表装材の施工方法及びその方法に使用される支持具
【課題】端部に位置する表装材の位置決めを容易に行うことができると共に、作業性を改善することができ、外観を向上させることができる表装材の施工方法及びその方法に使用される支持具を提供する。
【解決手段】表装材14の施工方法では、表装材14の端部を支持する支持具23を建築物の外壁面15などに固定し、該支持具23上に表装材14の下端部を支持する。続いて、該表装材14の表側重ね代部17の上に隣接する表装材14の裏側重ね代部16を載せて貼着し、それを順に繰り返す。この支持具23としては、外壁面15などに被覆される表装材14全体の端部を支持する長さを有することが好ましい。また、支持具23は凹状に形成され、その外側折曲片が表装材14の基板非支持部に取付けられた充填材の凹条に係合されるように構成されている。
【解決手段】表装材14の施工方法では、表装材14の端部を支持する支持具23を建築物の外壁面15などに固定し、該支持具23上に表装材14の下端部を支持する。続いて、該表装材14の表側重ね代部17の上に隣接する表装材14の裏側重ね代部16を載せて貼着し、それを順に繰り返す。この支持具23としては、外壁面15などに被覆される表装材14全体の端部を支持する長さを有することが好ましい。また、支持具23は凹状に形成され、その外側折曲片が表装材14の基板非支持部に取付けられた充填材の凹条に係合されるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁面、床面又は天井面を被覆するために使用される表装材の施工処理方法及びその方法に使用される支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の表装材について、複数の表装材を重ね合せて建築物の外壁面を被覆するためのものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。すなわち、係る表装材は、基板と、その基板の表面に貼着された介装シートと、その介装シートの表面に定着された化粧材とから構成されている。そして、介装シートの隣接する2辺の表面には化粧材の隣接する2辺から張り出す表側重ね代部が形成されると共に、介装シートの他の2辺の裏面には基板の隣接する2辺から張り出す裏側重ね代部が形成されている。この表装材を建築物の外壁面等に施工する場合には、介装シート及び基板に固定のための孔をあけ、最初に固定する表装材を外壁面の所定位置に前記孔に釘などを打ちつけて固定する。次に、最初の表装材の表側重ね代部にその隣接位置に配置する表装材の裏側重ね代部を重ねて相互に貼着させる。続いて、このような操作を順次繰り返すことにより、外壁面全体に表装材を貼着することができる。
【特許文献1】特許第3023075号公報(第1頁及び第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されている表装材を建築物の外壁面に貼着する場合、最初に外壁面に貼着した表装材の表側重ね代部にその隣接位置の表装材の裏側重ね代部を重ねて貼着したとき、粘着剤の粘着力に対して表装材の自重が大きいため、重ね合わされた表装材の位置が若干下がることがある。そのような場合、表装材間で位置ずれが生じて見栄えが悪くなるという問題があった。そのため、係る表装材の位置を修正する作業を要することがあった。さらに、外壁面に貼着する表装材の特に下端部に位置する表装材を位置決めするために、位置決め用の線を引いたり、仮止めしたりするなどの予備作業を実施する必要があり、作業性が悪いという問題があった。
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、下端部に位置する表装材の位置決めを容易に行うことができると共に、作業性を改善することができ、外観を向上させることができる表装材の施工方法及びその方法に使用される支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1の表装材の施工方法は、基板と、該基板の表面に設けられる介装シートと、該介装シートの表面に設けられる化粧材とより構成され、前記介装シートの隣接する2辺側の表面には化粧材の隣接する2辺から張り出す表側重ね代部が形成されると共に、介装シートの他の2辺側の裏面には基板の隣接する2辺から張り出す裏側重ね代部が形成された表装材を、表側重ね代部の上に裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返して建築物の壁面を複数の表装材で被覆するものである。そして、表装材の下端部を支持する支持具を建築物の壁面に固定し、該支持具上に表装材の下端部を支持し、該表装材の表側重ね代部の上に隣接する表装材の裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返すことを特徴とする。
【0006】
請求項2の表装材の施工方法は、請求項1に係る発明において、前記支持具は、建築物の壁面に被覆される表装材の下辺長より長い長さを有することを特徴とする。
請求項3の表装材の施工方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記表装材の裏側重ね代部に基づく基板非支持部には、基板を支持する充填材が配設されていることを特徴とする。
【0007】
請求項4の表装材施工方法は、請求項3に係る発明において、前記充填材の底面には凹条が形成されると共に、支持具は凹状に形成され、その外端部の折曲片が充填材の凹条に係合するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項5の表装材の施工方法に使用される支持具は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表装材の施工方法に使用される支持具であって、建築物の壁面に固定され、表装材の下端部を支持し、該表装材の表側重ね代部の上に隣接する表装材の裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返して施工できるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1の表装材の施工方法においては、表装材の下端部を支持する支持具を建築物の壁面に固定し、該支持具上に表装材の下端部を支持し、該表装材の表側重ね代部の上に隣接する表装材の裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返すものである。このように、支持具によって表装材の下端部が支持されるため、支持具を壁面に固定した後、その支持具上に表装材を載せるだけで表装材の位置決めを行うことができ、表装材の位置ずれを防止することができる。従って、下端部に位置する表装材の位置決めを容易に行うことができると共に、作業性を改善することができ、外観を向上させることができる。
【0010】
請求項2の表装材の施工方法では、支持具が建築物の壁面に被覆される表装材の下辺長より長い長さを有していることから、請求項1に係る発明の効果に加え、複数の表装材の下端部を同時に位置決めすることができ、作業性を一層改善することができ、外観をさらに向上させることができる。
【0011】
