説明

表面被覆用組成物

【課題】本発明は表面被覆用組成物をつや消しし、そしてその組成物の耐湿および耐化学性を高める方法、ならびにその表面被覆用組成物で基体を処理する方法、およびそのような表面被覆用組成物で被覆した基体を提供する。
【解決手段】本発明は樹脂系、および疎水性の金属酸化物を含む表面被覆用組成物であり、該組成物は、基体に付着された後に、(a)少なくとも約6ヶ月間、耐湿性、(b)50wt%エタノール/水溶液に耐性であり、そして(c)光沢度50以下の光沢レベル、であることを特徴とする組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐湿性および耐化学性であることを特徴とする表面被覆用組成物、ならびに表面被覆用組成物にそのような特性を与える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物、特に乾燥シリカゲルは、「つや消し」(“mattness”)の感じを得るために特定の表面被覆用物質に配合されてきた。基体に付着される湿潤膜は最初は平らに保持され、したがって表面張力の力により光沢がある。その膜は乾燥し、硬化するので、ゾル−ゲル転移に関連して増大する粘弾性は粒子の膜内への移動を妨げ、そして表面はつや消し剤(matting agent)粒子に順応するように変形する。この粗さは固化膜において維持され、それはつや消し仕上げ(matt finish)により特徴づけられる。特定のシリカゲルに基因するつや消し効果はある用途に対して望ましい表面外観を与えるが、表面被覆用組成物は、種々の用途に対するその有用性を高めるために、耐湿性(moisture resistance)のような付加的特性を有するのが望ましい。
【0003】
耐湿性は、組成物が水による湿潤、もしくは水の吸収後に損傷の影響を受けないような組成物の特性である。表面被覆用組成物に耐湿性を付与しようとする従来の試みはシリカエーロゲルの疎水性修飾に集中した。たとえば、シリカキセロゲルは、高温での有機アルコールでのエステル化により、または有機ポリマーの物理吸着により、疎水性を付与された。このような物質はシリカエーロゲルに疎水性の地位を付与しうるが、これらの表面物質は反応性のままであり、他の反応性種、たとえばアルコールおよび水、の存在下でキセロゲルから消失されうる。シリカゲル(もしあれば)により組成物に付与される耐湿性の特性は、組成物が他の化学物質にさらされると、その結果、劣化されうる。アルコールのような他の化学物質にこのようにさらされることは、組成物が、木材家具への被覆のような表面被覆されるときに生じることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、基体に耐湿性および耐化学性を付与するが、つや消し効果も付与する表面被覆用組成物に対する要求は残されている。本発明はこのような表面被覆用組成物を提供しようとするものである。本発明のこれらの、および他の利点は、付加的な発明の特徴と同様に、ここに示される発明の説明から明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、樹脂系、および疎水性の金属酸化物を含む表面被覆用組成物であり、該組成物は、基体に付着された後に、(a)少なくとも約6ヶ月間、耐湿性、(b)50wt%エタノール/水溶液に耐性であり、そして(c)光沢度50以下の光沢レベル、であることを特徴とする組成物を提供する。
【0006】
さらに本発明は、表面被覆用組成物をつや消しし、そして組成物の耐湿および耐化学性を向上させる方法であり:
(i)該組成物に、基体に付着後に、(a)少なくとも約6ヶ月保持される耐湿性、(b)50wt%エタノール/水溶液に耐性、そして(c)光沢度50以下の光沢レベル、を与える疎水性の金属酸化物を用意すること、ならびに
(ii)該金属酸化物を樹脂と混合して、表面被覆用組成物を形成させることを含むつや消し方法を提供する。
【0007】
さらに本発明は本発明の表面被覆用組成物で被覆された表面を有する基体、ならびに本発明の表面被覆用組成物で基体を処理する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は樹脂系、および疎水性の金属酸化物を含有する表面被覆用組成物を提供する。組成物は、基体に付着された後に、(a)少なくとも約6ヶ月間、耐湿性、(b)50wt%エタノール/水溶液に耐性であり、そして(c)光沢度50以下の光沢レベル、であることにより特徴づけられる。
【0009】
樹脂系はいかなる適切な樹脂も含有しうる。このように、樹脂は表面被覆における使用に適していることが当業者に知られているいかなる樹脂であってもよい。適切な樹脂は、たとえば、ポリエステル、エポキシ、ウレタン、セルロース、アルキド、アクリル、ならびにそれらの混合物および前駆体を含む。本発明の組成物において使用するための適切なアクリル樹脂は、WORLEE CRYL A 1220(ドイツ国E.H.Worlee & Co.)およびNEOCRYL A−633(Zeneca Resins,Wilmington,マサチューセッツ州)として知られるものを含む。
