説明

表示装置

【課題】 発光色間の劣化特性の差により生じる白色の色度ずれが抑制された表示装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 発光色の異なる複数の画素1からなる画素ユニットには、画素1の発光色ごとの有機EL素子における劣化特性の差が小さくなるようにレンズ30R,30G,30Bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機EL素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を備えた表示装置に関して盛んに研究開発されている。有機EL素子は陽極と発光層を含む有機化合物層と陰極とで構成され、陽極と陰極からそれぞれ正孔と電子が発光層に注入され、正孔と電子の再結合エネルギーを利用して発光層から光が出射される。
【0003】
カラー表示を可能にするために、例えば赤色、緑色、及び青色のような、互いに異なる色を発する複数の有機EL素子を備えた表示装置では、各色の有機EL素子を発光させて白色を表示する。しかし、各色(赤色、緑色、青色)の有機EL素子の劣化特性が異なるため、時間の経過につれて、白色の色度が異なってしまう問題(白色の色度ずれ)があった。
【0004】
具体的に図7を用いて説明する。図7は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の有機EL素子を一定電流で駆動させた際の、駆動時間tと輝度の関係(劣化特性)を示す図である。相対輝度は電流を流し始めた際(t=0)の輝度を1として表されている。図7において、t=Tでは、緑色では相対輝度が約0.55であるのに対し、赤色、青色では相対輝度がそれぞれ約0.46、約0.31である。このため、t=0で表示装置を観察した場合に白色として観察されても、t=Tで表示装置を観察した場合には赤色の相対輝度が他の色よりも大きいので、赤みがかかった白色として観察されてしまう。
【0005】
これに対して、特許文献1では、発光効率の小さい色の発光領域の面積を調整することにより、その色の有機EL素子に流す電流密度を小さくして寿命を長くし、表示装置の白色の色度ずれを制御することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−290441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、表示装置において、発光領域の面積を大きくする、あるいは小さくすることには限界があり、特許文献1で提案されている方法では、発光色間の劣化特性の差に十分対応することができないという課題があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みて、より広範な発光色間の劣化特性の差に対応が可能であるレンズを用いることにより、白色の色度ずれが抑制された表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、発光色の異なる複数の画素からなる画素ユニットが複数配列された表示装置であって、前記画素は、有機EL素子を備え、前記画素ユニットには、前記画素の発光色ごとの有機EL素子における劣化特性の差が小さくなるようにレンズが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、レンズを用いることにより、白色の色度ずれが抑制された表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る表示装置の一例を示す斜視模式図および部分断面模式図
【図2】従来の表示装置の部分断面模式図
【図3】放射角と相対輝度との相関を示す図
【図4】本発明の実施形態1に係る表示装置の製造工程を示す図
【図5】本発明の実施形態2に係る表示装置の部分断面模式図
【図6】本発明の実施形態2に係る表示装置の製造工程を示す図
【図7】本発明の課題を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る表示装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。また以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定されるものではない。
【0013】
また、本発明において、有機EL素子の劣化特性とは、駆動時間に対する輝度(相対輝度)が変化する性質のことをいう。また、劣化特性の差を小さくするとは、ある駆動時間が経過した後の輝度(相対輝度)の変化の様子を互いに近づけることである。
【0014】
(実施形態1)
図1(a)は、本発明の実施形態1に係る表示装置を示す斜視模式図である。本実施形態の表示装置は、有機EL素子を備える画素1を複数有している。そして、複数の画素1はマトリックス状に配置され、表示領域2を形成している。なお、画素とは、1つの発光素子の発光領域に対応した領域を意味している。本実施形態の表示装置では、発光素子は、有機EL素子であり、画素1のそれぞれに1つの色の有機EL素子が配置された表示装置である。有機EL素子の発光色としては、赤色、緑色、青色が挙げられ、そのほかに黄色、シアンでもよい。また、本実施形態の表示装置には、発光色の異なる複数の画素(例えば赤色を発する画素、緑色を発する画素、及び青色を発する画素)からなる画素ユニットが複数配列されている。画素ユニットとは、各画素の混色によって所望の色の発光を可能とする最小の単位を示す。
