説明

表面コート材用組成物

【課題】安定した耐汚染性、セロハンテープ剥離性を持った活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】電子線または紫外線硬化性樹脂60〜95重量%、シリカ粒子1〜20重量%、アミノ基を有するシリコーン樹脂0.1〜10重量%およびアミノ基を有していないシリコーン樹脂0.1〜10重量%を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法であって、アミノ基を有するシリコーン樹脂を用いてシリカ粒子を処理する工程(1)と、前記処理物をさらに、アミノ基を有していないシリコーン樹脂と混合する工程(2)とを経由して製造される活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐汚染性、耐セロハンテープ剥離性に優れた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建装材用、パッケージ用、光学製品用などの表面コート剤は意匠感や、光学的特性を持たせる意味合いでコート剤にシリカ粒子を配合することが一般的である。一方、これらのコート剤は最終製品として最表面になるため耐汚染性、セロハンテープ剥離性などの性能を持たせるためシリコーン樹脂を添加することが多い。ところがシリカ粒子とシリコーン樹脂をそのまま併用すると、目的とする耐汚染性やセロハンテープ剥離性が発現しにくくなり、シリカ粒子未配合のコート剤と比較して性能が劣っていた。これを補うためシリコーン樹脂をシリカ未配合品と比較し大量に配合するなどの方策が取られているが、その分コスト面で不利である。
【0003】
またシリカ未配合品においても、電子線または紫外線硬化性樹脂をメインバインダーとした場合、その即硬化性が原因となり熱可塑性樹脂をメインバインダーとして使用した場合と比較してシリコーンが完全に表面に配向する前に硬化してしまい耐汚染性、セロハンテープ剥離性などの性能が劣るという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−225420号公報
【特許文献2】特開2007−015232号公報
【特許文献3】特開2007−016139号公報
【特許文献4】特開2008−247016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安定した耐汚染性、セロハンテープ剥離性を持った活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、特定の製造方法によって製造された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、安定した耐汚染性、優れたセロハンテープ剥離性を有するという優れた性質を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明は、
電子線または紫外線硬化性樹脂を60〜95重量%、
シリカ粒子を1〜20重量%、
アミノ基を有するシリコーン樹脂を0.1〜10重量%、
および
アミノ基を有していないシリコーン樹脂を0.1〜10重量%
を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
アミノ基を有するシリコーン樹脂を用いてシリカ粒子を処理する工程(1)と、
前記処理物を、さらに、アミノ基を有していないシリコーン樹脂と混合する工程 (2)と
を経由して製造されることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0008】
さらに、本発明の第2の発明は、さらに、アミノ基を有する分散剤を使用することを特徴とする第1の発明記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0009】
さらに、本発明の第3の発明は、シリカ粒子が、未処理のシリカであることを特徴とする第1の発明または第2の発明記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0010】
さらに、本発明の第4の発明は、第1の発明〜第3の発明いずれかに記載の製造方法により製造してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により安定した耐汚染性、セロハンテープ剥離性を持った活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、化粧シート上に表面保護層を形成するものであり、化粧シート表面に耐汚染性、セロハンテープ剥離性、耐薬品性等の耐性および意匠性を付与するものであり、紫外線や電子線等のエネルギー線によりラジカル重合し硬化するエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含有するものである。
【0013】
