説明

被処理水の濃縮方法及び濃縮装置

【課題】要するエネルギーを低減して、被処理水の濃縮を大規模に行うことができる、被処理水の濃縮方法及び濃縮装置を提供する。
【解決手段】被処理水の濃縮方法は、被処理水と、被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水とを半透膜13を介して接触させ、正浸透により被処理水を濃縮する方法において、高濃度塩水として、自然界に存在する水を用いることを特徴とする。被処理水の濃縮装置10は、被処理水を収容する被処理水収容部11と、被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水を収容する高濃度塩水収容部12と、被処理水収容部11と高濃度塩水収容部12との間に配置され、かつ被処理水と高濃度塩水とを接触させて正浸透により被処理水の濃縮を可能にする半透膜13とを備え、高濃度塩水収容部12は、高濃度塩水として、自然界に存在する水を収容することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水の濃縮方法及び濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は排水などの被処理水の処理として、生物処理などの物理処理が行われてきたが、最近は膜を利用した技術が採用されてきている。膜を利用した技術は、被処理水に含まれる汚染物質を直接処理するのではなく、被処理水を膜により濃縮することで減量する技術であり、さらに、減量した濃縮水の汚染物質を濃縮処理している。また、このように膜を利用して被処理水を減量する技術は、被処理水を固化するシステムの一部としても利用されている。
【0003】
膜を利用した技術として、例えば逆浸透膜を利用することで、被処理水の大部分を安全な処理水として放流し、被処理水を減量する技術が挙げられる。しかし、逆浸透膜を利用する場合、高圧ポンプを用いて被処理水を昇圧するため、大きな電力が必要となる。そのため、被処理水の処理を大規模に行う場合には、多大なエネルギーが必要である。
【0004】
膜を利用した別の技術として、例えば特開昭58−98199号公報(特許文献1)には、汚泥を濃縮塩水に浸透膜を挟んで接触させ、正浸透作用で汚泥中の水を濃縮塩水に移行させることで汚泥を脱水する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−98199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の方法において、濃縮塩水は逆浸透装置を用いて生成されている。このため、上記特許文献1の方法において、被処理物の処理を大規模に行うためには、逆浸透装置を用いて大規模に濃縮塩水を生成する必要があるので、上述したように多大なエネルギーが必要である。
【0007】
なお、上記特許文献1には、濃縮塩水の入手が容易な場合には、逆浸透装置を省略してもよいことが記載されているが、具体的な濃縮塩水の入手は開示されていない。このため、エネルギーを低減して、被処理物の処理を大規模に行うことは、難しい。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、要するエネルギーを低減して、被処理水の濃縮を大規模に行うことができる、被処理水の濃縮方法及び濃縮装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の被処理水の濃縮方法は、被処理水と、被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水とを半透膜を介して接触させ、正浸透により被処理水を濃縮する方法において、高濃度塩水として、自然界に存在する水を用いることを特徴とする。
【0010】
本発明の被処理水の一の局面における濃縮装置は、被処理水を収容する被処理水収容部と、被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水を収容する高濃度塩水収容部と、被処理水収容部と高濃度塩水収容部との間に配置され、かつ被処理水と高濃度塩水とを接触させて正浸透により被処理水の濃縮を可能にする半透膜とを備え、高濃度塩水収容部は、高濃度塩水として、自然界に存在する水を収容することを特徴とする。
【0011】
