説明

表面への細胞の付着

本発明は、表面に陽イオン化合物がグアニジン基を介して固定化されたマイクロキャリアに関する。マイクロキャリアは例えば電荷に基づく相互作用によって細胞を付着させることでき、細胞培養の担体として好適に用いられる。上記化合物は、アルギニン(Arg)又はジペプチドのように1又は2個のアミノ酸を含むものでよい。本発明は、ポリカチオン性マイクロキャリアの製造方法であって、1個以上のグアニジン基を含む化合物をエポキシド活性化基材に固定化する段階を含む方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養時に細胞を付着及び維持することができるマイクロキャリアの分野に関する。具体的には、本発明は、細胞の付着を促進する化合物でコートされた多孔質基材からなるマイクロキャリアに関する。本発明は、かかるマイクロキャリアの製造法並びに細胞培養法も包含する。
【背景技術】
【0002】
生体細胞の増殖を促進させるためのマイクロキャリア担体の使用は、変化に富んだ長い歴史をもつ。使用可能な量の細胞増殖を達成するための初期の系としては、シャーレ及びフラスコが挙げられる。培養表面積の増大によって単位装置容積当たりの細胞生産量を増加させる努力は大型トレイの使用に結実した。こうした初期の細胞増殖系の幾つかは、病院や大学などにおける小規模な労働集約性の高い細胞培養法で足りる用途には依然使用されている。
【0003】
しかし、大規模プロセスに関しては代替法が必要とされる。一般的な細胞培養法はローラーボトル系である。基本的に、ローラーボトルは少量の栄養培地を収容すべく構成された円筒形容器である。動作中、ローラーボトルはその縦軸を中心にゆっくりと回転してボトルの内面全体が絶えず栄養培地で濡れるようにし、そこで細胞増殖が達成される。かかる複数のローラーボトルはローラーラックで作動できる。
【0004】
もう一つの一般的方法はマイクロキャリア系である。最近、メンブラン系のような他の技術も導入されているが、マイクロキャリア系は依然として足場依存性細胞の増殖を経済的に有益な生産速度で達成できる細胞培養法として最も広く使用されていると思われる。このようにして大量培養を達成することは、ローラーボトルその他の公知の系のように繰返しによるものよりも優れている。さらに、マイクロキャリアバイオリアクター系は足場依存性細胞の自動化大量培養に十分適している。
【0005】
マイクロキャリアの開発が始まったのは、懸濁培養での足場依存性細胞の増殖にデキストランビーズを基材として使用できることが実証された1960年代後半である。当初のマイクロキャリアはジエチルアミノエタン(DEAE)のようなありふれた陽イオン型強塩基イオン交換基の使用に基づくものであった。爾来、ガラス、ポリスチレンプラスチック、アクリルアミド、固形コラーゲン、多孔質コラーゲン、セルロース及び液体フルオロカーボンを始めとする多種多様な材料がマイクロキャリアとして成功裏に使用されている。
【0006】
表面に1以上の接着性ペプチドが共有結合又は非共有結合で結合したマイクロキャリアも提案されている。例えば、米国特許第4578079号(La Jolla Research Foundation)には、基材に固定化したときに細胞の付着を促進する組成物の例が開示されている。開示された組成物はフィブロネクチンタンパク質の小断片であり、具体的にはArg−Gly−Asp配列が1個以上の他のアミノ酸に結合したポリペプチド断片である。したがって、開示されたテトラペプチド組成物はフィブロネクチンと実質的に同じ細胞付着活性を有し、その活性は生体分子特異的な親和性相互作用に基づく。この組成物の明らかな短所はそれが生理活性物質であることであり、これは、例えばプロセス流への浸出のためその存在が医薬品や診断薬産業のような用途には不都合な場合があることを意味する。米国特許第4578079号の特許請求の範囲に記載された断片は、明細書によれば、細胞付着活性を示す従前の断片よりも小さなペプチドを選択的に合成すべく設計された実験で同定されたものである。米国特許第4578079号には、活性を示す最小断片がこの方法で決定できたと記載されている。さらに、上述の米国特許第4578079号の継続出願である米国特許第6180610号には、テトラペプチドが決定基ではあるが、ポリペプチドの至適サイズは上記テトラペプチドを含んだヘキサペプチド程度であると結論付けられている。
【0007】
クロマトグラフィーなどにおいて、所望の標的分子と相互作用する基を与えるのに単一のアミノ酸を使用できることも知られている。例えば、弱陰イオン交換体Arginine Sepharose(商標)(Amersham Biosciences社(スウェーデン国ウプサラ))は、アミノ酸Argが主にそのα−アミノ基を介して粒状アガロースマトリックスに結合したものからなる。このように、Arginine Sepharose(商標)はクロマトグラフィーゲルとして市販されており、その平均粒径は概してマイクロキャリアに必要な粒径よりも格段に小さい。
【0008】
マイクロキャリアの細胞付着特性を促進する他のコーティングも提案されている。具体例はCytodex(商標)1(Amersham Biosciences社(スウェーデン国ウプサラ))であり、細胞を静電的に結合することが知られているポリカチオン性コーティングであるジエチルアミノエタン(DEAE)セルロースで架橋デキストラン基材をコートしたものからなる。しかし、細胞の付着及び増殖特性は、平板効率の低い細胞や分化又は感受性細胞型など、あらゆる細胞型に最適なわけではない。そこで、別のタイプの改良マイクロキャリアの必要性が依然として存在する。
【0009】
細胞付着特性をさらに向上させるため、一段と複雑な化合物でコートされたマイクロキャリアが提案されている。具体例はCytodex(商標)3(Amersham Biosciences社(スウェーデン国ウプサラ))であって、Cytodex(商標)1と同様に架橋デキストラン基材からなるが、酸変性ブタコラーゲンの層でコートしたものである。しかし、哺乳類由来のコラーゲンのため用途によってはCytodex(商標)3の使用が制限されかねない。
