置された一対の基板
(B)一対の基板の一方に設けられると共に複数の開口を有する遮光膜
(C)一対の基板の他方に設けられ、各々開口に対向して発光領域を有すると共に互いに発光色が異なり、かつ少なくとも一つの素子の、発光領域端から遮光膜の開口までの表示面内方向の離間距離が、他の素子とは異なる、複数の自発光素子
【0007】
本発明の表示装置では、複数の自発光素子の各々から互いに異なる色の単色光が発生し、それら単色光の混色により白色または中間色が表示される。
【0008】
このとき、複数の自発光素子を斜め方向から見ると、遮光膜によって影となる部分が発生する。この影となる部分が自発光素子の発光領域に重なると、その重なり部分は、発生した光が遮光膜によって遮られる遮光領域となり、遮光領域面積に応じて輝度が低下する。
【0009】
ここでは、少なくとも一つの自発光素子の、発光領域端から遮光膜の開口までの表示面内方向の離間距離が、他の自発光素子とは異なっているので、その自発光素子では、遮光領域面積の発光領域面積に対する比率が他の自発光素子とは異なり、遮光膜の遮光による輝度低下の程度も異なることになる。このように遮光膜の遮光に起因する輝度低下を各色で異ならせることにより、各色の視野角特性に差がある場合にその差を小さくし、白色または中間色の視野角による色度変化を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表示装置では、少なくとも一つの自発光素子の、発光領域端から遮光膜の開口までの表示面内方向の離間距離を、他の自発光素子とは異ならせるようにしたので、各色の視野角特性の差を、遮光膜の遮光によって生じる輝度低下によって緩和し、白色または中間色の色度の視野角依存性を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表す平面図である。
【図2】図1に示した表示装置の一つの画素を拡大して表す平面図である。
【図3】図2に示した画素のIII−III線における断面図である。
【図4】計算例1の画素を拡大して表す平面図である。
【図5】図4に示した画素の断面図である。
【図6】図4に示した画素の色度視野角特性を表す図である。
【図7】比較例1の画素を拡大して表す平面図である。
【図8】計算例2の画素を拡大して表す平面図である。
【図9】図8に示した画素の断面図である。
【図10】図8に示した画素の色度視野角特性を表す図である。
【図11】比較例2の画素を拡大して表す平面図である。
【図12】図1に示した表示装置の構成を表す図である。
【図13】図12に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図14】図12に示した有機EL素子の構成を表す断面図である。
【図15】図12に示した有機EL素子の他の構成を表す断面図である。
【図16】変形例1に係る画素を拡大して表す平面図である。
【図17】図16の変形例を表す平面図である。
【図18】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図19】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図20】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図21】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図22】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図23】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.一実施の形態
(1)原理説明(発光領域の幅は全色同じで、青色の離間距離が他の色よりも大きい例)
(2)計算例1(発光領域の幅は全色同じで、青色の離間距離が他の色よりも小さい例)
(3)計算例2(青色の発光領域の幅が他の色よりも大きく、かつ、青色の離間距離が他の色よりも小さい例)
2.変形例1(離間距離が、一つの自発光素子内で連続的に変化している例)
3.適用例
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示装置の平面構成の一例を表したものである。この表示装置1は、テレビジョン装置などに用いられるものであり、表示領域110に複数の画素10を例えば行列状(マトリクス状)に配置した構成を有している。各画素10は、例えば、赤色の単色光を発生する自発光素子10Rと、緑色の単色光を発生する自発光素子10Gと、青色の単色光を発生する自発光素子10Bとを有している。自発光素子10R,10G,10Bは、例えば後述する有機EL素子のほか、無機EL素子,半導体レーザ,LED(Light Emitting Diode)などにより構成されている。
【0014】
図2は、図1に示した一つの画素10の平面構成を拡大して表したものである。自発光素子10R,10G,10Bは、各々発光領域11R,11G,11Bを有している。隣り合う発光領域11R,11G,11Bの境界には、ブラックマトリクスとしての遮光膜22が対向している。
【0015】
発光領域11R,11G,11Bは、例えば、縦長の矩形であり、表示面内垂直方向の寸法(以下、長さという。)が表示面内水平方向の寸法(以下、幅という。)よりも大きい。なお、ここにいう矩形とは、下層のTFTなどの配置によっては幾何学的に完全な矩形に限られず、下層のTFTなどに対応する切欠きなどを有しているが略矩形といえるものも含まれる。また、表示面内とは、図2においては紙面に対して平行な面内をいう。
【0016】
