説明

表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末及び該表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を用いた黒色塗料、ゴム・樹脂組成物

【課題】 本発明は、凝集粒子が小さく、トルエン中での分散性が良好であって、黒色塗料、ゴム・樹脂組成物用として好適な表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を提供する。
【解決手段】 鉄チタン複合酸化物粒子表面に特定のシランカップリング剤が4〜16μmol/m被覆された平均粒子径0.05〜0.70μm、トルエン中の分散粒子径d50が0.25〜1.80μm、トルエン中の分散粒子径d90が0.65〜3.50μmの表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、核となる鉄チタン複合酸化物粒子を水性媒体中で疎水化処理した後、流動層乾燥を行い、その後に熱処理を行う、又は、核となる鉄チタン複合酸化物粒子をホイール型混練機又はらいかい機で疎水化処理した後、振動機構を有する乾燥機でボール等の媒体を入れて熱処理と粉砕を同時に行うことで得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、ゴム・樹脂組成物に用いた場合に分散性が良好で、凝集粒子が少ない鉄チタン複合酸化物粒子粉末を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在、鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、ゴム・樹脂組成物、塗料、化粧料、磁気記録分野及び印刷記録分野等の各種用途において、補強剤、着色剤、フィラー剤、紫外線遮蔽剤、研磨剤、導電性付与剤あるいは磁性材等として、各種材料に様々な特性を付与するために広く用いられている。
【0003】
鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、粒子表面に水酸基や吸着水分が存在しているため、一般に親水性であり、親油性に乏しいことが知られている。そのため、有機媒体への分散や樹脂への練り込みを行う場合には、鉄チタン複合酸化物粒子粉末の粒子表面を疎水化して、分散性に優れた材料が求められている。
【0004】
更に、より高度な分散状態を実現するためには、粗大な凝集粒子が存在せず、凝集粒子の大きさが小さいことが要求されている。
【0005】
従来、酸化鉄粒子粉末を疎水化する方法として、酸化鉄粒子粉末と疎水化剤を湿式又は乾式混合した後加熱処理する方法が知られている(特許文献1参照)。
疎水化剤を均一に被覆するために酸化鉄粒子粉末を一次粒子まで分散させる必要がある。しかし、粒子径が1.0μm以下の微粒子になると、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集が起こりやすくなり、酸化鉄粒子粉末を一次粒子まで分散させることが難しいため、疎水化剤による均一な疎水化処理が困難となる。更に、磁性を有する酸化鉄粒子粉末の場合には、磁気的凝集も起こるため均一な疎水化処理がより困難となる。
【0006】
また、乾式で酸化鉄粒子を疎水化処理する手段として、ミキサー型混合機又はホイール型混合機で処理する方法が開示されている(特許文献2、3参照)。しかし、乾式で酸化鉄粒子と処理剤をただ混合するだけでは、均一な疎水化が困難であり、非極性溶媒中での分散性が悪い。
【0007】
気相で酸化鉄粒子を疎水化処理する手段として、処理剤を気化接触して反応させる方法が開示されている(特許文献4参照)。しかし、高温で熱処理することから凝集しやすく、非極性溶媒中での分散性が悪い。
【0008】
その他の手段として、混練にて処理する方法が開示されている(特許文献5参照)。しかし、処理時間が短く、不均一になりやすい。
【0009】
【特許文献1】特開平2−218603号公報
【特許文献2】特開平3−221965号公報
【特許文献3】特開平8−34617号公報
【特許文献4】特開2000−327948号公報
【特許文献5】特開2006−232578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって本発明は、前述した種々の問題を解決した表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0012】
即ち、本発明は、鉄チタン複合酸化物粒子表面にシランカップリング剤が4〜16μmol/m被覆された平均粒子径が0.05〜0.70μmの表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末であって、トルエン中の分散粒子径d50が0.25〜1.80μmであり、トルエン中の分散粒子径d90が0.65〜3.50μmであることを特徴とする表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末である(本発明1)。
【0013】
また、本発明は、鉄チタン複合酸化物が、FeTiO−Fe固溶体、FeTiO、FeTiO−Fe固溶体、FeTiO、FeTiO、Na−Fe−Ti化合物の中から選ばれる1種又は2種類以上含まれている表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末である(本発明2)。
【0014】
また、本発明は、トルエン吸収量が14〜30ml/100gである前記の表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末である(本発明3)。
【0015】
