説明

被検体の温度及び発光の組み合わされた空間的イメージングをするイメージング装置

被検体、例えば生体分子を検出するバイオアレイの温度及び発光の組み合わされた空間的イメージングをするイメージング装置が開示される。光5は、第1光経路10及び第2光経路20に分割され、第1光経路10は被検体1からの赤外光IRをガイドし、第2光経路20は、被検体1からの発光、好ましくは蛍光をガイドする。イメージ増強手段30は、第1光経路の赤外光10aを増強された光10b、好ましくは可視光に変換する。光検出手段100は、被検体1の空間的イメージングをするように構成され、該光検出手段は、第1光経路10及び第2光経路20から交互に光を受けるように構成される。処理手段200は、2つのイメージの間の直接の空間的対応を備える、被検体の組み合わされたイメージ25を得るように、温度イメージ11を発光イメージ21と組み合わせることができる。バイオアレイでは、これは、多くのプローブ分子が位置される、アレイの組み合わされたイメージングに関連して、多くの利点を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子を検出するバイオアレイのような、関連付けられた被検体の温度及び発光の組み合わされた空間的イメージングをするイメージング装置に関する。本発明は、本発明によるイメージング装置を有する生体検出システムにも関する。本発明は、更に、温度及び発光を組み合わされた空間的イメージングをする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸のような特定の生体分子を検出する方法は、多様であり、多くの他のアプローチが、現在当業者に利用可能である。特定の核酸又は核酸の基の検出は、診断目的での遺伝子同定を含めて、幅広い重要な実用的用途を有する。
【0003】
通常、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、細胞、及び抗体のような生物検体(「ターゲット」)の検出は、特にいわゆるバイオアレイで実施され得、ここで対応するプローブ分子が、テストアレイの様々なサイトに取り付けられる。ターゲットプローブの例は、DNA/RNAオリゴヌクレオチド、抗体抗原、細胞抗体/タンパク質、ホルモン受容体‐ホルモン等である。ターゲットが、束縛されるか、又は対応するプローブ分子に対してハイブリッド化される場合、ターゲット生体分子の検出が、様々な光学的、電子的、及び微小機械的方法により実行され得る。例えば米国特許US5846708を参照されたい。このようなバイオアレイは、生化学の領域において通常適用される。
【0004】
ターゲット及びプローブ分子の間の束縛又はハイブリッド化の重要なパラメータは、バイオアレイにおける局部温度である。
【0005】
第1にターゲット分子が、二重鎖の核酸である場合、2つの逆鎖を分けるいわゆる変性(denaturing)プロセスが必要とされ得る。編成は、例えばターゲット分子を含むサンプルの温度を上昇させることにより達成され得る。
【0006】
第2に多くの関連する生体分子は、バイオアレイを使用して実行されるアッセイの特異性を順に制限する、ある程度不特定の結合又はハイブリッド化を示す。これは、ターゲットでない分子を区別するため、バイオアレイの局部温度を特定のターゲット分子の融解温度のすぐ下の温度に設定することにより回避又は低下され得る。
【0007】
第3に、ハイブリッド化プロセス自身は、通常温度に強く依存する結合反応速度により制御される。それゆえ、ハイブリッド化の正確な解釈、特にこのような結合の量的な評価は、バイオアレイの温度を正確に制御することを必要とする。
【0008】
これら及び他の理由のため、正確且つ高速な温度測定は、バイオアレイにおいて非常に重要である。しかしながら、バイオアレイにおける温度測定は、いくつかの結合事象が熱を発生させ得、順にバイオアレイの局部温度を上昇させ得るにも関わらず、結合プロセスについての十分な情報をほとんど提供しないであろう。例えば米国特許出願公開US2004/0180369を参照すると、赤外サーモグラフィは、ターゲット分子に取り付けられるナノ粒子の表面プラズモンと組み合わせて適用される。
【0009】
バイオアレイの分子結合を検出するために共通して使用される技術は、「ラベル」としても知られる蛍光標識プローブの光学検出である。通常ラベルは、与える出力信号の物理的分散及び/又は強度に対して検出可能ないかなる薬剤でもあり得る。蛍光剤は幅広く使用されるが、代替のものは、リン光剤、エレクトロルミネッセント光剤、化学発光剤、生物発光剤等を含む。
【0010】
通常、DNAシーケンス分析の応用に対して、塩基特異的な蛍光色素が、DNAポリメラーゼとともに使用される、鎖終結ジデオキシヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドプライマに共有結合される。色素は、適切な波長の入射光により励起され、続いて蛍光の放射が、蛍光標識受容体を監視して観測される。例えば臭化エチジウムのような色素は、二本鎖のDNA又はRNAに存在する場合、蛍光の著しい増加を更に示し得る。したがって、このような色素は、バイオアレイにおいてハイブリッド化を示すために使用され得る。