遮光膜22は、例えば黒色の着色剤を混入した光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜、または薄膜の干渉を利用した薄膜フィルタにより構成されている。このうち黒色の樹脂膜により構成するようにすれば、安価で容易に形成することができるので好ましい。薄膜フィルタは、例えば、金属,金属窒化物あるいは金属酸化物よりなる薄膜を1層以上積層し、薄膜の干渉を利用して光を減衰させるものである。薄膜フィルタとしては、具体的には、クロムと酸化クロム(III)(Cr2 O3 )とを交互に積層したものが挙げられる。
【0017】
図3は、この画素10の断面構成を表したものである。自発光素子10R,10G,10Bは第1基板11に配置され、遮光膜22は第2基板21に配置されている。第1基板11および第2基板21は、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などにより構成されている。第1基板11と第2基板21とは、自発光素子10R,10G,10Bおよび遮光膜22を内側にして対向配置され、両者の間には必要に応じて樹脂などよりなる中間層30が設けられている。ここで、第1基板11および第2基板21が、「対向配置された一対の基板」の一具体例に対応する。
【0018】
このように、自発光素子10R,10G,10Bと遮光膜22とが別々の基板に設けられている理由は、以下の通りである。遮光膜22を、自発光素子10R,10G,10Bと同じく第1基板11に形成するには、遮光膜22の形成プロセスに耐えうる耐熱性や信頼性が自発光素子10R,10G,10Bに要求される。しかしながら、これは現在のところ非常に困難である。そのため、遮光膜22は、対向する第2基板21側に設けることがほぼ必須となっている。従って、第1基板11上の自発光素子10R,10G,10Bの発光領域11R,11G,11Bと、第2基板21上の遮光膜22との間には、中間層30の厚みに相当する間隔Gが生じることになる。
【0019】
第2基板21上の遮光膜22以外の領域(後述する開口24)には、色純度向上のため、カラーフィルタ23が設けられている。カラーフィルタ23は、赤色フィルタ23R,緑色フィルタ23G,青色フィルタ23Bを有し、これらは発光領域11R,11G,11Bに対応して順に配置されている。これら赤色フィルタ23R,緑色フィルタ23Gおよび青色フィルタ23Bは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0020】
中間層30は、例えば、自発光素子10R,10G,10Bを保護する保護層と、貼り合わせのための接着層とを含んでいる(いずれも図3には図示せず、図14および図15参照。)。
【0021】
図2および図3に示したように、遮光膜22は複数の開口24を有しており、この開口24に対向して、各発光領域11R,11G,11Bが設けられている。開口24の長さおよび幅は、通常、発光領域11R,11G,11Bの長さおよび幅よりも大きい。その理由は、第1基板11と第2基板21の貼り合わせの位置ずれによって、発光領域11R,11G,11Bの一部が遮光膜22で遮光されて輝度が低下するのを防ぐためである。このため、発光領域11R,11G,11Bの端と遮光膜22の開口24とは離間している。この離間距離、つまり、発光領域11R,11G,11Bの端から遮光膜22の開口24までの表示面内方向の離間距離は、1/2(LBM−LEL)(LBMは開口24の幅、LELは発光領域11R,11G,11Bの幅をそれぞれ表す。)と表される。なお、表示面内とは、図3においては、紙面に直交する面内をいう。
【0022】
本実施の形態では、自発光素子10Bの離間距離1/2(LBMB−LELB)は、他の自発光素子10R,10Gの離間距離1/2(LBMR−LELR),1/2(LBMG−LELG)とは異なっている。これにより、この表示装置1では、白色または中間色の色度の視野角依存性を低減することが可能となっている。
【0023】
以下、このことについて、図2および図3を参照して詳細に説明する。
【0024】
図3に示したように、遮光膜22を第2基板21上に配置した場合には、第1基板11上の自発光素子10R,10G,10Bを斜め方向から見ると、遮光膜22によって影となる部分が発生する。この影となる部分が発光領域11R,11G,11Bに重なると、その重なり部分は、発生した光が遮光膜22によって遮られる遮光領域となり、この遮光領域の幅LSR,LSG,LSB(以下LSと総称する。)に応じて輝度が低下する。すなわち、遮光膜22の遮光による相対輝度Yは、Y=1−LS/LELとなる。
【0025】
ここで、図2に示した例では、発光領域11R,11G,11Bの幅は全色で等しい一方、青色の発光領域11Bに対向する開口24の幅LBMBが、赤色および緑色の発光領域11R,11Gに対向する開口24の幅LBMR,LBMGよりも大きい。よって、青色の自発光素子10Bの離間距離1/2(LBMB−LELB)が、赤色および緑色の自発光素子10R,10Gの離間距離1/2(LBMR−LELR),1/2(LBMG−LELG)よりも大きい。以上をまとめたものが、数1である。
【0026】
(数1)
発光領域の幅:LELR=LELG=LELB
開口の幅:LBMR=LBMG<LBMB
離間距離の大小関係:1/2(LBMR−LELR)=1/2(LBMG−LELG)<1/2(LBMB−LELB
【0027】
この場合、発光領域11R,11G,11Bに遮光膜22の影が生じ始めた後の遮光領域LSR,LSG,LSBは、赤色,緑色よりも青色で小さくなる。すなわち、遮光領域LSR,LSG,LSBの大小関係は、数2で表される。
【0028】
(数2)
SR=LSG>LSB
【0029】
遮光膜22の遮光による相対輝度Yは、Y=1−LS/LELであることから、各色の輝度YR,YG,YBの大小関係は、数3のように表され、ある視野角θAIRにおける青色の輝度は相対的に高くなる。従って、図2および図3に示した場合には、白色の色度は、視野角が大きくなると青色方向にずれる。
