説明

表示装置

【課題】電気泳動表示パネルを用いた表示装置において、コントラストが良好で、ちらつきが目立たず、長寿命動作を可能とする表示装置を提供する。
【解決手段】帯電粒子の移動によって表示を行うメモリ性を有する表示パネル50と、表示データを入力して表示パネルの電極に駆動電圧を印加する駆動IC10とを備え、駆動IC10は制御部11と波形パラメータ部12と駆動パルス発生部20とを有し、駆動パルス発生部は、表示を書き換える表示反転パルスと表示が変化しない場合に上書きパルスを出力し、表示反転パルスを出力する前には極性が異なる前置表示反転パルスを出力し、上書きパルスを出力する前には極性の異なる前置上書きパルスを出力し、上書きパルスと前置上書きパルスは同じパルス幅で構成され、前置上書きパルスは前置表示反転パルスよりパルス幅が広い構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電粒子の移動によって表示を行うメモリ性を有する表示パネルを備えた低消費電力の表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から薄型の表示装置としては、液晶表示装置が各種の電子機器に広く使用されており、近年ではコンピュータやテレビジョン等の大型カラーディスプレイとしても使用されるようになっている。また、テレビジョンの大型カラーディスプレイとしては、プラズマディスプレイも使用されている。しかし、液晶表示装置やプラズマディスプレイはCRT表示装置に比べれば格段に薄型になったとはいえ、まだ用途によっては充分に薄くはないし、曲げることは出来ない。また、携帯機器のディスプレイとして使用する場合には消費電力の更なる低減が望まれている。
【0003】
そこで、更なる薄型化と低消費電力化を実現する表示装置として、電気泳動表示素子を用いた電子ペーパーとも称される表示パネルが開発され、電子ブックや電子新聞、電子広告看板や案内表示板などへの利用が試みられている。この電気泳動表示素子を用いた表示パネル(表示装置)は、対向する面にそれぞれ電極を有する一対の基板間に帯電粒子が封入された画像表示層を設け、その一対の基板の電極間に印加される電圧の極性に応じて帯電粒子が電気泳動により移動して表示を行うように構成されている。
【0004】
この電気泳動表示パネルは、電極間に印加される駆動電圧を取り去っても、帯電粒子が移動しないのでメモリ性を有しており、駆動電力が零でも表示状態を保つことが出来る。この表示状態が保たれる表示期間は、数秒から数時間、あるいは数ヶ月も継続する場合もある。このため、この電気泳動表示パネルは、極めて僅かな電力で駆動することが出来るので、低消費電力を必要とする腕時計や携帯電話などの携帯機器用表示装置として今後有望である。
【0005】
[電気泳動表示パネルの構成と動作の説明]
ここで、公知ではあるが本発明を理解する助けとなるので、従来から知られている電気泳動表示パネルの構成と動作について図9〜図13を用いて概略を以下説明する。図9は、電気泳動表示パネルの断面の一例であり、表示パネル50として示す。この表示パネル50は、本発明の実施例において用いられる表示パネルと同様である。
【0006】
この表示パネル50は、透明な樹脂基板51の裏面全体にITO(酸化インジューム錫)膜による透明な共通電極(コモン電極)COMを形成し、その上に電子インクとも称されるマイクロカプセル表示層53が形成されている。このマイクロカプセル表示層53の表面に画素毎のセグメント電極SEGが形成されたフレキシブルプリント基板(以下FPCと略す)55が接着剤層54によって接着され構成される。
【0007】
そして、マイクロカプセル表示層53は、バインダや界面活性剤、増粘剤、純水等の混合体中に直径が数十μm程度の微小なマイクロカプセル60が多数分散している。すなわち、表示パネル50は、透明な樹脂基板51とFPC55が一対の基板として配設され、その対向面の一方に共通電極COMが形成され、他方の面にセグメント電極SEGが形成され、その間にマイクロカプセル60が封入されている。
【0008】
次に、表示パネル50の動作原理について図10を用いて説明する。図10において、マイクロカプセル60は、透明なメタクリル樹脂等からなるカプセル殻61の内部に、帯
電粒子として酸化チタン等からなる白色粒子63aとカーボンブラック等からなる黒色粒子63bが、シリコーンオイル等の粘性の高い透明な分散媒62に分散された状態で封入されている。そして、白色粒子63aは負に帯電され、黒色粒子63bは正に帯電されている。
【0009】
そして、このマイクロカプセル表示層53を挟むように配置された電極のうち、一方の全面一体の共通電極COMを接地(0V)し、他方のFPC55上のセグメント電極SEGに負電圧を印加した部分では、その電界によってマイクロカプセル60内の負に帯電した白色粒子63aが透明な共通電極COM側へ、正に帯電した黒色粒子63bはセグメント電極SEG側へ移動するので、視認側(矢印Aの方向)から見ると白く見える。一方、セグメント電極SEGに正電圧を印加した部分では、その逆向きの電界によってマイクロカプセル60内の正に帯電した黒色粒子63bが透明な共通電極COM側へ、負に帯電した白色粒子63aはセグメント電極SEG側へ移動するので、視認側から見ると黒く見える。
【0010】
また、図10における中央のマイクロカプセル60のように、負電圧が印加されたセグメント電極SEGと正電圧が印加されたセグメント電極SEGとに跨った位置のマイクロカプセル60内では、白色粒子63aの一部は共通電極COM側へ、残りはセグメント電極SEG側へ移動し、黒色粒子63bの一部はセグメント電極SEG側へ移動し、残りは共通電極COM側へ移動するので、マイクロカプセル60の直径よりも、細かい表示も可能である。
【0011】
したがって、表示パネル50は、共通電極COMとセグメント電極SEGとの間に印加する電圧の極性によって、白又は黒に表示状態を変化させることができる。このとき白色粒子63aと黒色粒子63bは分散媒62中を電気泳動によって移動するが、分散媒62の粘度が高いので、電圧を印加して表示状態を変化させた後、その電圧の印加を停止しても、それぞれの粒子の分子間力により、その表示状態を保持するメモリ性効果を持つことが出来る。これにより、表示パネル50は、表示を変化させる時だけ駆動電圧を印加すればよいので、消費電力が極めて少ないことが大きな特徴である。
【0012】
次に図11は、前述した表示パネル50で数字等のキャラクタを表示するようにした一例を示している。図11において、表示パネル50は、セグメントS0〜S6によって成るセブンセグメントキャラクタSCを1桁表す表示体で構成されている。また、そのセグメントS0〜S6の周囲領域S7はセブンセグメントキャラクタSCの背景領域を表している。
【0013】
この表示パネル50は電極として1個の共通電極COMと8個のセグメント電極を有している。この8個のセグメント電極とは、セグメントS0からセグメントS6に対応するセグメント電極SEG0からSEG6、及び周囲領域S7に対応するセグメント電極SEG7である。また、表示パネル50の下部より出ている9本の線はそれぞれ、共通電極COMおよび8個のセグメント電極SEG0〜SEG7に接続されたリード線であり、それぞれのリード線は、接続される各セグメント電極と同一の名称を付して示している。そして、それぞれのリード線は後述する駆動手段に接続される。
【0014】
次に図12は、図11に示した表示パネル50によるセブンセグメントキャラクタSCを(A)の数字「2」を表示した状態から(B)の数字「3」を表示する状態へ変化させる場合を示している。図12において、最初の(A)の表示状態では、セグメントS0、S1、S3、S4及びS6が黒であり、セグメントS2,S5及び周囲領域S7が白である。そして、変化後の(B)の表示状態では、セグメントS0、S1、S2、S3及びS6が黒となり、セグメントS4、S5及び周囲領域S7が白となる。
【0015】
(A)の数字「2」から(B)の数字「3」に表示を変化させるために、共通電極COMは常に接地(すなわち0V)とし、白から黒に変化するセグメント電極SEG2に一時的に正の駆動電圧を印加し、黒から白に変化するセグメント電極SEG4には一時的に負の電圧を印加する。そしてその後、セグメント電極SEG2とSEG4は共通電極COMと同電位の0Vに戻すと共に、変化しないセグメント電極SEG0、SEG1、SEG3、SEG5、SEG6、及び周囲領域のセグメント電極SEG7は、0Vの印加を継続する。