【0011】
しかしながら、上記の蛍光方法により供給される光学的画像は、生理的に関連する温度インターバルで、例えば赤外サーモグラフィ又は他の種類の温度イメージングにより提供される温度データと蛍光画像を組み合わせることは困難であるという不利な点を有する。これは、通常、相関問題として光学イメージングにおいて知られる。通常、これは、しばしば温度画像が蛍光コンポーンネントを有さない、逆に、被検体の蛍光画像は、被検体の温度に関する情報を含まないか、若しくは非常に制限された情報しか含まないという事実により、いくつかの蛍光及び/又は温度画像に対する解像度のμmスケールを考慮する、不正確なマッチングをもたらし得る2つのソースからの画像のマッチングによりなされる。
【0012】
したがって、改善された発光及び温度イメージング装置が、有利であり、特により効率的且つ信頼できるイメージング装置が有利であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明は、好ましくは上記個々の欠点又は何れかの組み合わせの1又はそれより多くを和らげ、緩和させ、又は排除しようとする。特に、被検体の温度及び発光イメージングの組み合わせで、従来技術の上記問題を解決するイメージング装置を提供することは、本発明の目的とみなされ得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的及びいくつかの他の目的は、関連付けられた被検体の温度及び発光イメージングを併用して得るイメージング装置を提供することにより、本発明の第1の態様で得られ、該装置は、
被検体から受ける光を第1及び第2光経路に分割する光分割手段であって、前記第1光経路が、被検体から受ける光の赤外(IR)部分をガイドするように構成され、前記第2光経路は、被検体から受ける光の発光部分をガイドするように構成される、光分割手段と、
第1光経路の光の赤外光部分を増強された光に変換することができる、イメージ増強手段と、
第1及び第2光経路から交互に光を受けるように構成される、被検体の空間的イメージングのために構成される光検出手段と、
光検出手段に動作的に接続される処理手段であって、該処理手段が、第1光経路の増強された光から被検体の空間的温度画像を取得し、該処理手段が、少なくとも部分的に前記温度イメージを、被検体の組み合わされた画像を得るように、第2光経路から得られる被検体の発光画像と組み合わせる、処理手段と、
を有する。
【0015】
本発明は、特に、排他的ではないが、被検体の温度イメージ及び発光イメージが、同じ光検出手段から取得可能であるという事実により、より簡素化された装置を提供することに対して有利である。こうすることは、同様に、本発明によるイメージング装置のコストを低下させる。
【0016】
更に、本発明は、温度イメージを、同じ被検体の対応する発光イメージと組み合わせるという、これまで予期しなかった可能性を促進し得る。特に、バイオアレイでは、こうすることは、多くのプローブ分子が位置されるアレイの組み合わされたイメージングに関連して、多くの利点を提供する。
【0017】
このような画像の解像度がμm又は更に小さいオーダである場合、このようなイメージを手動、又はコンピュータを使ってさえも、組み合わせる又はマッチングすることは、非常に時間がかかる及び/又は厄介であり得る。しかしながら、本発明を用いると、これは回避される。
【0018】
本発明の文脈において、用語「赤外光」は、マイクロ波領域の可視光範囲の赤の端からの電磁スペクトルの一部という広い意味で理解されるべきである。したがって、光の赤外部分は、0.65乃至1500μm、好ましくは0.70乃至1200μm、より好ましくは0.75乃至1000μm、の波長範囲と規定され得る。特に、光の赤外部分は、最大1000、1200、又は1500μmの波長を有する光として規定され得る。代替として、光の赤外部分は、最小0.65、0.70、又は0.75μmの波長を有する光として規定され得る。温度測定に対して、特に、関連する波長インターバルは、1乃至30μm、2乃至20μm、及び3乃至10μmであり得る。
【0019】
好ましくは、被検体の前記組み合わされたイメージは、発光データ及び温度データのどちらのタイプのデータも例えば前記データの分析の結果として捨てられてない場合、被検体の発光データ及び温度データの両方を有し得る。
【0020】
被検体から受けられた光の発光部分は、フォトルミネッセンス、エレクトロルミネッセンス、化学発光、及び生物発光からなるグループから選択され得る光を有する。特に、受けられた光のフォトルミネッセンス部分は、蛍光又はリン光であり得る。
【0021】
