説明

表面被覆切削インサートの製造方法

【課題】インサート本体表面に被覆層が形成された切削インサートに被覆層の一部を除去したり表面を平滑化したりする処理を施す場合に、必要以上に被覆層が除去されてしまったり、却って表面粗さが劣化したりすることがなく、しかも均一で効率的な処理が可能な表面被覆切削インサートWの製造方法を提供する。
【解決手段】炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、またはセラミックスを母材とするインサート本体11の表面に被覆層18が形成された表面被覆切削インサートWを、軸線O回りに回転可能な一対の回転軸1により挟み込んで保持しつつ軸線O回りに回転させながら、ブラストガン2により表面被覆切削インサートWの表面に研磨液Gを噴射してウェットブラストを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート着脱式の各種工具に取り付けられて切削加工に用いられる表面被覆切削インサートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切削インサートは、炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、またはセラミックスなどの硬質材料を母材とする、例えば多角形平板状のインサート本体の、すくい面と逃げ面との交差稜線部に切刃が形成されたものであり、インサート着脱式の工具に取り付けられて金属被削材の切削加工に広く使用されている。また、かかる切削インサートでは、主としてその耐摩耗性を向上させるために、インサート本体の表面に、例えば元素周期律表のIVa、Va、VIa族金属およびAl、Siのうち1種の炭化物、窒化物、酸化物、硼化物、またはその複合化合物により単層または2層以上の多層に形成された被覆層を被覆した表面被覆切削インサートも提案されている。
【0003】
そして、さらにこのような表面被覆切削インサートでは、例えば特許文献1、2に、このような被覆層の一部を機械的に除去したり、あるいは被覆層の表面を平滑化するようにしたものも提案されている。すなわち、特許文献1には、α−Al層上に形成したTiCxNyOz層を切刃ラインのみから、あるいはすくい面と切刃ラインの両方から機械的に取り除き、逃げ面ではこのTiCxNyOz層をそのまま残しておくことが開示されており、拡散クレータ摩耗や溶着(スミアリング)に対する抵抗性の強いAlをすくい面と切刃の最外層とし、逆に逃げ面では相対的に早期に摩耗するAlに代えて、フランク摩耗に対する抵抗性の強いTiCxNyOzを最外層とすることで、すくい面と逃げ面において同時に優れた摩耗抵抗を発揮することが開示されている。なお、機械的な除去としては、ブラッシングやポリシング、乾式や湿式のブラスティング処理が挙げられている。
【0004】
また、特許文献2においては、切刃が未使用か使用済みであるかを簡単に検出することを可能にするため、逃げ面上に使用状態表示層を設けることが示されている。さらに望ましくは減摩被膜としてAl層を被覆してから最外層としてTiN層を被覆した後に、すくい面および切刃から使用状態表示層であるTiN層をブラシやサンドブラストにより機械的に除去する方法が示されている。
【特許文献1】特開平8−52603号公報
【特許文献2】特開2002−144108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1、2に記載された被覆層の機械的な除去のうち、ブラシを用いたブラッシングやポリシング処理では、例えば砥粒が含有されたナイロンブラシやダイヤモンドペーストを添加した動物毛のブラシあるいは弾性砥石などによって切削インサートの表面を磨き上げるような処理となる。
【0006】
しかしながら、このような処理は、通常の切削インサートにおける切刃のホーニング処理やラップ処理にも適用されるように加工エネルギーの高いものであり、しかもインサート本体のうち特に突出した切刃の形成される上記交差稜線部に加工エネルギーが強く作用するため、この交差稜線部において最外層のTiCxNyOz層やTiN層の除去にとどまらず、その下のAl層までもが局所的に薄く研磨されてしまうおそれもある。また、乾式のサンドブラストのようなブラスティング処理においても、やはり加工エネルギーが高くなってしまい、最外層を除去して露出させられたAl層の表面に研磨傷等を発生させて、特に逃げ面の表面粗さを劣化させたり、インサート自体の靱性の低下を招いたりするおそれがある。
【0007】
さらに、上述のブラシや弾性砥石を用いたブラッシング、ポリシングでは、切削インサートの片面ずつしか処理することができず、特に平板状のインサート本体の表裏両面に切刃が形成されたネガティブタイプの切削インサートなどに対しては、処理効率が低下することが避けられない。また、サンドブラストによる乾式あるいは湿式のブラスティング処理でも、例えば硬質ウレタン等の治具に形成した孔に切削インサートを嵌め込んだり、治具上に設けたピンを切削インサートの取付孔に挿入したりして該切削インサートを治具上にセットした上で、ブラスティング処理を施す場合には、やはり片面ずつしか処理ができないとともに、サンドブラストの研磨材の噴射方向が一方向であると切削インサートの全周が均一に処理されず、切刃やすくい面の状態が部分的に異なる切削インサートが製造されてしまう。
