説明

被検査体の磁化装置、磁粉探傷装置、被検査体の磁化装置の調整方法

【課題】X−Y平面、Y−Z平面及びZ−X平面の全面において高い磁粉探傷精度が得られる磁粉探傷装置をシンプルな構成で低コストで実現する。
【解決手段】三つの磁化要素が相互に120度の位相差をもって配置され、その三つの磁化要素の電線がΔ結線又はY結線されている三極ヨーク型磁化器10と、三極ヨーク型磁化器10と異なる向きで磁化領域1に対面する二極ヨーク型磁化器20と、三相交流電圧を三極ヨーク型磁化器10に印加するとともに、交流電圧を二極ヨーク型磁化器20に印加する電源装置100とを備える。X−Y平面には、三極ヨーク型磁化器10によって回転磁界Cが発生する。二極ヨーク型磁化器20が形成するZ軸方向の磁界Dと三極ヨーク型磁化器10がX−Y平面に形成する回転磁界Cとの合成ベクトルによって、Y−Z平面及びZ−X平面にも回転磁界が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁粉探傷装置において被検査体を磁化する磁化装置、被検査体の磁化装置を備えた磁粉探傷装置、被検査体の磁化装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非破壊検査方法の一例として、磁化装置で被検査体を磁化し、磁化した被検査体に磁粉を散布し、その被検査体に付着した磁粉の分布状態から、その被検査体の傷や割れを検出する磁粉探傷方法が公知である。このような磁粉探傷方法において磁化装置で被検査体を磁化する際には、被検査体に生じている傷や割れの方向と磁界の磁力線方向との角度によって、その傷や割れの検出精度が異なってくる。具体的には、傷や割れの長手方向に対して磁力線が直交する状態において、傷や割れで生ずる漏洩磁束が最も大きくなるため、傷や割れに付着した磁粉により形成される磁粉模様を最も明瞭に識別することができる。
【0003】
しかし被検査体に生じている傷や割れの方向を予測することは、通常困難な場合が多い。そのため、多方向の磁界を発生させる磁化装置を用いて被検査体を磁化することによって、傷や割れの方向にかかわらず傷や割れに磁力線が直交する状態で被検査体を磁化し、被検査体の傷や割れの検出精度を向上させることが従来から行われている。
【0004】
例えば被検査体に対してX軸の励磁コイルとY軸の励磁コイルとを設け、両者に互いに異なる周波数の交流電圧を印加することによって、X軸とY軸の磁力線の合成ベクトルが円軌跡となるようにした磁粉探傷用磁化装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。また被検査体に対し、X軸方向に対向する一対の磁化コイル、Y軸方向に対向する一対の磁化コイル、及びZ軸方向に対向する一対の磁化コイルを設け、X軸の磁化コイルの励磁周波数、Y軸の磁化コイルの励磁周波数、Z軸の磁化コイルの励磁周波数を相互に非整数倍となる周波数に設定した磁粉探傷装置が公知である(例えば特許文献2を参照)。
尚、X軸、Y軸及びZ軸は、三次元空間の直交座標系における座標軸であり、X軸とY軸とは直交する軸であり、Z軸は、X軸及びY軸の双方に直交する軸である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−160283号公報
【特許文献2】特開2007−298482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここでX軸及びY軸に沿う平面を「X−Y平面」、Y軸及びZ軸に沿う平面を「Y−Z平面」、Z軸及びX軸に沿う平面を「Z−X平面」とし、以下同様とする。
【0007】
特許文献1に開示されている従来技術は、X−Y平面に対しては、多方向の磁界を発生させることが可能である。しかしながら特許文献1に開示されている従来技術は、Z軸の磁界を発生させる手段を備えていないので、Y−Z平面及びZ−X平面に対しては、多方向の磁界を発生させることができない。そのため特許文献1に開示されている従来技術においては、立体的形状の被検査体に対して、Y−Z平面及びZ−X平面における磁粉探傷精度が大幅に低下する虞がある。
【0008】
さらに特許文献1に開示されている従来技術は、商用の三相交流電源と磁化装置との間に複数の励磁コイルに対応する整流器及びインバータを個別に設ける必要があるため、磁粉探傷装置の大幅なコスト増の虞が生ずる。
【0009】
また特許文献2に開示されている従来技術は、X−Y平面、Y−Z平面、Z−X平面のそれぞれに、多方向の磁界を発生させることが可能である。しかしながら特許文献2に開示されている従来技術は、特許文献1に開示されている従来技術と同様に、商用の三相交流電源と磁化装置との間に複数の励磁コイルの各々に対応する三組の整流器及びインバータを個別に設ける必要があるため、磁粉探傷装置の大幅なコスト増の虞が生ずる。
【0010】
さらに特許文献1及び特許文献2に開示されている従来技術は、空芯の励磁コイルのみで磁界を発生させる構成であるため、被検査体の磁化に必要な強度の磁界を発生させるためには大電流を流す必要がある。したがって商用の三相交流電源と磁化装置との間に、さらに特別な電源装置を設けなければならない場合が多く、それによって磁粉探傷装置の大幅なコスト増の虞が生ずる。
【0011】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、X−Y平面、Y−Z平面及びZ−X平面の全面において高い磁粉探傷精度が得られる磁粉探傷装置を低コストで実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、継鉄(ヨーク)に電線が巻かれた三つの磁化要素が相互に120度の位相差をもって配置され、その三つの磁化要素の電線がΔ結線又はY結線されている第1磁化器と、継鉄に電線が巻かれた磁化要素を含み、前記第1磁化器と異なる向きで被検査体に対面する第2磁化器と、三相交流電圧を前記第1磁化器に印加するとともに、交流電圧を前記第2磁化器に印加する電源装置と、を備える被検査体の磁化装置である。
【0013】
第1磁化器は、相互に120度の位相差をもって配置された三つの磁化要素で構成されている。そのため第1磁化器に三相交流電圧を印加することによって、磁界の強さが360度、ほぼ均一となる回転磁界を形成することができる。したがって例えば第1磁化器が対面する面をX−Y平面とすると、磁界の強さが360度、ほぼ均一となる回転磁界をX−Y平面に形成することができる。また第2磁化器は、第1磁化器と異なる向きで被検査体に対面して磁界を形成する。したがって、第2磁化器が形成する磁界と第1磁化器がX−Y平面に形成する回転磁界との合成ベクトルによって、Y−Z平面及びZ−X平面にも回転磁界が形成されることになる。つまり本発明に係る被検査体の磁化装置は、X−Y平面、Y−Z平面及びZ−X平面のそれぞれに有効な回転磁界(磁力線の方向が360度変化する磁界)を形成することができるので、X−Y平面、Y−Z平面及びZ−X平面の全面において高い磁粉探傷精度が得られる。
【0014】
