表面汚染物質の迅速かつ高感度な遠隔検出のための方法、装置およびシステム
高いデータスループットと、高い空間解像度と、高度のポインティングの柔軟性とを有する素早くかつ高感度な遠隔型の表面の危険要素の検出のためのシステムおよび方法。システムは、第1のハンドヘルドユニットから離れた距離にある表面に励起ビームを導く第1のハンドヘルドユニットと、光ビームの結果として表面からの散乱放射を捕捉する光学的サブシステムとを備えている。第1のユニットは、一束の光ファイバを含むリンクを経由して、処理ユニットと呼ばれる第2のユニットに接続される。処理ユニットは、散乱放射をスペクトルデータに変換する、ファイバに結合された分光器と、危険な物質を検出および/または同定するために収集されたスペクトルデータを分析するプロセッサとを備えている。第2のユニットは、第1のユニットと第2のユニットとは共に、人間が携帯可能な検出アセンブリを形成するように、体に着用可能な筐体または装置の中に含まれ得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の権利)
本発明は、米国政府の契約第DAAD13−03−D−0018に基づいて行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2006年3月22日出願の米国仮特許出願第60/784,465号と、2007年3月20日出願の米国特許出願第11/688,434号とに対する優先権を主張するものであり、両出願の全体が本明細書において参考として援用される。
【0003】
本発明は、実用的な紫外線(UV)ラマン分光法と、実用的な化学物質の検出および同定とに関する。さらに詳細には、本発明は、表面に存在し得る危険な物質を遠隔的に検出するデバイス、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
化学物質の感知および検出の分野において、他の化学物質が、検出された物質と接触したり、検出された物質に影響を与えたりすることを防止するために、汚染された現場において物質を素早く検出し、その物質のタイプおよび位置に関する情報を報告することが望ましい。汚染された現場において物質を素早く検出し、その物質の種類および位置に関する情報を報告することは、対応活動を見積もり指示するために必要とされる情報を決定権者に提供することによって結果管理を改善する際の重要な要因でもある。
【0005】
分光技術は、物質を分析するために使用され、技術が、固相および液相で表面に堆積した物質の非破壊的なテストのために開発されてきた。かかる技術は、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)と、X線蛍光と、気体クロマトグラフィおよび質量分光測定法(GC−MS)と、赤外線ラマン分光法(IRラマン)とを含む。現在入手可能な表面の危険要素の検出器は、「ワンタッチ式(point−and−shoot)」のデバイスであり、該ワンタッチ式のデバイスにおいて、デバイスのオペレータは、非常に近い区域における特定の位置で感知プローブを保持し、検知器における充分な集積時間を提供する期間に、その特定の位置に留まり、または、GC−MSの場合においては、分析を行うために、充分な表面の化合物を気相で取り入れる期間に、その特定の位置に留まる。したがって、これらのデバイスは、オペレータが危険な可能性のある物質の非常に近くに接近し、単一の測定を獲得するために充分に長くその物質の近くに居続けることを必要とする。したがって、危険な可能性のある物質に対して広い範囲または広い領域を調査する作業は、非常に困難であり、プロセスの効率を最大化するために賢明なサンプリング計画を必要とする。表面に分散された汚染物質を探索することと関連付けられる最も困難な局面は、センサが探索中に暴露される様々な化学物質種にある。
【0006】
表面の汚染は、汚染物質の偶発的な散布または意図的な散布の結果であり得、したがって、表面の汚染は、まとまった状態の単一の化学物質もしくは複数の化学物質または広い範囲にわたって分散された単一の化学物質もしくは複数の化学物質からなり得る。薄い層、小さい液滴または小さい粒子から構成される汚染物質の永続性の斑点の場合、上で述べられた方法はどれも、適切な検出能力を提供しない。
【0007】
例えば、緊急対応用の市販のFTIRシステムは、単一のサンプル同定分析を実行するために20秒を必要とするが、サンプルは、表面から物理的に取り除かれ、センサに与えられることを必要とする。別の例は、緊急対応用の市販のIRラマンシステムであり、該緊急対応用の市販のIRラマンシステムは、15mmの最大距離と、一般的には1秒と5秒との間の測定時間とを必要としており、一部のサンプルに対しては20秒までの測定時間を伴う。
【0008】
UVラマン分光法は、多くの独特な特性を有しており、該多くの独特な特性は、表面に堆積された危険要素の迅速な遠隔検出および同定において有利に利用され得る。ラマン分光法に固有の高度な情報内容が、構造的に似た化学物質を区別する能力を低い誤報率で提供する。情報内容は、任意の分子と関連付けられる振動の自由度と関連付けられる。この多くの振動モード自体が、高く狭いラマンピークとして現われ、該高く狭いラマンピークが、スペクトルのフィンガープリントを所与のラマン活性物質に提供する。しかしながら、自発的なラマン散乱は、本質的にわずかな断面を有する。ラマンスペクトルの強度および質は、(1)励起光の波長、線の太さ、およびスペクトルの純度と、(2)励起光または散乱光が吸収される程度、放出される干渉蛍光の量、および干渉レーザ誘発の表面の物質の降伏放出の存在の可能性と、(3)励起下でのサンプルの熱安定性および光化学的安定性と、(4)同時に検査される数または化学物質(スペクトルの密集度)とに依存する。したがって、実際の用途における有用性を最大にするために、UVラマンセンサが、短い波長を利用し、より大きな散乱の断面と、自然な蛍光性の背景の減少(光退色は必要とされない)と、300nm未満の太陽光ブラインド領域(遠隔型のセンサにとって重要)と、一部の振動の遷移に対するラマン散乱の断面の共振の強化とをもたらす。さらに、300nm未満のUV光は、事実上、標準規格のプラスチックの遮光保護具または非晶質ガラスの遮光防護具を着用した職員に目の危険要素をもたらさない。
【0009】
より離れた距離から表面を安全に検査し得、かつ、関心のあるセンサの視野の調節において高度の柔軟性を伴って表面を検査し得る表面の危険要素の検出システムが必要とされる。この遠隔型の表面の危険要素の検出システムは、広い周囲の調査を可能にする高いデータスループットを提供するために、物質から反射される光学的放射を迅速に分析することも必要である。UVラマン分光法は、この高性能のセンサに基盤を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高いデータスループットと、高い空間的解像度と、高度のポインティングの柔軟性とを有する、素早くかつ高感度な表面の危険要素の検出のためのシステムおよび方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に従って、システムは、第1のユニットからある距離を離れている表面に励起ビームを方向づける第1のハンドヘルドユニットと、光ビームの結果として表面からの散乱放射を捕捉する光学的サブシステムとを備えている。第1のユニットは、一束の光ファイバを含むリンクを経由して、処理ユニットと呼ばれる第2のユニットに接続されている。処理ユニットは、散乱放射をスペクトルデータに変換する、ファイバに結合された分光器と、収集された信号を分析し、危険な物質を検出するプロセッサとを備えている。第2のユニットは、第1のユニットと第2のユニットとが共に人間が携帯可能な(man−portable)検出アセンブリを形成するように、体に着用可能な筐体または体に着用可能な装置の中に含まれ得る。調節可能な焦点収集オプティクスは、安全な距離、例えば、0.25mを超える距離からラマン散乱放射を収集する。検査される表面からの所望の焦点距離を達成することを補助するために、可視光点が表面に投影されることにより、最適な遠隔区域を示し、かつ、収集の視野の位置を示し得る。
【0012】
本発明のシステムは、UV伝送ファイババンドルを使用することにより、収集された散乱放射画像を分光器に効率的に結合する。丸いマルチファイババンドルが、望遠鏡の焦点面に配置され、バンドルの中のファイバは、分光器の入射スリットとして使用される単一の行を形成するように再配置される。光が回折格子によって空間に分散された後に、分光器は、入射スリットを画素化された検出器に画像化する。
【0013】
本発明のシステムおよび方法は、ラマン反射を検出するために分光器の出力に配置された画素化された(pixelated)光検出器を使用する。いくつかのラマン反射が、所与の測定フレームの信号対雑音比(SNR)を改善するために蓄積され得る。可変の数の反射が検出器に蓄積されることにより、単一の測定フレームを提供し、検出器の画素の各縦の列が値域ごとに分けられることにより、SNRをさらに改善する。検出器から抽出されたデジタル値の結果として生じるアレイは、物質の検出および同定を行なうために処理ユニットによって使用されるラマンサインを含む。センサの様々な動作モードに適応するために、各測定フレームにおいて蓄積されたラマン反射の数は、可変となる。例えば、迅速な調査の間、表面が素早く走査され、速いフレーム速度(すなわち、フレーム当たりのラマン反射の蓄積がより少ない)が、高い検出の可能性を維持するために重要となる。各フレームに対するSNRにおける関連の減少にもかかわらず、検出の可能性は改善される。なぜならば、各フレームは、短い総露出で構成され、走査中に遭遇する標的の化合物から高純度のラマンサイン(スペクトルの密集の少ない)を獲得することのより高い可能性を確実にする。短い露出フレームは、センサが、センサに提示される多種多様な表面の物質で作られる素早いシーケンスと協働することを可能にするものであり、該素早いシーケンスは、迅速な表面走査からもたらされる。対照的に、確認モードまたは同定モードの間、センサは、検査される表面を凝視するので、ラマンサインは、より高い純度を有する。なぜならば、より少ない種類がセンサに提示されるからである。そして、遅いフレーム速度(フレーム当たりでより多いラマン反射の蓄積)が、ラマンサインのSNRを改善することによって高い同定特性を提供するために重要となる。
【0014】
本発明のシステムおよび方法は、表面の継続的な走査を使用することにより、汚染区画を検出し得る。ワンタッチ式のセンサとは対照的に、本発明のこのセンサシステムは、迅速な表面走査を可能にし、該迅速な表面走査は、計画に従って、静止から毎秒数10cmまでの範囲にある。これは、センサが、実用的な遠隔区域(すなわち、1m)を維持しながら、10Hz〜25Hzの速度で良質のラマン測定フレームを出力し得るので可能となる。これらの速いフレーム速度を生成する能力が、「ラマンビデオ(Raman−video)」信号の形式でラマンデータを捕捉することを可能にする。先に考察されたように、いくつかの動作モードが可能となる。調査モードは、大きな周囲をスクリーニングする間に最大走査速度を提供するために使用される。調査モードと関連付けられる高いデータスループットが、調査および走査の計画を指示および最適化するためにリアルタイムの結果を使用する適応性のサンプリング技術と適応可能である。
【0015】
本発明の検出および同定システムは、システムレベルの性能を最大化するために分散型のアーキテクチャを利用する。人間が携帯可能な用途に対して、システムを様々なユニットに分離することが有利であり得る。1つのユニットは、ビーム配向、散乱収集およびスペクトル分析の縮小バージョンを機動的な構成に収容するバッテリ動作のバックパックまたはスーツケースユニットであり得る。基地局と呼ばれる第2のユニットは、収集されたスペクトルのより集約的な分析のための処理能力を含む。結果として、バッテリ動作のユニットは、よりコンピュータ集約的ではないスペクトル分析アルゴリズムを実行し得る小さい処理デバイスを所持することによってより軽くされ得る。
【0016】
さらに別の実施形態において、複数の表面走査センサが、広い範囲もしくは広い領域または建物における調査活動を見積るために配備され得る。センサの全てが、調査活動を調整し得る集中現場制御ユニットに検出イベントを報告する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、図1および図2を参照すると、本発明の実施形態に従った遠隔型の危険要素の検出システム10が記述されている。検出システム10は、ハンドヘルドユニット100と処理ユニット200とを備えている。ハンドヘルドユニット100は、本明細書においては、第1のユニットまたは「ワンド」ユニットもしくは「ワンド」デバイスとも呼ばれ、処理ユニット200は、本明細書においては、第2のユニットまたはデータ取得/処理ユニットとも呼ばれる。ハンドヘルドユニット100は、中央ライン300によって処理ユニット200に接続されている。本明細書において使用される場合、用語「遠隔」は、遠隔型の危険要素の検出および同定システムと関連して、検出装置と、検査され、かつ、危険な物質または汚染物質が存在し得る表面との間で0.25メートルを上回る距離または範囲を意味する。
【0018】
システム10は、高いデータスループットと、高い空間的解像度と、高度のポインティングの柔軟性とを有する、素早くかつ高感度な遠隔型の表面の危険要素の検出を達成する。この特徴的な動作モードが、新しい効率的な表面の汚染物質調査の計画を可能にする。既存の「ワンタッチ式」の技術とは対照的に、システム10は、図1に描かれているように、汚染された現場の単一の画素の「ラマンビデオ」場面を取得することを可能にする。
【0019】
ハンドヘルドユニット100は、ユーザの手で保持され、物質の組成を決定するために、表面における固相または液相の物質を分光技術を用いて分析するために、表面に光ビームを導くために使用される。物質は、危険な物質または汚染物質、例えば、地面、床、壁または他の物体上の化学物質、生物学的物質、または爆発性の物質であり得、物質は、まとまって存在したり、表面にわたってまばらに分散されたりし得る。したがって、以下でさらに詳細に記述されるように、システム10は、1人の人間または2人の人間のチームによる使用のために設計され得る。オペレータは、危険要素の保護具を着用していることがあり得る。概して、ハンドヘルドユニット100は、約0.5メートルから約3メートルの遠隔の距離において疑わしい表面を検査し、脅威に関するスペクトル関連のデータを処理ユニット200に戻すために使用され、該処理ユニット200は、一直線の視野方向におけるスペクトル関連のデータを分析し、危険な脅威が存在するか否かを決定し、脅威のタイプの通知を迅速に、例えば、100ms以下で出す。処理ユニット200は、さらに、システム10を有するユーザインタフェースの1つのタイプとして、ディスプレイデバイス、例えば、タッチスクリーンディスプレイまたは着用可能なヘッドアップディスプレイを備え得る。ディスプレイデバイスは、視覚的(および任意的に聴覚的)通知を、検出された危険な物質と関連付けられる詳細に関するテキストによる説明と共に提供し得る。ディスプレイスクリーンは、環境スーツを着用している人による使用に適切に適合可能であるタイプであり得る。
【0020】
システム10の要素が、図2のブロック図に関してさらに詳細に記述される。ハンドヘルドユニット100は、レーザ光源110と、可変焦点収集オプティクス120と、焦点インジケータ130と、警報器150と、コントローラ140とを備えている。レーザ光源110は、検査光ビームを放出し、収集オプティクス120が、反射された光エネルギーを捕捉し、そのエネルギーを中央ライン300によって処理ユニット200内の分光器210に導く。焦点インジケータ130は以下で記述される。
【0021】
ハンドヘルドユニット内のレーザ源110は、関心のある表面に方向づけられた検査する光ビームを生成する。収集オプティクス120は、関心のある表面から反射される光エネルギーを捕捉する。光ビームは、表面における液体および/または固体の物質の特性を分析するために有用である任意の適切なタイプの光であり得る。例えば、レーザ源110は、紫外(UV)スペクトルにおいて光のビームを生成し、例えば、Nd:YAGレーザまたはNd:YLFレーザを生成し得る。さらに、レーザ源110は、UV光を生成し得、該UV光は、実質的に単色である(単一の波長あるか、または狭い範囲の波長に限定される)。さらに、レーザ源110は、ラマン光を生成し得るので、反射される光エネルギーは、ラマン散乱された光エネルギーから成り、該ラマン散乱された光エネルギーは、分光技術を使用して分析される。
【0022】
ケーブル300は、光ファイババンドル310を備えることにより、ハンドヘルドデバイス100によって捕捉された光エネルギーを処理ユニット100に結合する。ケーブル300は、処理ユニット200からハンドヘルドデバイス100にコマンドを通信し、かつ、ハンドヘルドデバイス100から処理ユニット200に他のデータを通信するために使用される少なくとも1つの導電体320(さらに適切には、複数の導電体)も備えている。
【0023】
