説明

表面増強ラマン散乱反応性ナノスケールpHセンサ

【課題】本発明の目的は、別種のナノスケールpHセンサ、すなわち、生理学的に有意な範囲においてpHの高感度かつ安定した検出に用いることのできる、表面増強ラマン散乱(SERS)反応性ナノスケールpHセンサを提供することである。
【解決手段】本発明者らは、ナノファイバと、前記ナノファイバ表面へと修飾された金属ナノ粒子と、前記金属ナノ粒子表面に吸着させたpH反応性分子とを含んでいる表面増強ラマン散乱効果に基づくナノスケールpHセンサを調製した。本発明のナノスケールpHセンサを用いることにより、ナノメートルスケールの空間分解能で、生理学的に有意な範囲において試料のpH値を検出(または決定)することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面増強ラマン散乱(SERS)効果を示す能力を有するpH感受性ナノファイバ(本明細書では「ナノスケールpHセンサ」とも称する)に関する。本発明はまた、ナノスケールpHセンサを用いて、ナノメートルスケールの空間分解能でpH値を決定する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
膜を挟んだプロトン濃度の変化またはプロトン勾配の測定は、基本的な生物学的過程を理解するのに重要であり、疾患の治療法の開発に関連する。細胞などの微小環境におけるプロトン濃度の測定には、高空間分解能が不可欠である。マウスにおける腫瘍発症の診断には、細胞内pHおよび細胞外pHを測定するのに、磁気共鳴分光法(MRS)が広範に用いられてきた(非特許文献1を参照のこと)。化学的な微小環境の存在を同定するには、MRSは有用ではあるが、その空間分解能は0.1〜1mmに限定されている。微小環境は、さらに小さなスケールにおいて存在すると推測され、これらの微小環境における化学濃度を測定する、より高分解能の技法に対する必要を促している。カーボンナノチューブ(CNT)は、興味深い1次元ナノ材料であり、高分子としてのナノチューブを探索し、生物学的研究および臨床診断における広範な応用を可能にする各種の機能化が展開されている。また、X.Chenらは、CNTが、細胞内部に対する最小限の摂動により細胞膜を透過する、理想的なナノスケール針であることを示している(非特許文献3を参照のこと)。
【0003】
蛍光プローブは、事実上非侵襲的な形で、個別の生細胞またはヒト体内などの複雑な環境の化学的に特異な情報を提供する能力を有する。この方法の空間分解能は、蛍光検出に用いられる光学顕微鏡の回折限界により限定されている。Daiら(非特許文献2を参照のこと)は、ポリエチレングリコール化した(PEG化した)フルオレセインを塗布して、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を非共有結合的に機能化した。この試みは、SWCNTにpH依存的な光学特性を与えるために行われた。しかし、染料分子とSWCNTとの間の相互作用はOHの存在により弱められるので、弱められた相互作用の結果として、特に、より高いpH値においては、こうして物理的に吸着された染料分子がSWCNTから浸出する。
【0004】
細胞における表面増強ラマン散乱(SERS)測定は、細胞内構造の化学プロービング(単一粒子からの検出可能なシグナル)を可能とし、細胞過程を調べるのに適した収集時間を許容する空間分解能を可能とするため、急速に関心を増しつつある話題である(非特許文献4を参照のこと)。残念ながら、これらのプローブのpH範囲は、それらがクラスターおよび凝集物を形成する傾向により限定され、その結果、粒子径のばらつきによる粒子接合部間の複雑なpH微小環境が生じる。SERSによるナノ粒子のpH測定が、新たな生物学的問題に信頼できる形で適用できるには、さらなる技術的な改善が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PEG化されたフルオレセインに非共有結合的に結合した上記SWCNTの著しい浸出の問題は、浸出した染料が細胞に有害でありうるために、実際の適用を妨げる。さらに、不都合なことに、PEG化したフルオレセインは、その強度がpH依存的である蛍光ピークをただ1つしか有さない。センサ染料の浸出速度が一定でないため、センサは、細胞内pH値を反映できない。
本発明者らは、先に、生理学的に有意な範囲においてpHの高感度かつ安定した検出に用いることのできる、新型の、蛍光染料により改変されたpH感受性ナノファイバ(「ナノスケールpHセンサ」)を提案した。
