説明

表示装置

【課題】有機EL素子の光取り出し面側に保護層とレンズとを配置した表示装置において、光取り出し効率を向上する。
【解決手段】第1電極24の周縁部を覆う絶縁層25を形成し、該絶縁層25の開口部251を、隔壁26の開口部261の内側に形成することにより、絶縁層25の開口部251で規定される発光領域31を、保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側の領域内に配置させ、保護層29の傾斜部291の直下の領域Aを非発光とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子を備えた表示装置は、一般的に、基板上の薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動回路と、これを覆う樹脂からなる平坦化層とを有する。そしてその上に、下部電極、発光層を含む有機化合物層、上部電極が積層された有機EL素子を有する画素が複数形成されて構成される。複数の有機EL素子は、樹脂等からなる隔壁によって区画されている。それぞれの画素において、有機EL素子はこれを駆動する駆動用TFTと、有機EL素子に電源供給する電源線とに直列に接続されている。また、有機EL素子を水分や酸素から保護するために、有機EL素子上に保護層が形成される。電源線から供給された電流に応じて有機EL素子が発光して出射され、表示装置外へ出射される。
【0003】
このような表示装置の課題として、光取り出し効率が悪いことが知られている。これは、有機EL素子では発光層から光が様々な角度で出射するため、保護層と外部空間との境界面で全反射成分が多く発生し、発光光が視野側に取り出されないためである。この課題に対し、特許文献1では、有機EL素子の光取り出し面側にレンズアレイを配置して光取り出し効率を向上させる構成が開示されている。具体的には、酸化窒化シリコン(SiNxy)からなる保護層上に、保護層と直接接して樹脂からなるレンズを配置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−39500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示された構成には、以下のような課題がある。有機EL素子上の保護層は、有機EL素子を区画する隔壁の段差にならった形状で形成されるため、有機EL素子の発光領域上においては、傾斜部を有する凹形状で形成される。樹脂からなるレンズの屈折率は、酸化窒化シリコン(SiNxy)からなる保護層の屈折率よりも小さいため、保護層とレンズとが直接接した構造において、発光領域上の保護層の傾斜部で、発光光は正面方向から画素の外側の方向に屈折する。このため、レンズに入射して視野側へ取り出される光が低減し、光取り出し効率の向上効果が低減するという課題があった。
【0006】
本発明の課題は、上記の課題を解決し、有機EL素子の光取り出し面側に保護層とレンズとを配置した表示装置において、光取り出し効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、複数の発光色が異なる画素を有し、画素毎に有機EL素子を備えた表示装置であって、
前記有機EL素子が、第1電極と、前記第1電極上に開口部を有する隔壁と、少なくとも前記第1電極を覆って配置される、少なくとも発光層を有する有機化合物層と、第2電極とを、この順序で積層してなり、
前記第2電極の上にさらに、複数の画素にわたって配置される保護層と、保護層の上に保護層と直接接して配置される、保護層よりも低い屈折率を有するレンズとを有し、
各画素内において、前記有機化合物層の、積層方向において第1電極と第2電極とに直接接して挟まれる発光領域が、前記保護層の傾斜部の内側端部よりも内側の領域であることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2は、複数の発光色が異なる画素を有し、画素毎に有機EL素子を備えた表示装置であって、
前記有機EL素子が、第1電極と、前記第1電極上に開口部を有する隔壁と、少なくとも前記第1電極を覆って配置される、少なくとも発光層を有する有機化合物層と、第2電極とを、この順序で積層してなり、
前記第2電極の上にさらに、複数の画素にわたって配置される保護層と、保護層の上に保護層と直接接して配置される、保護層よりも低い屈折率を有する距離調節層と、距離調節層の上に距離調節層と直接接して配置されるレンズとを有し、