【0015】
図1(b)は、図1(a)のA−B線における部分断面模式図である。画素1は、基板10上に、第1電極(陽極)11と、正孔輸送層12と、発光層13R,13G,13Bと、電子輸送層14と、第2電極(陰極)15と、を備える有機EL素子3を有している。また、なお、本実施形態では、発光層13Rは赤色を発する発光層、発光層13Gは緑色を発する発光層、発光層13Bは青色を発する発光層である。発光層13R,13G,13Bはそれぞれ、赤色、緑色、青色を発する画素(有機EL素子3)に対応してパターン形成されている。また、第1電極11も、隣の画素(有機EL素子3)の第1電極11と分離されて形成されている。そして、正孔輸送層12と電子輸送層14と第2電極15は、隣の画素と共通で形成されていてもよいし、画素毎にパターン化されて形成されていてもよい。なお、第1電極11と第2電極15とが異物によってショートするのを防ぐために、画素(より具体的には、第1電極11)間に絶縁層20が設けられている。
【0016】
さらに、本実施形態の表示装置では、レンズ部材30が設けられている。なお、レンズ部材30と各有機EL素子3の間には、水分や酸素から有機EL素子3を保護する保護層40が配置されている。レンズ部材30には、表面に凸部を有する構成であり、各画素に対応する位置に凸レンズ30R,30G,30Bが配置されている。そして、各凸レンズ30R,30G,30Bは、その曲率半径が異なるように調整されている。この構成により、レンズの集光特性を画素毎に変えることが可能となる。本発明では、レンズの集光特性を色毎に調整することにより、劣化特性が互いに異なる有機EL素子の劣化特性の差を小さくしている。以下で具体的に説明する。なお、「集光特性」とは、界面に入射する光の入射角度よりも出射される光の出射角度の方が小さくなる特性である。また、集光特性は、画素の領域のうちレンズが占める領域、レンズの曲率半径(もしくは曲率)、発光層(有機EL素子)からレンズまでの距離、レンズの材料の屈折率によっても制御することが可能である。
【0017】
まず、図2に示すように、画素にレンズが形成されていない場合を考える。有機EL素子から斜めに出射された光50は、保護層40から出射する際に、さらに斜めの光51となって出射される。これに対して、図1(b)のように、画素に凸レンズ(例えば凸レンズ30R)が形成されている場合には、凸レンズ30Rを透過して出射された光50は、レンズが無い場合(破線)に比べて、基板10の垂直方向(表示装置の正面方向)に向いた光52となって出射される。したがって、レンズが無い場合と比較して、凸レンズがあった場合の方が光を集光する機能がある。すなわち、表示装置としては、正面方向から観察したときの輝度が大きくなり、正面方向における光の利用効率を高めることができる。
【0018】
次に、凸レンズの曲率と正面方向の輝度について述べる。図3は、凸レンズの曲率半径Rが異なる場合の、放射角と相対輝度の相関関係を示す図である。図3において、「平坦」とは、レンズが形成されていない場合を示す。なお、測定に用いた凸レンズは、曲率半径Rが、20μm,30μm,60μm,100μmの4種類のものを用意した。それぞれの曲率半径の構成において、画素のピッチを31.5μm、凸レンズの最大幅を31.5μm、画素の幅を16.5μmであった。また、第2電極15は、酸化インジウムと酸化亜鉛の混合物で構成し、屈折率1.9、膜厚0.05μmであった。保護層40は、窒化シリコンで構成し、屈折率1.83、膜厚0.18μmであった。レンズ部材30は、エポキシ樹脂で構成し、屈折率1.54、最小膜厚を10μmであった。なお、相対輝度とは、それぞれの構成における放射角0度(正面方向)の輝度(正面輝度)を1とした場合の相対的な輝度を意味する。
【0019】
図3で示すように、放射角30度以下、特に正面方向において、レンズが形成されている場合の方が、レンズが形成されていない場合よりも相対輝度が大きくなっている。さらに、凸レンズが形成されている場合であっても、凸レンズの曲率半径が小さいほど、相対輝度が大きくなっていることがわかる。これは、曲率半径が小さい凸レンズの方が、曲率半径が大きい凸レンズよりも、凸レンズによる集光特性が大きいことを示している。つまり、集光特性は、レンズを設けない構成、曲率半径が大きい凸レンズを設ける構成、曲率半径が小さい凸レンズを設ける構成、の順に大きくなる。このため、集光特性が大きいレンズを備えた画素ほど、表示装置の正面方向での相対輝度が大きくなっている。
【0020】
一方、有機EL素子の劣化特性は発光色により異なるのが一般的である。この原因は、有機EL素子の発光層やその他の有機化合物層の材料や膜厚によって、発光色ごとで発光効率が異なることが考えられる。この発光色ごとの発光効率の差と、白色表示時の各色の輝度比によって、白色表示時の有機EL素子に供給する電流、より具体的には、電流密度に差が生じる。そして、電流密度の大きさは、有機EL素子の劣化特性に影響を与える。具体的には、有機EL素子は、供給される電流密度が大きいほど早く劣化する。このため、有機EL素子の劣化を遅くするには、供給される電流密度を小さくすればよい。また反対に、有機EL素子の劣化を早めるには、供給される電流密度を大きくすればよい。
