説明

被覆容器

【課題】
容器本体の軽量化ができるとともに、剛性を備え、しかも、容器本体同士、及び被覆容器同士を重ね合わせた場合に、スタッキングを防止することができる被覆容器を提供する。
【解決手段】
容器本体14のコーナ22の上部には、フランジ12の内縁部12bよりも外側に膨出し、係止面30を有する膨出部28を有し、同一構成の容器本体14同士が積み重ねされた際、一方の容器本体14の膨出部28の係止面30が他方の容器本体14のフランジ12に係止する。各コーナ22の下部に、胴部26の内方に向かう段部32が容器本体14の底壁24から所定高さに位置する。胴部カバー体20の下端の高さが段部32の高さよりも低くされ、同一構成の被覆容器10同士が積み重ねされた際、一方の被覆容器10の胴部カバー体20の下端が他方の被覆容器10の段部32に係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等を収容する被覆容器に関し、詳しくは、成形面倍率が大きな深絞り容器を容器本体とし、該容器本体の胴部の側壁面に胴部カバー体が剥離可能に取付けられた被覆容器に関する。
【背景技術】
【0002】
側壁面が正方形に近く、成形面倍率が、例えば、3.5〜6倍のように大きな深絞り容器を作るためには、プラグアシスト法と呼ばれる技術が採用されている。この技術では、一定の厚みの合成樹脂シートを用いて、容器の側壁や底壁となる部分へできるだけ、均一に厚みを分散させて剛性を保つことが求められる。なかでも味噌容器は成形面倍率が高く、1kg程度の内容物を充填、密封包装し、輸送、陳列させるなど過酷な使用に耐える頑丈な剛性性能が必要となる。当然使用される合成樹脂シートは厚手で、一般的には、800〜1000マイクロメートル(ミクロン)程度が用いられている。
【0003】
従来は、素材にもよるが、因みに1kg用容器では、15〜20g、750g用では、14〜19g、500g用容器では、11〜16gの容器1個当たりの樹脂重量が必要となる。これはシートフォーミングで成形される汎用容器のなかでも、樹脂材料が重い用途の一つである。合成樹脂シートの厚みを減らして容器を軽量化しても輸送時の容器変形を考慮すると650〜700マイクロメートル(ミクロン)程度が限界と考えられている。
【0004】
なお、特許文献1には、胴部カバー体を合成樹脂製の容器本体の胴部に接着した二重容器において、下部外側面に周回する段部を設けた構成が開示されている。特許文献1は、容器本体は深絞り容器ではないが、商品充填時に多数個積み重ねられたときにおいて、段部上に重ねられた二重容器が係止すること、及び胴部カバー体の表面に印刷された印刷インキ層により滑りやすくなっていることによりスタッキングが生ずることが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−40349号公報 段落0011、0016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、世界的に石油が高騰し、合成樹脂の値上がりを加速させており、又、限りある石油を原料とする合成樹脂は大切に使用しなければならない資源である。従って、食品の包装に大量に使用されている合成樹脂容器は少しでも軽量化することが求められている。
【0007】
容器を軽量化するためには、使用する合成樹脂シートを薄くすればよいが、単に薄くするだけでは流通、陳列販売時に必要な剛性の確保ができない問題がある。
又、特許文献1では、容器本体は深絞り容器ではないが、商品充填時に多数個済重ねられたときにおいて、段部に上に重ねられた二重容器が係止すること、及び胴部カバー体の表面に印刷された印刷インキ層により滑りやすくなっていることによりスタッキングが生ずることが防止されている。しかし、胴部カバー体が外装されていない状態で、容器本体が多数個積み重ねられた際においては、胴部カバー体の印刷インキ層の滑り効果は期待できないため、スタッキングが発生する問題がある。
【0008】
