説明

表示装置

【課題】実鏡映像結像光学系によって結像される実像を視認し易くできる表示装置を提供する。
【解決手段】
表示装置は、表示側空間と被観察物側空間とを仕切る半透過性の基盤を有し基盤を介して表示側空間に被観察物の実像を結像させる実鏡映像結像光学系と、基盤と被観察物の実像の間に配置された半透過性プレートと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実鏡映像結像光学系を利用して、空中に被観察物の実像(実鏡映像)を結像させて見ることができるようにした表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実鏡映像結像光学系を利用して、空中に被観察物の実像(実鏡映像)を結像させて観察者に見ることができるようにした表示装置が提案されている(特許文献1、参照)。
【0003】
かかる表示装置は、観察者側とは反対側の空間に配置される被観察物と、観察者側の空間に当該被観察物の実像を結像させる実鏡映像結像光学系とを備えた表示装置であり、被観察物の実像を、実鏡映像結像光学系の対称面(素子面)に対して対称位置に結像させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007−116639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示した方法において、実鏡映像結像光学系を形成する光学素子(以下、実鏡映像光学素子という)は例えば正方形などの基盤として作製され、図1に示すように実鏡映像光学素子5を、もう一回り大きいフレーム8に嵌め込んだ状態で表示装置に組み込んで利用する。従って、実鏡映像光学素子5とフレーム8の境目BLができることになる。そして、観察者が本表示装置を観察する時は、フレーム及び実鏡映像光学素子、そして実鏡映像光学素子の手前の空間に結像する実鏡映像を見ることになる。
【0006】
この際、実鏡映像が実鏡映像光学素子の中央付近にある場合には観察者は空中像として視認することがたやすいが、実鏡映像が実鏡映像光学素子の端付近、つまりフレームとの境目付近にある場合には空中像として視認することが難しくなる。様々な実験を繰り返した結果、実鏡映像と実鏡映像光学素子とフレームとの境目を同時に、且つ、近い位置で観察した場合に、空中像として視認し難くなることが判った。
【0007】
つまり、実鏡映像を空中像として視認し易い視角範囲が、実鏡映像光学素子の大きさや被観察物の大きさによって狭い範囲に制限されてしまうことになる。
【0008】
そこで本発明は、実鏡映像結像光学系によって結像される実像を視認し易くできる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表示装置は、観察者が視認できる表示側空間と被観察物が配置された被観察物側空間とを仕切る半透過性の基盤を有し且つ前記基盤を介して前記表示側空間に前記被観察物の実像を結像させる実鏡映像結像光学系と、前記基盤と前記被観察物の実像の間に配置された半透過性プレートと、を含むことを特徴とする。
【0010】
換言すれば、本発明は、実鏡映像を空中像として視認し易い視角範囲を広げるために考え出されたものであり、具体的には、被観察物の実像(実鏡映像)を観察者側の空間に結像させる実鏡映像結像光学系と、当該実鏡映像結像光学系の該観察者側とは反対側の空間に配置される該実像を形成するための被観察物と、該実鏡映像結像光学系と該実像の間に配置された半透過性プレートとにより実現している。
【0011】
すなわち、実鏡映像結像光学系と表示される実像の間に配置された半透過性プレートにより、実鏡映像光学素子とフレームの境目を見難くすることにより、上記視角範囲を広げたものである。すなわち、前記半透過性プレートが前記実鏡映像結像光学系(実鏡映像光学素子)より大きい方が前記境目を確実に隠すことができ見難くすることができるので都合がよい。
【0012】
本発明において半透過性プレートとしては、例えば黒色色素で染色した半透明のアクリル等の板(プレート)や、透明な板上に不透明な部分をドット状に印刷し透明部分と不透明部分の面積比でその透過率を調整するようなプレートを使用することができる。また、薄い金属膜を透過性基板上に設けたものも使用できる。この金属薄膜付半透過性プレートの例としては、ガラス基板上にクロムなどの金属を蒸着して薄膜を形成したもの、いわゆるハーフミラーなどがある。ただし、単純なハーフミラーとすると観察者の顔など観察側の物体の映り込みがあり好ましくない。この場合は観察者側の金属薄膜を反射率を低く抑えるとよい。上記半透過性プレートの例ではクロム薄膜の上部または下部を酸化クロム膜として反射を抑える(黒く見える)ことができる。この半透過性プレートの反射の抑え方を調整して観察者側の物体の映り込みを少しだけ起こさせることにより、表示装置の前記境目を確実に隠すことができ見難くすることができる効果があることが判った。
【0013】
半透過性プレートでの透過率は何も無い時の透過率を100%として、20%程度から80%程度とすることが適当であり、さらに好ましくは、30%程度から60%程度が良いことが観察の結果判った。
【0014】
本発明において非等方半透過性プレートとしては、例えば、細かなスリット形状を持つ半透過性プレートである。スリットは、平行スリットもしくは、メッシュ状のもので、素子面に対して観察者側に傾斜している。非等方半透過性プレートを用いることにより、観察者方向以外からの光は非等方半透過性プレートを通過することができなくなり、前記境目を確実に隠すことができ見難くすることができ、空中像を明るくできることが判った。
【0015】
