説明

表面ライナー及び吸収性物品

【課題】吸収性物品において軟便等の緩い排泄物の拡散を防止できる表面ライナーを提供する。
【解決手段】表面ライナー1aの排泄物受体20は、複数のテープ状部材2,3を格子状に配置して備えており、その主面には多数の透孔91が分散して形成されている。また、各テープ状部材2,3には糸状弾性部材41,42が設けられて不規則な皺が形成されている。これにより、排泄物受体20の主面には多様な凹凸分布が形成される。この表面ライナー1aを吸収性物品の肌面側に着用して利用すると、排泄物のうちの固形成分は、排泄物受体20の凹凸に滞留させて蓄積させることができる。また、排泄物のうちの液体成分は、透孔91等を経由して吸収性物品に迅速に至らせることができ、吸収効率が向上する。その結果、排泄物の拡散が効果的に防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の排泄物を吸収する吸収性物品の肌側面に装着可能な表面ライナーの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、使い捨ておむつなど着用者の尿や便等の排泄物を吸収する吸収性物品においては、排泄物の左右方向端部からの漏れ(横漏れ)を防止するため、サイド立体ギャザーが形成されている。サイド立体ギャザーは、その端部に糸ゴムを挟んだ非透液性シートで構成され、糸ゴムの収縮によって本体部から肌面側に向かって立ち上がる。このサイド立体ギャザーの構造により、排泄物が堰き止められ、横漏れが防止されるようになっている。
【0003】
また、さらなる横漏れの防止を図るため、前後方向に延びる複数の畝を本体部の肌面側に設けた使い捨ておむつが提案されている。この使い捨ておむつでは、起立した畝が着用者の肌に密着し、横漏れがさらに防止されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−181104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような畝を設けた吸収性物品は、排泄物の左右方向(横方向)への広がりを防止しつつ、前後方向に拡散させることで、排泄物を吸収体の広い範囲で吸収して吸収効率を向上するものである。このような吸収性物品の構造は、尿等の主に液体成分からなる排泄物に関して有効である。
【0006】
しかしながら、軟便等の液体成分と固形成分とを含む排泄物の場合は、液体成分とともに固形成分が流動する。このため、上記の吸収性物品の構造では、軟便等の排泄物は、液体成分と固形成分とが混在した状態で、吸収性物品の前後方向に拡散される。その後、液体成分は吸収されるものの、固形成分は前後方向に広がった状態で吸収性物品の表面に残留することになる。このため、吸収性物品の取替の際において、着用者の肌に付着した固形成分(便)を広範に拭き取らなければならず、改善策が要望されていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、吸収性物品において排泄物の拡散を防止できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、着用者の排泄物を吸収する吸収性物品の肌面側に装着可能な表面ライナーであって、多数の透孔を分散させたシート状の排泄物受体に凹凸分布を与えてなる。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の表面ライナーにおいて、前記凹凸分布は不規則分布となっている。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の表面ライナーにおいて、前記多数の透孔は、前記排泄物受体に略周期的に分布している。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、前記排泄物受体に分散配置され、前記排泄物受体に皺を形成する皺形成手段、を備え、前記凹凸分布の少なくとも一部は前記皺の分布として与えられる。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の表面ライナーにおいて、前記皺形成手段は、前記排泄物受体に分散配置されて前記排泄物受体を伸縮させる弾性部材である。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項4または5に記載の表面ライナーにおいて、前記排泄物受体は、互いに離間した状態で略平行に延びる複数の第1テープ状部材と、互いに離間した状態で略平行に延びる複数の第2テープ状部材と、を異なる方向に配置して備え、各テープ状部材間の隙間によって前記透孔が形成されている。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項6に記載の表面ライナーにおいて、前記排泄物受体は略長方形状を有し、前記複数の第1テープ状部材のそれぞれは、前記排泄物受体の短手方向に沿って配置される。
【0015】
また、請求項8の発明は、請求項7に記載の表面ライナーにおいて、前記皺形成手段は、前記複数の第1テープ状部材に沿って設けられることにより、前記複数の第1テープ状部材を前記短手方向に収縮させて前記皺を形成する。
【0016】
また、請求項9の発明は、請求項6または7に記載の表面ライナーにおいて、前記皺形成手段は、前記複数の第1テープ状部材及び前記複数の第2テープ状部材の双方に前記皺を形成する。
【0017】
また、請求項10の発明は、請求項8または9に記載の表面ライナーにおいて、前記皺形成手段は、テープ状弾性部材である。
【0018】
また、請求項11の発明は、請求項6ないし10のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、前記複数の第1テープ状部材及び前記複数の第2テープ状部材は、透液性のテープ状不織布である。
【0019】
また、請求項12の発明は、請求項6ないし10のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、前記複数の第1テープ状部材及び前記複数の第2テープ状部材は、撥水性のテープ状不織布である。
【0020】
また、請求項13の発明は、請求項6ないし8のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、前記複数の第2テープ状部材は、テープ状弾性部材である。
【0021】