各画素内において、前記有機化合物層の、積層方向において第1電極と第2電極とに直接接して挟まれる発光領域が、前記保護層の傾斜部の内側端部よりも内側の領域であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、有機EL素子の光取り出し面側に保護層とレンズとを配置した表示装置において、保護層の傾斜部による取り出し光の低減が抑制され、光取り出し効率が向上した表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の表示装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の表示装置の一実施形態の1画素の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の表示装置の他の実施形態の1画素の構成を模式的に示す断面図である。
【図4】従来の表示装置の一例の1画素の構成を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の表示装置の他の実施形態の1画素の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の表示装置は、複数の発光色が異なる画素を有し、前記画素毎に有機EL素子を備えている。有機EL素子は、第1電極及び第2電極の間に、発光層を含む有機化合物層を挟持してなり、有機化合物層の、積層方向において第1電極及び第2電極に直接接して挟まれる領域を発光領域とする。本発明においては、第1電極と有機化合物層との間に、第1電極上に開口部を有する隔壁を有し、該隔壁によって有機EL素子が区画されている。即ち、本発明に係る有機EL素子は、第1電極、隔壁、有機化合物層、第2電極の順序で積層されている。また、本発明においては、有機EL素子の上に保護層とレンズとを備えているが、隔壁によって生じた保護層の傾斜部の内側端部よりも内側に上記発光領域が形成されていることに特徴を有する。以下、本発明を実施形態を挙げて詳細に説明する。尚、説明の中で参照する図面は、各部材を認識可能な大きさとしたため、図面の縮尺は実際とは異なる。
【0012】
[実施形態1]
図1は本発明の表示装置の好ましい一実施形態の概略斜視図である。本発明の表示装置は、複数の画素100が配列される表示領域10とその外側にある外部領域11を有している。表示装置は、通常、R(赤)、G(緑)、B(青)の三つの異なる色相の画素100R,100G,100Bを有する。それらが、図1に示すように、表示領域10内に平面的に配置されている。
【0013】
図2は、本発明の表示装置の一実施形態の1画素分の断面構造を模式的に表わす図である。通常、表示装置は、基板20と、基板20の上に形成された駆動回路21とを有している。駆動回路21は、少なくとも駆動用TFT(不図示)と配線(不図示)を含んでいる。駆動回路21の上には、駆動回路21の上部を平坦化するための平坦化層22が形成されている。
【0014】
平坦化層22の上には第1電極24が形成され、該第1電極24は、コンタクト部23を介して駆動回路21の一部と電気的に接続されている。
【0015】
第1電極上に、絶縁層25が形成されている。絶縁層25は、第1電極24の周縁部を覆い、該第1電極24の上部に開口部251が形成されている。本実施形態では、この絶縁層25の開口部251によって、発光領域31が規定される。
【0016】
第1電極24の端部241は、絶縁層25又は後述する隔壁26によって被覆されている。この構成により、第1電極24と表示領域10全域に形成される第2電極28との短絡が防止される。
【0017】
図2の構成では、画素100内において、絶縁層25の外側端部253が第1電極24の端部241よりも外側であることにより、絶縁層25によって第1電極24の端部241を被覆する構成を示している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、絶縁層25の外側端部253が第1電極24の端部241よりも内側にあり、後述する隔壁26が第1電極24の端部を被覆する構成としてもよい。
【0018】
絶縁層25の上層側に、画素100を区画するための隔壁26が形成されている。隔壁26には、第1電極24上部及び絶縁層25の上部に開口部261が形成されている。隔壁26の開口部261は、絶縁層25の開口部251よりも広く形成される。また、隔壁26は、コンタクト部23を被覆するように形成される。図2では隔壁26は、絶縁層25の上層側であり、絶縁層25と接して配置される構成を示しているが、コンタクト部23を被覆していれば絶縁層25と離間して配置されていてもよい。
