説明

被覆剥取装置

【課題】地上あるいは作業車上からの遠隔操作により、空中に架設された被覆電線等の絶縁被覆を所望長さで容易に剥ぎ取ることができる被覆剥取装置を提供する。
【解決手段】電線保持部13が形成され、2方向から被覆電線Aを電線保持部13に収容する1対の保持部材11、12と、1対の保持部材11、12に保持される被覆電線Aに対して電線保持部13に突出する皮剥ぎ刃18とを備えた被覆剥取具10、および、中央部に被覆電線Aを挿脱可能に収容する電線収容空間21aが形成されてなる回転盤21と、遠隔操作棒2の先端に取り付けられて遠隔操作棒2の回動軸の回転を回転盤21に伝達する回転伝達手段30とを備えた回転駆動具20を具備し、被覆電線Aの中心軸と回転盤21の回転軸心とが一致していない場合であっても、遠隔操作棒2の回動操作によって被覆剥取具10を被覆電線Aの中心軸回りに回転させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧架線等に用いられる被覆電線の中間部または端部の被覆材を螺旋状に剥ぎ取る被覆剥取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架線工事、例えば絶縁材料により被覆された被覆電線の端部や中間部を他の電線と接続する工事においては、被覆電線の接続対象箇所の絶縁被覆を剥ぎ取って下地の芯線を露出させる必要がある。このような被覆電線の絶縁被覆を剥ぎ取る作業は、電線間の接続、電路の分離、電線への機器の接続などを目的とした工事の中で必要となる作業であり、停電を避けて、原則として活線の状態で行われる。したがって、被覆剥取装置を絶縁操作棒に取り付けて地上から遠隔操作して作業を行うことになるが、このような作業に、従来、図11に示されるような被覆剥取装置100が用いられていた。
【0003】
この被覆剥取装置100では、被覆剥取具110が、互いに対向する内面により電線保持部113が形成され、被覆電線Aの中心軸に直行する2方向から被覆電線Aを電線保持部113に収容する1対の保持部材111、112と、この電線保持部113に収容された被覆電線Aに対して所定の前進角をもって電線保持部113内に突出する皮剥ぎ刃118とを備えるとともに、回転駆動具120が、外周の一部を切り欠いて、中央部に被覆電線Aを挿脱可能に収容する電線収容空間121aが形成され、切り欠いた部分に電線挿脱口121bが形成されてなる回転盤121と、この回転盤121を回転可能に保持するケース127と、このケース127を支持するとともに、遠隔操作棒2の先端に取り付けられ、かつ、遠隔操作棒2の回動軸の回転を回転盤121の回転に伝達する回転伝達手段130と、被覆剥取具110を回転盤121に取り付ける被覆剥取具保持部140とを備えて構成されている。そして、遠隔操作棒2の回動操作による回転力が回転駆動具120を介して被覆剥取具110に伝達され、被覆剥取具110を被覆電線Aの中心軸回りに回転させることによって、被覆電線Aの絶縁被覆(図示せず)を皮剥ぎ刃118の刃幅で剥ぎ取ることができるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような被覆剥取装置100では、その電線保持部113および電線収容空間121aに被覆電線Aを収容するために、被覆電線Aの中心軸線に対してほぼ垂直な方向から被覆剥取装置100(遠隔操作棒2)を操作して、回転盤121の回転軸心を被覆電線Aの中心軸線にほぼ平行に位置させた状態で、電線保持部113および電線収容空間121aに被覆電線Aを導入する必要があった。また、被覆剥取具110を回転駆動させて被覆電線Aの絶縁被覆Bを剥ぎ取る過程においても、その状態を維持して被覆電線Aの中心軸線に対してほぼ垂直な方向から被覆剥取装置100(遠隔操作棒2)を操作しなければならなかった。
【0005】
このように、従来の被覆剥取装置100では、空中に架設された被覆電線Aに対して遠隔操作棒2に連結された被覆剥取装置100を地上あるいは作業車上からほぼ垂直な方向から接近させ、電線保持部113および電線収容空間131aの中心軸(回転盤121の回転軸心)を被覆電線Aの中心軸にほぼ沿わせた状態で被覆電線Aの被覆剥ぎ取り作業を行う必要があった。また、空中に架設された被覆電線Aに対して、作業場所に付随する地勢的、空間的制約や安全上の問題から、必ずしも被覆電線Aの中心軸に対して垂直の方向からアプローチすることができない場合もあり、その状況に応じた対応策が別に必要となることもあった。これらのことは、被覆剥ぎ取り作業において、被覆電線Aへのアプローチ角度をできるだけ適正な状態とするため、作業姿勢や配車位置を選択調整し直さなければならず、作業性を低下させる原因にもなっていた。
【0006】
また、被覆電線Aの中心軸に対して垂直から少し外れた方向から無理に電線保持部113および電線収容空間121aに被覆電線Aを収容し、この状態で回転盤121(被覆剥取具110)を回転させると、被覆電線Aを歪ませ、スムーズに回転させること自体が難しいだけでなく、被覆電線Aの芯線Cを傷付けることにもあった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みて為されたものであり、地上あるいは作業車上からの遠隔操作による被覆剥ぎ取り作業において、電線保持部および電線収容空間に被覆電線を容易に導入収容した後、作業場所に応じた姿勢と角度で回転盤を回転駆動操作して、その絶縁被覆を所望長さで作業性よく、かつ容易に剥ぎ取ることができる被覆剥取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る被覆剥取装置は、互いに対向する内面により電線保持部が形成され、被覆電線の中心軸に直行する2方向から被覆電線を電線保持部に収容する1対の保持部材と、この1対の保持部材に保持される被覆電線に対して所定の前進角をもって電線保持部に突出する皮剥ぎ刃と、を備えた被覆剥取具を具備するとともに、外周の一部を切り欠いて、中央部に被覆電線を挿脱可能に収容する電線収容空間が形成され、切り欠いた部分に電線挿脱口が形成されてなる回転盤と、この回転盤を回転可能に保持するケースと、このケースを支持するとともに、遠隔操作棒の先端に取り付けられ、かつ、遠隔操作棒の回動軸の回転を回転盤の回転に伝達する回転伝達手段と、被覆剥取具を回転盤に傾動可能に取り付ける被覆剥取具保持部と、を備えた回転駆動具を具備し、遠隔操作棒の回動操作による回転力が回転駆動具を介して被覆剥取具に伝達され、被覆電線の中心軸と回転盤の回転軸心とが一致していない場合であっても、被覆剥取具を被覆電線の中心軸回りに回転させるように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