処理ユニット200は、様々な形態を呈し得る。図2は、処理ユニット200が、分光器210と、画素化された検出器として働く強調電荷結合素子カメラ(ICCD)220と、レーザおよび関連付けられる電子機器に対するコントローラ230と、アルゴリズムプロセッサ240と、データ取得および制御プロセッサ250と、(ディスプレイスクリーンを備えた)ユーザインタフェース260と、電源270とを備えているということを示す。当該分野においては公知であるように、分光器は、回折格子を備えることにより、散乱放射をICCD220上に分散させる。ICCD220は、分光器210の中に組み込まれ得る。電源270は、再充電を必要とする前に現場における比較的長い時間間隔の使用を可能にするために充分な量の電荷を格納することが可能である再充電可能なバッテリであり得る。あるいは、またはさらに、電源270は、標準規格の電力コンセントから電力を受け取ることが可能であり得る。アルゴリズムプロセッサ240は、メモリを含むコンピュータであり得、該メモリに、1つ以上のプログラムが格納され、該1つ以上のプログラムは、コンピュータに様々な分光分析アルゴリズムおよび制御手順を行わせる。プロセッサ240は、スペクトルデータが、既知の物質のスペクトルデータであるか、または未知の物質のスペクトルデータであるかを決定するために、スペクトルデータを複数の既知の物質のスペクトルデータと比較し得る。警報デバイス280も存在し、該警報デバイス280は、警報トリガ信号によって作動されたときに、可聴警報通知および/または視覚的警報通知を生成する。警報デバイス280は、ユーザインタフェース260に組み込まれ得る。
【0024】
処理ユニット200に配置されるデータ取得および制御プロセッサ250は、システム全体の制御を提供し、該システム全体の制御は、ユーザインタフェース260による入力および出力の管理、ならびにハンドヘルドデバイス100への制御信号およびハンドヘルドデバイス100からの制御信号の管理を含む。アルゴリズムプロセッサ240は、分光器210の出力を分析するアルゴリズムを実行することにより、反射される光エネルギー(例えば、ラマンスペクトル)が、危険な物質とUVレーザ光との相互作用からもたらされたか否かを決定する。アルゴリズムプロセッサ240は、メモリを備え、該メモリは、サインのデータベースまたはライブラリを格納しており、該サインは、アルゴリズムプロセッサ240がラマンスペクトルデータに関して行う分光分析において使用される。
【0025】
走査される表面に方向づけられる光ビームは、UV光の離散パルスを備えることにより、表面サンプルからラマン信号を作り出し得る。別の実施形態において、レーザ源110は、持続波(CW)UV光源であり得る。ラマン信号の強度は、励起ビームの特性を調整することによって最大化され得る。光源110の光生成部をハンドヘルドユニット100内に配置することが、伝送される励起ビームを適切な形状にすることを可能にし、かつ、送達されるエネルギーの量を最大化することを可能にする。しかしながら、ハンドヘルドユニット100内の光源110は、レーザによってポンピングされる最後のUV変換段階であり得、該レーザは、実質的には、処理ユニット200内にあり、中央ケーブル300内の光ファイバを介してUV変換段階に結合されている。
【0026】
高品質のUV励起ビームは重要である。なぜならば、高品質のUV励起ビームは、検査される表面に励起ビームを密に収束することを可能にするからである。システムの遠隔範囲全体にわたる密なレーザ焦点(例えば、直径が1ミリメートル未満)が、いくつかの理由で有用となる。第1に、励起点の直径が、収集オプティクスの画像化対象となる。ハンドヘルド100内の収集オプティクス120は、できる限り多くの放射を収集するために高開口数を使用するので、小さいサイズの励起点は、その画像を光学的受信器チェーンの残りに効率的に結合することを可能にする。励起点を小さい直径に抑える第2の理由は、同時に検査される化学物質種の合計数を制限する要求である。収集される全ラマンサインが、励起される各化学物質と関連付けられる個々のラマンサインの重ね合わせからもたらされる。大きな励起点は、多数のラマンサインを提供し得る。なぜならば、より多くの化学物質種に遭遇する可能性が高く、あまり明確ではない全ラマンサイン(よりスペクトルを密集させられた全ラマンサイン)をもたらすからである。密に収束したビームを使用して、一度に単一の化学物質種を検査することによって、高純度のラマンサインが生成され得る。励起点を小さい直径に抑える第3の理由は、生成される各ラマンサインと関連付けられる信号の量にある。小さい励起点は、標的が小滴または粒子である場合に、関心のある標的への利用可能な励起光子の大部分の効率的な送達を提供する。これは、標的の化学物質のラマンサインが全ラマンサインを特色付けることと、センサのノイズフロアを上回る全ラマンサインを測ることとを可能にし、その結果として、センサの検出の限度を改善する。最後に、励起点を小さい直径に抑える別の理由は、汚染物質の正確な地形位置を提供することである。なぜならば、検出イベントと検査ビームの位置との間の直接的な相関関係が作り上げられ得るからである。要するに、この小さな検査点は、以下で記述される「ラマンビデオ」センサの概念の基礎となる「単一画素」のラマンサインの概念を構成する。
【0027】
可変焦点収集オプティクス120は、安全な距離、すなわち、「遠隔」距離からラマン散乱放射を収集することを可能にする。遠隔距離の調節は、必要とされているわけではないが、測定プロセスが、この調節可能性を提供することによって向上される。なぜならば、センサは、所与の遠隔区域に対して限定された被写界深度を有するからである。焦点距離を調節する1つの方法は、可変焦点収集オプティクス120を形成する光学素子間の分離距離を調節することである。焦点距離を調節する別の方法は、最遠位の望遠鏡光学素子と、オプティクスを分光計210に結合するファイババンドル310の入力との間の分離を調節することである。全ての場合において、単一のコンポーネントだけが、センサの遠隔区域を調節するために移動させられることを必要とする。光学素子は、手動で作動されるメカニズムを使用したり、電動化されたメカニズムを使用したり、ハイブリッドメカニズムを使用したりして、必要に応じてオペレータによって移動させられ得る。一実施形態において、0.5mから3mまでの焦点の調節可能性が、一次ミラーを移動させることによって提供される。別の実施形態において、収集オプティクスは、機械的設計を単純にするために1mで固定の焦点を有する。可変焦点収集オプティクス120の例は、図4A〜図4Dに関して、以下でさらに詳細に記述される。さらに、自動焦点システムが、以下でさらに詳細に記述される焦点インジケータ130から獲得される認識に基づいて、収集オプティクス120における光学素子のうちの1つを自動的に動かすために利用され得る。
【0028】
焦点インジケータ130は、検査される表面に投影される可視光点を生成することにより、最適な遠隔区域を示し、かつ、収集の視野の位置を示す。収集オプティクス120が所望の焦点距離に調節されると、この可視点は、標的指示子として働き、かつ、正しい遠隔距離を維持するインジケータとして働く。この特徴は、ハンドヘルドユニット100と関連付けられるポインティングの柔軟性を加え、かつ、効率的な表面の走査を可能にする。これを達成する1つの方法は、2つのレーザダイオードポインタを最適な遠隔距離で交差させることによるものである。2つ以上の投影された点の間の間隔を最小に維持することが、収集オプティクスの適切な焦点を確実にする。望遠鏡オプティクスを介してダイオードレーザを向けることが、望遠鏡の焦点距離の全ての調節のための遠隔区域の正確な示度を可能にする。あるいは、可視光を結合されたファイバが使用され得る。ファイバの出力が、望遠鏡を介して投影されることにより、収集の視野を検査表面に画像化し得る。この場合、ダイクロイックミラーが、可視指示器チャンネルからUVラマン受信チャンネルを分離するために使用される。焦点インジケータ130の例は、図4A〜図4Dに関して以下で記述される。ここでもやはり、上に述べられたように、自動焦点システムが、可変収集オプティクス120を自動的に調節するために焦点インジケータ130によって投影された光点に基づいて表面までの距離を解釈するために利用され得る。
【0029】
図3に関して以下で記述される、本発明の別の実施形態に従って、分散型のアーキテクチャがシステムレベルの性能を最大化するために利用される。図2に示された実施形態は、処理ユニット200内に、人間が携帯可能な用途のために、単一のパッケージで主要な機能のうちのいくつか(すなわち、調査モードおよび同定モード)を配置しているが、複数のユニットにわたって処理機能をさらに分離することが有利になり得る。例えば、バッテリ動作のバックパックユニットまたはスーツケースユニットが、機動的な構成における散乱サインの収集を可能にするために、センサコンポーネント(ハンドヘルドユニット100および処理ユニット200)の縮小バージョンを収容するために提供され得る。基地局または静止ユニットも提供され、該基地局または該静止ユニットは、ドッキング機能を提供し、基地局によって電力を供給されながら、バッテリ動作のユニットが充電され、電源を入れられ、そして定常状態にされることを可能にする。基地局は、較正機器および追加の処理ユニットも収容し得、該処理ユニットは、第1のユニットの性能よりも高性能である。この場合、バッテリ動作のユニットは、より小さいプロセッサを所持することによってより軽くされ得、該より小さいプロセッサは、よりコンピュータ集約的ではない分光分析アルゴリズムを使用して忠実度のあまり高くない調査モードを提供する。この搭載の能力は、より多くの誤報を提供するが、不良環境にある間、調査モードを可能にし、ユーザに常在(always−present)能力を与える。バッテリ動作のユニットは、並行して、ラマンフレームを基地局に伝達し、該基地局が、危険要素をより正確に同定する同定モードと関連付けられるよりコンピュータ集約的な(より忠実度の高い)アルゴリズムを実行する。
【0030】
本発明のこの実施形態に従って、危険であると疑わしい物質の遠隔検査のための器具が、人間が携帯可能なアセンブリまたは着用可能なアセンブリ600内に構成され得、該人間が携帯可能なアセンブリまたは着用可能なアセンブリ600は、ハンドヘルドユニット700と体に着用可能なユニット800とを備えている。この構成が、図3のブロック図を参照して記述される。ハンドヘルドユニット700は、図2に示され、かつ、上に記述されたコンポーネントと同様な、レーザ710と、収集(望遠鏡)オプティクス720と、コントローラ730と、警報デバイス740とを備えている。中央ケーブルは、光ファイババンドル910と、図2に示されたケーブル300と同様な導電体バンドル920とを備えている。着用可能なユニット800は、中央ケーブル900を経由してハンドヘルドユニット700に接続され、分光器810と、ICCD815と、制御およびデータ取得プロセッサ820と、ディスプレイ830と、電源840(例えば、バッテリパック)と、アンテナ805を経由した基地局1000(i)とのワイヤレス通信をサポートする無線周波数(RF)ワイヤレス送受信器/モデム850と、警報デバイス860とを備えている。電源840は、着用可能なユニット800内のコンポーネントと、ハンドヘルドユニット700内のコンポーネントとに電力を供給する。ディスプレイ830は、オペレータによって視認可能なスナップオン方式のディスプレイシステムまたはフリップダウン方式(flip−down)のディスプレイメカニズムであり得るか、またはバイザー上で見ることができるディスプレイ、例えば、ヘッドアップディスプレイであり得る。ディスプレイ830は、危険な物質の検出に関してユーザに情報を表示するために使用され得る。多くの点で、着用可能なユニット800は、第1の実施形態における処理ユニット100と同様であり、ハンドヘルドユニット700は、第1の実施形態におけるハンドヘルドユニット200と同様である。
【0031】
人間が携帯可能なアセンブリ600は、1つ以上の基地局1000(1)〜基地局1000(N)と通信し得る。基地局は、アンテナ1005と、RFワイヤレス送受信器/モデム1010と、分析プロセッサ1020と、基地局のオペレータに対するディスプレイ1030と、設備の電源1040とを備えている。例として、基地局1000(i)は、車両に設置されたり、車両において使用されたりし、車両の電源システムによって駆動され得る。あるいは、基地局は、固定の位置にあり得る。さらに、基地局1000(i)は、基地局1000(i)が着用可能な装置に含まれ得るか、または適切なワイヤレス通信能力を装備されたラップトップコンピュータとして体現され得るという意味で、1人で携帯可能であり得る。基地局1000(i)は、さらに、その中に、人間が携帯可能なアセンブリ600に含まれるものと同様な警報デバイスを備えたり、組み込んだりし得る。基地局1000(i)は、ドッキングポートまたはドッキングユニット1050を有し得、該ドッキングポートまたはドッキングユニット1050は、適切な接続ケーブルによって人間が携帯可能なアセンブリ600に接続することが可能であることにより、基地局の設備の電源1040を介して電源840を充電し、アセンブリ600を作動し、そして、アセンブリ600を定常状態にもたらす。上で述べられたように、プロセッサ1020はまた、着用可能なユニット800内の分光器810を較正するために、人間が携帯可能なアセンブリ600内の関連のコンポーネントと相互作用する。ドッキングユニット1050は、バッテリ充電器を含み得、該バッテリ充電器は、着用可能なユニット800がドッキングされたときには、電源840を充電する。
【0032】
基地局1000(i)と人間が携帯可能なアセンブリ600との間に、いくつかの起こり得る動作シナリオがある。1つのシナリオにおいて、着用可能なユニット800内のプロセッサ820は、分光器810の出力をデジタルスペクトルデータ信号に変換し、任意的に、スペクトルデータを圧縮し、そして、RF送受信器を経由してこのスペクトルデータを1つ以上の基地局1000(1)〜基地局1000(N)に伝送する。基地局1000(i)内の分析プロセッサ1020は、着用可能なユニット800からスペクトルデータを受信し、スペクトルデータの分析を行うことにより、危険な物質の検出および同定を行い、そして、演算の結果をディスプレイ1030に表示する。分析を行った後、基地局1000(i)は、着用可能なユニット800に信号を伝送し戻し得、該着用可能なユニット800が、検出された物質の特性/正体を示す。例えば、危険な物質が検出された場合には、伝送された信号が、着用可能なユニット800および/またはハンドヘルドユニット700に可聴警報および/または視覚的警報を発するので、ユーザはさらに継続する際に適切な予防措置を取ったり、直ちにその範囲を去ったりする。
【0033】
任意的に、着用可能なユニット800内のプロセッサ820は、信頼性があまり高くない可能性があるが、危険な物質の検出のリアルタイムまたはほぼリアルタイムでユーザに警報を発するように、分光器810によって生成されるスペクトルデータのより素早いが忠実度のより低い分析を行い得る。これが、所謂、上で述べられた調査モードである。着用可能なユニット800はまた、スペクトルデータを基地局1000(i)に伝送し、該基地局1000(i)は、忠実度がより高く、信頼度がより高い分析を行うが、該忠実度がより高く、信頼度がより高い分析は、いくらかの追加的な時間を必要とする。これが、所謂、上で述べられた同定モードであり、同定モードは、より完全なサインのライブラリを使用する。この処理の割り当てスキームが、図7および図8を参照してさらに詳細に下で述べられるように、より高度な調査を可能にする。
【0034】
図3の構成によって描かれているようなデータ収集から検出処理を分離する1つの利点は、収集されたデータが複数の基地局に(同時にまたは逐次的に)伝送され得、各基地局が自身の分析を行い、そして、危険な物質を検出した人間が携帯可能なアセンブリ600によって警報を発せられ得るということである。複数の人間が携帯可能なアセンブリが配備された場合には、各アセンブリは、基地局にデータを伝送するときに使用される独自の識別子を有するので、基地局は人間が携帯可能なアセンブリを区別し得る。したがって、危険な物質に関する情報は、迅速かつ広範に配信され得る。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態において、一組の表面を走査する人間が携帯可能なアセンブリ600が、広い周囲または建物での調査活動を見積もるために提供される。この場合、全ての人間が携帯可能なアセンブリ600が、検出イベントを集中型現場制御ユニットに報告し、該集中型現場制御ユニットが、調査活動を調整し得る。現場レベルにおける適応性サンプリングが、マルチセンサ構成を用いて可能となる。このために、1つ以上の基地局1000(1)〜基地局1000(N)が、さらに遠くに配置される主現場制御ユニット1100に連結され得、該主現場制御ユニット1100は、いくつかの基地局/人間が携帯可能なアセンブリを調節する。現場制御ユニット1100は、イーサネット(登録商標)ハブ(E−Netハブ)1110などのネットワークインタフェースと、ステータスコンピュータ1120と、ディスプレイ1130と、電源1140とを含み得る。基地局1000(1)〜基地局1000(N)のそれぞれはまた、ネットワーク1200による設備通信に対するイーサネット(登録商標)インタフェースコンポーネントを有する。現場制御ユニット1100は、例えば、危険な物質の実際の検出または起こり得る検出に関する作業を調整することに責任のある現場の指揮官によって動作され得る。