【0021】
また、表示装置は一般的に正面方向から観察されることが多く、正面輝度が大きな表示装置が望まれている。上述したように集光特性のあるレンズを設けて正面輝度を大きくした場合、レンズを設けない場合と同じ正面輝度を得る上では、レンズを設けない場合よりも有機EL素子に供給する電流密度が小さくてすむ。というのも、輝度は電流量(電流密度)と正の相関関係にあるからである。よって、集光特性のあるレンズを設けた場合には、劣化を抑えることができる。
【0022】
そこで、本実施形態の表示装置では、異なる色を発する有機EL素子どうしの劣化特性の差を小さくするように、集光特性が調整されたレンズを、各画素ユニットに、各画素が発する色に応じて設けている。より具体的には、劣化速度が大きい(相対輝度の低下が速い)有機EL素子を有する画素には集光特性が大きいレンズを設け、劣化速度が小さい(相対輝度の低下が遅い)有機EL素子を有する画素には集光特性の小さいレンズを設けている。凸レンズの曲率半径で集光特性を制御する場合には、劣化速度が大きい有機EL素子を有する画素には曲率半径の小さい凸レンズを設け、劣化速度が小さい有機EL素子を有する画素には曲率半径の大きい凸レンズを設ける。
【0023】
例えば、各画素に、赤色を発する有機EL素子(以下では、R素子という)又は緑色を発する有機EL素子(以下では、G素子という)又は青色を発する有機EL素子(以下では、B素子という)を備える表示装置について、各色で劣化特性が異なる場合を考える。より具体的には、G素子、R素子、B素子の順に劣化速度が大きくなる場合を考える(G素子の劣化速度<R素子の劣化速度<B素子の劣化速度)。この場合、G素子、R素子、B素子の順に、設けるレンズの集光特性を大きくすればよい(G素子のレンズの集光特性<R素子のレンズの集光特性<B素子のレンズの集光特性)。この構成により、集光特性の大きいレンズが設けられたB素子を有する画素は、正面輝度が大きくなり、供給する電流密度を小さくすることができ、劣化を抑制することができる。このため、B素子の劣化速度が小さくなり、長時間を駆動しても、相対輝度の低下が抑えられ、G素子の劣化特性に近づけることができる。同様に、R素子を有する画素も、G素子の劣化特性に近づけることができる。つまり、B素子、R素子の劣化特性は、G素子の劣化特性に近くなるので、赤色、緑色、青色の混色である白色を、所望の時間駆動した後でも、白色の色度ずれが抑制される。
【0024】
また、異なる複数の発光色を混色し所望の白色を表示する表示装置の場合は、各色の劣化特性のみならず、白色表示に必要な各色の発光輝度比(混色比)、発光効率、輝度半減寿命を考慮して、各画素に設けるレンズの曲率半径を決定することがより望ましい。より具体的には以下のとおりである。
【0025】
各色の正面での色度座標がCIExyで、赤(0.67,0.33)、緑(0.21,0.71)、青(0.14,0.08)である。また、各色の発光効率が、赤12cd/A、緑10cd/A、青5cd/Aで、各色の輝度半減寿命が、赤8万時間、緑9万時間、青1万時間とする。色度座標(0.31,0.33)の白色を表示する際には、赤、緑、青の輝度比は、3.2:5.8:1.0なので、赤、緑、青の必要電流比は1.3:2.9:1である。なお、輝度半減寿命とは、ある一定電流で有機EL素子を駆動させたときに、駆動開始直後の輝度の半分になるまでの駆動時間のことである。
【0026】
そこで、必要電流と輝度半減寿命との間に負の相関(例えば逆相関)の関係にあると、赤、緑、青の白色表示時の輝度半減寿命比は、6.0:3.1:1.0となる。そこで、赤、緑、青の正面輝度比を、1:3.1:6.0とすると、輝度半減寿命において各色の輝度バランスが駆動開始時のそれと同等となるため、白色の色度ずれが低減される。つまり、赤、緑、青の正面輝度比を1:3.1:6.0となるように、レンズを設けると白色の色度ずれが低減される。すなわちR素子、G素子、B素子の順に、設けるレンズの集光特性を大きくすればよい(R素子のレンズの集光特性<G素子のレンズの集光特性<B素子のレンズの集光特性)。
【0027】
なお、レンズの曲率半径を決定するのは、輝度半減寿命でなくてもよく、駆動開始時から数%輝度が低下するまでの駆動時間等、表示装置の特性として必要とされる任意の駆動時間であってもよい。これらの場合には、レンズを設けない表示装置よりも各色の劣化特性の差が小さくなる。なお、ここでは、発光輝度と駆動時間を仮に、−1の負の相関としたが、相関係数は、実際の発光素子の発光輝度と駆動時間との関係から、決定する事が好ましい。
【0028】
なお、白色の色度ずれは、CIE 1976 UCS色度座標(以下、u’v’色度座標という)(u’,v’)を用いることが一般的であり、CIExy色度座標(x,y)との関係は、以下のとおりである。
【0029】
【数1】

【0030】
具体的には、白色のCIExy色度座標(0.31,0.33)は、u’v’色度座標では、(0.20,0.47)である。
【0031】
