説明

表面被膜剤

【課題】ガラス面や塗膜の双方に使用可能で、かつ耐久性の良好な表面被膜剤を提供する。
【解決手段】100重量%中、フッ素樹脂を21〜24重量%、シリコーン樹脂を13〜15重量%、シリコーンオイルを6〜8重量%、無機粉末を20〜29重量%、炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を31〜33重量%、界面活性剤及び水を5〜8重量%、ワックスを0〜1重量%含有する混合物を調整し、この混合物を加熱し、混合物に含まれる水及び炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を含む低沸点成分を混合物重量の20〜35%蒸発させて主剤を調整し、この主剤を冷却し、この冷却後の主剤に固着剤を主剤重量の0.5〜1.5重量%添加して混合して表面被膜剤を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガラス面や塗膜に用いられる表面被膜剤に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等のガラス面や塗膜の双方に使用可能な表面被膜剤として、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
この従来の表面被膜剤の製造には、以下の工程を経る。
まず、市販の水性コーティング剤と油性コーティング剤を混合して、100重量%中、フッ素樹脂を25〜30重量%、シリコーン樹脂を5〜12重量%、シリコーンオイルを1〜5重量%、無機粉末を20〜29重量%、炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を15〜30重量%、界面活性剤及び水を3〜10重量%、ワックスを0〜1重量%含有する混合物を調整する。
ついで、この混合物を加熱して混合物に含まれる水及び炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を含む低沸点成分を混合物重量を所定量蒸発させて主剤を調整する。
最後に、この主剤を冷却し、冷却後の主剤に固着剤を添加して混合し、表面被膜剤を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−050470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の表面被膜剤は、ガラス面に使用してもぎらつき感が出ないという利点を有するが、その一方で被膜が剥がれやすく、効果が持続しないという問題がある。
そこでこの発明は、ガラス面や塗膜の双方に使用可能で、かつ耐久性の良好な表面被膜剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意研究の結果、以下の工程を経て得られる表面被膜剤を完成するに至った。
すなわち、まず、100重量%中、フッ素樹脂を21〜24重量%、シリコーン樹脂を13〜15重量%、シリコーンオイルを6〜8重量%、無機粉末を20〜29重量%、炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を31〜33重量%、界面活性剤及び水を5〜8重量%、ワックスを0〜1重量%含有する混合物を調整する。
このような混合物は、市販の水性コーティング剤と油性コーティング剤を混合して得るのが簡単である。
次に、この混合物を加熱し、混合物に含まれる水及び炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を含む低沸点成分を混合物重量の20〜35%蒸発させて主剤を調整する。
最後に、この主剤を冷却し、冷却後の主剤に固着剤を主剤重量の0.5〜1.5重量%添加して混合し、表面被膜剤を得る。
【0007】
前記固着剤は、少なくともオルガノシラン、アルコキシシラン、アルコキシシロキサン及びシリコーンエマルジョンのうち1種以上を含有するのが好ましい。
この表面被膜剤は、さらに塩害防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤のうち少なくともいずれか1種以上の副剤を含んでもよい。
【発明の効果】
【0008】
この表面被膜剤は、ガラス面や塗膜の双方に使用可能で、ガラス面に使用してもぎらつき感が出ないという上記従来被膜剤の利点を維持しつつ、塗布した際の硬度が従来のものよりも飛躍的に増しているため、被膜がはがれにくく耐久性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の実施形態にかかる表面被膜剤は、例えば次の第1工程〜第4工程により製造することができる。
まず、第1工程として水性コーティング剤と油性コーティング剤とを撹拌混合して混合物を調整する。
次に、第2工程としてこれら混合物を加熱し、混合物に含まれる水及び炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を含む低沸点成分を所定量蒸発させ主剤を得る。
さらに第3工程として、第2工程で得られた主剤を冷却する。
最後に第4工程として、冷却して温度を低下させた主剤に、所定量の固着剤を添加混合することで実施形態の表面被膜剤を得る。
【0010】
ここで、第1工程と第2工程とは必ずしも明確に区別する必要はなく、水性コーティング剤と油性コーティング剤とを撹拌混合しながら、同時に加熱し、所定の量の水及び炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を含む低沸点成分を蒸発させてもよい。
なお、第2、第3工程を省略し、第1工程で得られた油性コーティング剤と水性コーティング剤との混合物に、第4工程の固着剤を添加することで一定の表面被膜剤を得ることができる。しかし、このような表面被膜剤は、ガラス面に塗布したとき、多少のぎらつき感が残り、実施形態の表面被膜剤のようなぎらつき感の少ないものに比べて性能が大きく劣る。
【0011】