本発明の被処理水の濃縮方法及び濃縮装置によれば、半透膜を介して被処理水と高濃度塩水として自然界に存在する水とを接触させ、正浸透により被処理水を濃縮している。正浸透は、圧力を加えなくても、塩濃度が相対的に低い被処理水から、塩濃度が相対的に高い高塩濃度水に水が移動するので、浸透圧以上の圧力を被処理水に加える必要がある逆浸透と比べて、被処理の濃縮に要するエネルギーを低減できる。また、被処理水を濃縮するために用いる高濃度塩水は、自然界に存在する水を利用しているので、高濃度塩水を準備するために要するエネルギーを低減できる。
さらに、被処理水を濃縮するために必要な高濃度塩水の利用に対する制限が小さいので、被処理水の濃縮を大規模に行うことができる。
したがって、要するエネルギーを低減して、被処理水の濃縮を大規模に行うことができる、被処理水の濃縮方法及び濃縮装置を提供することができる。
【0012】
上記被処理水の濃縮方法において好ましくは、高濃度塩水は、海水または鹹水であることを特徴とする。
【0013】
海水または鹹水は大量に利用することができるので、要するエネルギーを低減して、被処理水の濃縮をより大規模に行うことができる。
【0014】
上記被処理水の濃縮方法において好ましくは、被処理水は、汚染物を含有する水、有価物を含有する水、及び汚泥を含有する水の少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の被処理水として汚染物を含有する水を用いた場合には、処理する量を低減できるので、汚染物の処理を容易に行うことができる。本発明の被処理水として有価物を含有する水を用いた場合には、有価物を含む水を濃縮することができるので、有価物を容易に回収することができる。本発明の被処理水として汚泥を含有する水を用いた場合には、処理する量を低減できるので、汚泥を処理するために全体として要するエネルギーを低減できる。
【0016】
上記被処理水の濃縮方法において好ましくは、第1の濃縮部において、被処理水と、高濃度塩水とを半透膜を介して正浸透により被処理水を濃縮する工程と、第2の濃縮部において、第1の濃縮部で濃縮した被処理水と、高濃度塩水とを半透膜を介して正浸透により被処理水を濃縮する工程とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の他の局面における被処理水の濃縮装置は、被処理水を収容する第1の被処理水収容部と、被処理水よりも塩濃度が高い第1の高濃度塩水を収容する第1の高濃度塩水収容部と、第1の被処理水収容部と第1の高濃度塩水収容部との間に配置され、かつ被処理水と第1の高濃度塩水とを接触させて正浸透により被処理水の濃縮を可能にする第1の半透膜とを含む第1の濃縮部と、第1の被処理水収容部で濃縮された濃縮被処理水を収容する第2の被処理水収容部と、濃縮被処理水よりも塩濃度が高い第2の高濃度塩水を収容する第2の高濃度塩水収容部と、第2の被処理水収容部と第2の高濃度塩水収容部との間に配置され、かつ濃縮被処理水と第2の高濃度塩水とを接触させて正浸透により濃縮被処理水の濃縮を可能にする第2の半透膜とを含む第2の濃縮部と、第1の濃縮部で濃縮された濃縮被処理水を、第2の濃縮部の第2の被処理水収容部に供給する被処理水供給部とを備え、第1の高濃度塩水収容部及び/または第2の高濃度塩水収容部は、第1の高濃度塩水及び/または第2の高濃度塩水として、自然界に存在する水を収容することを特徴とする。
【0018】
これにより、正浸透による被処理水の濃縮を複数回実施することができる。このため、要するエネルギーを低減して、被処理水の濃縮を大規模に行うことができると共に、被処理水をより濃縮することができる。
【0019】
ここで、上記第1の濃縮部における「(第1の)高濃度塩水」と、上記第2の濃縮部における「(第2の)高濃度塩水」とは、同じ水であってもよく、異なる水であってもよい。
【0020】
上記被処理水の濃縮方法において好ましくは、第1の濃縮部において用いる高濃度塩水は、第2の濃縮部において希釈された高濃度塩水である。
【0021】
上記他の局面における被処理水の濃縮装置において好ましくは、第2の濃縮部で希釈された第2の高濃度塩水を、第1の濃縮部の第1の高濃度塩水収容部に第1の高濃度塩水として供給する高濃度塩水供給部をさらに備えたことを特徴とする。
【0022】
