説明

表面を封止する方法

この発明は、表面が少なくとも部分的に封止された物体およびその封止方法に関し、封止層は反応性溶融層とコーティング層とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面が少なくとも部分的に封止された物体およびその封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に幅広いさまざまな出願の分野において、現在のところ、家具および木材加工産業などにおいて、鋼、非鉄金属、プラスチック、紙、厚紙、混凝紙または鉱物物質から作られる物体の場合にも、物体の表面上の封止層として大量にコーティング材料が使用されている。
【0003】
この文脈における1つの普及したコーティングシステムはUV硬化コーティング材料を含み、このUV硬化コーティング材料は大抵ローラによってパーツに塗布され、噴霧によってパーツに塗布されることはさらに稀である。その後の硬化作業は紫外線またはUVランプを用いて行なわれる。UVコーティング材料でのコーティングに関連付けられる機械的な複雑度は非常に高く、非常に大量の空間を必要とする。大量の空間が必要である別の理由は、UV硬化システムのコーティング作業には通常、複数回の塗布が必要であるというものである。実際には3回から4回の塗布が一般的である。粘度のためであるが、特に塊を貫くUV硬化のために、コーティング材料を塗布するたびに作業当たり約10〜20μmの厚さの層しか塗布できないため、一般的に言って、コーティング材料を2回以上塗布しなければならない。
【0004】
2成分のPUコーティング材料、ニトロラッカーまたは水ベースのコーティング材料などの他のコーティングシステムも同様に2つ以上の層の状態で塗布されなければならない。さらに、サーフェーサ、プライマー、および適切な場合に間に研磨作業が通常ここで必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コーティング材料に関連付けられる利点は、コーティング材料が比較的素早く乾燥することが可能であり、その後高い耐湿性および洗浄剤に対する耐性を有することである。
【0006】
コーティング材料の層を複数層塗布することが必要であるために、封止層をできる限り1回の作業で物体に塗布できる封止方法が探し求められてきた。
【0007】
DE 198 06 136 C2から、少なくとも1つの木の層およびその表面上に封止層を有する寄せ木張りの床用の床板の場合に、大気湿度で硬化する、水および溶剤が含まれていないポリウレタンベースの反応性溶融層として封止層を構成することが公知である。その場合には、反応性溶融層は、ナイフコーティング、圧延または噴霧によって木の層に塗布される。
【0008】
WO−A 02/094549およびWO−A 02/094457も、化粧板または家具の要素を封止するためのポリウレタンベースの反応性溶融層を提案する。これらの場合には、均一な表面を得るために溶融層はたとえばロールを使用して均される。均し作業中に溶融物がロールに貼り付かないように、ロール表面はパラフィンろうに基づく剥離剤を備える。
【0009】
溶融層の利点は、所望の層の厚さが1回の作業で塗布され得ることである。さらに、硬
化した溶融物は依然として十分な可撓性をもたらし、もろい亀裂の形成を回避する。
【0010】
しかしながら、反応性溶融物の使用に関連付けられる不利な点は、架橋の前の滞留時間が長いことであり、したがって完全な硬化が終わってしまうことである。この時間は概して数日であり、その間、封止された物体のさらなる処理または包装のための選択肢が制限される。
【0011】
したがって、この発明の目的は、上述の不利な点を少なくとも部分的に回避する改良された封止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、物体の表面の少なくとも一部を封止する方法を利用して達成され、上記方法は、
(a) ポリウレタンに基づく反応性溶融層を物体の表面の少なくとも一部に塗布するステップと、
(b) 所望であれば、反応性溶融層を均すステップと、
(c) コーティング層を反応性溶融層に塗布するステップとを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
驚くべきことに、組合せられた反応性溶融/コーティング材料封止層が使用される場合、封止のためにコーティング材料または反応性溶融物の層を使用することによってもたらされるプラスの特性を保持できることが実際にわかってきた。周囲空気の湿気が架橋したがって硬化に典型的に必要であるのだが、その周囲空気からコーティング層によって覆い隠されるにも関わらず反応性溶融物が硬化可能であるという事実は、この文脈において特に驚くべきことである。
【0014】
表面の少なくとも一部の上に封止層を有する物体が同様にこの発明によって提供され、この物体は、物体の表面の少なくとも一部の上にポリウレタンに基づく反応性溶融層を備え、反応性溶融層の上にコーティング層を備える。
【0015】
