説明

表面活性有機シリコン化合物

本発明は、新規な有機ジシラン又はカルボシラン化合物、それらを製造するための方法および表面活性剤、特に展着剤としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な有機ジシラン又はカルボシラン化合物、それらを製造するための方法および表面活性剤、特に展着剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
生物及び無生物の表面に所望の変化をもたらすための液体組成物の局所的な塗布には、とりわけ、湿潤、拡散、発泡、洗浄力等をコントロールするプロセスが伴う。処理しようとする表面への活性成分の供給を改善する為に水溶液に使用される時、新規有機ジシラン又はカルボシラン化合物は、これらのプロセスをコントロールできる点で、所望の効果を得ることに非常に有用であることがわかっている。さらに、新規有機ジシラン又はカルボシラン化合物は、厳しい環境条件に対して非常に耐久性があることもわかっている。特にそれらは、約5から約10までの広いpH範囲においてそれらの活性を維持する。
【0003】
表面活性基を持つシラン又はシロキサンのある特定のタイプは、これらの特性、特に拡散特性を提供できることが、従来技術により知られている。
【0004】
例えば、トリ-及びジシロキサンで修飾されたアルキレンオキシドは、US 3,299,112 すでに開示されており、非常に良い拡散特性、特に高い拡散速度を示す。これらの化合物は、US 5,504,054開示された通り、スプレー混合物の過度の泡立ちのない農業用スプレーとしての用途が提案されている。このようなポリエーテル−シロキサンは、例えばGE Bayer SiliconesのSilwet L 77 (ユニオンカーバイド(Union Carbide)の前商標名)のような商標名として入手可能である。(例えば、R. Wagner, Y. Wu, G. Czichocki , H. v. Berlepsch, F. Rexin , L. Perepelittchenko, Silicon-modified surfactants and wetting: II. Temperature-dependent spreading behaviour of oligoethylene glycil derivatives of heptamethyltrisiloxane, Applied Organometallic Chemistry Vol 13, Issue 3 pages 201 -208 ; 61 1 -620, 1999, John Wiley & Sons, Ltd.を参照)。
例えば、Silwet L 77は以下の構造を持つ:
【化1】

【0005】
EP-A 710500, EP-A 630901又はUS 6489498 (Goldschmidt)には、1つのポリエーテルの末端基がトリアルキルシリル基である、一官能性基を持つポリエーテルシロキサンが記述されている。DE 41 41 046 (Goldschmidt)には、アルキル硫酸基又は側基としてこれらの塩を持つ他のトリシロキサンが記述されている。
【0006】
GB 1 520 421 A又はEP-A 367381 (Dow Corning)には、親水性基を持つシラン又はシロキサン構造が開示されているが、ここでは、ポリエーテル基は含まれていない。これらの種類のシラン又はシロキサン構造の合成は、クロロメチル-トリメチルシラン又は他のシランに基づくグリニャール反応を利用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの化合物はすべて、1つ以上の欠点持つ。すなわち、pH 5より下又はpH 9より上のような厳しい条件での保存において、どちらの拡散特性も安定しない、及び又は拡散効果、例えば広範なエリア上への拡散効率や速度はとても小さい。特に、pH値が6より小さい(<6)又は7.5より大きい(>7.5)時不安定になる傾向がある2以上のシロキサン結合を持つ表面活性化合物は、拡散に関して非活性化合物へと導かれる反応を受ける。グリニャール反応による製造は、前駆体の費用に重大な影響を与える。
【0008】
超拡散特性を持つ化合物は、厳しい条件下で、より長時間にわたりこの能力を提供でき、それらは表面上への活性物質の作用や、葉の表面上の植物保護試薬の分散又は多くの組成物表面の消泡剤又は泡安定剤のようないくつかの表面の湿潤性を高めることが出来る。それによって展着剤自身が消泡剤又は泡安定剤として働くことが出来る。
【0009】
グリニャールのような有機金属カップリング反応又はウルツ反応又はクロロメチル−トリメチルシランのような高価な前駆体を介して費用のかかる合成は、例えばこれらの化合物の幅広い応用のためのコストという点で、明らかに欠点であることを意味する。
【0010】
本発明に関する表面活性化合物は、特に、プロトン濃度の極端な濃度に対して、言い換えれば、5より小さい又は10より大きいpH値に対して高い耐性を持つ化合物である。これらの化合物の第2の特徴は、酸性又は塩基性条件下、短時間で表面上に拡散する能力であり、長時間を越える貯蔵又は他の化学物質の存在下において、この特性が維持されることである。
【0011】
さらに新化合物は、高価で取り扱いの難しい有機金属化合物の使用を必要することなしに、安価な中間体から全く新しい方法によって得ることが出来る。
【0012】
このように本発明は、厳しい条件下、より長時間に渡る貯蔵での拡散特性を維持する能力を持つ表面活性基で修飾された有機ジシラン又はカルボシランの新構造、前駆体の新しい供給源及び合成の新方法を提供する。
【0013】
そのような特性は、活性成分が短時間で表面上に分散されなければならないさまざまな組成物に必要とされ、特に、処理しようとする表面への活性成分の供給を改善する為に、水溶液に使用される時に必要とされる。新化合物は、少なくともトリシロキサンタイプの化合物に相当する特性を示す。しかしながら、トリシロキサン化合物は、弱酸性のpH 6から非常に弱塩基性のpH 7.5までの狭いpH範囲内でのみ使用することが出来る。この狭いpH範囲以外では、トリシロキサン化合物は加水分解の急速な分解を受ける為に安定しない。その上、新化合物は新規な方法によって調製することが容易である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、式(1)の新規化合物を開示する。:
【化2】


ここで:
Rは、任意に置換されたC1-C22のアルキル及び、任意に置換されたC6-C10のアリールから成る置換基から選ばれる。;
好ましくは、Rはメチルである;
R1及びR2は、互いに独立して有機基から選ばれるが、それらは、炭素原子を介してケイ素原子へ結合され、配置される。但し、R1及びR2の少なくとも1つは親水性基から成る。;
好ましい有機基は、以下に定義されたR基から選ばれる。特に好ましい有機基は、下記の非親水性基として定義される2級又は3級のC3-C12のアルキル又はシクロアルキル基である。
Xは、単結合又は二価の有機残余基であり、炭素原子を介してケイ素原子へと結合され、X基はそこに配置されるが、-CH2-CH2-は除かれる。;

