説明

被検体情報取得装置および被検体情報取得方法

【課題】再構成画像の画質に関する設定と撮影領域に関する指定に基づいて、音響波の取得を行うための技術を提供する。
【解決手段】本発明の被検体情報取得装置は、被検体内を伝播した音響波を受信する素子を有する音響波検出器から出力される音響波信号を用いて被検体内の特性情報を取得するものであり、ユーザーにより指定される特性情報の取得指定領域の情報と、取得する特性情報の精度に関する設定情報と、音響波の受信に関する条件である受信条件情報とを用いて音響波を受信する受信領域を求める受信領域決定手段と、受信領域決定手段により求められた受信領域の情報を用いて音響波検出器の走査を制御する走査制御手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体情報取得装置および被検体情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーなどの光源から照射した光を用いて生体などの被検体内の情報を得る光画像化装置(撮影装置)の研究が医療分野で積極的に進められている。このような光画像化技術の一つとして、Photoacoustic Tomography(PAT:光音響トモグラフィー)がある。光音響トモグラフィーとは、光音響効果により被検体内で伝播・拡散した光のエネルギーを吸収した生体組織から発生した音響波に基づき、被検体内部の光学特性値に関連した情報を可視化する技術である。光学特性値に関連した情報取得の一例としては、音響波を、被検体を取り囲む複数の個所で検出し、得られた信号を数学的に解析処理する方法がある。
【0003】
この技術で得られる、光照射によって生じた初期音圧分布あるいは光エネルギー吸収密度分布などの情報は、新生血管の増殖を伴う悪性腫瘍場所の特定などに利用できる。以降の説明では光エネルギー吸収密度分布の記述を省略するが、初期音圧分布の説明に含まれるものとする。このような初期音圧分布に基づく3次元再構成画像の生成と表示は生体組織の内部の把握に有用であり、医療分野における診断に役立つことが期待されている。ただし、発展途上の技術であるため、よりノイズ、アーチファクト(虚像)の低減された画質の良い画像の生成が望まれている。
【0004】
ここで、光音響効果とは、物体にパルス光を照明すると、被測定物内の吸収係数が高い領域で体積膨張により音響波(疎密波であり、典型的には超音波)が発生する現象である。パルス光を照射することによる体積膨張によって発生した音響波を、本発明において「光音響波」という。
【0005】
一般に光音響トモグラフィーでは、被検体全体を取り囲む閉じられた空間表面(特に球面状測定表面)の様々な点で、音響波の時間変化を理想的な音響波検出器(広帯域・点検出)で測定すれば、理論的には光照射により生じた初期音圧分布を完全に可視化できる。また、閉じられた空間でなくとも、被検体に対して円柱状あるいは平板状に測定可能であれば、光照射により生じた初期音圧分布をほぼ再現できることが数学的に知られている(非特許文献1参照)。
【0006】
下記式(1)は、PATの基本となる偏微分方程式であり、「光音響波動方程式」と言われる。この式を解けば、初期音圧分布からの音波伝播を記述でき、どの場所で音響波がどのように検出できるかを理論的に求めることができる。
【数1】

ここで、rは位置、tは時間であり、p(r,t)は音圧の時間変化、p(r)は初期音圧分布、cは音速である。δ(t)は光パルスの形状をあらわすデルタ関数である。
【0007】
一方、PATの画像再構成とは、検出点で得られた音圧p(r,t)から初期音圧分布p(r)を導き出すことであり、数学的には逆問題と呼ばれる。以下にPATの画像再構成手法で代表的に使われているUniversal Back Projection(UBP)法に関して
説明する。式(1)の光音響波動方程式を周波数空間上で解析することで、p(r)を求める逆問題を正確に解くことができる。その結果を時間空間上で表したのがUBPである。最終的に以下のような式(2)が導かれる。
【数2】

ここで、Ωは任意の再構成ボクセル(あるいは注目点)に対する全体の測定エリアSの立体角である。
【0008】
さらに、式を分かりやすく変形すると、以下の式(3)となる。
【数3】

ここでb(r,t)は投影データ、dΩは任意の観測点Pに対する音響波検出器dSの立体角である。この投影データを式(3)の積分に従って逆投影することで初期音圧分布p(r)を得ることができる。
【0009】
なお、b(r,t)とdΩは、以下の式(4)、式(5)で表わされる。
【数4】

ここで、θは音響波検出器と任意の観測点Pとがなす角度である。
【0010】
音源の大きさに比べて、音源と測定位置の距離が十分大きい場合(遠距離音場近似)、以下の式(6)となる。
【数5】

このときb(r,t)は、以下の式(7)となる。
【数6】

【0011】
このようにPATの画像再構成では、音響波検出器で得られた検出信号p(r,t)を時間微分することで投影データb(r,t)を得て、式(3)に従って逆投影することで、初期音圧分布p(r)が求まることが知られている(非特許文献1及び2参照)。
【0012】
ただし、式(3)を求めるために利用した光音響波動方程式である式(1)は、「音速一定」、「全方位からの測定」、「インパルス的光励起」、「広帯域での音響波検出」、「ポイントでの音響波検出」、「連続的な音響波のサンプリング」を仮定している。現実的には、これらの仮定を満たす装置の実現は容易ではない。
【0013】
例えば、現実の被検体では、被検体全体を囲む、閉じた空間表面全体で、音響波を検出することは困難である。また、音響波の測定領域を大きくするには、音響波検出器のサイズや素子数、および各素子の信号処理、制御部を増大させる必要があり、製造コストの増加につながる。このような事情から、PATの技術を用いた実用的な撮影装置は、被検体の特定の方向から、限られた大きさの探触子(音響波検出器)を用いて音響波を検出する装置として構成されることが多い。
【0014】
このような装置の一例として、特許文献1で開示されているように、平板型測定系の光音響トモグラフィーを用いた装置が考案されている。この光音響トモグラフィーでは、平板で挟まれた被検体に光を照射し、平板上に配置された音響波検出器で音響波を検出する。ここで、光の照射数と音響波受信の回数は、複数回行われる場合もある。複数回の光の照射と音響波受信を元に、音響波信号、または、音響波信号に基づいて算出された各値を平均化した値を算出して用いることもある。
【0015】
平板に限らず、被検体に接する、または、被検体の表面と平行な面などのように被検体との相対的な位置関係が明白な平面、または曲面上に移動可能な機構で探触子を配置して音響波を取得する場合もある。このような面上を、探触子に配置された素子の位置に関する情報を記録しながら音響波を受信した領域を受信領域と呼ぶと、受信領域全体で検出した音響波を用いて画像再構成することもできる。
ここで、受信領域とは、探触子の移動により、素子が配置された探触子の受信面の占める領域であり、時刻は異なるが探触子の素子で音響波を受信しうる領域でもある。受信領域は探触子の受信面の形状や配置された素子位置により、平面に限定されず、曲面においても同様に扱える。
【0016】
受信領域内で探触子を移動しながら音響波を受信すると、探触子の素子の位置が変化する。しかし、素子ごとに検出される音響波を、検出時の受信領域上の素子位置で検出された音響波であると捉えると、受信領域上の各位置で検出された音響波とみなせる。すなわち、受信領域サイズの受信面に素子が配置された探触子で検出された音響波とみなして扱うこともできる。光音響波の場合は光の照射位置や照射時刻に応じて探触子を移動し、受信領域上の各素子位置で検出された音響波信号群を集めることで、受信領域全体の光音響波信号を検出することができる。
【0017】
なお、平板の探触子を被検体に密着させて音響波を検出する方法には、ノイズの少ない
音響波の検出ができる、検出を繰り返す間、被検体や探触子の位置の固定や探触子の移動の制御等が容易になる、といった利点がある。
【0018】
ここで、音響波検出器の素子の指向性に応じた有効な音響波信号について説明する。
本明細書における有効な音響波信号とは、探触子の素子の特性や感度により定まる実用的な値以上で検出された音響波に基づいた音響波信号のことである。一般的な超音波用の探触子では、素子の中心軸の音圧から1/2の音圧になる指向角で定まる円錐状の範囲に収まる音源からの音響波を有効とする。そのため、本発明の実施においてもこのような素子の指向性の範囲の音源による音響波を検出した場合に有効な音響波信号として説明する。ただし、指向角は、必ずしも、音圧が1/2になる角度に限定しなくてもよい。本明細書の説明においては、素子ごとの特性や感度から、素子ごとに有効とみなして定まる範囲を音源とする音響波の検出に基づいた音響波信号を有効な音響波信号とし、その場合の指向角により定まる範囲を素子の指向性の範囲として説明する。
【0019】
平板に沿って音響波検出器を移動して音響波を検出する場合、探触子の被検体に対する方位は限定される。すなわち、撮影対象の全周囲からの音響波検出はできない。被検体に対して限定された方位にある探触子の受信領域上の素子位置で検出した音響波に基づいた信号を使用するため、光音響波動方程式の仮定とは異なる音響波信号群による画像再構成となる。