電子線または紫外線硬化性樹脂は、オリゴマーおよび/またはモノマーからなり、オリゴマーは表面保護層に耐性、柔軟性を付与するものであり、数平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。以下、同じとする。)1 0 0 0 以上のものが好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリレート基を有するウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアクリレート、エポキシアクリレート等が挙げられる。これらのうち、下地への密着性の付与と共に柔軟性の付与が期待される点で、ウレタンアクリレートが好ましい。
【0014】
電子線または紫外線硬化性樹脂のうち、モノマー は表面保護層の物性の向上、活性エネルギー線硬化性組成物の粘度調整の目的で添加されるものであり、(メタ)アクリレート基を有する単官能、二官能、多官能モノマー等が挙げられる。
【0015】
単官能モノマーとしては、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2 − フェノキシエチルアクリレート、インデシルアクリレート、イソクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、エトキシ化ノニフェノールアクリレート、プロポキシ化ノニルフェノールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレンアクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェニルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、エチレンオキサイド2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート等やこれらのメタクリレートモノマーが挙げられる。
【0016】
二官能モノマーとしては、1 ,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、(水素化) ビスフェノールA ジアクリレート、(水素化) エチレンオキサイド変性ビスフェノールA ジアクリレート、(水素化) プロピレングリコール変性ビスフェノールA ジアクリレート、1 , 6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−エチル,2−ブチル−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート等やこれらのメタクリレートモノマーが挙げられる。
【0017】
多官能モノマーとしては、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリルトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート、トリス( アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタアクリレートエステル、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等やこれらのメタクリレートモノマーが挙げられる。
【0018】
これらのモノマーのうち、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートがセロハンテープ剥離性、コストの面から特に好ましい。また、エチレンオキサイド変性トリメチロールアクリレートはそのエチレンオキサイドくり返し単位数( モル変性と表現される)が1〜20モルのもの等が挙げられるが、そのうち3〜9モル変性のものが架橋した皮膜の物性に優れ、好ましい。
【0019】
電子線または紫外線硬化性樹脂は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中、60 〜 95 重量%用いる。60重量%より少ないと皮膜物性が劣化し、95重量%より多いとセロハンテープ剥離性を十分に発現させることが難しい。また、電子線または紫外線硬化性樹脂中、オリゴマーが0〜80重量%、モノマーが20〜100重量%となることが皮膜物性の点で好ましい。
【0020】
ラジカル重合性の架橋成分を紫外線により架橋させる場合には、光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、芳香族ジアゾニウム塩、メタロセンなどが挙げられる。また、重合促進剤として、アミン類、ホスフィン類を併用することも可能である。電子線により架橋させる場合にはこれらを配合しなくても良い。
また、カチオン反応性の成分を紫外線により架橋させる場合には、カチオン系開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス 酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボーレート系開始剤、およびその他の光酸発生剤などが挙げら れる。電子線により架橋させる場合にはこれらを配合しなくても良い。
【0021】
本発明におけるシリカ粒子としては、周知の方法で製造され市販されているシリカ粒子粉末、または活性エネルギー線硬化性組成物に溶剤、水といった希釈剤を用いることができる場合、溶媒にシリカ粒子を分散させたコロイダルシリカを用いることができる。