【0019】
第1電極24の上には少なくとも発光層を有する有機化合物層27が形成され、有機化合物層27の上に表示領域10全域に渡って第2電極28が形成されている。第2電極28は外部領域11まで引き出され、第2電極コンタクト部(不図示)を介して駆動回路21の一部と電気的に接続されている。
【0020】
第2電極28の上には、有機EL素子を水分や酸素から保護するための保護層29が形成され、該保護層29の上には、発光領域31に対応する領域上に、レンズ30が保護層29と直接接して形成されている。レンズ30が保護層29と直接接していることで、発光層からレンズ30までの距離を短くすることができるため、視野角を広くすることができる。
【0021】
以下に、本実施形態の表示装置の製造方法を説明する。先ず、基板20上に駆動回路21が形成される。駆動回路21は、Alなどの金属配線、ポリシリコン或いはアモルファスシリコンなどを用いたTFT等で構成されている。TFT等は、公知のプロセスを用いて形成することができる。
【0022】
次に、駆動回路21上に平坦化層22が形成される。平坦化層22は、SiN、SiOなどの無機膜、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂膜を材料として用いることができ、スパッタ法、CVD法、スピンコート法などで形成される。そしてフォトリソグラフィー法等を用いてパターニングされる。このパターニングにより、平坦化層22にコンタクト部23が形成される。特に、トップエミッション型で且つ、アクティブマトリクス型の有機EL素子を用いる場合には、平坦化層22は樹脂膜を用いることが望ましく、その膜厚は1μm以上とすることが望ましい。
【0023】
次に、平坦化層22上に第1電極24が形成される。第1電極24は、Cr、Al、Ag、Au、Pt等の金属或いはそれらの合金からなる金属膜をスパッタリング法などで成膜し、フォトリソグラフィー法などでパターニングすることで形成される。金属膜の膜厚は、その表面での反射率が、可視光領域(波長400nm乃至780nm)において40%以上となるように、50nm以上であることが望ましい。また、第1電極24は、上記の金属膜の上に、酸化インジウム錫や酸化インジウム亜鉛等の透明酸化物導電膜を積層する構成であってもよい。尚、透明とは、可視光領域において、光透過率が40%以上であることをいう。第1電極24は、コンタクト部23を介して駆動回路21の一部と電気的に接続される。
【0024】
次に、第1電極24上に、第1電極24上部に開口部を有するように絶縁層25が形成される。本実施形態では、絶縁層25は、開口部251の端部252が、後述する保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側となるように、つまり、傾斜部291の内側端部292で囲まれた領域内に、絶縁層25の開口部251が形成される。
【0025】
また本実施形態では、絶縁層25の膜厚は、隔壁26の膜厚よりも薄い構成である。特に300nm程度以下が望ましい。また、絶縁層25によって第1電極24の端部241を被覆する構成の場合は、第1電極24のカバレッジを確保するために、150nm程度以上が好ましいが、カバレッジを確保できる膜厚であればよい。
【0026】
絶縁層25は、SiN、SiOなどの無機膜を用いるのが望ましいが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂膜を用いてもよい。これらの材料を用いてスパッタ法、CVD法、スピンコート法などで形成され、フォトリソグラフィー法等を用いてパターニングされる。
【0027】
次に、絶縁層25の上層側に、絶縁層25の開口部251に露出した第1電極24上に開口部261を有し、またコンタクト部23を被覆するように、画素を区画する隔壁26が形成される。隔壁26は、上述した平坦化層22と同様の材料、製法を用いることができ、樹脂膜を用いることが望ましく、その膜厚は0.5μm以上が望ましい。このようにすることで、後述する有機化合物層27をマスク蒸着法で形成する場合に、シャドーマスクと第1電極24上の有機化合物層27とが接触するのを防止することができる。
【0028】