【0020】
さらに、撮影対象とする領域を、画像再構成する領域、すなわち再構成領域と言い換えれば、再構成領域の各注目点において、有効な音響波信号の数や、検出位置との相対的な位置の条件が、必ずしも同じ条件にはならない。すなわち、再構成領域内において有効な音響波信号に関する条件が異なる領域が存在し、この条件の相違から再構成画像の画質が異なる領域が生じる。
【0021】
超音波画像の表示においては、例えば、特許文献2に、探触子の素子ごとの信号強度を判定し、所定の値以上の信号強度の素子のマップや、3次元画像を生成した場合にCモード画像を表示する例が開示されている。ただし、送受信した超音波信号の強度を判定して表示するものである。光音響波の再構成画像の画質の異なる領域を識別できる方法はなく、光音響波の再構成画像の画質の相違を考慮した撮影方法は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第5840023号公報
【特許文献2】特開2007−312980号公報
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】PHYSICAL REVIEW E 71, 016706(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
ここで、従来の技術では、再構成処理の対象となる再構成領域内の一点(注目点)において再構成処理に用いる音響波は、前述の受信領域上の素子位置で検出された音響波に限定される。しかし、受信領域上の素子の位置と、注目点との相対的な位置関係によっては、再構成処理に有効な音響波を検出できない場合がある。以下、この課題について説明する。
【0025】
上述したように、探触子の素子で検出された音響波信号は、素子ごとの指向性に基づく範囲に収まる範囲に音源が存在する場合に有効な音響波信号として扱う。そのため、画像
再構成においては、受信領域上の音響波信号の検出位置情報に基づいて、各注目点に対する有効な音響波信号群を抽出する。
例えば受信領域が平面の場合、注目点から受信領域に下ろした垂線の足を中心として、指向角の外縁の延長線と、受信領域の面を延長した面とが交差して、円形の領域が定まる。この領域内が、有効な音響波を検出する素子の存在しうる領域である音響波検出領域である。この音響波検出領域が受信領域に収まる位置にあるような注目点では、有効な音響波信号数が多くなる。
【0026】
しかし、受信領域の端部に近い位置にある注目点に対する音響波検出領域は受信領域に収まらないため、有効な音響波信号数が限定され、画質が低下してしまう。
また、複数の注目点において、有効な音響波信号の数が同じであっても、再構成に用いる音響波信号の検出位置が偏った方位にある場合は、偏った向きにアーチファクトを生じやすい。非対称な位置の素子で受信した音響波信号群を用いた画像再構成処理となるため、光音響波動方程式の仮定との相違が大きくなるためである。
【0027】
そのため、従来の技術を適用したPATの画像再構成では、光音響波の音源が、受信領域の中心付近から外れた端部の法線上にある場合にアーチファクトを生じやすい。受信領域の外縁部付近や受信領域のさらに外側の平行な面からの法線上にある光音響波の音源の再構成画像については、さらに大きなアーチファクトが生じる。
【0028】
このように、光音響波動方程式の仮定とは一致しない位置で検出された音響波信号群を用いて再構成された再構成画像には、画質の異なる点(注目点)が存在し、画像内に画質の異なる領域を形成する。撮影装置で生成された画像の診断において再構成画像内に画質の異なる領域があることは、画像診断の信頼性を低下させる。あるいは、画像診断の作業時間を増大させる。
【0029】
一般的に言えば、医療用の撮影装置では被検者に負担を強いる撮影時間を短時間で終えることが望ましい。しかし、被検者の状態により、撮影時間の制約が少ない場合は、多少、撮影時間が延びても、画質の揃った出力画像の方が画像診断に適している。
そのため、指示された撮影領域に対する音響波の取得は短時間で終了することが望まれる一方、再構成する領域の画質を考慮すると、音響波の受信領域は大きくする必要がある。すなわち、再構成する画質に応じて、探触子を走査させる領域を変更する必要がある。ただし、撮影領域や音響波の受信領域の設定に時間を要するようでは、被検者の負担を増大しかねない。
【0030】
従来の技術による、音響波を取得する撮影装置では、再構成画像の画質に影響する音響波の条件に応じて指定された撮影領域の探触子走査などの制御を行うことはできなかった。また、撮影領域として大きな受信領域を常に設定された撮影装置では、画像再構成に不要な領域から音響波を受信する可能性があり、被検者に不要な負担を強いる。そのため、撮影領域と必要な画質に応じて速やかに受信領域を決定する方法が望まれていた。
以上から、音響波取得後に生成する再構成画像の画質に関する指定に基づいて、容易に適切な音響波の取得方法を決定して撮影する撮影方法を提供することが求められている。
【0031】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、再構成画像の画質に関する設定と撮影領域に関する指定に基づいて、音響波の取得を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、被検体内を伝播した音響波を受信する素子を有する音響波検出器から出力される音響波信号を用いて被検体内の特性情報を取得する
被検体情報取得装置であって、ユーザーにより指定される前記特性情報の取得指定領域の情報と、取得する特性情報の精度に関する設定情報と、前記音響波の受信に関する条件である受信条件情報と、を用いて、前記音響波を受信する受信領域を求める受信領域決定手段と、前記受信領域決定手段により求められた前記受信領域の情報を用いて、前記音響波検出器の走査を制御する走査制御手段と、を有することを特徴とする被検体情報取得装置である。
【0033】
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、被検体内を伝播した音響波を受信する素子を有する音響波検出器から出力される音響波信号を用いて被検体内の特性情報を取得する被検体情報取得装置による被検体情報取得方法であって、受信領域決定手段が、ユーザーにより指定される前記特性情報の取得指定領域の情報と、取得する特性情報の精度に関する設定情報と、前記音響波の受信に関する条件である受信条件情報と、を用いて、前記音響波を受信する受信領域を求める受信領域決定ステップと、走査制御手段が、前記受信領域決定手段により求められた前記受信領域の情報を用いて、前記音響波検出器の走査を制御する走査制御ステップと、を有することを特徴とする被検体情報取得方法である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、再構成画像の画質に関する設定と撮影領域に関する指定に基づいて、音響波の取得を行うための技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例における被検体情報取得装置の機能ブロックを示す図。
【図2】実施例における情報処理部をソフトウェアで実現する際の構成を示す図。
【図3】実施例における音響波信号計測部の構成例を示す図。
【図4】実施例における撮影開始から取得指示までの処理を示すフローチャート。
【図5】実施例における被検体と撮影領域と受信領域の関係を示す図。
【図6】実施例における音響波計測の処理を示すフローチャート。
【図7】実施例における再構成から表示までの処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、ユーザーにより指定される撮影領域(取得指定領域)の情報と、画質(特性情報の精度)に関する設定情報と、を用いて音響波の受信領域を求めることを特徴とする。以下、添付図面に従って本発明に係る被検体情報取得装置及び被検体情報取得方法の好ましい実施の形態について詳説する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されるものではない。
【0037】
<実施例>
本実施例に係る被検体情報取得方法は、検出した音響波から初期音圧分布を求めて3次元再構成画像を生成する撮影方法である。また、被検体情報取得装置は、再構成された画像を用いて診断を行う撮影装置であり、本実施例では光音響波診断装置を例に説明する。光音響波診断装置は、光を照射して発生させた音響波を検出し、検出した音響波に関する情報に基づき3次元再構成画像を生成する。
【0038】
なお、本発明において、「撮影」とは、被検体内から伝播した音響波を受信し、被検体内を画像化するための被検体の特性情報を取得することを示す。特性情報としては、音響波の音圧や、音圧から導かれる光エネルギー吸収密度や、吸収係数、組織を構成する物質の濃度等の被検体情報を反映した情報が挙げられる。物質の濃度とは、例えば、酸素飽和度やオキシ・デオキシヘモグロビン濃度などである。また、特性情報は、数値データとして取得してもよく、被検体内の各位置(各注目点)の分布情報(特性情報分布)を示す画