【0030】
(数3)
R=YG<YB
【0031】
ここで、遮光領域LSは、以下のように求められる。
【0032】
スネルの法則より、空気中での視野角をθAIR、中間層30を構成する樹脂中の視野角をθRESIN、樹脂の屈折率をnとして、数4が成り立つ。
【0033】
(数4)
θRESIN=a sin(1/n sinθAIR)
【0034】
遮光領域LSは、数4および以下の数5より、数6で与えられる。
【0035】
(数5)
S+1/2(LBM−LEL)=LRESIN tanθRESIN
(数6)
S= LRESIN tan(a sin(1/n sinθAIR))−1/2(LBM−LEL)
【0036】
従って、樹脂厚LRESIN、視野角θAIRにおける遮光領域の幅LSは、発光領域11R,11G,11Bの端から遮光膜22の開口24までの離間距離1/2(LBM−LEL)を変化させることにより、色毎に変えることが可能である。
【0037】
発光領域11R,11G,11Bの幅LELが決まっている場合、開口24の幅LBMを大きくすれば、遮光領域の幅LSは小さくなり、逆に開口24の幅LBMを小さくすれば、遮光領域の幅LSは大きくなる。遮光膜22の開口24の幅LBMR,LBMG,LBMBを変化させることで、各色の遮光領域の幅LS、すなわち視野角輝度比を変化させることが可能である。視野角輝度比が変わることにより、各色の混色からなる白色または中間色の視野角による色度変化が生じる。
【0038】
白色の視野角による色度変化は、色度の変化量そのものが小さい場合、あるいは色度の変化する方向が、色ズレとして視認しにくい黒体放射の軌跡に沿って変化する場合が画質上好ましい。よって、本実施の形態においても、色度変化量および色度の変化方向のどちらか一方または両方が改善できるように、各色の遮光領域の幅LS、すなわち離間距離1/2(LBM−LEL)を決定することが望ましい。
【0039】
以下、具体的な数値を用いた計算例1および計算例2について説明する。
【0040】
(計算例1)
図4および図5は、計算例1に係る画素10の平面構成および断面構成を表したものである。本計算例1では、図4に示したように、発光領域11R,11G,11Bの幅は全色で等しい一方、青色の発光領域11Bに対向する開口24の幅LBMBが、赤色および緑色の発光領域11R,11Gに対向する開口24の幅LBMR,LBMGよりも小さい。よって、青色の自発光素子10Bの離間距離1/2(LBMB−LELB)が、赤色および緑色の自発光素子10R,10Gの離間距離1/2(LBMR−LELR),1/2(LBMG−LELG)よりも小さい。以上をまとめたものが、数7である。
【0041】
(数7)
発光領域の幅:LELR=LELG=LELB=60um
開口の幅:LBMR=LBMG=76um、LBMB=70um
赤の離間距離:1/2(LBMR−LELR)=8um
緑の離間距離:1/2(LBMG−LELG)=8um
青の離間距離:1/2(LBMB−LELB)=5um
【0042】
図6は、本計算例1の色度視野角特性Δu'v'の計算結果を表したものである。その
際、第1基板11および第2基板21間は厚み20um、屈折率1.5の樹脂よりなる中間層30で貼り合わせるものとした。
【0043】
また、比較例1として、図7に示したように、開口24の幅を全色で同じ(LBMR=LBMG=LBMB=70um)とした場合についても、計算例1と同様にして色度視野角特性Δu'v'の計算を行った。その結果を併せて図6に示す。
【0044】
図6から分かるように、計算例1では、遮光膜22によって遮光が発生する視野角30度以降で、視野角0度からの色度変化量Δu'v'が比較例1よりも小さくなっており、
色度視野角特性が向上した。
【0045】
(計算例2)
図8および図9は、計算例2に係る画素10の平面構成および断面構成を表したものである。本計算例2では、図8に示したように、青色の発光領域11Bの幅LELBが、赤色および緑色の発光領域11R,11Gの幅LELR,LELGよりも大きい。また、青色の発光領域11Bに対向する開口24の幅LBMBが、赤色および緑色の発光領域11R,11Gに対向する開口24の幅LBMR,LBMGよりも小さい。よって、青色の自発光素子10Bの離間距離1/2(LBMB−LELB)が、赤色および緑色の自発光素子10R,10Gの離間距離1/2(LBMR−LELR),1/2(LBMG−LELG)よりも小さい。以上をまとめたものが、数8である。
【0046】
(数8)
発光領域の幅:LELR=LELG=50um、LELB=74um
開口の幅:LBMR=LBMG=66um、LBMB=84um
赤の離間距離:1/2(LBMR−LELR)=8um
緑の離間距離:1/2(LBMG−LELG)=8um
青の離間距離:1/2(LBMB−LELB)=5um
【0047】
本計算例2で、青色の発光領域11Bの幅LELBを、赤色および緑色の発光領域11R,11Gの幅LELR,LELGよりも大きくしている理由は、以下の通りである。有機ELのように、電流によって輝度劣化が生じる自発光素子10R,10G,10Bにおいては、自発光素子10R,10G,10Bに流れる電流密度を低減するほど寿命が長くなる。また、発光色によって発光時間に対する輝度低下の程度が異なるので、各色の発光領域11R,11G,11Bを同一面積とした場合には、時間経過と共に発光色の輝度バランスが崩れ、白色や中間色の色度変化を生じるようになる。
【0048】
そのため、寿命が短い色(具体的には、青)の発光領域11Bの幅LELBを広く取ることで、自発光素子10Bの寿命の向上が実現できる。更に、各色ごとに電流密度などの駆動条件を調整することにより、発光時間に対する輝度低下を全色で同程度に揃え、白色や中間色の経時的な色度変化を抑えることが可能である。