次に、隔壁26の上層側に、少なくとも絶縁層25の開口部251に露出した第1電極24を覆うように、少なくとも発光層を含む有機化合物層27を形成する。有機化合物層27は、公知の材料を用いてマスク蒸着法、インクジェット法などで形成することができる。有機化合物層27は、発光層の他に、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、その他の有機機能層を含んでいてもよい。尚、有機化合物層27は隣の画素同士が異なる発光色の場合には、少なくとも発光層は連続しないように形成する必要がある。例えば、発光層の成膜をマスク蒸着法で行う場合には、発光層の成膜領域を、画素100に対応した領域に開口部を設けたシャドーマスクを用いて規定することができる。一色目の発光層の成膜後、二色目の発光層を成膜する際、二色目の画素に対応した領域に開口部を設け、一色目の画素に対応した領域には開口部を設けないシャドーマスクを用いる。この時、前述のように隔壁26があるため、一色目の画素に対応した領域で、シャドーマスクと第1電極24上の有機化合物層とが接触するのを防止することができる。
【0029】
次に、有機化合物層27の上に、表示領域10全域に渡って第2電極28が形成される。第2電極28は、酸化インジウム錫や酸化インジウム亜鉛等の透明酸化物導電膜、或いはAl、Agなどの金属或いは合金からなる金属材料を膜厚5nm以上20nm以下で形成される金属膜を用いることができる。第2電極28は、スパッタ法、真空蒸着法などで形成される。そして、第2電極28は、表示領域10の外に引き出され、外部領域11で第2電極コンタクト部(不図示)を介して駆動回路21の一部と電気的に接続されるように形成される。
【0030】
次に、第2電極28の上に、有機EL素子を水分や酸素から保護するための保護層29が形成される。保護層29は、例えばSiN、SiO2等の無機材料からなる無機膜を、スパッタリング法やプラズマCVD法等の手法により形成するのが防湿性の面から好ましいが、耐水性、耐熱性に優れた材料であればよく、材料はこれに限定されるものではない。保護層29の膜厚は1μm以上が望ましい。
【0031】
保護層29は、画素100を区画する隔壁26の段差にならった形状で形成されるため、傾斜部291が形成される。傾斜部291は、絶縁層25の段差にも影響されるが、本実施形態では絶縁層25の膜厚を隔壁26の膜厚よりも薄い構成としているため、傾斜部291の形状は主に隔壁26の段差にならう。本実施形態では、前述のように、画素100内において、絶縁層25の開口部251の端部252が、保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側となり、発光領域31は保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側に位置する。
【0032】
次に、保護層29の上に、発光領域31に対応する領域にレンズ30が保護層29と直接接して形成される。先ず、熱硬化性樹脂等の樹脂材料を、ディスペンス法等を用いて塗布する。次に、発光領域31のピッチと同じピッチで凹状に窪みが形成された成形型(不図示)を、窪みの中心と、レンズ30を形成する発光領域31の中心がほぼ一致するようにアライメントして、レンズ材料樹脂材料の表面に押圧する。次に、樹脂材料を加熱して硬化する。硬化温度は、有機化合物層27に用いる一般的な有機化合物の耐熱温度が100℃程度であるため、80℃程度にするのが好ましい。そして、成形型を硬化した樹脂材料から剥離する。このようにしてレンズ30が形成される。レンズ30の高さは、吸収による光量減衰防止のために100μm以下とするのが望ましい。尚、互いに隣接するレンズ30の間に、樹脂材料が埋まっていてもよい。成形型は、一般的な金属で形成することができるが、樹脂材料に光硬化型樹脂を用いる場合は、光を透過させる必要があるため石英基板から形成されることが好ましい。また、成形型の樹脂材料に対する剥離性を高めるために、成形型の表面にフッ素樹脂などの膜を形成してもよい。
【0033】
レンズ30は、半球型でも良いし、蒲鉾型の半円筒型であってもよい。蒲鉾型の半円筒型である場合には、表示領域10面内の何れか一方向において特に集光機能を有する。尚、半円筒型の長さ方向の端部は半球型でも良いし、端面が基板に垂直に形成されていても良い。また、レンズ30が蒲鉾型の半円筒型である場合には、表示領域10面内の何れか一方向に、複数の画素にわたってライン状にレンズ30が配置された構成としてもよい。このようにすることで、レンズ30をライン状に配した長手方向について発光領域31を大きくとることができ、開口率を向上することができる。
【0034】
尚、レンズ30は、下記(i)乃至(v)のいずれかの方法によっても作製可能である。
