説明

表面の生物活性特性を改善する方法とこの方法によって改善された表面をもつ物体

本発明は、移植可能な物体の表面の生物活性を改善する方法を提供する。本発明は、生物学的実験器具の表面の生物活性を改善する方法を更に提供する。本発明は、細胞を物体に付着する方法を更に提供する。本発明は、医療移植のための物体を調製する方法を更に提供する。本発明は、細胞が付着した物品と、医療移植のための物品とを更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術の相互参照
本願は、2009年4月14日付けで出願され、名称が「表面の生物活性特性を改善する方法とこの方法によって改善された表面をもつ物体(Methods for Improving the Bioactivity Characteristics of a Surface and Objects with Surfaces Improved Thereby)」である米国仮出願第61/168,971号と、2009年6月18日付けで出願され、名称が「表面の生物活性特性を改善する方法とこの方法によって改善された表面をもつ物体(Methods for Improving the Bioactivity Characteristics of a Surface and Objects with Surfaces Improved Thereby)である米国仮出願第61/218,170号と、2009年8月31日付けで出願され、名称が「表面の生物活性特性を改善する方法とこの方法によって改善された表面をもつ物体(Methods for Improving the Bioactivity Characteristics of a Surface and Objects with Surfaces Improved Thereby)」である米国仮出願第61/238,462号と、2009年3月11日付けで出願され、名称が「ガスクラスターイオンビームの適用によって生物学的材料の表面の湿潤性と他の生物的適合特性を改善する方法とこの方法によって製造された生物学的材料(Methods for Modifying the Wettability and other Biocompatability Characteristics of a Surface of a Biological Material by the Application of Gas Cluster Ion Beam Technology and Biological Materials Made Thereby)」である米国仮出願第61/159,113号との優先権を主張し、これらの出願のすべては、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、物体の表面の生物活性特性を改善する方法と、生物活性が改善された表面の少なくとも一部分を有している物体の製造とに関する。より具体的には、本発明は、ガスクラスターイオンビーム技術の使用によって表面の生物活性を増加させることにより表面を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
特定の物体(対象物)は、多くの場合、生きている生体細胞の成長、付着、及び、増殖を呼び込み、そして、受け入れる能力が増大した表面を有していることが望ましい。このことは、例えば、組織培養皿と、フラスコ及び回転フラスコと、ウェル及びチャンバースライドと、プレートと、ペトリ皿などを含むある一定の生物学的実験器具の場合に概ね該当する。このことは、埋設物(インプラント)として意図された医療用物体と、空中汚染物質又は水質汚染物質を試験するため使用される環境試験装置の場合にも概ね該当する。
【0004】
本明細書中で使用されるように、表面、物体、又は、物体の一部分に関連して使用される用語「生物活性」は、生きている細胞を表面、物体、若しくは、物体の一部分に呼び込むか、表面、物体、若しくは、物体の一部分での細胞及び/又は組織活性を改善するか、生きている細胞を表面、物体、若しくは、物体の一部分に付着するか、表面、物体、若しくは、物体の一部分での生きている細胞の成長を促進するか、又は、表面、物体、若しくは、物体の一部分での生きている細胞の増殖を促進する表面、物体、若しくは、物体の一部分の適合性を意味することが意図されている。本明細書中で使用されるように、用語「チタニア」は、セラミック形式を含むすべての形式のチタンの酸化物と、(限定されることなく、TiO、及び/又は、不完全な化学量論をもつTiOを含む)元素チタンを含む天然酸化物又はその他の酸化物の表面コーティングと共にチタン金属自体(又は、チタン金属の合金)とを含むことが意図されている。移植可能な医療器具は、多くの場合に、(天然酸化物、もしくは、意図的に酸化された表面のいずれかであり、又は、別のものでもよい)チタニア表面を典型的に有しているチタン金属(又は合金)から製造される。
【0005】
生物学的実験器具は、細胞培養、組織培養、外殖培養、組織工学の用途(例えば)で用いられることがあり、一般に、ガラス、石英、プラスチック、及び、重合体のような概ね不活性及び/又は生体適合性材料と、ある一定の金属及びセラミックとから形成される。多くの場合、生物活性を向上させるためこのような生物学的実験器具の表面の一部分を改質できることが望ましい。
【0006】
例えば、医療用人工器官又は外科的インプラント若しくは移植片のような(ヒトを含む)哺乳類の身体又は身体組織への移植用の医療用物体は、限定されることなく、様々な金属、金属合金、(織機で織られた織物、編み物、及び、不織重合体/共重合体の織物を含む)プラスチック若しくは重合体若しくは共重合体材料、固体樹脂材料、ガラス及びガラス状材料、骨及びコラーゲンのような生物学的材料、絹及びその他の天然繊維、この用途に適当であり、そして、適切に生体適合性をもつことがある(限定されることなく、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)、及び、ポリ(L−ラクチド)を含む)その他の材料、のいずれかを含む種々の材料から製造されることがある。実施例として、ある一定のステンレス鋼合金と、(可能性のある天然酸化物コーティングを含む)チタン及びチタン合金と、コバルト−クロム合金と、コバルト−クロム−モリブデン合金と、タンタルと、タンタル合金と、ジルコニウムと、(可能性のある天然酸化物コーティングを含む)ジルコニウム合金と、ポリエチレン及びその他の不活性プラスチックと、チタンセラミック、アルミナセラミック、及び、ジルコニアセラミックとを含む様々なセラミックと、のうちのいずれかが用いられる。重合体/共重合体織物は、例えば、(ポリエチレンテレフタレート(PETE)を含む)ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アラミド、ポリアミド、又は、その他の適当な繊維から形成されることがある。移植用の医療用物体は、例えば、限定されることなく、血管ステントと、血管用及びその他の移植片と、歯科用インプラントと、人工的な関節人工器官及び天然由来の関節人工器官と、冠状動脈ペースメーカーと、移植(埋設)可能なレンズと、その他と、これらの構成要素とを含む。多くの場合、このような器具は、意図された目的のための理想より低い細胞付着特性及び細胞増殖特性をもつ天然表面状態を有することがある。このような場合、多くの場合、物体の表面を移植用途のためにより適したものとするため、細胞付着を向上させるために物体の表面の少なくとも一部分を改質できることが望ましい。
【0007】
環境試験装置は、多くの場合、例えば、金属、プラスチック及び重合体、ガラス及び石英等のような材料を含む。
【0008】