これにより、第1の濃縮部において、より高い塩濃度の高濃度塩水を用いることができるので、要するエネルギーをより低減して、被処理水の濃縮を大規模に行うことができるとともに、被処理水をより効果的に濃縮することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、要するエネルギーを低減して、被処理水の濃縮を大規模に行うことができる、被処理水の濃縮方法及び濃縮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における被処理水の濃縮方法及び濃縮装置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態2における被処理水の濃縮方法及び濃縮装置を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態3における被処理水の濃縮方法及び濃縮装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0026】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の一実施の形態における被処理水の濃縮装置10について説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態における被処理水の濃縮装置10は、被処理水を収容する被処理水収容部11と、被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水を収容する高濃度塩水収容部12と、被処理水収容部11と高濃度塩水収容部12との間に配置され、かつ被処理水と高濃度塩水とを接触可能にする半透膜13とを備えている。
【0028】
被処理水収容部11は、被処理水を内部に導入する導入部と、この導入部から導入される被処理水を内部に収容(貯留)する容器本体である収容部と、この収容部に収容された被処理水から水が除去されて濃縮された被処理水を外部に排出するための排出部とを有している。
【0029】
被処理水収容部11で収容する被処理水は、濃縮処理される水であり、水を含み、かつ高濃度塩水よりも塩濃度が低ければ特に限定されない。このような被処理水として、汚染物を含有する水、有価物を含有する水、汚泥を含有する水の少なくともいずれかを含むことが好ましい。汚染物を含有する水は、例えば放射性物質、有害物質、懸濁物質などを含む水である。有価物を含有する水は、例えば金属、高分子物質などを含有する水であり、レアメタル、触媒、酵素または薬品を含有する水であることが好ましい。本実施の形態で濃縮処理される被処理水は、特にこれらに限定されず、汚染物を含有しない排水などであってもよい。排水は、廃水を含む。汚染物を含有しない排水としては、例えば薬品を含有する水が挙げられる。
【0030】
高濃度塩水収容部12は、高濃度塩水を内部に導入する導入部と、この導入部から導入される高濃度塩水を内部に収容(貯留)する容器本体である収容部と、この収容部に収容された高濃度塩水に被処理水から水が移動して希釈された高濃度塩水を外部に排出する排出部とを有している。
【0031】
高濃度塩水収容部12は、高濃度塩水として、自然界に存在する水を収容する。自然界に存在する水は、例えば海水、鹹水、随伴水(油田、ガス田等から産出された原油等の産出水から油分等を分離除去した後の水)などであり、海水または鹹水であることが好ましい。
【0032】
半透膜13は、被処理水収容部11と高濃度塩水収容部12とを仕切るように配置されている。半透膜13において、被処理水と高濃度塩水とを接触させて、正浸透により、被処理水中の水の塩濃度が低い被処理水に含まれる水の少なくとも一部を、相対的に塩濃度が高い高濃度塩水に移動させる。つまり、半透膜13は、被処理水収容部11に収容された被処理水と、高濃度塩水収容部12に収容された高濃度塩水とを接触させて、正浸透により被処理水の濃縮を可能にする。
【0033】
半透膜13は、水分子または水イオンのみを透過させる膜である。このような半透膜13として、例えばRO膜、NF膜などを用いることができる。
【0034】
本実施の形態の濃縮装置10は、被処理水の濃縮処理において逆浸透を利用していない。このため、本実施の形態の濃縮装置10において、逆浸透に必要な被処理水を浸透圧以上に昇圧するための加圧ポンプは省略されている。
【0035】
続いて、本実施の形態における被処理水の濃縮方法について図1を参照して、説明する。本実施の形態では、図1に示す濃縮装置10を用いて説明する。
【0036】
具体的には、被処理水を、被処理水収容部11に導入する。被処理水は、汚染物を含有する水、有価物を含有する水、及び汚泥の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0037】