また第1磁化器及び第2磁化器は、いずれも継鉄(ヨーク)に電線が巻かれた磁化要素を用いて構成されているので、従来の空芯の励磁コイルのみからなる磁化要素よりも大幅に少ない電流で所望の強度の磁界を形成することができる。したがって第1磁化器には、商用の三相交流電源をそのまま用いることができる。また第1磁化器は単独で回転磁界を形成できるので、第1磁化器に印加する三相交流電圧と第2磁化器に印加する交流電圧との間に位相差を設ける必要がない。したがって第2磁化器に印加する交流電圧は、商用の三相交流電源をそのまま用いることもできるし、商用の三相交流電源のいずれかの線間電圧をそのまま用いることもできる。つまり本発明に係る被検査体の磁化装置は、商用の三相交流電源をそのまま用いることができるので、従来のように整流器やインバータを設ける必要がなく、また大電流を得るための特別な電源装置等を設ける必要もなく、よって極めて低コストで実現することができる。
【0015】
これにより本発明の第1の態様によれば、X−Y平面、Y−Z平面及びZ−X平面の全面において高い磁粉探傷精度が得られる磁粉探傷装置をシンプルな構成で低コストで実現できるという作用効果が得られる。
【0016】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記第1磁化器は、前記三つの磁化要素が同心円上に配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置である。
このような特徴によれば、第1磁化器が形成する回転磁界(X−Y平面の回転磁界)の回転方向に対する磁界の強さをより均一にすることができるので、より安定的に高い磁粉探傷精度が得られるという作用効果が得られる。
【0017】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様において、前記電源装置は、前記第1磁化器に印加する三相交流電圧の周波数と前記第2磁化器に印加する交流電圧の周波数とが異なる、ことを特徴とした被検査体の磁化装置である。
このような特徴によれば、第1磁化器に印加する三相交流電圧と第2磁化器に印加する交流電圧との間に、両者の周波数比に応じた位相ずれが生ずる。それによって、第1磁化器が形成する回転磁界と第2磁化器が形成する磁界との合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度を高めることができる。したがって、より高い磁粉探傷精度が得られるという作用効果が得られる。
【0018】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第3の態様において、前記電源装置は、前記第1磁化器に印加する三相交流電圧の周波数と前記第2磁化器に印加する交流電圧の周波数とが非逓倍となる関係に設定されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置である。
このような特徴によれば、第1磁化器に印加する三相交流電圧と第2磁化器に印加する交流電圧との間に不規則な位相ずれが生ずる。それによって、第1磁化器が形成する回転磁界と第2磁化器が形成する磁界との合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度をさらに高めることができる。したがって、さらに高い磁粉探傷精度が得られるという作用効果が得られる。
【0019】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記第2磁化器は、継鉄に電線が巻かれた三つの磁化要素が相互に120度の位相差をもって配置され、その三つの磁化要素の電線がΔ結線又はY結線されており、前記電源装置は、三相交流電圧を前記第2磁化器に印加する、ことを特徴とした被検査体の磁化装置である。
このような特徴によれば、第1磁化器による回転磁界に加えて、さらに第1磁化器による回転磁界と異なる回転磁界が第2磁化器により形成される。それによって、第1磁化器が形成する回転磁界と第2磁化器が形成する回転磁界との合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度をさらに高めることができる。したがって、さらに高い磁粉探傷精度が得られるという作用効果が得られる。
【0020】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、前述した本発明の第5の態様において、前記第2磁化器は、前記三つの磁化要素が同心円上に配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置である。
このような特徴によれば、第2磁化器が形成する回転磁界の回転方向に対する磁界の強さをより均一にすることができるので、より安定的に高い磁粉探傷精度が得られるという作用効果が得られる。
【0021】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、前述した本発明の第1〜第6の態様のいずれかにおいて、前記第2磁化器は、前記第1磁化器に対向して配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置である。
このような特徴によれば、第1磁化器が形成する回転磁界と第2磁化器が形成する磁界との合成ベクトルは、対向方向の成分(Z軸方向成分)がより多くなる。それによって、その合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度を効果的に高めることができる。したがって、さらに高い磁粉探傷精度が得られるという作用効果が得られる。
【0022】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、前述した本発明の第7の態様において、前記第1磁化器と前記第2磁化器とは、対向角度をもって配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置である。
このような特徴によれば、第1磁化器と第2磁化器との間の磁界分布に偏りが生じる。それによって、第1磁化器が形成する回転磁界と第2磁化器が形成する磁界との合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度をさらに高めることができる。したがって、さらに高い磁粉探傷精度が得られるという作用効果が得られる。
【0023】
<本発明の第9の態様>
本発明の第9の態様は、前述した本発明の第7の態様又は第8の態様において、前記第1磁化器と前記第2磁化器とは、前記第1磁化器の磁界中心と前記第2磁化器の磁界中心とが対向方向と交差する方向へずれるように配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置である。