ガスクラスターイオンビーム(GCIB)照射は、ナノスケールの表面改質のために使用されている。同時係属中であり、本出願人により維持される米国特許出願第12/210,018号、名称「ガスクラスターイオンビーム技術の適用によって医療器具の表面の湿潤特性とを改善する方法とこの方法によって製造された医療器具(Method and System for Modifying the Wettability Characteristics of a Surface of a Medical Device by the Application of Gas Cluster Ion Beam Technology and Medical Devices Made Thereby)」には、GCIB照射が非生物学的材料表面の親水性特性を改質することが示されている。線維芽細胞及び骨芽細胞のような付着依存性細胞を含むが、これらに限定されることがない細胞は、十分に付着、成長、又は、分化するために親水性表面を好むこと、そして、これらの細胞は、生理学的pHにおける被帯電表面を同様に好むことが、一般に知られている。サンドブラスト法、酸エッチング法と、サンドブラスト−酸エッチング法(SLA)と、被膜(コーティング)のプラズマ溶射と、COレーザー平滑化と、機械的洗浄技術、超音波洗浄技術、プラズマ洗浄技術、及び、化学的洗浄技術を含む種々の形式の洗浄法とのような多くの方法が非生物学的表面上の親水性を増加させるか、又は、電荷を変化させるために用いられている。その他のアプローチは、界面活性剤の添加、又は、異なる湿潤性特性を有している薄膜(フィルム)若しくは被膜の塗布を含んでいる。UV処理と、UV及びオゾン処理と、ポリ(エチレングリコール)(PEG)の共有結合付着と、抗CD34抗体、及び、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸ペプチド(RGDペプチド)のようなタンパク質生成物の塗布のような様々な方法が表面の細胞付着特性を向上させるため用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公開第20090072834号公報(米国特許出願第12/210,018号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、表面の少なくとも一部分が生物活性を改善させるためGCIB加工によって改質された表面及び物体を提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、GCIB技術を用いることにより生物活性を改善させるため表面の少なくとも一部分が改質された表面又は物体を形成する方法を提供することである。
【0012】
本発明の更に別の目的は、医療移植の前に、GCIB加工によって表面の少なくとも一部分が改質され、細胞がインビトロ付着(in vitro付着、人工的に作られた環境の中で付着)された医療移植のための物体を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、医療移植の前に、GCIB技術によって、及び細胞のインビトロ付着によって、表面の少なくとも一部分が改質された医療移植のための物体を形成する方法を提供することである。
【0014】
本発明の上記目的と、更なる目的及びその他の目的と、利点とは、以下に説明される発明によって実現される。
【0015】
組織工学における基本的な課題のうちの1つは、異なる系統からの細胞が人体において見られる仕方で成長し、相互作用することを可能にする能力である。表面のGCIB照射は、細胞付着及び増殖を著しく改善し、同時に細胞分化を維持する。上皮細胞、内皮細胞、間葉細胞、又は、神経細胞から由来する組織及び器官の中の創傷修復は、これらの細胞がGCIB照射によって表面改質された不活性又は生物活性材料上で成長させられたとき、恩恵を受けることができる。下にある骨と歯科用インプラントとの間の統合、靱帯と付着骨との間の細胞浸潤及び統合、皮膚若しくは毛髪移植片統合の増強、又は、シナプスを再び起こすための神経再生のいずれを達成することが目標であろうと、GCIB照射の使用は、組織工学及び創傷修復の進行において有用なプロセスである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、細胞付着を目的として、細胞の成長、付着、及び/又は、増殖を容易に実現するために生物活性特性が改善された表面領域を物体に形成するためのGCIB加工の使用を対象とする。本発明は、更に、医療移植/外科的移植の前に、医療用物体のGCIB加工された表面領域に細胞をインビトロ付着することを対象とする。付着させられた細胞は、医療移植/外科的移植が予定されている個体の身体に由来することがあり、又は、その他の適合する供給源に由来することがある。
【0017】
細胞付着が意図された物体の表面のある一定の選択された部分が生物活性特性を改善していることが意図されているとき、及び、物体の表面のその他の部分が細胞付着処理に関連しないことが意図されているとき、GCIB加工は、選択された部分だけの生物活性特性を増加させるために、GCIB加工を物体の表面の選択された部分だけに制限することにより、選択された部分に制限されることがある。GCIBの照射の広がりを選択された部分だけに制限するために、GCIB断面積を制御し、GCIBの走査及び/又は偏向を制御することは、選択された領域へのGCIB加工の制限を達成することがある。代替的に、従来の遮蔽技術(マスキング技術)は、GCIB加工が望ましくない表面部分を覆い、GCIB加工が必要とされる選択された表面部分を暴露するため使用されることがある。その後、遮蔽物(マスク)と、遮蔽物を通して暴露された表面部分とは、GCIBの拡散、又は、走査型GCIBを用いて照射される。GCIB照射を表面の選択された領域又は物体の表面の選択された領域に限定する様々なその他の方法は、当業者に周知であり、本発明に包含されることが意図されている。
【0018】
高エネルギー従来型のイオン、電気的に加速された帯電原子、又は、分子のビームは、半導体装置接合を形成し、スパッタリングによって表面を改質させ、そして、薄膜の特性を改質させるために広範に利用される。従来型のイオンと異なって、ガスクラスターイオンは、標準的な温度及び圧力の条件下でガス状である材料(一般に、酸素、窒素、又は、例えば、アルゴンのような不活性ガスであるが、どのような凝縮性ガスでもガスクラスターイオンを生成するため使用できる)の多数の(典型的な分布が数百個乃至数千個であり、平均値が数千個である)弱結合原子又は分子のクラスターから形成され、各クラスターは、1つ以上の電荷を共有し、高い総エネルギーをもつために(約3kV乃至約70kV以上のような)高電圧を通じて一緒に加速される。ガスクラスターイオンが形成され、加速された後、ガスクラスターイオンの電荷状態は、変更されてもよく、又は、変更状態にされてもよく(中和状態にされてもよく)、そして、ガスクラスターイオンは、より小さいクラスターイオン、及び/又は、中和されたより小さいクラスターに断片化されることがあるが、高電圧によって加速されることによって比較的高い総エネルギーを維持する傾向がある。緩く結合されるので、ガスクラスターイオンは、表面との衝突時に崩壊し、加速されたガスクラスターイオンの総エネルギーは、構成原子の間で共有される。このエネルギー共有のため、クラスターの中の原子は、従来型のイオンの場合より、(崩壊後に)個別に遙かに低エネルギーであり、その結果、加速されたガスクラスターイオンが高エネルギーであるにもかかわらず、原子は、遙かに浅い深さまでしか侵入しない。本明細書中で使用されるように、用語「GCIB」、「ガスクラスターイオンビーム」及び「ガスクラスターイオン」は、全部又は一部が加速後に改質された(中和状態を含む)電荷状態を有している加速されたビーム及びイオンを包含することが意図される。用語「GCIB」及び「ガスクラスターイオンビーム」は、クラスター化されていない粒子を更に含むことがたとえあるとしても、加速されたガスクラスターを含むすべてのビームを包含することが意図される。
【0019】
ガスクラスターイオンの内部の個々の原子のエネルギーは、非常に小さく、典型的に、数eV乃至数十eVであるので、原子は、多くても衝突中にターゲット表面の数層の原子層にしか侵入しない。この衝突原子の浅い侵入(典型的には、ビーム加速に依存して、数ナノメートル乃至約10ナノメートル)は、クラスターイオン全体によって運ばれるエネルギーのすべてが1マイクロ秒未満の期間中に非常に浅い表面層において極端に小さい体積の中で必然的に分散されることを意味する。このことは、材料への侵入が時には数百ナノメートルであって、材料の表面の下の深くにおいて変化及び材料改質を生じる従来のイオンビームとは異なる。ガスクラスターイオンの高い総エネルギーと、極端に小さい相互作用体積とのため、衝突場所での付着エネルギー密度は、従来のイオンによる衝撃の場合より遙かに大きい。従って、表面のGCIB加工は、表面の特性を向上させ、後に続く細胞成長、付着及び増殖のための適合性の改善をもたらす改質を生じることができる。
【0020】