請求項3の表装材の施工方法では、表装材の裏側重ね代部に基づく基板非支持部には、基板を支持する充填材が配設されている。このため、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、基板非支持部における空隙部を充填材で埋めることができ、その部分における強度、断熱性などの性能を向上させることができる。
【0012】
請求項4の表装材の施工方法では、充填材の底面には凹条が形成されると共に、支持具は凹状に形成され、その外端部の折曲片が充填材の凹条に係合するように構成されている。このため、請求項3に係る発明の効果に加え、支持具による表装材の支持を一層確実なものにすることができる。
【0013】
請求項5の表装材の施工方法に使用される支持具は、建築物の壁面に固定され、表装材の下端部を支持するものである。従って、係る支持具を使用して前記表装材の施工方法を実施することにより、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良と思われる実施形態を図1〜9に基づいて詳細に説明する。
図4及び図6に示すように、基板11上には介装シート12が設けられ、該介装シート12上には化粧材13が設けられて積層構造を有する表装材14が構成されている。基板11は鉄、アルミニウム等の金属などにより形成されて剛性を有すると共に、その表裏両面には黒皮等の腐食防止膜が設けられている。また、基板11は樹脂発泡体により形成されていてもよい。この基板11としては、後述する充填材27と同じ材質にすることが好ましい。この場合、基板11と充填材27との線膨張係数を合せることができると共に、断熱性能を得ることができる。介装シ−ト12は、不織布、ガラスクロス、セラミックペ−パ−、合成紙等の素材により形成され、柔軟性を有している。化粧材13は、天然石やその砕石、着色骨材、着色プラスチック砕粒を、合成樹脂エマルション、合成樹脂の溶剤溶液、ホットメルト樹脂等に配合して所定形状に成形し、その表面に模様が施されたもので、柔軟性及び防水性を有している。係る化粧材13は、合成樹脂エマルション等の塗装又はその成形物の貼着により形成される。この表装材14は、建築物の外壁面15のほか、内壁面、床面又は天井面を被覆するために用いられる。
【0015】
図5(a)〜(c)に示すように、これらの化粧材13、介装シ−ト12及び基板11は、共に矩形平板状に形成され、化粧材13及び基板11は同形同大で、介装シ−ト12はそれらよりも大きく形成されている。そして、基板11の隣接する2辺11a、11bが、介装シ−ト12の隣接する2辺12a、12bと合致し、介装シ−ト12の他の隣接する2辺12c、12dが基板11から張り出している。そして、介装シ−ト12の2辺12c、12d側の裏面には、裏側重ね代部16が形成されている。
【0016】
また、化粧材13の隣接する2辺13c、13dが介装シ−ト12の隣接する2辺12c、12dと合致し、介装シ−ト12の他の隣接する2辺12a、12bが化粧材13から張り出している。そして、介装シ−ト12の2辺12a、12b側の表面には、表側重ね代部17が形成されている。表側重ね代部17と裏側重ね代部16とは、介装シート12の対角線を介して相互に対向(点対称位置)している。
【0017】
図4及び図6に示すように、表側重ね代部17及び裏側重ね代部16にはそれぞれ粘着剤層18、19が形成され、それらの表面が剥離テ−プ20、21で被覆されて保護されている。この場合、表側重ね代部17及び裏側重ね代部16の少なくとも一方に粘着剤層18、19が設けられておればよい。粘着剤層18、19を形成する粘着剤としては、アクリルゴム系、非加硫ブチルゴム系、シリコ−ンゴム系、スチレン−ブタジエン共重合ゴム系、ポリイソプレン系、ポリビニルエ−テル系等の粘着剤が用いられる。これらの粘着剤は、粘着テ−プ、ラベル等に通常用いられる材料である。剥離テープ20、21は、テープ基材に特にフッ素樹脂、シリコ−ン樹脂等の離型剤を塗布したものである。この剥離テ−プ20、21の色は、介装シ−ト12の色に対する対照色が用いられ、明確な色分けがなされている。表側重ね代部17における化粧材13の周縁部と粘着剤層18との間には、非粘着部22が形成されている。
【0018】
表装材14を複数並べて使用する際には、各化粧材13間に非粘着部22による隙間ができるように表装材14が配置される。このように各化粧材13間に隙間を設けるために、基板11の大きさは、化粧材13と非粘着部22とを合わせた面積と同形同大に形成される。この場合、表装材14を外壁面15等へ貼り付けていく際に、隣接する基板11を突き合せて貼り付けていくことにより、自ずと隣接する化粧材13間に一定間隔の隙間が形成される。従って、この隙間を目地として活用することができると共に、簡単かつ確実に一定幅の目地を形成することができる。さらに、目地の部分に粘着剤層18が露出することなく、目地の部分に埃が貼り付くことを防止することができる。
【0019】
さて、このように構成された表装材14を複数並べ、建築物の外壁面15等に固定する場合には、介装シ−ト12の表側重ね代部17において、その介装シ−ト12及び基板11の所要位置に固定のための図示しない貫通孔をあける。その後、必要に応じて基板11の裏面に形成された粘着剤層19上の剥離テ−プ21を剥がして、表装材14を目的とする外壁面15等へ貼着させると共に、前記貫通孔を介して固定具を打ちつけて固定する。固定具としては、釘、ビス、木ねじ、アンカーピン等が用いられる。次いで、表装材14の隣接する表裏の表側重ね代部17及び裏側重ね代部16を重ねて相互に貼着させる。この操作を順次繰り返していけばよいので、施工を容易に行うことができる。しかも、表装材14の裏面には鉄製の基板11が貼着されているので、外壁面15等の下地が連続した平面でなくても、図9に示すように、表装材14を凹凸なく整然と貼り付けることができる。なお、この明細書においては、内容の理解を容易にするために、図1、図2、図4、図6等における各部材の厚さを誇張して厚く描いてある。また、図9においては、表装材14の枚数を少なくして描いてある。
【0020】
さらに、表装材14は、使用される位置に応じて種々の全体形状のものが選択される。すなわち、図9のA位置には図7に示したものが使用される。つまり、基板11上に介装シート12を貼着し、その上に化粧材13を貼着して、介装シート12の裏面に裏側重ね代部16及び介装シート12の表面に表側重ね代部17が形成されたものである。図8(a)に示す表装材14は、図9のB位置に使用されるもので、介装シ−ト12及び基板11の2点鎖線部が切除されたものである。図8(b)に示す表装材14は、図9のC位置に使用されるもので、裏側重ね代部16が下部のみに形成されたものである。図8(c)に示す表装材14は、図9のD位置に使用されるもので、裏側重ね代部16が形成されないものである。図8(d)に示す表装材14は、図9のE位置に使用されるもので、介装シ−ト12及び基板11の2点鎖線部が切除されたものである。
【0021】
図8(e)に示す表装材14は、図9のF位置に使用されるもので、裏側重ね代部16が左部のみ形成されたものである。図8(f)に示す表装材14は、図9のG位置に使用されるもので、介装シ−ト12及び基板11の2点鎖線部が切除されたものである。図8(g)に示す表装材14は、図9のH位置に使用されるもので、介装シ−ト12及び基板11の2点鎖線部が切除されたものである。図8(h)に示す表装材14は、図9のI位置に使用されるもので、介装シ−ト12及び基板11の2点鎖線部が切除されたものである。上記の場合には、外壁面15等の縦横長が表装材14の縦横長のほぼ倍数の関係にある場合である。このようなほぼ倍数の関係にない場合には、外壁面15等の外周縁に位置する表装材14を必要な大きさに合わせて切って使用される。
