説明

表面の結合方法

本発明は木材をベースとする材料の片の第一の表面及び第二の表面の結合方法であって、下記の順序で、溶媒を含む、接着剤組成物を前記材料の第一の表面のみに塗布し、前記第一の表面に塗布した接着剤組成物を乾燥及び加熱し、ここで、前記溶媒を部分的に乾燥させて除き、そして、前記第一の表面と第二の表面を一緒にし、そしてこれらの二つの表面を互に対しプレスすることを特徴とする、結合方法に関する。また、本発明は木材をベースとする製品の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面の結合方法に関する。本発明はまた木材をベースとする製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着された製品、例えば、積層はり、ベニヤ製品、平土間フローリング、紙管用板紙、台紙及び合板等の製造において、木材の片の組立体が接着剤の塗布、続いてプレス工程により結合される。
【0003】
或る種の接着剤は表面への塗布の際に好適な粘度を有するために比較的高い含量の溶媒、例えば、水を必要とする。過剰の溶媒がまた安定なエマルション又は安定な樹脂をベースとする接着剤を得るためにエマルションをベースとする接着剤(また分散接着剤と称される)、及び樹脂をベースとする接着剤に通常必要とされる。一層高い固形分の接着剤では、エマルションのエージングのための増粘が一層低い固形分よりも顕著である。
【0004】
接着方法は通常、物理的乾燥/フィルム形成工程及び/又は化学的硬化工程を伴う。比較的高い含量の溶媒を有する接着剤が使用される場合、プレス時間がグルーライン中の接着剤の充分な物理的乾燥/フィルム形成プロセスを可能にするために延長される。長いプレス時間を必要としてもよい接着剤は、通常水をベースとするエマルションの形態のもの、例えば、ポリ酢酸ビニル接着剤もしくはエマルションポリマーイソシアネート接着剤、又はアミノ型もしくはフェノール型の水をベースとする樹脂である。このような接着剤を使用する場合、接着すべき木材の含水量はしばしば接着前に低下されるべきであり、その結果、接着された木材製品の最終の含水量があまり高くならない。湿潤接着剤の塗布と組み合わせての含水量の低下は含水量の変化のために悪影響を生じることがあり、これが材料中の移動をもたらして、反りの如き負の効果を生じ得る。
【0005】
エマルションをベースとする接着剤を使用する場合の別の問題は不均等な表面を一緒に接着する際の難点である。プレス中、塗布された接着剤は絞り出て、全ての場所で表面の間の距離を殆ど充満できないで去っていく傾向を有する。
【0006】
必要とされるプレス時間を減少するために、種々の解決策が示唆されていた。例えば、EP 1190823 A2は表面の加熱を含む方法を開示している。別のアプローチは塗布後に接着剤を乾燥させることである。塗布された接着剤の乾燥に関する方法及び装置が下記の文献:米国特許第3160543号、同第4812366号、同第5234519号及びEP 0979712 A1に説明されている。
【0007】
木材をベースとする材料の2つの表面を一緒に固着させる場合、強い接着性の結合を達成するために、通常、その木材中への接着剤のある程度の浸透が必要である。したがって、強い結合を確実にするために、通常、結合される両方の層を、ぬれた接着剤でこれらの表面を接触することにより、接着剤層で湿らせなければならない。接着剤を塗布しない表面と既に乾いた接着剤層を組み合わせる場合、これにより生ずる結合はあまりにも弱くなるものと見なされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、実質的に接着剤を塗布しない表面と塗布した接着剤層を有する表面を組み合わせる場合に、もはや短いプレス時間で接着強度と耐水性の点で高品質の結合を与える接着方法を提供することである。本発明の更なる目的は不均等表面を結合する改良方法を提供することである。この接着方法はまた適切に簡単であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は第一の表面及び第二の表面の結合方法、すなわち、下記の順序で、溶媒を含む、接着剤組成物を前記第一の表面のみに塗布し、前記第一の表面に塗布した接着剤組成物を乾燥及び加熱し、ここで、前記溶媒を部分的に乾燥させて除き、そして、前記第一の表面と第二の表面を一緒にし、そしてこれらの二つの表面を互に対しプレスすることを特徴とする結合方法により達成される。
【0010】
上記目的はまた木材をベースとする材料の第一の片及び第二の片を含む木材をベースとする製品の製造方法であって、下記の順序で、溶媒を含む、接着剤組成物を前記材料の第一の表面のみに塗布し、前記第一の表面に塗布した接着剤組成物を乾燥及び加熱し、ここで、前記溶媒を部分的に乾燥させて除き、そして、前記第一の表面と第二の表面を一緒にし、そしてこれらの二つの表面を互に対しプレスすることを特徴とする、木材をベースとする製品の製造方法により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記乾燥は、前記接着剤組成物を加熱して好適に行なわれる。この乾燥は強制乾燥により行なわれることが好適である。
“強制乾燥”は周囲空気への暴露及び支持体への浸透のために生じる表面に塗布された接着剤層の自然乾燥と較べて乾燥速度を増大するあらゆる操作を本明細書中で意味する。
【0012】