本発明の目的は、容器本体の軽量化ができるとともに、剛性を備え、しかも、容器本体同士、及び被覆容器同士を重ね合わせにした場合に、スタッキングを防止することができる被覆容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、横断面多角形状をなすように胴部に複数のコーナを有して、合成樹脂にて形成された容器本体であって、同一構成の容器本体同士が重ね合わせ可能に形成された容器本体と、前記胴部の外面全周に亘って紙製の胴部カバー体が剥離可能に取付けられ、前記胴部の上部にフランジが外方に向かって形成された被覆容器において、前記各コーナの上部には、当該コーナの前記フランジの内縁部よりも外側に膨出し、下面に係止面を有する膨出部を有し、同一構成の容器本体同士が積み重ねされた際、一方の容器本体の膨出部の係止面が他方の容器本体のフランジに係止可能とされ、前記各コーナの下部には、前記胴部の内方に向かう段部が前記容器本体の底壁から所定高さに位置するように形成され、前記胴部カバー体の下端の高さが少なくとも前記各コーナでは該段部の高さよりも低くされて、同一構成の被覆容器同士が積み重ねされた際、一方の被覆容器の胴部カバー体の下端が他方の被覆容器の段部に係止可能とされていることを特徴とする被覆容器を要旨とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記胴部カバーの下端全体が、前記容器本体の底壁からの高さが同一となるように形成され、段部の胴部カバー体を係止する面から、前記胴部カバー体の下端までの離間距離が、前記フランジの上面から、前記膨出部におけるフランジに係止する係止面までの距離よりも長く形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記容器本体の各側壁は、底壁に行くほど胴部を形成する側壁で区切られる空間の横断面積が小さくなるようにテーパー状に形成され、前記膨出部が逆テーパー状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記胴部カバー体が厚紙で形成されていることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記容器本体の材質には、ガスバリア性の材質を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、コーナの上下にそれぞれ膨出部及び段部が設けられているため、容器本体の剛性を高めることができ、合成樹脂製の容器本体の側壁の厚みを薄くして、軽量化ができる。
【0014】
又、膨出部、段部が、コーナにのみ設けられているため、リブをコーナ以外の側壁に設ける場合と異なり、容器本体の側壁を均一な厚みにして側壁の厚みを薄くすることができる。その結果、使用する合成樹脂の量を少なくすることができ、製造コストを低減することができる。
【0015】
又、容器本体に対して胴部カバー体が取付けされる前の工程では、複数の容器本体同士が、積み重ねされた状態にされる。このとき、積み重ねされて下側に位置する容器本体のフランジの内周縁に、上側に位置する容器本体の膨出部が係止されるため、この状態では、積み重ねされた容器本体同士の側壁面間の密着が防止され、積み重ねられた容器本体群の中から1つの容器本体を取り出す際、スムーズに容器本体を取り出すことができ、スタッキングが生ずることがない。
【0016】
又、容器本体に対して胴部カバー体が取付けされ、被覆容器に収容物を収容する前の状態では、複数の被覆容器同士が、積み重ねされた状態にされる。このとき、積み重ねされて下側に位置する被覆容器の段部に、上側に位置する被覆容器の胴部カバー体の下端が係止されるため、この状態では、積み重ねされた被覆容器同士の側壁面間の密着が防止され、スタッキングが生ずることがない効果を奏する。このように、請求項1の発明では、各コーナに上部、下部にそれぞれ設けられた膨出部と、段部とにより、容器本体同士の積み重ね時及び被覆容器同士の積み重ね時において、スタッキングをそれぞれ防止できる。
【0017】
請求項2の発明によれば、複数の容器本体同士が、積み重ねされた状態にされた際、積み重ねされて下側に位置する容器本体のフランジの内周縁に、上側に位置する容器本体の膨出部が係止されるため、積み重ねされた容器本体同士の側壁面間の密着が防止され、積み重ねられた容器本体群の中から1つの容器本体を取り出す際、スムーズに容器本体を取り出すことができ、スタッキングが生ずることがない効果を奏する。
【0018】