【0016】
このように、黒、又は白に書き換えるセグメント電極には、一時的に正、又は負の駆動電圧を印加し、表示が変化しない他のセグメント電極には共通電極COMと同電位の0Vを継続するのは、前述したように表示パネル50はメモリ性を有するため、前回の表示状態をそのまま保持することが出来るからである。
【0017】
しかし、このような電気泳動表示パネルは、駆動電圧を印加して表示を黒、又は白とした後、長時間、電圧無印加状態を続けると、表示層における帯電粒子に僅かながら自由な流動が生じて、白又は黒の表示濃度が変化して灰色に近づく傾向があり、表示のコントラストが次第に低下して視認性が悪くなるという問題がある。また、コントラストが低下して、セグメントの表示濃度が変化したときに、表示を書き換える駆動電圧をそのセグメント電極に印加すると、正規の黒又は白の濃度の表示がなされなくなって表示濃度にばらつきが生じ、表示品質が低下する問題もある。このような現象は残像現象と呼ばれ、電気泳動表示パネルのひとつの問題点である。
【0018】
ここで図13は、この電気泳動表示パネルのコントラスト低下の一例を示したグラフである。図13において横軸は経過時間であり、縦軸は表示パネルの光反射率である。ここで、電気泳動表示パネルのセグメント電極に負の電圧を印加して白表示(光反射率大)とし、また、他のセグメント電極に正の電圧を印加して黒表示(光反射率小)とし、その後、駆動電圧を零(すなわち電圧無印加状態)としてからの経過時間による光反射率の変化を測定した。
【0019】
この図13によって明らかなように、駆動電圧の印加直後は、たとえば、白表示の光反射率は40%程度あるが、経過時間に沿って低下し、10時間後の光反射率は30%近くまで低下している。また、黒表示の光反射率は当初5%以下であるが、経過時間に沿って上昇し、10時間後の光反射率は10%近くまで上昇している。ここで、白表示と黒表示の光反射率の比がコントラストであるので、経過時間と共にコントラストが低下していることが理解できる。この経過時間によるコントラストの低下は、前述したように、表示パネルの表示品質を悪化させるものであるので、改善が求められている。
【0020】
このような背景から、表示書き換え後の経過時間によるコントラストの低下を軽減するために、表示が変化するときには表示を書き換える表示反転パルスを出力し、表示が変化しないときには表示を上書きする上書きパルスを出力する表示装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0021】
以下、この特許文献1で開示されている従来の電気泳動表示パネルの駆動電圧の概略について図14を用いて説明する。ここで図14に示す駆動電圧は、図9で示した表示パネル50のセグメント電極SEGのいずれかに印加されるセグメント駆動電圧VS20〜23を示し、共通電極COMに印加される電圧は、0Vであるので図示は省略する。
【0022】
図14において、セグメント駆動電圧VS20は、表示が白状態で変化しない場合(白→白)の駆動電圧であり、セグメント駆動電圧VS21は、表示が黒状態で変化しない場
合(黒→黒)の駆動電圧であり、セグメント駆動電圧VS22は、表示が白から黒に変化する場合(白→黒)の駆動電圧であり、セグメント駆動電圧VS23は、表示が黒から白に変化する場合(黒→白)の駆動電圧である。
【0023】
セグメント駆動電圧VS20とVS21は、前置パルスを出力する前置期間T10と、上書きパルスを出力する上書き期間T11を有している。セグメント駆動電圧VS22とVS23は、前置パルスを出力する前置期間T10と、表示反転パルスを出力する表示反転期間T12を有している。また、表示期間T13は、駆動電圧が0Vを継続する期間であり、表示状態を維持するための期間である。
【0024】
ここで、表示の推移が白→白のときに出力されるセグメント駆動電圧VS20は、負電圧−Vの上書きパルスP20mが上書き期間T11に出力され、また、上書きパルスP20mと極性が反対の正電圧+Vの前置パルスP21pが前置期間T10に出力される。また、他の期間である表示反転期間T12(除くT11)と表示期間T13は、共通電極COMと同電位の0Vが出力される。
【0025】
また、表示の推移が黒→黒のときに出力されるセグメント駆動電圧VS21は、正電圧+Vの上書きパルスP20pが上書き期間T11に出力され、また、上書きパルスP20pと極性が反対の負電圧−Vの前置パルスP21mが前置期間T10に出力される。また、他の期間である表示反転期間T12(除くT11)と表示期間T13は、共通電極COMと同電位の0Vが出力される。
【0026】
また、表示の推移が白→黒のときに出力されるセグメント駆動電圧VS22は、正電圧+Vの表示反転パルスP22pが表示反転期間T12に出力され、また、表示反転パルスP22pと極性が反対の負電圧−Vの前置パルスP23mが前置期間T10に出力される。また、表示期間T13は、共通電極COMと同電位の0Vが出力される。
【0027】
また、表示の推移が黒→白のときに出力されるセグメント駆動電圧VS23は、負電圧−Vの表示反転パルスP22mが表示反転期間T12に出力され、また、表示反転パルスP22mと極性が反対の正電圧+Vの前置パルスP23pが前置期間T10に出力される。また、表示期間T13は、共通電極COMと同電位の0Vが出力される。
【0028】
ここで、上書きパルスP20mとP20pは、メモリ性を有する電気泳動型の表示パネルの特性である電圧無印加状態を続けた場合に白又は黒の表示濃度が変化して灰色に近づき、表示のコントラストが次第に低下する現象を低減させるために印加される。すなわち、表示パネル50のセグメントが白を保持していて次第に白から灰色に近づいたとき、白となる負電圧−Vの上書きパルスP20mを再び印加することによって、表示状態は正規の白の濃度に戻るのでコントラストの低下を低減させることが出来る。
【0029】
また同様に、表示パネル50のセグメントが黒を保持していて次第に黒から灰色に近づいたとき、黒となる正電圧+Vの上書きパルスP20pを再び印加することによって、表示状態は正規の黒の濃度に戻るのでコントラストの低下を低減させることが出来る。このように、上書きパルスP20m、P20pは、表示パネル50の表示状態の濃淡を強くする方向の電圧極性が選択されて印加されるので、長時間、表示内容が変化しない表示部分があったとしても、表示のコントラスト低下を防ぐことが示されている。
【0030】
また、前置期間T10に出力される前置パルスについて説明すると、セグメント駆動電圧VS20(白→白)の前置パルスP21pは正電圧+Vであって、そのあとに出力される上書きパルスP20mは負電圧−Vである。ここで、電気泳動表示パネルに周期的に負電圧−Vの上書きパルスP20mが印加されると、パネルに負電圧−Vの直流分が僅かず
つ積算され、長期的に見て電気泳動表示パネルが劣化し、信頼性が低下する問題がある。しかし、上書きパルスP20mの印加の前の前置期間T10に反対極性である前置パルスP21pを印加することにより、電気泳動表示パネルの電極間に逆向きの電流が流れて交流化駆動に近い駆動が行われ、直流分の積算が低減される。
【0031】
同様に、セグメント駆動電圧VS21においても、上書きパルスP20pの前に反対極性の前置パルスP21mを印加して電気泳動表示パネルを交流化駆動に近い駆動が行われる。これにより、表示パネルの劣化を軽減出来ることが示されている。
【0032】
また、セグメント駆動電圧VS22とVS23は、表示反転パルスP22p前に前置パルスP23mを出力し、また、表示反転パルスP22mの前に前置パルスP23pを出力している。このときの前置パルスP23m、P23pの作用は、表示期間T13で白又は黒の表示濃度が変化して灰色に近づいていく状態を、前置パルスによって一旦正規の白又は黒の濃度に戻してから、表示反転パルスによって目的の黒又は白の濃度に書き換えて、書き換え後の濃度を正規のレベルにするという作用がある。これにより、表示の濃淡ムラを低減出来ることが示されている。
【0033】
