説明

被覆粒状肥料およびその製造方法

【課題】耐水性が大きく高吸水性樹脂を添加することで適度な崩壊性を付与したひまし油由来ウレタン樹脂を被覆した粒状肥料について、より一層肥料成分の溶出時期、及び溶出速度を適切に調節できる被覆粒状肥料を提供し、併せて、被膜の生分解性が高く生物科学的酸素要求量(BOD)の高い環境にやさしい被覆粒状肥料を提供する。
【解決手段】粒状肥料の外部が、粒径1〜100μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスを含んでなる少なくとも1層の被膜で被覆された被覆粒状肥料であって、ワックスが融点40〜100℃の石油ワックスであり、好ましくはワックスの質量が被膜の全質量の10〜45%である被覆粒状肥料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性に優れた被膜で被覆された肥効調節機能を有する粒状肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粒状肥料の肥料溶出成分の流亡による環境への影響、農業就労者の高年齢化に伴う省力化等の面から、より省力型で施肥効率の高い肥料並びにその施肥法が要求されている。このような背景のもとに、種々の肥効調節型肥料が提案され、実用化されている。
【0003】
これは、粒状肥料の表面を有機系あるいは無機系の被覆資材を用いて被覆することにより内部の肥料成分の溶出を制御した肥料である。中でも樹脂等の有機系の被覆資材を用いた被覆肥料は溶出制御機能がより優れており、この様な型が被覆肥料の主流を占めている。
【0004】
樹脂として各種のものが使用されているが、ウレタン樹脂は被膜の強度、耐水性の大きいこと、溶出特性の制御の容易さ、溶剤を使用しないで塗布することができるなどの理由から広く用いられている。ウレタン樹脂は三次元構造をもつ硬化樹脂であり耐水性が非常に大きく強靭な被膜となるが、そのことで却って水による崩壊が起こりにくく肥料を早期に溶出させるタイプの被覆粒状肥料では必要な膜厚が薄くなり均一性に問題が生じる。これに対しては、ウレタン樹脂にアクリル酸塩系重合体、澱粉、イソブチレン・マレイン酸塩系重合体などの高吸水性樹脂を添加することで、肥料成分の溶出時期および溶出速度が適度に調節されることが特許文献1に記載されている。
【0005】
一方、他の樹脂において広く知られているのと同様にウレタン樹脂でもワックスを添加することで、溶出時期を遅延させ得ることが特許文献2(特開2000−44377号公報)に記載されている。
また、樹脂等を用いた被覆肥料は、肥料成分の溶出後に樹脂被膜が土壌中に残留し、その分解には相当の長時間を要し、かつ、生物化学的酸素要求量(BOD)が低く環境に負荷を掛けることがある。
【特許文献1】特開平10−291881号公報
【特許文献2】特開2000−44377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐水性が高く高吸水性樹脂を添加することで適度な崩壊性を付与した耐水性の高いウレタン樹脂を被覆したウレタン被覆粒状肥料について、より一層肥料成分の溶出時期、溶出速度などからなる溶出特性を適切に調節できる被覆粒状肥料を提供することを目的とする。併せて、被膜の生分解性が高く生物化学的酸素要求量(BOD)の高いことから環境にやさしい被覆粒状肥料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、高吸水性樹脂の微粒子を含むウレタン樹脂を被膜する被覆粒状肥料について、肥料成分の溶出時期及び溶出速度を適切に調節するのに必要な溶出特性を検討したところ、ワックス類は従来ウレタン樹脂被膜において溶出時期の遅延を目的として使用されてきたにも拘わらず、特定の成分から製造されたウレタン樹脂と高吸水性樹脂に特定のワックスを添加したウレタン樹脂を被覆した粒状肥料は、意外にも、溶出時期の遅延は起こらず、溶出速度を適切に調節した溶出パターンを設定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
従来、特開2000−44377号公報、特開平2003−104787号公報などに開示されているように、疎水性物質であるワックス類は肥料の溶出遅延を目的としてウレタン樹脂に添加され、または、多層被覆膜の一部の層に使用されてきた。ウレタン樹脂被覆の粒状肥料は、ウレタン樹脂が水と接触してウレタンの解重合が起こって被膜が崩壊し、内部の肥料が外部へ溶出すると考えられるため、疎水性物質を添加等して被膜に疎水性を持たせればウレタン樹脂と水との接触が妨げられ被膜の崩壊が抑制され、溶出時期の遅延が起こると推測された。