【0008】
本発明は、このような背景の下になされたもので、インサート本体表面に被覆層が形成された切削インサートに被覆層の一部を除去したり表面を平滑化したりする処理を施す場合に、必要以上に被覆層が除去されてしまったり、却って表面粗さが劣化したりすることがなく、しかも均一で効率的な処理が可能な表面被覆切削インサートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、またはセラミックスを母材とするインサート本体の表面に被覆層が形成された表面被覆切削インサートを、軸線回りに回転可能な一対の回転軸により挟み込んで保持しつつ上記軸線回りに回転させながら、ブラストガンにより上記表面被覆切削インサートの表面に研磨液を噴射してウェットブラストを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明において表面被覆切削インサートに施されるウェットブラスト処理は、噴射研磨材を含有した液体(一般的には水)である研磨液を被処理物に噴射して研磨を行うものであり、上述のような弾性砥石やブラシを用いた機械加工はもとより、乾式のサンドブラストのようなブラスト処理と比べても、液体が被処理物との間で噴射研磨材の運動エネルギーを減衰させるため、加工エネルギーの比較的弱いソフトな加工となる。このため、本発明のような表面被覆切削インサートの被覆層の一部除去や表面平滑化に用いることにより、被覆層を必要以上に除去しすぎて該被覆層が局所的に薄くなってしまったり、表面粗さが劣化したりするのを防ぐことができる。また、特に上記交差稜線部においても、局所的に加工エネルギーが強く作用することがないので、切刃が形成されるこの交差稜線部のみが過処理となることもない。
【0011】
そして、さらに本発明の製造方法では、軸線回りに回転可能な一対の回転軸により表面被覆切削インサートを挟み込んで保持し、これらの回転軸によって切削インサートを回転させながら、ブラストガンによって該表面被覆切削インサートの表面に研磨液を噴射してウェットブラストを行うことにより、切削インサートの全周に亘って均一な処理を施すことができるとともに、上記軸線方向において切削インサートの両側にブラストガンを備えることにより、インサート本体の表裏両面に切刃が形成されたネガティブタイプの切削インサートでも、両面の処理を同時に行うことができて効率的である。さらに、こうして回転軸で切削インサートを挟み込んで保持することにより、例えば上述した孔やピンを備えた治具にインサートをセットする場合などに比べて自動化が容易であり、ブラスト処理の自動化も可能であることから、量産により経済的に、しかも安定した品質の表面被覆切削インサートを製造することができる。
【0012】
ここで、上記ブラストガンからの研磨液の噴射圧力や研磨液中の研磨材の含有量、あるいは切削インサートとブラストガンとの距離等が一定であれば、ウェットブラストによって切削インサートの各部が受ける被処理量(研磨量)は、切削インサートがウェットブラスト処理を受ける時間すなわち回転時間と、軸線回りの切削インサートの回転数すなわち回転速度とに影響を受け、回転時間が短かすぎると被処理量が少なくなって十分な表面平滑化が図られなくなるおそれがある一方、長すぎると必要以上に被覆層が除去されるおそれが生じる。また、このウェットブラスト処理を受ける間の回転軸の回転速度すなわち切削インサートの回転速度が速すぎると、やはり十分な平滑化が困難となるおそれがある一方、回転速度が遅すぎると各部が集中的に処理を受けて、ウェットブラストとはいえ局所的に被覆層が薄くなるおそれがある。従って、このように回転軸に保持されて回転させられる切削インサートに対し、より確実かつ十分に均一な処理を図るには、上記ブラストガンによってウェットブラストを行う間の上記回転軸の回転時間と回転速度とを制御するのが望ましい。
【0013】
ところで、上述のような切削インサートは、いわゆる丸駒インサートと称される円板状のものを除いて、一般に上述のように多角形平板状等に形成されており、従ってブラストガンと回転軸の軸線との距離が一定でも、ウェットブラスト処理が施されるインサート本体表面の被覆層とブラストガンとの距離は回転に伴って変化することになり、従って各部位が受ける被処理量にも相違が生じることになる。その一方で、このような多角形平板状の切削インサートにおいて、その多角形面の辺稜部を切刃とした場合に、該切刃のうちでも実際に切削加工に関与するのはこの多角形面の角部側の限られた範囲となることが多く、従ってこの角部すなわちコーナ部側では切刃や、該切刃が形成される交差稜線部に連なるすくい面や逃げ面に集中的な処理を施すとともに、その他の部位では処理を抑制して効率化を図ることが要望されるような場合もある。
【0014】