請求項3の発明によれば、膨出部が、逆テーパー状に形成されていることにより、請求項1又は請求項2の作用効果を容易に実現できる。
請求項4の発明によれば、前記胴部カバー体が厚紙で形成されていることにより、容器本体の側壁の厚みが薄くても、胴部カバー体により被覆容器の全体の剛性を上げることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、前記容器本体の材質にガスバリア性の材質を含むことにより、外部からの酸素の浸入を抑制でき、酸化を嫌う収納物、例えば酸化変色しやすく、重量物である味噌を収納することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の被覆容器を斜め上方から見た斜視図。
【図2】同じく被覆容器を斜め下方から見た斜視図。
【図3】同じく被覆容器の平面図。
【図4】同じく被覆容器の底面図。
【図5】同じく容器本体を斜め下方から見た斜視図。
【図6】同じく要部拡大断面図。
【図7】同じく容器本体と胴部カバー体の分解斜視図。
【図8】同じく容器本体同士を重ね合わせた状態の断面図。
【図9】同じく被覆容器同士を重ね合わせた状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した被覆容器の実施形態を図1〜9を参照して説明する。図1、図7、図9に示すように、被覆容器10は、開口部12aに外方へ突設されたフランジ12を有する逆四角円錐台状の容器本体14と、該容器本体14の四方の各側壁16の外壁面16aに対して剥離可能に接着された胴部カバー体20とにより構成されている。本実施形態では、容器本体14が逆四角円錐台状に形成されることにより、容器本体14の横断面形状が四角形である多角形状としている。そして、胴部カバー体20により、容器本体14の胴部26が被覆されている。容器本体14は、真空成型におけるプラグアシスト法により、合成樹脂シートが深絞り成形され、深絞り容器として形成されている。
【0022】
前記合成樹脂シートは、例えば、厚み300〜600マイクロメートルのポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸等の合成樹脂の単層シートからなる。
【0023】
なお、前記単層シートの代わりに、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等からなるベース樹脂層に対して、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデンなどのガスバリア性を有する樹脂(又は、フィルム)を共押し出し、又は貼り合わせで積層して、総計厚みが300〜600マイクロメートルの複合シートとし、該複合シートを合成樹脂シートとしてもよい。
【0024】
又、前記合成樹脂シートは、厚み1〜5mmの発泡スチレン、発泡ポリプロピレン、ポリ乳酸等の合成樹脂の単層シートとしてもよい。又は、各々にエチレンビニルアルコールやポリ塩化ビニリデンなどのガスバリア性を有する樹脂やフィルムを共押し出しや張り合わせで積層し、総計厚みが1〜5mmの複合シートを合成樹脂シートとしてもよい。
【0025】
容器本体14は、前述のように逆四角円錐台状に形成されていて、底壁24へ行くほど胴部26を形成する側壁16で区切られる空間の横断面積が小さくなるように各側壁16がテーパー状に形成されている。各側壁16がテーパー状に形成されているため、収納物を容易に収納できるとともに、容器同士を上下に積み重ねた際に容易に積み重ね可能となっている。
【0026】
各側壁16間に形成された各コーナ22は図3に示すようにR状に形成されている。又、図5、及び図6に示すように各コーナ22の上部において、フランジ12の直下方には、フランジ12の内縁部12b(図6参照)よりも外側に突出された膨出部28が設けられている。膨出部28は、前記容器本体14の各側壁16とは反対の逆テーパー状に形成され、下部側へ行くほど、外方へ突出されている。膨出部28の下面は係止面30とされ、図8に示すように同一構成の容器本体14同士が積み重ねされて嵌合された際、一方の容器本体14の膨出部28の係止面30が他方の容器本体14のフランジ12の内縁部12bに係止可能とされている。
【0027】