本発明において実鏡映像結像光学系とは、対称面(基盤)に対して斜め方向からの視点から被観察物の実鏡映像を観察することができるものであり、その一つの具体例としては、2面コーナーリフレクタアレイからなる実鏡映像結像光学系を挙げることができる。2面コーナーリフレクタアレイは、2つの直交する鏡面により構成される2面コーナーリフレクタを複数、平面的に集合させたものであり、全ての鏡面に対して垂直となる共通な平面を、被観察物と実像との対称面となる素子面としたものである。この2面コーナーリフレクタアレイは、被観察物から発せられる光を各2面コーナーリフレクタの2つの鏡面で1回ずつ反射させ且つその素子面を透過させることにより、2面コーナーリフレクタアレイの素子面を対称面として被観察物の面対称位置に、その被観察物の実鏡映像を結像させる作用を有している。
【0016】
ここで、2面コーナーリフレクタアレイについて考察すると、光線を各2面コーナーリフレクタにおいて適切に反射屈曲させつつ素子面を透過させるには、2面コーナーリフレクタを、素子面を貫通する方向に想定される光学的な穴の内壁を鏡面として利用するものと考えればよい。ただし、このような2面コーナーリフレクタは概念的なものであり、必ずしも物理的な境界などにより決定される形状を反映している必要は無く、例えぱ光学的な穴は相互に独立させることなく連結させたものとすることができる。
【0017】
2面コーナーリフレクタアレイの構造は、単純に述べれば、素子面にほぼ垂直な鏡面を、素子面上に多数並べたものである。構造として問題となるのは、この鏡面をどのように素子面に支持固定するかということになる。鏡面形成のより具体的な方法としては、例えば2面コーナーリフレクタアレイを、所定の空間を区画する基盤を具備するものとして、当該基盤を通る1つの平面を素子面としてとして規定し、各2面コーナーリフレクタを、素子面を貫通する方向に想定される光学的な穴として、基盤に形成された穴の内壁を鏡面として利用するものとすることができる。この基盤に形成された穴は、光が透過するように透明でありさえすればよく、例えば内部が真空もしくは透明な気体もしくは液体で満たしたものでもよい。また穴の形状についても、その内壁に単位光学素子として働くための1枚もしくは複数の同一平面に含まれない鏡面を具備し、且つ、鏡面で反射した光が穴を透過できる限り、任意の形状を取ることが可能であり、各穴が連結していたり、一部が欠損している複雑な形状であってもよい。例えば、基盤の表面に個々の独立した鏡面が林立する態様などは、基盤に形成された穴が連結しているものと理解できる。
【0018】
あるいは、2面コーナーリフレクタは、光学的な穴として透明なガラスや樹脂のような固体によって形成された筒状体を利用するものであってもよい。なお、固体によって個々の筒状体が形成されている場合、これらの筒状体は、相互に密着させて素子の支持部材として働かせてもよく、基盤を具備するものとして当該基盤の表面から突出した態様をとってもよい。また筒状体の形状についても、その内壁に2面コーナーリフレクタとして働くための1枚又は複数の同一平面に含まれない鏡面を具備し、且つ、鏡面で反射した光が筒状体を透過できる限り、任意の形状を取ることが可能であり、筒状体と称してはいるが各筒状体が連結していたり、一部が欠損している複雑な形状であってもよい。
【0019】
あるいは2面コーナーリフレクタは、PCT/WO2009−131128やPCT/WO2009−136578で開示されているように、垂直方向に光反射面を有する細長い鏡面体を多数並べたミラーアレイ(スリットミラーアレイ)を、お互いに直交するように重ねたものを利用してもよい。
【0020】
ここで、前記光学的な穴として、立方体又は直方体のように隣接する内壁面が全て直交する形状を考えることができる。この場合、2面コーナーリフレクタ相互の間隔を最小化することができ、高密度な配置が可能となる。ただし、被観察物方向を向く2面コーナーリフレクタ以外の面は、反射を抑制することが望ましい。
【0021】
2面コーナーリフレクタ内に複数の鏡面が存在する場合には、想定された回数以上の反射を起こす多重反射の透過光が存在する可能性がある。この多重反射対策として、光学的な穴の内壁に相互に直交する2つの鏡面を形成する場合は、これら2鏡面以外の面を、非鏡面として光が反射しないようにしたり、素子面に対して垂直とならないように角度を付けて設けたり曲面としたりすることで、3回以上の反射を起こす多重反射光を軽減又は除去できる。非鏡面とするには、その面を反射防止用の塗料や薄膜で覆う構成や、面粗さを粗くして乱反射を生じさせる構成を採用することができる。なお、透明で平坦な基盤としても光学素子の働きを阻害するものではないので、基盤を任意に支持部材・保護部材として用いることが可能である。
【0022】
さらに、映像の実鏡映像の高輝度化を図るには、複数の2面コーナーリフレクタを、素子面上においてできるだけ間隔を空けずに配置することが望ましく、例えば格子状に配置することが有効である。またこの場合、製造も容易になるという利点がある。2面コーナーリフレクタにおける鏡面としては、固体であるか液体であるかに関わらず金属や樹脂などの光沢のある物質によって形成された平坦面で反射するもの、あるいは異なる屈折率を持つ透明媒質同士の平坦な境界面において反射又は全反射するものなどを利用することができる。また、鏡面を全反射によって構成した場合には、複数の鏡面による望まない多重反射は、全反射の臨界角を超える可能性が高くなることから、自然に抑制されることが期待できる。また、鏡面は、機能的に問題ない限り、光学的な穴の内壁のごく一部分に形成されていてもよく、平行に配置される複数の単位鏡面により構成されても構わない。後者の態様を換言すれば、1つの鏡面が複数の単位鏡面に分割されても構わないことを意味する。またこの場合、各単位鏡面は、必ずしも同一平面に存在していなくてもよく、それぞれが平行であればよい。さらに、各単位鏡面は、当接している態様、離れている態様のいずれもが許容される。
