表面プラズモン共鳴とクォーツクリスタルマイクロバランスセンサ
表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知することが可能であるセンサに使用されるセンサチップアセンブリを提供する。このアセンブリは、第1の表面および該第1の表面に対向する第2の表面を有する透明圧電基板(1)を含む。さらに、アセンブリは、基板(1)の第1の表面および第2の表面にそれぞれ設けられた第1および第2の薄膜金属電極(2、3)を含む。第2の薄膜金属電極(3)は、光ビームが基板の第2の表面を透過するとともに第1の薄膜金属電極から反射可能であるように基板の第2の表面に位置している。また、アセンブリは、第2の薄膜金属電極(3)に隣接して配置される減衰全反射(ATR)カプラー(11)を更に含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生物学的、生化学的、または化学的試料を検知するためのセンサに係り、より詳細には、本発明は、表面プラズモン共鳴および極微重量を検知する技術を用いて、生物学的、生化学的、または化学的試料を検知することが可能なセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
クォーツクリスタルマイクロバランス(QCM(水晶振動子))などの表面プラズモン共鳴(SPR)および極微重量の検知技術は、生体中の結合反応のラベルフリーな検知および分析に好適な方法として独自に知られている。SPRまたはQCMを用いたセンサは、生物学的、生化学的、および化学的な試料を検知するために使用されてきた。
【0003】
QCM装置は、ウエハの二つの表面に配置された二つの平らな金属電極を有するクォーツクリスタルウエハを含む。分析される試料は、複数の電極の一つの表面に吸着される。クォーツクリスタルにおける変化は、逆圧電効果による交流電界によって機械的な共鳴に励起され得る。共鳴周波数は、表面電極へ吸着された材料の質量に応じて変化する。例えば、共鳴周波数は、質量蓄積時には小さくなり、質量減少時には大きくなる。周波数における変化は、分析等式を用いて吸着質量に関連付けられ得る。約1ng(ナノグラム)/cm2台の質量負荷が検出され得る。
【0004】
SPRは、金属薄膜の表面に発生する化学的な変化を検出するための公知の方法である。金属表面で分子を吸着することによって生じる光学的厚さの変化(即ち、屈折率)を測定する。SPRにおいて、減衰波(即ち、指数関数形減衰波)は、センサ表面に存在する。クレッチェマン幾何学として知られるものにおいては、入射光の全反射が、高屈折率物質および低屈折率物質からなる界面において、(即ち、プリズムのガラス−空気の界面において、)発生した時に、減衰波が生成される。金属薄膜(例えば、金または銀)が上記のような表面に配置された時、ある条件がそろえば、SPRが発生する。入射光が単色光である場合、金属の自由電子が振動し(即ち、表面プラズモンが励起され)、入射光の一定の角度に対応したエネルギーを吸収する。この角度がSPR角度と呼ばれる。SPR信号は、反射光の強度を測定することによって検出される。SPR角度において、表面プラズモンがエネルギーを吸収するときの強度の急激な低下、即ち、「ディップ」が測定される。
【0005】
SPRの角度の位置は、分子が表面に結合した時点で変化する検知表面の屈折率によって変化する。これによって、SPRの角度は、該表面に結合された分子の量に応じて変化する。SPRの検出限度は、約1ng/cm2である。
【0006】
SPRおよびQCMの技術は、それぞれ特定の強みと弱み、またデータ収集及び解析に固有の前提条件を有する。従って、各技術は、薄膜試料の異なる特性に対して敏感である。
【0007】
SPRおよびQCMの両技術を利用する解析装置が知られている。ドイツ特許第10024366号は、格子カプラーを用いてSPRとQCMを組み合わせる解析装置を開示している。格子カプラーの使用によって、入射ビームがSPRのための試料液を通過することが必要とされ、更に、フローセルおよび試料が光学的に透明であることが必要とされる。これは、結果的に、信号/ノイズの比率が低くなるという欠点を有する。さらに、プリズムカプラーのSPRセンサに比べると、SPRの測定感度は低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述された欠点のうちの一つ以上を克服するか、あるいは、少なくとも改良するセンサおよび分析技術を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、
前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極と、
前記基板の前記第2の表面に、ビームが前記基板の前記第2の表面を透過して、前記第1の薄膜金属電極から反射可能となるように設けられた第2の薄膜金属電極と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接して配置された減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含むことを特徴とする、表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知することが可能であるセンサに使用されるセンサチップアセンブリが提供される。
【0010】
一つの実施の形態によれば、
第1の表面および該第1の表面の反対側の第2の表面を有する透明圧電基板と、
基板の第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極と、基板の第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極と、
第2の薄膜金属電極に隣接して配置される減衰全反射(ATR)カプラーと、
ATRカプラーと基板の屈折率を実質的に整合させるためにATRカプラーと第2の薄膜金属電極との間に配置された光結合媒体と、を含むことを特徴とする、表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知することが可能であるセンサに使用されるアセンブリが提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、
基板の第1の表面に設けられるとともに試料が戴置される第1の薄膜金属電極、および基板の第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極であって、両電極が、基板を共鳴させるべく、一つ以上の選択された周波数で電界を発振させる発振回路に結合可能である、第1の薄膜金属電極および第2の薄膜金属電極と、
第2の薄膜金属電極に隣接して配置され、励起時に表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させるために、複数の入射角で、光源から第1の薄膜金属電極にかけて、ビームを光学的に結合可能な減衰全反射(ATR)カプラーと、を含むことを特徴とするセンサが提供される。
【0012】
一つの実施の形態において、上記センサは、ATRカプラーと基板の屈折率を実質的に整合させるために、ATRカプラーと第2の薄膜金属電極との間に配置された光結合媒体を更に含んでいてもよい。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、
前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極および前記基板の前記第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接する減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含むセンサを用いた表面プラズモン共鳴(SPR)および重量分析検知方法であって、
前記第1の薄膜金属電極上に試料を配置し、
前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極を介して、一つ以上の選択された周波数で電界を発振させ、これによって前記基板を共鳴させ、
前記第1の薄膜金属電極から、ビームを複数の入射角で反射させて、表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させる、
ことを含む表面プラズモン共鳴(SPR)および重量分析検知方法が提供される。
【0014】
一つの実施の形態において、上記方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)および重量分析検知方法が提供されており、ATRカプラーと基板の屈折率を実質的に整合させるために、ATRカプラーと第2の薄膜金属電極との間に光結合媒体を介在させることを更に含んでいてもよい。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、
透明圧電基板の第1の表面に第1の薄膜金属電極を蒸着させ、
ビームが前記基板の前記第2の表面を透過して前記第1の薄膜金属電極から反射することが可能であるように、前記基板の前記第1の表面とは反対側の第2の表面に第2の薄膜金属電極を蒸着させ、
前記第2の薄膜金属電極に隣接するように減衰全反射(ATR)カプラーを取り付ける、
ことを含む、表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知することが可能であるセンサに使用されるアセンブリを作製する方が提供される。
【0016】
一つの実施の形態において、上記方法は、該減衰全反射カプラーと基板の屈折率を実質的に整合させるために、減衰全反射(ATR)カプラーと第2の薄膜金属電極との間に光結合媒体を封入することを更に含んでいてもよい。
【0017】
本発明の第5の態様によれば、
前記試料を収容するためのチャンバを有するハウジングと、
第1の表面および該第1の表面に対向する第2の表面を有する透明圧電透明基板と、
クォーツ基板の第1の表面に配置されるとともに前記チャンバと流体連通している第1の薄膜金属電極と、
前記クォーツ基板の第2の表面に配置された第2の薄膜金属電極と、
前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極に結合されて、前記基板が共鳴周波数で共鳴するように、一つ以上の選択された周波数で、電界を発振させるための発振回路と、
前記共鳴周波数を検出して、重量信号を検出できるようにする共鳴周波数検出器と、
複数の入射角でビームを生成する光源と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接して配置され、内部反射ビームが表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させる入射角で前記第1の薄膜金属電極から反射されるように、前記光源に光学的に結合する減衰全反射(ATR)カプラーと、
前記内部反射ビームを受けるとともに、前記試料と前記第1の薄膜金属電極との間の反応に依存するSPRの性質を検出するための検出器と、
を含む、生物学的、生化学的または化学的な試料について表面プラズモン共鳴(SPR)および重量の検知を実施することが可能なセンサシステムが提供される。
【0018】
一つの実施の形態において、センサシステムは、ATRカプラーと基板の屈折率を実質的に整合させるために、ATRカプラーと第2の薄膜金属電極との間に光結合媒体を含む。
【0019】
本発明の第6の態様によれば、
第1の表面および該第1の表面に対向する第2の表面を有する透明圧電基板と、前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極および前記基板の前記第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極と、前記第2の薄膜金属電極に隣接する減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含むセンサを用いた試液の表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知するための方法であって、
(a)前記試液を前記第1の薄膜金属電極上に設置し、
(b)前記第1の薄膜金属電極から光を反射させるために、前記ATRカプラーを介してビームを透過させ、
(c)前記反射光の強度を検出してSPRを検出し、
(d)前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極を介して電界を印加し、
(e)前記電界の共鳴周波数を測定する、
ことを含む、試液の表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知するための方法が提供される。
【0020】
透明圧電基板は、クォーツ、リチウムタンタル酸塩、及びリチウムニオブ酸塩からなる群より選択された材料を含み得る。
【0021】
SPRの生成においては、特定の波長において光によって共鳴可能な任意の金属が薄膜金属電極として使用され得る。該薄膜金属電極の材料は、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、金、インジウム、モリブデン、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銀、錫、チタン、タングステン、および亜鉛からなる群より選択され得る。
【0022】
光結合媒体は、1.50〜1.60、1.51〜1.59、1.52〜1.58、1.52〜1.57、1.52〜1.56、1.52〜1.55、および1.53〜1.55からなる群より選択される範囲の屈折率を有する任意の透明な液体であってよい。基板がクォーツである実施の形態において、光結合媒体は、波長632.8nmにおいて約1.54の屈折率を有し得る。
【0023】
キャビティは、基板とATRカプラーの間に存在し得る。該キャビティは、屈折率整合媒体が充填され、封入される。基板からATRカプラーまでの距離は、0.5mm〜2.5mm、0.75mm〜2.25mm、および1mm〜2mmからなる群より選択される範囲内にあってもよい。光結合媒体は、水の濃度に対して低い濃度を有し、該濃度は、1.05〜1.3、1.1〜1.25、および1.1〜1.2からなる群より選択される範囲内にあってよい。
【0024】
光結合媒体は、水性媒体または非水性媒体であってよい。一つの実施の形態において、光結合媒体は、1〜25、2〜20、3〜18、4〜15、5〜12、および5〜10からなる群より選択される範囲の炭素原子を有する炭化水素である。光結合媒体は、スチレン、トルエン、ベンジルアルコール、ブチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、アセトフェノン、ベンゾニトリル、ジブロモメタン、ベンジルアミン、3−ピリジンメタノール、2−メチルベンゼンメタンアミン、およびフェニルオキシランからなる群より選択され得る。
【0025】
光結合媒体の水と比べた密度は、1.05〜1.3、1.1〜1.25、および1.1〜1.2からなる群より選択される範囲にあってよい。
【0026】
一つの実施の形態において、第2の薄膜金属電極は、ビームを透過させるための少なくとも一つの開口を含んでもよい。第2の薄膜金属電極は、複数の開口を含んでもよい。開口は、複数のビームを通過させるとともに、該複数のビームを基板と第1の薄膜金属電極との界面で反射可能とする程に十分な大きさを有していてよい。
【0027】
重量の検知は、クォーツクリスタルマイクロバランス検知、表面音波検知、及びバルク音波検知からなる群より選択され得る。
【0028】
一つの実施の形態において、ATRカプラーは、略半球形、略矩形、略正方形、および略円筒形からなる群より選択される形状を有するプリズムであり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、最良の形態を含む本発明の限定されない実施例および比較例が、添付図面を参照して更に説明される。