本発明の文脈において、用語「蛍光」は、光が分子又は原子によりある波長において吸収され、続いて、問題となる分子/原子の蛍光寿命として知られる短い期間の後に長い波長で放出されるプロセスとなる、放出された光として広い意味で理解されるべきである。放出された光は、しばしば、制限される必要はないが、可視光スペクトル(VIS)、紫外光スペクトル(UV)、及び赤外光スペクトル(IR)にあり得る。
【0022】
特別なタイプの蛍光として、反ストークスシフトも言及され得る。この種の蛍光は、放出される分子の振動との結合により、吸収された波長よりも短い放出された波長(すなわち高いエネルギー)を有する。
【0023】
リン光は、ミリ秒乃至数百秒のオーダの比較的長い蛍光寿命であるという点で、蛍光とは異なる。これは、ナノ秒乃至数百ナノ秒のオーダである蛍光の寿命よりも長い。この短い寿命は、ヤブロンスキーエネルギー図における直接エネルギー遷移の結果であり、選択則が分子/原子におけるこのようなエネルギー遷移を支配する。
【0024】
本発明は、化学反応が直接発光となる、すなわち化学発光の実施例における用途を見出し得る。したがって、光の事前の吸収がなくなり得る。特に、化学反応は、酵素により触媒作用を及ぼされ、したがって発光は、生物発光として知られる。
【0025】
有利なことに、光検出手段は、被検体から得られる温度イメージと発光イメージとの間の直接の空間的な対応を提供するように、単一の光検出の存在となり得る。したがって、光検出手段は、有利には、単一の電荷結合素子(CCD)であり得る。他の代替は、ケイ化プラチナ及びケイ化イリジウムの赤外熱感式アレイも含み得るが、通常いずれかの種類の光伝導体、フォトダイオード、及びアバランシェフォトダイオードが使用され得る。
【0026】
本発明の一実施例において、光分離手段は、変位可能(displaceable)鏡、好ましくはより多くの変位可能鏡を有し得る。鏡は、回転方向に変位可能な鏡、線形方向に変位可能な鏡、及びこれらのいずれかの組み合わせであり得る。
【0027】
好ましくは、変位可能鏡は、被検体から受ける光を第1光経路にガイドする第1位置、及び被検体から受ける光を第2光経路にガイドする第2位置に変位可能であり得る。したがって、装置は、温度イメージ及び発光イメージを得るため、第1及び第2位置の間を切り替えることにより操作され得る。
【0028】
他の実施例において、光分離手段は、それぞれが被検体から受ける光を赤外(IR)部分と発光部分に分割し、2つの部分を第1及び第2光経路に向け直すことができる、少なくとも1つの光コンポーネントを有し得る。コンポーネントは、例えばプリズム、格子、2色の(dichromatic)鏡等であり得る。
【0029】
イメージ増強手段は、赤外(IR)光を波長ダウンコンバート、すなわち光のエネルギーを増大させることが可能であり得る。好ましくは、イメージ増強手段は、赤外(IR)光をIR光よりも光学的に検出するのが容易である可視光(VIS)に変換することが可能であり得る。
【0030】
一実施例において、第1光経路は被検体における局部温度測定を可能にするように、1又はそれより多くの光バンドパスフィルタを有し得る。これは、被検体の放射を知る、推定する、又は測定し、それから前記光フィルタを通じてある波長における放射を測定する。いくつかの関連するバンドパス範囲インターバルは、1乃至12μm、好ましくは1乃至11μm、又はより好ましくは3乃至7μmを含み得る。
【0031】
代替の実施例において、第1光経路は、少なくとも第1及び第2光バンドパスフィルタを有し、該第1及び第2バンドパスフィルタは、異なるバンドパス範囲を含み得る。
【0032】
好ましくは、温度空間イメージは、前記第1バンドパスフィルタを通過した光から得られるデータを、前記第2バンドパスフィルタを通過した光から得られるデータと組み合わせることにより得られ得る。好ましくは、第1及び第2光バンドパスフィルタは、被検体の温度イメージを得るための2つの波長のアプローチを容易にするため、重なったバンドパス領域を持たない。
【0033】
好ましくは、イメージングを組み合わされる被検体は、バイオアレイであり得る。好ましくは、バイオアレイは、ポリヌクレオチド、DNA,RNA、細胞、及び抗体のような生体ターゲットの分析をするように構成され得る。通常、バイオアレイは、複数のスポットを有し得、プローブ分子が動かなくされる。この文脈において、スポットは、ある延在を有する領域として理解されるべきである。アレイが非平面表面を有する場合、スポットは3次元構成さえ有する。後者の場合、例えばアレイのスポット密度に言及する場合、投影される領域が規定され得る。バイオアレイは、シリコンウェハ、ガラスプレート、又は多孔質膜を有し得る。
【0034】
第2の態様において、本発明は、1又はそれより多くの生体ターゲットの存在、及びオプションとして量を検出する生体検出システムに関し、該システムは、本発明の第1の態様によるイメージング装置を有する。該システムは、制限されるわけではないが、ポリヌクレオチド、DNA,RNA,細胞、及び抗体を含むターゲットを検出し得る。生体検出システムは、しばしば非常に複雑であり、本発明は、本発明により得られる、容易及び/又は高速なデータ分析により簡素化された生体検出システムを提供するという点で有利である。
