説明

被覆粒子とその製造法及び使用法

【課題】物理的、化学的又は生物学的劣化を受けやすい物質を含めての広範な様々の物質を可溶化するか又はそれらを含有するのに適した被覆粒子に用いる逆立方晶相物質又は逆六方晶相物質の提供。
【解決手段】水、グリセリン、又は水/グリセリン混合物と、麻酔薬と、弗素系界面活性剤、BRIJタイプ界面活性剤、TRITONタイプ界面活性剤、ポリマー鎖を有する界面活性剤、ペプチドベースの界面活性剤、イソプレノイド類、プラスモロゲン類、セレブロシド類、スルファチド類、ガングリオシド類、シクトペンタトリオール脂質類、ジメチルアミノプロパン脂質類、リゾ脂質類、リゾレシチン類、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性又は半極性界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、デオキシコール酸ナトリウム、塩化ミリスチル−ガンマ−ピコリニウム、ポリオキシル35ヒマシ油、ソルビタンモノパルミテート、及び2−エチルヘキサン酸ナトリウムからなる群から選ばれた界面活性剤とを備えた逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆粒子とその製造法及び使用法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの粒子技術、すなわちポリマー被覆粒子技術及びリポソーム技術は一般的興味のあるものである。
【0003】
ポリマー被覆粒子には、それらのポリマー被膜の化学的および物理的トリガーに対する単調で散漫な応答から明らかなように、幾つかの限界がある。これには2つの因子が原因になっている。第一に、ポリマーの高い分子量がそれらの拡散係数および可溶化の速度を低減させる。第二に、隣接基効果が、特にpH、塩分、酸化・還元、イオン化などのトリガーに対する化学的応答を示す曲線を幅広いものにする。(隣接基効果とは、ポリマーの1つのモノマー単位における化学的変化が隣接モノマー単位の各々における化学的遷移を支配するパラメータを顕著に変化させることをいう。)更に、殆どのポリマーは、分子量分布の広い化学種の集まりである。しかも、ポリマー被覆粒子のある所与の用途のためには、限られた数の適当なポリマーのみが入手可能であることが多い。これには多くの因子が原因になっている。規制の問題として、被覆プロセスが溶媒、フリーラジカル、高昇温度、乾燥、及び/又は粒子形成に必要な巨視的剪断力などの過酷な化学的及び/又は物理的条件を必要とすることがしばしばである。産業用途でのポリマー被膜の機械的及び熱的安定性が限られており、更に、農業での使用におけるようなポリマー被覆粒子の大規模利用の環境に対する有害な影響がある。
【0004】
リポソームにも、多くの限定がある。これらのうちに、それらの物理的及び化学的不安定性がある。リポソーム中に配置された物質の放出は、通常、リポソームの構造の不安定化に依存している。特に、多孔性を持たないために、かかる物質の細孔により制御された放出が不可能である。1)一方で放出が望まれるまでのリポソームの物理的安定性、及び2)他方で放出が望まれるときの二分子層の不安定化による物質の放出、という二重の要求が問題である。(リポソームなる語はしばしばベシクルなる語で置き換えられ、普通、グリセロ燐脂質又は他の天然脂質のベシクルを表わすのにあてられる。ベシクルは、数千の脂質分子(両親媒性分子)の閉鎖した自立性二分子層集合体であって、水性の内容分を封入している。脂質二分子層は脂質からなる二次元の液体であり、それら脂質の親水性の頭部の基が水溶液に暴露されており、疎水性の尾部が集まって水を締め出している。その二分子層構造は高度に整列されているが、二分子層の各半分の面内での脂質の素早い横向き運動のために動的である。)(非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】オブライエン(O’Brien,D.F.)及びラマスワミ(Ramaswami,V.)著(1989年)、マーク=ビカレス=オーベルバーガー=メンゲ エンサイクロペディア・オブ・ポリマーサイエンス・アンド・エンジニアリング(Mark-Bikales-Overberger-Menges Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)、第17巻、第2版、ジョン・ワイリーアンド・サンズ社(John Wiley & Somns,Inc.)、第108頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は、物理的、化学的又は生物学的劣化を受けやすい物質を含めての広範な様々の物質を可溶化するか又はそれらを含有するのに適した被覆粒子を提供することである。
【0007】
本発明の一つの目的は、それらの内部コアのマトリックス中に配置された1種又は2種以上の物質を、該マトリックスの不安定化なしに放出させる被覆粒子を提供することである。
【0008】
本発明の一つの目的は、1種又は2種以上の物理的又は化学的トリガーに応答して、特定の周囲物質へ、又は特定の周囲物質から、1種又は2種以上の物質の放出又は吸収を急速に開始する被覆粒子を提供することである。
【0009】
本発明の一つの目的は、被覆粒子の産業上の利用における機械的及び熱的安定性又は農業用途における被覆粒子の大規模利用において環境への悪影響のないことなどのそれらの意図する用途の特別な物理的、化学的又は生物学的要求に適合させることのできる広範な様々の被覆粒子を提供することである。
【0010】
本発明の一つの目的は、必要ならば、それらの中に配置された物質の細孔により制御された放出又はそれらの外に配置された物質の細孔により制御された吸収を可能ならしめる多孔性被覆を提供することである。
【0011】
本発明の更に一つの目的は、単純なプロセスで、好ましくは過酷な物理的及び/又は化学的条件を伴うことなく製造可能な被覆粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記及び他の目的は、マトリックスからなる内部コアと外部被覆とを備えた合成の被覆粒子によって解決される。該マトリックスは、本質的にnmオーダーの構造の少なくとも1つの液相、又はnmオーダーの構造の少なくとも1つの液晶相、又はそれら2つの組合せからなり、外部被覆は非層状構造の結晶物質からなる。
【0013】
好ましい一実施態様では、被覆粒子は以下の方法で製造される。
1.第二部分と反応したときに非層状結晶物質を形成しうる第一部分を有する少なくとも1種の化学種を含む或る分量のマトリックス体積部分を準備し、
2.この体積部分を、非層状結晶物質を形成する条件下で第二部分を有する少なくとも1種の化学種と接触させて第一部分を第二部分と反応させ、同時にこの体積部分にエネルギーを与えて該体積部分を細分化して粒子とする。
或いはまた、被覆粒子は以下の方法でも製造することができる。
1.マトリックスに対して不溶性の非層状結晶物質を形成しうる物質を溶液として含有するマトリックス体積部分を準備し、
2.前記物質をマトリックスに対して不溶化し、同時にこの体積部分にエネルギーを与えて該体積部分を細分化して粒子とする。
或いは、これらの二つの方法の組合せも適用できる。
【発明の効果】
【0014】
これらの被覆粒子は、特定の周囲物質への1種又は2種以上の物質の放出や、特定の周囲物質からの1種又は2種以上の物質の吸収、或いは特定の周囲物質からの1種又は2種以上の物質の吸着に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、2×2×2個の単位セルマトリックスからなる内部コア及び外部被覆を備えた本発明の被覆粒子の縦断面を表す模式図である。
【図2】図2は、本発明の被覆粒子の模式断面図である。
【図3】図3は、本発明の被覆粒子の走査電子顕微鏡観察像である。
【図4】図4は、本発明の本発明の他の被覆粒子の走査電子顕微鏡観察像である。
【図5】図5は、本発明の被覆粒子の体積で重み付けした累積粒度分布を、体積で重み付けした粒径に対する累積粒度の関係で測定した結果のグラフである。
【図6】図6は、本発明の被覆粒子の微小角X線散乱強度に対する波動ベクトルqの測定結果を示すグラフである。
【図7】図7は、対照粒子について高圧液体クロマトグラフィーを用いて得た検出器カウント値に対する溶出時間(分)のグラフである。
【図8】図8は、本発明の被覆粒子について高圧液体クロマトグラフィーを用いて得た検出器カウント値AUに対する溶出時間(分)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び2に図示されているように、本発明の被覆粒子1は、内部コア10及びその外側の被覆20(以下、外部被覆20)を備えている。内部コア10は、本質的に、
a.少なくとも1種のnmオーダー構造の液相、
b.少なくとも1種のnmオーダー構造の液晶相、及び
c.下記の相の組み合わせ
i.少なくとも1種のnmオーダー構造の液相
ii.少なくとも1種のnmオーダー構造の液晶相
からなる群から選ばれたnmオーダーの極微細構造物質からなるマトリックスを備えている。
【0017】
液相物質及び液晶相物質は、溶媒を含有する(易溶性)か、或いは溶媒を含有しない(熱互変性)かのいずれであってもよい。外部被覆20は非層状構造の結晶物質からなる。本明細書で用いる「外部被覆」なる語は、被覆20が内部コア10に対して外側にあることを意味するものとし、外部被覆20が被覆粒子1の最も外側の外被であるという意味に限定されるものではない。
【0018】
nmオーダー構造の液相及びnmオーダー構造の液晶相は、本発明の粒子の容易な製造を可能ならしめるのに重要なだけでなく、本発明の最終被覆粒子に高度に望ましい可溶化、安定性及びその他の提示した諸性質及び他の能力をもたらすべき特徴的な特性を有している。
【0019】
外部被覆20に関しては、本発明では、三次元の全ての方向に及ぶ結合性及び/又は充填性が低い非層状結晶構造のほうが層状構造よりも好ましく、それは、例えば(a)層状液晶層で被覆された液滴を有するエマルジョンの不安定性(仕方ないにせよ)、(b)層状ウェルナー錯体におけるゲスト分子除去時の化学的不安定性、及び(c)ダイヤモンドに比べて黒鉛の格段に劣る硬度と剛性率など、層状結晶構造の周知の物理的及び化学的不安定性による。
【0020】
本発明の被覆粒子1は、平均粒径0.1μm〜30μmであればよく、好ましくは平均粒径約0.2μm〜約5μmである。この被覆粒子1は、必要に応じて外面、即ち外部被覆20の外側に、被覆粒子1の凝集を防止するための高分子電解質又は界面活性剤の単分子層などの安定化層を備えていてもよい。
【0021】
本発明の被覆粒子1は種々の使用態様で利用可能である。即ち、被覆粒子1は、外部被覆20の放出に基づき、特定の周囲物質から1種又は2種以上の物質を吸収したり、特定の周囲物質から1種又は2種以上の物質を吸着したり、又は内部に配置した活性薬剤などの1種又は2種以上の物質を特定の周囲物質中へ放出したりすることができる。また、多孔性を有する或る種の外部被覆、例えば包接化合物やゼオライトなどは、マトリックスに対する目的物質の吸収又は放出を果たすためには遊離を必要とせず、このような場合には、多孔質の細孔特性を適切に選ぶことによって極めて高い選択特性を得ることができる。被覆粒子を目的の1種の化合物又は複数種の化合物の吸着のために使用する場合、外部被覆20の多孔性も遊離も不要であるが、多孔性を持たせて吸着対象物質をマトリックス内へ拡散可能とすることにより吸着能の極めて大きな増加をもたらすことができ、これにより外部被覆20の吸着部位を新らたな物質吸着に役立つようにすることができる。好ましい一実施態様においては、特定の選ばれた周囲物質中への放出のために活性薬剤などの付加的な物質をマトリックス内に配置可能である。
【0022】
このマトリックスは、
a)熱力学的に安定で、
b)nmオーダーの極微細構造をもち、
c)液相又は液晶相又はそれらの組合せである。
【0023】
nmオーダー構造:
物質構造に関して本明細書で用いる「nmオーダー構造」なる用語は、その構成ブロックがnm(10-9m)又は数十nm(10×10-9m)オーダーの寸法をもつ極微細物質構造を指す。一般的に、差渡し1〜100nmの範囲の領域や粒子、係る寸法範囲の厚み又は太さの層やフィラメントなどを包含する任意の物質がnmオーダー構造の物質である。参考文献:ダガーニ(Dagani,R.)著「nmオーダーの構造物質が技術の範囲拡大を約束する(Nanostructured Materials Promise to Advance Range of Technologies)」ケミカル・アンド・エンジニアリング・ニューズ(C&E News)誌、1992年11月23日号、第18頁。この用語は、所謂「セラミックガラス」、即ち結晶サイズが余りに小さくて広角X線回折でピークを観測できない結晶物質を意味するものではなく、物理学者のなかにはこれをnmオーダーの構造物質と呼んでいる者もいるが、本明細書で定義するnmオーダーの極微細構造の液相及び液晶相は局所的化学組成の大きな相違によって隣接領域と明瞭に区別されるnmスケールの領域(ドメイン)によって特徴付けられるものであり、隣接領域が本質的に同じ化学組成で格子配向のみが相違する物質は包含しない。このように、本明細書で使用する「領域(domain)」なる用語は、隣接領域の化学組成と明瞭に区別される特別な化学組成により特徴付けられる空間的領域を意味し、かかる領域は、隣接領域の疎水性(または親水性)と対照をなす親水性(または疎水性)であることが多い。本発明に関しては、これらの領域の特徴的サイズはnm範囲にある。(尚、「ミクロ領域」という用語もサイズ範囲がμmないしnmスケールの領域を指す目的でしばしば使用する。)
【0024】
本発明において、被覆粒子1の内部コア10のマトリックスを提供するnmオーダー構造の液相又は液晶相は、本発明の粒子の製造において極めて重要であるのみならず、最終的な被覆粒子に極めて望ましい可溶性、安定性及び提示の諸性質及び能力をもたらすと言う特異な集合の諸特性を有している。後述の粒子製造プロセスの説明で詳しく述べるように、本明細書に記載したプロセスの一つを用いて或る物質に易分散性をもたせるためには、この物質が水に対して極めて低い溶解度のものであることが望ましい(さもなければ、分散プロセス中に溶解する傾向を示し、分散性を制限してしまうであろう)が、同時に、分散に用いる水溶性反応物質の可溶化と広範囲の活性化合物の可溶化とを可能にするという二つの目的のためには、この物質は水を含有しているべきである。
【0025】
特に、親水性(特に荷電した)化合物及び両親媒性化合物の可溶化のために、或いは蛋白質などの生物起源の敏感な化合物の可溶化のみならず適切な立体配座と活性をも維持するために、内部マトリックスは充分な濃度の水又は他の極性溶媒を含んでいるべきである。被覆の選択に関する自由度について言えば、本発明において有用な被覆(コーティング)として列挙される化合物の大多数(おそらく殆ど全て)は、極性溶媒にのみ可溶性の反応物質を必要とする。更に、可溶化のための有機溶媒の使用は、殆どの場合、蛋白質などの生化学的化合物と両立せず、いずれの場合にも規則や環境及び健康上の配慮から高度に敬遠される。水溶性及び水溶性化合物の可溶化というこれら2つの要求は、当然のことながら相反する方向に働くものであり、安価で安全な単一の物質により解決することは困難である。
【0026】
かかる可溶化の要求を満足させる極めて有効な系は、含水量の極めて高いミクロ領域をもち同時にこの水性領域に粗水性領域が極めて密接している脂質−水の系によってもたらされる。水性領域の存在により、例えば濃縮ポリマー水溶液など、高い用量の共溶媒又は共溶質の存在によって水の構造が妨害される系において遭遇する沈澱傾向が回避される。同時に、粗水性領域の近傍では、両親媒性化合物(また粗水性化合物も)の効果的な可溶化がもたらされる。
【0027】
nmオーダー構造の液相及び液晶相は、これらの可溶化特性に適合する合成又は半合成物質であり、純粋で特性の揃った製造容易且つ安価なマトリックスを与え、このマトリックスは下記に列挙する望ましい諸性質をも有する。
a)nmオーダー構造の液相又は液晶相を形成する化学系によってもたらされるところの生体分子に理想的な生化学的脂質から耐久性の高い弗素系界面活性剤やバクテリアを結合する糖脂質、或いはイオン性又は反応性の基を有する界面活性剤などに亘る適用の自由度。これは、広範囲の条件及び用途にわたる利用可能性をもたらす。
b)nmオーダー構造の液相及び液晶相によってもたらされるところの
i)有毒で規制が進んでいる有機溶媒の必要性を回避しつつ、パクリタクセル(Paclitaxel)や生物製剤など、旧来の可溶化が困難な多くの化合物を含む広範囲の活性化合物を可溶化し、
ii)安定性の譲歩なしに活性物質の高濃度化を達成し、
iii)それらの構造及び機能を維持する生化学的環境をもたらすと言う卓越した能力。
c)活性薬剤の沈澱、エマルジョンの崩壊、ベシクルの融着など、他の担体では一般的な不安定性に対して保証できる真の熱力学的安定性。
d)特に蛋白質及び他の生化学高分子の放出において、被膜の放出開始の後でさえも放出速度の更なる制御を容易にすると言う、予め選択可能なnm領域の空孔サイズの多孔空間の存在。
【0028】
内部コア10のnmオーダーの微細構造物質による上記の望ましい諸性質は、以下に述べるように、界面活性剤に関しては極性、無極性、両親媒性、界面活性剤、及び極性−無極性界面なる用語を使用して記述可能で同様にブロックコポリマー系についても記述しうる関連した幾つかの材料に関する概念から派生している。
極性:有極性化合物(水など)及び有極性分子成分(イオン界面活性剤又は脂質の荷電した頭部基など)は水を好むもの、即ち親水性である。本発明に関して「極性」及び「親水性」とは本質的に同義語である。溶媒に関しては、水が唯一の極性溶媒ではない。本発明に関して重要な他の溶媒のは、グリセリン、エチレングリコール、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、硝酸エチルアンモニウム及びポリエチレングリコールがある。これらの一つ(ポリエチレングリコール)は実際にはポリマーであり、それにより適用可能性の範囲を例証していることに注目されたい。分子量が充分に低ければポリエチレングリコール(PEG)は液体であり、PEGは界面活性剤との組合せで極性溶媒としては広く研究されてはいないが、例えばPEG頭部基がアルカン鎖にエーテル結合されている非イオン界面活性剤として知られるBRIJタイプ界面活性剤などの界面活性剤との組合せで、PEGがnmオーダーの構造の液相及び液晶相を形成することが見出されている。より一般的には、親水性及び両親媒性分子(極性溶媒及び界面活性剤を包含するが、これらに限定されるものではない)における極性基について、どの極性基が界面活性剤の頭部基として有効か否かの後述の説明中で多数の極性基を一覧で示すことにする。
【0029】
無極性:無極性(又は粗水性又は代替表現として「親油性」)の化合物は、界面活性剤のパラフィン/炭化水素/アルカン鎖のみならず、過弗化アルカンなどの変性体や、胆汁酸塩(ナトリウム塩)界面活性剤に見いだされるコール酸内部の縮合環構造、或いはTRITONタイプ界面活性剤の無極性基の一部をなすフェニル基、及びポリエチレン(長いアルカン鎖を代表する)から既に検討されている新規なペプチドベースの界面活性剤における疎水性ポリペプチド鎖などの疎水性ポリマーまでの全範囲に亘るオリゴマー又はポリマー鎖などの他の疎水性基をも包含する。これらの無極性基及び無極性化合物の幾つかを、後述のnmオーダー構造相内部の有用な構成成分の説明中で列挙することにする。
【0030】
両親媒性:両親媒性化合物は、親水性基及び親油性基の双方を含有する化合物であると定義できる。参考文献:エヴェレット(D.H.Everett)著、ピュア・アンド・アプライド・ケミストリー(Pure and Applied Chemistry)誌、第31巻、第6号、第611頁(1972年)。すべての両親媒性化合物が界面活性剤であるわけではないことを認識することは重要である。例えばブタノールは、ブチル基が親油性でヒドロキシル基が親水性であるから両親媒性であるが、後述の定義を満たさないから界面活性剤ではない。高度に有極性で測定できる程度に水和されるが、界面活性剤の挙動を示すことのできない官能基を有する多くの両親媒性分子が存在する。参照文献:ローリン(R.Laughlin)著、液晶の進歩(Advances in liquid crystals)第3巻、第41頁(1978年)。
【0031】
界面活性剤:界面活性剤は2つの追加の性質を有する両親媒性物質である。第一の性質は、非界面活性剤と比較して異常に低い濃度でも水性相の界面物理現象(空気−水のみならず油−水及び固体−水の界面においても)を顕著に変性する性質である。第二の性質は、界面活性剤分子は、互いに(そして他の分子と)極めて過度に可逆的な会合を起こし、熱力学的に安定で巨視的には一つの相を呈する凝集体又はミセルの溶液を形成する性質である。ミセルは典型的には多数(10〜1000のオーダー)の界面活性剤分子からなり、コロイド寸法を呈する。
参考文献:前掲のローリン著、液晶の進歩、第3巻、第41頁(1978年)。
【0032】
「脂質」という用語は、日常の論述で一般的に界面活性剤と呼ばれる化合物と僅かに異なる特性を有する下位分類の界面活性剤に属することを示すために用いられているのが通常ではあるが、ここでは、説明のために、多くの場合に脂質、特に極性脂質は界面活性剤であると考えることにする。脂質が常に有するとは限らないが、しばしば有する2つの特性は、第一に、それらがしばしば生物起源のものであること、第二に、それらは水よりも油脂により可溶性である傾向があることである。実際、脂質と呼ばれる多くの化合物が水に対して極めて低い溶解度を示し、それゆえ、界面張力低下性及び可逆的自己会合を極めて明瞭に現わすようにするには、疎水性溶媒の存在が必要となる。例えば、かかる化合物は、水への溶解度が極めて低いので水性系での界面張力低下の観測を困難にするかもしれないが、低濃度でも油と水との間の界面張力を充分に低下させることができる。同様に、脂質−水系への疎水性溶媒の添加は、nmオーダーの極微細構造の液相及び液晶相への自己会合を更に容易にすることができるが、その一方で、高温に関連する困難性が脂質−水系でのこの作用を困難にする可能性がある。
【0033】
実際、nmオーダー構造の液晶の構造研究において、以前は本質的に異なると考えられていた「脂質」と「界面活性剤」との間の共通性が前面に現れ、全ての界面活性剤の場合と同じnmオーダーの構造が観察されたとき、2つの研究対象(生化学側面からの脂質と、より産業的な側面からの界面活性剤)は一緒になったのである。更に、臭化ジヘキサデシルジメチルアンモニウムなど、完全な合成物であって非生物由来のものである或る種の合成界面活性剤は、それらが界面活性剤であることの手軽な証明のために疎水性溶媒を必要とするという点で、「脂質様」の挙動を示すことも明らかになった。反対に、明らかに生物由来のものであるリゾ脂質などの或る種の脂質は、水溶性界面活性剤に多少とも典型的な相挙動を示す。結果として、自己会合及び界面張力低下性を論じ、且つ比較する上でより意味のある区別があるのは、単一の末端をもつ化合物と二重の末端をもつ化合物との間であることが明らかになった。ここに、単一の末端をもつとは一般に水溶性を、二重の末端をもつとは一般に油溶性を意味する。
【0034】
かくして、本明細書に関しては、疎水性相が空気であれ油であれ、水と疎水性相との間の界面張力を極めて低い濃度で低下させ、水、又は油、又は双方においてnmオーダーの構造のミセル状、逆ミセル状、又は二重連続性の形態への可逆的自己会合を示す全ての両親媒性物質も界面活性剤であると理解すべきである。
この類の脂質は、生物由来の界面活性剤からなる下位分類のみを包含する。
【0035】
極性−無極性界面:界面活性剤分子中には、分子の極性部分を無極性部分から分割する1つの分子内分割点(又は、場合により各末端に極性基があれば2つの分割点、更には7つのアシル基を有し、従って1分子当たり7つの分割点をもつ脂質Aの場合のように3つ以上の分割点)を見出すことができる。いかなるnmオーダー構造の液相又は液晶相においても、界面活性剤は単分子層又は二分子層の膜を形成し、かかる膜において当該分子の分割点の位置は極性領域と無極性領域との分割面を示し、これを「極性−無極性界面」又は「極性−無極性分割面」と呼ぶ。例えば球形ミセルの場合、この面は、ミセルの外表面の内側にある球によって近似されよう。この場合、界面活性剤分子の極性基は該面の外側にあり、無極性鎖がその内側にある。この顕微鏡的界面は、裸眼で見ることのできる2つのバルク相間の巨視的な分割界面と混同しないように注意すべきである。
【0036】
二重連続性:二重連続性構造においては、各々が三次元の全ての方向において連続的である2つの異なる絡み合った多重連結部分空間によってその幾何学的構造が記述される。従って経路が2つの部分空間のいずれかに限定されていても、この空間の全体をいずれの方向にも横切ることが可能である。二重連続性構造においては、部分空間の各々が、1つのタイプの物質又は分子成分に富んでおり、2つの部分空間は、各々に当該空間を通って三次元の全ての方向に拡がる2つのかかる物質又は分子成分によって占められている。海綿、砂岩、リンゴ、そして多くの焼結体などは、物質界における比較的永続的な、但し無秩序な二重連続性構造の例である。これらの特定の例において、一方の部分空間は多少とも変形可能な固体によって占められており、他方の部分空間は空隙と言うこともできるがそれは流体で占められている。或る種の親媒順列(lyotropic)液晶状態もその例であり、一方の部分空間は配向、凝集されて幾何学的に秩序付けられた配列のシート状アレイ(配列物)をなす両親媒性分子によって占められており、他方の部分空間は溶媒分子によって占められている。2種の不相溶性溶媒分子、例えば炭化水素と水とを含有する関連した液晶状態は、一方の部分空間が第一の溶媒に富み、他方が第二の溶媒に富み、その間の界面は配向された界面活性剤分子に富む多重連結層内にあるという更なる可能性を示す。相当量の炭化水素及び水並びに両親媒性界面活性剤を含有するある種の平衡ミクロエマルジョンは、熱運動による変動性無秩序配列という持続的状態に維持された無秩序な二重連続性構造でありうる。それらは幾何学的配列秩序の証拠を与えないが、多重連結の強力な証拠がある。ある種の相偏析ブロックコポリマーでも二重連続性形態が生じる。参考文献:アンダーソン(Anderson,D.M.)、デイビス(Davis,H.T.)、ニッチェ(Nitsche,J.C.C.)及びスクライベン(Scriven,L.E.)著(1990年)、化学物理学の進歩(Advances inChemical Physics)第77巻、377頁。
【0037】
化学的判断基準:界面活性剤の場合、所与の極性基が界面活性剤の頭部基として機能するかどうかを判断するための多数の基準がロバート・ローリンによって詳細に表示され、論じられており、そこでは、むしろ低濃度でもnmオーダーの構造の相を水中で形成することが界面活性剤の定義に含まれている。参考文献:前掲ローリン著、液晶の進歩、第3巻、第41頁、1978年。
ローリンによって与えられた以下のリストは、界面活性剤の頭部基として効果のない幾つかの極性基を示している(例えば、これらの極性基のひとつに結合されたアルカン鎖はnmオーダーの構造の液相又は液晶相を形成するとは期待できない)。即ち、アルデヒド、ケトン、カルボン酸エステル、カルボン酸、イソシアナート、アミド、アシルシアノグアニジン、アシルグアニル尿素、アシルビウレット、N,N−ジメチルアミド、ニトロソアルカン、ニトロアルカン、硝酸エステル、亜硝酸エステル、ニトロン、ニトロソアミン、ピリジンN−オキシド、ニトリル、イソニトリル、アミンボラン、アミンハロボラン、スルホン、ホスフインスルフィド、アルシンスルフィド、スルホンアミド、スルホンアミドメチルイミン、アルコール(単官能)、エステル(単官能)、第二級アミン、第三級アミン、メルカプタン、チオエーテル、第一級ホスフィン、第二級ホスフィン及び第三級ホスフィン。
【0038】
界面活性剤の頭部基として有効であり、これらの極性基のひとつに結合したアルカン鎖がnmオーダー構造の液相及び液晶相を形成すると期待される幾つかの極性基は次のものである。
