説明

表面の装飾法

【課題】単層又は多層のフィルムに電磁線をもたらすことにより成形部材の表面の少なくとも一部分を装飾フィルムと電磁線に入射下に溶着する表面装飾された成形部材の製造法を提供する。
【解決手段】充填材または強化材を含有した成形部材を準備しその表面の少なくとも一部分を単層又は多層からなる装飾用フィルムを準備し電磁線に入射下において溶着することを特徴とする工具なしの溶着法による製造法。表面装飾された成形部材の製造法により第一の工程で例えばラビットプロトタイピングにより製造された成形部材の表面は事後に装飾される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、単層または多層のフィルムに電磁線をもたらすことにより表面を装飾する方法である。
【0002】
プラスチック成形部材は、多種多様のプラスチック溶着方法により、例えば高周波溶着、熱インパルス溶着、熱接触溶着、加熱コイル溶着によってかまたは電磁線、例えばレーザー光、IRまたはマイクロ波照射により互いに結合させることができる。レーザー透過溶着法の場合には、通常、レーザー透過性の接合部材およびレーザー吸収性の接合部材が使用される。レーザービームは、透過性物体を透過し、隣接する吸収性成形体上に衝突し、この成形体は、局部的な加熱によって溶融される。しかし、透過性接合部材を透過するレーザービームは、接合の場合には極度に深く吸収性の接合部材に侵入せず、既に表面領域内で吸収性成形体の溶融を生じる。この場合には、熱時に接合体域内でレーザービームの有利な局所的変換を生じる。膨張する溶融液は、透過性接合部材と接触し、この透過性接合部材を同様に局所的に溶融する。
【0003】
この場合、押付圧力は、接合結合の実現を支持する。熱は、意図的に導入され、早期には外向きに逃出することができない。充填されていない状態での熱可塑性樹脂は、レーザー光に対して、通常レーザー透過溶着法に使用される波長で十分に透過性である。別の溶着法と異なる1つの利点は、結合部の外観を極めて良好に目視できること、および接合帯域の加熱が局所的に制限されることにある。同様のことは、IR線または別の電磁線による溶着法にも言えることである。
【0004】
成形部材およびフィルムを電磁線、例えばレーザービームにより互いに溶着しうることは、既に公知である(ドイツ連邦共和国特許出願公開第19542328号明細書A1;ドイツ連邦共和国特許出願公開第19916786号明細書A1;WO 02/055287)。この場合には、構造的な複合体が得られる。こうして表面を装飾する方法は、これまで公知ではなかった。
【0005】
表面の装飾は、異なる目的に使用することができる:
a)ラピッドプロトタイピングまたはラピッドマニュファクチュアリングによって製造された成形部材の表面は、しばしば粗く、審美的に殆んど魅力のないものである。
b)同様のことは、繊維または充填剤で強化された成形材料から製造された成形部材にも言えることである。
c)しばしば成形部材上に紋章、有色の装飾要素、ラベルまたは符号を施こすことが必要とされる。
d)更に、使用条件下で十分には耐引掻性、耐候性、耐化学薬品性または耐応力亀裂性でない表面を、全く使用量の痕跡が発生せず、例えば光沢が維持されるように保護することが望まれている。
【0006】
欧州特許出願公開第0568988号明細書A1の記載から、保護層であるフィルムに熱可塑性樹脂溶融液を後方から噴射することによって表面耐性の構造部材を製造することができることは、公知である。この場合、フィルムは、既に成形部材の製造の際にこの成形部材と結合される。この方法は、ラピッドプロトタイピングまたはラピッドマニュファクチュアリングによって製造される成形部材には、不適当である。
【0007】
従って、第1の工程で製造された成形部材の場合に事後に表面を装飾し、例えば射出成形により製造することができない成形部材を装飾することができるかまたは交互にもたらすことができるかまたは少量生産を形成することができる方法を開発するという課題が課された。
【0008】
この課題は、表面装飾された成形部材の製造法において、
a)成形部材を準備し、
b)成形部材の表面の少なくとも一部分を装飾用フィルムと電磁線の入射下に溶着することを特徴とする表面装飾された成形部材の製造法によって解決される。
【0009】
1つの可能な実施態様において、成形部材は、ラピッドプロトタイピングまたはラピッドマニュファクチュアリングによって製造される。この場合には、フィルムが溶着され、一部分に平滑な表面が備えられる。更に、フィルムは、他の装飾機能を満たすことができる。"ラピッドプロトタイピング"および"ラピッドマニュファクチュアリング"の概念によれば、層状で作業する金型なしの方法(即ち、予め完成された金型なしの方法)が考えられ、この場合には、それぞれ粉末状の層の選択的な領域が溶融され、冷却後に硬化される。このための例は、選択的なレーザー焼結(米国特許第6136948号明細書;WO 96/06881)、例えばWO 01/38061に記載されているSIV法または欧州特許出願公開第1015214号明細書から明らかになる方法である。最後の2つの方法は、粉末の溶融のために平面的な赤外線加熱を用いて作業される。溶融の選択性は、第一の方法の場合には抑制剤の施与により、第二の方法の場合にはマスクにより達成される。もう1つの方法は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10311438号明細書に記載されており、この場合には、溶融のために必要なエネルギーがマイクロ波発生器によってもたらされ、選択性はサセプタの施与によって達成される。他の適当な方法は、例えばドイツ連邦共和国特許出願102004012682.8号、ドイツ連邦共和国特許出願102004012683.6号およびドイツ連邦共和国特許出願102004020452.7号に記載されているような、粉末中に含まれているかまたはインクジェット法により施与される吸収剤を用いて作業する方法である。この場合、電磁エネルギーの作用のために広帯域のレーザーが用いられるが、電磁エネルギーの平面的な作用も適当である。
【0010】
前記方法のために使用される粉末は、本発明による成形材料を有利に低温で粉砕することにより製造されることができる。引続き、粉砕物は、分別されることができ、粗大な粒子または極めて微細な粒子が除去される。粒子の丸み付けのために、例えば高速運転式ミキサー中での機械的な後処理を引き続き行なうこともできる。こうして得られた粉末を先行技術により細流助剤を用いて、例えばドライブレンドで混合されるフュームドシリカを用いて加工することが推奨される。特に、こうして得られた粉末は、40〜120μmの数平均粒径および10m2/g未満のBET表面積を有する。
【0011】
もう1つの可能な実施態様において、成形部材は、繊維および/または充填剤で強化された成形材料からなる。適当な繊維および充填剤ならびに適当な組成物は、さらに下記に記載されている。殊に、充填度がよりいっそう高い場合、充填剤および強化剤は、表面上で外向きに押されて跡が付き、このことは、粗い表面を生じる。このことから予測して、この種の表面は、まさに充填剤と強化剤との最適でない結合の際に風化しうるかまたは粉吹き(auskreiden)しうる。これは、本発明による方法によって回避される。