像データとして取得しても良い。つまり、被検体内の吸収係数分布や酸素飽和度分布等を反映した分布情報を示す画像データとして特性情報を取得しても良い。
【0039】
本実施例では、1回の撮影において検出された音響波信号から、音響波信号の数や検出位置の異なる複数の音響波信号群を抽出して、複数の3次元再構成画像を生成する。その際、指定された撮影領域内の各注目点での特性情報の算出に使用する音響波信号群の数や位置等の条件が揃うように、撮影装置を制御する。また、各注目点における再構成画像の画質に影響する音響波受信情報を取得する。そして、設定された画質で画像データを生成可能となるように音響波の受信領域を求め、画質の揃った再構成画像データの生成を行う。
【0040】
なお、ここで言う1回の撮影とは、指定された撮影領域内の特性情報を取得する処理のことを指し、1回の撮影の中に複数回の光照射と音響波検出を伴うこともある。また、「撮影領域」とは、ユーザーにより指定される、特性情報を取得する3次元の指定領域(取得指定領域)である。
また、本発明において再構成画像の「画質」とは、再構成の対象となる注目点に対する音響波信号の数や、素子との距離、素子の位置の偏りなどに基づく、取得した特性情報(つまり再構成した数値データ等)の精度を指す。この精度には、取得した特性情報の全て、または、一部に基づいて、被検体内の所定の特徴に相関した特徴を持つ画像データを生成した場合に、その画像の特徴の特徴量と、被検体内の特徴の特徴量との相関の精度も含まれる。
【0041】
(概略機能ブロック図)
図1は、本実施例に係る光音響波診断装置の機能構成を示している。図1に示すように、本実施例に係る光音響波診断装置は、情報処理部1000、音響波信号計測部1100によって構成されている。各機能ブロックを実施するための機器構成の例を図2、図3に示している。図2は、光音響波診断装置の情報処理部1000を実施する機器構成の一例である。また、図3は、音響波信号計測部1100を実施する機器構成の一例である。
【0042】
音響波信号計測部1100は、音響波信号の計測を行うブロックである。音響波信号計測部1100は、情報処理部1000から指示された音響波取得指示情報に基づいて音響波計測の制御を行い、音響波検出器1105の各素子で検出された音響波に基づいて音響波受信情報を情報処理部1000に送信する。
【0043】
音響波検出器1105は、例えば、超音波を検出する探触子である。また、音響波受信情報とは、音響波検出器の素子が音響波を検出(受信)して出力した検出信号である音響波信号と、音響波の受信に関する条件である受信条件情報と、を少なくとも有する。受信条件情報とは、音響波検出器1105の受信面上に配置された素子の位置や素子の感度および指向性等の情報や、音響波取得の撮影パラメータや他の計測情報のような音響波受信時の条件に関わる情報も含まれる。
【0044】
音響波信号計測部1100が音響波検出器を走査して移動させ、移動した各位置で音響波を検出した場合は、その走査した領域の合計を受信領域とし、音響波を検出した素子の位置を受信領域上の素子位置として扱う。この場合、装置内部の座標系における受信領域の位置や、受信領域上の素子位置に関する情報も、生成される受信条件情報に含まれる。
さらに、光音響波診断装置では、音響波を発生させる光の光源の制御や、被検体を圧迫する場合の圧迫に関する情報も、音響波信号取得時の条件として受信条件情報に含める。
【0045】
ここで、受信条件情報のうち、素子の位置に関する情報とは、被検体や、画像再構成の対象となる再構成領域と、各素子との位置関係が特定できる情報であれば、どのような情
報でもよい。例えば、各素子の数、素子配列のピッチ、受信面上における素子位置等の情報と、音響波検出器の位置、被検体の位置やサイズ、画像再構成を行う再構成領域の位置やサイズ、それぞれの相対的な位置関係などの情報がある。特に音響波検出器を移動させた場合、音響波検出器の受信面上の素子が移動しながら音響波を検出する。素子ごとには時系列に複数の音響波を検出するが、これらを受信領域上の検出位置ごと代表値を決定して、受信領域上の素子位置ごとの情報として扱うこともできる。
【0046】
音響波受信情報のうち、音響波信号に関する情報としては、検出した音響波信号をそのまま送信してもよいし、素子の感度補正、ゲイン補正等の補正を施した後の音響波信号の情報を送信してもよい。また、1回の撮影処理で、同じ位置に対する複数回の光の照射と受信領域上での同じ素子位置における検出を繰り返し、得られた音響波信号の平均を送信しても良い。
なお、受信領域上の素子位置には、必ずしも音響波検出器の同一の素子が検出しなくてもよい。音響波検出器の移動中であっても、受信領域上の同一位置に、同じ能力の素子が検出していれば、受信領域上の素子位置ごとには同一位置の音響波信号とみなして平均の対象としてよい。
【0047】
音響波受信情報において、装置構成に応じて静的な定数としても支障のない情報は、情報処理部1000の主メモリ102や磁気ディスク103にあらかじめ記憶しておいて、画像再構成処理時に読みだしてもよい。ただし、撮影の度に動的に定まる情報は音響波受信情報の一部として、音響波信号計測部1100から情報処理部1000に送信する。
例えば、音響波検出器1105の受信面上における素子の位置に関する情報について考える。素子の識別子と音響波検出器の位置情報が、音響波信号計測部1100から情報処理部1000に送信された後、あらかじめ情報処理部1000に記憶されている音響波検出器と素子の相対的な位置情報を参照して本発明を実施することも可能である。
【0048】
図1を参照して、情報処理部1000の機能ブロックについて説明する。
情報処理部1000は、撮影に関するユーザーからの指示を取得し、音響波信号計測部1100に対して、再構成画像の画質の設定情報を考慮した音響波計測方法を決定して音響波信号計測部1100に指示する。情報処理部1000はまた、音響波信号計測部1100から得られた音響波受信情報を用いて、3次元画像再構成処理を行い撮影されたデータを表示する。
【0049】
情報処理部1000は、撮影指示情報取得部1001、再構成方法決定部1002、音響波計測方法決定部1003、音響波計測方法指示部1004、音響波受信情報取得部1005、再構成処理部1006、表示情報生成部1007、表示部1008を含む。ただし、表示部100は本発明の被検体情報取得装置とは別に用意されてもよい。
【0050】
撮影指示情報取得部1001は、ユーザーにより入力部106(図2参照)を介して入力された撮影に関する指示情報(撮影指示情報)を取得する。撮影に関する指示情報として、音響波信号計測部1100の装置内の撮影すべき領域を指定した撮影領域の情報(取得指定領域の情報)や、再構成画像の画質を特定するための画質に関する設定情報(取得する特性情報の精度に関する情報)を少なくとも有する。
【0051】
撮影領域はユーザーからの指示に基づく3次元の領域であり、特性情報の取得指定領域である。指定方法は、撮影装置が撮影する領域を特定できればどのような指定方法でもよい。例えば、ユーザーは圧迫板で圧迫された被検体上の2次元領域だけを指定して入力する。この2次元領域を、撮影指定領域と呼んでも良い。そして、音響波信号計測部1100が撮影装置内の被検体の厚さを計測し、撮影指定領域を1つの面として、計測された厚さを高さとする直方体を撮影領域であるとすればよい。
あるいは、音響波信号計測部1100内の座標系で特定された領域をプリセット情報として情報処理部100が記憶し、その領域の識別子を指定するような方法でもよい。この場合は、音響波信号計測部1100内でプリセットされている領域に合わせて被検体を配置する。
【0052】
画質に関する設定情報は、特性情報の精度に関する設定情報であり、例えば、再構成処理に用いる音響波信号数がある。再構成領域内の各注目点で用いる音響波信号数や、各注目点で用いる音響波信号の、注目点に対する相対的な検出位置を指定することもできる。また音響波信号の検出位置は、有効な音響波信号として指定することもできる。音響波検出器の素子の指向性の範囲に入りうる受信領域上の素子位置すべての位置で音響波信号が揃うこと等を条件にしてもよい。このような音響波信号に関する条件によりアーチファクトの大きさや偏りを制限することができる。さらに、再構成アルゴリズムによっては、再構成アルゴリズムの特性に応じたパラメータを設定して指定することもできるし、音響波を検出する環境の音響特性や受信条件を追加してもよい。ユーザーの入力としては、あらかじめこれらをプリセットした画質レベルの選択するような入力方法で構わない。また、画質に関する設定情報は、ユーザーからの指定に基づいて設定された設定情報だけではなく、装置に予め設定されている情報を用いてもよい。
【0053】
撮影指示情報取得部1001は、撮影指示情報を取得し、再構成方法決定部1002に送信する。
【0054】
再構成方法決定部1002は、再構成方法と再構成領域を決定する。再構成領域は、取得指定領域である撮影領域に対して、設定された画質(精度)で特性情報が取得可能な領域(取得可能領域)である。撮影指示情報に基づいて指定された撮影領域や画質に基づいて、適切な再構成方法及び再構成領域を決定する。このとき再構成方法決定部は、取得可能領域決定手段として機能する。再構成方法決定部1002は、あらかじめ、主メモリ102、磁気ディスク103などに記憶されている音響波信号計測部1100の能力と、再構成処理部1006の再構成処理能力に関する情報を用いて再構成方法及び再構成領域を決定する。