a.非イオン性:
カルボン酸塩(石鹸)、硫酸塩、スルファミン酸塩、スルホン酸塩、チオ硫酸塩、スルフィン酸塩、燐酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、ニトロアミド、トリス(アルキルスルホニル)メチド、キサントゲン酸塩
b.陽イオン性:
アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、スルホキソニウム
c.双性イオン性:
酢酸アンモニオ、スルホン酸ホスホニオプロパン、硫酸ピリジノエチル
d.半極性:
アミンオキシド、ホスホリル、ホスフィンオキシド、アルシンオキシド、スルホキシド、スルホキシイミン、スルホンジイミン、アミド酸アンモニオ。
【0039】
ローリンはまた、一般的原則として、所与の極性基とフェノール(水素結合供与体)との1:1会合錯体の形成のエンタルピーが5kcalよりも小さいならば、その極性基は界面活性剤の頭部基として有効ではないであろうことも説明している。
【0040】
極性頭部基に加えて、界面活性剤は無極性基を必要とし、やはり、有効な無極性基についての指針がある。当然のことながら最も普通のものであるアルカン鎖は、炭素数をnとすれば、界面活性剤の会合挙動が起こるためには、nは少なくとも6でなければならず、少なくとも8〜10が通常の場合である。興味あることには、n=8で、頭部基として丁度十分に有効なアミン頭部基を有するオクチルアミンは、外界温度で水と層状の相を示し、nmオーダー構造のL2相をも示す。参考文献:ヴァルンハイム(Warnheim,T.)、ベルゲンシュタール(Bergenstahl,B.)、ヘンリクソン(Henriksson,U)、マルムヴィク(Malmvik,A.-C.)及びニルソン(Nilsson,P.)(1987年)、ジャーナル・オブ・コロイド・アンド・インターフェイス・サイエンス(J.of Colloid and Interface Sci.)、118:233頁。分枝状炭化水素は、nの下限については基本的に同じ要件である。例えば、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウムは全般にわたる液晶相を示す。参考文献:ウィンザー(Winsor,P.A.)(1968年)、ケミカル・レビューズ(Chemical Rev.)、68:1。但し、これら2つの例の直鎖状及び分枝鎖状炭化水素は、nの上限について大きく相違する。直鎖状の飽和アルカン鎖では、結晶化傾向のためにnが約18より大きい場合にクラフト点が高くなり、nmオーダー構造の液相及び液晶相の温度範囲が100℃近傍又はこれを越える温度まで上昇するようになる。本発明との関連では、殆どの用途について、このことがこれらの界面活性剤をnが8と18の間のものよりもかなり有用性の低いものとする。鎖中に不飽和又は分枝を導入するとき、nの範囲を劇的に拡大することができる。不飽和の例は魚油から導かれた脂質の場合をもって例証でき、この場合、ドコサヘキサジエン酸及びその誘導体(モノグリセリド、石鹸などを含む)のように6個もの二重結合の存在によって炭素数22の鎖が極めて低い融点を示す。更に、極めて高分子量のポリブタジエンは常温で弾性のポリマーであり、ポリブタジエンブロックを有するブロックコポリマーはnmオーダー構造の液晶を生成することが周知である。同様に、分枝の導入により、PLURONICシリーズの界面活性剤など、極めて重要な多くの両親媒性ブロツクコポリマー界面活性剤において疎水性ブロックとして働くポリプロピレンオキシド(PPO)などの炭化水素ポリマーを製造することができる。界面活性剤において、水素を弗素で置換すること、特に過弗化鎖の適用は、界面活性剤の系ではかなり稀な中間相を含めて、全範囲の液晶相を示すペルフルオロオクタン酸リチウム(n=8)により例証されるように、一般的にnの最小値に関する要求を低減させる。別の所で論じられているように、コール酸石鹸(胆汁酸石鹸)における縮合環構造などの他の疎水性基も、有効な無極性基として働くが、ある特定の疎水性基が界面活性剤挙動をもたらすかどうかを判定する上では、これらの適用はケースバイケースで取扱う必要がある。
【0041】
単一成分ブロックコポリマーの場合、比較的単純な平均場統計理論がnmオーダー構造の液相及び液晶相物質がいつ生成するかを予測するのに充分であり、これらは広い範囲のブロックコポリマーについて全く一般的である。ポリマーブロックA及びBの間のフローリー=ハギンズの相互作用係数をχ、ブロックコポリマーの重合指数(相互作用指数の定義に合わせて、ポリマー鎖中の統計単位又はモノマー単位の数として定義される)をNとするとき、積χNが10.5よりも大きければnmオーダー構造の液相及び液晶相が期待される。参考文献:ライブラー(Leibler,L.)著(1980年)マクロモレキュールズ(Macromolecules)13、1602頁。この臨界値10.5より大きい値の場合、二重連続性立方晶系の相を含め、秩序ある配列のnmオーダー構造の相(液晶)を形成し得る。参考文献:ハジュック(Hajduk,D.A.)、ハーパー(Harper,P.E.)、グルナー(Gruner,S.M.)、ホーネッカー(Honeker,C.C.)、キム(Kim,G.)、トーマス(Thomas,E.L.)及びフェタース(Fetters,L.J.)著(1994年)マクロモレキュールズ(Macromolecules)第27巻、4063頁。
【0042】
マトリックスのnmオーダー構造物質として適当なnmオーダー構造の液相物質としては、
a.nmオーダー構造のL1相物質、
b.nmオーダー構造のL2相物質、
c.nmオーダー構造のミクロエマルジョン、又は
d.nmオーダー構造のL3相物質、が挙げられる。それらnmオーダー構造の液相は、次の性質をもつ少なくともひとつの第一タイプ及び第二タイプ(場合により3つ以上のタイプ)の領域(ドメイン)からなる領域構造によって特徴付けられる。
【0043】
a)第一タイプの領域の化学成分が第二タイプの領域の化学成分とは不相容性であって(一般に異なる領域タイプの各対は相互に不相容性である)、所与の条件下で混合せず、むしろ別々の領域のままであるもの。(例えば、第一タイプの領域は水及び脂質頭部基などの極性成分から実質的に構成でき、第二タイプの領域は炭化水素鎖などの無極性成分から実質的に構成できる。或いは、第一タイプの領域はポリスチレンに富み、第二タイプの領域はポリイソプレンに富み、第三タイプの領域がポリビニルピロリドンに富む場合も該当する。)
b)各領域内の原子の配列秩序が固体様というよりも液体様であるもの。即ちこの場合は原子の格子による配列秩序を欠いている。(これは、広角X線回折において鋭いブラッグ反射がないことによって証明される。)
c)実質的に全ての領域の最小寸法(例えば層の場合の厚み、円柱状又は球状の領域の場合の直径)がnmの領域にあるもの。
d)領域の編成が長域配列秩序を示さず、いかなる周期的格子にも適合しないもの。これは、相の微小角X線散乱試験における鋭いブラッグ反射の不存在によって証明される。(更に、下記に見られるように、高粘度及び複屈折が共に欠けているならば、これは液晶相と対立する液体の強い証拠である。)
【0044】
液相の各々に関して、nmオーダー構造の液体中のこれら2つのタイプの領域が「有極性」及び「無極性」である界面活性剤ベースの系を最初に論じる。一般には、それに続いてブロックコポリマーを主成分とした系を論じる。これらの系において、「極性」及び「無極性」という語を適用できるかもしれないし、適用できないかもしれないが、「A」「B」などの領域タイプが存在し、そこでは、上に定義した(nmオーダーの構造の液体の定義)ように、領域タイプ「A」と「B」とは互いに非混和性である。
【0045】
L1相:界面活性剤ベースの系で生じる全てのL1相において、極性−無極性界面の湾曲は無極性(非極性)領域に向いており、通常、水−連続媒質中に存在する粒子(正常ミセル)をもたらしている(ここでは、「水」は任意の極性溶媒を指す)。これらのミセルが、条件又は組成の変化に応じて球形から円柱形に変形するとき、それらは融着しあい、二重連続性が生じうる。水の連続性に加えて疎水性領域が連結し、試料全体に拡がる網状構造を形成する。これは未だL1相でありうる。更に、いかなるミクロ構造も持たないことの証明を示すL1相の例がある。即ち、ミセルがなく、よく規定された領域もなく、ただ界面活性剤分子が構造のない1相の液体溶液中に互いに混合されているだけであり、これは従ってnmオーダー構造の物質ではない。これらの「構造のない溶液」は、時としてその間の何らの相変化もなしに、単なる組成変化によってnmオーダーの構造の相へと変化させることができる。換言すれば、熱力学は、構造のない溶液とnmオーダー構造の相との間の相の境界を述べてくれない。これが、長域配列秩序をもつ相(液晶又は結晶)と長域配列秩序を欠く相(液体)との間の、熱力学によって相の境界に要求される転移とは対照をなすものであることは勿論である。
【0046】
ブロックコポリマーベースの系で生じるL1相の場合は、「極性」及び「無極性」という用語は適用できないが、いかなる場合にも、2つの(場合によって更に多くの)領域タイプがある。本発明者らは、A/B界面の湾曲がA領域に向いており、その結果、典型的なnmオーダーの構造が、B領域の連続体中に配置された領域タイプAの粒子、しばしば球状粒子からなっていると約束する。例として、ポリスチレン−ポリイソプレン二ブロックコポリマーでは、ポリスチレンブロックの体積分率が極めて低く、例えば10%であれば、通常のミクロ構造は連続したポリイソプレンマトリックス中のポリスチレンに富む球というものになるであろう。逆に、ポリイソプレン10%のPS−PI二ブロックの場合には、ポリスチレン連続マトリックス中のポリイソプレンに富む球が可能と思われる構造ということになろう。
【0047】
nmオーダー構造のL1相の確認:L1相は液相であるから、nmオーダー構造のL1相を構造のない溶液液相と区別するための手法が既に開発されている。以下に述べる実験的試験に加えて、所与の系が単純な無構造溶液の代わりにnmオーダー構造の相を形成すると期待されるかどうかを先験的に判断できる基準を提供する多くの周知の知識がある。
【0048】
nmオーダー構造の液相及びnmオーダー構造の液晶相の形成は、界面活性剤の定義の一つの要件であるから、nmオーダー構造の液体を無構造の液体から区別する際に、問題の液体を直接分析するための後述の方法に加えて、所与の化合物が実際に界面活性剤であるか否かを判定する基準、幾つかの界面活性試験に備えた基準を持つことは極めて貴重である。前掲ローリン著、液晶の進歩、第3巻、第41頁(1978年)にも幾つかの基準が論じられている。まずローリンは、所与の化合物が界面活性剤か否かを先験的に判断するための化学的基準を列挙しており、これは先に詳細に述べたとおりである。ある化合物がこれらの基準に基づいて真の界面活性剤であると予想されるならば、その化合物は水中でnmオーダー構造の相を形成すると期待される。更に、水及び疎水性物質の存在下にかかる化合物を用いて、存在する疎水性物質の少なくとも一部を組み入れ、nmオーダー構造の相が形成されるとも予想される。
【0049】
非界面活性剤両親媒性物質、特に短鎖アルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドなどの両親媒性有機溶媒をかかる系に加えた場合、有機溶媒の作用は通常コロイド凝集体を崩壊させ、全ての成分を共可溶化することであるから、構造のない液体が生じるであろう。
【0050】
続いてローリンは、物理的観察に基づく幾つかの基準も論じている。一つの周知の基準は、表面張力の測定において観測される臨界ミセル濃度(CMC)である。問題の化合物の水溶液の表面張力を濃度の関数としてプロットすると、添加した化合物が実際に界面活性剤であるならば、極めて低い濃度で表面張力の急激な低下が見られるであろう。次に、CMCとして知られている特定の濃度において、直線の傾きがCMCの右へ急激に低下するにつれて、このプロットに急激な変化が生じ、界面活性剤を追加しても表面張力の低下はずっと僅かになる。その理由は、CMCより上では、追加した界面活性剤が殆ど全部、空気−水界面へよりもミセル形成に参加するからである。
【0051】
ローリンが表にしている第二の基準は液晶基準である。化合物が高い濃度で液晶を形成するならば、それは界面活性剤であるに違いなく、それが起こる濃度よりも低い濃度で液晶相を形成するであろう。特に、L1相は、正六方晶相の液晶又は場合によって非二重連続性正立方晶相の液晶を形成する濃度よりも僅かに低い濃度で見られるのが普通である。
【0052】
ローリンが論じている別の基準は、クラフトの境界プラトーと無水化合物の融点との間の温度差に基づいている。クラフト境界は、化合物と水との二成分系の状態図における曲線である。クラフト線より下では結晶であり、クラフト線より上では結晶が融解して、クラフト線に沿った極めて狭い温度範囲にわたって溶解度の劇的な増大がある。真の界面活性剤の場合には、この温度差はかなり大であり、例えば、パルミチン酸ナトリウムでは、無水化合物の融点は288℃、クラフト線は69℃にそのプラトーを持つので、差は219℃にも達する。ローリンは続いて、温度差が14℃で状態図で液晶に対応する領域が小さく、従って控え目の会合コロイド挙動を示すドデシルアミンの場合を論じている。これに対し、ドデシルメチルアミンもドデカノールも界面活性剤タイプの会合挙動を示さず、ともに前記の温度差はゼロである。
【0053】
ここで論じた液晶の場合と同様に、ある物質が与えられたとき、その物質、この場合には液体が、nmオーダー構造のものであるか否かを判定するのに使用できる実験的試験法がいくつかあり、これらをL1相との関連で以下に論述する。但し、それらは適切に変形すれば全てのnmオーダー構造の液体についても当てはまるものである。かかる判定において、これらの特性の入手できる限りの多くを組合せるのが最良である。
【0054】
全ての液相の場合と同様に、L1相は、流れのないときには光学的に等方性である。それは、重水素化界面活性剤を用いたときの2H−NMRのバンド形状において分裂(スプリッティング)を与えない。
又、交差偏光フィルターを用いた試験で、界面活性剤系のL1相は、適度な流動条件下でも一般に複屈折を与えない。ブロックコポリマーをベースとした系の場合の複屈折に関する状況は、ひずみ複屈折の可能性によって複雑となり、それ故、これはその場合には信頼しうる方法ではない。
界面活性剤ベースのL1相に戻ると、粘度は一般にかなり低く、同じ系でのいかなる液晶よりも相当低い。
【0055】
パルスグラジエントNMRを用いて種々の成分の有効自己拡散係数を測定する場合、界面活性剤及び任意の添加疎水性物質の自己拡散は極めて度合いが低く、典型的には10-132/秒以下である(相が二重連続性でなければ。後述参照)。これは、界面活性剤及び疎水性物質の拡散の第一の手段はミセル全体の拡散によるが、それが非常に遅いからである。又、界面活性剤及び疎水性物質の拡散速度は、同じ理由でほぼ同じであろう。
【0056】
微小角X線散乱(SAXS)がnm領域で(又いかなる範囲においても)鋭いブラッグピークを与えないのは勿論である。但し、文献からの数種類の方法により曲線全体を分析すると、nmオーダー構造の長さのスケールを得ることができる。低い波数(但し、界面活性剤分子の長さの逆数に比べて低すぎない)での強度の低下を分析することにより、見かけの回転半径を求めることができる。波数の平方に対して強度をプロットし、傾きをとってRgを推定する(所謂ギニエプロット)。次に、回転半径を、標準的な周知の公式によりミセル単位の寸法と関連付ける。これがnmの領域に入るであろう。更に、強度と波数の平方との積を波数に対してプロットすることにより(所謂ホースマンプロット)、やはりミセルの寸法に関連付け可能なピークが見出されよう。これには、回転半径よりも、ミセル間の相互作用に影響されにくいという利点がある。
【0057】
二重連続性である界面活性剤ベースのL1相の場合、上記の方法は次の様に変形できる。先ず、二重連続性が生じたときには粘度をかなり高くすることが可能で、連続性である界面活性剤膜の剛性にまで達しうる。又、界面活性剤、更には添加疎水性物質(二成分系にマーカーとして意図的に添加できる)の自己拡散速度も劇的に上昇可能であり、同じ系での層状の相における値に近づき、それを越えさえもする。そして、SAXS分析で回転半径及びホースマンプロットの両者は結果としてnm領域の寸法を与えるが、これらは、離散粒子の寸法としてよりは二重連続性領域構造の特性的長さスケールであると解釈すべきである。(幾つかのモデル、例えば著者の学位論文の相互連結円柱モデルやタルモン=プレイガーモデルでは、二重連続性領域構造は、見たところ「粒子」であるが、実際にはモデルの二重連続性ジオメトリーを構成するための構成ブロックであるに過ぎないところの単位から構成されているものとして表現される。)
【0058】
ブロックコポリマーベースの系におけるL1相の場合、この同じSAXS分析が有効である。これに対し、NMRバンド形状及び自己拡散測定は一般にそれに及ばず、表面張力測定もそうである。但し、過去にはNMR自己拡散の代わりに蒸気輸送測定が行われていた。特に、領域タイプのいずれかに優先的に可溶性であるが他のタイプには可溶性ではないガスを見出すことができるならば、そのガスの試料を通しての輸送を測定することによりそれらの領域の連続性を検定することができる。これが可能ならば、ミセル相中の連続領域(タイプB)を通しての輸送は、純粋なBポリマー中でのそれよりもごく僅かに遅く、A領域に閉じ込められたガスの輸送は極めて低いであろう。
【0059】
ブロックコポリマーベースのミセル相の剛性率は、大部分が、連続相を形成するポリマーブロック、我々の約束ではポリマーBのそれによって定まる。例えば10%PSであって、従って連続PIマトリックス中にPSミセルが形成されるPS−PIでは、剛性率は純粋なポリイソプレンのそれに近く、PSミセルの存在のためにごく僅かな上昇を示すであろう。興味あることに、90%PSで、連続PSマトリックス中にPIミセルがある逆の場合には、エラストマー性PIミセルは純粋なガラス様ポリスチレンに比して破壊特性を改善しうる衝撃吸収(緩衝)成分を提供することができる。
【0060】
L2相:この相は、極性域と無極性域との役割が逆になっている以外はL1相と同じである。極性−無極性界面の湾曲は極性領域へ向いており、ミセル(存在するならば)の内部は水及び/又は他の極性部分であり、無極性領域(典型的には脂質のアルカン鎖)が連続マトリックスを形成する。但し、極性領域も結びついて二重連続性L2相を形成することも可能である。上述のように、この相は、nmオーダー構造のものか又は無構造のものでありうる。
【0061】
nmオーダー構造のL2相の確認:nmオーダー構造のL2相を確認するための指針は、次の変形をすればL1相について先に述べたものと同じである。ブロックコポリマーベースの系では2つのタイプのミセル相(B中のA及びA中のB)は均等であり、ブロックコポリマー系のミセル相の確認については上で論じたから、界面活性剤ベースのL2相だけを論じればよい。
【0062】
先ずL2相は、例えば少数(典型的アルキル鎖長で普通は5以下)のエチレンオキシド基をもつエトキシル化アルコール界面活性剤や二重鎖界面活性剤の場合のように、HLBが低いときに一層顕著であるのが一般的である。相挙動の点では、一般にL2相は逆液晶相よりも高い界面活性剤濃度で生じ、極めて一般的な位置(ロケーション)はL2相に対して相対的に高い界面活性剤濃度で逆六方晶系相の境界を定める。二重連続性ではないL2相の場合、水の自己拡散は極めて低く、拡散係数の測定(例えばパルスグラジエントNMRによる)は10-112/秒程度又はそれ以下となる。又、ホースマンプロットから逆ミセルの寸法か与えられ、これはほぼ水領域の寸法となるはずである。
【0063】
ミクロエマルジョン:油(無極性液体)、水(極性液体)及び界面活性剤を含み、熱力学的に安定で粘度が低く、光学的等方性でミクロ構造の液相であると定義できる。参考文献:ダニエルソン(Danielsson,I.)及びリンドマン(Lindman,B.)著(1981年)コロイド・アンド・サーフェシズ(Colloids and Surfaces)、第3巻、391頁。界面活性剤、水及び油の熱力学的に安定な液体混合物を一般的にミクロエマルジョンと呼ぶ。このミクロエマルジョンは、巨視的には均質であるが、顕微鏡スケール(10〜1000オングストローム)では界面活性剤に富む膜によって隔てられた水性と油性の各ミクロ領域(ミクロドメイン)に構造化されている。参照文献:スカートヴェイト(Skurtveit,R.)及びオルソン(Olsson,U.)著(1991年)ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(J.Phys.Chem.)第95巻、5353頁。ミクロエマルジョンを規定する主な特徴は、それが水と界面活性剤に加えて「油」(無極性溶媒又は液体)を含有することであり、定義の通りに常にミクロ構造化されている。一般に、油と水を共可溶化しうる有機溶媒(例えばエタノール、THF、ジオキサン、DMF、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド及びその他の幾つか)の不存在下では油と水の相偏析傾向が強いため、油と水及び界面活性剤を含有する透明で単一相の液体はミクロエマルションであるはずであり、この根拠だけでその相はnmオーダー構造であると確実に結論できる。ミクロエマルジョンはまた、L1相又はL2相でありうることにも注意すべきである。但し、L1相である場合はミセルは必然的に油で膨潤させられる。ミクロエマルジョンはnmオーダー構造の液相である。仮に「油」と水及び界面活性剤からなる液体がnm域よりも大きい(即ちμm域の)特徴的領域サイズを有するとすれば、それはもはやミクロエマルジョンではなく、むしろ「ミニエマルジョン」又は普通のエマルジョンであり、これら2つは共に非平衡である。L1相とL2相が油を含有することができ、しかも二重連続性でさえありうるという事実にもかかわらず「ミクロエマルジョン」なる用語を導入したのは、油−水−界面活性剤の三成分脂質系が、水−連続性から二重連続性、油−連続性へと、それらの間に相の境界なしに連続的に進化することがかなり普遍的なことであることによる。この場合、状態図の「L1」域と「L2」域との間に分割点を設けようとするのは無意味であり、それ故、代わりに全体の領域を「ミクロエマルジョン」と呼び、この領域の高含水量の末端では構造が油で膨潤したL1相構造であること、そしてこの領域の高含油量の末端では構造がL2相であると認識するのである(ヴェン(Venn)線図ではミクロエマルジョンとL1及びL2相との間に重なりがあるが、L1相とL2相との間には重なりはない)。後述するように、ミクロエマルジョンのミクロ構造は、油に富む領域を水に富む領域から分割している界面活性剤の単分子層膜によって極めて一般的に記述することができる。この界面活性剤と脂質に富む領域とを分割する膜は囲いをなしてミセルを形成でき、或いは互いに結びついて網状構造を形成することで二重連続性のミクロエマルジョンを形成可能である。
【0064】
「エマルジョン」は、本明細書で適用している用語の通りのnmオーダー構造の液体ではないことは指摘しておかなければならない。まず第一に、エマルジョンの特徴的長さスケールは、ほぼエマルジョン液滴の平均サイズであるが、通常はこれはnmオーダー構造の液体における特徴的長さスケールよりもかなり大きく、nmと言うよりはμmの領域に入る。サブミクロン液滴サイズのエマルジョンを製造しようとする最近の努力は相対的に小さな液滴のエマルジョンを生み出しており、「ミニエマルジョン」なる語を出現させたが、これらの「エマルジョン」や「ミニエマルジョン」を本明細書でいうnmオーダー構造の液相の範囲から除外する決定的な差違が更に存在する。本明細書で記述しているミクロエマルジョンを含めてnmオーダー構造の液相は熱力学的平衡のもとに存在しており、平衡相ではなく準安定物質であるに過ぎないエマルジョンとは異なる。更に、静止していて充分に平衡化しているnmオーダー構造の液体は光学的に透明であるが、エマルジョンは一般に不透明であり、例えば普通のミルクはエマルジョンである。その上、通常のエマルジョンの構造に関するフライベルク(Friberg)のモデルが正しいとすれば、分子スケールでの差異は劇的であることは明白である。このモデルに従えば、エマルジョン液滴は通常は界面膜によって安定化されていることか明らかであり、典型的には顕微鏡で観察すればその膜はnmオーダー構造の液晶相物質の膜であることが証明される。すなわち、これらのエマルジョンは階層構造を有し、そこではnmオーダー構造の相が主要構築ブロックであるエマルジョン液滴及び連続媒質の間の安定化層の役割を演じている。本発明で「ミクロ構造」の代わりに「nmオーダー構造の」という表現を用いたのは、「nmオーダー構造」という表現のより精密で限定された性格並びにそれがエマルジョンなどの全く異なる範囲に含まれる他の液相を除外していることに基づいくものである。述べるまでもないことではあるが、単純な幾何学的考察により、サイズが10μmオーダーの液滴と液晶層の安定化膜とを有するエマルジョンは、一般的に1μmオーダー以下のサイズを持つ本発明のミクロ粒子の内部物質として適さないことか明白である。
【0065】
nmオーダー構造のミクロエマルジョンの確認:nmオーダー構造のL1相の確認に関する前述の方法及び指針は、次の変更を加えてnmオーダー構造のミクロエマルジョンの確認についても当てはまる。
【0066】
L1相若しくはL2相の記述のいずれにも明らかに含まれてないミクロエマルジョンこそがここで扱うべき残された問題であるが、注目すべきは、これらの多くが、殆どではないにせよ二重連続性であることであり、エマルジョン及び他の通常の液体はけっして二重連続性ではないから、油と水及び界面活性剤を含有する単一液相の場合の二重連続性は、この相がnmオーダー構造のものであると言う強力な証拠となることである。この問題は、リンドマン(Lindman,B.)、シノダ(Shinoda,K.)、オルソン(Olsson,U.)、アンダーソン(Anderson,D.M.)、カールストローム(Karlstrom,G)及びウェネルストローム(Wennerstrom,H.)著(1989年)「ミクロエマルジョンにおける二重連続性構造の証明について(On the demonst-ration of bicontinuous structures in microemulsions)」コロイド・アンド・サーフェシズ(Colloids and Surfaces)第38巻、205貞に述べられている。二重連続性を証明するための時間試験法は、パルス漸次変化NMRを用いて油及び水の双方の有効自己拡散係数を別々に測定することである。一般に、界面活性剤の自己拡散も測定するのが最良である。水の連続性を確認するために電気伝導度も利用できるが、これには「ホッピング」過程に関連した問題が生じやすい。蛍光クエンチングも連続性の判定に用いられている。参考文献:サンチェス・ルビオ(Sanches-Rubio,M.)、サントス・ヴィダルス(Santos-Vidals)、ラッシュフォース(Rushforth,D.S.)及びピューイ(Puig,J.E.)著(1985年)ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(J.Phys.Chem.)第89巻、411頁。二重連続性を調べるために微小角中性子およびX線散乱分析が用いられている。参考文献:オウヴレイ(Auvray,L.)、コットン(Cotton,R.)、オーバー(Over,R.)およびタウピン(Taupin,J.)著(1984年)ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(J.Phys.Chem.)第88巻、4586頁。界面の存在を演鐸し、従ってnmオーダー構造の存在を証明するためには、SAXS曲線のポロド分析が用いられている。参考文献:マルティノ(Martino,A.)及びケイラー(Kaler,E.W.)著(1990年)、ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(J.Phys.Chem.)第94巻、1627頁。極端に速い速度で凍結を行う凍結破壊電子顕微鏡検査がミクロエマルジョンの研究に用いられており、これはnmオーダー構造の液体の固定法に関する数十年間の開発の成果である。この方法とその成果の信頼性を論じた批評的総説もある。参考文献:タルモン(Talmon,Y.)著、ミッタル(Mittal,K.L.)及びボソレル(Bothorel,P.)編、第6巻、プレナムプレス、ニューヨーク、1986年、第1581頁。
