説明

表示装置

【課題】高い発光効率と良好な表示性能を兼ね備えた表示装置を提供する。
【解決手段】複数の画素を有し、各画素は第1の電極11、発光層14、15、16及び第2の電極18を備えた有機発光素子を有し、発光層14、15、16で発光した光を出射方向を変化させて外部へ出射させる光学手段20aを有し、光学手段20aを有する画素においては、発光層14、15、16と第1の電極11の間の光学距離、または第2の電極18の間の光学距離が調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子(有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子)を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のCRTやLCD等に替わる表示装置として、異なる複数の発光色を示す有機発光素子を用いた表示装置が注目されている。有機発光素子は、陽極と陰極との間に発光層を含む複数の有機化合物層が挟持されてなり、自発光デバイスであるため、これを用いた表示装置は、コントラストや色再現性に関して優れた性能を示す。
【0003】
この有機発光素子は、機能が異なる複数の薄膜を積層した薄膜発光素子である。そのため、薄膜発光素子に特徴的な全反射効果による光の閉じ込め作用が生じ、素子内部で生じた光のうち、素子外部へ取り出せる発光は20〜30%程度であり、発光の外部への取り出し効率が低いという問題がある。
【0004】
この問題を解決すべく、例えば、有機発光素子の発光取り出し面側にマイクロレンズを設け、効率よく発光を素子の外部へ取り出すことを可能とした表示装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−039500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の技術にあっては、マイクロレンズにより発光効率を向上させる方法に関して記載されているものの、マイクロレンズ付き有機発光素子を表示装置に適用した場合の色再現性という表示性能に関する検討はされていない。
【0007】
そこで本発明は、マイクロレンズ付き有機発光素子を利用し、高い発光効率と良好な表示性能を兼ね備えた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0009】
即ち、本発明の表示装置は、複数の画素を有し、
各画素は第1の電極と発光層と第2の電極とを備えた有機発光素子を有し、
前記複数の画素は有機発光素子で発光した光の一部を出射方向を変化させて外部へ出射させる光学手段を有し、
前記複数の画素において、有機発光素子の発光位置と第1の電極の間の光学距離L1、前記発光位置と第2の電極の間の光学距離L2は、下記の式を満たすことを特徴とする。
2L1/λ+φ1/2π=1 ・・・(A)
2>0かつ2L2/λ+φ2/2π<1 ・・・(B)
【0010】
ここで、λは有機発光素子から出射される光のスペクトルの最大ピーク波長、φ1は前記発光位置で発光した光が前記第1の電極で反射する際の位相シフト、φ2は前記発光位置で発光した光が前記第2の電極で反射する際の位相シフトを表している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機発光素子は、最も低次の光学干渉条件に設定されるため、光学手段により色純度の良い発光を色再現性よく表示装置の外部へ取り出すことが可能となる。したがって、高い発光効率と良好な表示性能を兼ね備えた表示装置を提供できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る表示装置の一実施形態の層構成を示す部分断面図である。
【図2】従来の表示装置の層構成を示す部分断面図である。
【図3】本実施形態の表示装置の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されない。なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。
【0014】
<表示装置の構成>
まず図1を参照して、本発明に係る表示装置の一実施の形態について説明する。図1は、本発明に係る表示装置の一実施形態の層構成を示す部分断面図である。図2は、従来の表示装置の層構成を示す部分断面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の表示装置は、基板10上に形成された有機発光素子の上面から光を取り出すトップエミッション型の表示装置である。
【0016】
本実施形態の表示装置は、基板10と、基板10上にマトリクス状に形成され、表示領域を構成する複数の画素と、を備えている。ここで画素とは、1つの発光素子に対応した領域を意味する。本実施形態では、一例として、上記複数の画素のそれぞれに赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光を示す有機発光素子が形成された表示装置を示す。表示装置の発光色としては、少なくとも2色以上であれば特に制限はなく、どのような発光色の有機発光素子も適用することができる。
【0017】