前記溶媒は強制乾燥のあらゆる方法、例えば、乾燥空気、乾燥ガス、空気吹き込み又は加熱、好ましくは加熱の使用により乾燥されて除き得る。加熱の好適な方法の例は放射熱(例えば、赤外線)、温空気吹き込み、乾燥空気吹き込み及びマイクロウェーブ加熱である。この溶媒は放射熱またはマイクロウェーブ加熱の使用により、最も好ましくは放射熱の使用により乾燥されて除かれることが好ましい。
【0013】
好適には、溶媒の約10重量%から約95重量%まで、好ましくは約20重量%から約90重量%までが接着剤組成物から乾燥されて除かれる。
【0014】
好適には、乾燥直後の接着剤組成物の固形分は約20重量%から約95重量%まで、好ましくは約35重量%から約95重量%まで、より好ましくは約50重量%から約90重量%まで、さらにより好ましくは約65重量%から約85重量%まで、最も好ましくは約70重量%から約80重量%までである。
【0015】
“固形分”は下記の方法に従って測定された、接着剤の成分の含量を本明細書中で意味する:接着剤1gを金属のふたに入れ、加熱チャンバー中で30分間にわたって120℃に暴露する。ふた中に残っている接着剤の%を固形分と定義する。
【0016】
本明細書中で“溶媒”は上記条件下で蒸発するあらゆる物質を意味する。
【0017】
本接着剤組成物は乾燥の間に適切に加熱される。しかしながら、本接着剤組成物は乾燥後に加熱されることがまた適切である。本接着剤組成物は乾燥中に加熱されることが好ましい。適切には、本接着剤組成物は加熱され、その結果、結合される2つの表面を接触する場合、この接着剤層の温度は約30から約150℃、好ましくは約40から100℃、最も好ましくは約50から約90℃である。
【0018】
本方法に適した本接着剤組成物は溶媒を含むいずれの接着剤であってもよい。好ましくは、本接着剤組成物は水性の接着剤組成物である。本発明の一つの好ましい実施態様において、この接着剤組成物はエマルションポリマーをベースとする接着剤組成物のグループに属することが好適である。この場合、好ましい接着剤組成物はポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル、エマルションポリマーイソシアネート、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン、及びアクリレートをベースとするものである。この接着剤組成物はポリ酢酸ビニルをベースとする接着剤組成物又はエマルションポリマーイソシアネートをベースとする接着剤組成物であることが最も好ましい。本発明の別の好ましい実施態様において、前記接着剤組成物は硬化性樹脂をベースとする接着剤組成物のグループに属することが好適である。この場合、この接着剤組成物はアミノ樹脂をベースとする接着剤組成物又はフェノール樹脂をベースとする接着剤組成物であることが好ましい。この接着剤組成物はポリマーエマルション及び硬化性樹脂の両方を含んでもよい。
【0019】
前記接着剤組成物中の、初期の固形分、すなわち、塗布の時点の固形分は好適には約1重量%から約95重量%まで、好ましくは約10重量%から約90重量%まで、更に好ましくは約30重量%から約70重量%まで、最も好ましくは約40重量%から約60重量%までである。
【0020】
前記接着剤組成物中の溶媒は、接着剤組成物中の使用に適したあらゆる溶媒であってもよい。この溶媒は水、又はアルコール、エステル、及びケトンのグループに属する有機溶媒であることが好適である。好適なアルコールの例として、メタノール、エタノール、プロパノール、グリコール、例えば、エタンジオール及びプロパンジオールが挙げられる。この溶媒は水であることが好ましい。前記接着剤組成物中の溶媒はまた溶媒の組み合わせを含んでもよい。
【0021】
前記プレスは好適には約0.1MPaから約10MPaまで、好ましくは約0.5MPaから約5MPaまで、最も好ましくは約0.75MPaから約3MPaまでの圧力で行なわれる。このプレス時間は変化してもよく、例えば、使用される接着系、どの製品が製造されるのか、及びどの型のプレスが使用されるのかに依存する。一つの好適な型の接着方法において、結合すべき表面がプレス工程の前に全体として組み立てられる。この場合、プレス時間は好適には約0.01秒から約3000秒まで、好ましくは約0.1秒から約1000秒まで、最も好ましくは約1秒から約60秒までである。別の好適な型の接着方法において、結合すべき表面がローラープレス、バンドプレス、又は摩擦プレス中を移動して、連続的に組み立てられ、プレスされる。これらの場合、プレス時間は好適には約0.001秒から約300秒まで、好ましくは約0.1秒から約60秒まで、最も好ましくは約1秒から約30秒までである。ローラープレスの特別な場合、このプレス時間は好適には約0.001秒から約10秒まで、好ましくは約0.1秒から約1秒までである。
【0022】
前記プレスは、周囲温度で通常のコールドプレス、好適には0-60℃、好ましくは5-40℃、例えば、室温で行なわれることが好適である。或る場合、例えば、硬化性樹脂が存在する場合、このプレスは加熱下で行なわれることが好適である。加熱が所望される場合には、このプレス温度は好適には約40℃から約200℃まで、好ましくは約60℃から約130℃までである。
【0023】
加熱とプレスの間の時間は、好適には30秒以下、好ましくは20秒以下、最も好ましくは10秒以下である。
【0024】
木材をベースとする材料として、固体木材に基づく材料に加えて、本明細書では繊維材料、チップ材料及びパーティクルボード材料の如き材料がまた挙げられる。この木材をベースとする材料は、適切には約1mm以上、好ましくは約5mm以上の厚みを有する。
