説明

表面処理用ノズル装置

【課題】被処理物が大型化してもノズル装置の重量増大を抑え、かつ処理の均一性を確保する。
【解決手段】ノズル装置3の溝形成部材11の主面に複数の溝形成部13fを第1方向に分割して設定する。各溝形成部13fにツリー溝部41と開口溝部42を含む溝40を形成する。開口溝部42を溝形成部材11の先端面に開口させる。隣接する開口溝部42どうしを連通部49を介して連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物に処理ガスを吹き付けたり、処理済みのガスを被処理物の近傍から吸引したりするノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1では、プラズマ表面処理装置の電極を覆う誘電体の板にツリー状の溝が設けられている。ツリー状溝は、1つの溝部から2つ(複数)の溝部が枝分かれし、枝分かれした各溝部が更に2つ(複数)に枝分かれし、この枝分かれが複数次にわたって繰り返され、全体としてツリー状(トーナメント表状)になっている。ツリー状溝の下側には、最終次の枝分かれ溝部の全てを連ね、かつ誘電体板の下端に開口する開口溝が形成されている。上記誘電体板の上記ツリー状溝及び開口溝が形成された面に他の誘電体板が重ねられている。これにより、上記ツリー状溝及び開口溝が処理ガスの通路になっている。処理ガスは、上記ツリー状溝の枝に沿って拡散された後、上記開口溝に経て吹き出される。これにより、処理ガスの吹き出し幅を大きくできる。この処理ガスが被処理物に接触し、表面処理がなされる。
【特許文献1】特開2004−127853号公報
【特許文献2】特開2002−75692号公報
【特許文献3】実開平5−89451号公報(図3(b))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、例えばフラットパネルディスプレイ等の分野では被処理物が大型化する傾向にある。大型の被処理物に対応するために、処理ガスの吹き出し幅を更に大きくすることが求められている。上掲特許文献1の装置においては、ツリー状溝の枝分かれの段数を増やすと、処理ガスの吹き出し幅を大きくできる。一方、ツリー状溝の枝分かれの段数を増やすには、溝形成板の高さを大きくしなければならず、そうすると、重量が増大する。
そこで、例えば溝形成板を複数に分割し、分割した板ごとにツリー状溝を設けたり、1つの溝形成板に複数のツリー状溝を長手方向に並べて形成したりすることが考えられる。しかし、そうすると、板と板の継ぎ目や複数のツリー状溝どうしの間に対応する箇所で処理抜けが生じやすく、処理の均一性が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明は、被処理物に処理ガスを供給し、又は処理済みのガスを吸引するノズル装置において、
第1方向に複数の溝形成部に分割された主面と、前記主面と交差して前記第1方向に延びる先端面とを有する板状の溝形成部材と、
前記主面を覆う被覆部材と、
を備え、前記各溝形成部に前記処理ガス又は処理済みガスの通路となる溝が形成され、前記溝が、前記先端面に近づくにしたがって第1方向に広がるよう枝分かれするツリー状のツリー溝部と、前記ツリー溝部の末端を連ねるよう前記第1方向に延び、かつ前記先端面に達する開口溝部と、を含み、隣接する2つの溝形成部の開口溝部どうしが互いに連通し、かつ該開口溝部どうしの連通部が前記先端面に達していることを特徴とする。
この特徴構成によれば、複数のツリー溝部が第1方向に複数並んで配置される。したがって、被処理物が大型化しても容易に対応できる。しかも、各ツリー状溝の枝分かれの段数を少なく設定できる。よって、溝形成部材の先端面と直交する方向の寸法を小さく抑えることができ、溝形成部材の重量が過度に増大するのを防止できる。加えて、隣接する2つの溝形成部を通る処理ガスが前記連通部で合流し、該連通部から噴き出される。したがって、被処理物の表面における前記隣接する溝形成部どうし間に対応する箇所にも処理ガスを確実に吹き付けることができる。或いは、前記隣接する溝形成部に対応する箇所上から処理済みガスを確実に吸引することができる。これにより、前記隣接する溝形成部に対応する箇所での処理抜けを防止でき、処理の均一性を確保できる。
ツリー状溝の枝分かれの段数は1以上が好ましい。
【0005】
前記溝形成部材が、前記第1方向に複数の別体の分割板に分割され、隣接する分割板の分割端面どうしが突き合わされ、各分割板が1つの前記溝形成部を有し、かつ各分割板の開口溝部の分割端面側の端部が分割端面に達して前記連通部を構成していることが好ましい。
各分割板の溝形成部にはツリー溝部が設けられる。したがって、溝形成部材全体として、複数のツリー溝部が第1方向に並んで配置される。そうすることで、各分割板の先端面と直交する方向の寸法を小さく抑えることができる。よって、各分割板の重量を軽減でき、ひいては溝形成部材全体の重量を軽減できる。しかも、前記連通部によって隣接する分割板どうしの継ぎ目に対応する被処理箇所での処理抜けを防止でき、処理の均一性を確保できる。
前記溝形成部材が、全体として一体物であってもよく、この一体物の溝形成部材に複数のツリー溝部が第1方向に並んで配置され、隣接するツリー溝部にそれぞれ対応する開口溝部どうしが連通していてもよい。
【0006】
各開口溝部における前記先端面と直交する方向の中間部には、第1方向に延びる凸条にて形成された絞り部が設けられていることが好ましい。
これによって、ツリー溝部の末端が、複数、第1方向に離間して配置されていても、開口溝部を通過するガスを第1方向に均質化でき、処理の均一性を一層高めることができる。
【0007】
前記連通部は、少なくとも前記絞り部より前記先端面側に設けられていることが好ましい。
前記連通部が、前記絞り部より前記先端面側だけでなく、前記絞り部より前記先端面側とは反対側にも設けられていてもよく、前記連通部内にも前記絞り部が配置されるようにしてもよい。
【0008】
前記複数の溝形成部の前記第1方向の合計長さと対応する長さを有して、前記溝形成部材の先端面及び前記被覆部材の先端面に被さる一体物の先端板を、更に備え、
前記先端板には、第1方向に延び、かつ複数の溝形成部の開口溝部に連なるスリットが形成されていることが好ましい。
前記先端板が第1方向に分割されず継ぎ目が無い構造になるため、そのような先端板の継ぎ目に起因する処理の不均一が生じることがない。したがって、処理の均一性をより高めることができる。
【0009】
各々前記第1方向に延び、かつ互いに平行に並べられた一対のスリット画成板と、これらスリット画成板と交差するようにしてこれらスリット画成板の長手方向の両端部にそれぞれ分離可能に設けられた一対の端板とを、更に備え、
前記スリット画成板の一方が、前記溝形成部材の先端面に被さり、前記スリット画成板の他方が、前記被覆部材の先端面に被さり、前記一対のスリット画成板どうしの間に、前記第1方向に延びて複数の溝形成部の開口溝部に連なるスリットが形成され、前記一対の端板により前記スリットの長手方向の両端部が画成されていることが好ましい。
これにより、前記スリットを処理ガスの吹き出し口又は処理済みガスの吸引口として提供できる。隣接するスリット画成板の間隔を調節することによって、スリットの幅を調節できる。
【0010】
各々前記第1方向に延び、かつ互いに平行に並べられた第1、第2のスリット画成板を、更に備え、
前記第1スリット画成板が、前記溝形成部材の先端面に被さり、前記第2スリット画成板が、前記被覆部材の先端面に被さり、前記第1、第2スリット画成板どうしの間に、前記第1方向に延びて複数の溝形成部の開口溝部に連なるスリットが形成され、前記第1、第2スリット画成板の何れか一方の長手方向の端部には他方のスリット画成板に突き当たる凸部が設けられていることが好ましい。
前記凸部の突き当てによって、第1、第2スリット画成板を正確かつ容易に位置決めできる。これにより、先端板の組み立てを容易化でき、かつスリットの幅を正確に設定できる。
【0011】
前記スリットの幅が、前記開口溝部の深さより小さいことが好ましい。