ここで、特許文献1で開示された駆動電圧(図14参照)によって、表示パネルのコントラストが改善される一例を図15を用いて説明する。図15は、前述した電気泳動表示パネルのコントラスト低下の一例(図13参照)が、どのように改善されるかを示している。図15において、横軸は経過時間であり、縦軸は表示パネル50の光反射率を示している。ここで、例えば前述した図11のセブンセグメントキャラクタSCの周囲領域S7のように、白を長時間表示させるセグメントの場合、表示を書き換える表示書換信号が来る毎に、そのタイミングに同期して上書きパルスP20m(図14参照)を印加すると、白表示は繰り返し白が上書きされる。これにより、図示するように白表示のセグメントは、表示書換信号のタイミングで白の濃度が正規の白濃度(例えば光反射率38%付近)に戻るので、コントラストの低下を防ぐことが出来る。
【0034】
また同様に、図11のセブンセグメントキャラクタSCを反転表示させて周囲領域S7を黒表示として長時間表示させたとしても、表示書換信号が来る毎に、そのタイミングに同期して上書きパルスP20p(図14参照)を印加すると、黒表示は繰り返し黒が上書きされる。これにより、図示するように黒表示のセグメントは、表示書換信号のタイミングで黒の濃度が正規の黒濃度(例えば光反射率5%付近)に戻るので、コントラストの低下を防ぐことが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2009−48077号公報(第14頁−第15頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
しかし、特許文献1における各期間の実時間は、上書き期間T11が約16mS、表示反転期間T12が約300mS、前置期間T10が上書き期間T11の1/2以下として提示されているが、本発明の発明者が電気泳動表示パネルを用いて様々な実験を行った結果、上書きパルス幅と前置上書きパルス幅が異なった電圧不均衡駆動を長時間頻繁に行うと電気泳動表示パネルの著しい劣化を招くことが判明した。またさらに上書きパルスと前置上書きパルスとのパルス幅を等しくして交流化駆動する場合、そのパルス幅が短い領域では、上書きパルスの効果が十分に発揮されないでコントラストが改善せず、パルス幅が長い領域でコントラストが良好になることが判明した。
【0037】
図16は、本発明の発明者が行った上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅の違いに対する表示パネルの光反射率Rの推移の実験結果の一例を示すグラフである。図16において、横軸は印加する上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅(mS)であり、縦軸は表示パネルの光反射率Rである。この実験は、電気泳動表示パネルのセグメント電極に所定の条件で駆動電圧を印加して白表示(光反射率大)とし、また、他のセグメント電極に所定の条件で駆動電圧を印加して黒表示(光反射率小)とし、その後、前置上書きパルスと上書きパルスのパルス幅を等しくし、短いパルス幅から長いパルス幅までを所定の周期で印加して上書きを行い、白表示のセグメントと黒表示のセグメントのそれぞれの光反射率を測定した。ここで、Rwが白表示の反射率であり、Rbが黒表示の反射率である。
【0038】
図16で明らかなように、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅が50mS以下になると、上書きパルスの効果が発揮されずに、表示パネルの白表示と黒表示の光反射率の比であるコントラストが急激に低下する。また、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅が100mS以上では、コントラストが高い領域になることが理解できる。また、この図16では表現できないが、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅が150mS以上になると、前置上書きパルスの影響で表示パネルの表示にちらつき(フリッカー)が見えてきて、使用者に違和感や不快感を与えることが判明した。
【0039】
本発明の目的は上記課題を解決し、電気泳動表示パネルを用いた表示装置において、コントラストが良好で、ちらつきが目立たず、長寿命動作を可能とする表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
上記課題を解決するために、本発明の表示装置は、下記記載の構成を採用する。
【0041】
本発明の表示装置は、対向する面にそれぞれ電極を有する一対の基板間に帯電粒子が封入され、この帯電粒子の移動によって表示を行うメモリ性を有する表示パネルと、表示データを入力して表示パネルの電極に駆動電圧を印加する駆動手段と、を備える表示装置であって、駆動手段は、入力された表示データを記憶する制御部と、駆動電圧の各種波形を記憶する波形パラメータ部と、制御部に記憶された表示データに基づいて波形パラメータ部からの波形信号を選択して駆動パルスを生成する駆動パルス発生部と、を有し、駆動パルス発生部は、表示データが変化する場合には、表示を書き換える表示反転パルスを電極へ出力し、表示データが変化しない場合には、電極へ上書きする上書きパルスを出力し、表示反転パルスを出力する前には表示反転パルスと極性が異なる前置表示反転パルスを出力し、上書きパルスを出力する前には上書きパルスと極性が異なる前置上書きパルスを出力し、上書きパルスと前置上書きパルスは同じパルス幅で構成され、前置上書きパルスは前置表示反転パルスよりパルス幅が長いことを特徴とする。
【0042】
また、前置上書きパルスは、複数に分割されることを特徴とする。
【0043】
また、上書きパルスと前置上書きパルスの間に休止期間を設けることを特徴とする。
【0044】
さらに周囲温度を測定する温度センサを設け、制御部は温度センサからの温度情報に基づいて上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を変化させるように制御することを特徴とする。
【0045】
また、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅は、常温で50mS以上であることを特徴とする。
【0046】
また、表示パネルは、一対の基板の電極間に印加される電圧の極性に応じて帯電粒子が電気泳動により移動する電気泳動型表示パネルであって、一対の基板のうち一方の基板の電極は複数のセグメント電極であり、他方の基板の電極は複数のセグメント電極と対向する一つの共通電極であり、駆動手段は、各セグメント電極をそれぞれ駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
上記の如く本発明によれば、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を等しくすることで表示パネルは完全交流化駆動されるので、上書きパルスによって表示パネルに直流電圧の印加が積算されず、表示パネルの劣化を防いで信頼性に優れた長寿命の表示装置を提供できる。また前置上書きパルスのパルス幅を前置表示反転パルスに対して長くすることで、表示のコントラストが次第に低下する問題を上書きパルスによって確実に解消でき、コントラストが良好で視認性に優れた表示装置を実現できる。
【0048】
また、前置上書きパルスを複数に分割することで、表示パネルのちらつき現象を少なくすることが出来る。これにより、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を200mS程度まで広げてもちらつきが目立たなくなる。
【0049】
また、上書きパルスと前置上書きパルスの間に休止期間を設けることで、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を短くしても、コントラストの低減をある程度防ぐことが出来る。これにより、前置上書きパルスを複数に分割し、且つ、上書きパルスと前置上書きパルスの間に休止期間を設けることで、コントラストが良好で、ちらつきの少ない表示装置を提供できる。また、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅の許容範囲を広げられるので、温度変化や表示パネルのロット間ばらつき等の影響を防いで、表示の見栄えが安定した表示装置を提供できる。
【0050】