【0055】
再構成方法決定部1002は、決定した再構成方法に関する情報を再構成指示情報として生成する。再構成指示情報としては、再構成領域に関する情報と、再構成アルゴリズムや再構成するボクセル数やピッチ等の再構成処理のパラメータ等の再構成方法に関する情報と、がある。撮影領域内の音響波計測環境や再構成を同一の処理条件で実施できない場合は、撮影領域内を複数の再構成領域に分割し、各領域の再構成指示情報を複数生成する方法でもよい。
【0056】
再構成方法決定部1002は、生成した再構成指示情報を再構成処理部1006に送信する。また、音響波計測方法決定部1003には、再構成指示情報と撮影指示情報を送信する。ただし、音響波計測方法決定部1003が取得した撮影指示情報は、撮影指示情報取得部1001から直に取得しても良い。
【0057】
音響波計測方法決定部1003は、取得した再構成指示情報と撮影指示情報に基づいて、音響波信号計測部1100の音響波計測方法を決定する。また、音響波検出器を走査して広い範囲で音響波を検出する場合の受信領域を決定する。つまり、音響波計測方法決定部1003は、撮影領域の情報と画質に関する設定情報に基づいて、再構成領域の各注目点で指定された画質で画像データを生成するために必要な受信領域を算出する。
【0058】
ここで、一般的なリニア方式の超音波を送受信する音響波検出器では、撮影対象とする直方体領域の一面を走査させる場合が多い。しかし、本発明の実施形態では、必ずしも撮
影対象とする直方体領域の1面だけを走査させるとは限らない。また、セクタ方式の音響波検出器のような超音波の送信角度に依存した走査範囲の決定は行わなくて良い。
【0059】
また、音響波計測方法決定部1003は、音響波検出器1005の素子が再構成処理に必要な音響波信号を検出するための受信領域上の素子位置のピッチも決定する。音響波を検出するための装置制御上のパラメータや、装置内の音響特性に基づく補正方法などは、基本的には音響波信号計測部1100が実施する。ただし、再構成処理の画質に関わるような音響波取得条件に関するパラメータや補正方法等の条件は、音響波計測方法決定部で決定してもよい。
【0060】
音響波計測方法決定部1003は、これらの情報に基づいて音響波信号計測部1100が音響波信号の計測に必要な音響波取得指示情報を生成し、音響波計測方法指示部に送信する。
ここでは、音響波取得指示情報は、撮影ごとに作成する場合を例として説明するが、同等の音響波取得指示情報をあらかじめ作成しておいて、選択する方法でもよい。その場合、音響波計測方法決定部は、あらかじめ作成された音響波取得指示情報の識別子を音響波計測指示部に送信する。
【0061】
音響波計測方法指示部1004は、音響波取得指示情報を音響波信号計測部1100に送信し、音響波計測を指示する。音響波取得指示情報があらかじめ作成された情報であれば、音響波計測方法決定部1003から送られた識別子を元に、主メモリ102や磁気ディスクから音響波取得指示情報を読みだして送信することもできる。
【0062】
音響波受信情報取得部1005は、指示に従って音響波計測を行った音響波信号計測部1100から送信された音響波信号を含む音響波受信情報を取得する。そして、音響波受信情報取得部1005は、取得した音響波受信情報を再構成処理部1006に送信する。
【0063】
再構成処理部1006は、画像再構成を行う領域内の注目点ごとに、選択された音響波信号のみを用いて3次元画像再構成を行い、音響波受信情報に基づく3次元再構成画像(ボリュームデータ)を生成する。
再構成処理部1006は、再構成方法決定部1002から送られた再構成指示情報と、音響波受信情報取得部1005から送られた音響波受信情報に基づいて、再構成処理を行う。なお、音響波信号計測部1100の音響波計測において一部の領域の音響波計測が失敗したなどの理由で、再構成領域や再構成パラメータになんらかの設定変更や補正が必要な場合、ここで実施してもよい。このような場合は、音響波受信情報内に音響波計測の状況に関する情報が含まれていれば、再構成指示情報が想定する音響波計測との相違から判断することができる。
ここで、画像再構成部1006の画像再構成処理は、解析解による3次元画像再構成であれば、タイムドメイン法であっても、フーリエドメイン法であっても本発明の実施形態を適用することができる。
【0064】
光音響波診断装置の場合は、被検体内における光の吸収係数分布を示す値を算出し、再構成された3次元画像を生成する。照射する光の波長に応じて、被検体内で光の吸収の度合いが異なることから、被検体内の組成の相違を3次元画像として表示することができる。光の強度が再構成領域内で均一でない時の補正など、再構成画像に関する補正をここで行っても支障はない。
再構成処理部1006は、生成した再構成画像を表示情報生成部1007に送信する。
【0065】
表示情報生成部1007は、再構成処理部1006より受信した再構成画像から、表示情報を生成する。再構成画像が平面画像であり、そのままディスプレイの輝度値で表示で
きるような値域であれば、特別な変換なく表示情報として使用する。再構成画像がボリュームデータのような3次元画像である場合にも、ボリュームレンダリング、多断面変換表示法、最大値投影法など、任意の方法で表示情報を生成する。また、ボクセル値の値域がディスプレイの輝度値の値域を超える値域である場合には、必要に応じてWindows(登録商標)上で処理を実施し、ディスプレイで表示できる画素値で表示情報を生成する。作成された表示情報は、再構成画像を表示可能な情報を含む表示情報であればよい。すなわち、他の情報と同時に再構成画像を表示するために、複数の情報が統合された情報であってもよい。
表示情報生成部1007は、表示情報を表示部1008に送信する。
【0066】
表示部1008は、生成した表示情報を表示するためのグラフィックカード、および、液晶やCRTディスプレイのような、表示装置であり、表示情報生成部1007から送られた表示情報を表示する。表示部1008は撮影装置本体と一体でも良く、別々に構成されても構わない。
【0067】
なお、本発明の画像再構成方法を実施する撮影装置の説明では、音響波信号計測部1100と情報処理部1000を分けて説明している。具体的には、デジタルマンモグラフィのような計測装置と制御装置(PCでもよい)のような機器構成が一例として挙げられる。しかし、音響波信号計測部1100と情報処理部1000を含む1つの被検体情報取得装置としても実施可能である。例えば、一般的な超音波診断装置に、本発明の音響波信号計測部1100と情報処理部1000に相当する機能を併せ持つ装置構成で実施することも可能である。
【0068】
(情報処理部の構成)
図2は、情報処理部1000の各部の機能をソフトウェアで実現するためのコンピュータの基本構成を示す図である。
CPU101は、主として情報処理部1000の各構成要素の動作を制御する。主メモリ102は、CPU101が実行する制御プログラムを格納したり、CPU101によるプログラム実行時の作業領域を提供したりする。磁気ディスク103は、オペレーティングシステム(OS)、周辺機器のデバイスドライバ、後述するフローチャートの処理等を行うためのプログラムを含む各種アプリケーションソフト等を格納する。表示メモリ104は、モニタ105のための表示用データを一時記憶する。
【0069】
モニタ105は、例えばCRTディスプレイや液晶モニタ等であり、表示メモリ1204からのデータに基づいて画像を表示する。入力部106は、マウス、キーボードなどのオペレータによるポインティング入力及び文字等の入力を行う。本発明の実施形態におけるオペレータの操作は入力部106より行われる。ただし、入力部106やモニタ105は、本発明の被検体情報取得装置中に設けられていてもよいが、被検体情報取得装置とは別々に構成されていてもよい。I/F107は、情報処理部1000と外部との間で各種データのやりとりを行うためのものであり、IEEE1394やUSB、イーサネットポート(登録商標)等によって構成される。I/F107を介して取得したデータは、主メモリ102に取り込まれる。
音響波信号計測部1100の機能は、I/F107を介して実現される。なお、上記各構成要素は共通バス108により互いに通信可能に接続されている。
【0070】
(装置の構成)
図3は、音響波信号計測部1100の構成の一例を示す図である。
光源1101は、レーザーや発光ダイオード等のような被検体に照射する照射光の光源である。照射光は、被検体を構成する成分のうち特定の成分で吸収の度合いが強いと予想される波長の照射光を用いる。
【0071】
制御部1102は、光源1101、光学装置1104や音響波検出器1105、位置制御手段1106の制御を行う。制御部1102はまた、音響波検出器1105で得られた光音響波の電気信号(音響波信号)を増幅し、アナログ信号からデジタル信号に変換する。また、各種信号処理、各種補正処理を行う。また、不図示のインターフェースを介して、音響波信号計測部1100から、例えば情報処理部1000のような外部機器に音響波信号を送信する。
【0072】