【0023】
さらに、本発明において実鏡映像結像光学系として適用可能な他の具体例としては、光線を再帰反射させるレトロリフレクタアレイと光線を反射および透過させるハーフミラー面を有するハーフミラーとを具備する実鏡映像結像光学系である。この実鏡映像結像光学系においては、ハーフミラー面を対称面とし、被観察物から出た光線のうちハーフミラーで反射又は透過した光線を再帰反射し得る位置にレトロリフレクタアレイを配置している。なお、レトロリフレクタアレイは、ハーフミラーに対して被観察物と同じ側の空間(被観察物側空間)にのみ配置され、ハーフミラーで反射した光を再帰反射する位置に設けられる。ここでレトロリフレクタの作用である「再帰反射」とは、反射光を入射光が入射してきた方向へ反射(逆反射)する現象をいい、入射光と反射光とは平行であり且つ逆向きとなる。このようなレトロリフレクタの複数をアレイ状に配置したものがレトロリフレクタアレイであり、個々のレトロリフレクタが十分に小さい場合は、入射光と反射光の経路は重なると見なすことができる。このレトロリフレクタアレイにおいてレトロリフレクタは平面上に存在している必要はなく、曲面上にあってもよく、さらには同一面上に存在している必要はなく、各レトロリフレクタは3次元的に散在していても構わない。また、ハーフミラーは、光線を透過させる機能と反射させる機能の両方を備えているものをいい、好ましくは透過率と反射率がほぼ1:1のものが理想的である。
【0024】
レトロリフレクタには、3つの隣接する鏡面から構成されるもの(広義には「コーナーリフレクタ」と呼ぶことができる)や、キャッツアイレトロリフレクタを利用することができる。コーナーリフレクタには、相互に直交する3つの鏡面から構成されるコーナーリフレクタ、3つの隣接する鏡面がなす角度のうち2つが90度であり、且つ他の1つの角度が90/N度(ただしNは整数)をなすもの、3つの鏡面がなす角度が90度、60度および45度となる鋭角レトロリフレクタなどを採用することができる。
【0025】
このようなレトロリフレクタアレイとハーフミラーを利用する実鏡映像結像光学系の場合、被観察物から出た光はハーフミラー面で反射し、さらにレトロリフレクタアレイで再帰反射して必ず元の方向に戻り、ハーフミラー面を透過して結像するため、ハーフミラーからの反射光を受けられる位置にある限りレトロリフレクタアレイの形状や位置は限定されない。そして、結像した実像の観察は、ハーフミラー面を透過する光線に対向する方向から観察することができる。
【0026】
ここで、被観察物としてはネオンサインや表示パネル(非常灯のように光源と表示パネルを組み合わせたもの)のように固定表示の他に、液晶ディスプレイやCRTディスプレイや有機ELディスプレイのような電子ディスプレイの表示面に表示される画像が利用できる。前記画像を、前記画像面上における大きさが時間的に変化するものとすることが効果的である。また、前記画像を、前記画像面上における位置が時間的に変化するものとすることも効果的である。前記画像の時間的な変化は連続的なものであっても、不連続的なものであってもよい。前記画像面としては、電子ディスプレイの表示面が使用可能である。
【0027】
さらに、前記画像面は、前記画像を立体的に表示するものがインパクトを与えるという面に関して効果的である。被観察物を3次元画像を表示し得る電子ディスプレイの表示面に表示される立体画像とすれば実鏡映像も立体像となる。また、被観察物を経時的に動的に変化する画像としてもよい。動画や立体画像を用いれば、観察者にインパクトを与えられるなどの効果も得られさらに好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、実鏡映像結像光学系と実像(実鏡映像)の間に配置された半透過性プレートにより、実鏡映像光学素子とフレームの境目を見難くすることにより、実鏡映像を空中像として視認し易い視角範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実鏡映像光学素子をフレームに嵌め込んだ状態を説明するための概略斜視図である。
【図2】本発明による実施形態の表示装置の要部を説明するための概略斜視図である。
【図3】同実施形態の表示装置の要部を側方から見た状態を模式的に示す概略側面図である。
【図4】同実施形態に適用される2面コーナーリフレクタアレイ単体の結像様式を模式的に示す概略斜視図である。
【図5】同実施形態の表示装置に適用される2面コーナーリフレクタレイの具体的構成例を模式的に示す概略平面図(a)および部分切欠斜視図(b)である。
【図6】同実施形態の表示装置に適用される2面コーナーリフレクタアレイによる結像様式を模式的に示す概略平面図である。
【図7】同実施形態の表示装置に適用される2面コーナーリフレクタアレイによる結像様式を模式的に示す概略側面図である。
【図8】同実施形態に適用される2面コーナーリフレクタアレイ単体による空中像が2面コーナーリフレクタアレイの中央付近に存在するように観察する場合を説明するための概略斜視図である。
【図9】観察者の観察位置を変化させ、同実施形態に適用される2面コーナーリフレクタアレイ単体による空中像が2面コーナーリフレクタアレイの端付近に存在するように観察する場合を説明するための模式的に示す概略斜視図である。
【図10】本発明の他の実施形態の表示装置の要部を側方から見た状態を模式的に示す概略側面図である。
【図11】本発明の更なる他の実施形態の表示装置の要部を側方から見た状態を模式的に示す概略側面図である。