【0010】
米国特許第6214618号は細胞培養用のマイクロキャリアビーズの分野に関するものであり、具体的には、かかる製品で動物タンパク質を避けるといういう課題に関する。提案された解決策は、表面にトリメチルアミンを有するスチレンコポリマーからなるマイクロキャリアビーズであり、ビーズを細胞培養に適したものとするため酸性溶液中で洗浄したものである。
【0011】
米国特許第6378527号(Chondros社)は、軟骨修復のため患者から軟骨細胞を採取し、迅速に増殖させ、患者に移植する外科的処置法に関する。軟骨細胞を増殖させるため、軟骨細胞を培養し、多糖類誘導体からなる足場に播種して最終的に増殖させるが、該多糖類誘導体はデキストランのような多糖類をポリアミンで架橋して得たものである。具体的には、まず多糖類を酸化してジアルデヒド誘導体とし、次いでこれを無毒性ポリアミドと反応させてイミン架橋を形成し、これをさらに水素化すれば安定なアミン結合が得られる。開示されたマイクロキャリアの利点は、軟骨細胞の増殖及びII型コラーゲンの形成が可能となることである。もう一つの利点は、生体外で利用すると、マイクロキャリアが無毒成分に分解し、その場に軟骨細胞が残って軟骨組織が形成されることである。
【特許文献1】米国特許第4578079号明細書
【特許文献2】米国特許第6180610号明細書
【特許文献3】米国特許第6214618号明細書
【特許文献4】米国特許第6378527号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
細胞培養のための代替及び/又は改良マイクロキャリア並びにかかるマイクロキャリアの新規製造方法に対するニーズが依然として存在することは明らかである。また、細胞とその他の表面との相互作用を向上させるというさらに一般的なニーズも存在する。かかる表面としては、創薬スクリーニングや生理活性化合物の研究、細胞表面受容体の研究、環境汚染物質のモニタリングのような様々な用途に用いられる分析表面が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、細胞の付着及び細胞培養が可能な新規マイクロキャリアを提供することである。これは、本発明では、陽イオン化合物をグアニジン基を介して表面に固定化したマイクロキャリアによって達成でき、例えば電荷に基づく相互作用による。
【0014】
本発明の別の態様は、細胞の付着及び培養のためのマイクロキャリアであって、哺乳類由来の生成物を全く含んでいないものを提供することである。
【0015】
本発明の別の態様は、細胞の付着及び培養のためのマイクロキャリアであって、毒性及び夾雑物の制御が容易なものを提供することである。
【0016】
本発明の追加の態様は、細胞付着及び細胞培養が可能な新規ポリカチオン性マイクロキャリアの製造方法を提供することである。これは、本発明では、1個以上のグアニジン基を含む化合物をエポキシド活性化基材表面に接触させて基材表面に固定化する方法によって達成できる。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、生存能をもたらす環境中で陽イオン化合物でコートされた1個以上のマイクロキャリアの表面で細胞を培養する細胞培養法であって、上記細胞が陽イオン性コーティングで与えられるグアニジン基を介してマイクロキャリアに付着している、方法を提供する。
【0018】
本発明のその他の態様及び利点は以下の詳細な記載から明らかとなろう。
【0019】
定義
「マイクロキャリア」という用語は、本明細書では、細胞培養を支持するために使用される粒状材料に関する従来通りの意味で用いられる。例えば、本願において「マイクロキャリア」という用語は、細胞付着を可能にする化合物を固定化した基材に対して用いられる。
【0020】
「ポリカチオン性」マイクロキャリアという用語は、マイクロキャリア表面の正味電荷が正であることを意味する。
【0021】
「基材」という用語は、キャリアのコア部、つまり、細胞を付着させることのできる材料を意味する。
【0022】
基材の「表面」という用語には、基材の外表面並びに多孔質の場合は細孔表面が包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の第一の態様は、陽イオン化合物がグアニジン基を介して表面に固定化されているマイクロキャリアに関する。本発明では、「化合物」という用語は、1分子ではなく、ある量の化合物がマイクロキャリアの表面に固定化されていることを意味する。このように複数の化合物分子が(好ましくはコーティングとして)各マイクロキャリアに固定化されているので、各マイクロキャリアは正の正味電荷を呈し、そのため「ポリカチオン性」と呼ぶことができる。
【0024】
一実施形態では、本発明のマイクロキャリアは、陽イオン化合物と細胞との電荷に基づく相互作用によって細胞を付着させることができる。これに関して、「付着」という用語は、細胞が生存できるように十分に定着することを意味する。一実施形態では、陽イオン化合物はタンパク質、好ましくはトリプトファン側鎖と相互作用する。別の実施形態では、相互作用は上述の相互作用が複合したものである。
【0025】
グラフトによって基材表面に固定化されてコーティングを与える本発明の陽イオン化合物は基本的に非反応性である。これは、実際に細胞を付着させるように作用するが、他の化学種との反応には実質的に関与しないことを意味する。さらに、本発明の化合物は付着細胞にも環境中の他の生体物質にも悪影響をもたないという点で生体適合性である。したがって、この化合物は無毒である。本発明では、細胞の定着としても知られる細胞の「付着」は細胞が培養に十分な程度に強く結合していることを意味する。
【0026】