(i)フォトリソグラフィー法等によってパターニングされた樹脂層を熱処理し、リフローによって樹脂層をレンズ形状に変形させる方法。
(ii)均一の厚さに形成された光硬化型樹脂層を、面内方向に分布を持った光で露光し、この樹脂層を現像することによってレンズを形成する方法。
(iii)レジストを面内方向に分布を持った光で露光現像してレンズ状に形成し、その下に均一の厚さに形成された無機或いは有機材料の層を、レンズ状のレジストと共にエッチングして、無機或いは有機材料の層をレンズ状に形成する方法。
(iv)イオンビーム或いは電子ビーム、レーザー等を用いて、均一の厚さに形成された樹脂材料の表面をレンズ形状に加工する方法。
(v)有機EL素子が形成された基板とは別に、レンズが予め形成された樹脂シート或いはガラス板や樹脂の板を用意し、これらをアライメントした後に貼り合せることによってレンズを形成する方法。
【0035】
[比較形態1]
比較のため、図4に従来の表示装置の一例の一画素分の断面構造を示す。本比較形態1の表示装置は、絶縁層25がないことを除いて、先に説明した図2の実施形態1の表示装置と同様の構成である。尚、図4の表示装置において、図2に示した表示装置に含まれている部材と同様の部材については、同じ符号を付している。
【0036】
本比較形態1の表示装置は、第1電極24までの構成は実施形態1と同様である。そして第1電極24の上に、画素100を区画する隔壁26が形成されている。隔壁26には、第1電極24上部に開口部261が形成されている。この絶縁層26の開口部261によって、発光領域31が規定される。また隔壁26は、第1電極24の端部241と、コンタクト部23を被覆するように形成される。
【0037】
隔壁26以降の構成は、実施形態1と同様である。また、各部材の製造方法も実施形態1と同様である。
【0038】
比較形態1の表示装置は、有機EL素子の発光領域31が隔壁26の開口部261で規定され、保護層29の傾斜部291の直下の領域Aからも発光が起こる。また、保護層29とレンズ30とは直接接している。領域Aからの発光光は、レンズ30の屈折率が保護層29の屈折率よりも低い場合、保護層29の傾斜部291により、正面方向から画素100の外側の方向に屈折し、視野側へ取り出されない成分が多い。実施形態1や比較形態1のように、保護層29を窒化シリコン等の無機材料からなる無機膜で構成すると屈折率は2.0程度、レンズ30を熱硬化性樹脂等の樹脂材料で構成すると屈折率1.7程度、レンズ30を酸化シリコン等の無機材料からなる無機膜で構成すると屈折率1.5程度となるため、このような屈折率関係となる。
【0039】
これに対し、実施形態1の表示装置は、絶縁層25の開口部251の端部252が、保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側にあるため有機EL素子の発光領域31が保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側に位置する。本構成により、保護層29の傾斜部291の直下の領域Aを非発光にできるため、比較形態1に対して光取り出し効率を向上することができる。
【0040】
[実施形態1の変形形態]
図3に、実施形態1の変形形態である構成を模式的に示す断面図を示す。本変形形態の表示装置は、保護層29とレンズ30との間に距離調節層32を設けていることを除いて、実施形態1の表示装置と同様の構成である。以下、違いのある点を中心に本変形形態の表示装置の構成を説明する。尚、図3の表示装置において、図2に示した表示装置に含まれている部材と同様の部材については、同じ符号を付している。
【0041】
本変形形態の表示装置は、保護層29までの構成は、実施形態1と同様である。そして、保護層29の上には、平坦化と、レンズ30と発光層との距離を調節するための機能を有する距離調節層32が、保護層29と直接接して、表示領域10全域に渡って形成される。該距離調節層32の上には、発光領域31に対応する領域上に、レンズ30が距離調節層32と直接接して形成される。
【0042】
距離調節層32には、紫外線硬化性樹脂等を用いることができ、表示領域10全域にスピンコート法等を用いて塗布し、その後硬化させることで形成される。膜厚は110nm乃至100μmが望ましい。距離調節層32以外の各部材の製造方法は、実施形態1と同様である。
【0043】
本変形形態の表示装置は、実施形態1と同様に、絶縁層25の開口部251の端部252が、保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側にあるため有機EL素子の発光領域31が保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側に位置する。また、保護層29と距離調節層32とは直接接している。