又、図3、図4、及び図5に示すように各コーナ22の下部において、底壁24と連結部近傍には、凹部34が形成されることにより、段部32が胴部26の内方に向かうように形成されている。段部32は、底壁24から、所定高さに位置するように形成されている。前記所定高さは、任意の高さでよいが、底壁24から数センチ以内が好ましい。なお、高さは、底壁24の接地面(すなわち、最も低い部分)からの高さである(以下、同じ)。
【0028】
前記胴部カバー体20は、図7に示すように、容器本体14の胴部26の側壁面に沿うように、逆四角円錐台の筒状に形成されている。
胴部カバー体20は、例えば、材質として100g/m2〜300g/m2の厚紙が使用されている。前記厚紙の表面又は裏面のいずれか一方の面に収納物に関連する情報が印刷され、その上に耐水性のオーバーコートが施される。
【0029】
なお、オーバーコートの代わりに、OPP(軸延伸ポリプロピレン)フィルムや、O−PET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどを厚紙に貼り合わせてもよい。又、前記厚紙の表面に対して、予め裏面に前記情報が印刷されたOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムや、O−PET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどを厚紙に貼り合わせてもよい。これらは例示であって、限定されるものではない。
【0030】
本実施形態の胴部カバー体20の一側壁には、内部視認用の表示窓38が透設されている。そして、容器本体14の各側壁16に接着された胴部カバー体20は、下端全体の高さが、前記段部32の高さよりも低くされて、同一構成の被覆容器10同士が積み重ねされた際、一方の被覆容器10の胴部カバー体20の下端が他方の被覆容器10の段部32に係止可能とされている(図9参照)。すなわち、胴部カバー体20の下端全体が、容器本体14の底壁24からの高さが同一となるように形成され、段部32の胴部カバー体20を係止する面から、胴部カバー体20の下端までの離間距離aが、フランジ12の上面から、膨出部28におけるフランジ12に係止する係止面30までの距離bよりも長く形成されている。
【0031】
このことにより、図9に示すように、同一構成の被覆容器10同士が積み重ねされた際には、下に位置する被覆容器10の段部32に対して、上に位置する被覆容器10の胴部カバー体20の下端が係止され、上に位置する被覆容器10の膨出部28の係止面30と、下に位置する被覆容器10のフランジ12の内縁部12bとは離間する。
【0032】
胴部カバー体20は、容器本体14の各側壁16に対して剥離性のある公知の接着剤により接着されている。
胴部カバー体20において、容器本体14の各コーナ22に相対する部分には、上下方向の全長に亘って二本の易破断線40の間に帯状体の分離予定部42が形成されている。胴部カバー体20の下端である分離予定部42の下端44は、図9に示すように凹部34に臨んでおり、下端44と凹部34の壁面間には隙間Sが形成されている。
【0033】
二本の易破断線40は、ミシン目で形成してもよく、鉤状の切込を所定ピッチで形成してもよく、限定されるものではない。又、易破断線40は、貫通してもよく、胴部カバー体20厚み方向の途中まで切込を形成したものでもよい。又、前記切込は、裏面側から厚み方向の途中まで切込みしてもよい。
【0034】
胴部カバー体20において、各コーナ22に相対する部分の上端には、凹状の切欠46が形成されている。前記膨出部28は、図2に示すように、切欠46を介して外部に突出されている。このように、膨出部28が、切欠46を介して外部に突出されることにより、胴部カバー体20を容器本体14に外装する際に、胴部カバー体20の位置決めにすることができる。そして、切欠46以外の胴部カバー体20の上端は、容器本体14のフランジ12の下面に当接されている。又、切欠46の上端は、図2に示すように係止面30に当接されている。
【0035】
(作用)
さて、上記ように形成された被覆容器10の作用を図7、図8、及び図9を参照して説明する。
【0036】