【0035】
第3の態様において、本発明は、被検体の温度及び発光空間イメージを併せて得る方法に関し、該方法は、
被検体から受ける光を第1及び第2光経路に分割するステップであって、該第1光経路が、被検体から受ける光の赤外(IR)部分をガイドするように構成され、前記第2光経路が、前記被検体から受ける光の発光部分をガイドするように構成されるステップと、
第1光経路の光の赤外光部分をイメージ増強手段により増強された光に変換するステップと、
被検体の空間イメージングをする光検出手段を提供するステップであって、該光検出手段が、第1及び第2光経路から交互に光を受けるように構成されるステップと、
光検出手段に動作可能に接続される処理手段を提供するステップであって、該処理手段が、第1光経路の増強された光から、被検体の空間的温度イメージを得るステップと、
被検体の組み合わされたイメージを得るように、少なくとも部分的に前記温度イメージを、第2光経路から得られる被検体の発光イメージと組み合わせるステップと、
を有する。
【0036】
本発明の第1、第2、及び第3の態様は、各々が他のいずれかの態様と組み合わされ得る。本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例を参照して明らかにされるであろう。
【0037】
本発明は、単に例として、添付の図面を参照して説明されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、本発明による関連づけられた被検体1の温度及び発光の空間イメージを併せて得るイメージング装置の概略的且つ簡素化された図である。被検体1は、図1の下部に位置され、光分離手段3により受けられる光5を放出する。分離手段3は、被検体1から受ける光5を第1光経路10(図1の左側)及び第2光経路20(図1の右側)に分割するように構成される。第1光経路10は、被検体1から受ける光5の赤外(IR)部分をガイドし、第2光経路20は、被検体1から受ける光5の発光部分をガイドする。
【0039】
第1光経路10にイメージ増強手段30が位置される。イメージ増強手段30は、第1光経路10における光の赤外(IR)光部分10aを増強された光10bに変換することができる。
【0040】
赤外光を例えば専用CCDカメラにより検出され得る光に変換する波長ダウンコンバータとして役立つイメージ増強器30がJ.F.B.Hawkes,"Optoelectronics:An introduction,"Prentice-Hall,2nd edition,1989に記載される。あり得る構成は、赤外放射を電子に変換する光カソードと、(アノードとしても振る舞い)生成される電子を可視光放射に変換する蛍光スクリーンと、光カソードのあるスポットから放される電子が、光カソードの対応するスポットにフォーカスされることを保証する1又はそれより多くの静電フォーカス素子とを含む。最終的に、光カソードとアノード/蛍光スクリーンとの間のポテンシャルの差は、電子を蛍光スクリーンに向けて加速させるために印加される。
【0041】
更に、本発明によるイメージング装置は、被検体の空間的イメージングをする光検出手段100を有する。光検出手段100は、より詳細には、第1光経路10及び第2光経路20から交互に光を受ける。したがって、両方の光が第1光経路10及び第2光経路20から受けられる。これは、図1に示されるように、第2光経路20を遮断するとともに、第1光経路10の光10bが通ることを可能にする破線99により概略的に示される。同様に、光検出手段100は、第2光経路20が検出手段100に入ることを可能にされ、第1光経路10が検出手段100に対してブロックされるような他の構成に切り替えられ得る。これは、破線99の隣の両矢印で図示される。
【0042】
本発明によるイメージング装置は、光検出手段100に動作可能に接続される処理手段200を有する。処理手段200は、第1光経路10の増強された光10bから、被検体1の空間的温度イメージ11を得るように適合される。処理手段200は、前記温度イメージを、第2光経路20から得られる被検体1の発光イメージ21と、少なくとも部分的に空間的に組み合わせるように更に適合される。組み合わされたイメージ(図1には図示されない)は、処理手段200に接続される適切なスクリーン300上に表示され得る。
【0043】
図2は、被検体1から放出される光5、処理される光10及び20、並びにこれらの光の結果となるイメージ11,21、及び25のフローチャートである。被検体1は、光5を放出し、これは2つの経路10及び20に分割される。第1経路10は、イメージ増強手段30(図2に示されない)により増強された光10bに処理され、光検出手段及び処理手段(どちらも図2に示されない)により被検体1の空間的温度イメージ11にさらに処理される。第2光経路20において、被検体1から受けられる光5の発光部分は、被検体1の空間発光イメージ21を得るように、光検出手段にガイドされる。最終的に、被検体1の空間温度イメージ11及び被検体1の空間蛍光イメージ21は、イメージ25に組み合わされる。
