説明

被疑箇所指摘装置、被疑箇所指摘方法、デザインルール生成装置及びデザインルール生成プログラム

【課題】配線基板における被疑箇所の検査作業において、コスト低減することができる被疑箇所指摘装置、被疑箇所指摘方法、デザインルール生成装置及びデザインルール生成プログラムを提供すること
【解決手段】本発明にかかる被疑箇所指摘装置1は、配線基板における被疑箇所を示す被疑箇所情報を取得し、当該被疑箇所情報に基づいて、被疑箇所に対応する観測ポイントがデザインルールチェック(以下、「DRC」とする)エラーとなるデザインルールを示す指摘用DRC情報を生成するデザインルール生成部31と、デザインルール生成部31が生成した指摘用DRC情報によって、DRCを実行するDRC実行部32と、DRCの実行結果に基づいて、DRCエラーとなる箇所を強調表示した配線基板のレイアウトを表示する表示部33を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被疑箇所指摘装置、被疑箇所指摘方法、デザインルール生成装置及びデザインルール生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板を備える電子装置には、動作中に故障等の障害が発生した場合、配線基板に含まれるハードウェアの値をログとして採取し、採取した値を解析して、被疑部品となるロケーション/ネットグループを示す被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を生成する機能を有するものがある。このように、配線基板の技術設計者は、障害が発生した場合に、被疑部品の調査依頼を受けたときに、ハードウェアの値そのものが格納されたログを見て被疑部品を特定すると非常に手間がかかってしまうことから、自身がデバッグ時に被疑部品を特定しやすい形式で被疑部品を示す被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を生成するデバッグ用のプログラムを電子機器に実装する等している。
【0003】
しかし、障害の発生した配線基板を検査する検査作業者は、技術設計者が独自に定義した形式の被疑部品ロケーション/ネットグループ情報からは、検査対象となる観測ポイントを具体的に把握することができない。そのため、このような電子装置において、運用又は試験中に障害が発生した場合、検査作業者は、電子装置が生成した被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を技術設計者に発送する。技術設計者は、検査作業者から送付された被疑部品ロケーション/ネットグループ情報に基づいて、配線基板上の被疑部品の観測ポイントとして特定し、特定した観測ポイントを検査作業者に電話や電子メール等で伝える。検査作業者は、技術設計者から伝えられた観測ポイントの信号観測や調査を行う。そして、信号観測や調査の結果に応じて、検査作業者は、被疑部品が故障している場合には部品交換を行い、被疑部品が故障していない場合にはさらに障害原因を究明するために再試験を行う等する。
【0004】
なお、特許文献1には、システムに擬似障害を発生させるためのリレー回路の制御、オンライン診断プログラムへの診断コマンドの入力及びオンラインプログラムからの診断結果の収集を自動化することにより、システムの障害検出能力、診断検出能力の測定を多大な人手および時間を要せずに行う技術が開示されている。
また、特許文献2には、論理回路の論理シミュレーションによって論理エラーが検出された部分に基づいて特定した被疑回路中の信号についての状態値を、論理回路の回路図上の対応する信号付近に表示することにより、エラー解析を容易とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−296353号公報
【特許文献2】特開平05−324756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、背景技術として説明したように、検査作業者が技術設計者に観測ポイントを問い合わせる方法では、非常に非効率であるとともに、技術設計者が伝達したい情報が検査作業者に十分に伝わらない場合もあり、正確性にも欠けるという問題がある。また、非効率であるため、技術設計者および検査作業者の作業負荷が増大し、製造リードタイムが悪化してしまうという問題がある。さらに、技術設計者から伝達したい情報が検査作業者に十分に伝わらないことにより、検査作業者が誤った観測ポイントを信号観測又は調査することによって、故障している部品を特定することができずに、故障していない部品を見切り交換してしまいリカバー率が低下してしまうという問題もある。また、このような製造リードタイムの悪化や余分な交換作業によって、コストが増大してしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献1及び2はいずれも、配線基板における観測ポイントを正確に把握することができるようにする具体的な技術を開示したものではない。
【0008】