【0044】
保護層29を窒化シリコン等の無機材料からなる無機膜で構成すると屈折率は2.0程度、距離調節層32を紫外線硬化性樹脂等の樹脂材料で構成すると屈折率1.7程度となるため、距離調節層32の屈折率が保護層29の屈折率よりも低くなる。
【0045】
このような場合でも、本変形較形態の構成では、実施形態1と同様に、保護層29の傾斜部291の直下の領域Aを非発光にできるため、比較形態1に対して光取り出し効率を向上することができる。また、距離調節層32により、発光層とレンズ30との距離を調節することができ、実施形態1に対してさらに光取り出し効率を向上することができる。
【0046】
[実施形態2]
図5に、本発明の第2の実施形態の構成を模式的に示す断面図を示す。本実施形態の表示装置は、実施形態1に対し、絶縁層25がないことと、第2電極28の構成を除いて、実施形態1と同様の構成である。以下、違いのある点を中心に本実施形態の表示装置の構成を説明する。尚、図5の表示装置において、図2に示した実施形態1の表示装置に含まれている部材と同様の部材については、同じ符号を付している。
【0047】
本実施形態の表示装置は、第1電極24までの構成は、平坦化層22に画素毎に第2電極コンタクト部(不図示)が形成されていることを除いて、実施形態1と同様である。そして、第1電極24の上に、画素100を区画する隔壁26が形成されている。隔壁26には、第1電極24上部に開口部261が形成されている。また隔壁26は、第1電極24の端部241と、コンタクト部23を被覆するように形成される。
【0048】
第1電極24の上には、実施形態1と同様に、少なくとも発光層を有する有機化合物層27が形成される。
【0049】
有機化合物層27の上に、画素100毎に、隔壁26の開口部261内の領域でこの開口部261よりも狭い領域に、第2電極28が形成されている。本実施形態では、第2電極28が画素毎に分割して配置され、該第2電極28によって、発光領域31が規定される。
【0050】
本実施形態では更に、画素100内において、第2電極28の端部281が、保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側となるよう形成される。
【0051】
第2電極28は、画素100毎に駆動回路21と接続されており、平坦化層22と有機化合物層27には、この接続のための第2電極コンタクト部(不図示)が形成されている。
【0052】
第2電極28以降の構成は、実施形態1と同様である。また、各部材の製造方法は、第2電極28及び、第2電極28と駆動回路21を接続するための第2電極コンタクト部(不図示)を形成する工程を除いて、実施形態1と同様である。
【0053】
第2電極28は、第2電極28の成膜領域に対応した領域に開口部を設けたシャドーマスクを用いて、マスク蒸着法等で形成する。
【0054】
また、第2電極28と駆動回路21を接続するための第2電極コンタクト部(不図示)は、以下のように平坦化層22と有機化合物層27に形成する。
【0055】
平坦化層22での第2電極コンタクト部(不図示)は、コンタクト部23と同様に形成すればよい。有機化合物層27での第2電極コンタクト部(不図示)は、有機化合物層27の形成時にシャドーマスクを用いて、この第2電極コンタクト部に対応する領域に有機化合物層が形成されないようにする。或いは、有機化合物層27を形成後、第2電極28を形成する前に、レーザー等を用いて第2電極コンタクト部に対応する領域の有機化合物層27を除去してもよい。
【0056】
本実施形態の表示装置は、第2電極28の端部281が、保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側にあることにより、有機EL素子の発光領域31を保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側の領域としている。本構成により、保護層29の傾斜部291の直下の領域Aを非発光にできるため、比較形態1に対して光取り出し効率を向上することができる。
【0057】
尚、本実施形態の表示装置について、実施形態1の変形形態と同様に保護層29とレンズ30との間に距離調節層32を設けてもよい。この構成により、実施形態1の変形形態と同様の作用効果を奏する。
【実施例】
【0058】
[実施例1]