【0049】
しかしながら、このように発光領域11R,11G,11Bの寸法を発光色によって異ならせた場合には、遮光膜22に起因して生じる遮光領域LSR,LSG,LSBの面積の発光領域11R,11G,11Bの面積に対する比率も、発光色によって異なることになる。そのため、遮光膜22に起因する各色の輝度低下が不均一となって、ホワイトバランスが崩れ、白色または中間色に視野角による色度変化が生じるおそれがある。
【0050】
従って、本計算例2では、発光領域11Bの幅が大きい青色の自発光素子10Bの離間距離1/2(LBMB−LELB)を、赤色および緑色の自発光素子10R,10Gの離間距離1/2(LBMR−LELR),1/2(LBMG−LELG)よりも小さくするようにしている。これにより、発光時間に対する輝度低下と、遮光膜22の遮光によって生じる輝度低下との両方を、全色で同程度に揃えることが可能となり、白色または中間色の視野角による色度変化を抑制することが可能となる。
【0051】
図10は、本計算例2の色度視野角特性Δu'v'の計算結果を表したものである。そ
の際、第1基板11および第2基板21間は厚み20um、屈折率1.5の樹脂よりなる中間層30で貼り合わせるものとした。
【0052】
また、比較例2として、図11に示したように、離間距離1/2(LBMB−LELB)を全色で同じ(5um)とした場合についても、計算例2と同様にして色度視野角特性Δu'v'の計算を行った。その結果を併せて図10に示す。
【0053】
図10から分かるように、計算例2では、遮光膜22によって遮光が発生する視野角30度以降で、視野角0度からの色度変化量Δu'v'が比較例2よりも小さくなっており
、色度視野角特性が向上した。
【0054】
なお、上記の説明および計算例1,2では、表示面内水平方向の離間距離1/2(LBM−LEL)を発光色によって異ならせた場合について説明したが、表示面内垂直方向の離間距離を発光色によって異ならせるようにしてもよい。更に、表示面内水平方向および垂直方向の両方の離間距離を発光色によって異ならせるようにしてもよい。ただし、図2に示したように、表示面内垂直方向に長い発光領域11R,11G,11Bを持つ画素10においては、遮光膜22の遮光の影響は発光領域11R,11G,11Bの幅が狭い水平方向で大きく、垂直方向では小さい。そのため、影響の大きい水平方向のみ離間距離を発光色によって異ならせる場合でも十分な効果が得られる。
【0055】
また、上記の説明および計算例1,2では、青色の発光領域11Bの幅LELBまたは離間距離1/2(LBMB−LELB)を、赤色,緑色の発光領域11R,11Gの幅LELR,LELGまたは離間距離1/2(LBMR−LELR),1/2(LBMG−LELG)とは異ならせた場合について説明したが、赤色の発光領域11Rの幅LELRまたは離間距離1/2(LBMR−LELR)を、緑色,青色の発光領域11G,11Bの幅LELG,LELBまたは離間距離1/2(LBMG−LELG),1/2(LBMB−LELB)とは異ならせてもよい。また、緑色の発光領域11Gの幅LELGまたは離間距離1/2(LBMG−LELG)を、赤色,青色の発光領域11R,11Bの幅LELR,LELBまたは離間距離1/2(LBMR−LELR),1/2(LBMB−LELB)と異ならせることも可能である。ただし、青色の自発光素子10Bは他の色よりも寿命が短いことから、青色の発光領域11Bの幅LELBまたは離間距離1/2(LBMB−LELB)を、赤色,緑色の発光領域11R,11Gの幅LELR,LELGまたは離間距離1/2(LBMR−LELR),1/2(LBMG−LELG)とは異ならせることが望ましい。
【0056】
更に、赤色,緑色,青色の発光領域11R,11G,11Bの幅LELR,LELG,LELBまたは離間距離1/2(LBMR−LELR),1/2(LBMG−LELG),1/2(LBMB−LELB)をすべて互いに異ならせるようにしてもよい。
【0057】
図12は、表示装置1の一例を表すものである。この表示装置1は、自発光素子10R,10G,10Bとして有機EL素子を備えた有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、例えば、表示領域110の周辺に、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130を有している。
【0058】
表示領域110内には画素駆動回路140が設けられている。図13は、画素駆動回路140の一例を表したものである。画素駆動回路140は、後述する下部電極14の下層に形成されたアクティブ型の駆動回路である。すなわち、この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、これらトランジスタTr1,Tr2の間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機EL素子10R(または10G,10B)とを有する。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0059】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機EL素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0060】
図14は自発光素子10R,10G,10Bの断面構成を表したものである。自発光素子10R,10G,10Bは、それぞれ、第1基板11の側から、上述した画素駆動回路140の駆動トランジスタTr1、平坦化絶縁膜13、陽極としての下部電極14、電極間絶縁膜15、後述する発光層16Cを含む有機層16、および陰極としての上部電極17がこの順に積層された有機EL素子である。駆動トランジスタTr1は、平坦化絶縁膜13に設けられた接続孔13Aを介して下部電極14に電気的に接続されている。