本発明の目的は、別種のナノスケールpHセンサ、すなわち、生理学的に有意な範囲においてpHの高感度かつ安定した検出に用いることのできる、表面増強ラマン散乱(SERS)反応性ナノスケールpHセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔発明の概要〕
上記目的を達成するため、我々は、金属化されたナノファイバを、どのようにしてpH反応性分子を有するSERS基質として組み込むかについて検討した。そして、本発明を完成させた。
すなわち、我々は、ナノファイバと、前記ナノファイバ表面へと修飾された金属ナノ粒子と、および金属ナノ粒子表面に吸着させたpH反応性分子とを含んでいる表面増強ラマン散乱効果に基づくナノスケールpHセンサを初めて提供する。
より具体的には、前記ナノファイバは、ナノチューブおよびナノワイヤからなる群から選択され、前記ナノチューブおよびナノワイヤは、炭素から作製され、前記金属ナノ粒子は、Au、Ag、Pt、Ag被膜したAu、Ag被膜したPt、Au被膜したPt、およびPt被膜したAuからなる群から選択され、前記pH反応性分子は、ビオチンフルオレセインおよび4−メルカプト安息香酸からなる群から選択され、前記ナノファイバは、ティップの先端に付着している。
【0007】
我々は、第二に、ナノメートルスケールの空間分解能で試料中のpH値を決定する方法を提供する。その方法は以下のステップを含む。
(i)上記本発明のナノスケールpHセンサを、試料と接触させるステップと、
(ii)定められた波長を有するレーザー光を、前記ナノスケールpHセンサに照射するステップと、
(iii)前記ナノスケールpHセンサからのラマン散乱を、前記レーザー光の下で検出するステップと、
(iv)測定されたラマン散乱のpH依存的なピーク強度を計算し、2つのピークの比を標準検量線に照合するステップと、
(v)標準検量線から試料のpH値を決定するステップと、
(vi)前記ナノファイバ上のpH感受性領域のサイズにより、pH測定の空間分解能を決定するステップ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表面増強ラマン散乱反応性ナノスケールpHセンサは、試料中のpH値を決定する上記方法と同様に新規である。ナノスケールpHセンサまたは該方法を用いることにより、ナノメートルスケールの空間分解能で、生理学的に有意な範囲(pH 5.6〜pH 8.2)において試料のpH値を検出(または決定)することができる。本発明の測定範囲は、上記pH範囲(pH 5.6〜pH 8.2)に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のナノスケールpHセンサの合成スキームを示す図である。
【図2】実施例1で得られたナノスケールpHセンサの概略構造を示す図である。
【図3】実施例1で得られたナノスケールpHセンサのSEM画像を示す図である。
【図4】環境の含水pH値が変化する場合において、実施例1で得られたナノスケールpHセンサのSERS強度を示す図である。
【図5】実施例1で得られたナノスケールpHセンサのpH検量線を示す図である。波数(1):1184cm−1、波数(2):1636cm−1
【図6】ナノ針としての、本発明のナノスケールpHセンサのSEM画像を示す図である。
【図7】本発明のpH感受性ナノ針を用いる、細胞膜周囲におけるpH決定を示す概略図解である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔発明の更に詳しい説明〕
上記の通り、第1の発明は、その表面にpH反応性分子を有する金属ナノ粒子または二元金属ナノ粒子で修飾した、表面増強ラマン散乱(SERS)効果を示す能力を有するナノファイバである。
本明細書において、「ナノファイバ」は、炭素、窒化ホウ素、酸化タングステンWO(2<x<3)、または酸化亜鉛(ZnO)などの各種材料から作製されるナノチューブまたはナノワイヤから選択される。これらのうちで、カーボンナノチューブが、典型的材料として選択される。
カーボンナノチューブは、炭素に基づく材料の同素体の1つである。これらは、その直径が2nm〜100nmの範囲にある円筒状の炭素分子の形態を有し、(1枚または複数枚の)巻いたグラファイトシートからなる形態を有する。単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブを用いることができ、フラーレン(C60、C72、およびより大型のフラーレン分子)も用いることができる。
