説明

表面上に少なくとも一つの複合色素を有するチューブ状ナノ構造を少なくとも1種類備えた装置

本発明は、少なくとも1種類の共役ポリマー及び、少なくとも1種類のチューブ状ナノ構造を含む装置に関する。本発明は、少なくとも1種類の共役ポリマー(電子ドナー構造として機能)及び、少なくとも1種類のチューブ状ナノ構造(電子アクセプタ構造として機能)とを有し、前記チューブ状ナノ構造は、その表面上に少なくとも1つの複合した色素を有する、装置に主に関する。前記装置は、特に光電池セルを形成するために提案されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ、これらナノチューブの分散、コンポジット材料、これらのカーボンナノチューブを備えたコンポジット材料で製造された物品に関する。さらに、本発明は、これらの製品の製造方法に関する。
さらに、本発明は、共役ポリマーを少なくとも1種類備えて、カーボンナノチューブを少なくとも1種類備えた装置に関する。異なる装置が、光電池セルを形成するために提案されている。
【背景技術】
【0002】
Iijima,S.,Nature 354(1991)56-58における開示によれば、カーボンナノチューブは、その特有の性質によって、研究者の興味を直ちに喚起してきた。これらの優れた弾性及び引張強度、良好な電気的及び熱的伝導度、並びに、化学的及び熱的安定性により、電子工学、医学、又は航空学のような様々な部門でのナノチューブに対する様々な潜在的な意義が見えている。
【0003】
カーボンナノチューブの性質は、過去の、R.Saito,G.Dresselhaus,M.S.Dresselhaus,“Physical Properties of Carbon Nanotubes”,Imperial College Press,London UK 1998;及び、J.-B.Donnet,T.K.Wang,J.C.M.Peng,S.Reboullat[ed.],“Carbon Fibers”,Marcel Dekker NY; USA 1998、においてかなり詳細に記述されている
【0004】
単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、物理的方法(電気アークやレーザー)によって全体的に合成されるのに対して、多層カーボンナノチューブ(MWNT)は炭化水素ガスの堆積を含む化学的方法によって製造される。
【0005】
ナノチューブの直径は、SWNTでは約0.4nmから3nmを超えるものにまで亘り、MWNTでは約1.4nmから少なくとも100nm以上に亘る(Z.K.Tang et.al.,Science 292,2462(2001);R.G.Ding,G.Q.Lu,Z.F.Yan,M.A.Wilson,J.Nanosci.Nanotechnol.1,7(2001))。
【0006】
いくつかの研究論文にも、カーボンナノチューブを固体プラスチックに組み込むことにより、これらの固体プラスチックの機械的及び電気的性質を改善することができるということが記載されている(M.J.Biercuk et.al.,Appl.Phys.Lett.80,2767(2002);D.Qian,E.C.Dickey,R.Andrews,T.Randell,Appl.Phys.Lett.76,2868(2000))。
【0007】
カーボンナノチューブの性質により、電子エミッタ、原子間力顕微鏡用の膜またはチップに用いることが可能となる。
【0008】
さらに、ナノチューブは、金属又はプラスチック表面へのパウダーペイントを塗布する間に見られるように、局所的な静電帯電の防止に寄与することができる。
【0009】
カーボンナノチューブが添加される固体材料に、カーボンナノチューブの好ましい性質を付与することを可能とするために、該ナノチューブは前記固体材料の構成マトリックス(constituent matrix)中に均質に分布されなければならない。これを行うために、まず、液状の媒体におけるカーボンナノチューブを分散処理させることが必要である。このような分散が安定であるために、すなわち、液状媒体においてナノチューブのいかなる沈殿又は凝集が存在しないために、粒子間の接着力は最小化しなければならない。実際に、SWNT及びMWNTのいずれもが、幾つかのナノチューブを含有する複数のバンドル(bundles)の形態で集合する傾向がある。
【0010】
この目的のために、国際公開第02/076888号パンフレットには、ポリマーでコーティングされたカーボンチューブの重量の最大65%まで含有される液状媒体におけるカーボンナノチューブの懸濁液が記載されている。しかしながら、これらの懸濁液は、純水か、或いは、水溶液における懸濁液のみである。
【0011】
そして、ナノチューブを含むコンポジット材料を製造するためには、特に、水に不溶又は不混和の液状有機溶媒中でナノチューブを分散させることが必要である。
【0012】
米国特許第6099965号明細書には、選択的な分散剤の存在下で、有機溶媒中におけるこのような懸濁液が記載されているが、有機液状媒体におけるこれらの懸濁液中のカーボンナノチューブの濃度は0.1重量%未満である。
【0013】
米国特許第6187823号明細書には、有機溶媒中のカーボンナノチューブにおける溶液が記載されている。しかしながら、一方ではカーボンナノチューブがその表面にアミン又はアルキルアミンが付着することで変更された単層ナノチューブであり、他方では、前記表面上での化学修飾と、アミン基を前記構造上に接合することによりカーボン間の接着が破壊されることとによって、ナノチューブの固有の性質が低下してしまう。
【0014】
要約すれば、10%より大きい濃度での水溶液中にナノチューブを分散させる方法は現状で存在しているが、ナノチューブを化学修飾させずに、水に不溶又は不混和の有機溶媒中で0.1重量%より大きい量を分散させる方法は存在していない。
【0015】
水に不溶又は不混和の有機溶媒中でこのような量のナノチューブを分散させることは現状では不可能であり、それ故、水に不溶又は不混和の有機マトリックス中に均質にこれらのナノチューブを溶け込ませることは現状では不可能である、という事実が、フィルタとしてカーボンナノチューブを使用する障害となっている。
【0016】
他の関係において、光電池セル(太陽電池セルとも呼ばれる)は、ここ数十年において現れたエネルギー変換における最も有用なエコロジカルな手段の一つである。太陽電池セルの発展のために相当な努力がなされてきている。これらの太陽電池セルは、今や、小型計算機のような幅広く分布する電子製品の部品として使用されている。光電池セルの発展において顕著な進歩がなされてきてはいるものの、電気通信、自動車、又はホームオートメーション市場のような他の市場に開放するためには、エネルギー変換効率の向上や、寿命の増大、コストの低減が依然として必要である。
【0017】
この技術分野における結果状態は、シリコン、ヒ化ガリウム、硫化カドミウム等といった従来の半導体材料に基づく光電池セルで存在している。これらの装置において、PNヘテロ接合が含まれるが、現状の電気製品は、接合部での光誘起(photon-induced)の電荷分離に基づくものである。これらの装置で使用される半導体材料の生産には、高い製造温度が必要であり、光電池セルは単結晶材料が使用された場合にのみ最適な特性が得られる。これらの技術上の制約は、直接的又は間接的に製品コストを増大して、半導体材料に基づく光電池セルの適用分野の抑制する主要な要因となる。
【0018】
光電池セルの能動素子(電子ドナー構造)として共役ポリマーを使用する可能性は、1980年代の初期から示されてきている(Proprietes photovoltaiques des polymers conjugues(Photovoltaic properties of conjugated polymers):B.R.Weinberger,S.C.Gau and Z.Kiss,Appl.Phys.Lett.,38,555(1981);R.N.Marks,J.J.M.Halls,D.D.C.Bradley,R.H Friend and A.B.Holmes.Phys.:Condens.Matter 6,1379(1994))。
【0019】
有機材料においてフォトンの吸収により励起状態が形成されて、電子−ホールのペア:励起子が発生する。この場合に、電流の生成には、励起子を解離して、反対の電極への電荷の移動が必要である。共役ポリマーの使用により、重要な利益が得られる。例えば、(共役骨格の賢明な選択か、或いは、分鎖の機能化によって)ポリマーの禁止エネルギー帯の幅に関する選択を可能とし、それにより、ポリマーの吸収スペクトルを調整することを可能とする。ポリマーの使用、特に可溶性の共役ポリマーの使用を容易にすることにより、極大の表面領域における装置の製造が可能となり、現存の技術に比して重要なコスト低減がなされる。それにも関わらず、これらのシステムは、単結晶の半導体材料に基づく装置よりも効率が低く寿命が短くなってしまう。
【0020】
p型の共役ポリマー(すなわち、電子ドナーとして振る舞う)に基づく光電池セルの改良案が提案されている。例えば、米国特許第5,454,880号明細書及び米国特許第5,986,206号明細書のそれぞれには、電子アクセプタとして作用するフラーレン及び小さいカーボン粒子の混入が記載されている。しかしながら、前記記載の装置は、前記セルの外側への熱及び電荷(特に電子)における損失限界(limited dissipation)の不利益を有し、これにより、伝導ポリマーが低下して、光電池セルの寿命が制限されるとともに、その有効性が制約される。
【0021】
しかしながら、性能特性は、励起子の損失限界、電極への電荷の移動制限、及びセル外側への熱の損失限界によって、制約される。これらの不利益の全ては、現存の装置を低い光電池セルの効率に制限している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
[本発明の目的]
第1の部分では、本発明の狙いは、水に不混和な有機媒体中の高濃度のカーボンナノチューブを安定して均一に分散させる目的で複数のナノチューブの複合体を形成することで、これらナノチューブ間における粒子間の相互作用を減少させることを提案することにより従来技術の不利益を克服することである。
【0023】
第2の部分では、本発明の主要目的は、光起電力変換に関する多数の上述した技術的な問題を解決することである。特に、(電子ドナー構造として機能する)少なくとも1つの共役ポリマー、及び、(電子アクセプタ構造として機能する)少なくとも1つのチューブ状ナノ構造を備え、これらのナノ構造はその表面上に少なくとも1つの色素を備えて、前記セルの効率及び寿命を改善することが可能な装置を提供する処理における、問題を解決することである。
【0024】
本発明の他の目的は、特に光電池セルにおいて、光起電力変換素子として使用し得る装置を製造する方法を提供することである。
【0025】
本発明の目的は、共役ポリマーに基づく光電池装置におけるエネルギー変換効率及び寿命に関する特性を向上することである。
【0026】
本発明は、他の既知の方法に比してこのようなセルを低コストで生産することによって、このような装置の適用分野を拡げることも可能となるであろう。
【0027】
本発明の他の目的は、共役ポリマーに基づく光電池セルの全体的な特性を向上することである。
【0028】
前記特性の向上は、特に励起子の効率的な解離に相関がある。
【0029】
本発明には、かなり大多数の励起子の解離センター(dissociation center)の存在が含まれる。これらのセンターは、一般的に、電荷(電子又はホール)のためのアクセプタ集合体(acceptor entities)である。前記解離センターは、励起子に対して容易に接近可能でなければならない。このことにより、一方では、ドナー集合体(donor entities)(共役ポリマー鎖及び/又は色素)と前記解離センターとの間に良好な親密さが必要とされ、他方では、これらのセンターとドナー分子との間に非常に大きな干渉を付与する目的で分子スケール上での解離センターのための好ましいサイズが必要とされる。本発明の目的は、この技術上の問題を解決することである。
【0030】
励起子の解離とは別に、他に2つの重要なポイントが存在している。
・電荷を効率的に電極に移動させなければならない。一旦励起子が解離されたら、その再結合を防止するとともに、離れた相を通って電極への迅速な移動を保証することが必要である。
・最終的に、前記セルの外側への熱損失が保証されなければならない。実際に、熱により(例えば、ポリマー鎖の構造を変えることによって)前記セルの特徴が変わり得る一方で、他方では、ポリマー鎖を低下させることによって前記セルの寿命が制限される。それ故、熱損失は、共役ポリマーに基づく光電池セルの向上の重要な側面である。
【0031】
本発明の他の目的は、様々な形状を有する部材上に様々な形状の光電池セルを構築可能な形態の光電池セル能動素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