まず、容器本体14が、真空成型におけるプラグアシスト法により、合成樹脂シートが深絞り成形された後、容器本体14同士が積み重ねされる。この場合、図8に示すように、下に位置する容器本体14内に上に位置する容器本体14が嵌入される。このとき、下に位置する容器本体14のフランジ12の内縁部12bに対して、上に位置する容器本体14の膨出部28の係止面30が係止される。この係止状態では、積み重ねされた容器本体14同士の側壁16間は密接することがなく、若干の間隙が形成される。又、図8に示すように、容器本体14同士の底壁24間にも間隙が形成される。このため、後に、積み重ねされた状態の容器本体14を1個ずつ取り出す際に、スムーズに取り出すことができ、スタッキングが防止される。なお、図8は説明の便宜上、2個の容器本体14のみ重ね合わせたものを図示しているが、実際には、多数個の容器本体14が積み重ねされる。
【0037】
次に、図7に示すように、胴部カバー体20の内面に予め接着剤が塗布された状態で、図8に示す状態から取り出された容器本体14が、前記胴部カバー体20内に挿入される。この場合、各切欠46内に各膨出部28が入りこむようにして挿入し、膨出部28の係止面30、及びフランジ12の下面に切欠46の上面、胴部カバー体20の上端が係止されるまで挿入される。この状態で、胴部カバー体20が容器本体14に対して貼着され、被覆容器10となる。
【0038】
この後、図9に示すように、複数の被覆容器10同士が、積み重ねされる。この場合、図9に示すように、下に位置する被覆容器10の段部32に対して、上に位置する被覆容器10の胴部カバー体20の下端が係止され、上に位置する被覆容器10の膨出部28の係止面30と、下に位置する被覆容器10のフランジ12の内縁部12bとは離間し、テーパー嵌合による強い嵌合が防止される。なお、図9は、説明の便宜上、2個の被覆容器10のみ重ね合わせたものを図示しているが、実際には、多数個の被覆容器10が積み重ねされる。
【0039】
この係止状態では、積み重ねされた被覆容器10同士の胴部カバー体20と側壁16間は密接することがなく、若干の間隙が形成される。又、図9に示すように、下に位置する被覆容器10のフランジ12と上に位置する被覆容器10の膨出部28の係止面30とも離間し、両者間に若干の間隙が形成される。このため、後に、積み重ねされた状態の被覆容器10を、収納物を収納するために1個ずつ取り出す際に、スムーズに取り出すことができ、スタッキングが防止される。 以上のように構成された被覆容器10は、下記の特徴がある。
【0040】
(1) 本実施形態の容器本体14の各コーナ22の上部には、フランジ12の内縁部12bよりも外側に膨出し、下面に係止面30を有する膨出部28を有し、同一構成の容器本体14同士が積み重ねされた際、一方の容器本体14の膨出部28の係止面30が他方の容器本体14のフランジ12に係止可能とされている。そして、各コーナ22の下部には、胴部26の内方に向かう段部32が容器本体14の底壁から所定高さに位置するように形成され、胴部カバー体20の下端の高さが各コーナ22では該段部32の高さよりも低くされて、同一構成の被覆容器10同士が積み重ねされた際、一方の被覆容器10の胴部カバー体20の下端が他方の被覆容器10の段部32に係止可能とされている。この結果、コーナ22の上下にそれぞれ膨出部28及び段部32が設けられているため、容器本体14の剛性を高めることができ、合成樹脂製の容器本体14の側壁の厚みを薄くして、軽量化ができる。又、膨出部28、段部32が、各コーナ22にのみ設けられているため、リブをコーナ以外の側壁に設ける場合と異なり、容器本体14の側壁16を均一な厚みにして側壁の厚みを薄くすることができる。その結果、使用する合成樹脂の量を少なくすることができ、製造コストを低減することができる。
【0041】
又、容器本体14に対して胴部カバー体20が取付けされる前の工程では、複数の容器本体14同士が、積み重ねされた状態にされる。このとき、積み重ねされて下側に位置する容器本体14のフランジ12の内周縁に、上側に位置する容器本体14の膨出部28が係止されるため、この状態では、積み重ねされた容器本体14同士の側壁16面間の密着が防止され、積み重ねられた容器本体14群の中から1つの容器本体14を取り出す際、スムーズに容器本体14を取り出すことができ、スタッキングが生ずることがない。
【0042】
