説明

表面反応炭酸カルシウムの調製方法およびその使用

本発明は、表面反応炭酸カルシウムの経済的な調製方法に関する。本発明は更に、増加したBET比表面積を有する表面反応炭酸カルシウムおよびBET比表面積を調整する方法の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面反応炭酸カルシウムの経済的な調製方法に関する。本発明は更に、増加したBET表面積を有する表面反応炭酸カルシウムおよびBET表面積を調整する方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
実際には、炭酸カルシウムは、製紙用の被覆、充填剤、増量剤および顔料、また水性ラッカーおよび塗料ならびに水処理などの多様な目的において、特に重金属などの無機物質および/または多環式化合物、コレステロールおよび/または内分泌かく乱化合物(EDC)などの製薬廃棄物の除去手段として、製紙、塗料、ゴムおよびプラスチック産業において大量に使用されている。
【0003】
炭酸カルシウム粒子の凝集を排除することおよびこれらの粒子の、粒子が添加される物質、例えば充填剤または凝集剤への親和性を増強することに関して、そのような炭酸カルシウム粒子の表面の物理的および化学的特性は、炭酸カルシウムを脂肪酸もしくは脂肪酸のナトリウム塩、樹脂酸または他の酸で処理することにより修正される。
【0004】
当技術分野において、炭酸カルシウムの化学的および物理的特性を改善する幾つかの手法が提案されている。例えば、US4,219,590は、炭酸カルシウム粒子を、炭酸カルシウムと反応して炭酸カルシウム粒径を微細に均一化することができ、同時に、炭酸カルシウム粒子の表面を酸ガスの酸のカルシウム塩で被覆することができる酸ガスと接触反応させることによって、炭酸カルシウムを改善する方法を記載する。US6,666,953B1は、Hイオンおよび気体COの1つ以上の供給者により処理された天然炭酸カルシウムを含有する顔料、充填剤または鉱物に関し、紙の顔料または被覆充填剤として使用されたとき、物理的特性を失うことなく、一定表面積の紙の重量の低減を可能にする。WO99/02608A1は、耐酸性沈降炭酸カルシウムの高固体スラリーの生成方法を記載し、ここで固体スラリーは、炭酸カルシウムに耐酸性を付与するためにアルミン酸ナトリウムなどの化学添加剤で処理される。
【0005】
加えて、US5,584,923、US5,647,902、US5,711,799、WO97/08247A1およびWO98/20079A1は、それぞれ、中性から弱酸性の紙の作製における充填剤物質としての使用を可能にする耐酸性の炭酸カルシウムおよびこの耐酸性炭酸カルシウムの製造方法を記載する。
【0006】
更に、WO2005/121257A2は、炭酸カルシウム、前記炭酸塩とその場でおよび/または外部供給により形成された気体COとの反応生成物および式R−Xの少なくとも1つの化合物の複数の反応によりその場で形成された生成物を含有することを特徴とする、乾燥鉱物質顔料を生成する方法を開示する。WO2004/083316A1は、質量充填および/または紙被覆などの製紙用途に使用される、炭酸カルシウムと、前記炭酸塩および1つ以上の中強から強Hイオン供与者の反応生成物とのならびに前記炭酸塩およびその場で形成されたおよび/もしくは外部供給により来た気体COの反応生成物との二回および/または複数回の反応によりその場で形成された生成物ならびに少なくとも1つのケイ酸アルミニウムおよび/または少なくとも1つの合成シリカおよび/または少なくとも1つのケイ酸カルシウムおよび/またはケイ酸ナトリウムおよび/もしくはケイ酸カリウムおよび/もしくはケイ酸リチウムなど、好ましくはケイ酸ナトリウムなどの一価塩の少なくとも1つのケイ酸塩および/または少なくとも1つの水酸化アルミニウムおよび/または少なくとも1つのナトリウムおよび/またはアルミン酸カリウムを含有する鉱物質顔料を参照する。
【0007】
US5,043,017は、微分化炭酸カルシウムへの1つのカルシウムキレート剤およびヘキサメタリン酸ナトリウムなどの共役塩基の添加により、続いてリン酸などの酸の添加により酸安定化される炭酸カルシウムに関する。
【0008】
しかし、従来技術は、高表面積物質を調製および制御する経済的な方法ならびに所望の目的のための特定の炭酸カルシウム物質の提供を可能にする物質の粒径を制御する方法に関して沈黙していると思われる。特に、従来技術の高表面積物質を調製する方法は、高いBET比表面積を有する所望の物質を得るために多量および高濃度の中強から強酸(2.5以下のpKを有する)の使用を必要とする。加えて、そのような中強から強酸の使用は、従業員に対する危険性を最小限にするために、高い安全上の必要条件の使用を必要とする。更に、多量および高濃度の前記中強から強酸の使用は、化学薬品および水の多量で費用集約的な消費ももたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,219,590号明細書
【特許文献2】米国特許第6,666,953号明細書
【特許文献3】国際公開第99/02608号
【特許文献4】米国特許第5,584,923号明細書
【特許文献5】米国特許第5,647,902号明細書
【特許文献6】米国特許第5,711,799号明細書
【特許文献7】国際公開第97/08247号
【特許文献8】国際公開第98/20079号
【特許文献9】国際公開第2005/121257号
【特許文献10】国際公開第2004/083316号
【特許文献11】米国特許第5,043,017号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、表面反応炭酸カルシウムの調製を可能にするならびに炭酸カルシウムのBET比表面積および粒径などの特定のパラメーターを制御する可能性を提供する、利用可能な方法を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の目的は、炭酸カルシウムのBET比表面積を制御または調整することができる、表面反応炭酸カルシウムの経済的な調製方法を提供することである。本発明の更なる目的は、炭酸カルシウム粒子のBET比表面積を増加する、炭酸カルシウムの調製方法を提供することである。本発明の別の目的は、中強から強酸の必要量を、中強から強酸のみを用いる従来技術の方法により調製される物質と比べて、炭酸カルシウムの所定のBET比表面積において低減する方法を提供することである。本発明の更なる目的は、炭酸カルシウムのBET比表面積を、中強から強酸のみを用いる従来技術の方法により調製される物質と比べて、中強から強酸の所定の量に対して増加する方法を提供することである。本発明の更なる目的は、炭酸カルシウム粒子の粒径を制御または調整することができる方法を提供することである。本発明の別の目的は、表面反応炭酸カルシウムを高収率で調製することができる方法を提供することである。
【0012】
本発明は、本発明において記載され、請求項において定義されている表面反応炭酸カルシウムを調製する方法を提供することによって、これらおよび他の目的を解決すること目指している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本出願の一態様によると、以下の段階:
a)炭酸カルシウムを用意する段階;
b)炭酸カルシウムの重量に基づいて、5から50重量%の、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸を用意し、その対応する酸アニオンは、水不溶性カルシウム塩を形成することができる段階;
c)気体COを用意する段階;
d)少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を用意する段階;
e)前記炭酸カルシウムを、段階b)の2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸と接触させる、段階c)の前記気体COと接触させる、段階d)の前記可溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる段階
を含み、
少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸が、2.5を超えるpKを有し、その対応する酸アニオンが水不溶性カルシウム塩を形成することができる
水性環境下で表面反応炭酸カルシウムを調製する方法が開発されている。
【0014】
本発明者たちは、驚くべきことに、本明細書以降に定義されている調製方法の際の特定のパラメーターの制御、特に反応系への弱酸の投与時期および量の制御が、特定の特性を有する、例えば中強から強酸のみを用いる従来技術の方法と比べて増加したBET比表面積および/または粒径を有する表面反応炭酸カルシウムの形成にとって重要であることを見出した。
【0015】
本出願の目的において、「水不溶性カルシウム塩」は、脱イオン水と混合し、0.2μmの孔径を有するフィルターにより20℃で濾過して、濾液を回収したとき、100gの前記濾液を95から100℃で蒸発させた後で0.1g以下の回収固体物質を提供する物質として定義される。「可溶性(もしくは可溶化)物質」は、100gの前記濾液を95から100℃で蒸発させた後で0.1gを超える回収固体物質の回収をもたらす物質として定義される。
【0016】
本発明によると、「酸」は、ブレンステッドローリー酸として定義され、すなわちHイオン供給者である。「酸アニオン」は、ブレンステッドローリー酸の脱プロトン化形態として定義され、すなわち酸の共役塩基である。「酸塩」は、非水素電子陽性元素により少なくとも部分的に中性化されているHイオン供給者として定義される。「塩」は、アニオンおよび非水素カチオンにより形成された電気的に中性なイオン化合物として定義される。「塩」は、無水形態ならびに結晶水を含む形態(水和物)を含むことができる。「部分的に結晶質の塩」は、XRD分析によって本質的に別個の回析ダイアグラムを表す塩として定義される。
【0017】
本発明の用途目的における「非ポリマー」有機および/または無機弱酸は、共有化学結合により連結している10個未満の反復構造単位を有する無機または有機化合物として定義される。前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸の「水素塩」は、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸の酸アニオンとカチオンにより形成された電気的に中性のイオン化合物として定義され、ここで塩は、少なくとも1個の水素原子を含有する。
【0018】
本発明の意味における「スラリー」は、懸濁液(不溶性固体および水を含み、場合により更なる添加剤を含む)であり、通常、多量の固体を含有し、スラリーが形成される、固体のない液体よりも粘性であり、一般に高密度である。