【0022】
上記のような表装材14の施工方法において、表装材14を建築物の外壁面15に最初に貼着、固定した表装材14の表側重ね代部17にその隣接位置の表装材14の裏側重ね代部16を重ねて貼着する場合、粘着剤の粘着力に対して表装材14の自重が大きいと、重ね合わされた表装材14の位置が若干下がることがある。その場合、表装材14間で位置ずれが生じて見栄えが悪くなり、修正作業を要するときがある。そのような不具合が生じないようにするため、支持具を使用して表装材14を支持する施工方法が実施される。
【0023】
そこで、支持具を使用した表装材14の施工方法について説明する。
図1に示すように、支持具23はアルミニウム、鉄等の金属材料を折り曲げて断面逆J字状(凹状)に形成され、図9に二点鎖線で示すように、外壁面15に被覆される表装材14全体の下端部を支持する長さ(図9のD、F及びIの全体の長さ)を有している。該支持具23の側壁を形成する内側折曲片24が外側折曲片26よりも長くなるように構成されている。そして、その内側折曲片24が図示しない釘、ビス等の固定具により外壁面15の所定位置に固定されるようになっている。係る支持具23は1つの表装材14に対応させた長さに設定することもできるが、表装材14の下辺長より長い長さを有することが好ましく、特に外壁面15を覆う表装材14全体の長さに設定することにより、複数の表装材14の下端部を同時に位置決めすることができ、作業を効率良く進めることができる。
【0024】
図1の二点鎖線に示すように、支持具23の内側面には一定間隔をおいて弾性材料(スポンジゴム、樹脂発泡体等)よりなる緩衝材25が貼り付けられ、支持具23内に支持される表装材14の損傷及び位置ずれを抑制することができるようになっている。なお、この緩衝材25は支持具23の内底部に貼り付けることもできる。また、緩衝材25の材質、長さ、厚さなどは適宜設定することができる。
【0025】
図2に示すように、表装材14の裏側重ね代部16に基づく基板非支持部28には、基板11を支持する充填材27が接合されている。図2及び図3に示すように、該充填材27の底面には逆凹状をなす凹条27aが形成されると共に、支持具23はその外端部の外側折曲片26が充填材27の凹条27aに係合するように構成されている。このような支持構造を採用することにより、表装材14を支持具23で強固に支持することができる。そして、支持具23が基板11を支持することで表装材14を支持することができ、支持具23が化粧材13の表面に露出しないようになっている。
【0026】
この充填材27は、圧縮強度があって、撓まない材料で構成される。充填材27として具体的には、合成木材のほか、木材、鉄、アルミニウム等が用いられる。係る充填材27を用い、表装材14の下端部が支持具23に支持されたとき、充填材27が基板非支持部28の空隙部を埋め、その部分での断熱性や強度を保持できるようになっている。
【0027】
さて、図1に示すように、支持具23を使用して表装材14を外壁面15に施工する場合には、まず外壁面15において表装材14で被覆される下端縁の位置に合せるように支持具23を配置し、その内側折曲片24にビス等の固定具をねじ込むことにより、支持具23を外壁面15の所定位置に固定する。次に、その支持具23の端部(図1の場合には左端部)において、図2に示すように、表装材14を上から下してその下端部における充填材27の凹条27aに支持具23の外側折曲片26を差し込むようにし、表装材14(図9のD)を支持具23に支持させる。
【0028】
このとき、支持具23の内側面には緩衝材25が貼付されているため、支持具23に支持された表装材14の位置ずれが抑えられる。加えて、表装材14下端部の裏側重ね代部16に基づく基板非支持部28には充填材27が接合されているため、基板非支持部28の空隙部が埋められ、断熱機能や補強機能を発揮することができる。
【0029】
次いで、当該表装材14の表側重ね代部17の上に、隣接位置(図1では右隣位置)の表装材14(図9のF)の裏側重ね代部16を載せて貼着する。このとき、その表装材14の下端部は上記の表装材14と同様に、その下端部における充填材27の凹条27aに支持具23の外側折曲片26を差し込むようにして、表装材14を支持具23に支持させる。続いて、同じ操作により、隣接する表装材14(図9のI)を外壁面15に施工することにより、支持具23上に表装材14を支持させることができる。
【0030】
次に、最初に施工した表装材14(図9のD)の表側重ね代部17の上に表装材14(図9のC)の裏側重ね代部16を載せて貼着する。このような操作を順に繰り返して表装材14を施工することにより、図9に示すように外壁面15全体に渡って表装材14を施工することができる。なお、下から2段目より上の表装材14は最下段の表装材14の上に直接重ね合せるため、支持具23は不要である。
【0031】
以上の実施形態によって発揮される作用及び効果を、以下にまとめて記載する。
・ 実施形態での表装材14の施工方法においては、表装材14の下端部を支持する支持具23を建築物の外壁面15に固定し、該支持具23上に表装材14の下端部を支持し、該表装材14の表側重ね代部17の上に隣接する表装材14の裏側重ね代部16を載せて貼着し、それを順に繰り返すものである。このように、支持具23によって表装材14の下端部が支持されるため、支持具23を外壁面15に固定した後、その支持具23上に表装材14を載せるだけで表装材14の位置決めを行うことができ、表装材14の位置ずれを防止することができる。従って、下端部に位置する表装材14の位置決めを容易に行うことができと共に、作業性を改善することができる。しかも、表装材14の位置が支持具23によって綺麗に揃うため、外観を向上させることができる。
【0032】
・ 支持具23は建築物の外壁面15に被覆される表装材14全体の下端部を支持する長さを有していることにより、複数の表装材14の下端部を同時に位置決めすることができ、作業性を一層改善することができ、外観をさらに向上させることができる。
【0033】
・ 表装材14の裏側重ね代部16に基づく基板非支持部28には、基板11を支持する充填材27が配設されており、基板非支持部28における空隙部を充填材27で埋めることができるため、その部分における強度、断熱性などの物性を向上させることができる。
【0034】
・ 充填材27の底面には凹条27aが形成されると共に、支持具23は凹状に折曲げ形成され、その外端部の外側折曲片26が充填材27の凹条27aに係合するように構成されていることから、支持具23による表装材14の支持を一層確実なものにすることができる。さらに、支持具23が化粧材13の表面に露出することを回避することができる。
【0035】
・ 支持具23の内側には緩衝材25が設けられていることにより、支持具23内に支持される表装材14の損傷及び位置ずれを抑えることができる。
・ 表装材14の施工方法に使用される支持具23は、建築物の外壁面15等に固定され、表装材14の下端部を支持するものであるため、係る支持具23を使用して前記表装材14の施工方法を実施することにより、その施工方法に係る発明の効果を発揮することができる。
【0036】
なお、前記各実施形態は、次のように変更して具体化することができる。