このような特徴によれば、第1磁化器が形成する回転磁界と第2磁化器が形成する磁界との間の磁界分布に勾配が生じる。それによって、第1磁化器が形成する回転磁界と第2磁化器が形成する磁界との合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度をさらに高めることができる。したがって、さらに高い磁粉探傷精度が得られるという作用効果が得られる。
【0024】
<本発明の第10の態様>
本発明の第10の態様は、前述した第5の態様又は第6の態様において、前記第1磁化器と前記第2磁化器とは、前記第1磁化器の三つの磁化要素と前記第2磁化器の三つの磁化要素とが相互に回転方向へ位相差をもって対向するように配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置である。
このような特徴によれば、第1磁化器が形成する回転磁界と第2磁化器が形成する回転磁界との間に位相ずれが生じる。それによって、第1磁化器が形成する回転磁界と第2磁化器が形成する回転磁界との合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度をさらに高めることができる。したがって、さらに高い磁粉探傷精度が得られるという作用効果が得られる。
【0025】
<本発明の第11の態様>
本発明の第11の態様は、前述した本発明の第1〜第6の態様のいずれかにおいて、前記第2磁化器は、前記第1磁化器と90度異なる向きで被検査体に対面している、ことを特徴とした被検査体の磁化装置である。
このような特徴によれば、第2磁化器によってZ−X平面又はY−Z平面に直接的にZ軸方向の磁界を形成することができる。それによって、第1磁化器が形成する回転磁界と第2磁化器が形成する磁界との合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度をさらに高めることができる。したがって、さらに高い磁粉探傷精度が得られるという作用効果が得られる。
【0026】
<本発明の第12の態様>
本発明の第12の態様は、前述した本発明の第1〜第11の態様のいずれかに記載の被検査体の磁化装置を備える磁粉探傷装置である。
本発明の第12の態様によれば、磁粉探傷装置において、前述した本発明の第1〜第11の態様のいずれかに記載の発明による作用効果が得られる。
【0027】
<本発明の第13の態様>
本発明の第13の態様は、継鉄に電線が巻かれた三つの磁化要素が相互に120度の位相差をもって配置され、その三つの磁化要素の電線がΔ結線又はY結線されている第1磁化器と、継鉄に電線が巻かれた磁化要素を含み、前記第1磁化器と異なる向きで被検査体に対面する第2磁化器と、三相交流電圧を前記第1磁化器に印加するとともに、交流電圧を前記第2磁化器に印加する電源装置と、を備える被検査体の磁化装置の調整方法であって、被検査体が設置される領域におけるX軸、Y軸及びZ軸の磁界の強さを磁界検出素子で検出し、X軸の磁界の強さとY軸の磁界の強さとによる第1リサージュ波形、Y軸の磁界の強さとZ軸の磁界の強さとによる第2リサージュ波形、Z軸の磁界の強さとX軸の磁界の強さとによる第3リサージュ波形のいずれか一又は二以上を磁気測定器に接続した波形観測器で観測し、観測しているリサージュ波形のアスペクト比の値が1に近づくように、前記第1磁化器又は前記第2磁化器の位置又は向き、前記第1磁化器に印加する三相交流電圧と前記第2磁化器に印加する交流電圧との周波数比を調整する、ことを特徴とした被検査体の磁化装置の調整方法である。
【0028】
第1リサージュ波形からは、X−Y平面における回転磁界の回転方向における磁界の強さの変化をリアルタイムで視覚的に把握することができる。第2リサージュ波形からは、Y−Z平面における回転磁界の回転方向における磁界の強さの変化をリアルタイムで視覚的に把握することができる。第3リサージュ波形からは、Z−X平面における回転磁界の回転方向における磁界の強さの変化をリアルタイムで視覚的に把握することができる。そして、そのリサージュ波形のアスペクト比の値が1に近いほど(例えばリサージュ波形が真円に近い形状であるほど)、その回転磁界の回転方向における磁界の強さが均一な状態となる。つまりリサージュ波形のアスペクト比の値が1に近いほど、その回転磁界による磁粉探傷精度は高くなる。したがって磁気測定器でリサージュ波形を観測しながら、そのリサージュ波形のアスペクト比の値が1に近づくように、第1磁化器又は第2磁化器の位置又は向き、第1磁化器に印加する三相交流電圧と第2磁化器に印加する交流電圧との周波数比を調整することによって、良好な磁粉探傷精度が得られる状態となるように被検査体の磁化装置を調整することができる。
【0029】
これにより本発明の第13の態様によれば、上記構成の被検査体の磁化装置において、良好な磁粉探傷精度が得られる(良好な磁粉模様が得られる)状態に調整する作業を簡単かつ高精度に行うことができるという作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、X−Y平面、Y−Z平面及びZ−X平面の全面において高い磁粉探傷精度が得られる磁粉探傷装置をシンプルな構成で低コストで実現できるという作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】三極ヨーク型磁化器の斜視図。
【図2】三極ヨーク型磁化器の正面図。
【図3】三極ヨーク型磁化器の構造図、結線図。
【図4】三極ヨーク型磁化器の変形例の構造図、結線図。
【図5】二極ヨーク型磁化器の斜視図、構造図。
【図6】第1実施例の被検査体の磁化装置の構成を図示した構成図。
【図7】第1実施例の被検査体の磁化装置の結線図。
【図8】第1実施例の被検査体の磁化装置における磁界のリサージュ波形。
【図9】第2実施例の被検査体の磁化装置の結線図。
【図10】第2実施例の被検査体の磁化装置における磁界のリサージュ波形。
【図11】第3実施例の被検査体の磁化装置の構成を図示した構成図。
【図12】第3実施例の被検査体の磁化装置の結線図。
【図13】第4実施例の被検査体の磁化装置の結線図。
【図14】第5実施例の被検査体の磁化装置の構成を図示した構成図。
【図15】第5実施例の被検査体の磁化装置の結線図。
【図16】第6実施例の被検査体の磁化装置の結線図。
【図17】第7実施例の被検査体の磁化装置における三極ヨーク型磁化器の正面図。
【図18】第8実施例の被検査体の磁化装置の構成を図示した構成図。
【図19】第9実施例の被検査体の磁化装置の構成を図示した構成図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0033】
<三極ヨーク型磁化器の構成>
三極ヨーク型磁化器10の構成について、図1〜図4を参照しながら説明する。
図1は、三極ヨーク型磁化器10の斜視図である。図2は、三極ヨーク型磁化器10の正面図である。図3は、三極ヨーク型磁化器10の構成を図示したものであり、図3(a)は三極ヨーク型磁化器10の構造図、図3(b)は三極ヨーク型磁化器10の結線図である。
【0034】
三極ヨーク型磁化器10は、第1磁化要素11、第2磁化要素12、第3磁化要素13、基部14及び三極ヨーク15を含む。第1磁化要素11、第2磁化要素12及び第3磁化要素13は、相互に120度の位相差をもって基部14に配置されて固定されている。