また、本発明は、トルエン吸収量測定時のトルク最大値が0.25〜0.70N・mである前記の表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末である(本発明4)。
【0016】
また、本発明は、本発明1乃至4のいずれかに記載の表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする黒色塗料である(本発明5)。
【0017】
また、本発明は、本発明1乃至4のいずれかに記載の表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末をゴム・樹脂組成物構成基材中に配合したことを特徴とするゴム・樹脂組成物である(本発明6)。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、トルエン中での分散性が良好な表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末であり、また、有機溶媒中での挙動粒子が小さくできるので、黒色塗料、ゴム・樹脂組成物用の着色剤として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
先ず、本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末について述べる。
【0021】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末のシランカップリング剤の被覆量は、4.0〜16μmol/mである。4.0μmol/m未満の場合には、疎水化処理が不十分であり、分散性が悪くなる。16μmol/mを超える場合には、凝集して分散性が悪くなる。好ましいシランカップリング剤の被覆量は5.0〜15.5μmol/mであり、より好ましくは7.0〜14μmol/mである。
【0022】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、後出する測定方法で評価したトルエン中の分散粒子径d50が0.25〜1.80μmであることが好ましい。トルエン中の分散粒子径d50が0.25未満であるものは工業的に製造することが困難である。トルエン中の分散粒子径d50が1.80μmを超える場合は、凝集して分散性が悪くなる。好ましくはトルエン中の分散粒子径d50は0.25〜1.50μmがより好ましく、更により好ましくは0.30〜1.40μmである。
【0023】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、後出する測定方法で評価したトルエン中の分散粒子径d90が0.65〜3.50μmであることが好ましい。トルエン中の分散粒子径d90が0.65μm未満であるものは工業的に製造することが困難である。トルエン中の分散粒子径d90が3.50μmを超える場合は、凝集して分散性が悪くなる。好ましくはトルエン中の分散粒子径d90が0.65〜3.20μmであり、より好ましくは0.70〜3.00μmである。
【0024】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末の平均粒子径は0.05〜0.70μmである。平均粒子径が0.05μm未満の場合、鉄チタン複合酸化物粒子相互間の凝集力が大きく分散が困難となる。0.70μmを超える場合、着色力が劣り隠ぺい力も低い。好ましくは0.10〜0.50μm、より好ましくは0.15〜0.30μmである。
【0025】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、後出する測定方法で評価したトルエン吸収量が14〜30ml/100gであることが好ましい。トルエン吸収量が14ml/100g未満の場合には分散性が悪くなる。トルエン吸収量が30ml/100gを超えるものは工業的に製造することが困難である。トルエン吸収量は14.5〜28ml/100gがより好ましく、更により好ましくは15.0〜25ml/100gである。
【0026】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、後出する測定方法で評価したトルエン吸収量測定時のトルク最大値が0.25〜0.70N・mが好ましい。トルエン吸収量測定時のトルク最大値が0.25N・m未満の場合には分散性が悪くなる。トルエン吸収量測定時のトルク最大値が0.70N・mを超えるものは作製困難である。トルク最大値は0.26〜0.60N・mがより好ましく、更により好ましくは0.27〜0.50N・mである。
【0027】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末のBET比表面積は、3.0〜18.0m/gが好ましい。BET比表面積が3.0m/g未満の場合、凝集していることからトルエン中の分散粒子径d50、d90が大きく、トルエン吸収量、及びトルエン吸収量測定時のトルク最大値が小さく分散性が悪い傾向にある。BET比表面積が18.0m/gを超える場合、疎水化処理が不十分であり、分散性が低下する傾向にある。より好ましいBET比表面積は4.0〜15.0m/gである。
【0028】
次に、本発明において核となる鉄チタン複合酸化物粒子粉末について述べる。
【0029】
本発明において鉄チタン複合酸化物粒子粉末の窒素吸着による比表面積値は3〜20m/gが好ましい。BET比表面積値が3m/g未満の場合には、鉄チタン複合酸化物粒子粉末が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粗大粒子となり着色力が低下する。20m/gを越える場合には、所望の黒色度を得ることが困難となる。より好ましくは4〜18m/g、更により好ましくは5〜15m/gである。
【0030】
