説明

被覆材料を構造物に固定するための取り付け金具及び取り付け方法

【課題】 構造物に被覆材料を固定するための取り付け金具の芯材の過熱による変質劣化を防止する。
【解決手段】 金具本体を、高周波誘導発熱可能な金属材料からなる芯材と、その表裏を被覆し、加熱融着可能な表裏合成樹脂含有シート材とから構成し、表裏シート材を、外周縁部において接合又は連続させ、金具本体の表シート材上に、開口部=25〜95%、厚さ=0.05〜1.0mmの、高周波誘導発熱可能なメッシュ材を被覆配置して取り付け金具を構成し、この金具を構造物と被覆材料の間に配置し、高周波誘導処理により、芯材とメッシュ材とを発熱させて、少なくとも表シート材を、被覆材料に融着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物表面に被覆材料を固定するための取り付け金具及び取り付け方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、例えば土木工事、建築工事及び防水・遮水工事などにおいて、構造物の表面に、被覆材料を、高周波誘導加熱法を利用して、固定するための取り付け金具及び取り付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物、例えば、河川堤防斜面、川岸斜面、建築物の壁面を、熱可塑性樹脂を含む被覆材料によって、被覆し、これを固定するには、先ず、構造物表面に、被覆材料を、展張し、この被覆材料の表面の適宜の箇所に、固定用プレートを配置し、このプレートの表面側から前記被覆材料を介して、前記構造物中に、固定用ピン又はアンカーボルトを打ち込んで、前記被覆材料を、前記構造物上に固定する方法が、一般に行われてきた。しかし、上記方法による固定は必ずしも十分ではなく、従って、前記固定を確保するために、被覆材料上に、土のう又は砂のうを載置したり、或は、土砂を、層状に敷設することなどが、行われてきた。
【0003】
前記固定方法において、固定ピン又はアンカーボルトを被覆材料の固定具として用いると、被覆材料には、必然的に透孔が形成され、この透孔の形成に伴って、被覆材料の強度低下、及び防水・遮水性低下などの問題を生ずる。この問題を解決乃至減小するためには、前記透孔部と、固定ピン又はアンカーボルトとの隙間を、防水・遮水用シートにより被覆するか、接着剤又はコーキング材を充填するなどの処置が必要となる。
【0004】
また、上記固定プレートを用いる従来方法においては、構造物の被覆される表面が平坦でない場合、固定プレートによる押圧力が、被覆材料には、均等に付加されているときでも、構造物の非平坦面には、均等に付加されないことがある。特に構造物が土構造物である場合、このような問題がしばしば発生し、最悪の場合、構造物と、被覆材料との固定は、構造物の突起部(杭など)、或は固定用ピン又はアンカーボルトのみによって行われることになる。
さらに、被覆材料に、前記固定ピン、又はアンカーボルトによって、孔があけられると、この部分に応力が集中し、被覆材料が、この部分において、破壊されるおそれがある。
【0005】
コンクリート構造物の屋根等の防水・遮水及び補修・補強のために、当該構造物の施工対象面を被覆材料により被覆し、これらを固定するに際し、金属板と、それを被覆する熱可塑性樹脂含有層との組み合わせにより構成される取り付け金具を用い、前記芯材に適宜の加熱処理を施して、これを発熱させ、熱可塑性樹脂含有層を溶融して、構造物表面と、被覆材料裏面とを接着する技法が、特許第2971149号公報(特許文献1)、特公昭58−36705号公報(特許文献2)、特開平10−77722号公報(特許文献3)及び特開2003−313995号公報(特許文献4)などに開示されている。
【0006】
上記従来の取り付け金具は、金属製芯材の表面に、ホットメルト樹脂又は接着剤をコーティングし、芯材に高周波誘導発熱させるか、或は熱風溶着、熱こて溶着処理を施すか、或は接着剤塗布、圧着を施すか、或は、接着テープを貼着し、それによって芯材の少なくとも1面上に、熱可塑性樹脂層を形成し、固定したものであった。
しかし、このような取り付け金具を用いても、構造物表面が平坦でない場合、取り付け金具の被覆材料に接合する面が、被覆材料の裏面に適合せず、金具表面の全面接着ができないことがある。この不都合は、特に被覆材料が、実質的に可撓性のない、又は低い硬質材料であるときに、著しく発生する。
【0007】
しかし、被覆材料を長期間供用すると、樹脂層を水蒸気及び/又は酸素、あるいは、酸素含有ガスが浸透して、芯材と、樹脂層との界面に到達して、芯材を酸化又は劣化し、芯材から樹脂層が剥離することがあり、このため上記固定法の信頼度が不十分であった。
【0008】
上記問題点を解決するために、前記特許文献4には、金属製の基材に、複数の貫通孔を穿設し、この貫通孔中に、熱可塑性樹脂を充填し、かつ、前記基材の表裏外表面を、熱可塑性樹脂による被覆層で被覆し、この表裏樹脂層を、前記基材の貫通孔中に充填された熱可塑性樹脂により連接して得られる取り付け金具が開示されている。
上記特許文献4に開示されている取り付け金具を用いると、構造物と、被覆材料との固着は、前記熱可塑性樹脂を介して行われるから、水蒸気又は空気(酸素)が、前記取り付け金具内に浸透拡散して、金属製基材に到達し、これを酸化又は劣化させることがなく、従って、基材から熱可塑性樹脂層が剥離することもないとされている。
【0009】
前記特許文献2,3及び4に記載されている取り付け金具を用いる場合、構造物と、被覆材料の間に配置された取り付け金具に高周波誘導加熱処理を施すと、金属板が短時間内に急速に発熱し、昇温する。この熱が、金属板からそれに接触している熱可塑性樹脂層に伝播されて、熱可塑性樹脂層をその溶融温以上の温度に加熱してこれを溶融し、この溶融樹脂により、構造物表面/樹脂層/金属板/樹脂層/被覆材料裏面の接着が行われる。
しかしながら、熱可塑性樹脂の比熱は大きく、しかし、熱伝導率が低く、金属板の比熱は小さく、熱伝導率が高く、しかも、高周波誘導加熱処理を施されたとき、金属板は、いわゆる表皮効果により、その表面から発熱し、かつ昇温する。従って、表裏面側熱可塑性樹脂層の金属板表面に接触している部分は、短時間内に加熱され昇温し、溶融するが、表裏面側熱可塑性樹脂層の構造物に接触している部分及び被覆材料の裏面に接触している部分が所望温度迄昇温し、溶融する迄には、時間差を生じ、この時間差の間に表裏面側熱可塑性樹脂層の金属板に接触している部分は、過度に加熱され、変質又は劣化することがある。
【0010】