本発明の目的は、上述したような課題を解決するためになされたものであり、配線基板における被疑箇所の検査作業において、コスト低減することができる被疑箇所指摘装置、被疑箇所指摘方法および被疑箇所指摘プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様にかかる被疑箇所指摘装置は、配線基板における被疑箇所を示す被疑箇所情報を取得し、当該被疑箇所情報に基づいて、前記被疑箇所に対応する観測ポイントがデザインルールチェック(以下、「DRC」とする)エラーとなるデザインルールを示す指摘用DRC情報を生成するデザインルール生成部と、前記デザインルール生成部が生成した指摘用DRC情報によって、DRCを実行するDRC実行部と、前記DRCの実行結果に基づいて、DRCエラーとなる箇所を強調表示した前記配線基板のレイアウトを表示する表示部を備えたものである。
【0010】
本発明の第2の態様にかかる被疑箇所指摘方法は、配線基板における被疑箇所を示す被疑箇所情報を取得し、当該被疑箇所情報に基づいて、当該被疑箇所に対応する観測ポイントがデザインルールチェックエラーとなるデザインルールを示す指摘用DRC情報を生成するステップと、前記生成した指摘用DRC情報によって、DRCを実行するステップと、前記DRCの実行結果に基づいて、DRCエラーとなる箇所を強調表示した前記配線基板のレイアウトを表示するステップを備えたものである。
【0011】
本発明の第3の態様にかかるデザインルール生成装置は、配線基板における被疑箇所を示す被疑箇所情報を取得し、当該被疑箇所情報に基づいて、前記被疑箇所に対応する観測ポイントがデザインルールチェックエラーとなるデザインルールを示す指摘用DRC情報を生成するものである。
【0012】
本発明の第4の態様にかかるデザインルール生成プログラムは、配線基板における被疑箇所を示す被疑箇所情報を取得し、当該被疑箇所情報に基づいて、前記被疑箇所に対応する観測ポイントがデザインルールチェックエラーとなるデザインルールを示す指摘用DRC情報を生成するステップをコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明の各態様により、配線基板における被疑箇所の検査作業において、コスト低減することができる被疑箇所指摘装置、被疑箇所指摘方法、デザインルール生成装置及びデザインルール生成プログラムを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる被疑箇所指摘装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態2にかかる被疑箇所指摘装置及び周辺装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態2にかかる被疑箇所指摘装置の処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる設計時DRC制約ファイルの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかるDRC制約ファイルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の実施の形態1.
続いて、図1を参照して、本発明の実施の形態1にかかる被疑箇所指摘装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる被疑箇所指摘装置を示すブロック図である。
【0016】
被疑箇所指摘装置1は、デザインルール生成部31、DRC実行部32及び表示部33を有する。
デザインルール生成部31は、配線基板における被疑箇所を示す被疑箇所情報を取得し、取得した被疑箇所情報に基づいて、被疑箇所に対応する観測ポイントがDRCエラーとなるデザインルールを示す指摘用DRC情報を生成する。
DRC実行部32は、デザインルール生成部31が生成した指摘用DRC情報によって、DRCを実行する。
表示部33は、DRCの実行結果に基づいて、DRCエラーとなる箇所を強調表示した前記配線基板のレイアウトを表示する。
電子装置2は、配線基板(図示せず)を有する情報処理装置である。
表示装置3は、被疑箇所指摘装置1からの出力された表示情報を表示する。
【0017】
続いて、本発明の実施の形態1にかかる被疑箇所指摘装置の処理について説明する。
電子装置2の運用又は試験等の動作中に障害が発生した場合、電子装置2は、自身が有する配線基板のうち、発生した障害における被疑箇所を示す被疑箇所情報を生成する。そして、電子装置2は、生成した被疑箇所情報を被疑箇所指摘装置1に出力する。
デザインルール生成部31は、電子装置2から出力された被疑箇所情報を取得する。そして、デザインルール生成部31は、取得した被疑箇所情報に基づいて、被疑箇所に対応する観測ポイントがDRCエラーとなるデザインルールを示す指摘用DRC情報を生成する。
DRC実行部32は、デザインルール生成部31が生成した指摘用DRC情報によって、DRCを実行する。
表示部33は、DRC実行部32によるDRCの実行結果に基づいて、DRCエラーとなる箇所を強調表示した前記配線基板のレイアウトを表示装置3に表示する。
【0018】
以上に説明したように、本実施の形態1によれば、検査作業者が被疑箇所に対応した観測ポイントを正確に把握することができるため、検査作業者が技術設計者に問い合わせる必要がなくなり、製造リードタイムを短縮することができるとともに、見切り交換をすることがなくなり、リカバー率を向上することができるので、余分な作業がなくなり、コストを低減することができる。
【0019】
発明の実施の形態2.