【図12】本発明の更なる他の実施形態を示す実鏡映像結像光学系に適用されるレトロリフレクタアレイおよびレトロリフレクタの他の例による光線の再帰反射の態様を模式的に示す概略斜視図である。
【図13】同実鏡映像結像光学系に適用されるレトロリフレクタアレイの概略部分平面図(a)および該レトロリフレクタの一例による光線の再帰反射の態様を模式的に示す概概略部分平面図(b)である。
【図14】同実鏡映像結像光学系に適用される他のレトロリフレクタアレイの概略部分平面図(a)および該レトロリフレクタの他の例による光線の再帰反射の態様を模式的に示す概概略部分平面図(b)である。
【図15】本発明の他の実施形態としてデジタルサイネージへ適用した場合の表示装置の要部を側方から見た状態を模式的に示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明による一実施形態の表示装置について、図面を用いて説明する。
【0031】
図2は、実施形態の表示装置の要部を模式的に示す概略斜視図であり、図3は同実施形態の表示装置の要部を側方から見た状態を模式的に示す概略側面図である。
【0032】
図2及び図3に示すように、表示装置は、被観察物2が配置された空間(被観察物側空間)と観察者V側の空間(表示側空間)とを仕切る実鏡映像結像光学系である2面コーナーリフレクタアレイ6を含む。2面コーナーリフレクタアレイ6は表示側空間に浮ぶ被観察物の実像3(実鏡映像である空中像)を結像させる。表示装置は、さらに、観察者側の表示側空間で2面コーナーリフレクアレイ6と空中像3の間に配置された半透過性プレート4を含む。2面コーナーリフレクタアレイ6はフレーム8に嵌め込まれている。
【0033】
被観察物2から発せられた光の一部は、半透過性の2面コーナーリフレクタアレイ6で2回反射して観察者Vへ向けて進み、その一部が途中に配置された半透過性プレート4で反射若しくは吸収さるものの、半透過性プレート4を透過した光が観察者Vの視線上に空中像3を実鏡映像で結像する。
【0034】
そもそも、実鏡映像光学素子である2面コーナーリフレクアレイ6とフレーム8の境目が視認されてしまうのは、2面コーナーリフレクアレイ6とフレーム8が視認されるためであり、観察者側の空間から光が2面コーナーリフレクアレイ6とフレーム8のそれぞれで異なった強度で散乱反射し、その強度差が境界として視認されるものである。半透過性プレート4は、この観測者側の空間からの光の影響を極力抑えるために働くものであり、2面コーナーリフレクアレイ6を通しての被観察物2からの光が半透過性プレート4を1回しか通らないのに対して、観察者側の空間からの光は半透過性プレート4を2回通過すること利用している。
【0035】
例えば、半透過性プレート4の透過率をR(<1)とした場合、観察者側の空間からの光は2面コーナーリフレクアレイ6とフレーム8で反射されることから、半透過性プレート4を2回通過することになるので、Rに減弱するのに対して、2面コーナーリフレクアレイ6を通しての被観察物2からの光は、半透過性プレート4を1回だけ通過するのでRに減弱する。すると、結像光に対する反射光の比率はR倍に小さくなり、反射光が相対的に弱くなる。つまり、Rを小さくすれば、それだけ反射光(すなわち2面コーナーリフレクアレイ6とフレーム8の境目が観察されること)を小さくできる。
【0036】
ただし、結像の明るさも1/Rとなることから、Rを小さくすると被観察物2を明るくする必要があるため、実用的な明るさの要求によって制限されることとなる。
【0037】
以上の結像様式をさらに詳しく説明するために、まずは2面コーナーリフレクタアレイ単体の構成および作用について説明し、次いで、半透過性プレート4を追加した場合の作用について述べる。
【0038】
2面コーナーリフレクタアレイ6の単体は、図4に模式的に示すように、基盤60上に、それぞれが2つの相互に直交する鏡面61a,61bから構成される多数の2面コーナーリフレクタ61の集合であり、全2面コーナーリフレクタ61を構成するそれぞれ2つの鏡面61a,61bに対してほぼ垂直な平面を素子面6Sとし、この素子面6Sを対称面とする面対称位置に被観察物の実像3を結像させることができるものである。被観察物としては、ディスプレイ7の表示面71に表示された画像72を用いることができる。ディスプレイ7を動作させ、表示面71に表示される画像72を動かすなどすれば実鏡映像3も動く像になり、観察者にインパクトを与えることができ効果的である。なお、本実施形態において2面コーナーリフレクタ61は2面コーナーリフレクタアレイ6の全体の大きさ(cmオーダ)と比べて非常に微小(μmオーダ)であるので、図4では2面コーナーリフレクタ61の集合全体をグレーで表し、鏡面の開く内角の向きをV字形状で表し2面コーナーリフレクタ61を誇張して表現してある。
【0039】
そして、図5では、2面コーナーリフレクタアレイ6の模式的な平面図を図5(a)に、同(b)に部分的な斜視図を示す。但し、図5では、2面コーナーリフレクタアレイ6の全体に比して、2面コーナーリフレクタ61および鏡面61a,61bを大きく誇張して表している。
【0040】