本発明において鉄チタン複合酸化物粒子粉末の飽和磁化値は70Am/kg未満が好ましい。飽和磁化値が70Am/kgを越える場合には、粒子相互間で再凝集が生じやすく分散が困難となる。より好ましくは40Am/kg以下である。
【0031】
本発明において鉄チタン複合酸化物粒子粉末の構成相としては、FeTiO−Fe固溶体、FeTiO、FeTiO−Fe固溶体、FeTiO、FeTiO等が挙げられ、上記化合物の二種以上の混合物であってもよいが、少なくともFeTiO−Fe固溶体を有することが好ましい。また、原料であるFeや、γ−Fe等のスピネル酸化鉄が存在してもよい。
【0032】
なお、本発明において鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、鉄、チタン以外にMg、Al、Si、Mn、Co、Ni、Cu及びZnから選ばれる1種又2種以上の元素を鉄とチタンの全量に対して0〜10原子%含んでも良い。
【0033】
次に、本発明において鉄チタン複合酸化物粒子粉末の製造法について述べる。
【0034】
本発明において鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、マグネタイト粒子表面をチタン化合物で被覆し、非酸化性雰囲気下で600〜850℃の温度範囲で加熱焼成した後、粉砕して得ることができる。
【0035】
前記マグネタイト粒子粉末は、例えば、第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応して得られた水酸化第一鉄塩コロイドを含む第一鉄塩反応溶液に酸素含有ガスを通気することによって得ることができる。
【0036】
本発明に用いるチタン化合物としては、硫酸チタニル、四塩化チタン、三塩化チタンを挙げることができる。
【0037】
マグネタイト粒子に対するチタン化合物の被覆は、マグネタイト粒子を含有する水懸濁液に前記チタン化合物を添加し、水酸化アルカリ水溶液、炭酸アルカリ水溶液等を用いて、マグネタイト粒子の粒子表面にチタン化合物を被覆させる。なお、被覆反応では反応溶液のpH値を低下させないで、チタン化合物の添加直後の反応pHを維持させることが好ましい。
【0038】
前記チタン化合物の添加量は、5〜50原子%が好ましい。5原子%未満の場合には高黒色度且つ低磁化のものが得られ難くなる。50原子%を越える場合には、分散性、黒色度、着色力が悪くなる。より好ましくは10〜35原子%である。
【0039】
より低磁化で残存する酸化チタンを減少させるためには、前記のチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子を含有する水懸濁液のpH値を5.0〜7.5の範囲に調整し、70℃以上の温度で1時間以上熟成する。上記1時間以上の熟成によって、マグネタイト粒子へのチタン化合物で被覆状態がより均一となる。熟成温度の上限は105℃程度である。また、熟成時間は2時間までが好ましく、それ以上維持しても効果は変わらない。
【0040】
Na−Fe−Ti化合物を含有させる場合には、マグネタイト粒子の粒子表面をチタン化合物で被覆した後、ナトリウム化合物を添加して濾別・乾燥する、又は、マグネタイト粒子の粒子表面をチタン化合物で被覆した後、濾別・乾燥し、ナトリウム化合物を乾式混合し、次いで、前記ナトリウム化合物を含有する混合物を加熱焼成・粉砕して得ることができる。
【0041】
なお、前記異種金属元素を含有させる場合には、予めマグネタイト粒子中に含有させておいても良く、又はマグネタイト粒子の表面にチタン化合物を被覆させた水溶液に各種金属元素からなる塩、又は各種金属元素を含有する溶液を添加しても良い。
【0042】
本発明における加熱焼成の雰囲気は非酸化性雰囲気下が好ましく、酸化性雰囲気下では、高い黒色度を有する鉄チタン複合酸化物粒子粉末を得ることが困難である。
【0043】
本発明における加熱焼成の温度範囲は600〜850℃が好ましく、600℃未満の場合には、マグネタイト粒子とチタン化合物の固相反応が不十分となり、目的とする鉄チタン複合酸化物粒子粉末を得ることが困難であり、850℃を越える場合には、不要な相が生成するため好ましくない。より好ましくは620〜830℃である。
【0044】
加熱焼成後の粒子粉末は、常法によって、粉砕すればよい。
【0045】
次に、本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末の製造法について述べる。
【0046】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、湿式処理又は乾式処理のいずれかの方法によって得ることができる。
【0047】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、核となる鉄チタン複合酸化物粒子を水性媒体中で疎水化処理した後、流動層乾燥を行い、その後に熱処理して得ることができる。
【0048】
疎水化処理は、具体的には、水性媒体中で鉄チタン複合酸化物粒子を十分に分散させながら疎水化剤であるシランカップリング剤を添加して行う。
【0049】
疎水化処理における水性媒体は、水のみでも良いし、表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子の凝集を抑制するために少量のアルコールを添加しても良い。
【0050】
疎水化処理を行う際の水性媒体のpHは、シランカップリング剤を加水分解しながら処理するため、pHは3〜7が好ましい。また、予備的に加水分解液を作製してから添加しても良い。
疎水化処理を行う際の水性媒体の温度は、30〜80℃が好ましい。
【0051】
疎水化処理に用いる処理装置は、鉄チタン複合酸化物粒子を十分に分散させるため、また、疎水化処理時は疎水化凝集を防ぐためディスパー、ホモミキサーのような高せん断力分散機が好ましい。