ナノファイバを金属ナノ粒子または二元金属ナノ粒子で修飾するためには、チオール官能化ナノファイバ(図1、ステップ1〜2に示す)を得る必要がある。静電気引力により、例えば、β−メルカプトエチルアミン、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリリシン(PLL)などでナノファイバ表面を官能化して正に荷電させることで達成でき、負に荷電した金属ナノ粒子または二元金属ナノ粒子を同様にして修飾することができる。
【0011】
本明細書において、金属ナノ粒子(二元金属ナノ粒子を含む)は、Au、Ag、もしくはPtからなるナノ粒子から選択されるか、または、Ag被膜したAu、Ag被膜したPt、Au被膜したPt、もしくはPt被膜したAuの二元金属ナノ粒子から選択される。これらのうち、二元金属のAg被膜したAuを用いるのが最も好ましい。
【0012】
pH反応性分子は、金属ナノ粒子または二元金属ナノ粒子を装着したナノファイバの金属ナノ粒子または二元金属ナノ粒子に吸着させる(図1、ステップ4を参照のこと)。本明細書において、pH反応性分子は、ビオチンフルオレセインまたは4−メルカプト安息香酸から選択される。これらのpH反応性分子は、共有結合により、金属ナノ粒子表面に吸着させる。
【0013】
例えば、本発明のナノスケールpHセンサの望ましい形態は、ナノ針またはナノ粒子である。
【0014】
本発明のナノスケールpHセンサを用い、前記ステップ(i)〜(vi)に従うことにより、ナノメートルスケール(すなわち、約3nm〜100nm)の空間分解能で、試料中のpH値を決定することができる。また、当然ながら、前記ステップ(i)〜(vi)により、マイクロメートルスケールまたはミリメートルスケールの空間分解能で、試料中のpH値を決定することもできる。
【0015】
ステップ(ii)における定められた波長を有する光源として、レーザー光源を用いることができる。ステップ(iii)において発せられたSERSシグナルを局所的に測定するために、各種の方法を適用することができる。1つの考えられる方法は、pH感受性ナノ針を作製することである。次いで、このナノ針を、(例えば、集束イオンビーム法を適用して)ナノメートルサイズのpH感受性領域を有するナノ針(例えば、ナノチューブの1つの端部のみがpH感受性に保持される)へと特異的に改変する。ナノ針のpH感受性セグメントを、生細胞の異なる位置(例えば、輸送タンパク質、膜、細胞質、または核周囲の位置)に正確に制御し、局所的に決定されたpH値に従って、局所的に発せられたSERSシグナルをモニターすることができる。
【0016】
添付図面を参照しながら、以下の実施例により、より具体的に本発明を説明する。
【実施例1】
【0017】
表面増強ラマン散乱(SERS)反応性ナノスケールpHセンサの作製
二元金属ナノ粒子を、ビオチンフルオレセイン(BF)分子の吸着質層を有するSERS活性基質としてSWCNTに装着した、表面増強ラマン散乱(SERS)反応性ナノスケールpHセンサは、以下の通りに作製された。(SERS反応性)ナノスケールpHセンサの合成スキームを図1に示し、(SERS反応性)ナノスケールpHセンサの概略構造を図2に示した。
【0018】
(a)Ag被膜したAu粒子(二元金属粒子)の調製
クエン酸還元法により、13nmサイズの金コロイドを調製し、シードとして用いた。5mLの金シード溶液を、3mLの10−2mMクエン酸と混合し、精製水により最終容量を50mLとした。溶液を磁気攪拌し、100℃に加熱した。次いで、0.5mLの10−2mM AgNOを滴下により添加した。20分間の反応後に、溶液の色が、ピンク色から濃黄色に変化した。これを冷却し、目的のコロイド溶液が調製された。このAg被膜したAuコロイドは、6カ月以上にわたり安定であった。
【0019】
(b)チオール官能化SWCNT
1mgの精製SWCNT(SES research社製、900−1301)を、乾燥N,N−ジメチルホルムアミドによる1−ピレンブタン酸スクシンイミジルエステルの5mM溶液中に1時間浸漬したところ、SWCNT側壁にピレン残基が結合した(図1、ステップ1)。次いで、スクシンイミジルエステル基が、β−メルカプトエチルアミンのアンカリングポイントとして働き、チオール官能化SWCNTを得た。その後、混合液を遠心分離し、純水によりすすぎ、遊離分子を除去した(図1、ステップ2)。
【0020】
(c)二元金属ナノ粒子を装着したSWCNT(SERS活性基質)の作製