[第1部分]
本発明の文脈において、「ナノチューブ」の語は、直線及び曲線のカーボンナノファイバ、直線及び曲線の単層、二重層、又は多重層のカーボンナノチューブ(SWNT、DWNT又はMWNT)、気相中で成長したカーボンファイバ(VGCF)、及び任意の円筒型又はチューブ状のカーボン構造のようなカーボン系材料を示す。今後、「多重層ナノチューブ」の表現は、3またはそれ以上の層からなるナノチューブと同様に、二重層ナノチューブをも意味するものとする。「ナノチューブ」の語は、(製造後に発見されるナノチューブの形態の)アモルファスカーボン、グラファイト、又は触媒のような1又は2以上の成分とカーボンナノチューブとの混合物をも示す。
【0033】
「安定した分散」は、本発明の枠組み内において、環境温度で少なくとも4日間の保管の後に、分散したカーボンナノチューブの再凝集や再沈殿が生じない分散の意味として理解される。
【0034】
「分散したナノチューブの均質な分布」は、本発明の枠組み内において、ナノチューブが、たとえあったとしても、わずか数個の集合体からのみ形成され、この集合体が形成される場合に、これらは好ましくは非常に小さく(1μm未満)、そしてこれらは分散物の全体に亘って分布している、という意味として理解される。
【0035】
「裸の(bare)」ナノチューブは、本発明の枠組み内において、任意の表面変化処理、化学的処置又は錯化を経ていないナノチューブ、という意味として理解される。
【0036】
それ故、本発明の第1の対象は、外周上に直接吸着される少なくとも1つの色素の層と、前記少なくとも1つの色素の層上の固着点を有する少なくとも1つのポリマーとを有する裸のカーボンナノチューブからなる複合化したカーボンナノチューブである。
【0037】
本発明によれば、ナノチューブは、単層ナノチューブ(SWNT)、二重層ナノチューブ(DWNT)、多重層ナノチューブ(MWNT)、気相中で成長したナノチューブ(VGCF)、ナノファイバ、又は円筒型のカーボン構造、及び、これらの組合せ、であってもよい。
【0038】
ナノチューブは、単層ナノチューブ、二重層ナノチューブ、多重層ナノチューブ、又はこれらの組合せ、であることが好ましい。
【0039】
特に、ナノチューブは単層ナノチューブであることが好ましい。
【0040】
色素に関しては、ポリマー又は有機溶媒に適合するような無機色素、又は、アゾ色素、黄色及びオレンジモノアゾ色素、ジアゾ色素、ナフトール色素、ナフトールAS(登録商標)色素(ナフトールレッド)、アゾ色素レーキ、ベンズイミダゾロン色素、ジアゾ縮合色素、複合金属色素、イソインドリノン及びイソインドリン色素、多環式の色素、フタロシアニン色素、平均的に0.5〜3個のスルホン酸基を含有するスルホン酸化銅フタロシアニン色素、グラウンド塩化銅フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、臭素化フタロシアニン、アルミニウム水酸化物フタロシアニン、無金属フタロシアニン、キノフタロン色素、インダスロン(indathrone)色素、黄色ジアクリド(yellow diacrylide)色素、ジアゾピラゾロン色素、アゾ金属色素、トリアリールカルボニウム色素、ローダミンレーキ色素、ペリレン色素、キナクリドン色素及びジケトピロロピロール色素、のような有機色素、及びこれらの2又はそれ以上の混合物、であってもよい。
【0041】
前記色素は、フタロシアニンであることが好ましい。
【0042】
ポリマーに関しては、1又は2以上の、有機酸又は有機ヒドロキシ酸、及び、これらの誘導体、有機アミン、アルコール又はチオールポリマー、1又は2以上の有機酸及び1又は2以上の有機ポリアミンの共ポリマー又はブロック共ポリマー、ポリアルコール又はポリチオール、スチレン/エチレン共ポリマー、スチレン/プロピレン共ポリマー、スチレン/ブチレン共ポリマー、スチレン/アクリレート共ポリマー、スチレン/メタクリル共ポリマー、及びこれらの2又は3以上の組合せ、の群から選択される。
【0043】
前記ポリマーは、ヒドロキシオクタデカン酸/アジリジンのブロック共ポリマーであることが好ましい。
【0044】
好ましい1の実施の形態において、ナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は1/1/1から1/5/1の範囲である。
【0045】
有利には、ナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は1/2/1である。
【0046】
本発明の第2の対象は、前記少なくとも1つのポリマーが可溶である有機溶媒中に一様に分布する本発明の第1の対象によるナノチューブを含むカーボンナノチューブの安定した分散である。
【0047】
有機溶媒は、脂肪族炭化水素ヘプタン、オクタン、及びデカン、芳香族炭化水素ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン、ハロゲン化芳香族及び脂肪族炭化水素モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、及びカーボン四塩化物、アセテート、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート及びブチルアセテート、ケトン、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、及びメチルプロピルケトン、及びこれらの1又は2以上の混合物、の群から選択される。
【0048】
前記有機溶媒はキシレンであることが好ましい。
【0049】
本発明の分散物における好ましい実施の形態の1つにおいて、分散物の全重量に基づいて、ナノチューブの重量パーセンテージは0.01%〜5%の範囲であり、色素の重量パーセンテージは0.01%〜50%の範囲であり、分散物の全重量に対するポリマーの重量比は0.01%〜5%の範囲である。
【0050】
本発明の第3の対象は、蒸発装置に適合した容器からなる本発明によるナノチューブの分散物を蒸発させて、本発明による分散物及び高圧ガス(propellant)を保持するための装置である。
【0051】
本発明の第4の対象は、カーボンナノチューブの分散物の製造のための方法であり、以下のステップを有するという特徴がある。
a)ポリマーが可溶な有機溶媒に、少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの色素と、裸のナノチューブとを添加するステップ、
b)ステップa)で得られた合成物を混合するステップ。
【0052】
本発明の第4の対象によるナノチューブの分散物の製造のための方法における好ましい実施の形態の1つにおいて、ステップa)は、以下のステップを含む。
a1)ナノチューブ及び前記少なくとも1つの色素を混合するステップ、
a2)ステップa1)で得られた混合物に、ポリマーが可溶な有機溶媒を添加するステップ、
a3)ステップa2)で得られた混合物に、少なくとも1つのポリマーを添加するステップ。
【0053】
この場合、ステップa1)の混合ステップは、研削によってなされることが好ましい。
【0054】
本発明の第4の対象によるカーボンナノチューブの分散物を製造するための方法における全てのケースで、ステップb)の混合ステップは、ホーンの超音波処理によってなされることが好ましい。
【0055】
本発明の第4の対象によるカーボンナノチューブの分散物を製造するための方法の変形例として、溶媒の一部を蒸発させるためにステップc)は、ステップb)の後で行ってもよい。
【0056】
本発明によるカーボンナノチューブの分散物を製造するための方法は、全てのケースで、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、二重層ナノチューブ(DWNT)、多重層ナノチューブ(MWNT)、気相中で成長したカーボンファイバ(VGCF)、ナノファイバ又は任意の円筒型のカーボン構造、及びこれらの混合物、に適用される。
【0057】
前記ナノチューブは、単層ナノチューブ、二重層ナノチューブ、多重層ナノチューブ、又は、これらの混合物であることが好ましい。
【0058】
前記ナノチューブは、単層ナノチューブであることが特に好ましい。
【0059】
本発明によるカーボンナノチューブの分散物を製造するための方法における第1の特徴によれば、前記少なくとも1つの色素は、ポリマー又は有機溶媒に適合するように処理された無機色素、又は、アゾ色素、黄色及びオレンジモノアゾ色素、ジアゾ色素、ナフトール色素、ナフトールAS(登録商標)色素(ナフトールレッド)、アゾ色素レーキ、ベンズイミダゾロン色素、ジアゾ縮合色素、複合金属色素、イソインドリノン及びイソインドリン色素、多環式の色素、フタロシアニン色素、平均的に0.5〜3個のスルホン酸基を含有するスルホン酸化銅フタロシアニン色素、グラウンド塩化銅フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、臭素化フタロシアニン、アルミニウム水酸化物フタロシアニン、無金属フタロシアニン、キノフタロン色素、インダスロン(indathrone)色素、黄色ジアクリド(yellow diacrylide)色素、ジアゾピラゾロン色素、アゾ金属色素、トリアリールカルボニウム色素、ローダミンレーキ色素、ペリレン色素、キナクリドン色素及びジケトピロロピロール色素、のような有機色素、及びこれらの2又はそれ以上の混合物、を含む群から選択される。
【0060】
この場合、前記少なくとも1つの色素は、フタロシアニンであることが好ましい。
【0061】
本発明によるカーボンナノチューブの分散物を製造するための方法における他の特徴によれば、前記ポリマーは、1又は2以上の、有機酸又は有機ヒドロキシ酸、及び、これらの誘導体、有機アミン、アルコール又はチオールポリマー、1又は2以上の有機酸及び1又は2以上の有機ポリアミンの共ポリマー又はブロック共ポリマー、ポリアルコール又はポリチオール、スチレン/エチレン共ポリマー、スチレン/プロピレン共ポリマー、スチレン/ブチレン共ポリマー、スチレン/アクリレート共ポリマー、スチレン/メタクリル共ポリマー、及びこれらの2又は3以上の組合せ、の群から選択される。
【0062】
前記ポリマーは、ヒドロキシオクタデカン酸/アジリジンのブロック共ポリマーであることが好ましい。
【0063】
本発明によるカーボンナノチューブの分散物を製造するための方法における好ましい1の実施の形態によれば、ナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は1/1/1から1/5/1の範囲である。
【0064】
ナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は1/2/1であることが、特に好ましい。
【0065】
本発明によるカーボンナノチューブの分散物を製造するための方法におけるさらに他の特徴によれば、有機溶媒は、脂肪族炭化水素ヘプタン、オクタン、及びデカン、芳香族炭化水素ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン、ハロゲン化芳香族及び脂肪族炭化水素モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、及びカーボン四塩化物、アセテート、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート及びブチルアセテート、ケトン、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、及びメチルプロピルケトン、及びこれらの1又は2以上の混合物、の群から選択される。
【0066】
前記有機溶媒はキシレンであることが好ましい。
【0067】
全体的には、本発明によるカーボンナノチューブの分散物の製造のための方法において、分散物の全重量に基づいて、ナノチューブの重量パーセンテージは0.01%〜5%の範囲であり、色素の重量パーセンテージは0.01%〜50%の範囲であり、分散物の全重量に対するポリマーの重量比は0.01%〜5%の範囲である。
【0068】
本発明の第5の対象は、カーボンナノチューブの分散物の製造のための方法であり、以下の段階を含む。本発明の第1の対象によるナノチューブを、パウダー形状で、ナノチューブの外周上に色素コーティングした層に固着したポリマーが可溶な有機溶媒中に配置する段階と、本発明における前記溶剤と前記ナノチューブとをかき混ぜて混合する段階と、を含む。
【0069】