請求項1に係る被覆剥取装置によれば、回転駆動具は遠隔操作棒の回動操作により回転伝達手段を介して回転盤を回転させ、回転盤に取り付けられた被覆剥取具を回転させる。そして、被覆剥取具の電線保持部に収容された被覆電線の中心軸と回転盤の回転軸心とが一致していない場合であっても、被覆剥取具保持部が傾動して被覆剥取具を被覆電線の中心軸回りに回転させることができ、被覆電線の絶縁被覆を皮剥ぎ刃の刃幅で剥ぎ取ることができる。
【0010】
このように、本発明の被覆剥取装置によれば、空中に架設された被覆電線に対して絶縁操作棒に連結された被覆剥取装置を地上あるいは作業車上から、被覆電線を電線保持部および電線収容空間に収容した後、作業場所に応じた最も作業しやすい姿勢と角度で、遠隔操作棒の回動操作により回転盤を回転させるだけで、被覆剥取具保持部が傾動して被覆剥取具を被覆電線の中心軸回りに回転させることができるため、作業性よく、かつ容易に被覆電線の絶縁被覆を剥ぎ取ることができる。また、電線保持部の中心軸に平行な状態にない被覆電線に対して、遠隔操作棒を揺動させて被覆剥取具保持部を傾動させながらアプローチし、電線保持部に被覆電線を収容保持させることもできる。
【0011】
これにより、従来の被覆剥取装置では必要であった、被覆剥取装置を被覆電線に対してほぼ垂直な方向から接近させ、電線保持部および電線収容空間の中心軸(回転盤の回転軸心)を被覆電線の中心軸にほぼ沿わせた状態で被覆電線を収容するとともに、その状態を維持したまま回転盤を回転させて、絶縁被覆を剥ぎ取るといった手順を踏む必要がなく、作業性を向上させることができる。また、回転盤を回転させ、絶縁被覆を剥ぎ取る過程において、被覆電線を歪ませることがないため、被覆電線の芯線を傷付けることがない。
【0012】
本発明の請求項2に係る被覆剥取装置は、請求項1に記載の被覆剥取装置において、被覆剥取具保持部は、この被覆剥取具保持部を回転盤に取り付ける取付部と、被覆剥取具を着脱可能に保持する被覆剥取具装着部と、取付部と被覆剥取具装着部とを連結し、被覆剥取具装着部を取付部に対して傾動可能に支持する傾動連結部と、を備えて構成されるものである。
【0013】
請求項2に係る被覆剥取装置によれば、被覆剥取具は、取付部、傾動連結部および被覆剥取具装着部を介して回転盤に取り付けられ、回転盤の回転軸心に対して傾動可能に支持されている。このような傾動連結部を介するだけの簡単な構成により、被覆剥取具保持部を傾動させて、被覆剥取具を被覆電線の中心軸回りに回転させる機構を実現することができる。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る被覆剥取装置は、請求項2に記載の被覆剥取装置において、傾動連結部は、取付部に取り付けられ、被覆剥取具保持部の方向に起立する支持部と、被覆剥取具保持部に取り付けられ、取付部の方向に起立する傾動部と、傾動部が支持部に対して傾動可能な状態で支持部と傾動部とを連結する結合ピンと、支持部と傾動部とを軟弾性的に支持する軟弾性支持部材と、を備えて構成され、被覆剥取具保持部が、傾動部に取り付けられ、取付部に対して結合ピンを支点として傾動可能に支持されるものである。
【0015】
請求項3に係る被覆剥取装置によれば、傾動連結部は、取付部の支持部と、被覆剥取具装着部の傾動部とを傾動可能に連結した上で、支持部と傾動部とが軟弾性支持部材により軟弾性的に支持されている。ここで、軟弾性的に支持されるとは、連結される支持部と傾動部とが傾動前の状態(例えば、直線状に連なる形態)に弾性的に支持されるとともに、外部からの力がかかると、一方の部材(支持部)に対して他方の部材(傾動部)が比較的柔軟に傾動され、さらに、外部からの力がなくなると、弾性的に傾動する前の状態(例えば、上記の直線状に連なる形態)に復元されることを意味しており、バネ部材等の軟弾性材を利用することにより実現することができる。
【0016】
このような軟弾性支持部材を用いた傾動連結部を有する被覆剥取装置では、被覆剥取具(被覆剥取具装着部)が取付部を介して回転盤に軟弾性的に(例えば、電線保持部の中心軸が回転盤の回転軸心に沿った位置にある状態で)支持されており、一旦、被覆電線を電線保持部および電線収容空間に収容した後は、作業姿勢を変えても、傾動連結部の軟弾性的に支持しようとする力により、被覆剥取具を被覆電線の中心軸回りに傾動させて回転させることができ、その回転動作に付随する傾動動作の応答性を高めることができる。
【0017】
さらに、本発明の請求項4に係る被覆剥取装置は、請求項2に記載の被覆剥取装置において、傾動連結部は、取付部に取り付けられ、被覆剥取具保持部の方向に起立して、その起立部分にガイド用長孔を有するガイド部と、被覆剥取具保持部に取り付けられ、取付部の方向に起立して、その起立部分にガイド用長孔に係合する係合突起を有する傾動部と、を備えて構成され、被覆剥取具保持部が、傾動部に取り付けられ、取付部に対して係合突起を支点として傾動可能に支持されるとともに、係止突起がガイド用長孔内を摺動することにより、被覆剥取具装着部と取付部との間の距離を可変としたものである。
【0018】
請求項4に係る被覆剥取装置によれば、取付部のガイド部に設けたガイド用長孔に、被覆剥取具装着部の傾動部に設けた係合突起が係合し、取付部と傾動部とが傾動可能に連結されるとともに、係合突起がガイド用長孔内を摺動することにより、被覆剥取具装着部と取付部との間の距離が可変となる。
【0019】
このようなガイド用長孔と係合突起とを組み合わせた傾動連結部を有する被覆剥取装置では、被覆剥取具(被覆剥取具装着部)が取付部を介して回転盤に傾動可能に支持されるとともに、被覆剥取具装着部と取付部との間の距離が可変となっており、被覆剥取具(被覆剥取具装着部)が取付部を介して回転盤に軟弾性的に(例えば、電線保持部の中心軸が回転盤の回転軸心に沿った位置にある状態で)支持されており、一旦、被覆電線を電線保持部および電線収容空間に収容した後は、作業姿勢を変えても、被覆剥取具が傾動可能に支持されているため、被覆剥取具を被覆電線の中心軸回りに傾動させて回転させることができ、さらに、被覆剥取具装着部と取付部との間の距離が可変となっているため、被覆剥取具の回転動作に付随する傾動動作、および被覆電線の中心軸方向に沿った摺動動作の応答性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の被覆剥取装置によれば、地上あるいは作業車上からの遠隔操作による被覆剥ぎ取り作業において、電線保持部および電線収容空間に被覆電線を容易に導入収容した後、作業場所に応じた姿勢と角度で回転盤を回転駆動操作して、その絶縁被覆を所望長さで作業性よく、かつ容易に剥ぎ取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の被覆剥取装置に係る最良の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。なお、下記に開示される実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、実施の形態で開示された内容ではなく、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれると解されるべきである。