0.1mgのチオール官能化SWCNTを超音波分解し、15分間にわたり、10mLの純水溶液中に分散させた。上記で得られた1mLの二元金属コロイドを、滴下によりSWCNT溶液に添加し、さらに5分間にわたり超音波分解した。15,000rpmで遠心分離し、純水で完全にすすいだ後、さらなる実験用として水中に再分散させた(図1、ステップ3)。
【0021】
(d)SERS活性基質へのビオチン−4−フルオレセインの吸着(SERS反応性pHセンサ)
二元金属ナノ粒子を装着したSWCNTを、10−5Mの最終Au濃度で希釈した。ビオチン−4−フルオレセインを、10−6Mの濃度までSWCNT溶液に添加し、1時間にわたり混合物を放置した。遠心分離し、純水で完全に洗浄して遊離ビオチン−4−フルオレセイン分子を除去した後、SERS反応性pHセンサを得た。AuコロイドおよびAg被膜したAuの二元金属コロイドへのビオチン−4−フルオレセインの吸着は、同じ方法、同じ濃度で達成した(図1、ステップ4、図2も参照のこと)。
【0022】
上記のステップで得られた懸濁液の液滴を乾燥させ、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて観察した。FE−SEM画像を図3に示した。CNTの表面上で二元金属ナノ粒子を修飾し、SERS活性基質として作用する小凝集物を形成する。
【実施例2】
【0023】
本発明のpH感受性カーボンナノチューブを用いるpH値の決定
実施例1で得られたナノスケールpHセンサのSERSスペクトルを、以下の通りに、異なるpHにおいて得た。試料をカバーガラス基板に沈着させ、真空下で乾燥させた。各pHでのラマンスペクトルを得る前に、10分間にわたり、所望のpH値を有する10mMリン酸緩衝食塩液(PBS)中に試料を浸漬した。緩衝液のpHは、0.01pH単位の精度まで調整した。次いで、上記基板全体を周囲の緩衝液中に浸漬する間、試料における514.32nmの波長による励起および40μWの電力を伴う、LabRam HR−800ラマン顕微鏡(日本、Horiba & Jobin Yvon社製)を用いて、ラマンスペクトルを記録した。走査データは、各pH値において、各試料における各点から収集した。各曲線は、5つの異なる粒子点の平均データであった。二元金属ナノ粒子で修飾したSWCNT、および、付着させたpH反応性レポーターであるビオチンフルオレセインからのSERSスペクトルの応答に関する情報は、酸性から塩基性に至るpHレベルで測定した。結果を図4に示す。
【0024】
pH値が高値から低値に低下するとき、フルオレセインのイオン状態変化には、力の定数変化をもたらす1電子電荷の再分配が伴う。こうして、分子対称性の変化は、観察された振動スペクトルにおけるバンド強度の変化をもたらす。SERSスペクトルにおける最も顕著な特徴は、1636cm−1におけるキサンテン環モードおよび1184cm−1におけるフェノールのC−OHベンドである。1636cm−1における振動バンドの強度は、キサンテン部分のより対称的な構造により、pH値が上昇するのに応じて増大する。他方、1184cm−1における振動バンドの強度は、pH値が上昇するのに応じて減少する。1636cm−1および1184cm−1におけるこのSERS強度比(I1636/1184)は、I1636/1184対pH値の標準曲線を用いて該比をpH値に変換することにより、pH値を正確に決定するのに適切な尺度となる。図5は、得られたナノスケールpHセンサのpH検量線を示す。
【実施例3】
【0025】
pH感受性ナノ針の調製
pH感受性ナノ針は、電気泳動法(J.Tangら、Adv.Mater.2003年、第15巻、1352頁)により作製した。Tiティップ(φ0.25mm)は、まず、11% HF溶液により8Vで電解的に鋭利化させた後、1% HF溶液による化学エッチングを施し、次いで、実施例1で得られたpH感受性カーボンナノチューブ懸濁液の液滴内に浸漬した。懸濁液を微小電極に接続し、ACバイアス印加(1MHz、10V)による電気泳動を行い、pH感受性ナノチューブを、Tiティップの先端に付着させた。図6は、実施例3で得られたpH感受性ナノ針のSEM画像を示す。
【産業上の利用可能性】
【0026】
1つの考えられる適用例は、微小環境内、すなわち、in vitroまたはin vivoにおける細胞内、または、細胞膜周囲におけるプロトン濃度の測定である。図7は、本発明のpH感受性ナノ針を用いることによる、細胞膜周囲におけるpH測定の概略を示す。
【符号の説明】
【0027】
1 ナノスケールpHセンサ
1a ナノ針