また、請求項14の発明は、請求項6ないし13のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、前記複数の第1テープ状部材と前記複数の第2テープ状部材とは、前記排泄物受体の互いに異なる主面にそれぞれ配置される。
【0022】
また、請求項15の発明は、請求項6ないし13のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、前記排泄物受体は、前記複数の第1テープ状部材と前記複数の第2テープ状部材とを織り合わせた織物構造を有する。
【0023】
また、請求項16の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、前記排泄物受体は、複数のテープ状部材を格子状に配置して備え、各テープ状部材間の隙間によって前記透孔が形成される。
【0024】
また、請求項17の発明は、請求項1ないし16のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、前記多数の透孔のそれぞれの開口面積は、前記凹凸分布の非伸張状態で、1mm2以上900mm2以下である。
【0025】
また、請求項18の発明は、請求項1ないし17のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、前記吸収性物品と面結合するための結合部材、をさらに備えている。
【0026】
また、請求項19の発明は、着用者の排泄物を吸収する吸収体を有する吸収性物品であって、前記吸収体の肌面側に、請求項1ないし18のいずれかに記載の表面ライナー、を備えている。
【0027】
また、請求項20の発明は、着用者の排泄物を吸収する吸収体を有する吸収性物品であって、前記吸収体の肌面側に、請求項7ないし10のいずれかに記載の表面ライナー、を備え、前記表面ライナーの前記排泄物受体の長手方向は前記吸収性物品の前後方向に沿った方向とされており、前記表面ライナーの前記複数の第1テープ状部材は、前記排泄物受体の肌面側の主面に配置される。
【0028】
また、請求項21の発明は、請求項19または20に記載の吸収性物品において、前記吸収性物品のうちの後方側に片寄った部分に前記表面ライナーが配置される。
【0029】
また、請求項22の発明は、請求項19ないし21のいずれかに記載の吸収性物品において、前記表面ライナーの肌面側の少なくとも周縁領域を覆うカバーシート、をさらに備えている。
【発明の効果】
【0030】
請求項1ないし22の発明によれば、排泄物受体における凹凸分布の存在により凹凸に排泄物を滞留させることができ、排泄物の拡散を防止できる。また、多数の透孔が分散されていることにより吸収効率が向上して排泄物の流動を抑制でき、排泄物の拡散をさらに防止できる。
【0031】
また、特に請求項2の発明によれば、凹凸分布は不規則分布となっていることから、多様な排泄物を滞留させることができる。
【0032】
また、特に請求項3の発明によれば、排泄物受体において均一に吸収効率を向上できる。
【0033】
また、特に請求項4の発明によれば、排泄物受体に凹凸分布を容易に形成できる。
【0034】
また、特に請求項5の発明によれば、排泄物受体に不規則な凹凸分布を容易に形成できる。
【0035】
また、特に請求項6の発明によれば、排泄物受体に、透孔を含む多様な凹凸分布を容易に形成でき、その凹凸分布に排泄物を滞留させることができる。このため、排泄物の拡散をさらに防止できる。
【0036】
また、特に請求項7の発明によれば、第1テープ状部材が壁となって、排泄物の長手方向への拡散を効果的に抑制できる。
【0037】
また、特に請求項8の発明によれば、第1テープ状部材の実質的な厚みを増すことができ、排泄物の長手方向への拡散をさらに効果的に抑制できる。
【0038】
また、特に請求項9の発明によれば、肌面側においては排泄物の拡散を防止でき、吸収性物品側においては排泄物の蓄積性と吸収効率を向上できる。
【0039】
また、特に請求項10の発明によれば、テープ状弾性部材を使用することで、不織布で皺形成手段を挟み込む必要はないため、必要な資材を少なくすることができる。
【0040】
また、特に請求項11の発明によれば、透液性の不織布を使用することで、排泄物の吸収効率を向上できる。
【0041】
また、特に請求項12の発明によれば、撥水性の不織布を使用することで、排泄物が肌面側に戻ることを防止できる。
【0042】
また、特に請求項13の発明によれば、テープ状弾性部材を使用することで、第2テープ状部材に関して不織布が不要となり必要な資材を少なくすることができる。
【0043】
また、特に請求項14の発明によれば、排泄物受体を容易に形成できる。
【0044】
また、特に請求項15の発明によれば、排泄物受体が織物構造であるため、接着剤を要することなく排泄物受体を形成できる。また、排泄物受体における凹凸の多様性を増すことができ、排泄物の拡散をさらに防止できる。
【0045】
また、特に請求項16の発明によれば、排泄物受体に、透孔を含む多様な凹凸分布を容易に形成でき、その凹凸分布に排泄物を滞留させることができる。このため、排泄物の拡散をさらに防止できる。
【0046】
また、特に請求項17の発明によれば、排泄物の吸収効率を維持しつつ、排泄物の逆流を防止できる。
【0047】
また、特に請求項18の発明によれば、表面ライナーを吸収性物品に固定でき、簡単に使用できる。
【0048】
また、特に請求項20の発明によれば、吸収性物品における排泄物の前後方向への拡散を効果的に抑制できる。
【0049】
また、特に請求項21の発明によれば、表面ライナーが吸収性物品の後方側に片寄った部分に配置されるため、排泄物を確実に受け止めて排泄物の拡散を防止できるとともに、装着者の腹部に不快感を与えない。
【0050】
また、特に請求項22の発明によれば、表面ライナーの縁部に形成される段差が装着者に与える不快感を緩和できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0052】
<1.第1の実施の形態>
<1−1.表面ライナーの構成>
図1は、第1の実施の形態に係る表面ライナー1aを示す平面図である。また、図2は、図1のII−II位置における断面図である。この表面ライナー1aは、使い捨ておむつ等の吸収性物品の肌面側に装着して用いる補助吸収具であり、着用者からの排泄物を受けその排泄物の拡散を防止する排泄物拡散防止具として機能する。
【0053】