制御部1102はまた、音響波検出器1105が検出した光音響波の信号をレーザー照射のタイミングと同期をとって計測するための各制御を行う。さらに、複数回のレーザーを照射して得られる素子ごとの音響波信号を加算平均して素子ごとの音響波信号の平均値を算出するような信号処理も行う。
レーザーの制御の内容としては、レーザー照射のタイミング、波形、強度などの制御がある。音響波検出器の位置制御手段1106の制御については、音響波検出器1105の位置を適切な位置に移動する。
【0073】
光学装置1104は、例えば光を反射するミラーや、光を集光したり拡大したり形状を変化させるレンズなどである。このような光学部品は、光源から発せられた光1103が被検体1107に所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いてもかまわない。このような光学部品は、光源から発せられた光1103が被検体1107に所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いてもかまわない。光源1101、光学装置1104は、複数用いることも可能である。
【0074】
なお、光源1101から照射された光1103は、光導波路などを用いて伝搬させることも可能である。光導波路としては、光ファイバが好ましい。複数の光源があり、かつ、光ファイバを用いる場合は、それぞれの光源に対して複数の光ファイバを使用して、生体表面に光を導くことも可能である。あるいは、複数の光源からの光を一本の光ファイバに導き、一本の光ファイバのみを用いて、すべての光を生体に導いても良い。
【0075】
このような構成で制御部1102の制御の元、光源1101で発生させた光1103を、光学装置1104を介して被検体1107に照射すると、被検体内の光吸収体1108が光を吸収し、光音響波1109を発生させる。そして、発生した光音響波1109は被検体内を伝播し被検体外に放出される。この場合、光吸収体1108が音源に該当する。
【0076】
音響波検出器1105は、圧電現象を用いたトランスデューサー、光の共振を用いたトランスデューサー、容量の変化を用いたトランスデューサーなどで構成される。音響波を検知できるものであれば、どのような音響波検出器を用いてもよい。音響波検出器1105は、被検体1107に直に接触して音響波を検出してもよいし、平板1110のような板で被検体を圧迫し、平板越しに圧迫された被検体からの光音響波1109を検出してもよい。
【0077】
音響波検出器1105は、複数の素子(検出素子)が2次元的に配置されたものを前提に説明する。このような2次元配列素子を用いることで、同時に複数の場所で音響波を検出することができ、検出時間を短縮できると共に、被検体の振動などの影響を低減できる。また、音響波検出器1105と被検体との間には、音響波の反射を抑えるための不図示のジェルや水などの音響インピーダンスマッチング剤を使用してもよい。
【0078】
ここで、光を被検体に照射する領域や音響波検出器1105は移動可能であってよい。光源から発生した光が被検体上を移動可能となるように光学装置1104を構成することができる。光を被検体に照射する領域を移動させる方法としては、可動式ミラー等を用い
る方法、光源自体を機械的に移動させる方法などがある。さらに、音響波検出器1105の位置を移動する位置制御手段1106を設けて、音響波検出器を移動できるように構成する。位置制御手段1106の一例としては、位置センサの情報に基づき平板1110上をモーターで移動する方法がある。
【0079】
光を照射する領域や音響波検出器1105の位置の制御は制御部1102が行う。
また、制御部1102は、光を被検体1107に照射する領域(被検体に照射される光)と、音響波検出器1105とを同期して移動するように制御することもできる。光の照射領域が移動可能であることにより、より広範囲に光を照射し、かつ、照射領域に対して適切な位置にある音響波検出器で光音響波を検出することができるようになる。
【0080】
ここで、音響波検出器を移動させる方法は、受信領域上の各位置の素子で検出された音響波信号を、その位置に素子を配置した音響波検出器で検出した音響波信号とみなせれば、どのような移動方法でもよい。例えば、音響波検出器の素子が配置された面が長方形の場合は、音響波検出器の移動方向に応じて、音響波検出器の素子の配置された面の縦、または、横サイズ分ずつ、間をあけずに音響波検出器を移動した後、各位置で静止して音響波を検出する方法で実施できる。
この音響波信号群を受信領域上の素子の位置ごとの音響波信号として扱うことにより、あたかも、同じ素子ピッチで、移動数倍の素子が配置されたサイズの音響波検出器のようにみなすことができる。
【0081】
なお、音響波検出器の移動量は、音響波検出器の素子の配置された面のサイズと必ずしも、同じサイズでなくてもよい。また、素子の配置された面が、他の形状であっても、素子の配置された面の移動前の領域と移動後の領域が接する、あるいは重なるような移動量とする方法でもよい。さらには、音響波検出器の移動方法は、受信領域内において、隙間があるような移動方法でも本発明の実施は可能である。たとえば、音響波を受信した受信領域上の各位置の音響波信号の代表値を抽出、または、平均値を算出する等の方法で決定し、最終的に、受信領域上の各位置の音響波信号が揃うような音響波検出器の移動であればよい。この場合は、受信領域サイズの受信面を持つ音響波検出器とみなした場合の素子ピッチに相当する各位置の音響波信号が揃えばよい。
【0082】
さらに、音響波検出器を静止せずに連続的に移動しながら音響波の検出を継続するような音響波検出器の移動方法でもよい。音響波検出器の移動範囲に相当する受信領域において、音響波検出器の位置および素子位置ごとに検出された音響波信号群から代表値となる信号を抽出する、または平均値をとる等の方法で、受信領域上の各位置における音響波信号を決定する。音響波検出器の速度や移動範囲を調整することで、任意のサイズの受信領域に任意のピッチで素子が配置された音響波検出器のようにみなすことができる。また、走査の制御が容易になり、走査時間も短縮できる。なお、見掛け上の音響波検出器の素子のピッチ、すなわち、受信領域で音響波を検出する素子位置のピッチは、音響波検出器上に配置されている素子のピッチと異なる任意のピッチで実施することもできる。
【0083】
本発明の撮影装置は、入力部106を介してユーザーから撮影領域を指示される。そして、その撮影領域の画像再構成に必要な音響波信号の取得を行う。撮影領域は、撮影ごとに指定される3次元領域である。通常、撮影装置内で被検体を撮影しうる領域は撮影装置の仕様で定まっており、その範囲内でユーザーが領域を指定する。
【0084】
撮影領域の入力方法は、目的とする撮影領域を音響波信号計測部1100が特定できる方法であれば、どのような方法でもよい。撮影装置内で撮影可能な範囲内で直方体の各頂点の座標や、数式を入力されてもよい。ユーザーが被検体を捉えたカメラ画像上にマウスで矩形領域を指定し、その領域を被検体上に投影した領域と被検体の奥行方向を計測して
特定される3次元領域を撮影領域とする方法なども実施できる。この場合は、透明な平板越しにカメラ画像を撮影し、被検体の平板からの厚さを計測することで、撮影領域とする直方体を特定することができる。なお、3次元データとしてボリュームデータとして扱うには直方体の領域である場合が一般的であるが、撮影領域は、必ずしも直方体でなくとも実施可能なことは言うまでもない。
【0085】
(処理手順)
次に、図4、図6、図7のフローチャートおよび図5を用いて、本発明の実施形態における撮影方法の具体的な処理の手順を説明する。
ここでは、指定された画質に基づいた撮影処理を実行し撮影データを表示する例について説明する。概略を述べると、まず情報処理部1000で、撮影領域、画質、各パラメータ等に基づいて適切な再構成方法と音響波取得方法を決定し、音響波信号計測部1100に指示する。次に、音響波信号計測部1100は、情報処理部1000から指示された音響波取得方法に基づいて音響波受信情報を取得し、再び情報処理部1000に送信する。続いて、情報処理部1000は、受信した音響波の音響波信号に基づいて再構成処理を行い、撮影領域の撮影データを表示する。
【0086】
図4は、撮影のための設定をユーザーが入力した後、情報処理部1000が再構成方法と音響波取得方法を決定して音響波信号計測部1100に送信するまでの手順を示したフローチャートである。すなわち、実際に被検体の測定が開始される前の手順である。本実施例では撮影装置として、図3の光音響波診断装置を用いる。しかし、本発明を適用する対象は光音響波診断装置に限定されるものではない。音響波を取得し、その音響波に基づいて再構成画像を生成する装置であれば、どのような装置でも適用可能である。
【0087】
図4のフローチャートは、次の状況から開始される。まず、ユーザーである撮影技師が被検体(例えば、被検者の乳房)を保持板に密着させて、音響波信号計測部1100の撮影位置に固定する。その後、情報処理部1000に対し、ユーザーが撮影や所望の画質に関するパラメータを設定し、撮影開始を指示する操作を行ったところから始まる。
【0088】