被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水を高濃度塩水収容部12に導入する。高濃度塩水として、自然界に存在する水を用いる。このような高濃度塩水は、海水または鹹水であることが好ましい。
【0038】
そして、被処理水と、被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水とを半透膜13を介して接触させる。つまり、塩濃度が相対的に低い被処理水と、塩濃度が相対的に高い高濃度塩水とを、半透膜13を介して接触させる。これにより、正浸透により、被処理水中に含有される水を高濃度塩水に移動させることができるので、被処理水を濃縮することができる。また半透膜13により、被処理水に含有される水以外の成分を高濃度塩水に移動することを抑制できる。なお、被処理水に含有される水は高濃度塩水に移動されるので、高濃度塩水は希釈される。
【0039】
以上の工程を実施することにより、被処理水に含まれる水を低減した濃縮水が得られる。この濃縮水は、例えば濃縮装置10の外部に配置された処理部で処理される。また、被処理水に含まれる水は安全な処理水であるので、この水が移動された高濃度塩水は濃縮装置10の外部に放流される。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態における被処理水の濃縮方法は、被処理水と、この被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水とを半透膜13を介して接触させ、正浸透により被処理水を濃縮する方法において、高濃度塩水として、自然界に存在する水を用いることを特徴としている。
【0041】
本実施の形態における被処理水の濃縮装置10は、被処理水を収容する被処理水収容部11と、被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水を収容する高濃度塩水収容部12と、被処理水収容部11と高濃度塩水収容部12との間に配置され、かつ被処理水と高濃度塩水とを接触させて正浸透により被処理水の濃縮を可能にする半透膜13とを備え、高濃度塩水収容部12は、高濃度塩水として、自然界に存在する水を収容することを特徴としている。
【0042】
本実施の形態の被処理水の濃縮方法及び濃縮装置10によれば、半透膜13を介して被処理水と高濃度塩水とを接触させて、正浸透により被処理水中の水を高濃度塩水に移動するため、被処理水を濃縮することができる。正浸透は、塩濃度が相対的に低い被処理水から、塩濃度が相対的に高い高塩濃度水に、水が移動するので、浸透圧以上の圧力を被処理水に加える逆浸透により被処理水を濃縮する場合と比べて、被処理水の濃縮に要するエネルギー(電力)を低減できる。また、被処理水を濃縮するために用いる高濃度塩水は、自然界に存在する水を利用している。このため、高濃度塩水を準備するために要するエネルギーを低減できる。
さらに、被処理水を濃縮するために要する高濃度塩水は大量に利用可能であるので、被処理水を大規模に処理することができる。
したがって、本実施の形態における被処理水の濃縮方法及び濃縮装置10によれば、要するエネルギーを低減して、被処理水の濃縮を大規模に行うことができる。
【0043】
このように、本実施の形態における被処理水の濃縮方法及び濃縮装置10は、高濃度塩水として自然界に存在する水を利用しているので、被処理水の濃縮を大規模に行うことができる。このため、被処理水の濃縮装置10の大型化も可能になる。
【0044】
(実施の形態2)
図2を参照して、本発明の実施の形態2の被処理水の濃縮装置100を説明する。本実施の形態における被処理水の濃縮装置100は、基本的には実施の形態1の濃縮装置10と同様であるが、本実施の形態における被処理水の濃縮装置100は複数の濃縮部を備えている点において異なる。
【0045】
具体的には、図2に示すように、被処理水の濃縮装置100は、第1の濃縮部110と、第2の濃縮部120と、第2の濃縮部120の高濃度塩水収容部122と第1の高濃度塩水収容部112とを接続する高濃度塩水供給部130と、第1の濃縮部110の被処理水収容部111と第2の濃縮部120の被処理水収容部121とを接続する被処理水供給部140とを備えている。第1及び第2の濃縮部110、120は、基本的には実施の形態1で説明した図1に示す濃縮装置10と同様であるが、第1の濃縮部110で濃縮された被処理水(濃縮被処理水)が第2の濃縮部120の被処理水として導入される点及び第2の濃縮部120で希釈された高濃度塩水(第2の高濃度塩水)が第1の濃縮部110の高濃度塩水(第1の高濃度塩水)として導入される点において異なる。