また、被覆材料の厚さが大きく、それに接触する表面側熱可塑性樹脂層の厚さも、大きい場合、例えば、特許文献4に記載されているように、1〜2mmの場合、高周波誘導加熱処理を施され、被覆材料の裏面が、所要融着温度に到達したときには、表面側熱可塑性樹脂層の、金属板に接触している部分が、過度に加熱され、変質又は劣化してしまうことがある。
さらに、金属板の表・裏面熱可塑性樹脂層が、金属板に形成された貫通孔中に充填された熱可塑性樹脂により、連結されている場合、構造物と、被覆材料との間の引張り強さは、前記貫通孔中の熱可塑性樹脂柱及び前記(表・裏面側熱可塑性樹脂層の前記貫通孔中の樹脂柱に連続する部分の引張り強さに依存する。従って、前記引張り強さは、前記金属板の貫通孔の合計断面積、並びに金属板及び表・裏面側熱可塑性樹脂層の厚さに依存するから、これらを、それぞれ大きくする必要がある。しかし、表・裏面側熱可塑性樹脂層の厚さを大きくすると、前述のように、表・裏面側熱可塑性樹脂層が構造物及び被覆材料に溶融接着するまでに要する時間が長くなり、それによって、金属板に接触している樹脂部分及びその直上にある熱可塑性樹脂の過熱による変質・劣化を生じ、このため構造物と被覆材料の間の引張り強さが、低くなることがある。
さらに、金属板の貫通孔の合計面積が大きくなると、特に、各貫通孔の開口面積が大きくなり、このため、高周波誘電加熱処理によって金属板に発生した熱が、貫通孔中心部の熱可塑性樹脂に伝播され、かつその温度が溶融可能な温度に到達するまでに要する時間が長くなり、金属板に接触している樹脂部分が、過熱されて劣化し、構造物と、被覆材料との間の引張り強さを低下させることがある。
【特許文献1】特許第2971149号公報
【特許文献2】特公昭58−36705号公報
【特許文献3】特開平10−77722号公報
【特許文献4】特開2003−313995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、構造物に、被覆材料を、高周波誘導加熱法を利用して、短時間内に、かつきわめて強固に固定することができる取り付け金具及び取り付け方法を提供しようとするものである。
本発明は、また、構造物に、被覆材料を、金属製芯材と、その表裏両面を被覆する合成樹脂含有シート材とからなる取り付け金具に高周波誘導加熱処理を施して、接着固定するときに、前記芯材に過熱による変質・劣化を生ずることがなく、特に被覆材料に、均整に接着して、それを構造物上に強固に固定することができる取り付け金具及び取り付け方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の取り付け金具は、構造物と、それを被覆する材料との間に介在し、前記構造物の表面に、前記被覆材料を固定するための取り付け金具であって、
(1)所定の形状・寸法を有し、高周波誘導発熱が可能な金属材料からなる芯材と、前記芯材の少なくとも1部分の表裏両面を被覆していて、かつ、加熱融着可能な表・裏合成樹脂含有シート材とを含む金具本体、並びに、
(2)前記金具本体の前記表合成樹脂含有シート材の外表面を被覆しており、かつ高周波誘導発熱が可能なメッシュ材を含み、
前記表・裏合成樹脂含有シート材は、それぞれ、前記芯材の外周縁の少なくとも1部分又は全部の外側に伸び出て、互に対向している外縁部を有し、かつ、この外縁部は、その少なくとも2箇所において、互に接合又は連続しており、
前記メッシュ材の厚さが0.05〜1.0mmであり、かつその下記式により規定される開口率;
メッシュ材開口率(%)
=〔(メッシュ材開口部の合計面積)/(メッシュ材面積)〕×100
が、25〜95%であることを特徴とするものである。
本発明の取り付け金具において、前記表・裏合成樹脂含有シートが、前記合成樹脂からなる1枚以上のシートと、1枚以上の繊維含有シートとの積層体であってもよい。
本発明の取り付け金具の態様(1)において、前記芯材の、前記表・裏合成樹脂含有シートにより被覆されている部分の1以上の所定位置に、アンカーボルト用透孔が形成されており、かつ前記表・裏合成樹脂含有シート材に、前記芯材の透孔に連通する透孔が形成されている。
本発明の取り付け金具の態様(1)において、前記透孔を有する芯材の前記透孔の周囲部分が、裏側に伸び出て、突起部を形成し、この突起部の先端部において開口していることが好ましい。
本発明の取り付け金具の態様(1)において、前記芯材の突起部が、前記裏側合成樹脂含有シートの透孔を通ってその外側に突出していることが好ましい。
本発明の取り付け金具の態様(1)において、前記芯材の外周縁の1以上の部分又は全部に、裏側に伸び出る外周縁突出部が形成されていてもよい。
本発明の取り付け金具の態様(1)において、前記芯材の突起部の、前記透孔を囲む先端部の最外端が、前記芯材の前記裏側に伸び出た外周縁突出部の最外端よりもさらに外側に伸び出ていることが好ましい。
本発明の取り付け金具の態様(2)において、前記芯材の、前記表・裏合成樹脂含有シート材により被覆されていない露出部分の、少なくとも1以上の所定位置に、アンカーボルト用透孔が形成されている。
本発明の取り付け金具の態様(2)において、前記芯材の、前記透孔の周囲部分が、裏側に伸び出て突起部を形成し、この突起部の先端部において開口していることが好ましい。
本発明の取り付け金具の態様(2)において、前記芯材の外周縁の1以上の部分又は全部に、裏側に伸び出る外周縁突出部が形成されていてもよい。
本発明の取り付け金具の態様(2)において、前記芯材の前記突起部の前記透孔を囲む先端部の最外端が、前記外周縁突出部の最外端よりもさらに外側に伸び出ていることが好ましい。
本発明の取り付け金具の態様(1)又は(2)において、前記芯材の前記突起部の先端部の外面に、前記アンカーボルトの脚部を通す透孔を有するクッション材がさらに配置されていることが好ましい。
本発明の構造物に被覆材料を取り付ける方法(1)は、構造物とそれを被覆する被覆材料との間に、請求項1又は2に記載の取り付け金具を配置し、この取り付け金具に、前記被覆材料を介して、高周波誘導加熱処理を施し、それによって、前記芯材及びメッシュ材を発熱させて、前記表側合成樹脂含有シート材を溶融して、前記取り付け金具本体を前記メッシュ材を介して前記被覆材料の裏面に固着させ、それと同時に前記裏側合成樹脂含有シートを溶融して、前記取り付け金具を前記構造物の表面に固着させることを特徴とするものである。
本発明の構造物に被覆材料を取り付ける方法(2)は、構造物表面上の所定の位置に、請求項3〜12のいずれか1項に記載の取り付け金具(1)又は(2)の金具本体を配置し、取り付け金具本体の前記透孔を通して、アンカーボルトにより、前記構造物に固定し、この固定された金具本体上を前記メッシュ材により被覆し、
前記取り付け金具を介して、前記構造物表面を被覆材料により被覆し、
