説明

表面実装型電子部品の表面保護膜形成方法

【課題】ダイシングシートを用いて、粉体塗装方法にて表面実装型電子部品の実装用端子面以外全てについて表面保護膜を形成する場合、ダイシングシートから表面実装型電子部品を取り外す際に、表面実装型電子部品の側面近傍にダイシングシートに定着された粉体塗料も一緒に剥がれ、静電粉体塗装の実施には、表面実装型電子部品を電気的に接地する必要があり、塗装冶具を用いる事により安定した表面保護膜の形成方法を提供する。
【解決手段】粉体塗装にて形成された表面保護膜を有する表面実装型電子部品の製造方法にあたって、表面実装型電子部品の実装用端子面を粉体塗装治具の支持部材に当接させ、塗装装置により粉体塗装治具を回転させながら粉体塗料を表面実装型電子部品の実装用端子面以外に付着し、粉体塗装治具を回転させながら表面実装型電子部品に付着した粉体塗料を加熱にて定着させることを特徴とする表面実装型電子部品の表面保護膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装型電子部品の実装用端子面以外全てに、塗装装置により粉体塗料を定着させた表面保護膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表面実装型電子部品の絶縁性及び遮光性、更に切断による破片落下防止及び接合部界面の金属露出による腐食防止を目的として、表面保護膜形成が行われている。図6は、従来の表面実装型電子部品を樹脂成形または印刷方法にて表面保護膜41を形成し、切断により個片化する表面保護膜形成方法を説明する概念図である。
表面実装型電子部品1の実装用端子面をダイシングシート40に当接させた状態で、複数の表面実装型電子部品1の実装用端子面以外に保護膜を形成するには、一般的に切断により個片化された表面実装型電子部品1をダイシングシート40に拡開または配置させ、金型又は金属マスクにて表面実装型電子部品1を覆ったのち樹脂成形または印刷方法にて表面保護膜41を形成し、その後、切断部に沿って、ダイシングブレード42などを用いて切断し、再び個片化を行う。
【0003】
また、特許文献1や特許文献2に示されるように、様々な部品において粉体塗料による塗装膜の形成方法が記載されている。
【0004】
特許文献1では、リング状のフェライトコアへの浸漬法による粉体塗料塗布方法が記載されている。(不図示)
フェライトコアを予熱した後、回転体に充満された粉体塗料槽にフェライトコアを浸漬させ、赤外等の急速加熱装置にて定着させ、更に反転機構によりフェライトコアを反転させ、裏面側の定着を行い、所望の部分にのみ粉体塗装を行う。
【0005】
特許文献2では、ブレーキパッドへの粉体塗料塗布方法が記載されている。図7は、ブレーキパッドへの粉体塗装方法を説明する側面図である。
絶縁性ベルト52には、ブレーキパッド51を当接させる面に導電材53が配置され、導電材53を電気的に接地する事で粉体塗料4を付着させ、所望の部分にのみ塗装膜を形成する。
【0006】
特許文献3では、粉体塗料による塗膜の形成方法が記載されている。図8は、従来の被加工物への粉体塗料付着方法を説明する概念図である。
被加工物60の表面に粉体塗料4を衝突させた際に発生する熱で粉体塗料を溶融させることで、薄膜61を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−335656号公報
【特許文献2】特開平6−320067号公報
【特許文献3】特開2000−153222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
表面実装型電子部品の支持部材として、例えばダイシングシートを用いて、粉体塗装方法にて表面実装型電子部品の実装用端子面以外全てについて表面保護膜を形成する場合、
表面保護膜を定着した後、ダイシングシートから表面実装型電子部品を取り外す際に、
表面実装型電子部品の側面近傍にダイシングシートに定着された粉体塗料も一緒に剥がれ、
表面実装型電子部品の側面に余分な膜が形成されてしまう。
【0009】
さらに、静電粉体塗装を実施する為に、表面実装型電子部品を電気的に接地する必要があり、ダイシングシートは絶縁体の為、表面実装型電子部品の実装用端子面をダイシングシートに当接させても電気的に接地を取る事が出来ず、表面実装型電子部品に粉体塗料を確実に付着できない。
【0010】
また、特許文献1に示すような、浸漬による保護膜形成方法では、部品全体に保護膜を形成する為、選択的な部分以外に保護膜を形成するには不向きであり、製造コストがかかる。
【0011】