カーボンナノチューブの分散物の製造のための方法における1の特徴によれば、有機溶媒は、脂肪族炭化水素ヘプタン、オクタン、及びデカン、芳香族炭化水素ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン、ハロゲン化芳香族及び脂肪族炭化水素モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、及びカーボン四塩化物、アセテート、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート及びブチルアセテート、ケトン、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、及びメチルプロピルケトン、及びこれらの2又は3以上の混合物、の群から選択される。
【0070】
前記有機溶媒は、キシレンであることが好ましい。
【0071】
本発明の第5の対象による、さらに好ましいものとして、有機溶媒及びナノチューブをかき混ぜて混合するステップは、ホーンの超音波処理によってなされるものがある。
【0072】
本発明の第6の対象は、本発明の第1の対象によるカーボンナノチューブの分散物の製造のための方法であり、溶媒の全体を蒸発させるためにステップd)に従って、本発明の第4又は第5の対象による分散物を製造する方法のステップを含むという特徴がある。
【0073】
本発明の第7の対象は、水不溶性有機マトリックス及びカーボンナノチューブを含む種類のコンポジット材料であり、カーボンナノチューブは本発明によるナノチューブであるという特徴がある。
【0074】
本発明の第8の対象は、コンポジット材料からなる物品を製造するための、本発明の第1の対象によるナノチューブの用法、又は本発明の第6の対象による方法で得られたナノチューブの用法である。
【0075】
本発明の第9の対象は、コンポジット材料からなる物品を製造するため、本発明の第1の対象による分散物の用法、又は本発明の第4又は第5の対象による方法で得られた分散物の用法である。
【0076】
第8及び第9の対象において、前記物品は、特にフィルム又は薄層である。
【0077】
本発明の第10の対象は、フィルム又は薄層を製造するため、本発明の第3の対象による装置の用法である。
【0078】
本発明の第11の対象は、水に不溶又は不混和なポリマーマトリックスと、カーボンナノチューブとを含む種類のコンポジット材料からなる物品を製造するための方法であり、以下のステップを含むという特徴を有する。本発明の第4又は第5の対象による方法でナノチューブの分散物を製造するステップと、その後に、ステップe)水不溶のポリマーマトリックスの可溶な材料で構成される有機溶媒中の水不溶のポリマーマトリックスを構成する材料を分離するための処理と、ステップf)本発明の第4又は第5の対象による方法で得られたナノチューブの分散物とステップe)で得られた溶液とを混合するための処理と、ステップg)所望の物品を形成するための処理と、を有し、これらにおいて、ナノチューブの分散物を製造するために用いられる溶媒と、ポリマーマトリックスを構成する材料を溶解するために用いられる溶媒とは、互いに可溶であり、又は混和性である。
【0079】
前記2つの溶媒は、同質であることが好ましい。
【0080】
このプロセスにおいて、ポリマーマトリックスは、熱可塑性ポリマーポリスチレン、ポリエステルメタクリル樹脂、塩化ポリビニル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、酸化ポリメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、及びポリアミド、及びこれらの2又は3以上の混合物及び共ポリマーを含む群から選択される。
【0081】
前記ポリマーマトリックスは、ポリアミドであることが好ましい。
【0082】
本発明は、添付された図面を参照して与えられた下記の説明用の記載から、さらに良く理解され、他の利益及び特徴はより明確に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
前記詳細な説明、特許請求の範囲、図面中において、参照番号1は、上記で定義したような「裸の」カーボンナノチューブを示し、参照番号2は、本発明による処理の前に、空気又は溶媒又はポリマーマトリックスと接触する前記ナノチューブ1の外周部を示し、参照番号7は、本発明による「複合」カーボンナノチューブを示す。
【0084】
本発明による前記「複合」カーボンナノチューブを、図1を参照してまず第1に説明する。
【0085】
図1に見られるように、前記「裸の」カーボンナノチューブは、商業的に購入でき本発明による処理がされていないので、番号1で示され、本発明による前記ナノチューブは番号7で示される。
【0086】
それ故、ナノチューブ7は、前記「裸の」ナノチューブを少なくとも1つの色素3の層で被覆したもので構成される。色素3の層は、番号2で示される、前記ナノチューブ1の外周上に吸着される。
【0087】
色素3の層は、前記ナノチューブの外周だけを覆う。
【0088】
実際に、ナノチューブは、自身の上でロールされたグラファイトシートを備える。しかしながら、このチューブは、両端部を2つの半球体で「ふさがれ」、そのナノチューブの内部に色素(単数又は複数)及びポリマー(単数又は複数)を接触しないようにしている。それ故、色素3は、ナノチューブの外周上だけで吸着される。色素3に接触できるのはこの表面だけだからである。
【0089】
さらに、本発明によるナノチューブ7は、番号4で示した少なくとも1つの固着点によって色素3の層に束縛された少なくとも1つのポリマー5を有する。
【0090】
図1に見られるように、ポリマー5は、色素3の層上の単一の固着点4、又は、幾つかのこのような固着点を有し、ポリマー5のチェインの残りは、自由に浮動して、立体障害によってナノチューブ全体を被覆して保護する。
【0091】
理論によって束縛されることを望まないが、色素3はカーボンナノチューブに、ポリマー5は色素3の層に、ファンデルワールス型の相互作用によって、それぞれ束縛されると考えられる。
【0092】
「錯化」は、化学結合ではない相互作用の意味としてここで理解されるのは、このような理由のためである。
【0093】
ポリマー5は、線状又は枝状のホモポリマー又は共ポリマーであってもよく、ブロック共ポリマーが好ましい。
【0094】
実施例は、1又は2以上の有機酸又は有機ヒドロキシ酸、及び、これらの誘導体におけるポリマー5におけるものである。特に、これらのポリマー5は、有機アミン、アルコール又はチオールポリマー、1又は2以上の有機酸及び1又は2以上の有機ポリアミンの共ポリマー又はブロック共ポリマー、ポリアルコール又はポリチオール、スチレン/エチレン共ポリマー、スチレン/プロピレン共ポリマー、スチレン/ブチレン共ポリマー、スチレン/アクリレート共ポリマー、スチレン/メタクリル共ポリマー、及びこれらの2又は3以上の組合せ、であっても良い。
【0095】
前記ポリマーは、ヒドロキシオクタデカン酸/アジリジンのブロック共ポリマーであることが好ましい。
【0096】
ナノチューブ1/色素3/ポリマー5の重量比は、「裸の」カーボンナノチューブの特定の表面領域によって変わってくる。これらの重量比は1/1/1から1/5/1の範囲であることが好ましく、1/2/1であることが特に好ましい。
【0097】
上述したように本発明のナノチューブは、パウダー形状であるので、それ故、容易に格納、移動及び取扱いが可能である。
【0098】
しかしながら、上記から分かるように、これらのナノチューブがポリマーマトリックス中で充填材として用いられる場合、カーボンナノチューブが一様に分布した安定した分散物を用意する必要がある。
【0099】
4日又は数ヶ月に至る後に容器の底に堆積物が存在していないときに分散物が安定していると見なされることがここで、想起されるであろう。
【0100】
不安定な分散物のケースでは、この堆積は、分散物の製造中に経てきた異なる処理中、特に、超音波処理中における懸濁粒子の凝集によるものである。
【0101】
「カーボンナノチューブの一様な分布」は、カーボンナノチューブの分布が分散物の全体に亘り均質であり、すなわち、カーボンナノチューブが前記分散物のあらゆる地点で均一に分布しているという意味に理解される。
【0102】
それ故、分散物中のカーボンナノチューブの「一様な分布」という概念を洗練可能な1つの基準は、凝集体のサイズである。これらの凝集体が小さいほど、分散体がより一様になる。ナノチューブの集塊が少なくなるからである。
【0103】
しかしながら、大きい集塊における一様さを伴って、分散物が安定するとともにカーボンナノチューブの一様な分布を有することができる。これは好ましいケースではないが、本発明の枠組み内において許容し得る。
【0104】
完璧なケースとしては、非常に小さい集塊又は全く集塊のない分散物中で均一な分布を有する安定した一様な分散物であり、このケースでは、ナノチューブは完全に個別に存在する。
【0105】
それ故、「一様な分布」は、分散物中のナノチューブの凝集体の均一な分布の意味として理解され、これらの凝集体は、確かに一様ではあるが均一ではない分布に対応する制限されたサイズを超えないものである。
【0106】
それ故、凝集物のサイズは1つの基準であるが、この基準は分散物中のナノチューブの濃度によって修正する必要がある。
【0107】
それ故、図2、3及び4を比較すると、図2はカーボンナノチューブの非常に小さい凝集体の一様な分布を有する分散物を示し、図3はナノチューブのより大きい凝集体の一様な分布を有する他の分散物を示し、図4はナノチューブの一様な分布を有さない分散物を示し、図4のナノチューブは大きい凝集体をなし、分散物の全体に亘って均一に分布していない。
【0108】
本発明のナノチューブ7は、ポリマー5が可溶な有機溶媒6中で再分散でき、これにより安定した状態が生じる。これらの分散物において、ナノチューブ7の重量濃度は、0.01%から5%の範囲に亘り、典型的には重量で0.2%から5%までであっても良く、その残りは有機溶媒である。
【0109】
有機溶媒6は、有機液状媒体である。有機溶媒は、極性有機溶媒であっても良いが、無極の有機溶媒であることが好ましい。「無極」の用語は、誘電率εが典型的に9.5より小さい有機液体又は樹脂を示している。
【0110】
有機溶媒6の例は、脂肪族炭化水素ヘプタン、オクタン、及びデカン、芳香族炭化水素ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン、ハロゲン化芳香族及び脂肪族炭化水素モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、及びカーボン四塩化物、アセテート、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート及びブチルアセテート、ケトン、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、及びメチルプロピルケトン、及びこれらの2又は3以上の混合物、である。
【0111】
このナノチューブの再分散は、ポリマー5が可溶であるように選択されたナノチューブ6を環境温度で単に混合することによってもたらされる。
【0112】
図2において見られるように、得られた分散物は数ヶ月に亘り安定であり、複合ナノチューブ7はこの分散物中で一様に分布している。
【0113】
しかしながら、上述のように規定した有機溶媒6中でのこのようなナノチューブの分散物は、直接的に得ることもできる。
【0114】
それ故、有機溶媒6中でカーボンナノチューブが安定に分散している分散物を得るために、本発明による方法は、以下のステップを含む。
a)ポリマー5が可溶な有機溶媒6に、ナノチューブ1、少なくとも1つのポリマー5及び少なくとも1つの色素3を添加するステップ、
b)ステップa)で得られた合成物を混合するステップ。
【0115】
一の好ましい実施の形態において、ステップa)は、以下のステップを含む。
a1)ナノチューブ及び前記少なくとも1つの色素3を混合するステップ、
a2)ステップa1)で得られた混合物に、ポリマー5が可溶な有機溶媒6を添加するステップ、
a3)ステップa2)で得られた混合物に、少なくとも1つのポリマー5を添加するステップ。
【0116】
ステップb)の混合ステップは、ホーンの超音波処理によってなされることが好ましい。
【0117】
この分散物中のナノチューブの濃度を増大させるために、この方法は、ステップb)の後で、ステップc)溶媒6の一部を蒸発させるためのステップ、を有してもよい。
【0118】
この方法において、これらの分散物における組成の一部を構成するナノチューブ1,7、有機溶媒6、ポリマー5及び色素3は、上述したものと同一である。
【0119】
同様に、ナノチューブ1,7、色素3、ポリマー5及び有機溶媒6の重量比及び重量濃度は、上述したものと同質のものである。
【0120】
本発明のナノチューブは、前記分散物をステップb)の後で溶媒全体の蒸発を実行することにより、パウダー形状で得られる。
【0121】
本発明の分散物は、コンポジット材料又はコンポジット材料からなる物品を製造するために用いてもよい。
【0122】