【0035】
三極ヨーク15は、ケイ素鋼板を積層して形成した継鉄であり、第1磁極151、第2磁極152及び第3磁極153を有している。第1磁極151には電線が巻かれてコイルL11が構成されており、この第1磁極151とコイルL11とで第1磁化要素11が構成されている。第2磁極152には電線が巻かれてコイルL12が構成されており、この第2磁極152とコイルL12とで第2磁化要素12が構成されている。第3磁極153には電線が巻かれてコイルL13が構成されており、この第3磁極153とコイルL13とで第3磁化要素13が構成されている。
尚、より強力で均一な磁界を形成する上では、コイルL11、コイルL12及びコイルL13の巻き数は多い方が望ましい。
【0036】
コイルL11、コイルL12及びコイルL13は、Δ結線されている。より具体的には、コイルL11とコイルL13との接続点は端子A1に接続され、コイルL11とコイルL12との接続点は端子A2に接続され、コイルL12とコイルL13との接続点は端子A3に接続されている。
【0037】
このように相互に120度の位相差をもって配置された第1磁化要素11、第2磁化要素12及び第3磁化要素13を備える三極ヨーク型磁化器10は、端子A1〜A3に三相交流電圧を印加することによって、磁界の強さが360度、ほぼ均一となる回転磁界を形成することができる。また第1磁化要素11、第2磁化要素12及び第3磁化要素13は、本発明に必須の要素ではないが、同心円上に配置されているのが好ましい。それによって三極ヨーク型磁化器10に三相交流電圧を印加したときに、その三極ヨーク型磁化器10が形成する回転磁界の回転方向に対する磁界の強さをより均一にすることができる。
【0038】
図4は、三極ヨーク型磁化器10の変形例を図示したものであり、図4(a)三極ヨーク型磁化器10の構造図、図4(b)は三極ヨーク型磁化器10の結線図である。
三極ヨーク型磁化器10の変形例は、コイルL11〜L13の結線が異なる以外は、図1〜図3に図示した三極ヨーク型磁化器10と同じ構成である。三極ヨーク型磁化器10の変形例は、コイルL11、コイルL12及びコイルL13がY結線されている。より具体的には、コイルL11、コイルL12及びコイルL13は、一端が共通の接続点に接続されている。コイルL11の他端は端子A1に接続され、コイルL12の他端は端子A2に接続され、コイルL13の他端は端子A3に接続されている。
【0039】
<二極ヨーク型磁化器の構成>
二極ヨーク型磁化器20の構成について、図5を参照しながら説明する。
図5は、二極ヨーク型磁化器20の構成を図示したものであり、図5(a)は二極ヨーク型磁化器20の斜視図、図5(b)は二極ヨーク型磁化器20の構造図である。
【0040】
二極ヨーク型磁化器20は、第1磁化要素21、第2磁化要素22、基部23及び二極ヨーク24を含む。第1磁化要素21及び第2磁化要素22は、基部23の両端に設けられている。
【0041】
二極ヨーク24は、ケイ素鋼板を積層して形成した継鉄であり、第1磁極241及び第2磁極242を有している。第1磁極241には電線が巻かれてコイルL21が構成されており、この第1磁極241とコイルL21とで第1磁化要素21が構成されている。第2磁極242には電線が巻かれてコイルL22が構成されており、この第2磁極242とコイルL22とで第2磁化要素22が構成されている。コイルL21とコイルL22は、一端が共通の接続点に接続されている。コイルL21の他端は端子B1に接続され、コイルL22の他端は端子B2に接続されている。
【0042】
<被検査体の磁化装置の第1実施例>
本発明に係る被検査体の磁化装置の第1実施例について、図6〜図8を参照しながら説明する。
図6は、第1実施例の被検査体の磁化装置の構成を図示した構成図である。図7は、第1実施例の被検査体の磁化装置の結線図である。
【0043】
第1実施例の被検査体の磁化装置は、「第1磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10と、「第2磁化器」としての二極ヨーク型磁化器20と、電源装置100とで構成されている。
【0044】
三極ヨーク型磁化器10は、第1磁化要素11、第2磁化要素12及び第3磁化要素13の先端が、被検査体が配置される磁化領域1に対面するように配置されている。より具体的には三極ヨーク型磁化器10は、第1磁化要素11、第2磁化要素12及び第3磁化要素13の先端が、磁化領域1のX−Y平面に対面するように(X軸方向へ向くように)配置されている。
【0045】
二極ヨーク型磁化器20は、第1磁化要素21及び第2磁化要素22の先端が、三極ヨーク型磁化器10と90度異なる向きで磁化領域1に対面するように配置されている。より具体的には二極ヨーク型磁化器20は、第1磁化要素21及び第2磁化要素22の先端が、磁化領域1のY−Z平面に対面するように配置されている。
【0046】
第1実施例の電源装置100は、三相交流電圧を三極ヨーク型磁化器10に印加する。より具体的には第1実施例の電源装置100は、商用三相交流電源のR相と三極ヨーク型磁化器10の端子A1とを接続し、S相と三極ヨーク型磁化器10の端子A2とを接続し、T相と三極ヨーク型磁化器10の端子A3とを接続する。また第1実施例の電源装置100は、単相交流電圧を二極ヨーク型磁化器20に印加する。より具体的には第1実施例の電源装置100は、商用三相交流電源のR相と二極ヨーク型磁化器20の端子B1とを接続し、T相と二極ヨーク型磁化器20の端子B2とを接続する。
【0047】
図8は、第1実施例の被検査体の磁化装置において磁化領域1に発生する磁界のリサージュ波形を模式的に図示したものである。図8(a)は、三極ヨーク型磁化器10を単独で動作させたときのリサージュ波形であり、図8(b)は、三極ヨーク型磁化器10及び二極ヨーク型磁化器20を動作させたときのリサージュ波形である。
【0048】
第1実施例の被検査体の磁化装置において、被検査体が設置される磁化領域1におけるX軸、Y軸及びZ軸の磁束密度をテスラメータ52(磁気測定器)に接続した三次元プローブ51(磁界検出素子)で検出し、テスラメータ52に接続したオシロスコープ53(波形観測器)でリサージュ波形を観測した。図8において、X−Y平面のリサージュ波形は、X軸の磁束密度とY軸の磁束密度とによるリサージュ波形である(第1リサージュ波形)。Y−Z平面のリサージュ波形は、Y軸の磁束密度とZ軸の磁束密度とによるリサージュ波形である(第2リサージュ波形)。Z−X平面のリサージュ波形は、Z軸の磁束密度とX軸の磁束密度とによるリサージュ波形である(第3リサージュ波形)。
【0049】
まず本発明に係る被検査体の磁化装置との対比のために、三極ヨーク型磁化器10を単独で動作させたときの磁界のリサージュ波形を観測した(図8(a))。
【0050】