【0036】
図4A〜図4Dを参照すると、ハンドヘルドユニット100の実施形態が、さらに詳細に記述されている。図4Aに示された一実施形態において、ハンドヘルドユニット100は、主筐体102とハンドグリップ部104とを備え得る。筐体は、収集オプティクス120を含み、レーザ110に対する支持としても働く。レーザ110は、筐体102の底部に設置される。折りたたみ鏡112と焦点調節光学素子114とが、レーザビームを収集オプティクス120のボアサイトと同一直線状に放出させる。レーザ電力計116が存在し、該レーザ電力計116は、折りたたみ鏡112のうちの1つによるレーザ光のわずかな部分を受け取ることにより、伝送されるレーザビームのモニタリングを可能にする。折りたたみ鏡112は、レーザビームの光路を調節するために傾けたり、傾斜させたりし得る。筐体102は、前窓108を有し、該前窓108は、レーザ110および収集オプティクス(望遠鏡)120と関連付けられる光学素子を支持するような大きさにされており、それにより、用いなければラマン後方散乱の検出と干渉するスパイダ支持の必要性を排除する。収集オプティクス120は、一次ミラー122と二次ミラー124とを備えている。この実施形態において、一次ミラー122は固定され、二次ミラー124は、デバイスの光軸またはボアサイトに沿って動くことができる。二次ミラー124はまた、望遠鏡120によって反射される光エネルギーの光路を調節するために傾け、かつ、傾斜させられ得る。収集オプティクス120は、任意の反射された後方散乱(例えば、UVラマン)放射を、ハンドヘルドユニット100に接続された光ファイババンドル310の中に収束させ、次に、該ハンドヘルドユニット100は、反射された散乱放射を処理ユニット200内に含まれる分光器210(図2)に配信する。
【0037】
図4Bに示されたハンドヘルドユニット100の別の実施形態において、筐体102の基部に接続された、関節のあるアーム接続118が存在し、該関節のあるアーム接続は、レーザビームの光軸を傾け、かつ、傾斜させ得る。これは、レーザ源がハンドヘルドユニット100内に配置される代わりに、処理ユニット200内に配置されることを可能にする。光ファイバ311が存在し、該光ファイバ311は、処理ユニット200内のUV源からのレーザビームをハンドヘルドユニット100内の焦点調節光学素子114に供給する。図4Bに示されたハンドヘルドユニット100の他のコンポーネントは、図4Aに示されたコンポーネントと同じ構成を有する。
【0038】
図4Cに示されたハンドヘルドユニット100のさらに別の実施形態において、送受信器構成が使用される。この場合、UV励起光が、受信された散乱放射と同じ光路を使用して、収集オプティクス120によって伝送される。UVレーザビームが、光ファイバ311によって焦点調節光学素子114に結合される。図4Bの実施形態のように、UVレーザ源は、処理ユニット200内にある。収集オプティクス120は、一次ミラー122と、二次ミラー124と、UVラマンエッジフィルタ128と、ミラー131と、焦点調節光学素子133とを備えている。この実施形態において、一次ミラー122は可動であり、二次ミラー124は固定されている。UVラマンエッジフィルタ128は、伝送されたUV励起ビームを、反射された散乱放射から分離する。図4Cはまた、焦点インジケータ130を例示し、該焦点インジケータ130は、少なくとも2つの標的指示子レーザダイオード117を備えており、該少なくとも2つの標的指示子レーザダイオード117は、筐体102の側面で互いから離され、それぞれのビームをレンズを通ってダイクロイックミラー126に向けるように内側に向けられており、該ダイクロイックミラー126は、適切な焦点距離または所望の焦点距離を達成するのを補助する目的で、ダイオードからハンドヘルドユニット100のボアサイトの中に反射し、そして窓108を出て表面に反射する。図4Cはまた、ハンドヘルドユニットがユーザの手の中にないときにハンドヘルドユニット100を停止する「デッドマン(dead man)」スイッチ152をグリップまたはハンドル104上に示す。
【0039】
図4Dは、さらに別の実施形態に従ったハンドヘルドユニット100の側面図を示す。筐体102の反対側に、先の実施形態のように、ユーザが検査される表面から適切な焦点距離でハンドヘルドユニット100を手で維持することを補助するために、2つの焦点調節ダイオード117が配置されている。ダイオード117は、互いに対して内側に向かって角度を付けられているので、ダイオード117が放出するビームは、表面において収集オプティクス120の焦点で交差し、すなわち、ハンドヘルドユニット100から所定の距離、例えば、約1メートルで交差する。交差箇所は、収集オプティクス120の最適な焦点距離と対応する。大きな焦点調節ノブ119が筐体のバレルの側面にある。これらのノブを回すことによって、一次ミラー122(図4Cの実施形態に対して)または二次ミラー(図4Bの実施形態に対して)のいずれかが、デバイスの光軸に沿って移動させられ、遠隔の焦点距離が、それに応じて修正される。ハンドヘルドユニット100の背部に配置された2つのスイッチ156および158が存在する。ハンドヘルドユニット100を操作可能にするために、これらの3つのスイッチが順番に作動される。特に、処理ユニット200におけるソフトウェアの動作が、システムを使用可能にした後、ハンドル104上のデッドマンスイッチ152が、最初に加圧されることにより、動作回路を閉じる。次に、ハンドヘルドユニット100の背部のスイッチ156が作動されることにより、焦点調節ダイオード117を起動する。最後に、スイッチ158が作動されることにより、レーザ110を起動したり、レーザ光が放出されることを可能にするデバイス100上の物理的シャッタを開いたりする。ユニット100の背部の1つ以上の光(例えば、LED)154が、ユニットが起動中であり、操作可能であるか否かを示すために提供され得る。
【0040】
上に記述されたように、UV伝送ファイババンドル310は、反射される光エネルギーを分光器210に効率的に結合する。ファイババンドル310は、丸いマルチファイババンドルを備え、該丸いマルチファイババンドルは、収集オプティクス120の焦点面に配置され、バンドルの他端において、個々のファイバが、分光器210の入射スリットとして使用される単一の行を形成するように再配置される。光が分光器210の回折格子によって空間的に分散された後、分光器210は、ICCDカメラ220の画素化された光検出器に入射スリットを画像化する。
【0041】
分光器210の出力に配置されたICCDカメラ220の画素化された光検出器は、ラマン反射エネルギーを検出する。いくつかのラマン反射が、所与の測定フレームの信号対雑音比(SNR)を改善するために蓄積され得る。選択された数の反射が、単一の測定フレームを提供するために、ICCDカメラ220または他の画素化された検出器デバイスに蓄積されると、画素の各縦の列が、値域毎にまとめられることにより、さらにSNRを改善する。ICCDカメラ220から抽出されたデジタル値の結果として生じるアレイは、処理ユニット200によって使用されるラマンサインを含むことにより、化学物質の検出および同定を行う。したがって、画素化された検出器(例えば、ICCD220)は、表面からの散乱放射の複数の反射うちの1つまたは蓄積物に基づいて測定フレームを生成する。
【0042】
センサシステム10の様々な動作モードに適応するために、各測定フレームに蓄積されたラマン反射の数は、可変である。例えば、迅速な調査モードの間、表面が素早く走査され、速い測定速度(すなわち、フレーム当たりでより少ないラマン反射の蓄積)が、検出の高い可能性を維持するために重要となる。各フレームに対するSNRにおける関連の減少にもかかわらず、検出の可能性は改善される。なぜならば、各フレームは、短い総露出で構成され、走査中に遭遇する標的の化合物から高純度のラマンサイン(スペクトルの密集の少ない)を捕捉することのより高い可能性を確実にする。短い露出フレームは、センサシステムが、迅速な表面走査からもたらされる、センサに提示される多種多様な表面の組成物の素早いシーケンス(quick sequence)と協働することを可能にする。対照的に、確認実行モード(同定モードとも呼ばれる)の間、センサは、検査される表面を凝視し(すなわち、より少ない種類がセンサに提示されるので、ラマンサインがより高い純度を有する)、遅いフレーム速度(すなわち、フレーム当たりでより多いラマン反射の蓄積)が、ラマンサインのSNRを改善することによって高い同定特性を提供するために重要となる。確認実行モードの間、検出器の飽和が生じ得る。この場合、オートゲイン特徴が、飽和前に蓄積を停止することによって各フレームに提供され得る。
【0043】
システム10は、表面を継続的に走査することにより、汚染区画を検出し得る。ワンタッチ式のセンサとは対照的に、本発明のこのシステム10は、迅速な表面走査を可能にし、該迅速な表面走査は、計画に従って、静止から毎秒数10cmまでの範囲にある。これは、システム10が、実用的な遠隔区域または実用的な遠隔距離(すなわち、1m)を維持しながら、調査モードにおいて10Hz〜25Hzの速度で良質のラマンフレームを生成し得るので可能となる。より高いフレーム速度が可能であるが、最終的には、SNRにおける関連した減少が、実際のフレーム速度を制限する。これらの高いフレーム速度を生成する能力もまた、上で記述された「ラマンビデオ」センサの概念の基礎となっている。走査速度のカバレッジに関して、本発明のシステムは、毎秒数10センチメートルまでの速度で表面を走査し得る。調査モードと関連付けられるより高いデータスループットは、適応性のサンプリング技術と適応可能であり、該適応性のサンプリング技術は、リアルタイムの結果を使用することにより、調査計画を指示および最適化する。この場合、誤報の可能性の増加を代償として(より忠実度の低い分析モードにおいて)センサの検出の可能性を増加させることが望ましくなり得る。この忠実度の低いモードにおいて、誤報は、あまり残念な結果を有さない。なぜならば、誤報は、ユーザに同定モードに切り替えることを促すことによって、よりしっかりとした精密な検査をもたらすからである。同定モードは、誤報の可能性をより低くするが、ユーザが走査を停止し、疑わしい範囲を凝視することを必要とする。この誤報の可能性を低くすることが、2つの要素の同時発生によって可能にされ、該2つの要素は、(1)先に考察されたように、凝視とより低いフレーム速度とが高いSNRを有する高純度のラマンサインをもたらし、凝視とより低いフレーム速度とが正しい同定を行うアルゴリズムの能力を改善することと、(2)同定モードと関連付けられるより低いフレーム速度が、処理ユニット200がよりコンピュータ集約的かつ高度なアルゴリズムを使用することを可能にし、より大規模なラマンスペクトルライブラリがポジティブマッチ(positive match)になることを可能にすることとである。
【0044】
図5は、1mの遠隔区域から25Hzの反復速度で取られた単一の「フレーム」のラマンデータの例を示す。この図は、上に記述された「ラマンビデオ」の概念を可能にする目的でセンサ構成によって達成されたデータの質を例示する。図5はまた、システム10が継続的かつ中断されないように、高いデータスループットで物質を検出および同定するように動作され得るということを例示する。
【0045】
図6は、カートの形式で処理ユニット200を示し、該カートは、筐体202と、筐体202に取り付けられた1つ以上の車輪205と、人が処理ユニット200を動かすことを可能にするハンドル207とを備えている。筐体202は、さらに、脚208を備え、該脚208は、処理ユニット200を安定して維持するために使用される。筐体202は、さらに、使用しないときにハンドヘルドユニット100を格納するレセプタクル209を備えている。システムが使用中でないときにケーブル300を周りに巻いたり、システムが使用中のときにケーブル300の余分なたわみを巻き取ったりするブラケット212がある。
【0046】
図6を参照すると、システム10の一実施形態の動作が記述されている。システム10は、1人または2人で使用され得る。2人の配備は、処理ユニット200を担当する第1の人と、ハンドヘルドユニット100を使用する第2の人とを含む。ハンドヘルドユニット100を操作する人は、検査される固体または液体の物質410が存在する表面400に接近する。この人は、ハンドヘルドユニット100を表面400の上に動かし、ハンドヘルドユニット100を表面400に向けて動かしたり、表面400から離れるように動かしたりすることによって焦点を合わせるようにダイオード117によって放出されたビームを使用するので、ダイオード117からのビームは、表面400において、収集オプティクス120の焦点部分と交差したり、ほぼ交差したりする。約1メートルの焦点距離を使用することによって、70%の収集に対する、結果として生じる収集望遠鏡の被写界深度は、焦点のいずれかの方向において約2インチであるので、ハンドヘルドユニット100内のレーザからの検査光ビームは、容易に焦点を外れることなく横切って動かされ(走査され)得る。ユーザが表面400の焦点にハンドヘルドユニット100を配置した後、レーザが作動され、反射された光エネルギーがハンドヘルドユニット100によって収集され、中央ケーブル300内の光ファイババンドルによって処理ユニット200に結合される。処理ユニット200は、反射された光エネルギーを分析し、検出された物質の特質を記述する表示データを生成する。さらに、処理ユニット200は、トリガ信号を生成し得、該トリガ信号は、検出された物質が危険なタイプのものであるときには、ユーザに対する可聴警報通知および/または視覚的警報通知を作動させるために、処理ユニット200とハンドヘルドユニット100とのうちの1つまたは両方における警報デバイスに結合される。これは、さらなる調査を行うときに、ユーザに充分な注意を働かせるように、および/またはその範囲を直ちに去るように警報を発する。検出された物質と関連付けられる危険の程度に従って、処理ユニット200によって生成される様々な警報のレベルが存在し得る。
【0047】
図6に示された構成に対する代替案として、ハンドヘルドユニット100は、図4Bに示されているような機械的アームデバイス500の遠位端に取り付けられ得る。アームデバイス118は、近位端と遠位端とを備え、第1のユニットと第2のユニットとの間に光の自由空間光結合(free−space optical coupling)を組み込み得る。アームデバイス118の近位端は、図6に示された形式で処理ユニット200の上部に取り付けられ、ハンドヘルドユニット100は、アームデバイス118の遠位端に取り付けられる。機械的アームデバイス500は、処理ユニット200から遠隔的に制御されることにより、ハンドヘルドユニット100を所望の表面に向けて導くことにより、その表面を検査する。
【0048】
図7を参照すると、ここで、動作が、図3に関して上で記述された人間が携帯可能なアセンブリ600と基地局1000とに関して記述される。体に着用可能なユニット800は、着用可能な装置または筐体、例えば、バックパックの中に含まれる。あるいは、着用可能な装置800は、他の形式、例えば、頭に着用可能、腕に着用可能、腰に着用可能(ウエストパック)などを取り得る。中央ケーブル900は、ハンドヘルドユニット700を着用可能ユニット800に接続する。人間が携帯可能なアセンブリ600は、一部の処理能力を有し、リンク、例えば、ワイヤレスリンクを経由して遠くの基地局1000と通信し、該基地局1000においては、より大規模な処理が行われ得る。概して、ユーザが着用しなければならない器具の重さおよび大きさを削減するために、体に着用可能なユニット800は、反射される光エネルギーを処理する分光器と、一部の処理能力とを含み得るが、完全なデータ処理は、遠くの基地局1000において行われる。着用可能なユニット800は、軽くなるように設計され、例えば、20kg(45lbs)未満になるように設計され得る。
【0049】
図8は、図7に示されたシステムが使用され得る計画のタイプの例を例示する。危険または汚染の可能性が、その場所(屋内または屋外)に存在することを決定される。応答者が人間が携帯可能なアセンブリ600を着用し、1つ以上の基地局1000(1)〜基地局1000(N)が、危険地帯と疑わしい場所、例えば、汚染された建物の外または異なる階から安全な距離に配置される。防護具および人間が携帯可能なアセンブリ600を着用し得る応答者個人が、危険要素に汚染されたと疑われる現場に行く。それぞれが人間が携帯可能なアセンブリ600を配備された複数の人が存在し得る。各人間が携帯可能なアセンブリ600は、基地局1000(1)〜基地局1000(N)のうちの1つ以上と通信する。ハンドヘルドユニット700は、疑わしい表面または疑わしい物体と接触することなく少なくとも約1mの遠隔において疑わしい表面を検査するために使用される。人間が携帯可能なアセンブリ600は、検査された表面に関するスペクトルデータを処理のために基地局に伝送する。基地局1000(i)(または人間が携帯可能なアセンブリ600)が、表面の汚染物質を検出した場合には、物質が同定され、基地局は、比較的に短時間(例えば、数秒未満)で、比較的高度の信頼性を伴って人間が携帯可能なアセンブリ600に信号を伝送し得る。応答者は、検出された危険な物質をマッピングすることに進み、視野の高い柔軟性を利用する。図7および図8に描かれた調整された危険要素の検出および同定システムは、中央(現場)制御局が関心のある領域における表面の検出掃引を調節することを可能にする。