ステップS401において、撮影指示情報取得部1001は、撮影に関する設定情報と、画質に関する設定情報を、撮影指示情報として取得する。撮影に関する設定情報としては、撮影領域や、光音響波取得に関する撮影パラメータなどがある。画質に関わる設定情報としては、音響波信号に関する情報(再構成に用いる信号の数)などがある。
本実施例では、画質に関しては、再構成領域内の各注目点について、各注目点から指向性の範囲で検出されうる最大数の音響波信号を用いて再構成画像を生成するように指定されたものとする。
【0089】
ここで、各注目点から指向性の範囲で検出されうる最大数の音響波信号とは、あらかじめ設定された所定の領域で検出できる最大数の音響波信号のことである。所定の領域とは例えば、再構成しようとする注目点から、検出素子の指向角に沿って伸ばした線と受信領域との交点から成る円により、受信面が区切られる領域のことである。このように定義すると、音響波検出器が音響波検出領域内にある場合は、検出素子の指向性の範囲内に注目点が存在する。この円形の領域の中心は、注目点から受信領域に下ろした垂線の足となる。上で述べたように、このような、ある注目点から見た検出素子の指向性の範囲に相当する所定の領域のことを、音響波検出領域とも呼ぶ。
【0090】
音響波検出器には所定の間隔で検出素子が配置されているので、音響波検出領域が定まれば、検出されうる最大数の音響波信号の数も自ずと定まる。
ただし、受信領域上の素子の位置が一定の間隔であっても、注目点と受信領域の距離に応じて、検出されうる音響波信号の最大数は異なる。すなわち、注目点と受信領域の距離
が離れるほど、音響波検出領域は広くなり、検出されうる音響波信号の最大数は多くなる。受信領域からの距離が同一で、所定の領域が受信領域内に収まる場合は同数となる。しかし、本実施例では、注目点と受信領域の距離にかかわらず、各注目点に対して最大数の音響波信号が取得されることを画質の設定としている。
【0091】
指向性の範囲で検出される音響波信号に関して見ると、円の中心に対して点対称な位置にある音響波信号を用いて再構成を行った場合、アーチファクトの形状の偏りが少なくなり、再構成画像の画質が良くなる。ただし本実施例では、指向性の範囲の最大数で検出できれば、アーチファクトの偏りが少ない点でも同等とみなせるので、画質のよい領域としてみなす。
撮影指示情報取得部1001は、取得した撮影指示情報を再構成方法決定部1002に送信する。
【0092】
ステップS402において、再構成方法決定部1002は、撮影指示情報と、音響波信号計測部1100による音響波信号計測能力に関する情報に基づいて、再構成方法を決定する。音響波信号計測能力に関する情報は、あらかじめ主メモリ102や磁気ディスク103に記憶されているものを用いれば良い。
この音響波信号計測能力に関する情報としては、例えば、撮影可能な領域に関する情報、音響波検出器の情報(移動速度や信号処理能力)、光源のレーザー照射間隔などの情報がある。撮影可能な領域に関する情報とは、装置内の撮影可能領域の位置、サイズや、音響波検出器を走査可能な領域、光音響波であればレーザーの照射可能な範囲などの情報である。
【0093】
再構成方法決定部1002は、撮影指示情報に含まれる撮影領域を再構成領域とした場合に、指定された画質で実行可能な再構成方法を決定する。決定される再構成方法の内容は、再構成処理のアルゴリズムおよびパラメータや、光分布補正のような追加で実施する補正方法などである。再構成処理のアルゴリズムおよびパラメータは、指定された画質で、再構成領域内の各注目点の再構成に必要となる音響波の取得位置を特定するための情報が含まれればよい。
【0094】
このとき、必ずしも、音響波信号計測能力に関する情報は考慮しなくてもよい。再構成処理に関する指示、例えば、アルゴリズムやパラメータのみで再構成領域を決定することもできる。この場合は、撮影領域に対して、適切な範囲の音響波信号を計測できない場合もありうる。その場合は、撮影領域のサイズを変更したり、撮影領域に相当する再構成領域内において、指定された画質のための音響波信号が集まらなかった領域として扱ったりすることで本発明を実施することができる。
【0095】
ステップS403において、撮影時における再構成処理の対象となる再構成領域を算出する。通常は、撮影領域(ユーザーからの入力に基づく特性情報の取得指定領域)に相当する領域を再構成領域(特性情報の取得可能領域であり画像データの生成領域)とする。しかし、撮影領域と異なる領域を再構成領域とすることもある。それは、撮撮影指示情報で指定された撮影領域全域と画質が両立できないと判断した場合や、再構成アルゴリズムの種類やパラメータの適用に関して装置の能力が不足すると判断した場合である。
また、再構成処理時間、ひいては、撮影処理全体の時間短縮のために、指定された撮影領域のうち、画質の悪いことが明白な領域を除いた領域を再構成領域としてもよい。
これらの理由により、指定された撮影領域を変更する必要があると判断した場合、再構成方法決定部1002は、撮影領域に変えて実際に画像再構成する再構成領域を算出する。そして、算出された再構成領域に関する情報を生成する。
再構成方法決定部1002は、決定した再構成指示情報(再構成方法に関する情報と再構成領域に関する情報等)を再構成処理部1006と音響波計測方法決定部1003に送
信する。
【0096】
ステップS404において、音響波計測領域決定部1003は、再構成方法決定部1002から送られた再構成領域に関する情報に基づいて、再構成領域内の一点を注目点として抽出する。再構成領域を3次元のボリュームデータで扱う場合には、任意の位置のボクセルを抽出する方法でも構わない。
【0097】
ステップS405において、抽出された注目点における音響波検出領域を算出する。音響波検出領域の算出は、再構成方法決定部1002で決定された再構成方法と、音響波信号計測部1100の音響波信号計測能力に関する情報を用いて行う。本実施例では、音響波検出領域で検出されうる最大数の音響波信号を用いた再構成処理である。そのため、受信領域上のある位置に素子があったとして、その素子が抽出された注目点を指向性の範囲に含むような位置の集合を、音響波検出領域として算出する。算出される領域は、抽出された再構成領域の注目点に相当する撮影領域内の点に座標変換した位置情報を用いて求められた、音響波検出器の走査面上の領域の情報となる。この領域は抽出された注目点での再構成に必要な受信領域となる。
【0098】
ここで、音響波信号計測部1100の音響波信号計測能力に関する情報は、S402で上述したように、主メモリ102や磁気ディスク103に記憶されているものを用いることができる。
具体的には、音響波検出器の形状、移動速度、素子の特性、受信面上の素子配置がある。また、音響波検出器の走査面の位置や領域に関する情報がある。さらに、音響波を検出して音響波信号を出力する探触子の信号処理能力がある。さらに、光音響波の光の照射がある。このように、音響波計測の能力に関する情報であれば全て、音響波信号計測能力に含めることができる。
【0099】
なお、注目点における音響波検出領域としては、受信領域における音響波の検出位置群を音響波検出領域として求めても構わない。その場合、検出位置(すなわち素子)の座標または、間隔や数が算出される。
【0100】
ステップS406において、音響波計測方法決定部1003は、抽出された注目点に対する音響波検出領域を記録する。音響波検出領域に関する情報の形式は、例えば、注目点の位置に対応付けられた、音響波検出器の走査面上の領域を示す座標で表される。
【0101】
ステップS407において、音響波計測方法決定部1003は、再構成領域内の未処理の注目点の有無を判定する。未処理の注目点がある場合には、ステップ404〜407の処理を繰り返し実行し、未処理の注目点がなくなるまで継続する。ステップ407の判定において、未処理の注目点がなくなった場合にはステップ408の処理に移る。
【0102】
ステップS408において、音響波計測方法決定部1003は、再構成領域内のすべての注目点に対する音響波検出領域に関する情報を合成する。そして、再構成領域全体を指定された画質で再構成するためは、どのような領域で音響波取得を行う必要があるかを算出する。撮影領域と再構成領域が一致する場合には、音響波取得時の受信領域に相当する。撮影領域と一致しない場合には、再構成領域以外の領域に関する音響波取得領域を加えて、少なくとも、再構成領域全体を指定された画質で再構成するために必要な音響波取得を行う領域を含む領域を受信領域として生成する。
【0103】
さらに、音響波計測方法決定部1003は、生成された受信領域で音響波を取得するために必要な音響波信号計測部1100の制御方法を決定する。例えば、音響波検出器の走査方法や、光音響波であれば、光の照射の制御方法など、生成された受信領域で音響波を
取得するための制御方法等を受信領域に関する情報と共に、音響波取得に関する情報として生成する。
【0104】
ここで、音響波計測方法決定部が決定した走査面上の走査領域と被検体、および、被検体内に指定された撮影領域の関係について、図5を用いて説明する。
【0105】
図5において、被検体501は、被検者の体の一部であり、撮影装置内の保持板で挟まれている。走査面502は、保持板であると同時に音響波検出器を走査する走査面である。走査面502の厚さにより音響波、光の屈折、減衰などがあるが、本発明の実施手順の説明の骨子には影響しないので、以下では省略して説明する。