【0012】
もう1つの可能な実施態様において、それぞれの種類の成形部材上に紋章、有色の装飾要素または符号を有するかまたはラベルであるフィルムが施こされる。成形部材は、押出法、射出成形法または全ての別の成形法によって製造されていてよい。
【0013】
最終的に、他の可能な実施態様において、使用条件下で使用量の痕跡が発生するであろう表面上にフィルムが施こされる。それというのも、この表面は、十分には耐引掻性、耐候性、耐化学薬品性または耐応力亀裂性ではないからである。適したフィルム材料は、公知であり、例は、さらに下記されている。
【0014】
本発明により使用される成形部材は、通常、熱可塑性ポリマーから形成されているが、しかし、セラミック、天然素材、例えば木材または皮革、熱硬化性樹脂または金属から形成されていてもよい。成形部材は、多成分で、例えば多層で形成されていてもよい。
【0015】
熱可塑性ポリマーとして、当業者に公知の全ての熱可塑性樹脂がこれに該当する。適当な熱可塑性ポリマーは、例えばKunststoff-Taschenbuch, Saechtling編, 第25版, Hanser-Verlag, Muenchen, 1992、殊に第4章ならびにその中で引用された刊行物、およびKunststoff-Handbuch, G. BeckerおよびD. Braun, 第1〜11巻, Hanser-Verlag, Muenchen, 1966〜1996、に記載されている。
【0016】
例示的に適当な熱可塑性樹脂として次のものが挙げられる:ポリオキシアルキレン、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド、ビニル芳香族(共)重合体、例えばポリスチレン、耐衝撃性に変性されたポリスチレン、例えばHI−PS、またはASA−、ABS−またはAES−ポリマー、ポリアリーレンエーテル、例えばポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリラクチド、ハロゲン含有ポリマー、イミド基含有ポリマー、セルロースエステル、シリコーンポリマーおよび熱可塑性エラストマー。異なる熱可塑性樹脂の混合物は、プラスチック成形部材のための材料として使用されてもよい。
【0017】
この混合物は、単相または多相のポリマーブレンドであることができる。
【0018】
ポリオキシアルキレン単独重合体またはポリオキシアルキレン共重合体、殊に(コ)ポリオキシメチレン(POM)およびその製造法は、当業者に自体公知であり、刊行物中に記載されている。適当な材料は、市場で、例えばUltraform(登録商標)(BASF AG)の商品名で入手することができる。一般に、前記ポリマーは、ポリマー主鎖中に繰返し単位−CH2O−を少なくとも50モル%有する。単独重合体は、一般にホルムアルデヒドまたはトリオキサンを、例えば適当な触媒の存在下で重合させることによって製造される。好ましいのは、ポリオキシメチレン共重合体およびポリオキシメチレン三元重合体である。好ましいポリオキシメチレン(共)重合体は、少なくとも150℃の融点および5000〜200000、特に7000〜150000g/molの範囲内の分子量(質量平均)Mwを有する。鎖端部にC−C結合を有する、末端基が安定化されたポリオキシメチレン重合体は、特に有利である。
【0019】
適当なポリカーボネートは、自体公知であり、例えばドイツ連邦共和国特許出願公告第1300266号明細書の記載によれば、界面重縮合によって得ることができ、或いはドイツ連邦共和国特許出願公開第1495730号明細書の記載によれば、ビフェニルカーボネートをビスフェノールと反応させることによって得ることができる。
【0020】
好ましいビスフェノールは、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパンであり、一般にビスフェノールAと呼称される。適当なポリカーボネートは、市場でLexan(登録商標)(GE Plastics B.V., Holland)の商品名で入手することができる。
【0021】
適当なポリエステルは、同様に自体公知であり、刊行物中に記載されている。このポリエステルは、芳香族ジカルボン酸に由来する芳香環を主鎖中に含有する。芳香環は、例えばハロゲン、例えば塩素または臭素によって置換されていてもよいし、C1〜C4−アルキル基、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基またはn−プロピル基、またはn−ブチル基、イソブチル基または第三ブチル基によって置換されていてもよい。ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、そのエステルまたは該ジカルボン酸の別のエステル形成誘導体を、脂肪族ジヒドロキシカルボン酸と反応させることによって自体公知の方法で製造されることができる。好ましいジカルボン酸としては、ナフタリンジカルボン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸またはこれらの混合物を挙げることができる。芳香族ジカルボン酸30モル%までを、脂肪族ジカルボン酸または脂環式ジカルボン酸、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸およびシクロヘキサンジカルボン酸によって代替することができる。脂肪族ジヒドロキシ化合物の中で、2〜6個の炭素原子を有するジオール、殊に1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメチロールおよびネオペンチルグリコールまたはこれらの混合物が有利である。特に好ましいポリエステルとしては、2〜6個のC原子を有するアルカンジオールに由来するポリアルキレンテレフタレートを挙げることができる。前記のポリエステルの中で、殊にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。
【0022】
適当なポリオレフィンは、第1にポリエチレンおよびポリプロピレンならびにエチレンまたはプロピレンを基礎とし、場合によっては高級α−オレフィンを有する共重合体である。また、ポリオレフィンは、エチレン−プロピレンエラストマーおよびエチレン−プロピレンターポリマーでもある。
【0023】
ポリ(メタ)アクリレートの中で、殊にポリメチルメタクリレート(PMMA)ならびに他の共重合可能なモノマー、例えばn−ブチルアクリレート、第三ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートを40質量%まで有するメチルメタクリレートを基礎とする共重合体を挙げることができ、例えばこの共重合体は、例えばLucryl(登録商標)(BASF AG)またはPlexiglas(登録商標)(Roehm GmbH)の商品名で得ることができる。これは、本発明の範囲内で耐衝撃性に変性されたポリ(メタ)アクリレートならびにポリアクリレートゴムで耐衝撃性に変性されている、ポリ(メタ)アクリレートとSAN−ポリマーとの混合物(例えば、BASF AGの市販製品Terlux(登録商標)参照)であると理解することができる。
【0024】
