説明

表面加工制御方法、及び表面加工制御プログラム

【課題】 数値制御工作機械を使用し金属を加工する際に、加工物の加工面を切削する工具や切削条件を設定することで、加工面の機械的特性、表面あらさ、残留応力、表面硬さを要求する加工面に加工する方法を提供する。
【解決手段】 あらかじめ加工実験を行い、加工曲面の機械的特性と切削因子とを参照付け、加工面の機械的特性が得られる切削条件を選定する。そして、切削条件と加工面に得られる機械的特性を曲面加工のシミュレーションすることにより、加工面の機械的特性とその加工条件のパターンを参照表として作成・保存する。この参照表を用いて金属を加工する際に得られる加工面を、所望する機械的特性を保有する加工面に切削加工できるように数値制御機械を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御工作機械を用いて金属加工物を加工する際に、加工面の機械的特性である表面あらさ、残留応力、表面硬さを予測して加工物の切削条件を決定する加工物の表面加工制御方法及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機産業、宇宙産業、金型産業などにおいて、高能率かつ高精度の金属表面の加工に対する要求が厳しくなっており、また、これまで3軸同時加工で充分対応可能であった産業の業種においても、更なる加工効率の改善を求める傾向にある。このため、一部の特殊形状に対してのみ採用されてきた多軸加工が注目されるようになり、多軸加工装置へのニーズが急激に高まってきている。例えば、5軸制御工作機械は、従来からの直進駆動3軸に回転駆動2軸を付加した工作機械であり、工作物に対して任意の工具姿勢を与えることができるため、複雑な形状の加工が可能となっている。
【0003】
この5軸制御工作機械は、様々な曲面を持つ金型の製作に使用されている。これまで5軸制御によるボールエンドミル加工については、工具経路の決定方法が主に研究されてきており、このための様々なアルゴリズムが提案されている。また、市販のCAM(Computer Aided Manufacturing:コンピュータ支援製造)システムも4軸以上のマシニングセンタに対応するようになり、比較的簡単に工具経路を作成することができるようになっている。しかし、これら従来のソフトウエア(アルゴリズム)による工具経路の決定方法は、工具と工作物とが干渉しないようにチェックすることに重きが置かれているのが現状であった。
【0004】
そこで、機械加工した表面のあらさ寸法精度を向上させる表面仕上げのために、通常、研磨や放電加工などの後処理工程が必要とされている。例えば、エンドミルを用いて金属を切削加工するエンドミル加工においては、仕上げ面の表面あらさを制御する方法として、外周刃にかかる切削抵抗を変動させずに、ほぼ一定に維持するようにして、切削抵抗の変動に起因して生じていた工具本体の倒れ量の変動が生じるのを抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。そして、この特許文献1に記載されているエンドミル加工方法によれば、加工面の形状精度が向上し、より高精度の切削加工を実現することができるとされている。
【0005】
また、金属材料の表面加工方法において、加工面の残留応力を改善する方法として、加工面の表面の浸炭処理(切削加工した後で表面層の炭素量を増加させる処理)を行う浸炭処理法、あるいは、加工面に小さな硬質の金属球(例えば、粒径40μm〜1.3mm程度の小球)を被加工部品に高速で衝突させるショットピーニングにより、高い圧縮残留応力を付与する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、浸炭処理は、切削加工した後に、加工物の表面層のみを焼入硬化する処理工程が必要であり、また、ショットピーニングは、同じく切削加工した後に、加工物表面に金属球を衝突させるという処理工程が必要であり、いずれも、切削加工とは別の大掛かりな作業工程を必要とするという不都合があった。
【0006】
また、機械加工において、加工条件を制御して、加工面の圧縮残留応力を生成させる方法として、工具の切削速度を限定すると共に、工具軸方向と工具径方向の切り込み量を限定して圧縮残留応力を発生させる方法(例えば、特許文献2参照)や、先端部に切刃が形成された工具の該先端部で所定の被加工面層を切削加工する際に、前記被加工面層を塑性流動させながら切削することにより該被加工表面層に圧縮残留応力を生成する方法が提案されている。(例えば、特許文献3参照)
【特許文献1】特開2004−34171号公報
【特許文献2】特開2000−61735号公報
【特許文献3】特開2003−266228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ボールエンドミルを用いて金型を切削加工する場合にあっては、直線部の加工よりも円弧部の加工の方がはるかに多く、この円弧部の加工では切削抵抗が直線部とは大きく変化するケースが多いのが通例であった。このため、円弧部面の切削加工において、加工面の表面あらさ、残留応力、表面硬さを予測して、この予測値にしたがって実際の機械切削加工を制御することは極めて重要なことであった。
【0008】
特に、加工面の残留応力は、加工物が機械部品として使用される際の疲労寿命に大きく関わっており、引張の残留応力ではなく圧縮の残留応力が生成されれば、表面の疲労強度が強くなって、耐磨耗性、耐応力腐食特性を向上させことができるとされている。このため、長期間の耐熱サイクル性が要求される金型や機械部品等の加工においては、機械加工により、円弧形状の加工面に圧縮の残留応力を生成させる方法が待望されていた。