好ましくはXは単結合又はメチレン(-CH2-)であり、

n + m > O, 好ましくは、n = O及びm = 1である。
【0015】
本発明の化合物中、好ましくは、R1及びR2の1つが親水性有機基であり、もう1つは非親水性有機基である。
【0016】
本発明の化合物中、好ましくは、R2は親水性有機基で表される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は以下の定義を満たす。:

m = 1及びn = O、
R2は、親水性有機基を表す、
R1は、非親水性有機基を表す。
【0018】
本発明の化合物中、親水性有機基は以下の官能基の1以上を含む:
- ポリエーテル基、
- ポリエーテルエステル基、
- アミド基、
- アミンN-オキシド基、
- 硫酸塩基、
- 第4級アンモニウム基、
- 双極イオン基、
- スルホン酸塩基、
- カルボキシル基、
- リン酸塩基、
- ヒドロキシル基、
- スルホコハク酸塩基
【0019】
親水性有機基の親水性特性をもたらす最も好ましい官能基は、式(2)の基から選ばれるポリエーテル基である。:
【化3】


このとき、
Zは、二価の任意に置換された直鎖状又は分岐した(C-1-C-IO)炭化水素基であり、少なくとも1つのオキソ基により任意に割り込まれ、及び/又はヒドロキシル基により任意に置換されている。

2 < a + b + c < 200 a > 2、好ましくは: 2 < a + b + c < 20,

R3は、水素、任意に置換されたC1-C22のアルキル基、又は任意に置換されたC1-C22アルカノイル基から選択され、好ましくは、R3はC1-C4のアルキルである。

式(2)中、(C2H4O)基は、式
【化4】


の基である。

式(C3H6O)の基は、式
【化5】


の基である。

また、式(C4H8O)の基は、式
【化6】


の基である。
【0020】
これらのアルキレンオキシド基は、いくらかの可能な配列、特にブロック-ワイズ又はランダム-ワイズに配置することが出来る。
【0021】
式(2)は好ましくは:
a= 2-200、より好ましくは2-20; 最も好ましくは2-10;
b= 0-20、より好ましくは0-5;
c= 0-20、より好ましくは0-5。
【0022】
R1又はR2の親水性有機基は、以下のものも含むことが出来る。:
-Z-N+R2-(CH2)P-COO- (カルボベタイン)、
-Z-N+R2-(CH2)P-SO3- (スルホベタイン)、
-Z-NO+R2 An- (アミンオキシド)、
-Z-CO-NR2, -Z-NR2-CO-R3 (アミド)、
-Z-SO3- M+ (スルホン酸塩)、
-Z-O-SO3- M+ (硫酸塩)、
-Z-O-PO32- 2M+ (リン酸塩)、
-Z-CO2- M+ (カルボキシレート)、
-Z-N+R3 An- (第4級アンモニウム基)、
ここで、Rは、上で定義した通りであり、
Pは、1から6であり、
An-は、アニオン、例えば、ハロゲン化合物、カルボキシレート、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等である。
M+は、カチオン、例えば、ナトリウム、アンモニウム、カリウム等である。
【0023】
好ましいSi-Z-結合を構築するための反応経路は、上で定義されたように、例えば、アルケニルエーテル、アルケニルエステル、アルキレンエポキシド又はアルケニルハロゲン化合物のような他のユニットをもつアルケニル置換された前駆体のヒドロシリル化である。好ましいアルケニル基は、例えば、アリル置換されたポリエーテルに代表されるアリル基である。第4級アンモニウム基、ベタイン、又はアミンオキシドの製造には、さらなる反応が必要になることがある。
【0024】
非親水性基R1又はR2は、前述の官能基を1つも包含しない。好ましい非親水性有機基は、1つ以上のフッ素原子、C6-C10-アリール基、及びC6-C10-アリール(C1-C6)-アルキル基で任意に置換されたC1-C22-アルキル基から選択される。最も好ましい非親水性有機基は、例えばメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、スチリルのようなC1-C12-アルキル基である。;特に好ましいのは、イソ-プロピル、sec-ブチル、tert.-ブチル、sec.-ペンチル、sec.-ヘキシル、シクロヘキシルエチル、リモニル、及びノルボニル基である。
【0025】
本発明の化合物の好ましい実施形態では、R1又はR2は、ポリエーテル基から選択された親水性有機基が典型であり、それは、好ましくは上記式(2)の中から選択される。
【0026】
本発明は、次式の化合物を調整するための新規製造プロセスにもかかわる。
【化7】


ここで
Rは、任意に置換されたC1-C22アルキル及び任意に置換されたC6-C10アリールから成る置換基から選ばれる。
R1及びR2は、互いに独立して有機基から選ばれるが、それらは、炭素原子を介してケイ素原子へ結合され、配置される。但し、R1及びR2の少なくとも1つは親水性基から成る。

Xは、単結合又は二価の有機残余基であり、炭素原子を介してケイ素原子へと結合され、当該X基はそこに配置される。

n + m > O、

製造プロセスは、次のステップから成る。:
a) 式(III)の化合物
【化8】


又は同じものから成る留分を対象とする。ここで、
R及びXは、上で定義した通り、
Yは独立してR1又は加水分解性基である。
但し、少なくともY基の一つは加水分解性基であり、
活性水素を含有する化合物を一緒に有する。

b)任意に反応生成物を分離する、

c)任意にステップb)で得られた反応生成物を、水を用いた加水分解下に置く。

d)ステップa)、b)又はc)得られた反応生成物を式(IV)の化合物と反応させる。
【化9】


ここで、R及びmは、それぞれ上で定義した通り、
式(V)の化合物を得るための反応:

【化10】


R4は、独立してR1又はHである。
但し、少なくとも1つのR4は、Hである、

e)Si-H-基が、親水性基又は親水性基R1又はR2へそれぞれ反応又は転移させることができる官能基を有する不飽和有機化合物と共にヒドロシリル化反応を受けること。

(ステップe)は、通常のヒドロシリル化条件に従って実行される。すなわち、当該反応はSiH-結合に対する不飽和炭化水素化合物のラジカル又は金属触媒添加反応である。
通常、反応は温度範囲Oから250℃、好ましくは、20から150℃まで、0.1から100 barで、加えられる溶媒の有無にかかわらず実行される。

f)ステップe)で得られた官能基を、親水性基を形成するための化合物と、任意に反応させる。それによって式(I’)の化合物を得る。

ステップa)中、式(III)の化合物
【化11】


又は同じ物から成る留分、ここでR及びXは上で定義した通りであり、Yは、独立してR1又は加水分解性基である。但し、Y基の少なくとも1つは加水分解性基であり、活性水素含有化合物と反応する。
【0027】
加水分解性基Yは、例えば、クロロ、ブロモ、C1C12-アルコキシ、C1C8-カルボニルオキシ、例えば、アセトキシ、アミノ、アミノアルキル、オキシモアルキル及びベンズアミド残基等から成る基から選ばれるものである。
【0028】
活性水素含有化合物は、好ましくは例えば、水、アルコール、カルボン酸、アンモニア、アミン、オキシム、エノール等のような酸性水素原子を持つ化合物から選ばれる。
【0029】
好ましい事例は、1つのYは加水分解性基であり、かつもう1つは例えばアルキルであり、
【化12】


と水との反応が、式
【化13】


のジシロキサン構造の形成を導く:この場合、Yは、R又は非親水性基R1、例えばアルキル基であり、これにより、当該ジシロキサン分子は、異なる置換基Yを持つことが可能となる。

ある場合においては、化合物
【化14】


と他の活性水素含有化合物を最初に反応させる方が、例えば式
【化15】


【化16】


【化17】


【化18】


【化19】


等の化合物の形成を伴う、例えばアルコール、カルボン酸、アミン、アンモニア等のような水溶液と反応させるよりも適切なことがある。
【0030】
それらの化合物は、最終的には、式
【化20】


のジシロキサンを形成するための水を用いた反応(ステップc)も受ける。:
この場合Yは例えばアルキル基である。
【0031】
しかしながら、このような当該Y-SiR2-X-SiR2-Yの中間段階は、上記に示されたこれらの中間体の最初の精製によって純粋な化合物を提供するためには、水より他の活性水素含有化合物を用いた方が有用かもしれない。
【0032】
式(III)の化合物は、例えばクロロシランをSi-Si又はSi-X-Si-結合を形成する金属-媒介反応下に置くことによって合成することが出来る。又、好ましくはミューラー・ロショー(Muller-Rochow)合成による高沸騰メチルクロロシラン、メチルクロロジシラン、メチルクロロジシロキサン及びメチルクロロカルボシランを包含している留分から得られる。
【0033】
このようなシランは、ペンタメチル-クロロジシラン、1,1,1,3,3-ペンタメチル-3-クロロジシロキサン、1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ジクロロジシラン、トリメチルシリル-ジメチルクロロシリルメタン、トリメチルシリル-メチルジクロロシリルメタン、ビス-ジメチルクロロシリルメタン1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジクロロジシロキサン、ペンタメチルメトキシジシラン、トリメチルシリル-ジメチル-メトキシシリルメタン及び1,1,1,3,3-ペンタメチル-3-メトキシジシロキサンから成る群から選択することが出来る。
【0034】
ステップd)において、反応生成物は、ステップa)、b)又はc)、特に、式:
【化21】


のジシロキサンで得られる。ここでYは、例えばアルキル基であり、式(IV)の化合物と反応される。
【化22】


ここで、R及び'm'は、それぞれ上で定義した通りであり、
式(V)の化合物が得られる。
【化23】


ここで、R4は、独立してR1又はHである。
但し、少なくとも1つのR4はHである。
【0035】
式(IV)の化合物は、当業者にとって周知であり、一般に市販で手に入れられる。
【0036】
ステップd)は、通常の酸触媒平衡反応の通り、例えば10から150℃までの温度範囲で実行される。典型的な触媒には、パーフルオロアルキルスルホン酸のようなスルホン酸、ホスホニトリル(例えばPNCI2)Xによりその場で(in-situ)形成される酸触媒、酸活性シリカ、クレイ又はチャコール、酸性イオン交換性樹脂が含まれる。
【0037】
ステップd)では、化合物
【化24】


が形成されるが、それは、一般的な分離技術、特に蒸留によって分離できる。
【0038】
このように、本発明は同様に式(V)の新規中間体化合物を提供する。:
【化25】


ここで、R、X、n、m及びR4は、それぞれ上で定義した通り、そしてそれは、特に中間体が上記で説明したヒドロシリル化をうけることによる式(1)の化合物の調整にとって有用である。
【0039】
本発明は、表面活性剤、特に、湿潤剤、展着剤、泡安定剤、洗浄剤、含浸剤、帯電防止剤、分散剤、乳化剤、レベリング剤、平滑剤、消泡剤及び/又は防曇剤のような新規化合物の使用に関する。
【0040】
これらの優れた表面活性、特に、これらの超拡散活性によって、本発明の化合物は、農業の組成物、洗濯組成物、リンス−オフ組成物、パーソナルケア組成物、コーティング組成物、ガルバニック組成物、ホームケア組成物、クリーニング組成物、艶出し組成物、洗剤組成物、コンクリート組成物、織物トリートメント組成物、インク組成物、印刷組成物、粘着物組成物、潤滑剤組成物、ナノ粒子含有組成物を含む幅広い可能な用途を見出すことが出来る。
【0041】
通常は、そして好ましくは、本発明の化合物は、例えば農業の活性材料、美容活性材料を含むパーソナルケア材料、洗浄剤、防食剤、平滑剤の群から選択される活性材料と共に、組成物中で使用される。
【0042】
農業の活性材料は、例えば、農薬、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、植物成長調整剤及び肥料から成る群から選択される。
【0043】
好ましい実施形態において、本発明の化合物は、不連続相は水から成り、そして連続相は本発明の化合物から成る水性エマルションとして使用される。水性エマルションは、上述したような活性材料も包含してもよい。
【0044】
別の好ましい実施形態においては、本発明の化合物は、連続相は水から成り、そして不連続相は本発明の化合物から成る水性エマルションとして使用される。水性エマルションは、上述したような活性材料も包含してもよい。
【0045】
他の好ましい本発明の化合物の実施形態では、連続相は水から成り、そして不連続相は本発明の化合物から成る水性エマルションとして使用される。水性エマルションは、上記の活性材料も又包含してもよい。
【0046】
本発明の化合物は、上記で説明したように任意で活性材料と一緒に、不連続相は非水性溶媒から成り、連続相は本発明の化合物から成る非水性エマルションとして使用してもよい。
【0047】
本発明の化合物は、上記で説明したように任意で活性材料と一緒に、連続相は、非水ヒドロキシル溶媒から成り、そして不連続相は本発明の化合物から成る非水性エマルションとして使用してもよい。
【0048】
以下に、本発明の化合物の適用可能な分野、特にこれらの水性組成物について示す。
【0049】
A. 農薬、農業、園芸、芝土、観葉植物及び林業におけるアジュバントとして:

多くの農薬用途では、葉の表面上への湿潤及び拡散をもたらすためにスプレー混合物へアジュバントを添加することを必要とする。そのようなアジュバントは界面活性剤であることが多く、例えば、湿らすことが困難である葉の表面上にスプレー液滴の保持力を増加させることや、スプレー範囲の改善の為に拡散を高めることや、又は植物の表皮の中へ除草剤の浸透をもたらすことなど、様々な機能を果たすことが出来る。
【0050】
このようなアジュバントは、タンクサイド(tank-side)への添加物として提供されるか、あるいは農薬製剤の構成成分として使用される。
【0051】
典型的な農薬への使用には、農業、園芸、芝、観葉植物、住居及び庭、獣医及び林業への用途が含まれる。
【0052】
本発明の農薬組成物も又、少なくとも1つの農薬を含有し、ここでは、本発明の化合物は、濃縮形態として用いる場合も、又はタンク中で希釈された混合液として用いる場合も、最終的な使用濃度が0.005 %から2 %となるのに十分な量で存在する。任意に当該農薬組成物は、賦形剤、共界面活性剤、溶媒、消泡剤、堆積助剤、移動遅延剤、生物製剤、微量栄養素、肥料等を含有しても良い。ここで農薬という用語は、有害生物の駆除に使用されるいかなる化合物、例えば、殺鼠剤、殺虫剤、ダニ殺虫剤、殺菌剤、及び除草剤をも意味する。用いることが出来る農薬の例としては、限定されないが、成長調整剤、光合成阻害剤、色素阻害剤、分裂阻害剤、脂質生合成阻害剤、細胞壁阻害剤、及び細胞膜分裂剤が含まれる。本発明の組成物中に用いる農薬の量は、用いる農薬のタイプによって変わる。本発明の化合物又は組成物と共に利用出来る農薬組成物のより具体的な例は、限定されないが、除草剤及び成長調整剤であり、例えば:フェノキシ酢酸、フェノキシプロピオン酸、フェノキシ酪酸、安息香酸、トリアジン及びs-トリアジン、置換されたウレア、ウラシル、ベンタゾン、デスメディファム、メタゾール、フェンメディファム、ピリデート、アミトロール、クロマゾン、フルリドン、ノルフルラゾン、ジニトロアニリン、イソプロパリン、オリザリン、ペンディメタリン、プロジアミン、トリフルラリン、グリホセート、スルホニルウレア、イミダゾリノン、クレトジム、ジクロホップ-メチル、フェノキサプロップ-エチル、フルアジホップ-p-ブチル、ハロキシホップ-メチル、キザロホップ、セトキシジム、ジクロベニル、イソキサベン、及びビピリジリウム化合物等である。
【0053】
本発明の化合物と共に使用可能な殺菌剤組成物には、限定されないが、アルジモルフ、トリデモルフ、ドデモルフ、ジメトモルフ;フルシラゾール、アザコナゾール、シプロコナゾール、エポキシコナゾール、フルコナゾール、プロピコナゾール、テブコナゾール等;イマザリル、チオファネート、ベノミルカルベンダジム、クロロタロニル、ジクロラン、トリフロキシストロビン、フロキシストロビン、ジモキシストロビン、アゾキシストロビン、フルカラニル、プロクロラズ、フルスルファミド、ファモキサドン、キャプタン、マンネブ、マンコゼブ、ドジシン、ドジン及びメタラキシルが挙げられる。
【0054】
本発明の組成物と共に使用可能な殺虫剤、殺幼虫剤、ダニ殺虫剤及び卵の段階で作用する化合物には、限定されないが、バチルス・チューリンゲンシス、スピノサド、アバメクチン、ドラメクチン、レピメクチン、ピレトリン、カルバリル、ピリミカルブ、アルジカルブ、メソミル、アミトラズ、ホウ酸、クロロジメホルム、ノバルロン、ビストリフルロン、トリフルムロン、ジフルベンズロン、イミダクロプリド、ダイアジノン、アセフェート、エンドサルファン、ケレバン、ジメトエート、アジンホス-エチル、アジンホス-メチル、イソキサチオン、クロルピリホス、クロフェンテジン、ラムダ-シハロトリン、ペルメトリン、ビフェントリン、シペルメトリン等が挙げられる。
【0055】
当該農薬は液体又は固体であってもよい。固体である場合、適用前に、溶媒、又は本発明の化合物に溶解できることが好ましく、そして、当該発明の化合物は、溶媒として機能させてもよく、あるいは、かかる可溶性又は更なる界面活性のための界面活性剤がこの機能を発揮しても良い。
【0056】
農業賦形剤:
バッファー、保存料、担体及び技術的に知られている他の一般的な賦形剤も又、本発明の化合物に含有させても良い。
【0057】
溶媒も又、本発明の化合物から成る組成物中に含有させても良い。これらの溶媒は、室温(25℃)で液体状態である。例えば水、アルコール、芳香族溶媒、油(すなわち鉱油、植物油、シリコーンオイル等)、植物油の低級アルキルエステル、脂肪酸、ケトン、グリコール、ポリエチレングリコール、ジオール、パラフィン等が挙げられる。具体的な溶媒は、ここに援用されるUS 5,674,832に示された2,2,4-トリメチル、1,3-ペンタンジオール及びそのアルコキシ化(特に、エトキシ化)された誘導体、又はn-メチル-ピロリドンが挙げられる。
