説明

被覆磁性ナノ粒子を含む相変化磁気インクおよびその製造プロセス

【課題】磁気インク文字認識(MICR)ならびに磁気符号化として使用されるか、または自動小切手処理のほか、同一に見える印刷物における磁性粒子を検出することなどによる文書認証のための偽造防止印刷のためのMICRインクとして偽造防止印刷用途に使用される磁気インクを提供する。
【解決手段】相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置されたシェルを含む被覆磁性ナノ粒子とを含む相変化磁気インク。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
磁性金属ナノ粒子は、MICRインクを効果的にするための重要な特性である高度な磁性残留磁気を提供する可能性を有するため、MICRインクに所望される。しかし、多くの場合、磁性金属ナノ粒子は、自然発火性であるため、安全上の問題がある。当該粒子を含む相変化インクの大規模生産は、これらの酸化性の高い粒子を扱う際に空気および水を完全に除去することが必要であるため、困難である。インク製造プロセスは、無機磁性粒子が特定の有機ベースインク成分と不相溶であり得るため、磁性顔料を用いた場合に特に困難である。
【0002】
水性MICRインクは、相変化技術または固体インク技術などの特定のインクジェット印刷技術で特殊な印刷ヘッドを使用することを必要とする。
【0003】
現在、商業的に入手可能な相変化インクまたは固体インクMICRインクは存在しない。相変化インクジェット印刷または固体インクジェット印刷での使用に好適なMICRインクの必要性が存在する。
【0004】
磁性材料の粒径が小さく、少ない粒子充填量で優れた磁気特性を維持する能力とともに磁性顔料分散性および分散安定性が向上し、相変化インクジェット印刷技術での使用に好適であるMICRインクジェットインク、ならびに簡素化され、環境的に安全であり、安定な粒子分散性を有する分散性の高い磁気インクを製造することが可能であり、安全かつコスト効果の高い金属ナノ粒子の処理を可能にする、MICRインクを製造するためのプロセスの必要性が依然として存在する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本開示の実施形態による被覆磁性金属ナノ粒子の絵図である。
【図2】本開示の別の実施形態による被覆磁性金属ナノ粒子の絵図である。
【図3】本開示のさらに別の実施形態による被覆磁性金属ナノ粒子の絵図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置されたシェルを含む被覆磁性ナノ粒子とを含む相変化磁気インクについて記載する。シェルコーティングは、酸素に対する効果的なバリヤを提供し、その結果としてナノ粒子の磁気コアに、酸化に対する有意な安定性を付与する。これらの磁性ナノ粒子を空気中または通常の不活性雰囲気条件下で扱うことができ、発火の危険性も低減される。
【0007】
本明細書のインクは、磁気インク文字認識(MICR)ならびに磁気符号化として使用されるか、または自動小切手処理のほか、同一に見える印刷物における磁性粒子を検出することなどによる文書認証のための偽造防止印刷のためのMICRインクとして偽造防止印刷用途に使用される。MICRインクを単独で、または他のインクもしくは印刷材料と組み合わせて使用することができる。
【0008】
いくつかの実施形態において、相変化磁気インクを製造するためのプロセスは、相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置されたシェルを含む被覆磁性ナノ粒子とを混合すること、加熱して、金属ナノ粒子を含む相変化磁気インクを得ること、場合により相変化磁気インクを液体状態のまま濾過すること、および相変化磁気インクを冷却して固体状態にすることを含む。被覆磁性ナノ粒子を含む濃縮分散体の最初の製造後しばらくしてから、インクにさらなるインク担体材料またはインク成分を加えることができる。
【0009】
相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置されたシェルを含む被覆磁性ナノ粒子との混合物を加熱することは、選択された材料のための溶融組成物を得るのに十分な任意の温度、例えば60℃から180℃に加熱することを含むことができる。
【0010】
相変化インク担体、任意の分散剤、任意の相乗剤、任意の酸化防止剤および任意の着色剤の1種または複数種を混合して加熱した後に、任意のさらなる添加剤または含まれていない材料を加えて、第1の組成物を得て、次いで第1の組成物を被覆磁性ナノ粒子と混合した後に、要望に応じてさらに処理して、相変化磁気インク組成物を形成することができる。
【0011】
135℃で70ミリメートルのMott濾過アセンブリにて1マイクロメートルナイロンフィルタまたは5マイクロメートルナイロンフィルタなどによるナイロン布フィルタなどを使用することによって、相変化磁気インクを液体状態にあるときに濾過することができる。
【0012】
本明細書の被覆金属磁性ナノ粒子は、ナノメートルサイズの範囲にあることが望ましく、コアおよびシェルを含む平均粒径(体積平均粒径または最長寸法など)の全体粒径が3から500ナノメートル(nm)、または3から300nm、または3から30nm、または10から500nm、または10から300nm、または10から100nm、または10から50nm、または2から20nm、または25nmである。本明細書において、「平均」粒径は、一般的に、d50で表されるか、または粒径分布の50番目の百分位数の体積中間粒径値として定義され、分布における粒子の50%がd50粒径値より大きく、分布における粒子の他の50%がd50値より小さい。動的光散乱法などの、粒径を推定する光散乱技術を使用する方法によって平均粒径を測定することができる。粒径は、透過型電子顕微鏡法によって生成された粒子の画像、または動的光散乱法の測定値から導かれた顔料粒子の長さを指す。
【0013】