以下、実施形態1の表示装置の具体的な実施例を述べる。尚、本実施例に用いた材料や素子構成は、本発明を限定するものではない。
【0059】
本実施例では、図1のX方向の画素100R,100G,100Bの3画素分の画素ピッチを94.5μmとし、画素100R,100G,100B間の画素ピッチをそれぞれ31.5μmとした。また、各画素のY方向の画素ピッチを94.5μmとして、表示装置を作製した。
【0060】
先ず、基板20上に公知の材料、公知のプロセスを用いて駆動回路21を形成した。次に、駆動回路21上にポリイミド樹脂を塗布し、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングしてコンタクト部23を有した膜厚2μmの平坦化層22を形成した。
【0061】
次に、平坦化層22上に、スパッタリング法を用いてAgを150nm、酸化インジウム亜鉛を10nmの厚さでそれぞれ成膜し、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングして第1電極24を形成した。
【0062】
次に、第1電極24上に、第1電極24の端部241を被覆し、第1電極24上部に開口部251を設けるように、絶縁層25を形成した。絶縁層25は、SiNを用いて膜厚250nmで形成した。また、開口部251は、直径11μmの略円形状で形成した。
【0063】
次に、絶縁層25上に、コンタクト部23を覆い、第1電極24上部及び絶縁層25上部に開口部261を設けるように、隔壁26を形成した。隔壁26は、ポリイミド樹脂を塗布し、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングし、膜厚は1.5μmであった。また、開口部261は、直径18μmの略円形状で形成した。
【0064】
次に、第1電極24の上部に有機化合物層27を、公知の材料を用いてマスク蒸着法で形成した。
【0065】
次に、有機化合物層27の上に、スパッタリング法を用いて表示領域10全域に渡ってAgを12nmの厚さで成膜し、第2電極28を形成した。
【0066】
次に、第2電極28の上に、表示領域10全域に渡って保護層29を形成した。保護層29は、SiNを用いて、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法にて、膜厚6μmで形成した。保護層29の屈折率は2.0であった。保護層29は、隔壁26の段差をならった形状で形成され、傾斜部291が形成された。画素100内において、保護層29の傾斜部291の内側端部292よりも内側の領域は、直径約14μmの略円形状となった。
【0067】
次に、保護層29の上に、発光領域31に対応する領域にレンズ30を保護層29と直接接して形成した。先ず、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、熱硬化性のエポキシ樹脂をディスペンス法を用いて塗布した。そして、発光領域31のピッチと同じピッチで凹状に窪みが形成された成形型(不図示)を、窪みの中心とレンズ30を形成する発光領域31の中心がほぼ一致するようにアライメントして、エポキシ樹脂の表面に押圧した。成形型は、窪みの表面に離形剤としてテフロン(登録商標)系の樹脂をコートしたものを用いた。そして、成形型をエポキシ樹脂に押圧した状態で、真空環境下、100℃で15分間加熱し、エポキシ樹脂を硬化させた。そして、成形型を硬化したエポキシ樹脂から剥離して、レンズ30を形成した。レンズ30は、屈折率1.7、直径21μm、高さ約6μmとなった。
【0068】
[比較例1]
図4に示した比較形態1の表示装置を作製した。本例の表示装置は、絶縁層25がないことを除いて、実施例1の表示装置と同様の構成であり、第1電極24までは実施例1と同一の材料、製造方法で製造した。
【0069】
次いで、第1電極24の上に、第1電極24の端部241とコンタクト部23を覆い、第1電極24上部に開口部261を設けるように、隔壁26を形成した。隔壁26の膜厚、開口部261の形状は、実施例1と同一とし、実施例1と同一の材料、製造方法で製造した。
【0070】
隔壁26以降の構成は、実施例1と同様であり、実施例1と同一の材料、製造方法で製造した。保護層29の傾斜部291の内部端292よりも画素内部側の領域は、直径約14μmの略円形状であった。
【0071】
実施例1と比較例1の表示装置に、画素100に同一の電流量を投入し、視野側に取り出された発光光の輝度を、視野側の正面方向で測定した。その結果、比較例1での輝度に対して、実施例1では、約3倍の輝度が測定された。このように、実施例1では、比較例1に対して光取り出し効率を向上することができた。
