説明

表示部を備えた手すりベルト

【課題】 手すりベルト本体の表面に設けた表示部が通常の運転では容易に剥離せず且つ鮮明な表示状態を保ち、表示部の剥離の際には簡単な作業で容易に剥離できるようにした表示部を備えた手すりベルトを得る。
【解決手段】 手すりベルト本体2の表面にコーティング剤を塗布して塗膜3を形成し、この塗膜3の表面に所望の表示がされた表示部4を設け、さらに表示部4を設けた塗膜3の表面にコーティング剤を塗布して塗膜5を形成することにより、表示部4をその上に形成した塗膜5により保護し、手すりベルト1が送りローラ等の圧力と埃や土砂等の介在により摩擦を受けても手すりベルト本体2の表面から容易に剥がれてしまうおそれをなくし、また、手すりベルト本体2からの表示部4の除去にあっては、手すりベルト本体2の表面に形成されている塗膜3、5を剥がす作業で塗膜3、5を一緒に除去できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ、動く歩道等の手すりベルト本体の表面に、宣伝広告や進行方向表示等の表示部を備えた手すりベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ、動く歩道等の手すりベルトにおいて、利用者に対する宣伝広告や進行方向等の表示部を手すりベルト本体の表面に設けた手すりベルトが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、エスカレータの手すりベルト本体の表面に宣伝広告や進行方向等を表示する表示部を裏面に粘着層を有する印刷シートで構成し、この印刷シートを貼り付けた手すりベルトが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、エスカレータの手すりベルト本体の表面に宣伝広告等を表示する表示部を、インク組成物を用いて手すりベルトの表面に直接印刷して設けた手すりベルトが開示されている。
【特許文献1】特開2003−212468号公報
【特許文献2】特開2006−347764号公報
【特許文献3】特開2006−8895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2に開示されている手すりベルトでは、エスカレータの手すりベルト本体の表面に宣伝広告や進行方向等を表示する表示部となる印刷シートを貼り付けているので、エスカレータ駆動時における送りローラ等の圧力と埃や土砂等の介在により摩擦を受けてベルト本体の表面から剥がれてしまうおそれがあり、また、不見識な乗降者によって剥がされるといったおそれもある。また、印刷シートがベルト本体の表面から剥がれ難くするには印刷シートの裏面の粘着層を形成する粘着剤の粘着力を強くすることが考えられるが、この場合、例えば、手すりベルトの洗浄等で印刷シートを剥がす必要が生じたとき、印刷シートを剥がす作業に大変な時間と手間がかかり、また、剥がした後に手すりベルトの表面に粘着剤が残留し、この除去も非常に面倒な作業となるといった問題がある。
【0006】
また、上記特許文献3に開示されている手すりベルトでは、エスカレータの手すりベルト本体の表面にインク組成物を用いて印刷して表示部を設けているので、エスカレータ駆動時における送りローラ等の圧力と埃や土砂等の介在により摩擦を受けて摩耗し、表示部の表示内容が不鮮明になってしまう場合があり、また、手すりベルトの表面に印刷された表示部を剥がす場合、溶剤を用いて剥がすので安全性の面で好ましくないといった問題がある。
【0007】
本発明者等は、上記問題点を解決すべく研究を重ねた結果、手すりベルトの表面を保護し、美感を維持するため、手すりベルトの表面にコーティング剤を塗り重ね、複数の塗膜層を形成するといったメンテナンスが行われるケースがあることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の目的とするところは、手すりベルト本体の表面に設けた表示部が通常の運転では容易に剥離せず且つ鮮明な表示状態を保ち、表示部の剥離の際には簡単な作業で容易に剥離できるようにした表示部を備えた手すりベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、手すりベルト本体の表面にコーティング剤が塗布されて塗膜が形成され、この塗膜の表面に所望の表示がされた表示部が設けられ、さらに前記表示部が設けられた塗膜の表面にコーティング剤が塗布されて塗膜が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の表示部を備えた手すりベルトによれば、手すりベルト本体の表面にコーティング剤が塗布されて塗膜が形成され、この塗膜の表面に所望の表示がされた表示部が設けられ、さらに前記表示部が設けられた塗膜の表面にコーティング剤が塗布されて塗膜が形成されているので、前記表示部はその上に形成されている塗膜により保護され、手すりベルトが送りローラ等の圧力と埃や土砂等の介在により摩擦を受けても手すりベルト本体の表面から容易に剥がれてしまうおそれがなく、また、不見識な乗降者によって剥がされるといったおそれもなく、さらには長期に渡って鮮明な表示部を保持できる。また、手すりベルト本体からの表示部の除去にあっては、手すりベルト本体の表面に形成されている塗膜を剥がす作業で塗膜と一緒に除去できるので、手すりベルト本体からの表示部の除去が容易であり、綺麗に且つ確実に除去することができる。また、手すりベルト本体からの表示部の除去に際し、上記した特許文献3に開示されているような溶剤を用いる必要がないので、有害性は無く安全な作業環境を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る表示部を備えた手すりベルトを実施するための最良の形態を図面に示す実施例により詳細に説明する。
図1は本発明に係る表示部を備えた手すりベルトの一実施例を示す一部切り欠き平面図、図2は図1のA−A線拡大断面図である。
【0012】
