説明

被覆材及びそれを使用した収納物被覆容器

【課題】 収納物の上方突出部を合成樹脂フィルム又はシートに形成した柔軟な上向凸部で被覆することにより苺等の収納物の損傷を防止することを目的とする。
【解決手段】 青果物又は果実等の収納物の各々下部を複数配列収納可能な上面開口有底容器を設け、上記有底容器の上面開口部を被覆するための柔軟性のある合成樹脂フィルム又はシート(被覆材)に、上記配列収納物の各々上部を被覆し得る柔軟性のある上向凸部を塑性変形により複数成形し、上記合成樹脂フィルム又はシートの外周縁を上記有底容器の外側面に垂下附着させることにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皿状又は上面開口箱状容器内に下部を収納配列した青果物又は果実等の露出上部をフィルム等で被覆する被覆材及びそれを使用した収納物被覆容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、苺、リンゴ、桃、トマト等のほぼ球形青果物の下部を皿状又は上面開口箱状容器に並列収納し、上部を合成樹脂フィルム又は成形体で被覆する包装が用いられた(例えば特許文献1)。
【0003】
上記球形青果物の下部はそれぞれ皿状容器内に収納支持され、上部は上方に半球部分が突出するため柔軟な平坦フィルム(例えば特許文献1、図9)で被覆したが、果実等の容器上突出部(上面)は平坦フィルムで下方に押えられるため、果実等とフィルムとの接触部に傷みや変形が生じ易いという問題がある。
【0004】
硬質樹脂製の蓋を凸状に成形して複数の凸状部を形成し、該凸状部分に収納青果物(苺)の上部を収納して変形や崩れを防止するものも提案されているが、軟青果物(苺、トマト等)は移動時硬質樹脂による蓋と接触により擦過傷を生じ易いという問題がある(例えば特許文献1、図1)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−153934号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は苺、トマト等の柔軟青果物等の収納物の下部を合成樹脂皿状容器内に並べて収納し、該収納物の上方突出部を合成樹脂フィルム又はシートに形成した柔軟な上向凸部で被覆し、汚損を防止し、新鮮さを保持し得る被覆材を提供すると共に、上記被覆材により上記青果物のそれぞれ上部を安全に被覆して該青果物を安全に包装支持し得る収納物被覆容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、青果物又は果実等の収納物の各々下部を複数配列収納可能な上面開口有底容器の上面開口部を被覆するための柔軟性のある合成樹脂フィルム又はシートによる被覆材であって、上記被覆材のフィルム又はシート面に、上記容器内への配列収納物の各々上部を被覆し得る柔軟性のある上向凸部を塑性変形により複数成形したものであることを特徴とする被覆材により構成される。
【0008】
よって、このような被覆材を使用して青果物等が複数配列収納された上面開口有底容器の上面を被覆し、青果物等の上部を対応する上向凸部で被覆し、被覆材の外周縁を容器外側面に附着させることにより、青果物等を損傷することなく包装し得る。
【0009】
第2に、青果物又は果実等の収納物の各々下部を複数配列収納可能な上面開口有底容器を設け、上記有底容器の上面開口部を上記被覆材で被覆することにより、上記配列収納物の各々上部を上記上向凸部にて被覆し得るように構成し、かつ上記被覆材の外周縁を上記有底容器の外側面に垂下附着させることにより構成される上記第1記載の被覆材を使用した収納物被覆容器により構成される。
【0010】
合成樹脂フィルム又はシートによる被覆材の外周縁と上記有底容器の外側面に垂下附着する箇所は、例えば外周縁端部(3b〜3b10)に対応する接合部(4)とすることができる。このように構成すると、苺等の収納物の上部は合成樹脂フィルム又はシートの柔軟性のある上向凸部により被覆されるので、平面状のフィルムを収納物上面全体に被覆する場合に比較して、被覆時にフィルム面から収容物上部に加わる圧力を軽減して苺等の収納物の損傷を防止することができる。
【0011】