本発明の範囲内でポリアミドは、ポリエーテルアミドおよびポリエーテルブロックアミドを含めて全ての公知のポリアミドである。このための例は、7〜13個の環員を有するラクタムに由来するポリアミド、例えばポリカプロラクタム、ポリカプリルラクタムおよびポリラウリンラクタムならびにジカルボン酸をジアミンと反応させることによって得ることができるポリアミドである。ポリアミドは、全芳香族であってもよいし、部分芳香族であってもよく;この部分芳香族は、通常、PPAと呼称される。
【0025】
ジカルボン酸としては、6〜22個、殊に6〜12個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を使用することができる。この場合には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸(=デカンジカルボン酸)およびテレフタル酸および/またはイソフタル酸が酸として挙げられる。
【0026】
ジアミンとしては、特に6〜12個、殊に6〜8個の炭素原子を有するアルカンジアミンならびにm−キシリレンジアミン、ジ−(4−アミノフェニル)メタン、ジ−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ジ−(4−アミノフェニル)−プロパンまたは2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)プロパンが適当である。
【0027】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド(PA66)、ポリヘキサメチレンセバシン酸アミド(PA610)、ポリヘキサメチレンデカンジカルボン酸アミド(PA612)、ポリカプロラクタム(PA6)、コポリアミド6/66、殊にカプロラクタム単位5〜95質量%の含量を有するコポリアミド6/66ならびにポリラウリンラクタム(PA12)およびPA11であり、さらにカプロラクタム、テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンを基礎とするかまたはテレフタル酸、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンを基礎とするコポリアミドでもある。
【0028】
更に、例えば1,4−ジアミノブタンをアジピン酸と高められた温度で縮合させることによって得ることができるポリアミドも挙げられる(PA46)。この構造のポリアミドのための製造方法は、例えば欧州特許出願公開第0038094号明細書、欧州特許出願公開第0038582号明細書および欧州特許出願公開第0039524号明細書中に記載されている。
【0029】
他の例は、2つ以上の前記モノマーを共重合することによって得られるポリアミドまたは多数のポリアミドの混合物であり、この場合混合比は、任意である。
【0030】
次の最終的でない設定は、本発明の範囲内で記載されたポリアミドならびに他のポリアミドを含む(括弧内には、モノマーが記載されている):PA46(テトラメチレンジアミン、アジピン酸)、PA66(ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸)、PA69(ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸)、PA610(ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸)、PA612(ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸)、PA613(ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸)、PA614(ヘキサメチレンジアミン、ドデカンジカルボン酸)、PA1212(1,12−ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸)、PA1313(1,13−ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸)、PA MXD6(m−キシリレンジアミン、アジピン酸)、PA TMDT(トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸)、PA4(ピロリドン)、PA6(ε−カプロラクタム)、PA7(エタノールラクタム)、PA8(カプリルラクタム)、PA9(9−アミノペラルゴン酸)、PA11(11−アミノウンデカン酸)、PA12(ラウリンラクタム)。このポリアミドおよびその製造は、公知である。この製造の詳細は、当業者にとってUllmanns Encykopaedie der Technischen Chemie, 第4版, 第19,第39-54頁, Verlag Chemie, Weinheim 1980,ならびにUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第A21巻, 第179-206頁, VCH Verlag, Weinheim 1992,ならびにStoeckhert, Kunststofflexikon,第8版,第425-428, Hanser Verlag Muenchen 1992(キーワード"ポリアミド"およびそれ以降)中に見出される。
【0031】
更に、適当な熱可塑性材料は、ビニル芳香族(共)重合体である。この自体公知でありかつ市場で入手できるポリマーの分子量は、一般に1500〜2000000g/molの範囲内、特に70000〜1000000g/molの範囲内にある。
【0032】
この場合、代替物としては、スチレンとクロロスチレンとα−メチルスチレンとp−メチルスチレンとからなるビニル芳香族(共)重合体が挙げられ;二次的含量(特に20質量%以下、殊に8質量%以下)でコモノマー、例えば(メタ)アクリルニトリルまたは(メタ)アクリル酸エステルは、構造に関与していてもよい。特に好ましいビニル芳香族(共)重合体は、ポリスチレン、スチレン−アクリルニトリル共重合体(SAN)および耐衝撃性に変性されたポリスチレン(HIPS=High Impact Polystyrene高衝撃性ポリスチレン)である。前記ポリマーの混合物を使用してもよいことは、自明のことである。製造は、欧州特許出願公開第0302485号明細書に記載された方法により行なうことができる。
【0033】
更に、ASAポリマー、ABSポリマーおよびAESポリマー(ASA=アクリルニトリル−スチレン−アクリルエステル、ABS=アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン、AES=アクリルニトリル−EPDMゴム−スチレン)は、特に好ましい。
【0034】
この耐衝撃性のビニル芳香族ポリマーは、少なくとも1つのゴム弾性グラフトポリマーおよび熱可塑性ポリマー(マトリックスポリマー)を含有する。マトリックス材料としては、一般にスチレン/アクリルニトリルポリマー(SAN)が使用される。好ましくは、ゴムとしてジエン、例えばブタジエンまたはイソプレンを基礎とするジエンゴム(ABS)、アクリル酸のアルキルエステル、例えばn−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートを基礎とするアルキルアクリレートゴム、エチレン、プロピレンおよびジエンを基礎とするEPDMゴムまたは前記ゴムの混合物、またはゴムモノマーを含有するグラフトポリマーが使用される。