周知の通り、細胞は一般に高pH環境では生存できない。そこで、一実施形態では、本発明のマイクロキャリアはpH7付近の表面を呈する。特定の実施形態では、固定化された陽イオン化合物は基材表面に弱塩基性コーティングを形成する。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、固定化化合物は1個以上のアミノ酸を含む。好適な実施形態では、上記化合物に含まれるアミノ酸は、電荷を変化させることができず、しかも自己触媒作用による酸含有基とのアミド結合形成を起こさないことを特徴とする。特定の実施形態では、アミノ酸のアミノ基は反応性であり、カルバメート形成によって電荷を変化させることができる。
【0028】
一実施形態では、固定化化合物はリジン(Lys)以外の任意のアミノ酸を1個含む。上述のマイクロキャリア表面の弱塩基性コーティングを得るため、化合物は1個以上の塩基性アミノ酸を含んでいてもよい。そこで、好適な実施形態では、化合物はアルギニン(Arg)である。本実施形態で得られるマイクロキャリアはArgの酸性カルボキシレート基のため表面pHが低く、上述の市販DEAEコートマイクロキャリアよりも細胞培養に適したpHを有する。特定の実施形態は、アルギニン系化合物、好ましくは緩衝性酸性基が結合したアルギニンを固定化したマイクロキャリアである。かかる化合物は一般式Arg−Xで定義される。式中、Xは緩衝性酸性基である。さらに別の実施形態では、化合物は2種以上の異なるアミノ酸からなり、その結果、2種以上の異なるリガンドが基材表面に固定化される。例えば、化合物はアルギニンとアスパラギン酸の混合物からなるものでよい。
【0029】
別の実施形態では、固定化化合物はジペプチドであるか、或いはジペプチドを含むものである。例えば、一実施形態では、ジペプチドはアルギニン−グルタミン酸(Arg−Glu)又はアルギニン−アスパラギン酸(Arg−Asp)である。ただし、マイクロキャリアへの細胞付着及び増殖に必要とされる本明細書記載の特性が得られる限り、その他のジペプチドも想定される。特定の実施形態では、緩衝基のような1個以上の別の基をジペプチドに結合させることもできる。
【0030】
以上要するに、一実施形態では、固定化化合物はArgのような単一のアミノ酸、ArgとAspのような2種類のアミノ酸の混合物、或いはArg−Glu、Arg−Asp又はArg−Argのようなジペプチドからなる群から選択される。最良の実施形態では、固定化化合物はArgのような単一のアミノ酸、及びArg−Glu、Arg−Asp又はArg−Argのようなジペプチドからなる群から選択される。
【0031】
本発明で使用されるアミノ酸及びジペプチドは、Merck社のような販売元から好適に入手される(アルギニン:Merck社参照番号797;Arg−Glu:Merck社参照番号798)。或いは、固相合成法のような周知の組換え又は化学的技術を用いて当業者が容易に調製できる。手短に説明すると、固相合成法は、保護α−アミノ酸を適当な樹脂に結合することによってペプチドのC末端から開始される(例えば、米国特許第4244946号参照)。
【0032】
このように、本発明のマイクロキャリアの基材に固定化された化合物はアミノ酸1個程度の大きさ、或いはジペプチドを形成するアミノ酸2個程度の大きさである。上掲の米国特許第4578079号(La Jolla Research Foundation)のフィブロネクチンの最小限の断片はテトラペプチドとすべきであり、好ましくはヘキサペプチドであるという結論に照らして、本発明の知見が予測できないことは明らかである。
【0033】
さらに、本発明のマイクロキャリアに対する細胞付着は明らかに電荷相互作用に基づくものであり、化合物は負に荷電した細胞が付着できるように正に荷電している。この点で、フィブロネクチンと実質的に同じ生体分子特異的親和性に基づく細胞付着活性をもつと記載された上掲の米国特許第4578079号記載のArg−Gly−Aspのようなフィブロネクチン断片とは異なる。
【0034】
本発明の別の実施形態では、固定化化合物はプリン又はプリン混合物を含む。特定の実施形態では、プリンはアデニン又はグアニンである。そこで、化合物はヌクレオチド又はヌクレオチド関連化合物を含んでいてもよい。
【0035】
各グアニジン基は細胞の結合に役立つ作用をもつので、基材表面に固定化された化合物はリガンドとみなすことができ、その官能基はグアニジン基である。マイクロキャリアの特定の実施形態では、リガンド濃度は0.1〜3.0μmol/mg乾燥マイクロキャリアの範囲内にある。例示的な実施形態では、リガンド濃度は例えば0.2、0.4、0.7、1.2、2.5又は3.0μmol/mg乾燥マイクロキャリアである。固定化化合物がArgである特定の実施形態では、リガンド濃度は約0.7μmol/mg乾燥マイクロキャリアである。固定化化合物がジペプチドである別の実施形態では、リガンド濃度は略同程度である。本発明のマイクロキャリアの例示的な重量密度は1.02〜1.05g/cmの範囲内にあるが、用途によってはこれよりも軽い又は重い材料が適していることもある。
【0036】
好適な実施形態では、本発明のマイクロキャリアの基材は架橋炭水化物であるか、或いはかかる炭水化物から本質的になる。特定の実施形態では、マイクロキャリアは、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラゲナン、ジェラン及びアルギネートからなる群から選択される材料で作られる。そこで、好適な実施形態では、本発明のマイクロキャリアはゲルである。最も好適な実施形態では、マイクロキャリアは、最大限に栄養分を利用できるようにしながら、ビーズ内への細胞増殖を促す多孔質構造を呈する。
【0037】
本発明のマイクロキャリア材料は逆相懸濁ゲル化のような常法で容易に製造できる(S Hjerten: Biochim Biophys Acta 79(2),393−398(1964))。別法では、ベースマトリックスはSepharose(商標)FF(Amersham Biosciences社(スウェーデン国ウプサラ))のような市販品である。概して本発明のマイクロキャリアは40〜300μmの平均粒径を呈し、例えば約230μmのように100〜250μmなどである(0.9%NaCl中)。最も好ましい実施形態では、本発明のマイクロキャリアは約170μm以上である(0.9%NaCl中)。