【0010】
好適には、樹脂はニトロセルロースもしくはニトロセルロースアルキドである。適切なニトロセルロース樹脂はLANCO CL−600(Lanco Manufacturing Corporation,San Lorenzo,カルフォルニア州)、および硝酸セルロースを含む。有用なアルキド樹脂の1つはWORLEEKYD T36(ドイツ国E.H.Worlee & Co.)として知られているものである。
【0011】
いかなる適切な量の樹脂も表面被覆用組成物中に存在しうる。樹脂は約10〜95wt%の量で表面被覆用組成物中に存在するのが好適である。
【0012】
いかなる適切な金属酸化物も本発明に関して使用されうる。適切な金属酸化物はシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、およびマグネシアを含む。金属酸化物は好適には、たとえばフュームド(すなわち熱分解(pyrogenic))シリカ、沈降シリカ、もしくはシリカエーロゲルのようなシリカであり、シリカエーロゲルが特に好適である。「エーロゲル」(”aerogel”)という用語は細孔に空気を有する無定形の有機もしくは無機のゲルをいう。最も好ましくは、エーロゲルはシリカを含み、そしてヒドロゲルの表面をシリル化剤で修飾し、表面を修飾されたゲルを乾燥することにより調製される。このプロセスにより製造されるシリカエーロゲルはシリル化の程度および種類に依存して部分的にもしくは完全に疎水性でありうる。WO98/23366に開示されるシリカエーロゲルは本発明の表面被覆用組成物における金属酸化物として特に望ましい。
【0013】
処理された金属酸化物は疎水性の性格を有する。いかなる適切な疎水性部分もその効果を得るために本発明の金属酸化物に結合されうる。適切な疎水性部分はたとえば次の一般式:
3Si−O−SiR3 (I)
3Si−N(H)−SiR3 (II)
の化合物から得られる。
ここで遊離基Rは同一もしくは異なったものであり、そしてそれぞれ水素、または非反応性、有機、線状、分枝、環状、飽和もしくは不飽和、芳香族もしくはヘテロ芳香族の遊離基、好ましくはC1〜C18のアルキルもしくはC6〜C14のアリール、そしてもっと好ましくはC1〜C6のアルキル、シクロアルキル、フェニル、ビニルもしくはアクリルである。等しく適切な疎水性部分は式R14-nSiClnもしくはR14-nSi(OR2nのシランから得られることができ、ここでn=1〜4、そしてR1およびR2は同一もしくは異なり、そしてそれぞれ水素、または非反応性、有機、線状、分枝、環状、飽和もしくは不飽和、芳香族もしくはヘテロ芳香族遊離基、好ましくはC1〜C18のアルキルもしくはC6〜C14のアリール、そしてもっと好ましくはC1〜C6のアルキル、シクロへキシル、もしくはフェニルである。遊離基は、さらにフッ素もしくは塩素のようなハロゲン置換基を含みうる。最も好ましくは疎水性部分はトリメチルシリル、ビニルジメチルシリル、アクリルジメチルシリル、もしくはジメチルジクロロシリルである。
【0014】
金属酸化物は好ましくは少なくとも約40vol%の疎水性の程度により特徴づけられる。疎水性の程度はできる限り高いのが望ましい。なぜなら疎水性のより高い程度は改良された耐水性を与えるのが通常であるからである。
【0015】
「疎水性の程度」はシリカエーロゲルをぬらす水−メタノール混合物中のメタノールの容量比をいい、それにより均一な懸濁液を形成する。
【0016】
金属酸化物は別々の個々の粒子の形態であり得、それは凝集もしくは非凝集の形態であり得る。金属酸化物粒子はいかなる適切な粒径を有していてもよい。一般に、金属酸化物は約1〜15μm、好ましくは約2〜10μmのメジアン粒径を有する。金属酸化物の粒径は表面被覆組成物に望ましいつや消し効果を与えるのに十分であるべきである。
【0017】
金属酸化物はいかなる適切な表面積をも有しうる。一般に、金属酸化物は少なくとも100m2/g、好ましくは少なくとも約200m2/g、そして最も好ましくは少なくとも約300m2/gの表面積を有する。さらに金属酸化物は約0.1〜0.3g/cm3のような、いかなる適切な粒子密度をも有しうる。
【0018】
金属酸化物はいかなる適切な気孔率をも有しうる。通常、金属酸化物は少なくとも50%、好ましくは約70%以上、そして最も好ましくは約80%以上の気孔率を有する。
【0019】
金属酸化物はいかなる適切な量でも表面被覆用組成物中に存在しうる。たとえば、金属酸化物は約0.5〜10wt%で表面被覆用組成物中に存在しうる。
【0020】