【0030】
図1A、図1Bおよび1Bは、SPRおよびクォーツクリスタルマイクロバランス(QCM)重量検知を組み合わせたものを使用することが可能なセンサシステムに使用可能な、矢印30によって総合的に示されるセンサチップ配置を開示している。
【0031】
センサチップ30は、クォーツ基板1の形態の透明圧電基板を含む。電極2の形態の第1の薄膜金属電極が基板1の上に設けられている。電極3の形態の第2の薄膜金属電極が基板1の反対側に設けられている。電極3は、以下に更に説明される、基板1へレーザ光を透過させるための開口32を具備している。
【0032】
図1に示されるように、電極3は、クォーツ基板1の右縁部を包み込む金属鋼帯(ストリップ)4に接続されている。間隙(ギャップ)2Aが基板1に設けられ、使用時に試料を基板1に接触させる。金属ストリップ4は、電極3の片側から電気的に接続されるのを可能とする。電極(2および3)およびクォーツ基板1は、QCM検知が実行されるのを可能とする。図1Cに示されるように、電極3の中心における開口32(または「窓」)は、ある特定の入射角において、ビームが全反射し、検知電極2の表面において表面プラズモン共鳴(SPR)が励起されるように、入射光のビームにクォーツ基板1を通過させることによって、SPR分析が実行されることを可能する。ここで、開口32が、光を基板1上に直接通過させることが理解されよう。
【0033】
図2は、SPR解析のための減衰全反射(ATR)プリズムカプラーを示す。図2の配置は、「クレッチェマン(Kretschmann)配置」と称され、ベースに検知ディスク16が取り付けられたプリズム18を含み、検知ディスク16は、プリズム18と同じ屈折率を有する材料から作られている。検知ディスクとプリズム18との間の空隙は、光結合のための一定量の屈折率整合流体17によって充填される。クォーツ基板1とプリズム18との間の屈折率整合流体17は、特に、屈折作用により生成されたSPR信号に伴って発生するノイズを削減することによって、SPRの励起時に生成されるSPR信号の品質を向上させるために使用される。とりわけ、クォーツ基板1からプリズム18までの距離を5nm〜15nmに増加させて空隙を形成すると、SPR信号の振動が一段と大きくなり、これによって、信号の品質も一段と向上する。
【0034】
検知ディスクの上面は、薄膜金属層19(例えば、金)によって塗布されている。この層19は、使用時に表面プラズモンを励起する導電性表面層となる。
【0035】
図3は、SPRおよびQCM検知を実行するためのセンサシステム36を示す断面図である。本実施の形態において、SPRおよびQCM検知が同時に実行される。図1のセンサチップ30は、「クレッチェマン配置」のプリズム11の形態の減衰全反射(ATR)カプラーと、試料8を収容するためのチャンバを含むセル5の形態の試料収容セルと、の間に固定された状態で示されている。セル5は、電極2に対して曝されている。セル5はまた、試料注入導管8aおよび試料流出導管8bを含み、それぞれ、試料を注入または流出させる。本実施の形態において、試料は、液体分析試料8である。しかしながら、他の実施の形態において、試料は気体であってもよい。
【0036】
センサチップ30は、二つのOリング(7、9)によって、プリズム11およびセル5に固定されている。
【0037】
プリズム11と電極3の間には、キャビティが設けられている。このキャビティには、屈折率整合液10の形態の光結合媒体が充填されている。
【0038】
光は、レーザ14の形態をとり、光源からプリズムアセンブリと向けられる。本実施の形態において、レーザ14の出力波長の範囲は、500nm〜900nmである。入射ビーム15は、屈折率整合液10およびクォーツ基板1を通過し、クォーツ基板1と電極3との界面で屈折する。反射ビーム12は、検出器13に向けて、再びプリズム11を通過する。
【0039】
ある条件において、光は、クォーツ基板1と電極3の界面で全反射し、これによってSPRを生じる。従って、分析液8が検知電極3に曝されている間、該分析液8の吸着を観察することができる。
【0040】
また、センサシステム36は、QCM解析の実行に使用される振動回路6および周波数カウンタ7を含む。AC(交流)電源の形態の電界(図示なし)が、回路6から電極(2、3)へとクォーツ基板1を覆って印加され、せん断モードの振動を誘導する。これによって、QCM信号が得られるように、分析液8の吸着が引き起こされる。ここで、SPR信号およびQCM信号は、同時に、または、非同期的に、得られ得ることを理解されたい。
【0041】
図4A〜図4Dは、センサチップ30に光学的に結合された四つの異なるATR(減衰全反射)結合型のSPR配置を示す。図4(a)には、ATR結合型のSPR技術を用いた、SPRとQCMの組合せが示されている。この配置は、扇形(例えば、半円筒形のレンズ)透明ブロック20のプリズムを用いてビームの焦点を合わせ、屈折率整合液10を介して、電極3を照射する。ATRに使用される扇形のプリズムについては、欧州特許A1−0305109に全て開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0042】
図4Bには、台形の透明ブロック21を用いてビームの焦点を合わせ、屈折率整合液10を介して、電極3照射する配置が示されている。図4Cには、矩形の透明ブロック22を用いてビームの焦点を合わせ、屈折率整合液10を介して、電極3を照射する配置が示されている。図4Dには、円筒形の透明ブロック23を用いてビームの焦点を合わせ、屈折率整合液10を介して、電極3を照射する配置が示されている。
【0043】
図5Aは、コンパクトであり、浅厚のキャビティ15を設けた支持スライド24に連結されたセンサチップ30’を含む、ディスク配置40を示す断面図である。本実施の形態において、センサチップ30’は、センサチップ30に機能が類似している。このため、同様の要素には、後ろにプライム符号(’)がついた同様の参照番号が付されている。しかしながら、センサチップ30とセンサチップ30’には多少の構造上の違いがあることが認識されるであろう。例えば、本実施の形態は、傾斜をつけられた浅深のキャビティ15a’を示す。傾斜角15b’を設けることによって、キャビティの表面をセンサディスクに平行とならないようにされており、このため、圧縮波共鳴によって生じる応答が最小化され、QCM性能が高められる。
【0044】
本実施の形態では、スライド24’が、基板1とプリズム11’との間に配置されている。スライド24’は、波長632.8nm、屈折率1.54のガラス製である。浅厚のキャビティ15’には、低粘度かつ低密度の屈折率整合液10’が充填されている。センサチップ30は、スライド24’にぴったりとくっつき、良好な封入が確実とされる。
【0045】
図5Cは、上記図4Aの実施の形態にて示した半球形のプリズム11’に取り付けられたディスク配置40’を示す。センサチップ36’は、コンパクトなので、オランダ、ユトレヒト、エコケミ社(Eco Chemie B.V.)製の「オートラブ(AutoLab)(登録商標)ESPR(elecrochemical surface plasmon resonance:電子化学表面プラズモン共鳴)」などの既存の市販されているSPR装置に有利に組み込むことができる。
【0046】
本実施の形態において、支持スライド24’は、厚さが0.82mm、直径が25.4mmであり、BK7のガラスから作られている。スライド24のキャビティ15は、電極3’の表面に対して、傾斜角25をなして、配置されている。これは、液深が〜1mmと低いときに顕著となる圧縮波共鳴によって生じる応答を最小化するためである(図5のコンパクトなセンサディスク配置の場合)。
【0047】
キャビティ15a’は、スチレン溶液の形態の屈折率整合液によって充填され、センサチップ30’によって被覆される。本実施の形態において、センサチップ30’は、厚さ0.276mm、直径20mmを有する、6MHzのSPRとQCMセンサディスクとを組み合わせたものである。電極(2’、3’)の直径は10mmであり、電極(3’)は、内径5mmの開口32’を有する。
【0048】
ディスク30’の縁部は、接着剤などのシーラント(封入剤)によって封入される。ミネソタ採鉱&製造会社(Minnesota Mining & Manufacturing Company)(米国、ミネソタ州、メープルウッド)製の「3M(登録商標)オートガラス接着剤(Auto Glass Adhesive)」は、好適な接着剤であるといえる。
【0049】
ディスク配置40’はコンパクトであり、「Autolab(オートラブ)(登録商標)SPRマシン」などの既存のSPR測定器に使用することが可能である。
【0050】
ディスク配置40’は、屈折率整合オイル17’の薄膜を塗布することによってプリズム11’上に取り付けてもよい。ディスク配置40’は、生物学的、生化学的、または化学的試料の測定するために使用可能である点から、バイオセンサとして使用することができる。
【0051】
使用時、SPRおよびQCMは、当該技術において知られているように、両電極(2’、3’)を振動器(例えば、図2に示される振動器6)および周波数カウンタ(例えば、図2に示される周波数カウンタ7)に接続してQCMを実行することによって、同時に測定することができる。QCMの方法の例としては、本明細書中にその全体が参照によって組み込まれる、米国特許第6,156,578号と米国特許第5,201,215号に開示されているものが挙げられる。同時に、レーザは、電極3’の開口32’を通って入射し、SPRを生じさせる。
【0052】
図6は、コンパクトかつ使い捨て可能なディスク配置50’’を示す断面図である。ディスク配置50’’は、センサチップ30’’を有する。本実施の形態においては、センサチップ30’’は、センサチップ30と機能的に類似しており、このため、同様の要素には、後ろに2個のプライム符号(’)がついた同様の参照番号が付されている。但し、センサチップ30とセンサチップ30’’には、構造に多少の違いがあることが認識されよう。例えば、本実施の形態においては、プリズム26’’に浅厚のキャビティ27’’が設けられている。
【0053】
プリズム26’’は、クォーツ基板1’’と整合するように約1.54の屈折率を有する、成形されたプラスチックプリズム26’’である。浅厚のキャビティ27’’は、半球形のプリズム26’’の基部の中心部分に設けられている。上述されたセンサチップ40’と同様に、キャビティ27’’は、低粘度かつ低密度の液体である屈折率整合液10’’によって充填され、センサチップ50’’によって被覆されている。
【0054】
光学的整合液10’’は、キャビティから漏洩または気化しないように、好適な封入剤によってキャビティ27’’内に封入される。
【0055】
図7は、センサチップ30’’’を含む分析デバイス60’’’の他の実施の形態を示す。本実施の形態において、センサチップ30’’’は、センサチップ30と機能的に同様であり、このため、同様の要素には、後ろに3個のプライム符号(’)がついた同様の参照番号が付されている。但し、本実施の形態では、導波路28’’’が含まれている。
【0056】
センサチップ30’’’は、プリズム11’’’の片側と、分析サンプル8’’’を満たしたセル5’’’の形態の試料収容セルとに取り付けられ、上記の図3を参照して述べられたシステム36と同様に作用する。
【0057】
このように、ディスク配置30’’’は、SPRとQCMとを組み合わせた解析技術に用いることが可能である。図7に示されているように、本実施の形態では、好適な導波路28が検知電極2’’’の上に塗布されている。分析液8’’’は、導波路26’’’に曝されており、これによってATR誘導導波路型のSPR分析が行われる。導波路は、剛性固体膜の複数の層から形成されている。本実施の形態において、導波路の全体的な厚さは、1マイクロメートルから2マイクロメートルの範囲である。発明者の経験上、固体膜の場合、10マイクロメートルまでのQCMが検出可能である。
【0058】
図8は、SPRとQCMを組み合わせたセンサチップ30^を示す斜視図である。本実施の形態において、センサチップ30^は、機能的にはセンサチップ30と同様であり、このため、同様の要素には、後ろに符号(^)がついた同様の参照番号が付されている。センサチップ30^は、開口32^の寸法が、他に記載された実施の形態における他の電極(3、3’、3’’、および3’’’)の開口32よりも大きいために、SPR測定の複数の流路(チャネル)を受容することが可能である。開口32^は、複数のビームが通過するのに十分な大きさであり、これによって、複数流路(マルチチャネル)のSPR測定の実行が可能となり、電極2^とクォーツクリスタル基板1^との界面についてより詳しい情報を得ることができる。
【0059】
図9Aは、センサチップ30^^の他の実施の形態を示す断面図である。本実施の形態において、センサチップ30^^はセンサチップ30と機能的には同様であり、このため、同様の要素には、後ろに二つの(^^)符号がついた同様の参照番号が付される。ディスク配置30^^は、クォーツ基板1^^に設けられた金属電極の配列を含む。クォーツ基板1^^は、電極(2^^、3^^)の配列を含む。
【0060】
図9Bは、複数の電極2^^が設けられたクォーツ基板1^^の上面を示す平面図である。図9Cは、クォーツ基板1^^の底面に内部に開口32^^を設けた電極3^^の配列を示す平面図である。
【0061】
本明細書中に開示されているSPRとQCMとを組み合わせたセンサチップ(30、30’、30’’、30’’’、30^、30^^)は、プリズム、焦点レンズ、または導波路に結合されたATRであってもよいことが理解されよう。センサチップ(30、30’、30’’、30’’’、30^、30^^)は、単一または複数の入射ビームを受容することが可能であるため、単一モードであっても複数モードであってもよい。
【0062】
本明細書中において使用され、開示されているセンサは、液体と気体の両方からの吸着を検出するために使用され得る。本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、本明細書中に記載されている本発明に対して、さまざまな変形や変更を行うことが可能であることを当業者は容易に理解するであろう。従って、本発明の実施の形態は、全ての面において本発明の例示を目的とするものであって、本発明を限定することを意図するものではない。
センサチップアセンブリの作製
【0063】
開示されているセンサチップアセンブリは、以下のようにして作製することができる。
【0064】
クォーツクリスタル基板は、例えば、アメリカ合衆国、サンタフェスプリング、マックステック社(Maxtec, Inc.)製のものが市販されている。クォーツクリスタル基板は、平面の円盤状である。クォーツクリスタル基板は、予めカットされたもの、あるいは、必要な寸法にカットしたものを用いることができる。
【0065】
約50nmの金属が平面状のクリスタル基板の第1の面に蒸着され、第1の薄膜金属電極(2、2’、2’’、2’’’、2^、2^^)を形成する。電極の反対側の第2の反対側の面に50nmの金属をさらに蒸着し、第2の薄膜金属電極(3、3’、3’’、3’’’、3^、3^^)が形成される前に、円形のパッチを配置してもよい。次に、パッチが除去され、開口(32、32’、32’’、32’’’、32^、32^^)が形成される。金属の層(4、4’、4’’、4’’’、4^、4^^)は、基板1の片側に蒸着され、電極(2、2’、2’’、2’’’、2^、2^^)と電極(3、3’、3’’、3’’’、3^、3^^)とを互いに接続させる。
【0066】
クレッチェマンのプリズム(11、11’、11’’、11’’’、11^、11^^)は、エルマオプティック社(Hellma Optik)GMBH(ドイツ、イエナ)から市販されている。クレッチェマンプリズム(11、11’、11’’、11’’’、11^、11^^)は、プリズムホルダーによって、電極(3、3’、3’’、3’’’、3^、3^^)に結合される。光結合媒体(10、10’、10’’、10’’’、10^、10^^)がクレッチェマンプリズム(11、11’、11’’、11’’’、11^、11^^)と電極(3、3’、3’’、3’’’、3^、3^^)の間に注入され、例えば、O−リングによって封入される。