【0067】
油−水−界面活性剤の液相がL1又はL2相ではないことが明らかで且つ二重連続性の強い証拠も示していない場合、それがnmオーダー構造のものであることを証明するための分析はかなり複雑で、単一の手法では不充分である。一般的には、SANS又はSAXS、NMR自己拡散、低温EMなど、今までに論じた種々の手法を適用し、得られたデータからnmオーダーのモデル構造に関する合理的な説明を試みる必要がある。
【0068】
L3相:状態図におけるL2域が、そこから突き出た「舌状部」を示すことがある。単純なL2相域の通常の外観とは似ていない細長い突出部である。これは後述の如く若干のL1域でも現れることがある。これらは、特にX線及び中性子散乱を用いて子細に検討すると、L2相とは基本的に異なっていることが判る。即ち、L2相では界面活性剤の膜が通常は単分子層の形をとっており、一方の側には油(無極性溶媒)が、他方の側には水(極性溶媒)が存在する。これに対して、この所謂「L3相」では界面活性剤が二分子層の形をとっており、両側に水(極性溶媒)が存在する。従ってL3相は一般に二重連続性であると考えられ、事実それは立方晶系相ともう一つの別の性質を共有している。混交されているが前記二分子層によって隔てられている2つの別個の水性網状構造が存在する。かくしてL3相は、実際には立方晶系相に極めて類似しているが立方晶系相の長域配列秩序を欠いている。本明細書では、L2相から生じたL3相と、L1相から生じたL3相には、それぞれ異なる名称を与えることにし、L2相に関連したものを「L3相」、L1相に関連したものを「L3*相」と呼ぶことにする。
【0069】
nmオーダー構造のL3相の確認:本明細書で論じている他の液相と区別してL3相を確認することは複雑な問題とも思われるので、幾つかの分析法の組合せが必要である。これらの手法のうち最も重要なものを以下に述べる。
【0070】
静止状態における光学的等方性及びそれが液体であるという事実にもかかわらず、L3相は流動複屈折を示すことがあるいう興味ある性質を持つことがある。
多くの場合、これはかなりの高粘度、即ちL1及びL2相で観察されるよりも遙かに高濃度で、層状相の場合の粘度と同等以上の高粘度となる。当然のことながら、これらの性質はnmオーダー構造のトポロジー、ジオメトリーに大きい制約を与えている連続二分子層膜に起因する。従って、剪断(ずれ)によって二分子層膜の大部分に相互変形作用(及びその結果としてのアラインメント)が生じる可能性があるが、これに対して、例えばミセルL1相の場合は独立したミセル単位が剪断によって変位する可能性があるだけであり、いずれにしても単分子層は一般に二分子層よりも剪断による変形を受けやすい。この解釈は、L3相の粘度は典型的には界面活性剤の体積分率の線型関数であるという事実に基づく解釈で支持される。参考文献:スナーブル(Snabre,P.)及びポルト(Porte,G.)著(1990年)ユーロフィジカル・レターズ(Europhys.Let.)第13巻、641頁。
【0071】
nmオーダー構造のL3相の定量分析のための精巧な光学、中性子及びX線散乱による方法論が開発されている。参考文献:サフィニヤ(Safinya,C.R.)、ルー(Roux,D.)、スミス(Smith,G.S.)、シンハ(Sinha,S.K.)、ディモン(Dimon,P.)、クラーク(Clark,N.A.)及びベロック(Bellocq,A.M.)著(1986年)フィジカル・レビューズ・レターズ(Phys.Rev.Lett.)第57巻、2718頁、又はルー(Roux,D.)及びサフィニヤ(Safinya,C.R.)著(1988年)ジュルナール・ド・フィジークフランス(J.Phys.France)第49巻、307頁、又はナレー(Nallet,F.)、ルー(Roux,D.)及びプロスト(Prost,J.)著(1989年)ジュルナール・ド・フィジーク フランス(J.Phys.France)第50巻、3147頁。また、ルー(Roux,D.)、ケイツ(Cates,M.E.)、オルソン(Olsson,U.)、バル(Ball,R.C.)、ナレー(Nallet,F.)及びベロック(Bellocq,A.M.)著ユーロフィジカル・レターズ(EuroPhys.Lett.)におけるルーらの分析も、nmオーダー構造が界面活性剤の二分子層によって隔てられた2つの水性網状構造をもち、この二分子層がこれら2つの網状構造の均等性により或る種の対称性をもたらしていることを確認できると評価されている。
【0072】
幸いにも、相挙動に基づくL3相のnmオーダー構造という性質の確認は、典型的なL1相、L2相又はミクロエマルジョン相の場合よりもより確実でありうる。これは、特にL3相は、多くの場合に少量(2〜3%)の油又は他の化合物を層状又は二重連続性立方晶系の相に添加するか、或いは同様の相に僅かな温度上昇をもたらすことによって得ることかできるからである。これらの液晶相はnmオーダー構造のものであることを証明するのは容易(特にX線でのブラッグピーク)であるから、対象の液相はその組成が液晶相に極めて近いときにはnmオーダー構造のものであると確信することができる。結果的に、2〜3%の油をnmオーダー構造の液晶相に添加することが液晶を無構造の液体に転化させることは殆ど起こりそうなことではない。実際に、エアゾールOT(商品名)−食塩水系でのパルス漸次変化NMR自己拡散測定では、L3相での自己拡散挙動は、それに近い逆二重連続性立方晶相での自己拡散挙動に対して極めて明瞭に外挿を与えることが確認されている。このL3相は、SANS、自己拡散及び凍結破壊電子顕微鏡観察の組合せによる研究対象とされている。参考文献:ストリー(Strey,R.)、ジャン(Jahn,W.)、スコウリ(Skouri,M.)、ポルト(Porte,G.)、マリニャン(Marignan,J.)およびオルソン(Olsson,U)著、チェン(Chen,S.H.)、フアン(Huang,J.S.)及びタルタリア(Tartaglia,P.)編「超分子凝集体の構造及び動力学(Structure and Dynamics of Supermolecular Aggregates)」クリューバー・アカデミツック・パブリッシャーズ(Kluwer Academic Publishers)、オランダ。
【0073】
実際に、L3相のSANS及びSAXS散乱分析では、状態図で近接する二重連続性立方晶相のものと同程度の振幅のd間隔に相当する波数ベクトルに幅広い干渉ピークがしばしば観測され、著者はL3相nmオーダー構造のモデルを開発したが、これは二重連続性立方晶相の既知構造の外挿に相当する。参考文献:アンダーソン(Anderson,D.M.)、ウェンネルストローム(Wennerstrom,H.)及びオルソン(Olsson,U.)著(1989年)ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(J.Phys.Chem.)第93巻、4532頁。
【0074】
被覆粒子の一成分としてのnmオーダー構造の液晶相物質は以下のいずれかであればよい。
a.nmオーダー構造の正又は逆立方晶相物質
b.nmオーダー構造の正又は逆六方晶相物質
c.nmオーダー構造の正又は逆中間相物質
d.nmオーダー構造の層状相物質
nmオーダー構造の液晶相は、下記の性質をもつ少なくとも1つの第一タイプ及び第二タイプの領域(ドメイン)(場合によっては3以上のタイプの領域)からなる領域構造によって特徴付けられる。
【0075】
a)第一タイプの領域の化学部分は第二タイプのそれらと非相容性である(一般に、異なる領域タイプの各々の対は相互に非相容性である)。その結果、それらは所与の条件下で混和せず、別々の領域のままである(例えば、第一タイプの領域が実質的に水及び脂質頭部基などの極性成分からなり、第二タイプの領域が実質的に炭化水素鎖などの無極性成分からなっていてもよい。或いは、第一タイプの領域がポリスチレンに富み、第二タイプの領域がポリイソプレンに富み、第三タイプの領域がポリビニルピロリドンに富むものであってもよい)。
b)各領域における原子配列は固体様であるよりもむしろ液体様であり、原子の格子配列の秩序を欠いている(これは、広角X線回折での鋭いブラッグピーク反射の不存在により証明される)。
c)実質的に全ての領域の最小寸法(例えば、層の場合は厚み、円柱又は球の場合は直径)はnm域(即ち、約1〜約100nm)にある。
d)領域の編成が格子に準じており、その格子は一次元、二次元又は三次元のいずれでもよく、nm域(即ち、約5〜約200nm)の格子パラメータ(すなわち単位格子寸法)を有する。従って領域の編成は、国際結晶学表に示されている230の空間群のいずれかに適合すると共に、適切に設計された微小角X線散乱(SAXS)測定において鋭いブラッグ反射の不存在及び最小オーダーの反射のd間隔が3〜200nmの範囲にあることによって証明される。
【0076】
層状相:層状相は下記によって特徴付けられる。
1.微小角X線散乱が波数1:2:3:4:5...でピークを示す。
2.裸眼観察では、相が透明若しくは軽度又は中度の混濁を示す。
3.偏光光学顕微鏡では相が複屈折性であり、そのよく知られた集合組織はローズヴェア(Rosevear)とウィンザー(Winsor)によって充分に説明されている(例えばケミカル・レビューズ(Chem.Rev.)、1968年、第1頁)。最も際だった集合組織は、「マルタのクロス(Maltese cross)」「モザイク」および「油状縞」の三つのパターンである。マルタのクロスは、ほぼ円形に拡がる光点集合に重なって互いにほぼ直角に交わる2つの暗色帯(干渉縞)の重なりであり(複屈折)、第一次世界大戦のドイツ軍のシンボルを想起させる独特のパターンを形成している。この集合組織のバリエーション並びにその発生源は、理学博士ベラーレ(J.Bellare,Ph.D.)のミネソタ大学の学位論文(1987年)に詳細に記載されている。「モザイク」パターンの集合組織は、変形したマルタのクロスの密集配列を緻密充填した結果であると考えることができ、ランダムに寄せ集められた明暗の斑点を生じる。「油状縞」パターンは、典型的には(低粘度の)層状相をガラスとカバーガラスとの間に流したときに見ることができる。このパターンでは、複数の長い曲線が見られ、拡大(例えば400倍)して近接観察すると、丁度枕木が鉄道の軌道を作りあげているかのように、これら曲線とほぼ直角の複数の微小なスジで構成されているのが見られる(後述する六方晶系集合組織と対比すべきである)。場合により、特にその相をガラスとカバーガラスとの間で成る時間緩やかに擦り合わせると、層状相は顕微鏡の視線に平行な光軸に沿って再び整列し、複屈折性が消失する。
【0077】
界面活性剤−水系の層状相では以下の通りとなる。
1.粘度が充分に低く、従ってこの物質は流れる(例えば、その相を含む管を倒立させたとき)。
2.全ての成分の自己拡散速度は高く、バルク状態のときの値に匹敵する。例えば、層状相中での水の自己拡散係数は純水中でのそれに匹敵する。液晶を形成する界面活性剤は常温では液状ではないのが普通であるので、界面活性剤の自己拡散係数の基準点は明瞭ではなく、実際には層状相中での界面活性剤の有効(測定された)自己拡散係数を他の相の測定結果の解釈のための基準点とすることが多い。
3.その界面活性剤の頭部基を重水素化し、2H−NMRバンド形状を測定すれば2つのスパイクが見出され、それらの間には六方晶系相の場合の2倍の分裂がある。
4.相挙動の点では、層状相は、一般に単一末端の界面活性剤/水系において高い界面活性剤濃度、典型的には界面活性剤が70%以上の高濃度で生じる。二重末端の界面活性剤では、50%よりも遙かに下の低濃度で生じることが多い。通常、これは、状態図で生じうる他のいかなる液晶相よりも充分に高い温度にまで及ぶ。
【0078】
単一成分ブロックコポリマー系での層状相の場合には以下の通りとなる。
1.剛性率が、同じ系での他の液晶相よりも一般に低い。
2.相挙動の点では、一般に層状相は2つのブロックの体積分率がほぼ50:50のときに生じる。
【0079】
正六方晶相:正六方晶系の相は下記に通りに特徴付けられる。
1.微小角X線散乱が、1:31/2:2:71/2:3...、一般的には(h2+hk+k21/2(ここでh及びkは整数であり、二次元対称群のミラ一指数である)として示されるピークを示す。
2.裸眼観察では、この相は充分に平衡しているときは一般に透明であり、従って、それに近い層状相のどれよりもかなり透明であることが多い。
3.偏光顕微鏡観察では、この相は複屈折性であり、よく知られた集合組織がローズヴェア(Rosevear)とウィンザー(Winsor)によって充分説明されている(例えばケミカル・レビューズ(Chem.Rev.)、1968年、第1頁)。それらのうちで最も特異的なのは「扇様」集合組織である。この集合組織は複屈折の斑点からできているように見え、或る斑点内では細かいスジが扇状に拡がって東洋の扇を思わせる外観を呈する。隣接する斑点での扇の方向は互いにランダムに向いている。層状パターンと六方晶パターンとを区別する重要な相違点は、六方晶相での縞は高倍率で精密に調べると層状相の場合のような比較的大きいほうのスジと直角に走る細かいスジの構成を呈していないことである。
【0080】
界面活性剤−水系の正六方晶相の場合には以下の通りとなる。
1.粘度が中程度で、層状相よりは粘性が高いが、典型的な立方晶相(数百万センチポアズの粘度をもつ)よりは遥かに低粘度である。
2.界面活性剤の自己拡散係数は、層状相でのそれに比較して遅い。水の自己拡散係数はバルクの水の自己拡散係数に匹敵する。
3.重水素化界面活性剤を用いての2H−NMRのバンドパターンは、層状相で観測される分裂の半分の分裂を示す。
4.相挙動の点では、通常、正六方晶相は、単一末端界面活性剤/水系での中程度の界面活性剤濃度、典型的には50%界面活性剤程度の濃度で生じる。普通、正六方晶相の範囲はミセル(L1)相の範囲に隣接している。但し、それらの間に非二重連続性立方晶相が生じることが希にある。二重末端界面活性剤の場合、界面活性剤−水の二成分系では非二重連続性立方晶相が生じることはない。
【0081】
単一成分ブロックコポリマー系における六方晶相の場合には、「正」「逆」なる用語は一般に当てはまらない(但し、一方のブロックが有極性で、他方が無極性である場合には、それらの限定詞を原則として適用することはできる)。かかる六方晶相での剛性率は、同じ系において層状相よりは高く、二重連続性立方晶相よりは低いのが通常である。相挙動の点では、六方晶系相は、通常は、2つのブロックの体積分率が35:65程度のときに生じる。典型的には、2つの六方晶相が層状相をまたぎ、各々の場合に、少量成分は円柱の内部に存在するはずである(この記述が界面活性剤系の「正/逆」なる呼び方に置き代えられる)。
【0082】
逆六方晶相:界面活性剤−水系において、逆六方晶相の確認は上記正六方晶相の確認に対して以下の2点で異なるだけである。
1.逆六方晶相の粘度は通常かなり高く、典型的な正六方晶相よりも高くて、逆立方晶相のそれに近い。
2.相挙動の点では、逆六方晶相は、一般に、二重末端界面活性剤/水系において高い界面活性剤濃度(しばしば100%界面活性剤に及ぶ)、又はそれに近い濃度で生じる。普通、逆六方晶相域は、より低い界面活性剤濃度で生じる層状相域に隣接している。但し、二重連続性立方晶相がそれらの間に生じることがある。多くのモノグリセリド(グリセリンモノオレイン酸エステルを含む)及び幾つかの低HLBのPEGベース界面活性剤などの単一末端界面活性剤を含む幾つかの二成分系では、やや驚くべきことに、逆六方晶相が確実に現れる。
先に正六方晶相を議論した際に述べたように、「正」「逆」六方晶相の間の区別は界面活性剤系においてのみ意味があり、単一成分ブロックコポリマー六方晶相では一般に意味をなさない。
【0083】
正二重連続性立方晶相:正二重連続性立方晶相は下記の通りに特徴付けられる。
1.微小角X線散乱は立方晶系の様相をもつ三次元空間群に属するピークを示す。最も普通に遭遇する空間群をそれらの指数と共に示すと以下の通りである。
Ia3d(#230),指数61/2:81/2:141/2:4:...
Pn3m(#224),指数21/2:31/2:2:61/2:81/2:...
Im3m(#229),指数21/2:41/2:61/2:81/2:101/2:...
2.裸眼観察では、この相は充分に平衡しているときは一般に透明であり、従って、しばしばそれに近いいずれかの層状相よりもかなり透明である。
3.偏光顕微鏡観察では、この相は非複屈折性であり、それ故、光学的集合組織は見られない。
【0084】
界面活性剤−水系の正二重連続性立方晶相の場合は以下の通りとなる。
1.粘度が高く、層状相よりもずっと高く、典型的な正六方晶系相よりも更に高い。殆どの立方晶相は数百万センチポアズの粘度をもつ。
2.NMRバンド形状に分裂は観測されず、等方性運動に対応する単一ピークか見られるだけである。
3.相挙動の点では、正二重連続性立方晶相は、単一末端界面活性剤/水系ではかなり高い界面活性剤濃度、典型的にはイオン界面活性剤で70%程度の界面活性剤濃度で生じるのが通常である。普通、正二重連続性立方晶域は層状及び正六方晶相域の間にあり、このことが、その高粘度及び非複屈折性と共にその識別をかなり容易にしてくれる。二重末端界面活性剤の場合、界面活性剤−水の二成分系では正二重連続性立方晶相は全く生じないのが通常である。
【0085】
単一成分ブロックコポリマー系での二重連続性立方晶相については、「正」或いは「逆」という表現は一般に適合しない(但し、一方のブロックが有極性で他方が無極性である場合には、これらの限定詞は原則として適用可能である)。かかる二重連続性立方晶相での剛性率は、同じ系で層状相よりずっと高いのが一般的で、六方晶相よりも有意に高い。相挙動の点では、二重連続性立方晶相は、通常、2つのブロックの体積分率が26:64程度で生じる。場合によっては、2つの二重連続性立方晶相が層状相をまたぎ、各々の場合に、少量成分は円柱の内部にあり(この記述が界面活性剤系の「正/逆」という呼び方に替えられる)、六方晶相が立方晶系−層状−立方晶系という連鎖をまたぐ。
【0086】
逆二重連続性立方晶相:逆二重連続性立方晶相は下記の通りに特徴付けられる。
界面活性剤−水系においては、逆二重連続性立方晶相の確認は、上述の正二重連続性立方晶相の確認と1点で相違するだけである。即ち、相挙動の点で、逆二重連続性立方晶相は層状相と逆六方晶相との間で見られるが、正二重連続性立方晶相では層状相と正六方晶相との間で見られる。従って、正六方晶相と逆六方晶相との区別に関する前述の論述を参照されたい。良い法則は、立方晶相が層状相よりも高い水濃度であればそれは正であり、それが層状相よりも高い界面活性剤濃度であればそれは逆であるというものである。逆立方晶相は、二重尾部界面活性剤/水系では一般に高い界面活性剤濃度で生じる。但しこれは、逆立方晶相が添加された疎水性物質(「油」)又は両親媒性物質の存在下でのみ見出すことができるという事実によってしばしば複雑になる。逆二重連続性立方晶相は、多くのモノグリセリド(グリセリンモノオレイン酸エステルを含む)及び幾つかの低HLBの非イオン性PEGベースの界面活性剤の場合のように、単一末端界面活性剤を含むいくつかの二成分系で確実に現れる。
逆二重連続性立方晶相では、正のものではそうではないが、空間群#212が観察されている。この相は空間群#230から導かれる。先に正二重連続性立方晶相の論議において述べたように、「正」及び「逆」二重連続性立方晶相間の区別は界面活性剤系においてのみ意味があり、単一成分ブロックコポリマー二重連続性立方晶相では一般に意味をなさない。
【0087】
正離散性(非二重連続性)立方晶相:正非二重連続性立方晶相は下記の通りに特徴付けられる。
1.微小角X線散乱は、立方晶系の様相をもつ三次元空間群に属するピークを示す。界面活性剤系で最も普通に遭遇する空間群はPm3n(#223)であって、指数は21/2:41/2:51/2:...である。単一成分ブロックコポリマーで普通に観察される空間群は体心球状充填に相当するIm3mであって、指数は21/2:41/2:61/2:81/2:...である。
2.裸眼観察では、この相は充分に平衡しているときは一般に透明であり、従って、関連の層状相よりもかなり透明であることが多い。
3.偏光顕微鏡観察では、この相は非複屈折性であり、それ故、光学的集合組織は見られない。
【0088】
界面活性剤−水系の正離散性立方晶相の場合は以下の通りとなる。
1.粘度が高く、層状相よりもずっと高く、典型的な正六方晶相よりも更に高い。殆どの立方晶相は、離散性であれ、二重連続性であれ、数百万センチポアズの粘度をもつ。
2.やはり二重連続性立方晶相と同様にNMRバンド形状に分裂はなく、単一の等方性ピークがあるだけである。
3.相挙動の点では、正離散性立方晶相は、単一末端界面活性剤/水系ではかなり低い界面活性剤濃度、典型的にはイオン界面活性剤の場合に40%界面活性剤濃度程度で生じるのが通常である。普通、正離散性立方晶系域は正ミセル相域と正六方晶相域との間にあり、このことが、その高粘度及び非複屈折性と共にその識別をかなり容易にしてくれる。二重末端界面活性剤の場合、界面活性剤−水の二成分系では正離散性立方晶相は全く生じないのが通常である。
【0089】
単一成分ブロックコポリマー系での離散性立方晶相については、「正」及び「逆」という表現は一般に適合しない(但し、一方のブロックが有極性で他方が無極性である場合には、これらの限定詞は原則として適用可能である)。かかる離散性立方晶相での剛性率は、通常、連続相中でブロックを形成するポリマーの剛性率に殆ど全面的に依存する。相挙動の点では、離散性立方晶相は、一般に2つのブロックの一方又は他方が極めて低い20%以下のオーダーの体積分率で生じる。
【0090】
逆離散性立方晶相:逆離散性立方晶相は下記の通りに特徴付けられる。
界面活性剤−水系では、逆離散性立方晶相の確認は3つの点で上述の正離散性立方晶相の場合と相違する。
1.相挙動の点では、逆離散性立方晶相は層状相と逆六方晶相との間に見出されるが、正のものは層状相と正六方晶相との間に見出される。それ故、正六方晶相と逆六方晶相との区別に関する前述の論述を参照されたい。良い法則は、立方晶相が層状相よりも高い水濃度であればそれは正であり、それが層状よりも高い界面活性剤濃度であればそれは逆であるというものである。逆立方晶相は、二重尾部界面活性剤/水系では一般に高い界面活性剤濃度で生じる。但しこれは、逆立方晶相が添加された疎水性物質(「油」)又は両親媒性物質の存在下でのみ見出すことができるという事実によってしばしば複雑になる。逆離散性立方晶相は、多くのモノグリセリド(グリセリンモノオレイン酸エステルを含む)及び幾つかの低HLBの非イオン性PEGベースの界面活性剤の場合のように、単一末端界面活性剤を含む幾つかの二成分系で確実に現れる。
2.観察される空間群は普通Fd3m#227である。
3.水の自己拡散は非常に低く、一方、存在するいずれの疎水性物質ではそれは高い。
界面活性剤のそれは一般にかなり高く、層状相でのそれに匹敵する。
先に正離散性立方晶相の論議において述べたように、「正」及び「逆」離散性立方晶相の間の区別は界面活性剤系においてのみ意味があり、単一成分ブロックコポリマー離散性立方晶相では一般に意味をなさない。
【0091】
中間相:中間相は下記の通りに特徴付けられる。
これらの相は極めて稀に生じ、これが見出されるときは、状態図中で非常に狭い範囲を占めるのが通常である。現在のところ、これらの多くの構造は末知であるか又は論争中である。中間相は次のように分類できる。
【0092】
正中間相(1):この相は、正二重連続性立方晶相よりも低い界面活性剤濃度で六方晶相に隣接して生じる。粘度は一般に低いか又は中程度に低く、正六方晶相のそれよりも高くはない。この相は複屈折性であり、六方晶相に典型的に類似した集合組織を有する。諸成分の自己拡散は六方晶相のそれらに極めて類似している。微小角X線散乱では、立方晶相より対称性の低い空間群、典型的には単斜晶系群を示す。この相を正六方晶相と区別する目的で、高度に洗練されたNMRバンド形状及びSAXS分析を使用することができる。参考文献:ヘンリクソン(Henriksson,U.)、ブラックモア(Blackmore,E.S.)、ティディ(Tiddy,G.J.T.)及びソダーマン(Soderman,O.)(1992年)ジャーナル・オブ・フィイジカル・ケミストリー(J.Phys Chem.)第96巻、3984頁。バンド形状の分裂は、典型的には六方晶相の場合の分裂と等方性相のゼロ分裂との間の中間にある。このことがこの中間相の良い証拠を提供してくれる。
【0093】
正中間相(2):この相は、正二重連続性立方晶相よりも高濃度で層状相に隣接して生じる。これは、性質の点で、また恐らく構造の点でも、それらが複屈折性で、NMRバンド形状及びSAXS分析において差異を示すことを除けば、正二重連続性立方晶相に非常によく似ている。光学的集合組織はやや異っていて層状集合組織に似ている場合もあれば、六方晶相に似ている場合もあるが、これらはそれらのより共通した相のいずれよりもかなり粗いことが多い。前述の中間相(1)におけるのと同様に、空間群は対称性の低いものであり、典型的には菱面体晶系又は正方晶系のものであり、特徴化のためには2つの単位格子パラメータを要し、SAXS分析を困難ならしめる。一般的に言って、d間隔比の二乗が単純な積分スキームに適合できなければ、中間相構造は疑わしい。
逆中間相(2):この相は、逆二重連続性立方晶相よりも低濃度で層状相に隣接して生じる。これは複屈折性であり、空間群は対称性が低く、典型的には菱面体晶系又は正方晶系のものであり、特徴化のためには2つの単位格子パラメータを要し、SAXS分析を困難ならしめるが、SAXSスペクトルにおいて立方晶系又は六方晶系(1つの格子パラメータしかもたない)に属さないブラッグピークが存在すれば、光学的複屈折性と併せて中間相を指すものと扱える。二重連続性中間相のそれらしい空間群は、本著者による次の刊行物で論じられている。参考文献:アンダーソン(Anderson,D.M.)著、1990年9月ジュルナール・ド・フィジーク(J.Physique)補遺「ジオメトリー及び界面に関する討論会の紀要(Pro-ceedings of Workshop on Geometry and Interfaces)」、オソワ、フランス、C7-1〜C7-18頁。
【0094】
被覆粒子10が形成されつつあり、外部被覆20が末だ形成されていない時点では、nmオーダー構造の液相物質又はnmオーダー構造の液晶相物質又はそれらの組合せは、水(極性溶媒)、より正確には希薄水溶液と平衡状態にあるものであることが極めて望ましい。被覆粒子10が一旦その外部被覆20を持てば、前記nmオーダー構造の物質は水と平衡状態にある必要はない。水と平衡状態にある液相とは下記の通りである。
L2相(逆ミセルともいう)、
ミクロエマルジョン
L3相(但しL3*相は該当しない)
下記のものは水と平衡状態にある液晶相を補足するものである。
逆立方晶相
逆六方晶相
逆中間相
層状相
【0095】
水と平衡状態にある相は、本発明の被覆粒子の製造という観点から好ましいものである。好ましくは、所与の相をマトリックスとして分散させるために本明細書記載のプロセスを用いるに当たって、この相が水又は粒子をその中に分散させるいかなる溶媒にも不溶性であることが望ましい。更に、内部の相が、それが粒子形成の間に過剰の水溶液と平衡状態にあるという追加の性質をもっているとき、相転移の問題は極小になる。同様に、粒子被覆が放出されるとき及びその後に遭遇する条件下で内部の相が過剰の水溶液と平衡状態にあるときには、相変化の問題がやはり極小になり、用途によってはこのことが有利である。
【0096】