【0044】
図3は、温度イメージ11及び発光イメージ21が本発明の一実施例においてどのように組み合わされるのかについての図を示す。2つのイメージ11及び21は、両方のイメージ11及び21からの情報を含む新たなイメージ25に組み合わされる。これは、イメージ分析の当業者により容易に理解されるように、多くの異なる態様で行われ得る。
【0045】
図3に示される実施例において、イメージ11、21、及び25は、2次元アレイのピクセルにより図示される。アレイにおいて同じように位置される各イメージ11,21又は25は、被検体1の同じ空間的位置に由来するそれぞれ情報P_11、P_21、又はP_25を有する。これは、被検体1から得られるイメージ11及び21の間に固有の空間的対応を可能にする第1光経路10及び第2光経路20から交互に光を受けるので、可能である。言うまでもなく、これは、もちろん被検体1及び光検出手段100に対する第1光経路10及び第2光経路20の適切な光学的位置合わせを必要とする。これにより本発明は、容易且つ直接的な態様で温度及び発光データが分析及び/又は表示されることを促進する。実際の実現では、ピクセルのアレイは、CCDのピクセルにより構成され得、したがって、ピクセルの数は、百万又は更に大きいオーダであり得る。イメージングする被検体1は、1,5,20,50、又は100μm、又は代替としてもっと大きく1,2,3,4,5,6,7,8、又は10mmの大きさをもつバイオアレイであり得る。このようなバイオアレイにおいて区別できるハイブリッド化特性を備える異なるスポットの数は、現行のアレイにおけるmm2当たり約10乃至1000、及びより多くであって、例えばmm2当たり最大10000又は100000スポットに変化し得る。アレイにおけるスポットにおいて、同一のプローブ分子が、動かなくされる。スポットにおけるプローブ分子密度は、10乃至1010/μm2、好ましくは103乃至108/μm2、又はより好ましくは105乃至107/μm2のインターバルにあり得る。
【0046】
一実施例において、特徴的なレベルは、組み合わされたイメージ25に設定される。例えば、局部温度が特定のハイブリッド化又は束縛事象と関連付けられる、あるレベルより上であることを示すピクセルP_11は、イメージ25に転送される。代替として、又は付加的に、発光レベルが、特定のハイブリッド化又は結合事象に対応する、あるレベルより上であることを示すピクセルP_21のみが、イメージ25に転送される。2つのイメージ11及び21の組み合わせにおける特徴的なレベルを使用することは、イメージ11及び21の一方又は両方の選択された部分を捨てるという結果になり得、したがって、2つのイメージの組み合わせは、部分的に本発明の文脈にあると理解され得る。同様に、イメージ11又は21の一部は、関連情報がイメージのこれらの部分から予測されない場合、事前に捨てられ得る。
【0047】
図4は、変位可能鏡9を備えるイメージング装置の一実施例の概略図である。変位可能鏡9a及び9bは、被検体1から受ける光を第1光経路10にガイドする、図4Bに示される第1位置と、被検体1から受ける光5が第2光経路20に入ることを可能にする、図4Aに示される第2位置とに変位可能である。
【0048】
図4Aにおいて、被検体1からの光5は、適切なレンズ2aによりコリメートされる。同様に、第2光経路20において、光は、被検体1の正確なイメージングを保証するレンズ2bの焦点を合わせることにより、フォーカスされる。よく知られる光学最適化測定、例えばフォーカス、コリメート、位置合わせ等は、イメージング装置で実施され得る。鏡6及び9、バンドパスフィルタ(BPF)40、レンズ8、及びイメージ増強手段30は、図4Aに示されるが、変位可能鏡9が、被検体1から受ける光5に対してアクティブでない位置に変位されるので、これらはこの構成においてアクティブでない。
【0049】
図4Bにおいて、被検体1から受ける光5が鏡9aに作用する位置に、変位可能鏡9a及び9bの対が変位される。鏡9a及び9bは、図4Aに示される位置から、図4Bに示される位置に回転可能に変位され得る。代替として、鏡9a及び9bは、線形に変位され得、場合により、線形及び回転移動の組み合わせが実行され得る。図4A及び図4Bに示される2つの鏡の位置の間の期間は、得られるイメージの所望の解像度及び/又は正確性に依存し得る。前記期間は、通常、秒のオーダ(例えば2,4,6秒)であるが、より長い、又はより短い期間も、本発明によるイメージング装置で実施され得る。
【0050】
鏡9aから反射される光5は、赤外(IR)光10aの選択された部分のみが通過することを可能にする光バンドパスフィルタ(BPF)40にガイドされる。フィルタ40のバンドパス範囲は、1乃至12μmであり得、好ましくは1乃至11μm、又はより好ましくは3乃至7μmであり得る。一実施例において、2つの波長インターバルよりも低く更に説明されることは、温度を決定するために利用される。フィルタ40は、可変バンドパス範囲を有し得るか、代替として、2又はそれより多くのフィルタが、第1光経路10に交互に位置され得る。光バンドパスフィルタ(BPF)は、従来技術でよく知られ、フィルタ(例えばカラー又は干渉)、単色光分光器、干渉計(例えばファブリぺローエタロン)を含み得る。