【0019】
本発明の意味において、「表面反応炭酸カルシウム」は、炭酸カルシウムを含み、不溶性で、好ましくは少なくとも部分的に結晶質の、上記の段階b)および段階d)の前記酸のアニオンのカルシウム塩を含む物質である。好ましい実施形態において、不溶性カルシウム塩は、炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面から広がっている。前記アニオンの前記少なくとも部分的に結晶質のカルシウム塩を形成するカルシウムイオンは、主に炭酸カルシウム出発物質に由来する。
【0020】
本発明の意味における「BET比表面積」(SSA)は、本明細書以降の実施例のセクションにおいて提供されている方法により測定される比表面積に関する。
【0021】
本発明によると、炭酸カルシウムは、一般に粉砕(もしくは天然)炭酸カルシウム(GCC)および/または合成炭酸カルシウムとしても知られている沈降炭酸カルシウム(PCC)を含む。
【0022】
本発明の意味における「粉砕炭酸カルシウム」は、天然供給源、大理石、チョークまたは石灰岩から得られ、粉砕、篩い分けおよび/または湿式および/もしくは乾式細分化などの処理、例えばサイクロンによる処理を介して加工される炭酸カルシウムである。
【0023】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」は、水性環境下での二酸化炭素と石灰の反応に続く沈殿によりまたは水中におけるカルシウムおよび炭酸塩供給源の沈殿により一般に得られる合成物質である。加えて、PCCは、例えばカルシウムおよび炭酸塩、塩化カルシウムならびに炭酸ナトリウムを水性環境に導入した生成物でもありうる。
【0024】
本発明は、本明細書以降の実施例セクションにおいて提供されている方法により測定して、50m/gを超える、より好ましくは60m/gを超える、最も好ましくは80m/gを超えるBET比表面積(SSA)を有する表面反応炭酸カルシウムも参照する。
【0025】
更に、本発明は、BET比表面積のような表面反応炭酸カルシウムの特性およびパラメーターを制御または調整する本発明の方法の使用を参照する。
【0026】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態によると、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸は、25℃で0以下のpK値を有する強酸および25℃で0から2.5(両端を含む)のpK値を有する中強酸からなる群から選択される。
【0027】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によると、中強酸は、HPO、シュウ酸およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0028】
本発明の方法のなお別の好ましい実施形態によると、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸は、HPO、好ましくは濃度が20%から40%(v/v)のHPOである。
【0029】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態によると、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩は、1000g/mol未満、好ましくは750g/mol未満、より好ましくは500g/mol未満の分子量を有する。
【0030】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によると、前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩は、ホウ酸、クエン酸、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸水素二カリウム、ホウ酸二水素ナトリウム、ホウ酸二水素カリウム、ホウ酸水素二ナトリウム、ホウ酸水素二カリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】
本発明の方法のなお別の好ましい実施形態によると、前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩は、炭酸カルシウムの重量に基づいて0.1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から15重量%、より好ましくは1重量%から10重量%、最も好ましくは1重量%から5重量%の範囲の量で添加される。
【0032】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態によると、炭酸カルシウムは、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と次に接触させる。
【0033】
本発明の別の方法の別の好ましい実施形態によると、炭酸カルシウムは、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸に同時に接触させる。
【0034】
本発明の方法のなお別の好ましい実施形態によると、炭酸カルシウムは、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、この添加の際に、炭酸カルシウムは、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩とも接触させる。
【0035】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態によると、炭酸カルシウムは、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の5%が添加された後、炭酸カルシウムは、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる。
【0036】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によると、炭酸カルシウムは、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の10%が添加された後、炭酸カルシウムは、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる。
【0037】
本発明の方法のなお別の好ましい実施形態によると、炭酸カルシウムは、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の20%が添加された後、炭酸カルシウムは、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる。
【0038】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態によると、炭酸カルシウムは、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の30%が添加された後、炭酸カルシウムは、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる。
【0039】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によると、炭酸カルシウムは、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の50%が添加された後、炭酸カルシウムは、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる。
【0040】
本発明の方法のなお別の好ましい実施形態によると、炭酸カルシウムは、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の80%が添加された後、炭酸カルシウムは、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる。
【0041】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によると、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸は、少なくとも1つのHイオン供給者および炭酸カルシウムの重量に基づいて5重量%から50重量%の少なくとも1つの酸アニオンの形態で用意され、ここで少なくとも1つの酸アニオンの対応する酸は、2.5以下のpKを有し、前記酸アニオンは、水不溶性カルシウム塩を形成することができる。
【0042】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態によると、炭酸カルシウムは、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アルミニウム、合成シリカ、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される化合物と更に接触させる。
【0043】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によると、本発明の方法により得られる表面反応炭酸カルシウムは、本明細書以降の実施例セクションにおいて提供されている測定方法に従って測定して、少なくとも20m/g、好ましくは少なくとも30m/g、より好ましくは少なくとも40m/g、さらにより好ましくは少なくとも50m/g、いっそうより好ましくは少なくとも60m/g、なおより好ましくは少なくとも70m/g、最も好ましくは少なくとも80m/gのBET比表面積を有する。
【0044】
本発明の一つの好ましい実施形態によると、本発明の方法により得られる生成物、すなわち水性懸濁液は、乾燥または固体生成物を好ましく生じるために段階e)の後に乾燥される。
【0045】
以下において、表面反応炭酸カルシウムを調製する本発明の方法の段階a)からe)がより詳細に記載される。
【0046】
段階a):水性調製物を含む炭酸カルシウムの用意
本発明の方法の段階a)によると、炭酸カルシウムが用意される。
【0047】
好ましくは、炭酸カルシウムは、粉砕(もしくは天然)炭酸カルシウム(GCC)および/または合成炭酸カルシウムとしても知られている沈降炭酸カルシウム(PCC)を含む。
【0048】