三極ヨーク型磁化器10は、三相交流電圧を印加することによって、磁界の強さが360度、ほぼ均一となる回転磁界を形成することができる。したがってX−Y平面には、三極ヨーク型磁化器10によって、磁界の強さが360度、ほぼ均一となる回転磁界C(図6)が発生する。しかし三極ヨーク型磁化器10単独では、Z軸方向成分の磁界がほとんど発生しない。そのためY−Z平面にはY軸方向成分の磁界のみ発生し、Z−X平面にはX軸方向成分の磁界のみ発生する。
【0051】
次に三極ヨーク型磁化器10及び二極ヨーク型磁化器20を動作させた本発明に係る被検査体の磁化装置における磁界のリサージュ波形を観測した(図8(b))。
【0052】
X−Y平面には、三極ヨーク型磁化器10によって、磁界の強さが360度、ほぼ均一となる回転磁界C(図6)が発生する。また二極ヨーク型磁化器20は、第1磁化要素21及び第2磁化要素22の先端が、三極ヨーク型磁化器10が被検査体に対面する向きと90度異なる向きで被検査体に対面するように配置されている。したがって、三極ヨーク型磁化器10がX−Y平面に形成する回転磁界Cと二極ヨーク型磁化器20が形成するZ軸方向の磁界Dとの合成ベクトルによって、Y−Z平面及びZ−X平面にも回転磁界が形成される。つまり本発明に係る被検査体の磁化装置は、X−Y平面、Y−Z平面及びZ−X平面のそれぞれに有効な回転磁界を形成することができるので、X−Y平面、Y−Z平面及びZ−X平面の全面において高い磁粉探傷精度が得られる。
【0053】
さらに各リサージュ波形は、そのアスペクト比の値が1に近いほど(例えばリサージュ波形が真円に近い形状であるほど)、その回転磁界の回転方向における磁界の強さが均一な状態になる。したがってオシロスコープ53で第1〜第3リサージュ波形を観測しながら、リサージュ波形のアスペクト比の値がそれぞれ1に近づくように、三極ヨーク型磁化器10又は二極ヨーク型磁化器20の位置又は向きを調整すればよい。それによって、より良好な磁粉探傷精度が得られる状態となるように被検査体の磁化装置を調整することができる。
【0054】
また三極ヨーク型磁化器10及び二極ヨーク型磁化器20は、いずれも継鉄(ヨーク)に電線が巻かれた磁化要素を用いて構成されているので、従来の空芯の励磁コイルのみからなる磁化要素よりも大幅に少ない電流で所望の強度の磁界を形成することができる。したがって三極ヨーク型磁化器10には、当該実施例のように、商用の三相交流電源をそのまま用いることができる。
【0055】
また三極ヨーク型磁化器10は単独で回転磁界を形成できるので、三極ヨーク型磁化器10に印加する三相交流電圧と二極ヨーク型磁化器20に印加する交流電圧との間に位相差を設ける必要がない。したがって二極ヨーク型磁化器20に印加する交流電圧は、当該実施例のように、商用の三相交流電源のいずれかの線間電圧をそのまま用いることができる。つまり本発明に係る被検査体の磁化装置は、商用の三相交流電源をそのまま用いることができるので、従来のように整流器やインバータを設ける必要がなく、また大電流を得るための特別な電源装置等を設ける必要もない。
【0056】
以上説明したように本発明によれば、X−Y平面、Y−Z平面及びZ−X平面の三次元立体面において高い磁粉探傷精度が得られる磁粉探傷装置をシンプルな構成で低コストで実現することができる。
【0057】
また第1実施例の被検査体の磁化装置では、二極ヨーク型磁化器20は、第1磁化要素21及び第2磁化要素22の先端が、三極ヨーク型磁化器10が被検査体に対面する向きと90度異なる向きで被検査体に対面するように配置されている。そのため二極ヨーク型磁化器20によって、Z−X平面又はY−Z平面に直接的にZ軸方向の磁界D(図6)を形成することができる。それによって、三極ヨーク型磁化器10が形成する回転磁界C(図6)と二極ヨーク型磁化器20が形成するZ軸方向の磁界Dとの合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度をさらに高めることができる。
【0058】
<被検査体の磁化装置の第2実施例>
本発明に係る被検査体の磁化装置の第2実施例について、図9及び図10を参照しながら説明する。
図9は、第2実施例の被検査体の磁化装置の結線図である。
【0059】
第2実施例の被検査体の磁化装置は、第1実施例に加えて、電源装置100の構成要素として整流器31、単相インバータ回路32及びスイッチング制御装置33を備えている。整流器31は、三相交流電圧を整流及び平滑して直流電圧を出力する。単相インバータ回路32は、整流器31が出力する直流電圧を単相交流電圧に変換する。スイッチング制御装置33は、所定の周波数の単相交流電圧が単相インバータ回路32から出力されるように、単相インバータ回路32の複数のスイッチング素子をオン/オフ制御する。
尚、それ以外の構成については、第1実施例と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0060】
図10は、第2実施例の被検査体の磁化装置において磁化領域1に発生する磁界のリサージュ波形を模式的に図示したものである。図10(a)は、二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧の周波数を25Hzとしたときのリサージュ波形であり、図10(b)は、二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧の周波数を29Hzとしたときのリサージュ波形である。
【0061】
このように第1実施例に加えて、二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧の周波数を変換する装置(整流器31、単相インバータ回路32及びスイッチング制御装置33)をさらに設け、三極ヨーク型磁化器10に印加する三相交流電圧の周波数と二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧の周波数とを異ならせるのが好ましい。それによって、第1磁化器に印加する三相交流電圧と第2磁化器に印加する交流電圧との間に、両者の周波数比に応じた位相ずれが生じるからである。
【0062】
例えば三極ヨーク型磁化器10に印加する三相交流電圧の周波数50Hzに対して、二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧の周波数を25Hzに設定する。つまり三極ヨーク型磁化器10に印加する三相交流電圧の周波数と二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧の周波数とが逓倍となる関係に設定する(図10(a))。また、例えば三極ヨーク型磁化器10に印加する三相交流電圧の周波数50Hzに対して、二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧の周波数を29Hzに設定する。つまり三極ヨーク型磁化器10に印加する三相交流電圧の周波数と二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧の周波数とが非逓倍となる関係に設定する(図10(b))。
【0063】