これにより、スリットに絞り機能を持たせることができる。したがって、吹き出しガス流又は吸引ガス流を第1方向に一層均質化でき、処理の均一性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溝形成部材ひいてはノズル装置の重量増大を抑えることができ、かつ隣接する溝形成部どうしの間に対応する箇所の処理抜けを防止して処理の均一性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1〜図8は、本発明の第1実施形態を示したものである。図8に示すように、表面処理装置1は、被処理物配置部2と、ノズル装置3を備えている。配置部2は、ステージやコンベアで構成されている。配置部2上に被処理物9が配置されている。被処理物9は、例えばフラットパネルディスプレイ用のガラス基板や半導体ウェハで構成されているが、これに限定されるものではない。表面処理の内容として、エッチング、成膜、洗浄、撥水化、親水化等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
配置部2上の被処理物9は、図示しない移動機構又は配置部2に組み込まれた移動機構によって、ノズル装置3に対し図8の紙面と直交する方向(後記第2方向)に相対移動されるようになっている。被処理物9が移動するのに限られず、ノズル装置3が移動されるようになっていてもよい。相対移動は、1回のみの片道移動でもよく、往復移動でもよく、往復移動を複数回反復してもよい。
【0015】
図8に示すように、表面処理装置1には処理ガス源4が備えられている。処理ガス源4は、処理内容に応じた処理ガスをノズル装置3に供給する。例えば、シリコンのエッチングの場合、処理ガスは、フッ素系反応成分及び酸化性反応成分を含む。フッ素系反応成分として、HF、COF、F等が挙げられる。酸化性反応成分として、O、Oラジカル等が挙げられる。酸化性反応成分としてのOは、オゾナイザーにより生成できる。Oラジカル等の酸化性反応成分は、酸素を含む酸素系原料ガスをプラズマ化することによって生成できる。
【0016】
HF、COF等のフッ素系反応成分は、HOを添加したフッ素系原料を一対の電極間でプラズマ化(分解、励起、活性化、イオン化を含む)することにより生成できる。フッ素系原料としては、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、SF、NF、XeF等が挙げられる。PFCとしては、CF、C、C、C等が挙げられる。HFCとしては、CHF、C、CHF等が挙げられる。HOに代えてOH含有化合物を用いてもよい。OH基含有化合物としては、過酸化水素水、アルコール等が挙げられる。上記フッ素系原料は、希釈ガスで希釈したうえでプラズマ化してもよい。希釈ガスとしては、Ar、He等の希ガスの他、N等が挙げられる。
【0017】
上記プラズマ化は大気圧近傍下で行なうことが好ましい。大気圧近傍とは、1.013×10〜50.663×10Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10〜10.664×10Paが好ましく、9.331×10〜10.397×10Paがより好ましい。
【0018】
図8に示すように、処理ガス源4から共通供給路4aが延びている。共通供給路4aは、分配器4bを介して2つ(複数)の個別供給路4cに分岐されている。これら個別供給路4cがノズル装置3へ延びている。
【0019】
ノズル装置3は、被処理物配置部2の上方に配置されている。ノズル装置3は、水平な第1方向(図8において左右)に延びている。ノズル装置3の第1方向の長さは、被処理物9の第1方向の長さと略同じか少し大きい。
【0020】
図8に示すように、ノズル装置3の上端部には、2つ(複数)のヘッダ部30が上に突出するように設けられている。これらヘッダ部30は、互いにノズル装置3の長手方向(第1方向)に離れている。各ヘッダ部30は、3つのヘッダ路31,32,33を有している。3つのヘッダ路31〜33は、第1方向に間隔を置いて並べられている。供給ヘッダ路31は、ヘッダ部30の中央部に配置されている。裏側吸引ヘッダ路32は、供給ヘッダ路31より第1方向の外側(他方のヘッダ部30側とは反対側)に配置されている。表側吸引ヘッダ路33は、供給ヘッダ路31より第1方向の内側(他方のヘッダ部30側)に配置されている。
【0021】
各ヘッダ部30の表側面(図8において紙面手前)には、供給ヘッダ路31に連なる供給ポート34と、裏側吸引ヘッダ路32に連なる裏側吸引ポート35と、表側吸引ヘッダ路33に連なる表側吸引ポート36とが設けられている。
【0022】
2つの個別供給路4c,4cのうち1つが、2つのヘッダ部30,30のうち一方の供給ポート34に連なっている。他の個別供給路4cが、他方のヘッダ部30の供給ポート34に連なっている。
【0023】
2つの裏側吸引ポート35,35からそれぞれ裏側個別吸引路5aが延びている。これら裏側個別吸引路5aは、裏側合流器5bで合流している。裏側合流器5bから裏側共通吸引路5cが延びている。
【0024】
2つの表側吸引ポート36,36からそれぞれ表側個別吸引路5dが延びている。これら表側個別吸引路5dは、表側合流器5eで合流している。表側合流器5eから表側共通吸引路5fが延びている。裏側共通吸引路5cと表側共通吸引路5fは、互いに合流している。合流後の共通吸引路5gが吸引ポンプを含むガス吸引手段5に連なっている。図示は省略するが、吸引手段5には排ガスの除害設備が付設されている。
【0025】
ノズル装置3の構造を更に詳述する。
図4及び図5に示すように、ノズル装置3は、第1、第2の溝形成部材11,12と、外壁部材21,22を備えている。ノズル構成部材11,12,21,22は、それぞれ長手方向を第1方向に向け、幅方向を上下に向け、厚さ方向を第1方向と直交する水平な第2方向(図4において左右)に向けた板状になっている。
【0026】
板状部材11,12,21,22の材質には特に限定がなく、樹脂やセラミックス等の絶縁体でもよく金属でもよいが、処理ガスに対する耐性を有していることが好ましい。例えば、処理ガスが、フッ化水素等のフッ素系反応成分を含む場合、溝形成部材11,12の材質として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂を用いるのが好ましい。溝形成部材11,12の材質として、アルミナ等のセラミックスを用いてもよい。
外壁部材21,22は、例えばアルミニウム等の金属で構成されている。
【0027】
板状部材11,12,21,22を第2方向(図8の紙面直交方向)から見た輪郭形状及び大きさは、互いに等しい。これら板状部材11,12,21,22が、裏側(図4の左側、図8の紙面奥側)から裏側外壁部材21、第1溝形成部材11、第2溝形成部材12、表側外壁部材22の順に第2方向に重ねられ、軸線を第2方向に向けた複数本のボルト(図示省略)にて連結されている。板状部材11,12,21,22の下端面(先端面)は、互いに面一になっている。
【0028】
図4に示すように、上記供給ヘッダ路31は、第1溝形成部材11と第2溝形成部材12と表側外壁部材22を貫いている。表側外壁部材22の表側面に上記供給ポート34が設けられている。供給ヘッダ路31の奥端部(供給ポート34との接続部とは反対側)が裏側外壁部材21によって塞がれている。
【0029】
図示は省略するが、同様にして、上記吸引ヘッダ路32,33は、第1溝形成部材11と第2溝形成部材12と表側外壁部材22を貫いている。表側外壁部材22の表側面に上記吸引ポート35,36が設けられている。吸引ヘッダ路32,33の奥端部が裏側外壁部材21によって塞がれている。
【0030】
図1及び図2に示すように、第1溝形成部材11は、長手方向(第1方向)に2つ(複数)の分割板13,13に分割されている。分割板13,13は、互いに別体になっている。言い換えると、第1溝形成部材11の第2溝形成部材12を向く表側の主面が、2つの面13f,13fに分割されている。第1溝形成部材11の外壁部材21を向く裏側の主面が、2つの面13r,13rに分割されている。
以下、2つの分割板13,13を互いに区別するときは、図1において左側の分割板13には符号にAを付し、右側の分割板13には符号にBを付す。
【0031】
図1及び図2に示すように、分割板13Aと分割板13Bは、互いに左右にほぼ反転させた形状になっている。隣接する2つの分割板13,13の側端面(分割端面)13e,13eどうしが互いに突き合わされている。各分割板13の上端部を上記ヘッダ路31,32,33が貫通している。
【0032】