【0009】
しかしながら、本発明では、特定のウレタン樹脂組成物において、疎水性物質であるワックスを添加することで却って溶出時期の短縮化と溶出速度を適切に調節した溶出パターンを達成できたものである。
[1]粒状肥料の外部が、粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスを含んでなる少なくとも1層の被膜で被覆された被覆粒状肥料であって、ワックスが融点40〜100℃の石油ワックスであり、ワックスの質量が被膜の全質量の10〜45%である被覆粒状肥料。
[2]ワックスがパラフィンワックスである[1]の被覆粒状肥料。
[3]さらに、高吸水性樹脂の粒子を含まない少なくとも1層の被膜で被覆された[1]または[2]の被覆粒状肥料。
[4]さらに、ワックスを含まない少なくとも1層の被膜で被覆された[1]〜[3]の被覆粒状肥料。
[5]ウレタン樹脂が、芳香族ポリイソシアネートとひまし油またはひまし油誘導体ポリオールをアミン化合物で硬化させて得られたウレタン樹脂である[1]〜[4]の被覆粒状肥料。
[6]最外層がワックスを含まない被膜である[1]〜[5]の被覆粒状肥料。
[7]粒状肥料が、尿素、塩安、硫安、硝安、塩化カリ、硫酸カリ、硝酸カリ、硝酸ソーダ、燐酸カリ、燐酸アンモニア、燐酸石灰またはこれらから選ばれた二種以上からなる複合肥料、または有機肥料である[1]〜[6]の被覆粒状肥料。
[8]流動状態または転動状態にある粒状肥料に、(a)芳香族ポリイソシアネートとひまし油またはひまし油誘導体ポリオールとから得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、(b)粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子を含むひまし油またはひまし油誘導体ポリオールとアミン系ポリオールとワックスからなるポリオール成分を塗布し、硬化させてウレタン樹脂被膜で被覆することからなる[1]〜[7]の被覆粒状肥料の製造方法。
[9]ポリオール成分および粒状肥料をワックスの融点以上の温度として、塗布し、硬化させてウレタン樹脂被膜で被覆することからなる[8]の被覆粒状肥料の製造方法。
【0010】
ここで、「外部」とは被覆粒状肥料において粒状肥料表面に接する部分を含めて粒状肥料以外の部分をいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明の被覆粒状肥料は、生物化学的酸素要求量(BOD)の高い環境にやさしい被覆粒状肥料でありながら、主としてウレタン樹脂と高吸水性樹脂からなる被膜にワックスを添加することで、ワックスを添加しない従来の被膜と比較して肥料の溶出時期を遅らせることなく、しかもシグモイド(S字)型の溶出パターンを設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の被覆粒状肥料は、粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスからなる少なくとも1層の被膜で被覆された被覆粒状肥料である。ワックスとしては、特に石油ワックスが好ましい。
【0013】
本発明にかかる被覆粒状肥料は、粒状肥料の外部にウレタン樹脂を含む被膜を有するが、被膜は全体が均一な一層であっても、複数の層からなっていてもよく、各層の組成、膜厚は異なっていてもよい。本明細書においては、粒状肥料の外部に形成された肥料以外の部分全体を被膜というが、複数層からなる各層をも被膜と称する場合がある。本発明にかかる粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスからなる被膜は、肥料粒子にウレタン樹脂を被覆してなる被覆肥料が複数の層からなる被膜を有する場合においては、最外層、最内層(肥料の表面に接する層)またはそれら以外の中間層の何れに位置する層であってもよい。その際、粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスからなる少なくとも1層の被膜以外の他の層の成分構成としては、粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂からなる層、ウレタン樹脂とワックスからなる層、高吸水性樹脂を含まないウレタン樹脂からなる層、またはワックスのみからなる層であることができる。これらのうち、高吸水性樹脂とワックスのいずれをも含まないウレタン樹脂層に代えては、他の樹脂を使用することができ、例えば、ひまし油以外のポリオールから誘導されたウレタン樹脂、ポリエチレンまたはアルキド樹脂などの樹脂を使用することもできる。