水(一般に外部溶媒)への不溶性は粒子形成の瞬間のマトリックスには好ましく、しばしば適用時にも好ましいが、一方で適用時の水への溶解性が有利な用途もあり、これは本発明によって達成可能である。例えば、水中の20%C12E5(ペンタエチレングリコールドデシルエーテル)からなるマトリックスを考える。この組成物は75℃で過剰の水(希薄溶液)と平衡状態にあるL3相を製出し、従ってこの組成物は75℃で容易に分散可能である。但し、適用温度が0℃と25℃との間であれば、この内部組成物は水に可溶性である。そして、実際にC12E5は室温で通常の水溶性界面活性剤として働く。これは、粒子被覆放出後に油じみておらず、従ってにきび誘発性ではなく、さらには浄化性の最終製品が望まれるならば有利に利用可能である。
【0097】
nmオーダー構造の液相物質は下記原料から形成可能である。
a.極性溶媒と界面活性剤
b.極性溶媒、界面活性剤及び両親媒性又は疎水性物質
c.ブロックコポリマー
d.ブロックコポリマーと溶媒
【0098】
nmオーダー構造の液晶相物質は下記原料から形成可能である。
a.極性溶媒と界面活性剤
b.極性溶媒、界面活性剤及び両親媒性又は疎水性物質
c.ブロックコポリマー
d.ブロックコポリマーと溶媒
【0099】
先に化学的基準なる見出しで、効果的な界面活性剤を製造するのに有効な有極性及び無極性基を選択するために使用可能な基準を論述した。かくして、適当な界面活性剤としては、一方は極性基の諭述において記載したものから選ばれる有効な極性基、他方は無極性基の論述において記載したものから選ばれる有効な無極性基という2つの化学的成分を含有する化合物が挙げられる。
【0100】
好適な界面活性剤又はブロックコポリマー成分(又はそれらの混合物)としては、次のものが挙げられる。
a.カチオン界面活性剤
b.アニオン界面活性剤
c.半極性界面活性剤
c.双性イオン界面活性剤
i.特に燐脂質
ii.生体膜の物理−化学的特性にマッチさせるべく設計された燐脂質含有脂質混合物
d.モノグリセリド
e.PEG化界面活性剤
f.芳香族環を有する上記のいずれか
g.ブロックコポリマー
i.両ブロックが疎水性であるが、相互に非混和性であるもの
ii.両ブロックが親水性であるが、相互に非混和性であるもの
iii.一方のブロックが親水性であり、他方が疎水性であるもの
即ち両親媒性のもの
h.上記の2種又は3種以上の混合物。
【0101】
好適な脂質は、燐脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン等)又は糖脂質(MGDG、ジアシルグルコピラノシルグリセリン、脂質A等)が挙げられる。燐脂質(ホスファチジルコリン類、ホスファチジルイノシトール類、ホスファチジルグリセリン類、ホスファチジン酸類、ホスファチジルセリン類、ホスファチジルエタノールアミン類等を含む)、スフィンゴ脂質(スフィンゴミエリン類を含む)、糖脂質(MGDG,DGDGなどのガラクト脂質、ジアシルグルコピラノシルグリセリン類、脂質A等を含む)、コール酸塩類及びデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸などの関連酸類、ゲンチオビオシル類、イソプレノイド類、セラミド類、プラスモロゲン類、セレブロシド類(スルファチド類を含む)、ガングリオシド類、シクロペンタトリオール脂質類、ジメチルアミノプロパン脂質類、及びリソルシチン類、及びその他、上記のものから1つのアシル鎖を除去して誘導されるリゾ脂質なども好適である。
【0102】
他の好適なタイプの界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性イオン性、半極性、PEG化、及びアミンオキシドが挙げられる。好ましい界面活性剤は次のものである。
アニオン性:オレイン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、ジ-2-エチル酢酸ナトリウム、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム、ウンデカン−3−硫酸ナトリウム、エチルフェニルウンデカン酸ナトリウム、ICn型(鎖長nは8〜20の間、Iはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどの1価対イオン)のカルボン酸石鹸
カチオン性:鎖長8〜20で塩素、臭素又は硫酸イオンを対イオンとするジメチルアンモニウム及びトリメチルアンモニウム界面活性剤、塩化ミリスチル−ガンマ−ピコリニウム及びアルキル鎖長8〜18の関連化合物、安息香酸ベンザルコニウム、鎖長8〜18炭素で、塩素、臭素又は硫酸イオンを対イオンとする二重末端第四級アンモニウム界面活性剤
非イオン性PEG化界面活性剤:Cnm型で、アルカン鎖長nが6〜20炭素でエチレンオキシド基の平均数mが2〜80であるもの、エトキシル化コレステロール
両性イオン性及び半極性のもの:N,N,N-トリメチルアミノデカン酸イミド、アルキル鎖長8〜18のアミンオキシド界面活性剤、ドデシルジメチルアンモニオプロパン−3−硫酸、ドデシルジメチルアンモニオ酪酸、ドデシルトリメチレンジ(アンモニウムクロリド)、ドデシルメチルスルホンジイミン、ジメチルエイコシルアンモニオヘキサン酸、及びアルキル鎖長8〜20のこれら両性イオン性及び半極性界面活性剤の関連化合物
【0103】
注射可能としてFDA(合衆国食品医薬品局)により承認されている好ましい界面活性剤としては、塩化べンザルコニウム、デオキシコール酸ナトリウム、塩化ミリスチル−ガンマ−ピコリニウム、ポロキサマー188、ポリオキシル35ヒマシ油、ソルビタンモノパルミテート及び2−エチルヘキサン酸ナトリウムが挙げられる。
【0104】
好適なブロックコポリマーは、次のクラスのポリマーのうち、2つ以上の非混和性ブロックから構成されたものである。即ち、ポリジエン類、ポリアレン類、ポリアクリル類およびポリメタクリル類(ポリアクリル酸類、ポリメタクリル酸類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリ二置換エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリメタクリルアミド類などを含む)、ポリビニルエーテル類、ポリビニルアルコール類、ポリアセタール類、ポリビニルケトン類、ポリハロゲン化ビニル類、ポリビニルニトリル類、ポリビニルエステル類、ポリスチレン類、ポリフェニレン類、ポリオキシド類、ポリカーボネート類、ポリエステル類、ポリ無水物類、ポリウレタン類、ポリシロキサン類、ポリスルフィド類、ポリスルホン類、ポリアミド類、ポリヒドラジド類、ポリ尿素類、ポリカルボジイミド類、ポリホスファゼン類、ポリシラン類、ポリシラザン類、ポリベンゾオキサゾール類、ポリオキサジアゾール類、ポリオキサジアゾリジン類、ポリチアゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリピロメリトイミド類、ポリキノキサリン類、ポリベンゾイミダゾール類、ポリピペラジン類、セルロース誘導体類、アルギン酸及びその塩類、キチン、キトサン、グリコーゲン、ヘパリン、ペクチン、ポリ塩化窒化燐、ポリ弗化n−ブチル錫、ポリホスホリルジメチルアミド、ポリ−2,5−セレニレン、ポリ臭化4−n−ブチルピリジニウム、ポリ沃化2−N−メチルピリジニウム、ポリ塩化アリルアンモニウム及びポリトリメチレンオキシエチレンスルホン酸ナトリウム。
【0105】
好ましいポリマーブロックとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、ポリアセチレン、ポリアクリル酸及びその塩類、ポリメタクリル酸及びその塩類、ポリイタコン酸及びその塩類、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリメチルメタクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプリル酸ビニル、ポリスチレン、ポリ−アルファ−メチルスチレン、ポリスチレンスルホン酸及びその塩類、ポリブロモスチレン、ポリブチレンオキシド、ポリアクロレイン、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリオキシテトラメチレン、ポリジメチルフルベン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリペンタジエニレンビニレン、ポリアルキルチオフェン、ポリアルキル−p−フェニレン、ポリエチレン−交互−プロピレン、ポリノルボルネン、ポリ−5−((トリメチルシロキシ)メチル)ノルボルネン、ポリチオフェニレン、ヘパリン、ペクチン、キチン、キトサン、及びアルギン酸及びその塩類がある。
【0106】
特に好ましいコポリマーとしては、ポリスチレン−b−ブタジエン、ポリスチレン−b−イソプレン、ポリスチレン−b−スチレンスルホン酸、ポリエチレンオキシド−b−プロピレンオキシド、ポリスチレン−b−ジメチルシロキサン、ポリエチレンオキシド−b−スチレン、ポリノルボルネン−b−5−((トリメチルシロキシ)メチル)ノルボルネン、ポリアセチレン−b−5−((トリメチルシロキシ)メチル)ノルボルネン、ポリアセチレン−b−ノルボルネン、ポリエチレンオキシド−b−ノルボルネン、ポリブチレンオキシド−b−エチレンオキシド、ポリエチレンオキシド−b−シロキサン及び3ブロックコポリマーであるポリイソプレン−b−スチレン−b−ビニルピリジンがある。
【0107】
3.第三成分:疎水性物質又は非界面活性剤両親媒性物質
a.アルカン又はアルケン、その他の長鎖脂肪族化合物
b.芳香族化合物、例えばトルエン
c.長鎖アルコール
d.グリセリド(ジグリセリド又はトリグリセリド)
e.アシル化ソルビタン、例えばソルビタントリエステル(例えばソルビタントリオレエート)又はセスキオレエート、又は2〜6の間の異なる数のアシル鎖をもつソルビタンの混合物
f.他の疎水性物質又は非界面活性剤両親媒性物質又は上記の1種以上との混合物。
g.なし。
【0108】
好適な第三成分(疎水性物質又は非界面活性剤両親媒性物質)としては、次のものが挙げられる。n−アルカン(nは6〜20)、枝分かれした変形、不飽和の変形及び置換された変形(アルケン類、クロロアルカン類など)を含む;コレステロール及び関連化合物、テルペン類、ジテルペン類、トリテルペン類、脂肪アルコール類、脂肪酸類、芳香族、シクロヘキサン類、ナフタレン類・ナフトール類・キノリン類・ベンゾキノリン類などの二環式化合物、カルバゾール・フェノチアジンなどの三環式化合物、色素類、クロロフィル、ステロール類、トリグリセリド類、天然油抽出物(丁字油、アニス油、けい皮油、コリアンダー油、ユーカリ油、はっか油)、ワックス、ビリルビン、臭素、沃素、疎水性及び両親媒性蛋白質及びポリペプチド類(グラミシジン、カゼイン、受容体蛋白質類、脂質結合蛋白質類など)、局所麻酔薬(ブタカイン、エクゴニン、プロカインなど)及び低分子量疎水性ポリマー類(前述のポリマーのリスト参照)。特に好ましい第三成分は次のものである。アニス油、丁字油、コリアンダー油、けい皮油、ユーカリ油、はっか油、蜜蝋、ベンゾイン、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ナフトール、カプサイシン、セテアリルアルコール、セチルアルコール、シンナムアルデヒド、カカオ脂、やし油、綿実油(水添化)、シクロヘキサン、シクロメチコン、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、DIPAC、フタル酸エチル、エチルバニリン、オイゲノール、フマル酸、グリセリルジステアレート、メントール、アクリル酸メチル、サリチル酸メチル、ミリスチルアルコール、オレイン酸、オレイルアルコール、塩化ベンジル、パラフィン、落花生油、ピペロナール、なたね油、ロジン、ごま油、ソルビタン脂肪酸エステル類、スクアラン、スクアレン、ステアリン酸、トリアセチン、トリミリスチン、バニリン、及びビタミンE。
【0109】
極性溶媒(又はブロックコポリマーの場合には選択的溶媒)は次のものを利用できる。
a.水
b.グリセリン
c.ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、又はジメチルホルムアミド
d.エチレングリコール又は他の多価アルコール
e.硝酸エチルアンモニウム
f.他の非水性極性溶媒、例えばN−メチルシドノン、N−メチルアセトア ミド、塩化ピリジニウムなど;
g.上記の2種以上の混合物。
【0110】
望ましい極性溶媒は、水、グリセリン、エチレングリコール、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、硝酸エチルアンモニウム及びポリエチレングリコールである。
【0111】
先に述べた通り、外部被覆20は非層状結晶物質から形成されうる。本明細書において結晶構造について適用した「非層状」なる語は、次の文脈において解釈すべきである。層状液晶性相と区別される層状結晶相は、有機化合物(典型的には極性脂質)、無機化合物及び有機金属化合物で生じる。これらの相は真の結晶物質であることができ、従って構成原子(又は有機結晶物質の場合には分子)の空間内長域三次元格子配列秩序を示しうるが、原子間力及び相互作用(共有結合、イオン結合、水素結合、立体的相互作用、疎水性相互作用、分散力などを包含しうる)は、個々の薄層を横切るよりも、薄層の面内にある構成原子又は分子の間でずっと強い。例えば、黒鉛の薄層構造の場合には、一つの層内の原子は互いに共有結合して二次元網状構造となっているが、異なる層の間では結合がなく、相対的に弱い分散力と立体相互作用があるだけである。このような強い局所的な層間相互作用の欠如により、それらを本発明における被覆物質として望ましくないものとするいくつかの物理化学的性質が生じる。
【0112】
まず第一に、層状結晶の物理的一体性は、層間の弱い局所的相互作用によって先天的に弱められている。これは、黒鉛(層状結晶性形態の炭素)とダイヤモンド(三次元結合をもつ結晶形態の炭素)との比較により劇的に証明される。実際、層が互いに滑り合うことが容易であるために、黒鉛はある種の潤滑剤では重要な成分であり、一方、ダイヤモンドは研磨剤であるという事実は、剪断へのそれらの応答の点で、層状結晶構造の「液体様」(又は「液晶様」)の性格を例証している。この同じ層間滑り効果は、実際に、他の液晶相、特に二重連続性立方晶相の極めて高い粘弾性と比較して、層状液晶相のずっと低い粘度をもたらすところの効果と同じものである。この液体様性格が示す別の一つとして、黒鉛のモース硬度が1.0であるのに、ダイヤモンドのそれは10であるということがある。黒鉛の場合に剪断によって一体性が失われるのは、日常生活において黒鉛である「普通の」鉛筆で見られるところである。
【0113】
層状結晶構造に関する有害な作用は、巨視的剪断が関与しない状況においても日常生活で認めることができる。シュティッヒ・フリベルク(Stig Friberg)が提出し、ラルソン(Larsson,K.)及びフリベルク(Friberg,S.)によって編纂された1990年版の食品エマルジョン(Food Emulsions)第2版(マーセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)ニューヨーク、発行)に総説されて広く受け入れられているエマルジョン構造のモデルによれば、層状液晶又は一般には層状結晶被覆は、水−油エマルジョン(oil-in-water emulsion)中の油滴、及び油−水エマルジョン(water-in-oil emulsion)中の水滴を安定化する。牛乳、アイスクリーム、マヨネーズなどの普通に出会うエマルジョンでは、門外漢には周知の不安定性(当業者はエマルジョンの「破壊」と呼ぶもの)は、大部分がこれら層状被覆物質の流動性に起因するものである。静止エマルジョンにおいてさえ、これらの層状被覆は連続的な崩壊、流れ及び癒着を受け、いかなるエマルジョンも時間とともに最終的にはこれらの崩壊の不安定化効果に屈伏せざるをえない。
【0114】
そして、更に別のレベルで、層状結晶物質は、本発明の具体化に当たって被膜としてのそれらの応用を阻害するようなタイプの化学的不安定性を示す。埋め込まれたゲスト分子を含むホスト格子と包接化合物を形成し、ゲストを除去すると殆どの場合に永続的細孔を生じるジチオシアン酸ニッケルテトラ(4−メチルピリジン)と同形のウェルナー錯体の場合を考えられたい。後述の実施例22では、かかるひとつのウェルナー錯体を粒子の被膜として使用し、かくして固定され且つサイズを制御された高選択性細孔をもつ被膜で粒子を被覆する際の本発明の利用例を検証している。例えば、リプコフスキ(Lipkowski,J.)著「包接化合物I(Inclision Compounds I)」アカデミツク・プレス(Academic Press)、ロンドン(1984年)発行の第59頁によれば、「Ni(NCS)2(4-MePy)4の層状構造はゲスト分子の存在下でのみ安定であり、一方、ベータ相はゲスト分子が存在しなくてもそれらの多孔性を維持する。」とあり、ベータ相の非層状三次元構造も同刊行物に詳細に論じられており、例えば、「・・・ベータ相は・・・分子サイズのチャネルを通じて相互連結された空洞からなる三次元系をもつ」とある。
【0115】
外部被覆20は、内部コア及びその中に配置されたあらゆる活性薬剤又は活性成分を、例えば酸化、加水分解、早期放出、沈殿、剪断、真空、酵素の攻撃、製剤の他の成分による分解、及び/又は例えばpH、イオン強度、又はプロテアーゼやヌクレアーゼなどの生化学的活性不純物の存在など、調製時の被覆粒子の外部の諸条件から保護する機能を果たす。これらの各々の例は次の通りである。
酸化:本来的に酸化に敏感なビタミンCなどの抗酸化剤や不飽和脂質等の場合
加水分解:不安定なエステル結合をもつ薬物等の場合
早期放出:例えば貯蔵中
沈殿:例えば、体内pHでプロトンを失い、それにより不溶性となるプロトン付加(塩酸塩)形態の薬物の場合
剪断:例えば、カプセル化後の加工処理が蛋白質などの剪断に感受性の化合物を危険にさらす場合
真空:例えば、加工処理が真空乾燥を含んでいる場合
酵素の攻撃:普通、体内酵素により速やかに消化されるソマトスタチンなどのペプチドホルモンを、放出・作用部位へ到達するまで、循環血中で活性に保つことができる
他の成分による分解:例えば、内部コア中に配置された化合物と外部のものとの間の僅かな反応性でも数か月又は数年の貯蔵期間中には問題を生じうる場合
外部pH:例えば、プロトン付加形態の薬物は、溶解性を確保するために低い内部pHでカプセル化できるであろうし、しかも、そうでなければ胃を不調にするであろう外部液体の低いpHを必要とすることかない
外部イオン強度:例えば、塩析及び変性を回避するために蛋白質をカプセル化する場合
プロテアーゼ、ヌクレアーゼなどの外部不純物:例えば、外部がバイオリアクター由来の生成物を含んでおり、それからのプロテアーゼの除去は手が出ないほど費用がかさむとき
【0116】
外部被覆20のためには、非層状結晶物質は、有機化合物、無機化合物、鉱物、金などの金属、沃素や有機金属錯体などの他の結晶性元素形態であってもよい。
【0117】
非層状結晶物質の構造は下記のいずれかである。
a.結晶性、非多孔性
b.細孔の一次元網状構造をもつ結晶性
c.細孔の二次元網状構造をもつ結晶性
d.細孔の三次元網状構造をもつ結晶性
【0118】
被膜は次の表面荷電特性を持つことができる。
1.実効陽イオン性電荷
a.通常使用で遭遇する全ての条件下
b.使用の1つ以上の段階で遭遇するある条件下
2.実効陰イオン性電荷
a.通常使用で遭遇する全ての条件下
b.使用の1つ以上の段階で遭遇するある条件下
3.無荷電:
a.等電点のみで
b.通常使用の範囲にわたるpH領域で
c.使用の一段階の間(フロキュレーションによる粒子集積の間など)に到達するか誘発されるpH領域で
【0119】
好適な非層状結晶被覆物質、即ち、有用な温度範囲にわたって非層状結晶状態にあり、大抵の場合低毒性で、環境への影響が少ない化合物は次のものである。
アスコルビン酸;アスコルビン酸パルミテート;アスパラギン酸;ベンゾイン;ベーターナフトール;次炭酸ビスマス;ブチル化ヒドロキシトルエン;ブチルパラベン;酢酸カルシウム;アスコルビン酸カルシウム;炭酸カルシウム;塩化カルシウム;クエン酸カルシウム;水酸化カルシウム;燐酸カルシウム;二塩基性燐酸カルシウム;三塩基性燐酸カルシウム;ピロ燐酸カルシウム;サリチル酸カルシウム;珪酸カルシウム;硫酸カルシウム;カルミン;セテアリルアルコール;セチルアルコール;シンナムアルデヒト;クエン酸;システイン塩酸塩;セバシン酸ジブチル;エスクリン;塩化第二鉄;クエン酸第二鉄;四三酸化鉄;ゲンチジン酸;グルタミン酸;グリシン;金;ヒスチジン;ヒドロクロロチアジド;沃素;酸化鉄;硫酸ラウリル;ロイシン;マグネシウム;珪酸アルミニウムマグネシウム;炭酸マグネシウム;水酸化マグネシウム;酸化マグネシウム;珪酸マグネシウム;硫酸マグネシウム;三珪酸マグネシウム;マレイン酸;D,L−リンゴ酸;サリチル酸メチル;メチルパラベン;グルタミン酸一ナトリウム;没食子酸プロピル;プロピルパラベン;シリカ;珪素;二酸化珪素;アルミノ珪酸ナトリウム;アミノ安息香酸ナトリウム;安息香酸ナトリウム;重炭酸ナトリウム;重硫酸ナトリウム;重亜硫酸ナトリウム;炭酸ナトリウム;塩化ナトリウム;クエン酸ナトリウム;メタ重亜硫酸ナトリウム;硝酸ナトリウム;二塩基性燐酸ナトリウム;プロピオン酸ナトリウム;サリチル酸ナトリウム;錫酸ナトリウム;コハク酸ナトリウム;硫酸ナトリウム;チオ硫酸ナトリウム;コハク酸;タルク;粉砕タルク;酒石酸;DL−酒石酸;タルトラジン;テルル;二酸化チタン;トリアセチン;クエン酸トリエチル;トリクロロモノフルオロエタン;トロメタミン及び2−ヒドロキシ−n−シクロプロピルメチルモルフィナン塩酸塩;酸化亜鉛。
【0120】
燐酸カルシウムは生物医学及び医薬用途で興味あるものである。燐酸カルシウム類は骨、歯、その他の構造成分の主要成分だからである。例えば、骨粗しょう症の治療において、骨の(従ってまた粒子被膜の)溶解を誘発する生理的条件により適切な医薬化合物の放出を誘発できるであろう。
硝酸ナトリウム被膜は、その被膜が植物用肥料としても働くから、農業用において興味がもたれる。
沃素、アスパラギン酸、安息香酸、ブチル化ヒドロキシトルエン、エデト酸カルシウム二ナトリウム、ゲンチジン酸、ヒスチジン、没食子酸プロピル及び酸化亜鉛は、それらが比較的低い水溶性(通常5%未満)を有し、注射用処方のFDA承認不活性成分のリストに収載されているから、潜在的医薬用途での結晶性被膜として特に有用でありうる。
【0121】
被覆材料として特に興味があるのは包接化合物である。かかる物質の例は次の通りである。
1.クラスレート化合物及び包接化合物(それらのいくつかはゲスト分子除去時に永続的細孔性を維持する):
・MX24型ウェルナー錯体、ここで、Mは二価の陽イオン(Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Mn、Hg、Cr)であり、Xは陰イオン性リガンド(NCS-、NCO-、CN-、NO3-、Cl-、Br-、I-)であり、Aは電気的に中性のリガンド置換ピリジン、アルファ−アリールアルキルアミン又はイソキノリンである。Aとしては、4−メチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン及び4−ビニルピリジンが挙げられる。これらの錯体には広範な範囲のゲスト分子が包接され、例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、ニトロトルエン、メタノール、クロロメタン、アルゴン、クリプトン、キセノン、酸素、窒素、二酸化炭素、二硫化炭素などがある。
・可逆性酸素担持キレート類、例えばビスサリチルアルデヒド−エチレンジアミンコバルトおよび他のビスサリチルアルデヒド−イミンコバルト、コバルト(II)ジヒスチジン及び関連コバルト(II)アミノ酸錯体、鉄(II)ジメチルグリオキシム及びニッケル(II)ジメチルグリオキシム。
・K2Zn3〔Fe(CN)62・xH2O型の錯体、ここに変数xのいくつかの値は水除去時に永続的細孔を生じる錯体に相当する。
2.ゼオライト類:
・フォージャサイト(フォージャ沸石)型NaXゼオライト
・フォージャサイト型NaYゼオライト
・VOI−5ゼオライト
【0122】
本発明の被覆粒子1は種々の分野で用途がある。被覆粒子1は、選ばれた環境から1種又は2種以上の物質を吸収し、選ばれた環境から1種又は2種以上の物質を吸着し、又はマトリックス中に配置された活性薬剤などの1種又は2種以上の物質を放出するのに適当である。
吸収に関しては、被覆粒子は、少数の例を挙げれば、生物学的又は化学的プロセスにおいて生成物を回収し、又は廃棄物を回収し、それらのプロセスで触媒を担持し、医療用途では毒素、抗原又は廃棄物を除去するのに使用できる。
吸着に関しては、被覆粒子は、クロマトグラフィー媒質及びガス吸着剤として使用できる。
放出に関しては、被覆粒子は、抗癌剤や光化学療法剤などの薬剤、又は化粧品或いは美容医療用物質の徐々の放出のために使用できる。活性薬剤は、放出が誘発されたときの放出のためにマトリックス内に配置できる。例えば医薬品又は生物活性物質をマトリックス内に配置できる。
【0123】
これら微小粒子の薬物送達における応用又は蛋白質又はポリペプチド(特に受容体蛋白質)を埋め込んでの応用においては、合成又は半合成であるが、生きている細胞の天然の生体膜の物理化学的諸性質を綿密にシミュレートするように設計した内部マトリックスをもつことが極めて有利である。これは、例えば受容体蛋白質又は他の膜成分が適切に機能するために、又は薬物送達において内部マトリックスの天然生体膜への同化を促進するために重要である。かかる関連で重要な物理化学的性質としては、二分子層の剛性(屈曲抵抗性の尺度)、二分子層の流動性(二分子層内部のミクロ粘度の尺度)、アシル鎖長及び二分子層の厚み、脂質アシル鎖上の位置の関数としての秩序パラメータ、表面電荷密度、二分子層内での組成の異なる偏析脂質領域の存在又は不存在、二分子層の湾曲及び単分子層の湾曲(これら2つの湾曲の間の関係の論述については、ウェネルストレーム(Wennerstrom,H.)およびアンダーソン(Anderson,D.M.)著、デイビス(Davis,H.T.)及びニッチェ(Nitsche,C.C.)編集の論文「ミクロ構造物質の統計熱力学及び微分ジオメトリー(Statistical Thermodynamics and Differential Geometry of Microstructured Materials)」スプリンガー出版社(1992)、第137頁を参照されたい)、コレステロール含量、炭水化物含量及び脂質対蛋白質比がある。組成の適切な選択により、人工系、即ちnmオーダー構造の液相又は液晶相においてこれらのパラメータを大部分調整できる。例えば、二分子層の剛性は、両親媒性物質、特に脂肪族アルコールの添加によって低下させることができる。二分子層の電荷は、無荷電脂質(ホスファチジルコリンなど)と荷電脂質(ホスファチジン酸など)との間の比を調整することによって調整できる。また、コレステロールの添加は、いくつかの膜蛋白質の機能に重要である。層状相、逆二重連続性立方晶相、L3相、及びより少ない程度になるが逆六方晶相は、このアプローチのために特によく適している。かくして本発明の粒子は、内部マトリックスが、組み込まれた蛋白質又は他の生体分子の機能のために適合した物理化学的特性を相となっており、従って、薬学、臨床試験用の製品、生化学研究用製品などにおいて極めて貴重である。
【0124】
一般に、膜蛋白質は、適切に機能し、しかも適切なコンフォメーションを維持するためには二分子相媒質に決定的に依存しており、かかる蛋白質の場合、本発明は、特に上述のように二分子層の性質を適合させた場合、極めて有用な優れたマトリックスを与える。膜蛋白質の例としては、受容体蛋白質に加えて、プロテイナーゼA、アミログルコシダーゼ、エンケファリナーゼ、ジペプチジルペプチダーゼIV、ガンマーグルタミルトランスフェラーゼ、ガラクトシダーゼ、ノイラミニダーゼ、アルファ−マンノシダーゼ、コリンエステラーゼ、アリールアミダーゼ、サーファクチン、フェロケラターゼ、スピラリン、ペニシリン結合蛋白質、ミクロソームグリコトランスフェラーゼ類、キナーゼ類、細菌外層膜蛋白質、及び組織適合抗原がある。
【0125】
癌の治療における薬物送達への厳しい要求に鑑み、本発明の長所及び融通性は例えば下記のごとき抗腫瘍薬の送達及び放出において本発明を特に魅力あるものとする。
