説明

表面実装薄型コンデンサ

【課題】 コンデンサ素子を表面実装用の端子に導電ペーストで接続するときの陽極と陰極間の短絡発生を防止できる表面実装薄型コンデンサを提供すること。
【解決手段】 板状または箔状の拡面化した弁作用金属を陽極体とし、この陽極体の両端部に陽極部16が設けられ、その陽極体の少なくとも中央領域の表面には酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、この誘電体上に導電性高分子、グラファイト、銀ペースト層を形成した陰極部15が設けられたコンデンサ素子10を用い、陽極部16に接続され基板実装面に露出する陽極端子12を配設し、陰極部15に導電ペースト13を介して接続され基板実装面に露出する陰極端子14を配設した表面実装薄型コンデンサであり、陽極端子12は、インサートモールド樹脂ケース17の底部内側だけでなく、インサートモールド樹脂ケース17の側壁内側に接続部を持ち導電ペースト13を介して、コンデンサ素子10の陽極部16に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサの一種である表面実装薄型コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンデンサは、図2に正断面図で示すものが知られている(以下、従来技術と呼ぶ)。同図において、11は陽極導通片、22は陽極端子、13は導電ペースト、14は陰極端子、15はコンデンサ素子の陰極部である。
【0003】
図2に示す従来技術による固体電解コンデンサは、3端子伝送線路素子タイプと呼ばれている。この固体電解コンデンサは、導電性機能高分子膜を固体電解質としており、弁作用金属の表面に陽極酸化皮膜層を形成して、弁作用金属陽極体とし、この陽極酸化皮膜層表面を覆うように、導電性機能高分子膜を形成し、さらにその周囲にグラファイト層、銀ペースト層を順次形成し、陽極体の両端部に陽極導通片11を接合してコンデンサ素子としている。
【0004】
次に、陽極端子22および陰極端子14が、平板状に、基板実装面となる同一平面上に形成され、陽極端子22と陰極端子14の隙間を埋めるとともに機械的に連結する底面部を有し、前記平面に対して略直交する側壁を有するインサートモールド樹脂ケースを使用し、その内側に露出した陽極端子22および陰極端子14にコンデンサ素子10の陽極側の陽極導通片11および陰極部15を導電ペースト13により接続し、インサートモールド樹脂ケース17の上側周囲をケース蓋18で覆うことで表面実装薄型コンデンサとしている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0005】
しかしながら、従来技術による3端子伝送線路タイプコンデンサではコンデンサ素子をケースに入れる工程において、陽極接続用の銀ペースト(導電ペースト13)が所定の位置からはみ出して素子の陰極まで到達して短絡が起きるという問題点がある。また、短絡までは至らないが漏れ電流不良となる問題点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−313676号公報
【特許文献2】特開2006−128247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の技術的課題は、コンデンサ素子を表面実装用の端子に導電ペーストで接続するときの陽極と陰極間の短絡発生を防止できる表面実装薄型コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、板状または箔状の拡面化した弁作用金属を陽極体とし、前記陽極体の両端部に陽極部が設けられ、前記陽極体の少なくとも中央領域の表面には酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、この誘電体上に導電性高分子、グラファイト、銀ペースト層を形成した陰極部が設けられたコンデンサ素子を用い、前記陽極部に接続され基板実装面に露出する陽極端子を配置し、前記陰極部に接続され基板実装面に露出する陰極端子を配置した表面実装薄型コンデンサにおいて、前記陽極端子は前記基板実装面に露出する板状の底部とこの底部に略垂直で前記コンデンサ素子の陽極部の先端面に対向する板状の立ち上がり部を有し前記陽極部とは少なくとも導電ペーストを用いて接続されたことを特徴とする表面実装薄型コンデンサが得られる。このように陽極端子をL字などの形状にすることで、導電ペーストが陰極部側にはみ出すことを防止する。
【0009】
また本発明によれば、前記コンデンサ素子を、前記陽極端子および陰極端子を有するインサートモールド樹脂ケース内に収納したことを特徴とする表面実装薄型コンデンサが得られる。このようなインサートモールド樹脂ケースを使用することで、表面実装を容易にする。
【0010】
さらに本発明によれば、前記コンデンサ素子、陽極端子および陰極端子の全体を外装する外装樹脂がモールド成型により形成されたことを特徴とする表面実装薄型コンデンサが得られる。このようにモールド成型により外装樹脂を形成することで、製造を容易にする。
【0011】
そして本発明によれば、複数のコンデンサ素子が積層され、少なくとも基板実装面に最も近く配置されたコンデンサ素子の陽極部の先端面には、前記陽極端子の前記立ち上がり部が対向していることを特徴とする表面実装薄型コンデンサが得られる。このように複数のコンデンサ素子を積層し静電容量の増加を図った場合にも、導電ペーストが陰極側にはみ出すことを防止する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、陽極端子の板状底部に板状の立ち上がり部を連接することで、導電ペーストによる陽極と陰極間の短絡を防止し、さらに漏れ電流不良を抑制可能な表面実装薄型コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による表面実装薄型コンデンサの構造図であり、図1(a)はその正断面図、図1(b)は端子接続構造を示す斜視図である。本実施の形態による表面実装薄型コンデンサは、長方形の平板状の固体電解コンデンサであり、すでに図2で示したものと同様に、3端子伝送線路素子タイプと呼ばれている。本実施の形態による表面実装薄型コンデンサは、導電性機能高分子膜を固体電解質としており、板状または箔状の弁作用を有する弁作用金属の表面をエッチング等による無数の空孔を形成して表面積を200倍等に大きくする拡面化を施し、この拡面化した弁作用金属の中央部の表面に、陽極酸化皮膜層を形成して、弁作用金属陽極体とする。ここで、弁作用金属としては、タンタル、アルミニウム、ニオブ等を用いることができる。次に、この陽極酸化膜が表面に形成された弁作用金属陽極体の陰極層形成部に、導電性機能高分子膜を形成し、さらにその周囲にグラファイト層、銀ペースト層の順に形成してコンデンサ素子を完成させる。