【0061】
このような自発光素子10R,10G,10Bは、保護層31により被覆され、更にこの保護層31上に接着層32を間にして第2基板21が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。保護層31は、窒化ケイ素(SiNx ),酸化ケイ素または金属酸化物などにより構成されている。接着層32は、例えば熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂により構成されている。なお、保護層31および接着層32により、上述した中間層30が構成されている。
【0062】
平坦化絶縁膜13は、画素駆動回路140が形成された第1基板11の表面を平坦化するためのものであり、微細な接続孔13Aが設けられるためパターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。平坦化絶縁膜13の構成材料としては、例えば、ポリイミド等の有機材料、あるいは酸化シリコン(SiO2 )などの無機材料が挙げられる。
【0063】
下部電極14は、反射層としての機能も兼ねており、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。特に、下部電極14が陽極として使われる場合には、下部電極14は正孔注入性の高い材料により構成されていることが望ましい。このような下部電極14としては、例えば、積層方向の厚み(以下、単に厚みと言う)が100nm以上1000nm以下であり、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。下部電極14の表面には、インジウムとスズの酸化物(ITO)などの透明導電膜が設けられていてもよい。なお、アルミニウム(Al)合金のように、反射率が高くても、表面の酸化皮膜の存在や、仕事関数が大きくないことによる正孔注入障壁が問題となる材料においても、適切な正孔注入層を設けることによって下部電極14として使用することが可能である。
【0064】
電極間絶縁膜15は、下部電極14と上部電極17との絶縁性を確保すると共に発光領域11R,11G,11Bを所望の形状にするためのものであり、例えば感光性樹脂により構成されている。電極間絶縁膜15は下部電極14の周囲のみに設けられており、下部電極14のうち電極間絶縁膜15から露出した領域が発光領域11R,11G,11Bとなっている。なお、有機層16および上部電極17は、電極間絶縁膜15の上にも設けられているが、発光が生じるのは発光領域11R,11G,11Bだけである。
【0065】
有機層16は、例えば、下部電極14の側から順に、正孔注入層16A,正孔輸送層16B,発光層16C,電子輸送層16Dおよび電子注入層16Eを積層した構成を有する。これらのうち発光層16C以外の層は必要に応じて設ければよい。有機層16は、自発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっていてもよい。正孔注入層16Aは、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層16Bは、発光層16Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層16Cは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層16Dは、発光層16Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。電子注入層16Eは、電子注入効率を高めるためのものである。
【0066】
自発光素子10Rの正孔注入層16Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、化1または化2に示したヘキサアザトリフェニレン誘導体により構成されている。自発光素子10Rの正孔輸送層16Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。自発光素子10Rの発光層16Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものにより構成されている。自発光素子10Rの電子輸送層16Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。自発光素子10Rの電子注入層16Eは、例えば、厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li2 Oなどにより構成されている。
【0067】
【化1】

(化1において、R1〜R6それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アルールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、ニトリル基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。また、X1〜X6はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。)
【0068】
具体的には、自発光素子10Rの正孔注入層16Aは、化2に示した材料により構成されていることが好ましい。
【0069】
【化2】

【0070】