本発明の特に有利な実施の形態の1つにおいては、前記分散物は蒸発装置及びガス、状況に応じて液化ガスのような高圧ガスを備えた容器中に配置されるであろう。このような装置は、カーボンナノチューブのフィルム又は薄層を製造するために特に有利である。
【0123】
この場合に、樹脂又は界面活性剤のような、フィルム形成物質又はバインダーを、本発明によるカーボンナノチューブの分散物に添加しても良い。
【0124】
カーボンナノチューブの凝集体のサイズは4日後及び数ヶ月後にも観察される。
【0125】
本発明によるナノチューブ及び本発明による分散物は、コンポジット材料又はコンポジット材料からなる物品の製造のために、非常に単純な方法で用いてもよい。
【0126】
「コンポジット材料からなる物品」は、本発明の蒸発装置を用いずとも製造され得るフィルム及び薄層を含むものと理解される。
【0127】
水に不溶又は不混和なポリマーマトリックスと、カーボンナノチューブとを含む種類のコンポジット材料又はコンポジット材料からなる物品を製造するための典型的な方法は、本発明によるナノチューブの分散物を製造するための以下のステップを含む。ステップe)水不溶のポリマーマトリックスの可溶な材料で構成される有機溶媒7中の水不溶のポリマーマトリックスを構成する材料を分離するための処理と、
ステップf)本発明の方法で得られたナノチューブの分散物とステップe)で得られた溶液とを混合するための処理と、
ステップg)所望の物品を形成するための処理と、を有し、これらにおいて、ナノチューブの分散物を製造するために用いられる溶媒6と、ポリマーマトリックスを構成する材料を溶解するために用いられる溶媒7とは、互いに可溶である。
【0128】
溶媒6及び溶媒7は、同質であることが好ましい。
【0129】
ナノチューブ7が添加されるポリマーマトリックスは、熱可塑性ポリマーポリスチレン、ポリエステルメタクリル樹脂、塩化ポリビニル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、酸化ポリメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、及びポリアミド、及びこれらの2又は3以上の混合物及び共ポリマーのような、任意の水不溶性ポリマー材料からなることができる。
【0130】
本発明の理解を深めるために、純粋に説明のために付与されて限定を暗示しない、いくつかの実施の形態が記述される。
【0131】
最初に、異なる重量濃度のナノチューブ1、色素3、及びポリマー5を有するカーボンナノチューブの17の分散物を用意した。溶媒の量は、XF002を除き、一定に保持した。
【0132】
得られた17の分散物は、上述したカーボンナノチューブの分布の安定性及び一様性の試験をした。
【0133】
使用したカーボンナノチューブは、NANOLEDGE S.A.,MONTPELLIER,FRANCEで製造され販売された「裸の」カーボンナノチューブである。
【0134】
使用した色素は、AVECIA S.A./N.V.,Brussels,Belgiumで販売され、商標登録されたSolsperse RTM5000(登録商標)のフタロシアニン系色素の混合物である。
【0135】
前記ポリマーは、AVECIA S.A./N.V.,Brussels,Belgiumで販売され、商標登録されたSolsperse RTM24000SC(登録商標)のヒドロキシオクタデカン酸/アジリジンのブロック共ポリマーである。溶媒は、SIGMA-ALDRICH CHIMIE S.A.R.L.,38299 Saint Quentin Fallavier Cedexで販売されたキシレン(異性体の混合物、puriss.p.a.)である。
【0136】
ナノチューブの凝集体が存在する可能性を評価するため、及び、ナノチューブの凝集体が存在していれば、これらの凝集体のサイズを評価するために、これらの17の分散物を、60倍の倍率の光顕微鏡でそれぞれ観察した。この測定結果は、分散物中のカーボンナノチューブの一様又は非一様な分布の典型である。
【0137】
これらのテーブルに、1から5段階で凝集体のサイズを示す。
表記5は、100,000nmを上回るサイズの凝集体に対応し、
凝集体のサイズの表記4は、100,000nmを下回るが10,000nmを上回る凝集体を示し、
表記3は、10,000nmを下回るが1000nmを上回る凝集体を示し、
表記2は、1000nmを下回るか、又は等しい凝集体を示し、
表記1は、100,000nmを下回るか、又はより好ましくは、250nmに等しい凝集体を示す。
【0138】
凝集体のサイズが小さくなるほど、分散物中のカーボンナノチューブの分布がより一様になることがわかった。
【0139】
これらの分散物のそれぞれは、環境温度で4日間及び4月間保存して、カーボンナノチューブの沈殿及び/又は再凝集が存在していたか否かを決定するため、それぞれの期間経過後に再調査をした。
【0140】
[比較実施例1:テーブル1のXF001で示す]
このケースでは、比較のために、カーボンナノチューブの分散物をポリマーを使用せずに用意した。
10.0mgの「裸の」ナノチューブ(1)と、20.0mgの色素とをボールミルで乾式研削することにより混合した。
ナノチューブ1/色素3/ポリマー5の重量比は、この実施例では1/2/0である。
5000.3mgのキシレンをこの混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理することで混合した。
【0141】
[比較実施例2:テーブル1のXF002で示す]
この分散物もまた、比較のために用意した。
このケースでは、カーボンナノチューブの分散物を色素を使用せずに用意した。それ故、6.8mgの裸のカーボンナノチューブと、3.7mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。ナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/0/0.54である。
2503.3mgの溶媒をこの混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理することで混合した。
この凝集体のサイズ及び安定性の測定の結果はテーブル1に示している。
【0142】
[比較実施例3:テーブル1のXF010で示す]
10.1mgの裸のカーボンナノチューブと、8.4mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。このケースでは、色素を使用してない。
この実施例でのナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/0/0.83である。
4951.0mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理することで混合した。
この凝集体のナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0143】
[実施例1:テーブル1のXF003で示す]
9.5mgの裸のカーボンナノチューブと、12.3mgの色素と、4.0mgのポリマー、すなわちナノチューブ/色素/ポリマーの重量比が1/0.3/0.42であるが、とをボールミルで乾式研削して混合した。
5000.13mgのキシレンをこの混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理することで混合した。
この得られた凝集体の安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0144】
[実施例2:テーブル1のXF004で示す]
9.8mgの裸のカーボンナノチューブと、20.3mgの色素と、6.1mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
これらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/2.07/0.62である。
5000.0mgのキシレンをこの混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理することで混合した。
この得られた凝集体の安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0145】
[実施例3:テーブル1のXF005で示す]
9.9mgの裸のカーボンナノチューブと、1.0mgの色素と、6.8mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
これらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/0.1/0.69である。
5035.0mgのキシレンをこの混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理することで混合した。
この得られた凝集体の安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0146】
[実施例4:XF006で示す]
10.4mgの裸のカーボンナノチューブと、32.6mgの色素と、8.3mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
この実施例におけるこれらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/3.1/0.80である。
5008.0mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、2×15分間に亘ってバス超音波処理した。
この分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0147】
[実施例5:テーブル1のXF007で示す]
10.3mgの裸のカーボンナノチューブと、2.7mgの色素と、8.0mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
この実施例におけるこれらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/0.26/0.78である。
5008.0mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理した。
この分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0148】
[実施例6:テーブル1のXF008で示す]
10.2mgの裸のカーボンナノチューブと、3.9mgの色素と、8.2mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
この実施例におけるこれらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/0.38/0.80である。
5000.2mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理した。
この分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0149】
[実施例7:テーブル1のXF009で示す]
10.1mgの裸のカーボンナノチューブと、10.0mgの色素と、8.4mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
この実施例におけるこれらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/1/0.80である。
5010.0mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理した。
この分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0150】
[実施例8:テーブル1のXF011で示す]
10.3mgの裸のカーボンナノチューブと、1.6mgの色素と、8.5mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
この実施例におけるこれらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/0.15/0.82である。
4991.0mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理した。
この分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0151】
[実施例9:テーブル1のXF012で示す]
9.8mgの裸のカーボンナノチューブと、30.5mgの色素と、10.2mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