そこで、このような多角形平板状の切削インサートでも、回転に伴って距離が離れるために処理され難くなる部分の処理を促すとともに、距離が近づくために処理され易くなる部位では処理を抑制することにより、インサート本体の全周に亘ってより確実に均一な処理を図ったり、あるいは逆に上記コーナ部等では集中的な処理を促すとともに、他の部位では処理を抑制することで一層の効率化を図ったりするには、上記回転軸が上記軸線回りに1回転する間に、1または複数の回転角度領域で、上記回転軸の回転速度を変化させることが望ましい。
【0015】
すなわち、距離が離れて処理され難くなる部位や処理を集中させたい部位がブラストガンに対向する位置にあるときの回転軸の上記回転角度領域では、この回転軸の回転速度を低減することにより、上記部位に十分なウェットブラスト処理を施すことができ、逆に処理され易い部位や簡略化したい部位では回転速度を速めることで処理を抑制することができる。特に、上記回転軸が上記軸線回りに1回転する間に、1または複数の回転角度位置で、上記回転軸の回転を停止することにより、この回転角度位置でブラストガンに対向した部位には、さらに確実かつ十分なウェットブラスト処理を施すことが可能となる。
【0016】
一方、例えば上述のような多角形平板状の切削インサートの側面に形成された逃げ面に主としてウェットブラスト処理を施す場合には、上記ブラストガンによる研磨液の噴射方向が上記軸線に対してなす噴射角は90°に設定されることになり、また多角形面に形成されるすくい面に主としてウェットブラスト処理を施す場合には、この噴射角が0°に設定されることになり、さらにこれら逃げ面とすくい面との双方に処理を施す場合には噴射角が鋭角に設定されることになる。従って、この噴射角を調整可能とすれば、処理を施す部位に応じて好適な噴射方向を設定することが可能となる。
【0017】
また、例えば上記特許文献1に記載のようにα−Al層上に形成したTiCxNyOz層を切刃ラインのみから除去するような場合、この切刃ライン以外の部分では被覆層が除去されないようにするには、切削インサート表面の被覆層上にマスキングを施すことが望ましい。そして、このような場合に、本発明の製造方法においては、この表面被覆切削インサートを一対の回転軸により挟み込んで保持するため、これら一対の回転軸のうち少なくとも一方にマスキング部材を取り付けることにより、こうして一対の回転軸で挟み込むだけで表面被覆切削インサートの表面をマスキングしつつウェットブラストを行うことができ、例えば処理を施す切削インサート一つ一つの表面にマスキング処理を施したりするのに比べて大幅に作業を簡略化することができ、このようなウェットブラスト処理が施された表面被覆切削インサートを量産する場合でも、容易にこれに対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係わる表面被覆切削インサートの製造装置の一例を示すものであり、図2は、この製造装置を用いた本発明の一実施形態を説明するものである。このうち、図1に示す製造装置においては、一対の回転軸1がその先端同士を互いに対向させるように間隔をあけて、例えば水平方向に延びる軸線O回りに互いに同方向に回転可能に同軸に支持されているとともに、この軸線Oに対する側方(図1では上側)には、図2に示すようにこれらの回転軸1間に保持される表面被覆切削インサートWの表面に研磨液Gを噴射することによりウェットブラストを行うブラストガン2が備えられている。
【0019】
ここで、本実施形態によりウェットブラスト処理が施される上記表面被覆切削インサートWは、そのインサート本体11が、炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、またはセラミックスを母材とした焼結合金により図3に示すように多角形平板状(図3では菱形平板状)に形成され、すなわちその表面が、互いに平行とされた一対の多角形面と、これらの多角形面の周囲に配されて当該インサート本体11の厚さ方向(図3における上下方向)に延びる複数の側面とを備えている。また、上記多角形面の中央には、このインサート本体11をインサート着脱式切削工具の取付座に装着するための取付孔12が、該インサート本体11を上記厚さ方向に貫通するように形成されて開口させられている。
【0020】
そして、このインサート本体11の上記多角形面にはすくい面13が形成されるとともに上記側面には逃げ面14が形成され、これらすくい面13と逃げ面14との交差稜線部15、すなわち上記多角形面の辺稜部に、切刃16が形成されている。ただし、上述のような多角形平板状のインサート本体11を有する切削インサートでは、その多角形面の辺稜部のすべてが切刃16として使用されることは少なく、特に菱形平板状の切削インサートでは、その菱形面のうち鋭角をなすコーナ部17側の辺稜部が専ら切刃16として使用される。
【0021】
さらに、上記表面被覆切削インサートWは、すくい面13が形成された一対の多角形面と逃げ面14が形成された4つの側面とが交差稜線部15を介して互いに垂直に交差する方向に延びるネガティブタイプのインサートとされており、従って上記コーナ部17を挟む表裏8つの辺稜部に切刃16が形成されて、インサート本体11を上記取付孔12回りに180°回転させて、また表裏反転させての切刃16の使い回しが可能とされる。なお、この切刃16が形成される上記交差稜線部15には丸ホーニング等のホーニングが施されていてもよい。