【0022】
コロイダルシリカの分散媒としては、水や、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコールなどの多価アルコール類及びその誘導体、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミドなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの非極性溶媒を用いることができる。
【0023】
シリカ粒子には表面をシランカップリング剤やマイクロクリスタリン、アルミナ等の有機物、無機物で処理したものと未処理のものがある。本発明においては何れも使用可能であるが、未処理シリカはシリコーン樹脂が吸着しやすく、セロハンテープ剥離性を発現しやすい。さらにコストの点でも好ましい。また、シリカ粒子の粒径は1〜20μmが好ましいが、膜厚や光沢に応じて適宜選択されるため、特に制限されない。同様に形状についても、特に制限されない。
【0024】
本発明においては、シリカ粒子の添加量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中1〜20重量%使用する。シリカ粒子が1重量%より少ないと満足する意匠感や光学特性が得られず、20重量%より多いと活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の流動性を下げ、塗工適性を悪化させる原因となる。
【0025】
本発明におけるシリコーン樹脂としては、アミノ基を有するシリコーン樹脂とアミノ基を有しないシリコーン樹脂とを用いる。アミノ基を有するシリコーン樹脂としてはアミノ基が一級、二級、三級何れも使用可能であるが、本発明では一級もしくは二級を用いるのが好ましい。
【0026】
アミノ基を有しないシリコーン樹脂としては、公知のエポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルコール変性、フェノール変性、(メタ)アクリル変性、メルカプト変性などの反応性シリコーン;ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、アルキルアラルキル変性、脂肪酸変性、アルコキシ変性、フッ素変性などの非反応性シリコーン;ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンなどのストレートシリコーン等が挙げられる。これらの中から適宜2種またはそれ以上選択することができる。本発明においては、塗膜性能を維持するため、また塗工物表面からのシリコーン樹脂の遊離の防止のため、電子線または紫外線硬化性樹脂と共に硬化することが望ましく(メタ)アクリル変性を併用することが好ましい。
【0027】
アミノ基を有するシリコーン樹脂は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中0.1〜10重量%使用する。0.1重量%以下だと耐汚染性、セロハンテープ剥離性が劣化し、10重量%以上だと電子線または紫外線硬化性樹脂と副反応が起こる可能性がある。
アミノ基を有しないシリコーン樹脂は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中0.1〜10重量%使用する。0.1重量%以下だとセロハンテープ剥離性が劣化し、10重量%以上だと塗膜表面にオイル状に浮き、ヌメリの原因となる。
【0028】
本発明におけるアミノ基を有する分散剤は、シリカによる塗工粘度の上昇を抑えるために用いられる。分散剤はアミノ基を有していれば特に制限されないが、シリコーン樹脂でなく、特に、骨格がポリエステルであるものが特に好ましい。アミノ基の量を表すアミン価としては10〜60KOHmg/gが好ましく、また同時にカルボキシル基を有していても構わない。
【0029】
添加量としては、組成物中の固形分の全量を基準として0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%である。0.1重量%よりも少ないと粘度の低減効果が低く、10重量%以上では、皮膜の架橋度が下がり、皮膜物性が低下する。
【0030】
次に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明者らは、シリカ粒子とシリコーン樹脂を併用するとシリコーン樹脂が徐々にシリカ粒子の細孔に入り込み、また表面に吸着しやすいことが性能劣化の要因であること見つけ、それを解決する手段としてシリコーン樹脂の種類及びその使用方法、製造工程を特定することで解決できることを見出した。
【0031】
すなわち、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法は、
アミノ基を有するシリコーン樹脂を用いてシリカを処理する工程(1)と
前記処理物をさらにアミノ基を有しないシリコーン樹脂と混合する工程(2)と
からなる。
【0032】