【0035】
適当なABSポリマーの製造は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10026858号明細書またはドイツ連邦共和国特許出願公開第19728629号明細書中に詳細に記載されている。ASAポリマーの製造に関しては、例えば欧州特許出願公開第0099532号明細書の記載に帰因しうる。AESポリマーの製造に関する記載は、例えば米国特許第3055859号明細書または米国特許第4224419号明細書中に開示されている。ポリアリーレンエーテルは、有利にポリアリーレンエーテルそれ自体、ポリアリーレンエーテルスルフィド、ポリアリーレンエーテルスルホンまたはポリアリーレンエーテルケトンであることができる。前記ポリアリーレンエーテルのアリーレン基は、同一でも異なっていてもよく、互いに無関係に6〜18個のC原子を有する芳香族基を意味する。適当なアリーレン基の例は、フェニレン、ビフェニレン、テルフェニレン、1,5−ナフチレン、1,6−ナフチレン、1,5−アントリレン、9,10−アントリレンまたは2,6−アントリレンである。その中で、1,4−フェニレンおよび4,4′−ビフェニレンが好ましい。有利には、前記芳香族基は、置換されていない。しかし、この芳香族基は、1個以上の置換基を有することができる。適当なポリフェニレンエーテルは、Noryl(登録商標)(GE Plastics B.V., Holland)の商品名で商業的に入手することができる。
【0036】
ポリアリーレンエーテルは、自体公知であるかまたは自体公知の方法により製造されてよい。
【0037】
ポリアリーレンエーテルスルホンまたはポリアリーレンエーテルケトンを合成するための好ましい処理条件は、例えば欧州特許出願公開第0113112号明細書および欧州特許出願公開第0135130号明細書中に記載されている。適当なポリフェニレンエーテルスルホンは、例えばUltrason(登録商標)(BASF AG)の商品名で入手することができ、適当なポリフェニレンエーテルケトンは、VESTAKEEP(登録商標)(Degussa GmbH)の商品名で市場で入手することができる。
【0038】
更に、ポリウレタン、ポリイソシアヌレートおよびポリ尿素は、プラスチック成形部材を製造するのに適した材料である。軟質、半硬質または硬質の熱可塑性かまたは架橋されたポリイソシアネート重付加生成物、例えばポリウレタン、ポリイソシアヌレートおよび/またはポリ尿素は、一般に公知である。前記のポリイソシアネート重付加生成物の製造は、しばしば記載されており、通常イソシアネートをイソシアネートと比較して反応性の化合物と、一般に公知の条件下で反応させることによって行なわれる。好ましくは、この反応は、触媒および/または助剤の存在下で実施される。
【0039】
イソシアネートとしては、自体公知の芳香族、アリール脂肪族、脂肪族および/または環状脂肪族の有機イソシアネート、有利にジイソシアネートがこれに該当する。
【0040】
イソシアネートと比較して反応性の化合物として、例えば60〜10000g/molの分子量および1〜8、有利に2〜6のイソシアネートに対する官能価を有する一般に公知の化合物(熱可塑性ポリウレタンの場合には、約2の官能価)、例えば500〜10000g/molの分子量をするポリオール、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールおよび/または500g/mol未満の分子量を有するジオール、トリオールおよび/またはポリオールを使用することができる。
【0041】
ポリラクチド、即ち乳酸のポリマーは、自体公知であり、自体公知の方法により製造されてよい。
【0042】
ポリラクチドと共に、乳酸および他のモノマーを基礎とする共重合体またはブロック共重合体が使用されてもよい。多くの場合には、線状ポリラクチドが使用される。しかし、枝分れ乳酸ポリマーが使用されてもよい。分枝剤としては、例えば多価の酸またはアルコールを使用することができる。
【0043】
適当なハロゲン含有ポリマーとして、例えば塩化ビニルのポリマー、殊にポリ塩化ビニル(PVC)、例えば硬質PVCおよび軟質PVCならびに塩化ビニルの共重合体、例えばPVC−U成形材料を挙げることができる。更に、弗素含有ポリマー、殊にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリ弗化ビニリデン(PVDF)、ポリ弗化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)およびエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)が当てはまる。
【0044】
イミド基含有ポリマーは、殊にポリイミド、ポリエーテルイミドおよびポリアミドイミドである。
【0045】
適当なセルロースエステルは、例えばセルロースアセテート、セルロースアセトブチレートおよびセルロースプロピオネートである。それと共に、シリコーンポリマーも熱可塑性樹脂としてこれに該当する。適当なのは、殊にシリコーンゴムである。これは、通常、架橋反応することができる基を有するポリオルガノシロキサンである。この種のポリマーは、例えばRoempp Chemie Lexikon, CD-ROMバージョン1.0, Thieme Verlag Stuttgart 1995中に記載されている。
【0046】
最後に、熱可塑性エラストマー(TPE)の化合物種が使用されてもよい。TPEは、熱可塑性樹脂と同様に加工することができるが、しかし、ゴム弾性の性質を有する。適当なのは、TPEブロック共重合体、TPEグラフト共重合体および2個以上のモノマー構成単位からなるセグメント化されたTPE共重合体である。
【0047】
特に適当なTPEは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPE−UまたはTPU)、スチレン−オリゴブロック共重合体(TPE−S)、例えばSBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)およびSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、SBSの水素化によって得られる)、熱可塑性ポリオレフィン−エラストマー(TPE−O)、熱可塑性ポリエステル−エラストマー(TPE−E)、熱可塑性ポリアミド−エラストマー(TPE−A)および殊に熱可塑性加硫物(TPE−V)である。TPEの詳細は、当業者にはG. Holden et al., Thermoplastic Elastomers, 第2版, Hanser Verlag, Muenchen 1996中に見出せる。
【0048】
更に、成形部材は、通常の添加剤および加工助剤を含有することができる。
【0049】
適当な添加剤および加工助剤は、例えば滑剤または離型剤、ゴム、酸化防止剤、光の作用に対する安定剤、静電防止剤、難燃剤、または繊維状または粉末状の充填剤または強化剤ならびに別の添加剤またはこれらの混合物である。
【0050】