【0022】
このようなインサート本体11の表面には、上述のような母材の上に、被覆層18が形成されている。この被覆層18は、例えば元素周期律表のIVa、Va、VIa族金属およびAl、Siのうち1種の炭化物、窒化物、酸化物、硼化物、またはその複合化合物により単層または2層以上の多層に形成されたものであって、インサート本体11表面の全体に被覆されている。ただし、この被覆層18が元素周期律表のIVa、Va、VIa族金属およびAl、Siの1種の炭化物、窒化物、酸化物、硼化物、またはその複合化合物の層を有している場合には、この元素周期律表のIVa、Va、VIa族金属はTi、Zr、Hf、Crのうちから選択されることが望ましい。
【0023】
なお、このような被覆層18は、公知の化学蒸着法(CVD)や物理蒸着法(PVD)等によって形成可能であるが、特に高温で被覆され、しかも負荷の高い高能率加工で使用される化学蒸着法によって形成されるのが望ましい。また、被覆されるインサート本体11の母材の表面は、研磨されていてもよいが、焼結肌のままのいわゆるM級精度であってもよい。
【0024】
このような表面被覆切削インサートWにウェットブラスト処理を施す上記製造装置は、上述のような取付孔12をインサート本体11に有する切削インサートW用のものであって、上記回転軸1の先端部には、それぞれその先端側に向けて例えば円錐状に先細りとなる硬質ウレタンゴム等の弾性材製のキャップ3が取り付けられている。また、これら一対の回転軸1のうち少なくとも一方は軸線O方向に進退可能とされており、この軸線O方向にインサート本体11の上記厚さ方向を一致させて両回転軸1間に切削インサートWを配置し、上記少なくとも一方の回転軸1を他方に向けて前進させることにより、取付孔12の開口部にキャップ3がそれぞれ密着して該切削インサートWが保持され、かつ回転軸1と一体に回転可能とされる。従って、こうして保持された表面被覆切削インサートWは、図2に示すようにそのすくい面13が軸線Oに垂直に該軸線O方向に向けられるとともに、逃げ面14は軸線Oに平行とされることになる。
【0025】
一方、ブラストガン2は、液体に噴射研磨材を混合した上記研磨液Gを圧縮空気の圧力により、その先端のノズル4から上記回転軸1の間に挟まれて保持された表面被覆切削インサートWに向けて噴出してウェットブラストを行うものであり、研磨液Gの液体としては通常水が用いられ、また噴射研磨材としてはアルミナ、ジルコニア、樹脂系、ガラス系などの硬質のメディアが種々使用可能であり、粒径としては約10〜500μm程度、特に10〜200μm程度の微粒のものがより好ましい。なお、研磨液G中の研磨材の含有量は、例えばメディアとしてアルミナを使用する場合には15〜60wt%、上記圧縮空気の圧力(噴射圧力)は0.05〜0.3MPaの範囲が好ましい。
【0026】
さらに、このブラストガン2は、上記軸線Oに対する研磨液Gの噴射角θ、すなわちノズル4からの研磨液Gの噴射方向が軸線Oに対してなす角度が0〜90°の範囲で調整可能とされている。従って、上述のようにすくい面13が軸線O方向に向けられた表面被覆切削インサートWに対しては、このすくい面13側から噴射角θが軸線Oに対して0〜90°とされ、すなわち後述するように噴射角θが0°で該すくい面13に対向して軸線Oおよび逃げ面14に平行な方向から、図2に示すように噴射角θが90°で逃げ面14に対向して軸線Oおよびすくい面14に垂直な方向までの間で、研磨液Gの噴射方向が設定可能とされる。なお、図示の例では研磨液Gがノズル4から上記噴射角θの方向に沿って平行に噴射させられているが、該噴射角θの方向に延びる直線を中心とした円錐状等に研磨液Gが噴射させられてもよい。
【0027】
また、上記回転軸1を軸線O回りに回転させる回転駆動手段は、図示されない制御手段によって適宜制御可能とされている。この制御手段においては、例えば回転軸1の回転時間すなわち表面被覆切削インサートWがウェットブラスト処理を受ける時間と、回転軸1の回転数すなわち表面被覆切削インサートWの回転速度とが制御される。また、回転軸1が1回転、すなわち切削インサートWが軸線O回りに1回転する間に、該切削インサートWの表面がブラストガン2から研磨液Gの噴射を受ける位置に対応して予め設定された1または複数の回転角度領域で回転軸1の上記回転速度を断続的あるいは連続的に変化させたり、予め設定された1または複数の回転角度の位置で回転軸1および表面被覆切削インサートWの回転を所定時間停止したりするように制御してもよい。さらに、上記ブラストガン2からの研磨液Gの噴射もこの制御手段によって制御して、研磨液Gの噴射の開始や停止を行ったり、回転軸1および切削インサートWが上述のような所定の回転角度領域や回転角度位置にあるときには研磨液Gの上記噴射圧力を断続的あるいは連続的に変化させたりしてもよい。
【0028】