GCCは、石灰岩またはチョークなどの堆積岩からまたは変性大理石の岩石から採掘される天然に生じる形態の炭酸カルシウムであることが理解される。GCCは、ほぼ例外なく方解石多形体であり、これは三方晶菱面体であると言われており、最も安定した炭酸カルシウム多形体を表す。
【0049】
好ましくは、天然炭酸カルシウムは、大理石、チョーク、方解石、苦灰石、石灰石およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0050】
対照的に、PCC型の炭酸カルシウム多形体は、方解石に加えて、霰石型の安定性の低い多形体を多くの場合に含み、これは斜方晶系の針形結晶形状の六方晶ファーテライト型を有し、これは霰石型よりもさらに低い安定性を有する。異なるPCC形態は、X線粉末回析(XRD)ピークの性質によって同定することができる。
【0051】
PCC合成は、二酸化炭素を水酸化カルシウムの溶液に接触させる段階を含む合成沈殿反応により最も一般的に生じ、後者は、生石灰としても知られており、その懸濁液は石灰乳として一般に知られている酸化カルシウムの水性懸濁液の形成によって最も多くの場合にもたらされる。反応条件に応じて、このPCCは、安定および不安定多形体の両方を含む多様な形態で現れる可能性がある。事実、PCCは、多くの場合に熱力学的に不安定な炭酸カルシウム物質を表す。
【0052】
本発明の文脈において参照されるとき、PCCは、水中の微粉砕酸化カルシウム粒子から誘導される場合に石灰のスラリーまたは石灰乳として当技術分野において一般的に呼ばれる水酸化カルシウムのスラリーの炭酸塩化による得られる、合成炭酸カルシウム生成物を意味することが理解される。
【0053】
好ましい合成炭酸カルシウムは、霰石、ファーテライトもしくは方解石の鉱物学的結晶形態またはこれらの混合物を含む沈降炭酸カルシウムである。
【0054】
好ましい実施形態において、炭酸カルシウムは、表面反応炭酸カルシウムの調製方法の前に粉砕される。粉砕段階は、当業者に既知の粉砕ミルなどの任意の従来の粉砕装置により実施することができる。
【0055】
好ましい実施形態において、段階a)の炭酸カルシウムは、下記の本明細書の実施例セクションにおいて提供されている測定方法に従って測定すると、0.01μmから10μm、より好ましくは0.5μmから2μmの重量中央直径を有する。
【0056】
水性懸濁液の好ましい調製方法において、微粉化している(粉砕などにより)またはしていないのいずれかである炭酸カルシウムは水中に懸濁しており、したがってスラリーの形態である。
【0057】
この好ましい実施形態において、前記スラリーは、下記の本明細書の実施例セクションにおいて記載されている測定方法に従って測定すると、好ましくは11未満、好ましくは10.5未満のpHを有する。
【0058】
好ましくは、水性炭酸カルシウムスラリーは、スラリーの重量に基づいて、10重量%以上、より好ましくは10重量%から80重量%の固形分を有する。出願者は、非常に高い固形分の場合、段階e)における接触の後に反応が生じるために十分な水を有することが要件であることを所見として述べる。より好ましくは、水性炭酸カルシウムスラリーは、スラリーの重量に基づいて16重量%から60重量%の範囲、さらにより好ましくは16重量%から40重量%の範囲の固形分を有する。
【0059】
段階b):2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸の用意
本発明の方法の段階b)によると、炭酸カルシウムの重量に基づいて、5重量%から50重量%の、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸が用意され、ここで対応する酸アニオンは、水不溶性カルシウム塩を形成することができる。前記不溶性の対応するカルシウム塩は、前記酸アニオンに加えて、OH−イオンおよび/または結晶水を含むことができる。
【0060】
2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸により提供されるHイオンは、炭酸カルシウム粒子を部分的に溶解するのに役立ち、後に続く、炭酸カルシウムの表面へのアニオンの不溶性で少なくとも部分的に結晶質のカルシウム塩の沈殿のために、カルシウムイオンを生じる。
【0061】
好ましくは、炭酸カルシウムを含有する水性懸濁液に添加される酸は、25℃で2.5以下のpKを有する。HPO、シュウ酸またはこれらの混合物などの中強酸では、0から2.5の25℃でのpKを観察することができる。これらの1つ以上の中強から強酸を、濃縮溶液または希釈溶液として懸濁液に添加することができる。
【0062】
本発明の一つの好ましい実施形態において、HPOは、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸として使用される。HPOを少なくとも10%(v/v)、より好ましくは少なくとも20%(v/v)、最も好ましくは少なくとも30%(v/v)の濃度で使用することが特に好ましい。別の好ましい実施形態において、HPOを20%から40%(v/v)の濃度で使用することが好ましい。
【0063】
一つの好ましい実施形態において、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸は、
(i)2.5以下のpKを有する少なくとも1つのHイオン供給者であり、その対応する酸アニオンは、水溶性カルシウム塩を形成することができる前記供給者、および
(ii)水溶性塩または水素塩の形態で用意される少なくとも1つのアニオンであり、この少なくとも1つのアニオンの対応する酸は、2.5以下のpKを有し、前記アニオンは、水不溶性カルシウム塩を形成することができる前記アニオン
の形態で用意される。
【0064】
(i)の前記少なくとも1つのHイオン供給者は、好ましくは、硝酸、硫酸、塩酸、HSO、HSOまたはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0065】
特に好ましい実施形態において、(ii)の前記少なくとも1つのアニオンは、炭酸カルシウムの重量に基づいて5重量%から50重量%の量に相当する量で添加される。
【0066】
この場合、前記少なくとも1つのHイオン供給者および少なくとも1つのアニオンは、好ましくは段階(i)の少なくとも1つのHイオン供給者が炭酸カルシウムと、炭酸カルシウムが(ii)のアニオンと接触する前および/または間に接触するように、好ましくは別々に用意される。
【0067】
(ii)の水溶性塩または水素塩のカチオン性基は、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびこれらの混合物を含む群から選択される。一つの好ましい実施形態において、(ii)の前記少なくとも1つのアニオンの塩は、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸水素ナトリウム(NaHSO)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、リン酸ナトリウム(NaPO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、シュウ酸二ナトリウム、(Na)、シュウ酸水素ナトリウム(NaHC)およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの酸アニオンの塩は、リン酸ナトリウム(Na3−xPO、ここでx=2、1または0)である。本発明の意味におけるそのような塩は、無水形態ならびに結晶水を含む形態(水和物)の塩を含むことが理解されよう。
【0068】
(ii)の塩の形態の少なくとも1つのアニオンを、任意の適切な固体形態、例えば顆粒または粉末の形態によって、炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加することができる。代替的または追加的には、塩の形態の少なくとも1つのアニオンを、濃縮溶液またはより希釈した溶液の形態によって、炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加することができる。
【0069】
本発明の一つの好ましい実施形態において、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸は、2時間以下の時間にわたって、好ましくは1.5時間以下の時間にわたって、より好ましくは1時間以下の時間にわたって、最も好ましくは30分以下の時間にわたって、炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に本質的に同じ速度(量/時間)で連続的に添加される。特に好ましい実施形態において、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸は、15分以下の時間にわたって炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加される。
【0070】
別の好ましい実施形態において、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸は、炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に一度に添加される。
【0071】
段階b)の前記酸を、段階e)の前および/または間に可溶化されるのであれば、可溶性の中性もしくは酸性塩の形態または酸の形態で添加することができる。
【0072】
好ましい実施形態において、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸は、前記炭酸カルシウムの重量に基づいて5重量%から50重量%、好ましくは10重量%から30重量%に相当する量で添加される。
【0073】
スラリーへの2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸の添加の後、スラリーのpHは、下記の本明細書の実施例セクションにおいて提示されている測定方法に従って測定すると、一時的に6.0未満の値に低下し得る。
【0074】
段階c):気体COの用意
本発明の方法の段階c)によると、気体COが用意される。
【0075】
炭酸カルシウムが、2.5以下のpKを有する酸に接触すると、必要な二酸化炭素は炭酸塩からその場で形成され得る。代替的または追加的には、気体二酸化炭素を外部供給源から供給することができる。
【0076】
強酸が使用される場合、酸処理および気体二酸化炭素による処理を同時に自動的に実施することができる。本発明の酸処理を、例えばHSO、HSO、HPO、シュウ酸などの0から2.5の範囲のpKを有する中強酸により最初に実施し、外部供給源から供給される気体二酸化炭素による処理を続いて実施することも可能である。
