説明

袋詰め分離型液体調味料

【課題】香味油を低減した場合においても、受け皿に注いだときに香味油の香り立ちが非常に良好であり、また長期保存しても風味の劣化及び色調の劣化(増色)が低減された袋詰め分離型液体調味料を得る。
【解決手段】香味油と水性調味料が分離しているタイプの分離型液状調味料において、香味油と水性調味料とを相互に液密的に区画収納し、さらにこのパックを、フィルム状袋容器に収納し、内部に窒素ガスを充填し、密封して、課題の袋詰め分離型液体調味料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味油が低減した場合においても、受け皿に注いだときに香味油の香り立ちが非常に良好な、袋詰め分離型液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つの包装容器内に、香味油と水性調味料が分離しているタイプの分離型液状調味料が知られている。この調味料は、香味油の香り立ちを商品の特徴とするもので、容器をよく振って香味油と水性調味料をできる限り均一に混合させてから、受け皿などの容器に分注する。しかし分注回数が増えていくと、途中ないし最後に行くに従い、最初の香味油と水性調味料の比率が次第に変化し、香味油の香り立ちも次第に希薄なものとなり、また全体の風味のバランスが異なってしまうという問題があった。そのため、該香味油の良好な香り立ちを期待するには、水性調味料に対する香味油の割合を予め高く設定することを余儀なくされている。
【0003】
一方、香味油と水性調味料の調味料の比率が一定であるためには、計量して充填された2種類の調味料をできるだけ全部、容器から注ぎだすことが必要であるので、容器は合成樹脂製のフィルムなどの柔らかい包材であることが望ましい。このような容器としては、例えば、特許第3140016号、特許第3990493号が知られている。しかし、このような包材は、ガスバリア性が低く保存中の劣化が起きやすいという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3140016号
【特許文献1】特許第3990493号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、香味油と水性調味料が分離しているタイプの分離型液状調味料において、該香味油の割合を低減した場合においても、香味油の香り立ちが非常に良好な、分離型液状調味料を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、香味油と水性調味料が分離しているタイプの分離型液状調味料において、香味油と水性調味料とをパックにそれぞれ液密的に区画収納し、このパックをフィルム状袋容器に詰め、内部に窒素ガスを封入したところ、香味油の割合を相対的に低減した場合においても、香味油の香り立ちが非常に良好な分離型液体調味料が得られることを知った。また、この袋容器は、長期保存しても調味料の風味の劣化及び色調の劣化(増色)を低減できることを知った。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいて完成したものであって、以下の通りである。
(1)香味油と水性調味料とを相互に液密的に区画収納したパックを、フィルム状袋容器に収納し、窒素ガスを充填し、密封したことを特長とする袋詰め分離型液体調味料。
(2)分離型液体調味料が分離型焼肉用タレである前記(1)記載の分離型液体調味料。
(3)分離型液体調味料全量に対する香味油の割合が2.0〜5.0w/w%である(2)記載の分離型液体調味料。
(4)さらに、香味油と水性調味料の合計重量が10〜50gである前記(2)又は(3)記載の分離型液体調味料。
(5)香味油が、ゴマ油である前記(1)〜(4)のいずれか記載の分離型液体調味料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、香味油を低減した場合においても、受け皿に注いだときに香味油の香り立ちが非常に良好であり、また長期保存しても風味の劣化及び色調の劣化(増色)が、低減された、袋詰め分離型液体調味料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】香味油と水性調味料とを相互に液密的に区画収納したパックの概略説明。
【図2】パックの切断線イに沿って、両側から上方向に折曲げ、ポケット2及び同3の周壁の一部を開裂開口し、香味油及び水性調味料が受け皿に滴下する様子を示す説明図。
【図3】香味油と水性調味料とを相互に液密的に区画収納したパックを、フィルム状袋容器に収納し、窒素ガスを充填し、密封した袋詰め分離型液体調味料の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
香味油としては、野菜を、ゴマ油又は食用油脂(以下、油相ということがある)と共に加熱した後、油相を採取する方法により得られたもの(例えば、ネギ油)或いはゴマ油が挙げられる。ゴマは、昔から栄養価が高く、その油は、ゴマ独特の香りが非常に好まれるもので好ましい。調味料の香り付けに使用されるものが好ましい。
【0011】
水性調味液としては、通常の、香味油及び水性調味料とからなる分離型液体調味料の油相部を取除いた後の調味料が挙げられる。すなわち、醤油成分、味噌成分、甘味成分(砂糖、みりん、水飴等)、酸味成分(食酢、ゆず、レモン等の香酸柑橘)、酒類成分、果汁成分、香辛料成分、野菜成分(大根、ニンジン、にんにく、玉ネギなど)を適宜組合わせ、必要により更に増粘剤(澱粉、増粘多糖類)、化学調味料(グルタミン酸ソーダ、イノシン酸ソーダ等)、フレーバー等を添加した水性調味料が挙げられる。