適当な滑剤および離型剤は、例えばステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸エステルまたはステアリン酸アミド、シリコーン油、金属ステアレート、モンタンワックスおよびポリエチレンとポリプロピレンを基礎とするワックスである。
【0051】
適当な酸化防止剤(熱安定剤)は、例えば立体障害フェノール、ヒドロキノン、アリールアミン、ホスファイト、これらの群の種々に置換された代表例ならびにこれらの混合物である。
【0052】
適当な、光の作用に対する安定剤は、例えば種々に置換されたレゾルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンおよびHALS(Hindered Amine Light Stabilizersヒンダードアミン光安定剤)である。
【0053】
適当な静電防止剤は、例えばアミン誘導体、例えばN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)アルキルアミンまたはN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)アルキレンアミン、ポリエチレングリコールエステルまたはグリセリンモノステアレートおよびグリセリンジステアレートならびにこれらの混合物である。
【0054】
適当な難燃剤は、例えば当業者に公知のハロゲン含有化合物単独であるか三酸化アンチモンと一緒にであり、或いは燐含有化合物、水酸化マグネシウム、赤燐ならびに別の常用の化合物またはこれらの混合物である。それらの中には、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19632675号明細書またはEncyclopedia of Chemical Technology, R. Kirk およびD. Othmer編, 第10巻,第3版, Wiley, New York, 1980,第340〜420頁中に開示された燐化合物、例えばホスフェート、例えばトリアリールホスフェート、例えばトリスクレシルホスフェート、ホスファイト、例えばトリアリールホスファイトまたはホスホナイトが含まれる。ホスホナイトとしては、一般にビス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)−フェニルホスホナイト、トリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)−ホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−第三ブチル−6−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニリレン−ジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジメチルフェニル)−1,4−フェニリレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)−1,6−ヘキシリレンジホスホナイトおよび/またはテトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−4,4′−ビスフェニリレン−ジホスホナイトまたはテトラキス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−4,4′−ビスフェニリレン−ジホスホナイトが使用される。
【0055】
更に、殊にマグネシウムの水酸化物または炭酸塩を基礎とする無機難燃剤、無機ホウ素化合物および有機ホウ素化合物、例えば硼酸、硼酸ナトリウム、酸化ホウ素、ナトリウムテトラフェニルボレートおよびトリベンジルボレート、窒素含有難燃剤、例えばイミノホスホラン、メラミンシアヌレートおよびアンモニウムポリホスフェートならびにメラミンホスフェートが適している(上掲Encyclopedia of Chemical Technology, 同所も参照せよ)。更に、難燃剤として滴下防止剤(Antitropfmitteln)、例えばテフロンまたは高分子量ポリスチレンとの混合物もこれに該当する。
【0056】
繊維状または粉末状の充填剤および強化剤のための例としては、炭素繊維またはガラス織物、ガラスマットまたはガラスロービングの形のガラス繊維、カットガラスおよびガラス玉、特に有利にガラス繊維が挙げられる。使用されるガラス繊維は、Eガラス、AガラスまたはCガラスからなるものであってよく、特に例えばエポキシ樹脂、シラン樹脂、アミノシラン樹脂またはポリウレタンを基礎とするサイズ剤および官能化されたシランを基礎とする付着助剤を備えている。ガラス繊維の加工は、ガラス短繊維の形ならびにエンドレスストランド(ロービング)の形で行なうことができる。
【0057】
粒子状の充填剤として、例えば無定形の珪酸、ホイスカー、酸化アルミニウム繊維、炭酸マグネシウム(白亜)、粉末状石英、雲母、マイカ、ベントナイト、タルク、長石または殊に珪酸カルシウム、例えば珪灰石およびカオリンが適している。
【0058】
繊維状、粉末状または粒子状の充填剤および強化剤は、通常、成形部材に対して1〜60質量%、有利に10〜50質量%の量で使用される。
【0059】
電磁線による溶着の場合には、本発明の次の実施態様が可能である:
成形部材またはフィルムは、使用される波長範囲内の電磁線を、添加剤を必要とすることなく吸収するか、または
電磁線の吸収は、吸収性添加剤の添加によって生じさせる。
【0060】
双方の場合において、2つの部材の一方は、使用された電磁線に対して透過性であり、別の部材は、電磁線を吸収する。それぞれの場合において、電磁線に対して透過性である部材を通じて入射される。
【0061】
使用されるフィルムは、単層であり;この場合、このフィルムは、2つの成形部材の材料と堅固な付着を生じる材料からなる。単層のフィルムでは不十分な材料相容性のために堅固な付着を達成することができない場合には、2層のフィルムを使用することができ、この場合には、フィルム層は、成形部材に対する付着力に対して最適化されている。更に、用途により必要である場合には、フィルムは、他の層を含むことができる。例えば、同時押出によるこの種の多層フィルムの製造は、公知技術水準である。
【0062】
一般に、フィルムは、最大2000μm、最大1600μm、最大1200μm、最大1000μm、最大900μm、最大800μm、最大700μmまたは最大600μmの厚さであり、一方、最小の厚さは、10μm、15μm、20μm、25μmまたは30μmである。
【0063】
1つの好ましい実施態様において、フィルムまたは該フィルムの外向きに方向が向いた層は、部分結晶性ポリアミドを基礎とする成形材料からなる。
【0064】
この部分結晶性ポリアミドは、制限が全くない。この場合には、第1に脂肪族の単独重縮合体および共重縮合体、例えばPA46、PA66、PA88、PA610、PA612、PA810、PA1010、PA1012、PA1212、PA6、PA7、PA8、PA9、PA10、PA11およびPA12が当てはまる。(ポリアミドの符号の記載は、国際規格に対応しており、この場合第1の数字は、出発ジアミンのC原子数を示し、最後の数字は、ジカルボン酸のC原子数を示す。数字が1つだけ挙げられている場合、これは、α,ω−アミノカルボン酸から、もしくはα,ω−アミノカルボン酸から誘導されたラクタムから出発していることを意味し;その他の点はH. Domininghaus, Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften, 第272頁以降, VDI-Verlag, 1976を参照のこと)。