【0038】
別の実施形態では、本発明のマイクロキャリアは、例えばスチレン又はスチレン誘導体、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルエステル、ビニルアミドなどの架橋合成ポリマーからなり、化合物の最適な固定化(つまりリガンドの結合)及び細胞培養が実施できるように、それ自体を変性させてもよい。
【0039】
本発明のマイクロキャリアの最も好適な実施形態では、化合物は第二級アミンを介して基材表面に固定化される。本発明のマイクロキャリアの製造に用いられる方法の詳細については、以下の本発明の第二の態様において説明する。
【0040】
本発明には、細胞培養のための上記マイクロキャリアの使用も包含される。そこで、本発明の一態様は前述の請求項のいずれか1項に記載されたマイクロキャリア1個以上からなる細胞培養担体である。
【0041】
本発明の第二の態様は、1個以上のグアニジン基を含む化合物をエポキシド活性化基材表面に接触させて上記化合物を固定化することによるマイクロキャリアの製造方法に関する。エポキシド活性化は、pH9のような塩基性触媒によるものでも、酸性触媒によるものでもよい。この分野では、基材のエポキシド活性化は周知であり、常用されている固定化技術である。例えば、Hermanson他によるImmobilized Affinity Ligand Techniques, Greg T. Hermanson, A. Krishna Mallia及びPaul K. Smith, Academic Press, INC, 1992参照。固定化は最も好適にはpH制御した溶液中で実施される。本発明の方法を用いて製造されたマイクロキャリアの詳細については、本発明の第一の態様に関する上述の記載に見いだすことができよう。
【0042】
基材は、架橋多糖類からなる基本的に球状の多孔質ビーズなど、上述のマイクロキャリア材料のいずれでもよい。上述のエポキシド活性化の前段階では、炭水化物基材を例えば以下の実施例に記載のようにしてアリル化する。対照的に、基材が合成ポリマーからなるときは、概してアリル基は既に存在しているので、アリル化段階は必要とされない。
【0043】
固定化された化合物についても本発明の第一の態様において説明した。一実施形態では、固定化化合物はArgのような単一のアミノ酸、ArgとAspのような2種類のアミノ酸の混合物、或いはArg−Glu、Arg−Asp又はArg−Argのようなジペプチドからなる群から選択される。最良の実施形態では、固定化化合物はArgのような単一のアミノ酸、及びArg−Glu、Arg−Asp又はArg−Argのようなジペプチドからなる群から選択される。
【0044】
化合物がジペプチドである場合、カップリングは2種類のアミノ酸を含む溶液からのグラフト反応、つまり最初のアミノ酸と2番目のアミノ酸の段階的カップリングでよい。この種の担体表面に化合物を固定化する方法は当業者に周知である。
【0045】
本発明の第三の態様は、表面に細胞を付着させる方法であって、1個以上のグアニジン基を含む陽イオン化合物を使用して上記表面に細胞を付着させる方法に関する。一実施形態では、付着は電荷に基づく相互作用をよる。最も好ましい実施形態では、化合物はアルギニン(Arg)である。表面は、例えばマイクロキャリア、メンブラン、布、マイクロチップのようなチップ、マイクロキャピラリのようなキャピラリー又は容器の表面でよい。特定の実施形態では、本発明の表面は、細胞付着後に様々な用途に使用できる布の表面である。本発明の方法は、例えば分析目的、生産プロセス、及び/又は火傷の治療用組織で例示されるような医療用途に有用である。
【0046】
さらに、本発明は、上述の本発明の第三の態様に関して説明した方法を含むハイスループットスクリーニング(HTS)のための細胞局在化法に関する。
【0047】
本発明の第四の態様は、生存能をもたらす環境中で陽イオン化合物でコートされた1個以上のマイクロキャリアの表面で細胞を培養する細胞培養方法であって、上記細胞が陽イオン性コーティングで与えられるグアニジン基を介してマイクロキャリアに付着している方法に関する。一実施形態では、細胞の付着は電荷に基づく相互作用によるものである。最も好適な実施形態では、マイクロキャリアは上述の通りである。これに関して、生存能もたらすという用語が各細胞型について適当な温度、栄養分の供給その他のパラメータを維持することを意味していることは当業者には自明であろう。したがって、細胞が付着したマイクロキャリアは、好ましくは温度制御し、撹拌しながら、適当な容器中で溶解又は懸濁状態に維持される。本発明で培養される細胞は真核細胞でも原核細胞でもよいが、好ましくは、例えば組換え細胞系のような哺乳類細胞、植物細胞などの真核細胞である。一実施形態では、細胞は、初代培養細胞や類上皮形態の細胞のような真の足場依存性細胞である。特に好適な実施形態では、細胞は平板効率の低い細胞、或いは肝細胞や内分泌細胞のような分化又は感受性細胞型である。以下の実施例では、本発明のこの態様をVero細胞として知られる線維芽細胞系を用いて例示するが、これはアフリカミドリザル腎臓由来の完全に足場依存性の線維芽細胞である。
【0048】
一実施形態では、本発明の方法はマイクロキャリアから生存細胞を回収する追加段階を含む。一実施形態では、後段で、培養細胞を分析及び/又は医療目的に用いる。別の実施形態では、後段で、培養細胞をウイルス、細菌、カビ、真菌、藻類の培養の支持に使用する。この実施形態はワクチンの製造その他の用途に関連したプロセスで有益である。
【0049】
最後に、本発明は魚由来のゼラチンを表面に固定化したマイクロキャリアに関する。ゼラチンは物質の複雑な混合物であるが、そのタンパク質は大量の陽イオン性ペプチド及び若干のタンパク質を有していると考えられる。魚ゼラチンを固定化する基材は、上述の本発明の第一の態様に関して挙げたもののいずれでもよい。かかるマイクロキャリアには哺乳類タンパク質が存在しないので、本発明のこの態様は市販のCytodex(商標)3(Amersham Biosciences社(スウェーデン国ウプサラ))マイクロキャリアから見ると有利である。さらに、ゼラチンは細胞の増殖を促進する増殖因子を与える可能性があるし、マイクロキャリアが互いに又は培養容器表面と衝突したときに付着細胞を機械的に保護する可能性がある。