特定の理論に拘束されたくないが、本発明の方法によるGCIB照射によって加工された表面で観察された生物活性の増加は、GCIBで照射された表面の構造の物理的な変形によって生じることがある。
【0021】
ガスクラスターイオンビームは、内容全体が参照によって本明細書中に組み込まれた、例えば、Kirkpatrick外らによる米国特許出願公開第2009/0074384A1号において教示されるような既知の技術によって加工対象物(workpiece, ワークピース)を照射する目的のため生成され、運ばれる。基本的な工程は、ガスクラスターがガスの膨張中に形成される噴出(ジェット)を形成するため、高圧ガスを減圧室に注入する工程と、噴出の中の大部分のクラスター化されていないガスからガスクラスターを分離する工程と、ガスクラスターイオンを形成するため、ガスクラスターをイオン化する工程と、GCIB照射による加工のため減圧環境の中で、ガスクラスターイオンのビームを形成し、加速し、加工対象物の上へ向ける工程とを含む。加工対象物は、当業者に知られている技術によって、減圧室を排気する前に、又は、大気−真空ロードロックを介して、減圧室の中へ導入されることがある。照射用のGCIBの経路の中で物体を保持し、物体の多数の部分の照射を可能にさせるため物体を操作する様々な型のホルダが技術的に知られている。
【0022】
本発明によるGCIBで表面が改善された物体は、(例えば、限定のためではなく)細胞培養、組織培養、外殖片培養、組織工学、又は、その他の細胞付着若しくは成長用途)を対象とする生物学的実験器具で用いられることがあるか、哺乳類若しくはその他の生物学的実体の身体若しくは身体組織の中若しくは上に医療的/外科的に移植されるか、又は、環境試験用途などのため用いられることがある。場合によっては、物体は、例えば、医療的/外科的移植における適用の前に、GCIB加工された表面への細胞のインビトロ付着を実施するため更に加工されることがある。
【0023】
本発明は、移植可能な物体の表面の生物活性を改善する方法を提供する。この方法は、減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、減圧室の中に物体を導入する工程と、ガスクラスターイオンビームを上記物体の表面の少なくとも第一の部分に照射する工程とを含む。この方法における物体は、医療用人工器官、外科的インプラント、外科的移植片、医療用人工器官の構成要素、外科的インプラントの構成要素、外科的移植片の構成要素、又は、移植を対象とする別の物体である。
【0024】
本発明は、生物学的実験器具の表面の生物活性を改善する方法を更に提供する。この方法は、減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、減圧室の中に物体を導入する工程と、ガスクラスターイオンビームを物体の表面の少なくとも第一の部分に照射する工程とを含む。この方法の物体は、生物学的実験器具用品である。
【0025】
本発明は、細胞を物体に付着させる方法を更に提供する。この方法は、物体の表面の少なくとも一部分を選択する工程と、減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、上記減圧室の中に上記物体を導入する工程と、上記ガスクラスターイオンビームを上記表面の上記少なくとも一部分に照射する工程と、上記減圧室から上記物体を取り出す工程と、上記表面の上記少なくとも一部分を生きている細胞に暴露する工程とを含む。
【0026】
本発明は、医療移植用の物体を調製する方法を更に提供する。この方法は、物体の表面の少なくとも一部分を選択する工程と、減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、減圧室の中に物体を導入する工程と、少なくとも一部分の生物活性を増加させるためにガスクラスターイオンビームを選択された少なくとも一部分に照射する工程とを含む。この方法の物体は、医療用インプラント(医療移植片)である。
【0027】
本発明は、細胞を付着するため物体の表面の少なくとも一部分を選択する工程と、減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、上記減圧室の中に上記物品を導入する工程と、ガスクラスターイオンビームを上記表面の上記少なくとも一部分に照射する工程と、上記減圧室から上記物体を取り出す工程と、上記表面の上記少なくとも一部分を生きている細胞に暴露する工程とを含む方法によって作られた細胞が付着された物品を更に提供する。
【0028】
医療移植片の表面の少なくとも一部分を選択する工程と、減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、上記減圧室の中に上記インプラントを導入する工程と、上記表面の上記少なくとも一部分の生物活性を増加させるためにガスクラスターイオンビームを上記表面の上記少なくとも一部分に照射する工程とを含む方法によって作られた医療移植片の物品を更に提供する。
【0029】
本発明のその他の目的及び更なる目的と共に、本発明をより良く理解するため、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、細胞付着及び増殖のレートを比較するグラフ100である。
【図2】図2は、表面への細胞の付着を示す未処理チタン箔の表面の一部分の走査型電子顕微鏡写真200である。
【図3】図3は、表面への細胞の付着/増殖の改善を示す本発明の実施形態によるGCIB照射によって加工されたチタン箔の表面の一部分の走査型電子顕微鏡写真300である。
【図4a】図4aは、本発明の実施形態によるGCIB照射後の表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射との両方に関するガラス基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図4b】図4bは、本発明の実施形態によるGCIB照射後の表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射との両方に関するガラス基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図4c】図4cは、本発明の実施形態によるGCIB照射後の表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射との両方に関するガラス基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図4d】図4dは、本発明の実施形態によるGCIB照射後の表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射との両方に関するガラス基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図4e】図4eは、本発明の実施形態によるGCIB照射後の表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射との両方に関するガラス基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図4f】図4fは、本発明の実施形態によるGCIB照射後の表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射との両方に関するガラス基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図5a】図5aは、本発明の実施形態によるGCIB照射を受けた表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射と処理済みの市販細胞培養とを含むポリスチレン基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図5b】図5bは、本発明の実施形態によるGCIB照射を受けた表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射と処理済みの市販細胞培養とを含むポリスチレン基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図5c】図5cは、本発明の実施形態によるGCIB照射を受けた表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