【0050】
図8はまた、図形要素線を示すことにより、現場のどこを検出器が既に物質のために走査したかを示す。例えば、水平面1200(例えば、地面)において、図形要素線1210は、検出器が表面1200上でどこを既に走査したかを示す。危険な物質の検出区画が、参照番号1220で示されている。同様に、垂直面1300(例えば、壁)において、図形要素線1310は、垂直面1300のどこを検出器が既に走査したかを示すように描かれている。
【0051】
遠隔検出技術を配備することが有用であり得る別の物理的プラットフォームが、有人の地上車両または無人の可動地上車両である。人間が携帯可能なアセンブリ600の特徴および機能がいずれかのタイプの車両に組み込まれたり、設置されたりし得る。無人の可動地上車両に技術を配備する利点は、車両が、車両または遠くの基地局による分析のためにスペクトルデータを捕捉し得るので、人は、危険な物質の可能性のある近くに来ることを必要としないということである。
【0052】
本明細書において記述されたシステムおよび方法は、その精神または本質的な特性を逸脱することなく、他の特定の形式で体現され得る。したがって、上記の実施形態は、あらゆる点において例示と考えられるべきであり、限定を意味すると考えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムのブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムのブロック図である。
【図4A】図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、本発明の複数の実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの一部を形成するハンドヘルドデバイスのいくつかの構成を例示する。
【図4B】図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、本発明の複数の実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの一部を形成するハンドヘルドデバイスのいくつかの構成を例示する。
【図4C】図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、本発明の複数の実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの一部を形成するハンドヘルドデバイスのいくつかの構成を例示する。
【図4D】図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、本発明の複数の実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの一部を形成するハンドヘルドデバイスのいくつかの構成を例示する。
【図5】図5は、本発明の複数の実施形態に従った、表面を走査することから導き出されるデータの単一の測定フレームのプロット図を例示する。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの斜視図である。
【図7】図7は、図3に示された本発明の実施形態に従った遠隔型の危険要素検出システムの動作を示す図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に従った、様々な表面を走査し、汚染区画を調査するための遠隔型の危険要素検出システムの使用計画を例示する図である。
【技術分野】
【0001】
(政府の権利)
本発明は、米国政府の契約第DAAD13−03−D−0018に基づいて行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2006年3月22日出願の米国仮特許出願第60/784,465号と、2007年3月20日出願の米国特許出願第11/688,434号とに対する優先権を主張するものであり、両出願の全体が本明細書において参考として援用される。
【0003】
本発明は、実用的な紫外線(UV)ラマン分光法と、実用的な化学物質の検出および同定とに関する。さらに詳細には、本発明は、表面に存在し得る危険な物質を遠隔的に検出するデバイス、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
化学物質の感知および検出の分野において、他の化学物質が、検出された物質と接触したり、検出された物質に影響を与えたりすることを防止するために、汚染された現場において物質を素早く検出し、その物質のタイプおよび位置に関する情報を報告することが望ましい。汚染された現場において物質を素早く検出し、その物質の種類および位置に関する情報を報告することは、対応活動を見積もり指示するために必要とされる情報を決定権者に提供することによって結果管理を改善する際の重要な要因でもある。
【0005】
分光技術は、物質を分析するために使用され、技術が、固相および液相で表面に堆積した物質の非破壊的なテストのために開発されてきた。かかる技術は、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)と、X線蛍光と、気体クロマトグラフィおよび質量分光測定法(GC−MS)と、赤外線ラマン分光法(IRラマン)とを含む。現在入手可能な表面の危険要素の検出器は、「ワンタッチ式(point−and−shoot)」のデバイスであり、該ワンタッチ式のデバイスにおいて、デバイスのオペレータは、非常に近い区域における特定の位置で感知プローブを保持し、検知器における充分な集積時間を提供する期間に、その特定の位置に留まり、または、GC−MSの場合においては、分析を行うために、充分な表面の化合物を気相で取り入れる期間に、その特定の位置に留まる。したがって、これらのデバイスは、オペレータが危険な可能性のある物質の非常に近くに接近し、単一の測定を獲得するために充分に長くその物質の近くに居続けることを必要とする。したがって、危険な可能性のある物質に対して広い範囲または広い領域を調査する作業は、非常に困難であり、プロセスの効率を最大化するために賢明なサンプリング計画を必要とする。表面に分散された汚染物質を探索することと関連付けられる最も困難な局面は、センサが探索中に暴露される様々な化学物質種にある。
【0006】
表面の汚染は、汚染物質の偶発的な散布または意図的な散布の結果であり得、したがって、表面の汚染は、まとまった状態の単一の化学物質もしくは複数の化学物質または広い範囲にわたって分散された単一の化学物質もしくは複数の化学物質からなり得る。薄い層、小さい液滴または小さい粒子から構成される汚染物質の永続性の斑点の場合、上で述べられた方法はどれも、適切な検出能力を提供しない。
【0007】
例えば、緊急対応用の市販のFTIRシステムは、単一のサンプル同定分析を実行するために20秒を必要とするが、サンプルは、表面から物理的に取り除かれ、センサに与えられることを必要とする。別の例は、緊急対応用の市販のIRラマンシステムであり、該緊急対応用の市販のIRラマンシステムは、15mmの最大距離と、一般的には1秒と5秒との間の測定時間とを必要としており、一部のサンプルに対しては20秒までの測定時間を伴う。
【0008】
UVラマン分光法は、多くの独特な特性を有しており、該多くの独特な特性は、表面に堆積された危険要素の迅速な遠隔検出および同定において有利に利用され得る。ラマン分光法に固有の高度な情報内容が、構造的に似た化学物質を区別する能力を低い誤報率で提供する。情報内容は、任意の分子と関連付けられる振動の自由度と関連付けられる。この多くの振動モード自体が、高く狭いラマンピークとして現われ、該高く狭いラマンピークが、スペクトルのフィンガープリントを所与のラマン活性物質に提供する。しかしながら、自発的なラマン散乱は、本質的にわずかな断面を有する。ラマンスペクトルの強度および質は、(1)励起光の波長、線の太さ、およびスペクトルの純度と、(2)励起光または散乱光が吸収される程度、放出される干渉蛍光の量、および干渉レーザ誘発の表面の物質の降伏放出の存在の可能性と、(3)励起下でのサンプルの熱安定性および光化学的安定性と、(4)同時に検査される数または化学物質(スペクトルの密集度)とに依存する。したがって、実際の用途における有用性を最大にするために、UVラマンセンサが、短い波長を利用し、より大きな散乱の断面と、自然な蛍光性の背景の減少(光退色は必要とされない)と、300nm未満の太陽光ブラインド領域(遠隔型のセンサにとって重要)と、一部の振動の遷移に対するラマン散乱の断面の共振の強化とをもたらす。さらに、300nm未満のUV光は、事実上、標準規格のプラスチックの遮光保護具または非晶質ガラスの遮光防護具を着用した職員に目の危険要素をもたらさない。
【0009】
より離れた距離から表面を安全に検査し得、かつ、関心のあるセンサの視野の調節において高度の柔軟性を伴って表面を検査し得る表面の危険要素の検出システムが必要とされる。この遠隔型の表面の危険要素の検出システムは、広い周囲の調査を可能にする高いデータスループットを提供するために、物質から反射される光学的放射を迅速に分析することも必要である。UVラマン分光法は、この高性能のセンサに基盤を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高いデータスループットと、高い空間的解像度と、高度のポインティングの柔軟性とを有する、素早くかつ高感度な表面の危険要素の検出のためのシステムおよび方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に従って、システムは、第1のユニットからある距離を離れている表面に励起ビームを方向づける第1のハンドヘルドユニットと、光ビームの結果として表面からの散乱放射を捕捉する光学的サブシステムとを備えている。第1のユニットは、一束の光ファイバを含むリンクを経由して、処理ユニットと呼ばれる第2のユニットに接続されている。処理ユニットは、散乱放射をスペクトルデータに変換する、ファイバに結合された分光器と、収集された信号を分析し、危険な物質を検出するプロセッサとを備えている。第2のユニットは、第1のユニットと第2のユニットとが共に人間が携帯可能な(man−portable)検出アセンブリを形成するように、体に着用可能な筐体または体に着用可能な装置の中に含まれ得る。調節可能な焦点収集オプティクスは、安全な距離、例えば、0.25mを超える距離からラマン散乱放射を収集する。検査される表面からの所望の焦点距離を達成することを補助するために、可視光点が表面に投影されることにより、最適な遠隔区域を示し、かつ、収集の視野の位置を示し得る。
【0012】
本発明のシステムは、UV伝送ファイババンドルを使用することにより、収集された散乱放射画像を分光器に効率的に結合する。丸いマルチファイババンドルが、望遠鏡の焦点面に配置され、バンドルの中のファイバは、分光器の入射スリットとして使用される単一の行を形成するように再配置される。光が回折格子によって空間に分散された後に、分光器は、入射スリットを画素化された検出器に画像化する。
【0013】
本発明のシステムおよび方法は、ラマン反射を検出するために分光器の出力に配置された画素化された(pixelated)光検出器を使用する。いくつかのラマン反射が、所与の測定フレームの信号対雑音比(SNR)を改善するために蓄積され得る。可変の数の反射が検出器に蓄積されることにより、単一の測定フレームを提供し、検出器の画素の各縦の列が値域ごとに分けられることにより、SNRをさらに改善する。検出器から抽出されたデジタル値の結果として生じるアレイは、物質の検出および同定を行なうために処理ユニットによって使用されるラマンサインを含む。センサの様々な動作モードに適応するために、各測定フレームにおいて蓄積されたラマン反射の数は、可変となる。例えば、迅速な調査の間、表面が素早く走査され、速いフレーム速度(すなわち、フレーム当たりのラマン反射の蓄積がより少ない)が、高い検出の可能性を維持するために重要となる。各フレームに対するSNRにおける関連の減少にもかかわらず、検出の可能性は改善される。なぜならば、各フレームは、短い総露出で構成され、走査中に遭遇する標的の化合物から高純度のラマンサイン(スペクトルの密集の少ない)を獲得することのより高い可能性を確実にする。短い露出フレームは、センサが、センサに提示される多種多様な表面の物質で作られる素早いシーケンスと協働することを可能にするものであり、該素早いシーケンスは、迅速な表面走査からもたらされる。対照的に、確認モードまたは同定モードの間、センサは、検査される表面を凝視するので、ラマンサインは、より高い純度を有する。なぜならば、より少ない種類がセンサに提示されるからである。そして、遅いフレーム速度(フレーム当たりでより多いラマン反射の蓄積)が、ラマンサインのSNRを改善することによって高い同定特性を提供するために重要となる。
【0014】
本発明のシステムおよび方法は、表面の継続的な走査を使用することにより、汚染区画を検出し得る。ワンタッチ式のセンサとは対照的に、本発明のこのセンサシステムは、迅速な表面走査を可能にし、該迅速な表面走査は、計画に従って、静止から毎秒数10cmまでの範囲にある。これは、センサが、実用的な遠隔区域(すなわち、1m)を維持しながら、10Hz〜25Hzの速度で良質のラマン測定フレームを出力し得るので可能となる。これらの速いフレーム速度を生成する能力が、「ラマンビデオ(Raman−video)」信号の形式でラマンデータを捕捉することを可能にする。先に考察されたように、いくつかの動作モードが可能となる。調査モードは、大きな周囲をスクリーニングする間に最大走査速度を提供するために使用される。調査モードと関連付けられる高いデータスループットが、調査および走査の計画を指示および最適化するためにリアルタイムの結果を使用する適応性のサンプリング技術と適応可能である。
【0015】
本発明の検出および同定システムは、システムレベルの性能を最大化するために分散型のアーキテクチャを利用する。人間が携帯可能な用途に対して、システムを様々なユニットに分離することが有利であり得る。1つのユニットは、ビーム配向、散乱収集およびスペクトル分析の縮小バージョンを機動的な構成に収容するバッテリ動作のバックパックまたはスーツケースユニットであり得る。基地局と呼ばれる第2のユニットは、収集されたスペクトルのより集約的な分析のための処理能力を含む。結果として、バッテリ動作のユニットは、よりコンピュータ集約的ではないスペクトル分析アルゴリズムを実行し得る小さい処理デバイスを所持することによってより軽くされ得る。
【0016】
さらに別の実施形態において、複数の表面走査センサが、広い範囲もしくは広い領域または建物における調査活動を見積るために配備され得る。センサの全てが、調査活動を調整し得る集中現場制御ユニットに検出イベントを報告する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、図1および図2を参照すると、本発明の実施形態に従った遠隔型の危険要素の検出システム10が記述されている。検出システム10は、ハンドヘルドユニット100と処理ユニット200とを備えている。ハンドヘルドユニット100は、本明細書においては、第1のユニットまたは「ワンド」ユニットもしくは「ワンド」デバイスとも呼ばれ、処理ユニット200は、本明細書においては、第2のユニットまたはデータ取得/処理ユニットとも呼ばれる。ハンドヘルドユニット100は、中央ライン300によって処理ユニット200に接続されている。本明細書において使用される場合、用語「遠隔」は、遠隔型の危険要素の検出および同定システムと関連して、検出装置と、検査され、かつ、危険な物質または汚染物質が存在し得る表面との間で0.25メートルを上回る距離または範囲を意味する。
【0018】
システム10は、高いデータスループットと、高い空間的解像度と、高度のポインティングの柔軟性とを有する、素早くかつ高感度な遠隔型の表面の危険要素の検出を達成する。この特徴的な動作モードが、新しい効率的な表面の汚染物質調査の計画を可能にする。既存の「ワンタッチ式」の技術とは対照的に、システム10は、図1に描かれているように、汚染された現場の単一の画素の「ラマンビデオ」場面を取得することを可能にする。
【0019】
ハンドヘルドユニット100は、ユーザの手で保持され、物質の組成を決定するために、表面における固相または液相の物質を分光技術を用いて分析するために、表面に光ビームを導くために使用される。物質は、危険な物質または汚染物質、例えば、地面、床、壁または他の物体上の化学物質、生物学的物質、または爆発性の物質であり得、物質は、まとまって存在したり、表面にわたってまばらに分散されたりし得る。したがって、以下でさらに詳細に記述されるように、システム10は、1人の人間または2人の人間のチームによる使用のために設計され得る。オペレータは、危険要素の保護具を着用していることがあり得る。概して、ハンドヘルドユニット100は、約0.5メートルから約3メートルの遠隔の距離において疑わしい表面を検査し、脅威に関するスペクトル関連のデータを処理ユニット200に戻すために使用され、該処理ユニット200は、一直線の視野方向におけるスペクトル関連のデータを分析し、危険な脅威が存在するか否かを決定し、脅威のタイプの通知を迅速に、例えば、100ms以下で出す。処理ユニット200は、さらに、システム10を有するユーザインタフェースの1つのタイプとして、ディスプレイデバイス、例えば、タッチスクリーンディスプレイまたは着用可能なヘッドアップディスプレイを備え得る。ディスプレイデバイスは、視覚的(および任意的に聴覚的)通知を、検出された危険な物質と関連付けられる詳細に関するテキストによる説明と共に提供し得る。ディスプレイスクリーンは、環境スーツを着用している人による使用に適切に適合可能であるタイプであり得る。