第3に、上記上向凸部を上記被覆材の縦横方向に複数配列成形し、上記被覆材における隣接する上記上向凸部間の境界部から被覆材の外周方向に延長した外周縁端部を、上記有底容器の外側面に垂下附着させる上記第2記載の収納物被覆容器により構成される。
【0012】
上記被覆材(合成樹脂フィルム又はシート)における隣接する上記上向凸部間の境界部から被覆材(フィルム又はシート)の外周方向に延長した外周縁端部は、例えば外周縁端部(3b〜3b10)により構成することができる。外周縁端部を上記有底容器の外側面に垂下附着させる部分は、例えば上記外周縁端部(3b〜3b10)に対応する接合部(4)とすることができる。このように構成すると、合成樹脂フィルム又はシートを附着する場合は、対向する外周縁端部に対応する一対の接合部(4,4)を多少下向きに牽引してフィルム又はシートを張設状態とするが、牽引される箇所が境界部からフィルム又はシートの外周方向に延長した部分であるため、フィルム又はシート上面から下向きに収容物上部に加わる圧力を軽減し得て苺等の収容物の損傷を防止することができる。
【0013】
第4に、上記被覆材の外周縁と上記有底容器外側面とを点溶着により附着させる上記第2又は3記載の収納物被覆容器により構成される。
【0014】
第5に、上記被覆材の外周縁と上記有底容器外側面とを粘着テープを介して附着させる上記第2又は3記載の収納物被覆容器により構成される。
【0015】
第6に、上記被覆材と上記有底容器外側面との附着箇所は、上記有底容器の対向する外側面上の対称位置であって、これら対称位置の附着箇所を上記被覆材の表面に沿って結ぶ距離が、最短距離となるような位置である上記第2〜5の何れかに記載の収納物被覆容器により構成される。
【0016】
上記最短距離とは例えば仮想線(L1)を結ぶ外周縁端部(3bと3b)との距離をいう。このように構成すると、フィルム又はシート面は上向凸部の頂点部ではなく境界部を結ぶ仮想線上において互いに反対方向に牽引されることになるので、フィルム又はシート上面から下向きに収容物上部に加わる圧力を軽減し得て苺等の収容物の損傷を防止することができる。
【0017】
第7に、上記被覆材としての合成樹脂フィルム又はシートは、その厚みが10μm〜300μmである上記第2〜6の何れかに記載の収納物被覆容器により構成される。
【0018】
このように構成すると、上記フィルム又はシートは上向凸部を含めて極めて薄く柔軟であるため、折り畳むこともでき、収納運搬に便利である。
【0019】
従って上記収納物の各々下部を複数配列収納した皿状容器等の上面開口有底容器の上部に被覆材を覆せ、該被覆材に形成した柔軟性のある上向凸部を上記収納物の上部に被覆し、上記被覆材の外周縁を上記容器の外側面に垂下し、同外側面と上記外周縁とを隣接する上向凸部の中間部、即ち境界部において例えば点状に加熱溶着(点溶着)等して上記外周縁を上記容器の外側面に附着させる。
【0020】
上記点溶着等に代り粘着テープを上記外周縁と上記外側面とに掛け渡して附着させることができる。
【0021】
そして上記被覆材の外周縁を上記容器の外側面に沿って下向に若干牽引することによって、上記隣接上向凸部の境界部分が皿状容器の対向外側面側に縦横に牽引されるが、上記被覆材の上記上向凸部に強いテンション(引張り力)が働くことなく保持され、内部の青果物等の収納物上部に上向凸部のフィルム又はシートが下向きに強く圧着することはなく上記収納物上部が損傷を受けるおそれはない。
【発明の効果】
【0022】
本発明の被覆材によると、柔軟な上向凸部により容器に配列された収納物上部を被覆することができるので、青果物等の被覆材として用いることで、青果物等の損傷防止等の極めて優れた機能を発揮し得るものである。
【0023】
本発明の収納物被覆容器は、上面開口有底容器内に収納配列された柔軟青果物等の収納物に上記被覆材を冠せた状態において、収納物上部に上記被覆材の上向凸部が被覆されるので、収納物を確実に保持し得ると共に、フィルム又はシートの被覆により収納物に対して加わる圧力を軽減し得て、果実又は青果物等の収納物の損傷を効果的に防止し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