射と処理済みの市販細胞培養とを含むポリスチレン基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図5d】図5dは、本発明の実施形態によるGCIB照射を受けた表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射と処理済みの市販細胞培養とを含むポリスチレン基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図5e】図5eは、本発明の実施形態によるGCIB照射を受けた表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射と処理済みの市販細胞培養とを含むポリスチレン基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図5f】図5fは、本発明の実施形態によるGCIB照射を受けた表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射と処理済みの市販細胞培養とを含むポリスチレン基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図5g】図5gは、本発明の実施形態によるGCIB照射を受けた表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射と処理済みの市販細胞培養とを含むポリスチレン基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図5h】図5hは、本発明の実施形態によるGCIB照射を受けた表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射と処理済みの市販細胞培養とを含むポリスチレン基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図5i】図5iは、本発明の実施形態によるGCIB照射を受けた表面上での細胞の付着/増殖の改善を示す、対照と被GCIB照射と処理済みの市販細胞培養とを含むポリスチレン基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図6a】図6aは、照射されていない遮蔽された部分とGCIBが照射された部分との隣り合わせの比較を示し、そして、GCIBが照射された部分上の細胞の付着/増殖の改善を示す基板の一部分がGCIB照射中に遮蔽されたポリスチレン基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図6b】図6bは、照射されていない遮蔽された部分とGCIB照射がされた部分との隣り合わせの比較を示し、そして、GCIBが照射された部分上の細胞の付着/増殖の改善を示す基板の一部分がGCIB照射中に遮蔽されたポリスチレン基板の表面の一部分の光学顕微鏡写真である。
【図7a】図7aは、イオンビーム照射されていない対照部分を示すPTFE基板の表面の部分の電子顕微鏡写真である。
【図7b】図7bは、対照部分と比較して細胞付着及び/又は増殖の著しい改善を明らかにするGCIBが照射された部分を示すPTFE基板の表面の部分の電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、表面の一部分がGCIB照射中に遮蔽され、照射されていない遮蔽された部分とGCIBが照射された部分との隣り合わせの比較を示し、そして、GCIBが照射された部分と照射されていない部分との両方に高度の細胞の付着/増殖を示す非晶質石英基板の表面の部分の光学顕微鏡写真である。
【図9】図9は、表面の一部分がGCIB照射中に遮蔽され、照射されていない遮蔽された部分とGCIBが照射された部分との隣り合わせの比較を示し、そして、GCIBが照射された部分に高度の細胞の付着/増殖を示す結晶質サファイア基板の表面の部分の光学顕微鏡写真である。
【図10】図10は、織物表面の一部分がGCIB照射中に遮蔽され、照射されていない遮蔽された部分とGCIBが照射された部分との隣り合わせの比較を示し、そして、GCIBが照射された部分への細胞の優先的な付着を示すPETE織物表面の部分の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
好適な方法と例示的な実施形態の詳細な説明
生物活性を向上させるために本発明のGCIB加工方法の利益を享受することができる広範囲かつ多種多様の材料表面を示すためいくつかの例示的な実施形態が開示される。これらの実施例は、本発明の用途が広く、かつ、1個乃至数個の材料に限定されることはなく、広範囲の材料表面のため幅広く利用できることを例示するため選択された。
【0032】
チタンの例示的な実施形態
チタン表面改善は、第一の例示的実施形態に開示される。チタンは、哺乳類への移植を目的とする医療用物体で用いられることがよくある材料である。厚さ0.01mmのチタン箔標本は、最初に70%イソプロパノールで2時間に亘って洗浄され、そして、次に、生物学的安全キャビネットの中で、一晩空気乾燥された。洗浄されたチタン箔サンプルは、通常の大気条件に暴露されたどのチタンとも同様に、不完全であること、及び、欠陥を含むことがある非常に薄い天然のチタニア表面コーティングを有することがあり得ることが理解される。箔標本は、その後、30kV加速電圧を使用して加速されたアルゴンGCIBを用いて照射量5×1014イオン/cmまでGCIB照射されるか、又は、対照として照射されないままにされた。チタン箔(被照射標本及び対照標本の両方)は、その後、0.9cm×0.9cmの正方形に切断され、24ウェルMultiwellTMポリスチレンプレート(BD Falcon 351147)の個々のウェル(8個の対照正方形及び8個のGCIB被放射正方形)の底部に置かれた。骨に由来するヒト胎児骨芽細胞(hFOB 1.19、ATCC CRL−11372)は、継代培養され、約3500個の細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び0.3mg/ml G418抗生物質(Geneticinとしても知られている)が追加された(Invitrogen Corp.)ダルベッコ改変イーグル培地栄養混合物F−12(DMEM/F12)1ml中で各チタン箔正方形の頂部に載置され、37℃、CO濃度5%の空気中で加湿培養器の中で培養された。培養1日後及び5日後に、培地標本が取り出され、細胞は、製造元の指示に従って使用されたプロメガ(Promega)社が提供するCellTiter 96(登録商標)AQueous Cell Proliferation Assayを使用してアッセイされ、波長490nmでDynex OpsysMRプレートリーダを使用して測定が行われた。アッセイ溶液は、その後、ウェルから取り出され、チタン箔及び細胞は、その後、−20℃冷凍メタノールを少なくとも30分間、ウェルの中のチタン箔正方形に置くことにより固定された。固定に続いて、チタン箔正方形は、その後、空気乾燥され、チタン箔正方形に付着する骨芽細胞は、日立(Hitachi) TM1000走査型電子顕微鏡を使用して撮像された。結果は、培養1日後に箔に付着した骨芽細胞が対照箔上で694.5細胞±164.8細胞であり、GCIBが照射された箔上で、2082.3細胞±609.2細胞まで増加したことを示した(P<0.003)。骨芽細胞は増殖し、培養5日後、GCIBが照射された箔上の3898.0細胞±940.9細胞と比べて、対照群上では1598.7細胞±728.4細胞であった。
【0033】
図1は、hFOB1.19ヒト胎児骨芽細胞が対照チタン箔と比べてGCIBが照射されたチタン箔に高められたレートで付着し増殖することを示すグラフ100である。
【0034】
図2は、培養5日後の対照チタン箔の走査型電子顕微鏡写真200である。図3は、培養5日後のGCIBが照射されたチタン箔の走査型電子顕微鏡写真300である。図2及び図3は、両方共に同じ倍率及び表面積の等しい画像で示される。図2及び図3の比較は、GCIB被放射チタン箔(図3)の骨芽細胞付着の程度が増加したことと、より多くの骨芽細胞が広がり、骨芽細胞及び線維芽細胞のような付着依存性細胞の間では細胞増殖を開始する際に重要な因子であることが知られている細胞間接触を行うように見えることとを示す。哺乳類の身体への医療用/外科的移植のための物体を形成する際に用いられる材料(例えば、チタン)のGCIB照射は、表面が細胞付着及び増殖をより多く招くようにさせるため表面の改質を生じる。