図1に示すように、各分割板13の表側の面13fは「供給溝形成部」を構成する。溝形成部13fには処理ガス供給溝40が形成されている。供給溝40の上端部は、供給ヘッダ路31に連なっている。供給溝40は、ツリー溝部41と、開口溝部42とを含む。
【0033】
ツリー溝部41は、下方(先端)に向かいながら第1方向に広がるよう枝分かれし、ツリー状(トーナメント表状)になっている。詳述すると、ツリー溝部41は、供給ヘッダ路31から1条の状態で下方へ延び、2つ(複数)の一次分岐溝41aに分岐している。これら分岐溝41aは、互いの分岐部から離間するよう第1方向に延び、先端が下方に折曲している。各一次分岐溝41aの先端から2つ(複数)の二次分岐溝41bが第1方向の両側に分岐している。各二次分岐溝41bの先端は下方に折曲し、この二次分岐溝41bの先端から2つの三次分岐溝41cが第1方向の両側に分岐している。各三次分岐溝41cの先端は、下方に折曲し、この三次分岐溝41cの先端から2つ(複数)の最終次分岐溝41eが第1方向の両側に分岐している。最終次分岐溝41eの先端は、下方に折曲している。
【0034】
最終次分岐溝41eの下側に開口溝部42が設けられている。開口溝部42は、分割板13の長手方向(第1方向)に延びている。開口溝部42に各最終次分岐溝41eの先端部(ツリー溝部41の末端)が連なっている。図4に示すように、開口溝部42は、分割板13の下端面(先端面)に達している。
【0035】
図1に示すように、開口溝部42の端面13e側の端部の上側部分は、端面13eの近傍に位置し、かつ端面13eに達していない。
一方、図1及び図5に示すように、開口溝部42の端面13e側の端部の下側部分は、端面13eに達している。開口溝部42の端面13e側の端部の上側部分と端面13eとの間には、上下に延びる細い表側隔壁13gが形成されている。隔壁13gは、分割板13の下端面には達していない。
【0036】
隣接する2つの分割板13A,13Bの開口溝部42が、それぞれ端面13eに達することにより、これら分割板13A,13Bの開口溝部42,42どうしが連通している。2つの分割板13A,13Bの隔壁13g,13gの面一をなす下端縁と溝形成部材11の下端面との間に、開口溝部42,42どうしの連通部49が形成されている。連通部49は、溝形成部材11の下端面(先端面)に達している。互いに連通する開口溝部42,42の第1方向の合計長さは、被処理物9の同方向の寸法と略等しいか若干大きい。
【0037】
図4に示すように、各分割板13の表側面13fに第2溝形成部材12が被さることにより、供給溝40の面13f側の開口が塞がれている。これにより、供給溝40が供給ヘッダ路31に連なるガス路になっている。
第2溝形成部材12は、第1溝形成部材11の表側の主面を覆う被覆部材を構成する。
【0038】
図1及び図4に示すように、開口溝部42の上下方向(溝形成部材の先端面と直交する方向)の中間部の内面には、凸条47が形成されている。凸条47は、分割板13の長手方向(第1方向)に延びている。凸条47の長手方向の両端部は、開口溝部42の長手方向の端縁に達している。凸条47は、隔壁13gの下端部より上に位置し、凸条47の端面13e側の端部が隔壁13gに連なっている。凸条47の突出高さ(第2方向の寸法)は、開口溝部42の深さ(第2方向の寸法)より小さい。凸条47と溝形成部材12との間には、狭い隙間からなる絞り部48が形成されている。絞り部48は、分割板13の長手方向(第1方向)に延びている。
【0039】
図2に示すように、各分割板13の裏側の面13rは「裏側吸引溝形成部」を構成する。溝形成部13rには裏側吸引溝50が形成されている。裏側吸引溝50の上端部は、吸引ヘッダ路32に連なっている。裏側吸引溝50は、ツリー溝部51と、開口溝部52とを含む。
【0040】
ツリー溝部51は、下方(先端)に向かいながら第1方向に広がるよう枝分かれし、ツリー状になっている。詳述すると、ツリー溝部51は、裏側吸引ヘッダ路32から1条の状態で下方へ延び、複数(ここでは8つ)の分岐溝51eに分岐している。これら分岐溝51eは、互いに分割板13の長手方向(第1方向)に間隔を置いて配置され、それぞれ下方へ延びている。
【0041】
分岐溝51eの下側に開口溝部52が設けられている。開口溝部52は、分割板13の長手方向(第1方向)に延びている。開口溝部52に各分岐溝51eの先端部(ツリー溝部51の末端)が連なっている。図4に示すように、開口溝部52は、分割板13の下端面(先端面)に達している。
【0042】
図2及び図5に示すように、開口溝部52の端面13e側の端部の上側部分は、端面13eの近傍に位置し、かつ端面13eに達していない。一方、開口溝部52の端面13e側の端部の下側部分は、端面13eに達している。開口溝部52の端面13e側の端部の上側部分と端面13eとの間には、上下に延びる細い裏側隔壁13hが形成されている。隔壁13hは、分割板13の下端面には達していない。
【0043】
隣接する2つの分割板13A,13Bの開口溝部52が、それぞれ端面13eに達することにより、これら分割板13A,13Bの開口溝部52,52どうしが連通している。これら分割板13A,13Bの隔壁13h,13hの面一をなす下端縁と溝形成部材11の下端面との間に、開口溝部52,52どうしの連通部59が形成されている。連通部59は、溝形成部材11の下端面(先端面)に達している。互いに連通する開口溝部52,52の合計長さは、上記開口溝部42,42の合計長さと略等しい。
【0044】
図4に示すように、各分割板13の裏側面13rに裏側外壁部材21が被さることにより、裏側吸引溝50の面13r側の開口が塞がれている。これにより、裏側吸引溝50が、裏側吸引ヘッダ路32に連なるガス路になっている。
裏側外壁部材21は、第1溝形成部材11の裏側の主面を覆う被覆部材を構成する。
【0045】
図2及び図4に示すように、開口溝部52の上下方向の中間部の内面には、凸条57が形成されている。凸条57は、分割板13の長手方向(第1方向)に延びている。凸条57の長手方向の両端部は、開口溝部52の長手方向の端縁に達している。凸条57は、隔壁13hの下端部より上に位置し、凸条57の端面13e側の端部が隔壁13hに連なっている。凸条57の突出高さ(第2方向の寸法)は、裏側吸引溝50の深さ(第2方向の寸法)より小さい。凸条57と外壁部材21との間には、狭い隙間からなる絞り部58が形成されている。絞り部58は、分割板13の長手方向(第1方向)に延びている。
【0046】
図3に示すように、第2溝形成部材12は、長手方向(第1方向)に2つ(複数)の分割板14,14に分割されている。これら分割板14,14は、互いに別体になっている。言い換えると、第2溝形成部材12の表側外壁部材22を向く表側の主面が、2つの面14f,14fに分割されている。
以下、2つの分割板14,14を互いに区別するときは、図3において左側の分割板14には符号にAを付し、右側の分割板14には符号にBを付す。
図3に示すように、分割板14Aと分割板14Bは、互いに左右にほぼ反転させた形状になっている。
【0047】
隣接する2つの分割板14,14の側端面(分割端面)14e,14eが互いに突き合わされている。図5に示すように、分割板14,14どうしの継ぎ目は、分割板13,13どうしの継ぎ目と第1方向の同一位置に配置されている。
【0048】
図3に示すように、各分割板14の上端部を上記ヘッダ路31,32,33が貫通している。
【0049】
各分割板14の表側の面14fは「表側吸引溝形成部」を構成する。表側面14fには表側吸引溝60が形成されている。表側吸引溝60の上端部は、吸引ヘッダ路33に連なっている。表側吸引溝60は、上記裏側吸引溝50と同様の構造を有し、ツリー溝部61と、開口溝部62とを含む。
【0050】
ツリー溝部61は、下方(先端)に向かいながら第1方向に広がるよう枝分かれし、ツリー状になっている。詳述すると、ツリー溝部61は、表側吸引ヘッダ路33から1条の状態で下方へ延び、複数(ここでは8つ)の分岐溝61eに分岐している。これら分岐溝61eは、互いに分割板14の長手方向(第1方向)に間隔を置いて配置され、それぞれ下方へ延びている。
【0051】
分岐溝61eの下側に開口溝部62が設けられている。開口溝部62は、分割板14の長手方向(第1方向)に延びている。開口溝部62に各分岐溝61eの先端部(ツリー溝部61の末端)が連なっている。図4に示すように、開口溝部62は、分割板14の下端面(先端面)に達している。
【0052】