【0052】
本発明においては、疎水化処理後にスプレードライヤなどの流動層乾燥装置で乾燥させる。
【0053】
分散性に優れた表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を得るには、疎水化処理をした鉄チタン複合酸化物粒子粉末を含んだスラリーを流動層乾燥する際の、鉄チタン複合酸化物粒子粉末を含有するスラリーの濃度を制御する必要がある。スラリー濃度としては低ければ低いほど良く、鉄チタン複合酸化物粒子粉末の濃度としては60%以下、好ましくは30%以下である。
また、流動層内での乾燥温度は、短時間で乾燥できる温度にコントロールする必要がある。乾燥温度としては100℃以上、好ましくは150℃以上である。乾燥時間としては、時間が短いほど良く10分、好ましくは5分以下である。
【0054】
本発明においては、乾燥後に熱処理を行なう。熱処理時の温度は60〜140℃の温度範囲が適する。140℃を超える場合は、縮合反応が進みすぎて鉄チタン複合酸化物粒子同士が凝集し、分散性が悪化する。60℃未満では処理剤が固着しない。好ましくは80℃〜120℃である。熱処理装置は特に限定は無く、例えば静置型乾燥機などが挙げられる。
【0055】
また、本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、核となる鉄チタン複合酸化物粒子をホイール型混練機又はらいかい機で疎水化処理した後、振動機構を有する乾燥機でボール等の媒体を入れて熱処理と粉砕を同時に行うことで得ることもできる。
【0056】
疎水化処理に用いる処理装置は、鉄チタン複合酸化物粒子を圧縮作用により鉄チタン複合酸化物粒子間に介在しているシランカップリング剤を鉄チタン複合酸化物粒子表面に押しつけるとともに、粒子間隔を通して押し広げて粒子表面との密着性を増し、そして、せん断作用によって引き伸ばしながら鉄チタン複合酸化物粒子の凝集を解きほぐし、更に、へらなで作用により均一に広げるという作用が繰り返されるホイール型混練機又はらいかい機が好ましい。前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチミル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。
【0057】
本発明においては、疎水化処理後は振動機構を有する乾燥機でボール等の媒体を入れて60〜140℃の温度範囲で熱処理を行なう。熱処理時の温度が140℃を超える場合は、縮合反応が進みすぎて鉄チタン複合酸化物粒子同士が合一しやすくなり、分散性が悪化する。60℃未満では固着率が低くなる。好ましくは80℃〜120℃である。
【0058】
熱処理と粉砕の同時処理に用いる装置は、振動とボールによる混合・粉砕を行いながら熱処理を行うことができるので、凝集を解しながら挙動粒子のより小さな状態で均一な熱処理を行うことができる。
【0059】
本発明におけるシランカップリング剤としては、メチルトリエキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトシキシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、ここに挙げたシランカップリング剤を2種以上適宜の割合で混合して使用しても良い。
【0060】
のアルキル基の炭素数が5以上のシランカップリング剤を用いる場合には、Rのアルキル基の炭素数が4以下であるシランカップリング剤と併用することが好ましい。この場合、アルキル基の炭素数が5以上のシランカップリング剤はアルキル基の炭素数が4以下であるシランカップリング剤に対する重量比で3〜60%が好ましく、より好ましくは5〜50%である。
【0061】
シランカップリング剤の添加量は、核となる鉄チタン複合酸化物粒子に対して0.8〜2.8重量%である。
【0062】
次に、本発明に係る塗料の製造方法について述べる。
【0063】
本発明に係る塗料中における表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末の配合割合は、塗料構成基材100重量部に対し0.1〜200重量部の範囲で使用することができ、塗料のハンドリングを考慮すれば、好ましくは0.1〜100重量部、更に好ましくは0.1〜50重量部である。
【0064】
本発明における塗料構成基材としては、樹脂、溶剤及び必要に応じて体質顔料、乾燥促進剤、界面活性剤、硬化促進剤、助剤等が配合される。
【0065】
樹脂としては、溶剤系塗料用として通常使用されるアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂等を用いることができる。
【0066】
溶剤としては、溶剤系塗料用として通常使用されるトルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、脂肪族炭化水素等を用いることができる。
【0067】
次に、本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を用いたゴム・樹脂組成物について述べる。
【0068】
ゴム・樹脂組成物における構成基材としては、本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末と周知のゴム又は熱可塑性樹脂とともに、必要により、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤等の添加剤が配合される。
【0069】
ゴム・樹脂組成物における表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末の配合割合は、構成基材100重量部に対して0.5〜200重量部の範囲で使用することができ、ゴム・樹脂組成物のハンドリングを考慮すれば、好ましくは1.0〜150重量部、更に好ましくは2.5〜100重量部である。