また、薄い平面形状の加工物や長尺の加工物では、加工物の各部分で残留応力のアンバランスが生じるため、加工後に固定具からはずすとゆがみが生じてしまうという問題があり、加工後の修正が不可欠となっていた。
【0009】
また、金属材料はすべて多結晶からなっているが、この金属材料に応力が加わった場合、金属材料は力の方向に伸び、これと直角方向に縮む特性を有する。つまり、この圧縮と伸長に伴い、金属材料を構成する多結晶の原子間の距離(格子間距離)も伸びたり縮んだりする。例えば、鋼の場合、応力が“0”のときの格子定数が既知であるため、この格子間距離の変化量が残留応力となる。この残留応力は、この格子間距離の変化をX線回折によって測定し、金属加工面の表面をX線回折により調べることにより、表面から数十μmの深さ範囲で測定することができる。
【0010】
本発明は、以上の問題点と課題を踏まえてなされたものであり、数値制御工作機械を使用し、金属を加工する場合、さまざまな切削因子を選定することにより、金属加工面の表面あらさ、残留応力、表面硬さ等の機械的特性を予測し、この予測値に基づいて加工表面を所望する機械的特性(表面あらさ、残留応力、表面硬さ)をもつ表面に加工制御する方法及びそのための制御プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の表面加工制御方法は、工具の形状、工具の送り方向を定めるとともに、工具径、切り込み深さ、ピックフィード、一刃当たりの送り量、2方向の工具姿勢の各切削因子の組合せによる切削条件を定め、該切削条件と加工される物体表面の表面あらさ、残留応力、表面硬さの各機械的特性バランスとを関連付けた参照テーブルを作成し、該参照テーブルに基づいて、前記各機械的特性を必要とする加工面部位の加工時に、加工面の形状から工具経路を設定するとともに、目標とする加工面部位の機械的特性バランスが得られる切削条件を設定することを特徴としている。なお、ここで用いられる工具はボールエンドミルであり、残留応力は圧縮残留応力である。
【0012】
また、本発明の好ましい形態においては、前記切削因子の組み合せからなる切削条件と、加工物の表面あらさ、残留応力、表面硬さの機械的特性を関連付ける参照テーブルは、コンピュータシュミュレーションにより作成されるとともに、コンピュータシュミュレーションによって作成された加工物の加工面における表面あらさ、残留応力、表面硬さの各機械的特性の分布は、ディスプレイ上に色彩および色の濃淡で表示されるようになっている。
【0013】
また、本発明の表面加工制御プログラムは、コンピュータに、工具の形状、工具の送り方向、工具径、切り込み深さ、ピックフィード、一刃当たりの送り量、2方向の工具姿勢の各切削因子を入力し、該切削因子の組合せによる切削条件を定める機能と、該切削条件と加工される物体表面の表面あらさ、残留応力、表面硬さの各機械的特性バランスとを関連付けた参照テーブルを作成する機能と、加工物加工面の所望する表面あらさ、残留応力、表面硬さの各機械的特性を入力して、該参照テーブルに基づいて、前記各機械的特性を必要とする加工面部位の加工時に、前記加工面の形状から工具経路を設定するとともに、目標とする加工面部位の機械的特性バランスを得るための切削条件を設定する機能を実現させる制御プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表面加工制御方法及びその制御プログラムによれば、数値制御工作機械を使用し金属を加工する際に、被削物の加工面を切削する工具や、種々の切削条件に基づいて加工面の求める機械的特性(表面あらさ、残留応力、表面硬さ)を選定することにより、要求どおりの機械的特性を有する金属材料の表面加工を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明を実際の生産現場で応用する場合、加工品の目的と用途、および加工の能率と経済性を勘案しながら、加工部位によって要求が異なる機械的特性を満足する加工をすることができる。例えば、射出成形金型の加工に際しては、摩耗の激しい部分(例えばゲート部分)には、圧縮残留応力が高く、表面が硬くなる条件を採用し、一方で磨耗は激しくないが良好な表面あらさが求められる他の部分(例えばランナーやキャビティ部分)の加工に対しては圧縮残留応力が小さくても良いが表面あらさが小さくなる条件を採用するようにする。あるいは、インペラなど高速回転羽根の根本部分の加工では、圧縮残留応力が高くなることを第一優先に加工条件を設定し、その他の加工部分は加工能率を優先した条件を採用する等の使い分けをする。これにより、全体としての加工能率をあまり低下させずに,加工物の重要な部位には表面あらさ、残留応力、表面硬さの機械的特性を所望するバランスに設定して加工することができ、目的とする加工物を短時間で加工することできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態例について説明する。
本実施の形態例では、数値制御工作機械として、5軸制御工作機械を使用している。図1及び図2は、5軸制御工作機械の“5軸”の意味を説明するための模式図である。
すなわち、図1に示すように、5軸制御工作機械は、金型などの加工物を設置するための回転テーブル1を備えた不図示の基部と、先端にボールエンドミルの切れ刃を形成した切れ刃工具2を支持するための不図示の主軸頭部とを有して構成されている。そして、切れ刃工具2の回転軸をZ軸とし、Z軸に直交する軸の一つをY軸とし、Z軸とY軸との両方に直交する軸をX軸とする。
【0017】