図3及び図5に示すように、開口溝部62の端面14e側の端部の上側部分は、端面14eの近傍に位置し、かつ端面14eに達していない。一方、開口溝部62の端面14e側の端部の下側部分は、端面14eに達している。開口溝部62の端面14e側の端部の上側部分と端面14eとの間には、上下に延びる細い隔壁14gが形成されている。隔壁14gは、分割板14の下端面に達していない。
【0053】
隣接する2つの分割板14A,14Bの開口溝部62が、それぞれ端面14eに達することにより、これら分割板14A,14Bの開口溝部62,62どうしが連通している。これら分割板14A,14Bの隔壁14g,14gの面一をなす下端縁と溝形成部材12の下端面との間に、開口溝部62,62どうしの連通部69が形成されている。連通部69は、溝形成部材12の下端面(先端面)に達している。互いに連通する開口溝部62,62の合計長さは、上記開口溝部42,42の合計長さと略等しい。
【0054】
図4に示すように、各分割板14の表側面14fに表側外壁部材22が被さることにより、各分割板14の表側吸引溝60の面14f側の開口が塞がれている。これにより、表側吸引溝60が、表側吸引ヘッダ路33に連なるガス路になっている。
表側外壁部材21は、第2溝形成部材12の表側の主面を覆う被覆部材を構成する。
【0055】
図3及び図4に示すように、開口溝部62の上下方向の中間部の内面には、凸条67が形成されている。凸条67は、分割板14の長手方向(第1方向)に延びている。凸条67の長手方向の両端部は、開口溝部62の長手方向の端縁に達している。凸条67は、隔壁14gの下端部より上に位置し、凸条67の端面14e側の端部が隔壁14gに連なっている。凸条67の突出高さ(第2方向の寸法)は、表側吸引溝60の深さ(第2方向の寸法)より小さい。凸条67と表側外壁部材22との間には、狭い隙間からなる絞り部68が形成されている。絞り部68は、分割板14の長手方向(第1方向)に延びている。
【0056】
図4に示すように、ノズル装置3の第2方向の中央部に上記供給溝40が配置されている。この供給溝40の裏側(図4において左側)に上記裏側吸引溝50が配置され、表側(図4において右側)に上記表側吸引溝60が配置されている。図5に示すように、これら溝40,50,60は平面視で平行に並んでいる。
【0057】
図8に示すように、ノズル装置3は、先端板70を更に備えている。図4及び図6に示すように、先端板70は、長手方向を第1方向に向け、幅方向を第2方向に向けた平板状になっている。先端板70の材質には特に限定がなく、樹脂やセラミックス等の絶縁体でもよく金属でもよいが、処理ガスに対する耐性を有していることが好ましい。ここでは、先端板70は、アルミナのセラミックスで構成されている。先端板70は、全体が一体物になっている。
【0058】
図4に示すように、先端板70は、板状積層部材11,12,21,22の面一をなす下端面(先端面)に被せられている。図示は省略するが、先端板70は、複数本のボルトで各部材11,12,21,22に固定されている。上記図示省略のボルトは、頭部を上に向けて部材11,12,21,22に通され、脚部が先端板70にねじ込まれている。上記ボルト用の雌ネジ孔が先端板70の上面から厚さ方向の途中まで形成されている。雌ネジ孔は、先端板70の下面には達していない。
【0059】
図6に示すように、先端板70には、3つのスリット71〜73が形成されている。スリット71〜73は、それぞれ先端板70の長手方向(第1方向)に直線状に延び、互いに先端板70の幅方向(第2方向)に間隔を置いて平行に配置されている。先端板70の幅方向(第2方向)の中央部に供給スリット71が配置されている。この供給スリット71の裏側(図6において左側)に裏側吸引スリット72が配置され、表側(図6において右側)に表側吸引スリット73が配置されている。各スリット71〜73の長さは、上記開口溝部42,42の合計長さとほぼ等しい。
【0060】
図4〜図6に示すように、中央の供給スリット71は、2つ(複数)の分割板13,13の開口溝部42,42に跨り、かつこれら開口溝部42,42の下端の開口に連なっている。供給スリット71の長手方向の中央部は、連通部49に連なっている。供給スリット71の幅(第2方向の寸法)は、開口溝部42の深さ(第2方向の寸法)より小さい。
【0061】
同様に、裏側吸引スリット72は、2つ(複数)の分割板13,13の開口溝部52,52に跨り、かつこれら開口溝部52,52の下端の開口に連なっている。裏側吸引スリット72の長手方向の中央部は、連通部59に連なっている。裏側吸引スリット72の幅(第2方向の寸法)は、開口溝部52の深さ(第2方向の寸法)より小さい。
【0062】
表側吸引スリット73は、2つ(複数)の分割板14,14の開口溝部62,62に跨り、かつこれら開口溝部62,62の下端の開口に連なっている。表側吸引スリット73の長手方向の中央部は、連通部69に連なっている。表側吸引スリット73の幅(第2方向の寸法)は、開口溝部62の深さ(第2方向の寸法)より小さい。
【0063】
図1に示すように、各分割板13の表側面13fには、一対の囲み溝82,83が、供給溝40の上側部及び第1方向の両側部(供給溝40の下端部を除く部分)を囲むように形成されている。一方の囲み溝82は、分割板13の長手方向(第1方向)の中央より第1方向の外側(他方の分割板13側とは反対側)に配置されている。囲み溝82の上端部が裏側吸引ヘッダ路32に連なっている。他方の囲み溝83は、分割板13の長手方向(第1方向)の中央より第1方向の内側(他方の分割板13の側)に配置されている。囲み溝83の上端部が表側吸引ヘッダ路33に連なっている。
【0064】
図7に示すように、第1溝形成部材11に被覆部材としての第2溝形成部材12が被さることにより、囲み溝82の面13f側の開口が塞がれている。これにより、囲み溝82が裏側吸引ヘッダ路32に連なるガス路になっている。同様にして、囲み溝83の面13f側の開口が第2溝形成部材12(被覆部材)にて塞がれ、囲み溝83が表側吸引ヘッダ路33に連なるガス路になっている。
【0065】
上記構成の表面処理装置1によって被処理物9を表面処理する方法を説明する。
処理ガス源4から処理ガスが共通供給路4aに送出される。処理ガスは、分配器4bで2つ(複数)の個別供給路4c,4cに分流され、ノズル装置3の2つ(複数)の供給ポート34,34にそれぞれ導入される。各供給ポート34に導入後の処理ガスは、供給ヘッダ路31を通り、ツリー溝部41内に入り込む。この処理ガスが、一次分岐溝41a、二次分岐溝41b、三次分岐溝41c、最終次分岐溝41eの順に流れて行くことにより、第1方向に拡散される。更に、処理ガスは、各最終次分岐溝41eの下端(ツリー溝部41の末端)から開口溝部42に送出される。この開口溝部42の凸条47より上側部分において、各分岐溝41eからの処理ガスが互いに混合される。続いて、処理ガスは、絞り部48を通過しながら絞られ、その後、凸条47より下側の開口溝部42に流出して膨張する。これにより、処理ガスを第1方向に十分に均質化できる。
【0066】
分割板13Aの開口溝部42の凸条47より下側部分に入った処理ガスの分割板13B寄りの部分と、分割板13Bの開口溝部42の凸条47より下側部分に入った処理ガスの分割板13A寄りの部分とは、それぞれ連通部49に流入して互いに合流する。
【0067】
更に、処理ガスは、供給スリット71を通過しながら絞られる。これにより、処理ガスを第1方向に一層均質化できる。特に、第1方向の中央部において、連通部49で合流した処理ガスが供給スリット71で絞られることにより、確実に均質化できる。そして、処理ガスが供給スリット71から下方へ噴き出される。
【0068】
併行して、配置部2上に配置された被処理物9が、ノズル装置3の下方を横切るように第2方向に移動される。この被処理物9に処理ガスが吹き付けられ、被処理物9が表面処理される。供給スリット71が被処理物9の第1方向の寸法に対応する長さを有し、処理ガスを供給スリット71の長手方向の全域から吹き出すことができるため、被処理物9の第1方向の全体に処理ガスを一度に吹き付けることができる。よって、被処理物9が大型であっても確実に表面処理することができる。しかも、処理ガスが第1方向に均質になっているため、被処理物9を均一に表面処理できる。特に、処理ガスを連通部49で合流させたうえで吹き出すため、被処理物9の表面の分割板13,13の継ぎ目に対応する箇所の処理抜けを防止でき、処理の均一性を十分に確保できる。加えて、先端板70が第1方向に分割されておらず、ノズル装置3の底面に第2方向(被処理物9の相対移動方向)に延びる継ぎ目がないため、そのような継ぎ目に起因する処理の不均一が生じることはない。したがって、表面処理の均一性を一層高めることができる。