苺、トマト等のほぼ球形青果収納物1の下部1”を複数縦横に配列収納可能な合成樹脂製方形皿状容器等の上面開口有底容器2を形成する(図1、図3参照)。この上面開口有底容器2は硬質な合成樹脂により形成されており、その底面は平面状に形成し、衝撃吸収用のウレタンマット等の弾性材を敷いてもよいし、底面に果実等の下部(下半部)を収納可能な下向き凹部を複数形成してもよい。尚、上記ウレタンマット等の弾性材は必ずしも必要としない。
【0025】
上記上面開口有底容器2の上面開口部2’を被覆する熱可塑性樹脂からなる合成樹脂柔軟フィルム又はシート(被覆材としての合成樹脂フィルム又はシート)3(図3参照)に、上記容器2内に縦横に配列した上記収納物1に対応する位置に、これらの収納物1のそれぞれ上部(上半部)1’を被覆する上向凸部3’を複数塑性変形により成形する。
【0026】
この合成樹脂フィルム又はシート(被覆材)3は、その厚さが10μm〜300μmの極めて薄い柔軟性のあるフィルム又はシートであって、その材質はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン等の薄膜透明又は半透明の熱可塑性フィルム又はシートが用いられる。
【0027】
上記合成樹脂フィルム又はシート3は真空成型、真空圧空成型により形成することができる。例えば真空成型は図5に示すように、ヒータ10で事前に合成樹脂フィルム又はシート3を加熱し(図5(a))、その後同図(b)に示すように、網状板6上に載置された上面弧球形金型11の上方に、上記フィルム又はシート3を配置し、該金型11の下方から真空吸引(矢印d)することにより略半球形状の上向凸部3’を塑性変形により形成する。このように形成された合成樹脂フィルム又はシート3は成型後も上向凸部3’を含めて全体として柔軟性があり、折り畳むことも可能である。
【0028】
尚、成形時に合成樹脂フィルム又はシート3の周縁をフィルム又はシート面に対して直角方向に折り曲げて係合用折曲部3fを形成し、上記フィルム又はシート3の周囲を折り曲げることなく係合用折曲部3fを上記容器に被覆して係合用折曲部3fを容器2の外側面2”に附着するように構成しても良い。
【0029】
上記合成樹脂フィルム又はシート3の四方の外周縁3”,3”,3”,3”は上記容器2の四方の外側面2”,2”,2”,2”に沿って垂下し、上記外周縁3”,3”,3”,3”と上記外側面2”、2”、2”、2”を重合する(図1,図4参照)。
【0030】
その状態において複数の上向凸部3’は各々上記収納物1の各々上部(上半部)1’を被覆し、隣接する上向凸部3’,3’の境界部3aは、図1、図4に示すように上記容器2の外側面2”のほぼ上縁水準であって、縦横の境界部3aを延長した上記外周縁3”と上記外側面2”とを複数の接合部4において加熱溶着(点溶着)し(図2、図4参照)、上記境界部3aを縦横に牽引するが牽引によって上向凸部3’,3’が過度に変形することはなく内部の収納物1を過度に押圧するおそれはない。
【0031】
即ち、図3に示すように上記上向凸部3’を縦横方向に複数配列成形し(実施形態では縦4個、横3個の計12個)、上記合成樹脂フィルム又はシート3における隣接する上記上向凸部3’間の略平面状の境界部3aから同フィルム又はシート3の外周方向に縦横に延長した外周縁端部3b〜3b10を、上記有底容器2の外側面2”に垂下附着させる(図1参照)。
【0032】
また、上記被覆材3は、図1に示すように、その表面(上向凸部3’、境界面3a等)に複数の透孔7を貫設することが好ましい。このように透孔7を設けることにより、容器2内の空気を外部に逃がすことができる。
【0033】
上記外周縁端部3b〜3b10は、上記合成樹脂フィルム又はシート3における隣接する上記上向凸部3’間の境界部3aから縦横方向に同フィルム又はシート3の外周方向に延長した仮想延長線L上と外周縁3”との交点近傍とする。そして、上記外周縁端部3b〜3b10付近の接合部4を上記外側面2”に垂下して附着するように構成する。
【0034】
このように合成樹脂フィルム又はシート3と有底容器2の外側面2”との接合部4を上記外周縁端部3b〜3b10付近とすることにより、接合時には、図3に示すように、上記仮想延長線Lに沿って対応する外周縁端部同士(例えば、外周縁端部3bと3b,外周縁端部3bと3b,外周縁端部3bと3b等)を外側方向(矢印A,A’方向、或いは矢印B,B’方向)にある程度牽引しながら、下方向(鉛直下方向、矢印C方向)に多少牽引し、互いに逆方向下向き(図4の矢印b,b方向)にある程度垂下牽引した状態で、各外周縁端部3b〜3b10に対応する10箇所の接合部4(図1参照)において当該フィルム又はシート3を上記有底容器2の外側面2”に加熱溶着する。尚、合成樹脂フィルム又はシート3のコーナ部は三角状に折り曲げることが好ましい。