図1及び図2において、回転テーブル1がX軸方向に移動可能とされるとともに、切れ刃工具2を支持する主軸頭部がY軸及びZ軸方向に移動可能に構成されている。さらに、回転テーブル1は、互いに直交するY軸とZ軸で形成されるYZ平面3に垂直な軸を中心として回転可能とされ、またZ軸とX軸とで構成されるZX平面4に垂直な軸を中心として回転可能に構成されている。その結果、主軸頭部に支持された切れ刃工具2は、図1に示すYZ平面3内で自在に回転可能となり(α方向)、同様に、図2に示すZX平面4内で自在に回転可能となる(γ方向)。これにより、回転テーブル1に設置された加工物に対してあらゆる方向から切れ刃工具2を当てることができるようになり、複雑な形状であっても、滑らかに切削加工することができるようになっている。ここで、フィード方向とは、切れ刃工具2が加工物の金属表面上を加工しつつ走査する方向であり、ピックフィード方向とは、フィード方向と直行する方向である。
【0018】
本発明の実施の形態例の詳細を説明する前に、まず、本発明の実施形態例の表面加工制御方法及びそのプログラムに採用する統計的手法について説明しておく。
本発明の実施の形態例における加工物表面の加工条件(切削条件と同じ)としては、工具径、ピックフィード、送り速度、切り込み深さ、工具姿勢2方向の計6項目(以下、「切削因子」という。)を予測変数として採用している。なお、この予測変数は、従来の数値制御機械における数値制御プログラムには指示されていない、つまり備えられていないものである。そして、上記予測変数である6つの切削因子が加工表面の機械的特性に与える影響を調べるため、統計手法の一つである実験計画法を用いて、切削因子の組合せに対応する機械的特性(表面あらさ、残留応力、表面硬さ)を求める。
【0019】
すなわち、特定の切削因子を組合せて加工実験を行い、これら切削因子が加工表面の機械的特性(表面あらさ、残留応力、表面硬さ)に対してどのような影響を与えるかを調べる。そして、その結果をマトリクス(直交表)としてテーブルに記憶し、コンピュータの記憶装置に保存する。このような実験計画は比較的少数の実験数でデータを取得し、この実験データを解析して、実験データと切削因子の関連付けを統計的手法により行う手法である。この統計的手法としては、品質工学分野におけるプロセス最適化に適用されている手法である応答曲面法がよく用いられている。この応答曲面法の代表的なものは、最小2乗法、実験計画法、最適化手法である。応答曲面とは、制御因子xと応答yとの関係を近似する曲面であり、応答曲面の関数形としては実験計画の観点から多項式近似をする場合が多い。例えば、最小2乗法の場合は2次多項式近似がなされる。
【0020】
図3は、本発明の表面加工制御方法及びその制御プログラムを実行するための数値制御工作機械のシステム構成を示すブロック図である。
中央処理装置5は、内部記憶装置としての主記憶装置5とデータベースとしての機能を有する外部記憶装置7を備え、所定のプログラムに基づいてこれら記憶装置6,7と情報のやり取りが行われる。また、中央処理装置5は、入力装置であるキーボード12と接続されると共に、表示装置としての3次元CADモニター11に接続されている。そして、キーボード12からの各種の設定条件が中央処理装置5に入力されると、この入力情報と中央処理装置5に読み込まれたプログラムに基づいて、主記憶装置6あるいは外部記憶装置7からのデータが読み出され、演算された制御データがNC(Numerical Control)制御装置8に供給される。
【0021】
NC制御装置8は、この中央処理装置5から供給される制御データに基づいて、駆動回路9を作動させ、これによりサーボモータ10が駆動される。なお、サーボモータ10には、例えばボールエンドミルの切れ刃工具2(図1,2参照)を回転させる回転軸が接続されている。
【0022】
また、中央処理装置5は、キーボード12から入力される工具径、ピックフィード、送り速度、切り込み深さ、工具姿勢2方向の各切削因子に対応して外部記憶装置7に記憶されているデータベースから、表面加工する加工物の表面あらさ、残留応力、表面硬さのそれぞれを予測し、これを色または濃淡によって識別して3次元カラーモニター11に表示するようにしている。これにより、これから加工される加工物表面が色の変化または輝度の濃淡変化によって表示されるので、各切削因子を変化させて、加工物表面の状況をシュミュレーションしてから、本格的な表面加工の作業を開始することができる。
【0023】
ここで、この数値制御工作機械における加工状態を予測するために、機械座標系で指示された数値制御プログラムによる位置指令を、ワーク座標系での工具姿勢や送り速度に変換する必要が生じる。この座標系の変換処理は、数(1)で示す座標変換マトリクスにより行われる。ここで機械座標系(x、y、z)は、図1に示すようなX軸、Y軸、X軸からなる通常の3次元空間座標であるのに対して、ワーク作業系(x、y、z)は加工物(工作物)を基準とした座標系である。すなわち、テーブル1(図1参照)の旋回がないときのテーブル1の上面中心を原点とし、ワーク座標系であるA軸、C軸が機械座標系のX軸、Z軸に対するそれぞれの回転角を角度θ、Φで表している。数(1)式は、A軸の回転中心はワーク座標系原点からZ方向にΔZ離れた位置にあるとして導出したものである。
【0024】
【数1】

【0025】
ここで、加工面の機械的特性(表面あらさ、残留応力、表面硬さ)を予測するシミュレータに必要な上記6項目の予測変数(切削因子)のうち、予測に必要な、工具径、切り込み深さ、工具刃数については、NC制御装置8を動かす数値制御プログラムでは判断できないので、別途設定ファイルを用意する。また、ピックフィード、工具傾斜角は、数値制御プログラムから工具経路及び加工面ベクトルを求めることで算出できるようにする。
【0026】