2 カーボンナノチューブ
3 1−ピレンブタン酸スクシンイミジルエステル
3a ピレン残基
4 β−メルカプトエチルアミン
5 金属ナノ粒子
5a Ag
5b 金コロイド
6 ビオチンフルオレセイン
6a ビオチン部
6b フルオレセイン部
6c pH反応性分子
6d キサンテン部
7 ティップ
7a 先端
8 細胞膜
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】R.J.Gillies, G.S. Karczmar, and Z.M. Bhujwalla: J. Magn. Reson. Imaging, 2002,vol.16 (4), 430-450
【非特許文献2】N.Nakayama-Ratchford, S. Bangsaruntip, X. Sun, K. Welsher, and H. Dai: J. Am.Chem. Soc., 2007, vol.129 (9), 2448-2449
【非特許文献3】X.Chen, A. Kis, A. Zettl, and C.R. Bertozzi: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2007,vol.104 (20), 8218-8222
【非特許文献4】J.Kneipp, H. Kneipp, B. Wittig, and K. Kneipp: Nano Lett., 2007, vol. 7 (9),2819-2823

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバと、前記ナノファイバ表面へと修飾された金属ナノ粒子と、前記金属ナノ粒子表面に吸着させたpH反応性分子とを含んでいる表面増強ラマン散乱効果に基づくナノスケールpHセンサ。
【請求項2】
前記ナノファイバが、ナノチューブおよびナノワイヤからなる群から選択される、請求項1に記載のナノスケールpHセンサ。
【請求項3】
前記ナノチューブおよびナノワイヤが、炭素から作製される、請求項2に記載のナノスケールpHセンサ。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子が、Au、Ag、Pt、Ag被膜したAu、Ag被膜したPt、Au被膜したPtおよびPt被膜したAuからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のナノスケールpHセンサ。
【請求項5】
前記pH反応性分子が、ビオチンフルオレセインおよび4−メルカプト安息香酸からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のナノスケールpHセンサ。
【請求項6】
前記ナノファイバが、ティップの先端に付着している、請求項1から5のいずれか一項に記載のナノスケールpHセンサ。
【請求項7】
ナノメートルスケールの空間分解能で試料中のpH値を決定する方法であって、
以下のステップを含む方法:
(i)請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のナノスケールpHセンサを、試料と接触させるステップと、
(ii)定められた波長を有するレーザー光を、前記ナノスケールpHセンサに照射するステップと、
(iii)前記ナノスケールpHセンサからのラマン散乱を、前記レーザー光の下で検出するステップと、
(iv)測定されたラマン散乱のpH依存的なピーク強度を計算し、2つのピークの比を標準検量線に照合するステップと、
(v)前記標準検量線から試料のpH値を決定するステップと、
(vi)前記ナノファイバ上のpH感受性領域のサイズにより、pH測定の空間分解能を決定するステップ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−203875(P2010−203875A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−48844(P2009−48844)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年9月16日 インターネットアドレス「http://www.rsc.org/Publishing/Journals/JM/article.asp?doi=b809833f」に発表
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】