図1、2および3を参照すると、被覆磁性ナノ粒子10、12、14が3つの可能な形状または構成で概略的に示されているが、これらの形状に限定されない。被覆磁性ナノ粒子10、12、14は、コーティング材料を有する磁気金属コア16またはその上に配置されたシェル18を含む。コーティング材料またはシェル18は、金属ナノ粒子を保護するように作用することができる。いくつかの実施形態において、コーティングまたはシェル18は、空気および水分安定性を磁性金属ナノ粒子10、12、14に付与して、磁性金属ナノ粒子を取扱い上安全にする。
【0014】
本明細書の金属ナノ粒子は、強磁性であり得る。強磁性インクは、磁石によって磁化され、磁石が除去されると飽和磁化の一部を維持する。このインクの主たる用途は、小切手処理に使用される磁気インク文字認識(MICR)である。
【0015】
本明細書のインクは超常磁性インクであり得る。超常磁性インクも磁場の存在下で磁化されるが、それらは、磁場が存在しないとそれらの磁化を失う。超常磁性インクの主たる用途は、偽造防止印刷である。本明細書に記載される磁性粒子およびカーボンブラックを含むインクは、通常の黒色インクのように見えるが、磁気センサまたは磁気撮像デバイスを使用することによって磁気特性を検出することができる。このインクによって作製された偽造防止印刷物の磁性金属特性を認証するために金属検出器を使用することができる。
【0016】
超常磁性ナノ粒子は、磁石によって磁化された後に残留磁化が0になる。強磁性ナノ粒子は、磁石によって磁化された後に0より大きい残留磁化を有する。すなわち、強磁性ナノ粒子は、磁石によって誘発された磁化の一部を維持する。ナノ粒子の超常磁性または強磁性特性は、一般には、粒径、形状、材料選択および温度を含むいくつかの要因の関数である。所定の材料では、所定の温度で、保磁力(すなわち強磁性挙動)が、複数磁区構造から単一磁区構造への移行に対応する臨界粒径で最大になる。この臨界粒径は、臨界磁気磁区サイズ(Dc、球形)と呼ばれる。単一磁区の範囲では、熱緩和により、粒径が小さくなると保磁力および残留磁化が急激に低下する。粒径がさらに減少すると、熱効果が支配的になり、それまでは磁気飽和だったナノ粒子を減磁するのに十分に強くなるため、誘発された磁化が完全に失われる。超常磁性ナノ粒子は、残留磁気および保磁力が0である。Dc以上のサイズの粒子は強磁性である。室温において、Dcは、鉄では15ナノメートルであり、fccコバルトでは7ナノメートルであり、ニッケルでは55ナノメートルである。粒径が3、8および13ナノメートルの鉄ナノ粒子は超常磁性であるのに対して、粒径が18から40ナノメートルの鉄ナノ粒子は強磁性である。合金では、Dc値が材料に応じて異なり得る。さらに詳細については、Burkeら、Chemistry of Materials、4752〜4761頁、2002、米国特許公開第20090321676号明細書、B.D. Cullity and C.D. Graham、Introduction to Magnetic Materials、IEEE Press(Wiley)、第2版、2009、第11章、Fine Particles and Thin Films、359〜364頁;Luら、Angew.Chem.Int.編、2007、46、1222〜444頁、Magnetic Nanoparticles:Synthesis, Protection, Functionalization and Applicationを参照されたい。
【0017】
磁性ナノ粒子は、Fe、Mn、Co、Niならびにそれらの混合物および合金からなる群から選択されるコア、またはFe、Mn、Co、Ni、FePt、CoPt、MnAl、MnBiならびにそれらの混合物および合金からなる群から選択されるコアを含む。いくつかの実施形態において、金属ナノ粒子は、Fe、MnおよびCoの少なくとも1つを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、金属ナノ粒子は、二種金属ナノ粒子または三種金属ナノ粒子である。いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、二種金属コアまたは三種金属コアを含む。好適な二種金属磁性ナノ粒子の例としては、CoPt、fcc相FePt、fct相FePt、FeCo、MnAl、MnBiおよびそれらの混合物が挙げられる。三種金属ナノ粒子としては、上記磁気ナノ粒子の三種混合物、またはコバルト被覆fct相FePtなどの三種金属ナノ粒子を形成するコア/シェル構造体が挙げられる。
【0019】
より大きな粒子のボールミル磨砕の後に焼鈍することを含む任意の方法によって磁性ナノ粒子を製造することができる。ボールミル粉砕は、後に必要な単一結晶形に結晶化することが必要になる非晶質のナノ粒子を生成するため、焼鈍が一般に必要である。ナノ粒子をRF(高周波)プラズマによって直接製造することもできる。
【0020】
磁性ナノ粒子は、0.2ナノメートル(nm)から100nmまたは0.5nmから50nmまたは1nmから20nmの厚さを有するシェルを含む。
【0021】
磁性ナノ粒子の例示的な形状としては、針形、粒状、球形、板状、針状、円筒状、八面体形、十二面体形、管状、立方体形、六角形、卵形、球状、樹枝状、角柱形および不定形等が挙げられる。不定形は、本開示の文脈において、認識可能な形状を有する不明確な形と定義される。不定形は、明確な辺または角度を有さない。単一ナノ結晶の短軸に対する長軸の比(D長/D短)は、10:1未満、2:1未満または3:2未満であり得る。本明細書の単一磁性ナノ粒子の長軸と短軸の比(長軸D/短軸D)は、10:1未満、2:1未満または3:2未満であり得る。具体的な実施形態において、磁気コアは、アスペクト比が3:2から10:1未満の針状形を有する。
【0022】
磁性ナノ粒子は、20emu/gから100emu/g、30emu/gから80emu/gまたは50emu/gから70emu/gの残留磁気を有することができる。
【0023】
磁性ナノ粒子の保磁力は、200エルステッドから50000エルステッド、1000エルステッドから40000エルステッドまたは10000エルステッドから20000エルステッドであり得る。
【0024】
磁気飽和モーメントは、例えば、20emu/gから150emu/g、30emu/gから120emu/gまたは40emu/gから80emu/gであってもよい。