実施形態の表面被膜剤の製造に使用する油性コーティング剤としては、たとえば市販の油性コーティング剤があるが、ワックスの含有量が少ないことが好ましく、ワックスが全く含まれていないことがより好ましい。
水性コーティング剤についても同様に市販のものでよく、ワックスの含有量が少ないことが好ましく、ワックスが全く含まれていないことがより好ましい。
ワックスが含まれていると、本発明の表面被膜剤を塗膜に塗布した後に、空気中の粉塵などが付着しやすくなるからである。
ここでワックスとは、カルナバワックス、モンタンワックスなどの天然ワックス、合成ワックス、これらの混合物を言う。なおここで言うコーティング剤には、ワックス剤、コーティング剤、艶出し剤、撥水剤、表面被膜剤などが含まれることは既に記した通りである。
【0012】
油性コーティング剤としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、無機粉末、炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を含む油性コーティング剤を使用することができる。
特に無機粉末にジルコニアを含むものを好適に使用することができる。表面被膜剤にジルコニアを添加することにより、被膜の強度が大きくなるからである。
水性コーティング剤としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、無機粉末、界面活性剤、水を含む水性コーティング剤を使用することができる。なお、ここで言う無機粉末には、セラミックも含まれるものとする。
また油性コーティング剤は、必ずしも1種類の油性コーティング剤を使用する必要はなく、数種類の油性コーティング剤を混合したものであってもよく、水性コーティング剤についても同様に数種類を混合してもよい。
【0013】
第1工程後の混合物は、100重量%中、フッ素樹脂を21〜24重量%、シリコーン樹脂を13〜15重量%、シリコーンオイルを6〜8重量%、無機粉末を20〜29重量%(好ましくは23〜27重量%)、炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を31〜33重量%、界面活性剤及び水を5〜8重量%、ワックスを0〜1重量%含有するように調整する。
なお、この混合物の調整方法は、上記のような油性コーティング剤と水性コーティング剤を混合することに限定されず、要は複数の材料を混合した結果、このような組成になっていれば良い。
【0014】
なお第1工程において、さらに有機粉末を添加混合することが好ましい。有機粉末としては、微細なフッ素樹脂粉末、テフロン(登録商標)粉末であることが好ましく、添加量は、重量比で油性コーティング剤と水性コーティング剤との混合物100に対し、0.1〜0.3であることが好ましい。
【0015】
第2工程での水及び炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を含む低沸点成分の除去量は、混合物の20〜35重量%であり、30〜35重量%であることが好ましい。
このように主剤を調整することで、実施形態の表面被膜剤は、クリーム状となり、粘性も高くなく取扱いが容易となる。
また、組成をこの範囲に調整することで、長期間保存しても相分離することがない。第2工程における加熱操作は大気圧下であっても、減圧下であってもよい。
【0016】
第3工程での主剤の冷却方法は、特に限定されず、たとえば熱交換器を用いて行うことができる。ここで、冷却温度は50℃以下、特に35℃以下であることが好ましい。
【0017】
第4工程で使用する固着剤には、オルガノシランを使用することができる。その他、アルコキシシラン、アルコキシシロキサン、シリコーンエマルジョン及びこれらの混合物を使用することもできる。
主剤に対する固着剤の添加割合は、重量比で主剤100に対して0.5〜1.5であり、さらには重量比で主剤100に対して1.0〜1.2であることが好ましい。
【0018】
また実施形態の表面被膜剤は、さらに副剤として周知の塩害防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤を添加してもよい。これらはいずれか1種であっても、2種又は3種であってもよい。
副剤の添加は、基本的には第4工程で行うが、副剤に炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤が含まれているときは、第1工程の段階で添加混合し、第2工程で加熱により副剤に含まれている炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を除去する。
これより実施形態の表面被膜剤をガラス面に塗布した際のぎらつき感が抑えられる。
副剤の添加割合は、重量比で主剤100に対して0.2〜2.0であることが好ましく、さらには重量比で主剤100に対して0.5〜1.0であることがより好ましい。
【0019】
実施形態の表面被膜剤の構成は以上のようであり、この表面被膜剤の使用方法としては、基本的には従来の油性コーティング剤や水性コーティング剤と同じである。
実施形態の表面被膜剤は、クリーム状の性状を有するので、従来の油性コーティグ剤や水性コーティング剤と同様に、布やスポンジを用いて対象物に表面被膜剤を塗布し、塗布した後、表面が少し白色になった状態で余剰の表面被膜剤を拭取ればよい。
さらに表面被膜剤を塗布するときに、対象物の表面に霧吹きなどで小さい水滴を付着させこの状態で塗布すれば、表面被膜剤の使用量が抑制されると共に表面被膜剤の塗布がより容易となる。
また、実施形態の表面被膜剤は、重ね塗りが可能であり、1度目の表面被膜剤の塗布から時間が経過した後にその上に2度目の塗布を行うと、表面被膜剤の膜厚が厚く、また被膜自身の硬さも硬くなり、防汚性、防錆性、撥水性などの効果をより長期間維持することができる。同様に、2度目の塗布の後に3度目の塗布を行えば、さらに効果を長期間維持することができる。
なお、実施形態の表面被膜剤の硬度は高く、したがって被膜がはがれにくく耐久性が良好であることは、後述の実施例に見るとおりである。
【0020】