これら有機発光素子同士の間には、画素間を分離する画素分離層12が設けられている。また、有機発光素子の夫々は、アノード電極11とカソード電極18との間に配置されている。一対の電極11,18間には、正孔注入・輸送性の有機化合物層13、赤色発光の発光層を含むパターン層14、緑色発光の発光層を含むパターン層15、青色発光の発光層を含むパターン層16、及び電子注入・輸送性の有機化合物層17を備えている。以下、パターン層14,15,16は、それぞれ発光層14,15,16と略記する。具体的には、基板10の上に、画素毎にパターニングされたアノード電極11が形成さている。このアノード電極11上に、正孔注入・輸送性の有機化合物層13、発光層14,15,16が形成され、該発光層14,15,16の上に電子注入・輸送性の有機化合物層17が形成され、更にカソード電極18が形成されている。
【0018】
アノード電極(第1の電極)11は、例えば、Ag等の高い反射率をもつ導電性の金属材料から形成されている。またアノード電極11は、そのような金属材料から成る層とホール注入特性に優れたインジウムチタン酸化物(ITO;Indium−Tin−Oxide)などの透明導電性材料から成る層との積層体により構成してもよい。
【0019】
一方、カソード電極(第2の電極)18は、複数の有機発光素子に対して共通に形成されており、また発光層14,15,16で発光した光を素子外部に取り出し可能な半反射性、或いは光透過性の構成を有している。具体的には、素子内部での干渉効果を高めるためにカソード電極18を半反射性の構成とする場合、カソード電極18はAgやAgMgなどの電子注入性に優れた導電性金属材料から成る層を2〜50nmの膜厚で形成することにより構成されている。なお半反射性とは、素子内部で発光した光の一部を反射し、一部を透過する性質を意味し、可視光に対して20〜80%の反射率を有するものをいう。また、光透過性とは、可視光に対して80%以上の透過率を有するものをいう。
【0020】
また、正孔注入・輸送性の有機化合物層13は、正孔注入性及び輸送性を備える有機化合物の単層又は複数の層からなる。正孔注入・輸送性の有機化合物層13の構成例としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層の各単層や、正孔注入層と正孔輸送層の積層構成等が挙げられる。正孔注入・輸送性の有機化合物層13を構成する材料には、公知の材料を使用することができる。
【0021】
赤色発光を示す発光層14、緑色発光を示す発光層15、青色発光を示す発光層16としては、特に制限はなく公知の材料を適用する事が可能である。例えば、発光性とキャリア輸送性とを兼ね備える材料の単一層や、蛍光材料、燐光材料等の発光性材料をキャリア輸送性のホスト材料の混合層を適用することができる。
【0022】
また、電子注入・輸送性の有機化合物層17は、電子注入性、輸送性を備える有機化合物の単層又は複数の層からなる。電子注入・輸送性の有機化合物層17の構成例としては、例えば、電子注入層、電子輸送層の各単層や、電子注入層と電子輸送層の積層構成等が挙げられる。電子注入・輸送性の有機化合物層17を構成する材料には、公知の材料を使用することができる。
【0023】
基板10上には、各有機発光素子を独立に駆動可能なように画素回路が形成されている。これらの画素回路は、不図示の複数のトランジスタから構成されている。このトランジスタが形成された基板10は、トランジスタとアノード電極11とを電気的に接続するためのコンタクトホールが形成された不図示の層間絶縁膜に覆われている。さらに、層間絶縁膜上には、画素回路による表面凹凸を吸収し、表面を平坦にするための不図示の平坦化膜が形成されている。
【0024】
また、カソード電極18の上には、空気中の酸素や水分から有機発光素子を保護するために保護層19が形成されている。
【0025】
保護層19の光取出し側(図1の上方向)には、光学手段として、上記発光層で発光した光の少なくとも一部を出射方向を変化させて外部へ出射させる集光作用のある複数のマイクロレンズ20aがアレイ状に形成されている。
【0026】
マイクロレンズ20aは、例えば、樹脂材料などを加工することにより形成されている。具体的には、マイクロレンズは型押しなどの方法により形成可能である。なお、マイクロレンズの集光特性は、発光面積、マイクロレンズの曲率、発光面からレンズまでの距離に依存し、これらをパラメータとしてマイクロレンズを設計することが好ましい。ここで、発光面積と光の集光特性との依存性は次のことが挙げられる。すなわち、マイクロレンズ中央直下で発光した光は正面方向に集光しやすいが、マイクロレンズ周辺直下で発光した光は正面方向に集光し難いのである。また、マイクロレンズはフォトリソグラフィ技術によっても形成可能である。また、マイクロレンズ材を光感光性の材料を用いて、フォトリソグラフィによりパターニングした後アニールによりリフローさせてレンズ形状にする方法でもよい。また、光感光性の材料を用いて、グレーマスクを用いてフォトリソグラフィにより直接レンズ形状にする方法でもよい。また、マイクロレンズ材の上にレジストを塗布して、レジストをレンズ形状に加工した後、異方性のエッチング法によりマイクロレンズ材にレジストのレンズ形状を転写させる方法でもよい。あるいは別の基板にマイクロレンズを加工した後、発光素子上に貼り合わせてもよい。
【0027】