本例の手すりベルト1は、手すりベルト本体2の表面にコーティング剤が塗布されて塗膜3が形成され、この塗膜3の表面に所望の表示がされた表示部4が設けられ、さらに前記表示部4が設けられた塗膜3の表面にコーティング剤が塗布されて塗膜5が形成されている。
【0013】
手すりベルト1は、エスカレータ、動く歩道等の両側に配置され、無端状に連結されて往路から復路に反転して移動するようになっている。この手すりベルト1を構成する手すりベルト本体2の表面にコーティング剤が塗布され塗膜3が形成されているが、この塗膜3を形成するコーティング剤は手すりベルト本体2の表面を保護するコーティング剤が使用される。このコーティング剤としては、成膜作業時の安全性および短時間成膜という効率の面から水系樹脂を主成分としたコーティング剤が好ましい。
【0014】
本例では、塗膜3を形成するコーティング剤として、特開2002−338898号公報に開示されている、配合物の成膜時の破断強度が20N/mm以上であり且つ破断伸びが100%以上である水系樹脂を主成分としたコーティング剤が使用されている。
【0015】
配合物の成膜時の破断強度が20N/mm以上であり且つ破断伸びが100%以上であると、送りローラによる摩耗に対して耐久性を発揮し、耐久性を得るための特別な作業や特別な機器を必要としない。また、配合物の成膜時の破断強度が30N/mm以上であり且つ破断伸びが200%以上であるとより好ましく、送りローラによる摩耗に対して一層実用的な耐久性を発揮する。
【0016】
水系樹脂としては、ウレタン系、アクリル系、ナイロン系、ポリエステル系、エポキシ系等があり、成膜時の破断強度が20N/mm以上であり且つ破断伸びが100%以上となっていれば、単体であっても、混合系であっても、またそれぞれの架橋体であってもよい。
【0017】
上記のコーティング剤は、短時間で成膜可能で、耐久性に優れ、除去が容易な塗膜が形成できるので、手すりベルト本体2の表面に塗膜3を形成するために塗布されるコーティング剤として特に好ましい。
【0018】
手すりベルト本体2の表面に形成されている塗膜3の表面に設けられた表示部4は、利用者に対する宣伝広告や進行方向を視認可能とする文字や模様などの表示を内容としており、手すりベルト本体2の長手方向に連続して設けられている。この表示部4にあっては、表面に宣伝広告や進行方向等を表示し裏面に粘着層を有する印刷シートで構成し、この印刷シートを、手すりベルト本体2の表面に形成されている塗膜3の表面に貼り付けて設けてもよく、或いはマーキングテープ、マーキングシール等を貼り付けて設けてもよく、また、手すりベルト本体2の表面に形成されている塗膜3の表面に直接マーキング用塗料を塗布して設けてもよく、また、インク組成物を用いて宣伝広告や進行方向等を手すりベルト本体2の表面に形成されている塗膜3の表面に直接印刷して設けてもよい。表示部4の印刷にあっては、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷等により行われるが、特に限定されない。
【0019】
さらに前記表示部4が設けられた塗膜3の表面にコーティング剤が塗布されて塗膜5が形成されている。この塗膜5を形成するコーティング剤としては、前記した塗膜3を形成するために用いたコーティング剤と同様のコーティング剤が用いられている。
【0020】
なお、本例では、手すりベルト本体2の表面に1層の塗膜3が形成され、この塗膜3の表面に所望の表示がされた表示部4が設けられ、さらに表示部4が設けられた塗膜3の表面に1層の塗膜5が形成された構成となっているが、塗膜3及び塗膜5はそれぞれ複数層であってもよい。
【0021】
上記のように構成した表示部を備えた手すりベルトによれば、手すりベルト本体2の表面にコーティング剤が塗布されて塗膜3が形成され、この塗膜3の表面に所望の表示がされた表示部4が設けられ、さらに表示部4が設けられた塗膜3の表面にコーティング剤が塗布されて塗膜5が形成されているので、表示部4はその上に形成されている塗膜5により保護され、手すりベルト1の送りローラ等の圧力と埃や土砂等の介在により摩擦を受けても手摺りベルト本体2の表面から容易に剥がれてしまうおそれがなく、また、不見識な乗降者によって剥がされるといったおそれもなく、さらには長期に渡って鮮明な表示部4を保持できる。
【0022】
また、手すりベルト本体2からの表示部4の除去にあっては、手すりベルト本体2の表面に形成されている塗膜3、5を剥がす作業で塗膜3、5を一緒に除去できるので、手すりベルト本体2からの表示部4の除去が容易であり、綺麗に且つ確実に除去することができる。また、手すりベルト本体2からの表示部4の除去に際し、上記した特許文献3に開示されているような溶剤を用いる必要がないので、有害性は無く安全な作業環境を得ることができる。また、本例では塗膜3、5を形成するコーティング剤として水系樹脂を主成分としたコーティング剤が使用されているので、成膜作業時の安全性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】発明に係る表示部を備えた手すりベルトの一実施例を示す一部切り欠き平面図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 手すりベルト
2 手すりベルト本体
3 塗膜
4 表示部
5 塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手すりベルト本体の表面にコーティング剤が塗布されて塗膜が形成され、この塗膜の表面に所望の表示がされた表示部が設けられ、さらに前記表示部が設けられた塗膜の表面にコーティング剤が塗布されて塗膜が形成されていることを特徴とする表示部を備えた手すりベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−173392(P2009−173392A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13610(P2008−13610)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(390039712)株式会社リンレイ (18)
【Fターム(参考)】