また、周囲温度に応じて上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を可変することによって、温度変化に影響されにくい視認性に優れた表示装置を実現できる。これにより、周囲温度の影響を受けやすい携帯電話や腕時計用の表示装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態の表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の表示装置の基本動作の一例を説明するタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態の表示装置の動作の一例を説明するタイミングチャートである。
【図4】本発明の第3の実施形態の表示装置の動作の一例を説明するタイミングチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態の効果を説明する上書きパルスのパルス幅に対する光反射率のグラフである。
【図6】表示パネルの上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅に対する温度特性を説明するグラフである。
【図7】本発明の第4の実施形態の表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第4の実施形態の表示装置の動作を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の表示装置で使用される電気泳動表示パネルを説明する断面図である。
【図10】本発明の表示装置で使用される電気泳動表示パネルの動作原理を説明する拡大断面図である。
【図11】本発明の表示装置で使用される電気泳動表示パネルの数字キャラクタを表示する一例を示す平面図である。
【図12】本発明の表示装置で使用される電気泳動表示パネルに数字「2」を表示した状態から数字「3」を表示する状態へ変化させる場合の説明図である。
【図13】従来の電気泳動表示パネルの白表示及び黒表示における光反射率の変化の一例を示すグラフである。
【図14】従来の電気泳動表示パネルを駆動する表示装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【図15】従来の表示装置による上書きパルスの効果を説明するグラフである。
【図16】従来の電気泳動表示パネルの上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅に対する光反射率の変化を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下図面により本発明の実施の形態を詳述する。
[各実施形態の特徴]
第1の実施形態の特徴は、電気泳動による表示パネルが長時間書き換えられない場合に印加される上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を等しくすると共に、そのパルス幅を前置表示反転パルス幅よりも長くすることで、表示パネルの劣化を防ぐと共に、表示のコントラストを向上させることである。第2の実施形態の特徴は、前置上書きパルスを複数に分割することで、表示のちらつきを減少させることである。
【0053】
第3の実施形態の特徴は、上書きパルスと前置上書きパルスの間に休止期間を設けることによって、コントラストが許容できる上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅範囲を広げることである。第4の実施形態の特徴は、周囲温度に応じて上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を可変することによって、温度変化に影響されにくい表示装置を提供することである。
【実施例1】
【0054】
[第1の実施形態の構成説明:図1]
第1の実施形態の表示装置の構成について図1を用いて説明する。図1において、1は第1の実施形態としての表示装置である。表示装置1は、帯電粒子の移動によって表示を行う表示パネル50と、この表示パネル50を駆動する駆動手段としての駆動IC10とによって構成される。ここで、表示パネル50は、前述の図9〜図12で示した表示パネル50と同様な構成であるので、図1においても同一番号を付す。
【0055】
すなわち、表示パネル50は、透明な樹脂基板51とFPC55による一対の基板の対向面に形成される共通電極COMとセグメント電極SEGの間に帯電粒子63が封入され
、共通電極COMとセグメント電極SEGに印加される電圧の極性に応じて帯電粒子63が電気泳動によって移動する電気泳動表示パネルである。尚、帯電粒子63は、図10で前述したように、マイクロカプセル60の中に封入された白色粒子63aと黒色粒子63bによって構成され、マイクロカプセル60は、マイクロカプセル表示層53の中に多数分散しているが、詳細な図示と説明は、ここでは省略する。
【0056】
次に駆動IC10は、制御部11、波形パラメータ部12、駆動パルス発生部20、出力ドライバ30等によって構成される。また、クロック信号CLKを発生するクロック回路や、正電圧+Vと負電圧−Vを生成する電源回路等も設けられているが、特別な回路ではないので図示を省略している。
【0057】
ここで、制御部11は、図示しないが内部にレジスタや演算回路を有し、外部から表示データP1を入力して記憶し、駆動電圧を制御するための制御信号P3を出力する。また、スタート信号STを出力する。
【0058】
波形パラメータ部12はレジスタ群で構成され、駆動電圧の波形パラメータ情報を記憶して、波形信号P4を出力する。この波形信号P4は、出力する駆動電圧の各期間の時間情報と各期間の電圧極性情報とを含んでいる。
【0059】
駆動パルス発生部20は、制御信号P3と波形信号P4を入力し、また、クロック信号CLKとスタート信号STを入力する。ここで、駆動パルス発生部20は、制御信号P3によって波形パラメータ部12からの波形信号P4を選択し、スタート信号STにより起動され、内部カウンタ(図示せず)でクロック信号CLKを計数して得られる駆動パルスP10を出力する。
【0060】
すなわち、駆動パルス発生部20は、選択した波形信号P4の情報から駆動電圧の各期間の時間と各期間の電圧極性を決定し、表示パネル50に印加する駆動電圧の基になる駆動パルスP10を生成し出力する。これにより、駆動パルス発生部20から、後述する上書きパルス、前置上書きパルス、表示反転パルス、前置表示反転パルスの各駆動パルスが出力される。
【0061】
次に出力ドライバ30は、出力端子数に相当する数のレベルシフト回路(図示せず)を有しており、駆動パルスP10を入力して、正電圧+V、0V、負電圧−Vの3値によって構成される駆動電圧を出力する複数の出力端子OUTを備えている。ここで、出力端子の本数は駆動する表示パネルに応じて任意に設定されるが、本実施例では、前述した表示パネル50の8本のセグメント電極を駆動することを例として8本の出力端子OUT1〜OUT8を備える。
【0062】
そして、出力端子OUT1〜OUT8は、一部図示を省略しているが表示パネル50の各セグメント電極SEGに接続される。また、出力端子OUTCは、表示パネル50の共通電極COMに接続される出力であり、共通電極COMは常に0Vに接地されるので、出力端子OUTCは駆動IC10の内部で0Vに接続される。
【0063】
なお、駆動IC10の内部構成は図1に限定されず、たとえば、制御部11は駆動IC10の外部に配設されても良い。
【0064】
[第1の実施形態の駆動電圧の基本波形の説明:図1、図2]
次に第1の実施形態の表示装置が出力する駆動電圧の基本波形を図2のタイミングチャートに基づいて説明する。なお、第1の実施形態の構成は図1を参照とし、表示パネル50を駆動することを前提とする。
【0065】
図2において、4種類のセグメント駆動電圧VS1、VS2、VS10、VS11は表示パネル50のセグメント電極SEGに印加される駆動電圧である。ここで、セグメント駆動電圧VS1、VS2は、表示の書き換えが行われないためにコントラストが低下することを防ぐための上書きパルスを印加するための駆動電圧である。セグメント駆動電圧VS1は表示セグメントが白表示のときに白を上書きし(白→白)、セグメント駆動電圧VS2は表示セグメントが黒表示のときに黒を上書きする(黒→黒)。そして、セグメント駆動電圧VS1とVS2は、スタート信号STに同期して、前置上書きパルスを出力する前置上書き期間T1と、上書きパルスを出力する上書き期間T2と、表示状態を維持するための表示期間T0との期間で構成される。