工程(1)においては、シリカ粒子をアミノ基を有するシリコーン樹脂で処理することにより、シリカ粒子の表面にアミノ基が吸着し、安定なシリカの分散体が出来る。この場合、アミノ基を有しないシリコーン樹脂を用いるとシリカ分散体の安定性が低下する。電子線または紫外線硬化性樹脂は、工程(1)において添加、混合することが粘度、攪拌性、シリカの分散性の点で好ましい。
【0033】
また、工程(2)でアミノ基を有するシリカ分散剤を併用することでさらに長期の保存安定性、貯蔵性が得られる。
工程(2)においては、アミノ基を有しないシリコーン樹脂を用いて前記処理物と混合する。工程(2)においてアミノ基を有するシリコーン樹脂を用いると組成物の保存安定性が低下する。また、本発明においては工程(1)と工程(2)を併せて一つの工程にすると見かけ上シリカ粒子は分散されているものの経時により分離、沈降を引き起こす。
本発明の製造においてはシリカ粒子の表面と親和性のあるアミノ基を有するシリコーン樹脂のアミノ基が優先的にシリカ表面に吸着する。シリコーン樹脂の一部が吸着するとシリコーン樹脂はシリカの細孔に入り難くなり、また、シリカ表面をある程度被覆することにより、シリカ単独より塗膜表面に析出し易くなるため、意匠感、光学的特性を低下させないと考えられる。
【0034】
工程(2)において、アミノ基を有しないシリコーン樹脂は、前記処理物と混合しても、既にシリカ粒子はアミノ基を有するシリコーン樹脂である程度被覆されているため、細孔に入ることなく塗膜の最表面に析出し、本来の耐汚染性、耐セロハンテープ剥離性に寄与すると考えられる。
【0035】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じてさらに有機/無機フィラーを配合させることができ、艶調整や磨耗性を付与することができる。例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、テフロン樹脂(登録商標)、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂を溶剤に不溶になるまで高分子化し微粒子化した有機フィラー類、アルミナ、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、水酸化アルミニウム、沈降性硫酸バリウム、沈降性炭酸バリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム等の無機フィラーが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて着色剤、各種添加剤、例えばレベリング剤、消泡剤等を配合させることができ、シリコーン系、ポリマー系など特に限定されない。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、基材、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、トリアセチルアセテート等からなるフィルム状のものや、クラフト紙、チタン紙、上質紙等の紙基材に塗工し、電子線または紫外線を照射して硬化することで、耐汚染性、セロハンテープ性に優れた塗工物を得ることができる。さらにこの塗工物をパーティクルボード等の基材に貼り付けて得られる化粧材は、住宅及びオフィスの内外装材、並びに家具等に用いることができる。
【0037】
なお、本発明において、活性エネルギー線とは、活性エネルギー線とは、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマー、レーザー、電子線(EB)、γ線などが使用できる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、本発明において、特に断らない限り、「部」は、「重量部」を表し、「%」は、「重量%」を表す。
【0039】
[実施例1]
(工程(1)):攪拌羽根を有する混合機に、電子線または紫外線硬化性樹脂(EB/UV硬化性樹脂1)エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(エチレンオキサイド付加量3モル;Miramer M3130、MIWON社製)90部を添加し、攪拌しながらアミノ基を有するシリコーン樹脂A(シンエツシリコーンKP366、信越化学工業社製)1部、未処理シリカA(サイリシア350、富士シリシア化学社製)4部を添加し、全て添加した後に30分間攪拌混合しアミノ基を有するシリコーン樹脂Aのシリカへの吸着を促した。
(工程(2)):工程(1)で得られた処理物に対してアミノ基を有しないシリコーンA(サイラプレーンFM0721、チッソ社製)1部、アミノ基を有しないシリコーンB(シンエツシリコーンKF96−100CS、信越化学工業社製)3部、アミノ基を有する分散剤(DISPERBYK−168、ビックケミー・ジャパン社製)1部を攪拌しながら添加し、最後に30分攪拌混合することで活性エネルギー線硬化性組成物Aを得た。
(塗工物作成)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを酢酸エチルにて20%希釈後、50μm厚のコロナ処理PETにバーコーター#4で塗工、80℃で30秒乾燥後、EB照射を下記条件で行い塗工物Aを得た。
EB照射: 125kV−30kGy−20m/min.