【0035】
このように、上記仮想延線Lに沿って上記逆方向下向き(矢印b,b方向)に牽引することにより、牽引による下向き圧力が収納物1(苺)に直接加わることを極力少なくしつつ、合成樹脂フィルム又はシート3を確実に有底容器2に接着することができる。
【0036】
上記附着箇所(接合部)として好ましい位置は、外周縁部3bと3bのように対応する接合部4,4間を結ぶ合成樹脂フィルム又はシート3の表面間の距離が最も短い距離となるような2点間である。即ち、上記合成樹脂フィルム又はシート3と上記有底容器外側面2”との附着箇所は、上記有底容器2の対向する外側面2”,2”上の対称位置(例えば外周縁端部3bと3b)であって、両方の附着箇所、即ち外周縁端部3bと3bに対応する一対の接合部4,4を上記合成樹脂フィルム又はシート3の表面に沿って結ぶ距離が、最短距離となるような位置とする。
【0037】
このように、上記境界部3aを延長した外周縁部3b〜3b10に対応する接合部4を垂下附着することで、フィルム又はシート3を矢印C方向(図4の矢印b,b方向)に牽引したとき、牽引箇所を結ぶ仮想延長線Lが各上向凸部3’の頂点部を通らないので、逆方向(矢印b,b方向)にかかるテンションは境界部3aに最も大きく作用し、上向凸部3’には直接に作用しない。このため合成樹脂フィルム又はシート3が収納物1を上面から下向きに押圧する圧力を軽減して、苺等の収納物1の損傷を防止することができる。
【0038】
本発明に係る収納物被覆容器は上述のように構成されるものであるから、まず上面開口有底容器2の底面にウレタンマット等を敷き、その上に収納物1(この場合苺とする)をその蔕を上向きにした状態で、縦4個、横3個、計12個を整然と収納配列する(図3参照)。その後、上記の方法により上向凸部3’を形成した合成樹脂フィルム又はシート(被覆材)3を、図3のように上記収納物1(苺)の上面に位置させ、上記上向凸部3’と収納物1とを位置合わせして、合成樹脂フィルム又はシート3を収納物1(苺)上面に被覆する。
【0039】
すると、合成樹脂フィルム又はシート3の各上向凸部3’の内部に上記各収納物1の上部(上半部)1’が各々入り込み、図1、図4に示すように、上記各収納物1(苺)の上部(上半部)1’が上記上向凸部3’により被覆された状態となる。ここで、上記収納物1と上記上向凸部3’は上向凸部3’が苺の上半部に密着した状態となっても良いし、上向凸部3’内側と苺表面との間に多少の隙間が形成される状態でも良い。
【0040】
その後、上記境界部3aから外周方向に延長した左右の対向する外周縁端部3b〜3b10を外側方向(矢印A,A’方向)及び下方向(矢印C方向)に多少牽引した状態で、接合部4を加熱溶着又は接着剤又は粘着テープ5で上記有底容器2の外側面2”に接合する(図1参照)。かかる牽引動作及び接合は、縦方向の3箇所の境界部3a,3a,3aに対応する左右の外周縁端部3bと3b,3bと3b,3bと3b、及び横方向の2箇所の境界線3a,3aに対応する各外周縁端部3bと3b10,3bと3bに各々対応する10箇所の接合部4おいて行い、さらに合成樹脂フィルム又はシート3の4箇所のコーナ部3cにおける接合部4においても加熱溶着又は接着剤又は粘着テープ5による接合が行われる(図1参照)。
【0041】
このように合成樹脂フィルム又はシート3を収納物1の上面に被覆することにより、収納物1(苺)の上半部1’は上向凸部3’により個別に被覆され、境界部3aから外周方向に延長した外周縁端部3b〜3b10に対応する接合部4が接着等されているため、平面状のシートを収納物1(苺)上部に被覆する場合に比較して、各上向凸部3’の部分では、合成樹脂フィルム又はシート3によって収納物1(苺)の上面から下向きに加わる圧力が軽減され、合成樹脂フィルム又はシート3による収納物1(苺)の傷み、損傷、傷の発生を有効に防止することができる。
【0042】