前記取り付け金具に、前記被覆材料を介して、高周波誘導加熱処理を施し、それによって、前記芯材及びメッシュ材を発熱させ、前記表側合成樹脂含有シート材を溶融して、前記金具本体を前記メッシュ材を介して前記被覆材料の裏面に固定させることを特徴とするものである。
本発明方法(1)又は(2)において、前記構造物と被覆材料との間に配置された前記取り付け金具の位置を、金属探知機、又は磁石により検知することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の取り付け金具は、それを構造物と被覆材料との間に配置し、それに、被覆材料を介して、高周波誘導加熱処理を施したとき、芯材と、メッシュ材とが発熱して、芯材の表裏両面側に形成された合成樹脂含有シートを加熱溶融し、かつ被覆材料の裏面を加熱して、表・裏両面側合成樹脂含有シートが、被覆材料及び構造物に短時間内に接着し、構造物に、被覆材料を強固に固着することができる。
また、本発明の取り付け金具を用いると、構造物に、被覆材料を、短時間内に、強固に固着することができるから、取り付け金具の構成要素、特に合成樹脂含有シートが、過熱により変質乃至劣化することがなく、固着性能を長期間にわたって、安定に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る取り付け金具は、構造物と、それを被覆する材料との間に介在して、前記構造物の表面上を被覆している被覆材料を所定位置、形状に固定するために用いられる。本発明の取り付け金具は、下記要素(1),(2)を含むものである。
(1)金具本体
この金具本体は、
(a)所定の形状、寸法を有し、高周波誘導発熱が可能な金属材料からなる芯材と、
(b)前記芯材の少なくとも1部の表・裏両面を被覆していて、かつ、加熱融着可能な表・裏合成樹脂含有シート材と、
を含むものである。
(2)メッシュ材
このメッシュ材は、前記金具本体の前記表面側合成樹脂含有シート材の外表面を被覆していて、かつ、高周波誘導発熱が可能なものである。
【0015】
本発明の取り付け金具において、表・裏合成樹脂含有シート材は、それぞれ、前記芯材の外周縁の少なくとも2箇所以上において、その外側に互に対向して伸び出ている外縁部を有し、この表・裏外縁部は、少なくとも2箇所において、互に接合又は連続している。
また、前記メッシュ材は、0.05〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.4mm、の厚さを有し、下記式により定義される開口率は、25〜95%であり、好ましくは50〜85%である。
メッシュ材開口率(%)
=〔(メッシュ材開口部の合計面積)/(メッシュ材面積)〕×100
【0016】
本発明の取り付け金具の金具本体の芯材の形状、寸法、断面形状などについて、格別の制限はないが通状、円形、環(円、角)形、十字形、長方形、枠形などが用いられ、表・裏合成樹脂含有シート材は、芯材の全体、単一部分、又は複数部分の表裏両面を被覆するように配置され、メッシュ材は、表合成樹脂含有シート材の全面を被覆するように配置される。
【実施例】
【0017】
図1(A)は、本発明の取り付け金具の一例の平面説明図であり、図1(B)は、図1(A)に示された取り付け金具の線A−Aに沿う断面説明図である。図1(A),(B)において、取り付け金具1は、金具本体1aとメッシュ材14とから構成され、金具本体1aは、金属製芯材11と、その表・裏両面を被覆する表・裏合成樹脂含有シート材12及び13により構成されている。図1(A),(B)に示されている取り付け金具1においては、芯材は円形平板の形状を有し、表・裏合成樹脂含有シート材12及び13は、それぞれ、円板状芯材の外円周縁の外側に伸び出している円環状の外縁部12a,13aを有しており、この円環状外縁部12a,13aは、その少なくとも2箇所において、(図1(A),(B)においては)外縁部12a,13aの円環状端部において)接合されている。この接合は、熱融着、接着剤接着、機械的連結(ミシン縫製)などのいずれでなされていてもよい。また、互に連続していてもよい。表・裏合成樹脂含有シート材12,13は、一枚の合成樹脂含有シートから形成され、その外縁部12a,13aの少なくとも1ヶ所において、互に連続していてもよい。
金具本体11の、表合成樹脂含有シート材12の外表面上に、それを十分に被覆する寸法−形状を有するメッシュ材14が配置されている。
メッシュ材14は、その一部において、表合成樹脂含有シート材12に固定されていてもよい。
【0018】
図2には本発明の取り付け金具の他の一例の断面説明図が示されている。図2の取り付け金具1の、金具本体1aの所望の位置(図2においては、金具本体1の中心部)において、アンカーボルト15を、金具本体の表側から裏側に向って通すための透孔が形成されている。アンカーボルト15は、頭部16と脚部17とを有し、頭部16は、少なくとも芯材11透孔を通らない寸法形状を有している。
【0019】
図3(A)は、本発明の取り付け金具の更に他の一例の平面説明図であり、図3(B)は、その線B−Bに沿う断面説明図である。図3(A),(B)において、全型本体1aの芯材11に透孔11bが形成されていて、この透孔11bの周囲部分が、裏側に伸び出て、突起部11aを形成し、この突起部11aの先端部に透孔11bが形成されていて、突起体11aの内側に凹部11cが形成されている。図3(A),(B)に示されているように、裏合成樹脂含有シート材13には、突起体11aの突出を許す寸法・形状の透孔13bが形成されており、この透孔13bを通して、芯材11の突起部11aの先端部が裏合成樹脂含有シート材13の外側に伸び出ていることが好ましい。取り付け金具が構造物表面上に配置されたとき、取り付け金具の上記のような芯材11の突起部11aを支点として、その被覆材料に対する接着面方向を適宜に調節して、被覆材料に正対するようにすることが可能になる。表合成樹脂含有シート材12の透孔12bは、アンカーボルトの脚部を通し得るものであればよいが、アンカーボルトの頭部を通し得る寸法・形状を有することが好ましい。アンカーボルトの頭部は、芯材11の突起部11aにより形成された凹部11c中に収容され固定される。
【0020】
図4には本発明の取り付け金具のさらに他の例の断面説明図が示されており、芯材11の外縁部の少なくとも1部又は全部に、裏側に折れ曲って伸び出ている外縁突出部11dが形成されている。外縁突出部11の寸法、形状は、適宜に設定することができるが、突出部11aの先端部の最外端は、外縁突出部11dの最外端よりもさらに外側に伸び出ていることが好ましく、このようにすると、突出部11aは、金具本体の取り付け支点として機態することができる。
【0021】