白色の色度ずれは、u’v’色度座標における表示装置の駆動開始時の色度(u’,v’)と、所定時間経過後の色度(u’,v’)との関係式(数2)で表される色度差δu’v’が0.020以下になれば、十分に抑制されているといえる。
【0032】
【数2】

【0033】
なお、レンズの集光特性は、各色毎に必ずしも変更する必要はなく、必要に応じて適宜調整すればよい。例えば、R素子、G素子、B素子の劣化特性がそれぞれ異なっていても、例えば、B素子とG素子のレンズの集光特性を同じにし、R素子に設けるレンズの集光特性だけを変えるようにしてもよい。
【0034】
また、集光特性は、凸レンズを設ける構成と、凸レンズを設けない構成とで調整することもできる。すなわち、劣化速度が大きい有機EL素子を有する画素には凸レンズを設け、劣化速度が小さい有機EL素子を有する画素には凸レンズを設けないようにしてもよい。
【0035】
基板10は、TFTやMIM等のスイッチング素子(不図示)が形成された絶縁性の基板であり、ガラス、プラスチック等からなる。また、基板10は、スイッチング素子と第1電極11とを電気的に接続するためのコンタクトホールが形成された層間絶縁膜を有していてもよい。さらに、基板10には、スイッチング素子の凹凸を平坦化するための平坦化膜を有していてもよい。
【0036】
第1電極11は、Al、Cr、Agなどの金属単体やそれらの合金からなる金属層を用いることができる。さらに、酸化インジウムと酸化錫の化合物層や酸化インジウムと酸化亜鉛の化合物層などの透明酸化物導電層を金属層の上に積層する構成を採ることもできる。第1電極11の膜厚は、50nm以上200nm以下が好ましい。なお、透明とは、可視光域(波長400nm乃至780nm)において40%以上の光透過率を有することをいう。
【0037】
正孔輸送層12は、正孔注入性、正孔輸送性を備える有機化合物の単層又は複数の層からなる。一方、電子輸送層14は、電子注入性、電子輸送性を備える有機化合物の単層又は複数の層からなる。また、必要に応じて、正孔輸送層12として、発光層から陽極側に電子が移動するのを抑制するために、電子ブロッキング層を設けることもできる。また、電子輸送層14として、正孔ブロッキング層を設けることもできる。また、正孔輸送層12、電子輸送層14として、発光層で発生した励起子の拡散を抑制するための励起子ブロッキング層を設けることもできる。
【0038】
赤色を発する発光層13R、緑色を発する発光層13G、青色を発する発光層13Bとしては、特に制限はなく公知の材料を適用することが可能である。例えば、発光性とキャリア輸送性を兼ね備える材料の単一層や、蛍光材料、燐光材料等の発光性材料をキャリア輸送性のホスト材料の混合層を適用することができる。
【0039】
各発光層13R,13G,13B、正孔輸送層12、電子輸送層14には、公知の材料が使用することができ、成膜手法も蒸着や転写等公知の成膜手法を用いることができる。また、各層の膜厚は、各色の有機EL素子の発光効率を上げるために最適な膜厚にすることが望ましく、それぞれ5nm以上100nm以下の膜厚であることが望ましい。
【0040】
第2電極15は、Al、Cr、Agなどの金属単体やそれらの合金からなる金属薄膜を使用することができる。特にAgを含む金属薄膜は吸収率が低く、比抵抗も低いため、第2電極15として好ましい。第2電極15の膜厚が5nm以上30nm以下であることが好ましい。また、第2電極15は上述した金属薄膜と酸化インジウムと酸化錫の化合物層や酸化インジウムと酸化亜鉛の化合物層などの透明酸化物導電層とが積層され構成であってもよいし、透明酸化物導電層のみで構成されていてもよい。
【0041】
保護層40は、材料や成膜手法は公知のものを使用することができる。一例としては、窒化シリコンや酸化窒化シリコンをCVD装置で成膜する方法が挙げられる。保護層40の膜厚は、保護性能を有するために0.5μm乃至10μmであることが好ましい。
【0042】
レンズ部材30は、水分含有が少ない熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化型樹脂を用いることができる。レンズ部材30の膜厚は、10μm乃至100μmが好ましい。熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂を用いた場合、成膜方法としては、スピンコート法、ディスペンス法などを用いることが可能である。また、保護層40上に、膜厚10μm乃至100μm程度の熱可塑性樹脂のフィルムを真空下にて貼りつける方法も用いることができる。具体的な樹脂材料としては、エポキシ樹脂、ブチル樹脂が好適に用いられる。
【0043】
またレンズ部材30の材料として窒化シリコンや酸化シリコンといった無機物を用いてもよい。その場合は、まずCVD法にて窒化シリコン層や酸化シリコン層を20μmほど堆積し、その上に樹脂にてレンズ形状の構造物を作成する。これらをドライエッチングすることで窒化シリコン層や酸化シリコン層にレンズ形状を転写する。
【0044】
凸レンズ30R,30G,30Bの製造方法は、以下の方法が挙げられる。
(1)レンズの型を用意し、その型を樹脂層に対して押圧してレンズ形状に形成する方法。
(2)フォトリソなどによってパターニングされた樹脂層を熱処理し、リフローによって樹脂層をレンズ形状に変形させる方法。