図2を参照して、本発明の実施の形態2にかかる被疑箇所指摘装置の構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態2にかかる被疑箇所指摘装置及び周辺装置を示すブロック図である。
【0020】
被疑箇所指摘装置1は、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報取得部11、DRC制約ファイル生成部12、DRC実行表示部13、配置配線ツール14、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報記憶部15、DRC制約ファイル記憶部16、設計時DRC制約ファイル記憶部17及び配置配線データ記憶部18を有する。被疑箇所指摘装置1は、例えば、PC(Personal computer)やサーバ等の情報処理装置である。
電子装置2は、ログ採取部21、ログ解析部22及びログデータ記憶部23を有する。電子装置2は、配線基板(図示せず)を有する情報処理装置である。
被疑箇所指摘装置1は、インターネット、イントラネット又は電話回線網等の任意の通信手段により、電子装置2と接続されている。
【0021】
続いて、上述した各構成要素について詳細に説明する。
被疑部品ロケーション/ネットグループ情報取得部11は、電子装置2において生成された被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を取得し、取得した被疑部品ロケーション情報を被疑部品ロケーション/ネットグループ情報記憶部15に格納する。
DRC制約ファイル生成部12は、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報に基づいて、被疑部品に対応する観測ポイントがDRCエラーとなるデザインルールを示すDRC制約ファイルを生成する。DRC制約ファイル生成部12は、実施の形態1におけるデザインルール生成部31に対応する。また、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報は、実施の形態1における被疑箇所情報に相当する。
【0022】
DRC実行表示部13は、DRC制約ファイルに基づいて、DRCを実行するとともに、ビューワを起動して、DRCの実行結果を表示装置3に表示する。DRC実行表示部13は、実施の形態1におけるDRC実行部32及び表示部33に対応する。
配置配線ツール14は、DRC機能を有する配線基板設計ツールである。配線基板設計ツールとは、例えば、ケイデンス・デザイン・システムズ社製のAllegro等のように、DRC機能を有する配線基板CAD(Computer Aided Design)である。
【0023】
被疑部品ロケーション/ネットグループ情報記憶部15は、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を格納する。
DRC制約ファイル記憶部16は、DRC制約ファイル生成部12において生成されたDRC制約ファイルを格納する。DRC制約ファイルは、実施の形態1における指摘用DRC情報に相当する。
設計時DRC制約ファイル記憶部17は、電子装置2が有する配線基板の設計時に使用したデザインルールを示す設計時DRC制約ファイルが格納される。なお、DRC制約ファイル及び設計時DRC制約ファイルは、例えば、配線基板CADのDRC機能向けのデザインルールを記述したファイルである。
配置配線データ記憶部18は、電子装置2が有する配線基板に関するデータを含む配置配線データファイルが格納される。なお、配置配線データファイルは、例えば、配線基板CAD向けのCADデータのファイルである。
【0024】
ログ採取部21は、電子装置2において障害が発生した場合に、電子装置2に含まれるハードウェアに格納される値をログとして採取し、採取したログをログデータとしてログデータ記憶部23に格納する。
ログ解析部22は、ログデータ記憶部23に格納されたログデータを解析し、被疑部品を示す被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を生成する。この解析により、技術設計者がデバッグ時に被疑部品を特定しやすいように独自に定義した形式で被疑部品を示す被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を生成する。
【0025】
ここで、ロケーションとは、電子装置2が有するどの基板のどのチップか等を示す情報である。また、ネットグループとは、任意の範囲のネット群を1グループにまとめたものである。例えば、同じクロック周波数のクロックが供給されるネット群を、1つのグループとすることもできる。また、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報は、どのロケーション又はネットグループのうちの、どのネット、ピン、パッド又はホール等といった単位で被疑部品を示すこともできる。