表面ライナー1aは、排泄物を受ける面を構成するシート状の排泄物受体20を備えている。排泄物受体20は、略長方形状の外形を有し、帯状に延びる複数のテープ状部材を格子状に配置して備えている。具体的には、排泄物受体20は、短手方向(幅方向)に沿って略平行に延びる複数のテープ状部材(以下、短手テープ状部材)2と、長手方向に沿って略平行に延びる複数のテープ状部材(以下、長手テープ状部材)3とを、接着剤で接着して形成される。したがって、複数の短手テープ状部材2と複数の長手テープ状部材3とは略直交して配置される。
【0054】
同一方向に沿って延びる複数のテープ状部材は、排泄物受体20における同一の主面に配置される。換言すれば、複数の短手テープ状部材2と、複数の長手テープ状部材3とは排泄物受体20の異なる主面に配置される。すなわち、排泄物受体20の一方の主面(図1における視認側の面)には複数の短手テープ状部材2が配置され、他方の主面には複数の長手テープ状部材3が配置されることになる。このようなテープ状部材2,3の幅は、好ましくは1mm以上30mm以下であり、さらに好ましくは3mm以上20mm以下であり、さらに好ましくは5mm以上15mm以下である。
【0055】
各短手テープ状部材2は、二枚のテープ状不織布21,22により構成される(図2参照。)。これら二枚のテープ状不織布21,22はその間に、短手方向に沿った糸状弾性部材41を伸張状態で挟んで接着されている。したがって、糸状弾性部材41が収縮すると、図1に示すように、テープ状不織布21,22が収縮してその表面に多数の不規則な皺が形成される。
【0056】
同様に、各長手テープ状部材3は、二枚のテープ状不織布31,32により構成される(図2参照。)。二枚のテープ状不織布31,32はその間に、長手方向に沿った糸状弾性部材42を伸張状態で挟んで接着されている。したがって、糸状弾性部材42が収縮すると、テープ状不織布31,32が収縮してその表面に多数の不規則な皺が形成される。これにより、糸状弾性部材42,43は排泄物受体20の全体に分散配置され、排泄物受体20は伸縮可能となっている。
【0057】
テープ状不織布21,22,31,32の素材としては、排泄物の吸収効率を高めるために透液性の不織布が採用される。透液性の不織布としては、親水性繊維(セルロース、レーヨン、コットン等)を用いた不織布、あるいは、疎水性繊維(ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリエステル,ポリアミド、ナイロン等)の表面を界面活性剤により処理して透液性とした不織布が挙げられる。また、テープ状不織布21,22,31,32の素材として、微小な開孔を有するプラスチックフィルムが利用されてもよい。
【0058】
また、糸状弾性部材41,42の素材としては、ポリウレタン糸や天然ゴム等の一般的な吸収性物品に用いられる弾性伸縮材料を用いることができる。糸状弾性部材41,42の接着には、ホットメルト接着剤を用いた接着、熱溶着、超音波溶着等の接着手法が採用できる。
【0059】
また、複数の短手テープ状部材2同士は互いに離間した状態で配置され、複数の長手テープ状部材3同士も互いに離間した状態で配置される。これにより、排泄物受体20の主面の全体には、長手方向及び短手方向のそれぞれに関して略周期的に多数の矩形の透孔(一方の主面から他方の主面まで突き抜ける開口部)91が分散して形成される。このように複数の短手テープ状部材2と複数の長手テープ状部材3とを異なる方向に配置することで、各テープ状部材2,3間の隙間によって透孔91が分散して形成されることから、透孔91の形成に関して加熱処理は不要である。
【0060】
<1−2.表面ライナーの使用態様>
次に、上記のように構成される表面ライナー1aの使用態様について説明する。図3は、使い捨ておむつである吸収性物品10aに、表面ライナー1aを装着した様子を示す展開状態の平面図であり、肌面側から見た様子を示している。また、図4は、図3のIV−IV位置における断面の模式図である。図3では、表面ライナー1aのうち、吸収性物品10aの部品で隠れる箇所については破線で示している。
【0061】
まず、吸収性物品10aの構造について説明する。なお以下では、着用者の股部を覆うように吸収性物品を装着したときに、着用者の股部の前後方向(腹部から背中にかけての方向)に対応する吸収性物品の方向(図3の縦方向)を「前後方向」といい、着用者にとって左右方向に対応する吸収性物品の方向(図3の横方向)を「左右方向」という。また、着用者の股部の前方側(腹側)に対応する吸収性物品の側を「前方側」といい、着用者の股部の後方側(背側)に対応する吸収性物品の側を「後方側」という。図3においては、図中の上部側が吸収性物品10aの前方側となる。
【0062】
吸収性物品10aは、前後方向に延びた吸収体14を、トップシート11とバックシート13とで挟んだ構造を有している。これにより、肌面側からトップシート11、吸収体14、バックシート13の順で、これらは積層して配置される(図4参照。)。このような積層構造により、排泄物の液体成分は、トップシート11を透過して吸収体14に吸収され、かつ、バックシート13によって外部への染み出しが防止される。
【0063】
トップシート11の素材としては、前述したような透液性の不織布等が好ましい。一方、バックシート13の素材としては、疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等)を用いた撥水性の不織布が好ましい。また、バックシート13の素材として、プラスチックフィルムや、不織布とプラスチックフィルムとの複合材料等が利用されてもよい。
【0064】
吸収体14としては、例えば、粉砕したパルプ繊維やセルロース繊維等の親水性繊維集合層に粒状の高分子吸水体を混合した吸収コアを、ティッシュペーパー等の紙シートあるいは透液性不織布シート等の被覆シートで包み、所定の形状(長方形,砂時計型,ひょうたん型等)に成形したものが挙げられる。
【0065】
また、吸収性物品10aの左右方向の端部には、長手方向に沿ってトップシート11に重ねてサイドシート12が設けられている。このサイドシート12の中央側の端部には糸ゴム15が配されており、この糸ゴム15の収縮によってサイドシート12の一部が肌面側に向かって立ち上がり、サイド立体ギャザーとして機能する。このサイド立体ギャザーにより排泄物の横漏れが防止される。サイドシート12の素材としては、液不透過性のプラスチックフィルムや撥水性の不織布等が挙げられる。
【0066】
