説明

表面にディンプルを有する粒子の製造方法及び表面にディンプルを有する粒子

【課題】表面にディンプルを均一に有する粒子を容易、かつ、効率よく製造することができる製造方法を提供する。また、該製造方法により製造された表面にディンプルを有する粒子を提供する。
【解決手段】表面にディンプルを有する粒子を製造する方法であって、金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を調製する工程と、前記疎水化子粒子と重合性単量体とを混合して重合性単量体混合物を調製する工程と、前記重合性単量体混合物を親水性媒体中に分散させて重合性単量体混合物液滴の分散液を調製する工程と、前記重合性単量体混合物液滴において前記疎水化子粒子を表面に偏在させる工程と、前記疎水化子粒子が表面に偏在した重合性単量体混合物液滴を重合させて複合粒子を得る工程と、前記複合粒子から前記疎水化子粒子を除去する工程とを有する表面にディンプルを有する粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にディンプルを均一に有する粒子を容易、かつ、効率よく製造することができる製造方法に関する。また、該製造方法により製造された表面にディンプルを有する粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
表面にディンプルを有する粒子は、触感の改善、粘度の調整、吸着性や光拡散性の向上等を目的として化粧品、光拡散材料、塗料等に好適に用いられている。
【0003】
特許文献1、2には、表面にディンプルを有する粒子として、ゴルフボール様高分子複合体微粒子が開示されている。特許文献1、2に開示されているゴルフボール様高分子複合体微粒子は、シードポリマー粒子であるポリスチレン粒子にアクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸アルキルエステルを吸収させる、所謂、シード乳化重合させることにより得られる。しかしながら、特許文献1、2に開示されているゴルフボール様高分子複合体微粒子は、表面のディンプルが浅く比表面積が小さいため、機能や用途が限られるものであった。また、用いる樹脂(重合性単量体)の種類が限定されるため、用途に合わせた樹脂種の選定が困難となる。さらに、各種の有機溶媒と接触すると、微粒子の形状が容易に真球状に変化する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−287244号公報
【特許文献2】特開平6−287245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表面にディンプルを均一に有する粒子を容易、かつ、効率よく製造することができる製造方法を提供することを目的とする。また、該製造方法により製造された表面にディンプルを有する粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面にディンプルを有する粒子を製造する方法であって、金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を調製する工程と、上記疎水化子粒子と重合性単量体とを混合して重合性単量体混合物を調製する工程と、上記重合性単量体混合物を親水性媒体中に分散させて重合性単量体混合物液滴の分散液を調製する工程と、上記重合性単量体混合物液滴において上記疎水化子粒子を表面に偏在させる工程と、上記疎水化子粒子が表面に偏在した重合性単量体混合物液滴を重合させて複合粒子を得る工程と、上記複合粒子から上記疎水化子粒子を除去する工程とを有する表面にディンプルを有する粒子の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明の表面にディンプルを有する粒子の製造方法では、まず、金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を調製する工程を行う。上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子は、基材粒子の表面の一部を子粒子により被覆した粒子(以下、「複合粒子」ともいう。)の子粒子を形成し、上記子粒子を上記複合粒子から除去することにより、ディンプルを形成することができる。
【0008】
上記金属微粒子を構成する金属は特に限定されず、例えば、4族〜14族の金属及びこれらを主成分とした合金が挙げられる。具体的には、例えば、アルミ、ケイ素、チタン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、パラジウム、銀、錫、及び、半田等の合金が挙げられる。
【0009】
上記金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物は特に限定されず、例えば、2族、4族〜14族の金属の酸化物及びその合金の酸化物や、他の金属をドーピングされた酸化物等が挙げられる。具体的には、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化銀、酸化錫、酸化(インジウム−錫)、酸化(亜鉛−アルミニウム)、酸化(亜鉛−ガリウム)等が挙げられる。
【0010】
上記疎水性官能基は、上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学結合して疎水化させる性質を有するものであれば特に限定されない。例えば、アルキル基、アルキリデン基、アルキリジン基、アルカニル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリル基、アリールアルキル基、アリーレン基、アレーン基、アルカリール基、アクリロイル基、アルケニル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
【0011】
上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を得る方法は特に限定されず、一段の化学反応であってもよいし、多段の化学反応であってもよい。