特許文献2に示すような、保護膜形成方法では、電子部品のような小型な部品に対して、ベルトコンベア上の導電材に電子部品を配置する作業や、表面保護膜形成後に部品を取り出す作業が必要となり、さらに電子部品の小型化に伴って、作業の難易度が増してしまう。
【0012】
特許文献3に示すような、粉体塗料を衝突させた際に発生する熱で、薄膜を形成する方法は、表面実装型電子部品のような、立体的な対象物に対して一様な膜厚で薄膜を形成するには不向きであり、上述した様に、個片の被加工物を対象としたとき、被加工物以外の領域にも余分な薄膜を形成してしまう。
【0013】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、表面実装型電子部品の実装用端子面以外全てを粉体塗装による表面保護膜形成を行うための容易な製造工法かつ量産性に優れた表面保護膜の形成方法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、粉体塗装にて形成された表面保護膜を有する表面実装型電子部品の製造方法にあたって、表面実装型電子部品の実装用端子面を粉体塗装治具の支持部材に当接させた状態で複数の前記表面実装型電子部品を配置する工程と、塗装装置により粉体塗装治具を回転させながら粉体塗料を前記表面実装型電子部品の実装用端子面以外に付着させる工程と、前記粉体塗装治具を回転させながら前記表面実装型電子部品に付着した粉体塗料を加熱にて定着させる工程を有する。
【0015】
複数の製品領域を有する母基板を切断し個片化された前記表面実装型電子部品を、前記母基板を切断した後、前記粉体塗装冶具に移載装置にて、前記粉体塗装冶具の所定の間隔で配置された前記支持部材に、複数の前記表面実装型電子部品を配置させ、粉体塗装を行う。
【0016】
前記粉体塗装冶具は、磁性体と耐熱材料とを組み合わせたベース部に、前記表面実装型電子部品の実装用端子面との当接面を有する支持部材として金属製プローブピンを備え、前記表面実装型電子部品の実装用端子面を前記磁性体の磁力により固定させ、前記当接面と前記ベース上部と所定の間隔を設け、前記表面実装型電子部品の実装端子面以外に粉体塗装を行う。
【0017】
前記粉体塗装冶具は、磁性体と金属プレートとを組み合わせたベース部に、支持部材として、実装用端子面の形状をくりぬいた耐熱材料を嵌め込んだ粉体塗装冶具で、前記表面実装型電子部品の実装用端子面を前記磁性体の磁力により固定させ、前記当接面と前記ベース上部と所定の間隔を設け粉体塗装を行う。
【0018】
前記粉体塗装冶具は、耐熱材料に所定の間隔の吸着する為の穴を設けたベース部に、前記表面実装型電子部品の実装用端子面と当接面を有する支持部材として金属製部材を備え、
前記表面実装型電子部品のいずれかの実装用端子面と接触により、前記表面実装型電子部品と電気的に接地をとり、前記表面実装型電子部品の実装用端子面を真空引きにより固定させ、前記表面実装型電子部品の実装端子面以外に粉体塗装を行う。
【0019】
前記塗装装置にて前記粉体塗装冶具を回転させながら、前記表面実装型電子部品以外に付着した粉体塗料を除去し、除去された粉体塗料は、回収後再利用し、粉体塗装を行う。
【0020】
粉体塗装の定着工程において、高周波などの急速加熱装置を用いて、粉体塗装を行う。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、樹脂成形や印刷方法などで使用する高額な装置は不要であり、装置の占有スペースが少なく、かつ電子部品の変更時にも容易に対応出来るため、製造コストを低減できる。
【0022】
塗装冶具を用いることで、表面実装型電子部品の実装用端子面にて電気的に接地をとれる為、表面実装型電子部品の実装用端子面以外全てに粉体塗装を付着させ、余分な粉体塗料は回転とエアーにて排除した後に表面保護膜を定着させることで、表面実装型電子部品の側面にバリ等の余分な膜がない表面保護膜が形成される。また塗装冶具は再利用が可能である。
【0023】
余分な粉体塗料を回収した後に、表面保護膜を定着させることができるため、樹脂成形または印刷方法にて表面保護膜形成後の切断工程が不要となる。
【0024】
塗装装置にて塗装冶具を回転させながら、表面実装型電子部品に粉体塗料を付着させる事で、塗装冶具に搭載された複数の表面実装型電子部品の表面保護膜厚のバラツキが低減できる。
【0025】
また、塗装装置にて加熱による定着として、塗装冶具を回転部材にて回転させながら、高周波などの急速加熱装置にて加熱を行う事により、粉体塗料の塗りムラが低減され、さらに高周波などの急速加熱装置により加熱による定着時間が短縮となるため、生産性の向上が図れる。