この実施例におけるこれらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/3.1/1.04である。
5006.0mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理した。
この分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0152】
[実施例10:テーブル1のXF013で示す]
10.3mgの裸のカーボンナノチューブと、11.2mgの色素と、10.3mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
この実施例におけるこれらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/0.1/1である。
5004.0mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理した。
この分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0153】
[実施例11:テーブル1のXF014で示す]
9.7mgの裸のカーボンナノチューブと、22.7mgの色素と、10.5mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
この実施例におけるこれらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/2.34/1.08である。
4994.0mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理した。
この分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0154】
[実施例12:テーブル1のXF015で示す]
10.3mgの裸のカーボンナノチューブと、20.2mgの色素と、15.3mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
この実施例におけるこれらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/1.96/1.48である。
4994.0mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理した。
この分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0155】
[実施例13:テーブル1のXF016で示す]
10.3mgの裸のカーボンナノチューブと、47.5mgの色素と、16.4mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
この実施例におけるこれらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/4.61/1.59である。
4995.0mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理した。
この分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0156】
[実施例14:テーブル1のXF017で示す]
10.1mgの裸のカーボンナノチューブと、20.6mgの色素と、33.2mgのポリマーとをボールミルで乾式研削して混合した。
この実施例におけるこれらナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/2/3.3である。
5003.0mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、全体を2×15分間に亘ってバス超音波処理した。
この分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果はテーブル1に示している。
【0157】
【表1】

【0158】
色素及びポリマーの両方を用いて得られた分散物の全てが安定であった。すなわち、これらは環境温度で4日間保管した後に、再凝集や再沈殿のいずれも示されかった。一方、ポリマー又は色素のいずれかをそのままで用いて得られた分散物は、数分間だけしか安定ではなかった。
【0159】
環境温度で4日間保管した後も安定であった全ての分散物は、4ヶ月経った後も安定であった。カーボンナノチューブの凝集体のサイズが減少したケースでは、一様かつ均一な分散物は保存されて、貯蔵容器の底には何も堆積物が存在していなかったため、これらでは改善さえ見られた。
【0160】
テーブル1からは、色素及びポリマーのいずれも用いずに得られた分散物はいずれも凝集体のサイズが5を示し、一様な分布を有していないことがわかる。
【0161】
それ故、この分散物は、凝集体のサイズを示す表記が2又は1であるときに一様な分散物を有すると考えられる。
【0162】
(テーブル1においてXF012で示した)実施例10、(テーブル1においてXF014で示した)実施例12、(テーブル1においてXF016で示した)実施例14で得られた分散物がカーボンナノチューブの一様な分布を有した安定した分散物を提供するということがテーブル1から分かる。
【0163】
それ故、本発明のカーボンナノチューブの製造に用いる裸のカーボンナノチューブの特定の表面領域と、本発明のカーボンナノチューブの製造に用いる裸のカーボンナノチューブの分散物と、本発明のカーボンナノチューブの分散物とによってこの比率は変わり得るが、ナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/5/1から1/2/1の範囲であることが好ましく、ナノチューブ/色素/ポリマーの重量比で得られた最良の結果は、1/2/1である。
【0164】
以下の実験の狙いは、本発明によって分散物及びナノチューブを製造する最良の方法を見つけることであった。
【0165】
ナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、これらの実験に対して、1/2/1の値を保持した。
【0166】
溶媒中で色素をカーボンナノチューブ及びポリマーと混合する方法によって、溶媒及び色素の量は変化した。
【0167】
ナノチューブ/色素/ポリマーの重量比が全て1/2/1である14の新たな分散物を用意した。
【0168】
これらの分散物を用意するために用いた裸のナノチューブ、色素、ポリマーは、上述したXF001からXF017の分散物を用意するために用いたものと同一である。
【0169】
ナノチューブ、色素、ポリマー、及び溶媒のmgで異なる重量は、下記のテーブル2に示す。
【0170】
分散物が得られたナノチューブの最終重量濃度もまた、分散物中のナノチューブの安定性及び一様な分布の測定の結果とともにテーブル2に示す。
【0171】
これらの分散物の用意のための作動条件は、テーブル3に示す。
【0172】
テーブル3において:
−BMは、ナノチューブ/色素/ポリマーの混合物が、単一のステップa)か、下記に示す三つのステップa1)、a2)、a3)かで、磁器モータの手研削で用意され、これらのパウダーが細かくした(ground)のときに溶媒の数滴を添加した、ことを示している。
−BBSは、ナノチューブ/色素/ポリマー又はナノチューブ/色素の混合物が乾式研削により用意され、溶媒を用いずに、Bioblock Scientific,Illkirch,FranceからのRetsch MM 2000の自動振動ミルにおいて、出力600ワット、振動数20kHzで、単一の鋼球を内側に配置して、振幅を70に設定してテーブル3に定められている時間で再使用していることを示している。
−BBHは、ナノチューブ/色素/ポリマー又はナノチューブ/色素の混合物が上述したものと同一のミルを用いて、元々のパウダーを溶媒の数滴で湿らせることを除いて同位置の条件下で用意されたことを示している。
【0173】
全ての溶媒に、ナノチューブ/色素又はナノチューブ/色素の混合物を添加して、テーブル3に定められている時間で全体を混合している。この混合は、テーブル3においてSBで表記したバス超音波処理か、テーブル3においてSCで表記したホーン超音波処理によって行っている。
【0174】
バス超音波処理は、DELTASONIC P500 S/R バスにおいて発生した分散物の超音波処理に相当する。この分散物を容器中に保持するとともに蒸留水で含浸して、前記バスを通して超音波をこの試料に透過させる。この処理時間は、テーブル3で定められている。
【0175】
ホーン超音波処理は、ホーンで発生した超音波による分散物の処理に相当する。使用した装置は、パルスを4に設定して振幅を60に設定したBIBLOCK SCIENTIFIC VIBRACELL 75455装置である。この分散物をガラス容器中に保持して、蒸留水のバス中で含浸させる。このバスの目的は、主に、超音波の適用期間中に試料を冷却して、エネルギーを透過しないようにすることである。実際に、超音波発生ホーンを、分散物中に直接侵入させて、超音波を直接適用している。
【0176】
ある場合においては、溶媒を部分蒸発させるためのステップを分散物を密集させるために行った。この処理は、熱耐性のガラス容器中に分散物を配置することにより行い、このガラス容器を磁気ミキサー付きホットプレートによって加熱した。テーブル3で定めた時間で加熱状態を維持し、同時に前記試料を撹拌した。撹拌時間は、テーブル3において表記Aで示されている。
【0177】
下記の実験も、これらの条件を最適化するために行った。
【0178】
[実施例15:試料XF013]
25.2mgの裸のカーボンナノチューブと、50.8mgの色素と、524.3mgのキシレンとをボールミルで湿式研削して混合した。
4483.1mgのキシレンをこの得られたグランド混合物に添加して、ホーン超音波処理を生成された混合物に30分間適用した。
そして、25.8mgのポリマーを添加した。
ナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は、1/2/1である。
4605.2mgのキシレンを蒸発させた。生成された分散物は、その全重量に基づいて重量濃度5%のナノチューブを有し、数ヶ月間に亘って安定であった。
【0179】
【表2】

【0180】
【表3】

【0181】
図2、図3及び図1を比較することで分かるように、得られた分散物におけるナノチューブの安定性及び一様な分布の測定結果により、XFF009、XFF007及びXFF005だけが、安定でかつ一様な分布のカーボンナノチューブを有する分散物である、ということが示される。これらの図は、60倍の倍率での光顕微鏡によって撮られた、分散物XFF005の写真(図2)、分散物XFF009の写真(図3)、分散物XFF010の写真(図4)を、示している。
【0182】
分散物XFF005及び分散物XFF009の凝集体のサイズは、分散物XFF010の凝集体のサイズよりも際だって小さい。このことは、分散物XFF005及び分散物XFF009のカーボンナノチューブが一様な分布であるが、分散物XFF010においてはそうではないことを示している。これが、ボールミルにおける研磨、好ましくは湿式研磨を伴うホーン超音波処理をして溶媒の部分蒸発を行うという処理が一様な分布のナノチューブを有する密集した安定な分散物を得るための最良の方法である、という理由である。
【0183】
カーボンナノチューブの濃度が低ければ、凝集体も小さくなるということも注目されるであろう。しかしながら、実施例15から分かるように、「裸の」ナノチューブは、有機溶媒中において十分な分散物を与えるために、分散物の全重量に基づいて少なくとも5重量%増加してもよい。
【0184】
溶媒の完全な蒸発は、分散物XFF013で行った。
【0185】
これにより、分離したナノチューブからなるパウダーが得られる。この混合物は、5mgのキシレンを添加して活発な撹拌をすることで再分散できる。生成された分散物は安定であり、一様な分布を有している。
【0186】
生成された分散物は、カーボンナノチューブで充填したポリアミドファイバを製造するために用いた。これを行うために、ポリアミドをキシレン中で分離させて、前もって得たナノチューブの分散物を、キシレンで分離したポリアミドと混合して、得られた混合物を押し出した。
【0187】
もちろん、本発明は記載及び図示された実施例によって全く限定されるものではない。
【0188】
それ故、カーボンナノチューブはその上にロールしたグラファイトのシートとして記載してきたが、有機溶媒中及び固体ポリマーマトリックス中で一様な分布を有する安定した分散物を得るために、カーボンナノファイバ及びカーボン粒子は同一の方法で処理しても良いことを当業者は理解するであろう。
【0189】
また、記載したポリマーはブロック共ポリマーであるが、他の任意のポリマー、特に枝状のポリマーを使用しても良い。