・ 図10に示すように、支持具23の外側折曲片26は表装材14の介装シート12と化粧材13との間に差し込まれ、支持具23が基板11及び介装シート12を支持するように構成することができる。この場合、介装シート12と化粧材13は柔軟性を有していることから、支持具23の外側折曲片26を表装材14の介装シート12と化粧材13との間に容易に差し込むことができる。表装材14の基板非支持部28には、図11に示すような四角棒状をなす充填材27を取付け、基板非支持部28の空隙部における強度や断熱性を高めるようにすることができる。そして、支持具23が基板11と介装シート12を支持することで表装材14を支持することができる。
【0037】
・ 支持具23を、図12(a)〜(d)に示すように構成することもできる。これらの支持具23は、いずれも凹状部分を有している。図12(a)に示す支持具23においては、実施形態の支持具23に比べて、内側折曲片24が凹状部分よりもさらに下方へ延出された延出部24aが設けられている。この場合、延出部24aにより外壁面15に対する支持具23の固定を一層強固にすることができる。図12(b)に示す支持具23では、図12(a)の支持具23において、底片29が外側折曲片26より外方へ延長された延長部30が設けられている。この場合、延長部30で介装シート12や化粧材13を支持することができる。図12(c)に示す支持具23では、図12(b)に示す支持具23において、延長部30の外端部から下方へ延びる垂下部31が設けられている。図12(d)に示す支持具23は、図12(c)に示す支持具23において、垂下部31が45度斜め下方へ延びる傾斜部32に置き換えられて構成されている。
【0038】
・ 前記支持具23を使用し、表装材14で建築物の内壁面を被覆するように構成することができる。この場合、表装材14が位置ずれすることなく、建築物の内壁面を綺麗に仕上げることができる。
【0039】
・ 前記充填材27を表装材14の基板非支持部28に貼り付けておくのではなく、支持具23に取付けておくことも可能である。
・ 支持具23の外側折曲片26の上端部を断面円弧状に形成し、外側折曲片26が充填材27の凹条27aに差し込みやすくなるように構成することができる。
【0040】
・ 支持具23を、断面L字状などの形状に賦形することも可能である。
・ 支持具23を、建築物の外壁面15等の壁面に被覆される表装材14の下辺長より長い長さ、例えば2つ又は3つの表装材14の下辺長に相当する長さを有するように構成することにより、少なくとも2つの表装材14の下辺を支持することができる。
【0041】
・ 支持具23の内側折曲片24の内側面に貼り付けられた緩衝材25を省略することができる。
・ 表側重ね代部17、裏側重ね代部16を表装材14の上端部及び下端部のみに設けた表装材21を用いることにより、いわゆる鎧貼りが可能である。また、この鎧貼りを横方向に行うこともできる。
【0042】
・ 基板11として、前述した材料のほかに、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック成形物、サイディング材、ガラス材、シラスボード、軽量気泡コンクリート(ALC)、合板、木質繊維板、石膏ボード等を用いることができる。また、基板11、支持具23及び充填材27として合成樹脂(プラスチック)を用いることができ、充填材27として樹脂発泡体を用いることができる。
【0043】
・ 介装シ−ト12の色を各種用意し、目地を好みの色にし、デザイン効果を発揮させるように構成することができる。
・ 化粧材13を、御影石調、大理石調、砂岩調、ブロンズ調等、目的とする石材等の調度に変更し、用途に応じて、好みの化粧材を選択することができ、用途の幅を広げるように構成することができる。
【0044】
・ 表装材14を直角に屈曲させ、表装材14を壁面の角に対応させて使用可能にすることもできる。
・ 介装シ−ト12を化粧材13及び基板11と同形同大に形成し、表側重ね代部17及び裏側重ね代部16に相当する部分を別体のシートとして用意し、介装シ−ト12と別体シートとを接着して表側重ね代部17及び裏側重ね代部16を形成することもできる。
【0045】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記支持具は、金属板を折り曲げて凹状に形成され、その内側折曲片が外側折曲片よりも長くなるように設定されていることを特徴とする請求項4に記載の表装材の施工方法。この方法によれば、請求項4に係る発明の効果に加えて、内側折曲部を建築物の外壁面等に固定具を用いて容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態の支持具を用いて表装材を施工する状態を示す分解斜視図。
【図2】表装材を支持具で支持した状態を示す断面図。
【図3】充填材を示す斜視図。
【図4】表装材の一部を破断して示す斜視図。
【図5】(a)は化粧材を示す平面図、(b)は基板上に介装シートを貼り付けた状態を示す平面図及び(c)は基板を示す平面図。
【図6】図4の6−6線における要部拡大断面図。
【図7】表装材を示す平面図。
【図8】(a)〜(h)は、それぞれ異なる形態の表装材を示す平面図。
【図9】表装材を複数並べた状態を示す平面図。
【図10】別例として、表装材を支持具で支持した状態を示す断面図。
【図11】別例としての充填材を示す斜視図。
【図12】(a)〜(d)は、支持具の別例を示す断面図。
【符号の説明】
【0047】
11…基板、12…介装シート、13…化粧材、14…表装材、15…建築物の壁面としての外壁面、16…裏側重ね代部、17…表側重ね代部、23…支持具、26…折曲片としての外側折曲片、27…充填材、27a…凹条、28…基板非支持部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁面、床面又は天井面を被覆するために使用される表装材の施工処理方法及びその方法に使用される支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の表装材について、複数の表装材を重ね合せて建築物の外壁面を被覆するためのものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。すなわち、係る表装材は、基板と、その基板の表面に貼着された介装シートと、その介装シートの表面に定着された化粧材とから構成されている。そして、介装シートの隣接する2辺の表面には化粧材の隣接する2辺から張り出す表側重ね代部が形成されると共に、介装シートの他の2辺の裏面には基板の隣接する2辺から張り出す裏側重ね代部が形成されている。この表装材を建築物の外壁面等に施工する場合には、介装シート及び基板に固定のための孔をあけ、最初に固定する表装材を外壁面の所定位置に前記孔に釘などを打ちつけて固定する。次に、最初の表装材の表側重ね代部にその隣接位置に配置する表装材の裏側重ね代部を重ねて相互に貼着させる。続いて、このような操作を順次繰り返すことにより、外壁面全体に表装材を貼着することができる。