【0070】
添加剤の量は、表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末とゴム又樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加剤の含有量が50重量%を超える場合には、成形性が低下する。
【0071】
ゴム・樹脂組成物の製造法としては、ゴム又は樹脂原料と表面処理された鉄チタン複合酸化物鉄粒子粉末をあらかじめよく混合し、次に、混練機もしくは押出機を用いて加熱下で強いせん断作用を加えて、表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末の凝集体を破壊し、ゴム又は樹脂中に表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して使用する。
【0072】
次に、本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を用いた黒色トナーについて述べる。
【0073】
黒色トナーは、平均粒子径が通常3〜15μm、好ましくは5〜12μmである。
【0074】
本発明における黒色トナーは、本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末及び結着剤樹脂からなり、必要に応じて離型剤、着色剤、荷電制御剤、その他の添加剤等を含有してもよい。
【0075】
結着剤樹脂と表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末との割合は、表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末100重量部に対して結着剤樹脂通常50〜900重量部、好ましくは50〜400重量部である。
【0076】
結着剤樹脂としては、ポリエステル樹脂やスチレン−アクリル共重合樹脂、スチレン、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル等のビニル系単量体を重合又は共重合したビニル系重合体が使用できる。上記スチレン単量体としては、例えばスチレン及びその置換体がある。上記アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等がある。上記共重合体は、スチレン系成分を50〜95重量%含むことが好ましい。
【0077】
結着剤樹脂は、必要により、上記ビニル系重合体とともに、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等を併用することができる。
【0078】
次に、本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を用いた黒色トナーの製造法について述べる。
【0079】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を用いた黒色トナーは、所定量の結着剤樹脂と所定量の表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末とを混合、加熱、混練、粉砕による公知の方法によって行うことができる。具体的には、表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末と結着剤樹脂とを、必要により更に離型剤、着色剤、荷電制御剤、その他の添加剤等を添加した混合物を混合機により十分に混合した後、加熱混練機によって結着剤樹脂中に表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末等を分散させ、次いで、冷却固化して樹脂混練物を得、該樹脂混練物を粉砕及び分級を行って所望の粒子サイズとすることにより得られる。
【0080】
前記混合機としては、ヘンシェルミキサー、ボールミル等を使用することが出来る。前記加熱混練機としては、ロールミル、ニーダー、二軸エクストルーダー等を使用することが出来る。前記粉砕は、カッターミル、ジェットミル等の粉砕機によって行うことができ、公知の風力分級等により行うことが出来る。
【0081】
黒色トナーを得る他の方法として、懸濁重合法又は乳化重合法がある。懸濁重合法においては、重合性単量体と表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子とを、必要により更に、着色剤、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤を添加した混合物を溶解又は分散させた単量体組成物を、懸濁安定剤を含む水相中に攪拌しながら添加して造粒し、重合させて所望の粒子サイズとすることにより得られる。乳化重合法においては、単量体と黒色粒子とを、必要により更に着色剤、重合開始剤などを水中に分散させて重合を行う過程に乳化剤を添加することによって所望の粒子サイズとすることにより得られる。
【実施例】
【0082】
次に、実施例並びに比較例により、本発明を説明する。
【0083】
<平均粒子径>
鉄チタン複合酸化物粒子粉末の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により撮影した写真(倍率1万倍)を4倍に拡大して、300個についてマーチン径により求めた値である。
【0084】
<BET比表面積>
鉄チタン複合酸化物粒子粉末のBET比表面積は、Mono Sorb MS−II(湯浅アイオニックス(株)製)を用いBET法により求めた。
【0085】
<被覆量>