【0190】
言い換えれば、本発明は、記載された手段の全ての技術的な均等物を、その精神によって反映される組合せと同様に、包含するものである。
【0191】
[第2の部分]
本発明は、光起電力変換に関する様々な問題を解決することを可能にする。
【0192】
本発明は、様々な技術的に規定された問題を、後述するような装置を初めて提供することによって解決することを可能にする。この装置は、主に光電池セルの製造に用いられる。
【0193】
本発明は、説明したナノ構造が効果的に光起電力変換を誘起することができる点で技術的に規定された問題を解決し、これの従前の特徴はナノ構造上の色素の複合化にある程度起因するものであるが、電荷と同様に熱を急速に分散できる可能性にも起因するものである。
【0194】
それ故、第1の特徴によれば、本発明は、少なくとも1種類の共役ポリマーを含む電子ドナー構造と、少なくとも1つの複合した(すなわち、吸着された)色素を表面上に有する少なくとも1種類のチューブ状ナノ構造を含む電子アクセプタ構造と、を有する装置に関するものである。
【0195】
有利には、チューブ状ナノ構造は、直線及び/又は曲線の、単層、二重層、及び多重層のカーボンナノチューブ(SWNT、DWNT及びMWNT)、及びこれらの任意の組合せ、の群から選択される。
【0196】
この第2の部分のみにおいて、カーボンナノチューブ(SWNT、DWNT又はMWNT)は、端部の終端が全体的に半球状の実質的に円筒状の分子を形成するために互いに束縛されたカーボン原子で本質的に構成され、その後者も互いに束縛されたカーボン原子で主に構成されている、という意味で本発明者に理解されている。これらのカーボンナノチューブは、必ずしも完全な構造を形成する必要はない。この枠組みの範囲内で、例えば、多重層カーボンナノチューブ(MWNT)は、これら多重層カーボンナノチューブが比較的大きい直径を有するときにナノファイバー又はナノフィブリルの一種を形成すると考えることができる。
【0197】
前記ナノ構造は電気陰性の特徴を有するが、より電気陰性の強いものを提供することを可能にするその後の処理が所望の特性を得るために非常に有用である。
【0198】
前記チューブ状ナノ構造は、(熱的又は化学的に)ハロゲン化又は酸化してもよい。
【0199】
前記チューブ状ナノ構造は、前記ナノ構造の外部表面に接合された複合基を含んでいてもよい。これらの基は、線状であってもよく、また枝状であってもよい。これらは、一般的にカーボン原子を含むが、特に、エチル、エステル、カルボン酸、アミド、アミン、カルバメート、ヒドロキシル、イソシアネート及びハロゲン基といった、当業者に知られている任意の官能基と同様に、窒素、硫黄、酸素及びリンのようなヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0200】
有利には、チューブ状ナノ構造の電気伝導性を増大させるために、カーボンナノチューブをボロンでドーピングを含む群から選択された処理を受けるようにしてもよく、多重層のナノ構造を合成する間に例えばBNとグラファイト電極との間で放電によってドープすることができ、又は、例えばB(ガス)を窒素雰囲気下で1500−1700Kにして、カーボン原子をボロン原子によって部分置換することで単層ナノチューブをドープすることができる。
【0201】
有利には、チューブ状ナノ構造は、カーボンナノ構造の化学的又は熱的酸化処理のような、加工可能性を向上するための処置を施してもよい。
【0202】
これらのチューブ状ナノ構造は、上述したように、上部に色素を錯化(吸着)したカーボン構造を有する。この錯化は、本発明の第1の部分で上述したものと同様な手法で行うことが好ましい。
【0203】
色素は、ポリマー又は有機溶媒に適合するような無機色素、アゾ色素、黄色及びオレンジモノアゾ色素、ジアゾ色素、ナフトール色素、ナフトールAS(登録商標)色素(ナフトールレッド)、アゾ色素レーキ、ベンズイミダゾロン色素、ジアゾ縮合色素、複合金属色素、イソインドリノン及びイソインドリン色素、多環式の色素、フタロシアニン色素、平均的に0.5〜3個のスルホン酸群を含有するスルホン酸化銅フタロシアニン、塩化銅フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、臭素化フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン、キノフタロン色素、インダスロン色素、黄色ジアクリド色素、ジアゾピラゾロン色素、アゾ金属色素、トリアリールカルボニウム色素、ローダミンレーキ色素、ペリレン色素、キナクリドン色素及びジケトピロロピロール色素、ポルフィリン分子又はこれらの誘導体、のような有機色素、及びこれらの2又はそれ以上の混合物、であってもよい。
【0204】
本発明は、色素で複合化したナノチューブの任意の混合物にも関する。
【0205】
ナノチューブ上に色素を吸収することで、入射光の所定の波長の吸収を向上できる。それ故、励起状態を誘起する吸収スペクトルを拡げることができ、それ故前記セル内で光エネルギーの電気エネルギーへの変換を最大化できる。
【0206】
有利には、ナノ構造の表面上の色素の錯化は、共役ポリマーマトリックスにおけるチューブ状ナノ構造の均一な分散にも付加的に寄与する。
【0207】
有利には、チューブ状ナノ構造は、励起した色素の分子の励起状態(電子トラップ)に対する解離センターとしての機能を果たす。
【0208】
有利には、チューブ状ナノ構造は、励起した色素の分子により供給された電子に対して伝導ネットワークを提供する。
【0209】
有利には、電子アクセプタ構造を形成するように意図した段階では、アモルファスカーボン、グラファイト、フラーレンのようなカーボンを含むかご形分子といった選択的に所定の1又は2以上の成分と、ニッケル、イットリウム、コバルト、カルシウム、鉄、プラチナ、又は、パラジウムといった1又は2以上の触媒を含んでいてもよく、これらは特にナノチューブの合成反応の残留物である。
【0210】
ナノ構造は、熱伝導により、前記セルを光源に対して露出させて生じる熱損失を改善することもできる。使用したナノ構造は、高形状因子を備えた繊維の形態を有し、典型的に200ナノメートルより小さい最小寸法を有する。特に、これらの幾何学的な特徴は、共役ポリマーとナノ構造との間に大規模な界面領域を生み出し、上述した技術的な問題を解決することができる。
【0211】
有利には、チューブ状ナノ構造の典型的な直径は、ナノメートルの範囲であり、0.5から200ナノメートルの範囲であることが好ましい。ナノチューブはカーボンナノチューブ、特に150より大きい形状因子の単層のカーボンナノチューブ及び5より大きい形状因子の多重層カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0212】
形状因子は、前記構造の典型的な長さと典型的な直径との比として規定される。記載されたナノ構造はチューブ状であるが、本質的にカーボン原子からなる中空又は立体状であってもよい。
【0213】
単層ナノチューブの典型的な直径は、全体的に約0.4から4ナノメートルの範囲である。多重層ナノチューブの典型的な直径は、全体的に約1.4から少なくとも100ナノメートルの範囲である。これらの長さは典型的に数百ナノメートルであるが、数マイクロメータになる場合もある。このチューブの端部は開口していても良いし、又は半球状構造によって閉じられていてもよい。
【0214】
有利には、チューブ状ナノチューブは、基板上に堆積している時または共役ポリマーと混合している時に電子アクセプタ構造として機能する。
【0215】
本発明の装置は、共役ポリマーを有する電子ドナー構造をも必要とする。「共役ポリマー」は、非局在化π電子のシステムを有する任意の半導体ポリマーの意味で発明者に理解される。下記は、好適なポリマーの非限定的なリストである。ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、硫化ポリピロール、硫化ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(1,6−ヘプタディン)、選択されたアルキルが特にC−Cであるポリ−3−アルキルチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)又はPEDOT、ポリキノリン、選択されたアルキル基が特にC−Cであるポリ−3−アルキルスルホネート、ポリアニリン及びこれらの誘導体である。前記ポリマーは、ポリエチレンビニレン(PPV)及びポリ(3−オクチルチオフェン)属に属していることが好ましい。
【0216】
しかしながら、本発明はこれらの共役ポリマーに限定されず、他の共役ポリマーを用いて実行してもよい。特に、電子ドナー構造は、純粋な共役ポリマーや、いくつかの共役ポリマーの混合物、又は、共役ポリマーの共ポリマーであってもよい。
【0217】
電子アクセプタ構造と電子ドナー構造との間の界面領域は、分離部位の数を最大化するために出来るだけ大きくしなければならない。
【0218】
有利には、本発明の装置は、PNヘテロ接合を形成する。
【0219】
有利には、この装置は、記載したナノ構造と共役ポリマーとの間のコンタクト部からなるが、光電池セルの中心及び本質的な部分を形成する。
【0220】
第2の特徴によれば、本発明は、(電子ドナー構造として機能する)少なくとも1種類の共役ポリマー、及びナノ構造を備える装置を製造する方法に関する。この方法は、上述したものから選択した少なくとも1種類のチューブ状ナノ構造を有する電子アクセプタ構造の形成処理を含む。
【0221】
有利には、ナノチューブは、カーボン電極間における放電[D.S.Bethune,C.H.Kiang,M.S.DeVrees,G.Gorman,R.Savoy,Nature 363,605(1993),及びC.Journet,W.K.Maser,P.Bernier,A.Loiseau,M.Lamy de la Chapelle,S.Lefrant,P.Deniard,R.Lee,J.E.Fisher,Nature 388,756(1997)]、下記の文献に記載されたような、レーザー切断又は化学気相堆積を含む技術、すなわち、M.J.Yacaman,M.M.Ypshida,L.Rendon,J.G.Santesban,Appl.Phys.Lett.62,202(1993),又はH.Dai,A.G.Rinzler,P.Nikolaev,A.Thess,D.T.Colbert,R.E.Smalley,Chem.Phys.Lett.260,471(1996)、又は、一酸化炭素の不均化を含む技術[WO 0026138A1:Gas-phase nucleation and growth of single-wall carbon nanotubes from high-pressure CO]、又は、任意の他の類似の技術、により形成される。
【0222】
有利には、共役ポリマーを有する電子ドナー構造は、(熱間押出、ホットプレスのような)ポリマーの溶融後に成型する技術、(コーティングのような)溶体から成型する技術、フリーラジカル、陰イオンの重合、又は電解重合、及び、任意の他の類似の技術により形成される。
【0223】
第1の実施の形態において、前記装置は、相互に識別できる少なくとも電子アクセプタ上及び電子ドナーアクセプタ上に形成されている。特に、前記装置は、電子アクセプタ層に接触する電子ドナー層で形成されている。
【0224】
有利には、チューブ状ナノ構造を有する電子アクセプタ装置は、上述したチューブ状ナノ構造を有する懸濁液から堆積によってナノチューブを「ペーパー」状又はマット状の形態で集積(集合、アセンブル)している。この吸着した色素を含むナノチューブの懸濁液は、上述したようにして得ることができる。この堆積は、例えば、溶液中の錯化チューブ状ナノ構造における懸濁液の前部をろ過することによってなされ得る。このフィルタ上に残存する固体の部分は、典型的には数十ミクロンの自立したペーパーの一種を形成し、主に錯化チューブ状ナノ構造から形成される。残りの溶液は、必要であれば、蒸発させてもよい。色素によって錯化したナノチューブの溶液の製剤は、結合ポリマーも含んでいる。この結合ポリマーは、懸濁液を相互作用させて生成するために色素及び溶媒を生じさせる機能を有する。そして、ナノチューブのマット中のチューブ状ナノ構造は、板面違法性を付与する平板中に、ランダムに配置される。
【0225】
前記バインダーは、全体的に、上述したようなブロック共ポリマーである。
【0226】
有利には、ナノチューブの「ペーパー」又はマットの形態で集積されたチューブ状ナノ構造を有する電子アクセプタ構造は、特に共役ポリマーを有する電子ドナー構造に続いて接触するように組み込まれるが、電子ドナー構造とのコンタクト領域を増大させるための処置を経る。
【0227】