【特許文献1】特許第3023075号公報(第1頁及び第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されている表装材を建築物の外壁面に貼着する場合、最初に外壁面に貼着した表装材の表側重ね代部にその隣接位置の表装材の裏側重ね代部を重ねて貼着したとき、粘着剤の粘着力に対して表装材の自重が大きいため、重ね合わされた表装材の位置が若干下がることがある。そのような場合、表装材間で位置ずれが生じて見栄えが悪くなるという問題があった。そのため、係る表装材の位置を修正する作業を要することがあった。さらに、外壁面に貼着する表装材の特に下端部に位置する表装材を位置決めするために、位置決め用の線を引いたり、仮止めしたりするなどの予備作業を実施する必要があり、作業性が悪いという問題があった。
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、下端部に位置する表装材の位置決めを容易に行うことができると共に、作業性を改善することができ、外観を向上させることができる表装材の施工方法及びその方法に使用される支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1の表装材の施工方法は、基板と、該基板の表面に設けられる介装シートと、該介装シートの表面に設けられる化粧材とより構成され、前記介装シートの隣接する2辺側の表面には化粧材の隣接する2辺から張り出す表側重ね代部が形成されると共に、介装シートの他の2辺側の裏面には基板の隣接する2辺から張り出す裏側重ね代部が形成された表装材を、表側重ね代部の上に裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返して建築物の壁面を複数の表装材で被覆するものである。そして、表装材の下端部を支持する支持具を建築物の壁面に固定し、該支持具上に表装材の下端部を支持し、該表装材の表側重ね代部の上に隣接する表装材の裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返すことを特徴とする。
【0006】
請求項2の表装材の施工方法は、請求項1に係る発明において、前記支持具は、建築物の壁面に被覆される表装材の下辺長より長い長さを有することを特徴とする。
請求項3の表装材の施工方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記表装材の裏側重ね代部に基づく基板非支持部には、基板を支持する充填材が配設されていることを特徴とする。
【0007】
請求項4の表装材施工方法は、請求項3に係る発明において、前記充填材の底面には凹条が形成されると共に、支持具は凹状に形成され、その外端部の折曲片が充填材の凹条に係合するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項5の表装材の施工方法に使用される支持具は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表装材の施工方法に使用される支持具であって、建築物の壁面に固定され、表装材の下端部を支持し、該表装材の表側重ね代部の上に隣接する表装材の裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返して施工できるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1の表装材の施工方法においては、表装材の下端部を支持する支持具を建築物の壁面に固定し、該支持具上に表装材の下端部を支持し、該表装材の表側重ね代部の上に隣接する表装材の裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返すものである。このように、支持具によって表装材の下端部が支持されるため、支持具を壁面に固定した後、その支持具上に表装材を載せるだけで表装材の位置決めを行うことができ、表装材の位置ずれを防止することができる。従って、下端部に位置する表装材の位置決めを容易に行うことができると共に、作業性を改善することができ、外観を向上させることができる。
【0010】
請求項2の表装材の施工方法では、支持具が建築物の壁面に被覆される表装材の下辺長より長い長さを有していることから、請求項1に係る発明の効果に加え、複数の表装材の下端部を同時に位置決めすることができ、作業性を一層改善することができ、外観をさらに向上させることができる。
【0011】
請求項3の表装材の施工方法では、表装材の裏側重ね代部に基づく基板非支持部には、基板を支持する充填材が配設されている。このため、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、基板非支持部における空隙部を充填材で埋めることができ、その部分における強度、断熱性などの性能を向上させることができる。
【0012】
請求項4の表装材の施工方法では、充填材の底面には凹条が形成されると共に、支持具は凹状に形成され、その外端部の折曲片が充填材の凹条に係合するように構成されている。このため、請求項3に係る発明の効果に加え、支持具による表装材の支持を一層確実なものにすることができる。
【0013】
請求項5の表装材の施工方法に使用される支持具は、建築物の壁面に固定され、表装材の下端部を支持するものである。従って、係る支持具を使用して前記表装材の施工方法を実施することにより、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良と思われる実施形態を図1〜9に基づいて詳細に説明する。
図4及び図6に示すように、基板11上には介装シート12が設けられ、該介装シート12上には化粧材13が設けられて積層構造を有する表装材14が構成されている。基板11は鉄、アルミニウム等の金属などにより形成されて剛性を有すると共に、その表裏両面には黒皮等の腐食防止膜が設けられている。また、基板11は樹脂発泡体により形成されていてもよい。この基板11としては、後述する充填材27と同じ材質にすることが好ましい。この場合、基板11と充填材27との線膨張係数を合せることができると共に、断熱性能を得ることができる。介装シ−ト12は、不織布、ガラスクロス、セラミックペ−パ−、合成紙等の素材により形成され、柔軟性を有している。化粧材13は、天然石やその砕石、着色骨材、着色プラスチック砕粒を、合成樹脂エマルション、合成樹脂の溶剤溶液、ホットメルト樹脂等に配合して所定形状に成形し、その表面に模様が施されたもので、柔軟性及び防水性を有している。係る化粧材13は、合成樹脂エマルション等の塗装又はその成形物の貼着により形成される。この表装材14は、建築物の外壁面15のほか、内壁面、床面又は天井面を被覆するために用いられる。
【0015】
図5(a)〜(c)に示すように、これらの化粧材13、介装シ−ト12及び基板11は、共に矩形平板状に形成され、化粧材13及び基板11は同形同大で、介装シ−ト12はそれらよりも大きく形成されている。そして、基板11の隣接する2辺11a、11bが、介装シ−ト12の隣接する2辺12a、12bと合致し、介装シ−ト12の他の隣接する2辺12c、12dが基板11から張り出している。そして、介装シ−ト12の2辺12c、12d側の裏面には、裏側重ね代部16が形成されている。
【0016】
また、化粧材13の隣接する2辺13c、13dが介装シ−ト12の隣接する2辺12c、12dと合致し、介装シ−ト12の他の隣接する2辺12a、12bが化粧材13から張り出している。そして、介装シ−ト12の2辺12a、12b側の表面には、表側重ね代部17が形成されている。表側重ね代部17と裏側重ね代部16とは、介装シート12の対角線を介して相互に対向(点対称位置)している。