自発光素子10Gの正孔注入層16Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、化1または化2に示したヘキサアザトリフェニレン誘導体により構成されている。自発光素子10Gの正孔輸送層16Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。自発光素子10Gの発光層16Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を1体積%混合したものにより構成されている。自発光素子10Gの電子輸送層16Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。自発光素子10Gの電子注入層16Eは、例えば、厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li2 Oなどにより構成されている。
【0071】
自発光素子10Bの正孔注入層16Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、化1または化2に示したヘキサアザトリフェニレン誘導体により構成されている。自発光素子10Bの正孔輸送層16Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。自発光素子10Bの発光層16Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、スピロ6Φ(spiro6Φ)により構成されている。自発光素子10Bの電子輸送層16Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。自発光素子10Gの電子注入層16Eは、例えば、厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li2 Oなどにより構成されている。
【0072】
上部電極17は、例えば、厚みが10nm程度であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca)またはナトリウム(Na)の合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)は、薄膜での導電性と吸収の小ささとを兼ね備えているので好ましい。Mg−Ag合金におけるマグネシウムと銀との比率は特に限定されないが、膜厚比でMg:Ag=20:1〜1:1の範囲であることが望ましい。また、上部電極17の材料は、アルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(Al−Li合金)でもよい。
【0073】
上部電極17は、また、半透過性反射層としての機能を兼ねている。すなわち、自発光素子10Rは共振器構造MC1を有し、この共振器構造MC1により発光層16Cで発生した光を下部電極14と上部電極17との間で共振させるようになっている。この共振器構造MC1は、下部電極14と有機層16との界面を反射面P1、中間層18と電子注入層16Eとの界面を半透過反射面P2とし、有機層16を共振部として、発光層16Cで発生した光を共振させて半透過反射面P2の側から取り出すものである。このように共振器構造MC1を有するようにすれば、発光層16Cで発生した光が多重干渉を起こし、半透過反射面P2の側から取り出される光のスペクトルの半値幅が減少し、ピーク強度を高めることができる。すなわち、正面方向における光放射強度を高め、発光の色純度を向上させることができる。また、第2基板21側から入射した外光についても多重干渉により減衰させることができ、カラーフィルタ23との組合せにより自発光素子10R,10G,10Bにおける外光の反射率を極めて小さくすることができる。
【0074】
そのためには、反射面P1と半透過反射面P2との間の光学的距離L1は数9を満たすようにすることが好ましい。
【0075】
(数9)
(2L1)/λ+Φ/(2π)=m
(式中、L1は反射面P1と半透過反射面P2との間の光学的距離、mは次数(0または自然数)、Φは反射面P1で生じる反射光の位相シフトΦ1 と半透過反射面P2で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)、λは半透過反射面P2の側から取り出したい光のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。なお、数9においてL1およびλは単位が共通すればよいが、例えば(nm)を単位とする。)
【0076】
反射面P1と半透過反射面P2との間には、取り出し発光強度が極大となる位置(共振面)が存在する。この共振面はm+1箇所あり、m=1以上の条件においては、最も反射面P1寄りの共振面に発光面がある場合が最も発光スペクトルの半値幅が広くなるものである。
【0077】
なお、自発光素子10R,10G,10Bは、図15に示したように、半透過反射面P2を有さず、発光層16Cで発生した光を反射面P1において反射させ、この反射光と発光層16Cで発生する光との間で干渉を生じさせるものでもよい。
【0078】
この場合、発光層16Cは、反射光と発光層16Cで発生した光とが干渉により互いに強め合う位置(干渉位置)を含んでいることが好ましい。また、反射面P1と干渉位置との間の光学的距離L1は数10を満たすようにすることが好ましい。
【0079】
(数10)
(2L1)/λ+Φ/(2π)=m
(式中、L1は反射面P1と干渉位置との間の光学的距離、mは次数(0または自然数)、Φは反射面P1で生じる反射光の位相シフトΦ(rad)、λは発光層16Cで発生した光が上部電極17側から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。なお、数1においてL1およびλは単位が共通すればよいが、例えば(nm)を単位とする。)
【0080】