一般に、実験計画法は、実験点のパラメータを効率良く作る手法の一つであるが、この手法は、良い多項式(回帰式)を作成するためのパラメータを作ることと等価である。この多項式(回帰式)として最小2乗法を用いた方法が応答曲面法となる。応答曲面法(実験計画法)においては、連続した変数であってもすべての制御変数を水準と呼ばれるレベルに離散化した形で考えている。この制御変数を離散化することで組合せの数を減少させることが可能となるのである。
【0027】
また、任意の因子について、その水準のすべての組合せが同数回現れるという性質をもつ実験を行うための割付表として直交表と呼ばれるものがある。この直交表の組合せでは、1つの列の各水準の中に、他の列の各水準がすべて同回数ずつ表れる。一般に多元配置の実験では、少なくとも因子の水準数の積の回数だけ、実験数が必要になり、因子数が多くなると実験回数は膨大な数になってしまう。ところが、求める相互作用が少なければ、他の因子の条件を色々変えた条件下で平均値を計算し、他の因子が変わっても一貫した結果をもつもののみが、主効果として推定される。このため、多くの因子に関する実験を少ない回数で行うことができる。
【0028】
上述したように、応答曲面法とは、n個の因子(x、x・・、x)とその応答特性値yが、ともに連続的な場合にn個の因子(x、x・・、x)とyとの間の関係式 y=β(x、x・・、x)を実験データから推定し、その関係式を基に、yの最適値を与える因子の値(x、x・・、x)を求める手法である。この手法は、なるべく少ない実験データから、上記関係式となる近似式を求め、この近似式から、因子x(本発明では「切削因子」に相当する。)に対応する応答y(本発明では、表面あらさ、残留応力、表面硬さの3つの「機械的特性」に相当する。)を求めようとするものである。この応答曲面法は、定量的評価基準を持っているためにコンピュータとなじみやすく、実験計画支援ソフトウエアの主流になっている。
【0029】
このように、因子として切削因子を用い、特性値として加工表面の状態量である表面あらさ、残留応力、表面硬さの3つを用いて、応答曲面法によって最適解を求める。応答曲面法の中では、線形関数や線形化変換可能な関数として最小2乗法がよく用いられる。これは、関係式となる近似式の係数が最小2乗法により容易に求められ、ここで求まった関係式(近似式)を用いて表面の状態量(表面あらさ、残留応力、表面硬さ)と因子(切削因子)との関係付けの統計的評価が容易にできるからである。
【0030】
すなわち、n個(例えば2個)の因子(x、x)を変化させ、それぞれの場合に対する応答特性yを得て、最小2乗法により応答yと因子の値との関係を2次多項式で近似する。そして、複数回の実験(n個の因子xを選択してyを求める実験)を繰り返し、この実験データから関係式(多項式)の係数を求める。これにより応答関数としての2次多項式が求められ、次に、この求められた2次多項式は、応答曲面を表し、例えば数(2)のようになる。
【0031】
【数2】

【0032】
ここで、x、xは6項目の切削因子であり、yは応答特性、すなわち表面あらさ、残留応力、表面硬さを表している。応答曲面の係数を求める場合は、正規化した変数が用いられる。この係数の大きさを単純に比較することにより、切削因子の重み付けをすることが可能となる。
【0033】
数(2)式のx=xijとおくことにより、数(2)式を数(3)式のような線形回帰モデル式で表すことができる。すなわち、実験点の数をn、加工変数の数をkとすると、線形回帰モデルは数3のようになる。εは誤差を示す。
【0034】
【数3】

【0035】
一般に回帰モデルの適否の判定は、決定係数R2を用いる。決定係数は、Rが1のとき回帰式と完全に一致し、残差が増えると1〜0の範囲で減少する。但し、変数の数が増えると残差が減少するため、決定係数は値が高くなる。そのため、一般的な回帰モデルの判定には、単位自由度あたりの残差を比較する自由度調整済み決定係数Rad(数4)によって評価し、0.7以上であれば強い相関関係にあるとされている。
【0036】
【数4】

【0037】
ここで、SSEは、数(5)式で表されるように、実績値Yと回帰式yとの2乗和(残差平方和)であり、Syyは、実測値の各値が平均からどの程度ばらついているかをあらわすものであり、数(6)式で示される。すなわち、Syyは応答yの平均値まわりの変動を示すものである。
【0038】
【数5】

【0039】
【数6】

【実施例1】
【0040】
次に、本発明を実際の加工物に適用して実施した第1の実施の形態例(実施例1)について説明する。
本実施例では、旋回テーブルを有する5軸制御工作機械を用い、2枚刃のソリッドボールエンドミルを使用し、切削材として炭素鋼S45Cを使用している。そして、表1に示す工具径、切り込み深さ、ピックフィード、一刃当たりの送り量、工具傾斜角度の切削因子の条件を組合せて実験を行った。実験条件の組合せは、直交表を用い、実験回数を最小限の64回で済むように実験計画を立てて実験を行った。直交表を用いたのは、切削条件の組合せをすべて実験すると、それら因子の水準数の積の回数だけ実験数が必要になり膨大な数になってしまうからである。
【0041】
【表1】

【0042】
この実施例1では、加工方法は走査線加工とした。工具傾斜角度αは、図1に示したように、フィード方向をy方向としたときのYZ面内でのZ軸からの角度を表わしている。また、工具傾斜角度γは、図2に示したように、ZX面内のZ軸からの角度を表わすものである。表1に示すように、この工具傾斜角度αと工具傾斜角度γをそれぞれ7段階に変えることにしたので、工具姿勢の自由度が高く、様々な加工条件を設定できる。
【0043】
【表2】

【0044】