抗腫瘍薬
アルキル化剤:
・スルホン酸アルキル類:ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、
・アジリジン類:ベンゾデパ、カルボコン、メツレデパ、ウレデパ、
・エチレンイミン類及びメチルメラミン類:アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、トリメチロールメラミン、
・ナイトロジェン・マスタード類:クロランブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、
・ニトロソ尿素類:カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、
・その他:ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、
【0126】
抗生物質:
・アクタシノマイシン類:アクチノマイシンF1、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ミトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、プロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン
【0127】
代謝拮抗薬:
・葉酸類似体:デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート
・プリン類似体:フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン
・ピリミジン類似体:アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、テガフル
酵素:L−アスパラギナーゼ
【0128】
その他:アセグラトン、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、カルボプラチン、シスプラチン、デホスファミド、デモコルシン、ジアジコン、エフロルニチン、酢酸エリプチニウム、エトグルシド、エトポシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、インターフェロン−ot、インターフェロン−P、インターフェロン−y、インタ一ロイキン−2、レンチナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK09、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、タキソール、テニポシド、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン
【0129】
抗腫瘍薬(ホルモン系)
アンドロゲン類:カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン
抗副腎薬:アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン
抗男性ホルモン薬:フルタミド、ニルタミド
抗エストロゲン薬:タモキシフェン、トレミフェン
エストロゲン類:ホスフェストロール、ヘキセストロール、燐酸ポリエストラジオール
LH−RH類似体:ブセレリン、ゴセレリン、リュープロリド、トリプトレリン
プロゲストゲン類:酢酸クロマジノン、メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メレンゲストロール
【0130】
抗腫瘍薬(放射線源)
アメリシウム、コバルト、131I−エチオダイズドオイル、金(放射性、コロイド)、ラジウム、ラドン、沃化ナトリウム(放射性)、燐酸ナトリウム(放射性)
【0131】
抗腫瘍性補助薬
葉酸補充剤:葉酸
尿保護薬:メスナ
【0132】
本発明の被覆粒子の他の用途としては、下記が挙げられる。
1.色素のマイクロカプセル化を含む塗料及びインキ、色素の陽イオン荷電(pH依存性が重要な場合)、非水性塗料用充填剤及びテキスチャー特性付与剤。
2.マイクロカプセル不透明化剤を含む紙(塗料にも)、ノンカーボンコピー紙用感圧インキマイクロカプセル。
3.加工中を通じて繊維に付着する添加物を含む不織布。
4.農業用、昆虫防除用フェロモン(それらの幾つかは、カプセル化しなければ揮発性であり、環境で不安定である)の徐放、昆虫不妊化剤および成長調整物質(多くは環境で不安定)の徐放、その他の農薬の徐放(温度依存性が重要)、除草剤の徐放、植物成長調整剤エチレン及びアセチレン(さもなければ揮発性)のカプセル化、有害哺乳動物を忌避するための味覚修飾剤(例えばカプサイシン)や栄養分及び肥料の放出を含む。
5.環境及び森林管理用、雑草防除用水中除草剤の徐放、他の除草剤の徐放、海洋動植物養殖における栄養分の徐放、土壌処理及び栄養分放出、キレート剤のカプセル化及び放出(例えば重金属汚染の場合の)、活性物質の析出及び環境での寿命の制御(即ち結晶性被膜の標的を定めての放出及び/又は立方晶相の粘着性を介して)、吸湿性又はその他(例えば尿素及び塩化ナトリウム)の気象制御用「人工降雨核」剤のカプセル化を含む。
6.ワクチン類、例えばHIVgag、細胞のgag−polトランスフェクションを含む。抗原又は抗体の適切な提供のためのアジュバント。
7.放射線医療用、2種の(さもなければ相互に有害な)放射性核種を癌治療のために個々の粒子へ分離することを含む。
8.化粧品用、抗酸化、皮膚老化防止クリーム;抗アクネ薬の成分分離;カプセル化プロスタグランジン類及びビタミン類を含有する日焼け止めローション;
脂溶性ビタミン類、酸化に敏感なビタミン類、ビタミン混合物のカプセル化;擦って香り嗅ぐ宣伝用カプセル化揮発性香料;揮発性メーキャップ除去剤又は他のシート形成用化粧品のカプセル化;カプセル化したマニキュア除去剤用溶媒(又はマニキュア液自体);カプセル化染毛剤含有エアゾール粒子;カプセル化脱臭剤含有生理用ナプキンを含む。
9.家畜病治療用、揮発性抗ダニ化合物の徐放;カプセル化反芻動物用飼料添加剤;畜産業用抗微生物剤及び殺虫剤のカプセル化を含む。
10.歯科用、徐放性歯磨き成分、特に加水分解に不安定な抗結石性化合物;
経口抗癌性化合物(フォトフィリン)の遊離を含む。
11.ワンポット(単一パッゲージ)樹脂系における重合触媒。
12.家庭用品向け、空気浄化剤、香料の徐放;徐放性昆虫忌避剤;洗濯用洗剤(例えばカプセル化プロテアーゼ);その他の洗浄用途;柔軟剤;蛍光増白剤を含む。
13.産業用、貯蔵品燻蒸用のホスフィン、二臭化エチレンなどの揮発性物質や触媒粒子、収着及び精製用活性炭ミクロ粒子などのカプセル化を含む。
14.ポリマー添加材用、電線、紙カートンなどを囓歯類動物から保護するためのポリマー添加材;色材及び不透明化剤;難燃剤及び煙抑制剤;安定剤;蛍光増白剤を含む。
現行の添加物のポリマーベースでのカプセル化を制限するものとして、低融点(加工の間)、ポリマー−ポリマー非相溶性、粒度の限定、光学的透明性などがある。ポリマーの潤滑に使用される若干のポリマー添加物はワックスをベースにしているが、ある種の高価な合成ワックスを除き、一般にワックスは融点が極めて低い。
15.食品及び飲料の加工用、(揮発性の)味覚物質、芳香物質及び油類(例えば椰子油、はっか油)のカプセル化;家畜飼料中の植物性脂肪のカプセル化;
発酵及び精製のためのカプセル化酵素(例えばビール発酵におけるジアセチルレダクターゼ);冷凍食品の寿命を改善するためのボイルの代替としてのカプセル化;マイクロカプセル化煙草添加物(風味物質);pHで誘発される緩衝剤;多孔性材料中にカプセル化活性炭を用いた不純物の除去及び脱色を含む。
16.写真材料向け、1μm未満の光反応性粒子を分散させた微細粒度フィルム;1μm未満の微粒子の光学的透明さ(従ってより高い透過率)及びより短い拡散時間によるより高感度のフィルム;現像薬のマイクロカプセル化を含む。
17.爆薬及び推進薬向け、液体及び固体の推進薬及び爆薬のカプセル化形態での使用;固体推進薬中の温度減速材としてのカプセル化形態での水の使用を含む。
18.研究用、抽出及び分離におけるマイクロカプセル充填カラム;生化学的分析、特に医薬品研究及びスクリーニングにおける分析を含む。
19.診断用、血管造影及びX線撮影用のカプセル化マーカー及び媒質感受性蛋白質及び糖脂質にかかわる臨床分析を含む。
【0133】
活性試剤の放出若しくはそれに代えての吸収を開始させるのに望ましい誘発因子は次の通りである。
I.放出が被膜の溶解又は破壊によるもの
A.内包的変数
1.pH
2.イオン強度
3.圧力
4.温度
B.外延的変数又はその他
1.希釈
2.界面活性剤の作用
3.酵素活性
4.化学反応(非酵素的)
5.標的化合物との錯体形成
6.電流
7.照射
8.時間(即ち遅い溶解)
9.剪断(臨界剪断速度が有効)
【0134】
II.放出又は吸収が被膜の細孔を介するものであり、被膜の溶解又は破壊の必要が回避されるもの
1.細孔サイズ対化合物サイズによる選択
2.細孔壁の極性対化合物の極性による選択
3.細孔壁のイオン性対化合物のイオン性による選択
4.細孔壁の形態対化合物の形態による選択
5.被膜と多孔性包接化合物を形成する化合物又はイオンもあれば、形成しないものもあるという事実(これは通常上記4つの効果の組合せであるが)による選択
【0135】
好ましい一実施態様において、被覆粒子は、
1.第二部分と反応して非層状結晶物質を形成しうる第一部分を有する少なくとも1種の化学種を含むマトリックスの体積部分を準備し、
2.第二部分を有する少なくとも1種の化学種を含む液体と前記体積部分とを接触させて第一部分を第二部分と反応させ、同時に前記体積部分にエネルギーを加えて該体積部分を粒子へと細分することによって製造可能である。
代替法として、被覆粒子は、
1.非層状結晶物質をその中に溶解させて含んでいるマトリックスの或る体積部分を準備し、
2.該非層状結晶物質を該マトリックスに対して不溶化し、同時に該体積部分にエネルギーを加えて該体積部分を粒子へと細分することによって製造できる。
【0136】
一般的な方法では、或る体積のマトリックスに、化合物Bと反応して非層状結晶物質を形成する化合物Aを仕込み、この上に、化合物Bを含有する液体(典型的には水溶液、「上位溶液」と呼ぶ)を被覆し、化合物Aと化合物Bとの間の接触により内部/外部の界面で結晶化を誘発させ、超音波処理などのエネルギーの適用によって非層状結晶物質で被覆された粒子を液体中へ分散させる。本発明のこの方法は、水溶性の低い、即ち好ましくは水1リットル当たり約20グラム以下、より好ましくは水1リットル当たり約10グラム以下の物質からなる被膜を有する被覆粒子の水性分散液を製造するのに特に好適である。これらのプロセスにおいて、成分Aを、成分Bとの接触前にマトリックス中に溶解させ(即ち単なる分散又は懸濁ではなく)、超音波処理を開始し、最終的にミクロ粒子の均質な分散液を得るようにするのが特に有利である。先に論述したように、このことこそが、多くの場合に極性溶媒にのみ可溶性である化合物Aを可溶化するために、水性ミクロ領域を有するnmオーダー構造のマトリックスが重要となる一つの理由である(活性物質、特に生物薬剤のマトリックス中への可溶化を最適化することが必要なことに加えて)。特に、非層状無機結晶沈殿物を生じる反応は、通常、水性媒質中で特に容易且つ効果的に行われ、この非層状有機結晶沈殿物を生じる反応は、特に好適には、所望の外部の非層状結晶被覆物質の可溶性塩形態のpH誘発プロトン付加又は脱プロトン反応となるよう選択されることが多いが、そこでは水(又は水性ミクロ領域)が手近な媒質である。
【0137】
代替的に、低温、又は晶出促進剤、又は電流を用いて晶出を生じさせることができる。
超音波処理に加えて、他の標準的乳化方法をエネルギー入力として用いることもできる。これらの例としては、精密流動化、バルブ均質化〔E.ソーンバーグとG.ルント(1978年)、フード・サイエンス、43:1553〕及び翼攪拌などが挙げられる。望ましくは、水溶性界面活性剤、好ましくは分子量が数千ダルトンの両親媒性ブロックコポリマー、例えばプルロニックF68を水溶液に加えて、被覆粒子をそれらの形成に伴う偏析に対して安定化する。粒子形成の促進のために超音波処理を用いるならば、この界面活性剤は超音波処理効果の増強にも役立つ。
【0138】
本明細書で挙げた実施例に記載の非層状結晶物質で被覆された粒子の多くは、2種又はそれより多くの反応物が反応して、外側の溶液とnmオーダー構造の液相又は液晶相との間の界面に沈殿物を生じ、その沈殿物が外部被覆を形成するというプロセスによって製造されている。この方法に対して重要な類似性並びに重要な差異を示す別の方法は、被膜を形成すべき物質(物質Aと呼ぶ)を液相物質又は液晶相物質に溶解させ、物質中の1つ以上の条件、例えば温度上昇(圧力低下、揮発性溶媒の添加などの他の変化でもよい)によってその溶解を促進するという一般的方法である。この変化は可逆性でなければならず、条件が反転すると(温度の低下、圧力の上昇、溶媒の蒸発など)、系はnmオーダー構造の液相物質又は液晶相物質と非層状結晶物質Aとの2相混合物に戻ってしまう。エネルギー入力は、非層状結晶物質Aが粗大化して大きい結晶になる時間をもつ前に適用し、それは超音波の適用によるものであっても、他の乳化方法によるものであってもよい。これにより、非層状結晶物質Aにより被覆された粒子の分散が起こる。
【0139】
温度を用いる場合には、nmオーダー構造の液相又は液晶相物質への化合物Aの溶解度は温度により変化しなければならず、溶解度対温度プロットの傾きが大きいほど、このプロセスを実施するのに必要な温度上昇幅は小さくなる。例えば、硝酸カリウムの水への溶解度は温度の極めて強い関数である。沈殿反応プロセスとこのタイプのプロセスとの基本的な差は、このタイプのプロセスでは、nmオーダー構造の内部マトリックスに加えて、1種類の化合物(A)が必要なだけであるということである。沈殿反応法では、少なくとも2種の化合物、即ちnmオーダー構造の相中にある化合物A及び該nmオーダー構造の相の上に重ねられる外部相(「上位溶液」)に参画する化合物Bが必要である。その場合の成分Bは、単に、適当に選択された酸性又は塩基性の成分であることが多い。このことは2つのプロセスの間の類似性を指摘するのに役立つ。外部相中に成分Bが存在することは成分Aの晶出を惹起する一つの「条件」(特に酸/塩基の場合にはpH)であると考えることができるからである。即ち、塩基性pHの使用によって成分Aを可溶化することができるかもしれず、これは、外部相の存在によって加えられる酸性pH条件を使用することにより、可逆性である。2つの方法の間の恐らく最も重要な差異は、成分Aの晶出を惹起する条件の変化が、A/B沈殿反応におけると同様に、外部相(「上位溶液」)がnmオーダー構造の相と接触するときにのみ、その場所でのみ起こるのか、温度誘発晶出の場合のように、それがnmオーダー構造の相の全体を通して同時に起こっているのかということである。
【0140】
上記のA/B反応プロセスと温度プロセスとの組合せプロセスを用いることも可能である。典型的には、かかる方式では、粒子の被膜として望まれる化合物は、2つの化学的形態でマトリックスに添加されることになる。第一は、最終被膜の化学的形態、典型的には、高昇温度でのみマトリックスに可溶性であり、粒子形成温度では不溶性の化合物の遊離酸(遊離塩基)形態となるはずである。第二は、前駆体形態、典型的には前記遊離酸と水酸化ナトリウムとの反応(又は前記遊離塩基と塩酸などの酸との反応)によって製造された塩形態となるはずである。そこでは、この前駆体形態は粒子形成温度においてもマトリックスに可溶である。例えば、安息香酸粒子被膜の場合、安息香酸と安息香酸ナトリウムの両方をマトリックスに添加する。この場合のマトリックスは、外界温度で安息香酸を溶解しないが、より高い温度では溶解するごときものである。上位溶液は、該前駆体形態を最終形態に転化するのに必要な成分(単数又は複数)、例えば安息香酸ナトリウムの場合には塩酸を含有する。加熱し(従って両形態が実質的に溶解する)、次に冷却し、上位溶液を重ね、超音波処理するか又はその他の方法でエネルギーを系に加えると、被覆粒子の形成は、冷却により誘発された沈殿と反応により媒介された被覆結晶の生成及び沈殿の2つのプロセスで行われる。これには、いずれかの方法を別々に実施したときよりもより早期に粒子被覆をもたらしうる2つの結晶性被覆物質源を提供し、かくして粒子融合に対する更なる保護をもたらし(恐らくはまた、より一様な粒度分布へと導き)、より少ないエネルギーを必要とするだけでより効果的な粒子形成をもたらすなどの点で有利である。
【0141】
本発明の被覆粒子を製造するために用いうる他の方法は以下の通りである。
A.結晶電析
B.種晶添加(マトリックス中の過飽和溶液、種は外部相中)
C.促進(一方の相中の過飽和溶液、他の相に晶出促進物質)
D.抑制の除去(一方の相中の過飽和溶液、他の相に種晶)
E.時間法(内部相中の過飽和溶液から結晶がゆっくり成長)
【0142】
無機物質の殆ど全てを含む所望の外部被覆の多くを形成するためには、反応物質の一方(普通は両方)は必然的に水又は他の極性溶媒にのみ可溶性となる。同時に、マトリックス物質が本発明に従って水に分散可能であるためには、内部相物質が水に実質的に溶解するものではないことが、絶対条件ではないにしても、高度に望ましい条件である。さもなければ、該物質の若干又は全てが上位溶液に分散するよりもむしろそれに溶解してしまうはずである。それ故、これらの被覆を形成するためには、マトリックスは次の2つの条件を満たす必要がある。
条件1:水性(又は他の極性溶媒)領域(ドメイン)を含有していること。
条件2:水への溶解度が低いか充分に低く(又は溶解速度が充分に遅く)、当該相からの粒子産生過程の間(典型的には物質全体が分散して粒子になるのに5〜100分)に当該相の実質的溶解が起こらないものであること。この実質的な溶解は生産効率を実質的に低下させ、従って当該方法の全体としての魅力を減じてしまうからである。
これらの2つの条件はほぼ逆の方向に働いており、両者を満足する系は極めて僅かしか見出しえない。逆タイプ又は層状タイプのnmオーダー構造の液相物質及び液晶相物質は、これらの極めて少数の系の幾つかである。
【0143】
場合により、上位溶液に、ときどき、多少の量のnmオーダー構造の液相又は液晶相中にある成分の1種又は2種以上を添加することが有利である。実際、上位溶液をnmオーダー構造の界面活性剤に富む相とすることが有利でありうる場合がある。特に、マトリックス相が水(又は希薄水溶液)とは平衡状態にないが、他の液相又は液晶相、例えばミセル相又は低粘度層状相とさえ平衡状態にあるときに、これが起こりうる。かくして、上述のプロセスの一般的説明において言及した「液体」として、かかる系又はかかる系に反応物質B及び/又は両親媒性ブロックコポリマー安定剤などの追加成分を添加した系を使用することができる。この場合、この上位相のミクロ粒子への組み込みが起こったとしても、それにより提起される複雑化は何も起きない。上位相はマトリックス相と平衡状態にあるように選択できる(通常は選択される)からである(但し、2つの物質の間での活性成分の交換がある場合は除外される。しかし、これは何らかの影響を与えるであろうが、それらは余り重要でないことが多い)。初めはこの上位「溶液」中に分散するであろう被覆粒子の形成後、外側の連続相を濾過又は透析を用いて他の媒質、例えば水、食塩水、緩衝液などに変えることができる。
【実施例】
【0144】
以下の実施例は本発明を詳細に説明するものであるが、本発明を限定するものと理解してはならない。
【0145】
実施例
以下の実施例において、実施例14、15、16及び34は、例えば再循環又は輸送のために被覆粒子の分散液をポンプ輸送する間などの相対的に強い剪断条件下でそのままの粒子の安定性をもたらしうるフェロシアン化銅、燐酸カルシウムなどの物理的に強固な無機物質から構成された被覆を有する系を例示する。これらの無機物質はやはり水溶性の低いものであり、強い剪断による粒子被膜の放出を要求すると同時に水での単純な希釈による放出から保護する用途においてそれらを潜在的に関心のもたれるものとする。かかる用途の一例は、カプサイシン又は囓歯類にとっての毒素などの囓歯類防除剤を本発明の被覆粒子にカプセル化し、それら粒子を電線、段ボール箱、その他囓歯類に噛まれることから保護する必要のある製品に浸漬し、囓歯類が噛めば活性な防除剤又は毒素の放出が誘発されるようにする場合である。水溶性が低いために、湿潤条件による早期放出が防止される。
【0146】
やはり低い水溶性の被膜をもたらす強固な有機物質として、実施例13及び33におけるごときエチルヒドロクプレインがあり、この化合物は、それが極めて苦みがあり、囓歯類駆除用途において更なる忌避効果をもたらすという付加的な特性をもっている。
【0147】
実施例1、2、3、6、7、8、9、10、17、18、19、20、23及び33は、中性pHで水溶性が低いが、化合物に応じてpHが酸性又は塩基性になるとき、溶解度が実質的に増大する被膜の例を示している。このことは、例えば、腸内放出など、特定のpH範囲で優先的に放出する被覆が望まれる薬物投与の場合に、それら被覆粒子を重要なものとする。或いは、かかる被覆を、典型的には酸性pHの細菌活動部位で放出すれば抗菌性化合物の放出が可能である。更にまた、特定pHでの被膜の放出は、例えば水泳プールでの水のpHを管理することを意図したミクロ粒子など、pH安定化化合物又は緩衝系の放出を可能とする。
【0148】
実施例4は、雲への種まき剤として極めて有用な性質をもつ沃化銀被膜を有する粒子の例である。沃化銀は雲からの雨滴形成効果でよく知られており、粒子の形状及びサイズにより与えられる表面積及び表面形態が沃化銀の効果を増幅できる。これは、銀化合物の経費的な理由で商業上重要である。この場合、安価な液晶からなる内部コアが充填剤としての役割を果たし、沃化銀単独の場合のコストの一部で同じか、或いはより以上の能力をもたらすことができる。表面積の拡大による同様の有効性の増大は、粘膜用局所麻酔薬としての粒子の使用において興味あるものである。例えば粒子内部での脂質と活性麻酔剤という疎水性物質(例えばリドカイン)との適切なバランスを利用して効果を増強することができる。
【0149】
実施例5は、硫化物及び酸化物などの化合物を、それらの形成に気体の反応物質を必要とするが、本発明の被覆粒子に被膜として使用できることを例証している。かかる化合物は、剛性が高いだけでなく、化学的に極めて抵抗性の物質として周知であり、そのため、粒子をポリマー添加剤として使用するとき又は染料含有粒子の不織布への浸漬などの高い剪断を含む加工処理に際して予想される過酷な化学的及び物理的条件に粒子が遭遇する用途において、かかる被覆粒子を興味あるものとすることができる。
【0150】
実施例12及び13は、高い水溶性をもつ化合物の被膜としての使用を例示している。それらは、単に水で希釈するだけで被膜の速やかで簡便な放出を必要とする用途において重要である。例えば、一方が分散液を含有し、他方が水を含有する2つの流れを合体させる噴霧(吹きつけ)系によれば、噴霧前の凝集を防止するのに有用な粒子被覆が、噴霧後は既にエアゾール化されて、いわば飛行中に溶解されるようなエアゾールを提供できる。この溶解は例えばnmオーダー構造の立方晶相からなる非常に粘着性の内部物質を暴露させるから、それら粒子を例えば作物や、或いは気管支内の粘膜などに付着させるのに利用することができる。実施例12及び13で内部に装填したカプサイシンは、エアゾール化された粘着性の粒子が例えば作物上に沈着したのちの囓歯類動物に対する抵抗性を付与する上で潜在的に重要な製品を与える。一般に、囓歯類は極めて低い濃度でもカプサイシンの味覚により強度に忌避されるからである。
【0151】
以下の実施例で、全ての百分率は、特に断らない限り重量百分率である。以下の実施例で使用した化合物の量は、相対比を実施例通りとすれば所望に応じて絶対量を変えることができる。即ち、これらの量を所望量に合わせて比例的に秤量することができる。但し、量をスケールアップする場合は処理設備は一層大きなものが必要となることは勿論である。
【0152】
以下の実施例において、特に断らない限り、各被覆粒子の外部被覆は非層状結晶物質からなり、各内部コアは、本質的に少なくとも1つのnmオーダー構造の液相、少なくとも1つのnmオーダー構造の液晶相、又は少なくとも1つのnmオーダー構造の液相と少なくとも1つのnmオーダー構造の液晶相との混合物からなるマトリックスである。
【0153】
実施例1
本実施例では、医薬品及び生物工学で重要な化合物を含めた広い範囲の活性化合物を非層状結晶物質で被覆した本発明の粒子に組み入れることができることを示す。
0.266g量の水酸化ナトリウムをグリセリン20mLに溶解を助けるために加熱及び攪拌を用いて溶解させた。次に、等モル量、即ち1.01gのメチルパラベンをやはり加熱しながら溶解させた。この溶液から0.616gをとり、試験管中でレシチン0.436g及びオレイルアルコール0.173gと混合した。この時点で下記の活性成分(又は作用物質)を配合し、溶液を充分に混合して、活性成分がその中に配置されたnmオーダー構造の液晶相物質を形成させた。0.062gのプルロニックF−68(BASFから市販されているポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー)と酢酸0.0132gとを互いに溶解させて得た「上位溶液」を試験管に、活性作用物質を含む先の溶液の上への溶液層として加えた。液晶混合物及び上位溶液の入った試験管を激しく振り、小型卓上超音波処理装置(フィッシャー・サイエンティフィック製FS6型)で3時間超音波処理した。得られた分散液は、光学顕微鏡で調べると、メチルパラベンで被覆された1μmオーダーのサイズの粒子を高度に含有していることを示した。
【0154】
実施例1Aでは、活性物質として2.0重量%(液晶相物質からなる内部コアの重量に基づいて)のサリチル酸を配合した。
実施例1Bでは、活性物質として2.0重量%(液晶相物質からなる内部コアの重量に基づいて)の硫酸ビンブラスチンを配合した。
実施例1Cでは、活性物質として2.4重量%(液晶相物質からなる内部コアの重量に基づいて)のチミジンを配合した。
実施例1Dでは、活性物質として1.6重量%(液晶相物質からなる内部コアの重量に基づいて)の甲状腺刺激ホルモンを配合した。
実施例1Eでは、活性物質として2.9重量%(液晶相物質からなる内部コアの重量に基づいて)の抗3’,5’サイクリックAMP抗体を配合した。
実施例1Fでは、活性物質として2.0重量%(液晶相物質からなる内部コアの重量に基づいて)のL−チロキシンを配合した。
これらの被膜をもつ粒子はpHが上昇するにつれて溶解度が実質的に増大し、胃から腸へと胃腸管に沿って動くときにpHが上昇していくことにより、相対的に下方の胃腸管へ効果的に送達されることができ、時間的により均一な送達率をもたらした。
【0155】
実施例2
この実施例では、本発明の粒子分散液の長期安定性を示す。
0.132g量のアミノ酸D,L−ロイシンを1M塩酸2.514gに溶解させ、ロイシン塩酸塩溶液を形成させた。溶液を空気流のもと、ホットプレート上で乾燥したが、完全に乾固はさせなかった。重量がロイシンへのHClの1モル当量の付加に相当する0.1666gになった時に乾燥を中止した。この化合物の0.130g量をひまわり油モノグリセリドと水とを混合し、遠心分離して過剰の水を除去することにより調製したnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質0.879gに加えた。1M水酸化ナトリウム1.0gを水3gと混合して上位溶液を調製した。使用した全ての水は3回蒸留した。上位溶液を立方晶相に載せ、試験管をシールし、超音波処理してロイシン被覆ミクロ粒子の乳白色分散液を形成させた。
プルロニックF−68を安定剤として用い、同様の分散液を調製した。0.152g量のロイシン塩酸塩を上記nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質0.852gに加え、0.08gのF−68、1.0gの1M水酸化ナトリウム及び3.0gの水からなる上方相をそのnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質に載せ、超音波処理した。やはりロイシン被覆ミクロ粒子の乳白色分散液が形成され、今回は、F−68両親媒性ブロックコポリマー界面活性剤が粒子の(ロイシンベースの)外面を被覆していた。