【0025】
コーティング材料は、炭素コーティング、ポリマーコーティング、無機酸化物コーティング、界面活性剤コーティング、ならびにそれらの混合物および組合せを含む。
【0026】
本明細書のコーティングまたはシェルは、任意の好適な方法または所望の方法によって作製された炭素コーティングを含むことができる。炭素被覆金属ナノ粒子は、一般にはレーザ蒸着法によって製造される。3から10ナノメートルの径を有するグラファイト層被覆ニッケルナノ粒子をレーザ蒸発技術によって製造することができる。さらに詳細については、Q.Ou、T.Tanaka、M.Mesko、A.Ogino、M.Nagatsu、Diamond and Related Materials、第17巻Vol、4〜5号、664〜668頁、2008を参照されたい。水素流中で鉄を触媒として使用してポリビニルアルコールを炭化することによって、炭素被覆鉄ナノ粒子を製造することができる。さらに詳細については、Yu Liang Anら、Advanced Materials Research、92、7、2010を参照されたい。焼鈍法を使用することによって炭素被覆鉄ナノ粒子を製造することができる。焼鈍法は、予め形成された鉄ナノ粒子を安定化させるのに使用することができる安定化有機材料−3−(N,N−ジメチルラウリルアンモニオ)プロパンスルホン酸の炭化を誘発する。該プロセスを水素流下で実施して、炭化プロセスを確保することができる。炭素シェルは、酸性溶液中で鉄コアを酸化から効果的に保護することが判明した。さらに詳細については、Z.Guo、L.L.Henry、E.J.Podlaha、ECS Transactions、1(12)63〜69、2006)を参照されたい。炭素材料を、非晶質炭素、ガラス質炭素、グラファイト、炭素ナノフォームおよびダイヤモンド等からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、非晶質炭素、ガラス質炭素、グラファイトおよびそれらの組合せを含む炭素シェルを含む。炭素被覆金属ナノ粒子をNanoshel Corporationなどから商業的に入手することもできる。
【0027】
本明細書のコーティングまたはシェルは、ポリマーコーティングを含むことができる。好適なポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステルならびにそれらの混合物および組合せが挙げられる。ポリマーシェルは、直鎖状または分枝状、ランダムまたはブロックコポリマーであり得るホモポリマーまたはコポリマーを含むことができる。
【0028】
ポリマー被覆金属ナノ粒子を任意の好適な方法または所望の方法によって製造することができる。ナノ粒子における磁気金属コアのための保護コーティング層を製造するのに様々なポリマーが好適である。好適な例としては、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリスチレンおよびポリエステル等が挙げられる。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー、直鎖状または分枝状、ランダムまたはブロックコポリマーであり得る。
【0029】
粒子をポリマーで被覆するためのコーティングおよび方法は、Caruso,F、Advanced Materials、13、11〜22(2001)に記載されている。ポリマー被覆ナノ粒子を、具体的な用途において、粒子表面の重合、粒子への吸着、重合プロセスによる表面改質、自己構成ポリマー層、沈降および表面反応ならびに予め形成された無機コロイドの制御堆積を含む無機および複合コーティング、ならびに生体巨大分子層の使用を含む合成経路および非合成経路を介して得ることができる。磁性ナノ粒子またはミクロ化粒子を製造するためのいくつかの技術が、Journal of Separation Science、30、1751〜1772(2007)にも記載されている。
【0030】
さらに、ポリスチレン被覆コバルトナノ粒子が、米国特許公開第2010/0015472A1号明細書(Bradshaw)に記載されている。そのプロセスは、アルゴン下で160℃にて、酸化ホスフィン基を末端とするポリスチレンポリマーおよびアミン末端ポリスチレンの存在下で溶媒としてのジクロロベンゼン中にてジコバルトオクタカルボニルを熱分解することを含む。そのプロセスは、ポリスチレンシェルを含むポリマーコーティングを有する磁性コバルトナノ粒子を与える。また、本来のポリスチレンシェルを他の所望のポリマーと交換することによって、被覆コバルトナノ粒子の表面に他のポリマーシェルを配置することができる。その参考文献には、トルエン中でのポリメチルメタクリレート(PMMA)との交換反応により、被覆ナノ粒子上のポリスチレンシェルをポリメタクリレートシェルで置き換えることがさらに記載されている。これらのポリマー被覆磁性ナノ粒子材料は、磁気インクの作製にも好適である。
【0031】
米国特許公開第2007/0249747A1号明細書(Tsujiら)には、SH末端ポリマーの存在下でFePtナノ粒子分散体を撹拌することによって、粒径が4ナノメートルの磁性FePtナノ粒子を含む金属ナノ粒子からポリマー被覆金属ナノ粒子を作製することが開示されている。好適なポリマーとしては、PMMAが挙げられる。
【0032】
磁性ナノ粒子の表面を、グラフト、原子移動ラジカル重合(ATRP)および可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合技術(後者は連鎖移動剤を使用するが、金属触媒を使用しない)、溶媒蒸発、積層法、相分離、ゾル−ゲル遷移、沈降、磁性粒子の存在下での不均一系重合、懸濁/乳化重合、ミクロ乳化重合、分散重合などによって改質することができる。
【0033】