(3)均一の厚さに形成された光硬化型樹脂層を、面内方向に分布を持った光で露光し、この樹脂層を現像することによってレンズを形成する方法。
(4)イオンビームあるいは電子ビーム、レーザー等を用いて、均一の厚さに形成された樹脂材料の表面をレンズ形状に加工する方法。
(5)各画素に適量の樹脂を滴下して自己整合的にレンズを形成する方法。
(6)有機EL素子が形成された基板とは別個に、レンズが予め形成された樹脂シートを用意し、両者をアライメントした後、貼り合せることによりレンズを形成する方法。
【0045】
本実施形態の表示装置の製造について、上記(1)の方法を用いる場合を図4を用いて説明する。なお、基板10の上に第1電極11から第2電極15までを形成する方法は周知の方法を用いるため省略する。
【0046】
まず、図4(a)のように、基板10上にトップエミッション型の有機EL素子を複数形成する。次に、図4(b)のように、有機EL素子を覆うように保護層40を表示領域の全域に形成する。保護層40は、空気中の水分や酸素、または後に形成される樹脂材料30aに内在する水分から有機EL素子を保護するためのものであり、またこの上にレンズを精度よく形成するための平坦化する機能を併せ持つ。
【0047】
次に、図4(c)のように保護層40の上にレンズ部材30の元になる樹脂材料30aを形成する。そして、図4(d)で示すように、凸レンズ30R,30G,30Bを成形するための型31を用意し、樹脂材料30aに気泡が混入しないように、型31を樹脂材料30aに対して押圧する。型31の樹脂材料30aに接触する表面は、各画素に対応して凹部が形成されており、各凹部の曲率半径は各画素に設ける凸レンズの集光特性に応じて調整されている。
【0048】
なお、型31は、一般的な金属で形成することができるが、樹脂材料30aに光硬化型樹脂を用いる場合は、光を透過させる必要があるため石英基板から形成されることが好ましい。また、型31のレンズ部材30に対する剥離性を高めるために、型31の表面に、フッ素樹脂などの膜を形成してもよい。
【0049】
樹脂材料30aに熱硬化型樹脂を用いる場合は、型31における凹部の頂点が、対応する画素の中心とほぼ一致した状態で、樹脂材料30aを80℃に加熱することにより硬化させる。硬化温度については、一般的な有機EL素子を構成する有機化合物の耐熱温度が100℃程度であるため、それよりも低い80℃程度の硬化温度が好ましい。
【0050】
次に、図4(e)に示すように、型31を、硬化したレンズ部材30から剥がす。これにより、レンズ部材30の表面に、各画素に対応して凸レンズ30R,30G,30Bが形成される。
【0051】
なお、凸レンズ30R,30G,30Bが樹脂で形成される場合には、レンズの形状が損傷しないように、無機からなる第2保護層(不図示)をレンズの上に有することが望ましい。この第2保護層は、保護層40と同様の材料、方法で形成することができる。
【0052】
(実施形態2)
図5は、本実施形態の表示装置の部分断面模式図である。実施形態1は、レンズの曲率半径を各色で異ならせて集光特性を制御し、各有機EL素子の劣化特性の差を小さくする表示装置に関するものであった。これに対して、本実施形態では、レンズの屈折率を各色で異ならせて集光特性を制御し、各有機EL素子の劣化特性の差を小さくする表示装置に関する。
【0053】
一般的に、凸レンズの屈折率が大きくなるに従い、レンズの集光特性は大きくなる。このために、劣化速度が大きい(相対輝度の低下が速い)有機EL素子を有する画素には、集光特性が大きくなるように屈折率の大きな凸レンズを設け、劣化速度が小さい(相対輝度の低下が遅い)有機EL素子を有する画素には、屈折率の小さな凸レンズを設ける構成とする。
【0054】
具体的にG素子、R素子、B素子の順に劣化速度が大きくなる場合を考える(G素子の劣化速度<R素子の劣化速度<B素子の劣化速度)。この場合、図5に示すように、G素子、R素子、B素子の順に、凸レンズの屈折率を大きくしている(G素子の凸レンズの屈折率<R素子の凸レンズの屈折率<B素子の凸レンズの屈折率)。この構成により、屈折率が大きく集光特性の大きいレンズが設けられたB素子を有する画素は、正面輝度が大きくなり、供給する電流密度を小さくすることができ、劣化を抑制することができる。このため、B素子の劣化速度が小さくなり、長時間を駆動しても、相対輝度の低下が抑えられ、G素子の劣化特性に近づけることができる。同様に、R素子を有する画素も、G素子の劣化特性に近づけることができる。つまり、B素子、R素子の劣化特性は、G素子の劣化特性に近くなるので、赤色、緑色、青色の混色である白色を、所望の時間駆動した後でも、白色の色度ずれが抑制される。
【0055】
また、異なる複数の発光色を混色し所望の白色を表示する表示装置の場合は、各色の劣化特性のみならず、白色表示に必要な各色の発光輝度比(混色比)、発光効率、輝度半減寿命を考慮して、各画素に設けるレンズの屈折率を決定することがより望ましい。
【0056】
なお、本実施形態の表示装置も、実施形態1と同様の製造方法で作成することが可能である。また、本実施形態では、凸レンズの曲率半径は各画素で同じであってもよいが、各画素で異なっていてもよい。特に、実施形態1のように、劣化速度が大きい有機EL素子を有する画素には、曲率半径の小さい凸レンズを設け、劣化速度が小さい有機EL素子を有する画素には、曲率半径の大きい凸レンズを設ける構成にすることが望ましい。