結晶で被覆された粒子の形成にロイシンが必要なことを示す対照実験として、ディモダン(DIMODAN)LS(以下「ひまわりモノグリセリド」と呼ぶ)1.107gを水1.000gと混合し、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を形成させた。0.08gのプルロニックF−68を4.00gの水に加え、上位溶液を調製した。ロイシンを用いた上記分散液の製造に用いたのと同じ操作法により、上位溶液をnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質に重ね、試験管をシールし、超音波処理した。この場合には、本質的にミクロ粒子は形成されなかった。nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質は、ロイシン実験と同じ条件下で数時間超音波処理したのちにも大きい巨視的塊のままであった。
本発明の被覆粒子のこの分散液を12か月間にわたり定期的に検査したが、不可逆性フロキュレーションの徴候を示さなかった。軽度に攪拌しても、それは数週間の時間スケールにわたって不可逆性フロキュレーションの徴候を示さなかった。攪拌しない場合はフロキュレーションの徴候を示したが、5秒間以上穏やかに攪拌すると、いかなるフロキュレーションも消滅した。分散液の1滴をエッジ・サイエンティフィック社のR400 3−D顕微鏡で1000倍に拡大して調べた(対物レンズ100x、油浸漬、透過光)ところ、1μmより小さい粒子が極めて高度に充満していることが示された。
比較的弱い有機被膜を有するこれらの如き粒子は、例えばアクネ(ざ瘡)用クリームに使用でき、そこでは、トリクロサンなどの活性物質を配合でき、その物質の皮膚への適用に関連した剪断により被膜が放出されるはずである。
【0156】
実施例3
この実施例では、パクリタクセルを内部コアに0.5%の濃度で配合した。粒子被覆は、本明細書中の他の実施例で長期安定性をもたらすことが示されたロイシンであった。
レシチン0.280g、オレイルアルコール0.091g及びグリセリン0.390gを含有するnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質にt−ブタノール2mLに溶解させたパクリタクセル4mgを混合して、パクリタクセルを含有するnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を製出した。アルゴン気流下でブタノールを蒸発させたのち、粘稠で光学的に等方性のnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質が生じた。試料を1時間遠心分離したが、その間に沈殿は現れなかった。光学的等方性は偏光顕微鏡で証明された。0.241gのロイシン、2.573gの1M−HCl及び0.970gのグリセリンを混合して、ロイシン塩酸塩のグリセリン溶液を製出したのち、水及び過剰のHClを空気流下、50℃のホットプレート上で蒸発させ、3時間乾燥した。次に、このロイシンHClのグリセリン溶液0.882gを上記nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質に加えた。次に、0.102gのプルロニックF−68をpH5.0の水性緩衝液4.42gに加え、上位溶液を調製した。上位溶液をnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質の上に載せたのち、2時間超音波処理し、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を分散させてミクロ粒子とした。
これらの如き粒子は、抗腫瘍薬パクリタクセルの徐放に使用可能である。
【0157】
実施例4
この実施例での被覆は、写真プロセスで有用な粒子を製造しうる可能性のある沃化銀であった。沃化銀は、単純な塩(一価イオンのみを含有)であるが、水への溶解度が極めて低い点でやや異常なものである。
ディモダンLS(グリンステットABから市販されており、本明細書では「ひまわりモノグリセリド」と呼ぶ)0.509g、3回蒸留した水0.563g及び沃化ナトリウム0.060gを混合し、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。0.220gの硝酸銀、0.094gのプルロニックF−68及び0.008gの塩化セチルピリジニウムを3.01gの水に加えて上位溶液を調製した。次に、上位溶液をnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質の上に載せ、1時間超音波処理してミクロ粒子の分散液を製出した。粒子被覆は、水への溶解度の低い沃化銀であった。
【0158】
実施例5
この実施例では、被覆として硫化カドミウムを使用した。それは非層状結晶化合物であり、少量の他のイオンを加えるとき、物理的性質の大きい変化を示す。この実施例はまた、硫化水素ガスなどの気体を、晶出及び粒子形成を誘発させるために使用できることをも示す。
0.641gのディモダンLSを0.412gの水と充分に混合してnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製し、これに、0.058gの硫酸カドミウム水和物を加えた。この後、その混合物に0.039gの硫化カルシウムを載せ、試験管をアルゴンでパージし、栓をした。0.088gのプルロニックF−68及び1.53gのグリセリンを1.51gの1M−HClに加えたのち、溶液をアルゴンでパージして上位溶液を調製した。上位溶液を注射器にとり、最初の試験管に加えた。添加すると硫化水素ガスの臭気が試験管中に検出でき、黄色い沈殿の生成も検知できた。これは、硫酸カドミウムからの硫化カドミウム(CdS)の製出における硫化水素の作用を示すものであっ。この系を超音波処理して、硫化カドミウム被膜をもつミクロ粒子の分散液を得た。
【0159】
実施例6
この実施例は、ここではロイシンである結晶性被膜によって内部が粒子外部の諸条件と接触することから実質的に保護される例を示す。亜鉛末と接触するとメチレンブルーは1秒間以内に無色へと変化する。本実施例では、亜鉛を添加しても約24時間は脱色を惹起しない。最終的には脱色が起こるが、それは単に亜鉛のロイシン被膜に対する影響によるものであると考えられる。
0.122gのロイシンを1.179gの1M−HClと混合し、約1gの溶液が残るまで蒸発させてロイシン塩酸塩の水溶液を作成した。これに0.922gのひまわりモノグリセリド及び10滴の強く着色したメチレンブルー水溶液を加えた。0.497gの1M−NaOH及び0.037gのプルロニックF−68を3.00gの緩衝液(pH5)に加え、上位溶液を製出した。上位溶液を重層し、系を超音波処理したところ、ミクロ粒子の分散液が生じた。この分散液のアリコートを濾過して未分散液晶を除去し、100メッシュの亜鉛末0.1gを加えた。(亜鉛末をメチレンブルーの溶液と振盪攪拌すると、通常1秒ほどで、又は殆ど瞬間的に、亜鉛の還元作用が青色を取り除く。)しかし、このプロセスによって製出したミクロカプセル化メチレンブルーの場合には、その色が消えるのに24時間オーダーの時間を要し、最終的には白色分散液となった。即ち、これらの粒子の被膜を破壊しうる亜鉛とロイシンとの間の相互作用にもかかわらず、それら被膜は亜鉛の作用に対してメチレンブルーを実質的に保護し、その色素の亜鉛による還元に要する時間は約4〜5桁延長された。
2種の活性成分(例えば酸化を受けやすい抗菌性化合物トリクロサンと強い酸化性清浄剤である過酸化ベンゾイル)を互いに接触しないよう隔離しなければならない製品にこれらの如き粒子を採用する場合、この実験は、カプセル化された化合物と粒子外部の環境との間の接触を阻止するのにロイシン被覆粒子を使用できることを示している。
【0160】
実施例7
この実施例は、ロイシン被膜が粒子内部のメチレンブルー色素を塩化第一鉄との接触から保護する例である。これは、塩化第一鉄を分散液に添加したときの予想される色の変化がないことによって判明する。この実施例は、該被覆が鉄に対しても実質的に不透過性であることを示した。
0.242gのロイシン、2.60gの1M−HCl及び1.04gのグリセリンを混合し、次に空気流のもと、50℃のホットプレート上で1.5時間乾燥してロイシン塩酸塩のグリセリン溶液を作成した。このロイシンHCl溶液と、0.291gのレシチン(エピクロン200、ルーカス=マイヤーから入手)及び0.116gのオレイルアルコール並びに0.873gのグリセリンを混合し、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。一つまみのメチレンブルーを加えてこれを着色した。0.042gのプルロニックF−68界面活性剤を4.36gの緩衝液(pH5)に加えて上位溶液を調製し、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質の上に重ね、系を超音波処理してミクロ粒子の分散液を製出した。この分散液のアリコートに、還元剤である塩化第一鉄0.19gを加えた。変色のないことが確認され、ロイシン被覆粒子中へのカプセル化によってメチレンブルーが第一鉄化合物との接触に対して保護されることが判った。メチレンブルー溶液への塩化第一鉄の添加は色を青緑(ターコイズ色)に変化させるのが普通だからである。
実施例6と同様に、この実験は、この場合には還元剤に敏感なメチレンブルーなどのカプセル化された化合物が被膜の放出まで粒子外部の還元性条件から保護されることを示している。このことは、例えば電流の適用の影響が被膜の化学的放出により制御される電気化学的用途に有用である。
【0161】
実施例8
この実施例では、実施例1A及び実施例10と共に考察して、メチルパラベンで被覆された本発明の粒子を2つの全く異なる方法で、加熱一冷却法などの熱的プロセスにより、又は酸−塩基法などの化学反応により、製造できることを証明する。
0.426gのひまわりモノグリセリド(ディモダンLS)をpH3の酸性水0.206gと混合して製出したnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質に、0.051gのメチルパラベン及び微量のメチレンブルー色素を加えた。混合物を110℃に加熱し、振り混ぜてから振動ミキサーにかけ、23℃の水中に5分間入れた。HCIでpH3に酸性化した2%プルロニックF−68溶液2mLを重ね、試験管をねじ込みキャップで封じ、試験管を振ってから30分間超音波処理した。これにより、メチルパラベンで被覆されたミクロ粒子の分散液が製出された。
この実施例は、実施例10と共に、同じ化合物、この場合にはメチルパラベンで被覆された粒子を熱的方法又は化学的沈殿法によって製造できることを示しており、このことは、例えばミクロカプセル化医薬品の大規模製薬製造において生産効率を最適化し、コストを極小化する上で重要な追加の融通性をもたらすものである。
【0162】
実施例9
この実施例でのnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質は、医薬品処方に一般的に承認されており、小さい温度変化によって性質を調整できる液晶相物質を与える非イオン界面活性剤に基づいている。例えばアクネクリームでは、適用温度で洗剤による洗浄性を得るために、但し処方製造温度では不溶性を維持させるために、本実施例を利用できる。更に、2種の界面活性剤の調和した混合物に基づいていること、そして相及びその性質が2種の界面活性剤の割合に敏感に依存していることから、本実施例は内部コアの性質を制御するための簡便で強力な手段を提供する。更に、この実施例では透明な分散液が得られている。このことは、約0.5ミクロンより大きいサイズの粒子の僅かな割合が不透明分散液を生じさせることから、注目に値することである。
0.276gの「OE2」(CPCインターナショナル社の一部門であるアマーコールにより「アメロキソールOE−2」として市販されているエトキシル化アルコール界面活性剤)を0.238gの「OE−5」(CPCインターナショナル社の一部門であるアマーコールにより「アメロキソールOE−5」として市販されているエトキシル化アルコール界面活性剤)と混合し、水0.250g(過剰の水を含む)を加えて、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。これに、メチルパラベン0.054g及び微量のメチレンブルー色素を加えた。混合物を110℃に加熱し、振り混ぜ、振動ミキサーにかけ、23℃の水中に5分間入れた。HClでpH3に酸性化した2%プルロニックF−68溶液2mLを上に載せ、試験管をねじ込みキャップで封じ、試験管を振ってから30分間超音波処理した。これにより、メチルパラベンで被覆されたミクロ粒子の分散液が製出された。興味あることに、1ミクロンより小さい粒子サイズのために、透明な分散液となった。
実施例10
この実施例は、メチルパラベン被覆粒子を、先の実施例の酸−塩基法に加えて加熱−冷却法によって製出できることを示す。この実施例は、2相の混合物を分散させうることも証明する。
レシチン(エピクロン200、0.418g)をオレイルアルコール0.234g及びpH3の酸性水0.461gと混合して、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質とnmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質との混合物を得た。このうち0.50gをとり、これにメチルパラベン0.049gを加え、よく混合した。これを120℃に加熱し、熱いうちに攪拌し、次に20℃に再加熱した。試験管をオーブンから取り出し、試験管を冷水に5分間つけた。こののち、ねじ込みキャップを外し、HClでpH3に酸性化した2%プルロニックF−68溶液2mLを重ね、試料を攪拌し、振り混ぜ、最後に超音波処理した。この結果、メチルパラベンで被覆されたミクロ粒子の乳白色分散液が得られた。光学顕微鏡で調べたところ、サイズが2−10ミクロンの範囲のミクロ粒子が見られた。過剰のメチルパラベン結晶物質も見られた。
この実施例は、共存する2種のnmオーダー構造の相の混合物が当該ミクロ粒子の内部となりうることを証明している。このことは、例えば、各々に薬物を担持している2つの相の混合物を用いて、所望の薬物動態を達成可能な徐放性薬物送達において重要となり得る。例えば、逆六方晶相と立方晶相との混合物を用いると、細孔空間のジオメトリーが異なるために、これら2つの相からの放出が異なる動態に従い、結果としての動態がこれら2つのプロフィールの組合せとなる。
【0163】
実施例11
この実施例は、水に不安定な化合物を保護するなどの目的で、無水の粒子内部を製出できることを示す。
実施例10の調製で用いたのと同じ操作法を用いた。ただし、nmオーダー構造の二重連続性逆立方晶相液晶物質の調製において水に代えてグリセリン(過剰に存在)を用いた。それらの量は次の通りであった:レシチン0.418g、オレイルアルコール0.152g、グリセリン0.458g及びメチルパラベン0.052g。結果は、メチルパラベンで被覆されたミクロ粒子の乳白色分散液であった。
水に不安定な活性化合物の保護は、例えば加水分解に対して不安定な活性物質を含有する口腔衛生用製品において重要である。
【0164】
実施例12
この実施例では、硝酸カリウムで被覆された粒子にカプサイシンを配合した。
ここでは、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相液晶物質は極めて安価な界面活性剤に基づいている。被膜は、液体を液滴にエアゾール化する際に分散液の流れを水の流れと合体させる作物噴霧用ガンでのように、単に水を加えるだけで容易に除去される。硝酸カリウムは肥料として二重の目的に役立つであろうことに注目されたい。
非イオン界面活性剤「OE2」(0.597g)と「OE5」(0.402g)とを、硝酸カリウムで飽和させた水0.624gと混合した。この混合物に、活性化合物カプサイシン(純粋な結晶性形態のもの、スナイダー・シード・コーポレションから入手)を0.045g加えた。次に、この混合物の0.552gを取り出し、硝酸カリウム0.135gを加え、混合物全体を80℃に5分間加熱した。2%プルロニックF−68水溶液をとり、硝酸カリウムで飽和させて、上位溶液を調製した。融解させた混合物を振り混ぜ、次に80℃のオーブンに2分間戻した。試験管を20℃の水に5分間つけた。この時点で、上位溶液を重層し、全体の混合物をへらでかき混ぜ、栓をし、振り、超音波処理した。結果は、硝酸カリウムで被覆され、内部に活性成分カプサイシンを含有するミクロ粒子の分散液であった。
分散液を等量の水で希釈したところ、被膜が溶解した(室温での硝酸カリウムの水への溶解度が高いことから)。そして、これは粒子の速やかな凝集及び大きい塊への融着として現れた。各粒子の内部は粘着性の液晶であって、従って、被膜がないときには、フロキュレーション及び融着が起こる。
ここで述べた実施例は、装飾用植物及び/又は農業作物へ使用して、動物が葉を食べるのを防止する噴霧剤の例である。我々は、数ppm程度の濃度で口内に灼熱感を生じさせる無毒性の化合物(トウガラシ及びパプリカに見いだされる)であるカプサイシンのカプセル化に成功したのである。カプサイシンは囓歯類及び他の動物の忌避剤としての商業的使用の記録を持っている。
純粋なカプサイシンを、結晶性硝酸カリウム(硝石)の被膜をもつ粒子の立方晶相内部にカプセル化した。粒子の外の外部溶液は硝酸カリウムの飽和水溶液であったが、これは希釈するまで被膜の溶解を阻止する。分散液を水で約1:1に希釈すると、粒子被膜が殆ど完全に溶解した。(この溶解をビデオテープに収録し、テープを見たところ、被膜の溶解及び続いての粒子内部の融着が起こっていた。)
希釈及び続いての被膜の溶解の際、粒子の内部が露出された。それは次の重要な性質をもつ立方晶相であった。
A)水に不溶性である
B)極めて粘着性で、接着性をもつ
C)極めて高い粘度をもつ
これら3つの性質は一緒になって、被膜を除かれた立方晶相粒子が植物の葉に付着することを意味し、性質Aはそれが降雨に曝されても溶解しないことを意味している。
この3つの性質は、口腔癌治療のための光化学療法(PDP)薬剤の投与において徐放ペースト剤として用いる立方晶相自体の動物試験の成功にとっても重要であった。
立方晶相粒子で達成されたカプサイシン濃度は、関節炎の治療で用いられる医薬製剤におけるよりも2桁高かった。より高い含量、恐らく20%もの高さが可能かもしれない。
商業化可能性の観点からは、分散液中の成分は極めて安価であり、全てが食品への使用、局所適用などを承認されている。その上、硝酸カリウムは周知の肥料である。
【0165】
実施例13
この実施例では、先の実施例と同様にカプサイシン/硝酸カリウムを使用したが、ここではnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質はレシチンであり、これは動・植物において必須の化合物で、安価に入手できるものである。このnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質はまた、広い温度範囲で少なくとも通常の天候条件下で遭遇の予測される40℃までは安定である。
1.150g量の大豆レシチン(エピクロン200)を、オレイルアルコール0.300g、グリセリン1.236g及び硝酸カリウム0.407gと混合した。0.150g量の活性カプサイシンをこれに加え、充分に混合した。次に、硝酸カリウム0.50gを加え、混合物全体を120℃に5分間加熱した。2%プルロニックF−68水溶液をとり、硝酸カリウムで飽和させて、上位溶液を調製した。融解混合物を攪拌し、次に120℃のオーブンに3分間戻した。試験管を冷水に5分間つけ、この時点で上位溶液を重ね、混合物全体をへらでかき混ぜ、栓をし、超音波処理し、次に、振り混ぜと超音波処理とを30サイクル交互に行った。結果は、硝酸カリウムで被覆され、内部に約5%の濃度で活性成分カプサイシンを含有するミクロ粒子の分散液であった。過剰の硝酸カリウムの結晶も存在していた。
用途は実施例12と同様であるが、内部へのレシチン使用のために、粒子内部と植物の細胞膜との融和がより良好で、恐らくより良い効果をもたらすであろう。
【0166】
実施例14
この実施例では、フェロシアン化銅で被覆された粒子が剪断に抵抗性をもつことが示された。
ひまわりモノグリセリド(ディモダンLS)0.296gをフェロシアン化銅の10%水溶液0.263gと混合して、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。水4.44gに0.021gの硫酸第二銅及び0.063gのプルロニックF−68を加えて、上位溶液を調製した。nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質に上位溶液を重層し、試験管をねじ込みキャップで封じ、系を45分間超音波処理した。結果は、フェロシアン化銅で被覆され、直径が3ミクロン程度の高濃度ミクロ粒子であった。このプロセスは、超音波処理関連を除いて、温度変化を必要とせずにミクロ粒子を製出し、他の乳化形態を用いることにより超音波関連の温度問題を回避できる。更に、pHを変化させる必要もなかった。
顕微鏡検査のために顕微鏡スライドとカバーガラスとの間に1滴を置いたところ、フェロシアン化銅で被覆された粒子が剪断にかなり抵抗性であることが見いだされた。分散液の上でカバーガラスをマッサージ風に動かしたが、指での軽い圧力では認めうるほどの粒子の形態喪失や融着は惹起されなかった。これは、例えば水酸化炭酸マグネシウムで被覆された粒子と対照的で、これらでは軽い圧で粒子の高度の形態喪失及び融着を惹起した。これらの観察は、フェロシアン化銅の高い剛性と一致していた。
剪断に抵抗性の被覆をもつ粒子は、伝統的なポリマー被覆粒子では剪断による被膜崩壊のために寿命が限定されると認識されている粒子のポンプ輸送を要する用途で重要な意味をもつ。
【0167】
実施例15
この実施例では、カプサイシンをかなり高い含量、即ち9重量%で本発明の結晶被覆粒子に配合した。レシチン0.329g、オレイルアルコール0.109g、グリセリン0.611g及びカプサイシン0.105g(純粋な結晶性形態でスナイダー・シード・コーポレション(バッファロー、NY)から贈与されたもの)を混合し、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相を調製した。この立方晶相に硫酸第二銅0.046gを加えた。10%フェロシアン化カリウム水溶液0.563gを水2.54gと混合し、上位溶液を調製した。立方晶相一硫酸銅混合物に上位溶液を載せ、試験管を2時間超音波処理に付した。フェロシアン化銅形成反応は、その化合物の深い赤褐色によって証明された。この期間の終了時に立方晶相は分散され、フェロシアン化銅被覆粒子となっていた。被膜はフェロシアン化銅で形成されていたが、これは強い物質であり、硫酸イオンに対してある程度選択的な透過性を有している。実施例14から分かるように、この被覆物質は強固な結晶であり、カプサイシンは囓歯類にとって味覚的に極めて不快なものであるので、これらの粒子は、段ボール箱、農業植物などに対する被害を防止する囓歯類忌避剤としての用途、特に囓歯類が噛むまで、つまりそれによってミクロ粒子が開かれてカプサイシンが動物の味蕾に露出されるまでは比較的穏やかな剪断(例えば粒子で処理した箱の製造又は植物への粒子の沈積などの間の)に対して粒子が抵抗性でなければならないような用途に有用である。
【0168】
実施例16
この実施例では、実施例14と同じ操作法でフェロシアン化銅被膜をもつミクロ粒子を製造し、この場合、活性作用物質として抗体を配合した。詳しくは、抗3’、5’サイクリックアデノシン一燐酸(AMP)抗体を活性作用物質として内部の1重量%量配合した。ひまわりモノグリセリド0.501gを水0.523gと混合し、立方晶相を調製した。この立方晶相に0.048g量のフェロシアン化カリウムを前記抗体約0.010gと共に添加した。遠心分離後、過剰の水溶液を除去した。0.032gの硝酸第二銅と0.06gのプルロニックF−68とを水3.0gに加え、上位溶液を調製した。上位溶液を重ね、超音波処理したのち、フェロシアン化銅で被覆されたミクロ粒子の乳白色分散液が得られた。かかる粒子は、所望の被膜放出及び生体反応性抗体の利用を可能とする目標の機会の到来までに遭遇する温和な剪断条件(例えば圧入時など)では剛性のフェロシアン化銅被膜が放出を制限するのに有効であり、従ってバイオリアクターなどの生物工学装置において有用である。
【0169】
実施例17
この実施例では、エチルヒドロクプレインが極めて硬い殻を形成する。この実施例では、酸一塩基プロセスを用いた。
ひまわりモノグリセリド(ディモダンLS)0.648gを水0.704gと混合物して、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。これに、エチルヒドロクプレイン塩酸塩0.084g及び微量のメチレンブルーを加えた。1.01gの0.1M水酸化ナトリウム及び0.052gのプルロニックF−68を3.0gの水に加えて、上位溶液を調製した。上位溶液を液晶に重層したのち、系を超音波処理し、エチルヒドロクプレイン(遊離塩基)で被覆されたミクロ粒子の分散液を得た。光学顕微鏡で調べたところ、粒子の殆どはサイズが1ミクロン未満であった。
乾燥して一体性を維持する粒子は、例えば、乾燥した気候条件があまり抵抗性でない粒子の早期放出を惹起しうるような農業用活性物質(除草剤、フェロモン類、殺虫剤など)の徐放に有用である。
【0170】
実施例18
この実施例では、加熱−冷却プロトコールによってレシチン被覆粒子を製出した。
ひまわりモノグリセリド(ディモダンLS)1.51gを水0.723gと混合物し、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。この混合物からとったnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質0.52gに、DL−ロイシン0.048gを加えた。混合物をよく攪拌し、80℃に加熱し、次に水につけて室温まで冷却した。直ちに2%プルロニックF−68水溶液を重層し、混合物を振り混ぜてから超音波処理した。この結果、ロイシンで被覆されたミクロ粒子の乳様分散液が得られた。
同じ被膜(この場合ロイシン)を熱的方法又は酸−塩基法のいずれによっても製造できることは、生産上の重要な融通性をもたらす。例えば、ある種の活性物質(例えば蛋白質)は温度で極めて容易に変性を受けるが、pHには充分抵抗性であり、一方、他の化合物は温度には抵抗性であるが、酸性又は塩基性のpHで加水分解されうるからである。
【0171】
実施例19
この実施例は、外部媒質(ここでは水)の中へ酸素を吹き込んだときでも、内部の成分を酸素との接触から保護できることを示す。
ひまわりモノグリセリド2.542gを水2.667gと混合し、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質(過剰の水を含有)を調製した。これから0.60gのnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を取り出した。次に0.037gのDL−ロイシンと0.497gの1M−HClを混合して乾燥し、その後、水0.102gを加えてロイシン塩酸塩溶液を製出し、これを、微量のメチルレッド色素と共にnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質0.60gに加えた。nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質は強い黄色であったが、膜状に広げると酸化のために約3分で深紅色に変わった。0.511gの1M水酸化ナトリウム、0.013gのプルロニックF−68及び2.435gの水を混合し、上位溶液を調製した。この上位溶液を液晶に重ね、超音波処理して、ロイシンで被覆されたメチルレッド含有ミクロ粒子の分散液を調製した。まず、F−68を添加又は添加していないメチルレッド水溶液が空気を吹き込んだときに速やかに黄色から深紅色に変わるのを確認した。次に、空気をメチルレッド含有ミクロ粒子の分散液に吹き込んだ。このとき、色が黄色から変化せず、ミクロ粒子内部へのメチルレッドのカプセル化がメチルレッドを酸化から保護していることが証明された。