このような共振器構造MC1を有する、または発光層16Cで発生した光と反射面P1における反射光との干渉を利用する自発光素子10R,10G,10Bでは、次数mが大きくなるほど、輝度や色度の視野角依存性、すなわち正面方向から見た場合と斜め方向から見た場合とでの輝度や色度の変化が大きくなる傾向がある。一般のテレビジョン装置等の用途に有機EL表示装置を用いることを想定した場合、視野角による輝度低下および色度変化は小さい方が望ましい。
【0081】
視野角特性のみを考慮するとm=0の条件が理想的である。しかしながら、この条件では有機層16の厚みが薄くなるので、発光特性への影響や下部電極14と上部電極17との短絡発生のおそれが生じる。そのため、例えばm=1の条件を用いることにより、輝度や色度の視野角依存性が大きくなることを回避すると共に、発光特性の低下や短絡発生を抑えるようにしている。例えば下部電極14がアルミニウム合金、上部電極17がMg−Ag合金によりそれぞれ構成されている場合、m=0では青色の自発光素子10Bの有機層16の厚みは80nm程度となるが、m=1では190nm程度になるので短絡発生が抑えられる。
【0082】
また、共振器構造MC1の共振器効果、または干渉効果は、発光色毎に異なる光学条件となるため、視野角特性も発光色毎に異なることが通常である。フルカラー表示装置においては、白色または中間色は単色光の混色で表示させるため、単色の視野角特性が色毎に異なることによってホワイトバランスが崩れ、白色または中間色が視野角による色度変化を生じることとなる。
【0083】
ここでは、上述したように、自発光素子10Bの離間距離1/2(LBMB−LELB)は、他の自発光素子10R,10Gの離間距離1/2(LBMR−LELR),1/2(LBMG−LELG)とは異なっている。従って、遮光膜22の遮光に起因する輝度低下を各色で異ならせ、共振器構造MC1の共振器効果、または干渉効果に起因する各色の視野角特性の差を小さくし、白色または中間色の視野角による色度変化を抑制することが可能となる。
【0084】
この表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0085】
まず、上述した材料よりなる第1基板11の上に駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140を形成したのち、全面に感光性樹脂を塗布することにより平坦化絶縁膜13を形成し、露光および現像により平坦化絶縁膜13を所定の形状にパターニングすると共に接続孔13Aを形成し、焼成する。
【0086】
次いで、例えばスパッタ法により、上述した材料よりなる下部電極14を形成し、ウェットエッチングにより下部電極14を選択的に除去して自発光素子10R,10G,10Bごとに分離する。
【0087】
続いて、第1基板11の全面にわたり感光性樹脂を塗布し、例えばフォトリソグラフィ法により発光領域に対応して開口部を設け、焼成することにより、電極間絶縁膜15を形成する。
【0088】
そののち、例えば蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる有機層16の正孔注入層16A,正孔輸送層16B,発光層16Cおよび電子輸送層16Dを形成する。
【0089】
有機層16を形成したのち、例えば蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる上部電極17を成膜する。これにより、図14または図15に示したような自発光素子10R,10G,10Bが形成される。
【0090】
続いて、例えばCVD法またはスパッタ法により、自発光素子10R,10G,10Bの上に上述した材料よりなる保護層31を形成する。
【0091】
また、例えば、上述した材料よりなる第2基板21の上に、遮光膜22の材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより遮光膜22を形成する。続いて、遮光膜22と同様にして、赤色フィルタ23R、青色フィルタ23Bおよび緑色フィルタ23Gを順次形成する。
【0092】
そののち、保護層31の上に、接着層32を形成し、この接着層32を間にして第2基板21を貼り合わせる。以上により、図12ないし図15に示した表示装置1が完成する。
【0093】
この表示装置1では、各画素10に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、自発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、下部電極14(反射面P1)と上部電極17(半透過反射面P2)との間で多重反射し、または、下部電極14(反射面P1)における反射光と発光層16Cで発生した光とが干渉により強め合い、上部電極17,カラーフィルタ23および第2基板21を透過して取り出される。
【0094】
このように本実施の形態では、少なくとも一の発光色の自発光素子10R(または10G、または10B)の離間距離1/2(LBM−LEL)を、他の発光色の自発光素子の離間距離1/2(LBM−LEL)とは異ならせるようにしたので、各色の視野角特性の差を、遮光膜22の遮光によって生じる輝度低下によって緩和し、白色または中間色の色度の視野角依存性を低減することが可能となる。特に、共振器構造MC1を有し、発光層16Cで発生した光を下部電極14と上部電極17との間で共振させるようにした場合や、発光層16Cで発生した光と下部電極14における反射光とを干渉させるようにした場合など、各色の視野角特性が異なる場合に好適である。
【0095】
また、遮光膜22を設けることにより、コントラスト比の向上も可能となる。
【0096】
更に、寿命の短い青色の自発光素子10Bの発光領域11Bの幅を大きくして寿命を向上させるようにした場合には、発光時間に対する輝度低下と、遮光膜22の遮光によって生じる輝度低下との両方を、全色で同程度に揃えることが可能となり、白色または中間色の視野角による色度変化を抑制することが可能となる。