本実施の形態例における実験では、表2に示した切削因子の予測変数記号xとしたときの加工面の機械的特性yである表面あらさ、残留応力、表面硬さのそれぞれに対して応答曲面法を適用した。ここで、係数βはその加工条件の影響度合いを示すものであるが、相互の比較を容易にするために加工条件を正規化して応答曲面法を適用している。すなわち各条件の最大値が1、最小値が−1となるよう変換した後に応答曲面法を適用することにした。
【0045】
次に、本発明の実施形態例の動作を図5に示したフロー図に基づいて説明する。切削因子である工具径、切り込み深さ、ピックフィード、一刃当たりの送り量、及び工具姿勢を選定する(ステップS1)。これらの切削因子は表1示される加工変数値の中から選択される。工具姿勢は工具傾斜角度αと工具傾斜角度γの2方向をそれぞれの6つの加工変数の中から選択する。
このように選択した切削因子に基づいて加工実験を行い(ステップS2)、加工表面の表面あらさ、残留応力、表面硬さの測定を測定する(ステップS3)。ここで、表面のあらさ、残留応力及び表面の硬さは、それぞれ表面あらさ形状測定器、微小部X線応力測定装置、及びマイクロビッカース硬さ試験機を使用して測定し、実験値を求める。
【0046】
次に、実験により測定した表面あらさ、残留応力、表面硬さと、表2に示した加工条件である6つの切削因子との関係を、応答曲面法で正規化した変数を用いて、応答曲面の係数を求め、表2に示されるような参照表を作成する(ステップS4)。
【0047】
このように、実験によって得られた表2に示されるような係数の大きさを単純に比較することでどの切削因子が表面あらさ、残留応力等の機械的特性に影響を及ぼすか、あるいはどの切削因子とどの切削因子の相互作用が加工表面の機械的特性に大きな影響を与えるかを比較することができる。
これによって、表面あらさ、残留応力、表面硬さの加工表面の機械的特性に対する、切削因子の重み付けが分かる。そして、この結果を参照テーブルとして保存することにより、実際に加工物を加工する場合に、加工部での求める機械的特性がわかれば、それを実現するための切削因子の大凡の選択が可能となる。
【0048】
例えば、表2に示す1次の項(係数β)では、切削因子の中の工具径、切り込み量、一刃当たりの送り量に対応する係数β、β、βの絶対値が大きくなっている。また、工具径と一刃当たりの送り量の相互作用に対応する係数β14及びピックフィードと一刃当たりの送り量の相互関係に対応する係数β24が大きくなっている。
これにより、例えば、ピックフィード方向残留応力について、工具径、切り込み量、及び一刃当りの送り量が主に影響を及ぼしていると参照付けができる。
【0049】
一般に、切削速度が増加すると、残留応力は引張りになる傾向があることが知られている。工具径、切込み量が大きく影響を及ぼしているのは切削速度に大きく関係している条件であるためだと考えられる。また、一刃当たりの送り量が増加すると加工が押しならしの状態に近くなると考えられる。
図4は、本発明の第1の実施形態例(第1実施例)における平面状の加工物の表面加工について説明するための図である。平面状の加工物13は、ボールエンドミル15によってフィード方向に加工され、加工表面14が形成されていく。図4に示すように、フィード方向にボールエンドミルの切れ刃が移動しつつ走査されて切削が行われ、一走査が終了すると、ボールエンドミルがフィード方向と直角方向に所定値移動して、再びフィード方向に走査が開始される。このボールエンドミルで切削するフィード方向に対して直交する方向がピックフィード方向である。
【0050】
次に、図6のフロー図に基づいて、本発明の実施形態例における加工物の表面加工制御方法について説明する。
まず、工具の形状、工具の動き、加工面の形状を入力する(ステップS6)。続いて、加工面の求める機械的特性である表面あらさ、残留応力、表面硬さの3つを選定する(ステップS7)。
次に、表2の切削因子ごとの重み付けに基づいて作成した参照表より、目的とする機械的特性に対応する加工変数、すなわち工具径、切り込み深さ、ピックフィード、一刃当たり送り量、工具傾斜角度α及びγを選択する(ステップS8)。
【0051】
そして、CAM(Computer Aided Manufacture:コンピュータ支援製造ソフトウエア)の数値制御プログラムに基づいて、工具経路を算出し(ステップS9)、さらにそれぞれの工具経路における切削条件を抽出する。続いて、参照表データに基づいて、加工面の機械的特性のシミュレーションを行う(ステップS10)。
【0052】
このシュミュレーションの結果は、加工面の機械的特性(表面あらさ、残留応力、表面硬さのそれぞれについて)を色の変化または濃淡の変化に置き換えて描画し、3次元CADモニター11(図3参照)に表示する(ステップS11)。このモニター11に表示された結果を見て、切削される加工面の機械的特性である表面あらさ、残留応力、表面硬さのそれぞれについて満足度を判断する(ステップS12)。ここで、表示された結果に満足できない場合は、ステップS8に戻って再度の条件設定を行う。すなわち、再度参照表を見ながら、切削因子の加工変数を入替え、満足する加工面が得られる切削条件になるように設定する。
【0053】
次に、判断ステップS12で、3次元CADモニター11の表示画面を見て、切削される加工面の機械的特性(表面あらさ、残留応力、表面硬さのそれぞれ)について満足である場合には、実際の加工工程に移行し、加工物の表面加工を行う(ステップS13)。同時に、今回の加工形状が新しい形状のものであるか否かが判断される(ステップS14)、その結果、新しい形状のものであれば、新形状としてデータベース(参照表)に記憶し、データとして保存する(ステップS15)。ステップS14で新形状ではないと判断されれば、記憶して保存する必要がないので、そのまま作業を終了する。
【0054】