【0012】
本発明における焼肉用つけタレとしては、通常の焼肉を食べるときに焼肉につけて食するつけタレであって、ごま油などの香味油が水性調味料と分離しているものである。
【0013】
本発明において、香味油と水性液体調味料を、重量比で2.0〜5.0w/w%とすることは重要であって、上記範囲において、これ以上香味油の比率を多くしても香味油の香り立ちの効果はあまり期待することはできない。反対に、香味油の比率を少なくするときは、受け皿に注いだときに香味油が水性調味料と混じりあって香味油の香り立ちが弱くなるので好ましくない。
【0014】
また、香味油と水性調味料の合計重量を焼肉用つけタレとして一回で使い切ることができる10〜50gにすることは、数回分が一つの包装容器に入った焼肉用つけタレと較べて、つけ皿に注いだときの焼肉用つけタレの風味と香味油の香り立ちが保つことができるので重要である。
【0015】
香味油と水性調味料とは、相互に液密的にパックに区画収納することが好ましい。
このようなパックとしては、市販のパックをそのまま利用可能で、例えば、ディスペンパックジャパン社の小容量ポーションパックが好ましい(特許第3140016号、特許第3990493号参照)。
【0016】
図1は、香味油と水性調味料とを相互に液密的に区画収納したパックの概略説明図である。図1において、ポケット2及びポケット3を一方面(本実施例では下面)に開口するトレー1と、該開口部をそれぞれ液密的に接着密封する蓋体10からなり、該蓋体10の中央付近にはポケット2およびポケット3の開口部上を横切る切断線イを有するパックである。
【0017】
図2は、パックを、蓋体10外面に設けられた切断線イに沿って図1において、上方向に折曲げ、ポケット2及び同3の開口部(蓋体10の一部)を開裂し、香味油及び水性調味料が受け皿に滴下する様子を示す説明図である。
【0018】
本発明において、香味油と水性調味料とは、相互に液密的にパックに区画収納することは極めて重要であって、この手段を採用することにより、香味油を低減した場合においても、受け皿に注いだときに香味油の香り立ちが非常に良好である分離型液体調味料を得ることができるので好ましい。
【0019】
次いで、本発明では、香味油と水性調味料とを相互に液密的に区画収納したパックを、フィルム状袋容器に収納し、窒素ガスを充填し、密封する。
なお、上記フィルム状袋容器としては、素材は任意であるが、通常の酸素不透過性の合成樹脂製のフィルムは、上記効果が優れているので好ましい。
【0020】
本発明において、フィルム状袋容器に収納し、窒素ガスを充填し、密封することも重要であって、この手段を採用することにより、上記効果に加え、更に長期保存しても風味の劣化及び色調の劣化(増色)が、非常に少ない、袋詰め分離型液体調味料を得ることができるので好ましい。
【0021】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明する。
【0022】
(本発明の分離型焼肉用つけタレの原料配合)
1.香味油 ゴマ油
2.水性調味料
醤油 400g
砂糖 350g
おろしりんご 40g
レモン果汁 30g
みりん 30g
おろしにんにく 25g
酵母エキス 6g
グルタミン酸Na 5g
とうがらし粉末 1.5g
キサンタンガム 1g
95%アルコール 5g
上記原料に水を加えて1000mlにする。
【実施例1】
【0023】
(本発明の袋詰め分離型焼肉用つけタレの製造)
図1において、ポケット2を、縦32mm、横15mm、深さ10mm、容積3.5mlの香味液収納部とし、ポケット3を縦63mm、横38mm、深さ18mm、容積20mlの水性調味料収納部とし、トレー1を縦75mm、横45mmとし、また蓋体10を同寸法として、図1の如くセットした。
次いで、ポケット2にゴマ油0.6gを、またポケット3に水性調味料19.4gをそれぞれ充填し、それぞれの開口部を液密的に蓋体10で接着密封した。このときの分離型焼肉用つけタレ全量に対するゴマ油の割合は、3.0w/w%である。
これを、フィルム状袋容器(縦10cm、横6cm、容積48ml)に収納し、窒素ガスを26ml充填し、開口部を常法により密封して、本発明の袋詰め分離型焼肉用つけタレを得た。
【0024】
(比較例)
容量200mlのプラスチックボトル(イ)、(ロ)、及び(ハ)に、ゴマ油をそれぞれ6、10及び15g入れ、次いで、それぞれに70℃に加熱した水性調味料を充填し、合計200gとし、密封した。そして、それぞれ比較例1、2および3の分離型焼肉用つけタレを得た。このとき、比較例1、2及び3の分離型焼肉用つけタレ全量に対するゴマ油の割合は、それぞれ3.0、5.0および7.5w/w%である。
上記3つの比較例1、2および3と本発明の袋詰め分離型焼肉用つけタレを25℃で2ケ月間保持したのち、比較例1、2および3のボトルを良く振って内容物を混合した後、各20gづつ受け皿に注いだ。また本発明は、ゴマ油と水性調味料の合計20g全量を受け皿に注いだ。
【0025】
比較例1、2および3のタレについて、本発明と一対比較法(5段階評価法)にて、官能試験を実施した。すなわち、官能検査は、識別能力を有するパネル20人により実施した。その結果を表1に示す。
【0026】
(表1)