ポリウレタンベースの反応性溶融物は好ましくは、通常周囲空気に存在する湿気を利用して反応し、そうする際に硬化する商業的に通例のポリウレタンベースの反応性溶融物である。この反応性溶融物は好ましくは、水および溶剤が含まれていない。
【0016】
好ましくは水および溶剤が含まれていない反応性溶融層は典型的には、少なくとも100℃、約100℃〜150℃、好ましくは120℃〜150℃の温度で、封止されるべき場所に塗布される。ここで、コーティングされるべき表面の1平方メートル当たりに約20〜150gの反応性溶融物を塗布することが通常可能である。典型的には反応性溶融物の密度は約1.1g/m2であり、120℃でのブルックフィールド(BROOKFIELD)粘度は約2000mPas〜30000mPasの範囲であり、好ましくは4000mPas〜10000mPasの範囲である。時期尚早の反応を防ぐために、空気のない状態でおよび大気湿度から遮蔽した状態で反応性溶融層を塗布することが有利である。層はたとえばナイフコーティング、圧延または噴霧によって、またはノズルもしくはスロット型を利用して塗布されてもよい。硬化した状態でさえ、反応性溶融層は依然としてある特定の残留弾性を有する。
【0017】
反応性溶融層の厚さは好ましくは20μm〜150μmの範囲であり、より好ましくは80μm〜100μmの範囲である。
【0018】
反応性溶融物の物理的な特性のために、このような厚さは単一の塗布によって生み出さ
れることができる。
【0019】
したがって、層は一層の状態で生成される。これはとりわけ有利な時間の節約にさえなるので、この発明の文脈では一層の塗布が好ましい。驚くべきことに、コーティング層が反応性溶融層に塗布される前に反応性溶融層が完全に硬化する必要はないので、溶融物が完全に硬化する前にコーティング層が塗布される場合には一層の塗布が好ましい。これは大幅な時間の節約になる可能性がある。
【0020】
使用されるコーティング材料は、封止後にできる限り早く物体をさらに処理または包装できるように有利に急速に硬化する任意の所望のコーティング材料であってもよい。
【0021】
一例として、2成分のPUコーティング材料、ニトロラッカーまたは水ベースのコーティング材料について言及し得る。
【0022】
しかしながら、好ましくは、UV硬化コーティング材料が利用される。この普及したコーティングシステムは、ローラ塗布によってまたは噴霧によって物体に塗布されることができる。その後の硬化作業は紫外線またはUVランプを用いて行なわれる。コーティング材料を塗布するたびに、粘度および塊を貫くUV硬化の要因は、約10〜20μmの厚さの層しか塗布できないことを意味し、これは典型的にはコーティング材料の複数回の塗布が必要である理由である。
【0023】
複数層の状態でコーティング層を塗布することがこの発明の文脈において実際に可能である。しかしながら、好ましくは、コーティング層は一層として塗布される。これは通常十分である。なぜなら、反応性溶融物は既に封止層の一部として塗布されているためである。
【0024】
したがって、コーティング層の厚さは好ましくは5μm〜25μmの範囲にすぎず、より好ましくは5μm〜10μmの範囲である。
【0025】
反応性溶融層の表面特性の改良は、反応性溶融層を物体の表面に(部分的に)塗布することに続いて反応性溶融層を均すことによって達成され得る。この均しは必ずしも必須であるとは限らないが、この発明の文脈では好ましい。この均しは、高温の反応性溶融物を単に塗布した結果起こり得るであろう表面のむらを回避し、さらに滑らかな表面が生成される。
【0026】
均しの結果のさらなる改良を達成するために、塗布作業と均し作業との間に(後者の作業が実施される場合)反応性溶融層の表面に再び熱を供給することが有利である。均しは有利に、たとえばカレンダーロール、鋼ロール、または均しストリップを利用して行なわれ、所望であればポリウレタンコーティングを備えていたかもしれない。
【0027】
均し中に均し手段が剥離剤で湿らされると特に有利である。これは、いまだ未硬化の反応性溶融層が、封止されるべき物体から引き剥がされるおよびロールに貼り付くことを効果的に防ぐ。
【0028】
使用される剥離剤は、パラフィンろうに基づく、溶剤が含まれていないおよび低粘度の薬剤であり得る。このような薬剤を使用することによって、反応性溶融層の表面がさらに滑らかになり得る。
【0029】
パラフィンろうに基づく剥離剤は透明であってもよく、たとえばその密度は約0.85g/cm3であってもよく、20℃でのブルックフィールド粘度は約34mPasであっ
てもよい。30〜500mPasの間の粘度範囲も想定できる。塗布速度はたとえば約20〜35g/m2になり得る。
【0030】
剥離剤は、たとえば噴霧法または真空噴霧法によって均し手段に塗布される。剥離剤は含浸フェルトを利用しても塗布されてもよく、この含浸フェルトは反応性溶融層を均す間に剥離剤の均一な薄膜をもたらす特に単純で信頼性が高い手段である。
【0031】
剥離剤として、物体に塗布されるべきコーティング材料を使用することが好ましい。この結果、反応性溶融層の均しおよびコーティング層の塗布が1回の作業で行なわれることができ、これはとりわけ高速の、費用対効果の高い封止というさらなる利点を有する。