上記構造を有する吸収性物品10aに対して、表面ライナー1aは、その長手方向が吸収性物品10aの前後方向に沿い、かつ、その短手方向の端部がトップシート11とサイドシート12との間に挟み込まれるようにして収容される。これにより、表面ライナー1aの排泄物受体20は、トップシート11、吸収体14及びバックシート13の積層構造よりも肌面側に位置して、表面に露出することになる。
【0067】
また、便を確実に受け止め、かつ、装着者の腹部に不快感を与えないように、表面ライナー1aは、吸収性物品10aの前後方向の中央部よりも後方側に片寄った部分に配置することが望ましい。さらに、表面ライナー1aは、短手テープ状部材2が配置される排泄物受体20の主面が肌面側となるように配置することが望ましい。これにより、複数の短手テープ状部材2は吸収性物品10aの左右方向に沿って肌面側に配置され、複数の長手テープ状部材3は吸収性物品10aの前後方向に沿って吸収性物品10a側(以下、「物品側」という。)に配置される。
【0068】
このように表面ライナー1aを取り付けた吸収性物品10aを使用した場合に、軟便等の液体成分と固形成分とを含む緩い排泄物が排泄された場合を想定する。このような緩い排泄物は、液体成分と固形成分とが混在した状態で流動する。吸収性物品10aでは、このような緩い排泄物の前後方向への拡散が特に問題となる。
【0069】
排泄された排泄物は、表面ライナー1aの排泄物受体20の肌面側の主面により受け止められる。そして、排泄物は、複数の短手テープ状部材2の相互間に入り込み、さらに、複数の透孔91等を経由して、排泄物受体20の物品側に入り込むことになる。
【0070】
排泄物受体20の肌面側では、複数の短手テープ状部材2により排泄物の流動が堰き止められる。複数の短手テープ状部材2は吸収性物品10aの左右方向に沿っていることから、排泄物の前後方向(排泄物受体20の長手方向)への流動が効果的に抑制される。短手テープ状部材2は、糸状弾性部材41により皺が形成されてその実質的な厚みが増しているため、排泄物の流動を堰き止める壁として有効に機能する。
【0071】
一方、排泄物受体20の物品側では、吸収性物品10aの前後方向に沿った複数の長手テープ状部材3の相互間に排泄物が入り込む。長手テープ状部材3も、糸状弾性部材42により皺が形成されてその実質的な厚みが増しているため、比較的多くの排泄物を流入させることができる。これとともに、排泄物は、長手テープ状部材3に形成された皺の間を通過して、吸収性物品10aの左右方向にも拡がる。
【0072】
表面ライナー1aの排泄物受体20には、短手テープ状部材2の相互間、長手テープ状部材3の相互間、透孔91、及び、テープ状部材2,3自体の皺などにより、多様な凹凸分布が与えられる。つまり、凹凸分布の一部は、テープ状部材2,3自体の皺の分布として与えられる。排泄物のうちの特に固形成分は、これらの凹凸に滞留させて蓄積させることができる。テープ状部材2,3の不規則な皺などにより凹凸分布は不規則分布となるため、多種多様な排泄物を滞留させることができる。また、糸状弾性部材41,42によりテープ状部材2,3の実質的な厚みが増しているため、凹凸のサイズが増加して多くの排泄物を蓄積させることができる。その結果、排泄物の広範な範囲への拡散が有効に防止されることになる。
【0073】
また、排泄物のうちの液体成分は、吸収性物品10aに至ると吸収体14に吸収される。排泄物受体20の主面には多数の透孔91が分散形成されており、また、排泄物受体20が透液性の不織布で構成されることから、排泄物のうちの特に液体成分は迅速に吸収性物品10aに至ることになる。また、排泄物受体20の物品側では、排泄物が吸収性物品10aの左右方向にも拡がることから、その液体成分は吸収体14の広い範囲で吸収される。したがって、排泄物の液体成分の吸収体14による吸収効率を大きく向上できる。その結果、液体成分の流動量が低下して排泄物の流動そのものが抑制されることから、排泄物の広範な範囲への拡散がさらに防止されることになる。
【0074】
排泄物受体20に形成された多数の透孔91は、排泄物を物品側に通過させる経路になるとともに、排泄物を滞留させて蓄積させる空間としても機能する。多数の透孔91は、排泄物受体20の主面の全体に略周期的に分布していることから、排泄物受体20の全体に関して均一に吸収効率及び排泄物の蓄積量を向上できる。その結果、排泄物受体20のいずれの位置に排泄物が受け止められたとしても排泄物の拡散が有効に防止されることになる。
【0075】
なお、これらの透孔91のそれぞれの開口面積が小さすぎると排泄物の通過量や蓄積量が低下するが、逆に、開口面積が大きすぎると、物品側に一旦進入した排泄物が肌面側に逆流する可能性もある。このため、これらの透孔91のそれぞれの開口面積は、凹凸分布の非伸長状態(糸状弾性部材41,42を収縮させ、糸状弾性部材41,42による皺を非伸長とした状態)で、好ましくは1mm2以上900mm2以下であり、さらに好ましくは4mm2以上700mm2以下であり、さらに好ましくは10mm2以上400mm2以下である。これにより、排泄物の吸収効率を維持しつつ、排泄物の逆流を防止できる。
【0076】
以上のように、本実施の形態の表面ライナー1aを取り付けた吸収性物品10aを使用した場合は、排泄物の広範な範囲への拡散が効果的に防止される。その結果、排泄物が着用者の肌に触れる面積が少なくなるため、肌のかぶれを防ぐことができるとともに、肌に付着した排泄物(特に、その固形成分)の拭き取り作業も軽減することができる。
【0077】
<2.第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。図5は、第2の実施の形態に係る表面ライナー1bを示す平面図である。また、図6は、図5のVI−VI位置における断面図である。第2の実施の形態の表面ライナー1bは、長手テープ状部材3に係る構造が、第1の実施の形態の表面ライナー1aと相違している。
【0078】
第2の実施の形態においては、各長手テープ状部材3には糸状弾性部材42などの弾性部材は接着されておらず、各長手テープ状部材3は一枚のテープ状不織布31のみによって構成される。したがって、複数の長手テープ状部材3には皺は形成されない。このように構成することで、第1の実施の形態の表面ライナー1aと比較して必要な資材を少なくすることができ、製造コストを低減できる。
【0079】