図7〜図9は、本発明の第1の実施形態例に基づいて、実験した結果を示した図であり、フィード方向の表面あらさ、ピックフィード方向残留応力、及び表面硬さの実験値と、応答曲面法による予測値との相関図を示したものである。この図7〜図9に示す結果と数(4)式に基づいて、自由度調整済み決定係数Radを求めると、表3の示すようになる。
【0055】
【表3】

【0056】
表3に示されるように、表面あらさ、残留応力、表面硬さのいずれも、自由度調整済み決定係数Radは全て0.7以上であり、予測値と実験値は強い相関関係にあり、よく一致していることがわかる。
【0057】
表4は、工具を図1に示すYZ平面内でフィード方向と反対方向に6度傾斜させて平面を走査加工した場合の各設定値と算出値を示したものである。すなわち、表4には、CAMによる数値制御プログラム生成時のピックフィードなどの各設定値と、数値制御プログラムから上記手法により求めた算出値が対照的に記載してある。この結果からもわかるように、各切削因子のNCプログラムによる予測変数の算出値は、CAMによる設定値と等しく、かつ残留応力もNCプログラムによる算出値はCAMによる設定値とほぼ等しいことが確認されている。
【0058】
【表4】

【実施例2】
【0059】
次に、図10〜図13に基づいて、本発明の第2の実施形態例(実施例2)に関して、曲面加工のシミュレーションの例を説明する。
ここでは直交3軸制御の曲面加工として説明する。すなわち、CAM(コンピュータ支援製造ソフトウエア)により、工具軌跡上の加工位置での加工条件、工具傾斜角、ピックフィード、一刃あたりの送り量を抽出し、応答曲面法を利用して加工物表面の機械的特性を予測して、数値化する。この数値化した値は、加工物表面の機械的特性を目視により判断できるようにするため、ディスプレイ上に、色の変化、または白黒の濃淡でグラフィック表示させるようにする。
【0060】
図10は、円筒形状をした加工面を有する被削材を、工具軸を垂直方向に固定した、XYZの3軸制御により、円筒面の円周方向への走査線加工を行う例を示す図である。走査線方向がフィード方向であり、それと直交する方向がピックフィード方向となる。
表5はこのときの加工条件を示したものである。表5に示す加工条件にしたがって、ボールエンドミル加工する場合には、加工面が円筒形をしているため、フィード方向の工具傾斜角αが−15度から+15度まで変化する。この工具傾斜角αが変化することによって、加工面の表面あらさ、残留応力、表面硬さが変化するのである。図11〜図13は、この曲面加工の様子をシミュレーションした結果をディスプレイ(図3の3次元CADモニター11)に表示したものである。
【0061】
【表5】

【0062】
すなわち、図11は表面あらさ、図12は残留応力、図13は表面硬さそれぞれの機械的特性を表示したものであり、加工面上での分布を色の変化(または濃淡の変化)で描画し、ディスプレイ上に表示している。図11〜図13のいずれの写真も、左側がフィード方向(走査方向)のもの、右側がピックフィード方向のもの(走査方向と垂直方向のもの)である。これらの図からわかるように、加工面が円筒形状であるために、工具傾斜角度αが加工面上の位置(走査位置)で変化することに起因して、加工面の機械特性(表面あらさ、残留応力、表面硬さ)も変化することがわかる。
【実施例3】
【0063】
次に、本発明の第3の実施形態例(実施例3)として、図14に示されるような上端部が球面状の被削物(加工物)を、表6に示す切削条件で表面加工する場合の例を説明する。
図14に示される加工物の加工例は、直径45mmの円筒の上部に曲率半径80mmの球面上をした形状に加工する場合の例である。ここでは、工具軸を垂直方向に固定した、XYZの3軸制御により、ボールエンドミル加工する場合を示している。そして、球面上の各加工点の、機械的特性を応答曲面法により計算し、加工面のフィード方向の表面あらさ、フィード方向の表面の残留応力、及び表面の硬さ、の各々につきシミュレーションを行った。シミュレーション結果は、加工面の機械的特性(表面あらさ、残留応力、表面硬さ)の違いを色の変化(または濃淡の変化)で描画し、ディスプレイ上に表示させるようにする。
【0064】
【表6】

【0065】
実際の加工物の加工では、図15に示すように、フィード方向にボールエンドミルを走査することによりフィード方向の切削を行う。そして、1ラインの走査が終了すると、フィード方向と直角の方向(ピックフィード方向に)にボールエンドミルを移動させ、再びフィード方向の走査を行う。
【0066】
ここで、工具軸を5軸制御で垂直に固定して、図15のピックフィード方向に切削を行うと、球面状の加工面に対する工具軸の角度は変化する。そして、加工点の機械的特性を応答曲面法により計算し、加工面の表面あらさ、残留応力、及び表面硬さ、の各々につきシミュレーションを行い、それらの値を加工面上に色の変化(または濃淡の変化)で描画してディスプレイ上に表示する。図16〜図18はこのシミュレーション結果をディスプレイ画面上に表示した写真を示したものであり、図16は表面あらさ、図17は残留応力、図18は表面硬さを示している。
いずれの写真も、縞模様が表示されているが、この表示結果を見ると、現状の数値制御工作機械での切削加工において、曲面を有する被削物を切削加工する場合は、その加工面の機械的特性は、加工面全体として均一になっていないことが分かる。
【0067】
次に、本発明の実施例3で取り扱った、図14に示す上端部が球面状の被削物を、図19(a)〜図19(c)に示すような3種類の工具経路を設定して加工する場合の比較結果について説明する。この加工の際には、工具角度を図20(a)〜図20(c)に示すような角度に固定して行うようにする。つまり、図19(a)走査線加工と図19(b)の等高線加工では、工具傾斜角は、図20(a)と図20(b)に示されるように加工物に対して垂直方向に固定しているのに対し、図19(c)に示す等工具傾斜角条件の加工方法では、図20(c)に示されるように加工物の加工表面に対して工具軸が常に直角になるように切削作業が行われる。つまり、図1に示すYZ平面での工具傾斜角度αも、図2に示すZX平面での工具傾斜角度γの何れも“0”となる状態で表面の加工が為されるようにする。