【0022】
[実施の形態1]
まず、本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の構造について、図1〜図8に基づき説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の概要を説明するための斜視図であり、図2は、本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の構造を説明するための正面図である。また、図3は、本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の被覆剥取具の構造を説明するための、(a)は側面図、(b)は正面図であり、図4は、本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の被覆剥取具を回転駆動具に装着するための構造を説明するための斜視図であり、図5は、本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の傾動連結部の構造を説明するための、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。さらに、図6は、本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の回転駆動具の構造を説明するための側面図(電線挿脱口が開の状態)であり、図7は、本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の回転駆動具の構造を説明するための側面図(電線挿脱口が閉の状態)である。また、図8は、発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の傾動連結部の動作を説明するための説明図であり、(a)は電線保持部および電線収容空間に被覆電線を収容するときの状態、(b)、(c)、(b’)および(c’)は回転盤を回転させて絶縁被覆を剥ぎ取るときの状態を示す。
【0023】
本発明の被覆剥取装置1は、図1に示されるように、回転駆動具20に被覆剥取具10を装着して構成され、回転駆動具20に連結される遠隔操作棒からの操作によって、被覆剥取具10を被覆電線Aの中心軸回りに回転させ、被覆剥取具10の皮剥ぎ刃18により空中に架線された被覆電線Aの中間部あるいは端部の絶縁被覆B(図示せず、図6、図7を参照)を皮剥ぎ刃18の刃幅に相当する長さで螺旋状に剥ぎ取るものである。
【0024】
まず、被覆剥取具10の構成について説明する。ここでは、後述の操作リング15が電線保持部材(上保持部材11、下保持部材12)の上方に位置する状態で上下方向を表現する。
【0025】
被覆剥取具10は、装着台座16を回転駆動具20(具体的には、後述の被覆剥取具保持部40)に着脱可能に装着することができるように構成されており、対向配置した上保持部材11と下保持部材12の対向面にそれぞれ断面半円形状の電線保持凹部11a,12aが形成され、図示するように、上保持部材11と下保持部材12との対向面を閉じたとき、電線保持凹部11a,12aにより形成される断面円形の電線保持部13に被覆電線の中間部を収容保持することができる。
【0026】
なお、本実施の形態では、被覆剥取具10として、上保持部材11と下保持部材12に、それぞれ内径が異なる2つの電線保持凹部11a,12aが形成されたものを例示しているが、構成ならびに機能の面では両者同じであり、垂直軸回りに180°回転させて被覆剥取具保持部40に装着することにより、被覆剥ぎ取り作業の対象となる被覆電線Aに対応した電線保持凹部11a,12aを後述の回転駆動具20の電線収容空間21aに対向配置することで、その電線保持凹部11a,12aを使用することができる。以下の説明では、特に断らない限り、この作業対象となる被覆電線Aに対応した電線保持凹部11a,12aを電線収容空間21aに対向配置した状態で装着した被覆剥取具10について説明する。なお、被覆剥取具10は、上保持部材11と下保持部材12に、それぞれ1つの電線保持凹部11a,12aが形成されたものであってもよい。
【0027】
上保持部材11と下保持部材12とは、各保持部材11,12の中央部に設けられたねじ穴11b,12bに螺合される雄ねじ14aを有する進退軸14(螺軸)によって連結され、この進退軸14の一方の端部(図では上端部)には上方に円環部15aを有する操作リング15が取り付けられている。進退軸14の雄ねじ14aは、進退軸14の上下方向の中間位置14cを挟んだ上方部分(上保持部材11のねじ穴11bに螺合する部分)と下方部分(下保持部材12のねじ穴11bに螺合する部分)とでは、互いに逆方向の螺旋状に形成されている。したがって、この操作リング15(円環部15a)を一方向に回転させると、上保持部材11と下保持部材12とを互いに接近する方向に移動させて、双方の保持部材11,12間の対向間隔を狭めることができ、逆に、他方向に回転させると、上保持部材11と下保持部材12とを互いに離間する方向に移動させて、双方の保持部材11,12間の対向間隔を広げることができる。
【0028】
また、進退軸14の他方の端部(図では上端部)は装着台座16の中央部に設けられた貫通穴16aを貫通し、その端部に取り付けたナット材14bとの間では雄ねじ14aに螺合していないため、装着台座16は進退軸14の回転に拘束されることなく進退軸14端部に係留されている。さらに、上保持部材11と下保持部材12の雌ねじ穴11b,12bに近接した位置に各保持部材11,12を貫通する1対のガイド穴11c,12cが設けられ、装着台座から起立する1対のガイド軸17がこれらの1対のガイド穴11c,12cを貫通している。このような構成により、上保持部材11と下保持部材12とは、進退軸14の回転により位置ずれを起こすことなく、装着台座16下面から所定寸法離れた進退軸14の中間位置14cを挟んで、その対向間隔を狭めたり、広げたりすることができる。
【0029】