上記の既知の方法に加えて、抗酸化性分子をさらなる疎水性ポリマーコーティングとともにTiO粒子表面に直接化学グラフトするための音化学処理の使用(Chem.Commun.、4815〜4817(2007))、パルス式プラズマ技術の使用(J.of Macromolecular Science、Part B:Physics、45、899〜909(2006))、ポリマーによるミクロ粒子の被覆/カプセル化のための超臨界流体および逆溶剤プロセスの使用(J.of Supercritical Fluids、28、85〜890(2004))、ならびに狭粒径分布ポリマー−顔料−ナノ粒子複合体の製造のための電気流体力学的噴霧の使用などによるいくつかの特定の技術を使用して、本明細書のインクの被覆ナノ粒子を製造することもできる。
【0034】
本明細書のコーティングまたはシェルは、シリカ、チタニアおよび酸化亜鉛などの無機酸化物コーティングを含むことができる。
【0035】
無機酸化物で構成された保護層(シェル)を有する当該コア−シェル粒子を作製するための方法は、金属ナノ粒子の表面上のテトラアルコキシシランの触媒加水分解によって金属ナノ粒子の表面のシリカコーティングを設ける方法を記載している米国特許公開第2010/0304006号明細書に記載されている。金属ナノ粒子の表面に水が直に接触するのを回避するために、該プロセスは、シリカ前駆体の加水分解/縮合に必要なだけの量の水の存在下で、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒を含む媒体中で実施される。この方法によって製造される被覆磁性ナノ粒子としては、FeおよびFe/Co合金が挙げられる。
【0036】
さらに、Bomati−Miguelら、Journal of magnetism and Magnetic Materials、290〜291、272〜275(2005)には、フェロセン(鉄金属源)およびオルト珪酸テトラエチル(TEOS)エアロゾル(シロキサン保護コーティング源)のレーザ誘発熱分解を含む連続プロセスによるシリカ被覆鉄ナノ粒子の一工程製造が記載されており、Niら、Materials Chemistry and Physics、120、206〜212(2010)には、触媒量のアンモニア溶液の存在下で、オルト珪酸テトラエチル(TEOS)を含むエタノール溶液に分散された鉄ナノ粒子にシリカ層を堆積することが記載されている。
【0037】
金属酸化物被覆磁性金属ナノ粒子の製造のための一般手順は、磁性金属ナノ粒子の上層の制御部分酸化を含む。例えば、Turgut,Zら、Journal of Applied Physics、85(8、Pt.2A)、4406〜4408(1999)に開示されているように、プラズマトーチを用いた金属前駆体粒子の制御酸化によってFeCoナノ粒子上に薄い酸化鉄/コバルトコーティング層が作製された。
【0038】
本明細書のコーティングまたはシェルは、界面活性剤コーティングを含むことができる。本明細書の磁性ナノ粒子は、ベータ−ヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル、長鎖脂肪族カルボン酸とのソルビトールエステルおよびそれらの組合せからなる群から選択されるシェルを含む。本明細書のコーティングまたはシェルに好適な界面活性剤としては、特にオレイン酸、オレイルアミン、トリオクチルホスフィン酸化物(TOPO)、ヘキシルホスホン酸(HPA)、1−ブタノール、トリブチルホスフィン、ポリビニルピロリドン誘導体、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0039】
界面活性剤を含む保護層またはシェルを有するコア−シェル粒子を任意の好適な方法または所望の方法によって製造することができる。溶媒中好適な界面活性剤の存在下で、金属前駆体から金属ナノ粒子を作製することによって、界面活性剤被覆ナノ粒子を製造することができる。溶媒中界面活性剤被覆磁性金属ナノ粒子を製造するための方法としては、ホウ化水素による金属塩の還元、ポリオールによる金属塩の還元および金属カルボニルの熱分解を挙げることができる。さらに詳細については、Guoら、Phys.Chem.Chem.Phys.3、1661〜5(2001)、J. Tanoriら、Colloid.Polym.Sci.、273、886〜92(1995)、S.Sunら、J.Appl.Phys.、85、4326(1999)、C.B.Murrayら、MRS Bull.985(2001)、G.S.Chaubeyら、J.Am.Chem.Soc.、120、7214〜5(2007)、B.Martoranaら、Sensors and Actuators A 129、176〜9(2006)]、 T.Hyeonの米国特許第7,407,572号明細書、V.F.Puntesら、Science,291,2115(2001)およびS.−J.Parkら、J.Am.Chem.Soc.122、8581〜2(2000)を参照されたい。
【0040】
インク中の磁性ナノ粒子の必要充填量は、0.5重量パーセントから30重量パーセント、5重量パーセントから10重量パーセントまたは6重量パーセントから8重量パーセントの任意の好適な量または所望の量であってもよいが、これらの範囲外の量も可能である。
【0041】
本明細書のMICR相変化インクは、任意の所望の、または有効な担体組成物を含むことができる。好適なインク担体材料の例としては、モノアミド、テトラアミドおよびそれらの混合物などの脂肪アミドが挙げられる。好適な脂肪アミドインク担体材料の具体的な例としては、ステアリルステアラミド、二量体酸とエチレンジアミンとステアリン酸との反応生成物である二量体酸系テトラアミド、および二量体酸とエチレンジアミンと少なくとも36個の炭素原子を有するカルボン酸との反応生成物である二量体酸系テトラアミド、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0042】
ウレタンイソシアネート由来材料、尿素イソシアネート由来材料、ウレタン/尿素イソシアネート由来材料およびそれらの混合物などのイソシアネート由来樹脂およびワックスも相変化インク担体材料として好適である。
【0043】
脂肪アミド材料とイソシアネート由来材料との混合物を本開示のインクのためのインク担体組成物として採用することもできる。
【0044】