【0020】
システム10の要素が、図2のブロック図に関してさらに詳細に記述される。ハンドヘルドユニット100は、レーザ光源110と、可変焦点収集オプティクス120と、焦点インジケータ130と、警報器150と、コントローラ140とを備えている。レーザ光源110は、検査光ビームを放出し、収集オプティクス120が、反射された光エネルギーを捕捉し、そのエネルギーを中央ライン300によって処理ユニット200内の分光器210に導く。焦点インジケータ130は以下で記述される。
【0021】
ハンドヘルドユニット内のレーザ源110は、関心のある表面に方向づけられた検査する光ビームを生成する。収集オプティクス120は、関心のある表面から反射される光エネルギーを捕捉する。光ビームは、表面における液体および/または固体の物質の特性を分析するために有用である任意の適切なタイプの光であり得る。例えば、レーザ源110は、紫外(UV)スペクトルにおいて光のビームを生成し、例えば、Nd:YAGレーザまたはNd:YLFレーザを生成し得る。さらに、レーザ源110は、UV光を生成し得、該UV光は、実質的に単色である(単一の波長あるか、または狭い範囲の波長に限定される)。さらに、レーザ源110は、ラマン光を生成し得るので、反射される光エネルギーは、ラマン散乱された光エネルギーから成り、該ラマン散乱された光エネルギーは、分光技術を使用して分析される。
【0022】
ケーブル300は、光ファイババンドル310を備えることにより、ハンドヘルドデバイス100によって捕捉された光エネルギーを処理ユニット100に結合する。ケーブル300は、処理ユニット200からハンドヘルドデバイス100にコマンドを通信し、かつ、ハンドヘルドデバイス100から処理ユニット200に他のデータを通信するために使用される少なくとも1つの導電体320(さらに適切には、複数の導電体)も備えている。
【0023】
処理ユニット200は、様々な形態を呈し得る。図2は、処理ユニット200が、分光器210と、画素化された検出器として働く強調電荷結合素子カメラ(ICCD)220と、レーザおよび関連付けられる電子機器に対するコントローラ230と、アルゴリズムプロセッサ240と、データ取得および制御プロセッサ250と、(ディスプレイスクリーンを備えた)ユーザインタフェース260と、電源270とを備えているということを示す。当該分野においては公知であるように、分光器は、回折格子を備えることにより、散乱放射をICCD220上に分散させる。ICCD220は、分光器210の中に組み込まれ得る。電源270は、再充電を必要とする前に現場における比較的長い時間間隔の使用を可能にするために充分な量の電荷を格納することが可能である再充電可能なバッテリであり得る。あるいは、またはさらに、電源270は、標準規格の電力コンセントから電力を受け取ることが可能であり得る。アルゴリズムプロセッサ240は、メモリを含むコンピュータであり得、該メモリに、1つ以上のプログラムが格納され、該1つ以上のプログラムは、コンピュータに様々な分光分析アルゴリズムおよび制御手順を行わせる。プロセッサ240は、スペクトルデータが、既知の物質のスペクトルデータであるか、または未知の物質のスペクトルデータであるかを決定するために、スペクトルデータを複数の既知の物質のスペクトルデータと比較し得る。警報デバイス280も存在し、該警報デバイス280は、警報トリガ信号によって作動されたときに、可聴警報通知および/または視覚的警報通知を生成する。警報デバイス280は、ユーザインタフェース260に組み込まれ得る。
【0024】
処理ユニット200に配置されるデータ取得および制御プロセッサ250は、システム全体の制御を提供し、該システム全体の制御は、ユーザインタフェース260による入力および出力の管理、ならびにハンドヘルドデバイス100への制御信号およびハンドヘルドデバイス100からの制御信号の管理を含む。アルゴリズムプロセッサ240は、分光器210の出力を分析するアルゴリズムを実行することにより、反射される光エネルギー(例えば、ラマンスペクトル)が、危険な物質とUVレーザ光との相互作用からもたらされたか否かを決定する。アルゴリズムプロセッサ240は、メモリを備え、該メモリは、サインのデータベースまたはライブラリを格納しており、該サインは、アルゴリズムプロセッサ240がラマンスペクトルデータに関して行う分光分析において使用される。
【0025】
走査される表面に方向づけられる光ビームは、UV光の離散パルスを備えることにより、表面サンプルからラマン信号を作り出し得る。別の実施形態において、レーザ源110は、持続波(CW)UV光源であり得る。ラマン信号の強度は、励起ビームの特性を調整することによって最大化され得る。光源110の光生成部をハンドヘルドユニット100内に配置することが、伝送される励起ビームを適切な形状にすることを可能にし、かつ、送達されるエネルギーの量を最大化することを可能にする。しかしながら、ハンドヘルドユニット100内の光源110は、レーザによってポンピングされる最後のUV変換段階であり得、該レーザは、実質的には、処理ユニット200内にあり、中央ケーブル300内の光ファイバを介してUV変換段階に結合されている。
【0026】
高品質のUV励起ビームは重要である。なぜならば、高品質のUV励起ビームは、検査される表面に励起ビームを密に収束することを可能にするからである。システムの遠隔範囲全体にわたる密なレーザ焦点(例えば、直径が1ミリメートル未満)が、いくつかの理由で有用となる。第1に、励起点の直径が、収集オプティクスの画像化対象となる。ハンドヘルド100内の収集オプティクス120は、できる限り多くの放射を収集するために高開口数を使用するので、小さいサイズの励起点は、その画像を光学的受信器チェーンの残りに効率的に結合することを可能にする。励起点を小さい直径に抑える第2の理由は、同時に検査される化学物質種の合計数を制限する要求である。収集される全ラマンサインが、励起される各化学物質と関連付けられる個々のラマンサインの重ね合わせからもたらされる。大きな励起点は、多数のラマンサインを提供し得る。なぜならば、より多くの化学物質種に遭遇する可能性が高く、あまり明確ではない全ラマンサイン(よりスペクトルを密集させられた全ラマンサイン)をもたらすからである。密に収束したビームを使用して、一度に単一の化学物質種を検査することによって、高純度のラマンサインが生成され得る。励起点を小さい直径に抑える第3の理由は、生成される各ラマンサインと関連付けられる信号の量にある。小さい励起点は、標的が小滴または粒子である場合に、関心のある標的への利用可能な励起光子の大部分の効率的な送達を提供する。これは、標的の化学物質のラマンサインが全ラマンサインを特色付けることと、センサのノイズフロアを上回る全ラマンサインを測ることとを可能にし、その結果として、センサの検出の限度を改善する。最後に、励起点を小さい直径に抑える別の理由は、汚染物質の正確な地形位置を提供することである。なぜならば、検出イベントと検査ビームの位置との間の直接的な相関関係が作り上げられ得るからである。要するに、この小さな検査点は、以下で記述される「ラマンビデオ」センサの概念の基礎となる「単一画素」のラマンサインの概念を構成する。
【0027】
可変焦点収集オプティクス120は、安全な距離、すなわち、「遠隔」距離からラマン散乱放射を収集することを可能にする。遠隔距離の調節は、必要とされているわけではないが、測定プロセスが、この調節可能性を提供することによって向上される。なぜならば、センサは、所与の遠隔区域に対して限定された被写界深度を有するからである。焦点距離を調節する1つの方法は、可変焦点収集オプティクス120を形成する光学素子間の分離距離を調節することである。焦点距離を調節する別の方法は、最遠位の望遠鏡光学素子と、オプティクスを分光計210に結合するファイババンドル310の入力との間の分離を調節することである。全ての場合において、単一のコンポーネントだけが、センサの遠隔区域を調節するために移動させられることを必要とする。光学素子は、手動で作動されるメカニズムを使用したり、電動化されたメカニズムを使用したり、ハイブリッドメカニズムを使用したりして、必要に応じてオペレータによって移動させられ得る。一実施形態において、0.5mから3mまでの焦点の調節可能性が、一次ミラーを移動させることによって提供される。別の実施形態において、収集オプティクスは、機械的設計を単純にするために1mで固定の焦点を有する。可変焦点収集オプティクス120の例は、図4A〜図4Dに関して、以下でさらに詳細に記述される。さらに、自動焦点システムが、以下でさらに詳細に記述される焦点インジケータ130から獲得される認識に基づいて、収集オプティクス120における光学素子のうちの1つを自動的に動かすために利用され得る。
【0028】
焦点インジケータ130は、検査される表面に投影される可視光点を生成することにより、最適な遠隔区域を示し、かつ、収集の視野の位置を示す。収集オプティクス120が所望の焦点距離に調節されると、この可視点は、標的指示子として働き、かつ、正しい遠隔距離を維持するインジケータとして働く。この特徴は、ハンドヘルドユニット100と関連付けられるポインティングの柔軟性を加え、かつ、効率的な表面の走査を可能にする。これを達成する1つの方法は、2つのレーザダイオードポインタを最適な遠隔距離で交差させることによるものである。2つ以上の投影された点の間の間隔を最小に維持することが、収集オプティクスの適切な焦点を確実にする。望遠鏡オプティクスを介してダイオードレーザを向けることが、望遠鏡の焦点距離の全ての調節のための遠隔区域の正確な示度を可能にする。あるいは、可視光を結合されたファイバが使用され得る。ファイバの出力が、望遠鏡を介して投影されることにより、収集の視野を検査表面に画像化し得る。この場合、ダイクロイックミラーが、可視指示器チャンネルからUVラマン受信チャンネルを分離するために使用される。焦点インジケータ130の例は、図4A〜図4Dに関して以下で記述される。ここでもやはり、上に述べられたように、自動焦点システムが、可変収集オプティクス120を自動的に調節するために焦点インジケータ130によって投影された光点に基づいて表面までの距離を解釈するために利用され得る。
【0029】
図3に関して以下で記述される、本発明の別の実施形態に従って、分散型のアーキテクチャがシステムレベルの性能を最大化するために利用される。図2に示された実施形態は、処理ユニット200内に、人間が携帯可能な用途のために、単一のパッケージで主要な機能のうちのいくつか(すなわち、調査モードおよび同定モード)を配置しているが、複数のユニットにわたって処理機能をさらに分離することが有利になり得る。例えば、バッテリ動作のバックパックユニットまたはスーツケースユニットが、機動的な構成における散乱サインの収集を可能にするために、センサコンポーネント(ハンドヘルドユニット100および処理ユニット200)の縮小バージョンを収容するために提供され得る。基地局または静止ユニットも提供され、該基地局または該静止ユニットは、ドッキング機能を提供し、基地局によって電力を供給されながら、バッテリ動作のユニットが充電され、電源を入れられ、そして定常状態にされることを可能にする。基地局は、較正機器および追加の処理ユニットも収容し得、該処理ユニットは、第1のユニットの性能よりも高性能である。この場合、バッテリ動作のユニットは、より小さいプロセッサを所持することによってより軽くされ得、該より小さいプロセッサは、よりコンピュータ集約的ではない分光分析アルゴリズムを使用して忠実度のあまり高くない調査モードを提供する。この搭載の能力は、より多くの誤報を提供するが、不良環境にある間、調査モードを可能にし、ユーザに常在(always−present)能力を与える。バッテリ動作のユニットは、並行して、ラマンフレームを基地局に伝達し、該基地局が、危険要素をより正確に同定する同定モードと関連付けられるよりコンピュータ集約的な(より忠実度の高い)アルゴリズムを実行する。
【0030】
本発明のこの実施形態に従って、危険であると疑わしい物質の遠隔検査のための器具が、人間が携帯可能なアセンブリまたは着用可能なアセンブリ600内に構成され得、該人間が携帯可能なアセンブリまたは着用可能なアセンブリ600は、ハンドヘルドユニット700と体に着用可能なユニット800とを備えている。この構成が、図3のブロック図を参照して記述される。ハンドヘルドユニット700は、図2に示され、かつ、上に記述されたコンポーネントと同様な、レーザ710と、収集(望遠鏡)オプティクス720と、コントローラ730と、警報デバイス740とを備えている。中央ケーブルは、光ファイババンドル910と、図2に示されたケーブル300と同様な導電体バンドル920とを備えている。着用可能なユニット800は、中央ケーブル900を経由してハンドヘルドユニット700に接続され、分光器810と、ICCD815と、制御およびデータ取得プロセッサ820と、ディスプレイ830と、電源840(例えば、バッテリパック)と、アンテナ805を経由した基地局1000(i)とのワイヤレス通信をサポートする無線周波数(RF)ワイヤレス送受信器/モデム850と、警報デバイス860とを備えている。電源840は、着用可能なユニット800内のコンポーネントと、ハンドヘルドユニット700内のコンポーネントとに電力を供給する。ディスプレイ830は、オペレータによって視認可能なスナップオン方式のディスプレイシステムまたはフリップダウン方式(flip−down)のディスプレイメカニズムであり得るか、またはバイザー上で見ることができるディスプレイ、例えば、ヘッドアップディスプレイであり得る。ディスプレイ830は、危険な物質の検出に関してユーザに情報を表示するために使用され得る。多くの点で、着用可能なユニット800は、第1の実施形態における処理ユニット100と同様であり、ハンドヘルドユニット700は、第1の実施形態におけるハンドヘルドユニット200と同様である。
【0031】
人間が携帯可能なアセンブリ600は、1つ以上の基地局1000(1)〜基地局1000(N)と通信し得る。基地局は、アンテナ1005と、RFワイヤレス送受信器/モデム1010と、分析プロセッサ1020と、基地局のオペレータに対するディスプレイ1030と、設備の電源1040とを備えている。例として、基地局1000(i)は、車両に設置されたり、車両において使用されたりし、車両の電源システムによって駆動され得る。あるいは、基地局は、固定の位置にあり得る。さらに、基地局1000(i)は、基地局1000(i)が着用可能な装置に含まれ得るか、または適切なワイヤレス通信能力を装備されたラップトップコンピュータとして体現され得るという意味で、1人で携帯可能であり得る。基地局1000(i)は、さらに、その中に、人間が携帯可能なアセンブリ600に含まれるものと同様な警報デバイスを備えたり、組み込んだりし得る。基地局1000(i)は、ドッキングポートまたはドッキングユニット1050を有し得、該ドッキングポートまたはドッキングユニット1050は、適切な接続ケーブルによって人間が携帯可能なアセンブリ600に接続することが可能であることにより、基地局の設備の電源1040を介して電源840を充電し、アセンブリ600を作動し、そして、アセンブリ600を定常状態にもたらす。上で述べられたように、プロセッサ1020はまた、着用可能なユニット800内の分光器810を較正するために、人間が携帯可能なアセンブリ600内の関連のコンポーネントと相互作用する。ドッキングユニット1050は、バッテリ充電器を含み得、該バッテリ充電器は、着用可能なユニット800がドッキングされたときには、電源840を充電する。
【0032】
基地局1000(i)と人間が携帯可能なアセンブリ600との間に、いくつかの起こり得る動作シナリオがある。1つのシナリオにおいて、着用可能なユニット800内のプロセッサ820は、分光器810の出力をデジタルスペクトルデータ信号に変換し、任意的に、スペクトルデータを圧縮し、そして、RF送受信器を経由してこのスペクトルデータを1つ以上の基地局1000(1)〜基地局1000(N)に伝送する。基地局1000(i)内の分析プロセッサ1020は、着用可能なユニット800からスペクトルデータを受信し、スペクトルデータの分析を行うことにより、危険な物質の検出および同定を行い、そして、演算の結果をディスプレイ1030に表示する。分析を行った後、基地局1000(i)は、着用可能なユニット800に信号を伝送し戻し得、該着用可能なユニット800が、検出された物質の特性/正体を示す。例えば、危険な物質が検出された場合には、伝送された信号が、着用可能なユニット800および/またはハンドヘルドユニット700に可聴警報および/または視覚的警報を発するので、ユーザはさらに継続する際に適切な予防措置を取ったり、直ちにその範囲を去ったりする。