三極ヨーク型磁化器10に印加する三相交流電圧の周波数と二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧の周波数とを異ならせることによって、三極ヨーク型磁化器10に印加する三相交流電圧と二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧との間には、両者の周波数比に応じた位相ずれが生ずる。それによって図10に図示したように、三極ヨーク型磁化器10が形成する回転磁界Cと二極ヨーク型磁化器20が形成する磁界Dとの合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度を高めることができる。
【0064】
特に三極ヨーク型磁化器10に印加する三相交流電圧の周波数と二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧の周波数とが非逓倍となる関係に設定すれば、より効果的で好ましい。それによって、第1磁化器に印加する三相交流電圧と第2磁化器に印加する交流電圧との間に不規則な位相ずれが生ずるからである。また二極ヨーク型磁化器20に印加する単相交流電圧の周波数は、低い周波数の方が被検査体の深部まで磁力が浸透しやすい。
【0065】
さらにオシロスコープ53で第1〜第3リサージュ波形を観測しながら、リサージュ波形のアスペクト比の値がそれぞれ1に近づくように、三極ヨーク型磁化器10又は二極ヨーク型磁化器20の位置又は向き、二極ヨーク型磁化器20に印加する交流電圧の周波数を調整する。それによって、より良好な磁粉探傷精度が得られる。
【0066】
<被検査体の磁化装置の第3実施例>
本発明に係る被検査体の磁化装置の第3実施例について、図11及び図12を参照しながら説明する。
図11は、第3実施例の被検査体の磁化装置の構成を図示した構成図である。図12は、第3実施例の被検査体の磁化装置の結線図である。
【0067】
第3実施例の被検査体の磁化装置は、「第1磁化器」及び「第2磁化器」としての2つの三極ヨーク型磁化器10a、10bと、電源装置100とで構成されている。
【0068】
「第1磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10aは、第1磁化要素11、第2磁化要素12及び第3磁化要素13の先端が、磁化領域1のX−Y平面に対面するように配置されている。それに対して「第2磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10bは、第1磁化要素11、第2磁化要素12及び第3磁化要素13の先端が、三極ヨーク型磁化器10aが磁化領域1に対面する方向に対向する方向から磁化領域1のX−Y平面に対面するように配置されている。
尚、三極ヨーク型磁化器10a、10bについては、図1〜図4に図示して説明した三極ヨーク型磁化器10と同じ構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0069】
第3実施例の電源装置100は、三相交流電圧を三極ヨーク型磁化器10aに印加する。より具体的には第3実施例の電源装置100は、商用三相交流電源のR相と三極ヨーク型磁化器10aの端子A1とを接続し、S相と三極ヨーク型磁化器10aの端子A2とを接続し、T相と三極ヨーク型磁化器10aの端子A3とを接続する。また第3実施例の電源装置100は、単相交流電圧を三極ヨーク型磁化器10bに印加する。より具体的には第3実施例の電源装置100は、商用三相交流電源のR相と三極ヨーク型磁化器10bの端子A1とを接続し、T相と三極ヨーク型磁化器10bの端子A3とを接続する。
【0070】
X−Y平面には、三極ヨーク型磁化器10aによって、磁界の強さが360度、ほぼ均一となる回転磁界Cが発生する。また磁化領域1を挟んで反対側のX−Y平面には、三極ヨーク型磁化器10bによる磁界Eが発生する。そのため三極ヨーク型磁化器10aが形成する回転磁界Cと三極ヨーク型磁化器10bが形成する磁界Eとの合成ベクトルによって、Z軸方向の磁界Dが形成され、それによってY−Z平面及びZ−X平面にも回転磁界が形成される。また三極ヨーク型磁化器10aが形成する回転磁界Cと三極ヨーク型磁化器10bが形成する磁界Eとの合成ベクトルは、対向方向の成分(Z軸方向成分)がより多くなる。それによって、その合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度を効果的に高めることができる。
【0071】
<被検査体の磁化装置の第4実施例>
本発明に係る被検査体の磁化装置の第4実施例について、図13を参照しながら説明する。
図13は、第4実施例の被検査体の磁化装置の結線図である。
【0072】
第4実施例の被検査体の磁化装置は、第3実施例に加えて、電源装置100の構成要素として整流器31、単相インバータ回路32及びスイッチング制御装置33を備えている。
尚、それ以外の構成については、第3実施例と同様であるため詳細な説明を省略する。また整流器31、単相インバータ回路32及びスイッチング制御装置33の構成については、第2実施例と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0073】
このように第3実施例に加えて、三極ヨーク型磁化器10bに印加する単相交流電圧の周波数を変換する装置(整流器31、単相インバータ回路32及びスイッチング制御装置33)をさらに設け、三極ヨーク型磁化器10aに印加する三相交流電圧の周波数と三極ヨーク型磁化器10bに印加する単相交流電圧の周波数とを異ならせるのが好ましい。
【0074】
三極ヨーク型磁化器10aに印加する三相交流電圧の周波数と三極ヨーク型磁化器10bに印加する単相交流電圧の周波数とを異ならせることによって、三極ヨーク型磁化器10aに印加する三相交流電圧と三極ヨーク型磁化器10bに印加する単相交流電圧との間には、両者の周波数比に応じた位相ずれが生ずる。それによって三極ヨーク型磁化器10aが形成する回転磁界Cと三極ヨーク型磁化器10bが形成する磁界Eとの合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度を高めることができる。特に三極ヨーク型磁化器10aに印加する三相交流電圧の周波数と三極ヨーク型磁化器10bに印加する単相交流電圧の周波数とが非逓倍となる関係に設定すれば、より効果的で好ましい。
【0075】
<被検査体の磁化装置の第5実施例>
本発明に係る被検査体の磁化装置の第5実施例について、図14及び図15を参照しながら説明する。
図14は、第5実施例の被検査体の磁化装置の構成を図示した構成図である。図15は、第5実施例の被検査体の磁化装置の結線図である。
【0076】
第5実施例の被検査体の磁化装置は、「第2磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10bに三相交流電圧が印加される以外は第3実施例と同じ構成である。より具体的には第5実施例の電源装置100は、商用三相交流電源のR相と三極ヨーク型磁化器10bの端子A1とを接続し、S相と三極ヨーク型磁化器10bの端子A2とを接続し、T相と三極ヨーク型磁化器10bの端子A3とを接続する。