ここでの「集光」は、マイクロレンズの存在しない平坦な取り出し表面での光線の出射特性に比べて集光しているということを意味している。通常のレンズと同様に集光レンズであっても焦点距離より短い位置から発光した光はレンズを通しても平行光よりも発散する。ただし、その場合もマイクロレンズの存在しない場合に比べて、光は集光の方向に屈折することになる。
【0028】
マイクロレンズ20aは、画素毎(有機発光素子毎と同義)に個別に形成されていることが好ましいが、一画素に複数のマイクロレンズを形成したり、複数の画素に一つのマイクロレンズを形成してもよい。また、マイクロレンズ20aの形状によっては、その上に保護層を形成してもよい。
【0029】
<表示装置の作用及び干渉条件>
以上のような構成により、例えば、一画素に一つのマイクロレンズ20aがある場合に、有機発光素子から出射された光は、カソード電極18を透過する。次いで保護層19、マイクロレンズアレイ20を透過して、有機発光素子の外部へ出射される。
【0030】
ここで、マイクロレンズ20aが形成されていない場合(図2参照)には、発光層から斜めに出射された光21は、保護層19から出射する際に、さらに斜めになって出射する(23の方向)。これに対して、図1のように、マイクロレンズ20aが形成されている構成では、マイクロレンズを透過して外部へ出射する光22は、マイクロレンズ20aが存在しない場合に比べて、出射角度が基板垂直方向に近づく(22の方向)。したがって、マイクレロレンズ20aが存在しない場合に比べて、マイクロレンズ20aが存在する場合の方が基板垂直方向への集光効果が向上する。すなわち、表示装置としては、正面方向における光の利用効率を高めることができる。
【0031】
また、マイクロレンズ20aが存在する構成においては、レンズの曲率により、発光層から斜めに出射された光21の出射界面(レンズ20aと外界との境界)への入射角度は、垂直に近くなる。そのため、界面部で全反射する光量が減少し、より多くの発光を表示装置の外部へ取り出すことが可能となる。すなわち、光取り出し効率も向上する。
【0032】
続いて、本実施形態の表示装置における有機発光素子の光学干渉条件について説明する。一般的に有機発光素子を構成する各層の膜厚は、数十nm程度であり、各層の膜厚(d)と各層の屈折率(n)を掛け合わせた光学距離(nd積)は、可視光(λ=350nm以上780nm以下)波長の数分の1程度に相当する。そのため、有機発光素子の内部では、可視光の多重反射や干渉が顕著に現われる。この干渉効果によって強められる波長λ(光学干渉による強めあい波長λ)は、下記(1)式のように定まる。即ち、発光位置と第1の電極の間の光学距離L1、第1の電極で光が反射する際の位相シフトφ1といった有機発光素子の構造パラメータと、光学干渉の次数m1により定まる。なお、光学干渉による強めあい波長λは、有機発光素子から取り出される光のスペクトルの最大ピーク波長である。
【0033】
λ=2L1cosθ/(m1−φ1/2π)(m1は正の整数、θは発光の放射角度)
・・・(1)
【0034】
なお、正面、つまり、放射角度θが0°では、下記(2)式となる。
2L1/λ+φ1/2π=m1・・・(2)
【0035】
なお、この界面での位相シフトφ1は、界面を形成する2つの材料のうち、光が入射する側にある材料を媒質I、他方の材料を媒質IIとし、それぞれの光学定数を(nI,kI)、(nII,kII)とすると、下記(3)式で表すことができる。なお、これらの光学定数は、例えば分光エリプソメーター等を用いて測定することができる。
【0036】
φ1=2π−tan-1(2nIII/(nI2−nII2−kII2))・・・(3)
【0037】
有機発光素子からの発光は、発光層内部でキャリアが再結合して放出される発光に、光学干渉の効果を重畳させたものである。そのため、各層の光学距離や位相シフトを変化させると、上記(1)もしくは(2)式における強めあい波長が変化するため、有機発光素子の発光特性を調整することが可能となる。
【0038】
まず、本実施形態の表示装置が備える有機発光素子のアノード電極11と発光位置との間の光学干渉条件について説明する。アノード電極11と発光位置との間の発光が干渉する場合、その位相シフト量としては、発光がアノード電極11で反射する場合を考慮する。Al系合金を用いた実測から、上記(3)式より、その位相シフト量は、3.84(rad)(220.0度)と見積もられる。本発明の明細書の説明では、位相シフトはこの3.84(rad)(220.0度)を用いて説明する。しかし、この位相シフトは金属材料に大きく依存しており、さらにその形成方法・装置などにより変化するため、正確には使用する装置において形成した膜の光学特性を実測して位相シフトを算出する必要がある。
【0039】
このとき、発光の放射角度0°(基板の法線方向からの角度)にて強め合い波長を460nmとするには、上記(1)より、アノード電極11と発光位置との間の光学距離L1を、m1=1では89nm、m1=2では319nm、m1=3では549nmにそれぞれ設定する。上記(2)式より、この強めあい波長は発光の放射角度により異なる。表1、表2及び表3には、それぞれの光学距離における放射角度と強め合い波長の関係を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
表1、表2及び表3より、放射角度とm1値が大きくなるにつれて、強め合い波長は、素子正面方向へ放射される発光の強め合い波長よりも、短波長シフトする。