本開示のためのさらなる好適な相変化インク担体材料としては、パラフィン、微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、アミドワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミドおよび他の蝋質材料、スルホンアミド材料、異なる天然源から製造された樹脂系材料、および多くの合成樹脂、オリゴマー、ポリマーおよびコポリマー、例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸コポリマーおよびアクリル酸とポリアミドのコポリマー等、アイオノマーならびにそれらの混合物が挙げられる。これらの材料の1種または複数種を脂肪アミド材料および/またはイソシアネート由来材料との混合物で使用することもできる。
【0045】
いくつかの実施形態において、インク担体は、インクに対して0.1重量パーセントから99重量パーセントまでの量で相変化インクに存在する。
【0046】
場合により分散剤がインク配合物に存在してもよい。分散剤の役割は、被覆材料との相互作用を安定化することによって被覆磁性ナノ粒子の分散安定性をさらに向上させることである。好適な分散剤としては、オレイン酸、オレイルアミン、トリオクチルホスフィン酸化物(TOPO)、ヘキシルホスホン酸(HPA)、1−ブタノール、トリブチルホスフィン、ポリビニルピロリドン(PVP)誘導体およびそれらの組合せが挙げられる。好適な分散剤としては、ベータヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル、長鎖脂肪族カルボン酸とのソルビトールエステル、ポリビニルピロリドンおよび誘導体などのポリマー化合物、およびSolsperse(登録商標)ポリマー分散剤ならびにそれらの組合せを挙げることもできる。
【0047】
シェルが界面活性剤を含む場合は、分散剤の使用を特に低減または除外することができる。
【0048】
分散剤は、インクに対して0.1重量パーセントから10重量パーセントの量で相変化インクに存在する。
【0049】
相乗剤がインクベースに含まれていてもよい。
【0050】
相乗剤は、インクに対して0.1重量パーセントから10重量パーセントの量で相変化インクに存在する。
【0051】
Solsperse(登録商標)5000またはSolsperse(登録商標)22000などの任意の好適な相乗剤または所望の相乗剤を採用することができる。
【0052】
相変化インクは、着色剤化合物を、いくつかの実施形態においてインクに対して1重量パーセントから20重量パーセント含むことができる。着色剤は、染料、含量およびそれらの混合物等を含む任意の好適な着色剤または所望の着色剤であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書の相変化磁気インクに対して選択される着色剤は顔料であり、いくつかの実施形態においてカーボンブラックである。
【0053】
磁性ナノ粒子で作製されるMICRインクは黒色または暗褐色である。MICRインクを、インク製造時に着色剤を加えることによって着色インクとして製造することができる。無着色(すなわち着色剤無添加)MICRインクを初回通過時に基板に印刷した後で2回目通過を行うことができ、着色インクをMICR読取可能にするように、MICR粒子を含まない着色インクが着色インクの上に直接印刷される。本明細書のプロセスは、(1)相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置されたシェルを含む被覆磁性ナノ粒子とを含む相変化磁気インクをインクジェット印刷装置に導入すること、(2)インクを溶融させること、および(3)溶融インクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させること、(4)相変化インク担体と、着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤とを含む相変化インクをインクジェット印刷装置に導入すること、(5)インクを溶融させること、および(6)(5)の溶融インクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させることであって、該画像様パターンが、(4)のインクをMICR読取可能にするように(3)の画像様パターンを被覆することを含むことができる。
【0054】
本開示のインクは、抗酸化剤を任意の所望の量または有効な量、例えば、インクに対して0.01重量パーセントから20重量パーセントの量で場合により含むこともできる。
【0055】
本開示のインクは、ステアロン等の脂肪族ケトン、ポリスチレンおよびポリメチルメタクリレートなどのポリマー、ならびに増粘剤などの粘度調整剤を任意の所望の量または有効な量、例えば、インクに対して0.1から60重量パーセントの量で場合により含むこともできる。
【0056】
インクに対する他の任意の添加剤としては、それらの通常の目的に対する従来の量、例えば、インクに対して0.1から50重量パーセントの量の透明剤、粘着剤、可塑剤が含まれる。
【0057】
本明細書のMICR相変化インク組成物は、50℃以上150℃以下の融点を有することができる。
【0058】
本明細書のMICR相変化インク組成物は、吐出温度(いくつかの実施形態においては75℃以上140℃以下)において25センチポアズ以下の溶融粘度または2センチポアズ以上の溶融粘度を有することができる。
【0059】