図5は、本発明の取り付け金具の金具本体のさらに他の例の平面説明図である。図5において、芯材11は、矩形(正方形を包含する)の形状を有し、その表裏両面上に配置された表・裏合成樹脂含有シート材12,13も芯材11とほぼ相似形をなし、矩形環状の外縁部12a,13aが形成されている。
【0022】
図6は、本発明の取り付け金具用金具本体のさらに他の例の平面説明図であり、芯材11は円形をなしているが、表・裏合成樹脂含有シート材は、矩形(正方形を包含する)をなしていて、図6には、矩形環状の外縁部12a,13aが示されている。この外縁部12a,13aの内側輪郭線は、円形或はその他の形状であってもよい。
【0023】
図7は、本発明の取り付け金具用金具本体のさらに他の例の平面説明図であって、その芯材11は長方形をなしていて、その長軸に沿って複数の突起部11a、透孔11bが形成されている。長方形芯材11の表裏両面上には、表・裏合成樹脂含有シート材12,13が積層され、その四辺縁部12a,13aは互に接合されている。図7に記載の金具本体1aは、その表合成樹脂含有シート材12aの上を被覆するメツシュ材(図示されていない)とともに使用される。
【0024】
図8は、本発明の取り付け金具用金具本体のさらに他の例の平面説明図である。図8において、芯材11は、十字形の金属板からなり、その表裏両面上に、十字形状の表・裏合成樹脂含有シート材12,13が積層されていて、両シート材12,13は、その外周縁部12a,13aにおいて、互に接着されている。図8の金具本体1aにおいて、そのほぼ中心部に、アンカーボルト用透孔11b,12b,13bが形成されている。芯材11の透孔11bの周囲には、突起部11aが形成されている。
【0025】
図9は、本発明の取り付け金具用金具本体の他の例の平面説明図である。図9において、芯材11は、横手長さが、縦長さよりも長い十字形状を有し、その表裏両面上に、横長十字形の表・裏合成樹脂含有シート材12,13が積層されており、それらの外縁部12a,13aは、互に接合されている。図9の横長十字形金具本体の横手方向部分には、その横手軸に沿って、複数個の、アンカーボルト用透孔11b,12b,13bが形成されていて、芯材11には、その透孔11bの周囲の部分は、裏側に伸び出て突起部11aを形成している。
【0026】
図4〜9のそれぞれに示された金具本体は、その表合成樹脂含有シート材の表面上に配置されたメッシュ材(図示されていない)とともに、取り付け金具を構成し、実用に供される。
【0027】
図10は、本発明の取り付け金具用金具本体の他の例の平面説明図である。図10の金具本体1aにおいて、帯状芯材11の、両端部分を除き、その他の部分の表裏両面に、表・裏合成樹脂含有シート材12,13が積層されており、この両シート材12,13は、上下両外縁18において、例えば図11(A),(B)に示されているように互に連続している。
芯材11の、表・裏合成樹脂含有シート12,13により被覆されていない両端部分には、透孔11aが形成されている。図10に示された金具本体において、その表合成樹脂含有シート材12の上にメッシュ材を被覆して取り付け金具として使用される。
【0028】
図11(A),(B)及び(C)は、それぞれ、金具本体の、帯状芯材11と、その少なくとも1部分を被覆する表・裏合成樹脂含有シート材12,13とからなり、表・裏合成樹脂含有シート12,13が、その上下両外縁部においてのみ接合又は連続している場合、この金具本体の断面例えば図10の金具本体の線C−Cに沿う断面の一例を示すものである。図11(A)において、表・裏合成樹脂含有シート材12,13は、1枚のシート材により形成され、このため、上下外縁部18において互に連続している。このシート材の端末は、図11(A)に示されているように、芯材11の裏面側において、互に重ね合わせられ、接着されて、重ね合わせ接着縁部19aを形成している。
図11(B)の態様においては、1体のシート材が、表・裏合成樹脂含有シート材12,13を形成し、その上下両端縁18においては、互に連続しており、裏側に位置している。接続すべき両端部は外側に折り曲げられ、手を合わせる形(おがみ形)の接続部19bを形成している。
図11(C)の態様においては、2枚の表・裏合成樹脂含有シート材12,13は、その上下両外縁部12a,13aにおいて重ね合わせ接合されている。
【0029】
図12に示されている取り付け金具用金具本体1aは、帯状の芯材11の互に離間して複数の部分の表裏両面に、表・裏合成樹脂含有シート材12,13が被覆されており、その上下両外縁は、前記図11(A),(B),(C)のいずれかの方式により連続又は接合されている。表・裏合成樹脂含有シート材12,13によって、被覆されていない複数個の芯材部分には、アンカーボルト用透孔11bが形成されている。
図12の金具本体において、その表合成樹脂含有シート材12の各々の上にメッシュ材を配置して、取り付け金具として使用される。
【0030】
図13(A)〜(F)には本発明の、アンカーボルト用透孔を有する取り付け金具の芯材の各種断面形状が例示されている。
図13(A)において、芯材11は、板状体であって、アンカーボルト用透孔11bが形成されている。
図13(B)において、芯材11は、アンカーボルト用透孔11bを有し、この透孔11bの周囲は、裏側に伸び出る突起部11aを形成し、この突起部11aの先端部に透孔11bが形成されており、この突起部11aの内側には凹部11cが形成されている。この突起部11aの先端部分は、金具本体が、構造物表面に配置されたとき、取り付け金具全体を支持する支点となり、取り付け金具の表側面の方向を調節して、この表側面を被覆材料の裏面に正対させるようにすることができる。
図13(C)において、芯材11は、図13(B)と同様の突起部11a、透孔11b、凹部11cを有し、芯材11の両外縁部には、裏側に向って、伸び出ている外縁突出部11dが形成されている。突起部11aを、取り付け金具の取り付け支点として用いる場合には、外縁突出部11dの芯材の平板部分からの突出長さL1と、突起部11aの突出長さL2との関係は、L1<L2であることが好ましい。
芯材11の少なくとも1部分(特に、表・裏合成樹脂含有シート材12,13により被覆されていない部分)は、図13(D)に示されているように、芯材11の1外縁部に、比較的長い外縁突出部11dが形成されていてもよい。このような長い外縁突出部11dは、凹凸のある構造物、又は溝のある構造物の表面に、取り付け金具を嵌合固定するために有用である。
図13(E)において、芯材11の両外縁部に、外縁突出部11dが形成されている。
上記外縁部11dは、図11(F)に示されているように、内側にさらに屈曲していて内側屈曲部11eを形成していてもよい。