【0035】
物体の表面が細胞付着及び増殖をより多く招くようにさせることにより哺乳類の身体若しくは身体組織の中、又は、身体上への移植を対象とする医療用物体の統合を改善するためこの効果を利用することは、1)統合を増強させるために望ましい移植用の物体を特定する工程と、2)物体の全表面がこのような増強を必要とするか、又は、この増強を(例えば、骨に付着する部分が改善された付着から恩恵を受け、ボール又は寛骨臼カップが細胞付着の増加から恩恵を受けない人工股関節のような)物体の表面の一部分だけに制限することが好ましいかどうかを判定する工程と、3)統合が増強されることが望ましい医療用物体の表面の部分だけにGCIB照射する工程と、最終的に、この物体(統合を増強するために改質された)を哺乳類の身体の中へ医療用/外科的移植する工程とを含む。当然ながら、医療用物体の表面のすべての部分が統合の増強から恩恵を受ける場合、表面のすべての部分は、好ましくは、GCIB照射される。
【0036】
場合によっては、照射する工程の後、かつ、移植する工程の前に、統合は、医療用物体の表面上で細胞を成長させ、そして、(インビトロで)付着する工程を組み入れることにより更に増強されることがある。この統合は、医療用物体が移植されることが意図された特有の個体からの細胞の分離と、培養と、インビトロ付着とを含むことがあり、又は、(哺乳類の中の同じ種又は別の種のいずれかからの)別の個体、幹細胞、若しくは、その他の多能性細胞から取得された細胞を使用することを含むことがある。
【0037】
照射する工程は、場合によっては、GCIB加工を物体の選択された部分に制限する遮蔽物、有向ビーム、又は、その他の方法の使用を含むことがある。
【0038】
従来技術では、微小粗面化されたチタン表面は、骨芽細胞付着に優先的であることが明らかにされた。SLAチタンは、骨インプラントのため広く用いられる材料である。SLA処理は、親水性を改善すると共に、表面を微小粗面化する。GCIB照射あり及びGCIB照射なしの両方を含んでいるSLAチタン標本と対照(平滑機械加工された)チタン標本とが比較された。
【0039】
平滑機械加工された表面及びSLA表面の両方を含み、アルゴンGCIB照射あり及びなしの両方を含むチタン標本(1cm×1cm×0.6mm)が比較された。平滑機械加工された表面及びSLA表面は、原子間力顕微鏡測定技術によって粗さに関して特徴付けられた。1平方マイクロメートルの面積に亘って評価された、2種類の表面の平均粗さ(Ra)値が表1に示される。
【0040】
【表1】

【0041】
平滑機械加工された表面及びSLA表面は、加速電圧30kVにおいて照射量5×1014アルゴンクラスター/cmでGCIB照射されるか、又は、対照として照射されないままにされるかのいずれかであった。チタン片(条件毎に9標本ずつ、全部で36個の標本)が24個のウェル皿の中の個別のウェルに置かれ、約2500個の初代ヒト骨芽細胞が10%ウシ胎仔血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンが追加された(Invitrogen Corp.)ダルベッコ改変イーグル培地栄養混合物(DMEM)1ml中で各チタン標本に載置され、37℃、CO濃度5%の空気中において加湿培養器の中で培養された。培養3日後、7日後、及び、10日後に、条件毎の3個の標本が培地から取り出され、細胞は、製造元の指示に従って使用されたPromegaが提供するCellTiter 96(登録商標)AQueous Cell Proliferation Assayを使用してアッセイされ、標本への細胞付着を評価するため、波長490nmでDynex OpsysMRプレートリーダを使用して測定が行われた。結果が表2に示される。
【0042】
【表2】

【0043】
表2に示された結果は、照射されていない平滑機械加工されたチタン表面と、照射されていないSLAチタン表面との間で、細胞増殖に殆ど差異がないことを明らかにする。これに反して、両方(平滑機械加工された表面及びSLA表面)の場合に、増殖は、GCIB被放射表面上で実質的に高められる。更に、増殖の改善は、SLA(Ra=20.08nm)表面と比べて、平滑加工(Ra=8.38nm)表面上で著しく大きい。SLAプロセスにより提供される微小粗さは、従来での細胞付着及び増殖のための好ましい表面条件と見なされているとしても、GCIB照射は低い粗さ値(Ra<10nm)であっても優れた結果を提供することが明白である。
【0044】
ガラスの例示的な実施形態
ガラス表面の改善は、第二の例示的実施形態に開示される。ガラスは、生物学的実験器具で用いられることがよくある材料である。ガラスと、ガラス状又はガラスのような材料は、哺乳類への移植を対象とする医療用物体を製造する際にも用いられる。ガラスカバースリップの形をした薄いガラス基板(Corning Glass 2865−25)は、最初に、70%イソプロパノール中で2時間洗浄され、次に、空気乾燥された。ガラス標本は、次に、加速電圧30kVを使用して加速されたアルゴンGCIBを使用して、照射量5×1014イオン/cmまでGCIB照射されるか、又は、対照として照射されないままにされた。ガラスカバースリップ(被照射標本及び対照標本の両方)は、次に、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンが追加されたダルベッコ改変イーグル培地栄養混合物(DMEM)中、1cm当たり40,000細胞の初期密度において初代ヒト骨芽細胞でシードされ、そして、37℃、CO濃度5%の空気中において加湿培養器の中で培養された。ガラスカバースリップは、細胞付着を観測するため、最初の4時間に亘り1時間毎に観察され、撮像された(光学顕微鏡)。4時間後、栄養混合物及び非付着細胞は、次に、取り出され、新しい、追加された栄養混合物で置き換えられ、そして、培養が継続された。追加的な顕微鏡画像がシード後の24時間目及び48時間目に撮影された。
【0045】
図4a、4c、及び4eは、細胞をシードした後、4時間、24時間、及び48時間の(それぞれの)間隔で撮影された対照ガラスカバースリップの光学顕微鏡写真である。図4b、4d、及び4fは、細胞を植えた(シードした)後、4時間、24時間、及び48時間の(それぞれの)間隔で同様に撮影されたGCIBが照射されたガラスカバースリップの光学顕微鏡写真である。各時点で対照をGCIBが照射された表面と比較することにより、照射されていない対照と比べて、ヒト胎児骨芽細胞がGCIBが照射されたガラスカバースリップ表面上でより多く付着し、より良く増殖することが明らかである。
【0046】
重合体の例示的な実施形態
第一の重合体の表面改善は、第三の例示的実施形態に開示される。重合体材料は、生物学的実験器具で用いられることがよくある材料であり、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレンなどである。重合体材料は、哺乳類への移植を対象とする医療用物体を製造する際にも用いられる。ペトリ皿の形をしたポリスチレン基板(Fisher Scientific Fisherbrand 08−757−12)は、30kV加速電圧を使用して加速されたアルゴンGCIBを用いて照射量5×1014イオン/cmまでGCIB照射されるか、又は、対照として照射されないままにされた。付加的に、細胞培養皿の形をしたポリスチレン基板(BD Biosiences 353003)が比較のため代替的なポリスチレン表面として用いられた。細胞培養皿は、細胞成長を高めることを対象とする特殊加工された表面が商業的に供給される。3つのポリスチレン標本(被照射ペトリ皿標本及び対照ペトリ皿標本と、照射されていない代替的な細胞培養皿と)は、次に、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンが追加されたダルベッコ改変イーグル培地栄養混合物(DMEM)中、1cm当たり2,500細胞の初期密度において初代ヒト骨芽細胞がシードされ、そして、37℃、CO濃度5%の空気中において加湿培養器の中で培養された。3個のポリスチレン標本は、細胞付着を観測するため、最初の4時間に亘り1時間毎に観察され、撮像された(光学顕微鏡)。4時間後、栄養混合物及び非付着細胞は、次に、取り出され、新しい、追加された栄養混合物で置き換えられ、そして、培養が継続された。追加的な顕微鏡画像が植え付け(シード)後の24時間目及び48時間目に撮影された。