屈折率整合液
【0067】
液体試料から生成されたQCM信号の振動品質は、主に液体の粘度および密度によって決まる。QCMの吸着解析用として知られているセンサにおいては、基板の一面が試料液に曝され、他面が空気に曝される。多くの生物学的吸着解析において、例えば食塩加リン酸緩衝液(PBS)はよく使用される媒体であって、この場合のQCM品質因子は、約25,000である(即ち、例えば、アメリカ合衆国、オクラホマシティ、インターナショナルクリスタルマニュファクチャリング会社(International Crystal Manufacturing Co., Inc.)製の10MHzのQCMの場合)。この振動品質は、非常に安定しており、周波数測定の精度も高い。同じ10MHzのQCMにおいて、一つの面がPBSに曝されて、他の面が屈折率整合オイルに曝された場合、Qは、500未満へとひどく低下する。QCM品質因子が5倍下がるということは、周波数のスペクトルが5倍に広がることを意味し、不可能とは言わないまでも、安定した振動及び高精度の周波数の測定が困難となる。さらに、QCMが高粘度の屈折率整合オイルを介してプリズム上に配置された場合は、大幅な減衰の影響により、振動の検知がほとんど不可能となる。
【0068】
本実施の形態では、オイルではなく低粘度の液体が屈折率整合流体として使用される。表1は、本開示の実施の形態において光結合のために使用可能な、いくつかの有機溶剤の材料特性を示す。表1には、異なる暴露条件において測定されたQCM品質因子(10MHz ICM QCM)も含まれる。
【0069】
【表1】
表中、「PBS」は食塩加リン酸緩衝液であり、「IMO」は屈折率整合オイルである。
【実施例1】
【0070】
実施例1では、SPRおよびQCM測定値の生成は、図3を参照して述べたセンサシステムの配置と同じ配置を用いて行われた。従って、以下では、図3と同じ参照番号を用いて図3を参照することによって、本実施例のセンサシステム配置が説明される。
【0071】
基板として、金が塗布されたクォーツ円盤を用いて、SPRおよびQCMの同時測定値が得られた。ATR SPRは、クォーツ基板1の第1の面上の電極2から生成された。QCM振動は、電極(2、3)を介して、クォーツ基板1にAC電圧を印加することによって、駆動された。ATR SPRの励起の際には、屈折率整合液としての屈折率整合トルエン(10)が、O−リング(7)間で封入されている。トルエンは、非導電性であり、水と比較して低粘度かつ低密度である。屈折率整合トルエンは、表面プラズモン共鳴の励起に対して、受動型光結合界面として作用する。
【0072】
本実施例において、基板1は、厚さ0.276mmおよび直径25.4mmを有する6MHzのATカットのクォーツ板である。5nmのCr(クロム)接着層を有する45nmの金からなる層がクォーツ基板1に蒸着され、薄膜電極2を形成した。6.35mmの内径の開口を有する金電極層がクォーツ基板1の裏面に蒸着され、薄膜電極3を形成した。
【0073】
プリズム11は、BK7のガラスで作られ、電極3に隣接して配置されており、プリズム11と電極3の間で、屈折率整合トルエン(10)がO−リング7によって封入されている。
【0074】
アメリカ合衆国、カリフォルニア州、カルズバッドのメルズグリオット(Melles Griot)社製のp−偏光のヘリウム(He)−ネオン(Ne)レーザ(14)(632.8nm)が、光源として使用された。レーザ14からのビーム15は、プリズム11に入射する前に、ロックイン(閉込め)増幅器に結合されて、機械的に砕断された。金電極2とクォーツ基板1の界面で反射するビームの強度が、光ダイオード検出器によって検出され、「角度走査」測定に対する入射角の関数として記録された。
【0075】
図10(a)は、屈折率整合トルエン(10)を用いて得られた角度走査曲線を示す。図10aの曲線は、43.5度のSPR角度において、大きな強度損失を示す。入射角に対する滑らかな反射強度の変化は、センサシステム36が屈折率整合トルエンと良好な光結合を達成することを示している。
【実施例2】
【0076】
実施例2では、図5のセンサチップ30’と同じものが、オランダ、ユトレヒト、エコケミ社(Eco Chemie B.V.)から販売されている「オートラブエスピリット(AUTOLAB ESPIRIT)(登録商標)」測定器において使用された。従って、以下、本実施例におけるセンサチップ30’は、図5と同様の参照番号を用い、図5を参照して説明される。
【0077】
本実施例において、厚さ0.166mmの10MHzのクォーツ基板1’が、支持スライド24’を含む半球形のプリズム11’に配置されている。屈折率整合液10’が支持スライド24’のキャビティ15a'に注入された。
【0078】
図10bは、Autolab SPR(オートラブ)SPR測定器によって測定された、センサチップより得られた角度走査曲線を示す。Autolab SPR測定器は、波長670nmのレーザダイオードおよび振動ミラーを使用し、p−偏光の基板への入射角を調整する。SPRを生成する方法については、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、ワード(Ward)他著、生化学分析(2000年、285版、179p)に開示されている。
【0079】
トルエン、スチレン、ベンジルアルコールの、3つの異なる屈折率整合液10’をそれぞれキャビティ15a’へ注入することによって、3つの異なるSPR信号が生成された。図10bには、この3つの屈折率整合液のSPRスペクトルが示されている。従って、トルエン、スチレン、及びベンジルアルコールが、クォーツ基板/BK7のガラスプリズム配置を有するセンサチップ内の屈折率整合液となる見込みの高い溶液であることがわかる。これは、これら3つの液体の全てが、それぞれの共鳴周波数における反射最小点を明確に示しているためである。
【0080】
図10cは、Autolab SPRによって測定されたSPR安定度を示す。標準のAutolabシステムに対して、30分間にわたる基準SPR角度の安定度は、約±5m°であった。屈折率整合液に有機溶剤を用いた含むセンサチップ30’を用いた場合、基準安定度は、約±2m°であった。これは、大半の界面解析にとって好適に受け入れられ得る。
【実施例3】
【0081】
本実施例においては、クォーツ基板の一面が水性溶液に曝され、クォーツ基板の他の面が屈折率整合液に曝されたときのQCM振動挙動(振動品質及び安定度)を調べた。
【0082】
アメリカ合衆国、オクラホマ州、オクラホマシティのインターナショナルクリスタルマニュファクチャラー社(International Crystal Manufacturers Inc.)製の10MHz、AT−カット型、厚さ0.166mm、および直径13.66mmのクォーツ基板を用いて、ウシ血清アルブミン(BSA)の吸着度のQCMによる測定が行われた。クォーツの両面が、厚さ100nmの金電極で蒸着され、電極の直径は5mmであった。いずれの電極にも開口は含まれていなかった。
【0083】
液体中における原位置での周波数測定を行うにあたり、QCMクリスタルは、ネオプレン製のO−リングのシールによって二つのプレキシグラス(plexiglas)ブロックに固定された。クォーツの上面は、開口した液体セルの底面を形成し、下面は、閉じられた液体セルの底面を形成した。開口したセルは、1mLまでの塗布液を受容可能とし、閉じられた液体セルにおいて、傾斜角度を設けた容積は、約70μLだった。このセットアップでは、クリスタルの上面は、PBS(食塩加リン酸)バッファに曝されるが、下面は、空気あるいは非導電性、低粘度、および低密度の有機溶媒に曝される。周波数の応答は、アメリカ合衆国、ルイジアナ州、メタリーのユニバーサルセンサ社(Universal Sensors, Inc.)製のPzツールハードウェア及びソフトウェアによって測定された。インピーダンス解析は、同じセットアップが、アメリカ合衆国、アリゾナ州、フェニックス、サンダースアンドアソシエーツ社(Saunders & Associates,Inc.)製の「S&Aの250Bのネットワークアナライザ(Network Analizer」に接続され、QCM品質因子を含む周波数スペクトル及びインピーダンスパラメータを記録した。ネットワークアナライザの周波数安定度は、4Hzであった。
【0084】
図11は、ネットワークアナライザによって測定されるPBS/空気(図11a)やPBS/トルエン(図11b)等の暴露に対してのQCMの周波数および動的抵抗の同時応答を示す。下面が空気に曝されたクリスタルは、ノイズレベルが4Hzであり、QCM品質因子が2.5k(図11a)であった。一方、下面がトルエンに曝されたクリスタルは、ノイズレベルが10Hzであり、QCM品質因子が1.35k(図11b)であった。Pzツール測定器を用いた場合のノイズレベルは、それぞれ、1Hzおよび3Hzであった。
【実施例4】
【0085】
実施例4では、実施例3において説明されたものと同じセンサシステム配置を用いて、SPR測定値が生成された。
【0086】
実施例4において、BSA吸着反応について、センサチップ36の径依存性(radial dependent)QCM質量感度を調べた。本実施例において、BSAの吸着実験は、この暴露条件によるQCMが、実際の界面解析に好適に適用することができることを示している。原位置での蛋白質の固定化を実行するために、まず、洗浄直後のQCMクリスタルを10mMの11−メルカプトウンデカン酸(MUA)溶液を用いて12〜24時間かけて処理する。EDC(N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド)/NHS(N-ヒドロキシコハク酸イミド)化学を用いて、表面のCOOH基を活性化させた後、センサは共有結合によるBSAの付着が可能な状態となる。
【0087】
厚さ0.166mm、直径13.66mmを有する10MHz、AT−カット型のクォーツ基板1を使用した。45nmの金および5nmのクロムが基板に蒸着され、電極(2、3)を形成した。電極3は、内径3.5mmを有する開口32を含んでいた。本明細書中にその全体が参照により組み込まれている、P.J.カンプソンおよびM.P.シーア著の「測定科学技術」(1990年、第1版、544〜555pp)(P.J.Cumpson and M.P. Seah, Meas. Sci. Technol.)に記載されているドットインク較正(Dot−ink Calibration)法を用いて、両面に電極2を有するQCM(P/P電極のQCM)と、電極(2,3)を有するQCM(P/R電極のQCM)の径依存性質量感度分布を調べた。(注記:P/Pは、プレート/プレートを意味し、プレート電極は開口を含まない中実電極である。P/Rは、プレート/リングを意味し、リング電極は開口を含む電極である。)これらのQCMを用いて、BSA吸着反応を観察した。BSA吸着観察のための実験装置の構造は、実施例3に記載されている構造と同じであった。11−メルカプトウンデカン酸(MUA)を用いて電極2が前処理された後、QCMは、プレキシグラスブロックの液体セル内に固定され、Network Analyzer(ネットワークアナライザ)に接続された。QCMの電極2は、PBSバッファに曝され、BSA塗布前に周波数基準が較正された。
【0088】
図12は、活性化されたQCMの、上部電極のPBSバッファからのBSA吸着に対する周波数応答を示す。矢印70によって示されるPBS/空気、および矢印72によって示されるPBS/トルエンの両方において、BSA溶液(PBSに対して5mg/mL)の塗布によって、飽和状態における約150Hzの安定した周波数の低下が生じる。これによって、経時的に、界面上の蛋白質分子の蓄積が示される。下面がトルエンに曝されたシステムは、下面が空気に曝されたシステムに比べてノイズレベルが高いが、BSA吸着測定において十分な安定度と感度が達成されていることが、図12よりわかる。
【0089】
QCMを適切な有機溶媒に暴露することは、界面解析における振動品質に影響を与えないと結論することが可能である。
【0090】
図13は、これらのQCMへの径依存性質量感度を示す。P/P電極のベル状の感度分布は、せん断モードの発振において、電極領域の中心部でより大きなエネルギーが捕捉されることを反映している。P/R電極のQCMは、複雑な感度分布および全体的に下降した質量感度を有するが、実験によれば、これらのQCMも適正な周波数応答を有する吸着反応の観察に使用可能であることが示されている。
【0091】
図14は、矢印76によって示されるP/P、および矢印74によって示されるP/Rからなる電極を有するQCMのBSA吸着反応に対する周波数応答を示す。飽和周波数の低下は、P/PおよびP/RのQCM電極のそれぞれに対して、140Hz/130Hz(洗浄前/洗浄後)、および125Hz/110Hz(洗浄前/洗浄後)である。信号が低下(約10%)しているものの、周波数応答は同様の傾向を示し、界面結合処理Bを良好に反映している。
【実施例5】
【0092】
実施例5では、SPR及びQCMの測定値は、図3に記載したものと同じセンサシステムの配置を用いて得られた。従って、本実施例におけるセンサシステム配置は、図3を参照し、図3と同様の参照番号を用いて説明される。
【0093】
基板として、金が塗布されたクォーツディスクを用いて、SPRおよびQCMの同時測定値が得られた。ATR(減衰全反射)SPR(表面プラズモン共鳴)は、クォーツ基板1の第1の面上の電極2から生成された。QCM発振は、例えば、アメリカ合衆国、サンタフェスプリング、マックステック社(Maxtec, Inc.)製のRQCM測定器を、電極(2、3)を介して、クォーツ基板1に用いることによって、駆動された。QCMの周波数応答は、RQCM測定器によっても記録された。
【0094】
ATR SPRを励起するために、屈折率整合液としての屈折率整合トルエン(10)がO−リング(7)間で封入される。トルエンは、非導電性であり、水と比較して低粘度かつ低密度である。屈折率整合トルエンは、表面プラズモン共鳴を励起させる受動的光結合界面として作用する。
【0095】
本実施例において、基板1は、厚さ0.276mm、直径25.4mmの、6MHz、ATカット型のクォーツプレートである。5nmのCr(クロム)接着層を有する45nmの金からなる層がクォーツ基板1に蒸着され、薄膜電極2を形成した。6.35mmの内径の開口を有する金電極層がクォーツ基板1の逆側の面に蒸着され、薄膜電極3を形成した。
【0096】
プリズム11は、電極3に隣接して配置され、屈折率整合トルエン(10)がO−リング7によってプリズム11と電極3の間に封入された。
【0097】
アメリカ合衆国、カリフォルニア州、カルズバッドのメルズグリオット(Melles Griot)社製のp−偏光ヘリウム(He)−ネオン(Ne)レーザ(14)(632.8nm)が、光源として使用された。レーザ14からのビーム15は、プリズム11に入射する前に、ロックイン(閉込め)増幅器と結合して、機械的に砕断された。金電極2とクォーツ基板1の界面で反射するビームの強度が、光ダイオード検出器によって検出され、「反応速度」測定のための時間関数として記録された。
【0098】
図15は、矢印78によって示される、同時に記録されたQCM周波数によってプローブされたウシ血清アルブミン(BSA)の吸着、および矢印80によって示されるSPR反射率を示す。基準周波数と反射率は、表面1の電極2が、食塩加リン酸緩衝液(PBS)バッファに曝されている時に記録された。
【0099】
安定化後、PBSバッファに代えて、BSA(PBS中、5gm/mL)が注入された。吸着の終了時に、セルがPBSバッファによって洗浄され、不安定な吸着が除去された。
【0100】
図15を参照すると、周波数および反射率はともに経時による金表面の蛋白質分子の堆積/脱着を示していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本開示の実施の形態によるセンサは、表面プラズモン共鳴(SPR)およびクォーツクリスタルマイクロバランス(QCM)の同時検知を行うバイオセンサ(生体感応装置)として使用することができる。実施の形態において、センサは、結合反応の原位置でのラベルフリーな分析に用いることができる。