【0027】
従来の、一つの包装容器内に、香味油と水性調味液が分離しているタイプの分離型液状調味料においては、水性調味液に対する香味油の割合を予め高く設定することを余儀なくされている。上記試験での本発明のゴマ油含有量は3.0w/w%であったが、ゴマ油の香り立ちは比較例1および2は、いずれも本発明より弱く、本発明は、比較例3のゴマ油含有量7.5w/w%と同等であった。すなわち、本発明によれば、香味油を約1/3に低減しても、従来と同等の香り立ちを有するタレを得ることができることが判る。
【実施例2】
【0028】
実施例1の本発明の袋詰め分離型焼肉用つけタレの製造において、窒素ガスを充填しないこと以外は同様にして、比較例を作成した。本発明と比較例を35℃で3ヶ月保持した後、水性調味料部をナイロンろ紙でろ過し、ろ液5gに水10gを加えて混合し石英製1cmセルに入れ、日本電色工業社製透過型分光色差計spectrophotometerSE6000を用いて、明度L*値を測定した。また、風味についてゴマ油と水性調味料の全量を受け皿に注ぎ、官能評価を行なった。
測定結果を表2に示す。
【0029】
(表2)

【0030】
比較例のように窒素ガスを充填しない場合に比べて、窒素ガス充填をした本発明は、明度L*値の低下が少なく、色調の劣化(増色)を低減できることが判る。また、本発明は若干の風味劣化は認められるが、比較例よりも風味劣化が低減していることが判る。
【実施例3】
【0031】
実施例1の本発明の袋詰め分離型焼肉用つけタレの製造において、ポケット2のゴマ油とポケット3の水性調味料の量を変えて、表3に示したように分離型焼肉用つけタレ全量に対するゴマ油の割合を変えて官能試験を行なった。なお、ゴマ油と水性調味料の合計は20gとし、全量を受け皿に注いで香りと味について評価を行なった。
結果を表3に示す。
【0032】
(表3)

【0033】
表3に示したようにゴマ油の割合が1.5w/w%では、ゴマ油の香りと味が弱く、6.0w/w%以上では、ゴマ油の香りは良好であったが、味の評価が悪かった。したがって、本発明の2.0〜5.0w/w%が好ましいことが判る。
【符号の説明】
【0034】
1・・・トレー、2・・・ポケット、3・・・ポケット、4・・・香味油、5・・・水性調味料、6・・・香味油出口、7・・・水性調味料出口、8・・・受け皿、9・・・フィルム状袋容器、10・・・蓋体、イ・・・切断線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味油と水性調味料とを相互に液密的に区画収納したパックを、フィルム状袋容器に収納し、窒素ガスを充填し、密封したことを特長とする袋詰め分離型液体調味料。
【請求項2】
分離型液体調味料が分離型焼肉用つけタレである請求項1記載の分離型液体調味料。
【請求項3】
分離型液体調味料全量に対する香味油の割合が2.0〜5.0w/w%である請求項2記載の分離型液体調味料。
【請求項4】
さらに、香味油と水性調味料の合計重量が、10〜50gである請求項2又は請求項3記載の分離型液体調味料。
【請求項5】
香味油が、ゴマ油である請求項1〜4のいずれか記載の分離型液体調味料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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