活性化合物を酸素との接触から保護するこれらの粒子は、例えば長期間の保存中の食餌補充用鉄製剤などの酸素に敏感な化合物の保護に有用である。
【0172】
実施例20
この実施例では、内部のnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質にも外部(連続)被膜としても水に代えてグリセリンを使用し、従って分散液から水を実質的に排除した。
水の代わりにグリセリンを用い、大豆レシチンとオレイルアルコールを2.4:1の割合で混合し、次に過剰のグリセリンを加えて混合し、遠心分離してミクロ粒子の分散液を調製した。このnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質の0.70g量をメチルパラベン0.081gと混合した。臭化セチルピリジニウムをグリセリンに2%濃度で加え、上位溶液を調製した。nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質−メチルパラベン混合物を封入し、120℃に加熱してよく混合し、120℃に再加熱してから冷水につけ、この時点で上位溶液を重ね、試験管を再シールし(ねじ込みキャップで)て超音波処理した。これにより、メチルパラベンで被覆されたグリセリン連続相中のミクロ粒子が生じた。かかるグリセリンベースの分散液は、水に感受性の活性分散液のミクロカプセル化の面で関心がもたれる。
これらのミクロ粒子分散液を用いて、広い範囲の用途で出会う加水分解に不安定な活性物質を被膜の放出後にも水との接触から保護できる。
【0173】
実施例21
カプセル化メチレンブルーに挑戦するのに亜鉛を用いる上記実施例6と同様にして、但しここでは硝酸カリウムを被膜とした。更に、同じ分散液に重クロム酸カリウムの挑戦をも受けさせる。
大豆レシチン0.667g、オレイルアルコール0.343g、グリセリン0.738g及び微量のメチレンブルーを混合して、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。この平衡相の0.469gに硝酸カリウム0.225gを加えた。2%のプルロニックF−68を硝酸カリウムの飽和水溶液に加えて上位溶液を調製した。これを液晶の上に載せ、液晶が分散されて硝酸カリウムで被覆されたミクロ粒子になるまで系を超音波処理した。分散液の色は明るい青であった。次に、メチレンブルーがミクロ粒子中へのカプセル化によって保護されていることを示すために、2つの試験法を用いた。この分散液の約1mLに、亜鉛の微粉末約0.1gを加えた。亜鉛末は、メチレンブルーと接触すると色の喪失を惹起する。振り混ぜたのち、混合物をごく手短かに遠心分離した。即ち、遠心分離機へ装填、遠心分離及び遠心分離機からの取り出しまで合計時間約10秒間で行った。これは、メチレンブルー含有粒子の色の判定において亜鉛の干渉を避けるためである。亜鉛処理によって、あるとしてもごく僅かの青色の減少しかないことが見出され、ミクロ粒子の被覆がメチレンブルーを亜鉛との接触から保護していることが示された。次に、もとの明るい青色の分散液の別のアリコートに重クロム酸カリウムを添加した。これは色を緑がかった色に変化させたが、溶液中のメチレンブルーが重クロム酸カリウムと接触したら生じるはずの紫褐色を示唆する痕跡はなかった。
この実施例の被覆粒子は、極めて費用効率のよい被覆物質である硝酸カリウムが特徴であり、それでいながら活性化合物を外部の条件による化学的分解から保護し、従って例えば農業での徐放用に潜在的に重要なものである。
【0174】
実施例22
本実施例では、包接化合物からなる透過選択性被膜を有するミクロ粒子の例を示す。この特別な包接化合物、いわゆるウェルナー錯体は、ゲスト分子を除去したときに多孔性が残るという性質を有する。クラスレート及び包接化合物被膜は、放出又は吸収のための選択性が分子の大きさ、形状及び/又は極性に依存する場合の選択的多孔性の被膜として興味あるものである。
まず、ひまわりモノグリセリド0.525gを水0.400gと混合して、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。これに、塩化マンガン(MnCl2)0.039g及びチオシアン酸ナトリウム0.032gを加えた。4−ピコリン(4−メチルピリジン)0.147gを2%プルロニックF−68水溶液3.0mLに加え、上位溶液を調製した。液晶混合物に上位溶液を重層し、試験管をシールし、超音波処理した。かくして、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質が分散し、マンガン型ウェルナー錯体、即ちMn(NCS)2(4−MePy)4で被覆されたミクロ粒子となった。
この実施例での被膜は、産業液体流から重金属を除去する際に利用できる。この場合の被膜は、内部コアを高い表面電荷密度のためにイオン類に対して極めて高容量の吸収剤(陰イオン性界面活性剤又はビピリジニウム基などのより選択的な基を使用)である立方晶相とすれば、原子イオンを通過させて内部へ入っていくのを許容するクラスレート(包接化合物)として知られる多孔性結晶であることが望ましい。最も永続性があると思われる細孔が最良であろう。包接化合物被膜によってもたらされる選択性により、伝統的な収着剤(活性炭、マクロ網目状ポリマーなど)の場合のように利用可能な吸着部位を標的金属イオンと奪い合う大きな化合物のために収着能が不可避的に低下することが回避される。収着剤の再生は、粒子及び被膜を無傷に保ちながら、イオン交換により行えばよい(この再生段階は、たまたま、放出の例となろう)。
【0175】
実施例23
この実施例では、メチルパラベンからなる外部被膜を備え、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質中に特殊な色素が配置された被覆粒子に、該色素と接触した場合に色の変化を惹起するシアン化物を挑戦させた。シアン化物イオンは極めて小さいので、この試験の成功は、被膜が極めて小さいイオンに対しても影響されないことを示す。
ひまわりモノグリセリド0.424gと水0.272gを混合して、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。これに、0.061gのメチルパラベンと微量の色素1,2−ピリジルアゾ−2−ナフトールを加えた。1%の臭化セチルピリジニウムからなる上位溶液を調製した。液晶を120℃のオーブンで5分間加熱し、激しくかき混ぜ、再加熱し、次に冷水へつけた。この時点で、上位溶液を重層し、試験管をシールし、超音波処理装置に入れた。その結果、平均サイズが1ミクロンのオーダーのメチルパラベン被覆ミクロ粒子の分散液が得られた。次に、色素が外部相との接触から保護されていることを証明するために、シアン化第一銅を用いた。シアン化第一銅を1,2−ピリジルアゾ−2−ナフトールの溶液に加えると(F−68が存在していてもいなくても)、色が橙色から強い紫色に変わる。しかし、色素含有粒子の分散液のアリコートにシアン化第一銅を添加したとき、変色はなく、メチルパラベン被膜によって色素がシアン化第一銅との接触から保護されることが示された。1ミクロンの粒子の中心までシアン化第一銅が拡散する時間は数秒間以下のオーダーであると計算でき、被膜が粒子を封鎖していなかったならば、変色は防止できなかったであろう。
活性化合物を外部環境からのイオンとの接触から保護することは、例えば薬物送達において、特に多価イオンとの接触により錯体を形成し又は不活性化される高分子電解質の送達において、有用でありえよう。
【0176】
実施例24
この実施例では、先の実施例のシアン化物イオン試験を、硝酸カリウム被覆粒子について繰り返した。
ひまわりモノグリセリド0.434gと水0.215gを混合して、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。これに、0.158gの硝酸カリウムと微量の色素1,2−ピリジルアゾ−2−ナフトールを加えた。硝酸カリウム水溶液中の1%臭化セチルピリジニウムからなる上位溶液を調製した。液晶を120℃のオーブンで5分間加熱し、激しくかき混ぜ、再加熱し、次に冷水につけ、この時点で、上位溶液を重層し、試験管をシールし、超音波処理装置に入れた。結果は、硝酸カリウムで被覆されたミクロ粒子の分散液であった。この色素含有粒子の分散液のアリコートにシアン化第一銅を加えたところ、ごく僅かの変色があっただけで、色素が硝酸カリウム被膜によりシアン化第一銅との接触から実質的に保護されていることが示された。
これらの粒子の有用性は、実施例23のそれらと同様であるが、この実施例では、費用的に効率的な被膜硝酸カリウムを用いた。
【0177】
実施例25
レシチン(エピクロン200)0.913g、オレイルアルコール0.430g及びグリセリン0.90g(グリセリン過剰)を混合して、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。充分に混合し、遠心分離したのち、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質の0.50gを取り出し、二塩基性燐酸ナトリウム0.050gを加えた。塩化カルシウム0.10gを2%のプルロニックF−68と1%の臭化セチルピリジニウムとを含有する水溶液3mLに加えて、上位溶液を調製した。上位溶液を液晶ー燐酸ナトリウム混合物に重ねたのち、試験管をシールし、超音波処理した。結果は、燐酸カルシウムで被覆されたミクロ粒子の分散液であった。燐酸カルシウム被膜は、燐酸カルシウムが骨、歯、その他の構造構成要素の主要な一成分であるから、生物学的に本質的に関心のもたれるものであった。
【0178】
実施例26
この実施例は、実施例での炭酸マグネシウム被覆粒子が乾燥時に、即ち外部の水相を乾燥除去したときに、それらの一体性を維持することを示す。かくして、水に富む液晶相物質としての内部を維持しながら乾燥粉末を製造できる。
「桐油−ソルビトール化合物」の調製。まず、「桐油−ソルビトール化合物」を次の通りに調製した:110gの桐油(アルノア・オイルから中国の桐油として入手)を反応フラスコ中で11.50gのソルビトールと組合せた。フラスコをアルゴンでパージし、シールし、170℃に加熱し、マグネチックスターラーで攪拌した。炭酸ナトリウム(3.6g)を加え、混合物を170℃で1時間攪拌した。この時点で、3−クロロ−1,2−プロパンジオール3.4gを加え、混合物を室温まで冷却した。この反応からの油相の75mLをアセトン300mLと混合し、遠心分離後に、白色沈殿を除去した。次に、水18g及びアセトン100mLを加え、混合物を遠心分離し、底部の油状残留物を集め、アルゴン気流下で乾燥した。これにより、ソルビトールの桐油脂肪酸エステル約50mLが得られた。以下、これを「桐油−ソルビトール生成物」と呼ぶ。
【0179】
実施例26A
「桐油−ソルビトール生成物」0.110g、レシチン0.315g及び水0.248gを混ぜ、充分に混合し、遠心分離して、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。これに、炭酸カリウム0.085gを加えた。次に、0.118gのプルロニックF−68及び0.147gの硫酸マグネシウムを5.34gの水に加えて、上位溶液を調製した。液晶に上位溶液を重ね、試験管をシールし、振り混ぜ、2時間超音波処理し、最後に再度よく振り混ぜた。結果は、水酸化炭酸マグネシウムで被覆された粒子の乳白色分散液であった。過剰の無機結晶性物質を溶解させるために、分散液1部に対して2部の水を加えてこれを希釈した。分散液の小滴を顕微鏡スライドの表面に穏やかに拡げ、乾燥させた。10分間乾燥後、粒子の外部の水は殆ど完全に蒸発した。顕微鏡検査で、粒子はそれでもそれらの形態を維持しており、無被覆の粒子を同様に乾燥したならば認められるような(乾燥液晶混合物が液体となるため)無定形の滴とはならなかった。
【0180】
実施例26B
実施例26Aで製出した分散液を40℃に加熱した。相挙動測定によれば、この温度で、内部相はnmオーダー構造の液体L2相物質であった。分散液は乳白色のままであり、顕微鏡下で、ミクロ粒子も保持されていることを示した。このL2相は油、水及び界面活性剤(即ちレシチン)を含有しているので、それはnmオーダー構造のミクロエマルジョンでもあった。
【0181】
実施例27
この実施例では、炭酸マグネシウムで被覆された粒子の内部コア中のnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質のマトリックス内に受容体蛋白質を配置する。そして被覆粒子はヒドロゲル中に包埋した。粒子表面の被膜は、輸送及び貯蔵の間受容体蛋白質を保護するのに利用でき、その後は、使用直前に洗浄により容易に除去できる。この実施例及び実施例28は、例えば、本発明の被覆粒子を包埋したヒドロゲルビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーへの本発明の被覆粒子の用途を予告するものである。
0.470g量のレシチン(エピクロン200)を0.183gの「桐油−ソルビトール生成物」及び0.359gの水と混合した。これに炭酸カリウム0.112gを加えた。これを数時間遠心分離し、過剰の水相を除去した。シビレエイ由来のニコチン性アセチルコリン受容体標品を、L.プラディエとM.G.マクナミーが「膜の構造と機能」(P.イーグル編、1992年、第1047−1106頁)に記載しているプロトコールに従って調製した。この標品では脂質50μLに50μgの受容体蛋白質が含まれており、その大部分はジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)であった。(残余は、他の燐脂質、コレステロールなどの他の膜脂質成分であった。)この量の標品をnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質−炭酸カリウム混合物に加え、全体の混合物を緩徐に、しかし、複屈折の不存在により確認される如き良好な混合を確保するのに充分長い時間攪拌した。0.328gの硫酸マグネシウム、0.324gのプルロニックF−68及び0.0722gの臭化セチルピリジニウムを20.02gの水に加えて、上位溶液を調製した。上位溶液の5gを、受容体を配合したnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を入れた試験管に重層し、試験管をシールし、振り混ぜ、2時間超音波処理した。これによって、水酸化炭酸マグネシウムで被覆され、受容体を含有するミクロ粒子の分散液が得られ、それら粒子の実質的部分のサイズは0.5〜1ミクロンの範囲にあった。
次に、それらミクロ粒子をポリアクリルアミドヒドロゲル中に固定化した。分散液に、アクリルアミド(0.296g)、メチレンビスアクリルアミド(0.024g、架橋剤として)、過硫酸アンモニウム(0.005g、開始剤として)及びテトラメチルエチレンジアミン(TMED、0.019g、助触媒として)を加えたところ、アクリルアミドが重合して、30分以内に架橋ヒドロゲルとなった。このヒドロゲルの薄い切片を顕微鏡下で観察した。もとの分散液の場合と全く同じ高濃度のミクロ粒子が見られた。
更にヒドロゲルをつぶして、約30ミクロンのサイズの小片とした。これは、ヒドロゲルを40ミクロンメッシュサイズの金網に押しつけてこれを通過させることにより達成した。
【0182】
実施例28
この実施例では、受容体蛋白質を本発明の被覆粒子の内部コア中に配置し、被膜を硝酸カリウムとし、被覆粒子をヒドロゲルビーズ中に固定化した。受容体含有ビーズのラジオアッセイでの結合活性試験がUSデイヴィスにおいて成功裏に行われた。
0.470g量の大豆レシチン(エピクロン200)を0.185gの「桐油−ソルビトール生成物」及び0.368gに水と混合した。これに硝酸カリウム0.198gを加え、内容物を充分に混合した。先の実施例に記載した通りにして、シビレエイ由来ニコチン性アセチルコリン受容体標品を調製した。この標品では、50μgごとの受容体蛋白質が脂質50μLに含有されており、その大部分はジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)であった。55mgの標品をnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質−炭酸カリウム混合物に加え、全体の混合物をゆるやかに、しかし良好な混合を確保するのに充分なだけ長時間攪拌した。0.128gのプルロニックF−68及び0.015gの臭化セチルピリジニウムを飽和硝酸カリウム水溶液6.05gに加えて、上位溶液を調製した。nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質−炭酸カリウム調製物を40℃に加熱して、硝酸カリウムを溶解させ、次に10℃の水に10分間つけた。受容体を配合したnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を入れた試験管に上位溶液を重層し、試験管をシールし、振り混ぜ、2時間超音波処理した。これにより、硝酸カリウムで被覆され、受容体を含有するミクロ粒子の分散液が得られた。それら粒子の実質的部分のサイズは0.3〜1ミクロンの範囲内にあった。
次に、それらミクロ粒子をポリアクリルアミドヒドロゲル中に固定化した。分散液に、アクリルアミド(0.365g)、メチレンビスアクリルアミド(0.049g、架橋剤として)、過硫酸アンモニウム(2%溶液0.072g、開始剤として)及びテトラメチルエチレンジアミン(TMED、0.011g、助触媒として)を加えたところ、アクリルアミドが重合して、約1時間で架橋ヒドロゲルとなった。このヒドロゲルの薄い切片を顕微鏡下で観察した。もとの分散液の場合と全く同じ高濃度のミクロ粒子が見られた(ヒドロゲルの底の近傍を除いて)。
更にヒドロゲルをつぶして、約30ミクロンのサイズの小片とした。これは、ヒドロゲルを40ミクロンメッシュサイズの金網に押しつけてこれを通過させることにより達成した。小片サイズが40ミクロンのとき、小分子が小片の中心へ拡散する時間は1秒以下程度であると推定でき、これは次に報告する受容体試験に有意の影響を及ぼさない。
125I標識ブンガロトキシンをリガンドとして用い、今記述したばかりのnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質ミクロ粒子−固定化アセチルコリン受容体系を用いて受容体結合アッセイを実施した。(標準的結合アッセイは、マーク・マクナミー博士のグループの刊行物に記載されている。)結果は、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質ミクロ粒子−固定化アセチルコリン受容体系が、標準受容体標品で測定されるレベルの約70%でブンガロトキシンの結合を示すというものであり、固定化操作の間のみならず試料を調製した日から試験した日までに経過した期間(2か月以上)にわたっても、蛋白質結合性が残ることか証明された。
【0183】
上記の実施例26〜28は、実際に、生化学アッセイでのそれら粒子の適用を示しており、本来の不安定性のために不便な常用のリポソームに比して安定性の大きい向上を示している。かかるアッセイは、臨床診断並びに医薬品のスクリーニングにおいて重要である。
【0184】
実施例29
上記実施例22と同様に、この実施例では、包接化合物被覆粒子を製出した。
この実施例で、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質からなる内部は、被膜を通して入りうる酸素(しかし被膜は水の通過を阻止する)の作用によって重合可能である。
オキアミから抽出したレシチンを、アヴァンティ・ポーラー・リピド社(バーミンガム、アラバマ)からオキアミホスファチジルコリンとして入手した。0.220g量のこのレシチンを0.110gの「桐油−ソルビトール生成物」、0.220gの水、0.005gのナフテン酸コバルト含有コバルト乾燥剤(美術用材料供給会社グルムバッハーから入手)及び0.30gのチオシアン酸カリウムと混合した。これにより、緑色のnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質が生じた。0.309gの塩化マグネシウム、0.105gの4−ピコリン(4−メチルピリジン)、0.113gのプルロニックF−68及び0.021gの臭化セチルピリジニウムを5.10gの水に加えて、上位溶液を調製した。上位溶液をnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質に載せ、試験管をシールして振り混ぜ、超音波処理浴を氷水で満たした状態で超音波処理した。緑色のnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質が分散してミクロ粒子となるにつれて反応のために褐色に変色した。2時間後、実質的にnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質の全てが分散して、殆どが1ミクロン未満のサイズの粒子となっていた。被膜は、文献によれば分子状酸素の吸収(又は通過)を可能ならしめるチャンネルを有するウェルナー化合物であった。オキアミレシチンの高度の不飽和並びに桐油−ソルビトール生成物中のそれは、コバルト乾燥剤の触媒作用とあいまって、大気中の酸素との接触によってこのミクロカプセル化されたnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を重合させることを可能ならしめる。
この実施例で記載した包接化合物は前述(実施例22)のものであった。
【0185】
実施例30
この実施例では、nmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質を分散させた。
0.369gの大豆レシチン(エピクロン200)、0.110gのソルビタントリオレエート及び0.370gのグリセリンを混合して、nmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質を調製した。このnmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質に、硫酸マグネシウム0.054gを加えた。0.10gの炭酸カリウム、0.10gのプルロニックF−68及び0.02gの臭化セチルピリジニウムを5gの水に加えて、上位溶液を調製した。上位溶液をnmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質に重層し、試験管をシールし、振り混ぜ、1時間超音波処理したところ、nmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質の殆どが分散して、水酸化炭酸マグネシウムで被覆されたミクロ粒子となった。
逆六方晶相中の細孔(円筒形)の寸法は、ユニークな放出速度プロフィールを与え、これは例えば制御された薬物送達において有用であろう。
【0186】
実施例31
上記実施例の殆どとは対照的に、この実施例で分散させたnmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質は、水に不溶性であったが、過剰の水と平衡状態にはなかった。
大豆レシチン(0.412g)、あまに油(0.159g)及びグリセリン(0.458g)を充分に混合し、室温でnmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質を製出した。このnmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質に、硫酸マグネシウム0.059gを加えた。0.10gの炭酸カリウム、0.10gのプルロニックF−68及び0.02gの臭化セチルピリジニウムを5gの水に加えて、上位溶液を調製した。上位溶液をnmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質に重層し、試験管をシールし、振り混ぜ、30分間超音波処理したところ、nmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質の殆どが分散して、水酸化炭酸マグネシウムで被覆されたミクロ粒子となった。
過剰の水とは平衡状態にないnmオーダー構造相を分散させうることは、本発明で使用できる化学の範囲を拡大してくれる。この多能性は、多数の製品基準を同時に満たさなければならない薬物送達などの要求の厳しい用途において重要である。
【0187】
実施例32
この実施例では、化学反応法を用いて、nmオーダー構造の層状相物質を分散させた。
大豆レシチン(エピクロン200)0.832g及び水0.666gを混合して、nmオーダー構造の層状相物質を調製した。このnmオーダー構造の層状相物質の約0.80gに、硫酸マグネシウム0.057gを加えた。0.10gの炭酸カリウム、0.10gのプルロニックF−68及び0.02gの臭化セチルピリジニウムを5gの水に加えて、上位溶液を調製した。上位溶液をnmオーダー構造の逆二重連続性六方晶相物質に重層し、試験管をシールし、振り混ぜ、5分間超音波処理したところ、nmオーダー構造の層状相物質の殆どが分散して、水酸化炭酸マグネシウムで被覆されたミクロ粒子となった。
この実施例の粒子は、ポリマーカプセル化リポソームと構造上関係があるが、ポリマーカプセル化リポソームの製造に用いられる過酷な化学的条件を受けず、また、広い範囲の結晶性被膜で被覆された層状相内部粒子を単一段階でしかも緩和な条件下で製出できることは、徐放性薬物送達において重要な特徴である。
【0188】
実施例33
遊離塩基の調製:エチルヒドロクプレイン及びニュートラルレッドはいずれもプロトン化された塩酸塩の形態で購入した。各々の場合に、この塩を水に溶解させ、これに水酸化ナトリウム水溶液を1:1のモル比で加えた。2つの水溶液の混合物は沈殿を生じ、これを水で洗い(NaCl及び未反応NaOHを除去するため)、遠心分離し、つぎに遊離塩基の融点より高い温度で乾燥した。
nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相分散液の調製:分散液の処方は次の混合物から始めた。
0.417gのグリセリンモノレエート(GMO)
0.191gのグリセリン
0.044gのエチルヒドロクプレイン(又は、場合により、ニュートラルレッド、いずれも遊離塩基形態)。これらの実施例では、通常のモノグリセリド−水からなるnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質に代わりに、モノグリセリド−グリセリンからなるnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を用いた。
プルロニックF−68を水に2%濃度まで溶解させて、上位溶液を作成した。
両成分を試験管に秤取し、へらで混合後、シールした(ねじ込みキャップ)試験管を140℃のオーブンに少なくとも20分間入れ、エチルヒドロクプレイン(ニュートラルレッド遊離塩基)が融解したことを確認した。試験管を次に水につけた。水温は室温より低い(約10℃)場合も、室温水の場合もあった;2つの場合に分散に差は見られなかった。
試料を冷却水中に約5分間おいたのち、粘度をチェックしたところ、非常に高く、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相を示した;いくつかの場合に、交差偏光により試料を観察したが、光学的に等方性であった(結晶性被覆領域は光の波長よりもずっと小さく、小さすぎて光学的性質に影響しない)。プルロニック上位溶液を試験管に約半分まで注入した。次に、試験管を手で、及び機械的混合装置を用いて、振った。バルクのnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質が消滅して、分散液となるにつれて、溶液は次第に不透明になった。