【0102】
本開示の実施の形態によれば、二つの基本的に異なる測定技術を同時に用いることによって、界面現象をモニタすることが可能となる。組み合わされたデバイスによって得られる相補的なSPRおよびQCMの信号は、データ解析に内在するいくつかの前提条件の有効性を検証しつつ、検知技術の強みを利用することができる。
【0103】
本開示の実施の形態によるセンサにおいて、SPR共鳴は、プリズムを介して、レーザビームをセンサチップの裏面へ入射することに基づいているため、試験対象の溶液中に光を透過させる必要がない。特定の物質の感度領域は、減衰波の延出長さ、即ち、検知する表面側から液体媒体へ透過される電磁波の深さに制限される。このため、特に結合した分析分子に関連する応答に対する非結合の試料分子からの影響は最小とされる。更に、上記したように、ATRプリズムカプラーに基づいたSPRデバイスの感度は、格子カプラーを用いたSPRセンサに比べて極めて高い。
【0104】
本開示の実施の形態によるセンサは、クォーツ基板に結合するための格子構造に依存しないことが理解されよう。これにより、本開示の実施の形態によるSPR測定は、試液を通るビームの入射に依存しない。従って、本開示の実施の形態においては、解析を受ける試料が光学的に透明である必要はない。
【0105】
本開示の実施の形態によるセンサは、格子カプラーよりも低い信号/ノイズ比を有するSPRおよびQCMの信号を生成する。
【0106】
電極(30、30’、30’’、30’’’、30^、30^^)の開口を利用する本開示の実施の形態によるセンサは、光を基板に直接通過させる。これにより、本開示の実施の形態によるセンサは、必ずしも、レーザ光を透過させるために透明のインジウム酸化錫(ITO)電極を使用することを必要としない。光の波長を632.8nmとしてITO膜を用いた場合、クォーツクリスタルおよびスパッタリング蒸着されたITO薄膜のそれぞれの屈折率は、1.54および1.95である。ITO膜は極薄(約100nm)であるが、屈折率の不整合によって生じる屈折は顕著であり、これによって、信号/ノイズ比の低下がもたらされる。
【0107】
本開示の一つの実施の形態によれば、クォーツ基板は、一つの面に面状の金電極が塗布され、他の面に開口を含む電極が塗布される。窓が設けられた電極からレーザビームがクォーツ基板に入射し、表面プラズモン共鳴が励起される面状の金電極に到達する。
【0108】
以上の開示内容を読んでいただけた後には、本発明の精神及び範囲を逸脱しない限りにおいて、本発明の他のさまざまな変更や適応が実行可能であることが当業者に明確となるであろう。更に、このような変更や適応は、全て、添付クレームの請求の範囲内において行われることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1A】QCMおよびSPRを同時に組み合わせることが可能なセンサチップを示す断面図である。
【図1B】図1Aのセンサチップを示す平面図である。
【図1C】図1Aのセンサチップを示す底面図である。
【図2】SPRを解析するためのクレッチェマン配置によるATR光学的結合の構成を示す略図である。
【図3】図1のセンサチップを利用して、QCMおよびSPRの解析技術を実行するためのセンサ装置を示す断面図である。
【図4A】ATR光学的結合によるSPR配置を示す断面図である。
【図4B】ATR光学的結合によるSPR配置を示す断面図である。
【図4C】ATR光学的結合によるSPR配置を示す断面図である。
【図4D】ATR光学的結合によるSPR配置を示す断面図である。
【図5A】QCMおよびSPRを同時に組み合わせることが可能であるセンサチップの他の実施の形態を示す断面図である。
【図5B】図5Aのセンサチップを示す平面図である。
【図5C】図5Aの構成のセンサチップを用いた、クレッチェマン配置のATR光学的結合による構成の他の実施の形態を示す断面図である。
【図6A】図5Aのセンサチップ構成を用いた、使い捨て可能なクレッチェマン配置のATR光学的結合による構成の他の実施の形態を示す断面図である。
【図6B】図6Aのセンサチップおよびクレッチェマン配置のATR光学的結合による構成を示す平面図である。
【図7】図1のセンサチップを用いた、QCMおよびSPR解析技術を実行するためのセンサ装置の他の実施の形態を示す断面図である。
【図8】QCMおよびSPR解析の複数モードの測定を実行するためのセンサ装置の他の実施の形態を示す断面図である。
【図9A】クォーツ基板に設けられた金属電極の配列を開示する他の実施の形態を示す断面図である。
【図9B】クォーツ基板の上面に設けられた金属電極の配列を示す平面図である。
【図9C】開口を内部に有し、クォーツ基板の底面に設けられている金属電極の配列を示す底面図である。
【図10A】屈折率整合のためにトルエンを用いた場合に、図1のセンサチップから得られた角度走査曲線を示す図である。
【図10b】屈折率整合のために、トルエン、スチレン、およびベンジルアルコールのそれぞれを用いた場合に、図1のセンサチップから得られた3つの角走査曲線を示す図である。
【図10c】Autolab(オートラブ)SPR測定器によって測定されたSPR安定度を示す図である。
【図11A】クォーツクリスタルの下面が空気に曝された時のQCMの周波数及び動抵抗の同時応答を示すグラフである。
【図11B】クォーツクリスタルの下面がトルエンに曝された時のQCMの周波数及び動抵抗の同時応答を示すグラフである。
【図12】上部電極のPBSバッファからのBSA吸着に対する活性化されたQCMの周波数応答を示すグラフである。
【図13】QCMに対する径依存性質量感度を示すグラフである。
【図14】P/PおよびP/R電極のQCM周波数のBSA吸着反応に対する反応を示すグラフである。
【図15】図3のセンサ装置のSPRとQCMの同時信号の周波数応答を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生物学的、生化学的、または化学的試料を検知するためのセンサに係り、より詳細には、本発明は、表面プラズモン共鳴および極微重量を検知する技術を用いて、生物学的、生化学的、または化学的試料を検知することが可能なセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
クォーツクリスタルマイクロバランス(QCM(水晶振動子))などの表面プラズモン共鳴(SPR)および極微重量の検知技術は、生体中の結合反応のラベルフリーな検知および分析に好適な方法として独自に知られている。SPRまたはQCMを用いたセンサは、生物学的、生化学的、および化学的な試料を検知するために使用されてきた。
【0003】
QCM装置は、ウエハの二つの表面に配置された二つの平らな金属電極を有するクォーツクリスタルウエハを含む。分析される試料は、複数の電極の一つの表面に吸着される。クォーツクリスタルにおける変化は、逆圧電効果による交流電界によって機械的な共鳴に励起され得る。共鳴周波数は、表面電極へ吸着された材料の質量に応じて変化する。例えば、共鳴周波数は、質量蓄積時には小さくなり、質量減少時には大きくなる。周波数における変化は、分析等式を用いて吸着質量に関連付けられ得る。約1ng(ナノグラム)/cm2台の質量負荷が検出され得る。
【0004】
SPRは、金属薄膜の表面に発生する化学的な変化を検出するための公知の方法である。金属表面で分子を吸着することによって生じる光学的厚さの変化(即ち、屈折率)を測定する。SPRにおいて、減衰波(即ち、指数関数形減衰波)は、センサ表面に存在する。クレッチェマン幾何学として知られるものにおいては、入射光の全反射が、高屈折率物質および低屈折率物質からなる界面において、(即ち、プリズムのガラス−空気の界面において、)発生した時に、減衰波が生成される。金属薄膜(例えば、金または銀)が上記のような表面に配置された時、ある条件がそろえば、SPRが発生する。入射光が単色光である場合、金属の自由電子が振動し(即ち、表面プラズモンが励起され)、入射光の一定の角度に対応したエネルギーを吸収する。この角度がSPR角度と呼ばれる。SPR信号は、反射光の強度を測定することによって検出される。SPR角度において、表面プラズモンがエネルギーを吸収するときの強度の急激な低下、即ち、「ディップ」が測定される。
【0005】
SPRの角度の位置は、分子が表面に結合した時点で変化する検知表面の屈折率によって変化する。これによって、SPRの角度は、該表面に結合された分子の量に応じて変化する。SPRの検出限度は、約1ng/cm2である。
【0006】
SPRおよびQCMの技術は、それぞれ特定の強みと弱み、またデータ収集及び解析に固有の前提条件を有する。従って、各技術は、薄膜試料の異なる特性に対して敏感である。
【0007】
SPRおよびQCMの両技術を利用する解析装置が知られている。ドイツ特許第10024366号は、格子カプラーを用いてSPRとQCMを組み合わせる解析装置を開示している。格子カプラーの使用によって、入射ビームがSPRのための試料液を通過することが必要とされ、更に、フローセルおよび試料が光学的に透明であることが必要とされる。これは、結果的に、信号/ノイズの比率が低くなるという欠点を有する。さらに、プリズムカプラーのSPRセンサに比べると、SPRの測定感度は低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述された欠点のうちの一つ以上を克服するか、あるいは、少なくとも改良するセンサおよび分析技術を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、
前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極と、
前記基板の前記第2の表面に、ビームが前記基板の前記第2の表面を透過して、前記第1の薄膜金属電極から反射可能となるように設けられた第2の薄膜金属電極と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接して配置された減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含むことを特徴とする、表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知することが可能であるセンサに使用されるセンサチップアセンブリが提供される。
【0010】
一つの実施の形態によれば、
第1の表面および該第1の表面の反対側の第2の表面を有する透明圧電基板と、
基板の第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極と、基板の第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極と、
第2の薄膜金属電極に隣接して配置される減衰全反射(ATR)カプラーと、
ATRカプラーと基板の屈折率を実質的に整合させるためにATRカプラーと第2の薄膜金属電極との間に配置された光結合媒体と、を含むことを特徴とする、表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知することが可能であるセンサに使用されるアセンブリが提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、
基板の第1の表面に設けられるとともに試料が戴置される第1の薄膜金属電極、および基板の第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極であって、両電極が、基板を共鳴させるべく、一つ以上の選択された周波数で電界を発振させる発振回路に結合可能である、第1の薄膜金属電極および第2の薄膜金属電極と、
第2の薄膜金属電極に隣接して配置され、励起時に表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させるために、複数の入射角で、光源から第1の薄膜金属電極にかけて、ビームを光学的に結合可能な減衰全反射(ATR)カプラーと、を含むことを特徴とするセンサが提供される。
【0012】
一つの実施の形態において、上記センサは、ATRカプラーと基板の屈折率を実質的に整合させるために、ATRカプラーと第2の薄膜金属電極との間に配置された光結合媒体を更に含んでいてもよい。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、
前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極および前記基板の前記第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接する減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含むセンサを用いた表面プラズモン共鳴(SPR)および重量分析検知方法であって、
前記第1の薄膜金属電極上に試料を配置し、
前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極を介して、一つ以上の選択された周波数で電界を発振させ、これによって前記基板を共鳴させ、
前記第1の薄膜金属電極から、ビームを複数の入射角で反射させて、表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させる、
ことを含む表面プラズモン共鳴(SPR)および重量分析検知方法が提供される。
【0014】
一つの実施の形態において、上記方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)および重量分析検知方法が提供されており、ATRカプラーと基板の屈折率を実質的に整合させるために、ATRカプラーと第2の薄膜金属電極との間に光結合媒体を介在させることを更に含んでいてもよい。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、
透明圧電基板の第1の表面に第1の薄膜金属電極を蒸着させ、
ビームが前記基板の前記第2の表面を透過して前記第1の薄膜金属電極から反射することが可能であるように、前記基板の前記第1の表面とは反対側の第2の表面に第2の薄膜金属電極を蒸着させ、
前記第2の薄膜金属電極に隣接するように減衰全反射(ATR)カプラーを取り付ける、
ことを含む、表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知することが可能であるセンサに使用されるアセンブリを作製する方が提供される。
【0016】
一つの実施の形態において、上記方法は、該減衰全反射カプラーと基板の屈折率を実質的に整合させるために、減衰全反射(ATR)カプラーと第2の薄膜金属電極との間に光結合媒体を封入することを更に含んでいてもよい。
【0017】
本発明の第5の態様によれば、
前記試料を収容するためのチャンバを有するハウジングと、
第1の表面および該第1の表面に対向する第2の表面を有する透明圧電透明基板と、
クォーツ基板の第1の表面に配置されるとともに前記チャンバと流体連通している第1の薄膜金属電極と、
前記クォーツ基板の第2の表面に配置された第2の薄膜金属電極と、
前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極に結合されて、前記基板が共鳴周波数で共鳴するように、一つ以上の選択された周波数で、電界を発振させるための発振回路と、
前記共鳴周波数を検出して、重量信号を検出できるようにする共鳴周波数検出器と、
複数の入射角でビームを生成する光源と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接して配置され、内部反射ビームが表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させる入射角で前記第1の薄膜金属電極から反射されるように、前記光源に光学的に結合する減衰全反射(ATR)カプラーと、