【0046】
詳細には、第1の濃縮部110は、被処理水収容部111と、高濃度塩水収容部112と、半透膜113とを備えている。被処理水収容部111及び半透膜113の各々は、実施の形態1の被処理水収容部11及び半透膜13と同様であるので、その説明を繰り返さない。第1の濃縮部110の高濃度塩水収容部112は、第2の濃縮部120の高濃度塩水収容部122から排出される希釈された高濃度塩水を、高濃度塩水供給部130を介して導入する点において、実施の形態1の高濃度塩水収容部12と異なる。
【0047】
第2の濃縮部120は、被処理水収容部121と、高濃度塩水収容部122と、半透膜123とを備えている。高濃度塩水収容部122及び半透膜123の各々は、実施の形態1の高濃度塩水収容部12及び半透膜13と同様であるので、その説明を繰り返さない。第2の濃縮部120の被処理水収容部121は、第1の濃縮部110の被処理水収容部111から排出される濃縮された被処理水を被処理水供給部140を介して導入する点において、実施の形態1の被処理水収容部11と異なる。
【0048】
高濃度塩水供給部130は、第2の濃縮部120の高濃度塩水収容部122から排出される高濃度塩水を、第1の濃縮部110の高濃度塩水収容部112へ供給する。高濃度塩水供給部130は、例えば配管を含む。
【0049】
被処理水供給部140は、第1の濃縮部110の被処理水収容部111から排出される被処理水を、第2の濃縮部120の被処理水収容部121へ供給する。被処理水供給部140は、例えば配管を含む。
【0050】
続いて、本実施の形態における被処理水の濃縮方法について説明する。本実施の形態の被処理水の濃縮方法は、基本的には実施の形態1の被処理水の濃縮方法と同様であるが、被処理水を複数回濃縮する点において異なる。
【0051】
具体的には、図2に示すように、第1の濃縮部110においては、被処理水を被処理水収容部111に導入すると共に、第2の濃縮部120において希釈された高濃度塩水を、高濃度塩水供給部130を介して高濃度塩水収容部112に導入する。被処理水収容部111に導入された被処理水の塩濃度は、高濃度塩水収容部112に導入された高濃度塩水の塩濃度よりも低い。第1の濃縮部110においては、導入した被処理水と希釈された高濃度塩水とを半透膜113を介して接触させて、正浸透により被処理水中の水を、希釈された高濃度塩水に移動させて、被処理水を濃縮する。
【0052】
第2の濃縮部120においては、第1の濃縮部110で濃縮された被処理水を、被処理水供給部140を介して被処理水収容部121に導入すると共に、高濃度塩水を高濃度塩水収容部122に導入する。被処理水収容部121に導入された被処理水の塩濃度は、高濃度塩水収容部122に導入された高濃度塩水の塩濃度よりも低い。このように導入した濃縮された被処理水と、高濃度塩水とを半透膜123を介して接触して、正浸透により濃縮された被処理水中の水を、高濃度塩水に移動させて、被処理水をさらに濃縮する。本実施の形態では、被処理水を2段階に濃縮している。
【0053】
なお、本実施の形態では、複数の濃縮部を備えた濃縮装置として、2つの濃縮部を有する濃縮装置100を例に挙げて説明したが、本発明の濃縮装置は3つ以上の濃縮部を備えていてもよい。濃縮装置が3つ以上の濃縮部を備える場合には、被処理水の上流側の濃縮部が高濃度塩水の下流側に位置するように接続される(すなわち、高濃度塩水の上流側に位置する濃縮部が被処理水の下流側に位置するように接続される)ことが好ましい。言い換えると、濃縮装置が3つ以上の濃縮部を備える場合には、被処理水の流れる流路と、高濃度塩水の流れる流路とは対向することが好ましい。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態における被処理水の濃縮方法は、被処理水を第1の濃縮部110の被処理水収容部111に供給する工程と、高濃度塩水を第2の濃縮部120の高濃度塩水収容部122に供給する工程と、第1の濃縮部110において、被処理水と、第2の濃縮部120で希釈された高濃度塩水とを、半透膜113を介して正浸透により被処理水を濃縮する工程と、第2の濃縮部120において、第1の濃縮部110で濃縮された被処理水と、高濃度塩水とを、半透膜123を介して正浸透により被処理水を濃縮する工程とを備えている。