【0069】
処理ガスの供給と併行して、吸引手段5を駆動する。これにより、ノズル装置3と被処理物9との間の処理済みのガスや雰囲気ガスが、吸引スリット72,73に吸い込まれる。
裏側吸引スリット72及び開口溝部52が開口溝部42及び供給スリット71と同様の構造になっているため、上記噴出時と同様の作用により、裏側吸引スリット72から吸い込まれるガスの流通状態を第1方向に均一化できる。同じく、表側吸引スリット73及び開口溝部62が開口溝部42及び供給スリット71と同様の構造になっているため、表側吸引スリット73から吸い込まれるガスの流通状態を第1方向に均一化できる。これにより、表面処理の均一性を一層高めることができる。
【0070】
各開口溝部52に入り込んだガスは、その後、複数の分岐溝51eを経てツリー溝部51で合流し、裏側吸引ヘッダ路32、裏側吸引ポート35を経て、裏側個別吸引路5aに送出される。2つの裏側個別吸引路5aからのガスは、裏側合流器5bで合流し、裏側共通吸引路5c、共通吸引路5gを経て、吸引手段5に吸引される。同様に、各開口溝部62に入り込んだガスは、分岐溝61e、表側吸引ヘッダ路33、表側吸引ポート36、表側個別吸引路5dを順次経て、表側合流器5eで合流し、更に、表側共通吸引路5f、共通吸引路5gを経て、吸引手段5に吸引される。吸引ガスは、吸引手段5に付設された除害設備で除害処理を施されたうえで排気される。
【0071】
ここで、各供給溝40内を通過中の処理ガスの一部が溝形成部材11,12の間を伝って外部に漏れようとすることも想定される。このような漏れガス流は、途中で囲み溝82又は83の何れかに捕捉される。囲み溝82には、裏側吸引ヘッダ路32、裏側吸引ポート35、及び管路5a,5b,5c,5gを介して吸引手段5の吸引圧が導入されている。したがって、囲み溝82に入り込んだ漏れガスは、上記吸引圧導入路32,35,5a,5b,5c,5gを順次経て、吸引手段5に送られ、除害処理を施されたうえで排気される。同様に、囲み溝83には、表側吸引ヘッダ路33、表側吸引ポート36、及び管路5d,5e,5f,5gを介して吸引手段5の吸引圧が導入されている。したがって、囲み溝83に入り込んだ漏れガスは、上記吸引圧導入路33,36,5d,5e,5f,5gを順次経て、吸引手段5に送られ、除害処理を施されたうえで排気される。
【0072】
したがって、供給溝40から処理ガスの一部が漏れたとしても、この漏れガスがノズル装置3の周辺の雰囲気ガス中に漏れるのを防止できる。これにより、雰囲気ガスの汚染や周辺の装置の腐食を防止できる。
【0073】
ノズル装置3は、被処理物9の大型化に対応し、ツリー溝部41,51,61をそれぞれ2つ(複数)に分割して第1方向に並べたものである。これによって、ノズル装置全体で各ツリー溝部41,51,61を1つだけ設けて大型の被処理物に対応させるよりもツリー溝部41,51,61の分岐の段数を少なくできる。したがって、溝形成部材11,12の高さ(上下方向の寸法)を小さくできる。この結果、ノズル装置3の重量が過大になるのを回避できる。
【0074】
溝形成部材11,12に溝40,50,60,82,83を形成する方法としては、切削加工による方法の他、溝40,50,60,82,83の型を用いた真空成形法又は射出成形法を適用してもよい。真空成形法や射出成形法によれば、部材重量を低減でき、製造コストを削減できる。
【0075】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の実施形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
図9は、先端板70の変形例(第2実施形態)を示したものである。この先端板70は、4つ(複数)のスリット画成板74と、一対の端板75とを備えている。これら板74,75は、例えばアルミナ等のセラミックスで構成されている。6つの板74,75は、各々別体になっており、互いに分離可能になっている。
【0076】
各スリット画成板74は、第1方向に延び、かつ幅方向を第2方向に向けた長尺の平板状になっている。4つのスリット画成板74が、第2方向に間隔を置いて平行に並べられている。
【0077】
4つのスリット画成板74は、板状積層部材11,12,21,22にそれぞれ一対一に対応している。各スリット画成板74は、対応する部材11,12,21,22の下面(先端面)に被さっている。第1溝形成部材11に対応するスリット画成板74は、2つ(複数)の分割板13,13に跨っている。第2溝形成部材12に対応するスリット画成板74は、2つ(複数)の分割板14,14に跨っている。
【0078】
第1溝形成部材11と第2溝形成部材12に対応する2つ(一対)のスリット画成板74,74どうしの間に供給スリット71が形成されている。裏側外壁部材21と第1溝形成部材11に対応する2つ(一対)のスリット画成板74,74どうしの間に裏側吸引スリット72が形成されている。第2溝形成部材12と表側外壁部材22に対応する2つ(一対)のスリット画成板74,74どうしの間に表側吸引スリット73が形成されている。
【0079】
図示は省略するが、各スリット画成板74は、対応する部材11,12,21,22にボルトで固定されている。上記ボルトは、頭部を上(図9の紙面奥側)に向けて各部材11,12,21,22に通され、脚部がスリット画成板74にねじ込まれている。上記ボルト用の雌ネジ孔がスリット画成板74の上面から厚さ方向の途中まで形成されている。雌ネジ孔は、スリット画成板74の下面には達していない。
【0080】
一対の端板75は、ノズル装置3の底面(先端面)の第1方向の両端部に配置され、それぞれ第2方向に延びる平板状になっている。各端板75は、板状積層部材11,12,21,22に跨るようにして、これら部材11,12,21,22の長手方向の端部に被さり、かつ4つのスリット画成板74の端面に突き当てられている。これら端板75によって、スリット71,72,73の長手方向の両端部が塞がれている。
【0081】
図示は省略するが、各端板75は、部材11,12,21,22にボルトで固定されている。端板75の固定用ボルトは、頭部を上(図9の紙面奥側)に向けて各部材11,12,21,22に通され、脚部が端板75にねじ込まれている。上記ボルト用の雌ネジ孔が端板75の上面から厚さ方向の途中まで形成されている。雌ネジ孔は、端板75の下面には達していない。
【0082】
第2実施形態によれば、スリット画成板74どうしの間隔を調節することにより、スリット71,72,73の開口幅を調節することができる。
【0083】
図10は、図9の先端板70を更に変形した第3実施形態を示したものである。第3実施形態では、4つのスリット画成板74のうち、表側外壁部材22に対応するものを除く3つのスリット画成板74の長手方向の両端部に、それぞれ隣りのスリット画成板74に突出する凸部76が設けられている。各凸部76は、隣りのスリット画成板74に突き当てられている。凸部76によってスリット71,72,73の延び方向の端部が画成されている。
【0084】
供給溝40を有する第1溝形成部材11の下端面(先端面)に被さるスリット画成板74を特許請求の範囲の「第1スリット画成板」としたとき、供給溝40の被覆部材としての第2溝形成部材12の下端面(先端面)に被さるスリット画成板74は「第2スリット画成板」を構成する。
裏側吸引溝50を有する第1溝形成部材11の下端面(先端面)に被さるスリット画成板74を特許請求の範囲の「第1スリット画成板」としたとき、裏側外壁部材21の下端面(先端面)に被さるスリット画成板74は「第2スリット画成板」を構成する。
表側吸引溝60を有する溝形成部材12の下端面(先端面)に被さるスリット画成板74を特許請求の範囲の「第1スリット画成板」としたとき、表側外壁部材22の下端面(先端面)に被さるスリット画成板74は「第2スリット画成板」を構成する。
【0085】
第3実施形態によれば、凸部76の突き当てによってスリット画成板74どうしを第2方向に正確かつ容易に位置決めできる。凸部76の突出量によって、スリット71〜73の開口幅を設定することができる。