表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末のシランカップリング剤の被覆量は、炭素分析装置 EMIA−80((株)堀場製作所製)を用いてカーボン量を測定し次式で求めた。
被覆量(mmol/m)=(カーボン量/100/M×1000(mmol/g))/核粒子の比表面積(m/g)
M:シランカップリング剤のR基に含まれる炭素の総分子量
【0086】
<磁気特性>
鉄チタン複合酸化物粒子粉末の磁気特性は、振動試料型磁力計 VSM−3S−15(東英工業(株)製)を用いて外部磁場796kA/mで測定した値で示した。
【0087】
<トルエン吸収測定時のトルク最大値、トルエン吸収量>
吸収量測定器 S−410D((株)あさひ総研)を用い、表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末20gに対してトルエンを4ml/min(80ショット/min)で添加し、粘性変化をトルク検出器で検出し、トルクの最大値を測定した。また、トルクが最大となった時点でのトルエン吸収量をトルエン吸収量として測定した。
【0088】
<トルエン中の分散粒子径d50、及びd90>
トルエン200gと表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末0.2gを300mlガラスビーカーに入れ、T.K.ホモミキサーMARK II 2.5型(プライミクス(株))を用いて5000rpmで30分間攪拌分散させて分散液を作製した。得られた分散液から1.2mlを分取し、トルエン10.8mlで希釈して12mlにした液を分散粒子径、粒度分布測定装置SALD−2000J((株)島津製作所)で粒度分布を測定することによって得た。
なお、分散粒子径d50は、表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末の全体積を100%として粒子径に対する累積割合を求めたときの累積割合が50%となる粒子径である。また、表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末の全体積を100%として累積体積で表した粒子径を求めたときの累積割合が90%となる粒子径をd90とした。
【0089】
<黒色塗料中での分散性>
塗料ビヒクルへの分散性は、後出実施例12と同様にして作製した塗布膜について、塗布面の光沢度により調べた。
【0090】
光沢度は、グロスメーターUGV−5D(スガ試験機株式会社製)を用いて20°の光沢を測定して求めた。光沢度の値が高い程分散性が良いことを示す。
【0091】
<樹脂組成物中での分散性>
樹脂組成物への分散性は、得られた樹脂組成物表面における未分散の凝集粒子の個数を目視により判定し、5段階で評価した。5が最も分散状態が良いことを示す。
5:未分散物が認められない。
4:1cm当たりに1〜4個認められる。
3:1cm当たりに5〜9個認められる。
2:1cm当たりに10〜49個認められる。
1:1cm当たりに50個以上認められる。
【0092】
<鉄チタン複合酸化物粒子の製造>
(核粒子A)
球状マグネタイト粒子粉末(平均粒子径0.15μm、BET比表面積10.8m/g)10kgを含有する水懸濁液に、硫酸チタニル38.9molを含有する水溶液(マグネタイト粒子粉末の全Feに対してTi換算で30原子%に相当する。)を添加する。次いで、混合溶液のpH値を8.0に調整してマグネタイト粒子の粒子表面にチタンの含水酸化物を沈着させた後、濾別、水洗、乾燥し、粒子表面がチタンの含水酸化物で被覆されている球状黒色磁性酸化鉄粒子粉末を得た。
【0093】
得られた粒子表面がチタンの含水酸化物で被覆されている球状黒色磁性酸化鉄粒子に硫酸ナトリウム420gを加えて混合した。次いで得られた混合物10kgをNガス流下750℃で60分間加熱焼成した後、粉砕し、鉄チタン複合酸化物粒子粉末を得た。
【0094】
得られた鉄チタン複合酸化物粒子粉末のTi量は全Feに対して29.8原子%であった。飽和磁化値σsは12.0Am/kgであった。平均粒子径は0.16μmであり、構成相はFeTiO−Fe固溶体とFe−γ‐Fe固溶体とNaFeTiの混合物であった。
【0095】
(核粒子B)
平均径0.2μmであって磁化値85.0emu/gである粒状マグネタイト粒子粉末100gをTiOSO4を0.26mol含有する水溶液中(Ti/Fe =20.0原子%に相当する。)に分散混合し、次いで、該混合液中にNaOHを添加して中和し、pH8において粒子表面にTiの水酸化物を沈着させた後、炉別、乾燥した。
【0096】
上記粒子表面がTiの水酸化物で被覆されている粒状マグネタイト粒子粉末50gをN2ガス流下750°Cで120分間加熱焼成した後、粉砕して鉄チタン複合酸化物粒子粉末を得た。
【0097】
得られた鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、平均径0.25μmの粒子粉末であり、構成相はFeTi0とFe−FeTiO固溶体との混合組成物であった。
Ti量は全Feに対して21.0原子%、飽和磁化値σsは0.6Am/kgであった。
【0098】
(核粒子C)
球状マグネタイト粒子粉末(平均粒子径0.10μm、BET比表面積14.8m/g、FeO含有量25.1重量%)10kgを含有する水懸濁液に、硫酸チタニル15.6molを含有する水溶液(マグネタイト粒子粉末の全Feに対してTi換算で12原子%に相当する。)を添加する。尚、添加時に反応溶液のpHが低下しないように該混合液中にNaOHを添加した。次いで、混合溶液のpH値を8.0に調整してマグネタイト粒子の粒子表面にチタンの含水酸化物を沈着させた後、濾別、水洗、乾燥して粒子表面がチタンの含水酸化物で被覆されている球状黒色磁性酸化鉄粒子粉末を得た。
【0099】