上記の芯材断面形状は、取り付け金具の用途、構造物及び被覆材料の形状・寸法に応じて適宜選択し設定することができる。
【0031】
図14に記載されている取り付け金具用金具本体1aは、十字形の芯材11と、芯材の互に離間している複数の部分の表裏両面を被覆する表・裏合成樹脂含有シート材12,13とから構成されている。芯材の表・裏合成樹脂含有シート12,13により被覆されていない露出部分に、透孔11bが形成されている。また、表・裏合成樹脂含有シート材12,13は、その外縁部において、互に接合又は連続している。
【0032】
本発明の取り付け金具用金具本体の芯材を構成する材料は、高周波誘導加熱処理により発熱することができ、かつ取り付け金具の芯材として、十分な機械的強度及び耐久性を有する金属材料から選ばれる。このような金属材料としては、例えば、鉄、ステンレススチール、アルミニウム、銅及びこれらの合金などを用いることができる。好ましくは、ステンレスチール、例えばSUS430などを用いられる。
【0033】
本発明の取り付け金具に用いられる表・裏合成樹脂含有シート材に含まれる合成樹脂は、芯材が高周波誘導発熱したとき、その熱によって溶融し、被覆材料に融着し得る接着性合成樹脂(ホットメルト樹脂)又は合成ゴムであればよく、このような合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エチレン−酢酸ビニル重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂/エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三重共重合体樹脂混合物、及びアイオノマー樹脂、などが用いられ、合成ゴムとしては、例えばエチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴム、及びウレタンゴムなどが用いられる。これらの合成樹脂及び合成ゴムは、単一種で用いられてもよく、或は2種以上を混合して用いてもよい。合成樹脂含有シート材は、1枚以上の合成樹脂シートからなるものであってもよく、或は1枚以上の合成樹脂シートと、1枚以上の繊維シートとの積層体であってもよく、或は合成樹脂と補強用繊維との複合体であってもよい。前記繊維シートは、織物、編物、不織布、ネット、メッシュのいずれであってもよく、補強用繊維は、短繊維、ネット、メッシュなどのいずれであってもよい。シート材の厚さには格別の限定はないが、一般に0.1〜0.4mm程度の厚さを有するものを用いることが好ましい。
補強用繊維としては、合成繊維、例えばアラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、及びポリアミド繊維など、及び/又は、無機繊維、例えば、ガラス繊維、及び/又は金属繊維、例えば、ステンレススチール繊維などが用いられる。
表・裏合成樹脂含有シートの外縁部を接合するには、熱溶着、ミシン縫製、リベット接合などのいずれの方法を用いてもよい。
【0034】
本発明の取り付け金具に用いられるメッシュ材は、25〜95%の開口率を有し、かつ、0.05〜1.0mmの厚さを有するものである。メッシュ材は、金具本体の表合成樹脂含有シート材の外表面を被覆し、それに高周波誘導加熱処理が施されたとき、芯材とともに発熱することのできるものであって、それによって、表合成樹脂含有シート材を、溶融し、これを被覆材料の裏面に接着することができる。
メッシュ材は、導電性金属細線を、製織又は製編し、或は不織布製造機に供して、メッシュ状不織布に製造することによって得られる。或は、メッシュ材は、金属箔又は金属薄板に穿孔機を用いて多数の孔を形成して得られる網状の多孔箔又は多孔板であってもよい。前記導電性金属細線、金属箔又は金属板用金属としては、鉄、アルミニウム、銅、及びタングステン、など、並びにステンレスチール及び眞鋳などの合金などが用いられる。或は、メッシュ材は、非導電性又は低導電性有機化合物(例えばポリエステル、セルロースなど)の薄い膜上に、導電性無機物質(例えば導電性フェライトなど)又は導電性有機物質(例えばポリアセチレン化合物など)を被覆し、これを、細線状に加工し、この細線からメッシュを製織又は製編するか、又は前記被覆された薄膜を、多孔薄膜に加工して製造されてもよい。或は、導電性金属により被覆された合成繊維を用いてもよい。本発明の取り付け金具において、メッシュ材は、金具本体の表合成樹脂含有シート材表面上の、1以上の位置に固定されていてもよく、或は、単に載置されていてもよい。
メッシュ材の開口率を25〜90%の範囲に設定することにより、メッシュ材から十分な高周波誘導発熱量を得ることができ、かつ、表合成樹脂含有シート材の溶融した合成樹脂を、メッシュ材の開口部を通して、十分に、被覆材料裏面に接合させることができる。開口率が25%未満では、表合成樹脂含有シート材の被覆シート裏面に対する接着強度が、不十分になる。また、それが10%をこえると、メッシュ材による発熱が不十分になって、表合成樹脂含有シート材と被覆材料との接着が不十分になる。またメッシュ材は、0.05〜1.0mmの厚さを有する。この厚さが0.05mm未満であると、高周波誘導発熱量が不十分になり、またそれが1mmをこえると、表合成樹脂含有シートと、被覆材料との間隔が過大になり、いずれも、その結果、表合成樹脂含有シート材と被覆材料との接着強度が不十分になる。
【0035】
図3,4,13−(B),13−(C)などに示されているように、芯材の透孔の周囲部分が裏側に伸び出て突起部を形成し、この突起部が、取り付け金具の取り付け支点として利用されるときには、この突起部の、それが構造物と接触する部分に、バネ状体(例えば、バネ鋼)、又はゴム状物質(例えばクロロプレンゴムなど)などからなるクッション材が、配置されることが好ましい。このようなクッション材を用いることにより、取り付け金具を、前記突起部を支点として、より安定した姿勢で構造物上に、アンカーボルトにより固定することができる。
【0036】
本発明の取り付け金具を用いて、被覆材料を構造物上に固定することができる。
本発明の取り付け金具を適用する構造物の構造、材質、形状及び寸法には格別の制限はないが、一般に、コンクリート構造物、石材製構造物、土構造物、及びこれらの混用構造物などに適用される。
また被覆材料についても、その構造、材質、形状、寸法などに格別の制限はないが、一般に防水・遮水性シート材料及び板状材料などが用いられる。被覆材料を構成する材質としては、表合成樹脂含有シート材の溶融体と接着できる樹脂材料、例えば表合成樹脂含有シートに用いられる熱可塑性合成樹脂及びゴム材料から選ばれた1種以上を用いることが好ましい。