【0086】
第1実施形態(図1〜図8)では、1つの噴出路(40,71)及び該噴出路を挟む一対の吸引路(50,72;60,73)からなる噴出吸引構造10の数が1つだけであったが、ノズル装置3が噴出吸引構造10を複数有していてもよい。
図11及び図12に示すように、第4実施形態では噴出吸引構造10が3つ(複数)設けられている。3つの噴出吸引構造10は、第2方向に並べられている。
【0087】
図11に示すように、第4実施形態のノズル装置3は、裏側(図11において左側)から、裏側外壁部材21、第1溝形成部材11、第2溝形成部材12、中壁部材23、第1溝形成部材11、第2溝形成部材12、中壁部材23、第1溝形成部材11、第2溝形成部材12、表側外壁部材22の順に第2方向に積層されている。各噴出吸引構造10は、第1、第2溝形成部材11,12を1つずつ有している。互いに重ねられた溝形成部材11,12の第2方向の両側に壁部材21,23(又は23,22)が設けられている。
【0088】
詳細な図示は省略するが、溝形成部材11,12が、それぞれ第1方向に2つ(複数)の分割板13又は14に分割され、各分割板13,14に溝40,50又は60が設けられている点は、第1実施形態と同じである。
【0089】
中壁部材23は、外壁部材21,22と同一の材料(例えばアルミニウム等の金属)で構成され、外壁部材21,22と略同じ形状になっている。中壁部材23によって、該中壁部材23の裏側(図11において左側)の噴出吸引構造10の表側吸引溝60の面14f側の開口が塞がれ、かつ該中壁部材23の表側(図11において右側)の噴出吸引構造10の裏側吸引溝50の面13r側の開口が塞がれている。
【0090】
ノズル装置3の裏側外壁部材21を除く板状積層部材11,12,23,11,12,23,11,12,22の上端部には、これら部材を貫通するようにしてヘッダ路31,32,33が形成されている(図11においては供給ヘッダ路31のみ図示)。図示は省略するが、ヘッダ部30が、ノズル装置3の上端部の第1方向に離れて2組(複数組)設けられている点は第1実施形態(図8)と同じである。
【0091】
供給ヘッダ路31に各噴出吸引構造10の供給溝40の上端部が連なっている。詳細な図示は省略するが、同様にして、裏側吸引ヘッダ路32に各噴出吸引構造10の裏側吸引溝50の上端部が連なっている。表側吸引ヘッダ路33に各噴出吸引構造10の表側吸引溝60の上端部が連なっている。
【0092】
図12に示すように、各板状積層部材21,11,12,23,11,12,23,11,12,22の下端面(先端面)にはスリット画成板74が被せられている。最も表側(図12において右端)以外のスリット画成板74の両端部には、第3実施形態(図10)と同様に凸部76が設けられ、これら凸部76が、隣りのスリット画成板74に突き当てられている。
【0093】
供給ヘッダ路31に導入された処理ガスは、3つの噴出吸引構造10,10,10の供給溝40,40,40に分配され、3つの供給スリット71,71,71からそれぞれ噴き出され、被処理物9の表面処理に供される。
【0094】
処理済みのガスは、当該ガスが噴き出された供給スリット71の直近の両側の(すなわち同じ噴出吸引構造10内の)吸引スリット72,73からそれぞれ吸引される。各噴出吸引構造10の吸引スリット72,73に吸引されたガスは、これら吸引スリット72,73に連なる吸引溝50,60を通り、表側吸引ヘッダ路33で合流し、管路5a〜5gを経て吸引手段5から吸引排気される。
【0095】
図13に示すように、裏側共通吸引路5cには流量制御弁5vが設けられている。表側共通吸引路5fには流量制御弁5uが設けられている。これら流量制御弁5v,5uを互いに独立して制御することにより、吸引路72,50による吸引流量と吸引路73,60による吸引流量を個別に調節できる。特に、隣り合う2つの噴出吸引構造10,10の隣り合う吸引スリット72,73からの吸引流量を個別に調節できる。
【0096】
図14及び図15は、本発明の第6実施形態を示したものである。この実施形態では溝形成部材11,12がそれぞれ3つ(奇数個)の分割板13,14に分割されている(分割板13のみ破線で図示)。各分割板13にヘッダ部30及び溝40,50が形成され、各分割板14に表側吸引溝60が形成されている点、隣接する開口溝部42,42どうし、開口溝部52,52どうし、開口溝部62,62どうしがそれぞれ連通している点は既述の実施形態と同様である。
【0097】
処理ガス源4から延びる共通供給路4aが、分配器4bを介して3つの個別供給路4cに分岐し、これら個別供給路4cが3つ分割板13の供給ヘッダ路31に一対一に連なっている。
【0098】
図15に示すように、第6実施形態の分配器4bは、ボディ91と、蓋94と、仕切り板95を備えている。ボディ91は、処理ガスに対し耐性を有していれば、樹脂でもよく、金属でもよい。ここでは、ボディ91の材質として、例えばポリ塩化ビニル(PVC)が用いられている。
【0099】
ボディ91には、一側面(図15において上面)から内部へ延びる導入孔92と、上記一側面と直交する側面(図15において右面)から内部へ延びる太い分配孔93とが形成されている。導入孔92の開口端に導入ポート97が設けられ、この導入ポート97に共通供給路4aが接続されている。
【0100】
分配孔93の開口端が蓋94にて塞がれている。蓋94は、ボディ91と同じ材質で構成されているが、処理ガスに対し耐性を有していればボディ91とは異なる材質であってもよい。
【0101】
分配孔93の内部に仕切り板95が設けられている。仕切り板95は、長手方向を分配孔93の軸線に向けた平板状になっている。仕切り板95は、ボディ91と同じ材質で構成されているが、処理ガスに対し耐性を有していればボディ91とは異なる材質であってもよい。仕切り板95の基端部(図15において右)は、蓋94の内面に形成された保持凹部94eに嵌め込まれて支持されている。仕切り板95の先端部(図15において左)は、分配孔93の奥端のテーパ部93eに挿入されて支持されている。仕切り板95によって分配孔93の内部が2つの半割り室93a,93bに仕切られている。上記導入孔92が、上流側半割り室93aに連なっている。
【0102】
仕切り板95には、3つ(複数ないしは奇数個)の連通孔95a,95b,95cが形成されている。各連通孔95a〜95cを介して2つの半割り室93a,93bが連通している。3つの連通孔95a〜95cは、仕切り板95の長手方向(分配孔93の軸線方向)に間隔を置いて配置されている。中央の連通孔95aは、両端の連通孔95b,95cより大きい。
【0103】
ボディ91の分配孔93を挟んで導入孔92側とは反対側の部分には、3つ(複数ないしは奇数個)の導出孔96a,96b,96cが形成されている。これら導出孔96a〜96cは、分配孔93の軸線方向に間隔を置いて配置されている。各導出孔96a〜96cは、下流側半割り室93bからボディ91の外面へ貫通している。仕切り板95と直交する方向から見て、導出孔96aと連通孔95aとが一対一に対応し、導出孔96bと連通孔95bとが一対一に対応し、導出孔96cと連通孔95cとが一対一に対応している。
【0104】
各導出孔96a,96b,96cに導出ポート98を介して個別供給路4cが接続されている。図14に示すように、中央の導出孔96aに対応する個別供給路4cが、ノズル装置3の3つのヘッダ部30のうち中央のヘッダ部30の供給ポート34に接続されている。両端の導出孔96b,96cに対応する個別供給路4c,4cが、両端のヘッダ部30,30の供給ポート34,34にそれぞれ接続されている。
【0105】
処理ガス源4からの処理ガスは、共通供給路4a、導入ポート97、導入孔92を順次経て、上流側半割り室93aに導入され、上流側半割り室93a内に拡散する。次いで、処理ガスは、上流側半割り室93aから各連通孔95a,95b,95cを通って下流側半割り室93bに入り、下流側半割り室93b内に拡散しながら、各導出孔96a,96b,96cを経て、それぞれ対応する個別供給路4cに導出される。これにより、処理ガスを3つ(奇数個)のヘッダ部30のポート34に分配できる。
【0106】
仕切り板95の連通孔95a〜95cの大きさを調節することにより、各噴出吸引構造10への処理ガス流量を調節できる。この実施形態では、仕切り板95の中央の連通孔95aが比較的大きいため、中央の噴出吸引構造10からの処理ガスの噴出流量を両端の噴出吸引構造10からの処理ガスの噴出流量より大きくできる。