【0106】
保持板503は、被検体501を保持する板である。保持板503は、必ずしも必要ではないため、図3では省略されているが、被検体が人体の乳房のように形状や位置の固定が不安定な場合に使用することが好ましい。また、撮影精度向上などの理由で被検体を圧迫するような場合も、本実施例と同等に扱うことができる。504は、図5の保持板の間隔を明記しているものである、撮影領域の指定に当たっては、被検体の撮影領域の奥行方向に当たる504の距離を自動的に計測して用いることもできる。その場合、撮影指示情報で奥行きのサイズを指定しなくても済む。
【0107】
音響波検出器505は、走査面上の受信領域を走査して音響波を検出する。ここでは音響波検出器は探触子である。この音響波検出器が走査される位置の合計が受信領域に相当する。506は音響波検出器の走査領域の高さ(長さ)を明記したものである。音響波計測方法決定部1003で算出された受信領域に相当する受信面上の領域に相当し、音響波信号計測部1100が音響波検出器505を走査する走査領域を真横から見た場合の走査領域の高さを示している。507は、走査領域を保持板に垂直に伸ばした垂直面である。撮影領域として指定された被検体の直方体の走査面に接する面の占める領域を走査面とする場合には、撮影領域の境界と一致する。しかし、本実施例では、指向性の範囲で検出されうる最大数の音響波信号を用いた再構成画像の生成のための音響波信号計測であるため、必要な受信領域に基づいて決まる走査領域が大きいため、507の垂直面は撮影領域とは一致しない。
【0108】
素子の指向角508は、音響波検出器505に配置された素子の指向性に基づく角度である。509は、走査領域で音響波検出器505が音響波を検出した場合に、高画質な再構成画像を生成できる領域を示している。つまり、高画質領域509は、設定された精度で特性情報を取得可能な領域である取得可能領域である。図示したように、走査領域から遠ざかるにつれて、素子の指向角508の角度に起因する制限により、高画質な再構成を行える領域は狭くなる。そのため、高画質領域509は、高さが保持板の間隔504、下底が走査面の走査領域である角錐台の形状となる。
【0109】
撮影領域510は、撮影指示情報で指定された、本撮影方法の目的とする撮影範囲を示す領域である。指定された撮影領域510について、指定された画質の再構成画像を得られるように受信領域を算出する。すなわち、指定された撮影領域510が、少なくとも、本実施例の目的とする画質を再構成可能な領域である取得可能領域(高画質領域509)に内包されるように、受信領域を決定する。これにより、撮影領域のうち音響波検出器から見て一番奥かつ最端部にある注目点に対する有効音響波検出領域を、走査領域に含めることができる。
音響波信号計測部1100は、この走査領域で音響波検出器を移動させ走査し、音響波取得に必要な制御を行うことで、適切な音響波取得を実施することができる。なお、本実施例において、受信領域(走査領域)を算出するとは、撮影領域内の各注目点に対する音響波検出領域を求め、それらを合計することである。
音響波計測方法決定部1003は、音響波取得に関する情報を音響波計測方法指示部1004に送信する。
【0110】
ステップS409において、音響波計測方法指示部1004は、音響波取得に関する情報に基づいて音響波取得指示情報を生成し、音響波信号計測部1100に送信する。なお、音響波取得指示情報は、例えば、音響波信号計測部1100に音響波取得を指示するコマンドやパラメータ群で構成される。
【0111】
以上の手順により、情報処理部1000が再構成方法と音響波取得方法を決定して音響波信号計測1100に送信するまでの手順を実施することができる。
ここでは、以上の手順を情報処理部1000や音響波信号計測部1100の各ブロックにより実施する方法を述べた。しかし実際には、各ブロックの機能を撮影装置において実現出来れば、それらのブロックの配置や組み合わせ、物理的な構成は問わない。例えば、本発明の走査制御手段は、位置制御手段1106に加え、制御部1102と、情報処理部1000における音響波計測方法決定部1003とを組み合わせたものと言える。また、本発明の受信領域を求める受信領域決定手段は、情報処理部1000における音響波計測方法決定部1003に相当すると言える。また、本発明の特性情報取得手段は、再構成処理部1006に相当すると言える。また、取得可能領域である再構成領域を決定する再構成領域決定手段と、画像データの生成方法(再構成方法)を決定する処理決定手段と、は、再構成方法決定部1002に相当すると言える。また、本発明の、取得指定領域の情報と精度に関する設定情報とを取得する指示情報取得手段は、撮影指示情報取得部1001に相当すると言える。このように、本発明を構成する要素を実現するために情報処理部および音響波信号計測部を組み合わせて資源を分配する方法は、局面に応じて適切になされるべきものであり、その方法によって本発明の本質が損なわれることはない。
【0112】
なお、本実施手順では、音響波計測方法決定部1003が再構成領域内の1点を撮影領域の1点に相当する座標に変換し各注目点に対する走査面上の音響波検出領域を合成することで受信領域を算出した。しかし、再構成方法決定部1002が、音響波信号計測部1100の音響波取得に関する情報に基づいて、あらかじめ、必要な受信領域、再構成領域に対する相対的な3次元の位置情報として算出する方法でも本発明を実施することができる。この場合、音響波計測方法決定部1003は、再構成領域を撮影領域の座標系に変換し、再構成領域に対する相対的な位置情報で定まる領域情報に基づいて、撮影における走査面上の受信領域を特定する。
【0113】
また、撮影領域や、通常は撮影領域に一致する再構成領域について、本実施例では、直方体のとして説明している。しかし本発明は、3次元の領域として指定できれば、どのような領域に対しても適用することができる。その際の撮影領域指定は、3次元領域の境界となる面の数式や値域の情報群や、撮影領域の座標系に対応付けられたボクセル群の情報を用いることができる。
【0114】
図6は、音響波計測方法指示部1004が、指定された撮影領域に関する音響波計測を実施し音響波受信情報を生成して情報処理部1000に送信するまでの手順を示したフローチャートである。図6のフローチャートは、情報処理部1000の音響波計測方法指示部1004より送信された音響波取得指示情報を受信したところから開始する。
【0115】
ステップS601において、音響波信号計測部1100は、音響波検出器を制御して受信領域における音響波の計測を行う。音響波計測に関する制御は、情報処理部1000より送信された音響波指示情報に基づいて、制御部1102が行う。光音響波診断装置であれば、光の照射位置やタイミングを制御し、音響波検出器の位置や検出した音響波の記録のタイミング等の同期をとりながら、音響波の計測を継続し、受信領域の各位置における
音響波を検出する。
【0116】
音響波の計測を終了すると、ステップS602において、制御部1102は、音響波受信情報を生成する。音響波受信情報は、受信領域における各位置で検出された音響波信号と、音響波受信に関する情報(受信条件情報)である。音響波信号は、同一位置に対して複数回検出された場合には、平均値や代表値でよい。また、音響波信号に対する補正をここで行っても良い。音響波検出に関する情報は、音響波信号検出や音響波信号値の決定に関する音響波取得条件などの情報を含む。
【0117】
ステップS603において、音響波信号計測部1100は、音響波計測により生成された受信領域に対する音響波受信情報を情報処理部1000に送信する。
以上の手順により、音響波信号計測部1100が音響波を計測し、情報処理部1000に音響波受信情報を送信される。
【0118】
図7は、音響波信号計測部1100より送信された音響波受信情報に基づいて、情報処理部1000が再構成処理を実施し、本撮影方法の撮影データを表示するまでの手順を示したフローチャートである。図7のフローチャートは、音響波受信情報取得部1005が音響波信号計測部1100より音響波受信情報を受信したところから開始する。
ステップS701において、音響波受信情報取得部1005が音響波受信情報を取得すると、取得した音響波受信情報を再構成処理部1006に送信する。
【0119】
ステップS702において、再構成処理部1006が音響波受信情報取得部1005より音響波受信情報を取得すると、再構成方法決定部1002より送られた再構成方法に関する情報と再構成領域に関する情報に基づいて再構成処理を行う。そして撮影領域に対する再構成画像を生成する。再構成画像は、例えば撮影領域に相当するボリュームデータに相当する。
【0120】
ここで、再構成領域が撮影領域と一致しない場合は、再構成領域だけでなく、撮影領域サイズのボリュームデータを生成し、再構成領域が該当するボクセル値のみを再構成画像のボクセル値とするボリュームデータを生成するようにしてもよい。
再構成処理部1006は、生成された再構成画像を表示情報生成部1007に送信する。
【0121】
ステップS703において、表示情報生成部1007は、生成された再構成画像に基づいて、表示部1007で表示可能な表示情報を生成する。