【0037】
本発明の取り付け金具を用いて、構造物に、被覆材料を固定するには、本発明方法(1)又は(2)を用いることができる。
本発明方法(1)は、アンカーボルトを使用しない場合の固定方法であって、
構造物とそれを被覆する被覆材料との間に、本発明の取り付け金具を配置し、この取り付け金具に、前記被覆材料を介して、高周波誘導加熱を施し、それによって、前記芯材及びメッシュ材を発熱させて、前記表側合成樹脂含有シート材を溶融して、前記取り付け金具本体を前記メッシュ材を介して前記被覆材料の裏面に固着させ、それと同時に前記裏側合成樹脂含有シート材を溶融して、前記取り付け金具を前記構造物の表面に固着させることを特徴とするものである。
【0038】
本発明方法(1)においては、アンカーボルトを使用する必要がなく、或はアンカーボルトを使用することが困難であって、構造物表面に、裏合成樹脂含有シート材の加熱溶融によって、取り付け金具を接着することが可能な場合に有用である。
本発明方法(1)においては、構造物上の所要位置に取り付け金具(メッシュ材付)を配置し、その上に被覆材料を配置して、取り付け金具を介して構造物表面を被覆する。次に、被覆材料を介して、取り付け金具に高周波誘導加熱処理を施して、芯材及びメッシュ材を発熱させる。
芯材及びメッシュ材に対する高周波誘導加熱処理は、例えば、高周波誘導加熱機(0.3〜2kVA)を用い、通電時間:2〜10秒、冷却時間:5〜20秒間の条件下で押圧することにより実施することができる。このような高周波誘導加熱装置に入力すると、磁力線が発生し、この磁力線は、被覆材料、合成樹脂含有シート材を透過して、芯材及びメッシュ材に渦電流を発生させ、それによって芯材及びメッシュ材を発熱させ、メッシュ材に接触している被覆材料の裏面と表合成樹脂含有シート材を同時に昇温させ、かつ芯材の発熱により短時間内に表・裏合成樹脂含有シート材を溶融し、被覆材料・裏面と構造物表面とを、取り付け金具を介して固定することができる。このとき、表・裏合成樹脂含有シートの外縁部に互に接合又は連続していない部分があっても、これらの部分も互に溶融接着して、その間に芯材を固定することができる。
【0039】
本発明方法(2)は、アンカーボルトを使用する方法である。
本発明方法(2)は、構造物表面上の所定の位置に、アンカーボルト用透孔を有する本発明の取り付け金具の金具本体を配置し、取り付け金具本体の前記透孔を通して、アンカーボルトにより、前記構造物に固定し、この固定された金具本体上を前記メッシュ材により被覆し、
前記取り付け金具を介して、前記構造物表面を被覆材料により被覆し、
前記取り付け金具に、前記被覆材料を介して、高周波誘導加熱処理を施し、それによって、前記芯材及びメッシュ材を発熱させ、前記表側合成樹脂含有シート材を溶融して、前記金具本体を前記メッシュ材を介して前記被覆材料の裏面に融着させることを特徴とするものである。
本発明方法(2)に用いられるアンカーボルトの構造、形状、寸法、材質などに格別の制限はなく、構造物、被覆材料、取り付け金具の構造、形状、寸法などに応じて適宜選定することができるが、通常ステンレススチール製であって頭部と脚部とからなるものが用いられる。
【0040】
本発明方法(2)において、取り付け金具の金具本体を、構造物表面の所望位置に配置し、金具本体のアンカーボルト用透孔を通してアンカーボルトを構造物中に打ち込んで、金具本体を、構造物に固定する。この固定された金具本体上に、メッシュ材を配置して被覆する。このメッシュ材付取り付け金具を介して、構造物の表面を被覆材料により被覆する。この被覆材料を介して、取り付け金具に高周波誘導加熱処理を施して、芯材及びメッシュ材を発熱させ、表合成樹脂含有シート材を溶融し、これをメッシュ材の開口部を介して、被覆材料裏面に融着する。また、表・裏合成樹脂含有シート材の外縁部に、互に連続又は接合していない部分があっても、この溶融により互に接着して、その間に芯材を固定することができる。
前記本発明方法(1),(2)において、高周波誘導加熱による表・裏合成樹脂含有シート材の溶融・接着、特に表合成樹脂含有シート材の、メッシュ材を介して、被覆材料裏面への接着は、芯材及びメッシュ材の発熱により短時間に完了するから、芯材が、過熱により変質・劣化することはない。
【0041】
本発明方法の実施態様例を図15〜20を参照してさらに説明する。
図15において、構造物(例えばコンクリート構造体)20の表面に、図3(A),(B)に示された多数のアンカーボルト用透孔付き円形取り付け金具の金具本体1aを、所定の配置計画に従って配置し、これらの透孔を通してアンカーボルト(図示されていない)によりコンクリート構造物中に打ち込んで固定した。構造物が、土構造物のように、軟弱なものであるときは、土構造物中に、後に図19を参照して説明するように、多数の杭を所定配置計画に従って打ち込み、この杭の頭部表面に、図15に記載のように、取り付け金具の金具本体を、アンカーボルトにより固定してもよい。次に、金具本体上にメッシュ材を被覆配置し、必要により所望の仮り固定処理(接着剤止め、ホッチキス止め、ピン止め(図示されていない)などを施し、その上に、被覆材料(図示されていない)を被覆し、このとき、取り付け金具の、被覆材料に対向している表面を、被覆材料の裏面に正対して接触するようにする。次に、被覆材料を介して、取り付け金具のそれぞれに、高周波誘導加熱処理を施して、芯材及びメッシュ材を発熱させ、必要により、この加熱と同時に、被覆材料を取り付け金具に押圧し、それによって、取り付け金具の表合成樹脂含有シート材を溶融し、メッシュ材の開口部を介して、被覆材料の裏面に融着させる。
【0042】
図16において、取り付け金具の金具本体1aは複数個のアンカーボルト用透孔を有する長尺の帯状体である。複数本の帯状金具本体1aを、所定配置計画に従って、構造体20の表面上に配置し、アンカーボルト(図示されていない)を、透孔から構造体に打ち込んで、帯状金具本体1aを構造体20の表面上に固定する。
構造物が土構造物のように表面が軟弱である場合には、例えば土構造物の傾斜表面に、後に図20を参照して説明するように、法面安定用プレート(図示されていない)を配置、固定し、この法面安定用プレートに、図16に示されている帯状金具本体を、アンカーボルト(図示されていない)により固定してもよい。この金具本体1a上にメッシュ材(図示されていない)を配置被覆し、必要により、これに、仮止め処理を施す。このようにして準備された取り付け金具上を、被覆材料によって被覆する。このとき、取り付け金具の表合成樹脂含有シート材12の表面は、被覆された被覆材料の裏面に十分に正対して接触していることが好ましい。上記のように配置された被覆材料を介して、取り付け金具に対して、前述と同様の高周波誘導加熱処理を施して、芯材及びメッシュ材を発熱させ、表合成樹脂含有シート材を、メッシュ材の開口部を介して、被覆材料の裏面に融着させ、それによって、被覆材料を所定位置に固定する。