MICR相変化インクを直接印刷インクジェットプロセスに対応する装置、および間接(オフセット)印刷インクジェット用途に採用することができる。本開示の別の実施形態は、本開示のMICR相変化インクをインクジェット印刷装置に取り入れ、インクを溶融させ、溶融インクの液滴を画像様パターンで記録基板上に噴射させることを含むプロセスに関する。いくつかの実施形態において、基板は、最終画像記録シートであり、溶融インクの液滴は、画像様パターンで最終画像受取基板上に直接、例えば紙などの最終画像記録シート上に直接噴射される。本開示のさらに別の実施形態は、本開示のインクをインクジェット印刷装置に取り入れ、インクを溶融させ、溶融インクの液滴を画像様パターンで中間転写部材上に噴射させ、インクを画像様パターンで中間転写部材から最終記録基板上に噴射させることを含むプロセスに関する。1つの具体的な実施形態において、印刷装置は、圧電気振動素子の振動によってインクの液滴を画像様パターンで噴射させる圧電印刷プロセスを採用する。いくつかの実施形態において、中間転写部材を、最終記録シートの温度より高く、印刷装置における溶融インクの温度より低い温度まで加熱する。本開示のインクをホットメルト音響インクジェット印刷、ホットメルトサーマルインクジェット印刷、およびホットメルト連続流または偏向インクジェット印刷等の他のホットメルト印刷プロセスに採用することもできる。本開示の相変化インクをホットメルトインクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスに使用することもできる。
【0060】
XEROX(登録商標)4200ペーパー、XEROX(登録商標)イメージシリーズペーパーなどの普通紙、罫線ノート紙、ボンド紙、シリカ被覆紙、透明材料、織物、繊維製品、プラスチック、ポリマーフィルム、金属および木材などの無機基板を含む任意の好適な基板または記録シートを採用することができる。
【実施例】
【0061】
実施例1
炭素被覆ナノ粒子による火災危険の実証。25ナノメートルの平均粒径を有する、Nanoshel Corporationから購入された一袋の未処理の炭素被覆鉄ナノ粒子を、安全対策として酸素量および湿分量がそれぞれ5ppm(百万分率)および5ppmになるようにアルゴンで最初に不活性化させたグローブボックス内に広げた。過熱が観察されなかった(すなわち、有意な酸化が生じていないことが証明された)。次いで、これらの粒子の少量をグローブボックスから取り出し、空気に曝露したところ、発火が開始されなかった。次いで、より大量のこれら粒子を磁気相変化インクの製造に向けて処理した。
【0062】
実施例2(比較)
未塗布金属ナノ粒子による火災危険の対照例。MTI Corp.の未塗布鉄ナノ粒子(平均粒径50ナノメートル)を実施例1の粒子と同様にグローブボックス内に広げた。これらの条件下でも、それらのナノ粒子は即座に非常に高温になった。それらは、アルゴンガス中で(それぞれ5ppmの)微量の酸素および水によって迅速に酸化され、それらの磁性残留磁気特性のほとんどを実質的に失った。空気中で広げたとしたら、これらの自然発火性材料が即座に発火したであろう。
【0063】
実施例3
炭素被覆強磁性ナノ粒子を含む磁気インクの製造。実施例3.a。撹拌を用いることによるインクの製造。15グラムの炭素被覆鉄ナノ粒子を、2.12グラムのSolsperse(登録商標)5000(Lubrizol Corporationから入手可能な相乗剤)および10.52グラムのSolsperse(登録商標)17000(Lubrizol Corporationから入手可能なポリマー分散剤)を含む25.85グラムの溶融Kemamide(登録商標)S180ステアリルステラミド(Chemtura Corporationから商業的に入手可能な脂肪族結晶性第二級アミン)(140℃)中に、オーバーヘッド撹拌機により空気下で混合しながら加えることによって濃縮インクを製造した。140℃で2時間撹拌して濃縮インクを得た。次いで、(140℃で加熱した)加熱溶融希釈組成物を、既に作製された液体混合物に加えた。希釈物の実際の組成を表1に示す。
【表1】

【0064】
*米国特許第6,860,930号明細書に記載されているトリアミドワックス
【0065】
**米国特許第6,309,453号明細書の実施例4に記載されているように製造された、3当量のステアリルイソシアネートおよびグリセロール系アルコールの付加物であるウレタン樹脂
【0066】
実施例3.b。アトライタを使用し、中間濃縮インクを使用しないインクの製造。炭素被覆鉄ナノ粒子の解凝集を促進するために、アトライタを使用して実際の使用可能なインクを形成することが便利である。残留している可能性のある油およびグリースを除去するために最初にアセトンで、次いでトルエンで予備洗浄し、次いで溶媒を除去するために120℃に加熱されたオーブンにて乾燥させたHoover Precision Products,Inc.から入手可能な1800.0グラムの1/8インチ径の440Cグレード25鋼球を、Union Processから入手可能なSzegvari01アトライタに充填する。以下の成分を一緒に加え、600ミリリットルビーカー中にて120℃で溶融混合する。Baker Petroliteの86.29グラムの蒸留ポリエチレンワックス、19.74グラムのトリアミドワックス(米国特許第6,860,930号明細書に記載されているトリアミド)、28.43グラムのKemamide(登録商標)S−180(Chemtura Corporationから商業的に入手可能なステアリルステアラミド)、19.91グラムのKE−100樹脂(登録商標)(Arakawa Corporationから商業的に入手可能なテトラヒドロアビエチン酸とグリセロールとのエステル)、(米国特許第6,309,453号明細書の実施例4に記載されている)2.74グラムのウレタン樹脂、0.3グラムのNaugard(登録商標)445(Chemtura Corporationから入手可能な酸化防止剤)および3.78グラムのSolsperse(登録商標)17000(Lubrizol Corporationから入手可能なポリマー分散剤)。得られた溶液を、ステンレス鋼球を含むアトライタ容器に定量的に移した。アトライタ容器に0.76グラムのSolsperse(登録商標)5000(Lubrizol Corporationから入手可能な相乗剤)を加え、そこでSolsperse(登録商標)5000の磨砕を175RPMで1時間行う。この混合物に対して、Nanoshel Corporationから入手可能な18グラムの鉄ナノ粒子を加え、225RPMで19時間にわたって終夜磨砕させた後に、得られたインク溶融状態で鋼球から排出および分離し、次いで凍結させる。
【0067】
実施例4