前記内部反射ビームを受けるとともに、前記試料と前記第1の薄膜金属電極との間の反応に依存するSPRの性質を検出するための検出器と、
を含む、生物学的、生化学的または化学的な試料について表面プラズモン共鳴(SPR)および重量の検知を実施することが可能なセンサシステムが提供される。
【0018】
一つの実施の形態において、センサシステムは、ATRカプラーと基板の屈折率を実質的に整合させるために、ATRカプラーと第2の薄膜金属電極との間に光結合媒体を含む。
【0019】
本発明の第6の態様によれば、
第1の表面および該第1の表面に対向する第2の表面を有する透明圧電基板と、前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極および前記基板の前記第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極と、前記第2の薄膜金属電極に隣接する減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含むセンサを用いた試液の表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知するための方法であって、
(a)前記試液を前記第1の薄膜金属電極上に設置し、
(b)前記第1の薄膜金属電極から光を反射させるために、前記ATRカプラーを介してビームを透過させ、
(c)前記反射光の強度を検出してSPRを検出し、
(d)前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極を介して電界を印加し、
(e)前記電界の共鳴周波数を測定する、
ことを含む、試液の表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知するための方法が提供される。
【0020】
透明圧電基板は、クォーツ、リチウムタンタル酸塩、及びリチウムニオブ酸塩からなる群より選択された材料を含み得る。
【0021】
SPRの生成においては、特定の波長において光によって共鳴可能な任意の金属が薄膜金属電極として使用され得る。該薄膜金属電極の材料は、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、金、インジウム、モリブデン、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銀、錫、チタン、タングステン、および亜鉛からなる群より選択され得る。
【0022】
光結合媒体は、1.50〜1.60、1.51〜1.59、1.52〜1.58、1.52〜1.57、1.52〜1.56、1.52〜1.55、および1.53〜1.55からなる群より選択される範囲の屈折率を有する任意の透明な液体であってよい。基板がクォーツである実施の形態において、光結合媒体は、波長632.8nmにおいて約1.54の屈折率を有し得る。
【0023】
キャビティは、基板とATRカプラーの間に存在し得る。該キャビティは、屈折率整合媒体が充填され、封入される。基板からATRカプラーまでの距離は、0.5mm〜2.5mm、0.75mm〜2.25mm、および1mm〜2mmからなる群より選択される範囲内にあってもよい。光結合媒体は、水の濃度に対して低い濃度を有し、該濃度は、1.05〜1.3、1.1〜1.25、および1.1〜1.2からなる群より選択される範囲内にあってよい。
【0024】
光結合媒体は、水性媒体または非水性媒体であってよい。一つの実施の形態において、光結合媒体は、1〜25、2〜20、3〜18、4〜15、5〜12、および5〜10からなる群より選択される範囲の炭素原子を有する炭化水素である。光結合媒体は、スチレン、トルエン、ベンジルアルコール、ブチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、アセトフェノン、ベンゾニトリル、ジブロモメタン、ベンジルアミン、3−ピリジンメタノール、2−メチルベンゼンメタンアミン、およびフェニルオキシランからなる群より選択され得る。
【0025】
光結合媒体の水と比べた密度は、1.05〜1.3、1.1〜1.25、および1.1〜1.2からなる群より選択される範囲にあってよい。
【0026】
一つの実施の形態において、第2の薄膜金属電極は、ビームを透過させるための少なくとも一つの開口を含んでもよい。第2の薄膜金属電極は、複数の開口を含んでもよい。開口は、複数のビームを通過させるとともに、該複数のビームを基板と第1の薄膜金属電極との界面で反射可能とする程に十分な大きさを有していてよい。
【0027】
重量の検知は、クォーツクリスタルマイクロバランス検知、表面音波検知、及びバルク音波検知からなる群より選択され得る。
【0028】
一つの実施の形態において、ATRカプラーは、略半球形、略矩形、略正方形、および略円筒形からなる群より選択される形状を有するプリズムであり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、最良の形態を含む本発明の限定されない実施例および比較例が、添付図面を参照して更に説明される。
【0030】
図1A、図1Bおよび1Bは、SPRおよびクォーツクリスタルマイクロバランス(QCM)重量検知を組み合わせたものを使用することが可能なセンサシステムに使用可能な、矢印30によって総合的に示されるセンサチップ配置を開示している。
【0031】
センサチップ30は、クォーツ基板1の形態の透明圧電基板を含む。電極2の形態の第1の薄膜金属電極が基板1の上に設けられている。電極3の形態の第2の薄膜金属電極が基板1の反対側に設けられている。電極3は、以下に更に説明される、基板1へレーザ光を透過させるための開口32を具備している。
【0032】
図1に示されるように、電極3は、クォーツ基板1の右縁部を包み込む金属鋼帯(ストリップ)4に接続されている。間隙(ギャップ)2Aが基板1に設けられ、使用時に試料を基板1に接触させる。金属ストリップ4は、電極3の片側から電気的に接続されるのを可能とする。電極(2および3)およびクォーツ基板1は、QCM検知が実行されるのを可能とする。図1Cに示されるように、電極3の中心における開口32(または「窓」)は、ある特定の入射角において、ビームが全反射し、検知電極2の表面において表面プラズモン共鳴(SPR)が励起されるように、入射光のビームにクォーツ基板1を通過させることによって、SPR分析が実行されることを可能する。ここで、開口32が、光を基板1上に直接通過させることが理解されよう。
【0033】
図2は、SPR解析のための減衰全反射(ATR)プリズムカプラーを示す。図2の配置は、「クレッチェマン(Kretschmann)配置」と称され、ベースに検知ディスク16が取り付けられたプリズム18を含み、検知ディスク16は、プリズム18と同じ屈折率を有する材料から作られている。検知ディスクとプリズム18との間の空隙は、光結合のための一定量の屈折率整合流体17によって充填される。クォーツ基板1とプリズム18との間の屈折率整合流体17は、特に、屈折作用により生成されたSPR信号に伴って発生するノイズを削減することによって、SPRの励起時に生成されるSPR信号の品質を向上させるために使用される。とりわけ、クォーツ基板1からプリズム18までの距離を5nm〜15nmに増加させて空隙を形成すると、SPR信号の振動が一段と大きくなり、これによって、信号の品質も一段と向上する。
【0034】
検知ディスクの上面は、薄膜金属層19(例えば、金)によって塗布されている。この層19は、使用時に表面プラズモンを励起する導電性表面層となる。
【0035】
図3は、SPRおよびQCM検知を実行するためのセンサシステム36を示す断面図である。本実施の形態において、SPRおよびQCM検知が同時に実行される。図1のセンサチップ30は、「クレッチェマン配置」のプリズム11の形態の減衰全反射(ATR)カプラーと、試料8を収容するためのチャンバを含むセル5の形態の試料収容セルと、の間に固定された状態で示されている。セル5は、電極2に対して曝されている。セル5はまた、試料注入導管8aおよび試料流出導管8bを含み、それぞれ、試料を注入または流出させる。本実施の形態において、試料は、液体分析試料8である。しかしながら、他の実施の形態において、試料は気体であってもよい。
【0036】
センサチップ30は、二つのOリング(7、9)によって、プリズム11およびセル5に固定されている。
【0037】
プリズム11と電極3の間には、キャビティが設けられている。このキャビティには、屈折率整合液10の形態の光結合媒体が充填されている。
【0038】
光は、レーザ14の形態をとり、光源からプリズムアセンブリと向けられる。本実施の形態において、レーザ14の出力波長の範囲は、500nm〜900nmである。入射ビーム15は、屈折率整合液10およびクォーツ基板1を通過し、クォーツ基板1と電極3との界面で屈折する。反射ビーム12は、検出器13に向けて、再びプリズム11を通過する。
【0039】
ある条件において、光は、クォーツ基板1と電極3の界面で全反射し、これによってSPRを生じる。従って、分析液8が検知電極3に曝されている間、該分析液8の吸着を観察することができる。
【0040】
また、センサシステム36は、QCM解析の実行に使用される振動回路6および周波数カウンタ7を含む。AC(交流)電源の形態の電界(図示なし)が、回路6から電極(2、3)へとクォーツ基板1を覆って印加され、せん断モードの振動を誘導する。これによって、QCM信号が得られるように、分析液8の吸着が引き起こされる。ここで、SPR信号およびQCM信号は、同時に、または、非同期的に、得られ得ることを理解されたい。
【0041】
図4A〜図4Dは、センサチップ30に光学的に結合された四つの異なるATR(減衰全反射)結合型のSPR配置を示す。図4(a)には、ATR結合型のSPR技術を用いた、SPRとQCMの組合せが示されている。この配置は、扇形(例えば、半円筒形のレンズ)透明ブロック20のプリズムを用いてビームの焦点を合わせ、屈折率整合液10を介して、電極3を照射する。ATRに使用される扇形のプリズムについては、欧州特許A1−0305109に全て開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0042】
図4Bには、台形の透明ブロック21を用いてビームの焦点を合わせ、屈折率整合液10を介して、電極3照射する配置が示されている。図4Cには、矩形の透明ブロック22を用いてビームの焦点を合わせ、屈折率整合液10を介して、電極3を照射する配置が示されている。図4Dには、円筒形の透明ブロック23を用いてビームの焦点を合わせ、屈折率整合液10を介して、電極3を照射する配置が示されている。
【0043】
図5Aは、コンパクトであり、浅厚のキャビティ15を設けた支持スライド24に連結されたセンサチップ30’を含む、ディスク配置40を示す断面図である。本実施の形態において、センサチップ30’は、センサチップ30に機能が類似している。このため、同様の要素には、後ろにプライム符号(’)がついた同様の参照番号が付されている。しかしながら、センサチップ30とセンサチップ30’には多少の構造上の違いがあることが認識されるであろう。例えば、本実施の形態は、傾斜をつけられた浅深のキャビティ15a’を示す。傾斜角15b’を設けることによって、キャビティの表面をセンサディスクに平行とならないようにされており、このため、圧縮波共鳴によって生じる応答が最小化され、QCM性能が高められる。
【0044】
本実施の形態では、スライド24’が、基板1とプリズム11’との間に配置されている。スライド24’は、波長632.8nm、屈折率1.54のガラス製である。浅厚のキャビティ15’には、低粘度かつ低密度の屈折率整合液10’が充填されている。センサチップ30は、スライド24’にぴったりとくっつき、良好な封入が確実とされる。
【0045】
図5Cは、上記図4Aの実施の形態にて示した半球形のプリズム11’に取り付けられたディスク配置40’を示す。センサチップ36’は、コンパクトなので、オランダ、ユトレヒト、エコケミ社(Eco Chemie B.V.)製の「オートラブ(AutoLab)(登録商標)ESPR(elecrochemical surface plasmon resonance:電子化学表面プラズモン共鳴)」などの既存の市販されているSPR装置に有利に組み込むことができる。
【0046】
本実施の形態において、支持スライド24’は、厚さが0.82mm、直径が25.4mmであり、BK7のガラスから作られている。スライド24のキャビティ15は、電極3’の表面に対して、傾斜角25をなして、配置されている。これは、液深が〜1mmと低いときに顕著となる圧縮波共鳴によって生じる応答を最小化するためである(図5のコンパクトなセンサディスク配置の場合)。
【0047】
キャビティ15a’は、スチレン溶液の形態の屈折率整合液によって充填され、センサチップ30’によって被覆される。本実施の形態において、センサチップ30’は、厚さ0.276mm、直径20mmを有する、6MHzのSPRとQCMセンサディスクとを組み合わせたものである。電極(2’、3’)の直径は10mmであり、電極(3’)は、内径5mmの開口32’を有する。
【0048】
ディスク30’の縁部は、接着剤などのシーラント(封入剤)によって封入される。ミネソタ採鉱&製造会社(Minnesota Mining & Manufacturing Company)(米国、ミネソタ州、メープルウッド)製の「3M(登録商標)オートガラス接着剤(Auto Glass Adhesive)」は、好適な接着剤であるといえる。
【0049】
ディスク配置40’はコンパクトであり、「Autolab(オートラブ)(登録商標)SPRマシン」などの既存のSPR測定器に使用することが可能である。
【0050】
ディスク配置40’は、屈折率整合オイル17’の薄膜を塗布することによってプリズム11’上に取り付けてもよい。ディスク配置40’は、生物学的、生化学的、または化学的試料の測定するために使用可能である点から、バイオセンサとして使用することができる。
【0051】
使用時、SPRおよびQCMは、当該技術において知られているように、両電極(2’、3’)を振動器(例えば、図2に示される振動器6)および周波数カウンタ(例えば、図2に示される周波数カウンタ7)に接続してQCMを実行することによって、同時に測定することができる。QCMの方法の例としては、本明細書中にその全体が参照によって組み込まれる、米国特許第6,156,578号と米国特許第5,201,215号に開示されているものが挙げられる。同時に、レーザは、電極3’の開口32’を通って入射し、SPRを生じさせる。
【0052】
図6は、コンパクトかつ使い捨て可能なディスク配置50’’を示す断面図である。ディスク配置50’’は、センサチップ30’’を有する。本実施の形態においては、センサチップ30’’は、センサチップ30と機能的に類似しており、このため、同様の要素には、後ろに2個のプライム符号(’)がついた同様の参照番号が付されている。但し、センサチップ30とセンサチップ30’’には、構造に多少の違いがあることが認識されよう。例えば、本実施の形態においては、プリズム26’’に浅厚のキャビティ27’’が設けられている。
【0053】
プリズム26’’は、クォーツ基板1’’と整合するように約1.54の屈折率を有する、成形されたプラスチックプリズム26’’である。浅厚のキャビティ27’’は、半球形のプリズム26’’の基部の中心部分に設けられている。上述されたセンサチップ40’と同様に、キャビティ27’’は、低粘度かつ低密度の液体である屈折率整合液10’’によって充填され、センサチップ50’’によって被覆されている。
【0054】
光学的整合液10’’は、キャビティから漏洩または気化しないように、好適な封入剤によってキャビティ27’’内に封入される。
【0055】
図7は、センサチップ30’’’を含む分析デバイス60’’’の他の実施の形態を示す。本実施の形態において、センサチップ30’’’は、センサチップ30と機能的に同様であり、このため、同様の要素には、後ろに3個のプライム符号(’)がついた同様の参照番号が付されている。但し、本実施の形態では、導波路28’’’が含まれている。