【0017】
図4及び図6に示すように、表側重ね代部17及び裏側重ね代部16にはそれぞれ粘着剤層18、19が形成され、それらの表面が剥離テ−プ20、21で被覆されて保護されている。この場合、表側重ね代部17及び裏側重ね代部16の少なくとも一方に粘着剤層18、19が設けられておればよい。粘着剤層18、19を形成する粘着剤としては、アクリルゴム系、非加硫ブチルゴム系、シリコ−ンゴム系、スチレン−ブタジエン共重合ゴム系、ポリイソプレン系、ポリビニルエ−テル系等の粘着剤が用いられる。これらの粘着剤は、粘着テ−プ、ラベル等に通常用いられる材料である。剥離テープ20、21は、テープ基材に特にフッ素樹脂、シリコ−ン樹脂等の離型剤を塗布したものである。この剥離テ−プ20、21の色は、介装シ−ト12の色に対する対照色が用いられ、明確な色分けがなされている。表側重ね代部17における化粧材13の周縁部と粘着剤層18との間には、非粘着部22が形成されている。
【0018】
表装材14を複数並べて使用する際には、各化粧材13間に非粘着部22による隙間ができるように表装材14が配置される。このように各化粧材13間に隙間を設けるために、基板11の大きさは、化粧材13と非粘着部22とを合わせた面積と同形同大に形成される。この場合、表装材14を外壁面15等へ貼り付けていく際に、隣接する基板11を突き合せて貼り付けていくことにより、自ずと隣接する化粧材13間に一定間隔の隙間が形成される。従って、この隙間を目地として活用することができると共に、簡単かつ確実に一定幅の目地を形成することができる。さらに、目地の部分に粘着剤層18が露出することなく、目地の部分に埃が貼り付くことを防止することができる。
【0019】
さて、このように構成された表装材14を複数並べ、建築物の外壁面15等に固定する場合には、介装シ−ト12の表側重ね代部17において、その介装シ−ト12及び基板11の所要位置に固定のための図示しない貫通孔をあける。その後、必要に応じて基板11の裏面に形成された粘着剤層19上の剥離テ−プ21を剥がして、表装材14を目的とする外壁面15等へ貼着させると共に、前記貫通孔を介して固定具を打ちつけて固定する。固定具としては、釘、ビス、木ねじ、アンカーピン等が用いられる。次いで、表装材14の隣接する表裏の表側重ね代部17及び裏側重ね代部16を重ねて相互に貼着させる。この操作を順次繰り返していけばよいので、施工を容易に行うことができる。しかも、表装材14の裏面には鉄製の基板11が貼着されているので、外壁面15等の下地が連続した平面でなくても、図9に示すように、表装材14を凹凸なく整然と貼り付けることができる。なお、この明細書においては、内容の理解を容易にするために、図1、図2、図4、図6等における各部材の厚さを誇張して厚く描いてある。また、図9においては、表装材14の枚数を少なくして描いてある。
【0020】
さらに、表装材14は、使用される位置に応じて種々の全体形状のものが選択される。すなわち、図9のA位置には図7に示したものが使用される。つまり、基板11上に介装シート12を貼着し、その上に化粧材13を貼着して、介装シート12の裏面に裏側重ね代部16及び介装シート12の表面に表側重ね代部17が形成されたものである。図8(a)に示す表装材14は、図9のB位置に使用されるもので、介装シ−ト12及び基板11の2点鎖線部が切除されたものである。図8(b)に示す表装材14は、図9のC位置に使用されるもので、裏側重ね代部16が下部のみに形成されたものである。図8(c)に示す表装材14は、図9のD位置に使用されるもので、裏側重ね代部16が形成されないものである。図8(d)に示す表装材14は、図9のE位置に使用されるもので、介装シ−ト12及び基板11の2点鎖線部が切除されたものである。
【0021】
図8(e)に示す表装材14は、図9のF位置に使用されるもので、裏側重ね代部16が左部のみ形成されたものである。図8(f)に示す表装材14は、図9のG位置に使用されるもので、介装シ−ト12及び基板11の2点鎖線部が切除されたものである。図8(g)に示す表装材14は、図9のH位置に使用されるもので、介装シ−ト12及び基板11の2点鎖線部が切除されたものである。図8(h)に示す表装材14は、図9のI位置に使用されるもので、介装シ−ト12及び基板11の2点鎖線部が切除されたものである。上記の場合には、外壁面15等の縦横長が表装材14の縦横長のほぼ倍数の関係にある場合である。このようなほぼ倍数の関係にない場合には、外壁面15等の外周縁に位置する表装材14を必要な大きさに合わせて切って使用される。
【0022】
上記のような表装材14の施工方法において、表装材14を建築物の外壁面15に最初に貼着、固定した表装材14の表側重ね代部17にその隣接位置の表装材14の裏側重ね代部16を重ねて貼着する場合、粘着剤の粘着力に対して表装材14の自重が大きいと、重ね合わされた表装材14の位置が若干下がることがある。その場合、表装材14間で位置ずれが生じて見栄えが悪くなり、修正作業を要するときがある。そのような不具合が生じないようにするため、支持具を使用して表装材14を支持する施工方法が実施される。
【0023】
そこで、支持具を使用した表装材14の施工方法について説明する。
図1に示すように、支持具23はアルミニウム、鉄等の金属材料を折り曲げて断面逆J字状(凹状)に形成され、図9に二点鎖線で示すように、外壁面15に被覆される表装材14全体の下端部を支持する長さ(図9のD、F及びIの全体の長さ)を有している。該支持具23の側壁を形成する内側折曲片24が外側折曲片26よりも長くなるように構成されている。そして、その内側折曲片24が図示しない釘、ビス等の固定具により外壁面15の所定位置に固定されるようになっている。係る支持具23は1つの表装材14に対応させた長さに設定することもできるが、表装材14の下辺長より長い長さを有することが好ましく、特に外壁面15を覆う表装材14全体の長さに設定することにより、複数の表装材14の下端部を同時に位置決めすることができ、作業を効率良く進めることができる。
【0024】
図1の二点鎖線に示すように、支持具23の内側面には一定間隔をおいて弾性材料(スポンジゴム、樹脂発泡体等)よりなる緩衝材25が貼り付けられ、支持具23内に支持される表装材14の損傷及び位置ずれを抑制することができるようになっている。なお、この緩衝材25は支持具23の内底部に貼り付けることもできる。また、緩衝材25の材質、長さ、厚さなどは適宜設定することができる。
【0025】
図2に示すように、表装材14の裏側重ね代部16に基づく基板非支持部28には、基板11を支持する充填材27が接合されている。図2及び図3に示すように、該充填材27の底面には逆凹状をなす凹条27aが形成されると共に、支持具23はその外端部の外側折曲片26が充填材27の凹条27aに係合するように構成されている。このような支持構造を採用することにより、表装材14を支持具23で強固に支持することができる。そして、支持具23が基板11を支持することで表装材14を支持することができ、支持具23が化粧材13の表面に露出しないようになっている。
【0026】
この充填材27は、圧縮強度があって、撓まない材料で構成される。充填材27として具体的には、合成木材のほか、木材、鉄、アルミニウム等が用いられる。係る充填材27を用い、表装材14の下端部が支持具23に支持されたとき、充填材27が基板非支持部28の空隙部を埋め、その部分での断熱性や強度を保持できるようになっている。