【0068】
図21(a)〜図21(c)は、CAMで数値制御プログラムを作成し、図19(a)〜図19(c)に示す走査線加工、等高線加工および等工具傾斜角条件で加工したときの、加工表面のクロスフィード方向(工具の送り方向と直角な方向)の残留応力を色の変化(または濃淡の変化)によって表示したものである。また、図22(a)〜図22(c)は、同様に、図19(a)〜図19(c)に示す走査線加工、等高線加工および等工具傾斜角条件で加工したときの、加工表面のクロスフィード方向(工具の送り方向と直角な方向)の表面硬さを色の変化(または濃淡の変化)でディスプレイ上に表示したものである。
【0069】
図21(a)〜図21(c)及び図22(a)〜図22(c)から分かるように、走査線加工(図19(a)、図20(a))では、加工表面の機械的特性(残留応力、表面硬さ)にバラツキがみられたが、等高線加工(図19(b)、図20(b))を行うことにより、図21(b)に示されるように、残留応力は加工面全面で均一に低くなることが分かった。また、等工具傾斜角条件による加工(図19(c)、図20(c))では、加工面の残留応力が周辺の方が中心部より低くなり、表面硬さも加工表面全体に亘って硬い表面となっていることが確認された。
【0070】
この結果から分かるように、均一な機械的特性を保有する加工面を切削加工で達成するためには、加工面の形状に合わせて、数値制御工作機械の加工条件設定を行うことが必要であると言える。すなわち、切り込み深さ、ピックフィード、一刃当たりの送り量、加工面に対する工具傾斜角度、ボールエンドミルの半径といったそれぞれの切削因子において加工面の条件に見合った切削因子の値を選択して加工実験を行い、加工面の機械的特性(例えば、残留応力、表面硬さ)を測定する。そして、これら選定した切削因子である加工条件と加工面の機械的特性を、表2に示すように統計的に関連付けた後、加工面における機械的特性と切削因子の重み付けを行う。
【0071】
その後、工具の形状、工具の動き、加工面の形状を入力し、最終的な加工条件を選定し、加工のシミュレーションを行い、加工面の機械的特性を色の違いでディスプレイ上に表示する。これにより、加工面の機械的特性が予測でき、所望の加工面の機械的特性が得られるまで、切削因子の加工変数の取捨選択を行い、満足する機械的特性をもつ加工面を、シミュレーションにより抽出することができる。
【0072】
このシミュレーションによって抽出された加工条件は、データベースに記憶され、次の異なる加工物曲面の加工実験に利用される。このように多くの加工実験を行うことにより、上記の切削因子の加工変数を設定した加工条件と加工面の機械的特性(表面あらさ、残留応力、表面硬さ)との参照が求められ、十分な参照パターンとしてのファイルがデータベースとして作成される。そして、このデータベースの作成により、加工部ごとの加工面の表面あらさ、残留応力、表面硬さの機械的特性を設定して切削加工に入ることができるので、被削材加工面の、表面あらさ、表面の残留応力、及び表面の硬さの機械的特性のいずれも満足できるレベルの表面に加工することが可能となる。
【0073】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は、上述した実施の形態例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限り、その他の実施形態を含むものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】5軸工作機械の回転テーブルで、YZ平面内で工具が回転可能であることを示す図である。
【図2】5軸工作機械の回転テーブルで、ZX平面内で工具が回転可能であることを示す図である。
【図3】本発明の数値制御工作機械のシステムの構成を示すブロック図である。
【図4】加工物表面におけるピックフィード方向とフィード方向の関係を説明するための図である。
【図5】切削条件6因子を選定した実験において、加工面の機械的特性と加工条件とを統計的手法により関連づけてデータベース化するまでのフローを示す図である。
【図6】加工面の機械的特性と関連づけて加工条件6因子の加工変数を選定して加工物を加工する手順を示すフロー図である。
【図7】加工実験でのフィード方向の表面あらさの実験値と、本発明に用いた応答曲面法による予測値との相関を表わす図である。
【図8】加工実験で得られたピックフィード方向の残留応力の実験値と、本発明の応答曲面法による予測値との相関を表わす図である。
【図9】加工実験での表面硬さの実験値と、本発明の応答曲面法による予測値との相関を表わす図である。
【図10】本発明の実施例2(第2の実施形態例)として示した円筒型の加工材を加工した加工物の斜視図である。
【図11】本発明の実施例2で、図10の加工材料を、直交3軸制御の曲面加工において、数値制御プログラムから、応答曲面法により加工表面のあらさをシミュレーションしてディスプレイ上に色の濃淡で表示した図である。
【図12】本発明の実施例2で、図10の加工材料を、直交3軸制御の曲面加工において、数値制御プログラムから、応答曲面法により加工表面の残留応力をシミュレーションしてディスプレイ上に色の変化(または濃淡の変化)で表示した図である。
【図13】本発明の実施例2で、図10の加工材料を、直交3軸制御の曲面加工において、数値制御プログラムから、応答曲面法により加工表面の硬さをシミュレーションしてディスプレイ上に色の変化(または濃淡の変化)で表示した図である。