【0043】
図17において、構造物20の表面に、例えば図8に記載されているような十字形状を有する複数個のアンカーボルト用透孔付取り付け金具の金具本体1aを、所定の配置計画に従って、配置し、それぞれを、アンカーボルト(図示されていない)を前記透孔を通して、構造体20に打ち込んで固定する。図17に記載の十字形状金具本体は、土構造物に打設された多数の杭の頭部表面に固定されてもよく(図19参照)、或は法面安定用プレート上に固定されてもよい(図20参照)。
次に、この金具本体1aのそれぞれの上に、メッシュ材(図示されていない)を配置被覆し、必要によりそれを金具本体に固定し、その上に、被覆材料を被覆する。このとき、被覆材料の裏面に対し、取り付け金具の表面が正対して接触しているようにする。
この取り付け金具に、被覆材料を介して、高周波誘導加熱処理を施し、芯材及びメッシュ材を発熱させて、前記と同様に、被覆材料の裏面を取り付け金具のメッシュ材を介して金具本体に接着固定する。
【0044】
図18において、構造物20の表面上に、芯材11の、表・裏合成樹脂含有シート材12,13により被覆されていない部分にアンカー用透孔を有する格子状取り付け金具の金具本体1aを配置する。この格子状金具本体は、その芯材11の交差部11fにおいて、例えば4枚の芯材部分が、突き合わされ、裏打ち材(図示されていない)に連結鋲21により鋲止めされて連結されており、この連結部分の中央部にアンカーボルト用透孔11bが形成されている。勿論芯材交差部11fの形成方法は上記の方法に限定されるものではなく、例えば、一体成形されたものであってもよく、或は交差部11fにおいて溶接されたものであってもよい。
図18に記載の金具本体19を、構造物20の表面に配置し、その透孔から、アンカーボルト(図示されていない)を構造物20に打ち込んで金具本体を固定し、金具本体の表合成樹脂含有シート材12の上に、メッシュ材(図示されていない)を被覆配置し、必要により、これに固定処理を施す。メッシュ材は、予め、金具本体の表合成樹脂含有シート材12に固定されていてもよい。
この取り付け金具に、被覆材料を介して高周波誘導加熱処理を施して、芯材及びメッシュ材を発熱させ、前記と同様にして、被覆材料の裏面を、メッシュ材を介して、金具本体に融着固定する。
【0045】
本発明の取り付け金具を使用するに当り、構造物の取り付け面が、軟強な場合、例えば土砂構造物に取り付ける場合には、例えば、図19及び図20に示されている工法を用いることができる。
図19において、土構造物20aの傾斜表面から、杭22を打設し、杭22の頭部表面を、被覆すべき被覆材料の被覆裏面に正対するようにする。この杭22の頭部表面に、取り付け金具1の金具本体1aを、アンカーボルト15により、固定する。この金具本体1aの上にメッシュ材14を被覆配置し、その上を、被覆材料23で被覆し、前述のように、この被覆材料23を介して、取り付け金具1に高周波誘導加熱処置を施して、芯材(図示されていない)及びメッシュ材14を発熱させて、被覆材料23の裏面を、取り付け金具1のメッシュ材14の開口部を介して、金具本体1aに固定する。杭22の頭部表面形状、寸法には格別の制限はなく、ほぼ円形又は角形或はその他の形状であってもよい。
【0046】
図20において、土構造物20aの傾斜表面に、法面安定用プレート25を配置し、これを、土構造物20a中に配置してグランドアンカー24により所定位置に固定する。
この法面安定用プレート25の表面の所定位置に本発明の取り付け金具の金具本体1aを配置する。金具本体1aは、アンカーボルト用透孔を有し、アンカーボルトにより法面安定用プレートに固定されていてもよい(図示されていない)。或は、法面安定用プレートの表面が、合成樹脂と融着可能な場合は、アンカーボルトを用いないこともある。このときは、必要により、法面安定用プレート上に金具本体1aを仮止めしてもよい。
金具本体1a上にメッシュ材14を被覆配置し、その上に被覆材料23を配置し、この被覆材料23を介して、取り付け金具に高周波誘導加熱処理を施して、芯材及びメッシュ材を発熱させ、表合成樹脂含有シート材を溶融し、それによって、被覆材料を、メッシュ材を介して、金具本体に固定し、法面安定用プレート表面が合成樹脂溶融により接着可能なときは、また、裏合成樹脂含有シート材を溶融して、金具本体を、法面安定用プレートに固定する。法面安定用プレートの形状寸法には格別の制限はなく、帯状体であってもよく、十字形状であってもよく、或はその他の形状であってもよい。また、法面安定用プレートは、法面の傾斜方向に平行に伸びていてもよく、或はそれに交差する方向に伸びていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の取り付け金具及び方法は、構造物に被覆材料を容易に、かつ、短時間内に、取り付け金具中の金属製芯材を変質又は劣化させることなく固定することができ、このため、例えば、防性・遮水工事などの実用上、有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1(A)は、本発明の取り付け金具の一実施例の平面説明図。図1(B)は図1(A)に示された取り付け金具の線A−Aに沿う断面説明図。
【図2】本発明の取り付け金具の他の実施例のアンカーボルト付き断面説明図。
【図3】図3(A)は本発明の取り付け金具のさらに他の実施例の平面説明図。図3(B)は図3(A)の取り付け金具の線B−Bに沿う断面説明図。
【図4】本発明の取り付け金具のさらに他の実施例の断面説明図。
【図5】本発明の取り付け金具のさらに他の実施例に用いられる金具本体の平面説明図。
【図6】本発明の取り付け金具のさらに他の実施例に用いられる金具本体の平面説明図。
【図7】本発明の取り付け金具のさらに他の実施例に用いられる金具本体の平面説明図。
【図8】本発明の取り付け金具のさらに他の実施例に用いられる金具本体の平面説明図。
【図9】本発明の取り付け金具のさらに他の実施例に用いられる金具本体の平面説明図。
【図10】本発明の取り付け金具のさらに他の実施例に用いられる金具本体の平面説明図。
【図11】図11(A),(B)及び(C)は、それぞれ、図10の金具本体の線C−C線に沿う断面説明図。
【図12】本発明の取り付け金具のさらに他の実施例に用いられる金具本体の平面説明図。
【図13】図13(A),(B),(C),(D)及び(E)は、それぞれ本発明の取り付け金具に用いられる金具本体中の芯材の一例の断面説明図。