【0047】
図5a、5d、及び5gは、細胞をシードした後、4時間、24時間、及び48時間の(それぞれの)間隔で撮影された対照ポリスチレンペトリ皿の表面の光学顕微鏡写真である。図5b、5e、及び5hは、細胞をシードした後、4時間、24時間、及び48時間の(それぞれの)間隔で同様に撮影されたGCIBが照射されたポリスチレンペトリ皿の光学顕微鏡写真である。図5c、5f、及び5iは、細胞をシードした後、4時間、24時間、及び48時間の(それぞれの)間隔で同様に撮影されたGCIBが照射されたポリスチレン細胞培養皿の光学顕微鏡写真である。各時点で、ペトリ皿対照群を、GCIBが照射されたペトリ皿表面及び照射されていない細胞培養皿の表面と比較することにより、照射されていないペトリ皿対照群又は照射されていない細胞培養皿表面と比べて、ヒト胎児骨芽細胞はGCIBが照射されたガラスカバースリップ表面上でより多く付着し、より良く増殖することが明らかである。
【0048】
更に、ペトリ皿の形をしたポリスチレン基板(Fisher Scientific Fisherbrand 08−757−12)が部分的に遮蔽され、次に、30kV加速電圧を使用して加速されたアルゴンGCIBを用いて照射量5×1014イオン/cmまでGCIBが照射された。用いられた遮蔽物は、ポリスチレン表面に近接した非接触シャドーマスクであった。遮蔽されていない部分は、全部のGCIB照射量を受け、一方、遮蔽された部分は、GCIB照射を受けなかったので、対照表面としての役割を果たす。ペトリ皿は、次に、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンが追加されたダルベッコ改変イーグル培地栄養混合物(DMEM)中、1cm当たり2,500細胞の初期密度において初代ヒト骨芽細胞でシードされ、そして、37℃、CO濃度5%の空気中において加湿培養器の中で培養された。ポリスチレンペトリ皿は、細胞付着を観測するため、最初の4時間に亘り1時間毎に観察された(GCIBが照射された領域と照射されていない領域との間の境界面にある光学顕微鏡)。4時間後、栄養混合物及び非付着細胞は、次に、取り出され、新しい、追加された栄養混合物で置き換えられ、そして、培養が継続された。顕微鏡画像がシード後の24時間目及び48時間目に撮影された。
【0049】
図6a及び6bは、細胞をシードした後、24時間及び48時間の(それぞれの)間隔で撮影され、遮蔽された照射されていない領域及び遮蔽されていないGCIBが照射された領域との間の境界面で観察された、部分的に遮蔽されたポリスチレンペトリ皿の光学顕微鏡写真である。GCIBが照射された領域は、図6a及び6bのそれぞれの左側にあり、照射されていない対照領域は、図6a及び6bのそれぞれの右側にある。両方の時点で照射されていない領域とGCIBが照射された領域とを比較することにより、照射されていない(遮蔽された)部分と比べて、ヒト胎児骨芽細胞がポリスチレン表面のGCIBが照射された部分により多く付着し、より良く増殖することが明らかである。
【0050】
第二の重合体の表面改善は、第四の例示的実施形態に開示される。細長い片(長さ30mm×幅10mm×厚さ1.5mm)の形をしたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基板は、半分が遮蔽され、そして、30kV加速電圧を使用して加速されたアルゴンGCIBを用いて照射量5×1014イオン/cmまでGCIB照射されるか、又は、対照として、照射されないままにされた。用いられた遮蔽物は、PTFE表面に近接した非接触シャドーマスクである。遮蔽されていない表面部分は、全部のGCIB照射量を受け、一方、遮蔽された表面部分は、GCIB照射を受けなかったので、対照表面としての役割を果たす。初代ブタ線維芽細胞が新鮮な前靱帯から採取された。全体(被照射部分及び対照部分)のPTFE表面は、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンが追加されたダルベッコ改変イーグル培地栄養混合物(DMEM)中、初代ブタ線維芽細胞は1cm当たり5000細胞の初期密度でシードされ、付着するまで24時間放置され、そして、37℃において加湿培養器の中で培養された。24時間後、培地が取り出され、細胞は、1倍のリン酸緩衝生理食塩水で手短く洗い流され、−20℃で1時間に亘って予め冷却されたメタノール中に固定された。GCIBが照射された部分でのPTFEの表面、及び、GCIBが照射されていない対照部分での表面は、それぞれ、Hitachi TM−1000 走査型電子顕微鏡を使用して撮像された。結果は、PTFE表面のGCIBが照射された部分とGCIB照射されていない部分との間に細胞付着の明らかな差異があることを示した。
【0051】
図7aは、細胞をシードした後の24時間目に撮影されたPTFE基板のGCIB照射されていない対照表面の走査型電子顕微鏡写真である。図7bは、同様に、細胞をシードされた後の24時間目に撮影されたPTFE基板のGCIBが照射された表面の走査型電子顕微鏡写真である(両方共に固定後)。
【0052】
図7aは、細胞がPTFE表面のGCIB照射されていない対照部分の1%未満にしか付着しなかったことを示す。
【0053】
図7bは、細胞がPTFE表面のGCIBが照射された部分のほぼ100%に付着したことを示す。
【0054】
この表面への細胞付着に影響を与える能力は、細胞成長が限定されたエリアだけで望まれる多くの用途で極めて役に立つことがある。実施例には、平滑筋成長及びプラーク形成を抑制するために、管腔表面でGCIB照射することができ、反管腔表面で再内皮化を可能にさせ、そのままの(照射されていない)PTFE表面を維持するPTFE心臓血管ステントと、神経再生のためのシリコンゴム管のGCIB照射と、その他とが含まれる。
【0055】
非晶質石英の例示的な実施形態
非晶質石英の表面加工は、第五の例示的実施形態に開示される。非晶質石英材料は、生物学的実験器具で頻繁に用いられ、更に、哺乳類への移植を対象とする医療用物体を製造する際に用いられる材料である。非晶質石英は、細胞の表面付着及び増殖のため非常に有利な材料であることが知られている。清潔かつ無菌の非晶質石英基板は、部分的に遮蔽され、次に、30kV加速電圧を使用して加速されたアルゴンGCIBを用いて照射量5×1014イオン/cmまでGCIBが照射された。用いられた遮蔽物は、石英表面に近接した非接触シャドーマスクである。遮蔽されていない部分は、全部のGCIB照射量を受け、一方、遮蔽された部分は、GCIB照射を受けなかったので、対照表面としての役割を果たす。初代ブタ線維芽細胞が新鮮な前靱帯から採取された。非晶質石英表面は、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンが追加されたダルベッコ改変イーグル培地栄養混合物(DMEM)中、初代ブタ線維芽細胞は1cm当たり5,000細胞の初期密度でシードされ、そして、37℃、CO濃度5%の空気中において加湿培養器の中で培養された。4時間後、培地及び非付着細胞が取り出され、新しい培地で置き換えられ、培養が続けられた。表面は、最初の4時間は1時間毎に、そして、更に、初期シード後の6、24及び48時間目に観察され、撮像された。
【0056】
図8は、細胞をシードした後の24時間目に撮影され、遮蔽された照射されていない領域と遮蔽されていないGCIBが照射された領域との間の境界面で観察された部分的に遮蔽された非晶質石英基板の光学顕微鏡写真である。結果は、表面がGCIBが照射されたか、照射されなかったかにかかわらず、線維芽細胞が非晶質石英表面に優先的に付着することを示す。GCIBが照射された領域は、図8の左側にあり、照射されていない対照領域は、図8の右側にある。
【0057】
結晶質サファイアの例示的な実施形態