金属微粒子は多くの場合、最表層部に酸化皮膜を形成している。従って、例えば、金属微粒子又は金属酸化物粒子を、アルカリ処理等することにより表面に容易に水酸基を導入することができる。このような水酸基が導入された金属微粒子又は金属酸化物微粒子と、該水酸基と反応する基と疎水性官能基とを有する化合物とを反応させることにより、金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に疎水性官能基を導入することができる。
【0012】
上記水酸基と反応する基と疎水性官能基とを有する化合物は、例えば、アルコキシシリル基と疎水性官能基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0013】
上記金属微粒子又は金属酸化物粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を得る方法は、アミノプロピルトリエトキシシランやp−アミノチオフェノール等を用いて微粒子の表面にアミノ基を導入した後、エチレングリコールジアクリレート等によりアクリロイル基を導入したり(マイケル付加反応)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを反応してメタクリロイル基を導入したりする方法も挙げられる。
【0014】
上記金属微粒子又は金属酸化物粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を得る方法は、イオン結合を形成する官能基と疎水性官能基とを有する化合物を金属微粒子又は金属酸化物微粒子と反応させる方法も挙げられる。
上記イオン結合を形成する官能基と疎水性官能基とを有する化合物は、例えば、ビニルピリジン、アクリルアミド、p−スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0015】
上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の粒径の好ましい下限は50nmである。上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の粒径が50nm未満であると、形成されるディンプルが浅くなったり、ディンプルの大きさが小さくなったりして、ディンプルを形成することによる効果が充分に得られないことがある。上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の粒径の好ましい上限は、基材粒子の粒径の20%である。上記金属微粒子又は金属酸化物微粒子の粒径が基材粒子の20%を超えると、後述する重合性単量体混合物液滴において、金属微粒子又は金属酸化物微粒子が表面に偏在しにくくなって、ディンプルが形成されなくなることがある。
【0016】
本発明の表面にディンプルを有する粒子の製造方法では、次いで、上記疎水化子粒子と重合性単量体とを混合して重合性単量体混合物を調製する工程を行う。上記重合性単量体は、基材粒子を形成するものである。
上記疎水化子粒子は疎水性表面を有することから、上記重合性単量体との親和性が高く、均一に分散させることができる。
【0017】
上記重合性単量体は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、メチルペンテン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素、フッ化ビニル、塩化ビニル等のハロゲン化ビニルや、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ビニルや、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、及び、上記化合物の分子内のアクリレートを一部若しくは全てをメタクリレートに変えた、(メタ)アクリレートや、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテルや、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステルや、γ―(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体や、(メタ)アクリロニトリル、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0018】
上記重合性単量体は、例えば、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等の親水性単量体を併用してもよい。
【0019】
上記重合性単量体混合物における上記疎水化子粒子の添加量は、形成するディンプルの数や密度等を勘案して適宜選択される。上記重合性単量体100重量部に対する上記疎水化子粒子の添加量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記疎水化子粒子の添加量が1重量部未満であると、実質的に子粒子層が形成されず、ディンプルが得られないことがあり、10重量部を超えると、上記重合性単量体中に上記疎水化子粒子が充分に均一に分散できないことがある。
【0020】
本発明の表面にディンプルを有する粒子の製造方法では、次いで、上記重合性単量体混合物を媒体中に分散させて重合性単量体混合物液滴の分散液を調製する工程を行う。
上記媒体は、上記重合性単量体と非相溶であれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、ジオキサン、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド、及び、これらの混合液等が挙げられる。なかでも、取り扱いが容易なことから水が好適である。
【0021】