任意には、いかなる適切なキャリア(たとえば、溶媒)も表面被覆用組成物に使用されうる。キャリアは適切な基体の表面への樹脂および金属酸化物の付着を容易にするために用いられうる。適切なキャリアは、水、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、芳香族化合物、アルキル、およびそれらの混合物を含む。いかなる適切な濃度のキャリアも、たとえば約80wt%まで、表面被覆用組成物中に存在しうる。
【0021】
本発明の表面被覆用組成物は、さらに、表面被覆用組成物に配合するのに適切であることがこの分野で知られている種々のいかなる成分も含みうる。このような成分は、着色剤、顔料、UV安定化剤、融合助剤(coalescing agents)、流動性向上剤(flow additives)、消泡剤、界面活性剤、さび止め剤、およびpH調節剤を含む。
【0022】
融合助剤は表面被覆用組成物の成分の乾燥の間、樹脂の軟化を促進し、そしてこのような物質はよく知られている。融合助剤の1例はブチルCELLOSOLVE(ARCO Chemical Company,Newton Square,ペンシルベニア州)である。いかなる適切な濃度の融合助剤も、たとえば約1〜35wt%で、表面被覆用組成物中に存在しうる。
【0023】
流動性向上剤は、表面被覆用組成物による基体のぬれ、および表面被覆用組成物の水平化(levelling)を促進する。典型的な流動性向上剤はDISBERBYK301(BYK−Chemie、ドイツ)である。いかなる適切な濃度の流動性向上剤も、たとえば約0.5〜4wt%で表面被覆用組成物中に存在しうる。
【0024】
消泡剤は成分の混合に際して表面被覆用組成物中の泡の存在を低減するために添加されうる。いかなる適切な消泡剤も本発明の表面被覆用組成物に使用されうる。1つの好適な消泡剤はDISBERBYK 035(BYK−Chemie、ドイツ)である。いかなる適切な濃度の消泡剤も、たとえば約0.01〜3wt%で、表面被覆用組成物中に存在しうる。
【0025】
界面活性剤は被覆組成物の表面張力を低減するために添加されうる。いかなる適切な界面活性剤も本発明の表面被覆用組成物において使用されうる。1つの好適な界面活性剤はSURFYNOL 104 BC (Air Products & Chemicals,Inc.)である。いかなる適切な濃度の界面活性剤も、たとえば約0.01〜3wt%で、表面被覆用組成物中に存在しうる。
【0026】
もし表面被覆用組成物が腐食を受けやすい表面に付着されるならば、さび止め剤が組成物に添加されうる。種々のさび止め剤が本発明に適切である。1つの好適なさび止め剤は安息香酸アンモニウムである。いかなる適切な濃度のさび止め剤も、たとえば約0.01〜2wt%で、表面被覆用組成物中に存在しうる。
【0027】
pH調節剤は表面被覆用組成物のpHを調節するために添加されうる。組成物のpHは表面被覆用組成物に通常適切な範囲に維持される。いかなる適切なpH調節剤も本発明の表面被覆用組成物に使用されうる。1つの好適なpH調節剤は水酸化アンモニウムである。いかなる適切な濃度のpH調節剤もたとえば約1〜4wt%で、表面被覆用組成物中に存在しうる。
【0028】
表面被覆用組成物は少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年間、そして最も好ましくは少なくとも2年間、その耐湿性を保持する。耐湿性は、表面に冷水(15〜20滴)を付着させた後(およそ16時間)に、本発明の表面被覆用組成物で被覆された表面の脱色(通常、白い白亜の外観)の程度(もしあれば)を視覚的に検査することにより測定されうる。本発明の表面被覆用組成物は被覆された表面への水の付着後に何ら脱色を示さないのが好適である。
【0029】
有機アルコール溶媒系に溶解もしくは分散されたままである本発明の表面被覆用組成物の能力にもかかわらず、基体への付着後に、表面被覆用組成物は有機アルコール溶液の添加の際に脱色に耐えることが見出された。実際に、比較的濃い有機アルコール溶液、すなわち約50〜70wt%で、基体への付着後に、表面被覆用組成物は外観上わずかに変化するにすぎない。耐性の程度は表面被覆用組成物を基体(特にレニータ(Leneta)チャート)に付着させ、そして基体上に表面被覆用組成物の40μm膜を形成するようにその上に組成物を乾燥させることにより測定される。アルコール溶液、特にエタノール50wt%および水50wt%を含む溶液、の約7滴が、膜表面上に置かれ、そして膜表面上のアルコール溶液は時計皿で覆われる。およそ16時間後に、液体は除去され、そして基体は、基体もしくは被覆の表面の脱色(通常、白い白亜の外観)の程度を測定するために視覚的に検査される。
【0030】