そして、電線保持部材(上保持部材11、下保持部材12)の上方に操作リング15が位置する状態(後述の傾動連結部による傾動がない場合)では、電線保持部13の中心が回転盤21の回転軸心上にあり、上保持部材11と下保持部材12との対向間隔を広げ、後述の開閉歯車片22を開いて電線挿脱口21bを開の状態とすれば、電線保持部13および電線収容空間21aに被覆電線Aを導入することができる。次に、電線保持部13および電線収容空間21aに被覆電線Aを導入した状態から、操作リング15が電線保持部13の下方に位置するように被覆剥取具10を略180°回転させ、先端にフックを有する周知の開閉操作棒を用いて、この操作リング15の円環部15aにフックを差し込み、一方向(本実施の形態1では、下方から見て時計方向)に回転させると、上保持部材11と下保持部材12とをそれぞれ上動、下動させて双方の保持部材11,12間の対向間隔を狭めることができ、導入した被覆電線Aを電線保持部13内に収容保持することができる。さらに、被覆剥ぎ取り作業を終えた後、操作リング15の円環部15aに開閉操作棒のフックを再度差し込み、他方向(本実施の形態1では、下方から見て反時計方向)に回転させると、上保持部材11と下保持部材12とをそれぞれ下動、上動させて双方の保持部材11,12間の対向間隔を広げることができ、開閉歯車片22を開いて電線挿脱口21bを開の状態とすれば、収容していた被覆電線Aを電線保持部13および電線収容空間21aから脱離させることができる。
【0030】
上下の各保持部材11,12の対向面にそれぞれ形成された電線保持凹部11a,12aの内周面には、双方の対向面を閉じた状態で電線保持凹部11a,12a間で連続するように螺旋状の送り出し突起11d,12dが形成されている(図4を参照)。そして、各保持部材11,12には、皮剥ぎ刃18を取り付けるための取付開口18bが設けられ、皮剥ぎ刃18は、その刃先18aがこの取付開口18bから所定寸法だけ電線保持部13内に突出し、下保持部材12の外側面から電線保持部13の中心方向に向けて所定角度傾斜させた状態で、かつ、送り出し突起11d,12dの螺旋傾斜に対応する傾斜角度(所定の前進角)をもって上保持部材11に取り付けられている。また、皮剥ぎ刃18により剥ぎ取られた絶縁被覆Bは、この取付開口18bを通じて外部に排出される。
【0031】
ここで、電線保持部13内に突出する寸法(上記の所定寸法)と電線保持部13中心方向に向けての傾斜角度(上記の所定角度)は、被覆電線Aの芯線Cの外径や絶縁被覆Bの厚さに対応して決められ、皮剥ぎ刃18の刃先18aを被覆電線Aの芯線Cと絶縁被覆Bとの境界部に向けて、その接線方向から進出させる(絶縁被覆に食い込ませる)ように設定することのできる寸法であり、角度である。また、送り出し突起11d,12dは、絶縁被覆Bの外表面に係合し、被覆剥取具10が被覆電線Aの中心軸回り(図3(a)において時計方向)に1回転するのに伴い、被覆電線Aを送り出し突起11d,12dのピッチで図3(b)の左方に送り出すことができ、皮剥ぎ刃18の刃先18aがこの送り出し突起11d,12dの螺旋傾斜に対応する前進角(送り出されてくる被覆電線に向かっていく方向に傾斜された角度)をもって取り付けられているため、刃先18aが剥ぎ取った絶縁被覆Bが刃先18aの後方(刃先18aの刃幅方向に垂直な方向)に向けて、取付開口18bから排出されることになる。
【0032】
装着台座16は、上保持部材11の上方に設けられ、被覆剥取具10を後述の被覆剥取具保持部40に着脱可能に装着するためのものであり、その側方の面(図3(b)で右方)に係合穴16bが設けられ、その前方の面(図3(b)で手前方)に装着穴16cが設けられている。係合穴16bおよび装着穴16cには、それぞれ後述の被覆剥取具保持部40の係合突起42d、装着ピン42eが嵌め込まれることにより、被覆剥取具10を被覆剥取具保持部40に装着固定する。
【0033】
次に、回転駆動具20と回転伝達部30の構成について説明する。
【0034】
回転駆動具20は、回転盤21と、回転盤21を回転可能に保持するケース27と、遠隔操作棒2の回動軸の回転を回転盤21の回転に伝達する回転伝達部30(回転伝達手段)とを備えて構成され、回転盤21には、被覆剥取具10を着脱可能に装着する被覆剥取具保持部40が取り付けられている。
【0035】
回転盤21は、外周面に後述のピニオン37に噛合する歯が設けられ、中央部に、断面円形の空間が被覆電線を収容可能な電線収容空間21aとして一方に開口して形成された円環状の平板であり、同様に開口した形状を有する1対の回転盤保持部26が、開口形状を同一にして回転盤21の両側面に取り付けられている。電線収容空間21aの直径および開口部の幅は被覆電線Aの直径より若干大きく設定されており(回転盤保持部26の場合も同様)、電線収容空間21aは被覆電線Aを収容するための空間であり、開口部は被覆電線Aを電線収容空間21aに挿入したり、被覆電線Aを電線収容空間21aから脱離したりすることを可能とする電線挿脱口21bとして機能する。電線収容空間21aは、後述の傾動連結部43の傾動動作により、被覆電線Aの中心軸が回転盤21の回転中心から大きく傾いた場合であっても、その被覆電線Aを収容することのできる十分な内径寸法を有している。なお、回転盤21を回転可能に保持するケース27にも、電線挿脱口21bと同様の形状を有する開口部が設けられており、ケース27の開口部に電線挿脱口21bが位置したときに、電線挿脱口21bを介しての被覆電線Aの挿脱が可能となる。
【0036】
電線挿脱口21b近辺の回転盤21には、揺動軸23が設けられ、開閉歯車片22がこの揺動軸23回りに揺動可能に取り付けられている。開閉歯車片22は、回転盤21の外径と同径の円弧状に形成された外周面を有し、その外周面に回転盤21と同一形状の歯が設けられている。回転盤21における開閉歯車片22の取り付け部分には、開閉歯車片22の取り付けと揺動を可能とするため、回転盤21の一部が切り欠かれており、また、回転盤21における開閉歯車片22の先端を受け入れ、係合する部分には、開閉歯車片22を受け入れるため、回転盤21の一部が切り欠かれている。このようにして、開閉歯車片22が回転盤21に係合した状態(電線挿脱口21bが閉状態)では、回転盤21と開閉歯車片22とが一体の歯車として回転駆動されるように構成されている。
【0037】
そして、揺動軸23側と、揺動軸23と反対側の電線挿脱口21bに近接した回転盤21の側面(前述の切り欠かれた部分)に、それぞれボールプランジャ機構24a、24b(保持手段)が設けられている。開閉歯車片22をケース27の開口部から引き出して電線挿脱口21bを開状態とした時(図6に実線で示す状態)には、このボールプランジャ機構24aが作動して開状態で保持される。そして、この電線挿脱口21bが開状態で、電線挿脱口21bがケース27の開口と一致しているため、被覆電線Aを電線収容空間21aに挿入し、収容保持することができる。また、他の操作棒等により開閉歯車片22に外力を加えれば、このボールプランジャ機構24aが解除され、さらに、開閉歯車片22を電線挿脱口21b方向に押圧すると、開閉歯車片22が回転盤21の切り欠かれた部分に係合し、ボールプランジャ機構24bが作動して、電線挿脱口21bを閉状態に保持することができる(図6に二点鎖線で示す状態)。
【0038】