【0051】
フィルタ40を通過した後、赤外光10aは、鏡7a及びレンズ8aを介して、イメージ増強手段30にガイドされる。イメージ増強手段30は、赤外(IR)光10aを波長ダウンコンバートすることができる。好ましくは、イメージ増強手段30は、赤外(IR)光を可視光10bに変換することができる。イメージ増強手段30から出て、光10bは、レンズ8bによりコリメートされる。鏡7b及び9bを介して、レンズ2bを通して、光10bは、光検出手段100に向けられる。
【0052】
図5は、2つの光コンポーネント11a及び11b、すなわち第1光経路10及び第2光経路20を分割する二色鏡を備えるイメージング装置の他の実施例の概略図である。図5の光学構成は、図4の構成と類似するが、変位可能鏡を有する代わりに、光コンポーネント11が、光コンポーネント自身の著しい機械的平行移動の必要なく、第1光経路及び第2光経路20に分割する。この機能は、制限されないが、二色鏡、格子、プリズム、ホログラム等を含む幅広い光コンポーネントにより供給され得る。シャッタ50は、光検出手段100が第1光経路10及び第2光経路20からの光を交互に照射されることを保証するため、図5の実施例において供給される。したがって、第1光経路10におけるシャッタ50は、第2光経路20におけるシャッタ50が閉ざされると開けられ、逆もまた同様である。
【0053】
図6は、バイオアレイから得られる蛍光イメージ20の一例である。異なるスポットは、アレイにおいて選択された蛍光の場所の同定が可能であるように明確に見ることができ、放出された蛍光のレベルの相対的な違いも、このイメージにおいて明らかである。スポットは、直径約200μmである。蛍光剤又はラベルは、例えば生体分子の放射性標識と比較して、これらの信頼できる機能及び安全実験室条件により、バイオアレイにおけるハイブリッド化検出の幅広い使用を得ている。大きな生体分子は、臭化エチジウムのような蛍光化学剤で変形され得る。それゆえ、この「タグ」の蛍光は、所望の分子の非常に高感度な検出を提供する。適切なランプが、例えばUVにおいて励起源として機能する。
【0054】
通常、バイオアレイにおいて、単に領域当たりの束縛事象の数は、例えば血液サンプルのサンプル溶液におけるターゲットとされる分子の濃度の測定である。束縛/ハイブリッド化動力学に対して、温度は非常に重要なパラメータである。正確な温度制御は、束縛事象の選択性を向上させ得、それゆえ、サンプルのターゲット分子濃度の予測の正確性を向上させ得る。したがって、正確且つ局部的な温度測定は、テストサンプルのターゲットとされる分子の数の適切な解釈のための非常に重要なパラメータである。
【0055】
バイオアレイにおける束縛サイトの局部温度は、赤外カメラのバイオアレイの領域をイメージングすることにより測定され得る。標準的なIRカメラは、ある波長範囲にわたって積分される放射線強度を測定する。バイオアレイの領域においてこの目的のためのIRサーモグラフィの使用は、米国特許出願公開US2004/0180369で見つけられ得る。
【0056】
このアプローチは、1つのイメージにおける非常に正確な相対的な温度測定(通常0.05℃)を提供するが、絶対的な温度の正確さを欠き得る(通常、±2℃又は値の±2%)。この絶対値の誤りは、光学イメージングシステムに生じる損失及び被検体の放射率により主として決定される。
【0057】
eff(λ1,λ2)=αI(λ1,λ2)が、λ1とλ2との間の波の範囲において、検出手段100により検出される全放射とする。αは、被検体1の放射率及びイメージングシステムの損失を組み込む係数である。αは、波長に依存しないと仮定され得る。これは、一般的な近似であり、例えばこの近似が利用される欧州特許0387682を参照されたい。
【0058】
したがって、2つの波長領域又はインターバルからの放射エネルギーを検出することは有利になり得る。技術的に、これは、2つの異なるバンドパスフィルタ40を測定することによりなされる。
eff1(λ1,λ2)=αI1(λ1,λ2
eff2(λ,λ)=αI2(λ,λ
【0059】
これら2つのイメージから、放射カーブの勾配、すなわちイメージ11の各点の差分強度が計算され得る。

【0060】
明らかなことだが、この表現は、被検体1の放射率及び光学システムの損失に依存しない。これは、この方法が異なる放射率及びシステムの損失を有する異なるタイプの材料に対して較正を必要としないので、利点を与える。
【0061】