【0050】
図面の詳細な説明
図1は実施例1に記載の本発明のマイクロキャリアでのVero細胞の培養における細胞数の経時的変化を示す。図1では、細胞数(細胞数/ml懸濁液)をY軸に示し、時間をX軸に示す。約168時間で、本発明を用いた培養例を示す一番上の線(菱形)は約1.40×10に達するのに対して、その時点で、市販の架橋デキストラン粒子(Amersham Biosciences社(スウェーデン国ウプサラ))である比較用Cytodex(商標)1は約8.00×10に達し、もう一つの比較例であるCytodex(商標)3(三角形)、つまりゼラチンコーティングを有する市販の架橋デキストラン粒子(Amersham Biosciences社(スウェーデン国ウプサラ))は1.00×10に僅かに及ばない。このように、図1は本発明のマイクロキャリアが市販のマイクロキャリアよりも基本的に高い細胞数をもたらし、生産性を高めることを明瞭に示している。
【0051】
図2は実施例2に記載の本発明のマイクロキャリアでのVero細胞の培養における細胞数の経時的変化を示す。図2に示すグラフは、菱形の点が実施例2記載のマイクロキャリアで得られた結果を示すこと以外は、図1と同様である。この図も、本発明のマイクロキャリアが市販の製品に比べて生産性が大幅に向上することを示している。
【実施例】
【0052】
本発明の実施例は例示を目的としたものにすぎず、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではない。本明細書で引用した文献はすべて援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0053】
実施例1
Sephadex(商標)G−50 Fineのアリル化
乾燥Sephadex(商標)G−50 Fine(Amersham Biosciences社(スウェーデン国ウプサラ))32gをガラス容器中で388mlの水と混合し、1時間放置して膨潤させた。Sephadex(商標)G−50 Fineの膨潤度は約12ml/g乾燥重量である。
【0054】
膨潤ゲルを機械式撹拌子を備えた三口丸底フラスコに移した。攪拌しながら44gのNaSOを丸底フラスコに添加した。スラリーを30℃に加熱し、30℃に1.5時間維持した。80mlのNaOH(50%(w/w))と0.6gのNaBHを添加した。スラリーを50℃に加熱した。80mlのアリルグリシジルエーテル(AGE)を添加した。反応を50℃で一晩続けた。
【0055】
酢酸(60%(w/w))を添加してpH6.5〜7.5に中和することによって反応を停止した。ガラス濾過器でゲルを4ゲル体積の水、3ゲル体積のエタノール、最後に6ゲル体積の水で洗浄した。
【0056】
Radiometer社のABU93 Triburetteで常法に従って0.1M AgNOを用いてアリル含量を求めた。アリル含量は101μmol/mlゲルであった。
【0057】
アリル化Sephadex(商標)G50 Fineのアルギニンカップリング
アリル化ゲル250mlを撹拌子を備えた三口丸底フラスコに移した。63mlの水と10.3gのNaAc・3HOを添加した。持続的な黄色が得られるまで臭素水を滴下した。反応を5分間続けた。黄色味が消失するまでギ酸ナトリウムを添加することによって反応を停止した。スラリーを30分間撹拌した。次いでゲルをガラス濾過器で乾式吸引した。
【0058】
251mlの水と36.9gのL−アルギニンの溶液を入れた丸底フラスコに、ゲルを添加した。スラリーを45℃に加熱し、pHをNaOH(50%(w/w))でpH11.4に調節した。30分後及び60分後にpHを測定してpH11.4に調節した。反応を45℃で一晩続けた。
【0059】
ガラス濾過器でゲルを1ゲル体積の0.1M Tris(pH8)と1ゲル体積の0.1M NaOAc(pH4)で交互に計8サイクル洗浄した。最後に、ゲルを8ゲル体積の水で洗浄した。
【0060】
Radiometer社のABU93 Triburetteで常法に従って0.1M HClを用いて塩素イオン容量を求めた。塩素イオン容量は0.58μmol/mg乾燥ゲルであった。
【0061】
実施例2
アリル化Sephadex(商標)G50 Fineのアルギニンカップリング
実施例1で得たアリル化Sephadex(商標)G50 Fineを50ml、12.5mlの水と2.06gのNaAc・3HO、50mlの水と7.33gのL−アルギニンを使用した点以外は、実施例1と同様である。
【0062】
Radiometer社のABU93 Triburetteで常法に従って0.1M HClを用いて塩素イオン容量を求めた。塩素イオン容量は0.58μmol/mg乾燥ゲルであった。
【0063】
実施例3
3.1:各種培養系でのVero細胞の培養
様々なタイプのマイクロキャリア(Cytodex(商標)担体)を以下に述べる通り同じように作製した。これらの条件下、集密層は約1×10細胞/cmを意味し、播種用に長期間培養したときの臨界細胞数は1〜2×10細胞/cmである。これらはT型フラスコについてのものである。
【0064】
操作はすべてパイロジェンフリーの材料を用いて、無菌条件下のフード下で行った。培地は常に37℃、pH約7.2に保った。
【0065】
3.1.1:T型フラスコ中でのVero細胞の培養
T型フラスコ(Nunclon(商標)ΔSurface;Nunc社製)中のVero細胞単層の場合、トリプシン又はキレート剤であるエチレンジアミン四酢酸を用いて細胞を剥離させた。
【0066】
まず上清を廃液瓶に捨て、細胞をPBS(Ca2+/Mg2+なし)で1回洗浄した。次に、以下の表1に記載の通りトリプシン/EDTAをT型フラスコに添加して細胞層全体に分布させた。
【0067】
【表1】