さらに、被覆剥取具10による絶縁被覆Bの剥ぎ取り作業を終えた後に、遠隔操作棒2により被覆剥取装置1を被覆電線Aから離間する方向に引き戻し操作すると、ボールプランジャ機構24bが解除され、開閉歯車片22を揺動させて回転盤21から離脱させ、電線挿脱口21bを開状態とすることができ、これにより電線収容空間21aから被覆電線Aを脱離させることができる。
【0039】
回転盤保持部26の周面の外方(回転盤21に取り付く面の反対側)寄りには環状の鍔部26aが設定され、回転盤保持部26が回転盤21の側面に取り付けられた状態で、回転盤21の側面と回転盤保持部26の鍔部26aとの間に環状の凹部が形成されるように構成されている。そして、この環状の凹部にケース27の回転盤嵌着穴27aを取り巻く縁部が嵌め込まれるように回転盤保持部26を回転盤21の側面に取り付けることにより、回転盤21がケース27に対して回転可能に嵌着されることになる。このため、回転盤嵌着穴27aの直径は回転盤保持部26の外径(鍔部26aが形成されていない部分)より若干大きく、また、回転盤保持部26の鍔部26aが形成されていない部分の幅はケース27の厚みより若干広く設定されている。
【0040】
ケース27は、回転盤21とピニオン37とを覆うとともに、回転盤21の電線収容空間21aと電線挿脱口21bに対応して切り欠かれ、その開口部(回転盤嵌着穴27a)に回転盤保持部26を介して回転盤21を回転可能に保持するものである。また、ケース27の外側面(後述の被覆剥取具保持部40が取り付けられる側とは反対側)には、電線補助支持部28が取り付けられている。電線補助支持部28は、その先端部に被覆電線Aの外径より若干大きく設定された内径を有する半円環部28aを備え、この半円環部28aに被覆電線Aを当接させることで、電線収容空間21aに導入しようとする被覆電線Aを誘導したり、電線収容空間21aに収容された被覆電線Aを補助的に支持したりするものであり、また、被覆剥取具10の回転動作による被覆電線Aのふらつきを抑止するものである。
【0041】
回転伝達部30は、断面視L字状の形状を有する支持台31と、支持台31の底辺部31a下方に取り付けられた支持筒32と、互いに直交して噛合する第1ベベルギア33と第2ベベルギア34と、第1ベベルギア33の軸心に接続される連結回転軸35と、これらの構成部品を覆う側面視直角三角形状のカバー36を備え、さらに、ケース27の内部に、第2ベベルギア34と同軸に設けられたピニオン37を備えて構成されている。
【0042】
支持筒32は、その筒状体の内部に遠隔操作棒2の先端部を受け入れることにより、被覆剥取装置1を遠隔操作棒2によって支持するためのものである。
【0043】
第1ベベルギア33は、支持台31の底辺部31a中央に形成された穴に回転可能に軸支され、ギア部33aが支持台31の底辺部31a上方に配されている。また、第2ベベルギア34は、支持台31の側辺部31b中央に形成された穴に回転可能に軸支され、ギア部34aが支持台31の側辺部31b側方に配されて第1ベベルギア33のギア部33aに噛合するとともに、ギア部34aと反対側の軸心部34bが支持台31の側辺部31bから突出してケース27内を挿通し、その軸心部34bにピニオン37が取り付けられている。連結回転軸35は、支持筒32の中心軸上に位置して配され、上端が第1ベベルギア33の軸心部33bに接合されるとともに、下端には遠隔操作棒2の回動軸と係合するために断面視六角形状の頭部35aが設けられている。
【0044】
遠隔操作棒2としては、棒状の筒体内部に回動軸を備え、手元のハンドルを回転操作することにより、その回転がベベルギアを介して回動軸に伝達される、周知の遠隔操作棒が用いられる。支持筒32に遠隔操作棒2の先端を差し込むことにより、連結回転軸35(頭部35a)に遠隔操作棒2の回動軸の先端部を連結させ、被覆剥取装置1を遠隔操作棒2の先端に支持することができる。そして、この状態で、遠隔操作棒2手元のハンドルを回転操作することにより、連結回転軸35を回転させ、連結回転軸35に接合された第1ベベルギア33とこれに噛合する第2ベベルギア34とを回転させ、さらに第2ベベルギア34と同軸に取り付けられたピニオン37を回転させ、ピニオン37に噛合する回転盤21およびそれに回転盤保持部26を介して取り付けられた被覆剥取具10を回転させることができる。
【0045】
さらに、被覆剥取具保持部40の構成について説明する。
【0046】
回転盤保持部26の一方の外側面には、被覆剥取具保持部40がネジ止めにより取り付けられている。被覆剥取具保持部40は、この被覆剥取具保持部40を回転盤保持部26の外側面に取り付けられる取付部41と、取付部41に固定される支持基材44aから回転盤21の回転軸心に平行な方向に立設された1対の支持部材44bを有する支持部44と、1対の支持部材44bの間に嵌挿される傾動部材45aを有し、この傾動部材45aが1対の支持部材44bの間で挿通ピン46(結合ピン)により連結され、傾動可能に支持される傾動部45と、傾動部45の先端に固定され、被覆剥取具10を着脱可能に保持する被覆剥取具装着部42と、支持部44と傾動部45と挿通ピン46とを内包する状態で配設される巻バネ47(軟弾性支持部材)とを備えて構成されている。本実施の形態1において、傾動連結部43は、支持部44と、傾動部45と、挿通ピン46と、巻バネ47とによって構成されている。
【0047】
取付部41は、回転盤保持部26に近い一方端が回転盤保持部26の外側面にねじで固定されるとともに、他方端が回転盤21の回転中心から離れる方向(半径方向)に延出され、その下方に支持部44の支持基材44aが固定されている。支持部44の支持基材44aからは1対の支持部材44bが一定の間隔を隔てて被覆剥取具装着部42の方向に向けて立設されており、支持部材44bの中央に貫通孔44cが設けられている。
【0048】
また、1対の支持部材44bの間には、傾動部45の傾動部材45aが嵌挿されるとともに、傾動部材45aの中央に貫通孔45bが設けられ、この貫通孔45bと支持部材44bの貫通孔44cとを挿通ピン46が挿通することによって、傾動部材45a(傾動部45)が挿通ピン46を支点にして支持基材44a(支持部44)に対して傾動可能な状態で連結されている。そして、傾動部材45aの先端側(回転伝達部30から離れる側)は被覆剥取具装着部42(具体的には後述の装着部取付板42c)に固定されている。
【0049】
巻バネ47は、1対の支持部材44bの対角寸法および挿通ピンの長さ方向の寸法よりも若干大きな内径を有し、支持部材44bと傾動部材45aと挿通ピン46とを内包する状態で、支持部44の支持基材44aと被覆剥取具装着部42の装着部取付板42cとの間に配設されている。巻バネ47は、外力の懸からない状態では直線状の形状を有し、剪断方向の外力が懸かって湾曲状に変形した場合には、元の形状に復元しようとする復元力を有するものであり、傾動部材45aが支持基材44aに対して傾動した場合には、傾動していない状態に傾動部材45aを復元させるように支持(軟弾性的に支持)している。なお、支持基材44aおよび装着部取付板42cの対角寸法が巻バネ47の直径に比して小さい場合には、それぞれ巻バネ47との間に座金48を介在させることにより、巻バネ47の復元力が適正に支持基材44aおよび装着部取付板42cに伝達されるように構成するのがよい。本実施の形態1においては、装着部取付板42cと巻バネ47との間に座金48を介在させている。さらに、巻バネ47は、支持基材44aおよび装着部取付板42cに対して適正に復元力を作用させるため、支持基材44aと装着部取付板42cとを互いに離間する方向に付勢するものであるのが望ましい。