【0026】
本発明によって、表面実装型電子部品の実装用端子面以外全てを粉体塗装による表面保護膜形成を行う容易な製造工法かつ量産性に優れた表面保護膜の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】表面実装型電子部品の断面図であり、(a)は表面保護膜形成前で、(b)は表面保護膜形成後である。
【図2】本実施例における粉体塗料塗布工程を説明する図であり、(a)は粉体塗装冶具に表面実装型電子部品を配置させる工程、(b)は粉体塗装冶具を回転させながら粉体塗料を付着させる工程、(c)は粉体塗料を加熱にて定着させる工程である。
【図3】本発明における粉体塗装冶具を説明する概略図である。
【図4】本発明における他の粉体塗装冶具を説明する概略図である。
【図5】本発明における他の粉体塗装冶具を説明する概略図である。
【図6】従来の表面実装型電子部品の表面保護膜形成方法を説明する概念図である。
【図7】従来のブレーキパッドへの静電粉体塗装の側面図である。
【図8】従来の被加工物への粉体塗料付着方法を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明における表面実装型電子部品の断面図であり、(a)は表面保護膜形成前で、(b)は表面保護膜形成後である。図2は、本実施例における粉体塗料塗布工程を説明する図であり、(a)は粉体塗装冶具に表面実装型電子部品を配置させる工程、(b)は粉体塗装冶具を回転させながら粉体塗料を付着させる工程、(c)は粉体塗料を過熱にて定着させる工程である。図3は、本発明における粉体塗装治具を説明する概略図である。図4は、本発明における他の粉体塗装治具を説明する概略図である。図5は、本発明における他の粉体塗装治具を説明する概略図である。
【0029】
図2(a)に示すように、個片化された表面実装型電子部品を、粉体塗装冶具10の所定の間隔で配置された支持部材11に、移載装置(不図示)にて、表面実装型電子部品1を配置する。
【0030】
図2(b)に示すように、粉体塗料4の塗装方式としては、静電塗装装置により粉体塗料4に数10KVの高電圧を印加して静電気を帯電させ、粉体塗装冶具10をアースし、静電気力により表面実装型電子部品1に粉体塗料4を塗装する静電塗装法を適用する。
この時、粉体塗装冶具10を回転させながら粉体塗料4を付着させる。
【0031】
図2(c)に示すように、高周波などの急速加熱装置15により、表面実装型電子部品1に付着した粉体塗料4を、粉体塗装冶具10を回転させながら定着させ、表面保護膜3を形成する。
この時、支持部材11に固定された実装用端子面には表面保護膜3は形成されず、エアブローにより余分な粉体塗料4を取り除く。
【0032】
その後、粉体塗装冶具10毎、或いは表面保護膜3が形成された表面実装型電子部品1を、移載装置(不図示)にて耐熱用トレーに所定の間隔に配置し、加熱炉にて粉体塗料4を更に定着させ、表面保護膜3が形成された表面実装型電子部品1の完成体となる。
【0033】
図3を参照しつつ、本発明における粉体塗装冶具を説明する。
粉体塗装冶具10は、磁性体13と耐熱材料14とを組み合わせたベース部12に、表面実装型電子部品1の実装用端子面と当接面を有する支持部材11として金属製プローブピンを備え、表面実装型電子部品1の実装用端子面を磁性体13の磁力により固定させ、当接面とベース部12上面と所定の間隔を設け、表面実装型電子部品1の実装端子面以外に粉体塗装を行う。
粉体塗装冶具10の形状は円形が望ましいが、任意の形状においても問題はない。
【0034】
図4を参照しつつ、本発明における他の粉体塗装冶具を説明する。
粉体塗装冶具20は、磁性体23と支持部材21として金属プレートとを組み合わせたベース部22に、実装用端子面の形状をくりぬいた耐熱材料24を嵌め込んだ粉体塗装冶具20で、表面実装型電子部品1の実装用端子面を磁性体23の磁力により固定させ、当接面とベース22上面と所定の間隔を設け、表面実装型電子部品1の実装端子面以外に粉体塗装を行う。
粉体塗装冶具の形状は円形が望ましいが、任意の形状においても問題はない。
【0035】
図5を参照しつつ、本発明における他の粉体塗装冶具を説明する。
粉体塗装冶具30は、耐熱材料34に所定の間隔の吸着する為の穴35を設けたベース部32に、表面実装型電子部品1の実装用端子面と当接面を有する支持部材31として金属製部材を備え、表面実装型電子部品1のいずれかの実装用端子面との接触により、表面実装型電子部品1と電気的に接地をとり、表面実装型電子部品1の実装用端子面を真空引きにより固定させ、表面実装型電子部品1の実装端子面以外に粉体塗装を行う。