【0065】
コポリアミドを使用する場合、該コポリアミドは、例えばアジピン酸、セバシン酸、コルク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸等を共酸(Cosaeure)として、もしくはビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等を共ジアミン(Codiamin)として含有してよい。ラクタム、例えばカプロラクタムまたはラウリンラクタム、またはアミノカルボン酸、例えばω−アミノウンデカン酸は、共成分として同様に導入されていてよい。
【0066】
これらのポリアミドの製造は、公知である(例えばD. B. Jacobs, J. Zimmermann, Polymerization Processes, 第424 - 467頁, Interscience Publishers, New York, 1977;ドイツ連邦共和国特許出願公告第2152194号明細書)。
【0067】
更に、ポリアミドとして混合された脂肪族/芳香族重縮合体、例えば米国特許第4163101号明細書、米国特許第4603166号明細書、米国特許第4831108号明細書、米国特許第5112685号明細書、米国特許第5436294号明細書および米国特許第5447980号明細書ならびに欧州特許出願公開第0309095号明細書中に記載の混合された脂肪族/芳香族重縮合体も適している。一般に、モノマーが芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸およびイソフタル酸、脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、脂肪族ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンおよび2−メチル−1,5−ペンタジアミンならびにラクタムまたはコアミノカルボン酸、例えばかプロラクタム、ラウリンラクタムおよびω−アミノウンデカン酸から選択されている重縮合体は、重要である。重縮合体中の芳香族モノマー単位の含量は、一般に全モノマー単位の総和に対して少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%または約50%である。この種の重縮合体は、しばしば"ポリフタルアミド"または"PPA"と呼称される。更に、適当なポリアミドは、ポリ(エーテルエステルアミド)またはポリ(エステルアミド)であり;この種の生成物は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第2523991号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2712987号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第3006961号明細書中に記載されている。
【0068】
部分結晶性ポリアミドは、ISO 11357 2.加熱および溶融ピークの積分の項目に記載のDSC法で測定された、少なくとも8J/g、有利に少なくとも10J/g、特に有利に少なくとも12J/g、殊に有利に少なくとも16J/gの溶融エンタルピーを有する。
【0069】
ポリアミド成形材料は、これらのポリアミドの1つを含有していてもよいし、混合物としてポリアミドの複数を含有してもよい。更に、別の熱可塑性樹脂が結合能を妨害しない場合には、40質量%までの別の熱可塑性樹脂、殊に衝撃強さをもたらすゴム、例えばエチレン/プロピレン共重合体またはエチレン/プロピレン/ジエン共重合体、ポリペンテニレン、ポリオクテニレン、アルケニル芳香族化合物と脂肪族オレフィンまたはジエンとのランダムもしくはブロック状に構成された共重合体(欧州特許出願公開第0261748号明細書)、またはガラス温度Tg −10℃未満の(メタ)アクリレート/ブタジエンゴム、ブタジエン/ブタジエンゴムまたはスチレン/ブタジエンゴムからの粘弾性コアを有し、コアを架橋させることができ、かつシェルがスチレンおよび/またはメチルメタクリレートおよび/または他の不飽和モノマーから構成されていてよいコア/シェルゴム(ドイツ連邦共和国特許出願公開第2144528号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3728685号明細書)が含まれていてよい。
【0070】
このポリアミド成形材料には、ポリアミドに通常の助剤および添加剤、例えば難燃剤、安定剤、UV吸収剤、可塑剤、加工助剤、充填剤、殊に導電性を改善するための充填剤、ナノ充填剤、顔料、着色剤、成核剤等を添加することができる。記載された薬剤の量は、望ましい性質が重大になるようには損なわれないように計量供給することができる。多くの場合の使用には、ポリアミド成形材料が使用された層厚で十分に透過性であることが望ましい。
【0071】
好ましい実施態様において、ジアミン、ジカルボン酸またはラクタム(またはアミノカルボン酸)に由来するポリアミドのモノマー単位は、平均で少なくとも8個のC原子、特に有利に少なくとも9個のC原子を有する。
【0072】
本発明の範囲内で特に好適なポリアミドは、次の通りである:
殊に35〜65%のトランス,トランス異性体含量を有する4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンから出発する、1,12−ドデカン二酸と4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンとからなるポリアミド(PAPACM12);
PA612、PA1010、PA1012、PA11、PA12、PA1212ならびにその混合物;
次のモノマーの組合せから構成されているコポリアミド:
a)脂肪族の非分枝鎖状ジアミンと脂肪族の非分枝鎖状ジカルボン酸とからなる本質的に等モル量の混合物65〜99モル%、有利に75〜98モル%、特に有利に80〜97モル%、殊に有利に85〜96モル%、この場合この混合物は、場合によっては塩として存在し、さらにジアミンとジカルボン酸との混合物がモノマー1個当たり平均で8〜12個のC原子、有利に9〜11個のC原子を有するという条件で、ジアミンとジカルボン酸とは、組成の計算の際にそれぞれ個々に計算され;
b)脂環式ジアミンとジカルボン酸との本質的に等モル量の混合物1〜35モル%、有利に2〜25モル%、特に有利に3〜20モル%、殊に有利に4〜15モル%;
次のモノマーの組合せから構成されているコポリアミド:
a)次のモノマーから製造可能なポリアミド50〜100質量部、有利に60〜98質量部、特に有利に70〜95質量部、殊に有利に75〜90質量部:
α)m−キシリレンジアミンおよび/またはp−キシリレンジアミン70〜100モル%、有利に75〜99モル%、特に有利に80〜98モル%、殊に有利に85〜97モル%および