このような製造装置を用いた本実施形態の製造方法では、図2に示すようにブラストガン2の上記噴射角θが90°となるように設定されており、このため研磨液Gは、表面被覆切削インサートWの逃げ面14に対しては、該逃げ面14に対向して上記厚さ方向および軸線Oに垂直な方向から噴射させられることになる。従って、上述のように一対の回転軸1間に表面被覆切削インサートWを保持して回転させつつブラストガン2によってウェットブラストを施すと、本実施形態ではインサート本体11表面の上記逃げ面14上に被覆された被覆層18が主として研磨されて平滑化されたり必要に応じて除去されたりして処理されるとともに、例えば逃げ面14とすくい面13との交差稜線部15においても、その逃げ面14側の部分に処理が施される。
【0029】
そして、このウェットブラスト処理が、上述のように噴射研磨材を含有した液体である研磨液を切削インサートWに噴射してその表面の研磨等の処理を行うものであるため、弾性砥石やブラシによる機械加工と比べては勿論、サンドブラストのような乾式のブラスト処理と比べても、研磨液の液体によって研磨材の運動エネルギーが減衰させられ、加工エネルギーの比較的弱いソフトな加工となる。従って、処理によって被覆層18が必要以上に除去されすぎて局所的に薄くなってしまったり、研磨傷が発生して表面粗さが却って劣化したりするのを防ぐことができ、また特に上記交差稜線部15においても局所的に加工エネルギーが強く作用することがないので、切刃16が形成されるこの交差稜線部15のみが過処理となってしまうようなこともない。
【0030】
さらに、こうしてウェットブラスト処理を施す際に、上記製造方法では、軸線O回りに回転可能な一対の回転軸1によって表面被覆切削インサートWを挟み込んで保持しつつ、これらの回転軸1によって切削インサートWを回転させながらウェットブラストを行っており、従って切削インサートWに対して一方向から処理を施すのと比べて、切削インサートWの全周に亘って満遍なくムラのない均一な処理を図ることができる。さらに、こうして回転軸1で切削インサートWを挟み込んで保持する構成とすることにより、上述した孔やピンを備えた治具にインサートをセットする場合などに比べても、例えば該回転軸1の上記進退によって切削インサートWを保持することができるために自動化が容易であり、ブラスト処理の自動化も可能であることとも相俟って、かかる処理が施された表面被覆切削インサートWを量産化して経済的に、しかも安定した品質で製造することができる。
【0031】
一方、本実施形態では、上記ブラストガン2によってウェットブラストを行う間の回転軸1の回転時間を上記制御手段によって制御するようにしており、従って回転時間すなわち処理時間が短かすぎて十分な表面平滑化等が図られなくなったり、逆に回転時間が長すぎて必要以上に被覆層がブラストを受けることにより不用意に除去されてしまったりするのを防ぐことができる。また、これに合わせて、該制御手段により回転軸1の回転速度すなわち処理される切削インサートWの回転速度も制御されるので、回転速度が速すぎてやはり十分な平滑化が図られなかったり、逆に回転速度が遅すぎて切削インサートWの各部が集中的に処理を受けることにより局所的に被覆層18が薄くなったりすることもなく、従ってより確実かつ十分に均一な処理を図ることができる。
【0032】
ところで、本実施形態によりウェットブラスト処理が施される上述の菱形平板状のような多角形平板状の切削インサートWは、ブラストガン2の位置を固定して回転軸1の軸線Oとの距離を一定としても、その表面の被覆層18とブラストガン2先端のノズル4との距離は回転に伴って変化するため、ウェットブラストによって切削インサートWの各部位が受ける被処理量にも相違が生じることになる。例えば、上記菱形面の鋭角のコーナ部17においては、当該切削インサートWの中心となる上記取付孔12の中心線からの距離が遠くなるため、該中心線と同軸となる回転軸1の軸線Oからの距離も長くなり、逆に回転に伴ってこのコーナ部17がブラストガン2のノズル4に向いたときの該ノズル4との距離は切削インサートWの他の部位よりも近くなるので、研磨液Gが強く吹き付けられることになって被処理量も多くなる。また、これとは逆に、上記中心線からの距離が近い鈍角のコーナ部やインサート本体1の側面のうち該中心線を中心とした円に内接する部位では、被処理量は少なくなる。
【0033】
そこで、このような場合でも表面被覆切削インサートWの全周に亘って均一な処理を施すには、上記制御手段によって上述したように回転軸1が軸線O回りに1回転する間に、1または複数の回転角度領域でこの回転軸1の回転速度を変化させ、鋭角のコーナ部17がブラストガン2側に向けられるような回転角度領域では相対的に回転速度を速めて被処理量を抑制する一方、鈍角のコーナ部や上述した側面の内接部位では回転速度を相対的に遅くして、十分な被処理量を確保するようにすればよい。また、特にこのような被処理量の少なくなる部位で確実に被処理量を確保するには、回転軸1が軸線O回りに1回転する間に、これらの部位がブラストガン2側に向けられるような1または複数の回転角度位置で、この回転軸1の回転を、必要な被処理量が確保されるような所定の時間だけ停止するように制御すればよい。
【0034】