【0044】
次に、マイクロレンズ20aに入射する発光の角度(放射角度)について考えてみる。本実施形態では、保護層19上にマイクロレンズ20aを形成する。保護層19としては、有機発光素子を空気中の酸素や水分から保護するため、例えば、窒化珪素などの無機化合物が適用される。また、マイクロレンズ20aは、主に樹脂材料で構成されることから、保護層19とマイクロレンズ20aとの間には屈折率差がある。一般に、窒化珪素のような無機化合物は、樹脂材料よりも高屈折率であるたため、保護層19とマイクロレンズ20aとの界面では、全反射を生じる。この全反射が生じる臨界角θcは、保護層19の屈折率n1とマイクレンズ20aの屈折率n2を用いて下記(4)式より算出できる。
【0045】
【数1】

【0046】
例えば、保護層19の屈折率を1.80、マイクロレンズ20aの屈折率を1.68とすると、臨界角は69°となる。そのため、有機発光素子から生じた発光のうち、放射角度69°までの光がマイクロレンズ20aに入射することとなる。ところで、マイクロレンズ20aを設けず保護層19から表示装置の外部へと発光を直接出射させる場合、外部環境の屈折率を1とし、その臨界角は、上記(4)式でn1=1.80(保護層の屈折率)、n2=1.00(空気の屈折率)として約34°となる。すなわち、マイクロレンズ20aを設けることで、マイクロレンズを備えていない表示装置では利用できなかった、放射角度34°〜69°までの発光を利用することができる。このような発光の利用効率が高まることもマイクロレンズ搭載のメリットとなる。
【0047】
ガラスキャップ封止を採用する場合には、マイクロレンズ20aの下に保護層は必須ではないため、OLED層からマイクロレンズまでの屈折率差による全反射を抑制することが可能となる。この場合、マイクロレンズ20aの大きさ領域全域で光が到達することになる。
【0048】
マイクロレンズに到達した光は、マイクロレンズと外界との境界の角度次第で外界へ取り出すことはマイクロレンズ設計により可能である。
【0049】
ところで、保護層からマイクロレンズへ入射可能な臨界角は69°として、有機化合物層と保護層との屈折率差が小さいことから表1、表2及び表3の放射角度はおおよそカソード上の保護層内の放射角度と置き換えてみる。マイクロレンズを搭載した表示装置において、有機発光素子の光学距離を89nmとすると、マイクロレンズ20aに入射する発光の強め合い波長は、表1の放射角0度から70度付近までとなる。m1=1の場合は460nmから157nm、m1=2の場合は129nmから44nm、m1=3の場合は75nmから26nmとなる。一般に人の目で視認される可視光の波長領域としては、380nmから780nmであることから、この有機発光素子の光学距離L1を89nmに設定した場合に表示装置の視認者から認識される発光は、主にm1=1条件を満たし強められる発光に限られる。m1=2、3条件にてマイクロレンズに入射する強めあい波長は、可視波長以外の光の強め合い条件である。一般に表示装置に適用される表示装置は、可視波長領域に発光を示す発光層を備えていることから、m1=2、3条件のような波長の強めあい条件は、有機発光素子の発光特性には影響しない。したがって、m1=1条件における光学干渉条件により、その発光特性が決定される。
【0050】
続いて、有機発光素子の光学距離を319nmとすると、マイクロレンズ20aに入射する発光の強め合い波長は、表2の放射角0度から70度付近までとなる。m1=1の場合は1643nmから562nm、m1=2の場合は460nmから157nm、m1=3の場合は267nmから91nmとなる。この場合、可視波長領域の発光に影響するのは、m1=2条件で強められる発光と、m1=1条件の放射角度約65°〜70°で強められる発光である。このm1=1条件で強められる発光は、装置正面におけるm1=2条件の強め合い波長460nmよりも長波長である。
【0051】
また、有機発光素子の光学距離を549nmとすると、マイクロレンズ20aに入射する発光の強め合い波長は、表3より同様となる。m1=1の場合は2872nmから967nm、m1=2の場合は791nmから271nm、m1=3の場合は460nmから157nmとなる。この場合、可視波長領域の発光に影響するのは、m1=3条件と、m1=2条件の放射角度5°〜60°で強められる発光となる。このうち、m1=2条件の25°〜50°で強められる発光は、装置正面におけるm1=3条件での強め合い波長460nmよりも長波長である。
【0052】
このように、有機発光素子の光学距離により、装置正面での強め合い波長が460nmで同一にもかかわらず、マイクロレンズ20aに入射する発光の強め合い波長が変化する。表4には、上述したマイクロレンズ20aへ入射する発光の内、可視光波長領域に相当する波長範囲をまとめて記す。
【0053】
【表4】

【0054】
上記3つの表示装置の比較において、光学距離が最も短く89nmとした表示装置は、その他の表示装置に比べて、マイクロレンズ20aに入射する発光の強め合い波長域が狭い。また、光学干渉効果と次数m1の関係について考えてみると、一般的に、次数m1が小さいほど、光学干渉による強め合い効果が高いことが知られている。そのため、表2、表3に記したm1=2、3の有機発光素子では、より低次な干渉条件も同時に満たすため、正面よりも長波長で、より強い強め合い効果が合わせて生じる。このような表示装置では、次数m1=1とした表示装置に比べて、より多様な波長や強度の光がマイクロレンズに入射することから、発光の色純度が低下する。さらに、斜め視野角において、低次の干渉も混在してくるので、色の変化が複雑になる。