【0077】
このような構成の被検査体の磁化装置は、「第1磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10aによる回転磁界C1がX−Y平面に形成される。さらに磁化領域1を挟んで反対側のX−Y平面に、「第2磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10bによる回転磁界C2が形成される。そのため三極ヨーク型磁化器10aが形成する回転磁界C1と三極ヨーク型磁化器10bが形成する回転磁界C2との合成ベクトルによって、Z軸方向の磁界Dが形成され、それによってY−Z平面及びZ−X平面にも回転磁界が形成される。また三極ヨーク型磁化器10aが形成する回転磁界C1と三極ヨーク型磁化器10bが形成する回転磁界C2との合成ベクトルは、対向方向の成分(Z軸方向成分)の磁界がより多くなる。それによって、その合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度を効果的に高めることができる。
【0078】
<被検査体の磁化装置の第6実施例>
本発明に係る被検査体の磁化装置の第6実施例について、図16を参照しながら説明する。
図16は、第6実施例の被検査体の磁化装置の結線図である。
【0079】
第6実施例の被検査体の磁化装置は、第5実施例に加えて、電源装置100の構成要素として整流器31、三相インバータ回路34及びスイッチング制御装置35を備えている。整流器31は、三相交流電圧を整流及び平滑して直流電圧を出力する。三相インバータ回路34は、整流器31が出力する直流電圧を三相交流電圧に変換する。スイッチング制御装置35は、所定の周波数の三相交流電圧が三相インバータ回路34から出力されるように、三相インバータ回路34の複数のスイッチング素子をオン/オフ制御する。
【0080】
尚、それ以外の構成については、第6実施例と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0081】
このように第5実施例に加えて、三極ヨーク型磁化器10bに印加する三相交流電圧の周波数を変換する装置(整流器31、三相インバータ回路34及びスイッチング制御装置35)をさらに設け、「第1磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10aに印加する三相交流電圧の周波数と「第2磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10bに印加する三相交流電圧の周波数とを異ならせるのが好ましい。
【0082】
三極ヨーク型磁化器10aに印加する三相交流電圧の周波数と三極ヨーク型磁化器10bに印加する三相交流電圧の周波数とを異ならせることによって、三極ヨーク型磁化器10aに印加する三相交流電圧と三極ヨーク型磁化器10bに印加する三相交流電圧との間には、両者の周波数比に応じた位相ずれが生ずる。それによって、三極ヨーク型磁化器10aが形成する回転磁界C1と三極ヨーク型磁化器10bが形成する回転磁界C2との合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度を高めることができる。特に三極ヨーク型磁化器10aに印加する三相交流電圧の周波数と三極ヨーク型磁化器10bに印加する三相交流電圧の周波数とが非逓倍となる関係に設定すれば、第1磁化器に印加する三相交流電圧と第2磁化器に印加する交流電圧との間に不規則な位相ずれが生ずるため、より効果的で好ましい。
【0083】
<被検査体の磁化装置の第7実施例>
本発明に係る被検査体の磁化装置の第7実施例について、図17を参照しながら説明する。
図17は、第7実施例の被検査体の磁化装置における三極ヨーク型磁化器10a及び三極ヨーク型磁化器10bを図示したものであり、図17(a)は三極ヨーク型磁化器10aの正面図、図17(b)は三極ヨーク型磁化器10bの正面図を図示したものである。
【0084】
第7実施例の被検査体の磁化装置は、「第1磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10aと「第2磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10bとの相対的な位置関係が相違する以外は、第5実施例又は第6実施例と同じ構成である。より具体的には、三極ヨーク型磁化器10aと三極ヨーク型磁化器10bとは、三つの磁化要素(第1磁化要素11、第2磁化要素12及び第3磁化要素13)がX−Y平面に沿う回転方向へ相互に角度Fだけ位相差をもって対向するように配置されている。
【0085】
このような配置とすることによって、三極ヨーク型磁化器10aが形成する回転磁界C1と三極ヨーク型磁化器10bが形成する回転磁界C2との間に位相ずれが生じる。それによって、三極ヨーク型磁化器10aが形成する回転磁界C1と三極ヨーク型磁化器10bが形成する回転磁界C2との合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度をさらに高めることができる。
【0086】
<被検査体の磁化装置の第8実施例>
本発明に係る被検査体の磁化装置の第8実施例について、図18を参照しながら説明する。
図18は、第8実施例の被検査体の磁化装置の構成を図示した構成図である。
【0087】
第8実施例の被検査体の磁化装置は、「第1磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10aと「第2磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10bとの相対的な位置関係が相違する以外は、第3実施例〜第6実施例と同じ構成である。より具体的には、三極ヨーク型磁化器10aと三極ヨーク型磁化器10bとは、対向角度Gをもって配置されている。この対向角度Gは、Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界を、磁界の強さが360度、ほぼ均一となる回転磁界に近づける上では、特に20〜35度の角度に設定するのが好ましい。
【0088】
このような配置とすることによって、三極ヨーク型磁化器10aが形成する回転磁界C(又は回転磁界C1)と三極ヨーク型磁化器10bが形成する磁界E(又は回転磁界C2)との間の磁界分布に偏りが生じる。それによって、三極ヨーク型磁化器10aが形成する磁界と三極ヨーク型磁化器10bが形成する磁界との合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度をさらに高めることができる。
【0089】
<被検査体の磁化装置の第9実施例>
本発明に係る被検査体の磁化装置の第9実施例について、図19を参照しながら説明する。