【0058】
共界面活性剤:
さらに、超拡散を阻害しない単鎖疎水性物質を持つ共界面活性剤は、US 5,558,806; 5,104,647;及び6,221,811に記載されている通り、ここに援用される。
【0059】
この中で有用な共界面活性剤は、非イオン、陽イオン、陰イオン、両性、双性イオン、高分子界面活性剤又はそれらのあらゆる混合物が含まれる。界面活性剤は、典型的には炭化水素ベース、シリコーンベース又はフッ化炭素ベースである。
【0060】
有用な界面活性剤は、アルコキシレート(特に、エトキシレート(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、及びそれらの混合物の共重合体を含むブロックコポリマーを含む))、;アルキルアリールアルコキシレート(特に、エトキシレート又はプロポキシレート及びそれらの誘導体(アルキルフェノールエトキシレートを含む));アリールアリールアルコキシレート(特に、エトキシレート又はプロポキシレート及びそれらの誘導体);アミンアルコキシレート(特に、アミンエトキシレート);脂肪酸アルコキシレート;脂肪族アルコールアルコキシレート、スルホン酸アルキル;アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンスルホン酸;硫化脂肪族アルコール、アミン又は酸アミド;イセチオン酸ナトリウムの酸エステル;スルホコハク酸ナトリウムのエステル;硫化又はスルホン化脂肪酸エステル;石油スルホナート; N-アシルサルコシネート;アルキルポリグリコシド;エトキシ化アルキルアミン;等が挙げられる。
【0061】
具体例としては、アルキルアセチレンジオール(SURFONYL-Air products社製)、ピロリドンベースの界面活性剤(例えばSURFADONE - LP 100 - ISP)、2-エチルヘキシルスルフェート、イソデシルアルコールエトキシレート(例えばRHODASURF DA 530 - Rhodia)、エチレンジアミンアルコキシレート (TETRONICS - BASF)、及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー(PLURONICS - BASF)及び双性イオン系界面活性剤(Rhodia)が挙げられる。
【0062】
好ましい界面活性剤にはエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー(EO/PO);アミンエトキシレート;アルキルポリグリコシド;オキソ−トリデシルアルコールエトキシレート等が挙げられる。
【0063】
B.コーティング、塗装:
典型的なコーティング製剤は、乳化、構成成分の相溶性、平滑化、フローの向上、脱気及び表面欠陥の減少を目的とする湿潤剤又は界面活性剤として、本発明の化合物を含有しても良い。さらに、本発明の化合物は、硬化塗膜又はドライフィルムの改善、例えば耐摩耗性、ブロッキング防止、親水性及び疎水性の特性の改善をもたらすことが可能である。コーティング製剤は、溶媒コーティング、水性コーティング及び粉体コーティングとして存在することが出来る。
【0064】
当該コーティング構成成分は、;建築用コーティング;自動車のコーティング及びコイルコーティングのようなOEM製品のコーティング;工業用メンテナンスのコーティング及び船舶用コーティングのような特殊目的のコーティング;として使用することが出来る。
典型的な樹脂の種類は、ポリエステル、アルキド、アクリル、エポキシ、ポリウレタンである。
【0065】
C. パーソナルケア
好ましい実施形態では、本発明の化合物から成る組成物は、パーソナルケア組成物の100重量部("pbw")に対し、0.1から99 pbwまで、より好ましくは0.5 pbwから30 pbwまで、更により好ましくは1から15 pbwまでの本発明の化合物と、1 pbwから99.9 pbwまで、より好ましくは70 pbwから99.5 pbwまで、更により好ましくは85 pbwから99 pbwまでのパーソナルケア組成物を含む。
【0066】
本発明の化合物を含有する組成物は、例えばローション及びクリームのようなパーソナルケアエマルションに使用されることが出来る。一般的に知られているように、エマルションは、少なくとも2つの不混和層からなり、1つは連続なもう1つは不連続な層である。さらに、エマルションは、様々な粘性を有する液体又は固体であっても良い。その上、エマルションの粒径は、それらをマイクロエマルションの状態にしても良く、そして、十分に小さなマイクロエマルションの時に、透明になることもある。さらに、エマルションのエマルション調整をすることもでき、それらは、一般的に多重エマルションとして知られている。