炭素被覆強磁性ナノ粒子を含む磁気インクの製造−磨砕物としての濃縮物。炭素被覆鉄ナノ粒子の解凝集を促進するために、アトライタを使用して濃縮物を形成し、次いでその濃縮物からインクを形成することが便利である。残留している可能性のある油およびグリースを除去するために最初にアセトンで、次いでトルエンで予備洗浄し、次いで溶媒を除去するために120℃に加熱されたオーブンにて乾燥させたHoover Precision Products,Inc.から入手可能な1800.0グラムの1/8インチ径の440Cグレード25鋼球を、Union Processから入手可能なSzegvari01アトライタに充填する。以下の成分を一緒に加え、600ミリリットルビーカー中にて120℃で溶融混合する。89.86グラムのKemamide(登録商標)S−180(Chemtura Corporationから商業的に入手可能なステアリルステアラミド)および15.12グラムのSolsperse(登録商標)17000(Lubrizol Corporationから入手可能なポリマー分散剤)。均一な溶液を得た後、混合物をアトライタ容器に定量的に移してから、3.02グラムのSolsperse(登録商標)5000(Lubrizol Corporationから入手可能な相乗剤)を加える。Solsperse(登録商標)5000の磨砕を175RPMで1時間続けてから、Nanoshel Corporationから入手可能な72グラムのシリカ被覆鉄粒子をアトライタ容器に加える。着色混合物を225RPMで19時間にわたって終夜磨砕させた後に、得られた濃縮物を排出させ、濾過によって溶融状態で鋼球から分離し、次いで凍結させる。
【0068】
実施例5
炭素被覆強磁性ナノ粒子を含む磁気インクの製造−実施例4のインク。磁気インクを実施例4の濃縮物から以下の方法で形成する。以下の成分を一緒に加え、600ミリリットルビーカー中にて120℃で溶融混合して溶液#1を形成する。Baker Petroliteの71.9グラムの蒸留ポリエチレンワックス、16.45グラムのトリアミドワックス(米国特許第6,860,930号明細書に記載されているトリアミド)、4.97gのKemamide(登録商標)S−180(Chemtura Corporationから商業的に入手可能なステアリルステアラミド)、16.59グラムのKE−100(登録商標)樹脂(Arakawa Corporationから商業的に入手可能なテトラヒドロアビエチン酸とグリセロールとのエステル)、2.28グラムの(米国特許第6,309,453号明細書の実施例4に記載されているような)ウレタン樹脂および0.3グラムのNaugard(登録商標)445(Chemtura Corporationから入手可能な酸化防止剤)。実施例4で形成した37.5グラムの濃縮物を250ミリリットルビーカーに移して、オーブンにて120℃で溶融させ、次いでオーバーヘッド撹拌機を備えたホットプレートに移す。液飛びを回避するために低速度で濃縮物を撹拌しながら溶液#1を徐々に加える。300RPMの高速度で2時間にわたってさらに撹拌を続けて、磁気インクを形成させる。
【0069】
実施例6
非イオン性分散剤を使用することによる炭素被覆強磁性ナノ粒子を含む磁気インクの製造。10gのUnilin(登録商標)700(Baker Petroliteから商業的に入手可能な、飽和長鎖直鎖状第一級アルコールを含む相変化ベース材料)を、140℃で加熱しながらオーバーヘッド撹拌機で撹拌することによって溶融させた。これに0.50グラムのオレイン酸(非イオン性分散剤)を加え、さらに30分間にわたって撹拌を続けて、均一な混合物を形成させた。次いで、3グラムの炭素被覆鉄ナノ粒子(平均粒径が25ナノメートル、Nanoshel Corporationより)を徐々に加えた。添加の終了時に、混合物を2時間にわたって撹拌して、ナノ粒子を湿潤させた。粒子を解凝集させるために、Hoover Precision Products,Inc.から入手可能な70グラムの洗浄済みの1/8インチ径の440Cグレード鋼球を添加した。混合物を3時間にわたって撹拌して黒色組成物を得た。
【0070】
実施例7
磁気特性。上記全ての実施例1〜6は、空気中で実施され、製造手順を通じて温度の上昇または発火の傾向は検知されなかった。上記実施例による発明のインクは、磁石によって引きつけられ、それらがそれらの磁気特性を維持していたことが証明される。
【0071】
実施例8
ポリマー被覆磁性ナノ粒子を含む磁気相変化インク。アルゴン下で160℃にて30分間にわたって、4:1(w/w)の比率の、酸化ホスフィン基を末端とするポリスチレンポリマーおよびアミン末端ポリスチレンの存在下で溶媒としてのジクロロベンゼン中にてジコバルトオクタカルボニルを熱分解することによってポリスチレン被覆コバルトナノ粒子を得る。反応混合物をヘキサン中に沈殿させ、さらに洗浄して、ポリスチレン被覆コバルトナノ粒子を得る。作製プロセスは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許公開第2010/0015472A1号明細書(Bradshaw)に記載されている。濃縮インクを作製した後にインク希釈液で希釈することを含む実施例3に記載の手順を、実施例8に記載されるポリスチレン被覆磁性ナノ粒子を用いて繰り返して、ポリマー被覆磁性ナノ粒子を含む磁気相変化インクを製造する。
【0072】
実施例9
シリカ被覆磁性ナノ粒子を含む磁気相変化インク。平均粒径が300ナノメートルのシリカ被覆鉄ナノ粒子を、NaOH/N・HO還元剤によるFeCl・6HOの還元によって合成する。エタノールで洗浄した後、ストーバー法を使用することによってシリカコーティングを堆積させる。この手順において、シリカ層をオルト珪酸テトラエチル前駆体から堆積させ、それをpH8から9のアンモニア/水混合物中にて40℃で4時間にわたって加水分解させる。シリカ被覆鉄ナノ粒子を作製するための手順は、Niら、Materials Chemistry and Physics 10、206〜212(2010)に詳細に記載されている。濃縮インクを作製した後にインク希釈液で希釈することを含む実施例3に記載の手順を、実施例9のシリカ被覆鉄ナノ粒子を用いて繰り返して、シリカ被覆磁性ナノ粒子を含む磁気相変化インクを製造する。
【0073】
実施例10