【図14】本発明の取り付け金具のさらに他の実施例に用いられる金具本体の平面説明図。
【図15】本発明の取り付け金具の一実施例に用いられる金具本体の、構造物上配置説明図。
【図16】本発明の取り付け金具の他の実施例に用いられる金具本体の、構造物上配置説明図。
【図17】本発明の取り付け金具の他の実施例に用いられる金具本体の、構造物上配置説明図。
【図18】本発明の取り付け金具の他の実施例に用いられる金具本体の、構造物上配置説明図。
【図19】本発明の取り付け金具を用いて、土構造物の傾斜面に被覆材料を固定する本発明方法の一例の説明図。
【図20】本発明の取り付け金具を用いて、土構造物の傾斜面に、被覆材料を固定する本発明方法の他の例の説明図。
【符号の説明】
【0049】
1 取り付け金具
11 金属製芯材
11a 芯材の突起部
11b 芯材の透孔
11c 芯材突起部により形成される凹部
11d 芯材の外周縁裏面側突出端部
11e 芯材の外周縁裏面側突出端部に続く内側突出端部
11f 芯材の交差部
12 表合成樹脂含有シート材
12a シート材12の外縁部
12b シート材12の透孔
13 裏合成樹脂含有シート材
13a シート材13の外縁部
13b シート材13の透孔
14 メッシュ材
15 アンカーボルト
16 頭部
17 脚部
18 シート材12とシート材13との連続部
19a,19b 互に連続しているシート材12及び13の接続部
20 構造物
20a 土構造物
21 連結鋲
22 杭
23 被覆材料
24 グランドアンカー
25 法面安定用プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物と、それを被覆する材料との間に介在し、前記構造物の表面に、前記被覆材料を固定するための取り付け金具であって、
(1)所定の形状・寸法を有し、高周波誘導発熱が可能な金属材料からなる芯材と、前記芯材の少なくとも1部分の表裏両面を被覆していて、かつ、加熱融着可能な表・裏合成樹脂含有シート材とを含む金具本体、並びに、
(2)前記金具本体の前記表合成樹脂含有シート材の外表面を被覆しており、かつ高周波誘導発熱が可能なメッシュ材を含み、
前記表・裏合成樹脂含有シート材は、それぞれ、前記芯材の外周縁の少なくとも1部分又は全部の外側に伸び出て、互に対向している外縁部を有し、かつ、この外縁部は、その少なくとも2箇所において、互に接合又は連続しており、
前記メッシュ材の厚さが0.05〜1.0mmであり、かつその下記式により規定される開口率;
メッシュ材開口率(%)
=〔(メッシュ材開口部の合計面積)/(メッシュ材面積)〕×100
が、25〜95%であることを特徴とする取り付け金具。
【請求項2】
前記表・裏合成樹脂含有シートが、前記合成樹脂からなる1枚以上のシートと、1枚以上の繊維含有シートとの積層体である、請求項1に記載の取り付け金具。
【請求項3】
前記芯材の、前記表・裏合成樹脂含有シートにより被覆されている部分の1以上の所定位置に、アンカーボルト用透孔が形成されており、かつ前記表・裏合成樹脂含有シート材に、前記芯材の透孔に連通する透孔が形成されている、請求項1又は2に記載の取り付け金具。
【請求項4】
前記透孔を有する芯材の前記透孔の周囲部分が、裏側に伸び出て、突起部を形成し、この突起部の先端部において開口している、請求項3に記載の取り付け金具。
【請求項5】
前記芯材の突起部が、前記裏側合成樹脂含有シートの透孔を通ってその外側に突出している、請求項4に記載の取り付け金具。
【請求項6】
前記芯材の外周縁の1以上の部分又は全部に、裏側に伸び出る外周縁突出部が形成されている請求項3〜5のいずれか1項に記載の取り付け金具。
【請求項7】
前記芯材の突起部の、前記透孔を囲む先端部の最外端が、前記芯材の前記裏側に伸び出た外周縁突出部の最外端よりもさらに外側に伸び出ている、請求項6に記載の取り付け金具。
【請求項8】
前記芯材の、前記表・裏合成樹脂含有シート材により被覆されていない露出部分の、少なくとも1以上の所定位置に、アンカーボルト用透孔が形成されている、請求項1又は2に記載の取り付け金具。
【請求項9】
前記芯材の、前記透孔の周囲部分が、裏側に伸び出て突起部を形成し、この突起部の先端部において開口している、請求項8に記載の取り付け金具。
【請求項10】
前記芯材の外周縁の1以上の部分又は全部に、裏側に伸び出る外周縁突出部が形成されている、請求項8または9に記載の取り付け金具。
【請求項11】
前記芯材の前記突起部の前記透孔を囲む先端部の最外端が、前記外周縁突出部の最外端よりもさらに外側に伸び出ている、請求項10に記載の取り付け金具。
【請求項12】
前記芯材の前記突起部の先端部の外面に、前記アンカーボルトの脚部を通す透孔を有するクッション材がさらに配置されている、請求項4又は9に記載の取り付け金具。
【請求項13】
構造物とそれを被覆する被覆材料との間に、請求項1又は2に記載の取り付け金具を配置し、この取り付け金具に、前記被覆材料を介して、高周波誘導加熱処理を施し、それによって、前記芯材及びメッシュ材を発熱させて、前記表側合成樹脂含有シート材を溶融して、前記取り付け金具本体を前記メッシュ材を介して前記被覆材料の裏面に固着させ、それと同時に前記裏側合成樹脂含有シート材を溶融して、前記取り付け金具を前記構造物の表面に固着させることを特徴とする、構造物に被覆材料を取り付ける方法。
【請求項14】
構造物表面上の所定の位置に、請求項3〜12のいずれか1項に記載の取り付け金具の金具本体を配置し、取り付け金具本体の前記透孔を通して、アンカーボルトにより、前記構造物に固定し、この固定された金具本体上を前記メッシュ材により被覆し、
前記取り付け金具を介して、前記構造物表面を被覆材料により被覆し、
前記取り付け金具に、前記被覆材料を介して、高周波誘導加熱処理を施し、それによって、前記芯材及びメッシュ材を発熱させ、前記表側合成樹脂含有シート材を溶融して、前記金具本体を前記メッシュ材を介して前記被覆材料の裏面に固定させることを特徴とする、構造物に被覆材料を取り付ける方法。
【請求項15】
前記構造物と被覆材料との間に配置された前記取り付け金具の位置を、金属探知機、又は磁石により検知する、請求項13又は14に記載の取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−152751(P2006−152751A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348648(P2004−348648)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】