【0077】
気体二酸化炭素が用意される場合、段階e)の全体を通して水性懸濁液中の気体二酸化炭素の濃度は、容量に関して、比(懸濁液の容量):(気体COの容量)が1:0.05から1:20、さらにより好ましくは1:0.05から1:5であるようなものである。別の好ましい実施形態において、前記比の(懸濁液の容量):(気体COの容量)は、1:0.05から1:20であり、さらにより好ましくは、1:0.05から1:5が本発明の方法の際に維持される。
【0078】
段階d):2.5を超えるpKを有する少なくとも1つの酸の用意
本発明の方法の段階d)によると、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩が用意され、ここで、前記弱酸は2.5を超えるpKを有し、対応する酸アニオンは水不溶性カルシウム塩を形成することができる。
【0079】
炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加される少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸は、25℃で2.5以上のpKを有する。好ましくは、炭酸カルシウムを含有する水性懸濁液に添加される前記弱酸は、25℃で3.0以上のpKを有する。1つ以上の可溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸を、濃縮溶液または希釈溶液として水性懸濁液に添加することができる。
【0080】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸は、1000g/mol未満、好ましくは750g/mol未満、より好ましくは500g/mol未満の分子量を有する。
【0081】
水性懸濁液に添加される少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸は、好ましくは、クエン酸、ホウ酸またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0082】
代替的または追加的には、1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸を、水素塩の形態で水性懸濁液に添加することができる。本出願の意味における「水素塩」は、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸の酸アニオンとカチオンにより形成された電気的に中正なイオン化合物として定義され、ここで塩は、少なくとも1個の水素原子を含有する。そのような塩のカチオン性基は、アルカリ金属から、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびこれらの混合物から好ましく選択される。
【0083】
一つの好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸の水素塩は、クエン酸二水素ナトリウムおよび/またはカリウムおよび/またはリチウム、クエン酸水素二ナトリウムおよび/または二カリウムおよび/または二リチウム、ホウ酸二水素ナトリウムおよび/またはカリウムおよび/またはリチウム、ホウ酸二ナトリウムおよび/または二カリウムおよび/または二リチウムならびにこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸の塩は、クエン酸水素二ナトリウム(Na)である。
【0084】
好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩は、前記炭酸カルシウムの重量に基づいて0.1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から15重量%、より好ましくは1.5重量%から10重量%、最も好ましくは2重量%から5重量%に相当する量で添加される。
【0085】
好ましくは、懸濁液における少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸の重量比は、1:100から100:1、より好ましくは1:75から75:1、さらにより好ましくは1:50から50:1、いっそうより好ましくは1:50から1:1、最も好ましくは1:12から1:3である。
【0086】
二酸化炭素処理、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸による処理、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩による処理の後、20℃で測定した水性懸濁液のpHは、通常6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超える、さらにより好ましくは7.5を超える値に達し得る。換言すると、6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超える、さらにより好ましくは7.5を超えるpHを有する水性懸濁液として表面反応炭酸カルシウムが得られる。水性懸濁液が平衡に達することが可能な場合、pHは、通常7を超える。
【0087】
6.0を超えるpHを、水性懸濁液の撹拌を十分な時間、好ましくは1時間から10時間、より好ましくは1から5時間続けると、塩基の添加なしで調整することができる。
【0088】
あるいは、7を超えるpHで生じる平衡状態に達する前に、水性懸濁液のpHを、二酸化炭素処理の後の塩基の添加により6を超える値に増加することができる。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの任意の従来の塩基を使用することができる。
【0089】
段階e):炭酸カルシウムの処理
本発明の方法の段階e)によると、炭酸カルシウムは、水性スラリー環境下で、段階b)の2.5以下のpKを有する酸と、段階c)の前記気体COと、段階d)の前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる。
【0090】
本発明の方法の前記炭酸カルシウムは、以下の経路を介して、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸(段階b)において用意される)、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩(段階d)において用意される)と接触させるまたはこれらで処理される:
経路IA:前記炭酸カルシウムを、段階b)の2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸、段階d)の少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と同時に接触させる経路;
経路IIA:前記炭酸カルシウムを、段階d)の少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と最初に接触させ、段階b)の2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と次に接触させる経路;
経路IIIA:前記炭酸カルシウムを、段階b)の2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、その添加の間、炭酸カルシウムを、段階d)の少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩とも接触させる経路。
【0091】
少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸が同時に炭酸カルシウムに添加される場合(経路IA)、弱酸および/またはその水素塩を、添加の前に2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸とブレンドまたは混合することができる。
【0092】
次に酸の混合物は、水性懸濁液に一度に添加されるまたは2時間以下の時間にわたって、好ましくは1.5時間以下の時間にわたって、より好ましくは1時間以下の時間にわたって、最も好ましくは30分以下の時間にわたって、特に好ましい実施形態において15分以下の時間にわたって、本質的に同じ速度(量/時間)で連続的に添加される。
【0093】
本発明の方法の経路IAを使用することによって、増加したBET比表面積を有する炭酸塩粒子を得ることが可能である。前記方法は、段階a)において用意される同じ炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸および気体COと同時または別の段階のいずれかにより接触させるが、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を添加しないで得られるBET比表面積よりも少なくとも10%大きい、より好ましくは少なくとも20%大きい、最も好ましくは少なくとも30%大きいBET比表面積を有する炭酸カルシウム粒子を用意することができる。
【0094】
少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩が炭酸カルシウム懸濁液に、前記炭酸カルシウムを2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と接触させる前に添加する場合(経路IIA)、弱酸および/またはその水素塩を、例えば、水性懸濁液に一度に添加することができるまたは15分以下の時間にわたって、好ましくは10分以下の時間にわたって、より好ましくは5分以下の時間にわたって本質的に同じ速度(量/時間)で連続的に添加することができる。
【0095】
少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を完全に添加した後、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸は、水性懸濁液に一度に添加されるまたは2時間以下の時間にわたって、好ましくは1.5時間以下の時間にわたって、より好ましくは1時間以下の時間にわたって、最も好ましくは30分以下の時間にわたって、特に好ましい実施形態において15分以下の時間にわたって、本質的に同じ速度(量/時間)で連続的に添加される。
【0096】