有利には、前記コンタクト領域は、ナノ構造を出現させる目的で例えば伝導層の厚さの一部に亘って接着ポリマーを除去することにより、ナノ構造を前記平板から離すことが可能な任意の方法によって増大され、この操作は、ケミカルアタック、レーザー又はUVのようなフォトンアタック、電子又はイオンボンバードメントのようなパーティクルアタック、研磨のようなメカニカルアタック、これらのアタックの組合せによって行うことが可能である。
【0228】
有利には、チューブ状ナノ構造におけるペーパー状の自立層は、光電池セルにおける電極として直接用いることができる。
【0229】
有利には、電子集電極と外部回路との間の抵抗定数をさらに減少させる目的で、金属の、好ましくはアルミニウム又は金の層は、チューブ状ナノ構造におけるペーパー状の自立層の上に蒸着することができる。
【0230】
有利には、電子ドナー構造は、単数又は複数の共役ポリマーの溶液から、又は、単数又は複数の溶融した共役ポリマーから堆積されるか、又は、ナノ構造の層における全体又は一部を前駆体モノマーで部分的に含浸させた重合又は電解重合によって形成されるか、又は、他の任意の類似の前処理によって形成される。最後のケースにおける共役ポリマーとしては、ポリアニリン及びポリピロールが好ましい。
【0231】
有利には、この電子ドナー構造は、注入、スピンコート、又は連続的なロールトゥロール製造方法によって堆積する。共役ポリマーは、ナノ構造の層を全体的に又は部分的に含浸することができる。
【0232】
全体的に、少なくとも1つの共役ポリマーを有する層を形成する電子ドナー構造は、電磁波の分離部位への到達が可能な厚さを有していなければならない。
【0233】
前記電子ドナー層は、約200nmの厚さを有していることが好ましい。
【0234】
前記電子ドナー層は、約150nmの厚さを有していることがさらに好ましい。
【0235】
第2の有利な実施の形態において、前記装置は、共役ポリマー中のチューブ状ナノ構造を分散させることで形成したコンポジット構造である。
【0236】
この実施の形態において、共役ポリマー中に分散したナノ構造は、電子を分離部位からカソードに向けるために、電子伝導ネットワークで形成することが好ましい。前記電子は、複数のナノ構造を経由して、前記複数のナノ構造の間をホッピングすることによって、このネットワーク上をゆっくりと動くことができる。
【0237】
有利には、複数のチューブ状ナノ構造は、前記ナノ構造の相当な長さによって、複数のナノ構造間でホップする数を最小化、又はゼロに低減させる間に、電子をカソードに向けることができ、これが電子透過の効率を制限する伝導モードである。そして、電子伝導ネットワークは、電子アクセプタ構造を構成する。
【0238】
有利には、コンポジット構造は、上述したように、色素によって錯化した前記ナノ構造を予め用意した分散物を(上述した方法によって)有機溶液中の共役ポリマーで溶液中において混合することによって製造される。乾燥状態での、共役ポリマーにおけるナノ構造の分散物は、均一であるか、または、勾配に従っていてもよい。ナノ構造の濃度勾配は、例えば、コーティング処理の間になされる沈殿によって得られる。
【0239】
この実施の形態において、光電池セルを製造する目的のために、本発明のナノ構造を含まない共役ポリマーの層で透過電極をコンポジット構造から絶縁することが有利である。実際に、この絶縁材がなければ、ナノ構造はしばしば伝導電極に直接接触して、2つの電極の間で短絡が形成される。
【0240】
全体的に、少なくとも1つの共役ポリマーを有する層を形成するコンポジット構造は、電磁波の分離部位への到達が可能な厚さを有していなければならない。
【0241】
前記コンポジット構造は、約300nmから500nmの範囲の厚さを有していることが好ましい。
【0242】
有利には、この層は、注入、スピンコート、又は連続的なロールトゥロール製造方法、又は他の任意の類似の方法によって堆積する
【0243】
第3の特徴によれば、本発明は、上述のように規定した装置を備える光電池セルに関する。
【0244】
第4の特徴によれば、本発明は、上述したように規定した製造方法によって製造される装置を備える光電池セルに関する。
【0245】
第5の特徴によれば、本発明は、電磁波から電気を生成する方法に関し、以下の処理を備える。
a)光電池変換を行うための上述のように規定した装置の用法。
【0246】
第6の特徴によれば、本発明は、電磁波から電気を生成する方法に関し、以下の処理を備える。
a)特に太陽によって放射される電磁波に接する上述のように規定した光電池セルを用意する処理と、
b)当業者によって知られた任意の技術によって形成されている前記光電池セルから電気を発生する処理。
【0247】
[光電池変換のための本発明におけるナノチューブの用法の説明]
図5は、標準的な光電池セルの一部を示す。
【0248】
光電池セル(1A)は、電子ドナー層(10)及び電子アクセプタ層(20)を備える。電子ドナー構造は、本発明において説明しているように、本質的に共役ポリマー、又は共役ポリマーの混合物で形成される。
【0249】
示した本発明において、電子アクセプタ層(20)は、本質的に少なくとも1種類のチューブ状ナノ構造(22)、すなわち、本発明において説明したように、(図1に示した)少なくとも一つの色素によってその表面上で錯化したチューブ状ナノ構造(22)で形成されている。
【0250】
例えば、電気アーク、レーザー切断、又は化学気相堆積を含む既知の方法によって、カーボンナノチューブを合成した後、アクセプタ集合体は、色素を錯化することによってナノチューブで形成される。前記錯化は、密な機械的混合の有利な方法によって実行することができ、その後、生成されたナノ構造は上述したように溶解され得る。バインダー(21)が、この溶液に添加される。そして、懸濁したチューブ状ナノ構造の溶液は、スピンコーティング、インクジェット印刷及び/又は連続したロールトゥロール製造処理から選択された方法によって電極(30)上に堆積する。従って、層(20)はバインダー(21)で混合したチューブ状ナノ構造を含む。層(10)は、電子アクセプタ部位(20)全体を覆うために、共役ポリマーの溶体からか、又は溶融した共役ポリマーからか、又は任意の他の類似の用意から堆積するか、若しくは、共役ポリマーでチューブ状ナノ構造の層の部分又は全体を含浸することによって製造される。
【0251】
電子ドナー構造(10)及び電子アクセプタ構造(20)は、共にPNヘテロ接合で形成される。
【0252】
電子アクセプタ構造(20)は、電気的な伝導電極(30)に接している。伝導電極(30)は、全体的に不透明であり金属(アルミニウム、等)からなる。
【0253】
電子ドナー構造(10)は、透明な、電気的な伝導電極(40)に接している。通常は、光電池セルを作動させる光は、透明電極(40)の方に向ける。
【0254】
図6は、図式的に光電池セル(1B)の一部を示す。この構造は、電子アクセプタ層及び電子ドナー構造が単一の複合層を形成しているという事実を除き、図5に示したものと一致している。この複合層は、図1において説明したように、チューブ状ナノ構造(22)で形成され、該ナノ構造は、共役ポリマーマトリックス(110)において電子伝導ネットワークを形成する。この電子アクセプタ構造(120)は、電気的な伝導層(130)に接触している。この構造(120)は、本質的に単一の共役ポリマー又は複数の共役ポリマーの混合物で形成される電子ドナー構造(150)にも接触している。この層の単数又は複数の共役ポリマーにより、電極(130)と透明伝導電極(140)との間の短絡を避けることができる。このような実施の形態により、チューブ状ナノ構造を高形状因子とともに用いることができ、特に、励起分離部位から電極(130)に電子を直接移動することができる。また、これらのチューブ状ナノ構造を用いることで、電子を弾道移動させることができる。このコンポジット構造(120)は、様々な方法で形成することができる。特に、ナノ構造は、ランダムに分散してもよく、機械的せん断力又は電場又は磁場が適用された場合に配向していてもよい。
【0255】
チューブ状ナノ構造のランダムな分散は、溶液中で共役ポリマーと混合することにより、又は溶融した共役ポリマーから、又は共役ポリマーの重合又は電解重合により、又は、任意の他の類似の技術によってもたらされる。共役ポリマーにおけるチューブ状ナノ構造の分散は、均一であってもよく、又は勾配に従っていてもよい。例えば、ナノ構造の濃度勾配は、「最大で」、最も重いチューブ状構造の沈殿によって得られ、このとき静電相互作用が静電相互作用に勝る。
【0256】
本発明における他の目的、特徴及び利点は、実施例を参照して説明的な記述から当業者に明らかになるであろう。これらの実施例は、単に説明の為に付与されたものであり、本発明の範囲をいかなる方法でも制限するものではない。
【0257】
下記の実施例は本発明の不可欠な部分を形成し、それ自体で完全な説明に基づく任意の従来技術に比して新規性が現れる他の特徴は、実施例を含み、その機能及びその全体的な応用において本発明の不可欠な部分を形成する
【0258】
それぞれの実施例が、一般的な範囲を有している。
【0259】
[光電池変換のための本発明におけるナノチューブの用法の実施例]
実施例16から21において、共役ポリマーは、ポリアニリン又はポリパラフェニレンビニレンであってもよい。
【0260】
[実施例16:本発明によるチューブ状ナノ構造からのナノチューブにおけるマット形状の電子アクセプタ構造の形成]
電子アクセプタ構造は、電気アーク方法を用いて形成される。2つのグラファイト電極は、予め排気をして不活性ガスで充填した筐体中で対向配置されている。アノードは、金属触媒(ニッケル、イットリウム、又は希土類の他の混合物)を含有するグラファイトロッドからなり、並進方向に移動でき伝導アセンブリによって支持されている。カソードは、水で冷却された移動可能なグラファイトブロックである。
【0261】
一旦システムが張力を受けて配置されると、電流通過時にアークを発生できるようにアノードはカソードに十分接近させられる。続いて、アノードは、数ミリメートルのオーダーでの距離を保つ。アノード中でジュール効果によって分散したエネルギーは、グラファイトが昇華するまでロッドを加熱する。アークの生成は、温度が6000Kに達し得るプラズマを生成することによって達成される。合成の間、電極間の一定距離を保持するために、アノードは、浸食が進行するにつれてカソードに向けて連続的に並進していく。
【0262】
単層ナノチューブは、30Vのオーダーでの電圧及び100Aに近い強度を伴って、約5.10Paの負圧下でヘリウム又はアルゴンの筐体内において従来型の方法で製造される。
【0263】
そして、これらのナノ構造は、本発明における実施例1から15で記載した方法によって、色素で覆われる。
【0264】
そして、電子アクセプタ構造は、複合ナノチューブの懸濁液からナノチューブの「ペーパー」又はマット状の形態で集積される。このペーパーは、例えば、懸濁液の前部をろ過することによって得られる。これにより、用いられる懸濁液の量及び濃度によって厚さを制御できるナノ構造の層におけるフィルタ上の構成がもたらされる。このステップは、任意的にリンスステップに先だって行うことができる。そして、自立した「ペーパー」は、フィルタから除去されて乾燥することができる。NB:ろ過の間、ナノ構造の懸濁液は、有利には、溶液を撹拌することで均一に保つことができる。
【0265】
[実施例17:任意的にバインダーを備えた、本発明によるチューブ状ナノ構造からの電子アクセプタ構造の形成]
電子アクセプタ構造は、実施例1から15において述べたような、バインダーを含む複合単層カーボンナノチューブの懸濁液から形成することができる。このケースにおいて、電子アクセプタ構造は、有利には、光電池セルを製造するときの伝導電極のような、スピンコーティングによってサポート上に堆積することができる。このステップは、残留する溶媒を除去するための乾燥ステップに先立って行われる。このスピンコーティング及び乾燥処理は、任意的に、任意の所望の回数で繰り返してもよい。有利には、バインディングポリマーの使用により、複合単層カーボンナノチューブの懸濁液を安定化させるとともに、その粘度を増大させることができ、スピンコーティング法による構造を製造可能な手段の範囲を拡げることができる。
【0266】
ナノ構造/バインディングポリマーの重量比は、1を超えることができる。
【0267】
[実施例18:処理したカーボンナノチューブに基づく電子アクセプタ構造の形成]
カーボンナノチューブは、その電気伝導度を増加させるために、ボロンでドープすることができる。例えば、B.Goldberg et al.,Carbon 38(2000)2017に記載されているように、このドーピングは、窒素雰囲気下で1500−1700Kにして、単層ナノチューブをB(ガス)で部分置換することでなされ得る。
【0268】
あるいは、又は加えて、カーボンナノチューブは、電気陰性度を増大させるために、参照文献を含み、L.Duclaux Carbon 40(2002)1751において記載されている、ハロゲン化及び酸化方法によって処理されうる。
【0269】