【0097】
(変形例1)
図16および図17は、変形例1に係る画素10の平面構成を表したものである。本変形例は、離間距離1/2(LBM−LEL)を、一つの自発光素子10R(または10G、または10B)内で連続的に変化させることにより、視野角によって遮光領域LSを徐変させ、視野角特性の微調整を可能としたものである。このことを除いては、本変形例1は、上記実施の形態と同様の構成、作用および効果を有し、同様にして製造することができる。
【0098】
なお、上記変形例1,2では、表示面内水平方向の離間距離1/2(LBM−LEL)を一つの自発光素子10R(または10G、または10B)内で連続的に変化させた場合について説明したが、表示面内垂直方向の離間距離を一つの自発光素子10R(または10G、または10B)内で連続的に変化させるようにしてもよい。更に、表示面内水平方向および垂直方向の両方の離間距離を一つの自発光素子10R(または10G、または10B)内で連続的に変化させるようにしてもよい。ただし、図16または図17に示したように、表示面内垂直方向に長い発光領域11R,11G,11Bを持つ画素10においては、遮光膜22の遮光の影響は発光領域11R,11G,11Bの幅が狭い水平方向で大きく、垂直方向では小さい。そのため、影響の大きい水平方向の離間距離のみを一つの自発光素子10R(または10G、または10B)内で連続的に変化させる場合でも十分な効果が得られる。
【0099】
(モジュールおよび適用例)
以下、上述した実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0100】
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置は、例えば、図18に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、第1基板11の一辺に、第2基板21および接着層32から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0101】
(適用例1)
図19は、上記実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0102】
(適用例2)
図20は、上記実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0103】
(適用例3)
図21は、上記実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0104】
(適用例4)
図22は、上記実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0105】
(適用例5)
図23は、上記実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0106】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0107】
また、上記実施の形態では、自発光素子10R,10G,10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0108】
更に、上記実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。加えてまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…表示装置、10R,10G,10B…自発光素子、11…第1基板、11R,11G,11B…発光領域、12…平坦化絶縁膜、14…下部電極、15…電極間絶縁膜、16…有機層、16A…正孔注入層、16B…正孔輸送層、16C…発光層、16D…電子輸送層、16E…電子注入層、17…上部電極、21…第2基板、22…遮光膜、23…カラーフィルタ、24…開口部、31…保護層、32…接着層、P1…反射面、P2…半透過反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対の基板と、
前記一対の基板の一方に設けられると共に複数の開口を有する遮光膜と、
前記一対の基板の他方に設けられ、各々前記開口に対向して発光領域を有すると共に互いに発光色が異なり、かつ少なくとも一つの素子の、前記発光領域端から前記遮光膜の開口までの表示面内方向の離間距離が、他の素子とは異なる、複数の自発光素子と
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記発光領域の表示面内垂直方向の寸法は、前記発光領域の表示面内水平方向の寸法よりも大きく、
前記離間距離は、表示面内水平方向の距離である
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記一つの素子は、前記他の素子よりも、前記発光領域の表示面内水平方向の寸法が大きく、かつ前記離間距離が小さい
請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記離間距離が、前記一つの素子内で連続的に変化している
請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
前記遮光膜の開口に、カラーフィルタを有する
請求項1記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−40352(P2011−40352A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189445(P2009−189445)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】