【0066】
また、セグメント駆動電圧VS10とVS11は、表示を変化させる場合に表示反転パルスを印加するための駆動電圧であり、セグメント駆動電圧VS10は、表示セグメントを白→黒に書き換え、セグメント駆動電圧VS11は、表示セグメントを黒→白に書き換える。そして、セグメント駆動電圧VS10とVS11は、スタート信号STに同期して、前置表示反転パルスを出力する前置表示反転期間T3と、表示反転パルスを出力する表示反転期間T4と、表示状態を維持するための表示期間T0との期間で構成される。なお、表示パネル50の共通電極COMは、常に0Vの駆動電圧が印加されているので図示は省略する。
【0067】
ここで、セグメント駆動電圧VS1(白→白)は、正電圧+Vの前置上書きパルスP11pが前置上書き期間T1に出力され、続いて負電圧−Vの上書きパルスP12mが上書き期間T2に出力され、その後の表示期間T0は、共通電極COMと同電位の0Vが印加される。
【0068】
また、セグメント駆動電圧VS2(黒→黒)は、負電圧−Vの前置上書きパルスP11mが前置上書き期間T1に出力され、続いて正電圧+Vの上書きパルスP12pが上書き期間T2に出力され、その後の表示期間T0は、共通電極COMと同電位の0Vが印加される。
【0069】
すなわち、表示が変化しない場合には、表示を上書きする上書きパルスP12m、P12pが出力され、この上書きパルスP12m、P12pの前に、極性が異なる前置上書きパルスP11p、P11mが出力される。これらの前置上書きパルスP11p、P11mと、上書きパルスP12m、P12pは、前述の駆動パルス発生部20(図1参照)によって生成される。
【0070】
ここで、前置上書き期間T1と上書き期間T2は等しく設定され、これによって、セグメント駆動電圧VS1の前置上書きパルスP11pと上書きパルスP12mのパルス幅は同じであり、また、セグメント駆動電圧VS2の前置上書きパルスP11mと上書きパルスP12pのパルス幅も同じである。また、そのパルス幅の下限は、図16で前述したように、パルス幅が50mS以下になると、コントラストが急激に低下するので、常温で50mS以上が必要であり、さらには、表示のコントラストが良好な領域となる100mS以上であると良い。また、パルス幅の上限は、パルス幅が150mSを越えると表示のちらつきが目立つので、150mS以下であると良い。
【0071】
ここで、表示が変化しない場合に出力される上書きパルスP12m、P12pは、前述したように、メモリ性を有する電気泳動表示パネルの特性である電圧無印加状態を続けた場合に白又は黒の表示濃度が変化して灰色に近づき、表示のコントラストが次第に低下する現象を低減させることを目的としている。
【0072】
すなわち、表示セグメントが白を保持していて次第に白から灰色に近づいたとき、白となる負電圧−Vの上書きパルスP12mを再び印加することによって、表示状態は正規の白の濃度に戻るのでコントラストの低下を低減させることが出来る。また同様に、セグメントが黒を保持していて次第に黒から灰色に近づいたとき、黒となる正電圧+Vの上書きパルスP12pを再び印加することによって、表示状態は正規の黒の濃度に戻るのでコントラストの低下を低減させることが出来る。このため、セグメント駆動電圧VS1(白→白)とVS2(黒→黒)によって、上書きパルスP12m、または、上書きパルスP12pを周期的に印加することで、コントラストの低下と、それに起因する残像現象(表示の濃淡ムラ)を低減出来る。
【0073】
また、前置上書き期間T1に出力されるセグメント駆動電圧VS1(白→白)の前置上書きパルスP11pについて説明すると、前置上書きパルスP11pは正電圧+Vであって、そのあとに出力される上書きパルスP12mは負電圧−Vである。ここで、電気泳動表示パネルに周期的に負電圧−Vの上書きパルスP12mが印加されると、パネルに負電圧−Vの直流分が僅かずつ積算され、長期的に見て電気泳動表示パネルが劣化し、信頼性が低下する問題がある。
【0074】
しかし、上書きパルスP12mの印加の前にパルス幅が等しく反対極性である前置上書きパルスP11pを印加することにより、表示パネルは完全に交流化駆動が行われ、表示パネルの電極間に逆向きの電流が繰り返し流れて直流分の印加が打ち消される。これにより、電気泳動表示パネルの劣化を防いで信頼性に優れた長寿命の表示パネルを実現することが出来る。また、セグメント駆動電圧VS2(黒→黒)の前置上書きパルスP11mについても同様であり、上書きパルスP12pと組み合わされて、電気泳動表示パネルを交流化駆動することが出来る。
【0075】
また、セグメント駆動電圧VS10(白→黒)は、表示セグメントを白表示から黒表示に書き換えるときに出力される駆動電圧である。このセグメント駆動電圧VS10(白→黒)は、負電圧−Vの前置表示反転パルスP13mが前置表示反転期間T3に出力され、続いて表示を黒とするために正電圧+Vの表示反転パルスP14pが表示反転期間T4に出力され、その後の表示期間T0は、共通電極COMと同電位の0Vが印加される。
【0076】
また、セグメント駆動電圧VS11(黒→白)は、表示セグメントを黒表示から白表示に変化するときに出力される駆動電圧である。このセグメント駆動電圧VS11(黒→白)は、正電圧+Vの前置表示反転パルスP13pが前置表示反転期間T3に出力され、続いて表示を白とするために負電圧−Vの表示反転パルスP14mが表示反転期間T4に出力され、その後の表示期間T0は、共通電極COMと同電位の0Vが印加される。ここで、表示反転パルスP14pとP14mのパルス幅は、表示を反転させる(表示を書き換える)ための駆動パルスであるので所定の長さが必要であり、一例として約300mSである。
【0077】
また、セグメント駆動電圧VS10とVS11の前置表示反転パルスP13m、P13pの作用について説明すると、表示期間T0が続いて白又は黒の表示濃度が変化して灰色に近づいた状態を、前置表示反転パルスによって一旦正規の白又は黒の濃度に戻してから、表示反転パルスP14p、P14mによって目的の黒又は白の濃度に書き換えて、書き換え後の濃度を正規のレベルにするという作用がある。これにより、表示の濃淡ムラを低減することが出来る。この前置表示反転パルスP13m、P13pのパルス幅は、10mS、またはそれ以下のパルス幅で十分であり、この前置表示反転パルスP13m、P13pのパルス幅を必要以上に長くすると、表示にちらつきが見えるので好ましくない。
【0078】
これらの前置表示反転パルスP13m、P13pと、表示反転パルスP14p、P14
mは、前述の駆動パルス発生部20(図1参照)によって生成される。
【0079】
ここで、第1の実施形態の各駆動パルスのパルス幅をまとめると、前置上書きパルスP11p、P11mと上書きパルスP12m、P12pのパルス幅は等しく、推奨するパルス幅は、常温でパルス幅の下限はコントラストから約100mSであり、パルス幅の上限は表示のちらつきから約150mSである(図16参照)。また、前置表示反転パルスP13m、P13pのパルス幅は約10mS、またはそれ以下である。また、表示反転パルスP14pとP14mのパルス幅は、約300mSである。これによって、上書きパルスP12m、P12pのパルス幅は、前置表示反転パルスP13m、P13pのパルス幅より広い構成となる。
【0080】
すなわち、第1の実施形態の駆動電圧は、前置上書きパルスと上書きパルスのパルス幅を等しくすると共に、前置上書きパルスと上書きパルスのパルス幅の下限値は、表示のコントラストが低下しない領域で決定し、パルス幅の上限値は、表示のちらつきが目立たない領域で決定するのである。これは、後述する第2〜第4の実施形態においても適応される。
【0081】
なお、前置上書きパルスと上書きパルスのパルス幅は、表示装置が表示するアプリケーションの要求に応じて、前述の下限値と上限値の範囲内で選択して良い。たとえば、表示のちらつきが比較的許容されるアプリケーションでは、パルス幅を上限値に近い値に選択する。これにより、コントラストがさらに良好な表示を実現できる。また、表示のちらつきが目立たないことを要求されるアプリケーションでは、パルス幅を下限値に近い値に選択する。これにより、ちらつきが目立たない良好な表示を実現できる。