【0056】
センサチップ30’’’は、プリズム11’’’の片側と、分析サンプル8’’’を満たしたセル5’’’の形態の試料収容セルとに取り付けられ、上記の図3を参照して述べられたシステム36と同様に作用する。
【0057】
このように、ディスク配置30’’’は、SPRとQCMとを組み合わせた解析技術に用いることが可能である。図7に示されているように、本実施の形態では、好適な導波路28が検知電極2’’’の上に塗布されている。分析液8’’’は、導波路26’’’に曝されており、これによってATR誘導導波路型のSPR分析が行われる。導波路は、剛性固体膜の複数の層から形成されている。本実施の形態において、導波路の全体的な厚さは、1マイクロメートルから2マイクロメートルの範囲である。発明者の経験上、固体膜の場合、10マイクロメートルまでのQCMが検出可能である。
【0058】
図8は、SPRとQCMを組み合わせたセンサチップ30^を示す斜視図である。本実施の形態において、センサチップ30^は、機能的にはセンサチップ30と同様であり、このため、同様の要素には、後ろに符号(^)がついた同様の参照番号が付されている。センサチップ30^は、開口32^の寸法が、他に記載された実施の形態における他の電極(3、3’、3’’、および3’’’)の開口32よりも大きいために、SPR測定の複数の流路(チャネル)を受容することが可能である。開口32^は、複数のビームが通過するのに十分な大きさであり、これによって、複数流路(マルチチャネル)のSPR測定の実行が可能となり、電極2^とクォーツクリスタル基板1^との界面についてより詳しい情報を得ることができる。
【0059】
図9Aは、センサチップ30^^の他の実施の形態を示す断面図である。本実施の形態において、センサチップ30^^はセンサチップ30と機能的には同様であり、このため、同様の要素には、後ろに二つの(^^)符号がついた同様の参照番号が付される。ディスク配置30^^は、クォーツ基板1^^に設けられた金属電極の配列を含む。クォーツ基板1^^は、電極(2^^、3^^)の配列を含む。
【0060】
図9Bは、複数の電極2^^が設けられたクォーツ基板1^^の上面を示す平面図である。図9Cは、クォーツ基板1^^の底面に内部に開口32^^を設けた電極3^^の配列を示す平面図である。
【0061】
本明細書中に開示されているSPRとQCMとを組み合わせたセンサチップ(30、30’、30’’、30’’’、30^、30^^)は、プリズム、焦点レンズ、または導波路に結合されたATRであってもよいことが理解されよう。センサチップ(30、30’、30’’、30’’’、30^、30^^)は、単一または複数の入射ビームを受容することが可能であるため、単一モードであっても複数モードであってもよい。
【0062】
本明細書中において使用され、開示されているセンサは、液体と気体の両方からの吸着を検出するために使用され得る。本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、本明細書中に記載されている本発明に対して、さまざまな変形や変更を行うことが可能であることを当業者は容易に理解するであろう。従って、本発明の実施の形態は、全ての面において本発明の例示を目的とするものであって、本発明を限定することを意図するものではない。
センサチップアセンブリの作製
【0063】
開示されているセンサチップアセンブリは、以下のようにして作製することができる。
【0064】
クォーツクリスタル基板は、例えば、アメリカ合衆国、サンタフェスプリング、マックステック社(Maxtec, Inc.)製のものが市販されている。クォーツクリスタル基板は、平面の円盤状である。クォーツクリスタル基板は、予めカットされたもの、あるいは、必要な寸法にカットしたものを用いることができる。
【0065】
約50nmの金属が平面状のクリスタル基板の第1の面に蒸着され、第1の薄膜金属電極(2、2’、2’’、2’’’、2^、2^^)を形成する。電極の反対側の第2の反対側の面に50nmの金属をさらに蒸着し、第2の薄膜金属電極(3、3’、3’’、3’’’、3^、3^^)が形成される前に、円形のパッチを配置してもよい。次に、パッチが除去され、開口(32、32’、32’’、32’’’、32^、32^^)が形成される。金属の層(4、4’、4’’、4’’’、4^、4^^)は、基板1の片側に蒸着され、電極(2、2’、2’’、2’’’、2^、2^^)と電極(3、3’、3’’、3’’’、3^、3^^)とを互いに接続させる。
【0066】
クレッチェマンのプリズム(11、11’、11’’、11’’’、11^、11^^)は、エルマオプティック社(Hellma Optik)GMBH(ドイツ、イエナ)から市販されている。クレッチェマンプリズム(11、11’、11’’、11’’’、11^、11^^)は、プリズムホルダーによって、電極(3、3’、3’’、3’’’、3^、3^^)に結合される。光結合媒体(10、10’、10’’、10’’’、10^、10^^)がクレッチェマンプリズム(11、11’、11’’、11’’’、11^、11^^)と電極(3、3’、3’’、3’’’、3^、3^^)の間に注入され、例えば、O−リングによって封入される。
屈折率整合液
【0067】
液体試料から生成されたQCM信号の振動品質は、主に液体の粘度および密度によって決まる。QCMの吸着解析用として知られているセンサにおいては、基板の一面が試料液に曝され、他面が空気に曝される。多くの生物学的吸着解析において、例えば食塩加リン酸緩衝液(PBS)はよく使用される媒体であって、この場合のQCM品質因子は、約25,000である(即ち、例えば、アメリカ合衆国、オクラホマシティ、インターナショナルクリスタルマニュファクチャリング会社(International Crystal Manufacturing Co., Inc.)製の10MHzのQCMの場合)。この振動品質は、非常に安定しており、周波数測定の精度も高い。同じ10MHzのQCMにおいて、一つの面がPBSに曝されて、他の面が屈折率整合オイルに曝された場合、Qは、500未満へとひどく低下する。QCM品質因子が5倍下がるということは、周波数のスペクトルが5倍に広がることを意味し、不可能とは言わないまでも、安定した振動及び高精度の周波数の測定が困難となる。さらに、QCMが高粘度の屈折率整合オイルを介してプリズム上に配置された場合は、大幅な減衰の影響により、振動の検知がほとんど不可能となる。
【0068】
本実施の形態では、オイルではなく低粘度の液体が屈折率整合流体として使用される。表1は、本開示の実施の形態において光結合のために使用可能な、いくつかの有機溶剤の材料特性を示す。表1には、異なる暴露条件において測定されたQCM品質因子(10MHz ICM QCM)も含まれる。
【0069】
【表1】
表中、「PBS」は食塩加リン酸緩衝液であり、「IMO」は屈折率整合オイルである。
【実施例1】
【0070】
実施例1では、SPRおよびQCM測定値の生成は、図3を参照して述べたセンサシステムの配置と同じ配置を用いて行われた。従って、以下では、図3と同じ参照番号を用いて図3を参照することによって、本実施例のセンサシステム配置が説明される。
【0071】
基板として、金が塗布されたクォーツ円盤を用いて、SPRおよびQCMの同時測定値が得られた。ATR SPRは、クォーツ基板1の第1の面上の電極2から生成された。QCM振動は、電極(2、3)を介して、クォーツ基板1にAC電圧を印加することによって、駆動された。ATR SPRの励起の際には、屈折率整合液としての屈折率整合トルエン(10)が、O−リング(7)間で封入されている。トルエンは、非導電性であり、水と比較して低粘度かつ低密度である。屈折率整合トルエンは、表面プラズモン共鳴の励起に対して、受動型光結合界面として作用する。
【0072】
本実施例において、基板1は、厚さ0.276mmおよび直径25.4mmを有する6MHzのATカットのクォーツ板である。5nmのCr(クロム)接着層を有する45nmの金からなる層がクォーツ基板1に蒸着され、薄膜電極2を形成した。6.35mmの内径の開口を有する金電極層がクォーツ基板1の裏面に蒸着され、薄膜電極3を形成した。
【0073】
プリズム11は、BK7のガラスで作られ、電極3に隣接して配置されており、プリズム11と電極3の間で、屈折率整合トルエン(10)がO−リング7によって封入されている。
【0074】
アメリカ合衆国、カリフォルニア州、カルズバッドのメルズグリオット(Melles Griot)社製のp−偏光のヘリウム(He)−ネオン(Ne)レーザ(14)(632.8nm)が、光源として使用された。レーザ14からのビーム15は、プリズム11に入射する前に、ロックイン(閉込め)増幅器に結合されて、機械的に砕断された。金電極2とクォーツ基板1の界面で反射するビームの強度が、光ダイオード検出器によって検出され、「角度走査」測定に対する入射角の関数として記録された。
【0075】
図10(a)は、屈折率整合トルエン(10)を用いて得られた角度走査曲線を示す。図10aの曲線は、43.5度のSPR角度において、大きな強度損失を示す。入射角に対する滑らかな反射強度の変化は、センサシステム36が屈折率整合トルエンと良好な光結合を達成することを示している。
【実施例2】
【0076】
実施例2では、図5のセンサチップ30’と同じものが、オランダ、ユトレヒト、エコケミ社(Eco Chemie B.V.)から販売されている「オートラブエスピリット(AUTOLAB ESPIRIT)(登録商標)」測定器において使用された。従って、以下、本実施例におけるセンサチップ30’は、図5と同様の参照番号を用い、図5を参照して説明される。
【0077】
本実施例において、厚さ0.166mmの10MHzのクォーツ基板1’が、支持スライド24’を含む半球形のプリズム11’に配置されている。屈折率整合液10’が支持スライド24’のキャビティ15a'に注入された。
【0078】
図10bは、Autolab SPR(オートラブ)SPR測定器によって測定された、センサチップより得られた角度走査曲線を示す。Autolab SPR測定器は、波長670nmのレーザダイオードおよび振動ミラーを使用し、p−偏光の基板への入射角を調整する。SPRを生成する方法については、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、ワード(Ward)他著、生化学分析(2000年、285版、179p)に開示されている。
【0079】
トルエン、スチレン、ベンジルアルコールの、3つの異なる屈折率整合液10’をそれぞれキャビティ15a’へ注入することによって、3つの異なるSPR信号が生成された。図10bには、この3つの屈折率整合液のSPRスペクトルが示されている。従って、トルエン、スチレン、及びベンジルアルコールが、クォーツ基板/BK7のガラスプリズム配置を有するセンサチップ内の屈折率整合液となる見込みの高い溶液であることがわかる。これは、これら3つの液体の全てが、それぞれの共鳴周波数における反射最小点を明確に示しているためである。
【0080】
図10cは、Autolab SPRによって測定されたSPR安定度を示す。標準のAutolabシステムに対して、30分間にわたる基準SPR角度の安定度は、約±5m°であった。屈折率整合液に有機溶剤を用いた含むセンサチップ30’を用いた場合、基準安定度は、約±2m°であった。これは、大半の界面解析にとって好適に受け入れられ得る。
【実施例3】
【0081】
本実施例においては、クォーツ基板の一面が水性溶液に曝され、クォーツ基板の他の面が屈折率整合液に曝されたときのQCM振動挙動(振動品質及び安定度)を調べた。
【0082】
アメリカ合衆国、オクラホマ州、オクラホマシティのインターナショナルクリスタルマニュファクチャラー社(International Crystal Manufacturers Inc.)製の10MHz、AT−カット型、厚さ0.166mm、および直径13.66mmのクォーツ基板を用いて、ウシ血清アルブミン(BSA)の吸着度のQCMによる測定が行われた。クォーツの両面が、厚さ100nmの金電極で蒸着され、電極の直径は5mmであった。いずれの電極にも開口は含まれていなかった。
【0083】
液体中における原位置での周波数測定を行うにあたり、QCMクリスタルは、ネオプレン製のO−リングのシールによって二つのプレキシグラス(plexiglas)ブロックに固定された。クォーツの上面は、開口した液体セルの底面を形成し、下面は、閉じられた液体セルの底面を形成した。開口したセルは、1mLまでの塗布液を受容可能とし、閉じられた液体セルにおいて、傾斜角度を設けた容積は、約70μLだった。このセットアップでは、クリスタルの上面は、PBS(食塩加リン酸)バッファに曝されるが、下面は、空気あるいは非導電性、低粘度、および低密度の有機溶媒に曝される。周波数の応答は、アメリカ合衆国、ルイジアナ州、メタリーのユニバーサルセンサ社(Universal Sensors, Inc.)製のPzツールハードウェア及びソフトウェアによって測定された。インピーダンス解析は、同じセットアップが、アメリカ合衆国、アリゾナ州、フェニックス、サンダースアンドアソシエーツ社(Saunders & Associates,Inc.)製の「S&Aの250Bのネットワークアナライザ(Network Analizer」に接続され、QCM品質因子を含む周波数スペクトル及びインピーダンスパラメータを記録した。ネットワークアナライザの周波数安定度は、4Hzであった。
【0084】
図11は、ネットワークアナライザによって測定されるPBS/空気(図11a)やPBS/トルエン(図11b)等の暴露に対してのQCMの周波数および動的抵抗の同時応答を示す。下面が空気に曝されたクリスタルは、ノイズレベルが4Hzであり、QCM品質因子が2.5k(図11a)であった。一方、下面がトルエンに曝されたクリスタルは、ノイズレベルが10Hzであり、QCM品質因子が1.35k(図11b)であった。Pzツール測定器を用いた場合のノイズレベルは、それぞれ、1Hzおよび3Hzであった。
【実施例4】
【0085】
実施例4では、実施例3において説明されたものと同じセンサシステム配置を用いて、SPR測定値が生成された。
【0086】
実施例4において、BSA吸着反応について、センサチップ36の径依存性(radial dependent)QCM質量感度を調べた。本実施例において、BSAの吸着実験は、この暴露条件によるQCMが、実際の界面解析に好適に適用することができることを示している。原位置での蛋白質の固定化を実行するために、まず、洗浄直後のQCMクリスタルを10mMの11−メルカプトウンデカン酸(MUA)溶液を用いて12〜24時間かけて処理する。EDC(N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド)/NHS(N-ヒドロキシコハク酸イミド)化学を用いて、表面のCOOH基を活性化させた後、センサは共有結合によるBSAの付着が可能な状態となる。
【0087】
厚さ0.166mm、直径13.66mmを有する10MHz、AT−カット型のクォーツ基板1を使用した。45nmの金および5nmのクロムが基板に蒸着され、電極(2、3)を形成した。電極3は、内径3.5mmを有する開口32を含んでいた。本明細書中にその全体が参照により組み込まれている、P.J.カンプソンおよびM.P.シーア著の「測定科学技術」(1990年、第1版、544〜555pp)(P.J.Cumpson and M.P. Seah, Meas. Sci. Technol.)に記載されているドットインク較正(Dot−ink Calibration)法を用いて、両面に電極2を有するQCM(P/P電極のQCM)と、電極(2,3)を有するQCM(P/R電極のQCM)の径依存性質量感度分布を調べた。(注記:P/Pは、プレート/プレートを意味し、プレート電極は開口を含まない中実電極である。P/Rは、プレート/リングを意味し、リング電極は開口を含む電極である。)これらのQCMを用いて、BSA吸着反応を観察した。BSA吸着観察のための実験装置の構造は、実施例3に記載されている構造と同じであった。11−メルカプトウンデカン酸(MUA)を用いて電極2が前処理された後、QCMは、プレキシグラスブロックの液体セル内に固定され、Network Analyzer(ネットワークアナライザ)に接続された。QCMの電極2は、PBSバッファに曝され、BSA塗布前に周波数基準が較正された。