【0025】
本発明はあらゆるタイプの接着された製品、特に木材をベースとする接着された製品、例えば、積層はり、ベニヤ製品、端部接着製品及び平土間フローリングを製造するのに適している。
【0026】
本発明の別の好ましい実施態様において、ポリ酢酸ビニル接着剤の水性分散液が木材の片の表面に塗布され、その後に水が赤外線照射を使用することにより乾燥されて除かれ、その結果、本接着剤組成物は約60重量%から約80重量%までの固形分を有する。別の木材の片はその後、最初の片と組み立てられ、二つの片は一緒にプレスされる。
【0027】
今、本発明が下記の実施例に関して更に記載されるが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【実施例】
【0028】
例1
50重量%の初期固形分を有するエマルション−ポリマー−イソシアネートをベースとするアセテート接着剤を使用して2層製品をつくった。この周囲温度は20℃であった。サイズ140mm x 50mmの厚さ16mmの第一の木材片を50重量%の初期固形分を有する140g/m2の接着剤で被覆した。この接着層を赤外線を使用して加熱することにより乾燥させ、その結果、この接着層は約70重量%の固形分を有していた。この新しい固形分をこの片の計量により測定した。次いでこの木材片を、接着剤を塗布していない第二の木材片に直接に接触させ、約30秒間1.5MPaの圧力で一緒にコールドプレス(20℃)した。この接着強さをプレス直後に“チゼル試験”を行なうことにより測定した。この試験では、チゼルを使用することにより二つの接着された片を強制的に離し、繊維引裂きを示す接着された表面の%を測定する。これらの接着された片をANSI/HPVA LF 1996接着剤層試験により試験をした。
例2
例1におけるのと同じ条件、材料及び接着剤の量を用いて2層製品をつくった。しかし、乾燥または加熱はしなかった。これらの2つの木材片を、接着剤の塗布直後に互いに接触させ、約30秒間1.5MPaの圧力で一緒にプレスした。

【0029】
【表1】

【0030】
本発明の方法は、短いプレス時間でも優れた接着強さと耐水性を与えることが結論される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材をベースとする材料の片の第一の表面及び第二の表面の結合方法であって、下記の順序で、
−溶媒を含む、接着剤組成物を前記材料の第一の表面のみに塗布し、
−前記第一の表面に塗布した接着剤組成物を乾燥及び加熱し、ここで、前記溶媒を部分的に乾燥させて除き、そして、
−前記第一の表面と第二の表面を一緒にし、そして
−これらの二つの表面を互に対しプレスすることを特徴とする、結合方法。
【請求項2】
木材をベースとする材料の第一の片及び第二の片を含む木材をベースとする製品の製造方法であって、下記の順序で、
−溶媒を含む、接着剤組成物を前記材料の第一の表面のみに塗布し、
−前記第一の表面に塗布した接着剤組成物を乾燥及び加熱し、ここで、前記溶媒を部分的に乾燥させて除き、そして、
−前記第一の表面と第二の表面を一緒にし、そして
−これらの二つの表面を互に対しプレスすることを特徴とする、木材をベースとする製品の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥が前記接着剤組成物を加熱して行なわれる、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥が強制乾燥により行なわれる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒の約10重量%〜約95重量%を前記接着剤組成物から乾燥させて除く、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
乾燥直後の固形分が約20重量%〜約95重量%である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
乾燥直後の固形分が約65重量%〜約85重量%である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記接着剤組成物がエマルションポリマーをベースとする接着剤組成物のグループに属する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が水である、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記木材をベースとする製品が平土間フローリングである、請求項2から9のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−504030(P2007−504030A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532176(P2006−532176)
【出願日】平成16年5月5日(2004.5.5)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000683
【国際公開番号】WO2004/104123
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(504299678)アクゾ ノーベル コーティングス インテルナショナール ベー.ファオ. (8)
【Fターム(参考)】