室温で数分間インキュベートした後、T型フラスコを叩いて細胞を剥離させ、その直後に、トリプシン阻害剤を表1に記載の通り添加した。次に、馴化培地を添加した(表1参照)。次いで細胞を分割比で分けた。Vero細胞を1:3の比(培養表面に基づく所要体積で計算)で毎週2回継代した。
【0068】
細胞を9%(v/v)CO及び37℃の加湿雰囲気のインキュベータ内で培養した。
【0069】
3.1.2:ローラーボトル中でのVero細胞の培養
850cmローラーボトル(Corning社製)の播種には175cmT型フラスコ中の集密培養を使用した。細胞は上記3.1.1に記載の通り剥離させた。細胞を200mlの馴化培地に再懸濁し、ローラーボトルに移した。ローラーを120ml滅菌COと共に通気し、0.2rpmのローラー装置で37℃で培養した。
【0070】
ローラー培養からの細胞を剥離するときの手順は同様である。上清を廃液瓶に捨て、細胞層をPBS(Ca2+/Mg2+なし)で1回洗浄した。このPBSも廃液瓶に捨て、表2記載の体積のトリプシン/EDTAを添加した。
【0071】
【表2】

室温で数分間インキュベートした後、ローラーを叩いて細胞を剥がし、阻害剤を表2に記載の通り添加した。細胞を馴化培地に再懸濁した(表2参照)。次いで細胞浮遊液を幾つかのローラーに分注し、培地で200mlまで希釈し、各ローラーに120mlの滅菌COを添加した。細胞は37℃、回転速度0.2rpmで培養した。
【0072】
3.1.3:EDTAによるVero細胞の剥離
マイクロキャリア培養の播種には細胞をEDTA法で表面から剥離すべきである。
【0073】
0.02%(w/w)EDTA溶液は0.16%(w/w)原液から滅菌PBS(Ca2+/Mg2+なし)に希釈し、水浴中で37℃に加温した。集密細胞層の上清を捨て、細胞をPBS(Ca2+/Mg2+なし)で1回洗浄した。細胞を表3に示すように3.1.1及び3.1.2に記載の通り剥離させた。
【0074】
【表3】