【0015】
次に、コンデンサ素子10の陽極部16に陽極導通片11を接続したのち、陽極導通片11および陰極部15を導電ペースト13によりインサートモールド樹脂ケース17の内側に露出する陽極端子12および陰極端子14の上面と接続し、さらにケース蓋18で覆い、表面実装薄型コンデンサを完成させる。尚、本実施の形態においては、導電性機能高分子膜には、ピロール、チオフェン等を用いることができ、陽極端子および陰極端子としては、銅、銅系合金、ニッケル合金などの板材を用いることができるが、電子部品端子材料からなる板材であるならば、これらに限定されるものではない。
【0016】
本実施の形態においては、図1に示すように、コンデンサ素子の陽極部16に陽極導通片11を接続し、コンデンサ素子10の両端の陽極先端面に対向する陽極端子12の立ち上がり部に導電ペースト13を塗布した後、陽極導通片11と陽極端子12を接続すると共に、ケース底部の陰極端子14に導電ペースト13を塗布した後、コンデンサ素子10の陰極部15と接続して、表面実装薄型コンデンサを完成させる。このようにL字形に陽極端子12を形成したことより、陽極接続用の導電ペースト13が陽極端子12の底部からはみ出してコンデンサ素子10の陰極部15に到達して短絡が発生することを防止できる。また、短絡防止だけでなく漏れ電流の増加防止にも効果がある。
【0017】
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2として、複数のコンデンサ素子を積層して、静電容量を高めた場合について説明する。まず複数のコンデンサ素子を陽極接続片を介してレーザ溶接などで電気的かつ機械的に接続し、コンデンサ素子積層体を作製する。以下実施の形態1と同様に、インサートモールド樹脂ケースを作製し、このケース内側に露出した陽極端子および陰極端子にコンデンサ素子積層体を導電ペーストで接続する。このとき、陽極端子は、基板実装面に露出する板状の底部とこの底部に略垂直で前記コンデンサ素子の陽極先端面の一方に対向する板状の立ち上がり部を有することは実施の形態1と同様であるが、その立ち上がり部は、少なくとも基板実装面に最も近く配置された1段目のコンデンサ素子の陽極先端面に対向する高さがあればよいが、2段目、3段目あるいはさらに上段に積層されたコンデンサ素子の陽極先端面に対向する高さに形成してもよい。いずれの場合も、1段目のコンデンサ素子に接続された陽極接続片の下部だけを介して導電ペーストで陽極端子に接続する場合に比べると、導電ペーストが1段目のコンデンサ素子の陰極部まで、はみ出すことによる短絡を大幅に低減できる。
【0018】
ところで、インサートモールド樹脂ケースの上部開口を覆うには、図1のケース蓋18のような形状であっても、インサートモールド樹脂ケースの上部開口だけでなく側壁部を覆う形状であってもよい。また、上記実施の形態では、インサートモールド樹脂ケース内にコンデンサ素子を収納する場合について説明したが、このような外装用ケースに代えて、絶縁性の外装樹脂で外装してもよい。
【0019】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、この実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、成しえるであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、導電ペーストによりコンデンサ素子と陽極および陰極端子が接続され、電子・電気部品のプリント配線基板等に表面実装される固体電解コンデンサに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1による表面実装薄型コンデンサの構造を示し、図1(a)はその正断面図、図1(b)は端子接続構造の斜視図。
【図2】従来技術による表面実装型コンデンサの構造を示す正断面図。
【符号の説明】
【0022】
10 コンデンサ素子
11 陽極導通片
12,22 陽極端子
13 導電ペースト
14 陰極端子
15 陰極部
16 陽極部
17 インサートモールド樹脂ケース
18 ケース蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状または箔状の拡面化した弁作用金属を陽極体とし、前記陽極体の両端部に陽極部が設けられ、前記陽極体の少なくとも中央領域の表面には酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、この誘電体上に導電性高分子、グラファイト、銀ペースト層を形成した陰極部が設けられたコンデンサ素子を用い、前記陽極部に接続され基板実装面に露出する陽極端子を配置し、前記陰極部に接続され基板実装面に露出する陰極端子を配置した表面実装薄型コンデンサにおいて、前記陽極端子は前記基板実装面に露出する板状の底部とこの底部に略垂直で前記コンデンサ素子の陽極部の先端面に対向する板状の立ち上がり部を有し前記陽極部とは少なくとも導電ペーストを用いて接続されたことを特徴とする表面実装薄型コンデンサ。
【請求項2】
前記コンデンサ素子を、前記陽極端子および陰極端子を有するインサートモールド樹脂ケース内に収納したことを特徴とする、請求項1記載の表面実装薄型コンデンサ。
【請求項3】
前記コンデンサ素子、陽極端子および陰極端子の全体を外装する外装樹脂がモールド成型により形成されたことを特徴とする、請求項1記載の表面実装薄型コンデンサ。
【請求項4】
複数のコンデンサ素子が積層され、少なくとも前記基板実装面に最も近く配置されたコンデンサ素子の陽極部の先端面には、前記陽極端子の前記立ち上がり部が対向していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面実装薄型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−117901(P2008−117901A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298992(P2006−298992)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)