【0057】
また、屈折率を制御する方法としては、レンズを形成する樹脂の屈折率で調整する方法がある。更には、レンズを形成する樹脂の中に無機材料を含有させて、その無機材料の屈折率や樹脂中の含有量を調整する方法がある。無機材料としては例えば、屈折率の大きな酸化チタン(2.90)、ITO(2.12)、硫化水銀(2.81)、コバルト緑(1.97)、コバルト青(1.74)などが挙げられる。
【0058】
(その他の実施形態)
上述したように、実施形態1、2とは異なる方法で集光特性を制御することが可能である。
【0059】
例えば、画素の領域のうちレンズが占める領域によって集光特性を制御する場合は、以下の構成であれば本発明の効果を有する。つまり、劣化速度が大きい有機EL素子を有する画素には、レンズが占める領域を大きくし、劣化速度が小さい有機EL素子を有する画素には、レンズが占める領域を小さくする構成であればよい。この構成により、発光領域(画素)から出射する光のうちレンズを透過する割合を調整することが可能になり、画素全体の集光特性が制御される。
【0060】
また、上述した構成では、劣化速度が小さい色の劣化特性に合わせるように、レンズを設ける構成であったが、劣化速度が大きい色の劣化特性に合わせるようにレンズを設ける構成であっても、白色の色度ずれを低減することができる。具体的には、以下の構成が挙げられる。
【0061】
すなわち、凸レンズを設ける構成と、凹レンズを設ける構成とを混在させて、集光特性を調整することもできる。凹レンズは、凸レンズを設ける構成よりも、さらに、レンズを設けない構成よりも集光特性が小さく、発散特性が大きい。この特性を利用して、劣化速度が小さい有機EL素子を有する画素には凹レンズを設け、劣化速度が大きい有機EL素子を有する画素には凸レンズを設けるようにしてもよい。
【0062】
また、凹レンズでは、曲率半径が小さいほど集光特性が小さくなる(発散特性が大きくなる)ことを利用して、凹レンズのみで画素の集光特性(発散特性)を制御することも可能である。つまり、劣化速度が小さい有機EL素子を有する画素には、曲率半径の小さい凹レンズを設け、劣化速度が大きい有機EL素子を有する画素には、曲率半径の大きい凹レンズを設ける構成であればよい。この構成であっても、各色の有機EL素子の劣化特性の差を小さくすることができる。
【0063】
本発明の表示装置としては、テレビ受像機、パーソナルコンピュータ、撮像装置、携帯電話の表示部、携帯ゲーム機が挙げられる。その他、携帯音楽再生装置、携帯情報端末(PDA)、カーナビゲーションシステム等が挙げられる。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
本実施例では、曲率半径の異なるレンズを用いて、各有機EL素子の劣化特性の差を小さくする例について、図4を用いて説明する。
【0065】
まず、ガラス基板上に、低温ポリシリコンTFTを形成し、その上に窒化シリコンからなる層間絶縁膜とアクリル樹脂からなる平坦化膜を、この順番で形成して、図4(a)に示す基板10を作成した。この基板10上にITO膜/AlNd膜をスパッタリング法にて38nm/100nmの厚さで形成した。続いて、ITO膜/AlNd膜を画素毎にパターニングし、第1電極11を形成した。
【0066】
第1電極11の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極11が形成された部分に開口(この開口部が画素に相当)が形成されるようにパターニングし絶縁層20を形成した。各画素のピッチを30μm、開口による第1電極11の露出部の大きさを10μmとした。そして、この製造物をイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄し、煮沸洗浄後、乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄し、以下の有機化合物層を真空蒸着により成膜した。なお、各有機化合物層の成膜時の真空度、蒸着レートは、1×10−4〜3.0×10−4Pa、0.2〜0.5nm/secであった。
【0067】
まず、正孔輸送層12として下記構造式の化合物1を、表示領域全体に、第1電極11の上に共通に87nmの厚さで成膜した。
【0068】
【化1】

【0069】
次に、蒸着マスクを用いて、赤色を発する画素となる部分に、赤色の発光層13RとしてCBPとIr(piq)を、重量比91:9、厚さ30nmになるよう共蒸着で成膜した。そして、蒸着マスクを用いて、緑色を発する画素となる部分に、緑色の発光層13GとしてAlqとクマリン6を、重量比99:1で厚さ40nmになるよう共蒸着で成膜した。そして、蒸着マスクを用いて、青色を発する画素となる部分に、青色の発光層13BとしてBAlqとペリレンを、重量比97:3、厚さ25nmになるよう共蒸着で成膜した。
【0070】
次に、表示領域全体に、共通の電子輸送層14としてBphenを、10nmの厚さで成膜した。さらに、その上に、共通の電子注入層(電子輸送層14の一部)として、BphenとCsCOを共蒸着(重量比90:10)して40nmの厚さで成膜した。