言い換えると、本実施の形態における被処理水の濃縮方法は、第1の濃縮部110において、被処理水と、高濃度塩水とを半透膜113を介して正浸透により被処理水を濃縮する工程と、第2の濃縮部120において、第1の濃縮部110で濃縮した被処理水と、高濃度塩水とを半透膜を介して正浸透により被処理水を濃縮する工程とを備え、第1の濃縮部110において用いる高濃度塩水は、第2の濃縮部120において希釈された高濃度塩水であることを特徴とする。
【0055】
本実施の形態における被処理水の濃縮装置100は、被処理水を収容する被処理水収容部111、121と、高濃度塩水を収容する高濃度塩水収容部112、122と、被処理水収容部111、121と高濃度塩水収容部112、122との間に配置され、かつ被処理水と高濃度塩水とを接触可能にして正浸透により被処理水を濃縮する半透膜113、123とを有する複数の濃縮部(第1及び第2の濃縮部110、120)と、第2の濃縮部120で希釈された高濃度塩水を、第1の濃縮部110の高濃度塩水収容部112に供給する高濃度塩水供給部130と、第1の濃縮部110で濃縮された被処理水を、第2の濃縮部120の被処理水収容部121に供給する被処理水供給部140とを備えている。
言い換えると、本実施の形態における被処理水の濃縮装置100は、被処理水を収容する第1の被処理水収容部(被処理水収容部111)と、被処理水よりも塩濃度が高い第1の高濃度塩水を収容する第1の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部112)と、第1の被処理水収容部(被処理水収容部111)と第1の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部112)との間に配置され、かつ被処理水と第1の高濃度塩水とを接触させて正浸透により被処理水の濃縮を可能にする第1の半透膜(半透膜113)とを含む第1の濃縮部110と、第1の被処理水収容部(被処理水収容部111)で濃縮された濃縮被処理水を収容する第2の被処理水収容部(被処理水収容部121)と、濃縮被処理水よりも塩濃度が高い第2の高濃度塩水を収容する第2の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部122)と、第2の被処理水収容部(被処理水収容部121)と第2の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部122)との間に配置され、かつ濃縮被処理水と第2の高濃度塩水とを接触させて正浸透により濃縮被処理水の濃縮を可能にする第2の半透膜(半透膜123)とを含む第2の濃縮部120と、第1の濃縮部110で濃縮された濃縮被処理水を、第2の濃縮部120の第2の被処理水収容部(被処理水収容部122)に供給する被処理水供給部140と、第2の濃縮部120で希釈された第2の高濃度塩水を、第1の濃縮部110の第1の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部112)に供給する高濃度塩水供給部130とを備え、第1の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部112)及び/または第2の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部122)は、第1の高濃度塩水及び/または第2の高濃度塩水として、自然界に存在する水を収容することを特徴とする。
【0056】
本実施の形態における被処理水の濃縮方法及び濃縮装置100によれば、正浸透による被処理水の濃縮を複数回実施している。このため、要するエネルギーを低減して、被処理水の濃縮を大規模に行うことができると共に、被処理水をより濃縮することができる。
【0057】
(実施の形態3)
図3を参照して、本発明の実施の形態3の被処理水の濃縮装置200を説明する。本実施の形態における被処理水の濃縮装置200は、基本的には実施の形態2の濃縮装置100と同様であるが、本実施の形態における被処理水の濃縮装置200は高濃度塩水供給部130(図2参照)を備えていない点において異なる。
【0058】