【0088】
図12は、活性化されたQCMの、上部電極のPBSバッファからのBSA吸着に対する周波数応答を示す。矢印70によって示されるPBS/空気、および矢印72によって示されるPBS/トルエンの両方において、BSA溶液(PBSに対して5mg/mL)の塗布によって、飽和状態における約150Hzの安定した周波数の低下が生じる。これによって、経時的に、界面上の蛋白質分子の蓄積が示される。下面がトルエンに曝されたシステムは、下面が空気に曝されたシステムに比べてノイズレベルが高いが、BSA吸着測定において十分な安定度と感度が達成されていることが、図12よりわかる。
【0089】
QCMを適切な有機溶媒に暴露することは、界面解析における振動品質に影響を与えないと結論することが可能である。
【0090】
図13は、これらのQCMへの径依存性質量感度を示す。P/P電極のベル状の感度分布は、せん断モードの発振において、電極領域の中心部でより大きなエネルギーが捕捉されることを反映している。P/R電極のQCMは、複雑な感度分布および全体的に下降した質量感度を有するが、実験によれば、これらのQCMも適正な周波数応答を有する吸着反応の観察に使用可能であることが示されている。
【0091】
図14は、矢印76によって示されるP/P、および矢印74によって示されるP/Rからなる電極を有するQCMのBSA吸着反応に対する周波数応答を示す。飽和周波数の低下は、P/PおよびP/RのQCM電極のそれぞれに対して、140Hz/130Hz(洗浄前/洗浄後)、および125Hz/110Hz(洗浄前/洗浄後)である。信号が低下(約10%)しているものの、周波数応答は同様の傾向を示し、界面結合処理Bを良好に反映している。
【実施例5】
【0092】
実施例5では、SPR及びQCMの測定値は、図3に記載したものと同じセンサシステムの配置を用いて得られた。従って、本実施例におけるセンサシステム配置は、図3を参照し、図3と同様の参照番号を用いて説明される。
【0093】
基板として、金が塗布されたクォーツディスクを用いて、SPRおよびQCMの同時測定値が得られた。ATR(減衰全反射)SPR(表面プラズモン共鳴)は、クォーツ基板1の第1の面上の電極2から生成された。QCM発振は、例えば、アメリカ合衆国、サンタフェスプリング、マックステック社(Maxtec, Inc.)製のRQCM測定器を、電極(2、3)を介して、クォーツ基板1に用いることによって、駆動された。QCMの周波数応答は、RQCM測定器によっても記録された。
【0094】
ATR SPRを励起するために、屈折率整合液としての屈折率整合トルエン(10)がO−リング(7)間で封入される。トルエンは、非導電性であり、水と比較して低粘度かつ低密度である。屈折率整合トルエンは、表面プラズモン共鳴を励起させる受動的光結合界面として作用する。
【0095】
本実施例において、基板1は、厚さ0.276mm、直径25.4mmの、6MHz、ATカット型のクォーツプレートである。5nmのCr(クロム)接着層を有する45nmの金からなる層がクォーツ基板1に蒸着され、薄膜電極2を形成した。6.35mmの内径の開口を有する金電極層がクォーツ基板1の逆側の面に蒸着され、薄膜電極3を形成した。
【0096】
プリズム11は、電極3に隣接して配置され、屈折率整合トルエン(10)がO−リング7によってプリズム11と電極3の間に封入された。
【0097】
アメリカ合衆国、カリフォルニア州、カルズバッドのメルズグリオット(Melles Griot)社製のp−偏光ヘリウム(He)−ネオン(Ne)レーザ(14)(632.8nm)が、光源として使用された。レーザ14からのビーム15は、プリズム11に入射する前に、ロックイン(閉込め)増幅器と結合して、機械的に砕断された。金電極2とクォーツ基板1の界面で反射するビームの強度が、光ダイオード検出器によって検出され、「反応速度」測定のための時間関数として記録された。
【0098】
図15は、矢印78によって示される、同時に記録されたQCM周波数によってプローブされたウシ血清アルブミン(BSA)の吸着、および矢印80によって示されるSPR反射率を示す。基準周波数と反射率は、表面1の電極2が、食塩加リン酸緩衝液(PBS)バッファに曝されている時に記録された。
【0099】
安定化後、PBSバッファに代えて、BSA(PBS中、5gm/mL)が注入された。吸着の終了時に、セルがPBSバッファによって洗浄され、不安定な吸着が除去された。
【0100】
図15を参照すると、周波数および反射率はともに経時による金表面の蛋白質分子の堆積/脱着を示していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本開示の実施の形態によるセンサは、表面プラズモン共鳴(SPR)およびクォーツクリスタルマイクロバランス(QCM)の同時検知を行うバイオセンサ(生体感応装置)として使用することができる。実施の形態において、センサは、結合反応の原位置でのラベルフリーな分析に用いることができる。
【0102】
本開示の実施の形態によれば、二つの基本的に異なる測定技術を同時に用いることによって、界面現象をモニタすることが可能となる。組み合わされたデバイスによって得られる相補的なSPRおよびQCMの信号は、データ解析に内在するいくつかの前提条件の有効性を検証しつつ、検知技術の強みを利用することができる。
【0103】
本開示の実施の形態によるセンサにおいて、SPR共鳴は、プリズムを介して、レーザビームをセンサチップの裏面へ入射することに基づいているため、試験対象の溶液中に光を透過させる必要がない。特定の物質の感度領域は、減衰波の延出長さ、即ち、検知する表面側から液体媒体へ透過される電磁波の深さに制限される。このため、特に結合した分析分子に関連する応答に対する非結合の試料分子からの影響は最小とされる。更に、上記したように、ATRプリズムカプラーに基づいたSPRデバイスの感度は、格子カプラーを用いたSPRセンサに比べて極めて高い。
【0104】
本開示の実施の形態によるセンサは、クォーツ基板に結合するための格子構造に依存しないことが理解されよう。これにより、本開示の実施の形態によるSPR測定は、試液を通るビームの入射に依存しない。従って、本開示の実施の形態においては、解析を受ける試料が光学的に透明である必要はない。
【0105】
本開示の実施の形態によるセンサは、格子カプラーよりも低い信号/ノイズ比を有するSPRおよびQCMの信号を生成する。
【0106】
電極(30、30’、30’’、30’’’、30^、30^^)の開口を利用する本開示の実施の形態によるセンサは、光を基板に直接通過させる。これにより、本開示の実施の形態によるセンサは、必ずしも、レーザ光を透過させるために透明のインジウム酸化錫(ITO)電極を使用することを必要としない。光の波長を632.8nmとしてITO膜を用いた場合、クォーツクリスタルおよびスパッタリング蒸着されたITO薄膜のそれぞれの屈折率は、1.54および1.95である。ITO膜は極薄(約100nm)であるが、屈折率の不整合によって生じる屈折は顕著であり、これによって、信号/ノイズ比の低下がもたらされる。
【0107】
本開示の一つの実施の形態によれば、クォーツ基板は、一つの面に面状の金電極が塗布され、他の面に開口を含む電極が塗布される。窓が設けられた電極からレーザビームがクォーツ基板に入射し、表面プラズモン共鳴が励起される面状の金電極に到達する。
【0108】
以上の開示内容を読んでいただけた後には、本発明の精神及び範囲を逸脱しない限りにおいて、本発明の他のさまざまな変更や適応が実行可能であることが当業者に明確となるであろう。更に、このような変更や適応は、全て、添付クレームの請求の範囲内において行われることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1A】QCMおよびSPRを同時に組み合わせることが可能なセンサチップを示す断面図である。
【図1B】図1Aのセンサチップを示す平面図である。
【図1C】図1Aのセンサチップを示す底面図である。
【図2】SPRを解析するためのクレッチェマン配置によるATR光学的結合の構成を示す略図である。
【図3】図1のセンサチップを利用して、QCMおよびSPRの解析技術を実行するためのセンサ装置を示す断面図である。
【図4A】ATR光学的結合によるSPR配置を示す断面図である。
【図4B】ATR光学的結合によるSPR配置を示す断面図である。
【図4C】ATR光学的結合によるSPR配置を示す断面図である。
【図4D】ATR光学的結合によるSPR配置を示す断面図である。
【図5A】QCMおよびSPRを同時に組み合わせることが可能であるセンサチップの他の実施の形態を示す断面図である。
【図5B】図5Aのセンサチップを示す平面図である。
【図5C】図5Aの構成のセンサチップを用いた、クレッチェマン配置のATR光学的結合による構成の他の実施の形態を示す断面図である。
【図6A】図5Aのセンサチップ構成を用いた、使い捨て可能なクレッチェマン配置のATR光学的結合による構成の他の実施の形態を示す断面図である。
【図6B】図6Aのセンサチップおよびクレッチェマン配置のATR光学的結合による構成を示す平面図である。
【図7】図1のセンサチップを用いた、QCMおよびSPR解析技術を実行するためのセンサ装置の他の実施の形態を示す断面図である。
【図8】QCMおよびSPR解析の複数モードの測定を実行するためのセンサ装置の他の実施の形態を示す断面図である。
【図9A】クォーツ基板に設けられた金属電極の配列を開示する他の実施の形態を示す断面図である。
【図9B】クォーツ基板の上面に設けられた金属電極の配列を示す平面図である。
【図9C】開口を内部に有し、クォーツ基板の底面に設けられている金属電極の配列を示す底面図である。
【図10A】屈折率整合のためにトルエンを用いた場合に、図1のセンサチップから得られた角度走査曲線を示す図である。
【図10b】屈折率整合のために、トルエン、スチレン、およびベンジルアルコールのそれぞれを用いた場合に、図1のセンサチップから得られた3つの角走査曲線を示す図である。
【図10c】Autolab(オートラブ)SPR測定器によって測定されたSPR安定度を示す図である。
【図11A】クォーツクリスタルの下面が空気に曝された時のQCMの周波数及び動抵抗の同時応答を示すグラフである。
【図11B】クォーツクリスタルの下面がトルエンに曝された時のQCMの周波数及び動抵抗の同時応答を示すグラフである。
【図12】上部電極のPBSバッファからのBSA吸着に対する活性化されたQCMの周波数応答を示すグラフである。
【図13】QCMに対する径依存性質量感度を示すグラフである。
【図14】P/PおよびP/R電極のQCM周波数のBSA吸着反応に対する反応を示すグラフである。
【図15】図3のセンサ装置のSPRとQCMの同時信号の周波数応答を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知することが可能であるセンサに使用されるセンサチップアセンブリであって、
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、
前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極と、
前記基板の前記第2の表面に、ビームが前記基板の前記第2の表面を透過して、前記第1の薄膜金属電極から反射可能となるように設けられた第2の薄膜金属電極と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接して配置された減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含む、
センサチップアセンブリ。
【請求項2】
前記ATRカプラーと前記基板の屈折率を実質的に整合させるように、前記ATRカプラーと前記第2の薄膜金属電極の間に配置された光結合媒体を含む、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項3】
前記第2の薄膜金属電極が、ビームを通過させる開口を含む、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項4】
前記第2の薄膜金属電極の開口が、複数のビームを通過させるのに十分な大きさを有する、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項5】
複数の第1もしくは第2の薄膜金属電極、またはその両方の薄膜金属電極が、前記基板に配置されている、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極が互いに電気的に結合されている、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項7】
前記光結合媒体の屈折率が、1.50〜1.60、1.51〜1.59、1.52〜1.58、1.52〜1.57、1.52〜1.56、1.52〜1.55、および1.53〜1.55からなる群より選択される範囲にある、請求項2に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項8】
前記ATRカプラーと前記第2の薄膜金属電極との間に配置される透明ブロックを含み、該透明ブロックが、前記光結合媒体をその中に入れるための空洞(キャビティ)を有する、請求項2に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項9】
前記ATRカプラーはクレッチェマン配置におけるプリズムである、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項10】
前記プリズムが、略半球形、略矩形、略正方形、及び略円筒形からなる群より選択される形状を有する、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項11】
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、
前記基板の前記第1の表面に設けられるとともに試料が戴置される第1の薄膜金属電極、および前記基板の前記第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極であって、両電極が、前記基板を共鳴させるべく、一つ以上の選択された周波数で電界を発振させる発振回路に結合可能である、前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接して配置され、励起時に表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させるために、複数の入射角で、光源から前記第1の薄膜金属電極にかけて、ビームを光学的に結合可能な減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含むセンサ。
【請求項12】
前記ATRカプラーと前記第2の薄膜金属電極との間に、前記ATRカプラーと前記基板の屈折率を実質的に整合させるために配置された光結合媒体を更に含む、請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
センサを用いた表面プラズモン共鳴(SPR)および重量分析検知方法であって、
前記センサが、
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極および前記基板の前記第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極と、前記第2の薄膜金属電極に隣接する減衰全反射(ATR)カプラーとを含み、
前記方法が、
前記第1の薄膜金属電極上に試料を配置し、