【0082】
以上のように、第1の実施形態によれば、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を等しくすることで、表示パネルは完全交流化駆動されるので、表示パネルに直流電圧の印加が積算されず、表示パネルの劣化を防いで信頼性に優れた長寿命の表示装置を実現することが出来る。また上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を、従来例より長く構成し、前置表示反転パルスに対して長くすることで、表示のコントラストを従来よりさらに高くすることが可能であり、視認性に優れた見栄えの良い表示装置を提供することが出来る。
【実施例2】
【0083】
[第2の実施形態の構成説明:図1]
次に、第2の実施形態の表示装置の説明を行う。第2の実施形態の表示装置の構成は、第1の実施形態の構成と同様であるので、第2の実施形態の構成は図1を参照として詳細な説明は省略する。ここで、第2の実施形態は、前置上書きパルスを複数に分割していることが第1の実施形態と異なる点であるが、複数に分割した前置上書きパルスは、図1に示す波形パラメータ部12に記憶される波形パラメータを換えることで得られるので、ブロック図として構成上の違いはないのである。
【0084】
[第2の実施形態の駆動電圧の説明:図1、図3]
次に、第2の実施形態の表示装置が出力する駆動電圧について図3のタイミングチャートを用いて説明する。なお、第2の実施形態の構成は、前述したように、第1の実施形態の構成と同様であるので、構成は図1を参照とする。
【0085】
図3において、4種類のセグメント駆動電圧VS3、VS4、VS10、VS11は表示パネル50(図1参照)のセグメント電極SEGに印加される駆動電圧である。ここで、セグメント駆動電圧VS3とVS4は、表示の書き換えが行われないためにコントラストが低下することを防ぐための上書きパルスを印加するための駆動電圧である。セグメン
ト駆動電圧VS3は表示セグメントが白表示のときに白を上書きし(白→白)、セグメント駆動電圧VS4は表示セグメントが黒表示のときに黒を上書きする(黒→黒)。そして、セグメント駆動電圧VS3とVS4は、スタート信号STに同期して、複数の前置上書きパルスを出力する前置上書き期間T1a、T1b、T1cと、上書きパルスを出力する上書き期間T2と、表示状態を維持するための表示期間T0との期間で構成される。
【0086】
また、セグメント駆動電圧VS10とVS11は、表示を変化させる場合に表示反転パルスを印加するための駆動電圧であり、第1の実施形態のセグメント駆動電圧VS10、VS11と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0087】
ここで、セグメント駆動電圧VS3(白→白)は、正電圧+Vの複数の前置上書きパルスP11pa、P11pb、P11pcが前置上書き期間T1a、T1b、T1cに出力され、続いて負電圧−Vの上書きパルスP12mが上書き期間T2に出力され、その後の表示期間T0は、共通電極COMと同電位の0Vが印加される。
【0088】
また、セグメント駆動電圧VS4(黒→黒)は、負電圧−Vの複数の前置上書きパルスP11ma、P11mb、P11mcが前置上書き期間T1a、T1b、T1cに出力され、続いて正電圧+Vの上書きパルスP12pが上書き期間T2に出力され、その後の表示期間T0は、共通電極COMと同電位の0Vが印加される。
【0089】
ここで、セグメント駆動電圧VS3の前置上書きパルスP11pa、P11pb、P11pcの合計のパルス幅と上書きパルスP12mのパルス幅は等しく構成され、また、セグメント駆動電圧VS4の前置上書きパルスP11ma、P11mb、P11mcの合計のパルス幅と上書きパルスP12pのパルス幅も等しく構成される。
【0090】
また、そのパルス幅の下限は、図16で前述したように、上書きパルスのパルス幅が50mS以下になると、コントラストが急激に低下するので、常温で50mS以上が必要であり、さらには、表示のコントラストが良好な領域となる100mS以上であると良い。また、パルス幅の上限は、前置上書きパルスを複数に分割することで、表示パネルのちらつき現象を少なくすることが出来るので、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を200mS程度まで広げてもちらつきが目立たなくなる。

【0091】
ここで、前置上書きパルスを複数に分割することで、表示パネルのちらつき現象が少なくなる理由は、前述の図10で示した電気泳動型の表示パネル50は、内部の白色粒子63aと黒色粒子63bが分散媒62中を電気泳動によって移動するが、その帯電粒子の移動が、分割された個々の前置上書きパルスの短いパルス幅に応答できないためと考えられる。なお、前置上書きパルスの分割数は限定されないが、分割数が多すぎると(個々のパルス幅が短すぎると)、実質的には複数のパルスが一体化して分割の効果が減少する。
【0092】
また、上書きパルスP12m、P12pは、第1の実施形態の駆動電圧と同様に、電気泳動表示パネルの特性である電圧無印加状態を続けた場合に白又は黒の表示濃度が変化して灰色に近づき、表示のコントラストが次第に低下する現象を低減させることを目的としている。
【0093】
また、複数の前置上書きパルスP11pa、P11pb、P11pc、及びP11ma、P11mb、P11mcについても、第1の実施形態の駆動電圧と同様に、上書きパルスに対して極性が異なる前置上書きパルスを印加して交流化駆動を行い、表示パネルの劣化を防ぐことを目的としている。
【0094】
ここで、第2の実施形態の各駆動パルスのパルス幅をまとめると、前置上書きパルスP11pa、P11pb、P11pcの合計パルス幅、及びP11ma、P11mb、P11mcの合計パルス幅と、上書きパルスP12m、P12pのパルス幅は等しく、そのパルス幅の下限はコントラストから常温で約100mS、パルス幅の上限はちらつき現象が少なくなるので約200mSである。また、セグメント駆動電圧VS10、VS11の前置表示反転パルスP13m、P13pと、表示反転パルスP14pとP14mのそれぞれのパルス幅は、第1の実施形態と同様である。これによって、上書きパルスP12m、P12pのパルス幅は、前置表示反転パルスP13m、P13pのパルス幅より広い構成となる。ただし分割された前置上書きパルスP11pa、P11pb、P11pc、及びP11ma、P11mb、P11mcにおける一つのパルスは、前置表示反転パルスよりパルス幅が長いとは限らない。
【0095】
以上のように、第2の実施形態によれば、前置上書きパルスを複数に分割することで、表示パネルのちらつき現象を少なくすることが出来るので、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅の上限値を長く設定できる。これにより、上書きパルスと前置上書きパルスの許容されるパルス幅範囲が広くなるので、温度変化や表示パネルの製造ばらつきなどの影響が少ない、安定した表示を維持する表示装置を提供することが出来る。
【実施例3】
【0096】
[第3の実施形態の構成説明:図1]
次に、第3の実施形態の表示装置の説明を行う。第3の実施形態の表示装置の構成は、第1の実施形態の構成と同様であるので、第3の実施形態の構成は図1を参照として詳細な説明は省略する。ここで、第3の実施形態は、上書きパルスと前置上書きパルスの間に休止期間を設けることが第1の実施形態と異なる点であるが、休止期間を設けた上書きパルスと前置上書きパルスは、図1に示す波形パラメータ部12に記憶される波形パラメータを換えることで得られるので、ブロック図として構成上の違いはないのである。
【0097】
[第3の実施形態の駆動電圧の説明:図1、図4、図5]
次に、第3の実施形態の表示装置が出力する駆動電圧について図4のタイミングチャートを用いて説明する。なお、第3の実施形態の構成は、前述したように、第1の実施形態の構成と同様であるので、構成は図1を参照とする。
【0098】