具体的には、第1の濃縮部110において、高濃度塩水収容部112は、第2の濃縮部120で希釈された高濃度塩水の代わりに、自然界に存在する水を用いている。つまり、第1の濃縮部110の高濃度塩水収容部112は、実施の形態1の高濃度塩水収容部12と同様である。
【0059】
第2の濃縮部120において、高濃度塩水収容部122は、収容された高濃度塩水に被処理水から水が移動して希釈された高濃度塩水を、第1の濃縮部110の高濃度塩水収容部112に供給する代わりに、外部に放流している。つまり、第2の濃縮部120の高濃度塩水収容部122は、実施の形態1の高濃度塩水収容部12と同様である。
【0060】
本実施の形態の被処理水の濃縮方法は、基本的には実施の形態2の濃縮方法と同様であるが、第1濃縮部110において供給される高濃度塩水は、第2の濃縮部120で希釈された高濃度塩水の代わりに、自然界に存在する水を供給する点において異なる。
【0061】
具体的には、第1の濃縮部110においては、被処理水を被処理水収容部111に導入すると共に、被処理水の塩濃度よりも高い塩濃度の高濃度塩水を、高濃度塩水収容部112に導入する。第1の濃縮部110においては、導入した被処理水と高濃度塩水とを半透膜113を介して接触させて、正浸透により被処理水を濃縮する。
【0062】
第2の濃縮部120においては、第1の濃縮部110で濃縮された被処理水(濃縮被処理水)を、被処理水供給部140を介して被処理水収容部121に導入すると共に、濃縮被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水を高濃度塩水収容部122に導入する。第2の濃縮部120においては、濃縮被処理水と、高濃度塩水とを半透膜123を介して接触して、正浸透により、濃縮被処理水をさらに濃縮する。
【0063】
なお、第1の濃縮部110の高濃度塩水収容部112と、第2の濃縮部120の高濃度塩水収容部122とは、例えば同じ海水を供給する。この場合、第1の濃縮部110と第2の濃縮部とを近傍に設置できる。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態における被処理水の濃縮方法は、第1の濃縮部110において、被処理水と、高濃度塩水とを半透膜113を介して正浸透により被処理水を濃縮する工程と、第2の濃縮部120において、第1の濃縮部110で濃縮した被処理水と、高濃度塩水とを半透膜123を介して正浸透により被処理水を濃縮する工程とを備えたことを特徴とする。
【0065】
本実施の形態における被処理水の濃縮装置200は、被処理水を収容する第1の被処理水収容部(被処理水収容部111)と、被処理水よりも塩濃度が高い第1の高濃度塩水を収容する第1の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部112)と、第1の被処理水収容部(被処理水収容部111)と第1の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部112)との間に配置され、かつ被処理水と第1の高濃度塩水とを接触させて正浸透により被処理水の濃縮を可能にする第1の半透膜(半透膜113)とを含む第1の濃縮部110と、第1の被処理水収容部(被処理水収容部111)で濃縮された濃縮被処理水を収容する第2の被処理水収容部(被処理水収容部121)と、濃縮被処理水よりも塩濃度が高い第2の高濃度塩水を収容する第2の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部122)と、第2の被処理水収容部(被処理水収容部121)と第2の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部122)との間に配置され、かつ濃縮被処理水と第2の高濃度塩水とを接触させて正浸透により濃縮被処理水の濃縮を可能にする第2の半透膜(半透膜123)とを含む第2の濃縮部120と、第1の濃縮部110で濃縮された濃縮被処理水を、第2の濃縮部120の第2の被処理水収容部(被処理水収容部121)に供給する被処理水供給部140とを備え、第1の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部112)及び/または前記第2の高濃度塩水収容部(高濃度塩水収容部122)は、第1の高濃度塩水及び/または第2の高濃度塩水として、自然界に存在する水を収容することを特徴とする。
【0066】