【0107】
仕切り板95の中央の連通孔95aを両端の連通孔95b,95cより小さくしてもよく、3つの連通孔95a〜95cを同じ大きさにしてもよい。仕切り板95に形成する連通孔の数は、3つに限られず、2つでもよく、4つ以上でもよい。仕切り板95を、多数の連通孔を有する多孔板で構成してもよい。
【0108】
図示は省略するが、3つの裏側吸引ポート35からの3つの裏側個別吸引路5aは、図15に示す分配器4bと同様の構造の裏側合流器5bに接続されて合流されている。同じく、3つの表側個別吸引路5dは、図15に示す分配器4bと同様の構造の表側合流器5eに接続されて合流されている。
【0109】
図16は、本発明の第7実施形態を示したものである。この実施形態では、ノズル装置3に一対の電極6,6が組み込まれている。一方の電極6は、電源7に接続され、他方の電極6は電気的に接地されている。これら電極6,6の間に板状部材11,12が挟まれている。板状部材11,12は、例えばアルミナ等のセラミックスで構成されており、電極6の放電を安定化させるための固体誘電体層として提供されている。既述の実施形態と同様に、溝形成部材11の板状部材12との当接面13fにツリー溝部41及び開口溝部42を含む供給溝40が形成されている。板状部材12は、供給溝40の面13f側の開口を塞ぐ被覆部材になっている。溝形成部材11の上記面13f側とは反対側の面に一方の電極6が宛がわれている。被覆部材12の溝形成部材11側とは反対側の面に他方の電極6が宛がわれている。
【0110】
処理ガス源4の処理ガスが供給溝40内に導入される。併行して、電源7からの電圧供給によって電極6,6間に電界が印加され、大気圧グロー放電が生成される。これにより、処理ガスが、供給溝40内を流通する過程でプラズマ化され、反応成分が生成される。このプラズマ化された処理ガスが供給スリット71から噴き出され、被処理物9に吹き付けられる。この処理ガスの反応成分が被処理物9に接触することにより、被処理物9を表面処理できる。
【0111】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々の改変をなすことができる。
例えば、溝形成部材11が分割板13に分割されていなくてもよい。言い換えると、溝形成部材11を構成する複数の分割板13が一体に連なっていてもよい。一体物の溝形成部材11の表側面に複数の溝形成部13fが第1方向に並んで設定され、各溝形成部13fに供給溝40が形成され、かつ隣接する供給溝40の開口溝部42どうしが連通してもよい。一体物の溝形成部材11の裏面に複数の溝形成部13rが第1方向に並んで設定され、各溝形成部13rに裏側吸引溝50が形成され、かつ隣接する裏側吸引溝50の開口溝部52どうしが連通してもよい。
同様に、溝形成部材12が分割板14に分割されていなくてもよい。言い換えると、溝形成部材12を構成する複数の分割板14が一体に連なっていてもよい。一体物の溝形成部材12の表側面に複数の溝形成部14fが第1方向に並んで設定され、各溝形成部14fに裏側吸引溝50が形成され、かつ隣接する裏側吸引溝50の開口溝部52どうしが連通してもよい。
【0112】
溝形成部材11,12は、それぞれ2つの分割板13,14(図1〜図3等)又は3つの分割板13,14(図14)に分割されているのに限られず、4つ以上の分割板13,14に分割されていてもよい。溝形成部材11,12に分割設定する溝形成領域13f,13r,14fの数は、2つ又は3つに限られず、4つ以上でもよい。
【0113】
ノズル装置3の噴出吸引構造10の並設数は、1つ(図6等)又は3つ(図12)に限られず、2つでもよく、4つ以上でもよい。
【0114】
ツリー溝部41は、溝形成部材11の下端面(先端面)に近づくにしたがって第1方向に広がるよう枝分かれしていればよく、1つの幹路から分かれる枝路の数は2つに限られず、3つ以上でもよい。また、枝分かれの段数は適宜、設定できる。ツリー溝部51,61についても同様である。
【0115】
ノズル装置3をフード状のカバーで覆い、上記カバーとノズル装置3との間の空間に吸引手段を接続してもよい。これによって、処理ガスがノズル装置3の外側に漏れたとしても、上記空間から上記吸引手段に吸引して排気できる。したがって、雰囲気ガスの汚染や周辺装置の腐食を一層確実に防止でき、安全性を一層高めることができる。
ノズル装置3は、処理ガスの噴出路40,71だけを有し、吸引路50,72;60,73が省略されていてもよく、吸引路50,72;60;73だけを有し、噴出路40,71が省略されていてもよい。
隔壁13gを省略し、隣接する開口溝部42,42の高さ方向の全体が互いに直接連通するようにしてもよい。
凸条47,57,67が被覆部材に設けられていてもよい。
【0116】
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態(図8)においても、吸引路5c,5fに第4実施形態(図13)と同様の流量制御弁5v,5uを設け、吸引スリット72,73からの吸引流量を個別に制御することにしてもよい。
第4実施形態の先端板70は、第1実施形態(図6)と同様に全体が一体物になっていてもよく、第2実施形態(図9)と同様にスリット画成板74に凸部76が設けられていなくてもよい。
【実施例1】
【0117】
図14に示すように、溝形成部材11,12が第1方向に3つの分割板13,14に分割されており、かつ噴出吸引構造10が第2方向に3つ並設された装置を用いて、シリコンのエッチングを行なった。各分割板13,14の開口溝部42,52,62の第1方向の長さは720mmであった。スリット71,72,73の第1方向の長さは、2160mmであった。処理ガスとして、HF含有ガス(フッ素系反応ガス)とO含有ガス(酸化性ガス)の混合ガスを用いた。HF含有ガスは、CF(フッ素系原料)をArで希釈し、かつHOを添加し、更にプラズマ生成装置でプラズマ化することにより生成した。各ガス成分の流量は以下の通りとした。
CF 3.2slm
Ar 29slm
O添加後のフッ素系原料ガス(CF+Ar)の露点 18℃
上記プラズマ生成装置のプラズマ放電条件は以下の通りとした。
電極間間隔 3mm
電極間電圧 Vpp=12kV
周波数 30kHz
含有ガスは、O(酸素系原料)を原料にし、オゾナイザーにて生成した。O流量及びO生成量は以下の通りとした。
175g/m
含有ガス中のO濃度 約8vol%
【0118】
被処理物9をノズル装置3に対し第2方向に相対移動(スキャン)させながら、上記処理ガスをノズル装置3から被処理物9に吹き付けた。移動速度は4m/minとした。そして、シリコンのエッチングレートを被処理物9の表面上の第1方向に離れた測定ポイントごとに測定した。
【0119】
また、比較例1として、隔壁13g,13h,14gが溝形成部材11,12の下端面(先端面)まで達し、隣接する開口溝部42,52,62どうしがそれぞれ連通していない点を除き、実施例1と同一構成の装置を用い、実施例1と同一条件でシリコンのエッチングを行ない、エッチングレートを測定した。
【0120】
比較例2として、比較例1と同様に隣接する開口溝部42,52,62どうしがそれぞれ連通していない点に加え、先端板70が長手方向(第1方向)のちょうど中央部で2つに分割されている点が実施例1と異なり、それ以外は実施例1と同一構成の装置を用い、実施例1と同一条件でシリコンのエッチングを行ない、エッチングレートを測定した。
【0121】
実施例1と比較例1、2の結果を図17に示す。図の縦軸は、被処理物9をノズル装置3に対し第2方向に1回、片道移動させたとき(1スキャンあたり)のシリコンのエッチング量である。図の横軸は、被処理物9の表面上の第1方向の位置であり、0[mm]のポイントが供給スリット71の長手方向の中央部に対応する。−360[mm]及び360[mm]の各ポイントが、分割板13,14の継ぎ目に対応する位置である。
【0122】
開口溝部42,52,62どうしが連通していない場合(比較例1)、分割板13,14の継ぎ目に対応する位置(図17の横軸の±360mm)のエッチングレートが局所的に低下した。これに対し、開口溝部42,52,62どうしが連通している場合(実施例1)、エッチングレートが分割板13,14の継ぎ目に対応する位置でも低下せず、第1方向にほぼ均一にできることが確認された。しかも、比較例1よりも全体的にエッチングレートが向上した。実施例1の平均エッチングレートは、1スキャンあたり18.6nmであった。