本発明の方法の経路IIAを使用することによって、特に高い重量中央直径を有する炭酸カルシウム粒子を得ることが可能である。前記方法は、経路IAにより用意される同じ炭酸カルシウムを接触させることによって、すなわち前記炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩の混合物で同時に処理することによって得られる中央直径よりも少なくとも10%大きい、より好ましくは少なくとも20%大きい、最も好ましくは少なくとも50%大きい中央直径を有する炭酸カルシウム粒子を用意することができる。
【0097】
本発明において参照される表面反応炭酸カルシウム物質の全ての中央直径は、本明細書以降の実施例セクションにおいて提供されている測定方法に従って測定される。
【0098】
更に、本発明の方法の経路IIAを使用することによって、増加したBET比表面積を有する炭酸塩粒子を得ることが可能である。経路IIAによる前記方法は、段階a)において用意される同じ炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸および気体COと同時または別の段階のいずれかにより接触させるが、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を添加しないで得られるBET比表面積よりも少なくとも10%大きい、より好ましくは少なくとも20%大きい、さらにより好ましくは少なくとも50%大きいBET比表面積を有する炭酸カルシウム粒子を用意することができる。
【0099】
少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩が、前記炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と接触させるまたはこれで処理する間に水性懸濁液に添加される場合(経路IIIA)、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸を、例えば、水性懸濁液に2時間以下の時間にわたって、好ましくは1.5時間以下の時間にわたって、より好ましくは1時間以下の時間にわたって、最も好ましくは30分以下の時間にわたって、特に好ましい実施形態において15分以下の時間にわたって、本質的に同じ速度(量/時間)で連続的に添加することができる。
【0100】
2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸の添加の際に、好ましくは、炭酸カルシウムスラリーへの2.5以下のpKを有する前記酸の連続添加に必要な時間の5%後、10%後、20%後、30%後、50%後または80%後に、炭酸カルシウムを、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩に接触させることができる。例えば、2.5以下のpKを有する前記酸の連続添加に必要な時間の5%は、本発明の酸が好ましくは同じ速度(量/時間)で添加されるので、添加される2.5以下のpKを有する前記酸の総量の5%に添加に本質的に相当することが、当業者には理解されるべきである。
【0101】
前記弱酸および/またはその水素塩を、例えば15分以下の時間にわたって、好ましくは10分以下の時間にわたって、より好ましくは5分以下の時間にわたって、本質的に同じ速度(量/時間)で連続的に水性懸濁液に添加することができる。
【0102】
本発明の方法の経路IIIAを使用する場合、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を、2.5以下のpKを有する前記酸の添加の過程の開始が近づいた時点で添加することができる。例えば、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を、2.5以下のpKを有する前記酸の連続的添加に必要な時間の5%後または10%後に添加することができる。経路IIIAを使用することによって、増加した重量中央直径を有する炭酸カルシウム粒子を得ることが可能である。前記方法は、段階a)において用意される同じ炭酸カルシウムを、気体二酸化炭素、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と、2.5以下のpKを有する前記酸の添加の過程の終了時に、すなわち、例えば2.5以下のpKを有する前記酸の連続的添加に必要な時間の80%後に接触させることにより得られる中央直径よりも少なくとも5%大きい、より好ましくは少なくとも10%大きい、最も好ましくは少なくとも20%大きい中央直径を有する炭酸カルシウム粒子を用意することができる。
【0103】
したがって、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を、2.5以下のpKを有する前記酸の添加の過程の終了時近くに、例えば2.5以下のpKを有する前記酸の連続的添加に必要な時間の80%(添加される2.5以下のpKを有する前記酸の総量の80%に本質的に相当する)後に添加する場合、本発明の方法の経路IIIAを使用して減少した中央直径を有する炭酸カルシウム粒子を得ることが可能である。
【0104】
更に、本発明の方法の経路IIIAを使用することによって、増加したBET比表面積を有する炭酸カルシウム粒子を得ることも可能である。この方法は、段階a)において用意される同じ炭酸カルシウムを、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と、2.5以下のpKを有する前記酸の添加の過程の終了時近くに、すなわち、例えば2.5以下のpKを有する前記酸の連続的添加に必要な時間の80%後に接触させることにより得られるBET比表面積よりも少なくとも10%大きい、より好ましくは少なくとも15%大きい、さらにより好ましくは少なくとも20%大きいBET比表面積を有する炭酸カルシウム粒子を用意することができる。
【0105】
したがって、本発明の方法の経路IIIAを使用して、BET比表面積および中央直径のような炭酸カルシウムの特定のパラメーターまたは特性を選択的に制御または調整することが可能である。炭酸カルシウム分散体への2.5以下のpKを有する前記酸の添加の過程の終了時での少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩の添加は、減少または低下したBET比表面積および低い重量中央直径を有する炭酸カルシウム粒子をもたらすことができ、一方、2.5以下のpKを有する酸の添加の過程開始時での、例えば2.5以下のpKを有する酸の5%が添加された後での少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩の添加は、増加したBET比表面積および高いまたは増加した重量中央直径を有する炭酸カルシウム粒子をもたらすことができる。
【0106】
好ましい実施形態において、段階e)は、室温を超える、より好ましくは50℃を超える、さらにより好ましくは60℃を超える温度で実施される。
【0107】
好ましい実施形態において、スラリーは、本質的に層流を生じるように混合される。
【0108】
任意の実施形態において、段階e)は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アルミニウム、合成シリカ、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムおよびこれらの混合物などの一価塩のケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の存在下で実施される。好ましくは、一価塩はケイ酸ナトリウムである。
【0109】
本発明の更なる実施形態によると、段階e)は、スラリーの中に泡立てられる不活性ガスの存在下で実施される。
【0110】
酸処理段階および/または二酸化炭素処理段階を、適切であれば1回または数回繰り返すことができる。
【0111】
本発明の好ましい実施形態において、表面反応炭酸カルシウムを含む得られたスラリーは、本明細書以降の実施例セクションに記載されている測定方法に従って測定すると、25重量%まで、好ましくは5重量%から20重量%の固形分を有する。
【0112】
好ましい実施形態において、得られた表面反応炭酸カルシウムスラリーの水相を、脱イオン水に代えることができる。より好ましい実施形態において、前記表面反応炭酸カルシウムスラリーの水相を収集し、可溶化されたカルシウムイオンの全てまたは一部を用意する手段として、本発明の方法に再循環させる。このことは、本発明の方法が連続過程である場合に特に興味深い。
【0113】
得られた表面反応炭酸カルシウムスラリーを、場合により乾燥表面反応炭酸カルシウム生成物を得る時点まで濃縮することができる。上記に記載された水性懸濁液を乾燥させる場合、得られた固体(すなわち、乾燥または流体形態ではないように水をほとんど含有しない)表面反応炭酸カルシウムは、顆粒または粉末の形態であり得る。乾燥生成物の場合、この生成物を脂肪酸で追加的に処理することができる。乾燥生成物の場合、この生成物を水で追加的に洗浄することができる。
【0114】
このようにして表面反応炭酸カルシウムのスラリーが得られ、ここで前記表面反応炭酸カルシウムは、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸からおよび/または少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩から誘導されるアニオンの不溶性で少なくとも部分的に結晶質のカルシウム塩を含み、これは、好ましくは、段階a)において用意される炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面から広がっている。
【0115】
この表面反応炭酸カルシウムは、段階a)において用意される同じ炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸および気体COと同時または別の段階のいずれかにより接触させるが、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を添加しない後に得られるBET比表面積よりも少なくとも5%大きいBET比表面積を提供する。
【0116】
好ましい実施形態において、得られた表面反応炭酸カルシウムは、同じ炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸および気体COと同時または別の段階のいずれかにより接触させるが、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を添加しないで得られる炭酸カルシウムのBET比表面積よりも少なくとも10%大きい、より好ましくは少なくとも20%大きい、最も好ましくは少なくとも50%大きいBET比表面積を有する。
【0117】