2面コーナーリフレクタアレイ6は、例えば光線を屈曲しつつ透過し得るように、平板状の基盤60に、その平らな表面に対して垂直に肉厚を貫通する物理的・光学的な穴を多数形成し、各穴の内壁面を2面コーナーリフレクタ61として利用するために、穴の内壁面のうち直交する2つにそれぞれ鏡面61a,61bを形成したものを採用することができる。したがって、基盤60が少なくとも半透過性となるように、図5(a)、同(b)に示すように、薄い平板状の基盤60に平面視ほぼ矩形状(例えば正方形状)の光線が透過する物理的・光学的な穴(例えば一辺が例えば50〜200μm)を多数形成し、各穴のうち隣接して直交する2つの内壁面に平滑鏡面処理を施して鏡面61a,61bとする。これにより、これら2つの鏡面61a,61bが反射面として機能する2面コーナーリフレクタ61を得ることができる。なお、穴の内壁面のうち2面コーナーリフレクタ61を構成しない部分には鏡面処理を施さず光が反射不能な面とするか、又は角度をつけるなどして多重反射光を抑制することが好ましい。また、各2面コーナーリフレクタ61は、基盤60上において鏡面61a,61bがなす内角が全て同じ向きとなるように、規則的な格子点上に整列させて形成することが好ましい。よって、各2面コーナーリフレクタでは、2つの直交する鏡面の交線CLが素子面6Sに直交することが好ましい。以下、この鏡面61a,61bの内角の向きを、2面コーナーリフレクタ61の向き(方向)と称することがある。
【0041】
鏡面61a,61bの形成にあたっては、例えば金属製の金型をまず作成し、鏡面61a,61bを形成すべき内壁面をナノスケールの切削加工処理や、金型を用いたプレス工法をナノスケールに応用したナノインプリント工法又は電鋳工法による処理をすることによって鏡面形成を行い、これらの面粗さを10nm以下とし、可視光スペクトル域に対して一様に鏡面となるようにするとよい。なお、電鋳工法によりアルミニウムやニッケルなどの金属で基盤60を形成した場合、鏡面61a,61bは、金型の面粗さが十分小さければ、それによって自然に鏡面となるが、ナノインプリント工法を用いて、基盤60を樹脂製などとした場合には、鏡面61a,61bを作成するには、スパッタリングなどによって、鏡面コーティングを施す必要がある。また、隣り合う2面コーナーリフレクタ6同士の離間寸法を極力小さく設定することで、透過率を向上させることができる。また、このような2面コーナーリフレクタアレイ6の上面(観察者から見える側の面)には、低反射剤を塗布するなどの処理を行うことが好ましい。但し、2面コーナーリフレクタアレイ6の構成は上述のものに限定されず、直交する2つの鏡面61a,61bにより2面コーナーリフレクタ61が多数形成され、且つ各2面コーナーリフレクタ61が光学的な穴として光を透過するものであれば、適宜の構成および製造方法を採用することができる。
【0042】
そして、2面コーナーリフレクタアレイ6では、各2面コーナーリフレクタ61は、裏面側から穴に入った光を一方の鏡面61a(又は61b)で反射させ、さらにその反射光を他方の鏡面61b(又は61a)で反射させて表面側へと通過させる機能を有し、この光の進入経路と射出経路とが素子面6Sを挟んで面対称をなすこととなる。すなわち、2面コーナーリフレクタアレイ6の素子面6S(各鏡面の高さ方向中央部を通り且つ各鏡面と直交する面を仮定)は、被観察物2の実像を、面対称位置に空中像(実鏡映像)3として結像させる対称面となる。
【0043】
ここで、2面コーナーリフレクタアレイ6による結像様式について、被観察物として点光源oから発せられた光の経路とともに簡単に説明する。
【0044】
図6に模式的な平面図で、図7に模式的な側面図でそれぞれ示すように、点光源oから発せられる光(一点鎖線矢印で示す。図6において3次元的には紙面奥側から紙面手前側へ進行する)は、2面コーナーリフレクタアレイ6を通過する際に、2面コーナーリフレクタ61を構成する一方の鏡面61a(又は61b)で反射して更に他方の鏡面61b(又は61a)で反射した後に素子面6S(図7、図4、図5(b))を通過し、2面コーナーリフレクタアレイ6の素子面6Sに対して点光源oの面対称位置を広がりながら通過する。図6では入射光と反射光とが平行をなすように表されているが、これは同図では点光源oに対して2面コーナーリフレクタ61を誇張して大きく記載しているためであり、実際には各2面コーナーリフレクタ61は極めて微小なものであるため、図6のように2面コーナーリフレクタアレイ6を上方から見た場合には、入射光と反射光とは殆ど重なって見える(図6では2面コーナーリフレクタ61の2つの鏡面(61a,61b)それぞれに最初に当たる光の経路、つまり2本の経路を描いて説明しているが、図7では煩雑さを避けるためにどちらか一方の鏡面に最初に当たる光のみを描いている)。すなわち、結局は点光源oの素子面6Sに対する面対称位置に透過光が集まり、図6、図7においてpの位置に実鏡映像として結像することになる。
【0045】
本発明では、2面コーナーリフレクタアレイ6と空中像3の間に半透過性プレート(図示せず)を配置しているが、この半透過性プレート4は単に光の透過率を調整するものであるため、上記基本的な作用により空中像を実鏡映像で結像する。
【0046】
ハーフミラー形式の半透過性プレートを使用した場合は、透過率調整のために一部の光を反射させることになり、この反射光は半透過性プレートを透過した光による空中像とは違う場所に結像することになるが(結像する前に他の物によって反射等されてしまえば像はできないが)、こちらの結像は観察者からは観察されない。
【0047】
従って、観察者が空中像3のみを観察する場合には、半透過性プレートの有り無しは単に空中像の明るさが変化するに過ぎない。
【0048】
次いで、表示側空間の2面コーナーリフレクタアレイ6と空中像3の間に半透過性プレートを追加配置した場合の作用について述べる。
【0049】
先ずは、半透過性プレートが無い時の空中像3の観察の様子について述べる。半透過性プレートが無いために、観察者は空中像3の他にも、その背後にある2面コーナーリフレクタアレイ6とそれを組み込むためのフレーム8も観察することになる。
【0050】
図8に示すように、空中像3が2面コーナーリフレクタアレイ6の中央付近に存在するように観察する場合は、空中像3に目のピントを容易に合わせることができ、空中像として視認しやすい。