一方で、このような多角形平板状の切削インサートWにおいては、上述のようにその多角形面の辺稜部に形成される切刃16のうち、実際に切削加工に関与するのはこの多角形面の角部、特に上記鋭角のコーナ部17側の限られた範囲となることが多い。従って、場合によっては上記とは逆に、この切削加工に関与するコーナ部17周辺の切刃16や、該切刃16が形成される交差稜線部15に連なるすくい面13、逃げ面14に集中的な処理を施して十分な被処理量を確保する必要が生じるようなこともある。また、このような切削加工に関与する部分以外の上記鈍角コーナ部や内接部位では被処理量を抑制することにより、ウェットブラスト処理の効率化を図ることが要望されることも考えられる。
【0035】
従って、このような場合には、上記制御手段によって回転軸1が軸線O回りに1回転する間に、1または複数の回転角度領域でこの回転軸1の回転速度を変化させるにしても、上記の場合とは逆に、鋭角のコーナ部17がブラストガン2側に向けられるような回転角度領域や回転角度位置では、相対的に回転速度を遅くしたり回転を所定時間停止したりして被処理量を確保する一方、鈍角コーナ部や上記内接部位がブラストガン2側に向けられるような回転角度領域では相対的に回転速度を速めるように制御すればよい。なお、本実施形態のような菱形平板状の切削インサートWでは、鋭角のコーナ部17が2箇所ずつ表裏対称に形成されているので、上記回転角度領域あるいは回転角度位置は2箇所となるが、これらの回転角度領域や回転角度位置の数は、切削インサートWの形状や必要とされる処理に応じて1または複数を適宜設定すればよい。
【0036】
さらに、こうして回転軸1の回転時間と回転速度を制御したり、予め設定された回転角度領域で回転軸1の回転速度を変化させたり、回転軸1を停止したりするのと合わせて、あるいはこれらの制御とは別に、上記制御手段によって研磨液Gの噴射を制御することによっても、切削インサートWの各部位での被処理量を調整することができる。すなわち、切削インサートWの被処理量を増大させたい部位がブラストガン2側を向くような回転軸1の回転角度領域あるいは回転角度位置では、相対的に高噴射圧力でウェットブラストを施す一方、被処理量を抑制したい部位がブラストガン2側を向く回転軸1の回転角度領域あるいは回転角度位置では、相対的に低い噴射圧力でウェットブラストを施すことにより、回転時間や回転速度を制御、変化、または回転を停止するのと同様の効果が得られる。勿論、これらの制御を組み合わせれば一層効果的である。
【0037】
また、本実施形態では軸線Oに対する上記噴射角θが90°とされていて、逃げ面14および交差稜線部15のうち逃げ面14側の部分にウェットブラスト処理が施されるので、この逃げ面14の表面平滑化を図ることができる。従って、このように処理が施されて製造された表面被覆切削インサートWによれば、例えば該切削インサートWをインサート着脱式の切削工具の工具本体に形成された取付座に装着する際、一方の鋭角コーナ部17側の切刃16を切削加工に供するのに他方の鋭角コーナ部17側の逃げ面を上記取付座の壁面に当接させたときの位置決め精度を向上させることができ、また切削インサートWを反転させてコーナ部17を交換したときの切刃16の位置の再現性もよく、このため当該切削インサートWによる加工精度の向上を図ることができる。
【0038】
その一方で、本実施形態によれば、切削インサートWのすくい面13側の部分はウェットブラストによる処理の影響が少ないので、その表面に形成した上述のような被覆層18をそのまま残存させることができる。また、上述のような被覆層18は黄色やクリーム色、金色、あるいは白色系統等の明るい色調を呈するように調整可能なので、切削時に切屑がすくい面13を擦過して被覆層18を削り取ったり、あるいはこの擦過によって発生する摩擦熱によって被覆層18が変色したりすると、たとえ照明が不十分な切削加工の作業現場であってもこれを容易に確認することができ、切刃16の使用・未使用を確実に識別することが可能となって、使用済みの切刃16を再使用してしまったり、逆に未使用の切刃16が残ったまま切削インサートWが廃棄されてしまったりするのを防ぐことも可能となる。さらに、本実施形態では、回転軸1が1周することで切削インサートWの処理を施す逃げ面14が形成される側面も1周するので、図2に示すように1本のブラストガン2によって処理が可能であるという利点も得られる。ただし、効率を向上させるために2本以上のブラストガン2を配置してもよい。
【0039】
なお、本実施形態ではこのように上記噴射角θを90°として1本のブラストガン2により切削インサートWの主として逃げ面14にウェットブラスト処理を施しているが、この噴射角θを調整して、図4に示す実施形態のように0°、すなわち回転軸1の軸線Oとブラストガン2からの研磨液Gの噴出方向とが平行となるように設定することにより、切削インサートWの上記多角形面に形成されるすくい面13や交差稜線部15のうちこのすくい面13側の部分のウェットブラスト処理を行うこともできる。さらに、この実施形態に係る製造装置では、複数(本実施形態では2つ)のブラストガン2が、回転軸1の軸線Oを挟んで反対側に、しかも切削インサートWが保持される一対の回転軸1の間の部分を挟んでも軸線O方向に反対側に位置し、すなわち保持された切削インサートWの厚さ方向に反対側に位置して、それぞれノズル4を該切削インサートW側に向けるように配置されている。