【0032】
この発明の方法は、物体の非常に幅広いさまざまな表面のいずれかまたは少なくともその一部を封止するために使用されることができ、これらの物体は同様にこの発明によって提供される。
【0033】
寄せ木張りの床用の要素の表面と同様に、たとえば家具または家具の要素の表面の少なくとも部分的な封止を実施するためにもこの発明は使用されることができる。しかしながら、基本的には任意の所望の物体の表面はこの発明の方法によって封止されることができ、任意の物体はこの発明に従う封止層を有してもよいことを強調すべきである。
【0034】
当該物体は好ましくは、封止の点で特に厳しい要件に晒される寄せ木張りの床用の要素である。
【0035】
封止されるべき物体の表面は、木もしくは木のような材料、鉄、非鉄金属、プラスチック、紙、厚紙、混凝紙または鉱物物質から少なくとも部分的に成っていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面の少なくとも一部を封止する方法であって、
(a) ポリウレタンに基づく反応性溶融層を前記物体の前記表面の少なくとも一部に塗布するステップと、
(b) 所望であれば、前記反応性溶融層を均すステップと、
(c) コーティング層を前記反応性溶融層に塗布するステップとを備える、方法。
【請求項2】
前記コーティング層は溶融物が完全に硬化する前に塗布されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コーティング材料はUV硬化することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融層の均しおよび前記コーティング層の塗布は1回の作業で行なわれることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング材料は剥離剤の働きをすることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融層および前記コーティング層は各々一層の状態で塗布されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記反応性溶融層の厚さは20μm〜150μmの範囲であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング層の厚さは5μm〜25μmの範囲であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
封止されるべき前記物体の前記表面は、木もしくは木のような材料、鉄、非鉄金属、プラスチック、紙、厚紙、混凝紙または鉱物物質から少なくとも部分的に成っていることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記物体は、寄せ木張りの床の要素、家具一点または家具の要素であることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
表面の少なくとも一部の上に封止層を有する物体であって、前記物体の前記表面の少なくとも一部の上にポリウレタンに基づく反応性溶融層を備え、前記反応性溶融層の上にコーティング層を備える、物体。
【請求項12】
コーティング材料はUV硬化することを特徴とする、請求項11に記載の物体。
【請求項13】
前記溶融層および前記コーティング層は各々一層の状態で形成されることを特徴とする、請求項11または12に記載の物体。
【請求項14】
前記反応性溶融層の厚さは20μm〜150μmの範囲であることを特徴とする、請求項11から13のいずれかに記載の物体。
【請求項15】
前記コーティング層の厚さは5μm〜25μmの範囲であることを特徴とする、請求項11から14のいずれかに記載の物体。
【請求項16】
封止されるべき前記物体の前記表面は、木もしくは木のような材料、鉄、非鉄金属、プラスチック、紙、厚紙、混凝紙または鉱物物質から少なくとも部分的に成っていることを特徴とする、請求項11から15のいずれかに記載の物体。
【請求項17】
この物体は、寄せ木張りの床の要素、家具一点または家具の要素であることを特徴とする、請求項11から16のいずれかに記載の物体。

【公表番号】特表2008−523986(P2008−523986A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547383(P2007−547383)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013951
【国際公開番号】WO2006/066954
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(505411701)クレープヒェミー・エム・ゲー・ベッカー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】KLEBCHEMIE M.G. BECKER GMBH + CO. KG
【Fターム(参考)】