図4において、4種類のセグメント駆動電圧VS5、VS6、VS10、VS11は表示パネル50(図1参照)のセグメント電極SEGに印加される駆動電圧である。ここで、セグメント駆動電圧VS5とVS6は、表示の書き換えが行われないためにコントラストが低下することを防ぐための上書きパルスを印加するための駆動電圧である。セグメント駆動電圧VS5は表示セグメントが白表示のときに白を上書きし(白→白)、セグメント駆動電圧VS6は表示セグメントが黒表示のときに黒を上書きする(黒→黒)。そして、セグメント駆動電圧VS5とVS6は、前置上書きパルスを出力する前置上書き期間T1と、上書きパルスを出力する上書き期間T2と、前置上書き期間T1と上書き期間T2の間にある休止期間T5と、表示状態を維持するための表示期間T0との期間で構成される。
【0099】
また、セグメント駆動電圧VS10、VS11は、表示を変化させる場合に表示反転パルスを印加するための駆動電圧であり、第1の実施形態のセグメント駆動電圧VS10、VS11と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0100】
ここで、セグメント駆動電圧VS5(白→白)は、正電圧+Vの前置上書きパルスP11pが前置上書き期間T1に出力され、そのあと、所定の長さの休止期間T5の後に、負電圧−Vの上書きパルスP12mが上書き期間T2に出力され、その後の表示期間T0は
、共通電極COMと同電位の0Vが印加される。
【0101】
また、セグメント駆動電圧VS6(黒→黒)は、負電圧−Vの前置上書きパルスP11mが前置上書き期間T1に出力され、そのあと、所定の長さの休止期間T5の後に、正電圧+Vの上書きパルスP12pが上書き期間T2に出力され、その後の表示期間T0は、共通電極COMと同電位の0Vが印加される。
【0102】
ここで、セグメント駆動電圧VS5の前置上書きパルスP11pのパルス幅と上書きパルスP12mのパルス幅は等しく構成され、また、セグメント駆動電圧VS6の前置上書きパルスP11mのパルス幅と上書きパルスP12pのパルス幅も等しく構成される。
【0103】
また、そのパルス幅の下限は、上書きパルスと前置上書きパルスの間に休止期間T5を設けることで、パルス幅の減少によるコントラストの低減が緩和されて許容できるパルス幅範囲を広げることが出来るので、70mS〜80mS以上のパルス幅であればコントラストが良好な領域となる。また、パルス幅の上限は、上書きパルスのパルス幅が150mSを越えると、表示のちらつきが目立つので、150mS以下であると良い。
【0104】
ここで、上書きパルスと前置上書きパルスの間に休止期間T5を設けることで表示のコントラストの低下が緩和される理由は、休止期間T5を設けることで、前置上書きパルスによって移動を始めた帯電粒子を一旦安定させた後に、反対極性の上書きパルスを印加するので、上書きパルスによる効果が十分に発揮されると考えられる。したがって、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅が比較的短くても、コントラストの低下を改善することが出来る。
【0105】
図5は、休止期間T5を設けた第3の実施形態の駆動電圧の効果を説明するグラフである。図5において横軸は上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅(mS)であり、縦軸は表示パネルの光反射率Rである。グラフ上、実線で示す反射率RwとRbが、前述の図16の光反射率と同一であり、休止期間T5がない場合の上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅に対する光反射率の変化である。また、破線で示す光反射率Rw´は、所定の休止期間T5を設けた白表示における光反射率であり、破線で示す光反射率Rb´は、所定の休止期間T5を設けた黒表示における光反射率である。この図5によって、前置上書き期間T1と上書き期間T2の間に休止期間T5を設けることによって、パルス幅が比較的短い領域まで表示のコントラストが良好であることが理解できる。
【0106】
なお、上書きパルスP12m、P12pと前置上書きパルスP11p、P11mの目的は、前述の第1及び第2の実施形態と同様である。
【0107】
ここで、第3の実施形態の各駆動パルスのパルス幅をまとめると、セグメント駆動電圧VS5、VS6の前置上書きパルスP11p、P11mと上書きパルスP12m、P12pのパルス幅は等しく構成される。そして、そのパルス幅の下限は、本実施形態の効果によって、常温で約70〜約80mSまで良く、パルス幅の上限はちらつきを考慮して約150mSである。また、セグメント駆動電圧VS10、VS11の前置表示反転パルスP13m、P13pと、表示反転パルスP14pとP14mのそれぞれのパルス幅は、第1の実施形態と同様である。これによって、上書きパルスP12m、P12pのパルス幅は、前置表示反転パルスP13m、P13pのパルス幅より広い構成となる。
【0108】
以上のように、第3の実施形態によれば、上書きパルスと前置上書きパルスの間に休止期間を設けることで、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を短くしても、コントラストの低減をある程度防ぐことができるので、上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅の下限値を短く設定できる。これにより、許容されるパルス幅の範囲が広がるので、
温度変化や表示パネルの製造ばらつきなどの影響が少ない、安定した表示を維持する表示装置を提供することが出来る。
【0109】
また、第2の実施形態の前置上書きパルスの分割と、第3の実施形態の上書きパルスと前置上書きパルスの間に休止期間を設けることを組み合わせることで、さらに、上書きパルスと前置上書きパルスの許容できるパルス幅範囲を広げられるので、温度変化や表示パネルのロット間ばらつきの影響を排除して、コントラストが良好で、ちらつきの少ない視認性に優れた表示装置を提供することが出来る。
【実施例4】
【0110】
[電気泳動表示パネルの温度特性の説明:図6]
次に、第4の実施形態の表示装置の説明を行う。第4の実施形態は、周囲温度に応じて上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を可変する実施例であるが、これは、電気泳動表示パネルが、温度によってコントラストが変化する特性を補正することを目的とした実施例である。この実施例を理解するために、まず、電気泳動表示パネルの温度特性を説明する。
【0111】
図6は、前述の図16で示した電気泳動表示パネルの上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅の違いに対する光反射率の推移のグラフを基にして、電気泳動表示パネルの温度特性の一例を示したグラフである。図6において横軸は上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅(mS)であり、縦軸は表示パネルの光反射率である。グラフ上、実線が常温(25℃)における白表示と黒表示の光反射率(Rw、Rb)であり、粗い破線が低温(0℃)における白表示と黒表示の光反射率であり、細かい破線が高温(50℃)における白表示と黒表示の光反射率である。
【0112】
このグラフで明らかなように、電気泳動表示パネルは、低温時では上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅が100mS以下になると、急激にコントラストが低下する。また、高温時ではパルス幅が50mSに近づいても、コントラストの低下はそれほど大きくはない。このように、電気泳動表示パネルは、駆動電圧のパルス幅に対するコントラストが、温度によって影響を受けることが理解できる。この温度特性の原因は、電気泳動表示パネルの駆動電圧に対する応答速度が、温度によって変化するからである。すなわち、電気泳動表示パネルの帯電粒子が、低温では駆動電圧に対して応答速度が遅くなり、高温では駆動電圧に対して応答速度が速くなるのである。
【0113】
[第4の実施形態の構成説明:図7]