好適には、本発明の表面被覆用組成物は、基体への付着後に、有機アルコール溶液、特にエタノール50wt%の水溶液、への耐性により特徴づけられ、ごくわずかに見える脱色が被覆された基体への有機アルコール溶液の付着後に現われる。もっと好適には、有機アルコール溶液への耐性は、被覆された基体への有機アルコール溶液の付着後に何らみえる脱色が現われない程度である。したがって、ここで用いられるように、「エタノール50wt%水溶液への耐性」は、上述のようにエタノール50wt%および水50wt%を含有するエタノール/水溶液の付着後に、本発明の表面被覆用組成物の125μm膜(湿潤)で被覆された、被覆基体(黒色レニータチャート)の表面特性に目にみえる変化(通常、脱色の形態で)が存在しないか、またはごくわずかに存在することをいう。
【0031】
本発明の表面被覆用組成物は、基体への付着後に、つや消し効果によっても特徴づけられる。好適には表面被覆用組成物は光沢度50以下の光沢レベルにより特徴づけられる(BYK−Gardner光沢計で測定して)、もっと好適には、表面被覆用組成物は、光沢度40以下(たとえば光沢度30以下)の光沢レベルにより特徴づけられる。つや消し表面は多くの用途について望ましい。たとえば、学校、病院および大学において表面の低減した輝きは目ざわりな機会を少なくし、集中力がそのような環境でもっと良好になる。そのような仕上げは、時間が経過するにつれて目ざわりになる傾向が比較的少ないことを示す。なぜなら小さなひっかき傷および欠陥が光沢表面上よりも明らかでないからである。結局、つや消し仕上げは木材の上に視覚的に魅力的な表面を創り出しうる。
【0032】
さらに、本発明は、表面被覆用組成物をつや消しし、そして組成物の耐湿および耐化学性を向上させる方法であり:
(i)該組成物に、基体に付着後に、(a)少なくとも約6ヶ月保持される耐湿性、(b)50wt%エタノール/水溶液に耐性、そして(c)光沢度50以下の光沢レベル、を与える疎水性の金属酸化物を用意すること、ならびに
(ii)該金属酸化物を樹脂と混合して、表面被覆用組成物を形成させることを含むつや消し方法を提供する。任意には、樹脂および金属酸化物はキャリアとともに混合されうる。樹脂、疎水性金属酸化物、キャリア、および組成物特性は本発明の表面被覆用組成物に関して上述されたとおりである。
【0033】
さらに本発明は、ここで開示される表面被覆用組成物で被覆された表面を有する基体を含有する。表面被覆用組成物の付着に適切ないかなる基体も本発明により使用されうる。そのような基体は、木材、プラスチック、衣類(たとえば革製品)、金属、および室内装飾品(upholstery)(たとえば自動車のインテリア表面)を含む。好適には、基体は木材のような多孔質表面である。
【0034】
基体はいかなる適切な方法によっても表面被覆用組成物で処理されうる。たとえば、表面被覆用組成物はブラッシングもしくはスプレーにより基体に付着されうる。
【0035】
本発明の表面被覆用組成物は、基体への付着後に、有機アルコール溶液への耐性により特徴づけられるので、組成物は、家具のような基体の表面をアルコール溶液(すなわちアルコール性飲料)にさらした後の脱色から保護する機能を果たす。さらに、もし低光沢の表面被覆が、たとえば家庭もしくはオフィスのための家具ラッカーおよびインテリア塗料において要求されるならば、表面被覆用組成物のつや消し効果は望ましい。
【実施例】
【0036】
次の例は本発明をさらに例示するがもちろん、その範囲を制限するように決して解釈されるべきではない。
例1
この例は、従来の表面被覆用組成物と比較して、本発明の表面被覆用組成物の優れた耐水およびアルコール性を例示する。
【0037】
本発明の表面被覆用組成物は疎水性シリカエーロゲルおよび水にもとづく透明なアクリル樹脂配合物から従来法により調製された。およそ2wt%のシリカエーロゲルが表面被覆用組成物中に存在していた。アクリル樹脂配合物は、NEOCRYL A−633(マサチューセッツ州WilmingtonのZeneca Resinsから入手しうるアクリル樹脂)50.69wt%、Butyl CELLOSOLVE(ペンシルベニア州、Newton SquareのArco Chemical Companyより入手しうる融合助剤)29.95wt%、DISBERBYK 301(ドイツ国BYK−Chemieより入手しうる流動性向上剤)1.38wt%、DISBERBYK 035(ドイツ国BYK−Chemieより入手しうる消泡剤)0.69wt%、安息香酸アンモニウム(さび止め剤)0.46wt%、水酸化アンモニウム(pH調節剤)2.53wt%、ならびに脱イオン水14.29wt%を含んでいた。
【0038】
もう1つの表面被覆用組成物が、同一の方法および同一の成分割合で調製された。しかし、組成物中のシリカエーロゲルは、親水性シリカエーロゲル、フュームドシリカ(ニュージャージー州、Ridgefield ParkのDegussa Corporationより入手しうるACEMATT TS100)、またはワックス処理されたシリカキセロゲル(ドイツ国WormsのGrace Davisonより入手しうるSYLOID ED30)により置換された。さらに、上述のアクリル樹脂配合物のみを含む(シリカが添加されない)表面被覆用組成物も調製された。
【0039】