【0014】
本発明にかかる粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスからなる被膜および前記他の層の膜厚は、特に限定されないが、1〜50μmとなるように調節され、2〜25μmであるのが好ましい。1μm未満では、被覆回数が多くなり操作的に非効率であり好ましくない。膜厚が50μmを超えると被覆操作中に未硬化状態のウレタン樹脂の粘度が高くなり粒子同士の固着が起こって凝集粒子として被覆されるのでこれをほぐした場合には不均一な膜が付着することになり好ましくない。
【0015】
本発明の被覆粒状肥料は、前記した各成分からなる被膜をそれぞれ複数含むことができ、全膜厚は20〜200μmであるが、1〜5mm程度の肥料粒子に対しては、通常、被覆粒状肥料の質量の1〜30質量%であり、3〜20質量%であるのが好ましく、3〜15質量%であるのがさらに好ましい。この被膜の厚さによって肥料成分の溶出特性の調節を適宜行うことができる。
【0016】
本発明にかかるウレタン樹脂のポリオール成分としては、ひまし油、ひまし油誘導体などまたはそれらのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加物が挙げられる。ひまし油誘導体としては、ひまし油の一部加水分解物、ひまし油のエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールプリパン、またはポリエーテルポリオールとのエステル交換体、またはリシノール酸と上述のポリオール類とのエステル化ポリオール類を挙げることができる。これらのなかで、ひまし油をエチレングリコールまたはプロピレングリコールでエステル交換した誘導体が好ましく使用される。
【0017】
本発明では、これらのひまし油またはひまし油誘導体のうち25℃における粘度が1500mPa・s以下のものが製造時の作業性と被膜の均一性の点から好適に用いられる。また、水酸基価が10〜400mgKOH/gの範囲のものが好ましく、これよりも水酸基価が小さい場合には被膜の粘着性が高すぎて被覆肥料が団粒化するため不適であり、これよりも水酸基価が大きい場合には被膜に欠陥が発生しやすくなり充分な肥効調節性が得られない。ひまし油は元来水酸基価が適度に大きく(水酸基価=約160mgKOH/g)、かつ適当な粘度(約700mPa・s)であって、本被覆肥料の好適な原料として用いられる。
【0018】
本発明にかかるポリイソシアネートは、特に限定されないが、芳香族系のポリイソシアネートが好ましい。具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等、あるいはこれらの変性体、例えば、ウレア変性体、二量体、三量体、カルボジイミド体、アロハネート変性体、ビュレット変性体などが挙げられる。これらは2種類以上を併せて使用することができ、また、工業的に使用されるいわゆる「粗製」ポリイソシアネートであってもよい。上記のうちMDI、粗製MDI、カルボジイミド化MDI(液状MDI)、TDI、粗製TDIなどが特に好ましい。
【0019】
また、本発明にかかるポリイソシアネートは、上記のポリイソシアネートから調製されたイソシアネート基末端プレポリマーとして使用することは好ましい。かかるイソシアネート基末端プレポリマーを調製するのに使用するポリオールは上記のひまし油またはひまし油誘導体である。イソシアネート基末端プレポリマーを調製する方法は、公知の方法でよく、ポリイソシアネートとポリオ−ルとのNCO基/活性水素基の当量比を、1.1〜50.0、好ましくは1.2〜25.0として、30〜130℃、好ましくは40〜90℃で1〜5時間反応を行うことにより得られる。
【0020】