図6に示すものは、本発明に係る収納物被覆容器の他の実施形態であり、同図に示すように、上向凸部3’を縦方向に重合した状態で成形したものである。この場合の接合部は、横方向においては、上記の実施形態(図2)と同様に外周縁端部3bと3b10、外周縁端部3bと3bに対応する接合部4となるが、縦方向の接合部は、同図(b)の上向凸部3’の頂上を通る仮想線L4(図6(b))ではなく、重合する上向凸部3’間の最も低い部分(境界部3a)を通る仮想線L1に沿う外周縁部3bと3b、同じく最も低い部分(境界部3a)を通る仮想線L2に沿う外周縁部3bと3b、同じく仮想線L3に沿う外周縁部3bと3bに対応する接合部4とする。
【0043】
即ち、外周縁部3bと3bのように対応する接合部4,4間を結ぶ合成樹脂フィルム又はシート3の表面間の距離が最も短い距離となるような2点間を接合部4,4として選択する(上記図1の実施形態も同様である)。即ち、上記合成樹脂フィルム又はシート3と上記有底容器外側面2”との附着箇所は、上記有底容器2の対向する外側面2”,2”上の対称位置(例えば外周縁端部3bと3b)であって、両方の附着箇所、即ち外周縁端部3bと3bに対応する一対の接合部4,4を上記合成樹脂フィルム又はシート3の表面に沿って結ぶ距離が、最短距離となるような位置とする。
【0044】
これは、上記境界部3aを延長した外周縁部3b〜3b10に対応する接合部4を垂下附着することで、矢印C方向(図4の矢印b,b方向)に牽引したとき、逆方向(矢印b,b方向)にかかるテンションは境界部3aに最も大きく作用し、上向凸部3’には直接に作用しないため、合成樹脂フィルム又はシート3が収納物1を上面から下向きに押圧する圧力を軽減して、苺等の収納物1の損傷を防止するためである。
【0045】
上記外周縁3”(接合部4)と外側面2”とは外側から加熱棒を当てて点溶着し(図2)、或は粘着テープ5によって附着させることができる(図1参照)。
【0046】
図7に示すものは、本発明に係るさらに他の実施形態であり、合成樹脂フィルム又はシート(被覆材)3の横方向の2辺の縁部3dを短く形成し、当該縁部3dは容器2の外側面2”に附着させることなく、縦方向の2辺の縁部3eのみを容器の外側面2”にテープ又は点溶着等により附着するように構成したものである。このように構成すると、合成樹脂フィルム又はシート3の縦方向の2辺のみを附着するだけでよいため、青果物の被覆作業をより簡単にすることができる。
【0047】
図8に示すものは、本発明に係る被覆材と容器2の接続方法の他の実施形態であり、容器2の上面開口部に全周に亘り外方向の水平縁2aが形成されている場合は、上記合成樹脂フィルム又はシート3の外周縁3”を上記水平縁2a上面に附着8するように構成してもよい。この場合、上記水平縁2aの面積より上記フィルム又はシート3の面積が広い場合は図8(b)に示すように上記水平縁2aにて附着8すると共に、上記フィルムまたはシート3の外周縁3”を折り曲げて容器2の外側面2”に附着8’しても良いし、水平縁2a部分は附着せずに、外周面2”のみに附着8’しても良い。
【0048】
本発明は上述のように、被覆材(合成樹脂フィルム又はシート)3の柔軟な上向凸部3’により容器に配列された収納物上部を被覆することができるので、青果物等の被覆材として用いることで、青果物等の損傷防止等の極めて優れた機能を発揮し得るものである。
【0049】
また本発明は、上面開口有底容器2内に収納配列された柔軟青果物等の収納物1に柔軟な合成樹脂フィルム又はシート(被覆材)3を冠せた状態において、収納物1上部に上記フィルム又はシート3の上向凸部3’が被覆されるので、収納物1を確実に保持し得ると共に、フィルム又はシート3の被覆により収納物1に対して加わる圧力を軽減し得て、果実又は青果物等の収納物1の損傷を効果的に防止し得るものである。
【0050】
また、収納物1は上向凸部3’に上部を被覆されているので、安定しており、運搬移動中の揺れ等によるフィルム3と収納物との摩擦による損傷も生じ難いという効果を奏する。
【0051】
また、外周縁3”を上記容器の外側面2”に垂下附着させて充分包装し、該包装を移動させても、収納青果物に圧力(矢印e方向、図10)や擦過等(矢印b方向、図10)による損傷を生ずるおそれがなく安全被覆を行い得る効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0052】