(単結晶)結晶質サファイアの表面改善は、第六の例示的実施形態に開示される。清潔かつ無菌の結晶質サファイア基板は、部分的に遮蔽され、次に、30kV加速電圧を使用して加速されたアルゴンGCIBを用いて照射量5×1014イオン/cmまでGCIBが照射された。用いられた遮蔽物は、サファイア表面に近接した非接触シャドーマスクである。遮蔽されていない部分は、全部のGCIB照射量を受け、一方、遮蔽された部分は、GCIB照射を受けなかったので、対照表面としての役割を果たす。初代ブタ線維芽細胞が新鮮な前靱帯から採取された。結晶質サファイアの表面は、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンが追加されたダルベッコ改変イーグル培地栄養混合物(DMEM)中、初代ブタ線維芽細胞を1cm当たり5,000細胞の初期密度でシードされ、そして、37℃、CO濃度5%の空気中において加湿培養器の中で培養された。4時間後、培地及び非付着細胞が取り出され、新しい培地で置き換えられ、培養が続けられた。表面は、最初の4時間は1時間毎に、そして、更に、初期シード後の6、24及び48時間目に観察され、撮像された。
【0058】
図9は、細胞をシードした後の24時間目に撮影され、遮蔽された照射されていない領域と遮蔽されていないGCIBが照射された領域との間の境界面で観察された部分的に遮蔽された結晶質サファイア基板の光学顕微鏡写真である。GCIBが照射された領域は、図9の左側にあり、照射されていない対照領域は、図9の右側にある。照射されていない領域とGCIBが照射された領域とを比較することにより、照射されていない(遮蔽された)部分と比べて、ブタ線維芽細胞が結晶質サファイア表面のGCIBが照射された部分により多く付着し、より良く増殖することが明らかである。
【0059】
サファイアのような結晶質材料のGCIB照射は、非常に薄い表面層(数十オングストローム)の部分的又は完全な非晶質化をもたらすと考えられる。特定の理論に拘束されたくないが、照射による影響を受けた非晶質化表面改質は、細胞付着及び増殖の改善に寄与することが考えられる。改善に寄与することがあるその他の考えられるメカニズムは、材料の表面湿潤性、親水性、及び/又は、表面電荷状態の改質を高める。
【0060】
重合体フィラメント/重合体織物の例示的実施形態
織物は、織り、編み、及び/又は、その他の不織技法によって、重合体又は共重合体繊維から形成することができる。ある一定の重合体織物(最も顕著には、ポリエチレンテレフタレート)は、血管移植片を製作するため特に適した織物である。織機によって織られたポリエチレンテレフタレート(ポリ(エチレンテレフタレート)と表記されること、及び、PET又はPETEと略記されることがある)繊維の織物は、この織物の商標のうちの1つを用いて、Dacronと呼ばれることもあり、血管移植片を製作する材料として広く用いられている。第七の例示的実施形態では、表面改善は、織機によって織られたポリエチレンテレフタレート(PETE)織物に関して開示される。PETE織物から製作された血管移植片は、場合によっては、血液損失を低減するため(コラーゲン又はアルブミンのような)タンパク質でコーティングされ、及び/又は、移植片感染を防止するため抗生物質でコーティングされる。薬理学的又は生物学的試薬の使用により再狭窄を軽減するため設計された殆どの戦略は、織物表面上での血管平滑筋細胞増殖の直接的な阻害を伴う。しかし、代替案として、平滑筋細胞増殖は、損傷部位及び移植片部位での再内皮化の特定の促進によって間接的に阻害されることがある。従来、再内皮化は、ゆっくりであること、又は、不完全であることがよくあった。本実施形態では、GCIB照射が材料の生物活性をより高め、かつ、再内皮化を促進するため材料をより好適にすることを示すため、コーティングされていない織機で織られたPETE織物材料のGCIB照射を評価した。
【0061】
製織PETE織物は、15mm×30mm片に切断された。これらの片は、半分が遮蔽され、そして、30kV加速電圧を使用して加速されたアルゴンGCIBを用いて照射量5×1014イオン/cmまでGCIBが照射された。用いられた遮蔽物は、PTFE織物表面に近接した非接触シャドーマスクであり、各織物片の一方側の半分を覆う。遮蔽されていない表面部分は、全部のGCIB照射量を受け、一方、遮蔽された表面部分は、GCIB照射を受けなかったので、対照表面としての役割を果たす。織物片は、個別のペトリ皿に置かれ、生きているマウスの内皮細胞(EOMA細胞株)が織物片1個あたりに50,000細胞の初期密度でPETE織物表面全体(照射された部分及び対照部分)にシードされ、37℃での加湿培養器における培養の間に、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンが追加されたダルベッコ改変イーグル培地栄養混合物(DMEM)中、付着するまで24時間放置された。24時間後、培地及び非付着細胞が取り出された。−20℃で1時間予め冷却されたメタノールは、付着細胞を固定するためPETE織物に10分間置かれた。織物及び付着したマウス内皮細胞は、その後、走査型電子顕微鏡によって撮像された。マウス内皮細胞が付着したPETE織物のGCIBが照射された部分及び照射されていない対照部分の両方の表面領域は、Hitachi TM−1000走査型電子顕微鏡を使用して撮像された。結果は、織機で織られたPETE織物の表面のGCIBが照射された部分とGCIBが照射されていない部分との間に細胞付着の明らかな差異があることを示した。
【0062】
図10は、(メタノール固定に続いて)マウス内皮細胞によるシード後の24時間目に行われたPETE織物表面の処理片の走査型電子顕微鏡写真である。画像の左側にあるPETE織物の部分は、シード前に照射されなかったPETE織物の遮蔽された部分である。画像の右側にあるPETE織物の部分は、細胞によるシード前にGCIB照射を受けた部分である。
【0063】
図10は、PETE織物の照射されていない対照部分よりGCIB照射がなされた部分で著しく進行したマウス内皮細胞による再内皮化を示す。EOMA細胞は、GCIB照射を受けたPETE織物の部分に優先的に付着した。
【0064】
上述のいくつかの実施形態では、本発明の方法は、限定されることなく、サンドブラスト法、酸エッチング法と、塗布膜のプラズマ溶射と、COレーザー平滑化と、機械的洗浄技術、超音波洗浄技術、プラズマ洗浄技術、及び、化学的洗浄技術を含む種々の形式の洗浄法と、界面活性剤の使用、又は、異なる湿潤性特性を有している薄膜若しくは被膜の塗布と、UV処理と、UV及びオゾン処理と、ポリ(エチレングリコール)(PEG)の共有結合付着と、抗CD34抗体、及び/又は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸ペプチド(RGDペプチド)、及び/又は、コラーゲン、及び/又は、アルブミンのようなタンパク質生成物の塗布と、を含む表面を改善する、及び/又は、生物活性及び統合を増強するその他の既知の方法との組み合わせを更に含むことがある。このような組み合わせは、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0065】
本発明は、例示の目的のため、チタン箔、ガラス、ポリスチレン、PTFE、石英、サファイア、及び、PETE織物表面のいずれかを用いるものとして説明されたが、医療用インプラントのための物体は、チタン及び/又はチタン合金(酸化物コーティングの有無を問わない)、コバルト−クロム合金、コバルト−クロム−モリブデン合金、タンタル、タンタル合金、様々なその他の金属及び金属合金、ポリエチレン及びその他の不活性プラスチックのいずれか含むプラスチック又は重合体若しくは共重合体材料と、固体樹脂材料と、ガラス状材料と、織機で織られた織物と、編み物と、不織重合体/共重合体織物と、骨、コラーゲン、絹、及び、その他の天然繊維のような生物学的材料と、チタニアを含む様々なセラミックと、塗布のために適しており、そして適宜生物学的適合性があるその他の材料と、から選択される素材から形成されることが理解される。本発明は、医療移植用の物体の分野における様々な実施形態及び用途に関して説明されたが、本発明の用途がこの分野に限定されることはないことと、細胞成長、付着及び付着を表面により多くもたらすための表面へのGCIB照射の考え方が当業者に明らかである分野により広範な用途を有していることとが発明者によって理解される。このようなより広範な用途は、本発明の範囲に包含されることが意図されている。本発明は、本発明及び請求項に記載された事項の趣旨及び範囲の中で多種多様の更なる実施形態及びその他の実施形態もまた可能であることが認められるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能な物体の表面の生物活性を改善する方法であって、
減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、