【0033】
任意的に、着用可能なユニット800内のプロセッサ820は、信頼性があまり高くない可能性があるが、危険な物質の検出のリアルタイムまたはほぼリアルタイムでユーザに警報を発するように、分光器810によって生成されるスペクトルデータのより素早いが忠実度のより低い分析を行い得る。これが、所謂、上で述べられた調査モードである。着用可能なユニット800はまた、スペクトルデータを基地局1000(i)に伝送し、該基地局1000(i)は、忠実度がより高く、信頼度がより高い分析を行うが、該忠実度がより高く、信頼度がより高い分析は、いくらかの追加的な時間を必要とする。これが、所謂、上で述べられた同定モードであり、同定モードは、より完全なサインのライブラリを使用する。この処理の割り当てスキームが、図7および図8を参照してさらに詳細に下で述べられるように、より高度な調査を可能にする。
【0034】
図3の構成によって描かれているようなデータ収集から検出処理を分離する1つの利点は、収集されたデータが複数の基地局に(同時にまたは逐次的に)伝送され得、各基地局が自身の分析を行い、そして、危険な物質を検出した人間が携帯可能なアセンブリ600によって警報を発せられ得るということである。複数の人間が携帯可能なアセンブリが配備された場合には、各アセンブリは、基地局にデータを伝送するときに使用される独自の識別子を有するので、基地局は人間が携帯可能なアセンブリを区別し得る。したがって、危険な物質に関する情報は、迅速かつ広範に配信され得る。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態において、一組の表面を走査する人間が携帯可能なアセンブリ600が、広い周囲または建物での調査活動を見積もるために提供される。この場合、全ての人間が携帯可能なアセンブリ600が、検出イベントを集中型現場制御ユニットに報告し、該集中型現場制御ユニットが、調査活動を調整し得る。現場レベルにおける適応性サンプリングが、マルチセンサ構成を用いて可能となる。このために、1つ以上の基地局1000(1)〜基地局1000(N)が、さらに遠くに配置される主現場制御ユニット1100に連結され得、該主現場制御ユニット1100は、いくつかの基地局/人間が携帯可能なアセンブリを調節する。現場制御ユニット1100は、イーサネット(登録商標)ハブ(E−Netハブ)1110などのネットワークインタフェースと、ステータスコンピュータ1120と、ディスプレイ1130と、電源1140とを含み得る。基地局1000(1)〜基地局1000(N)のそれぞれはまた、ネットワーク1200による設備通信に対するイーサネット(登録商標)インタフェースコンポーネントを有する。現場制御ユニット1100は、例えば、危険な物質の実際の検出または起こり得る検出に関する作業を調整することに責任のある現場の指揮官によって動作され得る。
【0036】
図4A〜図4Dを参照すると、ハンドヘルドユニット100の実施形態が、さらに詳細に記述されている。図4Aに示された一実施形態において、ハンドヘルドユニット100は、主筐体102とハンドグリップ部104とを備え得る。筐体は、収集オプティクス120を含み、レーザ110に対する支持としても働く。レーザ110は、筐体102の底部に設置される。折りたたみ鏡112と焦点調節光学素子114とが、レーザビームを収集オプティクス120のボアサイトと同一直線状に放出させる。レーザ電力計116が存在し、該レーザ電力計116は、折りたたみ鏡112のうちの1つによるレーザ光のわずかな部分を受け取ることにより、伝送されるレーザビームのモニタリングを可能にする。折りたたみ鏡112は、レーザビームの光路を調節するために傾けたり、傾斜させたりし得る。筐体102は、前窓108を有し、該前窓108は、レーザ110および収集オプティクス(望遠鏡)120と関連付けられる光学素子を支持するような大きさにされており、それにより、用いなければラマン後方散乱の検出と干渉するスパイダ支持の必要性を排除する。収集オプティクス120は、一次ミラー122と二次ミラー124とを備えている。この実施形態において、一次ミラー122は固定され、二次ミラー124は、デバイスの光軸またはボアサイトに沿って動くことができる。二次ミラー124はまた、望遠鏡120によって反射される光エネルギーの光路を調節するために傾け、かつ、傾斜させられ得る。収集オプティクス120は、任意の反射された後方散乱(例えば、UVラマン)放射を、ハンドヘルドユニット100に接続された光ファイババンドル310の中に収束させ、次に、該ハンドヘルドユニット100は、反射された散乱放射を処理ユニット200内に含まれる分光器210(図2)に配信する。
【0037】
図4Bに示されたハンドヘルドユニット100の別の実施形態において、筐体102の基部に接続された、関節のあるアーム接続118が存在し、該関節のあるアーム接続は、レーザビームの光軸を傾け、かつ、傾斜させ得る。これは、レーザ源がハンドヘルドユニット100内に配置される代わりに、処理ユニット200内に配置されることを可能にする。光ファイバ311が存在し、該光ファイバ311は、処理ユニット200内のUV源からのレーザビームをハンドヘルドユニット100内の焦点調節光学素子114に供給する。図4Bに示されたハンドヘルドユニット100の他のコンポーネントは、図4Aに示されたコンポーネントと同じ構成を有する。
【0038】
図4Cに示されたハンドヘルドユニット100のさらに別の実施形態において、送受信器構成が使用される。この場合、UV励起光が、受信された散乱放射と同じ光路を使用して、収集オプティクス120によって伝送される。UVレーザビームが、光ファイバ311によって焦点調節光学素子114に結合される。図4Bの実施形態のように、UVレーザ源は、処理ユニット200内にある。収集オプティクス120は、一次ミラー122と、二次ミラー124と、UVラマンエッジフィルタ128と、ミラー131と、焦点調節光学素子133とを備えている。この実施形態において、一次ミラー122は可動であり、二次ミラー124は固定されている。UVラマンエッジフィルタ128は、伝送されたUV励起ビームを、反射された散乱放射から分離する。図4Cはまた、焦点インジケータ130を例示し、該焦点インジケータ130は、少なくとも2つの標的指示子レーザダイオード117を備えており、該少なくとも2つの標的指示子レーザダイオード117は、筐体102の側面で互いから離され、それぞれのビームをレンズを通ってダイクロイックミラー126に向けるように内側に向けられており、該ダイクロイックミラー126は、適切な焦点距離または所望の焦点距離を達成するのを補助する目的で、ダイオードからハンドヘルドユニット100のボアサイトの中に反射し、そして窓108を出て表面に反射する。図4Cはまた、ハンドヘルドユニットがユーザの手の中にないときにハンドヘルドユニット100を停止する「デッドマン(dead man)」スイッチ152をグリップまたはハンドル104上に示す。
【0039】
図4Dは、さらに別の実施形態に従ったハンドヘルドユニット100の側面図を示す。筐体102の反対側に、先の実施形態のように、ユーザが検査される表面から適切な焦点距離でハンドヘルドユニット100を手で維持することを補助するために、2つの焦点調節ダイオード117が配置されている。ダイオード117は、互いに対して内側に向かって角度を付けられているので、ダイオード117が放出するビームは、表面において収集オプティクス120の焦点で交差し、すなわち、ハンドヘルドユニット100から所定の距離、例えば、約1メートルで交差する。交差箇所は、収集オプティクス120の最適な焦点距離と対応する。大きな焦点調節ノブ119が筐体のバレルの側面にある。これらのノブを回すことによって、一次ミラー122(図4Cの実施形態に対して)または二次ミラー(図4Bの実施形態に対して)のいずれかが、デバイスの光軸に沿って移動させられ、遠隔の焦点距離が、それに応じて修正される。ハンドヘルドユニット100の背部に配置された2つのスイッチ156および158が存在する。ハンドヘルドユニット100を操作可能にするために、これらの3つのスイッチが順番に作動される。特に、処理ユニット200におけるソフトウェアの動作が、システムを使用可能にした後、ハンドル104上のデッドマンスイッチ152が、最初に加圧されることにより、動作回路を閉じる。次に、ハンドヘルドユニット100の背部のスイッチ156が作動されることにより、焦点調節ダイオード117を起動する。最後に、スイッチ158が作動されることにより、レーザ110を起動したり、レーザ光が放出されることを可能にするデバイス100上の物理的シャッタを開いたりする。ユニット100の背部の1つ以上の光(例えば、LED)154が、ユニットが起動中であり、操作可能であるか否かを示すために提供され得る。
【0040】
上に記述されたように、UV伝送ファイババンドル310は、反射される光エネルギーを分光器210に効率的に結合する。ファイババンドル310は、丸いマルチファイババンドルを備え、該丸いマルチファイババンドルは、収集オプティクス120の焦点面に配置され、バンドルの他端において、個々のファイバが、分光器210の入射スリットとして使用される単一の行を形成するように再配置される。光が分光器210の回折格子によって空間的に分散された後、分光器210は、ICCDカメラ220の画素化された光検出器に入射スリットを画像化する。
【0041】
分光器210の出力に配置されたICCDカメラ220の画素化された光検出器は、ラマン反射エネルギーを検出する。いくつかのラマン反射が、所与の測定フレームの信号対雑音比(SNR)を改善するために蓄積され得る。選択された数の反射が、単一の測定フレームを提供するために、ICCDカメラ220または他の画素化された検出器デバイスに蓄積されると、画素の各縦の列が、値域毎にまとめられることにより、さらにSNRを改善する。ICCDカメラ220から抽出されたデジタル値の結果として生じるアレイは、処理ユニット200によって使用されるラマンサインを含むことにより、化学物質の検出および同定を行う。したがって、画素化された検出器(例えば、ICCD220)は、表面からの散乱放射の複数の反射うちの1つまたは蓄積物に基づいて測定フレームを生成する。
【0042】
センサシステム10の様々な動作モードに適応するために、各測定フレームに蓄積されたラマン反射の数は、可変である。例えば、迅速な調査モードの間、表面が素早く走査され、速い測定速度(すなわち、フレーム当たりでより少ないラマン反射の蓄積)が、検出の高い可能性を維持するために重要となる。各フレームに対するSNRにおける関連の減少にもかかわらず、検出の可能性は改善される。なぜならば、各フレームは、短い総露出で構成され、走査中に遭遇する標的の化合物から高純度のラマンサイン(スペクトルの密集の少ない)を捕捉することのより高い可能性を確実にする。短い露出フレームは、センサシステムが、迅速な表面走査からもたらされる、センサに提示される多種多様な表面の組成物の素早いシーケンス(quick sequence)と協働することを可能にする。対照的に、確認実行モード(同定モードとも呼ばれる)の間、センサは、検査される表面を凝視し(すなわち、より少ない種類がセンサに提示されるので、ラマンサインがより高い純度を有する)、遅いフレーム速度(すなわち、フレーム当たりでより多いラマン反射の蓄積)が、ラマンサインのSNRを改善することによって高い同定特性を提供するために重要となる。確認実行モードの間、検出器の飽和が生じ得る。この場合、オートゲイン特徴が、飽和前に蓄積を停止することによって各フレームに提供され得る。
【0043】
システム10は、表面を継続的に走査することにより、汚染区画を検出し得る。ワンタッチ式のセンサとは対照的に、本発明のこのシステム10は、迅速な表面走査を可能にし、該迅速な表面走査は、計画に従って、静止から毎秒数10cmまでの範囲にある。これは、システム10が、実用的な遠隔区域または実用的な遠隔距離(すなわち、1m)を維持しながら、調査モードにおいて10Hz〜25Hzの速度で良質のラマンフレームを生成し得るので可能となる。より高いフレーム速度が可能であるが、最終的には、SNRにおける関連した減少が、実際のフレーム速度を制限する。これらの高いフレーム速度を生成する能力もまた、上で記述された「ラマンビデオ」センサの概念の基礎となっている。走査速度のカバレッジに関して、本発明のシステムは、毎秒数10センチメートルまでの速度で表面を走査し得る。調査モードと関連付けられるより高いデータスループットは、適応性のサンプリング技術と適応可能であり、該適応性のサンプリング技術は、リアルタイムの結果を使用することにより、調査計画を指示および最適化する。この場合、誤報の可能性の増加を代償として(より忠実度の低い分析モードにおいて)センサの検出の可能性を増加させることが望ましくなり得る。この忠実度の低いモードにおいて、誤報は、あまり残念な結果を有さない。なぜならば、誤報は、ユーザに同定モードに切り替えることを促すことによって、よりしっかりとした精密な検査をもたらすからである。同定モードは、誤報の可能性をより低くするが、ユーザが走査を停止し、疑わしい範囲を凝視することを必要とする。この誤報の可能性を低くすることが、2つの要素の同時発生によって可能にされ、該2つの要素は、(1)先に考察されたように、凝視とより低いフレーム速度とが高いSNRを有する高純度のラマンサインをもたらし、凝視とより低いフレーム速度とが正しい同定を行うアルゴリズムの能力を改善することと、(2)同定モードと関連付けられるより低いフレーム速度が、処理ユニット200がよりコンピュータ集約的かつ高度なアルゴリズムを使用することを可能にし、より大規模なラマンスペクトルライブラリがポジティブマッチ(positive match)になることを可能にすることとである。
【0044】
図5は、1mの遠隔区域から25Hzの反復速度で取られた単一の「フレーム」のラマンデータの例を示す。この図は、上に記述された「ラマンビデオ」の概念を可能にする目的でセンサ構成によって達成されたデータの質を例示する。図5はまた、システム10が継続的かつ中断されないように、高いデータスループットで物質を検出および同定するように動作され得るということを例示する。
【0045】
図6は、カートの形式で処理ユニット200を示し、該カートは、筐体202と、筐体202に取り付けられた1つ以上の車輪205と、人が処理ユニット200を動かすことを可能にするハンドル207とを備えている。筐体202は、さらに、脚208を備え、該脚208は、処理ユニット200を安定して維持するために使用される。筐体202は、さらに、使用しないときにハンドヘルドユニット100を格納するレセプタクル209を備えている。システムが使用中でないときにケーブル300を周りに巻いたり、システムが使用中のときにケーブル300の余分なたわみを巻き取ったりするブラケット212がある。
【0046】
図6を参照すると、システム10の一実施形態の動作が記述されている。システム10は、1人または2人で使用され得る。2人の配備は、処理ユニット200を担当する第1の人と、ハンドヘルドユニット100を使用する第2の人とを含む。ハンドヘルドユニット100を操作する人は、検査される固体または液体の物質410が存在する表面400に接近する。この人は、ハンドヘルドユニット100を表面400の上に動かし、ハンドヘルドユニット100を表面400に向けて動かしたり、表面400から離れるように動かしたりすることによって焦点を合わせるようにダイオード117によって放出されたビームを使用するので、ダイオード117からのビームは、表面400において、収集オプティクス120の焦点部分と交差したり、ほぼ交差したりする。約1メートルの焦点距離を使用することによって、70%の収集に対する、結果として生じる収集望遠鏡の被写界深度は、焦点のいずれかの方向において約2インチであるので、ハンドヘルドユニット100内のレーザからの検査光ビームは、容易に焦点を外れることなく横切って動かされ(走査され)得る。ユーザが表面400の焦点にハンドヘルドユニット100を配置した後、レーザが作動され、反射された光エネルギーがハンドヘルドユニット100によって収集され、中央ケーブル300内の光ファイババンドルによって処理ユニット200に結合される。処理ユニット200は、反射された光エネルギーを分析し、検出された物質の特質を記述する表示データを生成する。さらに、処理ユニット200は、トリガ信号を生成し得、該トリガ信号は、検出された物質が危険なタイプのものであるときには、ユーザに対する可聴警報通知および/または視覚的警報通知を作動させるために、処理ユニット200とハンドヘルドユニット100とのうちの1つまたは両方における警報デバイスに結合される。これは、さらなる調査を行うときに、ユーザに充分な注意を働かせるように、および/またはその範囲を直ちに去るように警報を発する。検出された物質と関連付けられる危険の程度に従って、処理ユニット200によって生成される様々な警報のレベルが存在し得る。
【0047】