そして、前記ナノチューブは、実施例1から15に記載されたような色素で錯化される。
【0270】
そして、ナノチューブのペーパーを形成するための処置(実施例16)及びバインダーを含むナノチューブのフィルムを形成するための処置(実施例17)が、後に続いてもよい。
【0271】
[実施例19:接合したカーボンナノチューブに基づく電子アクセプタ構造の形成]
米国特許出願公開第2002/004028号明細書又はChem.Mater.14(2002)1472-1476の刊行物に記載されたような処置による、求核試薬をナノチューブの表面に接合することで、ナノチューブの求電子特性を増大させることができる。
【0272】
そして、前記ナノチューブは、実施例1から15に記載されたような色素で錯化される。
【0273】
そして、ナノチューブのペーパーを形成するための処置(実施例16)及びバインダーを含むナノチューブのフィルムを形成するための処置(実施例17)が、後に続いてもよい。
【0274】
[2つの相異なる層を含むPNヘテロ接合の形成]
実施例1で記載した電子アクセプタ構造は、スピンコーティング技術によって、この層の溶液からの共役ポリマーの層で覆われる。共役ポリマーの層は、100nmより小さいことが好ましい。そして、(100ナノメートルより小さい)アルミニウムの半透明層は、電極を形成するために、電子アクセプタ構造の対向面上に蒸着によって堆積される。他の電極は、ナノチューブの自立したペーパーによって、又は任意の電気的な伝導変換によって、その上に直接形成することができる。
【0275】
あるいは、実施例17において記載した電子アクセプタ構造は、インジウムスズ酸化物(ITO)の伝導基板上に用意される。有利には、バインディングポリマーは、熱処理(真空下における高温での加熱)によって、少なくとも表面的に分解させる。そして、共役ポリマーの薄層(好ましくは100nm未満)は、この共役ポリマーの溶液からのスピンコーティングによってこの装置の上に堆積する。(100ナノメートル未満)アルミニウムの半透明層は、第2電極を形成する目的で、ITOの対向面上に蒸着することによって堆積する。
【0276】
別の代換案として、共役ポリマーの薄層(好ましくは100nm未満)は、この共役ポリマーの溶液からのスピンコーティングによって、ITO基板上に堆積する。電子アクセプタ構造は、実施例17において記載したような装置の上に用意される。そして、この装置は、溶媒を抽出するために、オーブン中において真空下ではあるが適度な温度(moderate temperature)で乾燥される。そして、数百ナノメートルの厚さの層は、他の電極を形成する目的で、ITOの対向面上に蒸着によって堆積する。
【0277】
[実施例21:複合層を有するPNヘテロ接合の形成]
共役ポリマーの薄層(好ましくは100nm未満)は、この共役ポリマーの溶液からのスピンコーティングによってITO基板上に堆積する。この用意では、窒素雰囲気下の乾燥機中の環境温度で数分間放置しておく。
【0278】
実施例1から15に記載の方法によって色素で密な機械的混合を行った後、(単層又は多重層)のカーボンナノチューブは、これと同一の共役ポリマーに組み込まれて混合される。この用意では、前に得た基板上にスピンコーティングによって堆積する。ダストによる任意の汚染を避けるためには、この処理ステップの間は特に注意しなければならない。コーティング/乾燥操作は、窒素雰囲気下で数分間乾燥した後に、任意の所望の回数で繰り返してもよい。そして、この装置は、溶媒を抽出するために、オーブン中での真空下であるが適度な温度で乾燥する。
【0279】
そして、数百ナノメートルの厚さのアルミニウム層は、他の電極を形成するために、ITOの対向面上に蒸着により堆積する。
【図面の簡単な説明】
【0280】
【図1】本発明によるナノチューブの部分断面透視図を示す。
【図2】詳細な説明においてXFF09で表した、本発明による分散物の、60倍での光顕微鏡写真を示す。
【図3】詳細な説明においてXFF05で表した、本発明による他の分散物の、60倍での光顕微鏡写真を示す。
【図4】詳細な説明においてXFF010で表した、本発明による他の分散物の、60倍での光顕微鏡写真を示す。
【図5】ナノチューブのマットに基づいた電子アクセプタ層を含む、異なる層を有する標準的な光電池セルの一部を示す。
【図6】ナノチューブに基づく電子アクセプタ複合層を含む光電池セルの一部の構造線図を示す。
【符号の説明】
【0281】
1 裸のカーボンナノチューブ
1A 光電池セル
1B 光電池セル
2 カーボンナノチューブの外周部
3 色素
4 固着点
5 ポリマー
6 有機溶媒
7 複合カーボンナノチューブ
10 電子ドナー層
20 電子アクセプタ層
21 バインダー
22 チューブ状ナノ構造
30 伝導電極
40 伝導電極
110 共役ポリマーマトリックス
120 電子アクセプタ構造
122 チューブ状ナノ構造
130 伝導層
140 透明伝導電極
150 電子ドナー構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の共役ポリマーを含む電子ドナー構造と、少なくとも1つの複合した色素、又は、吸着された色素を表面上に有する少なくとも1種類のチューブ状ナノ構造を含む電子アクセプタ構造と、を有する装置。
【請求項2】
前記チューブ状ナノ構造は、直線及び/又は曲線の、単層、二重層、及び多重層のカーボンナノチューブ(SWNT、DWNT及びMWNT)、及びこれらの任意の組合せ、の群から選択されることを特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の装置。
【請求項3】
前記チューブ状ナノ構造上の複合化した色素は、ポリマー又は有機溶媒に適合するような無機色素、アゾ色素、黄色及びオレンジモノアゾ色素、ジアゾ色素、ナフトール色素、ナフトールAS(登録商標)色素(ナフトールレッド)、アゾ色素レーキ、ベンズイミダゾロン色素、ジアゾ縮合色素、複合金属色素、イソインドリノン及びイソインドリン色素、多環式の色素、フタロシアニン色素、平均的に0.5〜3個のスルホン酸基を含有するスルホン酸化銅フタロシアニン、塩化銅フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、臭素化フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン、キノフタロン色素、インダスロン色素、黄色ジアクリド色素、ジアゾピラゾロン色素、アゾ金属色素、トリアリールカルボニウム色素、ローダミンレーキ色素、ペリレン色素、キナクリドン色素及びジケトピロロピロール色素、ポルフィリン分子又はこれらの誘導体、のような有機色素、及びこれらの2又はそれ以上の混合物、から選択されることを特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
問題となる前記ナノ構造の典型的な直径は、ナノメートルの範囲であり、好ましくは0.5から200ナノメートルの範囲であり、好ましいナノ構造はカーボンナノチューブであり、特に150より大きい好ましい形状因子の単層のカーボンナノチューブ、及び、5より大きい好ましい形状因子の多重層カーボンナノチューブであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記チューブ状ナノ構造は、外周上に直接吸着される少なくとも1つの色素の層と、前記少なくとも1つの色素の層上の固着点を有する少なくとも1つのポリマーとを有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの色素の前記層上の固着点を有する前記ポリマーは、ヒドロキシオクタデカン酸/アジリジンのブロック共ポリマーであることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
ナノチューブ/色素/ポリマーの重量比は1/1/1から1/5/1の範囲であることを特徴とする、請求項5又は請求項6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記色素は、フタロシアニンであることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記共役ポリマーは、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、硫化ポリピロール、硫化ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(1,6−ヘプタディン)、選択されたアルキルが特にC−Cであるポリ−3−アルキルチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)又はPEDOT、ポリキノリン、選択されたアルキル基が特にC−Cであるポリ−3−アルキルスルホネート、ポリアニリン及びこれらの誘導体、好ましくはポリエチレンビニレン及びポリ(3−オクチルチオフェン)、を有する群から選択されることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記チューブ状ナノ構造は、電子アクセプタ構造の重量比で好ましくは50%未満で現されるバインディングポリマーと混合した電子アクセプタ構造として機能することを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記電子アクセプタ構造及び電子ドナー構造は、相互に識別できるか、又は、コンポジット構造を形成することを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、光電池セルのPNヘテロ接合を形成することを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
少なくとも1種類の共役ポリマーを有する請求項1から請求項12において規定された装置の製造方法であって、少なくとも1つの複合した色素又は吸着された色素を表面上に順に有する、少なくとも1種類のチューブ状ナノ構造を有する電子アクセプタ構造として機能する構造を形成するステップを含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
前記チューブ状ナノ構造は、チューブ状ナノ構造を含む懸濁液からの堆積によって、ナノチューブのペーパー又はマットの形態で集積されることを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
ペーパーの形態で集積されたチューブ状ナノ構造は、電子ドナー構造とのコンタクト領域を増大させるための処置を経ることを特徴とする、請求項13又は請求項14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
前記電子ドナー構造は、共役ポリマーの溶液からか、溶融した共役ポリマーからか、又は任意の他の類似の前処理から堆積され、該堆積は注入、スピンコーティング、又は任意の他の類似の方法によってなされることを特徴とする、請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記装置は、電子アクセプタ構造及び電子ドナー構造を形成するコンポジット構造を備え、前記コンポジット構造は、溶液中でチューブ状ナノ構造を共役ポリマーと混合することによって、又は溶融方法によって、又は任意の他の類似の技術によって製造されて、共役ポリマーのナノ構造の分散が均一であるか、又は勾配に従うことを可能にすることを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項1から請求項12のいずれかにおいて規定した装置を備え、又は、請求項13から請求項17のいずれか一項において規定した方法によって製造された、ことを特徴とする、光電池セル。
【請求項19】
電磁波から電気を生成する方法であって、
a)光電池変換を行うために請求項1から請求項12のいずれか一項において規定した装置を使用する処理、
を有することを特徴とする方法。
【請求項20】
電磁波から電気を生成する方法であって、
a)特に太陽によって放射される電磁波に接する請求項18に規定した光電池セルを用意する処理と、
b)前記光電池セルから電気を発生する処理と、
を有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−527107(P2007−527107A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516280(P2006−516280)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001444
【国際公開番号】WO2004/112163
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505457031)
【Fターム(参考)】