本発明の方法により得られる表面反応炭酸カルシウムは、同じ炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸および気体COと同時または別の段階のいずれかにより接触させるが、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を添加しないで得られるBET比表面積と同じBET比表面積を更に提供することができる。この場合、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸の必要量は、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の重量に基づいて少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、さらにより好ましくは少なくとも15重量%、最も好ましくは少なくとも20重量%低減される。
【0118】
好ましい実施形態において、本発明の方法により得られる表面反応炭酸カルシウムは、本明細書以降の実施例セクションにおいて提供されている方法による窒素およびBET法を使用して測定して、20m/gを超える、例えば20m/gから200m/g、好ましくは30m/gを超える、例えば30m/gから150m/g、より好ましくは40m/gを超える、さらにより好ましくは50m/gを超える、いっそうより好ましくは60m/gを超える、なおより好ましくは70m/gを超える、最も好ましくは80m/gを超える比表面積を有する。
【0119】
更に、表面反応天然または合成炭酸カルシウムは、本明細書以降の実施例セクションにおいて提供されている測定方法に従って測定すると、0.1μmから50μm、好ましくは1μmから25μm、より好ましくは3μmから15μm、最も好ましくは5μmから12μmの重量中央粒子直径を有することが好ましい。
【0120】
好ましい実施形態において、表面反応炭酸カルシウムは、20m/gから150m/gまたは30m/gから200m/gの範囲内のBET比表面積および0.1μmから50μmの範囲内の重量中央粒子直径を有する。
【0121】
本発明の表面反応炭酸カルシウムまたは前記表面反応炭酸カルシウムのスラリーを、紙、ティッシュペーパー、プラスチック、塗料におけるまたは制御放出もしくは水処理剤として(スラリーの形態または乾燥生成物の形態により)使用することができる。
【0122】
本発明の方法により得られる表面反応炭酸カルシウムを、好ましくは、精製されるべき水、例えば産業廃水、飲料水、都市廃水、醸造所の廃水または製紙産業における水と、当業者に既知の任意の従来の手段により接触させる。
【0123】
表面反応炭酸カルシウムを、水性懸濁液、例えば上記に記載された懸濁液として添加することができる。あるいは、精製されるべき水に、任意の適切な固体形態、例えば顆粒もしくは粉末の形態またはケーキの形態で添加することができる。
【0124】
水は、例えば人間の汚物、有機物質、土壌、界面活性剤からもたらされる有機不純物、ならびに無機不純物、特に鉄含有またはマンガン含有化合物などの重金属不純物を含有し得る。本発明の精製方法により水から除去することができる有害成分には、細菌、真菌、古細菌または原生生物などの微生物も含まれる。
【0125】
以下の実施例は、本発明を、その範囲を限定することなく説明することが意図される。
【0126】
(実施例)
測定方法
以下の測定方法を使用して、実施例および請求項に提示されたパラメーターを評価する。
【0127】
物質の比表面積(SSA)
比表面積は、窒素を使用し、続いて試料を250℃で30分間加熱してコンディショニングする、ISO9277に従ったBET法を介して測定する。そのような測定の前に、試料をブフナー漏斗内で濾過し、脱イオン水ですすぎ、オーブンにおいて90から100℃で一晩乾燥する。続いて、乾燥ケーキをすり鉢で十分に粉砕し、得られた粉末を、恒量に達するまで130℃でモイスチャーバランスに設置する。
【0128】
非表面反応炭酸カルシウム粒状物質(すなわち、炭酸カルシウム出発物質)の粒径分布(直径<Xの粒子の質量%)および重量中央粒子直径(d50
炭酸カルシウムなどの粒状物質の重量中央粒子直径および粒子直径質量分布は、沈降法、すなわち重力場における沈降挙動の分析を介して決定する。測定は、Sedigraph(商標)5120により行う。
【0129】
方法および器具は当業者に知られており、充填剤および顔料の粒径を決定するために慣用的に使用される。測定は、0.1重量%のNaの水溶液において実施される。試料は、高速撹拌器および超音波を使用して分散した。
【0130】
表面反応炭酸カルシウム物質の中央粒子直径(d50
表面反応炭酸カルシウム物質の中央粒子直径は、Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemを使用して決定する。
【0131】
X線回析(XRD)
物質の結晶学的構造を、走査速度0.5秒/ステップおよびステップサイズ0.01°2シータにより2から70°2シータで走査するBrucker AXS:D8 Advanceの器具操作を使用するXRD分析技術に基づいて同定した。得られたスペクトルの分析は、International Centre for Diffraction Dataにより発行された基準スペクトルのPDF 2データベースに基づいた。
【0132】
水性スラリーのpH
水性懸濁液のpHは、標準pHメーターをおよそ25℃で使用して測定する。
【0133】
水性スラリーの固形分
スラリーの固形分(「乾燥重量」としても知られている)は、Mettler−Toledoにより市販されているMoisture Analyser HR73を使用し、以下の設定:温度120℃、自動停止3、標準乾燥、5−20gのスラリーにより決定する。
【実施例1】
【0134】
以下の本発明の例示的な実施例は、本発明の方法による炭酸カルシウムの接触を、同じ炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸および気体COと接触させるが、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を添加しないこと、同じ炭酸カルシウムを、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩ならびに気体COと接触させるが、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸を添加しないことと比較して含む。
【0135】
1.炭酸カルシウムスラリーの調製
a.炭酸カルシウムスラリーV1(従来技術)
炭酸カルシウムスラリーV1は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0136】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の10重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ1×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。この添加の後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0137】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0138】
b.炭酸カルシウムスラリーV2
炭酸カルシウムスラリーV2は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0139】
本質的に層流が確立するように撹拌しながら、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。クエン酸の添加が終了した後、HPOを、炭酸カルシウム重量の10重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ1×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。この添加の後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0140】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0141】
c.炭酸カルシウムスラリーV3
炭酸カルシウムスラリーV3は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0142】
本質的に層流が確立するように撹拌しながら、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。この添加の後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0143】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0144】
以下の表1は、調製した炭酸カルシウムスラリーならびに対応するBET比表面積および短期吸収速度を示す。
【0145】
【表1】

【実施例2】
【0146】
以下の本発明の例示的な実施例は、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸の濃度が異なる、本発明の方法による炭酸カルシウムの接触を含む。
【0147】
1.炭酸カルシウムスラリーの調製
a.炭酸カルシウムスラリーV4
炭酸カルシウムスラリーV4は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0148】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の30重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ3×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。HPOの添加の15%の経過時間(2分)の後、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0149】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0150】
b.炭酸カルシウムスラリーV5