図6に示された構成に対する代替案として、ハンドヘルドユニット100は、図4Bに示されているような機械的アームデバイス500の遠位端に取り付けられ得る。アームデバイス118は、近位端と遠位端とを備え、第1のユニットと第2のユニットとの間に光の自由空間光結合(free−space optical coupling)を組み込み得る。アームデバイス118の近位端は、図6に示された形式で処理ユニット200の上部に取り付けられ、ハンドヘルドユニット100は、アームデバイス118の遠位端に取り付けられる。機械的アームデバイス500は、処理ユニット200から遠隔的に制御されることにより、ハンドヘルドユニット100を所望の表面に向けて導くことにより、その表面を検査する。
【0048】
図7を参照すると、ここで、動作が、図3に関して上で記述された人間が携帯可能なアセンブリ600と基地局1000とに関して記述される。体に着用可能なユニット800は、着用可能な装置または筐体、例えば、バックパックの中に含まれる。あるいは、着用可能な装置800は、他の形式、例えば、頭に着用可能、腕に着用可能、腰に着用可能(ウエストパック)などを取り得る。中央ケーブル900は、ハンドヘルドユニット700を着用可能ユニット800に接続する。人間が携帯可能なアセンブリ600は、一部の処理能力を有し、リンク、例えば、ワイヤレスリンクを経由して遠くの基地局1000と通信し、該基地局1000においては、より大規模な処理が行われ得る。概して、ユーザが着用しなければならない器具の重さおよび大きさを削減するために、体に着用可能なユニット800は、反射される光エネルギーを処理する分光器と、一部の処理能力とを含み得るが、完全なデータ処理は、遠くの基地局1000において行われる。着用可能なユニット800は、軽くなるように設計され、例えば、20kg(45lbs)未満になるように設計され得る。
【0049】
図8は、図7に示されたシステムが使用され得る計画のタイプの例を例示する。危険または汚染の可能性が、その場所(屋内または屋外)に存在することを決定される。応答者が人間が携帯可能なアセンブリ600を着用し、1つ以上の基地局1000(1)〜基地局1000(N)が、危険地帯と疑わしい場所、例えば、汚染された建物の外または異なる階から安全な距離に配置される。防護具および人間が携帯可能なアセンブリ600を着用し得る応答者個人が、危険要素に汚染されたと疑われる現場に行く。それぞれが人間が携帯可能なアセンブリ600を配備された複数の人が存在し得る。各人間が携帯可能なアセンブリ600は、基地局1000(1)〜基地局1000(N)のうちの1つ以上と通信する。ハンドヘルドユニット700は、疑わしい表面または疑わしい物体と接触することなく少なくとも約1mの遠隔において疑わしい表面を検査するために使用される。人間が携帯可能なアセンブリ600は、検査された表面に関するスペクトルデータを処理のために基地局に伝送する。基地局1000(i)(または人間が携帯可能なアセンブリ600)が、表面の汚染物質を検出した場合には、物質が同定され、基地局は、比較的に短時間(例えば、数秒未満)で、比較的高度の信頼性を伴って人間が携帯可能なアセンブリ600に信号を伝送し得る。応答者は、検出された危険な物質をマッピングすることに進み、視野の高い柔軟性を利用する。図7および図8に描かれた調整された危険要素の検出および同定システムは、中央(現場)制御局が関心のある領域における表面の検出掃引を調節することを可能にする。
【0050】
図8はまた、図形要素線を示すことにより、現場のどこを検出器が既に物質のために走査したかを示す。例えば、水平面1200(例えば、地面)において、図形要素線1210は、検出器が表面1200上でどこを既に走査したかを示す。危険な物質の検出区画が、参照番号1220で示されている。同様に、垂直面1300(例えば、壁)において、図形要素線1310は、垂直面1300のどこを検出器が既に走査したかを示すように描かれている。
【0051】
遠隔検出技術を配備することが有用であり得る別の物理的プラットフォームが、有人の地上車両または無人の可動地上車両である。人間が携帯可能なアセンブリ600の特徴および機能がいずれかのタイプの車両に組み込まれたり、設置されたりし得る。無人の可動地上車両に技術を配備する利点は、車両が、車両または遠くの基地局による分析のためにスペクトルデータを捕捉し得るので、人は、危険な物質の可能性のある近くに来ることを必要としないということである。
【0052】
本明細書において記述されたシステムおよび方法は、その精神または本質的な特性を逸脱することなく、他の特定の形式で体現され得る。したがって、上記の実施形態は、あらゆる点において例示と考えられるべきであり、限定を意味すると考えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムのブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムのブロック図である。
【図4A】図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、本発明の複数の実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの一部を形成するハンドヘルドデバイスのいくつかの構成を例示する。
【図4B】図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、本発明の複数の実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの一部を形成するハンドヘルドデバイスのいくつかの構成を例示する。
【図4C】図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、本発明の複数の実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの一部を形成するハンドヘルドデバイスのいくつかの構成を例示する。
【図4D】図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、本発明の複数の実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの一部を形成するハンドヘルドデバイスのいくつかの構成を例示する。
【図5】図5は、本発明の複数の実施形態に従った、表面を走査することから導き出されるデータの単一の測定フレームのプロット図を例示する。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に従った遠隔型の表面の危険要素検出システムの斜視図である。
【図7】図7は、図3に示された本発明の実施形態に従った遠隔型の危険要素検出システムの動作を示す図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に従った、様々な表面を走査し、汚染区画を調査するための遠隔型の危険要素検出システムの使用計画を例示する図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の汚染物質を検出および同定することが可能である、遠隔型の危険要素の検出および同定システムであって、
a.第1のユニットであって、該第1のユニットは、該第1のユニットから離れた距離にある表面に単色光のビームを放出し、該単色光のビームの結果として該表面からの散乱放射を捕捉する、第1のユニットと、
b.第2のユニットであって、該散乱放射をスペクトルデータに変換する分光器と、該表面の汚染物質を検出するために該スペクトルデータを分析するプロセッサとを備えている、第2のユニットと、
c.該第1のユニットから該第2のユニットに該散乱放射を結合するための、該第1のユニットと該第2のユニットとの間のリンクと
を備えている、システム。
【請求項2】
前記第1のユニットは、ポータブルのハンドヘルドデバイスであり、前記単色光のビームを生成する単色光源を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記単色光源は、紫外(UV)レーザである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2のユニットは、前記単色光のビームを生成する単色光源を備え、前記リンクは、該ビームを前記第1のユニットに供給する光ファイバを備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のユニットは、収集オプティクスサブシステムを備え、該収集オプティクスサブシステムは、前記リンクを経由して前記第2のユニットに結合するために、前記表面から前記散乱放射を収集する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のユニットは、可視標的インジケータを備え、該可視標的インジケータは、複数のビームが前記表面上で前記収集オプティクスサブシステムの焦点において互いに交差するように、該収集オプティクスサブシステムを介して複数の可視光のビームを放出する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記可視標的インジケータは、少なくとも2つのレーザダイオードを備え、該少なくとも2つのレーザダイオードは、前記第1のユニットの筐体に設置され、かつ、それらのビームが前記表面上で前記収集オプティクスサブシステムの焦点において互いに交差するように配置されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記単色光源は、紫外(UV)スペクトルで前記単色光のビームを生成することにより、前記表面の物質に該表面からラマン散乱放射を放出させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記スペクトルデータを複数の既知の物質のスペクトルデータと比較し、該物質が既知の物質であるか、未知の物質であるかを決定する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1のユニットは、毎秒数10センチメートルまでの走査速度で前記表面を走査するように、該表面を横切って動かされる、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記単色光源は、直径が1ミリメートル未満の点を照明するために、前記単色光のビームを生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2のユニットは、さらに、画素化された検出器を備え、該画素化された検出器は、測定フレームを生成し、該測定フレームは、前記表面からの散乱放射の複数の反射の1つまたは蓄積を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2のユニットは、毎秒10測定フレームを上回る速度でデータを生成する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、測定フレームに蓄積される散乱放射の複数の反射の数を調節することによって前記速度を調節する、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記第2のユニットを制御することにより、動作の第1のモードおよび第2のモードのうちの1つで動作し、該第1のモードにおいては、前記画素化された検出器が、測定フレームに対する散乱放射の比較的少ない数の反射を蓄積することにより、前記表面のより速い走査のためのより速い速度と、より低い忠実度の分析とを提供し、そして、該第2のモードにおいては、該画素化された検出器が、測定フレームに対する散乱放射の比較的多くの数の反射を蓄積することにより、該表面のより遅い走査のためのより遅い速度とより高い忠実度の分析とを提供する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のユニットは、収集オプティクスサブシステムを備え、該収集オプティクスサブシステムは、前記リンクを経由して前記第2のユニットに結合するために、前記表面から前記散乱放射を収集し、該収集オプティクスサブシステムは、1つ以上の光学素子を備え、該1つ以上の光学素子は、該収集オプティクスサブシステムの焦点を調節するように動かすことができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
調整された危険要素の検出および同定システムであって、
a.複数の危険要素の検出器であって、該複数の危険要素検出器は、表面に光のビームを放出することによって該表面の汚染物質を検出し、該光ビームの結果として該表面から散乱放射を捕捉し、該散乱光をスペクトルデータに変換し、そして、該スペクトルデータを分析することにより、危険物質または汚染物質に関する検出および同定データを生成することが可能である、複数の危険要素の検出器と、
b.該複数の危険要素の検出器にワイヤレスで連結された中央制御局であって、該中央制御局は、関心のある領域における表面の検出掃引を調整するために、該複数の危険要素の検出器から検出および同定データを受信し、制御信号を該複数の危険要素の検出器に伝送する、中央制御局と
を備えている、システム。
【請求項18】
前記複数の危険要素の検出器のぞれぞれは、遠隔型の危険要素の検出器であり、該遠隔型の危険要素の検出器のそれぞれが、第1のユニットから離れた距離にある前記表面に前記単色光のビームを放出し、該単色光のビームの結果として該表面からの散乱放射を捕捉する、第1のユニットと、該散乱放射をスペクトルデータに変換する分光器、および該表面の汚染物質を検出するために該スペクトルデータを分析するプロセッサを備えている第2のユニットと、該第1のユニットから該第2のユニットに該散乱放射を結合するための、該第1のユニットと該第2のユニットとの間のリンクとを備えている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
ある距離から表面の汚染物質を検出および同定することが可能である遠隔型の危険要素の検出および同定システムであって、
a.第1のユニットであって、該第1のユニットは、該第1のユニットから離れた距離にある表面に光のビームを放出する単色光源と、該単色光のビームの結果として該表面からの散乱放射を捕捉する光学的サブシステムとを備えている、第1のユニットと、
b.該散乱放射をスペクトルデータに変換する分光器と、該表面の汚染物質を検出するために該スペクトルデータを分析するプロセッサとを備えている、該第1のユニットに結合された第2のユニットであって、該第2のユニットは、処理のために該スペクトルデータを別のデバイスに伝送することが可能である送受信器を備えている、第2のユニットと、
c.第3のユニットであって、該第3のユニットは、該第2のユニットから該スペクトルデータを受信する送受信器と、1つ以上のアルゴリズムを用いて該スペクトルデータを分析するプロセッサとを備え、該1つ以上のアルゴリズムは、該第2のユニットのプロセッサによって使用されるアルゴリズムよりもコンピュータ集約的である、第3のユニットと
を備えている、システム。
【請求項21】
前記第3のユニットは、前記送受信器を経由して、該第3のユニットによって行われた分析の結果を前記第2のユニットに伝送する、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記第2のユニットは、ユーザインタフェースと、前記結果を表示するディスプレイとを備えている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記第2のユニット内の前記送受信器と、前記第3のユニット内の送受信器とは、ワイヤレス送受信器デバイスである、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
第2のユニットは、再充電可能な電源を備え、前記第3のユニットは、該第2のユニットと情報を交換するために、かつ、該第2のユニットの該再充電可能な電源の充電可能なバッテリを充電するために電気エネルギーを供給するために、該第2のユニットに接続するドッキングポートを備えている、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
遠隔型の危険要素の検出システムであって、
a.表面に光のビームを放出することにより、該表面からのラマン散乱放射を励起する光源と、
b.該ラマン散乱放射を収集する光学的サブシステムと、
c.分光器であって、該分光器は、該光学的サブシステムによって収集された該ラマン散乱放射を受信し、該表面からのラマン散乱放射の複数の反射の蓄積に基づいてラマンスペクトルデータの測定フレームを生成する、分光器と、
d.該表面の物質を区別するためにラマン分光技術を使用して、該ラマンスペクトルデータを分析するプロセッサであって、該プロセッサは、毎秒少なくとも10測定フレームのサンプリング速度で該ラマンスペクトルデータを分析する、プロセッサと
を備えている、システム。
【請求項26】
危険な物質の遠隔検出のための方法であって、
a.第1のハンドヘルドユニットにおいて、該第1のユニットからある距離を離れた表面に光ビームを導くことと、
b.該第1のユニットにおいて、該表面の物質と該光ビームの相互作用の結果として、該表面から反射された散乱放射を捕捉することと、
c.該反射された散乱放射を該第1のユニットとは別の第2のユニットに結合することと、
d.該第2のユニット内の該反射された散乱放射からスペクトルデータを生成することと、
e.該表面の汚染物質を検出するために該スペクトルデータを分析することと
を包含する、方法。