ログデータ記憶部23は、ログ採取部21が生成したログデータが格納される。
【0026】
表示装置3は、被疑箇所指摘装置1からの出力された表示情報を表示する。表示装置3は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、PDP(Plasma Display Panel)、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)等により構成される。
【0027】
ここで、上述した被疑部品ロケーション/ネットグループ情報記憶部15、DRC制約ファイル記憶部16、設計時DRC制約ファイル記憶部17、配置配線データ記憶部18及びログデータ記憶部23は、例えば、メモリやHDD(Hard Disk Drive)等の任意の記憶手段により構成される。
【0028】
続いて、本発明の実施の形態2にかかる被疑箇所指摘装置1の処理について説明する。図3は、本発明の実施の形態2にかかる被疑箇所指摘装置の処理を示すフローチャートである。
まず、電子装置2の運用又は試験等の動作中に障害が発生した場合(S101:Yes)、電子装置2のログ採取部21は、電子装置2に含まれるハードウェアの値をログとして採取し、採取したログをログデータとしてログデータ記憶部23に格納する(S102、S103)。
次に、ログ解析部22は、ログデータ記憶部23からログデータを取得し、取得したログデータを解析する。この解析において、ログ解析部22は、ログデータに基づいて、電子装置2が有する配線基板に含まれる部品のうち、発生した障害における被疑部品を示す被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を生成する。そして、ログ解析部22は、生成した被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を被疑箇所指摘装置1に出力する(S104)。
【0029】
被疑箇所指摘装置1の被疑部品ロケーション/ネットグループ情報取得部11は、電子装置2から出力された被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を取得し、取得した被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を被疑部品ロケーション/ネットグループ情報記憶部15に格納する(S105)。
【0030】
次に、DRC制約ファイル生成部12は、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報記憶部15から被疑部品ロケーション/ネットグループ情報を取得する。また、DRC制約ファイル生成部12は、電子装置2に含まれる配線基板のうち、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報が示す被疑部品が含まれる配線基板の設計時DRC制約ファイルを設計時DRC制約ファイル記憶部17から取得する(S106)。なお、取得する設計時DRC制約ファイルの特定は、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報に被疑部品が含まれる配線基板を特定可能な情報を含めておくことによって行う。例えば、配線基板を特定する情報と、その情報が示す配線基板の設計時DRC制約ファイルとを対応付けたテーブル等を用意しておくことによって特定できるようにする。
【0031】
次に、DRC制約ファイル生成部12は、設計時DRC制約ファイルに含まれるデザインルールから、取得した被疑部品ロケーション/ネットグループ情報が示す被疑部品に対応するデザインルールのみを抽出する。そして、抽出したデザインルールのパラメータを必ずDRCエラーとなるような値に書き換える(S107)。DRC制約ファイル生成部12は、抽出して値を書き換えたデザインルールを含めたDRC制約ファイルを生成し、生成したDRC制約ファイルをDRC制約ファイル記憶部16に格納する(S108)。なお、被疑部品に対するデザインルールの特定は、例えば、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報が示す被疑部品と、この被疑部品のデザインルールとを対応付けたテーブル等を用意しておくことによって特定できるようにする。
【0032】
ここで、図4及び図5を参照して、ここでのDRC制約ファイルを生成する処理について詳細に説明する。図4に設計時DRC制約ファイルの一例を示し、図5にDRC制約ファイルの一例を示す。なお、図4及び図5は、配置配線ツール14として、ケイデンス・デザイン・システムズ社製のAllegroを使用した場合における設計時DRC制約ファイル及びDRC制約ファイルを示している。