【0055】
そこで、本実施形態の表示装置は、(2)式においてm1=1の条件を満たすように発光位置と第1の電極との間の光学距離を設定する。これにより、発光の色純度が高く、良好な色再現性を示す表示装置が実現できる。つまり、発光位置と第1の電極の間の光学距離L1は、下記(5)式を満たすようにすればよい。
2L1/λ+φ1/2π=1・・・(5)
【0056】
φ1は第1の電極で発光が反射する際の位相シフト、λは有機発光素子から取り出される光のスペクトルの最大ピーク波長である。
【0057】
また、有機発光素子の光学距離をm1=1の条件に設定することは、同一の強めあい波長に設定する場合において、m1>1の条件に比べ、より強い光学干渉効果による強め合い効果を利用できる。そのため、有機発光素子の発光効率が向上するメリットも合わせて実現できる。これにより、発光の色純度が高く、より明るい、すなわち良好な色再現性を備え、低消費電力な表示装置が実現できる。
【0058】
なおここでの説明では、アノード電極11と発光位置との間の光学距離を取り扱ってきたが、発光領域が発光層内部で拡がりや、分布を持つ場合などは、干渉条件を満たす光学距離を、発光領域の発光層内部での分布を考慮して、適宜光学距離を調整する。
【0059】
また、成膜時に有機化合物層などの膜厚がばらつく場合などを考慮すると、光学距離L1は式(5)を満たす値から微小値ずれていてもよく、具体的には、式(5’)を満たしていれば本発明の効果を得ることができる。
0.9<2L1/λ+φ1/2π<1.1・・・(5’)
【0060】
このように本実施形態の表示装置は、発光のマイクロレンズ20aへの入射界面における臨界角と光学干渉による強め合い波長の角度依存性、光学干渉条件の次数による強めあい効果の変化に着目している。そして、表示装置を構成する有機発光素子が、所望の強め合い波長において、m1=1の光学干渉を満足するように、その光学距離を設定している。これにより、有機発光素子の色純度と発光効率が向上できるため、色再現性がよく、また明るく低消費電力な表示装置が提供できる。
【0061】
なお、マイクロレンズを設けない場合、34度までの発光光が表示装置の保護層から外へ出射される。この場合、光学距離319nmであってもm1=2のみの光だけが視認される。よって、光学距離89nm、光学距離319nmの両者において良好な色の視野角特性が得られる。
【0062】
なお、設定する強め合い波長の制限は特になく、可視波長領域で発光する発光層を有する有機発光素子であれば適用することができる。RGB3原色系や、3原色+シアンや、イエローと言った4原色系表示装置にも適用することができる。
【0063】
また本実施形態の光学干渉条件は、表示装置を構成する全ての有機発光素子に適用してもよいし、一部の素子に適用してもよい。さらに、発光色毎に本条件の適用を使い分けることもできる。特に発光波長がより短波な青色発光素子の場合、設定する強め合い波長も短波化するため、その光学干渉条件を満足する光学距離も短くなる。例えば、光学距離を短くすることを有機発光素子の各層膜厚で調整する場合、薄膜化による有機発光素子の信頼性や、駆動安定性が低下する場合がある。このような場合、青色発光素子には、m1>1の干渉条件を適用し、それ以外の発色を示す発光素子にm1=1の干渉条件を適用することも可能である。
【0064】
また、カソード電極18と発光位置との間の光学干渉条件について説明する。この場合、その位相シフト量φとしては、発光がカソード電極18で反射する場合を考慮する。なお、この位相シフト量をφ2とすると、φ2は上記の式(3)のφ1をφ2で置き換えたものである。カソード電極18をAg薄膜系で構成した場合、位相シフト量φ2は、4.21(rad)(241.4度)と見積もられる。
【0065】
カソード電極18は、光出射側に位置する半透明膜であり、その反射率は、カソード電極18の膜厚にもよるが、最大でも40%程度である。そのため、70%以上の高い反射率を備えるアノード電極11側の干渉条件に比べ、発光への影響度が少ないが、様々な光学干渉条件を満たす光学距離の設定が可能である。特に、好ましくは、カソード電極18と発光位置との間の光学距離L2を、有機発光素子の発するスペクトルの最大ピーク波長λに対し、以下の式を満たすことがよい。
2>0、かつ2L2/λ+φ2/2π<1・・・(6)
【0066】
つまり、カソード電極18と発光位置との間の光学干渉条件は、アノード電極11側の強め合い波長よりも短い波長を強めるように設定される。たとえば、波長520nmの有機発光素子において、式(6)を満たすように、光学距離L2を33.6nmに設定した場合、位相シフト量4.21(rad)から見積もると
2L2/Λ+φ2/2π=1
の干渉条件を満たす。つまり、204nmの波長の光を強めることとなる。これは、アノード電極11側での干渉で強められる光よりも短い波長の光を強める条件である。
【0067】
このように、カソード電極18側の光学干渉条件を1よりも小さい次数とすることで、マイクロレンズへ入射する発光の強め合い波長領域をより狭くでき、より色純度が高い表示装置を実現することが可能となる。