界面活性剤被覆磁性ナノ粒子を含む磁気相変化インク。300℃にて93%アルゴンと7%Hとの気体混合物下で、1,2−ヘキサデカンジオール中界面活性剤(オレイン酸とトリオクチルホスフィン)の混合物中でFe(III)アセチルアセトネートおよびCo(II)アセチルアセトネートを還元分解することによって、(TEMによって測定された)平均粒径が10ナノメートルの界面活性剤被覆FeCo合金磁性ナノ粒子を得る。その手順は、J.Am.Chem.Soc.、120、7214〜5(2007)に詳細に記載されている。濃縮インクを作製した後にインク希釈液で希釈することを含む実施例3に記載の手順を、上記のように製造された界面活性剤被覆FeCo合金磁性ナノ粒子を用いて繰り返して、界面活性剤被覆磁性ナノ粒子を含む磁気相変化インクを製造する。
【0074】
以上に開示された様々な特徴および機能ならびに他の特徴および機能、またはそれらの代替を望ましくは多くの他の異なるシステムまたは応用形態に統合することができる。また、当業者は、その中の現在予見または予測されない様々な代替、改造、変更または改良を後に加えることができ、それらも以下の特許請求の範囲に包含することが意図される。請求項に具体的に記載されている場合を除いて、特許請求の範囲の工程または構成要素は、特定の順序、数、位置、サイズ、形状、角度、色または材料に関して明細書または他の請求項からの暗示や取り込みをしてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置されたシェルを含む被覆磁性ナノ粒子とを含む相変化磁気インク。
【請求項2】
前記シェルは、炭素、ポリマー、無機酸化物、界面活性剤およびそれらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項3】
前記磁性ナノ粒子は、二種金属コアまたは三種金属コアを含む請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項4】
前記磁性ナノ粒子は、Fe、Mn、Co、Ni、FePt、CoPt、MnAl、MnBiならびにそれらの混合物および合金からなる群から選択されるコアを含む請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項5】
前記磁性ナノ粒子は、0.2ナノメートルから100ナノメートルの厚さを有するシェルを含む請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項6】
前記磁性ナノ粒子は、3から300ナノメートルの体積平均粒径を有する請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項7】
前記磁性ナノ粒子は、針形、粒状、球形、板状、針状、円筒状、八面体形、十二面体形、管状、立方体形、六角形、卵形、球状、樹枝状、角柱形および不定形からなる群から選択される請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項8】
各単一磁性ナノ粒子は、長軸および短軸を有し、該単一磁性ナノ粒子の長軸と短軸の比(長軸D/短軸D)は、10:1未満である請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項9】
前記磁気コアは、アスペクト比が3:2から10:1未満の針状形を有する請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項10】
前記磁性ナノ粒子は、20emu/gから150emu/gの磁気飽和モーメントを有する請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項11】
前記磁性ナノ粒子は、20emu/gから100emu/gの残留磁気を有する請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項12】
前記磁性ナノ粒子は、200エルステッドから50000エルステッドの保磁力を有する請求項1に記載の相変化磁気インク。
【請求項13】
相変化磁気インクを製造するためのプロセスであって、相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置されたシェルを含む被覆磁性ナノ粒子とを混合すること、加熱して、金属ナノ粒子を含む相変化磁気インクを得ること、場合により相変化磁気インクを液体状態のまま濾過すること、および相変化磁気インクを冷却して固体状態にすることを含むプロセス。
【請求項14】
(1)相変化インク担体と、任意の着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、磁気コアおよびその上に配置されたシェルを含む被覆磁性ナノ粒子とを含む相変化磁気インクをインクジェット印刷装置に取り込むこと、(2)インクを溶融させること、および(3)溶融インクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させることを含み、(4)相変化インク担体と、着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤とを含む相変化インクをインクジェット印刷装置に取り込む鵜こと、(5)インクを溶融させること、および(6)(5)の溶融インクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させることであって、該画像様パターンが、(4)のインクをMICR読取可能にするように(3)の画像様パターンを被覆し、場合により該基板が最終記録基板であり、溶融インクの液滴が画像様パターンで最終記録基板上に直接噴射されることを場合によりさらに含むプロセス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−193357(P2012−193357A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−42492(P2012−42492)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】