β)6〜14個のC原子を有する別のジアミン0〜30モル%、有利に1〜25モル%、特に有利に2〜20モル%、殊に有利に3〜15モル%、この場合モル%の記載は、ジアミンの総和に対するものであり、ならびに
γ)10〜18個のC原子を有する脂肪族ジカルボン酸70〜100モル%、有利に75〜99モル%、特に有利に80〜98モル%、殊に有利に85〜97モル%および
δ)6〜9個のC原子を有する別のジカルボン酸0〜30モル%、有利に1〜25モル%、特に有利に2〜20モル%、殊に有利に3〜15モル%、この場合モル%の記載は、ジカルボン酸の総和に対するものであり;
b)別のポリアミド、特にモノマー単位中に平均で少なくとも8個のC原子を有するポリアミド0〜50質量部、有利に2〜40質量部、特に有利に5〜30質量部、殊に有利に10〜25質量部、この場合a)とb)との質量部は、100になるまで加算される。更に、好ましい実施態様において、フィルムまたは該フィルムの外向きに方向が向いた層は、フルオロポリマー、例えばポリ弗化ビニリデン(PVDF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)またはエチレン、テトラフルオロエチレンおよび一般に弗素を含有しかつ第1に融点の低下のために導入されているターモノマーを基礎とする三元重合体を基礎とする成形材料からなる。この種の製品は、商業的に入手可能である。
【0073】
1つの好ましい実施態様において、フィルムまたは該フィルムの外向きに方向が向いた層は、ポリエステルまたはポリオレフィンを基礎とする成形材料からなる。適当なポリエステルは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレン−2,6−ナフタレートまたはポリブチレン−2,6−ナフタレートであり、他方、ポリオレフィンとして第1にポリエチレン(殊に、HDPE、LDPEおよびLLDPE)およびポリプロピレン(アイソタクチック構造またはシンジオタクチック構造、単独重合体ならびにエチレンおよび/またはイソブテンとの共重合体、この場合には、ランダム共重合体が好ましい)がこれに該当する。
【0074】
付着助剤として機能する、内向きに方向が向いたフィルム層の場合には、選択された材料の組合せに適しているとして公知である成形材料が選択される。
【0075】
しばしば使用される付着助剤は、例えば不飽和カルボン酸または不飽和酸無水物で変性されているポリオレフィンである。一連のこの種の製品は、ADMER(登録商標)およびBYNEL(登録商標)の商品名で商業的に入手可能である。
【0076】
別の公知の付着助剤は、成形材料のポリマーおよび外向きに方向が向いたフィルム層のポリマーならびに場合によっては相容性助剤を含有する。
【0077】
電磁線を吸収する添加剤は、公知技術水準である。吸収性添加剤は、例えばカーボンブラックであってよい。他の適当な吸収性添加剤は、骨炭、黒鉛、別の炭素粒子、銅ヒドロキシドホスフェート(KHP)、着色剤、顔料または金属粉末である。また、例えば欧州特許出願公開第0797511号明細書中に記載されているような干渉顔料も好適であり;相応する製品は、Iriodinの商品名で販売されている。また、WO 00/20157およびWO 02/38677(例えば、ClearWeld(登録商標))に記載の添加剤または製品シリーズLumogen(登録商標)IR (BASF AG)の添加剤は、同様に好適である。
【0078】
それと共に、次のものも同様に好適である:雲母もしくは雲母顔料、二酸化チタン、カオリン、酸化アンチモン(III)、金属顔料、オキシ塩化ビスマスを基礎とする顔料(例えば、Merck社のシリーズBiflar、高光沢顔料)、酸化インジウム錫(Nanogate Technologie GmbH社のNano ITO-PulverまたはDegussa社のAdNanotm ITO)、AdNanotm酸化亜鉛(Degussa社)、ランタンヘキサボリド、アンチモン錫オキシドならびに商業的に入手可能な、メラミンシアヌレートまたは燐、有利にホスフェート、ホスファイト、ホスホナイトまたは元素の(赤)燐を有する難燃剤。
【0079】
固有色に対する妨害を回避する場合には、吸収剤は、有利に干渉顔料、特に有利にメルク社(Merck)のイリオジンIriodin LS−シリーズまたはクリアウェルドClearweld(登録商標)から成る干渉顔料を有している。
【0080】
カーボンブラックは、ファーネスカーボン法、ガスカーボン法またはフレームカーボン法、特にファーネスカーボン法により製造されることができる。一次粒度は、10〜100nm、有利に20〜60nmであり、粒度分布は、狭くともよいし、広くともよい。DIN53601によるBET表面積は、10〜600m2/g、有利には70〜400m/gである。カーボンブラック粒子は、表面機能性を調節するために酸化的に後処理されていてよい。前記カーボンブラック粒子は、疎水性(例えば、Degussa社のPrintex 55またはFlammruss 101)または親水性(例えば、Degussa社のFarbruss FW20またはPrintex150T)に調節されていてよい。前記カーボンブラック粒子は、高ストラクチャまたは低ストラクチャに形成されていてよく;それによって一次粒子の凝集度が記載される。特殊な導電性カーボンブラックを使用することにより、本発明による粉末から製造された構造部材の導電率は、調節されることができる。パール光沢付与されたカーボンブラックの使用により、湿式混合法の場合にも乾式混合法の場合にも、一層良好な分散可能性を利用することができる。カーボンブラック分散液の使用も有利になり得る。
【0081】
骨炭は、元素の炭素を含有する鉱物質の黒色顔料である。骨炭は、その70〜90%がリン酸カルシウムから成り、30〜10%が炭素から成っている。密度は、典型的には2.3〜2.8g/mlである。
【0082】
吸収剤は、それぞれ100〜3000nmの波長で吸収しないかまたは劣悪に吸収するが、しかし、組合せ物で十分に良好に使用のために本発明による方法で搬入された電磁エネルギーを吸収する、有機顔料および/または無機顔料、難燃剤または別の着色剤の混合物を含有していてもよい。
【0083】
成形材料中での吸収性添加剤の濃度は、通常、0.05〜20質量%、有利に0.1〜5質量%、特に有利に0.2〜1.5質量%である。
【0084】
溶着は、公知技術水準に相応して推奨に値する方法で押圧下で実施される。
【0085】
電磁線は、周波数範囲に関連して制限されていない。例えば、マイクロ波ビーム、IR線または有利にレーザービームが重要である。
【0086】
本発明による方法で使用されるレーザービームは、一般に150〜11000nmの範囲内、有利に700〜2000nmの範囲内、特に有利に800〜1100nmの範囲内の波長を有する。
【0087】
原理的に全ての通常のレーザー、例えばガスレーザーおよび固体レーザーが適している。
【0088】