合成樹脂製四角形皿状容器等の上面開口有底容器2に上記収納物1を整然と並べ、その状態で透明の柔軟な合成樹脂フィルム又はシート(被覆材)3に形成した柔軟な上向凸部3’で上記収納物1を被覆し、これを例えば紙製包装箱に包装し得て収納物1即ち苺やさくらんぼ等の損傷を防止し、高品質な商品、高級品等の包装に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の収納物被覆容器を示す斜視図である。
【図2】点溶着部(接合部)を示す合成樹脂フィルム又はシート(被覆材)の展開状態の平面図である。
【図3】苺の被覆包装を行う状態を示す分解斜視図である。
【図4】図1の一部縦断面図である。
【図5】(a)は合成樹脂フィルム又はシート(被覆材)の加熱状態を示す図、(b)は真空成型により上向凸部を成型する状態を示す図である。
【図6】(a)は本発明の他の実施形態の点溶着部(接合部)を示す合成樹脂フィルム又はシート(被覆材)の展開状態の平面図、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【図7】本発明の収納物被覆容器の他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】(a)、(b)は同上被覆容器のさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【図9】従来の被覆包装状態の斜視図である。
【図10】従来の被覆包装の縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 収納物
1’ 上部
2 上面開口有底容器
2’ 上面開口部
2” 外側面
3 合成樹脂フィルム又はシート(被覆材)
3’ 上向凸部
3” 外周縁
3a 境界部
3b〜3b10 外周縁端部
4 接合部
5 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物又は果実等の収納物の各々下部を複数配列収納可能な上面開口有底容器の上面開口部を被覆するための柔軟性のある合成樹脂フィルム又はシートによる被覆材であって、
上記被覆材のフィルム又はシート面に、上記容器内への配列収納物の各々上部を被覆し得る柔軟性のある上向凸部を塑性変形により複数成形したものであることを特徴とする被覆材。
【請求項2】
青果物又は果実等の収納物の各々下部を複数配列収納可能な上面開口有底容器を設け、
上記有底容器の上面開口部を上記被覆材で被覆することにより、上記配列収納物の各々上部を上記上向凸部にて被覆し得るように構成し、
かつ上記被覆材の外周縁を上記有底容器の外側面に垂下附着させることにより構成される請求項1記載の被覆材を使用した収納物被覆容器。
【請求項3】
上記上向凸部を上記被覆材の縦横方向に複数配列成形し、
上記被覆材における隣接する上記上向凸部間の境界部から被覆材の外周方向に延長した外周縁端部を、上記有底容器の外側面に垂下附着させる請求項2記載の収納物被覆容器。
【請求項4】
上記被覆材の外周縁と上記有底容器外側面とを点溶着により附着させる請求項2又は3記載の収納物被覆容器。
【請求項5】
上記被覆材の外周縁と上記有底容器外側面とを粘着テープを介して附着させる請求項2又は3記載の収納物被覆容器。
【請求項6】
上記被覆材と上記有底容器外側面との附着箇所は、
上記有底容器の対向する外側面上の対称位置であって、これら対称位置の附着箇所を上記被覆材の表面に沿って結ぶ距離が、最短距離となるような位置である請求項2〜5の何れかに記載の収納物被覆容器。
【請求項7】
上記被覆材としての合成樹脂フィルム又はシートは、その厚みが10μm〜300μmである請求項2〜6の何れかに記載の収納物被覆容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−6413(P2010−6413A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167240(P2008−167240)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000206392)大石産業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】