【0051】
しかし、観察者の観察位置を変化させ、図9に示すように、空中像3が2面コーナーリフレクタアレイ6の端部の付近、つまり2面コーナーリフレクタアレイ6とフレーム8の境目BLに近い部分に存在するように観察する場合は、空中像3の他にも境目BLに目のピントを合わせるターゲットができてしまうため、境目BLにピントを合わせた時には空中像3を空中像として視認でき難くなることが判った。
【0052】
次に、本発明の特徴である半透過性プレートを追加した時の空中像3の観察の様子について述べる。追加された半透過性プレートのために、2面コーナーリフレクタアレイ6とそれを組み込むためのフレーム8の境目BLが観察され難くなり、図8に示した観察位置の時は勿論のこと、図9に示した観察位置の時にも、空中像3に目のピントを容易に合わせることができ、空中像として視認しやすい観察方向を増やすことができる。
【0053】
なお、図3では2面コーナーリフレクタアレイ6と空中像3の間の空間に半透過性プレート4を配置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、半透過性プレート4を2面コーナーリフレクタアレイ6及びそれを嵌め込んでいるフレーム8に貼り合せる形で設置しても良い。また、空間に配置される場合も図3に示した角度に限定される訳ではなく、半透過性プレートによる本発明の効果が発揮できる範囲において自由な角度での設定が可能である。
【0054】
更に、本発明の特徴である半透過性プレートにかかわる他の実施形態について述べる。
【0055】
もし、観察者側の空間からの光の全てを半透過性プレートで吸収することができれば、実鏡映像光学素子の2面コーナーリフレクタアレイとフレームからの反射光を無くすことができるので、それらの境目を視認させないようにすることができる。しかし、この場合は2面コーナーリフレクタアレイを通しての被観察物からの光も吸収してしまうため空中像が観察できなくなってしまい都合が悪い。
【0056】
そこで、発明者は2面コーナーリフレクタアレイを通しての被観察物からの光を通して、それ以外の光を通さない、非等方半透過性プレートを利用すること考えた。
【0057】
図10は、本発明が適用される表示装置の他の実施形態を示す概観図である。かかる表示装置は、半透過性プレート4(図3)に代えて非等方半透過性プレート4aを用いた以外、上述した実施形態の表示装置と同一の構成を有している。非等方半透過性プレート4aを使用すれば、観察者側の空間からの光のうち観察者の方向からの光は、非等方半透過性プレート4aを通過して2面コーナーリフレクタアレイ6とフレーム8に達するためそれらの境界を視認させる光となってしまうが、観察者方向以外からの光は、非等方半透過性プレート4aを通過することができないため、それらの光による2面コーナーリフレクタアレイ6とフレーム8の境目が視認される現象を防止することができ、全体として、等方的な半透過性プレートを使用する場合より境目を見難くする効果をより顕著に引き出すことができる。非等方半透過性プレート4aとしては、例えば、細かなスリット形状を持つ半透過性プレートが考えられる。スリット4sは、平行スリットもしくは、メッシュ状のもので、素子面に対して観察者側に傾斜している。また、スリットを形成する壁自体は光線を十分に吸収するものであることが好ましい。スリットに傾斜がついているため、透過光に方向性が生じる、つまり、非等方性となる。具体的には、例えば信越ポリマー社製の視角制限フィルム、商品名VC−FILMがこのような機能を持っており使用可能である。
【0058】
傾斜がついたスリットによって観察者側の空間からの光が2面コーナーリフレクタアレイ6とフレーム8に入射する方向は、観察者視線方向Vに限定される。この光によって観察者から2面コーナーリフレクタアレイ6とフレーム8およびそれらの境界が観察されるのは、それらからの散乱反射によって、観察者側に帰された光ということになる。ここで、もし2面コーナーリフレクタアレイ6とフレーム8の表面が鏡面のような状態になっていた場合、散乱反射は生じず、表面で反射された光は、観察者とは反対側へ向かい、スリットにあたって吸収される。つまり、境目は見えないということになり、さらに都合が良い。
【0059】
図10に示す表示装置として非等方半透過性プレート4aに信越ポリマー社製のVC−FILM(品番VC−908518)を使用した実施例を作製した。本実施例に用いた非等方半透過性プレート4aは傾斜した平行スリット構造を成しており、観察者方向からの光は、非等方半透過性プレート4aを通過することができるが、観察者方向以外からの光は、非等方半透過性プレート4aを通過することができない。
【0060】
本実施例でも追加された非等方半透過性プレート4aのために、2面コーナーリフレクタアレイ6とそれを組み込むためのフレーム8の境目が観察され難くなり、図8に示した観察位置の時は勿論のこと、図9に示した観察位置の時にも、空中像3に目のピントを容易く合わせることができ、空中像として視認しやすい観察方向を増やすことができた。さらに、非等方半透過性プレート4aを用いた方が空中像を明るくできることが判った。
【0061】
図11は、本発明が適用される表示装置の更なる他の実施形態を示す概観図である。かかる表示装置は、実鏡映像結像光学系のみが上述した実施形態の表示装置と異なるだけであり、本発明の特徴である半透過性プレート4を後述するハーフミラー91と実像(実鏡映像)3の間に配置したものである。ハーフミラー91をフレーム8に嵌め込んで使用するため、上記の境目の課題がやはり本表示装置でも存在するので、半透過性プレート4の追加により課題解決を図ろうとするものである。表示装置は、被観察物2が配置された空間(被観察物側空間)と観察者V側の空間(表示側空間)とを仕切る半透過性の基盤である実鏡映像結像光学系のハーフミラー91を含む。なお、本実施形態の表示装置は、実鏡映像結像光学系のみが上述した実施形態の表示装置と異なり、他は同様の構成となっているので、それらの同一の符号を用いた同一の構成については説明を省略する。