これらのエマルションは、
1)不連続相が水を含み、連続相が本発明の化合物を含む水性エマルション、;
2)連続相が水を含み、不連続相が本発明の化合物を含む水性エマルション、;
3)不連続相が非水性のヒドロキシ溶媒を含み、連続相が本発明の化合物を含む非水性エマルション、;並びに、
4)連続相が非水性のヒドロキシ系有機溶媒を含み、不連続相が本発明の化合物を含む非水性エマルション
であってもよい。
【0067】
シリコーン層を含有する非水性エマルションは、US 6,060,546及びUS 6,271,295に記述されており、この開示は、ここで具体的に援用する。
【0068】
ここで使用される用語「非水性のヒドロキシ有機化合物」とは、アルコール、グリコール、多価アルコール及び重合グリコールで例示されるヒドロキシル基含有有機化合物及びそれらの混合物を意味し、それらは、室温(例えば約25 0C)、約1気圧で液体である。非水性有機ヒドロキシ溶媒は、アルコール、グリコール、多価アルコール及び高分子グリコールを含むヒドロキシル含有有機化合物又はこれらの混合物から成る群から選択され、それらは、室温(例えば約25℃)及び1気圧において液体である。
【0069】
望ましくは、非水性ヒドロキシ基含有有機溶媒は、エチレングリコール、エタノール、プロピル、アルコール、イソ-プロピルアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、イソ-ブチレングリコール、メチルプロパンジオール、グリセリン、スルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンコポリマー及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0070】
シリコーンのみの相、シリコーン相を含む無水の混合物、シリコーン層を含む含水の混合物、油中水型エマルション、水中油型エマルション、又は2つの非水性エマルション若しくはこれらのバリエーション、として所望の形態に到達した時点で得られる物質は、通常、改善された堆積特性及び良い感触特性を有するクリーム又はローションである。それらは、ヘアケア、スキンケア、制汗剤、日焼け止め剤、化粧品、カラー化粧品、防虫剤、ビタミン及びホルモン担体、香料担体等の調整にブレンドさせることができる。
【0071】
本発明の化合物及び本発明から誘導されたシリコーン組成物を含有してもよいパーソナルケアの用途としては、限定されないが、デオドラント、制汗剤、制汗剤/デオドラント、髭剃り製品、スキンローション、モイスチャー、化粧水、入浴製品、洗浄製品、例えば、シャンプー、コンディショナー、ムース、スタイリングジェル、ヘアスプレー、毛髪染料、ヘアカラー生成物、ヘアブリーチ、ウェーブ製品、ストレートパーマ液のようなヘアケア生成物、マニキュア液、マニキュアの除光液のようなマニキュア製品、ネイルクリーム及びローション、甘皮軟化剤、日焼け止め、防虫剤及び老化防止製品のような保護クリーム、例えば、リップスティック、ファンデーション、フェースパウダー、アイライナー、アイシャドウ、ほお紅、メイクアップ、マスカラ、及びその他のパーソナルケア製品(一般的にシリコーン構成成分が添加されるもの)、並びに、皮膚に適用される医薬組成物の局所的な投与のためのドラッグデリバリーシステムなどが含まれる。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明のパーソナルケア組成物は、1つ以上のパーソナルケア材料をさらに含有する。適切なパーソナルケア成分は、例えば皮膚軟化剤、モイスチャー、保湿剤、例えばオキシ塩化ビスマス及び二酸化チタンでコーティングしたマイカ等の真珠光沢顔料を含む顔料、着色剤、フレグランス、殺生物剤、保存料、公算か物質、抗菌剤、抗真菌薬、発汗抑制剤、洗顔料、ホルモン、酵素、薬用化合物、ビタミン、塩、電解質、アルコール、ポリオール、紫外線吸収剤、植物抽出物、界面活性剤、シリコーンオイル、オーガニックオイル、ワックス、塗膜形成要素、例えばヒュームド・シリカ又はケイ酸等の増粘剤、微粒子フィラー、例えばタルク、カオリン、デンプン、加工デンプン、マイカ、ナイロン、例えばベントナイト及びオルガノ−改質粘土等の粘土が挙げられる。
【0073】
適切なパーソナルケア組成物は、当該技術分野の既知の方法で、組み合わせにより作成され、例えば上記の構成成分1つ以上と本発明の化合物との混合によって作られる。適切なパーソナルケア組成物は、単相の形状又は、水中油型、油中水型及び無水エマルションを含むエマルションの形状とすることができ、ここでシリコーン相は、不連続相又は連続相であって良く、あるいは、油中水中油型エマルション及び水中油中水型エマルションのような多層エマルションであって良い。
【0074】
有用な一実施形態では、発汗抑制剤組成物は、本発明の化合物と1つ以上の活性な発汗抑制剤から成る。適切な発汗抑制剤は、例えば、米国食品医薬品局の1993年10月10日付モノグラフにカテゴリーIの活性制汗成分(人に使用される店頭販売用)が挙げられており、例えば、ハロゲン化アルミニウム、ヒドロキシハロゲン化アルミニウム(例えばアルミニウム−ジルコニウムクロロ水和物、アルミニウムクロロ水和物)、並びに、それらとジルコニルオキシハロゲン化物及びジルコニルヒドロキシハロゲン化物との複合体又はそれらの混合物(アルミニウムジルコニウムグリシン錯体、例えば、アルミニウムジルコニウムテトラクロロヒドレックスグリシン)などが挙げられる。
【0075】
他の有用な実施形態では、スキンケア組成物は本発明の化合物及び媒体(例えばシリコーンオイル又はオーガニックオイル)から成る。当該スキンケア組成物は、任意に皮膚軟化薬(例えば、トリグリセリドエステル、ワックスエステル、脂肪酸のアルキル又はアルケニルエステル又は多価アルコールエステル)、並びに、通常スキンケアに使用されている1つ以上の既知の構成成分、例えば、顔料、ビタミン(例えばビタミンA、ビタミンC、及びビタミンE)、日焼け止め又は日焼け防止化合物(例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、オキシベンゾン、オクチルメトキシケイ皮酸塩、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、p−アミノ安息香酸及びオクチルジメチル−p−アミノ安息香酸)等をさらに含有しても良い。
【0076】
他の有用な実施形態は、カラー化粧品組成物(例えば、リップスティック,メイクアップ又はマスカラ組成物)は、本発明の化合物と着色剤(例えば色素、水溶性染料又は脂溶性の染料)を含む。
【0077】
他の有用な実施形態では、本発明の化合物および同組成物は、芳香性物質と共に利用される。これらの芳香性物質は、芳香性化合物、カプセル化された芳香性化合物又は、無水化合物又はカプセル化されたフレグランス放出化合物であっても良い。特に本発明の化合物と、US特許6,046,156、6,054,547、6,075,1 11、6,077,923、6,083,901及び6,153,578(これにより具体的に参照することにより援用される。)にて開示されているフレグランス放出シリコーン含有化合物はここで全て適合する。
【0078】
本発明の化合物の用途は、パーソナルケア組成物に限定されなく、本発明の組成物で処理されたワックス、艶出し剤及び織物のような他の製品も意図される。
【0079】
D.ホームケア
ホームケア用途としては、洗濯洗剤及び柔軟剤、食器用洗剤、木材及び家具光沢剤、床磨き剤、浴槽及びタイルクリーナー、トイレ用クリーナー、硬表面クリーナー、窓用クリーナー、防曇剤、配水管クリーナー、自動食器洗い洗剤及びシーティング剤、カーペットクリーナー、プレウォッシュスポッター、錆クリーナー及びスケール除去剤が含まれる。
【0080】
本発明は、以下の実施例に基づいて説明される。
【実施例】
【0081】
実施例1−出発原料クロロジシランの単離
ステップa) Muller-Rochow-合成からの高沸点のメチルクロロシロキサン留分を、いわゆる塩基触媒のジシラン開裂反応にさらした。得られた当該生成物を蒸留した。100から160℃までの沸点を持つ留分が分離された。分離された留分の主な化合物は、GC/GC-MSにより決定した。代表的な組成物を表.1に示す。
【0082】
【表1】