ガスレーザーは、例えば次の通りである(括弧内には、放出されたビームの典型的な波長が記載されている):CO2レーザー(10600nm)、アルゴンガスレーザー(488nmおよび514.5nm)、ヘリウム−ネオンガスレーザー(543nm、632.8nm、1150nm)、クリプトンガスレーザー(330〜360nm、420〜800nm)、水素ガスレーザー(2600〜3000nm)、窒素ガスレーザー(337nm);固体レーザーは、例えば次の通りである(括弧内には、放出されたビームの典型的な波長が記載されている):Nd:YAGレーザー(Nd3+:Y3Al512)(1064nm)、高出力ダイオードレーザー(800〜1000nm)、ルビンレーザー(694nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、KrClエキシマレーザー(222nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、XeClエキシマレーザー(308nm)、XeFエキシマレーザー(351nm)ならびに532nm(周波数の2倍増)、355nm(周波数の3倍増)または266nm(周波数の4倍増)の周波数を有する、周波数が何倍にも倍増されたNd:YAGレーザー。
【0089】
使用されるレーザーは、通常、1〜200ワット、有利に5〜100ワット、殊に10〜50ワットの出力で動作される。
【0090】
使用されるレーザーのエネルギー密度は、刊行物中に所謂"区間エネルギー(Streckenenergien)"として記載され、本発明の場合には、一般に0.1〜50J/mm2の範囲内にある。実際のエネルギー密度は、導入された出力/形成された溶着面積として定義される。この値は、区間エネルギー/形成された溶着継目の幅の比と同一視される。使用されるレーザーの実際のエネルギー密度は、通常、0.001〜25J/mm2である。選択すべきエネルギー密度は、透過性物体等の反射特性と共に、結合すべきプラスチック成形部材が充填剤または強化剤を含有するかまたは別の強レーザー吸収剤または強レーザー散乱剤を含有するかに依存する。僅かな反射率を有しかつ充填剤または強化剤を含有しないポリマーに関しては、エネルギー密度は、通常、1〜20J/mm2、殊に3〜10J/mm2である。充填剤または強化剤を含有するポリマーに関しては、エネルギー密度は、通常、3〜50J/mm2、殊に5〜20J/mm2である。
【0091】
本発明による方法において使用されてよい、相応するレーザーは、商業的に入手可能である。
【0092】
特に好ましいレーザーは、短波長の赤外領域内で放射する。このような特に好ましいレーザーは、固体レーザー、殊にNd:YAGレーザー(1064nm)および高出力ダイオードレーザー(800〜1000nm)である。
【0093】
成形部材が使用される電磁線を吸収する場合には、フィルムを通じて入射される。この場合、このフィルムは、ビームに対して十分に透過性である。
【0094】
しかし、ビームに対して透過性の成形部材ならびに吸収性の単層のフィルムが使用されてもよく;この場合には、成形部材を通じて入射される。
【0095】
もう1つの実施態様において、多層のフィルムが使用され、このフィルムの内向きに方向が向いた層(即ち、成形部材に向かって)は、吸収性である。この場合には、フィルムを通じて入射されることができる。しかし、成形部材が十分に透過性である場合には、成形部材を通じて入射されてもよい。
【0096】
透過性のフィルムまたは被覆層の場合には、フィルムまたは被覆層が一緒に溶着しないことは、利点である。従って、押圧は、表面上でのマーキングを意図するものではない。この場合、被覆層またはフィルム(単層の実施態様の場合)、場合によっては付着助剤層および成形部材の溶融範囲または軟化範囲を重なり合うように合せることは、好ましい。好ましくは、付着助剤の溶融範囲または軟化範囲は、被覆層の溶融範囲または軟化範囲より深い。単層のフィルムの場合、成形材料の溶融範囲または軟化範囲がよりいっそう深いことは、好ましい。
【0097】
フィルム(単層の実施態様の場合)または被覆層(即ち、多層のフィルムの外向きに方向が向いた層)は、多種多様の要件を満たすことができる。前記のフィルムまたは被覆層は、良好な引掻強さ、UV安定性、温度安定性または化学薬品安定性での保護機能を有することができるかまたは前記のフィルムまたは被覆層が十分に透過性である場合には、裏面上に印刷することができ、このことは、印刷を排除する必要もないし、掻き落とす必要もないという結果を生じる。
【0098】
例えば、本発明による方法でポリオレフィン表面、例えば瓶には、前処理なしに例えばラベルの形のフィルムを備えさせることができる。紋章または保護フィルムの適用は、安全性に該当する建築部材の表面装飾またはラベルの貼付、または符号の貼付、或いは原産地証明書、担保または安全性の注意書きの調達と同様に可能である。また、僅かな生産個数は、前記技術により簡単に確実に製造可能である。
【0099】
溶着の場合、フィルムは、ボールまたはロールで押圧することができる。ビームは、十分に透過性の押圧ロールを通じて導くことができる。他の選択可能な方法で、ビームは、短時間2個のロールの後方に導入されてもよいし、2個のロールの間に導入されてもよい。フィルムは、真空により成形部材に吸い込まれてもよいし、押圧ロールおよび真空の組合せにより接合されてもよい。
【0100】
特に適した実施態様において、レーザービームは、回転可能なガラス玉レンズにより焦点調節され、このガラス玉レンズは、同時に機械的な押圧工具として使用される。この変法によれば、立体の接合継目を有する複雑な建築部材も溶着することができる。この場合、空気で支承された回転可能なガラス玉レンズは、押圧力を継目位置に導入する。押圧点は、絶えず光学系の軸線上に存在し、したがってレーザービームは、押圧力が存在する、前記の軸線上だけに衝突する。これは、複雑な立体の幾何学的形状の場合にも高度な溶着品質を保証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面装飾された成形部材の製造法において、
a)成形部材を準備し、
b)成形部材の表面の少なくとも一部分を装飾用フィルムと電磁線の入射下に溶着することを特徴とする、表面装飾された成形部材の製造法。
【請求項2】
成形部材を積層形式で作業する工具なしの方法によって製造する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
成形部材は、充填剤および/または強化剤1〜60質量%を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
フィルムが単層または多層である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
フィルムまたは該フィルムの外向きに方向が向いた層は、部分結晶性のポリアミド、フルオロポリマー、ポリエステルまたはポリオレフィンを基礎とする成形材料からなる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
電磁線はレーザービームである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2009−45935(P2009−45935A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208913(P2008−208913)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】