【0050】
被覆剥取具装着部42は、回転盤21の回転軸とほぼ平行な方向に長辺を有する長方形状の装着部底板42aと、その先端側(回転伝達部30から離れる側)の長辺の前後両側から立ち上げられた1対の装着部側板42bと、装着部底板42aの回転伝達部30側の短辺から立ち上げられた装着部取付板42cとを有し、装着部側板42bと装着部取付板42cとで囲まれた装着部底板42a上の領域に被覆剥取具10の装着台座16が着脱可能に保持される。
【0051】
装着部取付板42cの下方には、装着部取付板42cの内側(装着台座16側)に突出する係合突起42dが設けられ、また、装着部側板42bには貫通孔が穿設され、この貫通孔を挿通して、先端が装着部側板42bの内側(装着台座16側)に突出する方向に付勢された装着ピン42eが設けられている。係合突起42dおよび装着ピン42eは、それぞれ装着台座16の対応する位置に設けられた前述の係合16aと装着穴16cに係合するものである。
【0052】
装着ピン42eを付勢力に抗して装着部側板42bから退出するように操作して、装着台座16を被覆剥取具装着部42に受け入れ、係合突起42dを係合穴16bに係合させた状態で、さらに、装着ピン42eを付勢力によって装着部側板42bから進出するように操作して装着穴16cに係合することにより、被覆剥取具10(装着台座16)を被覆剥取具装着部42に装着固定することができる。また、被覆剥取具10(装着台座16)を被覆剥取具装着部42から取り外す場合には、装着ピン42eを付勢力に抗して装着部側板42bから退出するように操作して、単に装着台座16を被覆剥取具装着部42から引き抜けばよい。
【0053】
なお、被覆剥取具保持部40における回転盤21の回転中心から装着部底板42a上面までの鉛直方向の寸法d(図6を参照)は、被覆剥取具10における電線保持部13に収容される被覆電線Aの中心軸(すなわち、進退軸14の中間位置14c)から装着台座16底面までの鉛直方向の寸法と同一に設定されており、さらに、被覆剥取具保持部40における回転盤21の回転中心から装着部底板42aの中心線までの装着部底板42a上面に沿った方向の寸法s(図6を参照)は、被覆剥取具10における電線保持部13に収容される被覆電線Aの中心軸から装着台座16の中心線までの装着台座16底面に沿った方向の寸法と同一に設定されている。
【0054】
したがって、傾動部45が支持部44の軸心上に位置した状態(傾動部45が支持部44に対して傾動していない状態であり、電線保持部13の中心が回転盤21の回転中心線上に位置する状態)で、被覆電線Aの中心軸に対して垂直の方向から電線保持部13および電線収容空間21aに被覆電線Aを導入しようとする場合、回転盤21の回転軸心は、電線保持部13に収容される被覆電線Aの中心軸上に位置することになる。
【0055】
本実施の形態1の被覆剥取装置1では、傾動部45が支持部44に対して傾動可能な構成を採っており、遠隔操作棒の先端に連結された被覆剥取装置1(被覆剥取具10)を操作して電線保持部13に被覆電線Aを導入した後は、必ずしも被覆電線Aの中心軸に対して垂直の方向から操作する必要はなく、傾動部45が支持部44に対して傾動させた状態で被覆剥取装置1(回転駆動具20)を操作して電線収容空間21aに被覆電線Aを導入することができる。
【0056】
さらに、傾動部45を支持部44に対して傾動させて、被覆電線Aの中心軸と回転盤21の回転軸心とが一致していない場合であっても、絶縁操作棒2の回動操作による回転力が回転伝達部30および被覆剥取具保持部40を介して被覆剥取具10に伝達され、被覆剥取具10を被覆電線Aの中心軸回りに回転させることができる。
【0057】
したがって、このような被覆剥取装置1によれば、空中に架設された被覆電線Aに対して遠隔操作棒2に連結された被覆剥取装置1を地上あるいは作業車上から、被覆電線Aを電線保持部13および電線収容空間21aに収容した後、最も作業しやすい姿勢と角度で遠隔操作棒2の回動操作により回転盤21を回転させるだけで、被覆剥取具保持部40が傾動して被覆剥取具10を被覆電線Aの中心軸回りに回転させることができるため、容易に被覆電線Aの絶縁被覆Bを剥ぎ取ることができる。すなわち、従来の被覆剥取装置100では必要であった、被覆剥取装置100を被覆電線Aに対してほぼ垂直な方向から接近させ、電線保持部13および電線収容空間21aの中心軸(回転盤21の回転軸心)を被覆電線Aの中心軸にほぼ沿わせた状態で被覆電線Aを導入するとともに、その状態を維持したまま回転盤21を回転させて、絶縁被覆Bを剥ぎ取るといった手順を踏む必要がなく、作業性を向上させることができる。また、回転盤21を回転させ、絶縁被覆Bを剥ぎ取る過程において、被覆電線Aを歪ませることがないため、被覆電線Aの芯線Cを傷付けることがない。
【0058】
また、遠隔操作棒2の回動操作により回転盤21を回転させ、被覆剥取具10を被覆電線Aの中心軸回りに回転させて絶縁被覆Bを剥ぎ取る過程においても、傾動部45(被覆剥取具10)が支持部44(回転駆動具20)に対して傾動可能に軟弾性的に支持されているため、被覆剥取具10の回転動作に付随して生じる動きに追随でき、その応答性を高めることができる。
【0059】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る被覆剥取装置1’の構造について、図9および図10に基づき説明する。図9は、本発明の実施の形態2に係る被覆剥取装置の傾動連結部の構造を説明するための図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図であり、図10は、本発明の実施の形態2に係る被覆剥取装置の傾動連結部の動作を説明するための説明図であり、(a)は電線保持部および電線収容空間に被覆電線を収容するときの状態、(b)、(c)、(b’)および(c’)は回転盤を回転させて絶縁被覆を剥ぎ取るときの状態を示す。実施の形態2に係る被覆剥取装置1’は、傾動連結部(被覆剥取具保持部50)が実施の形態1に係る被覆剥取装置1における態様と異なっており、ここでは主にその相違点について説明する。
【0060】