【0040】
このような製造装置による実施形態では、被覆層18が形成された表面被覆切削インサートWのうち、主としてインサート本体1の多角形面に形成される上記すくい面13と、上記交差稜線部15のうちのこのすくい面13側に連続する部分を処理することが可能となる。従って、本実施形態によれば、製造される切削インサートWのすくい面13の平滑化を図ることができるので、該すくい面13上を擦過する切屑との摩擦を低減して切削抵抗の抑制を図ることが可能な切削インサートWを提供することができる。さらに、本実施形態では複数のブラストガン2が切削インサートWの厚さ方向に反対側に位置して配置されているので、切削インサートWが回転軸1とともに回転する間に、インサート本体1の表裏両方の多角形面に同時にウェットブラスト処理を施すことができ、これら表裏両面にすくい面13および切刃16が形成されるネガティブタイプの切削インサートWに対しても効率的な処理を行うことが可能となる。
【0041】
さらに、このような製造装置による本発明の製造方法では、噴射角θを調整することにより、図2や図4に示した以外に、図5に示す実施形態のように噴射角θが軸線Oに対して0°より大きく90°未満の鋭角(図5では45°)をなすように配置することもでき、この場合には、例えばブラストガン2による研磨液Gの噴射の中心線を上記交差稜線部15付近に合わせることにより、1つのブラストガン2で上記交差稜線部15と、この交差稜線部15に交差する切削インサートWの逃げ面14およびインサート本体11の一方の多角形面に形成されるすくい面13とを同時にウェットブラスト処理することができる。従って、上記実施形態と同様に、この図5に示すように複数(本実施形態でも2つ)のブラストガン2を、回転軸1の軸線Oを挟んで反対側、かつ一対の回転軸1の間の部分を挟んでも軸線O方向に反対側に位置させて、それぞれノズル4を該切削インサートW側に向けるように配置することにより、切削インサートWの表面全体を回転軸1の回転に伴って同時にウェットブラスト処理することができ、一層効率的である。
【0042】
ところで、これら図4および図5に示した実施形態のように、特に切削インサートWのすくい面13にウェットブラスト処理を施す場合には、例えば上述のような明るい色調を呈する被覆層18が確実にすくい面13上に残るようにして、切屑の擦過による切刃16の使用・未使用が容易に識別可能となるようにする必要性が生じることが考えられる。そこで、このような場合に、上記被覆層18が所定の部分ではウェットブラスト処理の影響を受けずに残されるようにするには、図6に示す実施形態のように、表面被覆切削インサートWを挟み込んで保持する一対の回転軸1のうち少なくとも一方(図6では両方)に、その先端の上記キャップ3に代えて、切削インサートWの表面のうちウェットブラスト処理を施さない部分をマスキングするマスキング部材5を取り付ければよい。
【0043】
ここで、このマスキング部材5は、上記キャップ3と同様に硬質ウレタンゴムよりなる弾性材のような密着性のよい材質により、上述のように切削インサートWの表面のうちウェットブラスト処理を施さずに被覆層18を確実に残存させるべき部分、あるいはウェットブラスト処理を施す必要のない部分の寸法、形状に合わせて形成され、本実施形態では上記多角形面に形成されるすくい面13において、切屑の擦過による切刃16の使用・未使用を識別し得る切刃16から所定の距離だけ離れた内側の領域をマスキングするように形成されている。また、ブラストガン2は図5に示した実施形態と同様に、軸線Oに対して鋭角(45°)をなす複数(2つ)のブラストガン2が、その傾斜角θを互いに等しくして、回転軸1の軸線Oを挟んで反対側、かつ一対の回転軸1の間の部分を挟んでも軸線O方向に反対側に、該回転軸に保持された切削インサートW側にノズル4を向けるように配置されている。
【0044】
従って、このような実施形態によれば、上記マスキング部材5によって被覆層18を残すべき部分がマスキングされ、切削インサートW表面のうちこのマスキング部材5からはみ出した部分のみにウェットブラスト処理が施されるので、例えば上述のようにすくい面13に切刃16の使用・未使用を識別する領域が形成された表面被覆切削インサートWを確実に製造することができる。また、本実施形態ではマスキング部材5が回転軸1の先端に取り付けられているので、回転軸1でインサート本体11を挟み込むだけで精度よくマスキングができて操作が容易であり、このようなウェットブラスト処理が施された表面被覆切削インサートWを量産する場合でも、容易にこれに対応することが可能となる。
【0045】
なお、このように切刃16の使用・未使用を識別する領域をすくい面13に形成する場合でも、上述のような多角形平板状の切削インサートWでは、その多角形面の辺稜部のうち切刃16として切削加工に関与するのは、該多角形面の角部、例えば上記コーナ部17側だけであることが多いので、それ以外の部分ではマスキング部材5によるマスキングを行わないでウェットブラスト処理を施すようにしてもよい。
【0046】