医療用人工器官、外科的インプラント、外科的移植片、医療用人工器官の構成要素、外科的インプラントの構成要素、外科的移植片の構成要素、又は、移植の対象とする別の物体である物体を減圧室の中に導入する工程と、
前記ガスクラスターイオンビームを前記物体の表面の少なくとも第一の部分に照射する工程と、
を備えていることを特徴とする物体の表面の生物活性を改善する方法。
【請求項2】
前記表面の前記少なくとも一部分に照射する工程の前に、前記表面の前記少なくとも一部分を洗浄する工程を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の物体の表面の生物活性を改善する方法。
【請求項3】
前記表面の少なくとも第一の部分は、金属、酸化物、金属合金、プラスチック、重合体、共重合体、固体樹脂、ゴム、ガラス、石英、セラミック、サファイア、ガラス状材料、チタン、チタニア、チタン合金、コバルト−クロム合金、コバルト−クロム−モリブデン合金、タンタル、タンタル合金、生物学的材料、重合体又は共重合体織物、シリコン、骨、コラーゲン、絹、天然繊維材料のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の物体の表面の生物活性を改善する方法。
【請求項4】
移植可能な前記物体は、織物を含むことを特徴とする請求項1に記載の物体の表面の生物活性を改善する方法。
【請求項5】
前記物体の表面は、非晶質材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の物体の表面の生物活性を改善する方法。
【請求項6】
前記物体の表面は、結晶質材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の物体の表面の生物活性を改善する方法。
【請求項7】
生物学的実験器具の表面の生物活性を改善する方法であって、
減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、
生物学的実験器具用品である物体を減圧室の中に導入する工程と、
前記ガスクラスターイオンビームを前記物体の表面の少なくとも第一の部分に照射する工程と、
を備えていることを特徴とする生物学的実験器具の表面の生物活性を改善する方法。
【請求項8】
前記物体の表面の少なくとも第二の部分がガスクラスターイオンビームによって照射されないことを特徴とする請求項7に記載の生物学的実験器具の表面の生物活性を改善する方法。
【請求項9】
細胞を物体に付着させる方法であって、
物体の表面の少なくとも一部分を選択する工程と、
減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、
前記減圧室の中に前記物体を導入する工程と、
前記ガスクラスターイオンビームを前記表面の前記少なくとも一部分に照射する工程と、
前記減圧室から前記物体を取り出す工程と、
前記表面の前記少なくとも一部分を生きている細胞に暴露する工程と、
を備えていることを特徴とする細胞を物体に付着させる方法。
【請求項10】
前記暴露する工程は、前記表面の前記少なくとも一部分で細胞成長を開始させるため必要な期間に亘って実行されることを特徴とする請求項9に記載の細胞を物体に付着させる方法。
【請求項11】
前記表面の前記少なくとも一部分を照射する工程の前に、前記表面の前記少なくとも一部分を洗浄する工程を更に備えていることを特徴とする請求項9に記載の細胞を物体に付着させる方法。
【請求項12】
前記表面の前記少なくとも一部分は、
金属と、酸化物と、金属合金と、プラスチックと、重合体と、共重合体と、固体樹脂と、ゴムと、ガラスと、石英と、セラミックと、サファイアと、ガラス状材料と、チタンと、チタニアと、チタン合金と、アルミナと、ジルコニウムと、ジルコニウム合金と、ジルコニアと、コバルト−クロム合金と、コバルト−クロム−モリブデン合金と、タンタルと、タンタル合金と、生物学的材料と、重合体織物と、共重合体織物と、シリコンと、骨と、コラーゲンと、絹と、天然繊維と、
からなる群より選択された材料を含むことを特徴とする請求項9に記載の細胞を物体に付着させる方法。
【請求項13】
前記物体は、医療用人工器官、外科的インプラント、外科的移植片、医療用人工器官の構成要素、外科的インプラントの構成要素、外科的移植片の構成要素、又は、哺乳類の身体への移植を対象とする別の物体であることを特徴とする請求項9に記載の細胞を物体に付着させる方法。
【請求項14】
前記外科的移植片は、織物、編み物、又は、不織布を含むことを特徴とする請求項13に記載の細胞を物体に付着させる方法。
【請求項15】
前記物体の表面は、非晶質材料を含むことを特徴とする請求項9に記載の細胞を物体に付着させる方法。
【請求項16】
前記物体の表面は、結晶質材料を含むことを特徴とする請求項9に記載の細胞を物体に付着させる方法。
【請求項17】
前記物体は、生物学的実験器具用品であることを特徴とする請求項9に記載の細胞を物体に付着させる方法。
【請求項18】
前記物体は、環境試験装置であることを特徴とする請求項9に記載の細胞を物体に付着させる方法。
【請求項19】
前記物体の表面の少なくとも第二の部分は、ガスクラスターイオンビームによって照射されないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
医療移植用の物体を調製する方法であって、
医療用インプラントである物体の表面の少なくとも一部分を選択する工程と、
減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、
前記減圧室の中に前記物体を導入する工程と、
少なくとも一部分の生物活性を増加させるために前記ガスクラスターイオンビームを選択された少なくとも一部分に照射する工程と、
を備えていることを特徴とする医療移植用の物体を調製する方法。
【請求項21】
医療移植の前に、前記物体の少なくとも照射された部分で細胞をインビトロ付着及び成長させる工程を更に備えていることを特徴とする請求項20に記載の医療移植用の物体を調製する方法。
【請求項22】
細胞が付着した物品であって、
細胞を付着させるために対象物の表面の少なくとも一部分を選択する工程と、
減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、
前記減圧室の中に前記物品を導入する工程と、
前記ガスクラスターイオンビームを前記表面の前記少なくとも一部分に照射する工程と、
前記減圧室から前記対象物を取り出す工程と、
前記表面の前記少なくとも一部分を生きている細胞に暴露する工程と、
を備える方法によって作られた細胞が付着した物品。
【請求項23】
医療移植片の表面の少なくとも一部分を選択する工程と、
減圧室の中でガスクラスターイオンビームを形成する工程と、
前記減圧室の中に前記移植片を導入する工程と、
前記表面の前記少なくとも一部分の生物活性を増加させるために前記ガスクラスターイオンビームを前記表面の前記少なくとも一部分に照射する工程と、
を備える方法によって作られた医療移植のための物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図5f】
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【図5g】
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【図5h】
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【図5i】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−520150(P2012−520150A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554215(P2011−554215)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/027046
【国際公開番号】WO2010/105102
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(508216552)エクソジェネシス コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】