【0033】
図4に示す設計時DRC制約ファイルに含まれる"I2C_IMS4_BUS_SCL4+00"は、配線基板内のネットに割り当てられた名称である。"TOTAL_ETCH_LENGTH_MAX"は、許容最大線長を指定していることを示し、"500000.00"は、その許容最大線長さが500000.00umであることを示している。つまり、図4に示す設計時DRC制約ファイルの12行目から19行目までは、ネット"I2C_IMS4_BUS_SCL4+00"の許容最大線長が500000.00umであることを示している。よって、ネット"I2C_IMS4_BUS_SCL4+00"の長さが500000.00umよりも長い場合は、この設計時DRC制約ファイルに基づいて、DRCを行うと、ネット"I2C_IMS4_BUS_SCL4+00"がDRCエラーとなる。
【0034】
そして、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報が被疑部品として、ネット"I2C_IMS4_BUS_SCL4+00"を示している場合は、図5に例示するようなDRC制約ファイルが生成されることとなる。図5は、図4と比較して、ネット"I2C_IMS4_BUS_SCL4+00"についてのデザインルールのみが抽出されている。また、ネット"I2C_IMS4_BUS_SCL4+00"の許容最大線長を"1.00"に書き換えている。このように、この例では、許容最大線長に非常に小さな値を指定することによって、必ずDRCエラーとなるようにしている。
【0035】
次に、DRC実行表示部13は、電子装置2に含まれる配線基板のうち、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報が示す被疑部品が含まれる配線基板の配置配線データファイルに対して、生成したDRC制約ファイルに基づいて、DRCを行うように配置配線ツール14に要求する。なお、被疑部品が含まれる配線基板の配置配線データファイルの特定は、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報に被疑部品が含まれる配線基板を特定可能な情報を含めておくことによって行う。例えば、配線基板を特定する情報と、その情報が示す配線基板の配置配線データファイルとを対応付けたテーブル等を用意しておくことによって特定できるようにする。
【0036】
配置配線ツール14は、DRC実行表示部13から指定された配置配線データファイルを配置配線データ記憶部18から取得する。また、配置配線ツール14は、DRC実行表示部13から指定されたDRC制約ファイルをDRC制約ファイル記憶部16から取得する。そして、配置配線ツール14は、配置配線データファイルのデータに対して、取得したDRC制約ファイルに基づいて、DRCを実行する(S109)。ここでのDRCの実行は、例えば、配置配線ツール14が提供しており、DRCを実行するコマンドをDRC実行表示部13が配置配線データファイル及びDRC制約ファイルを指定して実行することによって行う。
【0037】
次に、DRC実行表示部13は、配置配線ツール14のビューワを起動する(S110)。配置配線ツール14のビューワは、配置配線データファイルに基づいて、配線基板のレイアウトを表示装置3に表示するとともに、この配線基板のレイアウト表示のうち、DRCエラーとなった部品を観測ポイントとして表示装置3にハイライト表示する。
ここで、ハイライト表示とは、例えば、観測ポイントの表示の色を変更する、輝度を変更する、点滅する又は点灯した枠で囲う等して、視覚的効果によって検査作業者が認識し易いように観測ポイントを強調表示することである。
これにより、検査作業者は、正確な観測ポイントを視覚的に把握することができる。なお、ここでのビューワの起動は、例えば、配置配線ツール14が備えており、ビューワを起動するコマンドをDRC実行表示部13が実行することによって行う。
【0038】
そして、検査作業者は、表示装置3に表示された観測ポイントの調査や信号観測を行い、その結果によって被疑部品が故障しており、ビューワによる指摘表示の正当性が確認できた場合には部品交換を行い、そうでない場合には、再試験を行う等の対応が可能となる(S111)。
【0039】
以上のように、本実施の形態によれば、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報に基づいて、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報が示す被疑部品に対応する観測ポイントがDRCエラーとなるDRC制約ファイルを生成し、生成したDRC制約ファイルによって、DRCの実行及びDRCの実行結果の表示をしている。そのため、検査作業者に対して、配線基板上の観測ポイントを視覚的に示すことができる。