表.1 ステップa)で得られたクロロシラン留分の主成分
【0083】
b) ガラスカラム(全長1.2 m、直径4 cm、0.1 - 0.3 cm長のガラスピース充填)を、ステップa)で得られたクロロシラン留分の分離に使用した。
【0084】
【表2a】


表.2a 沸点及び収量
【0085】
【表2b】


表.2b 留分の成分
後続反応に十分な量の出発原料を得るために、前述のステップを繰り返した。
【0086】
実施例2− Me3SiSiMe2OSiMe2-(CH2)3-(OCH2CH2)6 8-OCH3の合成
ステップ a) Me3SiSiMe2Clを含有する留分の加水分解:
室温にて、1600 gの脱イオン水を4000 mlの容器に入れた。
上述で明らかにした留分1 -4 (沸点範囲130-141℃)を含有する混合物800 gを、撹拌下、滴下により添加した。添加終了後1時間、当該混合物を80- 90℃に加熱した。当該混合物は二層に分離した。当該油層は、硫酸ナトリウムで脱水させた(収量 505 g)。
【0087】
ステップ b) Me3SiSiMe2OSiMe2Hの合成:
405.2 gのステップ a)の加水分解生成物を、568.5 g (4.24 mol)のMHMHと1 gのC4F9SO3H (触媒としてペルフルオロブタンスルホン酸)と共に混合した。当該混合物は3時間加熱還流した。バルク温度は、約100℃まで増加した。その後、当該混合物を60℃まで冷却し、0.5 g (NH4)2CO3と混合し、1時間撹拌して、フィルター処理した。
【0088】
最初の粗蒸留物は、沸点 141 -150℃で142 gの留分を生じさせた。
当該留分の二番目の蒸留物は、76.8gのMe3SiSiMe2OSiMe2H (沸点 145-15O℃, 94.8 % GC)を生じさせた。
【0089】
ステップ c) Me3SiSiMe2OSiMe2-(CH2)3-(OCH2CH2)6.8-OCH3の合成:
平均構造式
CH2=CHCH2-(OCH2CH2)6.8-OCH3
のアリルポリエーテル4.43 g (11.9 mmol)と白金触媒[(Dvinyl)4修飾Pt0 キシレン溶液; 1 % Pt含有]20 mgを室温で混合し、60℃に加熱した。ステップ b)に従って合成されたMe3SiSiMe2OSiMe2H 2.58 g (12.5 mmol)を、20分かけて滴下により加えた。当該混合物は、さらに7時間、60℃で保持した。
SiHの体積測定は、SiH流体の90 %変換を示した。
反応生成物の1H-NMR調査は、
[(CH3)3Si + (CH3)2SiCH2] : (CH3)2SiO = 5 : 2.17 (理論上 5 : 2)の強度比を示した。
さらに、二重結合のプロトンCH2=CH- のシグナルは、もはや見つからなかった。
【0090】
実施例3−Me3SiCH2SiMe2OSiMe2-(CH2)3-(OCH2CH2)6.8-OCH3の合成:
ステップ a)Me3SiCH2SiMe2Clを含有する留分の加水分解物:
750 gの脱イオン水を、室温で2000 mlのボトルに入れた。上述で明らかにした留分8 (沸点範囲153-158 ℃)500 gを、撹拌下滴下により加えた。当該混合物を、添加終了後1時間100 ℃まで加熱した。1000 gの 脱イオン水に溶解した100 g のNaHCO3を加えた。添加後、温度を100 ℃で保持した。当該混合物は二層に分離した。当該油層は、硫酸ナトリウムで脱水し、フィルター処理した(収量 271 g)。
【0091】
ステップ b) Me3SiCH2SiMe2OSiMe2Hの合成:
265 gの加水分解生成物3aを、250 g (1.86 mol)のMHMH 及び0.5g C4F9SO3Hと共に混合した。当該混合物を、4時間加熱還流した。バルク温度は約100℃まで上昇した。その後、当該混合物を70℃まで冷却し、2 gの(NH4)2CO3と混合し、1時間撹拌し、フィルター処理した(収量 473 g)。
【0092】
最初の粗蒸留物は、沸点 155-177℃で210.5 gの留分を生じさせた。
この留分の蒸溜物は、75 % Me3SiCH2SiMe2OSiMe2H及び19 % HSiMe2OSiMe2SiMe2OSiMe2H (GC/GC-MSの結果; 沸点 166-17O0C)を含有する46.6 gの混合物を生じさせた。
【0093】
ステップ c) Me3SiCH2SiMe2OSiMe2-(CH2)3-(OCH2CH2)6.8-OCH3の合成:
平均構造式
CH2=CHCH2-(OCH2CH2)6.8-OCH3
のアリルポリエーテル12.8 g (34.4 mmol)を600Cまで加熱した。
白金触媒[(Dvinyl)4修飾Pt0 キシレン溶液; 1 % Pt含有]20 mgを加えた。

ステップ b)に従って合成された物質を含む5 g (26.5 mmol)の75%Me3SiCH2SiMe2OSiMe2Hを、10分かけて滴下により加えた。当該混合物を、60℃でさらに3時間保持した。

SiHの体積測定は、SiH流体の95.8 %変換を示した。
反応生成物の1H-NMR調査は、
SiCH3 : SiCH2 = 18.71 : 2
(理論上75% + 19% 出発原料3b. = 19.18 : 2)の強度比を示した。
さらに、SiHのシグナルは、もはや見つからなかった。
【0094】
実施例4−特性テスト
実施例2及び3で得られた物質の拡散特性をテストした。
【0095】
拡散試験は、滑らかなポリスチレン表面(ペトリ皿)上で実行した。
【0096】
実施例2及び3の物質を含んでいる32 mgの水溶液を、(濃度は以下の表3及び表4に示す)ポリスチレン表面に置き、液滴の最大直径を、拡散過程の終了決定後に測定した。低いpH又は高いpH水溶液は、それぞれ2 %の酢酸又はエタノールアミンを含有した。空気の湿度は、20から45 %までの範囲であった。水溶液は室温(20から23℃まで)でバイアル瓶中にて保管された。
【0097】
【表3a】


pH 7における水中で、濃度1 , 0.33及び0.2 wt.% の化合物3cの拡散挙動
【0098】
【表3b】


pH 4.6における水+ 2 %酢酸中で、種々の濃度1 , 0.33及び0.2 wt.%の化合物3cの拡散挙動
【0099】
【表3c】


pH 10における水+ 2 % エタノールアミン中で、種々の濃度1 , 0.33及び0.2 wt.%の化合物3cの拡散挙動
【0100】
【表3d】


pH 7における水中で、種々の濃度1 , 0.33及び0.2 wt.%の化合物2cの拡散挙動
【0101】
【表4a】


比較例:pH 4における水中で、種々の濃度1 , 0.33及び0.2 wt.%の化合物Silwet77の拡散挙動
【0102】
【表4b】


比較例:pH 10における水+ 2 % エタノールアミン中、種々の濃度のSilwet77の拡散挙動
【0103】
データは、物質2c及び3cは、超展着物質であることを証明した。
適切な濃度を選択すれば、表面活性は、4.6のpH値で1時間以上(pH 4.6)維持することさえ出来る。展着物質2c又は3cは、蒸留、平衡及びヒドロシリル化のような一般的な工程を使用する安価な原料物質から合成することができる。高価な有機金属反応(すなわち、グリニャールタイプ、金属水素化物に基づく還元等)は回避することが出来る。
【0104】
さらに本発明の化合物は、酸又は同様に厳しい塩基条件下で優れた性能を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物:

【化1】


ここで

Rは、任意に置換されたC1-C22のアルキル、及び任意に置換されたC6-C10アリールから成る置換基から選ばれ、

R1及びR2は、それぞれ独立して有機基から選ばれるが、それらは、炭素原子を介してケイ素原子へ結合され、配置される。但し、R1及びR2の少なくとも1つは親水性基から成る。

Xは、単結合又は二価の有機残余基であり、炭素原子を介してケイ素原子へと結合され、当該X基はそこに配置されるが、
− C H 2− C H 2−
は除外する。
n + m > O.
【請求項2】
R1及びR2の1つは親水性の有機基であり、かつR1及びR2の1つは非親水性の有機基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
m = 1及び n = 0である請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
ここでR2は、親水性の有機基で表される請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
ここでm = 1及びn = 0、
R2は親水性の有機基を表し、
R1は非親水性の有機基を表す
請求項1〜4いずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
ここで
親水性の有機基は、以下の官能基の1以上を含み:
- ポリエーテル基、
- ポリエーテルエステル基、
- アミド基、
- アミンN-オキシド基、
- 硫酸基、
- 第4級アンモニウム基、
- 双性イオン基、
- スルホン酸基、
- カルボキシル基、
- リン酸基、
- ヒドロキシル基、
- スルホコハクサン基。
そして、非親水性基は上記官能基を1つも含まない請求項1〜5いずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
非親水性の有機基は、1つ以上のフッ素原子、C1-C10アリール基、C6-C10-アリール(C-1-C6)-アルキル基で任意に置換されたC1-C22アルキル基から選ばれる請求項1〜6いずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
ここでR1又はR2は、ポリエーテル基から選ばれる親水性の有機基を表す請求項1〜7いずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
ここでポリエーテル基は、式(2)
【化2】


の基から選ばれる請求項8に記載の化合物。:
Zは、二価の任意に置換された直鎖状又は分岐状(C1-C10)の炭化水素基、
2 ≦ a + b + c ≦ 200 a ≧ 2の時、
R3は、水素又は任意に置換されたC1-C22アルキル基から選ばれる。
【請求項10】
以下の式の化合物を調整する方法
【化3】


ここで、
Rは、任意に置換されたC1-C22アルキル及び任意に置換されたC6-C10アリールから成る置換基から選ばれ、
R1及びR2は、有機基からそれぞれ独立して選ばれるが、それは、炭素原子を介してケイ素原子と結合され、配置される。但し、R1及びR2の少なくとも1つは親水性基を含み、

Xは、単結合又は二価の有機残余基であり、炭素原子を介してケイ素原子へと結合され、当該X基はそこに配置される。
n + m > 0.

そしてプロセスは、以下のステップを含む:

a)式(III)の化合物

【化4】


又は同じものを含む留分を対象とし、ここで
R及びXは上に定義した通りであり、

Yは独立してR1又は加水分解性基である。
但し、少なくともY基の1つは加水分解性基であり、
活性水素を含有する化合物を一緒に有する。
b) 任意に反応生成物を分離する、
c) 任意にステップb)で得られた反応生成物を、水を用いた加水分解下に置く、
d) ステップb)又はc)で得られた反応生成物を式(IV)の化合物と反応させる、

【化5】


ここでR及びmはそれぞれ上で定義した通り、

式(V)の化合物を得るための反応

【化6】


R4は、独立してR1又はHである。
但し、少なくとも1つのR4はHである、

e) Si-H-基を、親水性基又は親水性基へ反応可能な官能基を持つ不飽和有機化合物と共にヒドロシリル化反応下に置く。

f) ステップe)で得られた官能基を、親水性基を形成するための化合物と、任意に反応させる。それによって式(I')の化合物を得る。
【請求項11】
式(V)の化合物:
【化7】


ここでR, X, n, m及びR4は、それぞれ請求項1に定義した通り。
【請求項12】
界面活性剤としての請求項1〜9のうちのいずれかの化合物の使用。
【請求項13】
湿潤剤、展着剤、泡安定剤、洗浄剤、含浸剤、帯電防止剤、分散剤、乳化剤、レベリング剤、潤滑剤、消泡剤及び/又は防曇剤としての請求項1〜9のうちのいずれかの化合物の使用。
【請求項14】
農業用組成物、洗濯組成物、リンス−オフ組成物、パーソナルケア組成物、コーティング組成物、ガルバニック組成物、ホームケア組成物、クリーニング組成物、艶出し組成物、洗剤組成物、コンクリート組成物、織物トリートメント組成物、インク組成物、印刷組成物、粘着物組成物、潤滑剤組成物、ナノ粒子含有組成物中での請求項1〜9のうちのいずれかの化合物の使用。
【請求項15】
農業用の活性な構成成分、美容に活性な構成成分を含めたパーソナルケア構成成分、洗浄剤、防食剤、潤滑剤の群から選ばれる活性な構成成分と共に請求項1〜9のいずれかの化合物を含む組成物。
【請求項16】
農薬、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、植物成長調整剤及び肥料から成る群から選択される農業用の活性な構成成分である請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
不連続相は水を含み、連続相は請求項1〜9のいずれかの化合物を含む水性エマルション。
【請求項18】
連続相は水を含み、不連続相は請求項1〜9のいずれかの化合物を含む水性エマルション。
【請求項19】
不連続相は非水溶媒を含み、連続相は請求項1〜9のいずれかの化合物を含む非水性エマルション。
【請求項20】
連続相は非水のヒドロキシル溶媒を含み、不連続相は請求項1〜9のいずれかの化合物を含む非水性エマルション。
【請求項21】
請求項1〜9のいずれかの化合物を除き、活性な構成成分を含む請求項16から19のうちのいずれかに記載のエマルション。

【公表番号】特表2010−522712(P2010−522712A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500246(P2010−500246)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053489
【国際公開番号】WO2008/116863
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509263478)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】