SEMキャラクタリゼーション:走査電子顕微鏡(SEM)標本作成は、いかなる固定手法も含んでいなかった。単に、分散液の1滴をスライドガラスに載せて、水を蒸発させ、荷電効果を避けるために、スパッタリングにより薄い(2nm)炭素コーティングを施した。スパッタリング装置中で、スパッタリングが始まる前に、意図的に試料を5x10-4Torrの真空下に約5分間保持した。これは、粒子被膜の強固さを試験するために行ったものである。使用したSEMは日立S−800電界放射SEMで、25kVで操作した。
【0189】
図3は、エチルヒドロクプレイン分散液のSEM写真を示しており、直径が約0.5−2ミクロンの範囲の粒子が見られる(下半分は、上半分で箱型に囲んだ領域を10倍拡大したものであり、従って、倍率が上では500、下では5000である)。粒子の多くが顕著かつ明瞭に多面体形状を示している。
この試料で測定された粒度分布(次のセクション参照)は、この分散液では直径0.5−2ミクロンオーダーの粒子が支配的であり、これは、顕微鏡写真で見られる粒子とよく合っている。エチルヒドロクプレイン被膜の厚さは約10nmであると推定でき、これが、粒子内部の液体成分を0.5ミリトルの真空中での蒸発から保護できるのに充分に厚いことが明らかである。
この分散液では、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質に硫酸リチウムをマーカーとして分散前に添加しておいたが、実際に、この分散液の粒子のEDXスペクトルは硫黄のピークを示した。用いたEDXによってはリチウムを検出することはできず、スペクトル中の他のピークはガラス基質に帰属するものであった。
【0190】
図4は、ニュートラルレッド分散液のSEM写真を示している。実質的に全ての粒子が0.3−1ミクロンの範囲内のサイズを有している。
粒度分布:マルヴァーン3600Eレーザー回折粒度測定装置を用いて分布を測定した。検討した各々の分散液とも、担体液(水)に2〜3滴を加え、濃度を大きく希釈して多重散乱を回避するようにした。粒度は、同じ体積の球の直径として計算した。粒子の多面体形状を考えるとき、それはよい尺度である(下記参照)。装置は少なくとも0.5ミクロンまでの小ささの粒子を測定できるもので、分布に関するデータには、少なくとも0.5ミクロンまでの小ささにおける寄与が含まれている。
【0191】
13:1比のGMO:エチルヒドロクプレインを用いて調製した分散液の粒度分布を図5に示す。一般に、結晶性被覆剤に対するnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質の比が増すにつれて、粒度も増す。この分散液についてのデータは体積平均ベースで、粒子の10%が0.6ミクロンより小さい粒度をもつことを示しており、これは等式D(v,0.1)=0.6ミクロンによって表される。分布の狭さは2つの方法で示される。まず、D(v,0.9)及びD(v,0.1)は、D(v,0.5)=1.2ミクロンの(体積加重)平均から各々ファクターは2である。第二に、分布の幅を示す「スパン」:
スパン=〔D(v,0.9)−D(v,0.1)〕/D(v,0.5)
は1.4と計算される。これらの結果はかなり低い凝集度を示している。
【0192】
GMO:ニュートラルレッド=10:1の分散液についてさらに狭い分布が示された。スパンは1.1として与えられ、(示差)粒度分布は極めてシャープであって、2ミクロンを越えると速やかに減少することが容易に見られた。
より低いGMO:エチルヒドロクプレイン比で調製した分散液の場合に小さい粒度が測定され、平均が0.8ミクロンの分布で、スパンは1.2であった。このように、結晶性被覆剤に対するnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質の比によって粒度を制御することができ、比が低下すると粒度が増す。
【0193】
微小角X線散乱(SAXS):これは、エチルヒドロクプレイン分散液中の粒子の内部がnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質であることを確認するために使用した。粒子の濃縮物ではなく、分散液自体を、1.5mmX線用毛管に充填し、ロスウェルパーク癌センター生物物理部門のスチーブン・フイ博士の研究室へ運んだ。回転陽極にSAXSカメラを装着し、100kV、40mAの電力(4kW)で測定を実施した。エレクトロニクス機構を介してニュクレアス多チャンネル分析装置に接続した直線位置敏感検出器を用いてデータを集めた。
このMCAは8,192チャンネルの能力を有しているが、チャンネル当たりの計数値を高めるために、2,048の分解能のみを用いた。1時間オーダーの計数時間を用いた。分散液中のnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物(粒子体積の約85%)の体積分率が10%のオーダーにあったからである。データ解析には、ソフトウェアパッケージ「PCA」を用いた。
【0194】
図6は、測定されたSAXS強度対波数ベクトルqのプロットを示している。
波数ベクトルqは回折角θ及びX線の波長λと次式によって関係付けられる。
q=4π(sinθ/λ)
d間隔は次式によりブラッグ反射のq値から計算される。
d=2π/q
図6において、縦軸は、空間群Pn3m、格子パラメータ7.47nmの格子について計算された正確なブラッグピーク位置を示している。この空間群は、モノオレイン−水系におけるnmオーダー構造の逆立方晶相について、特に過剰の水と平衡状態にあるそれらについて、充分に確立されている。(実際、過剰の水と平衡状態にあるnmオーダー構造の逆立方晶相では、空間群Pn3mが殆ど排他的に現れる)。空間群Pn3mのモノオレイン−水系のnmオーダー構造の逆立方晶相の格子パラメータも8nmに近い。今回の場合は水をグリセリンで置き換えたため、それ以上正確な比較は不可能であった。いずれにしても、このSAXS走査から推論された格子のタイプ及びサイズは、モノグリセリド系のnmオーダー構造の逆立方晶相についての文献データとよく一致している。
【0195】
空間群Pn3mにおいては、許容ピーク位置に対するミラー指数(hkl)及びh2+k2+l2の値は次の通りである。(110)、2;(111)、3;(200)、4;(211)、6;(220)、8;(221)、9;(222)、12;及びそれ以上。データ及び予期されるピーク位置を見れば、(110)及び(222)の位置のピークがデータによって強く支持されることが明らかである。(111)ピークは、右側のスキャン(掃引)では(110)ピークに対する肩のように見え、左側では小さい、しかしはっきりとは見分けられないピークであるように見える。(200)ピークは少なくとも右側のスキャンで支持される;このピークは、モノグリセリドPn3m相で常に(110)及び(111)ピークよりも強度がずっと低く測定され、Pn3m相一般では、これが理論的振幅計算と一致することが見出されている〔P.ストロームとD.M.アンダーソン(1992年)、ラングミュア、8:691〕。(211)ピークは左側のスキャンのデータにより、(221)は右側のスキャンのデータにより、それそれ支持される。(211)と(222)との間にピークが存在しないか又は低強度であるのは、分散液中のnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相の濃度が低い(10%)ためである。回折されたX線の強度は体積濃度の自乗として変化するからである。これにもかかわらず、(110)及び(222)位置の明らかなピーク並びに推論された格子及び格子パラメータと文献の関連系との完全な一致は、SAXSデータが粒子内部でのnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相の秩序を証明しているという結論を強く支持するものである。
これらの粒子は、例えば、口腔洗浄時の防腐薬の徐放において有用であろう。そこでは、僅かに低いpH(5近傍)での2つの被膜の溶解度が細菌活動部位への優先的送達に最も適した範囲にある。
【0196】
実施例34
2つの分散液、一方は剛性の被膜(フェロシアン化銅)を持つように選んだもの、他方は、本質的には、それよりも剛性の被膜の圧力下での放出を定量するための対照として役立つものである、軟らかく、容易に破壊される被膜、の剪断及び圧力下での一体性(完全性)を描写するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。還元すれば、2つの分散液中のマーカーの濃度がほぼ同じであり、剛性系のマーカーの放出が小さく、例えば軟らかい系でのマーカーの放出のx%(xは100より実質的に小さい)であれば、剛性系の粒子のx%のみが圧力下に崩壊し、残余(100−x)%はHPLCの間無傷のままであると結論できよう。(実際には、百分率100−xが下限である。対照中の軟らかい粒子のある一部が実際に無傷で残っていることが見出されたならば、無傷の剛性粒子の実際の百分率はより高く計算されるであろう。もっともこの可能性は僅かである。いずれにしても、対照粒子は全て崩壊すると仮定して、計算は最悪の場合の筋書きによっていると想定した。)
分散液の調製:実施例34A:大豆レシチン0.499g、オレイルアルコール0.163g、グリセリン0.900g及びカプサイシン0.124gを混合して、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。この系からのnmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質0.842gに、コール酸ナトリウム0.043gを加えた。pH5の燐酸緩衝液3.00gに1滴の1M−HClを加えて、上位溶液を調製した。上位溶液を液晶物質に重層し、試験管をシールし、超音波処理して、ミクロ粒子の乳白色分散液を得た。
実施例34B:大豆レシチン0.329g、オレイルアルコール0.108g、グリセリン0.611g及びカプサイシン0.105gを混合して、nmオーダー構造の逆二重連続性立方晶相物質を調製した。これに0.046gの硫酸銅を加えた。2.54gの水に0.563gの10%フェロシアン化カリウム溶液を加えて、上位溶液を調製した。上位溶液を液晶の上に重層し、試験管をシールし、超音波処理して、フェロシアン化銅で被覆されたミクロ粒子の乳白色分散液を得た。
2つの試料でのマーカー、即ちカプサイシンの濃度は比較可能であった。フェロシアン化銅分散液中での最終濃度は2.44%であり、これに対して実施例34Bでは3.19%で、30%の差があった。これを後記の計算で説明する。
次に、精製カプサイシンをHPLCにかけたところ、溶出時間は22分であることが判明した(データは示さない)、これらの同じ条件のもとで、上で調製した2つの分散液を分析した。実施例34Bの粒子についてのデータを図7に、フエロシアン化銅についてのそれを図8に示す。表1及び2は、HPLCコンピュータから出力されたそれぞれ図7及び8に相当する積分ピークを示す;試料採取割合は5Hzであった。
【0197】
図7では、明らかに、溶出時間22分に強いピークがあり(コンピュータのピーク番号13)、表1はこのピークの積分強度を3,939,401であると示している。図8では、そりより小さいピークが見られ(コンピュータのピーク番号10)、表2は強度を304,929としている。
これらの積分ピーク値を、2つの試料中のカプサイシン濃度に従って正規化すれば、即ち実施例34Bについては3,939,401/0.0319、フェロシアン化銅の場合については304,929/0.0244とすれば、実施例34Bの場合に対するフェロシアン化銅の場合の正規化ピーク強度の比は0.101である。即ち、フェロシアン化銅粒子の多くとも10.1%がHPLC条件下でカプサイシンマーカーを放出したことになる。
【0198】
これらの粒子が有する被膜は水溶性の低い無機物であり、そのことがそれら粒子を、水での単なる希釈による放出に対して同時に保護しながら、強い剪断による粒子被膜の放出が要求される用途において、潜在的に有用ならしめる。かかる応用の一例は、カプサイシンなどの囓歯類忌避剤又は囓歯類に対する毒素をカプセル化し、それら粒子を電線、段ボール箱、その他囓歯類により噛まれるのに対して保護の要する製品に浸漬し、囓歯類が噛むと、活性な忌避剤又は毒素の放出が誘発されるという場合であろう。低い水溶性は、湿潤条件により忌避剤が早期放出されるのを防止するであろう。
【0199】
表1:カプサイシンを含む実施例34Bの粒子のHPLC分析に関する図7に相当する積分ピーク強度。ピーク#13が主カプサイシンピークである。
ピーク 面積
1 2914
2 8096
3 2848
4 29466
5 11304
6 2254
7 12871
8 4955
9 124833
10 113828
11 19334
12 7302
13 3939401
14 39153
15 255278
16 755868
17 53623
18 19395
19 4899
20 10519
21 5102
22 1481
23 344230
24 9971
25 194442
26 89831
27 80603
28 105163
29 186224
30 194020
31 36805
32 2115
33 23296
34 4327
35 5166
36 90236
37 62606
38 44523
39 110347
40 4391
41 1275597
42 1353000
43 238187
【0200】
表2:カプサイシンを含有するフェロシアン化銅被覆粒子のHPLC分析に関する図8に相当する積分ピーク強度。ピーク#10が主カプサイシンピークである。
ピーク 面積
1 1681172
2 3011240
3 106006
4 2760
5 59059
6 38727
7 163539
8 44134
9 6757
10 304929
11 10466
12 141800
13 332742
14 14442
15 6996
16 15008
17 11940
19 91446
20 250214
21 251902
22 203000
23 44658
24 110901
25 24296
26 19633
27 25527
28 15593
29 75442
30 40245
31 421437
【0201】
実施例35
0.77gの大豆レシチン(エピクロン200、ルーカス=マイヤーから人手)、0.285gのオレイルアルコール及び0.84gのグリセリンからnmオーダー構造の立方晶相液晶を調製し、これに0.11gの塩化第二金を加えた。この混合物の平衡化に当たって加熱は用いず、へらによる機械的混合のみを用いた。この混合物の0.595g量を取り出し、試験管の内面の下半分に塗り付けた。0.14gの塩化第一鉄と0.04gのプルロニックF−68とを1.74gの蒸留水に溶解させて、上位溶液を調製した。上位溶液を重層したのち、立方晶相入りの試験管を超音波処理して、金被膜で被覆されたミクロ粒子の分散液を得た。この第一の試料と共に、F−68を含有しているが、塩化第一鉄を含有しない上位溶液を用いた対照試料を超音波処理したが、ミクロ粒子の分散液とはならなかった。塩化第一鉄と塩化第二金との反応は、非層状性結晶性の元素状の金を沈殿させるので、第一の試料の場合には、金で被覆され、立方晶相の内部を有するミクロ粒子が製出された。
次に、グリセリン0.62gを水0.205gと混合して、密度約1.2g/ccのグリセリン−水混合物を調製し、約0.1gの前記分散液をこれに加え、新しい分散液を遠心分離した。3時間の遠心分離ののち、この試験管の底に相当量のミクロ粒子を分離することができ、これらの粒子の密度が1.2よりも有意に高いことが示された;これは金被膜が存在するためである。立方晶相の密度は1.2未満だからである。実際、超音波処理の間に分散されなかった立方晶相部分をもとの分散液から低密度バンドとして遠心分離することができ、この液体がもとの分散液よりもさらに低密度であることが示された。
金は化学的不活性並びに極めて薄いフィルムの形態での良好な機械的性質を示すことが周知であるから、かつ、金は多くの投与経路についてFDAにより承認されているから、金被覆粒子は、化学的及び物理的被覆を必要とする安全で、環境に優しい製品に有用でありえよう。更に、かかる粒子は、他のコロイド形態よりもずっと大きい金表面積をもたらすことにより、関節炎の治療に有効でありえよう。
【0202】
実施例36
パクリタクセル0.045g、オイゲノール0.57g、大豆レシチン(エピクロン200)0.615g、グリセリン0.33g及び硝酸第二銅0.06gをメタノール0.61gを用いて溶解させ、次に蒸発皿で攪拌しながらメタノールを蒸発させて、抗腫瘍薬パクリタクセルを含有するnmオーダー構造の液相を調製した。0.09gの沃化カリウム、0.05gのプルロニックF−68、0.44gの水及び1.96gのグリセリンを溶解させて、グリセリンに富む上位溶液を調製した。上位溶液を重層後、系を超音波処理した結果、パクリタクセルを含有するnmオーダー構造の液相が分散して、結晶性沃素で被覆されたミクロ粒子が生じた。これらの成分は、医薬製剤中の安全で、不活性(パクリタクセル自体は除いて)な賦形剤として一般的に許容されているために選択したので、この処方またはその変形は、癌治療のためのパクリタクセルの送達において重要でありえよう。粒子内部へのパクリタクセルの充填量は極めて高く、3重量%オーダーで、この場合、それは余りに高く、各粒子の内部にパクリタクセルの若干が沈殿しうる程であった。この高い充填率ではこの立方晶相へのパクリタクセルの可溶化は準安定であったからである。しかし、検討の結果は、沈殿は極めて緩徐で、かかる充填率で数時間、或いは数日間を要し、粒子製造の間はパクリタクセルの実質的に全てが溶解したままであることを示している;その後は、パクリタクセルが被覆粒子内部に閉じ込められたために、大きい結晶(1ミクロンより大きい)の生成が阻止される。この系のパクリタクセル濃度を内部の0.7%以下に低下させれば、パクリタクセルの可溶化は真の可溶化(熱力学的平衡)となり、沈殿は完全に防止され、非層状性結晶性沃素で被覆された本発明のミクロ粒子を本実施例で記載した通りにして製造できる。かくして、この系は、癌治療のためのパクリタクセル送達のいくつかのシナリオを提供する。
【0203】
実施例37
大豆レシチン(エピクロン200)0.345g、アニソール0.357g、水0.26g及びパクリタクセル0.02g(LKTラボラトリーズから入手)を混合してパクリタクセル含有立方晶系液晶を調製した;混合物の入った試験管を、激しく攪拌したのち、沸騰水中に1分間つけ、次に室温まで冷却することにより、平衡化を加速した。被膜材料を得るために、没食子酸プロピル0.07gを加えて、攪拌し、試験管を再度沸騰水中に入れた。没食子酸プロピルは室温ではこの液晶相にあまり溶解しないが、100℃では溶解度が実質的に増大することは先にチェックずみであった。上位溶液は、2%プルロニックF−68溶液2.25gからなっていた。立方晶相−没食子酸プロピル混合物を100℃に加熱し、約80℃に冷却し、この高昇温度でへらで攪拌し、100℃に再加熱した。混合物を約30秒間冷却後、上位溶液をこの混合物に重層し、試験管を超音波装置浴中に1時間置いた。内部にパクリタクセルを含有し、没食子酸プロピルで被覆されたミクロ粒子の分散液が得られた。この分散液は極めて微細なミクロ粒子(推定直径は0.4μm未満)を高濃度に含有していた、それらの粒子は、ブラウン運動のおかげで1000倍の光学顕微鏡で観測可能であった。全体の粒度分布はかなり広く、1〜2μmの粒子もあった。針状結晶の形で沈殿したパクリタクセルはごく少量しか認められなかったので、それの殆ど全てがミクロ粒子の内部にあるに違いなかった。この実施例でのパクリタクセル濃度は、可溶化が先の実施例で述べた意味で準安定であるのに充分なだけ高かった。これらの粒子の内部の抗腫瘍薬パクリタクセルの濃度は約2%であり、処方の成分がFDA承認経口送達用不活性賦形剤のリストに(それらの殆ど全ては注射用のリストにも)あるので、この処方は癌治療のための薬物送達処方として極めて重要である。
【0204】
実施例38
両親媒性ポリエチレンオキシドーポリプロピレンオキシドブロックコポリマープルロニックF−68(ポロキサマー188とも呼ばれる)の1.655g量をオイゲノール0.705g及び水2.06gと混合した。遠心分離したところ、2つの相が生じた。下相はnmオーダー構造の液相であり、上相はnmオーダー構造の立方晶相であった。液晶相の0.68gを取り出し、これに沃化ナトリウム0.05gを加えた。下相の2.48gにオイゲノール1滴を加えて、低粘度を確認し、このnmオーダー構造の液相に硝酸銀0.14gを加えて、液晶相を分散させるための「上位溶液」とした。即ち、この液相を沃化物含有液晶相の上に重層し、混合物を1.5時間超音波処理した。結果は、nmオーダー構造の液相からなる外部媒質中の沃化銀被覆粒子の分散液であった。
この実施例は、ブロックコポリマーベースのnmオーダー構造の液晶相が本発明粒子の内部マトリックスとして有用であることを説明している。この場合、水は、ブロックコポリマーのポリエチレンオキシドブロックのための優先的溶媒として、オイゲノールはブロックコポリマーのポリプロピレンオキシドブロック(水に不溶性)のための優先的溶媒として使用した。
この実施例は、上記の一般的アプローチの使用、即ち、内部相中の部分Aと反応して結晶性被膜物質の沈殿を惹起する部分Bをもたらす「上位溶液」として役立つところの混合物としてnmオーダー構造の相を使用することをも例示している。この場合、Bは硝酸銀であり、これが、沃化ナトリウムを含有する内部マトリックスA(立方晶相)と接触するとき、沃化銀の析出を惹起する。上で述べた通り、一般に、この上位溶液は、それが内部マトリックスと平衡状態にあるように又は、この例におけるように、極めてそれに近いように(真の平衡からの唯一の差は、1滴、約0.01g又は0.5%以下のオイゲノールを上位溶液に添加したことによる)選択するのが望ましい。一般に、このアプローチにおけるように、内部マトリックスを、それが粘稠な物質であり、比較的低粘度のものであるべき上位溶液よりもずっと粘稠であるように選択することが有効である。
【0205】
本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の多くの修飾、変形を生じさせうることは明らかである。本発明は本明細書に記載した特定の構成、配列に限定されるものではなく、添付の請求の範囲に属するかかるそれの修飾形態をも包含することを了解されたい。本明細書に記載した特定の具体化態様はあくまでも例示のためであって、本発明は添付の請求の範囲によってのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、グリセリン、又は水/グリセリン混合物と、
麻酔薬と、
弗素系界面活性剤、アルカン鎖とエーテル結合するPEG頭部基を有する非イオン界面活性剤、アルキルフェノールエトキシレート、アルキルアミンエトキシレート、エトキシ化アルコール、ポリマー鎖を有する界面活性剤、ペプチドベースの界面活性剤、イソプレノイド類、プラスモロゲン類、セレブロシド類、スルファチド類、ガングリオシド類、シクトペンタトリオール脂質類、ジメチルアミノプロパン脂質類、リゾ脂質類、リゾレシチン類、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性又は半極性界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、デオキシコール酸ナトリウム、塩化ミリスチル−ガンマ−ピコリニウム、ポリオキシル35ヒマシ油、ソルビタンモノパルミテート、及び2−エチルヘキサン酸ナトリウムからなる群から選ばれた界面活性剤又は脂質と
を備えた逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項2】
前記アニオン性界面活性剤が、オレイン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、スルホコハク酸ジメチルヘキシルナトリウム、ジ-2-エチル酢酸ナトリウム、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム、ウンデカン−3−硫酸ナトリウム、エチルフェニルウンデカン酸ナトリウム、ICn型(鎖長nは8〜20の間、Iはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどの1価対イオン)のカルボン酸石鹸からなる群から選ばれる請求項1に記載の逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項3】
前記カチオン性界面活性剤が、塩化ミリスチル−ガンマ−ピコリニウム及び安息香酸ベンザルコニウムからなる群から選ばれる請求項1に記載の逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項4】
水、グリセリン、又は水/グリセリン混合物と、
麻酔薬と、
燐脂質と
を備えた逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項5】
前記麻酔薬が疎水性物質である、請求項1〜4のいずれかに記載の逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項6】
前記麻酔薬が局所麻酔薬である、請求項1〜4のいずれかに記載の逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項7】
前記麻酔薬がオイゲノールである、請求項1〜4のいずれかに記載の逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項8】
前記麻酔薬がリドカインである、請求項1〜4のいずれかに記載の逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項9】
バクテリアに結合する糖脂質を含む立方晶液晶相物質。
【請求項10】
前記糖脂質が、スフィンゴ脂質類、ゲンチオビオシル類(gentiobiosyls)、セラミド類、セレブロシド類、スルファチド類及びガングリオシド類からなる群から選ばれる請求項9に記載の立方晶液晶相物質。
【請求項11】
前記逆立方晶相物質又は逆六方晶相物質が、逆立方晶相物質である請求項1〜4のいずれかに記載の逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項12】
前記逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質が安定化粒子に形成された、請求項1〜4、9のいずれかに記載の逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項13】
前記安定化粒子が被覆剤によって被覆された、請求項12に記載の逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項14】
前記被覆剤が、非層状である請求項13に記載の逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項15】
前記被覆剤が、層状である請求項13に記載の逆立方晶相物質、又は逆六方晶相物質。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれかに記載の被覆粒子の水性分散液。

【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−242423(P2009−242423A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164832(P2009−164832)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【分割の表示】特願平11−515708の分割
【原出願日】平成10年9月8日(1998.9.8)
【出願人】(503195241)
【Fターム(参考)】