【0068】
また、このようにカソード電極18側の光学距離を短く設定しておくことは、アノード電極11―カソード電極18間のトータル光学距離を短く設定できるため好ましい。
【0069】
また、本発明は、表示装置の外部へ発光が出射する部材への入射界面における臨界角と光学干渉強め合い波長の角度依存性の関係を満足していれば、発光が表示装置外部へ出射する部材としては、特に制限はない。マイクロレンズの他、プリズム構造部材や、凹凸構造部材、反射防止部材等のあらゆる部材を設ける場合に、適用することが可能である。
【0070】
<表示装置の製造工程>
次に、図2を参照して本実施形態の表示装置の製造工程について説明する。図3は、本実施形態の表示装置の製造工程を示す説明図である。なお、カソード電極18の形成までは周知な製造工程であるため、ここでは説明を省略する。
【0071】
まず図3(a)に示すように、トップエミッション型の有機発光素子が複数形成された基板10を用意する。この有機発光素子は、アクティブマトリクス型の画素回路が形成された基板10の上に、層間絶縁膜、平坦化膜を形成している。さらに、アノード電極11、画素分離層12、正孔注入・輸送性の有機化合物層13、赤色、緑色、青色の各発光層14,15,16、電子注入・輸送性の有機化合物層17、カソード電極18を形成している。
【0072】
次に、図3(b)に示すように、表示領域の全域に第1の保護層19を形成する。第1の保護層19は、その上に形成される第2の保護層を構成する樹脂材料が含有する水分が有機発光素子に接触することを遮断するための、言わば封止機能を有する部材である。そのため、第1の保護層19は光の透過率が高く、防湿性に優れた部材であることが好ましく、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜から構成されることが好ましい。
【0073】
次に、図3(c)に示すように、第1の保護層19上に第2の保護層20を表示領域の全域に形成する。第2の保護層20は樹脂材料からなる。また、第2の保護層の膜厚は、エッチング残渣などのゴミを十分にカバーすることが可能であると共に画素分離膜12に生じる凹凸を平坦化することが可能なように、10μm〜100μm程度とする。樹脂材料としては、例えば、水分含有が少ない熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化型樹脂を用いることができる。熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂を用いる場合は、成膜方法として、スピンコート法、ディスペンス法などを用いることが可能である。また、第1の保護層19上に、膜厚10μm〜100μm程度の熱可塑性樹脂のフィルムを真空下にて貼りつける方法も用いることができる。具体的な樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ブチル樹脂が好適に用いられる。
【0074】
次に、図3(d)に示すように、マイクロレンズ20aを成形するための型25を用意し、樹脂材料に気泡が混入しないように、樹脂材料型25を樹脂材料に対して押圧する。型25の形状を各色発光画素毎に変更しておき、発光画素毎設けるレンズの集光度を調整する。
【0075】
型25は、一般的な金属で形成することができるが、樹脂材料に光硬化型樹脂を用いる場合は、光を透過させる必要があるため石英基板から形成されることが好ましい。また、型25の樹脂材料に対する剥離性を高めるために、型25の表面に、フッ素樹脂などの膜を形成してもよい。
【0076】
樹脂材料に熱硬化型樹脂を用いる場合は、型25における各マイクロレンズの凸部の頂点が、対応する画素の中心とほぼ一致した状態で、樹脂材料を80℃に加熱することにより硬化させる。硬化温度については、一般的な有機発光素子を構成する有機化合物の耐熱温度が100℃程度であるため、80℃程度の硬化温度が好ましい。
【0077】
次に、図3(e)に示すように、型25を、硬化した樹脂材料から剥がす。これにより、第2の保護層20の表面に、各画素に対応してマイクロレンズ20aが形成される。
【0078】
また、必要に応じ、マイクロレンズ20aの上に保護層を設けても良い。その場合は、マイクロレンズ20a上の保護層の封止機能が損なわれないように、またマイクロレンズ20aが所望の集光機能を示すように、型25の表面形状を設計、加工されことが好ましい。
【0079】
なお、マイクロレンズ20a上に設ける保護層としては、光の透過率が高く、防湿性に優れた部材が好ましく、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン等を適用することができる。またこの保護層は、マイクロレンズ20aの下に設ける保護層19と同じ材質であっても、異なる材質であってもよい。
【0080】
以上の様に本実施形態は、光学手段を有する画素において、上記の式(5)を満たす。
【0081】
このように有機発光素子は、最も低次の光学干渉条件に設定されるため、光学手段により色純度の良い発光を色再現性よく表示装置の外部へ取り出すことが可能となる。したがって、高い発光効率と良好な表示性能を兼ね備えた表示装置を実現することができる。
【0082】