【0027】
さて、図1に示すように、支持具23を使用して表装材14を外壁面15に施工する場合には、まず外壁面15において表装材14で被覆される下端縁の位置に合せるように支持具23を配置し、その内側折曲片24にビス等の固定具をねじ込むことにより、支持具23を外壁面15の所定位置に固定する。次に、その支持具23の端部(図1の場合には左端部)において、図2に示すように、表装材14を上から下してその下端部における充填材27の凹条27aに支持具23の外側折曲片26を差し込むようにし、表装材14(図9のD)を支持具23に支持させる。
【0028】
このとき、支持具23の内側面には緩衝材25が貼付されているため、支持具23に支持された表装材14の位置ずれが抑えられる。加えて、表装材14下端部の裏側重ね代部16に基づく基板非支持部28には充填材27が接合されているため、基板非支持部28の空隙部が埋められ、断熱機能や補強機能を発揮することができる。
【0029】
次いで、当該表装材14の表側重ね代部17の上に、隣接位置(図1では右隣位置)の表装材14(図9のF)の裏側重ね代部16を載せて貼着する。このとき、その表装材14の下端部は上記の表装材14と同様に、その下端部における充填材27の凹条27aに支持具23の外側折曲片26を差し込むようにして、表装材14を支持具23に支持させる。続いて、同じ操作により、隣接する表装材14(図9のI)を外壁面15に施工することにより、支持具23上に表装材14を支持させることができる。
【0030】
次に、最初に施工した表装材14(図9のD)の表側重ね代部17の上に表装材14(図9のC)の裏側重ね代部16を載せて貼着する。このような操作を順に繰り返して表装材14を施工することにより、図9に示すように外壁面15全体に渡って表装材14を施工することができる。なお、下から2段目より上の表装材14は最下段の表装材14の上に直接重ね合せるため、支持具23は不要である。
【0031】
以上の実施形態によって発揮される作用及び効果を、以下にまとめて記載する。
・ 実施形態での表装材14の施工方法においては、表装材14の下端部を支持する支持具23を建築物の外壁面15に固定し、該支持具23上に表装材14の下端部を支持し、該表装材14の表側重ね代部17の上に隣接する表装材14の裏側重ね代部16を載せて貼着し、それを順に繰り返すものである。このように、支持具23によって表装材14の下端部が支持されるため、支持具23を外壁面15に固定した後、その支持具23上に表装材14を載せるだけで表装材14の位置決めを行うことができ、表装材14の位置ずれを防止することができる。従って、下端部に位置する表装材14の位置決めを容易に行うことができと共に、作業性を改善することができる。しかも、表装材14の位置が支持具23によって綺麗に揃うため、外観を向上させることができる。
【0032】
・ 支持具23は建築物の外壁面15に被覆される表装材14全体の下端部を支持する長さを有していることにより、複数の表装材14の下端部を同時に位置決めすることができ、作業性を一層改善することができ、外観をさらに向上させることができる。
【0033】
・ 表装材14の裏側重ね代部16に基づく基板非支持部28には、基板11を支持する充填材27が配設されており、基板非支持部28における空隙部を充填材27で埋めることができるため、その部分における強度、断熱性などの物性を向上させることができる。
【0034】
・ 充填材27の底面には凹条27aが形成されると共に、支持具23は凹状に折曲げ形成され、その外端部の外側折曲片26が充填材27の凹条27aに係合するように構成されていることから、支持具23による表装材14の支持を一層確実なものにすることができる。さらに、支持具23が化粧材13の表面に露出することを回避することができる。
【0035】
・ 支持具23の内側には緩衝材25が設けられていることにより、支持具23内に支持される表装材14の損傷及び位置ずれを抑えることができる。
・ 表装材14の施工方法に使用される支持具23は、建築物の外壁面15等に固定され、表装材14の下端部を支持するものであるため、係る支持具23を使用して前記表装材14の施工方法を実施することにより、その施工方法に係る発明の効果を発揮することができる。
【0036】
なお、前記各実施形態は、次のように変更して具体化することができる。
・ 図10に示すように、支持具23の外側折曲片26は表装材14の介装シート12と化粧材13との間に差し込まれ、支持具23が基板11及び介装シート12を支持するように構成することができる。この場合、介装シート12と化粧材13は柔軟性を有していることから、支持具23の外側折曲片26を表装材14の介装シート12と化粧材13との間に容易に差し込むことができる。表装材14の基板非支持部28には、図11に示すような四角棒状をなす充填材27を取付け、基板非支持部28の空隙部における強度や断熱性を高めるようにすることができる。そして、支持具23が基板11と介装シート12を支持することで表装材14を支持することができる。
【0037】
・ 支持具23を、図12(a)〜(d)に示すように構成することもできる。これらの支持具23は、いずれも凹状部分を有している。図12(a)に示す支持具23においては、実施形態の支持具23に比べて、内側折曲片24が凹状部分よりもさらに下方へ延出された延出部24aが設けられている。この場合、延出部24aにより外壁面15に対する支持具23の固定を一層強固にすることができる。図12(b)に示す支持具23では、図12(a)の支持具23において、底片29が外側折曲片26より外方へ延長された延長部30が設けられている。この場合、延長部30で介装シート12や化粧材13を支持することができる。図12(c)に示す支持具23では、図12(b)に示す支持具23において、延長部30の外端部から下方へ延びる垂下部31が設けられている。図12(d)に示す支持具23は、図12(c)に示す支持具23において、垂下部31が45度斜め下方へ延びる傾斜部32に置き換えられて構成されている。
【0038】
・ 前記支持具23を使用し、表装材14で建築物の内壁面を被覆するように構成することができる。この場合、表装材14が位置ずれすることなく、建築物の内壁面を綺麗に仕上げることができる。
【0039】
・ 前記充填材27を表装材14の基板非支持部28に貼り付けておくのではなく、支持具23に取付けておくことも可能である。
・ 支持具23の外側折曲片26の上端部を断面円弧状に形成し、外側折曲片26が充填材27の凹条27aに差し込みやすくなるように構成することができる。
【0040】
・ 支持具23を、断面L字状などの形状に賦形することも可能である。
・ 支持具23を、建築物の外壁面15等の壁面に被覆される表装材14の下辺長より長い長さ、例えば2つ又は3つの表装材14の下辺長に相当する長さを有するように構成することにより、少なくとも2つの表装材14の下辺を支持することができる。
【0041】
・ 支持具23の内側折曲片24の内側面に貼り付けられた緩衝材25を省略することができる。
・ 表側重ね代部17、裏側重ね代部16を表装材14の上端部及び下端部のみに設けた表装材21を用いることにより、いわゆる鎧貼りが可能である。また、この鎧貼りを横方向に行うこともできる。
【0042】