上記媒体中に上記重合性単量体混合物液滴を安定して分散させるためには、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン、セルロース等の分散安定剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤や、アルキルスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤や、アルキルアンモニウム塩酸塩等のカチオン性界面活性剤等を添加することが好ましい。
また、上記媒体中には、更に、補助安定剤、pH調整剤、老化防止剤、酸化防止剤、防腐剤等の通常の懸濁重合法や乳化重合法において用いられる公知の各種添加剤を加えてもよい。
【0022】
上記重合性単量体混合物液滴が媒体中に分散した分散液を調製する方法は特に限定されないが、上記重合性単量体混合物を媒体に添加し、攪拌により重合性液滴とする方法や、重合性単量体混合物を微細なノズルや口径の揃った多孔膜等より媒体中に押し出す方法等が挙げられる。
上記攪拌の際には、通常の攪拌羽根の他に、ホモミキサー、ホモジナイザー等用いてもよいし、この際に超音波を併用してもよい。
基材粒子の粒径は分散液中の重合性単量体混合物液滴の粒径に依存するため、分散安定剤や界面活性剤の種類や量、撹拌の方法や強度、又は、ノズル径や口径等により容易に制御することができる。
【0023】
本発明の表面にディンプルを有する粒子の製造方法では、次いで、上記重合性単量体混合物液滴において上記疎水化子粒子を表面に偏在させる工程を行う。
上記金属微粒子又は金属酸化物粒子は、水相中で調整される場合が多く、親水性表面を有することが多い。また、気相法で調整された金属微粒子又は金属酸化微粒子も、その多くは表面が酸化されて親水性表面を有する。
上述のように上記疎水化子粒子は、表面に疎水性官能基が結合していることにより疎水化されており、上記重合性単量体混合物液滴中に安定して分散している一方、もとの金属微粒子又は金属酸化物微粒子の親水性基により、親水性媒体に対する親和性も有することから、次第に媒体に近い重合性単量体混合物液滴の表面付近に偏在してくる。
【0024】
本工程は、具体的には、上記分散液を調製する工程後に一定時間撹拌を継続することにより行う。上記撹拌時間は、上記疎水化子粒子が上記重合性単量体混合物液滴中を移動する速度や、目的とする複合粒子の形状等を勘案して適宜選択される。また、上記撹拌時間の選択により、形成されるディンプルの深さを調整することができる。上記撹拌時間の好ましい下限は10分、好ましい上限は12時間である。上記撹拌時間が10分未満であると、上記疎水化子粒子がほとんど上記重合性単量体混合物液滴の表面付近に偏在せず、ディンプルが形成されないことがあり、12時間を超えて撹拌を行っても、それ以上の変化はほとんど期待できない。
【0025】
本発明の表面にディンプルを有する粒子の製造方法では、次いで、上記疎水化子粒子が表面に偏在した重合性単量体混合物液滴を重合させて複合粒子を得る工程を行う。上記疎水化子粒子が表面に偏在した状態で重合性単量体混合物液滴を重合させることにより、基材粒子の表面が子粒子で被覆された形状の複合粒子が得られる。
【0026】
上記重合は、具体的には例えば、重合開始剤を用いて加熱又は光を照射することにより開始させる。上記加熱温度としては、用いる重合性単量体の組成や分子量、重合開始剤の種類や量等によって適宜決定されるが、通常は30〜100℃の範囲で行なわれる。
【0027】
上記重合開始剤は、上記重合性単量体混合物液滴中に含有されていてもよく、媒体中に溶解していてもよい。上記重合性単量体混合物液滴中に含有させる場合には、重合性単量体混合物に溶解させた後、上記重合性単量体混合物液滴を調製する方法が挙げられる。また、媒体中に溶解させる場合には、予め媒体中に重合開始剤を溶解しておくか、上記重合性単量体混合物液滴を調製後、媒体と同じ液に溶解させ、上記重合性単量体混合物液滴の分散液に添加する方法が挙げられる。
【0028】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過酸化物、アゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、環状アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物、アゾカルボン酸化合物、アゾオキシム化合物等が挙げられる。
上記過酸化物は特に限定されず、例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。
上記アゾニトリル化合物は特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等が挙げられる。
上記アゾアミド化合物は特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等が挙げられる。
上記環状アゾアミド化合物は特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]、これらの塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
上記アゾアミジン化合物は特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]等が挙げられる。
上記アゾカルボン酸化合物は特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。
上記アゾオキシム化合物は特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)等が挙げられる。
【0029】
本発明の表面にディンプルを有する粒子の製造方法では、次いで、上記複合粒子から上記疎水化子粒子を除去する工程を行う。上記疎水化子粒子を除去することにより、表面にディンプルを有する粒子が得られる。
上記複合粒子から上記疎水化子粒子を除去する方法は特に限定されず、物理的又は化学的に除去する方法を用いることができる。
【0030】
上記物理的に上記疎水化子粒子を除去する方法は特に限定されず、例えば、超音波照射等により除去する方法等が挙げられる。