【0062】
本実施形態で適用される実鏡映像結像光学系9は、図12に示すように、ハーフミラー91とレトロリフレクタアレイ92とを組み合わせたものである。そして、対称面となる素子面はハーフミラー面91Sとなる。ハーフミラー91を挟んで観察者Vと反対側の空間(被観察物側空間)に被観察物としてディスプレイ7(表示面71に表示された画像72)を配置し、さらに、レトロリフレクタアレイ92を配置し、観察者側空間(表示側空間)に半透過性プレート4を配置している。半透過性プレート4は、ハーフミラー91と実像(実鏡映像)3の間に配置されている。
【0063】
被観察物2から発せられた光はハーフミラー91で反射され、次にレトロリフレクタアレイ92へと導かれる。レトロリフレクタアレイ92はハーフミラー91からの光を再帰反射させる機能を有しているので、反射光は再びハーフミラー91に向かうことになる。そして反射光は今度はハーフミラー91を透過して、観察者V側の空間に配置された半透過性プレート4を透過して、実鏡映像3を観察者Vの視線上の空間に結像する。
【0064】
ハーフミラー91は、例えば透明樹脂やガラスなどの透明薄板の一方の面に薄い反射膜をコーティングしたものを利用することができる。この透明薄板の反対側の面には、無反射処理(ARコート〉を施すことで、観察される実鏡映像3が2重になるのを防止することができる。なお、ハーフミラー91の上面には、それぞれ特定方向の光線を透過し且つ別の特定方向の光線を遮断するか、あるいは特定方向の光線のみを拡散する視線制御手段として、視界制御フィルム又は視野角調整フィルムなどの光学フィルム(図示せず)を貼り付けて設けることができる。具体的にはこの光学フィルムにより、ハーフミラー91を直接透過した光が視点V以外の位置には届かないようにすることで、ハーフミラー91を通じて視点V以外から半透過性プレート4に写った被観察像が直接観察できるようになることを防止する一方で、後述するハーフミラー91で一旦反射してレトロリフレクタアレイ92で再帰反射した後にハーフミラー91を透過する方向の光線のみを透過させることで、実鏡映像3のみを特定の視点Vから観察できるようにしている。
【0065】
一方、レトロリフレクタアレイ92には、入射光を厳密に逆反射させるものであればあらゆる種類のものを適用することができ、素材表面への再帰反射膜や再帰反射塗料のコーティングなども考えられる。また、その形状も曲面としてもよいし、平面とすることもできる。例えば、図13(a)に正面図の一部を拡大して示すレトロリフレクタアレイ92は、立方体内角の1つの角を利用するコーナーキューブの集合であるコーナーキューブアレイである。個々のレトロリフレクタ92Aは、3つの同形同大の直角二等辺三角形をなす鏡面92Aa,92Ab,92Acを1点に集合させて正面視した場合に正三角形を形成するものであり、これら3つの鏡面92Aa,92Ab,92Acは互いに直交してコーナーキューブを構成している(図13(b))。
【0066】
また、図14(a)に正面図の一部を拡大して示すレトロリフレクタアレイ92も、立方体内角の1つの角を利用するコーナーキューブの集合であるコーナーキューブアレイである。個々のレトロリフレクタ92Bは、3つの同形同大の正方形をなす鏡面92Ba,92Bb,92Bcを1点に集合させて正面視した場合に正六角形を形成するものであり、これら3つの鏡面92Ba,92Bb,92Bcは互いに直交している(図14(b))。
【0067】
図14のレトロリフレクタアレイ92は、図13(a)のレトロリフレクタアレイ92とは形状が異なるだけで再帰反射の原理は同じである。図13(b)および図14(b)に、図13(a)および図14(a)にそれぞれ示したレトロリフレクタアレイ92を例にして説明すると、各レトロリフレクタ92A,92Bの鏡面のうちの一つ(例えば92Aa,92Ba)に入射した光は、他の鏡面(92Ab,92Bb)、さらに他の鏡面(92Ac,92Bc)で順次反射することで、レトロリフレクタ92A,92Bへ光が入射してきた元の方向へ反射する。なおレトロリフレクタアレイ92に対する入射光と出射光の経路は、厳密には重ならず平行であるが、レトロリフレクタ92A,92Bがレトロリフレクタアレイ92と比べて十分小さい場合には、入射光と出射光の経路が重なっているとみなしてもよい。これら2種類のコーナーキューブアレイの違いは、鏡面が二等辺三角形のものは比較的作成しやすいが反射率が若干低くなり、鏡面が正方形のものは二等辺三角形のものと比較して作成がやや難しい反面、反射率が高い、ということである。
【0068】
なお、レトロリフレクタアレイ92には、上述したコーナーキューブアレイの他にも、3つの鏡面により光線を再帰反射させるもの(広義には「コーナーリフレクタ」)を採用することができる。図示しないが、例えば、単位再帰反射素子として、3つの鏡面のうち2つの鏡面同士が直交し、且つ他の1つの鏡面が他の2つの鏡面に対して90/N度(ただしNは整数とする)をなすものや、3つの鏡面がそれぞれ隣接する鏡面となす角度が90度、60度および45度となる鋭角レトロリフレクタが、本実施形態に適用される再帰反射素子3として適している。その他にも、キャッツアイレトロリフレクタなども単位再帰反射素子として利用することができる。これらのレトロリフレクタアレイは、平面的なものであっても、屈曲又は湾曲していてもよい。また、レトロリフレクタアレイの配置位置も、画像72から発してハーフミラー91で反射した光を再帰反射することができるのであれば、適宜に設定することができる。