得られる表面被覆用組成物は水およびアルコール耐性について試験された。水およびアルコール耐性は水(%):アルコール(%)が(1)100:0、(2)70:30、(3)50:50、および(4)30:70、の4つの試験用混合物を調製することにより測定された。各表面被覆用組成物の125μm層(湿潤)は黒色レニータチャートに付着され、そして乾燥された。組成物が乾燥して膜を形成した後に、各試験用混合物のおよそ7滴が異なる位置で膜表面上に置かれた。試料は時計皿で覆われ、12から16時間放置された。時間が経過した後に、表面に余分な試験用混合物が残るように、時計皿は注意深く取り除かれた。ついで黒色レニータチャートは脱色(通常、白い白亜の外観の形態で)について視覚的に検査され、そして脱色があれば、その種類および程度より格付けされた。表面被覆用組成物の水およびアルコール耐性は下の表1に示される。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から明らかなように、本発明の表面被覆用組成物(疎水性シリカエーロゲルを含む)は、エタノール濃度0%および30%で耐水およびアルコール性を示し、50%および70%エタノール溶液の添加後に、ごくわずかな脱色が現われた。シリカを含まない表面被覆用組成物は耐水性を示すようにみえたが、耐アルコール性を示さなかった。もう1つのシリカ処理組成物はある程度の耐水およびアルコール性を示すように見えたが、これらの組成物は、試験用混合物が50%を超えるエタノールを含むときには、本発明の被覆用組成物と同様にはいかなかった。
例2
この例は、従来の表面被覆用組成物と比較して、本発明の表面被覆用組成物の優れた水およびアルコール耐性を例示する。
【0042】
本発明の表面被覆用組成物は疎水性シリカエーロゲルおよびニトロセルロース樹脂から従来法により調製された。およそ1wt%の疎水性シリカエーロゲルが表面被覆用組成物中に存在していた。ニトロセルロース樹脂は、LANCO CL−600(カルフォルニア州San LorenzoのLanco Mfg.から入手しうるニトロセルロース樹脂配合物)78.37wt%、LANCO CA−120(カルフォルニア州、San LorengoのLanco Mfg.より入手しうる溶媒)19.59wt%、DISBERBYK 306(ドイツ国BYK−Chemieより入手しうる流動性向上剤)、ならびにSURFYNOL 104 BC (Air Products & Chemicals,Inc.より入手しうる界面活性剤)を含んでいた。
【0043】
もう1つの表面被覆用組成物が、同一の方法および同一の成分割合で調製された。しかし、組成物中のシリカエーロゲルは、親水性シリカエーロゲル、フュームドシリカ(ニュージャージー州、Ridgefield ParkのDegussa Corporationより入手しうるACEMATT TS100),またはシリカキセロゲル(ドイツ国WormsのGrace Davisonより入手しうるSYLOID ED30)により置換された。さらに、上述のニトロセルロース樹脂配合物のみを含む(シリカが添加されない)表面被覆用組成物も調製された。
【0044】
表面被覆用組成物の耐水および化学性が例1に示されるように試験された。そしてその結果は下の表2に示される。
【0045】
【表2】

【0046】
表2から明らかなように、本発明の表面被覆用組成物(疎水性シリカエーロゲルを含む)は耐水およびアルコール性を示すが、エタノール50%および70%を含む試験用混合物の付着後にわずかな脱色が見られた。
【0047】
特許、特許出願、刊行物を含む、ここで引用されるすべての文献は、参照により全体をここに組入れられる。
【0048】
本発明は、好適な態様について強調して説明されているが、好適な態様の変形も使用され得、そして本発明は特にここに説明されていない別の方法で実施されうることが意図されていることは当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、請求項に記載される本発明の精神および範囲内に包含されるすべての変更を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂系、および疎水性の金属酸化物を含む表面被覆用組成物であり、該組成物は、基体に付着された後に、(a)少なくとも約6ヶ月間、耐湿性、(b)50wt%エタノール/水溶液に耐性であり、そして(c)光沢度50以下の光沢レベル、であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
該金属酸化物がシリカエーロゲルである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該組成物が光沢度約40以下の光沢レベルであることを特徴とする請求項1もしくは2記載の組成物。
【請求項4】