実施形態の表面被膜剤は、自動車、航空機及び船舶の塗膜、ガラス、プラスチック及びゴム製品などに使用することが可能であって汎用性が高く、これらの表面を雨水や汚染物質から保護する。
なお、発明者が表面被膜剤を塗膜等に塗布し、防汚性、防錆性、撥水性の耐久性を調べたところ、半年以上経過してもこれらの性能が殆ど変化しないことが確認された。
また実施形態の表面被膜剤は炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤をはじめ低沸点成分の含有量が少ないので、ガラス面に塗布してもぎらつき感を与えることがない。さらにワックスを含んでいないか、含んでいても微量であるため、長期間経過しても空気中の粉塵などが付着することなく、被膜面が汚れることがない。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を挙げ、発明にかかる表面被膜剤の特徴を一層明確にする。
【0022】
実施例として、フッ素樹脂を22重量%、シリコーン樹脂を14重量%、シリコーンオイルを7重量%、無機粉末を20重量%、炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を31重量%、界面活性剤及び水を6重量%含有する混合物を調整し、この混合物を加熱し、混合物に含まれる水及び炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を含む低沸点成分を混合物重量の30%蒸発させて主剤を調整し、この主剤を冷却し、この冷却後の主剤に固着剤を主剤重量の1重量%添加して混合した表面被膜剤を準備した。
また、比較例1として、フッ素樹脂を25重量%、シリコーン樹脂を10重量%、シリコーンオイルを5重量%、無機粉末を30重量%、炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を20重量%、界面活性剤及び水を10重量%含有する混合物を調整し、この混合物を加熱し、混合物に含まれる水及び炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を含む低沸点成分を混合物重量の30%蒸発させて主剤を調整し、この主剤を冷却し、この冷却後の主剤に固着剤を主剤重量の1重量%添加して混合した特許文献1に記載の表面被膜剤を準備した。
【0023】
(試験1)
ガラス面を洗浄し乾燥させた後、実施例の表面被覆剤をガラス面に塗布し、表面が少し白色になった状態で余剰の表面被膜剤を拭取った。
この要領は、従来から一般的に使用されているコーティング剤等の塗布方法と同じである。また比較例として上記比較例1以外に、市販のワックスおよびコート剤を同じ要領でガラス面に塗布した。
このガラスを水平面に対し90、100、110、120、130度の角度で設置し、ガラス面に水滴を落とし、水滴が50cm流下する時間を測定した。その結果を表1に示す。
ここで表中比較例1は特許文献1の表面被膜剤、比較例2は市販WAX、比較例3は有限会社ブリスジャパン社製のポリマーコート剤「ブリス」、比較例4はリンレイ社製の硝子コート剤「ミラックスポリシングコート」をそれぞれ示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示すように、実施例の表面被覆剤は、特許文献1の表面被膜剤と同様に、市販のワックス、コート剤を塗布したケースと比較して水滴の流下速度が速く、撥水性に優れている。また、表面被覆剤をガラス面に塗布してもぎらつき感がなかった。
【0026】
(試験2)
また、実施例の表面被膜剤と比較例1の表面被膜剤とを車両の塗装面に同条件の下に塗布し経時的(24時間ごと)に硬度を測定した。
その結果を表2に示す。硬度は、市販の鉛筆で被膜を引っかき、被膜がはがれる鉛筆の芯の最小硬さにより表している。
【0027】
【表2】

【0028】
表2に示すように、実施例の表面被膜剤は比較例1の表面被膜剤よりも硬度が高く、耐久性が良好である。
【0029】
(試験3)
白色の車の車体に付着した表3に示す各種の汚れ、傷に対し、実施例の表面被膜剤を塗布し、汚れの落ち具合、傷の修復具合を目視で観察した。
表面被膜剤の塗布は、表面被膜剤をスポンジに染込ませ、これを汚れ部分に擦り付けることで行った。
その結果、表3に示した汚れに対して、優れた除去性能を示した。また小さな傷に対しては、十分な補修効果が見られた。
【0030】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
100重量%中、フッ素樹脂を21〜24重量%、シリコーン樹脂を13〜15重量%、シリコーンオイルを6〜8重量%、無機粉末を20〜29重量%、炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を31〜33重量%、界面活性剤及び水を5〜8重量%、ワックスを0〜1重量%含有する混合物を調整し、
この混合物を加熱し、混合物に含まれる水及び炭化水素系溶剤及び/又は石油系溶剤を含む低沸点成分を混合物重量の20〜35%蒸発させて主剤を調整し、
この主剤を冷却し、
この冷却後の主剤に固着剤を主剤重量の0.5〜1.5重量%添加して混合して得られる表面被膜剤。
【請求項2】
前記固着剤は、少なくともオルガノシラン、アルコキシシラン、アルコキシシロキサン及びシリコーンエマルジョンのうち1種以上を含有する請求項1に記載の表面被膜剤。
【請求項3】
さらに塩害防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤のうち少なくともいずれか1種以上の副剤を含む請求項1または2に記載の表面被膜剤。

【公開番号】特開2011−111591(P2011−111591A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271813(P2009−271813)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(509328777)合同会社孝織 (1)
【Fターム(参考)】