【0072】
[実施例2]
以下、実施形態1の変形形態の表示装置の具体的な実施例を述べる。尚、本実施例に用いた材料や素子構成は、本発明を限定するものではない。
【0073】
本例の表示装置は、保護層29とレンズ30との間に距離調節層32を設けていることを除いて、実施例1の表示装置と同様の構成であり、距離調節層32以外は、実施例1と同一の材料、製造方法で製造した。
【0074】
保護層29までを形成した後、粘度200mPa・s、屈折率1.7の紫外線硬化性樹脂を、スピンコート法を用いて塗布した。その後紫外線硬化性樹脂を露光し、硬化させた。このようにして、距離調節層32を、保護層29と直接接して、表示領域10全域に渡って形成した。距離調節層32の膜厚は5μmとなった。そして、距離調節層32の上に、発光領域31に対応する領域上に、レンズ30を距離調節層32と直接接して形成した。
【0075】
実施例2、比較例1及び実施例1の表示装置に、画素100に同一の電流量を投入し、視野側に取り出された発光光の輝度を、視野側の正面方向で測定した。その結果、比較例1での輝度に対して、実施例2では、約5.5倍の輝度が測定された。また、実施例1での輝度に対して、実施例2では、約1.8倍の輝度が測定された。このように、実施例2では、比較例1及び実施例1に対して光取り出し効率を向上することができた。
【符号の説明】
【0076】
24:第1電極、25:絶縁層、26:隔壁、27:有機化合物層、28:第2電極、29:保護層、30:レンズ、31:発光領域、32:距離調節層、100,100R,100G,100B:画素、251:絶縁層の開口部、261:隔壁の開口部、281:第2電極の端部、291:保護層の傾斜部、292:保護層の傾斜部の内側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光色が異なる画素を有し、画素毎に有機EL素子を備えた表示装置であって、
前記有機EL素子が、第1電極と、前記第1電極上に開口部を有する隔壁と、少なくとも前記第1電極を覆って配置される、少なくとも発光層を有する有機化合物層と、第2電極とを、この順序で積層してなり、
前記第2電極の上にさらに、複数の画素にわたって配置される保護層と、保護層の上に保護層と直接接して配置される、保護層よりも低い屈折率を有するレンズとを有し、
各画素内において、前記有機化合物層の、積層方向において第1電極と第2電極とに直接接して挟まれる発光領域が、前記保護層の傾斜部の内側端部よりも内側の領域であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
複数の発光色が異なる画素を有し、画素毎に有機EL素子を備えた表示装置であって、
前記有機EL素子が、第1電極と、前記第1電極上に開口部を有する隔壁と、少なくとも前記第1電極を覆って配置される、少なくとも発光層を有する有機化合物層と、第2電極とを、この順序で積層してなり、
前記第2電極の上にさらに、複数の画素にわたって配置される保護層と、保護層の上に保護層と直接接して配置される、保護層よりも低い屈折率を有する距離調節層と、距離調節層の上に距離調節層と直接接して配置されるレンズとを有し、
各画素内において、前記有機化合物層の、積層方向において第1電極と第2電極とに直接接して挟まれる発光領域が、前記保護層の傾斜部の内側端部よりも内側の領域であることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記第1電極と前記隔壁との間に、前記隔壁よりも膜厚の薄い絶縁層を有し、
前記絶縁層が、前記保護層の傾斜部の内側端部よりも内側の領域に開口部を有し、
前記絶縁層の開口部によって前記発光領域が規定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2電極が前記画素毎に分割して配置され、
前記第2電極の端部が、前記保護層の傾斜部の内側端部よりも内側にあり、
前記第2電極によって前記発光領域が規定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−114773(P2013−114773A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257209(P2011−257209)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】