被覆剥取具保持部50は、この被覆剥取具保持部50を回転盤保持部26の外側面に取り付けられる取付部51と、取付部51に固定される支持基材54aから回転盤21の回転軸心に平行な方向に立設され、その回転軸心に沿った方向に長いスライド用長孔54cが形成されたガイド部材54bを有する支持部54と、ガイド部材54bのスライド用長孔54cに係合する係合突起55bが形成された傾動部材55aを有し、この係合突起55bを支点として取付部51に対して傾動可能に支持される傾動部55と、傾動部55の先端に固定され、被覆剥取具10を着脱可能に保持する被覆剥取具装着部52とを備えて構成されている。本実施の形態2の被覆剥取装置1’において、傾動連結部53は、支持部54と、傾動部55とによって構成されている。
【0061】
取付部51は、回転盤保持部26に近い一方端が回転盤保持部26の外側面にねじで固定されるとともに、他方端が回転盤21の回転中心から離れる方向(半径方向)に延出され、その下方に支持部54の支持基材54aが固定されている。支持部54は、一対のガイド部材54bが支持基材54aから回転盤21の回転軸心に平行な方向(被覆剥取具装着部52の方向に向けて)に立設されており、このガイド部材54bの中央に回転盤21の回転軸心に沿った方向に長い寸法をもつスライド用長孔54cが設けられている。
【0062】
また、傾動部55は、傾動部材55aを有し、傾動部材55aの中央にスライド用長孔54cに係合する係合突起55bが設けられている。そして、スライド用長孔54cに係合突起55bが係合した状態で、傾動部材55aの内側面は、装着部取付板52cの横側面および装着部側板52bの外側面に当接し、係合突起55bがスライド用長孔54cから脱離しないようにされている。このように係合突起55bがスライド用長孔54cに係合することによって、傾動部55(傾動部55に固定される被覆剥取具装着部52および被覆剥取具10)が係合突起55bを支点にして支持部54(取付部51)に対して傾動可能な状態で連結されている。そして、傾動部材55aの先端側(回転伝達部30から離れる側)は被覆剥取具装着部52(具体的には装着部取付板52c)に固定されている。これにより、係合突起55bはスライド用長孔54c内をその長さ方向に沿って摺動することができ、この摺動に伴って被覆剥取具装着部52と取付部51との間の距離を可変とすることができる。
【0063】
さらに、被覆剥取具装着部52は、実施の形態1に係る被覆剥取装置1における被覆剥取具装着部42と同様に構成されており、ここでは重複する説明を省略するが、ただ、実施の形態2に係る被覆剥取装置1’においては、装着部取付板52cの幅寸法(回転軸心に垂直な方向)が前後の装着部側板52bの外側面間の距離まで拡げられている点で相違している。これにより、前述したように、傾動部材55aの内側面が、装着部取付板52cの横側面および装着部側板52bの外側面に当接し、傾動あるいは摺動に際して傾動部材55aが案内支持されるため、電線保持部13への被覆電線Aの導入あるいは回転盤21の回転に伴い、被覆剥取具10の振れるのを抑止している。
【0064】
このような被覆剥取装置1’によれば、実施の形態1の被覆剥取装置1と同様、傾動部55が支持部54に対して傾動可能な構成を採っており、被覆電線Aを電線保持部13および電線収容空間21aに収容した後は、必ずしも被覆電線Aの中心軸に対して垂直の方向から作業する必要はなく、被覆電線Aの中心軸と回転盤21の回転軸心とが一致していない場合であっても、絶縁操作棒2の回動操作による回転力が回転伝達部30を介して被覆剥取具10に伝達され、被覆剥取具10を被覆電線Aの中心軸回りに回転させることができ、作業性を向上させることができる。
【0065】
さらに、被覆剥取装置1’によれば、係合突起55bがスライド用長孔54c内を摺動することにより、被覆剥取具装着部52と取付部51との間の距離を可変とすることができる。このことによって、被覆電線Aの中心軸回りに回転する被覆剥取具10の回転動作に付随して生じる動きに追随でき、特に、被覆電線Aの中心軸方向に沿った動きに対して応答性を高めることができる。
【0066】
以上、本発明の被覆剥取装置について説明したが、本発明の技術的態様は実施の形態1および2に記載した内容に限定されるものではない。
【0067】
すなわち、上記の実施の形態1では、傾動連結部43を、支持部44と、傾動部45と、支持部44と傾動部45とを連結する挿通ピン46と、これら内包する状態で配設される巻バネ47(軟弾性支持部材)とを用いて構成し、上記の実施の形態2では、傾動連結部53を、支持部54と、支持部54のスライド用長孔54cに係合する係合突起55bが設けられた傾動部55とを用いて構成したが、傾動連結部43はこれらの構成に限定されるものではない。傾動連結部43は、被覆剥取具保持部40(被覆剥取具10)を回転盤21の回転軸心に対して傾動可能な状態で支持するものであればよい。
【0068】
上記の実施形態1では、軟弾性支持部材として巻バネ47を用いて傾動連結部43を構成したが、他のバネ部材により被覆剥取具保持部40(被覆剥取具10)を軟弾性的に支持することができれば、そのような他のバネ部材を用いてもよい。
【0069】
また、上記の実施の形態2では、支持部54のスライド用長孔54cに傾動部55の係合突起55bが係合することにより、傾動連結部53を構成したが、さらに、支持部54と傾動部55とを内包する状態で配設されるバネ部材(軟弾性支持部材)が備えられてもよい。これによって、さらに、被覆電線Aの中心軸回りに回転する被覆剥取具10の回転動作に付随して生じる動きに対する応答性を高めることができる。
【0070】
さらに、上記の実施の形態1および2では、回転伝達部30が第1および第2のベベルギア33、34とピニオン37とを有する構成を示したが、ピニオン37を省略して、回転伝達部30に設けられた別の回転伝達機構を介して遠隔操作棒2の回動操作手段からの回転力が回転盤21に伝達されるように構成してもよい。また、第1ベベルギア33と第2ベベルギア34についても、別の回転伝達機構を用いることにより遠隔操作棒2の回動操作手段からの回転力が回転盤21に伝達されるように構成してもよい。
【0071】
また、上記の実施の形態1では、回転盤21には、その電線挿脱口21bを開閉するため、揺動可能な開閉歯車片22を設け、ボールプランジャ機構24a、24bによりそれぞれ電線挿脱口21bの開状態および閉状態で開閉歯車片22を保持する構成を示したが、ボールプランジャ機構24a、24bは保持手段の一例であり、他の保持手段により電線挿脱口21bの開状態および閉状態で開閉歯車片22を保持するものであってもよい。また、保持手段に加えて、トーションバネ等の付勢手段を用いて、保持手段および付勢手段により電線挿脱口21bの開状態および閉状態で開閉歯車片22を保持するものであってもよい。
【0072】