EDTAは培地の二価イオンと錯形成するので、阻害剤を添加する必要はない。表1又は表3に記載の通り同量の培地を添加した。
【0075】
次いで細胞浮遊液を幾つかの容器に分注し、3.1.1及び3.1.2に記載の通り培養した。
【0076】
3.2:スピナーフラスコ中のマイクロキャリアでのVero細胞の培養
操作はすべて無菌でパイロジェンフリーの条件下のフード内で行った。
【0077】
3.2.1:撹拌培養用マイクロキャリアの平衡化及び投与量
少なくとも式1の体積のマイクロキャリアを50ml試験管に入れた。キャリアを沈降させた後、PBSを除去して、同量の培地で置き換えた。キャリアを再懸濁して沈降させた後、培地も除去した。この手順を4回繰り返した。最終的に、PBSについての希釈係数は10よりも高くすべきである。
【0078】
【数1】

最後の洗浄段階及びキャリア沈降の後、培地をピペットで吸い取って最終体積の50%が沈降マイクロキャリアとなるようにした。この懸濁液から、式2に示す体積をスピナーに移した。
【0079】
【数2】

培地とキャリアの入ったスピナーをインキュベータ(37℃、9%(v/v)CO)内で一晩平衡化した。
【0080】
3.2.2:撹拌培養の播種
細胞は3.1.1及び3.1.2に記載の175cmT型フラスコ又は850cmローラーボトルのいずれかで培養した。細胞はEDTA法(3.1.3参照)でローラーから剥離させた。様々な培養フラスコから細胞をプールし、播種作業中37℃に保った。実験でのフラスコの数は式3で計算した。
【0081】
【数3】

全細胞濃度及び生存率はトリパンブルー染色法で推計した。
【0082】
スピナー当たりの播種体積は式4で計算した。
【0083】
【数4】

すべての実験で40mlの最終培養体積を選択したが、これはスピナー当たり気体雰囲気約200mlのヘッドスペースを意味する(125mlフラスコ;Techne社製)。
【0084】
播種のため、スピナーを慎重に円形に動かし、クラッパに磁気撹拌子を固定した。種細胞をキャリア懸濁液に20秒以内で滴下した。この作業後、培養液を0rpmで25分間及び35rpmで5分間という間欠的撹拌プロフィルによって、37℃で6時間スピナープラットホーム(Cellspin;Integra Biosciences社製)上で混合した。その後、培養液を新鮮な培地で40mlまで希釈して35rpmでの連続撹拌を開始した。この時点で、第1の試料を採取した(3.2.3参照)。サンプリングは24時間ごとに行った。
【0085】
48時間後、20mlの培地を交換し、各スピナーに混合気体(75%N、20%O、5%CO;スピナー当たりの気体交換量750ml;Linde社製)を通気した。この瞬間から、24時間ごとに培地交換と通気を行った。
【0086】
3.2.3:スピナー培養液のサンプリング
3.2.3.1:細胞濃度の推計)
ルーチンサンプリングのため、放出された核の計数による細胞濃度を用いた。この方法ではマイクロキャアで増殖した細胞を低張液中でインキュベートし、溶解によって放出された核をこの溶液(マイクロキャリア細胞培養液;Pharmacia Biotech社製;2000)中のクリスタルバイオレットで染色した。
【0087】
スピナー培養液から1.5mlの均質試料を採取した。この試料の1mlを1.5mlのエッペンドルフチューブに移し、キャリアを重力で沈降させた。全試料体積(1.5ml)の0.5mlは写真用であった(3.2.3.2参照)。その後、上清をピペットで吸引した。推定細胞濃度に応じて、クリスタルバイオレット溶液0.5ml又は1.0ml(3.3.1参照)をチューブに入れ、試料をボルテックスして混合した。この試料を時々ボルテックスしながら、37℃で1時間インキュベートした。
【0088】
インキュベーション終了後、放出された核を血球計算盤でカウントし、細胞濃度を計算した(式5)。
【0089】
これらの試料は4℃で1週間安定であった。
【0090】
【数5】