【0031】
上記化学的に上記疎水化子粒子を除去する方法は特に限定されず、例えば、酸又はアルカリ溶液を用いて上記疎水化子粒子を溶解する方法等が挙げられる。
上記アルカリ溶液は特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液、アルコール溶液等が挙げられる。
上記酸溶液は特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸の水溶液、アルコール溶液等が挙げられる。
上記酸又はアルカリ溶液は、上記基材粒子及び上記疎水化子粒子を構成する材料によって、上記疎水化子粒子のみを溶解するものが適宜選択される。
【0032】
本発明の表面にディンプルを有する粒子の製造方法によれば、表面にディンプルを有する粒子を容易に製造することができる。また、子粒子の原料となる金属または金属酸化物微粒子の使用を必要最小限に抑えることができる。
本発明の表面にディンプルを有する粒子の製造方法では、従来の懸濁重合、乳化重合等の手法を応用することにより、容易に基材粒子の大きさを調整することができ、また、子粒子の原料と金属微粒子又は金属酸化物微粒子の添加量を調整等することにより、子粒子を除去してできるディンプルの数や密度を制御することができる。
【0033】
本発明の表面にディンプルを有する粒子の製造方法により製造されたものである表面にディンプルを有する粒子もまた、本発明の1つである。
本発明の表面にディンプルを有する粒子は、光拡散材料、化粧品、塗料等に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、表面にディンプルを均一に有する粒子を容易、かつ、効率よく製造することができる製造方法を提供することができる。また、該製造方法により製造された表面にディンプルを有する粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1で得られた複合粒子の電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1で得られた表面にディンプルを有する粒子の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
(1)疎水化子粒子の調製
平均粒径5μmのシリカ粒子(日産化学社製)10gをトルエン300mLに超音波照射下で分散させ、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10gを添加し、110度で24時間環流撹拌した。反応終了後、メタノールで洗浄、乾燥することにより、疎水化子粒子を得た。
【0038】
(2)複合粒子の製造
スチレン25mL、エチレングリコールジメタクリレート25mL及びアゾビスイソブチロニトリル500mgの混合液に、得られた疎水化子粒子10gを加え、超音波照射下で分散させて重合性単量体混合物を得た。
【0039】
予めポリビニルアルコール(シグマ−アルドリッチ社製)20gを溶解させた蒸留水500mLに、得られた重合性単量体混合物の全量を添加した後、室温で1時間、240PRMの速度で撹拌して、疎水化子粒子を重合性単量体混合物液滴と蒸留水との界面に偏在させた。その後、窒素気流下、60℃で24時間重合させ、メタノールで洗浄することにより、複合粒子を得た。得られた複合粒子の電子顕微鏡写真を図1に示した。
【0040】
(3)ディンプルの形成
得られた複合粒子2gを1N−水酸化ナトリウム200mLに分散させ、40℃で6時間撹拌し、子粒子を溶解させることにより、表面にディンプルを有する粒子を得た。
【0041】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られた表面にディンプルを有する粒子を観察したところ、平均粒径は250μmであり、深さ2μmの均一なディンプルが形成されていた。
得られた表面にディンプルを有する粒子の電子顕微鏡写真を図2に示した。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、表面にディンプルを均一に有する粒子を容易、かつ、効率よく製造することができる製造方法を提供することができる。また、該製造方法により製造された表面にディンプルを有する粒子を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にディンプルを有する粒子を製造する方法であって、
金属微粒子又は金属酸化物微粒子の表面に化学反応にて疎水性官能基を導入して疎水性表面を有した疎水化子粒子を調製する工程と、
前記疎水化子粒子と重合性単量体とを混合して重合性単量体混合物を調製する工程と、
前記重合性単量体混合物を親水性媒体中に分散させて重合性単量体混合物液滴の分散液を調製する工程と、
前記重合性単量体混合物液滴において前記疎水化子粒子を表面に偏在させる工程と、
前記疎水化子粒子が表面に偏在した重合性単量体混合物液滴を重合させて複合粒子を得る工程と、
前記複合粒子から前記疎水化子粒子を除去する工程とを有する
ことを特徴とする表面にディンプルを有する粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の表面にディンプルを有する粒子の製造方法により製造されたものであることを特徴とする表面にディンプルを有する粒子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−209180(P2010−209180A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55390(P2009−55390)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年9月9日 社団法人高分子学会発行の「第57回高分子討論会 予稿集(第57巻2号)」(CD‐ROM)に発表
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】