図7は、差分強度Idffの絶対温度(ケルビン温度)依存性を示す。λ1、λ2、及びλ3に対してそれぞれ3μm、5μm、及び7μmの波長が、温度に対して実質的に線形の応答を得ることがわかる。これは、温度応答が実質的に線形である図7から明らかである。これは、システムの較正が2つの測定のみにより行われ得るので、いくつかの従来の方法よりも有利である。代替として、λ12及びλ3は、それぞれ2μm、4μm、及び6μm、又はそれぞれ4μm、6μm、及び8μmと設定され得る。両方のオプションは、近い又は実質的に線形の応答を得る。2つの波長インターバルの幅は、本発明によるイメージング装置に依存して、0.5μm、1μm、及び1.5μmに設定され得る。
【0062】
この差分方法の温度感度は、従来のものよりも3倍低い。その結果、0.1度の温度変化に対して、0.2*10-3の差分信号が達成される。しかしながら、これは、通常のIRイメージカメラのノイズレベルよりも依然として高く、容易に検出され得る。また、測定された信号の絶対値が約5倍低く、積分時間がより長くなるべきであることを意味する。これは、温度測定が、大抵のバイオアレイ用途において低周波数で実行され得るので、問題ではない。
【0063】
図8は、本発明による方法のフローチャートである。被検体1の温度及び発光の空間的イメージ25を併せて得る方法は、
S1:被検体1から受ける光5を第1及び第2光経路に分割するステップであって、該第1光経路10が被検体から受ける光の赤外(IR)部分をガイドするように構成され、前記第2光経路20が、被検体1から受ける光5の発光部分をガイドするように構成されるステップと、
S2:イメージ増強手段30により、第1光経路の光の赤外光部分10aを増強された光10bに変換するステップと、
S3:被検体1を空間的にイメージングするように構成されるとともに、第1光経路10及び第2光経路20から交互に光を受けるように構成される光検出手段100を供給するステップと、
S4:光検出手段100に動作可能に接続されるとともに、第1光経路10の増強された光10bから、被検体の空間的温度イメージ11を得るように適合される処理手段200を供給するステップと、
S5:被検体の組み合わされたイメージ25を得るように、第2光経路20から得られた被検体1の発光イメージ21と前記温度イメージ11を少なくとも部分的に組み合わせるステップと
を有する。
【0064】
本発明は、特定の実施例と関連して記載されているが、ここに説明される特定の形態に制限されることを意図されない。更に、本発明の範囲は、請求項のみによって制限される。請求項において、「有する」という用語は、他の要素又はステップの存在を排除しない。更に、個々の特徴が異なる請求項に含まれ得るが、これらは、有利に組み合わされ得、異なる請求項に含めることは、特徴の組み合わせが実行可能でない、及び/又は有利でないことを暗示しない。更に、単数形の表記は、複数形を排除しない。したがって、単数形、「第1」「第2」等の表記は、複数形を排除しない。更に、請求項における参照符号は、範囲を制限するとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明によるイメージング装置の概略図である。
【図2】図2は、光、処理される光、及び結果となる該光のイメージのフローチャートである。
【図3】図3は、温度イメージがどのように発光イメージと組み合わされるかの図を示す。
【図4A】図4Aは、変位可能鏡を備える一実施例の概略図である。
【図4B】図4Bは、変位可能鏡を備える一実施例の概略図である。
【図5】図5は、第1及び第2光経路を分割する光コンポーネントを備える一実施例の概略図である。
【図6】図6は、バイオアレイから得られる蛍光イメージの一例である。
【図7】図7は、差分の強度と絶対温度のプロットである。
【図8】図8は、本発明による方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関連付けられた被検体の温度及び発光の組み合わされた空間的イメージを得るイメージング装置であって、
前記被検体から受ける光を第1及び第2光経路に分割する光分割手段であって、該第1光経路が、前記被検体から受ける光の赤外部分をガイドし、前記第2光経路が、前記被検体から受ける光の発光部分をガイドする、光分割手段と、
前記第1光経路の前記光の赤外光部分を増強された光に変換することができるイメージ増強手段と、
前記被検体の空間的イメージングをする光検出手段であって、前記第1光経路及び前記第2光経路からの光を交互に受ける、光検出手段と、
前記光検出手段に動作可能に接続される処理手段であって、前記第1光経路の前記増強された光から、前記被検体の空間的温度イメージを得るように適応され、前記被検体の組み合わされたイメージを得るように、少なくとも部分的に前記温度イメージを、前記第2光経路から得られる前記被検体の発光イメージと空間的に組み合わせるように適応される、処理手段と
を有する装置。
【請求項2】