【0040】
[実施例2〜10、比較例1〜7}
表1に示した配合表により、実施例1と同様な方法で活性エネルギー線硬化性組成物B〜Qを得、さらに該組成物を用い、実施例1と同様な方法で塗工物B〜Qを得た。
なお、実施例2のみ光重合開始剤を使用し、紫外線照射により塗工物を得た。また、比較例6においては最初の工程(1)においてアミノ基を有しないシリコーン樹脂を、次の工程(2)においてはアミノ基を有するシリコーン樹脂を用いた。さらに、比較例7においては、工程(1)と工程(2)を一つの工程とし、アミノ基を有するシリコーン樹脂とアミノ基を有しないシリコーン樹脂を一括して仕込んだ。
使用したEB/UV硬化性樹脂2、3、4、5、有機物処理シリカ、無機物処理シリカ、アミノ基を有しない分散剤、光開始剤については下記の通りである。
EB/UV硬化性樹脂2:エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(エチレンオキサイド付加数9モル、Miramer M3130、MIWON社製)
EB/UV硬化性樹脂3:ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA、ダイセル・サイテック社製)
EB/UV硬化性樹脂4:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、ダイセル・サイテック社製)
EB/UV硬化性樹脂5:ウレタンアクリレート(EBECRYL220、ダイセル・サイテック社製)
有機物処理シリカ:サイリシア436、富士シリシア化学社製、粒径4.1μm
無機物処理シリカ:サイリシア435、富士シリシア化学社製、粒径4.1μm
アミノ基を有しない分散剤:DISPERBYK−111、ビックケミー・ジャパン社製
光開始剤:ダロキュア1173、長瀬産業社製
【0041】
実施例及び比較例で得られた組成物A〜Qを用いた塗工物A〜Qについて、下記の方法で耐汚染性、耐セロハンテープ剥離性、耐溶剤性及び液安定性を評価した。評価結果を表1に記す。
【0042】
<耐汚染性評価>
塗工物作成で得られた塗工物の塗膜面に対して油性マジックで筆記し、4時間放置。その後拭き取りを行い、後残りの状況を評価した。
(評価基準)
◎:乾拭きにて後残りなし
○:メタノールにて拭き取り後、後残りなし
△:メタノールにて拭き取り後、僅かに後残りあり
×:メタノールにて拭き取り後、後残りあり
実用レベルは〇以上である。
【0043】
<耐セロハンテープ剥離性評価>
塗工物作成で得られた塗工物の塗膜面にニチバン社製セロハンテープ(24mm幅)を貼り付け剥離の抵抗感を評価した。
【0044】
(評価基準)
◎:ほとんど抵抗がない
〇:やや抵抗があるがスムーズに剥がれる
△:抵抗がありなかなか剥がれない
×:剥がれない、もしくは基材から剥がれる
実用レベルは〇以上である
【0045】
<耐溶剤性評価>
塗工物作成で得られた塗工物の塗膜面をメチルエチルケトンを含浸させた脱脂綿で荷重1kgで100往復擦り、塗膜面の変化を評価した。
(評価基準)
◎:変化なし
〇:僅かに外観・光沢変化あり
△:明らかに外観・光沢変化あり
×:塗膜面に穴があく
実用レベルは〇以上である。
【0046】
<液安定性評価>
作成した塗液を作成直後、40℃−3日放置後の25℃での粘度をザーンカップで測定し、粘度変化を評価した。
(評価基準)
◎:変化なし
〇:変化幅が5秒以内
△:変化幅が6〜10秒
×:変化幅が11秒以上
実用レベルは〇以上である。
【0047】
【表1】



【0048】
実施例においては、評価は全て良好であるが、比較例は、請求項1の要件を満たさないため、評価が悪くなっている。
すなわち、電子線または紫外線硬化性樹脂、シリカ粒子、アミノ基を有するシリコーン樹脂およびアミノ基を有していないシリコーン樹脂を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法であって、アミノ基を有するシリコーン樹脂を用いてシリカ粒子を処理する工程(1)、前記処理物をさらに、アミノ基を有していないシリコーン樹脂と混合する工程(2)を経由して製造される活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、耐汚染性、セロハンテープ剥離性に優れることが分かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線または紫外線硬化性樹脂60〜95重量%、
シリカ粒子1〜20重量%、
アミノ基を有するシリコーン樹脂0.1〜10重量%
および
アミノ基を有していないシリコーン樹脂0.1〜10重量%
を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
アミノ基を有するシリコーン樹脂を用いてシリカ粒子を処理する工程(1)と、
前記処理物を、さらに、アミノ基を有していないシリコーン樹脂と混合する工程 (2)と
を経由して製造されることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
さらに、アミノ基を有する分散剤を使用することを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
シリカ粒子が、未処理のシリカであることを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の製造方法により製造してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。


【公開番号】特開2012−162686(P2012−162686A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25578(P2011−25578)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】