【0071】
次に、上述した製造物を、真空を破ることなくスパッタリング装置に移動し、第2電極15としてAgおよびITOをそれぞれ10nm及び50nmの厚さで順に成膜した。
【0072】
次に、図4(b)に示すように、窒化シリコンからなる保護層40を、SiHガス、Nガス、Hガスを用いたプラズマCVD法で成膜した。
【0073】
そして、図4(c)に示すように、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、樹脂材料30aとして粘度3000mPa・sの熱硬化性のエポキシ樹脂材料を、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、製品名SHOT MINI SL)を用いて塗布した。
【0074】
樹脂材料30aを熱硬化する前に、図4(d)のように、別途用意した凸レンズ30R,30G,30Bを成形するための型31を、樹脂材料30aの表面に押し当てた。押し当てる際、型31に形成してあるアライメントマークと基板10に形成してあるアライメントマークをあわせる事により位置決めを行なった。その結果、画素に合わせて凸レンズ30R,30G,30Bが形成された。型31は、画素ピッチと同じピッチで凹部が形成されており、型31の表面に離型剤としてフッ素系の樹脂をコートした。型31の、赤、緑、青の画素に対応する凹部の曲率半径は、それぞれ35μm、25.5μm、12μmであった。レンズ部材30の膜厚は20μmであった。
【0075】
ここで、クリーンルームおよびプロセス装置の環境によっては異物等が発生することを考慮して、樹脂材料30aで異物などを吸収して平坦化されるように、レンズ部材30の最小膜厚(最薄部における膜厚)は10μmとした。
【0076】
次に、型31を樹脂材料30aに押し当てた状態で、真空環境下で100℃の温度で15分間加熱し、樹脂材料30aを硬化させて、レンズ部材30を形成した。その後、レンズ部材30から型31を離して、図4(e)のように凸レンズ30R,30G,30Bを形成した。凸レンズ30R,30G,30Bの曲率半径は、それぞれ35μm、25.5μm、12μmであった。
【0077】
さらに、窒化シリコンからなる無機材料の保護層(不図示)を、SiHガス、Nガス、Hガスを用いたプラズマCVD法で成膜した。この保護層の膜厚は1μmであり、表示領域の全面を覆うように形成した。
【0078】
このようにして製造した本発明の表示装置の特性を評価し、その結果を表1にまとめて示す。表中の単素子の発光効率、単素子の輝度半減寿命は、各色の有機EL素子の特性を画素にレンズを設けない状態で評価した結果である。また、画素の輝度半減寿命は、駆動開始時に白色表示CIExy座標(0.310,0.329)に必要な電流で各画素を駆動させたときの、各画素の輝度が駆動開始時の輝度の半分になる時間のことである。また、1000h後の相対輝度、10000h後の相対輝度は、各画素において、駆動開始時の輝度を1としたときの相対輝度で示されている。また、10000h後のδu’v’は、表示装置にて白色を10000h連続表示した後の表示色と、使用開始直後に表示した白色との色差を示している。
【0079】
【表1】

【0080】
表1より、本実施例1の表示装置は、レンズの集光効果を調整し、発光色間での劣化特性の差を小さくしている。そのため、各画素の輝度半減寿命の差が小さく、1000h、10000h時間駆動後の各色の相対輝度は、発光色間で大きな差異がない。さらに、10000h後のδu’v’も0.001であり、本実施例の表示装置は白色の色ずれが低減された良好な表示特性を示した。
【0081】
(実施例2)
本実施例は、実施例1に対して、赤色の有機EL素子を有する画素にはレンズを設けず、緑色の有機EL素子を有する画素には曲率半径31μmの凸レンズを、青色の有機EL素子を有する画素には曲率半径18μmの凸レンズを設けた点が異なる。
【0082】
このようにして作製した表示装置の特性を評価し、その結果を表2にまとめて示す。なお、単素子の色度が実施例1と異なるのは、成膜時の膜厚ばらつきによって、実施例1とは有機化合物層あるいは電極等の膜厚が異なったからであると考えられる。
【0083】
【表2】

【0084】
なお、白色表示時の必要電流比は、実施例1の青色画素の白色表示時の必要電流量を1として表されている。
【0085】
表2より、本実施例2の表示装置は、レンズの集光効果を調整し、発光色間での劣化特性の差を小さくしている。そのため、各画素の輝度半減寿命の差が小さく、1000h、10000h時間駆動後の各色の相対輝度は、発光色間で大きな差異がない。さらに、10000h後のδu’v’も0.01であり、本実施例の表示装置は白色の色ずれが低減された良好な表示特性を示した。
【0086】
(実施例3)
本実施例は、凸レンズの屈折率を調整することで、各有機EL素子の劣化特性の差を小さくする例である。
【0087】