・ 基板11として、前述した材料のほかに、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック成形物、サイディング材、ガラス材、シラスボード、軽量気泡コンクリート(ALC)、合板、木質繊維板、石膏ボード等を用いることができる。また、基板11、支持具23及び充填材27として合成樹脂(プラスチック)を用いることができ、充填材27として樹脂発泡体を用いることができる。
【0043】
・ 介装シ−ト12の色を各種用意し、目地を好みの色にし、デザイン効果を発揮させるように構成することができる。
・ 化粧材13を、御影石調、大理石調、砂岩調、ブロンズ調等、目的とする石材等の調度に変更し、用途に応じて、好みの化粧材を選択することができ、用途の幅を広げるように構成することができる。
【0044】
・ 表装材14を直角に屈曲させ、表装材14を壁面の角に対応させて使用可能にすることもできる。
・ 介装シ−ト12を化粧材13及び基板11と同形同大に形成し、表側重ね代部17及び裏側重ね代部16に相当する部分を別体のシートとして用意し、介装シ−ト12と別体シートとを接着して表側重ね代部17及び裏側重ね代部16を形成することもできる。
【0045】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記支持具は、金属板を折り曲げて凹状に形成され、その内側折曲片が外側折曲片よりも長くなるように設定されていることを特徴とする請求項4に記載の表装材の施工方法。この方法によれば、請求項4に係る発明の効果に加えて、内側折曲部を建築物の外壁面等に固定具を用いて容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態の支持具を用いて表装材を施工する状態を示す分解斜視図。
【図2】表装材を支持具で支持した状態を示す断面図。
【図3】充填材を示す斜視図。
【図4】表装材の一部を破断して示す斜視図。
【図5】(a)は化粧材を示す平面図、(b)は基板上に介装シートを貼り付けた状態を示す平面図及び(c)は基板を示す平面図。
【図6】図4の6−6線における要部拡大断面図。
【図7】表装材を示す平面図。
【図8】(a)〜(h)は、それぞれ異なる形態の表装材を示す平面図。
【図9】表装材を複数並べた状態を示す平面図。
【図10】別例として、表装材を支持具で支持した状態を示す断面図。
【図11】別例としての充填材を示す斜視図。
【図12】(a)〜(d)は、支持具の別例を示す断面図。
【符号の説明】
【0047】
11…基板、12…介装シート、13…化粧材、14…表装材、15…建築物の壁面としての外壁面、16…裏側重ね代部、17…表側重ね代部、23…支持具、26…折曲片としての外側折曲片、27…充填材、27a…凹条、28…基板非支持部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の表面に設けられる介装シートと、該介装シートの表面に設けられる化粧材とより構成され、前記介装シートの隣接する2辺側の表面には化粧材の隣接する2辺から張り出す表側重ね代部が形成されると共に、介装シートの他の2辺側の裏面には基板の隣接する2辺から張り出す裏側重ね代部が形成された表装材を、表側重ね代部の上に裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返して建築物の壁面を複数の表装材で被覆する表装材の施工方法において、
表装材の下端部を支持する支持具を建築物の壁面に固定し、該支持具上に表装材の下端部を支持し、該表装材の表側重ね代部の上に隣接する表装材の裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返すことを特徴とする表装材の施工方法。
【請求項2】
前記支持具は、建築物の壁面に被覆される表装材の下辺長より長い長さを有することを特徴とする請求項1に記載の表装材の施工方法。
【請求項3】
前記表装材の裏側重ね代部に基づく基板非支持部には、基板を支持する充填材が配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表装材の施工方法。
【請求項4】
前記充填材の底面には凹条が形成されると共に、支持具は凹状に形成され、その外端部の折曲片が充填材の凹条に係合するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の表装材の施工方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表装材の施工方法に使用される支持具であって、建築物の壁面に固定され、表装材の下端部を支持し、該表装材の表側重ね代部の上に隣接する表装材の裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返して施工できるように構成されていることを特徴とする表装材の施工方法に使用される支持具。
【請求項1】
基板と、該基板の表面に設けられる介装シートと、該介装シートの表面に設けられる化粧材とより構成され、前記介装シートの隣接する2辺側の表面には化粧材の隣接する2辺から張り出す表側重ね代部が形成されると共に、介装シートの他の2辺側の裏面には基板の隣接する2辺から張り出す裏側重ね代部が形成された表装材を、表側重ね代部の上に裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返して建築物の壁面を複数の表装材で被覆する表装材の施工方法において、
表装材の下端部を支持する支持具を建築物の壁面に固定し、該支持具上に表装材の下端部を支持し、該表装材の表側重ね代部の上に隣接する表装材の裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返すことを特徴とする表装材の施工方法。
【請求項2】
前記支持具は、建築物の壁面に被覆される表装材の下辺長より長い長さを有することを特徴とする請求項1に記載の表装材の施工方法。
【請求項3】
前記表装材の裏側重ね代部に基づく基板非支持部には、基板を支持する充填材が配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表装材の施工方法。
【請求項4】
前記充填材の底面には凹条が形成されると共に、支持具は凹状に形成され、その外端部の折曲片が充填材の凹条に係合するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の表装材の施工方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表装材の施工方法に使用される支持具であって、建築物の壁面に固定され、表装材の下端部を支持し、該表装材の表側重ね代部の上に隣接する表装材の裏側重ね代部を載せて貼着し、それを順に繰り返して施工できるように構成されていることを特徴とする表装材の施工方法に使用される支持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−30245(P2009−30245A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192419(P2007−192419)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
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