一方、上記各実施形態の製造方法では、インサート本体11に取付孔12が形成されたネガティブタイプの表面被覆切削インサートWにウェットブラスト処理を施す場合について説明したが、取付孔12を備えない孔無しの切削インサートWにウェットブラスト処理を施すには、例えば図1等に示した先端が先細りとされた上記キャップ3に代えて、図7に示すように先端面が軸線Oに垂直な平坦面とされたキャップ6を用いればよい。勿論、図6に示したマスキング部材5の先端面を、このキャップ6の先端面と同様に軸線Oに垂直な平坦面として、取付孔12のないインサート本体11でも該マスキング部材5でマスキングされた以外の所望の範囲にウェットブラストを施すようにしてもよい。
【0047】
また、すくい面13と逃げ面14とが鋭角に交差する方向に配されて、この逃げ面14に予め逃げ角が与えられるようにされた、例えばポジティブタイプの切削インサートWの逃げ面14にウェットブラスト処理を施す場合には、図8に符号Aで示すようにブラストガン2からの研磨液Gの噴射角θが図2に示したのと同様に軸線Oに対して90°とされていてもよく、あるいは図8に符号Bで示すように、すくい面13とは反対側に向けて軸線Oに対する噴射角θが鋭角をなすようにされていてもよく、符号A、Bいずれかの姿勢を選択してブラストガン2を配設すればよい。
【0048】
このうち、符号Bで示した場合には、逃げ面14に与えられる逃げ角に応じて噴射角θを設定することで、研磨液Gの噴射方向を該逃げ面14に垂直な方向に近づけて効率的なブラスト処理を図ることができる。なお、このようなポジティブタイプの切削インサートWでも、すくい面13にウェットブラスト処理を施すには図4や図5、6に示したのと同様に該すくい面13側から軸線Oに対して0°以上90°未満の傾斜角θでブラストガン2を配置して、そのノズル4をすくい面13側に向けて研磨液Gを噴射するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係わる製造装置を示す図である。
【図2】図1に示す製造装置によりウェットブラスト処理を施して表面被覆切削インサートWを製造する場合の、本発明の一実施形態を説明する図である。
【図3】図2の実施形態によりウェットブラスト処理が施される表面被覆切削インサートWの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の製造方法の他の実施形態を説明する図である。
【図5】本発明の製造方法の他の実施形態を説明する図である。
【図6】本発明の製造方法の他の実施形態を説明する図である。
【図7】本発明の製造方法の他の実施形態を説明する図である。
【図8】本発明の製造方法の他の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0050】
1 回転軸
2 ブラストガン
5 マスキング部材
11 インサート本体
13 すくい面
14 逃げ面
15 交差稜線部
16 切刃
17 コーナ部
18 被覆層
W 表面被覆切削インサート
O 回転軸21の軸線
θ 軸線Oに対するブラストガン2の噴射角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、またはセラミックスを母材とするインサート本体の表面に被覆層が形成された表面被覆切削インサートを、軸線回りに回転可能な一対の回転軸により挟み込んで保持しつつ上記軸線回りに回転させながら、ブラストガンにより上記表面被覆切削インサートの表面に研磨液を噴射してウェットブラストを行うことを特徴とする表面被覆切削インサートの製造方法。
【請求項2】
上記ブラストガンによってウェットブラストが行われている間の上記回転軸の回転時間と回転速度とを制御することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削インサートの製造方法。
【請求項3】
上記回転軸が上記軸線回りに1回転する間に、1または複数の回転角度領域で、上記回転軸の回転速度を変化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面被覆切削インサートの製造方法。
【請求項4】
上記回転軸が上記軸線回りに1回転する間に、1または複数の回転角度位置で、上記回転軸の回転を停止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面被覆切削インサートの製造方法。
【請求項5】
上記ブラストガンによる研磨液の噴射方向が上記軸線に対してなす噴射角を調整可能とすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の表面被覆切削インサートの製造方法。
【請求項6】
上記一対の回転軸のうち少なくとも一方にマスキング部材を取り付けて、上記表面被覆切削インサートの表面をマスキングしつつウェットブラストを行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の表面被覆切削インサートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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