粉体塗装冶具の形状は円形が望ましいが、任意の形状においても問題はない。
【符号の説明】
【0036】
1 表面実装型電子部品
2 実装用端子
3 表面保護膜
4 粉体塗料
10 粉体塗装治具
11 支持部材(金属プローブ)
12 ベース部
13 磁性体
14 耐熱材料
15 急速加熱装置
20 粉体塗装治具
21 支持部材(金属プレート)
22 ベース部
23 磁性体
24 耐熱材料
30 粉体塗装治具
31 支持部材(金属製部材)
32 ベース部
33 金属プレート
34 耐熱材料
35 穴
40 ダイシングシート
41 表面保護膜(樹脂成型及び印刷方法)
42 ダイシングブレード
50 ブレーキパット
51 絶縁ベルト
52 導電材
60 被加工物
61 薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体塗装にて形成された表面保護膜を有する表面実装型電子部品の製造方法において、
表面実装型電子部品の実装用端子面を粉体塗装治具の支持部材に当接させた状態で複数の前記表面実装型電子部品を配置する工程と、
塗装装置により粉体塗装治具を回転させながら粉体塗料を前記表面実装型電子部品の実装用端子面以外に付着させる工程と、
前記粉体塗装治具を回転させながら前記表面実装型電子部品に付着した粉体塗料を加熱にて定着させる工程を有することを特徴とする表面実装型電子部品の形成方法。
【請求項2】
複数の製品領域を有する母基板を切断し個片化された前記表面実装型電子部品を、
前記母基板を切断した後、
前記粉体塗装冶具に移載装置にて、
前記粉体塗装冶具の所定の間隔で配置された前記支持部材に、
複数の前記表面実装型電子部品を配置させ、
粉体塗装を行うことを特徴とする請求項1に記載の表面実装型電子部品の形成方法。
【請求項3】
前記粉体塗装冶具は、
磁性体と耐熱材料とを組み合わせたベース部に、
前記表面実装型電子部品の実装用端子面との当接面を有する支持部材として金属製プローブピンを備え、
前記表面実装型電子部品の実装用端子面を前記磁性体の磁力により固定させ、
前記当接面と前記ベース上部と所定の間隔を設け、
前記表面実装型電子部品の実装端子面以外に粉体塗装を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の表面実装型電子部品の形成方法。
【請求項4】
前記粉体塗装冶具は、
磁性体と金属プレートとを組み合わせたベース部に、
支持部材として、
実装用端子面の形状をくりぬいた耐熱材料を嵌め込んだ粉体塗装冶具で、
前記表面実装型電子部品の実装用端子面を前記磁性体の磁力により固定させ、
前記当接面と前記ベース上部と所定の間隔を設け粉体塗装を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の表面実装型電子部品の形成方法。
【請求項5】
前記粉体塗装冶具は、
耐熱材料に所定の間隔の吸着する為の穴を設けたベース部に、
前記表面実装型電子部品の実装用端子面と当接面を有する支持部材として金属製部材を備え、
前記表面実装型電子部品のいずれかの実装用端子面と接触により、
前記表面実装型電子部品と電気的に接地をとり、
前記表面実装型電子部品の実装用端子面を真空引きにより固定させ、
前記表面実装型電子部品の実装端子面以外に粉体塗装を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の表面実装型電子部品の形成方法。
【請求項6】
前記塗装装置にて前記粉体塗装冶具を回転させながら、
前記表面実装型電子部品以外に付着した粉体塗料を除去し、
除去された粉体塗料は、
回収後再利用し、
粉体塗装を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の表面実装型電子部品の形成方法。
【請求項7】
粉体塗装の定着工程において、
高周波などの急速加熱装置を用いることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の表面実装型電子部品の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−92872(P2011−92872A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249847(P2009−249847)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】