【図14】本発明の実施例3(第3の実施形態例)で、加工材より加工した加工物の加工面の平面図(a)と加工物の正面図(b)である。
【図15】本発明の実施例3において、加工材の加工面の工具のフィード方向とピックフィード方向を示した図である。
【図16】本発明の実施例3の5軸制御工作機械を用いた曲面加工において、応答曲面法を用いたシミュレーションで、加工表面のあらさをディスプレイ上に色の変化(または濃淡の変化)で示した図である。
【図17】本発明の実施例3の5軸制御工作機械を用いた曲面加工において、応答曲面法を用いたシミュレーションで、加工表面の残留応力をディスプレイ上に色の変化(または濃淡の変化)で示した図である。
【図18】本発明の実験例3の5軸制御工作機械を用いた曲面加工において、応答曲面法を用いたシミュレーションで、加工表面の表面硬さをディスプレイ上に色の変化(または濃淡の変化)で表示した図である。
【図19】本発明の実施例3で、3種類の工具経路で工具の送り方向を比較して示した図である。(a)は走査線加工、(b)は等高線加工、(c)は等工具傾斜角条件による加工を示している。
【図20】本発明の実施例3で、3種類の工具経路((a)は走査線加工、(b)は等高線加工、(c)は等工具傾斜角条件)での工具傾斜角αの角度を示した図である。
【図21】本発明の実施例3で、3種類の工具経路で加工した、曲面加工のシミュレーションで、クロスフィード方向の残留応力をディスプレイ上に色の変化(または濃淡の変化)で表示した図である。
【図22】本発明の実施例3で、3種類の工具経路で加工した、曲面加工のシミュレーションで、表面硬さをディスプレイ上に色の変化(または濃淡の変化)で表示した図である。
【符号の説明】
【0075】
1・・・回転テーブル、2、15・・・ボールエンドミル(工具切れ刃)、3・・・YZ平面(αはYZ平面の工具傾斜角)、4・・・ZX平面(γはZX平面の工具傾斜角)、5・・・中央処理装置、6・・・主記憶装置、6・・・外部記憶装置、8・・・NC制御装置、9・・・駆動回路。10・・・サーボモータ、11・・・3次元CADモニター(ディスプレイ)、12・・・キーボード、13・・・加工物、14・・・加工表面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値制御工作機械を用いて加工物の表面を加工する表面加工制御方法であって、工具の形状、工具の送り方向を定めるとともに、工具径、切り込み深さ、ピックフィード、一刃当たりの送り量、2方向の工具姿勢の各切削因子の組合せによる切削条件を定め、該切削条件と前記加工物加工面の表面あらさ、残留応力、表面硬さの各機械的特性バランスとを関連付けた参照テーブルを作成し、
前記参照テーブルに基づいて、前記各機械的特性を必要とする前記加工面部位の加工時に、前記加工面の形状から工具経路を設定するとともに、目標とする加工面部位の機械的特性バランスが得られる切削条件を設定する
ことを特徴とする表面加工制御方法。
【請求項2】
前記数値制御工作機械はボールエンドミルであることを特徴とする請求項1に記載の表面加工制御方法。
【請求項3】
前記各切削因子の組み合せからなる切削条件と、前記加工面の表面あらさ、残留応力、表面硬さの機械的特性を関連付ける前記参照テーブルを、コンピュータシュミュレーションにより作成することを特徴とする請求項1に記載の表面加工制御方法。
【請求項4】
前記加工面における表面あらさ、残留応力、表面硬さの各機械的特性の分布を、ディスプレイ上に色彩または色の濃淡で表示することを特徴とする請求項1に記載の表面加工制御方法。
【請求項5】
前記残留応力は圧縮の残留応力であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面加工制御方法。
【請求項6】
数値制御工作機械を用いて加工物の表面を加工するための表面加工制御プログラムであって、
コンピュータに、
工具の形状、工具の送り方向、工具径、切り込み深さ、ピックフィード、一刃当たりの送り量、2方向の工具姿勢の各切削因子を入力し、前記切削因子の組合せによる切削条件を定める機能と、
前記切削条件と前記加工物加工面の表面あらさ、残留応力、表面硬さの各機械的特性バランスとを関連付けた参照テーブルを作成する機能と、
前記加工物加工面が所望する表面あらさ、残留応力、表面硬さの各機械的特性を入力して、前記参照テーブルに基づいて、前記各機械的特性を必要とする前記加工面部位の加工時に、前記加工物表面の形状から工具経路を設定するとともに、目標とする加工面部位の機械的特性バランスを得ることができる切削条件を設定する機能を
実現させることを特徴とする表面加工制御プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図19】
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【図20】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−263904(P2006−263904A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261239(P2005−261239)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年(平成16年)11月19日 社団法人日本機械学会発行の「第5回 生産加工・工作機械部門講演会講演論文集」に発表
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】