表示画像情報の例としては、再構成画像をMPR(Multi Planner Reconstruction)で表示するような場合の、再構成画像の断面画像と、断面画像上で画質の良否により分割された領域の境界線を重畳表示する方法がある。また、ボリュームレンダリングにより表示画像を表示してもよい。また、必ずしも画像ではなく、特性情報を示す3次元再構成画像の各位置の画素値、すなわち特性情報を示すボリュームデータのボクセル値に基づいたテキストによる説明など、画像以外の情報を生成してもよい。
表示情報生成部1006は、生成した表示情報を表示部1007に送信する。
【0122】
表示部1007は、モニタ105のような表示装置である。ステップS704において、表示情報生成部1006が生成した表示情報を表示し、本発明の撮影方法における撮影された情報を表示する。
以上の手順で本実施例における情報処理装置1000の再構成処理、および撮影された情報の表示を実施することができる。
【0123】
ここで、本実施例では、受信領域を1つの領域として説明したが、受信領域を複数の領
域に分割して指定することもできる。例えば、再構成領域全体に対する受信領域を1つの領域として設定しておき、再構成処理の分割に応じて受信領域も分割し、音響波受信情報を受信領域ごとに計測すればよい。
【0124】
また、音響波計測方法決定部1003は、音響波信号計測部1100に含まれる構成としてもよい。この場合、音響波計測方法指示部1004は、再構成方法に関する情報や再構成領域に関する情報を音響波信号計測部1100に送信し、受信領域の算出に関する処理は音響波信号計測部1100内で実行される。
さらに、情報処理部1000と音響波信号計測部が一体化した撮影装置であっても、なんら支障ない。
【0125】
以上のような手順を実施することにより、本発明の撮影方法を実施することができる。また、以上のような手順で本発明の撮影方法を実施することで、より画像診断に適した画質を揃えた再構成画像を得られる撮影を行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0126】
1000:情報処理部,1001:撮影指示情報取得部,1005:音響波受信情報取得部,1006:再構成処理部,1100:音響波信号計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内を伝播した音響波を受信する素子を有する音響波検出器から出力される音響波信号を用いて被検体内の特性情報を取得する被検体情報取得装置であって、
ユーザーにより指定される前記特性情報の取得指定領域の情報と、取得する特性情報の精度に関する設定情報と、前記音響波の受信に関する条件である受信条件情報と、を用いて、前記音響波を受信する受信領域を求める受信領域決定手段と、
前記受信領域決定手段により求められた前記受信領域の情報を用いて、前記音響波検出器の走査を制御する走査制御手段と、
を有することを特徴とする被検体情報取得装置。
【請求項2】
前記取得指定領域の情報と、前記精度に関する設定情報と、前記受信条件情報と、を用いて、前記取得指定領域に対して設定された前記精度で前記特性情報が取得可能な領域である取得可能領域を求める取得可能領域決定手段を更に有し、
前記受信領域決定手段は、前記取得可能領域の情報を用いて、前記受信領域を求める
ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項3】
前記音響波信号を用いて特性情報を取得する特性情報取得手段を更に有し、
前記受信領域決定手段は、前記取得指定領域に含まれる注目点ごとに、設定された前記精度で特性情報を取得するために必要な音響波を受信し得る領域である音響波検出領域を算出し、各注目点における前記音響波検出領域を合計して前記受信領域とし、
前記特性情報取得手段は、各注目点において、当該注目点に対応する音響波検出領域から検出された音響波に基づく音響波信号を用いて前記特性情報を取得する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の被検体情報取得装置。
【請求項4】
前記受信条件情報は、前記素子の位置や感度や指向性に関する情報を含んでいる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項5】
注目点ごとに算出される音響波検出領域とは、当該音響波検出領域内の位置に素子がある場合に、当該素子の指向性の範囲に前記注目点が含まれる領域である
ことを特徴とする請求項3に記載の被検体情報取得装置。
【請求項6】
ユーザーにより指定された前記取得指定領域の情報と、前記精度に関する設定情報と、を取得する指示情報取得手段を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項7】
前記取得指定領域と、前記精度に関する設定情報と、に基づいて、前記特性情報を画像データとして取得する方法を決定する処理決定手段を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項8】
前記処理決定手段は、設定された前記精度に対応する画質で取得指定領域の画像データを生成できないと判断した場合、取得指定領域を指定された範囲から変更する
ことを特徴とする請求項7に記載の被検体情報取得装置。
【請求項9】
被検体内を伝播した音響波とは、光を照射された被検体から発生する光音響波である
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項10】
前記精度に関する設定情報は、ユーザーからの指定に基づき設定され、
前記取得指定領域及び前記精度に関する設定情報をユーザーが指定するための入力部を更に有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置

【請求項11】
被検体内を伝播した音響波を受信する素子を有する音響波検出器から出力される音響波信号を用いて被検体内の特性情報を取得する被検体情報取得装置による被検体情報取得方法であって、
受信領域決定手段が、ユーザーにより指定される前記特性情報の取得指定領域の情報と、取得する特性情報の精度に関する設定情報と、前記音響波の受信に関する条件である受信条件情報と、を用いて、前記音響波を受信する受信領域を求める受信領域決定ステップと、
走査制御手段が、前記受信領域決定ステップにて求められた前記受信領域の情報を用いて、前記音響波検出器の走査を制御する走査制御ステップと、
を有することを特徴とする被検体情報取得方法。
【請求項12】
取得可能領域決定手段が、前記取得指定領域の情報と、前記精度に関する設定情報と、前記受信条件情報と、を用いて、前記取得指定領域に対して設定された前記精度で前記特性情報が取得可能な領域である取得可能領域を求める取得可能領域決定ステップを更に有し、
前記受信領域決定ステップでは、前記取得可能領域の情報を用いて、前記受信領域を求める
ことを特徴とする請求項11に記載の被検体情報取得方法。
【請求項13】
特性情報取得手段が、前記音響波信号を用いて特性情報を取得する特性情報取得ステップを更に有し、
前記受信領域決定ステップでは、前記取得指定領域に含まれる注目点ごとに、設定された前記精度で特性情報を取得するために必要な音響波を受信し得る領域である音響波検出領域を算出し、各注目点における前記音響波検出領域を合計して前記受信領域とし、
前記特性情報取得ステップでは、各注目点において、当該注目点に対応する音響波検出領域から検出された音響波に基づく音響波信号を用いて前記特性情報を取得する
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の被検体情報取得方法。
【請求項14】
前記受信条件情報は、前記素子の位置や感度や指向性に関する情報を含んでいる
ことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の被検体情報取得方法。
【請求項15】
注目点ごとに算出される音響波検出領域とは、当該音響波検出領域内の位置に素子がある場合に、当該素子の指向性の範囲に前記注目点が含まれる領域である
ことを特徴とする請求項13に記載の被検体情報取得方法。
【請求項16】
指示情報取得手段が、ユーザーにより指定された前記取得指定領域の情報と、前記精度に関する設定情報と、を取得する指示情報取得ステップを更に有する
ことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか1項に記載の被検体情報取得方法。
【請求項17】
処理決定手段が、前記取得指定領域と、前記精度に関する設定情報と、に基づいて、前記特性情報を画像データとして取得する方法を決定する処理決定ステップを更に有する
ことを特徴とする請求項11乃至16のいずれか1項に記載の被検体情報取得方法。
【請求項18】
前記処理決定ステップでは、設定された前記精度に対応する画質で取得指定領域の画像データを生成できないと判断した場合、取得指定領域を指定された範囲から変更する
ことを特徴とする請求項17に記載の被検体情報取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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