又、容器本体14に対して胴部カバー体20が取付けされ、被覆容器10に収容物を収容する前の状態では、複数の被覆容器10同士が、積み重ねされた状態にされる。このとき、積み重ねされて下側に位置する被覆容器10の段部32に、上側に位置する被覆容器10の胴部カバー体20の下端が係止されるため、この状態では、積み重ねされた被覆容器10同士の側壁面間の密着が防止され、スタッキングが生ずることがない効果を奏する。このように、本実施形態では、各コーナ22に上部、下部にそれぞれ設けられた膨出部28と、段部32とにより、容器本体14同士の積み重ね時及び被覆容器10同士の積み重ね時において、スタッキングをそれぞれ防止できる。
【0043】
(2) 本実施形態では、胴部カバー体20の下端全体が、容器本体14の底壁24からの高さが同一となるように形成され、段部32の胴部カバー体20を係止する面から、胴部カバー体20の下端までの離間距離aが、フランジ12の上面から、膨出部28におけるフランジ12に係止する係止面30までの距離bよりも長く形成されている。
【0044】
この結果、複数の容器本体14同士が、積み重ねされた状態にされた際、積み重ねされて下側に位置する容器本体14のフランジ12の内周縁に、上側に位置する容器本体14の膨出部28が係止されるため、積み重ねされた容器本体14同士の側壁16面間の密着が防止され、積み重ねられた容器本体14群の中から1つの容器本体14を取り出す際、スムーズに容器本体14を取り出すことができ、スタッキングが生ずることがない効果を奏する。
【0045】
(3) 本実施形態では、容器本体14の各側壁16は、底壁24に行くほど胴部カバー体20を形成する各側壁16で区切られる空間の横断面積が小さくなるようにテーパー状に形成され、膨出部28は逆テーパー状に形成されている。この結果、膨出部28が、逆テーパー状に形成されていることにより、上記(1)、及び(2)の作用効果を容易に実現できる。
【0046】
(4) 本実施形態では、胴部カバー体20が厚紙で形成されていることにより、容器本体14の各側壁16の厚みが薄くても、胴部カバー体20により被覆容器10の全体の剛性を上げることができる。すなわち、厚紙からなる胴部カバー体20によ補強により、容器本体14は、垂直方向や、水平方向からの応力に耐える座屈強度及び収納物の保護性に十分な機能性を得ることができる。
【0047】
(5) 本実施形態の容器本体14の材質に、ガスバリア性の材質を含ませれば、外部からの酸素の浸入を抑制でき、酸化を嫌う収納物、例えば酸化変色しやすく、重量物である味噌を収納することが可能となる。例えば、味噌収納容器として本実施形態の被覆容器10を使用することができる。
【0048】
(6) 本実施形態では、分離予定部42を下端44側から引き起こすことにより、容易に易破断線40にて分離予定部42を切断することができる。
(7) 本実施形態では、分離予定部42の下端44と凹部34の壁面間には隙間Sが形成されている。この結果、分離予定部42を下端44側から引き起こすときに、隙間Sにより下端44に対する操作の指掛けを容易に行うことができる。
【0049】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 前記実施形態では、容器本体14が逆四角円錐台状に形成されることにより、容器本体14の横断面形状を四角形である多角形状としたが、横断面形状は四角形に限定されるものではない。5角形でもよく、6角形以上であってもよい。
【0050】
○ 前記実施形態では、胴部カバー体20の下端全体が、前記段部32の高さよりも低くされていたが、胴部カバー体20の下端全体において、各コーナ22に対応する下端部分のみを前記段部32の高さよりも低くしてもよい。
【実施例】
【0051】
フランジ部分で縦105mm×横105mm、底壁部分で縦90mm×横90mm、高さ85mmの容器寸法を有する容器本体の従来品と、実施例の剛性を比較した。
従来品の容器本体は、750g用味噌容器として成型されたものであり、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂単層900マイクロメートルを合成樹脂シートとして約19g使用した。従来品の容器本体のフランジ部分の厚さは250マイクロメートル、側壁の厚さは約300マイクロメートル、底壁の厚さは約350マイクロメートルであった。