この表面ライナー1bも、第1の実施の形態と同様に使用することができる。この場合においても、短手テープ状部材2が配置される排泄物受体20の主面が肌面側となるように表面ライナー1bを配置することで、吸収性物品10aにおける排泄物の前後方向(排泄物受体20の長手方向)への流動が効果的に抑制される。
【0080】
<3.第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態について説明する。図7は、第3の実施の形態に係る表面ライナー1cを示す平面図である。また、図8は、図7のVIII−VIII位置における断面図である。第3の実施の形態の表面ライナー1cは、テープ状部材2,3に皺を形成する弾性部材が、第1の実施の形態の表面ライナー1aと相違している。
【0081】
第3の実施の形態においては、テープ状部材2,3に接着する弾性部材として、テープ状部材2,3と略同一の幅を有するテープ状弾性部材43,44が用いられている。このようなテープ状弾性部材43,44の素材としては、例えば、テープ状に成形した天然ゴム、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、伸縮性ポリオレフィン、ウレタン、伸縮不織布などが挙げられる。
【0082】
このようなテープ状弾性部材43,44のテープ状部材2,3への接着に際しては、不織布による挟み込みは不要である。このため、各テープ状部材2,3は、それぞれ一枚のテープ状不織布21,31で構成されている。より具体的には、一つの短手テープ状部材2は一枚のテープ状不織布21で構成され、この一枚のテープ状不織布21に対してテープ状弾性部材43が伸張状態で接着される。また、一つの長手テープ状部材3は一枚のテープ状不織布31で構成され、この一枚のテープ状不織布31に対してテープ状弾性部材44が伸張状態で接着される。これにより、第1の実施の形態と同様に、テープ状部材2,3の表面には多数の不規則な皺が形成される。
【0083】
このようにテープ状弾性部材43,44を利用することで、各テープ状部材2,3を一枚のテープ状不織布21,31で構成できるため、第1の実施の形態の表面ライナー1aと比較して必要な資材を少なくすることができ、製造コストを低減できる。この表面ライナー1cも、第1の実施の形態と同様に使用することができる。
【0084】
<4.第4の実施の形態>
次に、第4の実施の形態について説明する。図9は、第4の実施の形態に係る表面ライナー1dを示す平面図である。また、図10は、図9のX−X位置における断面図である。第4の実施の形態の表面ライナー1dは、長手テープ状部材3に係る構造が、第3の実施の形態の表面ライナー1aと相違している。
【0085】
第3の実施の形態においては、各長手テープ状部材3には不織布は使用されておらず、各長手テープ状部材3は比較的厚みのある一枚のテープ状弾性部材33のみによって構成される。このテープ状弾性部材33の素材としては、例えば、2mm〜5mm程度の厚みを有し、テープ状に成形したポリウレタンフィルムなどが挙げられる。このように構成することで、長手テープ状部材3に関して不織布が不要となり、第3の実施の形態の表面ライナー1cと比較して必要な資材を少なくすることができ、製造コストをさらに低減できる。この表面ライナー1dも、第1の実施の形態と同様に使用することができる。
【0086】
なお、この実施の形態では、短手テープ状部材2に係る構造は、第3の実施の形態と同様の構造(一枚のテープ状不織布21にテープ状弾性部材を接着した構造)としているが、第1の実施の形態と同様の構造(糸状弾性部材41を挟んで二枚のテープ状不織布21,22を接着した構造)を採用してもよい。
【0087】
<5.第5の実施の形態>
次に、第5の実施の形態について説明する。図11は、第5の実施の形態に係る表面ライナー1eを示す平面図である。また、図12は、図11のXII−XII位置における断面図である。第5の実施の形態の表面ライナー1eは、複数の短手テープ状部材2と複数の長手テープ状部材3とを組合わせる手法が、第1の実施の形態の表面ライナー1aと相違している。
【0088】
第5の実施の形態においては、テープ状部材2,3に係る構造そのものは第1の実施の形態と同様であるものの、複数の短手テープ状部材2と複数の長手テープ状部材3とが、織物における緯糸(よこいと)と経糸(たていと)とのようにそれぞれ利用され、織物と同様の規則によって交錯されている。これにより、排泄物受体20は、複数の短手テープ状部材2と複数の長手テープ状部材3とを織り合わせた織物構造を有している。このように排泄物受体の構造を織物構造とすることにより、接着剤を要することなく排泄物受体20を形成できる。
【0089】
この表面ライナー1eも、第1の実施の形態と同様に使用することができる。排泄物受体20の構造が織物構造であるため、排泄物受体20に形成される凹凸の多様性を増すことができる。その結果、多様な排泄物を蓄積させることができるため、排泄物の拡散をさらに防止できることになる。
【0090】
なお、図11に示す織物組織は平織であるが、斜文織、朱子織などの他の織物組織であってもよい。また、緯糸及び経糸として利用するテープ状部材2,3自体に係る構造については、第1の実施の形態の構造のものに限定されず、第1ないし第4の実施の形態で説明したいずれの構造のものであってもよい。
【0091】
<6.第6の実施の形態>
次に、第6の実施の形態について説明する。図13は、第6の実施の形態に係る表面ライナー1fを示す平面図である。また、図14は、図13のXIV−XIV位置における断面図である。上記実施の形態では、テープ状部材2,3を組合わせることでシート状の排泄物受体20が形成されていたが、第6の実施の形態の表面ライナー1fにおいては、略長方形状の二枚の不織布51,52を貼り合わせることでシート状の排泄物受体20が形成されている。
【0092】
図に示すように、表面ライナー1fの排泄物受体20は、略長方形状の外形を有する二枚の不織布51,52を接着した構造を有している。これら二枚の不織布51,52はその間に、格子状に分散配置された複数の糸状弾性部材46,47を伸張状態で挟んで接着されている。
【0093】
複数の糸状弾性部材46は短手方向に沿って略平行に延び、複数の糸状弾性部材47は長手方向に沿って略平行に延びている。これにより、複数の糸状弾性部材46と複数の糸状弾性部材47とは略直交して配置され、排泄物受体20の主面の全体には糸状弾性部材46,47に囲まれた矩形領域が略周期的に形成される。そして、これら矩形領域にはそれぞれ略円形の透孔(一方の主面から他方の主面まで突き抜ける開口部)92が形成されている。したがって、第6の実施の形態の排泄物受体20においても、その主面の全体に、長手方向及び短手方向のそれぞれに関して略周期的に多数の透孔92が分散して形成される。