本実施の形態における被処理水の濃縮方法及び濃縮装置200によれば、正浸透による被処理水の濃縮を複数回実施し、かつ第1の濃縮部110において、実施の形態2よりも塩濃度が高い高濃度塩水を用いている。このため、要するエネルギーをより低減して、被処理水の濃縮を大規模に行うことができると共に、被処理水をより一層濃縮することができる。
【0067】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
10,100,200 濃縮装置、11,111,121 被処理水収容部、12,112,122 高濃度塩水収容部、13,113,123 半透膜、110 第1の濃縮部、120 第2の濃縮部、130 高濃度塩水供給部、140 被処理水供給部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水と、前記被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水とを半透膜を介して接触させ、正浸透により前記被処理水を濃縮する方法において、
前記高濃度塩水として、自然界に存在する水を用いることを特徴とする、被処理水の濃縮方法。
【請求項2】
前記高濃度塩水は、海水または鹹水であることを特徴とする、請求項1に記載の被処理水の濃縮方法。
【請求項3】
前記被処理水は、汚染物を含有する水、有価物を含有する水、及び汚泥を含有する水の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の被処理水の濃縮方法。
【請求項4】
第1の濃縮部において、前記被処理水と、前記高濃度塩水とを半透膜を介して正浸透により前記被処理水を濃縮する工程と、
第2の濃縮部において、前記第1の濃縮部で濃縮した前記被処理水と、前記高濃度塩水とを半透膜を介して正浸透により前記被処理水を濃縮する工程とを備えたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被処理水の濃縮方法。
【請求項5】
前記第1の濃縮部において用いる前記高濃度塩水は、前記第2の濃縮部において希釈された前記高濃度塩水であることを特徴とする、請求項4に記載の被処理水の濃縮方法。
【請求項6】
被処理水を収容する被処理水収容部と、
前記被処理水よりも塩濃度が高い高濃度塩水を収容する高濃度塩水収容部と、
前記被処理水収容部と前記高濃度塩水収容部との間に配置され、かつ前記被処理水と前記高濃度塩水とを接触させて正浸透により前記被処理水の濃縮を可能にする半透膜とを備え、
前記高濃度塩水収容部は、前記高濃度塩水として、自然界に存在する水を収容することを特徴とする、被処理水の濃縮装置。
【請求項7】
被処理水を収容する第1の被処理水収容部と、前記被処理水よりも塩濃度が高い第1の高濃度塩水を収容する第1の高濃度塩水収容部と、前記第1の被処理水収容部と前記第1の高濃度塩水収容部との間に配置され、かつ前記被処理水と前記第1の高濃度塩水とを接触させて正浸透により前記被処理水の濃縮を可能にする第1の半透膜とを含む第1の濃縮部と、
前記第1の被処理水収容部で濃縮された濃縮被処理水を収容する第2の被処理水収容部と、前記濃縮被処理水よりも塩濃度が高い第2の高濃度塩水を収容する第2の高濃度塩水収容部と、前記第2の被処理水収容部と前記第2の高濃度塩水収容部との間に配置され、かつ前記濃縮被処理水と前記第2の高濃度塩水とを接触させて正浸透により前記濃縮被処理水の濃縮を可能にする第2の半透膜とを含む第2の濃縮部と、
前記第1の濃縮部で濃縮された前記濃縮被処理水を、前記第2の濃縮部の前記第2の被処理水収容部に供給する被処理水供給部とを備え、
前記第1の高濃度塩水収容部及び/または前記第2の高濃度塩水収容部は、前記第1の高濃度塩水及び/または前記第2の高濃度塩水として、自然界に存在する水を収容することを特徴とする、被処理水の濃縮装置。
【請求項8】
前記第2の濃縮部で希釈された第2の高濃度塩水を、前記第1の濃縮部の前記第1の高濃度塩水収容部に前記第1の高濃度塩水として供給する高濃度塩水供給部をさらに備えたことを特徴とする、請求項7に記載の被処理水の濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−236124(P2012−236124A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105486(P2011−105486)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】