本発明にかかるイソシアネート基末端プレポリマーはさらに変性されたものも使用できる。このような変性体は、ポリイソシアネートにポリオールをNCO基/活性水素基の当量比5.0以上、好ましくは8〜25、更に好ましくは10〜20で、ポリイソシアネートの全NCO基の15モル%以下、好ましくは2〜15モル%、更に好ましくは4〜9モル%に相当するポリオールを用い、ウレタン結合と触媒を用いて得られるウレトンイミン及びカルボジイミド基を含有する変性体である。この様なポリイソシアネートとしては、MDI、具体的には4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の単独または任意の混合物或いはポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート等が用いられる。MDIのウレトンイミン及びカルボジイミド基を含有する変性体を得るための触媒としては、3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキサイド、3−メチル−1−エチル−3−ホスホレン−1−オキサイド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキサイド等のホスホレン系触媒がある。このような触媒は、MDIに対して1〜300ppmの量を使用する。
【0021】
このようなイソシアネート基末端プレポリマーからの変性体は、ポリイソシアネートとポリオールとを30〜130℃、好ましくは40〜90℃で1〜6時間反応することによりイソシアネート基末端プレポリマーを得た後、該プレポリマーに触媒を添加して、30〜130℃、好ましくは、60〜90℃で3〜5時間反応を行い、目標とするNCO残量となるまで反応させた後、不活性化剤を加えて反応を停止させウレトンイミン及びカルボジイミド基を含有する変性体を得る方法、または、ポリイソシアネートにポリオール及び触媒を添加して、30〜130℃、好ましくは、60〜90℃で3〜5時間反応を行い、不活性化剤を加えて反応を停止させウレトンイミン及びカルボジイミド基を含有する変性体を得る方法によって得られる。不活性化剤としては、トリクロルシラン、ジクロルジフェニルシラン、トリクロルモノメチルシラン等が用いられる。不活性化剤の使用量は、触媒の1〜10当量に相当する量を添加し反応を停止させる方法等により得ることができる。
【0022】
このような反応はまず、カルボジイミド基( N=C=N )が形成されるが、常温で一定時間放置することによりウレトンイミンへ変換される。この反応は可逆反応であり高温下(通常80℃以上)でウレトンイミン基はカルボジイミド基とNCO基に解離することが知られている。
【0023】
従って、カルボジイミド基/ウレトンイミン基の存在比率が異なり、常温放置したときは、ほとんどウレトンイミン基として存在している。本発明に使用できるものは、ウレトンイミンへの変換が完結されていなくても良く、一部カルボジイミド基が存在していても良い。また、逆に高温保存でカルボジイミド基の形で存在しているもの、一部ウレトンイミンが存在しているものも使用することができる。MDIの変性体中のウレトンイミンとカルボジイミド変性体の量は、MDI100質量部に対して20〜60質量部、好ましくは30〜50質量部である。 このようにして得られるMDIをイソシアネート基末端プレポリマーとして使用することにより、MDI単独よりも他の成分との相溶性が良くなり、利用時の反応性を促進したり、粘度を作業性のし易いものに調節し、接着強さを向上させる等の効果がある。
【0024】
本発明にかかるアミン化合物としては、アルキルアミン類またはアミン系ポリオールが用いられる。アルキルアミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルイソプロピルアミンなどが挙げられる。また、アミン化合物としてはアミン系ポリオールが好ましく、その様なアミン系ポリオールとしては、ジ−、トリ−、エタノ−ルアミン、N−メチル−N,N´−ジエタノールアミン等の低分子アミン系ポリオ−ル、あるいはエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミンのようなアミノ化合物にプロピレンオキサイド(PO)またはエチレンオキサイド(EO)等のアルキレンオキサイドを付加したアミン系ポリオールである。付加の比率はとくに限定されないが、窒素原子1個に対しアルキレンオキサイド1〜200、好ましくは1〜50であるが、2〜2.4程度のものが被膜の親水性に関する物性の調節のためには特に好ましい。その様なものとして、例えば、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]−1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。特に好ましいものは、反応性と物性が良好となることから、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン,及び、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]エチレンジアミンまたはそれらを主成分とするオキシプロピレン化エチレンジアミン、オキシエチレン化エチレンジアミンである。