上記粒子表面がチタンの含水酸化物で被覆されている球状黒色磁性酸化鉄粒子粉末10kgをNガス流下750℃で60分間加熱焼成した後粉砕して、鉄チタン複合酸化物粒子粉末を得た。
【0100】
得られた鉄チタン複合酸化物粒子粉末のTi量は、全Feに対して12.0原子%であった。飽和磁化値σsは38.8Am/kgであった。平均粒子径は0.11μmであり、構成相はFeTiO−Fe固溶体とFe−γ‐Fe固溶体の混合物であった。
【0101】
(核粒子D)
球状マグネタイト粒子粉末(平均粒子径0.06μm、BET比表面積20.8m/g)10kgを含有する水懸濁液に、硫酸チタニル32.4molを含有する水溶液(マグネタイト粒子粉末の全Feに対してTi換算で25原子%に相当する。)を添加する。尚、添加時に反応溶液のpHが低下しないように該混合液中にNaOHを添加した。次いで、混合溶液の温度を75℃、pH値を6.0に調整して1時間熟成を行いマグネタイト粒子の粒子表面にチタンの含水酸化物を沈着させた後、濾別、水洗、乾燥して粒子表面がチタンの含水酸化物で被覆されている球状黒色磁性酸化鉄粒子粉末を得た。
【0102】
上記粒子表面がチタンの含水酸化物で被覆されている球状黒色磁性酸化鉄粒子粉末10kgをNガス流下770℃で60分間加熱焼成した後、粉砕処理して、鉄チタン複合酸化物粒子粉末を得た。
【0103】
得られた鉄チタン複合酸化物粒子粉末中のTi量は、全Feに対して25.1原子%であった。飽和磁化値σsは0.8Am/kgであった。平均粒子径は0.09μmであり、構成相はFeTiO−Fe固溶体であった。
【0104】
得られた核となる鉄チタン複合酸化物粒子の諸特性を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
実施例1
<表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末の製造>
得られた核粒子Aを含むスラリーの固形分濃度を10wt%にし、ホモミキサーの回転数を5000rpmにした。pHを6、スラリーの温度を40℃に調整し十分に分散させて、n−ブチルトリメトキシシランを加え、加水分解を行いながら疎水化処理を行った。生成した表面処理した鉄チタン複合酸化物粒子粉末含有スラリー(固形分濃度:10wt%)をスプレードライヤを用いて150℃で流動層乾燥を行い、その後、定温乾燥機 FS−420((株)東洋製作所)を用いて100℃で2時間熱処理を行い、表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を得た。
【0107】
実施例2〜8、比較例1〜7
核粒子の種類、シランカップリング剤の種類及び量、乾燥条件、熱処理条件を種々変化させた以外は実施例1と同様にして表面処理された磁性酸化鉄粒子粉末を得た。実施例3は乾燥後、表面処理した磁性酸化鉄粒子粉末2kgと5mmφアルミナボール2kgを振動乾燥機VU45型(中央化工機(株))に入れ、100℃、2時間、熱処理を行ったものである。
【0108】
なお、比較例3は定温乾燥機 FS−420((株)東洋製作所)を用いて80℃で乾燥した後、熱処理を行ったものである。比較例7は、120℃に加温した回転炉にn−ヘキシルトリメトキシシランを徐添加し、気化した疎水化剤と鉄チタン複合酸化物粒子とを接触・反応させた後、大型るつぼに入れて160℃で60分間熱処理を行った後、ピンミルで粉砕したものである。
【0109】
実施例9
得られた核粒子Aと事前に加水分解処理したn−ブチルトリメトキシシランをエッジランナー「MPUV−2型」(松本鋳造鉄工所製)にて加圧しながら60分間鉄チタン複合酸化物粒子表面をシランカップリング剤で疎水化処理を行った。生成した表面処理した鉄チタン複合酸化物粒子粉末2kgと5mmφアルミナボール2kgを振動乾燥機VU45型(中央化工機(株))に入れ、100℃、2時間、熱処理を行い表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を得た。
【0110】
実施例10,11
シランカップリング剤の量を種々変化させた以外は実施例9と同様にして表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を得た。
【0111】
比較例8
実施例7と同様に、核粒子Aと事前に加水分解処理したn−ブチルトリメトキシシランをエッジランナー「MPUV−2型」(松本鋳造鉄工所製)にて加圧しながら60分間鉄チタン複合酸化物粒子表面をシランカップリング剤で疎水化処理を行った。生成した表面処理した鉄チタン複合酸化物粒子粉末を、定温乾燥機 FS−420((株)東洋製作所)を用いて100℃で2時間熱処理を行い、表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を得た。
【0112】
得られた表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末の諸特性を表2、表3に示す。
【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
<黒色塗料の製造>
実施例12
140mlのガラスビンに、実施例1で得た表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末10gを用い、塗料組成を下記割合で配合して3mmφガラスビーズ90gとともにペイントシェーカーで30分間混合分散し、ミルベースを作製した。
【0116】
得られた塗料組成は、下記の通りであった。
表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末 12.2重量部、
アミノアルキッド樹脂 19.5重量部、
(アミラックNo.1026:関西ペイント株式会社製)
シンナー 7.3重量部。
【0117】