【0052】
実施例品の容器本体は、400マイクロメートルの厚さのPET樹脂単層に、30マイクロメートルのEVOH(エチレンビニルアルコール)樹脂を接着性樹脂層(5マイクロメートル)を介して積層した複合シートを合成樹脂シートとして使用した。実施例品の容器本体のフランジ部分の厚さは250マイクロメートル、側壁の厚さは約150マイクロメートル、底壁の厚さは約200マイクロメートルであった。実施例品の容器本体の重さは約9gであった。なお、側壁のEVOH樹脂の膜厚は約10マイクロメートルとなり、味噌容器としてのガスバリア性は十分確保されていた。
【0053】
実施例では、さらに、胴部カバー体として、重量300g/m2の坪量のものを約9.5g使用して、容器本体の4方の側壁を覆うように接着して外装した。この胴部カバー体と容器本体からなる被覆容器の垂直座屈強度は全圧5Kgとなり、従来品のPET樹脂単層900マイクロメートルで成型された容器本体と同程度の耐圧強度を示した。
【符号の説明】
【0054】
10…被覆容器、12…フランジ、12a…開口部、14…容器本体、
16…側壁、16a…外壁面、20…胴部カバー体、22…コーナ、
24…底壁、26…胴部、28…膨出部、30…係止面、32…段部、
34…凹部、38…表示窓、40…易破断線、42…分離予定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面多角形状をなすように胴部に複数のコーナを有して、合成樹脂にて形成された容器本体であって、同一構成の容器本体同士が重ね合わせ可能に形成された容器本体と、前記胴部の外面全周に亘って紙製の胴部カバー体が剥離可能に取付けられ、前記胴部の上部にフランジが外方に向かって形成された被覆容器において、
前記各コーナの上部には、当該コーナの前記フランジの内縁部よりも外側に膨出し、下面に係止面を有する膨出部を有し、同一構成の容器本体同士が積み重ねされた際、一方の容器本体の膨出部の係止面が他方の容器本体のフランジに係止可能とされ、
前記各コーナの下部には、前記胴部の内方に向かう段部が前記容器本体の底壁から所定高さに位置するように形成され、前記胴部カバー体の下端の高さが少なくとも前記各コーナでは該段部の高さよりも低くされて、同一構成の被覆容器同士が積み重ねされた際、一方の被覆容器の胴部カバー体の下端が他方の被覆容器の段部に係止可能とされていることを特徴とする被覆容器。
【請求項2】
前記胴部カバー体の下端全体が、前記容器本体の底壁からの高さが同一となるように形成され、段部の胴部カバー体を係止する面から、前記胴部カバー体の下端までの離間距離が、前記フランジの上面から、前記膨出部におけるフランジに係止する係止面までの距離よりも長く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の被覆容器。
【請求項3】
前記容器本体の各側壁は、底壁に行くほど胴部を形成する側壁で区切られる空間の横断面積が小さくなるようにテーパー状に形成され、前記膨出部は逆テーパー状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被覆容器。
【請求項4】
前記胴部カバー体が厚紙で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の被覆容器。
【請求項5】
前記容器本体の材質には、ガスバリア性の材質を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の被覆容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−163199(P2010−163199A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8750(P2009−8750)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(593215829)アテナ工業株式会社 (28)
【出願人】(394022141)アイプラス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】