炭酸カルシウムスラリーV5は、水および250gのチョークを、得られた水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0151】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の20重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ2×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。HPOの添加の15%の経過時間(2分)の後、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0152】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0153】
c.炭酸カルシウムスラリーV6
炭酸カルシウムスラリーV6は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0154】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の10重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ1×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。HPOの添加の15%の経過時間(2分)の後、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0155】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0156】
以下の表2は、調製した炭酸カルシウムスラリーおよび対応するBET比表面積を示す。
【0157】
【表2】

【実施例3】
【0158】
以下の本発明の例示的な実施例は、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩の濃度が異なる、本発明の方法による炭酸カルシウムの接触を含む。
【0159】
1.炭酸カルシウムスラリーの調製
a.炭酸カルシウムスラリーV7
炭酸カルシウムスラリーV7は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0160】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の10重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ1×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。HPOの添加の50%の経過時間(7.5分)の後、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の1重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0161】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0162】
b.炭酸カルシウムスラリーV8
炭酸カルシウムスラリーV8は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0163】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の10重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ1×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。HPOの添加の50%の経過時間(7.5分)の後、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の2.5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0164】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0165】
以下の表3は、調製した炭酸カルシウムスラリーおよび対応するBET比表面積を示す。
【0166】
【表3】

【実施例4】
【0167】
以下の本発明の例示的な実施例は、炭酸カルシウムが、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸の30%と接触させ、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩の添加の時点が異なる、本発明の方法による炭酸カルシウムの接触を含む。
【0168】
1.炭酸カルシウムスラリーの調製
a.炭酸カルシウムスラリーV9
炭酸カルシウムスラリーV9は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0169】
本質的に層流が確立するように撹拌しながら、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。クエン酸の添加が完了した後、HPOを、炭酸カルシウム重量の30重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ3×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0170】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0171】
以下の表4は、調製した炭酸カルシウムスラリーおよび対応するBET比表面積を示す。
【0172】
【表4】

【実施例5】
【0173】
以下の本発明の例示的な実施例は、炭酸カルシウムが、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸の10%と接触させ、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩の添加の時点が異なる、本発明の方法による炭酸カルシウムの接触を含む。
【0174】
1.炭酸カルシウムスラリーの調製
a.炭酸カルシウムスラリーV10
炭酸カルシウムスラリーV10は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0175】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の10重量%に相当する量および炭酸カルシウム重量の5重量%に相当する量のクエン酸とブレンドした炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ1×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0176】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0177】
b.炭酸カルシウムスラリーV11
炭酸カルシウムスラリーV11は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0178】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の10重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ1×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。HPOの添加の15%の経過時間(2分)の後、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0179】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0180】
以下の表5は、調製した炭酸カルシウムスラリーおよび対応するBET比表面積を示す。
【0181】
【表5】

【実施例6】
【0182】
以下の本発明の例示的な実施例は、炭酸カルシウムが、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸の10%と接触させ、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸の添加の時点が異なる、本発明の方法による炭酸カルシウムの接触を含む。
【0183】
1.炭酸カルシウムスラリーの調製
a.炭酸カルシウムスラリーV12
炭酸カルシウムスラリーV12は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0184】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の10重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ1×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。HPOの添加の50%の経過時間(7.5分)の後、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の2.5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0185】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0186】
b.炭酸カルシウムスラリーV13
炭酸カルシウムスラリーV13は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0187】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の10重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ1×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。HPOの添加の80%の経過時間(12分)の後、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の2.5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0188】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0189】
以下の表6は、調製した炭酸カルシウムスラリーおよび対応するBET比表面積を示す。
【0190】
【表6】

【実施例7】
【0191】
以下の本発明の例示的な実施例は、炭酸カルシウムが、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸の10%と接触させ、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩の添加の時点が異なる、本発明の方法による炭酸カルシウムの接触を含む。