前記被検体の前記組み合わされたイメージは、前記被検体についての発光データ及び温度データを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記被検体から受ける光の前記発光部分は、光ルミネッセンス、電界発光、化学発光、及び生物発光からなるグループから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記被検体から受ける光の前記発光部分が、蛍光及びリン光からなるグループから選択される光を有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記光検出手段が、前記被検体から得られる前記温度イメージと前記発光イメージとの間の直接の空間的対応を提供する単一光子検出器である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記光検出手段が、電荷結合素子を有する、請求項1又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記光分割手段が、少なくとも1つの変位可能鏡を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの変位可能鏡が、前記被検体から受ける前記光を前記第1光経路にガイドする第1位置と、前記被検体から受ける前記光を前記第2光経路にガイドする第2位置とに変位可能である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記光分割手段が、前記被検体から受ける光を赤外部分及び発光部分に分割するとともに、該2つの部分をそれぞれ前記第1光経路及び前記第2光経路に再度向けることができる少なくとも1つの光コンポーネントを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記イメージ増強手段が、前記赤外光を波長ダウンコンバートすることができる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記イメージ増強手段が、前記赤外光を可視光に変換することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第1光経路が、1又はそれより多くの光バンドパスフィルタを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記第1光経路が、少なくとも第1及び第2光バンドパスフィルタを有し、前記第1及び第2バンドパスフィルタが、異なるバンドパス範囲であって、好ましくは重ならないバンドパス範囲を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記温度の空間的イメージは、前記第1光バンドパスフィルタを通過した光から得られるデータを、前記第2光バンドパスフィルタを通過した光から得られるデータと組み合わせることにより得られる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
イメージングする前記被検体がバイオアレイである、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記バイオアレイが複数のスポットを有し、ここでプローブ分子が動かなくされる、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
1又はそれより多くの生体ターゲットの存在、及びオプションとして量を検出する生体検出システムであって、請求項1乃至16の何れか一項に記載のイメージング装置を有する生体検出システム。
【請求項18】
被検体の温度及び発光の組み合わされた空間的イメージを得る方法であって、
前記被検体から受ける光を、前記被検体から受ける光の赤外部分をガイドする第1光経路と、前記被検体から受ける光の発光部分をガイドする第2光経路とに分割するステップと、
前記第1光経路の前記光の赤外光部分を、イメージ増強手段により増強された光に変換するステップと、
前記被検体の空間的イメージングをするように構成され、前記第1光経路と第2光経路とから光を交互に受けるように更に構成される光検出手段を提供するステップと、
前記光検出手段に動作可能に接続され、前記第1光経路の前記増強された光から前記被検体の空間的温度イメージを得るように適用される、処理手段を提供するステップと
前記被検体の組み合わされたイメージを得るように、前記第2光経路から得られる前記被検体の発光イメージと、前記温度イメージを少なくとも部分的に組み合わせるステップと、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−538419(P2009−538419A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511628(P2009−511628)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051813
【国際公開番号】WO2007/135613
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】