【0123】
また、先端板70に継ぎ目がある場合(比較例2)、当該継ぎ目に対応する箇所(図17の横軸の0mm)のエッチングレートが他の箇所に比べ局所的に高くなった。これは、上記継ぎ目に処理ガスが流れ込み、被処理物9の表面上の継ぎ目に対応する箇所の反応成分の濃度が局所的に高くなるためと考えられる。
これに対し、実施例1によれば、エッチングレートが局所的に高くなる箇所は現れず、上述した通り、全体的に均一で良好なエッチングレートが得られた。
【実施例2】
【0124】
実施例2では実施例1と同様の装置を用いて同一条件でエッチングを行ない、エッチングレートを測定した。
比較例3として、凸条47,57,67が無く、開口溝部42,52,62の途中でガスが絞られない点を除き、実施例1と同様の装置を用い、実施例1と同様にして、シリコンのエッチングを行ない、エッチングレートを測定した。実施例2と比較例1の結果を図18に示す。同図の横軸の0[mm]は、ノズル装置3の3つの分割板13のうち図14の左側に相当する分割板13の第1方向のちょうど中央部に対応する。同図から明らかなように、絞り部48,58,68が無い場合(比較例3)、エッチングレートのばらつきが大きかった。これに対し、絞り部48,58,68が設けられている場合(実施例2)、エッチングレートをほぼ一様にでき、しかも全体的に高くできることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)や半導体ウェハの製造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表面処理装置のノズル装置の主に第1溝形成部材を、図4のI-I線に沿って矢視した正面図である。
【図2】上記ノズル装置の主に第1溝形成部材を、図4のII-II線に沿って矢視した背面図である。
【図3】上記ノズル装置の主に第2溝形成部材を、図4のIII-III線に沿って矢視した正面図である。
【図4】図1のIV-IV線に沿う、上記ノズル装置の側面断面図である。
【図5】図4のV-V線に沿う、上記ノズル装置の平面断面図である。
【図6】図4のVI-VI線に沿う、上記ノズル装置の底面図である。
【図7】図1のVII-VII線に沿って上記ノズル装置の一部を拡大して示す平面断面図である。
【図8】上記表面処理装置の概略構成を示す解説正面図である。
【図9】本発明の第2実施形態を示し、ノズル装置の底面図である。
【図10】本発明の第3実施形態を示し、ノズル装置の底面図である。
【図11】本発明の第4実施形態を示し、ノズル装置の側面断面図である。
【図12】上記第4実施形態のノズル装置の底面図である。
【図13】上記第4実施形態の表面処理装置の概略構成を示す解説正面図である。
【図14】本発明の第5実施形態の表面処理装置の概略構成を示す解説正面図である。
【図15】上記第5実施形態の分配器の詳細構造を示す断面図である。
【図16】本発明の第6実施形態の表面処理装置の概略構成を示す側面断面図である。
【図17】実施例1の結果を比較例1、2と併せて示すグラフである。
【図18】実施例2と比較例3の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0127】
1 表面処理装置
2 被処理物配置部
3 ノズル装置
4 処理ガス源
5 ガス吸引手段
9 被処理物
10 噴出吸引構造
11 第1溝形成部材
12 第2溝形成部材(供給溝用被覆部材)
13 分割板
13f 供給溝形成部
13r 裏側吸引溝形成部
13e 分割端面
13g 隔壁
13h 隔壁
14 分割板
14f 表側吸引溝形成部
14e 分割端面
14g 隔壁
21 裏側壁部材(裏側吸引溝用被覆部材)
22 表側壁部材(表側吸引溝用被覆部材)
23 中壁部材(被覆部材)
30 ヘッダ部
31 供給ヘッダ路
32 裏側吸引ヘッダ路
33 表側吸引ヘッダ路
40 供給溝
41 ツリー溝部
42 開口溝部
47 凸条
48 絞り部
49 連通部
50 裏側吸引溝
51 ツリー溝部
52 開口溝部
57 凸条
58 絞り部
59 連通部
60 表側吸引溝
61 ツリー溝部
62 開口溝部
67 凸条
68 絞り部
69 連通部
70 先端板
71 供給スリット
72 裏側吸引スリット
73 表側吸引スリット
74 スリット画成板
75 端板
76 凸部
82 囲み溝
83 囲み溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に処理ガスを供給し、又は処理済みのガスを吸引するノズル装置において、
第1方向に複数の溝形成部に分割された主面と、前記主面と交差して前記第1方向に延びる先端面とを有する板状の溝形成部材と、
前記主面を覆う被覆部材と、
を備え、前記各溝形成部に前記処理ガス又は処理済みガスの通路となる溝が形成され、前記溝が、前記先端面に近づくにしたがって第1方向に広がるよう枝分かれするツリー状のツリー溝部と、前記ツリー溝部の末端を連ねるよう前記第1方向に延び、かつ前記先端面に達する開口溝部と、を含み、隣接する2つの溝形成部の開口溝部どうしが互いに連通し、かつ該開口溝部どうしの連通部が前記先端面に達していることを特徴とする表面処理用ノズル装置。
【請求項2】
前記溝形成部材が、前記第1方向に複数の別体の分割板に分割され、隣接する分割板の分割端面どうしが突き合わされ、各分割板が1つの前記溝形成部を有し、かつ各分割板の開口溝部の分割端面側の端部が分割端面に達して前記連通部を構成していることを特徴とする請求項1に記載の表面処理用ノズル装置。
【請求項3】
各開口溝部における前記先端面と直交する方向の中間部には、第1方向に延びる凸条にて形成された絞り部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理用ノズル装置。
【請求項4】
前記連通部が前記絞り部より前記先端面側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の表面処理用ノズル装置。
【請求項5】
前記複数の溝形成部の前記第1方向の合計長さと対応する長さを有して、前記溝形成部材の先端面及び前記被覆部材の先端面に被さる一体物の先端板を、更に備え、
前記先端板には、第1方向に延び、かつ複数の溝形成部の開口溝部に連なるスリットが形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表面処理用ノズル装置。
【請求項6】
各々前記第1方向に延び、かつ互いに平行に並べられた一対のスリット画成板と、これらスリット画成板と交差するようにしてこれらスリット画成板の長手方向の両端部にそれぞれ分離可能に設けられた一対の端板とを、更に備え、
前記スリット画成板の一方が、前記溝形成部材の先端面に被さり、前記スリット画成板の他方が、前記被覆部材の先端面に被さり、前記一対のスリット画成板どうしの間に、前記第1方向に延びて複数の溝形成部の開口溝部に連なるスリットが形成され、前記一対の端板により前記スリットの長手方向の両端部が画成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表面処理用ノズル装置。
【請求項7】
各々前記第1方向に延び、かつ互いに平行に並べられた第1、第2のスリット画成板を、更に備え、
前記第1スリット画成板が、前記溝形成部材の先端面に被さり、前記第2スリット画成板が、前記被覆部材の先端面に被さり、前記第1、第2スリット画成板どうしの間に、前記第1方向に延びて複数の溝形成部の開口溝部に連なるスリットが形成され、前記第1、第2スリット画成板の何れか一方の長手方向の端部には他方のスリット画成板に突き当たる凸部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表面処理用ノズル装置。
【請求項8】
前記スリットの幅が、前記開口溝部の深さより小さいことを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載の表面処理用ノズル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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