【0192】
1.炭酸カルシウムスラリーの調製
a.炭酸カルシウムスラリーV14
炭酸カルシウムスラリーV14は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0193】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の10重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ1×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。HPOの添加の80%の経過時間(12分)の後、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の2.5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0194】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0195】
b.炭酸カルシウムスラリーV15
炭酸カルシウムスラリーV15は、水および250gのチョークを、得られる水性スラリーが乾燥重量で10%の固形分を有するように5Lのステンレススチール反応器に添加することにより調製する。その後、このスラリーの温度を、Julabo熱油サーモスタットの使用により70℃にし、70℃で維持する。
【0196】
本質的に層流が確立されるように撹拌しながら、HPOを、炭酸カルシウム重量の10重量%に相当する量および炭酸カルシウム1グラムあたりおよそ1×10−3モルのHPOに相当する量で蠕動ポンプにより15分間かけて炭酸カルシウムスラリーに添加する。HPOの添加の15%の経過時間(2分)の後、クエン酸を、炭酸カルシウム重量の5重量%に相当する量で蠕動ポンプにより炭酸カルシウムスラリーに添加する。酸の添加が完了した後、スラリーを、プロペラ型混合機の使用により更に5分間撹拌する。
【0197】
得られたスラリーを、得られる生成物の濾過および乾燥の前に一晩放置する。この乾燥生成物の最終BET比表面積を測定する。
【0198】
以下の表7は、調製した炭酸カルシウムスラリーおよび対応するBET比表面積を示す。
【0199】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)炭酸カルシウムを用意する段階と;
b)炭酸カルシウムの重量に基づいて、5重量%から50重量%の、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸を用意し、その対応する酸アニオンは、水不溶性カルシウム塩を形成することができる段階と;
c)気体COを用意する段階と;
d)少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩を用意する段階と;
e)前記炭酸カルシウムを、段階b)の2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸と接触させる、段階c)の前記気体COと接触させる、段階d)の前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる段階と
を含み、
少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/または無機弱酸が、2.5を超えるpKを有し、その対応する酸アニオンが水不溶性カルシウム塩を形成することができる
水性環境下で表面反応炭酸カルシウムを調製する方法。
【請求項2】
2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸が、25℃で0以下のpK値を有する強酸および25℃で0から2.5のpK値を有する中強酸からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
中強酸が、HPO、シュウ酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸が、HPO、好ましくは濃度が20%から40%(v/v)のHPOである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩が、1000g/mol未満、好ましくは750g/mol未満、より好ましくは500g/mol未満の分子量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩が、ホウ酸、クエン酸、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸水素二カリウム、ホウ酸二水素ナトリウム、ホウ酸二水素カリウム、ホウ酸水素二ナトリウム、ホウ酸水素二カリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩が、炭酸カルシウムの重量に基づいて0.1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から15重量%、より好ましくは1重量%から10重量%、最も好ましくは1重量%から5重量%の範囲の量で添加される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
炭酸カルシウムを、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と最初に接触させ、次に2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と接触させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
炭酸カルシウムを、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸に同時に接触させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、この添加の際に、炭酸カルシウムが、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩とも接触させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の5%が添加された後、炭酸カルシウムを、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の10%が添加された後、炭酸カルシウムを、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の20%が添加された後、炭酸カルシウムを、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の30%が添加された後、炭酸カルシウムを、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の50%が添加された後、炭酸カルシウムを、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
炭酸カルシウムを、2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸と最初に接触させ、2.5以下のpKを有する前記少なくとも1つの酸の総量の80%が添加された後、炭酸カルシウムを、少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸および/または前記少なくとも1つの水溶性非ポリマー有機および/もしくは無機弱酸の水素塩と接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
2.5以下のpKを有する少なくとも1つの酸が、
(i)2.5以下のpKを有する少なくとも1つのHイオン供給者であり、その対応する酸アニオンは、水溶性カルシウム塩を形成することができる前記供給者、および
(ii)水溶性塩または水素塩の形態で用意される少なくとも1つのアニオンであり、この少なくとも1つのアニオンの対応する酸は、2.5以下のpKを有し、前記アニオンは、水不溶性カルシウム塩を形成することができる前記アニオン
の形態で用意される、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
炭酸カルシウムを、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アルミニウム、合成シリカ、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される化合物と更に接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
方法により得られる表面反応炭酸カルシウムが、少なくとも20m/g、好ましくは少なくとも30m/g、より好ましくは少なくとも40m/g、さらにより好ましくは少なくとも50m/g、いっそうより好ましくは少なくとも60m/g、なおより好ましくは少なくとも70m/g、最も好ましくは少なくとも80m/gのBET比表面積を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
段階e)の後に得られる水性懸濁液を乾燥させる、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
50m/gを超える、より好ましくは60m/gを超える、最も好ましくは80m/gを超えるBET比表面積を有する表面反応炭酸カルシウム。
【請求項22】
表面反応炭酸カルシウムのBET比表面積を調整するための、請求項1から19のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項23】
紙、ティッシュペーパー、プラスチック、塗料におけるまたは制御放出もしくは水処理剤としての、請求項1から20のいずれかに記載の方法により得られる表面反応炭酸カルシウムの使用。

【公表番号】特表2012−530180(P2012−530180A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515611(P2012−515611)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052667
【国際公開番号】WO2010/146531
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】