【0094】
不織布51,52の素材としては、排泄物の吸収効率を高めるために、前述したような透液性の不織布が採用される。また、糸状弾性部材46,47の素材としては、ポリウレタン糸や天然ゴム等の一般的な吸収性物品に用いられる弾性伸縮材料を用いることができる。
【0095】
図13及び図14では、説明の便宜上、糸状弾性部材46,47をある程度伸張した状態を示している。糸状弾性部材46,47が収縮すると、排泄物受体20が長手方向及び短手方向の双方に収縮し、その主面に多数の不規則な皺が形成される。これにより、図14と同一位置における断面図である図15に示すように、排泄物受体20の主面の全体には不規則な凹凸分布が与えられることになる。
【0096】
この表面ライナー1fも、第1の実施の形態と同様に使用することができる。この表面ライナー1fを取り付けた吸収性物品10aを使用した場合に、軟便等の液体成分と固形成分とを含む緩い排泄物が排泄されたときには、まず、排泄された排泄物は、表面ライナー1fの排泄物受体20の肌面側の主面により受け止められる。
【0097】
排泄物のうちの特に固形成分は、排泄物受体20に形成された凹凸に捕らえられて、この凹凸に滞留させて蓄積される。これにより、排泄物の広範な範囲への拡散が有効に防止されることになる。一方、排泄物受体20の主面に多数の透孔92が分散して存在し、排泄物受体20が透液性の不織布で構成されることから、排泄物のうちの特に液体成分は迅速に吸収性物品10aに至る。このため、この第6の実施の形態においても、排泄物の液体成分に対する吸収体14による吸収効率が向上し、排泄物の流動そのものが抑制されて、排泄物の広範な範囲への拡散がさらに防止されることになる。
【0098】
なお、糸状弾性部材の配置態様については、図13に示したものには限定されず、排泄物受体20の主面の全体に多種多様な凹凸が散在して形成できれば他の態様でもよい。例えば、糸状弾性部材46,47を直角とは異なる角度で交差させて配置してもよく、また、並んだ複数の糸状弾性部材をそれぞれサインカーブ状などに蛇行させて配置してもよい。
【0099】
また、排泄物受体20に皺を形成する弾性部材としては糸状弾性部材でなく、第3の実施の形態で説明したようなテープ状弾性部材を用いてもよい。これによれば、排泄物受体20への接着に関して不織布による挟み込みは不要であるため、排泄物受体20を一枚の不織布で構成することも可能となる。
【0100】
<7.第7の実施の形態>
次に、第7の実施の形態について説明する。図16は、第7の実施の形態に係る表面ライナー1gを示す平面図である。第7の実施の形態の表面ライナー1gは、吸収性物品10aと結合するための結合部6を備えている。
【0101】
図に示すように、第7の実施の形態の表面ライナー1gは、第1の実施の形態と同様の構造の排泄物受体20を備えるとともに、その排泄物受体20の長手方向の両端部に吸収性物品10aと面結合するための結合部6を備えている。結合部6はそれぞれ、弾性部材が存在しない透液性の不織布61と、結合部材となる面ファスナ(正確には、面ファスナの雄型係合部材)62とで構成される。面ファスナ62は、吸収性物品10aに装着した際における物品側となる不織布61の面に配置される。
【0102】
図17は、この表面ライナー1gを吸収性物品10aに装着した様子を示す展開状態の平面図である。表面ライナー1gは取り付けにあたって、図3と同様の位置に配置されるとともに、結合部6の面ファスナ62がトップシート11と面接触して結合される。これにより、表面ライナー1gを、吸収性物品10aの最適な位置に固定できる。このため、吸収性物品10aの装着中などに表面ライナー1gの位置がずれることが防止されることから、表面ライナー1gを簡単にかつ効果的に使用することができる。
【0103】
なお、面ファスナ62を取り付ける位置は、排泄物受体20の長手方向の両端部に限定されず、排泄物受体20の短手方向の端部など他の位置であってもよい。また、面ファスナ62は不織布61ではなく、排泄物受体20の一部に弾性特性の無い領域(弾性部材が無配置、あるいは、弾性部材を切断した領域)を設け、該領域に配置してもよい。また、面結合するための結合部材としては、面ファスナに限定されず粘着テープなどの他の素材を利用してもよい。また、排泄物受体20の構造としては、第1の実施の形態の構造のものに限定されず、第1ないし第6の実施の形態で説明したいずれの構造のものであってもよい。
【0104】
<8.第8の実施の形態>
次に、第8の実施の形態について説明する。上記実施の形態では、表面ライナーを吸収性物品の肌面側に装着して用いるとして説明したが、もちろん、表面ライナーが吸収性物品の表面材とされてもよい。これによっても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0105】
図18は、第8の実施の形態に係る吸収性物品10bを示す平面図である。また、図19は、図18のXIX−XIX位置における断面の模式図である。図18では、表面ライナー1のうち吸収性物品10bの他の部品で隠れる箇所については破線で示している。なお、この図18においても、図中の上部側が吸収性物品10bの前方側となる。
【0106】
この吸収性物品10bは、図3の吸収性物品10aと同様に、吸収体14をトップシート11とバックシート13とで挟んだ構造を有している。また、吸収性物品10aの左右方向の端部には、糸ゴム15が設けられたサイドシート12が配置されており、糸ゴム15の収縮によってサイドシート12の一部が肌面側に向かって立ち上がりサイド立体ギャザーとして機能する。
【0107】
そして、トップシート11、吸収体14及びバックシート13の積層構造の肌面側には、吸収性物品10bの表面材として表面ライナー1が配置されている。表面ライナー1の構造としては、上記第1ないし第7の実施の形態で説明した表面ライナー1a〜1gのいずれの構造であってもよい。いずれの場合も、表面ライナー1は、その長手方向が吸収性物品10bの前後方向に沿い、かつ、その短手方向の端部がトップシート11とサイドシート12との間に挟み込まれるようにして配置される。また、便を確実に受け止め、かつ、装着者の腹部に不快感を与えないように、表面ライナー1は吸収性物品10bの前後方向の中央部よりも後方側に片寄った部分に配置される。表面ライナー1は、その周縁領域(長手方向及び短手方向の縁部の近傍領域)に接着剤が塗布され、トップシート11に接着固定される。この接着剤が塗布される周縁領域は、弾性部材を配置せずに平坦にしておくことが望ましい。