3.2.3.2:マイクロキャリア培養液の写真撮影
3.2.3.1に記載の通りサンプリングを行い、試料の0.5mlを1.5mlエッペンドルフチューブに移した。キャリアを重力で沈降させた後、上清を吸引し、ヘマトキシリン溶液0.25ml(3.3.2参照)をキャリアに加えて慎重に混合した。チューブを室温で数時間(2時間以上、好ましくは一晩)インキュベートした。顕微鏡観察のため、各30μlの試料を96ウェルプレート(カタログ番号:269620;Nunc社製)のウェルに移し、顕微鏡のデジタルカメラで写真撮影した。
【0091】
3.3:溶液
3.3.1:放出された核の計数用クリスタルバイオレット溶液
【0092】
【表4】

溶液は濾紙で濾過し、4℃で保存した。
【0093】
3.3.2:ヘマトキシリンによるマイクロキャリアの染色
【0094】
【表5】

室温で900mlの逆浸透水に溶解し、室温で一晩撹拌した。撹拌後、以下の物質を溶液に加えた。
【0095】
【表6】

溶液を逆浸透水で1000mlに調整し、濾紙で濾過した。溶液は6℃で保存したが、2年以内に使用すべきである。
【0096】
3.3.3:細胞剥離用トリプシン溶液
【0097】
【表7】

PBS(Ca2+/Mg2+なし)に溶解し、0.2μmフィルターで濾過して滅菌した。溶液は4℃又は−20℃のいずれかで保存した。
【0098】
3.3.4:細胞剥離用トリプシン阻害剤
【0099】
【表8】

PBS(Ca2+/Mg2+なし)に溶解し、0.2μmフィルターで濾過して滅菌した。溶液は4℃又は−20℃のいずれかで保存した。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施例1に記載の本発明に係るマイクロキャリアでのVero細胞の培養における細胞数の経時的変化を示す図。
【図2】実施例2に記載の本発明に係るマイクロキャリアでのVero細胞の培養における細胞数の経時的変化を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン化合物がグアニジン基を介して表面に固定化されているマイクロキャリア。
【請求項2】
陽イオン化合物と細胞との電荷に基づく相互作用によって細胞を付着させることができる、請求項1記載のマイクロキャリア。
【請求項3】
前記陽イオン化合物がマイクロキャリア表面にポリカチオン性コーティングを与える、請求項1又は請求項2記載のマイクロキャリア。
【請求項4】
前記陽イオン化合物がマイクロキャリア表面に弱塩基性コーティングを与える、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のマイクロキャリア。
【請求項5】
前記陽イオン化合物が1又は2個のアミノ酸を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のマイクロキャリア。
【請求項6】
前記陽イオン化合物がアルギニン(Arg)からなる、請求項5記載のマイクロキャリア。
【請求項7】
前記陽イオン化合物がジペプチドからなる、請求項5記載のマイクロキャリア。
【請求項8】
前記ジペプチドがアルギニン−グルタミン酸(Arg−Glu)又はアルギニン−アスパラギン酸(Arg−Asp)である、請求項7記載のマイクロキャリア。
【請求項9】
前記陽イオン化合物が第二級アミンを介してマイクロキャリア表面に固定化されている、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載のマイクロキャリア。
【請求項10】
当該マイクロキャリアが架橋炭水化物からなる、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載のマイクロキャリア。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載のマイクロキャリア1個以上からなる、細胞培養担体。
【請求項12】
1個以上のグアニジン基を含む化合物をエポキシド活性化基材表面に接触させて上記化合物をグアニジン基を介して基材表面に固定化する段階を含む、マイクロキャリアの製造方法。
【請求項13】
前記化合物が1又は2個のアミノ酸を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記化合物がアルギニン(Arg)からなる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記化合物がジペプチドからなる、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が1個以上のヌクレオチドを含む、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記基材が架橋炭水化物である、請求項12乃至請求項16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
当該方法で製造されるマイクロキャリアが請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載されたものである、請求項12乃至請求項17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
表面に細胞を付着させる方法であって、1個以上のグアニジン基を含む陽イオン化合物を使用して上記表面に細胞を付着させる方法。
【請求項20】
前記付着が電荷に基づく相互作用によるものである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記陽イオン化合物がアルギニン(Arg)からなる、請求項19又は請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記表面が、マイクロキャリア、メンブラン、布、スライド、チップ、キャピラリー又は容器の表面である、請求項19乃至請求項21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記細胞の付着が分析又は生産の目的で行われる、請求項19乃至請求項22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載の方法を利用する、ハイスループットスクリーニング(HTS)のための細胞局在化法。
【請求項25】
生存能をもたらす環境中で陽イオン化合物でコートされた1個以上のマイクロキャリアの表面で細胞を培養する細胞培養方法であって、上記細胞が陽イオン性コーティングで与えられるグアニジン基を介してマイクロキャリアに付着している、方法。
【請求項26】
前記細胞の付着が電荷に基づく相互作用によるものである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記陽イオン化合物がアルギニン(Arg)からなる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記マイクロキャリアから生存細胞を回収する段階をさらに含む、請求項26又は請求項27記載の方法。
【請求項29】
分析及び/又は医療の目的で細胞を使用する段階をさらに含む、請求項26又は請求項27記載の方法。
【請求項30】
ウイルス、細菌、カビ、真菌又は藻類の培養の支持に使用する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−537983(P2007−537983A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532232(P2006−532232)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001414
【国際公開番号】WO2005/033146
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】