本実施例は、実施例1とはレンズ部材の塗布工程とレンズの型31の表面形状が異なる以外は同じ工程で製造される。レンズ部材の塗布工程に関しては、実施例1と同様に窒化シリコンからなる保護層40を形成した後、図6(c)に示すように、ノズルディスペンサーを用いて酸化チタンの微粒子を混合したエポキシ樹脂30aR、30aG、30aBをそれぞれの画素の位置に塗布した。なお、赤色の画素に対応した位置のノズルはエポキシ樹脂を充填し、緑色、青色の画素に対応した位置のノズルに酸化チタン微粒子の混合比率の異なるエポキシ樹脂をそれぞれ充填して塗布した。緑色、青色の画素に対応した位置のノズルに充填されたエポキシ樹脂中の酸化チタンの割合は、それぞれエポキシ樹脂に対して22重量%、52重量%であった。
【0088】
次に、図6(d)に示すように、別途用意した型31を、樹脂部材30aの表面に押し当てることで凸レンズを形成した。本実施例の型31は、画素ピッチと同じピッチで凹部が形成され、且つ、レンズ30R、30G、30Bの表面形状は同一形状であった。
【0089】
次に、型31を樹脂材料30aR、30aG、30aBに押し当てた状態で、真空環境下で100℃の温度で15分間加熱し、樹脂材料30aR、30aG、30aBを硬化させて、レンズ部材30を形成した。その後、レンズ部材30から型31を離して、図6(e)のように凸レンズ30R,30G,30Bを形成した。凸レンズ30R,30G,30Bの曲率半径は、すべて同じ25μmであった。
【0090】
凸レンズ30Rは屈折率1.54のエポキシ樹脂からなり、凸レンズ30G、30Bは、屈折率1.54のエポキシ樹脂中に屈折率2.9の酸化チタンの微粒子が混合され他構成であった。酸化チタンの微粒子を混合する、あるいは、混合比率を変えることで、レンズの屈折率をR素子、G素子、B素子の順に大きくした(R素子の凸レンズの屈折率<G素子の凸レンズの屈折率<B素子の凸レンズの屈折率)。
【0091】
このようにして作製した表示装置の特性を評価し、その結果を表3にまとめて示す。
【0092】
【表3】

【0093】
表3より、本実施例3の表示装置は、レンズの集光効果を調整し、発光色間での劣化特性の差を小さくしている。そのため、各画素の輝度半減寿命の差が小さく、1000h、10000h時間駆動後の各色の相対輝度は、発光色間で大きな差異がない。さらに、10000h後のδu’v’も0.01であり、本実施例の表示装置は白色の色ずれが低減された良好な表示特性を示した。
【0094】
(比較例1)
本比較例は、各画素のいずれにもレンズを設けない表示装置の例であり、その他の構成は実施例1と同じである。なお、単素子の色度が実施例1と異なるのは、成膜時の膜厚ばらつきによって、実施例1とは有機化合物層あるいは電極等の膜厚が異なったからであると考えられる。
【0095】
【表4】

【0096】
表4より、本比較例1の表示装置は、輝度半減寿命の差が大きく、10000h後のδu’v’は、許容限界の0.020を大きく上回っている。この表示装置において、10000h後の白色表示では、オレンジ色に視認された。
【符号の説明】
【0097】
1 画素
11 第1電極
13R,13G,13B 発光層
15 第2電極
30R,30G,30B レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光色の異なる複数の画素からなる画素ユニットが複数配列された表示装置であって、
前記画素は、有機EL素子を備え、
前記画素ユニットには、前記画素の発光色ごとの有機EL素子における劣化特性の差が小さくなるようにレンズが設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
劣化速度が大きい有機EL素子を備える画素には、劣化速度が小さい有機EL素子を備える画素よりも集光特性が大きいレンズが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
劣化速度が大きい有機EL素子を備える画素には、集光特性のあるレンズが設けられ、劣化速度が小さい有機EL素子を備える画素には、レンズが設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記集光特性は、凸レンズの曲率半径、又は凸レンズの屈折率によって制御されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の表示装置。
【請求項5】
劣化速度が大きい有機EL素子を備える画素には、劣化速度が小さい有機EL素子を備える画素よりも曲率半径が小さい凸レンズが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
劣化速度が大きい有機EL素子を備える画素には、劣化速度が小さい有機EL素子を備える画素よりも屈折率大きい凸レンズが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
前記複数の画素は、赤色又は緑色又は青色を発する画素を有し、
劣化速度が大きい有機EL素子は、青色を発する有機EL素子であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−109213(P2012−109213A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187167(P2011−187167)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】