上記ミルベースを用いて、塗料組成を下記割合で配合してペイントシェーカーでさらに15分間混合分散して、表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を含む塗料を得た。
【0118】
得られた塗料組成は、下記の通りであった。
ミルベース 39.0重量部、
アミノアルキッド樹脂 61.0重量部。
(アミラックNo.1026:関西ペイント株式会社製)
【0119】
次に、得られた塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm:JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥した。
【0120】
製造した塗膜は、光沢度が97%であった。
【0121】
実施例13〜22、比較例9〜16
表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例12と同様にして黒色塗料を得た。
【0122】
比較例17
表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を核粒子Dに変更した以外は、前記実施例12と同様にして黒色塗料を得た。
【0123】
このとき得られた塗膜の光沢度を表4に示す。
【0124】
【表4】

【0125】
<樹脂組成物の製造>
実施例23
実施例1で得た表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末1.5gとポリ塩化ビニル樹脂粉末103EP8D(日本ゼオン株式会社製)48.5gとを秤量し、これらを100ccポリビーカーに入れ、スパチュラでよく混合して混合粉末を得た。
【0126】
得られた混合粉末にステアリン酸カルシウムを0.5gを加えて混合し、160℃に加熱した熱間ロールのクリアランスを0.4mmに設定し、上記混合粉末を少しずつロールに練り込んで樹脂組成物が一体となるまで混練を続けた後、樹脂組成物をロールから剥離して着色樹脂プレート原料をとして用いた。
【0127】
次に、表面研磨されたステンレス板の間に上記樹脂組成物を挟んで180℃に加熱したホットプレス内に入れ、1トン/cmの圧力で加圧成形して厚さ1mmの着色樹脂プレートを得た。
【0128】
得られた着色樹脂プレートの分散状態は5であった。
【0129】
実施例24〜33、比較例18〜25
表面処理された鉄チタン複合酸化物粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例23と同様にして樹脂組成物を得た。
【0130】
比較例26
表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を核粒子Dに変更した以外は、前記実施例23と同様にして樹脂組成物を得た。
【0131】
このとき得られた着色樹脂プレートの分散状態を表5に示す。
【0132】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明に係る表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末は、鉄チタン複合酸化物粒子表面にシランカップリング剤が4〜16μmol/m被覆された平均粒子径0.05〜0.70μmの表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末で、トルエン中の分散粒子径d50が0.25〜1.80μmであり、トルエン中の分散粒子径d90が0.65〜3.50μmであることから、樹脂中での分散性が良好であるので、黒色塗料、ゴム・樹脂組成物用酸化鉄粒子粉末として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄チタン複合酸化物粒子表面にシランカップリング剤が4〜16μmol/m被覆された平均粒子径が0.05〜0.70μmの表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末であって、トルエン中の分散粒子径d50が0.25〜1.80μmであり、トルエン中の分散粒子径d90が0.65〜3.50μmであることを特徴とする表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末。
【請求項2】
鉄チタン複合酸化物が、FeTiO−Fe固溶体、FeTiO、FeTiO−Fe固溶体、FeTiO、FeTiO、Na−Fe−Ti化合物の中から選ばれる1種又は2種類以上含まれている請求項1記載の表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末。
【請求項3】
トルエン吸収量が14〜30ml/100gである請求項1記載の表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末。
【請求項4】
トルエン吸収量測定時のトルク最大値が0.25〜0.70N・mである請求項1記載の表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする黒色塗料。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の表面処理された鉄チタン複合酸化物粒子粉末をゴム・樹脂組成物構成基材中に配合したことを特徴とするゴム・樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−100467(P2010−100467A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272550(P2008−272550)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】