前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極を介して、一つ以上の選択された周波数で電界を発振させ、これによって前記基板を共鳴させ、
前記第1の薄膜金属電極から、ビームを複数の入射角で反射させて、表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させる、
ことを含む、方法。
【請求項14】
前記ATRカプラーと前記基板の屈折率を実質的に整合させるために、前記ATRカプラーと前記第2の薄膜金属電極の間に光結合媒体を介在させることを更に含む、請求項13に記載の表面プラズモン共鳴(SPR)および重量分析検知方法。
【請求項15】
表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知することが可能であるセンサに使用されるアセンブリを作製する方法であって、
透明圧電基板の第1の表面に第1の薄膜金属電極を蒸着させ、
ビームが前記基板の前記第2の表面を透過して前記第1の薄膜金属電極から反射することが可能であるように、前記基板の前記第1の表面とは反対側の第2の表面に第2の薄膜金属電極を蒸着させ、
前記第2の薄膜金属電極に隣接するように減衰全反射(ATR)カプラーを取り付ける、
ことを含む方法。
【請求項16】
該減衰全反射カプラーと前記基板の屈折率を実質的に整合させるために、前記減衰全反射(ATR)カプラーと前記第2の薄膜金属電極との間に光結合媒体を封入することを更に含む、請求項15に記載のアセンブリ作製方法。
【請求項17】
生物学的、生化学的または化学的な試料について表面プラズモン共鳴(SPR)および重量の検知を実施することが可能なセンサシステムであって、
該センサシステムが、
前記試料を収容するためのチャンバを有するハウジングと、
第1の表面および該第1の表面に対向する第2の表面を有する透明圧電透明基板と、
クォーツ基板の第1の表面に配置されるとともに前記チャンバと流体連通している第1の薄膜金属電極と、
前記クォーツ基板の第2の表面に配置された第2の薄膜金属電極と、
前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極に結合されて、前記基板が共鳴周波数で共鳴するように、一つ以上の選択された周波数で、電界を発振させるための発振回路と、
前記共鳴周波数を検出して、重量信号を検出できるようにする共鳴周波数検出器と、
複数の入射角でビームを生成する光源と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接して配置され、内部反射ビームが表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させる入射角で前記第1の薄膜金属電極から反射されるように、前記光源に光学的に結合する減衰全反射(ATR)カプラーと、
前記内部反射ビームを受けるとともに、前記試料と前記第1の薄膜金属電極との間の反応に依存するSPRの性質を検出するための検出器と、
を含む、センサシステム。
【請求項18】
前記ATRカプラーと前記基板の屈折率を実質的に整合させるために、前記ATRカプラーと前記第2の薄膜金属電極との間に光結合媒体を更に含む、請求項17に記載のセンサシステム。
【請求項19】
前記第2の薄膜金属電極がビームを通過させる開口を含む、請求項17に記載のセンサシステム。
【請求項20】
複数の第1あるいは第2の薄膜金属電極または両薄膜金属電極が前記基板に配置される、請求項17に記載のセンサ。
【請求項21】
センサを用いて、試液の表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知するための方法であって、
前記センサが、
第1の表面および該第1の表面に対向する第2の表面を有する透明圧電基板と、前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極および前記基板の前記第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極と、前記第2の薄膜金属電極に隣接する減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含み、
前記方法が、
(a)前記試液を前記第1の薄膜金属電極上に設置し、
(b)前記第1の薄膜金属電極から光を反射させるために、前記ATRカプラーを介してビームを透過させ、
(c)前記反射光の強度を検出してSPRを検出し、
(d)前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極を介して電界を印加し、
(e)前記電界の共鳴周波数を測定する、
ことを含む、方法。
【請求項1】
表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知することが可能であるセンサに使用されるセンサチップアセンブリであって、
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、
前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極と、
前記基板の前記第2の表面に、ビームが前記基板の前記第2の表面を透過して、前記第1の薄膜金属電極から反射可能となるように設けられた第2の薄膜金属電極と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接して配置された減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含む、
センサチップアセンブリ。
【請求項2】
前記ATRカプラーと前記基板の屈折率を実質的に整合させるように、前記ATRカプラーと前記第2の薄膜金属電極の間に配置された光結合媒体を含む、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項3】
前記第2の薄膜金属電極が、ビームを通過させる開口を含む、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項4】
前記第2の薄膜金属電極の開口が、複数のビームを通過させるのに十分な大きさを有する、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項5】
複数の第1もしくは第2の薄膜金属電極、またはその両方の薄膜金属電極が、前記基板に配置されている、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極が互いに電気的に結合されている、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項7】
前記光結合媒体の屈折率が、1.50〜1.60、1.51〜1.59、1.52〜1.58、1.52〜1.57、1.52〜1.56、1.52〜1.55、および1.53〜1.55からなる群より選択される範囲にある、請求項2に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項8】
前記ATRカプラーと前記第2の薄膜金属電極との間に配置される透明ブロックを含み、該透明ブロックが、前記光結合媒体をその中に入れるための空洞(キャビティ)を有する、請求項2に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項9】
前記ATRカプラーはクレッチェマン配置におけるプリズムである、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項10】
前記プリズムが、略半球形、略矩形、略正方形、及び略円筒形からなる群より選択される形状を有する、請求項1に記載のセンサチップアセンブリ。
【請求項11】
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、
前記基板の前記第1の表面に設けられるとともに試料が戴置される第1の薄膜金属電極、および前記基板の前記第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極であって、両電極が、前記基板を共鳴させるべく、一つ以上の選択された周波数で電界を発振させる発振回路に結合可能である、前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接して配置され、励起時に表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させるために、複数の入射角で、光源から前記第1の薄膜金属電極にかけて、ビームを光学的に結合可能な減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含むセンサ。
【請求項12】
前記ATRカプラーと前記第2の薄膜金属電極との間に、前記ATRカプラーと前記基板の屈折率を実質的に整合させるために配置された光結合媒体を更に含む、請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
センサを用いた表面プラズモン共鳴(SPR)および重量分析検知方法であって、
前記センサが、
第1の表面および該第1の表面の反対側に設けられた第2の表面を有する透明圧電基板と、前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極および前記基板の前記第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極と、前記第2の薄膜金属電極に隣接する減衰全反射(ATR)カプラーとを含み、
前記方法が、
前記第1の薄膜金属電極上に試料を配置し、
前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極を介して、一つ以上の選択された周波数で電界を発振させ、これによって前記基板を共鳴させ、
前記第1の薄膜金属電極から、ビームを複数の入射角で反射させて、表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させる、
ことを含む、方法。
【請求項14】
前記ATRカプラーと前記基板の屈折率を実質的に整合させるために、前記ATRカプラーと前記第2の薄膜金属電極の間に光結合媒体を介在させることを更に含む、請求項13に記載の表面プラズモン共鳴(SPR)および重量分析検知方法。
【請求項15】
表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知することが可能であるセンサに使用されるアセンブリを作製する方法であって、
透明圧電基板の第1の表面に第1の薄膜金属電極を蒸着させ、
ビームが前記基板の前記第2の表面を透過して前記第1の薄膜金属電極から反射することが可能であるように、前記基板の前記第1の表面とは反対側の第2の表面に第2の薄膜金属電極を蒸着させ、
前記第2の薄膜金属電極に隣接するように減衰全反射(ATR)カプラーを取り付ける、
ことを含む方法。
【請求項16】
該減衰全反射カプラーと前記基板の屈折率を実質的に整合させるために、前記減衰全反射(ATR)カプラーと前記第2の薄膜金属電極との間に光結合媒体を封入することを更に含む、請求項15に記載のアセンブリ作製方法。
【請求項17】
生物学的、生化学的または化学的な試料について表面プラズモン共鳴(SPR)および重量の検知を実施することが可能なセンサシステムであって、
該センサシステムが、
前記試料を収容するためのチャンバを有するハウジングと、
第1の表面および該第1の表面に対向する第2の表面を有する透明圧電透明基板と、
クォーツ基板の第1の表面に配置されるとともに前記チャンバと流体連通している第1の薄膜金属電極と、
前記クォーツ基板の第2の表面に配置された第2の薄膜金属電極と、
前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極に結合されて、前記基板が共鳴周波数で共鳴するように、一つ以上の選択された周波数で、電界を発振させるための発振回路と、
前記共鳴周波数を検出して、重量信号を検出できるようにする共鳴周波数検出器と、
複数の入射角でビームを生成する光源と、
前記第2の薄膜金属電極に隣接して配置され、内部反射ビームが表面プラズモン共鳴(SPR)を発生させる入射角で前記第1の薄膜金属電極から反射されるように、前記光源に光学的に結合する減衰全反射(ATR)カプラーと、
前記内部反射ビームを受けるとともに、前記試料と前記第1の薄膜金属電極との間の反応に依存するSPRの性質を検出するための検出器と、
を含む、センサシステム。
【請求項18】
前記ATRカプラーと前記基板の屈折率を実質的に整合させるために、前記ATRカプラーと前記第2の薄膜金属電極との間に光結合媒体を更に含む、請求項17に記載のセンサシステム。
【請求項19】
前記第2の薄膜金属電極がビームを通過させる開口を含む、請求項17に記載のセンサシステム。
【請求項20】
複数の第1あるいは第2の薄膜金属電極または両薄膜金属電極が前記基板に配置される、請求項17に記載のセンサ。
【請求項21】
センサを用いて、試液の表面プラズモン共鳴(SPR)および重量を検知するための方法であって、
前記センサが、
第1の表面および該第1の表面に対向する第2の表面を有する透明圧電基板と、前記基板の前記第1の表面に設けられた第1の薄膜金属電極および前記基板の前記第2の表面に設けられた第2の薄膜金属電極と、前記第2の薄膜金属電極に隣接する減衰全反射(ATR)カプラーと、
を含み、
前記方法が、
(a)前記試液を前記第1の薄膜金属電極上に設置し、
(b)前記第1の薄膜金属電極から光を反射させるために、前記ATRカプラーを介してビームを透過させ、
(c)前記反射光の強度を検出してSPRを検出し、
(d)前記第1の薄膜金属電極および前記第2の薄膜金属電極を介して電界を印加し、
(e)前記電界の共鳴周波数を測定する、
ことを含む、方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−513772(P2008−513772A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532292(P2007−532292)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000296
【国際公開番号】WO2006/031198
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(504056510)エイジェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (12)
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
【出願人】(500449363)マックス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フェルデルンク デル ヴィッセンシャフテン エー.ファウ. (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000296
【国際公開番号】WO2006/031198
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(504056510)エイジェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (12)
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
【出願人】(500449363)マックス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フェルデルンク デル ヴィッセンシャフテン エー.ファウ. (5)
【Fターム(参考)】
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