図19は、第9実施例の被検査体の磁化装置の構成を図示した構成図である。
【0090】
第9実施例の被検査体の磁化装置は、「第1磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10aと「第2磁化器」としての三極ヨーク型磁化器10bとの相対的な位置関係が相違する以外は、第3実施例〜第6実施例と同じ構成である。より具体的には、三極ヨーク型磁化器10aと三極ヨーク型磁化器10bとは、三極ヨーク型磁化器10aの磁界中心(第1磁化要素11、第2磁化要素12及び第3磁化要素13の中心)と三極ヨーク型磁化器10bの磁界中心とが対向方向(Z軸方向)と交差する方向(X−Y平面に沿う方向)へ間隔Hだけずれるように配置されている。
【0091】
このような配置とすることによって、三極ヨーク型磁化器10aが形成する回転磁界C(又は回転磁界C1)と三極ヨーク型磁化器10bが形成する磁界E(又は回転磁界C2)との間の磁界分布に勾配が生じる。それによって、三極ヨーク型磁化器10aが形成する磁界と三極ヨーク型磁化器10bが形成する磁界との合成ベクトルによる回転磁界(Y−Z平面及びZ−X平面の回転磁界)において、Z軸方向成分の磁界強度をさらに高めることができる。
【0092】
<他の実施例、変形例>
本発明は、上記説明した実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であること言うまでもない。
【符号の説明】
【0093】
1 磁化領域、
10、10a、10b 三極ヨーク型磁化器、
20 二極ヨーク型磁化器、
31 整流器、32 単相インバータ回路、34 三相インバータ回路、
33、35 スイッチング制御装置、51 三次元プローブ、52 テスラメータ、
53 オシロスコープ、100 電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
継鉄に電線が巻かれた三つの磁化要素が相互に120度の位相差をもって配置され、その三つの磁化要素の電線がΔ結線又はY結線されている第1磁化器と、
継鉄に電線が巻かれた磁化要素を含み、前記第1磁化器と異なる向きで被検査体に対面する第2磁化器と、
三相交流電圧を前記第1磁化器に印加するとともに、交流電圧を前記第2磁化器に印加する電源装置と、を備える被検査体の磁化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の被検査体の磁化装置において、前記第1磁化器は、前記三つの磁化要素が同心円上に配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の被検査体の磁化装置において、前記電源装置は、前記第1磁化器に印加する三相交流電圧の周波数と前記第2磁化器に印加する交流電圧の周波数とが異なる、ことを特徴とした被検査体の磁化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の被検査体の磁化装置において、前記電源装置は、前記第1磁化器に印加する三相交流電圧の周波数と前記第2磁化器に印加する交流電圧の周波数とが非逓倍となる関係に設定されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の被検査体の磁化装置において、前記第2磁化器は、継鉄に電線が巻かれた三つの磁化要素が相互に120度の位相差をもって配置され、その三つの磁化要素の電線がΔ結線又はY結線されており、前記電源装置は、三相交流電圧を前記第2磁化器に印加する、ことを特徴とした被検査体の磁化装置。
【請求項6】
請求項5に記載の被検査体の磁化装置において、前記第2磁化器は、前記三つの磁化要素が同心円上に配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の被検査体の磁化装置において、前記第2磁化器は、前記第1磁化器に対向して配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置。
【請求項8】
請求項7に記載の被検査体の磁化装置において、前記第1磁化器と前記第2磁化器とは、対向角度をもって配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の被検査体の磁化装置において、前記第1磁化器と前記第2磁化器とは、前記第1磁化器の磁界中心と前記第2磁化器の磁界中心とが対向方向と交差する方向へずれるように配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置。
【請求項10】
請求項5又は6に記載の被検査体の磁化装置において、前記第1磁化器と前記第2磁化器とは、前記第1磁化器の三つの磁化要素と前記第2磁化器の三つの磁化要素とが相互に回転方向へ位相差をもって対向するように配置されている、ことを特徴とした被検査体の磁化装置。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の被検査体の磁化装置において、前記第2磁化器は、前記第1磁化器と90度異なる向きで被検査体に対面している、ことを特徴とした被検査体の磁化装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の被検査体の磁化装置を備える磁粉探傷装置。
【請求項13】
継鉄に電線が巻かれた三つの磁化要素が相互に120度の位相差をもって配置され、その三つの磁化要素の電線がΔ結線又はY結線されている第1磁化器と、継鉄に電線が巻かれた磁化要素を含み、前記第1磁化器と異なる向きで被検査体に対面する第2磁化器と、三相交流電圧を前記第1磁化器に印加するとともに、交流電圧を前記第2磁化器に印加する電源装置と、を備える被検査体の磁化装置の調整方法であって、
被検査体が設置される領域におけるX軸、Y軸及びZ軸の磁界の強さを磁界検出素子で検出し、
X軸の磁界の強さとY軸の磁界の強さとによる第1リサージュ波形、Y軸の磁界の強さとZ軸の磁界の強さとによる第2リサージュ波形、Z軸の磁界の強さとX軸の磁界の強さとによる第3リサージュ波形のいずれか一又は二以上を磁気測定器に接続した波形観測器で観測し、
観測しているリサージュ波形のアスペクト比の値が1に近づくように、前記第1磁化器又は前記第2磁化器の位置又は向き、前記第1磁化器に印加する三相交流電圧と前記第2磁化器に印加する交流電圧との周波数比を調整する、ことを特徴とした被検査体の磁化装置の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−198087(P2012−198087A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61993(P2011−61993)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(591011775)電子磁気工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】