【0108】
また、表面ライナー1の構造として、第1ないし第4の実施の形態で説明した表面ライナー1a〜1dの構造(短手テープ状部材2が排泄物受体20の一方の主面に配置される構造)が採用される場合は、短手テープ状部材2が配置される排泄物受体20の主面が肌面側となるように表面ライナー1が配置される。つまり、排泄物受体20の肌面側の主面に複数の短手テープ状部材2が吸収性物品10aの左右方向に沿って配置される。これにより、短手テープ状部材2が壁となって、吸収性物品10aにおける排泄物の前後方向への流動が効果的に抑制される。
【0109】
また、吸収性物品10bは、表面ライナー1の肌面側にカバーシート16をさらに備えている。カバーシート16においては、着用者の尻部に相当する位置に楕円形状の一つの開口部17が形成されている。表面ライナー1は、その肌面側の周縁領域がカバーシート16によって覆われつつ、排泄物受体20の一部がカバーシート16の開口部17から表面に露出することになる。カバーシート16の素材としては、排泄物の吸収効率を阻害しないように、前述したような透液性の不織布が挙げられる。
【0110】
カバーシート16は、その端部においてサイドシート12やトップシート11と接着される。したがって、表面ライナー1は、このようなカバーシート16で覆われることで、より確実に最適な位置に固定される。また、表面ライナー1の周縁領域はカバーシート16によって覆われることから、表面ライナー1の縁部とトップシート11とで形成される段差が装着者に与える不快感を緩和できる。さらに、表面ライナー1の透孔などを介して排泄物の逆流が生じたとしても、カバーシート16により、そのような排泄物の肌面側への露出を防止でき、排泄物が肌に触れる面積を少なくすることができる。
【0111】
なお、このようなカバーシート16を配置する場合は、トップシート11としては、少なくとも表面ライナー1の物品側の面全体に対応して存在すればよい。また、カバーシート16を配置すれば、表面ライナー1をトップシート11等に接着しなくても位置のずれが防止できるため、表面ライナー1の接着を省略してもよい。また逆に、吸収性物品10bにおいてカバーシート16自体を省略してもよい。
【0112】
<9.他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような他の実施の形態について説明する。もちろん、以下で説明する形態を適宜に組み合わせてもよい。
【0113】
上記実施の形態では、テープ状不織布21,22,23,24の素材として透液性の不織布が採用されると説明したが、逆に、撥水性の不織布を採用してもよい。また同様に、第6の実施の形態の不織布51,52の素材として撥水性の不織布を採用してもよい。撥水性の不織布としては、疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等)を用いた不織布が挙げられる。このように撥水性の不織布を採用した場合は、物品側に一旦進入した排泄物が肌面側に戻ることを効果的に防止できる。撥水性の不織布を採用したとしても、排泄物受体20の主面には多数の透孔91,92が形成されているため、排泄物の吸収効率が大きく低下することもない。また、第3及び第4実施の形態のテープ状弾性部材43,44,33の素材としては、撥水性の弾性部材を採用してよい。この場合も、物品側に一旦進入した排泄物が肌面側に戻ることを効果的に防止できる。
【0114】
また、上記実施の形態では、弾性部材によって排泄物受体20に皺を形成すると説明したが、加熱処理により皺を形成してもよい。ただし、加熱処理により形成された皺は、規則的になることが一般的である。排泄物受体20に不規則な皺を形成し、それによって与えられる不規則な凹凸分布により多様な排泄物の拡散を防止するという観点からは、上記実施の形態のように弾性部材を用いることが望ましい。
【0115】
また、上記実施の形態では、排泄物受体20を形成する複数のテープ状部材2と、複数のテープ状部材3とは直交配置されるとしていたが、これらは異なる方向に配置できれば、直角とは異なる角度で交差させてもよい。また、複数のテープ状部材2,3は、排泄物受体20の外形により規定される方向(短手方向,長手方向)以外の方向に延びるように配置してもよい。
【0116】
上記実施の形態では、表面ライナー1のおよそ全体が排泄物受体20となっていたが、表面ライナー1の一部のみが上述した排泄物受体20と同様の構造を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】第1の実施の形態に係る表面ライナーを示す平面図である。
【図2】図1のII−II位置における断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る表面ライナーを吸収性物品に装着した様子を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV位置における断面図である。
【図5】第2の実施の形態に係る表面ライナーを示す平面図である。
【図6】図5のVI−VI位置における断面図である。
【図7】第3の実施の形態に係る表面ライナーを示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII位置における断面図である。
【図9】第4の実施の形態に係る表面ライナーを示す平面図である。
【図10】図9のX−X位置における断面図である。
【図11】第5の実施の形態に係る表面ライナーを示す平面図である。
【図12】図11のXII−XII位置における断面図である。
【図13】第6の実施の形態に係る表面ライナーを示す平面図である。
【図14】図13のXIV−XIV位置における断面図である。
【図15】第6の実施の形態に係る表面ライナーの断面図である。
【図16】第7の実施の形態に係る表面ライナーを示す平面図である。
【図17】第7の実施の形態に係る表面ライナーを吸収性物品に装着した様子を示す平面図である。
【図18】第8の実施の形態に係る吸収性物品を示す平面図である。
【図19】図18のXIX−XIX位置における断面図である。
【符号の説明】
【0118】
1,1a〜1g 表面ライナー
2 短手テープ状部材
3 長手テープ状部材
10a,10b 吸収性物品
14 吸収体
20 排泄物受体