【0069】
このようなハーフミラー91とレトロリフレクタアレイ92を備えた実鏡映像結像光学系9を適用したこの実施形態の表示装置でも、2面コーナーリフレクタアレイを適用した表示装置と同様に、ハーフミラー91に対して斜め方向から見る観察者の視線上の空間に実鏡映像3が浮かんで見えることになる。また、この表示装置においても、観察像の表示位置や大きさを変化させることで、実鏡映像3に変化を持たせることも可能である。
【0070】
本実施形態の表示装置でも、半透過性プレート4は単に光の透過率を調整するものであるため、上記基本的な作用により空中像を実鏡映像で結像する。ハーフミラー形式の半透過性プレートを使用した場合も表示装置の場合と同様である。従って、この表示装置の場合も観察者が空中像3のみを観察する場合には、半透過性プレートの有り無しは単に空中像の明るさが変化するに過ぎない。
【0071】
本実施形態でも、やはり、半透過性プレートを追加した時の方がを追加しない時より、ハーフミラー91とそれを組み込むためのフレーム7の境目が観察され難くなり、どの観察位置の時でも、空中像3に目のピントを容易に合わせることができ、空中像として視認しやすい観察方向を増やすことができた。
【0072】
以上、実施態様により本発明を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で表示装置を構成する各部の具体的構成は適宜に変更することができる。
また、本表示装置の適用例としては、単に空中映像を浮かび上がらせる単純な表示装置だけでなく、例えば自動車の計器盤のように、奥まった部分に表示部が設けられる種々の装置に対してその表示部の手前に空中映像を浮かび上がらせる表示装置として本発明を適宜構成することが可能である。
【0073】
さらに、本発明で示した半透過性プレート4を壁面や柱面の表面に配置する構成とすれば、床面に対して垂直な面をなす壁面や柱面から空中像を手前の空間に飛び出させることができるため、デジタルサイネージなどへの本発明の有効な適用も可能である(図15参照)
図15は、本発明が適用される表示装置の更なる他の実施形態を示す概観図である。表示装置は、構成要素の配置が上述した実施形態の表示装置と異なるだけであり、2面コーナーリフレクタアレイ6と実像(実鏡映像)3との間に半透過性プレート4を鉛直に立てて、配置したものである。2面コーナーリフレクタアレイ6をフレーム8に嵌め込んで使用するため、境目の課題がやはり本表示装置でも存在するが、半透過性プレート4の追加により当該課題は解決される。なお、本実施形態の表示装置は、実鏡映像結像光学系のみが上述した実施形態の表示装置と異なり、他は同様の構成となっているので、それらの同一の符号を用いた同一の構成については説明を省略する。
【符号の説明】
【0074】
2…被観察物
3…空中像(実鏡映像)
4…半透過プレート
5…実鏡映像光学素子
6…2面コーナーリフレクタアレイ(実鏡映像結像光学系)
6S…素子面(対称面)
61…2面コーナーリフレクタ
61a、61b…鏡面
7…ディスプレイ
71…表示面
72…被観察物(画像)
8…フレーム
91…ハーフミラー
91S…ハーフミラー面(対称面)
92…レトロリフレクタアレイ
92A,92B…レトロリフレクタ
92Aa,92Ab,92Ac,92Ba,92Bb,92bc…鏡面
CL…鏡面の交線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者が視認できる表示側空間と被観察物が配置された被観察物側空間とを仕切る半透過性の基盤を有し且つ前記基盤を介して前記表示側空間に前記被観察物の実像を結像させる実鏡映像結像光学系と、
前記基盤と前記被観察物の実像の間に配置された半透過性プレートと、を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記半透過性プレートは非等方半透過性プレートであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記半透過性プレートは前記基盤より大きい面積を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記被観察物は、所定形状の画像面に表示される画像であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記画像面は、電子ディスプレイの表示面であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記画像面は、前記画像を立体的に表示するものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記実鏡映像結像光学系の前記基盤は2面コーナーリフレクタとして機能する光学素子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記実鏡映像結像光学系はハーフミラーとレトロリフレクタアレイの組合せにより形成され且つ前記基盤が前記ハーフミラーであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−247458(P2012−247458A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116448(P2011−116448)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】