また、有機発光素子からの発光が、光学手段としてのマイクロレンズに入射する界面で全反射しない角度の上限である臨界角以上であると、平坦表面に比べて取り出させる光量が増加し、消費電力の低減を図ることができる。さらに、光学手段として集光作用のあるマイクロレンズを採用しているので、正面輝度を高くすることができる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。レンズ形成手法はさまざまな手法を適用できる。
【実施例】
【0084】
次に、本発明に係る表示装置及びその製造方法の実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。
【0085】
<実施例1>
図3を参照して、本実施例の表示装置の製造方法を説明する。まず、ガラス基板上に、低温ポリシリコンTFTで画素回路(不図示)を形成し、その上にSiNからなる層間絶縁膜とアクリル樹脂からなる平坦化膜を、この順番で形成して図3(a)に示す基板10を作成した。この基板10上にITO膜/AlNd膜をスパッタリング法にて10nm/100nmの厚さで形成した。続いて、ITO膜/AlNd膜を画素毎にパターニングし、アノード電極11を形成した。
【0086】
この上にアクリル樹脂をスピンコートした。次に、アクリル樹脂をフォトリソグラフィ技術により、アノード電極11が形成された部分に開口(この開口部が画素に相当)が形成されるようにパターニングし、画素分離層12を形成した。各画素のピッチを30μm、開口によるアノード電極11の露出部の大きさを10μmとした。これをイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄し、次いで、煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄してから有機化合物を真空蒸着により成膜した。
【0087】
まず、始めに正孔注入・輸送性の有機化合物層13をすべての画素に共通に39nmの厚さで成膜した。この際の真空度は1×10-4Pa、蒸着レートは0.2nm/secであった。
【0088】
次に、シャドーマスクを用いて、赤色発光画素、緑色発光画素に、正孔注入・輸送性の有機化合物層13を、それぞれ18nm、7nmの厚さで成膜した。続いて、それぞれに発光画素へ赤色発光層、緑色発光層、青色発光層をそれぞれ厚さ25nm、20nm、10nmで成膜した。
【0089】
続いて、すべての画素に共通の電子注入・輸送層としてバソフェナントロリン(Bphen)とCs2CO3を共蒸着(重量比90:10)して5nmの厚さで形成した。蒸着時の真空度は3×10-4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。
【0090】
次に、上記ホール輸送層から電子注入層までの有機化合物層を成膜した基板を、真空を維持したままでスパッタ装置に移動し、カソード電極18として極薄Agとして12nmの厚さで成膜した。
【0091】
次に、図3(b)に示すように、窒化珪素からなる保護層19を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法により1μmの厚さで成膜した。その後、図3(c)に示すように、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・sの熱硬化性の樹脂材料(エポキシ樹脂)を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、製品名SHOT MINI SL)を用いて塗布した。
【0092】
樹脂材料を熱硬化する前に、図3(d)のように、別途用意したマイクロレンズ20aを成形するための型25を、樹脂材料の表面に押し当てた。押し当てる際、型25に形成してあるアライメントマークと基板に形成してあるアライメントマークをあわせることにより位置決めを行なった。その結果、画素に合わせてマイクロレンズ20aが形成された。型25は、画素ピッチと同じピッチで凹状に窪みが形成されており、その窪みの表面に離形剤としてテフロン(登録商標)系の樹脂をコートした。窪みの形状、すなわちマイクロレンズ20aの形状は、曲率25.5μmとした。マイクロレンズアレイの高さは、いずれも10μmであった。なお、このマイクロレンズは、レンズを搭載しない場合に比べて、正面輝度を3.55倍向上させる効果を備える。
【0093】
ここで、クリーンルームおよびプロセス装置の環境を考慮して、異物等があっても樹脂材料で平坦化することを目的としているので、マイクロレンズ20b部の最小膜厚(最薄部における膜厚)は10μmとした。
【0094】
上記のように型25を押し当てた状態で、真空環境下で100℃の温度で15分間加熱し、樹脂材料(エポキシ樹脂)を硬化させた。その後、樹脂から型25を離して、図3(e)のようにマイクロレンズ20aを形成した。
【0095】
このようにして製造した表示装置の特性を評価した。本実施例の表示装置の光学干渉条件と発光特性を表5にまとめて示す。尚、アノード電極11で発光が反射する際の位相シフトφ1は3.84(rad)(220.0度)、カソード電極18で発光が反射する際の位相シフトφ2は4.21(rad)(241.4度)であった。
【0096】