該組成物が光沢度約30以下の光沢レベルであることを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項5】
該組成物がセルロース、アルキド、アクリル、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
該樹脂系がニトロセルロースからなる請求項5記載の組成物。
【請求項7】
該樹脂系がアクリルからなる請求項5記載の組成物。
【請求項8】
該金属酸化物が、トリメチルシリル、ビニルジメチルシリル、アクリルジメチルシリル、およびジメチルジクロロシリルから選ばれる表面部分を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
該組成物がさらにキャリアを含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
該キャリアがアルコール、ケトン、エステル、およびエーテルからなる群より選ばれる有機溶媒である請求項9記載の組成物。
【請求項11】
該金属酸化物が少なくとも約40vol%の疎水性度を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
該金属酸化物が約2〜15μmのメジアン粒径を有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
該樹脂が約10〜95wt%の量で存在し、そして該金属酸化物が約0.5〜15wt%の量で存在する請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の表面被覆用組成物で被覆された表面を有する基体。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の表面被覆用組成物を基体表面に付着させることを含む基体の処理方法。
【請求項16】
表面被覆用組成物をつや消しし、そして組成物の耐湿および耐化学性を向上させる方法であり:
(i)該組成物に、基体に付着後に、(a)少なくとも約6ヶ月保持される耐湿性、(b)50wt%エタノール/水溶液への耐性、および(c)光沢度50以下の光沢レベル、を与える疎水性の金属酸化物を用意すること、ならびに
(ii)該金属酸化物を樹脂と混合して、表面被覆用組成物を形成させることを含むつや消し方法。
【請求項17】
該金属酸化物がシリカエーロゲルである請求項16記載の方法。
【請求項18】
該組成物が光沢度約40以下の光沢レベルであることを特徴とする請求項16もしくは17記載の方法。
【請求項19】
該組成物が光沢度約30以下の光沢レベルであることを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
該組成物がセルロース、アルキド、アクリル、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
該樹脂系がニトロセルロースからなる請求項20記載の方法。
【請求項22】
該樹脂系がアクリルからなる請求項20記載の方法。
【請求項23】
該金属酸化物が、トリメチルシリル、ビニルジメチルシリル、アクリルジメチルシリル、およびジメチルジクロロシリルから選ばれる表面部分を有する請求項16〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
該組成物がさらにキャリアを含有する請求項16〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
該キャリアがアルコール、ケトン、エステル、およびエーテルからなる群より選ばれる有機溶媒である請求項24記載の方法。
【請求項26】
該金属酸化物が少なくとも約40vol%の疎水性度を有することを特徴とする請求項16〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
該金属酸化物が約2〜15μmのメジアン粒径を有する請求項16〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
該樹脂が約10〜95wt%の量で存在し、そして該金属酸化物が約0.5〜15wt%の量で存在する請求項16〜27のいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2012−251168(P2012−251168A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209726(P2012−209726)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2001−526868(P2001−526868)の分割
【原出願日】平成12年9月25日(2000.9.25)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】