次に、第4の実施形態の表示装置の構成について図7を用いて説明する。なお、第4の実施形態の表示装置の基本構成は、第1の実施形態の構成(図1)と同様であるので、同一要素には同一番号を付し、構成の異なる箇所を中心に説明する。図7において、40は第4の実施形態としての表示装置である。表示装置40は、帯電粒子の移動によって表示を行う表示パネル50と、この表示パネル50を駆動する駆動手段としての駆動IC10と、温度センサ41によって構成される。ここで、表示パネル50は、前述の図9〜図12で示した表示パネル50と同様な構成であるので、図7においても同一番号を付す。
【0114】
温度センサ41は、サーミスターなどの温度検出素子によって構成され、周囲の温度に応じてアナログ情報である温度信号P2を出力して駆動IC10の制御部11に入力する。駆動IC10の制御部11は、温度信号P2を入力し、図示しないが内部のAD変換回路によってデジタル情報に変換し、温度制御信号P6を出力して波形パラメータ部12に入力する。駆動IC10の他の構成は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0115】
[第4の実施形態の動作説明:図7、図8]
次に、第4の実施形態の表示装置40の基本動作を図8のフローチャートに基づいて説明する。尚、表示装置40の構成は図7を参照とする。図8において、表示装置40の駆動IC10は、表示動作の最初として、温度センサ41からの温度信号P2を入力し、制御部11の内部のAD変換回路(図示せず)でデジタル情報に変換する(ステップST1)。
【0116】
次に駆動IC10の制御部11は、表示装置40の周囲温度が、常温範囲であるか、低温範囲であるか、高温範囲であるかを判断する(ステップST2)。ここで、一例として常温範囲は15℃〜35℃、低温範囲は15℃以下、高温範囲は35℃以上とする。なお、温度範囲の設定は限定されず任意でよい。
【0117】
次に制御部11は、決定した温度範囲に基づいて、その温度範囲に添った駆動パルスのパルス幅を選択するために温度制御信号P6を出力して波形パラメータ部12に入力する(ステップST3)。
【0118】
次に駆動IC10の波形パラメータ部12は、温度制御信号P6を入力し、その温度情報に基づいた駆動電圧の波形パラメータである波形信号P4を出力する(ステップST4)。
【0119】
次に駆動IC10の駆動パルス発生部20は、制御部11からの制御信号P3と波形パラメータ部12からの波形信号P4を入力し、制御信号P3に基づいて波形信号P4を選択し、内部カウンタ(図示せず)でクロック信号CLKを計数して選択された波形信号P4に基づいた駆動パルスP10を出力する。また、出力ドライバ30は、駆動パルスP10を入力して、正電圧+V、0V、負電圧−Vの3値によって構成される駆動電圧を出力する(ステップST5)。
【0120】
[第4の実施形態の駆動電圧の説明:図2]
次に、第4の実施形態の表示装置が出力する駆動電圧について説明するが、第4の実施形態の駆動電圧の基本波形は、第1の実施形態の駆動電圧(図2参照)と同様である。そして、温度が常温範囲である場合、前置上書き期間T1と上書き期間T2を一例として100mSとしたとすると、温度が低温範囲である場合は、波形パラメータ部12によって、たとえば120mSに設定し、また、温度が高温範囲である場合は、たとえば80mSに設定する。これにより、温度変化に応じて、前置上書きパルスと上書きパルスのパルス幅を変えることが出来るので、電気泳動表示パネルの温度特性を補正することが出来る。
【0121】
以上のように、第4の実施形態によれば、周囲温度に応じて上書きパルスと前置上書きパルスのパルス幅を可変することによって、周囲温度が変化してもコントラストが良好で、視認性に優れた表示装置を実現できる。これにより、周囲温度の影響を受けやすい携帯電話や腕時計用の表示装置として好適である。尚、第4の実施形態は、周囲温度を低温、常温、高温の3つの範囲を設定してパルス幅を可変する制御を行ったが、この制御に限定されるものではなく、温度によるパルス幅の切り替えは、さらに細かく実施しても良く、また場合によっては、低温と高温の2段階だけに分けで実施してもよい。なお、第4の実施形態は、第2の実施形態、または、第3の実施形態にも適応できることはもちろんである。
【0122】
また、本実施形態では、セグメント形状のセグメント電極を用いた場合で説明したが、電極にアクティブ素子などを用いたマトリクス表示であっても同様な効果を示す。また、本発明の実施形態で示したブロック図、タイミングチャート、フローチャート等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更してよい。
【符号の説明】
【0123】
1、40 表示装置
10 駆動IC
11 制御部
12 波形パラメータ部
20 駆動パルス発生部
30 出力ドライバ
41 温度センサ
50 表示パネル
51 樹脂基板
55 フレキシブルプリント基板(FPC)
60 マイクロカプセル
63 帯電粒子
COM 共通電極
SEG セグメント電極
P1 表示データ
P2 温度信号
P3 制御信号
P4 波形信号
P6 温度制御信号
P10 駆動パルス
P11p、P11m 前置上書きパルス
P12p、P12m 上書きパルス
P13p、P13m 前置表示反転パルス
P14p、P14m 表示反転パルス
CLK クロック信号
ST スタート信号
T0 表示期間
T1 前置上書き期間
T2 上書き期間
T3 前置表示反転期間
T4 表示反転期間
T5 休止期間
VS1〜VS6、VS10、VS11 セグメント駆動電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する面にそれぞれ電極を有する一対の基板間に帯電粒子が封入され、この帯電粒子の移動によって表示を行うメモリ性を有する表示パネルと、表示データを入力して前記表示パネルの電極に駆動電圧を印加する駆動手段と、を備える表示装置であって、
前記駆動手段は、入力された前記表示データを記憶する制御部と、前記駆動電圧の各種波形を記憶する波形パラメータ部と、前記制御部に記憶された前記表示データに基づいて前記波形パラメータ部からの波形信号を選択して駆動パルスを生成する駆動パルス発生部と、を有し、
前記駆動パルス発生部は、前記表示データが変化する場合には、表示を書き換える表示反転パルスを前記電極へ出力し、前記表示データが変化しない場合には、前記電極へ上書きする上書きパルスを出力し、前記表示反転パルスを出力する前には前記表示反転パルスと極性が異なる前置表示反転パルスを出力し、前記上書きパルスを出力する前には前記上書きパルスと極性が異なる前置上書きパルスを出力し、前記上書きパルスと前記前置上書きパルスは同じパルス幅で構成され、前記前置上書きパルスは前記前置表示反転パルスよりパルス幅が長いことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記前置上書きパルスは、複数に分割されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記上書きパルスと前記前置上書きパルスの間に休止期間を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
さらに周囲温度を測定する温度センサを設け、前記制御部は前記温度センサからの温度情報に基づいて前記上書きパルスと前記前置上書きパルスのパルス幅を変化させるように制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の表示装置。
【請求項5】
前記上書きパルスと前記前置上書きパルスのパルス幅は、常温で50mS以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルは、前記一対の基板の電極間に印加される電圧の極性に応じて前記帯電粒子が電気泳動により移動する電気泳動型表示パネルであって、
前記一対の基板のうち一方の基板の電極は複数のセグメント電極であり、他方の基板の電極は前記複数のセグメント電極と対向する一つの共通電極であり、前記駆動手段は、前記各セグメント電極をそれぞれ駆動することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−32489(P2012−32489A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170353(P2010−170353)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】