表中、カソード電極側次数とは、光学距離L2と位相シフトφ2と有機発光素子の発するスペクトルの最大ピーク波長λ用いて、2L2/λ+φ2/2π=m2を満たすとしたときのm2の値である。
【0097】
【表5】

【0098】
色度、色再現範囲は、取り出される光の全量の加重平均をしたもので、色度、色再現範囲の目安である。消費電力は、色度および効率から対角3インチ、縦横比3:4の有機ELパネルで、9.5V電源で全面の3分の1の領域を白の色度CIExy座標で(0.313、0.329)で250cd/m2の輝度で発光した場合の消費電力である。
【0099】
<比較例1>
本比較例の表示装置は、実施例1に対して光学干渉条件の次数を全ての発光画素でm1=2の条件とした。
【0100】
このようにして製造した表示装置の特性を評価した。本比較例の表示装置の光学干渉条件と発光特性を表6にまとめて示す。
【0101】
【表6】

【0102】
表6に示すように、実施例1と比べて、色純度が悪くなるので、結果として色再現範囲が狭くなってしまう。
【0103】
<比較例2>
本比較例の表示装置は、保護層19の上のマイクロレンズを設けない構成とした。それ以外は、実施例1と同様にして表示装置を作製した。
【0104】
このようにして製造した表示装置の特性を評価した。本比較例の表示装置の光学干渉条件と発光特性を表7にまとめて示す。
【0105】
【表7】

【0106】
表7に示すように、実施例1と比較して消費電力が高く、本発明のマイクロレンズによる集光及び光量アップの効果を示している。
【0107】
<比較例3>
本比較例の表示装置の各有機発光素子は、実施例1に対してm2>1の条件とした。つまり、各有機発光素子が2L2/λ+φ2/2π>1の条件を満たしている。
【0108】
このようにして製造した表示装置の特性を評価した。本比較例の表示装置の光学干渉条件と発光特性を表8にまとめて示す。
【0109】
【表8】

【0110】
実施例1と比較して、色純度が悪く、色再現範囲が狭くなる。また、消費電力も高くなっている。
【0111】
<比較例4>
本比較例の表示装置は、青色発光画素の光学干渉条件の次数をm1=2とした。それ以外は、実施例1と同様にして表示装置を作製した。
【0112】
このようにして製造した表示装置の特性を評価した。本比較例の表示装置の光学干渉条件と発光特性を表9にまとめて示す。
【0113】
【表9】

【0114】
実施例1と比較して、色純度が悪く、色再現範囲が狭くなる。また、消費電力も高くなっている。
【0115】
<比較例5>
本比較例の表示装置は、実施例1に対してm2=1の条件とした。つまり、各有機発光素子が2L2/λ+φ2/2π=1の条件を満たしている。
【0116】
このようにして製造した表示装置の特性を評価した。本比較例の表示装置の光学干渉条件と発光特性を表10にまとめて示す。
【0117】
【表10】

【0118】
実施例1と比較して、色純度が悪く、色再現範囲が狭くなる。また、消費電力も高くなっている。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明に係る表示装置は、高輝度による視認性の向上が重要なモバイル用途、例えば、デジタルカメラの背面モニタ、携帯電話用ディスプレイなどに適用することができる。また、同じ輝度でも低消費電力が期待されるので、屋内で使用する用途にも有用である。
【符号の説明】
【0120】
10 基板、11 アノード電極、13 正孔注入・輸送性の有機化合物層、14 赤色発光を示す発光層(赤色発光層を含む各色毎のパターン層)、15 緑色発光を示す発光層(緑色発光層を含む各色毎のパターン層)、16 青色発光を示す発光層(青色発光層を含む各色毎のパターン層)、17 電子注入・輸送性の有機化合物層、18 カソード電極、20a マイクロレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有し、
各画素は第1の電極と発光層と第2の電極とを備えた有機発光素子を有し、
前記複数の画素は有機発光素子で発光した光の一部を出射方向を変化させて外部へ出射させる光学手段を有し、
前記複数の画素において、有機発光素子の発光位置と第1の電極の間の光学距離L1、前記発光位置と第2の電極の間の光学距離L2は、下記の式を満たすことを特徴とする表示装置。
2L1/λ+φ1/2π=1・・・(A)
2>0かつ2L2/λ+φ2/2π<1・・・(B)
ここで、λは有機発光素子から出射される光のスペクトルの最大ピーク波長、φ1は前記発光位置で発光した光が前記第1の電極で反射する際の位相シフト、φ2は前記発光位置で発光した光が前記第2の電極で反射する際の位相シフトを表している。
【請求項2】
前記光学手段は、前記光学手段に入射する光の角度が臨界角以上の光を取り出すことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記光学手段は、集光作用のあるレンズであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−134128(P2012−134128A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238493(P2011−238493)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】