【0040】
これにより、検査作業者が観測ポイントを正確に把握することができるため、技術設計者に問い合わせる必要がなくなり、製造リードタイムを短縮することができる。また、検査作業者が観測ポイントを正確に把握することができるため、誤った観測ポイントを信号観測又は調査することがなくなり、故障している部品を特定できずに、見切り交換をすることがなくなるため、リカバー率を向上することができる。また、製造リードタイムの短縮及びリカバー率の向上をすることができるため、余分な作業がなくなり、コストを低減することができる。
【0041】
ここで、技術設計者が行っている観測ポイントの特定から、検査作業者に対する観測ポイントの表示までの全てを行う専用のプログラムを開発する手法も考えられるが、近年の電子装置の大型化や複雑化に伴い、専用プログラムの開発コストの増大及び品質の悪化が生じてしまうことが考えられるため、好ましくない。しかし、本実施の形態によれば、既に作成済みの設計時DRC制約ファイルや、既存の配置配線ツールを利用しているため、検査作業者に対して観測ポイントを示す専用のプログラムを作成する場合に比べて小規模の機能の開発のみで済む点においても、コストを低減することができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、本実施の形態においては、ネットが被疑部品である場合について例示したが、これに限られない。例えば、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報がネットグループを示している場合は、このネットグループに含まれる全てのネットをDRCエラーとして表示する。また、ネットでなく、ピン、パッド又はホール等が被疑部品とされている場合は、このピン、パッド又はホール等をDRCエラーとなるように表示してもよい。
【0043】
また、観測ポイントは、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報において被疑部品として示されたネット、ピン、パッド又はホール等そのものに限られない。例えば、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報において被疑部品として示されたピン、パッド又はホール等を含むネットを観測ポイントとしてDRCエラーとなるようにしてもよい。つまり、観測ポイントは、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報に基づいて、被疑箇所に対応する観測ポイントを任意に定義しておいて、その観測ポイントをDRCエラーとなるように表示してもよい。
【0044】
また、DRC制約ファイルを生成する処理において、被疑部品ロケーション/ネットグループ情報が示す被疑部品に対応するデザインルールのみを抽出せずに、設計時DRC制約ファイルに含まれるデザインルールのうち、被疑部品に対応するデザインルールをDRCエラーとなるように書き換えたものをDRC制約ファイルとして生成してもよい。基本的に、完成品は、設計時DRC制約ファイルに含まれる全てのデザインルールの条件を満たしているため、被疑部品に対応するデザインルールをDRCエラーとなるように書き換えただけでも、観測ポイントとなる被疑部品のみがDRCエラーとして強調表示されるからである。
【0045】
また、ログ解析部を被疑箇所指摘装置に備えるようにして、被疑箇所指摘装置が電子装置からログデータを取得して、取得したログデータを解析するようにしてもよい。
【0046】
以上に説明した本発明にかかる被疑箇所指摘装置は、上述した実施の形態の機能を実現するプログラムを記憶した記憶媒体をシステムもしくは装置に供給し、システムあるいは装置の有するコンピュータ又はCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)がこのプログラムを実行することによって、構成することが可能である。
【0047】
また、このプログラムは様々な種類の記憶媒体に格納することが可能であり、通信媒体を介して伝達されることが可能である。ここで、記憶媒体には、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、ROM(Read Only Memory)カートリッジ、バッテリバックアップ付きRAM(Random Access Memory)、メモリカートリッジ、フラッシュメモリカートリッジ、不揮発性RAMカートリッジを含む。また、通信媒体には、電話回線等の有線通信媒体、マイクロ波回線等の無線通信媒体を含む。また、上述のプログラムは、インターネットを介して伝達することも可能である。