例えば、電線挿脱口21bの揺動軸23近辺にボールプランジャ機構を設け、これにより電線挿脱口21bの開状態で開閉歯車片22を保持するとともに、揺動軸23にトーションバネ等の付勢手段を設けて、これにより開閉歯車片22を回転軸心方向に付勢することにより電線挿脱口21bの閉状態で開閉歯車片22を保持するように構成してもよい。さらに、トーションバネ等の付勢手段により開閉歯車片22を回転軸心から離間する方向に付勢することにより電線挿脱口21bの開状態で開閉歯車片22を保持するとともに、ボールプランジャ機構等の保持手段により電線挿脱口21bの閉状態で開閉歯車片22を保持するように構成してもよい。
【0073】
さらに、開閉歯車片22の形態やそれに対応した付勢手段の形態、付勢方向についても適宜変更可能である。例えば、開閉歯車片22が円周方向に摺動することにより電線挿脱口21bを開閉するように構成してもよく、この場合には、付勢手段が開閉歯車片22を円周方向の一方向(開閉歯車片22により電線挿脱口21bを閉止あるいは開放する方向)に付勢するように構成し、ボールプランジャ機構等の保持手段が開閉歯車片22を電線挿脱口21bの閉状態あるいは開状態で保持するように構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の概要を説明するための斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の構造を説明するための正面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の被覆剥取具の構造を説明するための、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の被覆剥取具を回転駆動具に装着するための構造を説明するための斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の傾動連結部の構造を説明するための、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の回転駆動具の構造を説明するための側面図(電線挿脱口が開の状態)である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の回転駆動具の構造を説明するための側面図(電線挿脱口が閉の状態)である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る被覆剥取装置の傾動連結部の動作を説明するための説明図であり、(a)は電線保持部および電線収容空間に被覆電線を収容するときの状態、(b)、(c)、(b’)および(c’)は回転盤を回転させて絶縁被覆を剥ぎ取るときの状態を示す。
【図9】本発明の実施の形態2に係る被覆剥取装置の傾動連結部の構造を説明するための、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る被覆剥取装置の傾動連結部の動作を説明するための説明図であり、(a)は電線保持部および電線収容空間に被覆電線を収容するときの状態、(b)、(c)、(b’)および(c’)は回転盤を回転させて絶縁被覆を剥ぎ取るときの状態を示す。
【図11】従来の被覆剥取具の構造を説明するための、正面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 被覆剥取装置
2 遠隔操作棒
10 被覆剥取具
11、12 保持部材
13 電線保持部
16 装着台座
17 皮剥ぎ刃
20 回転駆動具
21 回転盤
21a 電線収容空間
21b 電線挿脱口
27 ケース
30 回転伝達部(回転伝達手段)
40、50 被覆剥取具保持部
41、51 取付部
42、52 被覆剥取具装着部
43、53 傾動連結部
44、54 支持部
45、55 傾動部
44c、45b 貫通孔
46 挿通ピン(結合ピン)
47 巻バネ(軟弾性支持部材)
54c スライド用長孔
55b 係合突起
A 被覆電線
B 絶縁被覆
C 芯線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する内面により電線保持部が形成され、被覆電線の中心軸に直行する2方向から被覆電線を前記電線保持部に収容する1対の保持部材と、該1対の保持部材に保持される被覆電線に対して所定の前進角をもって前記電線保持部に突出する皮剥ぎ刃と、を備えた被覆剥取具を具備するとともに、
外周の一部を切り欠いて、中央部に被覆電線を挿脱可能に収容する電線収容空間が形成され、切り欠いた部分に電線挿脱口が形成されてなる回転盤と、該回転盤を回転可能に保持するケースと、該ケースを支持するとともに、遠隔操作棒の先端に取り付けられ、かつ、該遠隔操作棒の回動軸の回転を前記回転盤の回転に伝達する回転伝達手段と、前記被覆剥取具を前記回転盤に傾動可能に取り付ける被覆剥取具保持部と、を備えた回転駆動具を具備し、
前記遠隔操作棒の回動操作による回転力が前記回転駆動具を介して前記被覆剥取具に伝達され、前記被覆電線の中心軸と前記回転盤の回転軸心とが一致していない場合であっても、前記被覆剥取具を前記被覆電線の中心軸回りに回転させるように構成したことを特徴とする被覆剥取装置。
【請求項2】
前記被覆剥取具保持部は、該被覆剥取具保持部を前記回転盤に取り付ける取付部と、前記被覆剥取具を着脱可能に保持する被覆剥取具装着部と、前記取付部と前記被覆剥取具装着部とを連結し、前記被覆剥取具装着部を前記取付部に対して傾動可能に支持する傾動連結部と、を備えて構成される請求項1記載の被覆剥取装置。
【請求項3】
前記傾動連結部は、前記取付部に取り付けられ、前記被覆剥取具保持部の方向に起立する支持部と、前記被覆剥取具保持部に取り付けられ、前記取付部の方向に起立する傾動部と、該傾動部が前記支持部に対して傾動可能な状態で前記支持部と前記傾動部とを連結する結合ピンと、前記支持部と前記傾動部とを軟弾性的に支持する軟弾性支持部材と、を備えて構成され、
前記被覆剥取具保持部が、前記傾動部に取り付けられ、前記取付部に対して前記結合ピンを支点として傾動可能に支持される請求項2記載の被覆剥取装置。
【請求項4】
前記傾動連結部は、前記取付部に取り付けられ、前記被覆剥取具保持部の方向に起立して、その起立部分にガイド用長孔を有するガイド部と、前記被覆剥取具保持部に取り付けられ、前記取付部の方向に起立して、その起立部分に前記ガイド用長孔に係合する係合突起を有する傾動部と、を備えて構成され、
前記被覆剥取具保持部が、前記傾動部に取り付けられ、前記取付部に対して前記係合突起を支点として傾動可能に支持されるとともに、前記係止突起が前記ガイド用長孔内を摺動することにより、前記被覆剥取具装着部と前記取付部との間の距離を可変とした請求項2記載の被覆剥取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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