【請求項27】
前記分析することは、前記第2のユニットにおいて行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第2のユニットから遠くに配置されている第3のユニットに、該第2のユニットから前記スペクトルデータをワイヤレス伝送することをさらに包含し、前記分析することは該第3のユニットにおいて行なわれる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記(d)生成することは、前記表面からの散乱放射の複数の反射の1つまたは蓄積物を備えているスペクトルデータの測定フレームを生成することを包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
第1のモードにおいて、前記(d)生成することは、前記表面を横切ったより速い走査とより低い忠実度の分析とのための測定フレームに対する散乱放射の比較的少ない数の反射の蓄積から前記スペクトルデータを生成することを包含し、そして、第2のモードにおいて、該(d)生成することは、該表面を横切ったより遅い走査とより高い忠実度の分析とのための測定フレームに対する散乱放射の比較的多くの数の反射の蓄積から該スペクトルデータを生成することを包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
人間が携帯可能な遠隔型の危険要素の検出装置であって、
a.ハンドヘルドユニットからある距離を離れている表面に光ビームを方向づけるハンドヘルドユニット、および該光ビームの結果として該表面から反射された散乱放射を捕捉する光学的サブシステムと、
b.該反射された散乱放射からスペクトルデータを生成する分光器を備えている着用可能なユニットと、
c.該着用可能なユニットに該ハンドヘルドユニットを接続するケーブルであって、該ケーブルは、1つ以上の光ファイバを備え、該1つ以上の光ファイバは、該ハンドヘルドユニット内の該光学的サブシステムによって収集された該反射された散乱放射を、該着用可能なユニット内の該分光器に搬送する、ケーブルと
を備えている、装置。
【請求項32】
前記着用可能なユニットは、プロセッサを備え、該プロセッサは、前記表面の物質を同定するために分光技術を使用して前記スペクトルデータを分析する、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記着用可能なユニット内にディスプレイデバイスをさらに備え、該ディスプレイデバイスは、前記プロセッサに接続されることにより、表面に存在していることを決定された物質に関する情報を表示する、請求項32に記載の装置。
【請求項1】
表面の汚染物質を検出および同定することが可能である、遠隔型の危険要素の検出および同定システムであって、
a.第1のユニットであって、該第1のユニットは、該第1のユニットから離れた距離にある表面に単色光のビームを放出し、該単色光のビームの結果として該表面からの散乱放射を捕捉する、第1のユニットと、
b.第2のユニットであって、該散乱放射をスペクトルデータに変換する分光器と、該表面の汚染物質を検出するために該スペクトルデータを分析するプロセッサとを備えている、第2のユニットと、
c.該第1のユニットから該第2のユニットに該散乱放射を結合するための、該第1のユニットと該第2のユニットとの間のリンクと
を備えている、システム。
【請求項2】
前記第1のユニットは、ポータブルのハンドヘルドデバイスであり、前記単色光のビームを生成する単色光源を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記単色光源は、紫外(UV)レーザである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2のユニットは、前記単色光のビームを生成する単色光源を備え、前記リンクは、該ビームを前記第1のユニットに供給する光ファイバを備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のユニットは、収集オプティクスサブシステムを備え、該収集オプティクスサブシステムは、前記リンクを経由して前記第2のユニットに結合するために、前記表面から前記散乱放射を収集する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のユニットは、可視標的インジケータを備え、該可視標的インジケータは、複数のビームが前記表面上で前記収集オプティクスサブシステムの焦点において互いに交差するように、該収集オプティクスサブシステムを介して複数の可視光のビームを放出する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記可視標的インジケータは、少なくとも2つのレーザダイオードを備え、該少なくとも2つのレーザダイオードは、前記第1のユニットの筐体に設置され、かつ、それらのビームが前記表面上で前記収集オプティクスサブシステムの焦点において互いに交差するように配置されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記単色光源は、紫外(UV)スペクトルで前記単色光のビームを生成することにより、前記表面の物質に該表面からラマン散乱放射を放出させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記スペクトルデータを複数の既知の物質のスペクトルデータと比較し、該物質が既知の物質であるか、未知の物質であるかを決定する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1のユニットは、毎秒数10センチメートルまでの走査速度で前記表面を走査するように、該表面を横切って動かされる、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記単色光源は、直径が1ミリメートル未満の点を照明するために、前記単色光のビームを生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2のユニットは、さらに、画素化された検出器を備え、該画素化された検出器は、測定フレームを生成し、該測定フレームは、前記表面からの散乱放射の複数の反射の1つまたは蓄積を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2のユニットは、毎秒10測定フレームを上回る速度でデータを生成する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、測定フレームに蓄積される散乱放射の複数の反射の数を調節することによって前記速度を調節する、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記第2のユニットを制御することにより、動作の第1のモードおよび第2のモードのうちの1つで動作し、該第1のモードにおいては、前記画素化された検出器が、測定フレームに対する散乱放射の比較的少ない数の反射を蓄積することにより、前記表面のより速い走査のためのより速い速度と、より低い忠実度の分析とを提供し、そして、該第2のモードにおいては、該画素化された検出器が、測定フレームに対する散乱放射の比較的多くの数の反射を蓄積することにより、該表面のより遅い走査のためのより遅い速度とより高い忠実度の分析とを提供する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のユニットは、収集オプティクスサブシステムを備え、該収集オプティクスサブシステムは、前記リンクを経由して前記第2のユニットに結合するために、前記表面から前記散乱放射を収集し、該収集オプティクスサブシステムは、1つ以上の光学素子を備え、該1つ以上の光学素子は、該収集オプティクスサブシステムの焦点を調節するように動かすことができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
調整された危険要素の検出および同定システムであって、
a.複数の危険要素の検出器であって、該複数の危険要素検出器は、表面に光のビームを放出することによって該表面の汚染物質を検出し、該光ビームの結果として該表面から散乱放射を捕捉し、該散乱光をスペクトルデータに変換し、そして、該スペクトルデータを分析することにより、危険物質または汚染物質に関する検出および同定データを生成することが可能である、複数の危険要素の検出器と、
b.該複数の危険要素の検出器にワイヤレスで連結された中央制御局であって、該中央制御局は、関心のある領域における表面の検出掃引を調整するために、該複数の危険要素の検出器から検出および同定データを受信し、制御信号を該複数の危険要素の検出器に伝送する、中央制御局と
を備えている、システム。
【請求項18】
前記複数の危険要素の検出器のぞれぞれは、遠隔型の危険要素の検出器であり、該遠隔型の危険要素の検出器のそれぞれが、第1のユニットから離れた距離にある前記表面に前記単色光のビームを放出し、該単色光のビームの結果として該表面からの散乱放射を捕捉する、第1のユニットと、該散乱放射をスペクトルデータに変換する分光器、および該表面の汚染物質を検出するために該スペクトルデータを分析するプロセッサを備えている第2のユニットと、該第1のユニットから該第2のユニットに該散乱放射を結合するための、該第1のユニットと該第2のユニットとの間のリンクとを備えている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
ある距離から表面の汚染物質を検出および同定することが可能である遠隔型の危険要素の検出および同定システムであって、
a.第1のユニットであって、該第1のユニットは、該第1のユニットから離れた距離にある表面に光のビームを放出する単色光源と、該単色光のビームの結果として該表面からの散乱放射を捕捉する光学的サブシステムとを備えている、第1のユニットと、
b.該散乱放射をスペクトルデータに変換する分光器と、該表面の汚染物質を検出するために該スペクトルデータを分析するプロセッサとを備えている、該第1のユニットに結合された第2のユニットであって、該第2のユニットは、処理のために該スペクトルデータを別のデバイスに伝送することが可能である送受信器を備えている、第2のユニットと、
c.第3のユニットであって、該第3のユニットは、該第2のユニットから該スペクトルデータを受信する送受信器と、1つ以上のアルゴリズムを用いて該スペクトルデータを分析するプロセッサとを備え、該1つ以上のアルゴリズムは、該第2のユニットのプロセッサによって使用されるアルゴリズムよりもコンピュータ集約的である、第3のユニットと
を備えている、システム。
【請求項21】
前記第3のユニットは、前記送受信器を経由して、該第3のユニットによって行われた分析の結果を前記第2のユニットに伝送する、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記第2のユニットは、ユーザインタフェースと、前記結果を表示するディスプレイとを備えている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記第2のユニット内の前記送受信器と、前記第3のユニット内の送受信器とは、ワイヤレス送受信器デバイスである、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
第2のユニットは、再充電可能な電源を備え、前記第3のユニットは、該第2のユニットと情報を交換するために、かつ、該第2のユニットの該再充電可能な電源の充電可能なバッテリを充電するために電気エネルギーを供給するために、該第2のユニットに接続するドッキングポートを備えている、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
遠隔型の危険要素の検出システムであって、
a.表面に光のビームを放出することにより、該表面からのラマン散乱放射を励起する光源と、
b.該ラマン散乱放射を収集する光学的サブシステムと、
c.分光器であって、該分光器は、該光学的サブシステムによって収集された該ラマン散乱放射を受信し、該表面からのラマン散乱放射の複数の反射の蓄積に基づいてラマンスペクトルデータの測定フレームを生成する、分光器と、
d.該表面の物質を区別するためにラマン分光技術を使用して、該ラマンスペクトルデータを分析するプロセッサであって、該プロセッサは、毎秒少なくとも10測定フレームのサンプリング速度で該ラマンスペクトルデータを分析する、プロセッサと
を備えている、システム。
【請求項26】
危険な物質の遠隔検出のための方法であって、
a.第1のハンドヘルドユニットにおいて、該第1のユニットからある距離を離れた表面に光ビームを導くことと、
b.該第1のユニットにおいて、該表面の物質と該光ビームの相互作用の結果として、該表面から反射された散乱放射を捕捉することと、
c.該反射された散乱放射を該第1のユニットとは別の第2のユニットに結合することと、
d.該第2のユニット内の該反射された散乱放射からスペクトルデータを生成することと、
e.該表面の汚染物質を検出するために該スペクトルデータを分析することと
を包含する、方法。
【請求項27】
前記分析することは、前記第2のユニットにおいて行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第2のユニットから遠くに配置されている第3のユニットに、該第2のユニットから前記スペクトルデータをワイヤレス伝送することをさらに包含し、前記分析することは該第3のユニットにおいて行なわれる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記(d)生成することは、前記表面からの散乱放射の複数の反射の1つまたは蓄積物を備えているスペクトルデータの測定フレームを生成することを包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
第1のモードにおいて、前記(d)生成することは、前記表面を横切ったより速い走査とより低い忠実度の分析とのための測定フレームに対する散乱放射の比較的少ない数の反射の蓄積から前記スペクトルデータを生成することを包含し、そして、第2のモードにおいて、該(d)生成することは、該表面を横切ったより遅い走査とより高い忠実度の分析とのための測定フレームに対する散乱放射の比較的多くの数の反射の蓄積から該スペクトルデータを生成することを包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
人間が携帯可能な遠隔型の危険要素の検出装置であって、
a.ハンドヘルドユニットからある距離を離れている表面に光ビームを方向づけるハンドヘルドユニット、および該光ビームの結果として該表面から反射された散乱放射を捕捉する光学的サブシステムと、
b.該反射された散乱放射からスペクトルデータを生成する分光器を備えている着用可能なユニットと、
c.該着用可能なユニットに該ハンドヘルドユニットを接続するケーブルであって、該ケーブルは、1つ以上の光ファイバを備え、該1つ以上の光ファイバは、該ハンドヘルドユニット内の該光学的サブシステムによって収集された該反射された散乱放射を、該着用可能なユニット内の該分光器に搬送する、ケーブルと
を備えている、装置。
【請求項32】
前記着用可能なユニットは、プロセッサを備え、該プロセッサは、前記表面の物質を同定するために分光技術を使用して前記スペクトルデータを分析する、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記着用可能なユニット内にディスプレイデバイスをさらに備え、該ディスプレイデバイスは、前記プロセッサに接続されることにより、表面に存在していることを決定された物質に関する情報を表示する、請求項32に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2010−501828(P2010−501828A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507866(P2009−507866)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/064475
【国際公開番号】WO2008/121138
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(505194077)アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ, インコーポレイテッド (114)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/064475
【国際公開番号】WO2008/121138
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(505194077)アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ, インコーポレイテッド (114)
【Fターム(参考)】
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