【0048】
また、コンピュータが上述の実施の形態の機能を実現するプログラムを実行することにより、上述の実施の形態の機能が実現されるだけではなく、このプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(Operating System)もしくはアプリケーションソフトと共同して上述の実施の形態の機能が実現される場合も、発明の実施の形態に含まれる。
さらに、このプログラムの処理の全てもしくは一部がコンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットにより行われて上述の実施の形態の機能が実現される場合も、発明の実施の形態に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 被疑箇所指摘装置
2 電子装置
3 表示装置
11 被疑部品ロケーション/ネットグループ情報取得部
12 DRC制約ファイル生成部
13 DRC実行表示部
14 配置配線ツール
15 被疑部品ロケーション/ネットグループ情報記憶部
16 DRC制約ファイル記憶部
17 設計時DRC制約ファイル記憶部
18 配置配線データ記憶部
21 ログ取得部
22 ログ解析部
23 ログデータ記憶部
31 デザインルール生成部
32 DRC実行部
33 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板における被疑箇所を示す被疑箇所情報を取得し、当該被疑箇所情報に基づいて、前記被疑箇所に対応する観測ポイントがデザインルールチェック(以下、「DRC」とする)エラーとなるデザインルールを示す指摘用DRC情報を生成するデザインルール生成部と、
前記デザインルール生成部が生成した指摘用DRC情報によって、DRCを実行するDRC実行部と、
前記DRCの実行結果に基づいて、DRCエラーとなる箇所を強調表示した前記配線基板のレイアウトを表示装置に出力する表示部を備えた被疑箇所指摘装置。
【請求項2】
前記被疑箇所指摘装置は、前記配線基板を設計したときに使用したデザインルールを示す設計時DRC情報を格納する設計時DRC情報記憶部をさらに備え、
前記デザインルール生成部は、前記設計時DRC情報に基づいて、前記指摘用DRC情報を生成する請求項1に記載の被疑箇所指摘装置。
【請求項3】
前記デザインルール生成部は、前記設計時DRC情報から前記被疑箇所に対応するデザインルールを抽出し、抽出したデザインルールに基づいて、前記指摘用DRC情報を生成する請求項2に記載の被疑箇所指摘装置。
【請求項4】
前記被疑箇所指摘装置は、配線基板設計ツールをさらに備え、
前記DRC実行部は、前記配線基板設計ツールによって、前記DRCを実行し、
前記表示部は、前記配線基板設計ツールによって、前記配線基板のレイアウトを表示する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被疑箇所指摘装置。
【請求項5】
前記被疑箇所情報は、前記配線基板の動作中に、当該配線基板に異常が発生した場合に採取され、当該配線基板に含まれるハードウェアの値に基づいて生成された情報である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の被疑箇所指摘装置。
【請求項6】
配線基板における被疑箇所を示す被疑箇所情報を取得し、当該被疑箇所情報に基づいて、当該被疑箇所に対応する観測ポイントがデザインルールチェック(以下、「DRC」とする)エラーとなるデザインルールを示す指摘用DRC情報を生成するステップと、
前記生成した指摘用DRC情報によって、DRCを実行するステップと、
前記DRCの実行結果に基づいて、DRCエラーとなる箇所を強調表示した前記配線基板のレイアウトを表示するステップを備えた被疑箇所指摘方法。
【請求項7】
配線基板における被疑箇所を示す被疑箇所情報を取得し、当該被疑箇所情報に基づいて、前記被疑箇所に対応する観測ポイントがデザインルールチェック(以下、「DRC」とする)エラーとなるデザインルールを示す指摘用DRC情報を生成するデザインルール生成装置。
【請求項8】
配線基板における被疑箇所を示す被疑箇所情報を取得し、当該被疑箇所情報に基づいて、前記被疑箇所に対応する観測ポイントがデザインルールチェック(以下、「DRC」とする)エラーとなるデザインルールを示す指摘用DRC情報を生成するステップをコンピュータに実行させるデザインルール生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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