41,42,46,47 糸状弾性部材
62 面ファスナ
91,92 透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の排泄物を吸収する吸収性物品の肌面側に装着可能な表面ライナーであって、
多数の透孔を分散させたシート状の排泄物受体に凹凸分布を与えてなることを特徴とする表面ライナー。
【請求項2】
請求項1に記載の表面ライナーにおいて、
前記凹凸分布は不規則分布となっていることを特徴とする表面ライナー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面ライナーにおいて、
前記多数の透孔は、前記排泄物受体に略周期的に分布していることを特徴とする表面ライナー。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、
前記排泄物受体に分散配置され、前記排泄物受体に皺を形成する皺形成手段、
を備え、
前記凹凸分布の少なくとも一部は前記皺の分布として与えられることを特徴とする表面ライナー。
【請求項5】
請求項4に記載の表面ライナーにおいて、
前記皺形成手段は、前記排泄物受体に分散配置されて前記排泄物受体を伸縮させる弾性部材であることを特徴とする表面ライナー。
【請求項6】
請求項4または5に記載の表面ライナーにおいて、
前記排泄物受体は、
互いに離間した状態で略平行に延びる複数の第1テープ状部材と、
互いに離間した状態で略平行に延びる複数の第2テープ状部材と、
を異なる方向に配置して備え、
各テープ状部材間の隙間によって前記透孔が形成されていることを特徴とする表面ライナー。
【請求項7】
請求項6に記載の表面ライナーにおいて、
前記排泄物受体は略長方形状を有し、
前記複数の第1テープ状部材のそれぞれは、前記排泄物受体の短手方向に沿って配置されることを特徴とする表面ライナー。
【請求項8】
請求項7に記載の表面ライナーにおいて、
前記皺形成手段は、前記複数の第1テープ状部材に沿って設けられることにより、前記複数の第1テープ状部材を前記短手方向に収縮させて前記皺を形成することを特徴とする表面ライナー。
【請求項9】
請求項6または7に記載の表面ライナーにおいて、
前記皺形成手段は、前記複数の第1テープ状部材及び前記複数の第2テープ状部材の双方に前記皺を形成することを特徴とする表面ライナー。
【請求項10】
請求項8または9に記載の表面ライナーにおいて、
前記皺形成手段は、テープ状弾性部材であることを特徴とする表面ライナー。
【請求項11】
請求項6ないし10のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、
前記複数の第1テープ状部材及び前記複数の第2テープ状部材は、透液性のテープ状不織布であることを特徴とする表面ライナー。
【請求項12】
請求項6ないし10のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、
前記複数の第1テープ状部材及び前記複数の第2テープ状部材は、撥水性のテープ状不織布であることを特徴とする表面ライナー。
【請求項13】
請求項6ないし8のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、
前記複数の第2テープ状部材は、テープ状弾性部材であることを特徴とする表面ライナー。
【請求項14】
請求項6ないし13のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、
前記複数の第1テープ状部材と前記複数の第2テープ状部材とは、前記排泄物受体の互いに異なる主面にそれぞれ配置されることを特徴とする表面ライナー。
【請求項15】
請求項6ないし13のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、
前記排泄物受体は、前記複数の第1テープ状部材と前記複数の第2テープ状部材とを織り合わせた織物構造を有することを特徴とする表面ライナー。
【請求項16】
請求項1ないし5のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、
前記排泄物受体は、複数のテープ状部材を格子状に配置して備え、各テープ状部材間の隙間によって前記透孔が形成されることを特徴とする表面ライナー。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、
前記多数の透孔のそれぞれの開口面積は、前記凹凸分布の非伸張状態で、1mm2以上900mm2以下であることを特徴とする表面ライナー。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかに記載の表面ライナーにおいて、
前記吸収性物品と面結合するための結合部材、
をさらに備えることを特徴とする表面ライナー。
【請求項19】
着用者の排泄物を吸収する吸収体を有する吸収性物品であって、
前記吸収体の肌面側に、請求項1ないし18のいずれかに記載の表面ライナー、
を備えることを特徴とする吸収性物品。
【請求項20】
着用者の排泄物を吸収する吸収体を有する吸収性物品であって、
前記吸収体の肌面側に、請求項7ないし10のいずれかに記載の表面ライナー、
を備え、
前記表面ライナーの前記排泄物受体の長手方向は前記吸収性物品の前後方向に沿った方向とされており、
前記表面ライナーの前記複数の第1テープ状部材は、前記排泄物受体の肌面側の主面に配置されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項21】
請求項19または20に記載の吸収性物品において、
前記吸収性物品のうちの後方側に片寄った部分に前記表面ライナーが配置されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項22】
請求項19ないし21のいずれかに記載の吸収性物品において、
前記表面ライナーの肌面側の少なくとも周縁領域を覆うカバーシート、
をさらに備えることを特徴とする吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−79756(P2008−79756A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262015(P2006−262015)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】