【0025】
本発明において、ポリオール成分としてアミン系ポリオールを用いた場合には、樹脂組成物との良好な相溶性が得られ、均一な被膜が容易に形成されることから好ましく用いられる。アミン系ポリオールは反応を促進すると共に架橋剤および鎖延長剤としても働き、良好な硬化性と強靭な被膜物性が得られる。
【0026】
アミン系ポリオールの使用量は、通常、ウレタン樹脂質量の0.01〜30%、好ましくは0.1〜20%、より好ましくは1〜15%の範囲で用いて硬化速度を調整することが可能である。0.01%未満では硬化不十分で耐水性が悪く、十分な肥効調節性が得られない。また、30%を越えて使用した場合には、架橋反応が速すぎて均一な被膜が形成できないので好ましくない。
【0027】
本発明においては、ウレタン結合生成を促進するために、さらに触媒を添加してもよく、ジブチルスズラウレート、オクテン酸鉛などの有機金属触媒が使用できる。
本発明で用いられるポリオール成分とイソシアネート成分の全量に含まれる水酸基とイソシアネート基の割合が、水酸基/イソシアネート基の比率として0.5〜2.0の範囲になるようにするのが好ましい。この比率が0.5未満または2.0を越える場合には得られる被膜の架橋が充分ではなく、肥料の溶出速度が速すぎる欠点を生じるので好ましくない。
【0028】
さらに、被覆粒状肥料の樹脂被膜中に未反応のイソシアネート基を残さず、また被膜に柔軟性を付与する目的で、水酸基とイソシアネート基の割合をヒドロキシ基/イソシアネート基の比率として1.1〜1.5の範囲で使用することも好適に採用される。
【0029】
また、ひまし油またはひまし油誘導体の一部を、分子内に共役ジエン、共役トリエン、共役テトラエン等の共役二重結合を有する植物油脂または植物油脂の変性物で替え、共役二重結合による補助架橋で被膜の柔軟性および強度を調節することも可能であり、好ましく採用される。共役二重結合を有する植物油脂または植物油脂の変性物の例としては、桐油、脱水ひまし油、共役化大豆油、共役化アマニ油またはこれらの加水分解物、カルボン酸またはアルコールとのエステル交換反応生成物等が挙げられる。
【0030】
本発明に係る高吸水性物質は、水を多量に吸収することで乾燥体積の5倍以上に膨潤する物質である。特に吸水時に溶解性を余り示さずゲル状になるものが好ましい。具体的には例えば、アクリル酸塩系重合体(例えば、住友化学工業(株)製スミカゲルS、L、Rタイプ、住友精化(株)製のアクアキープ10SH、10SHP、10SH−NF(20)、SA60NTYPE2、積水化成品工業(株)製のアクアメイトAQ−200、AQ−200B−02、三洋化成工業(株)製のサンフレッシュST−250MPS、ST−500MPSA)、イソブチレン系重合体(例えば、(株)クラレ製のKIゲル−201K、KIゲル−201K−F2、KIゲル溶液システム、KIゲルコンパウンド)、アクリル酸・ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド変性樹脂、澱粉グラフト重合体、澱粉(例えば、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、甘藷澱粉、可溶性澱粉)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMC金属塩およびベントナイトが挙げられる。これらの内、アクリル酸塩系重合体、イソブチレン系重合体、澱粉が好ましく、アクリル酸塩系重合体が特に好ましい。
【0031】
本発明にかかる高吸水性物質の粒径は、1〜200μmであり、5〜100μmが好ましく、20〜70μmがより好ましい。1μm未満では無添加樹脂に比較して高吸水性物質を加えたことによる溶出時期、溶出速度の変化が小さすぎ、これをもって溶出特性の調節を行うには効果的でない。また、200μmを超えると均一性のよいウレタン樹脂被膜が形成できず、被膜に欠陥を生じやすく好ましくない。
【0032】
高吸水性物質の添加量はその粒径により異なるが、通常ウレタン樹脂と高吸水性物質の合計質量の1〜50質量%であり、2〜20質量%が好ましく、3〜15質量%であることがさらに好ましい。1質量%未満では無添加樹脂に比較して高吸水性物質を加えたことによる溶出時期、溶出速度の変化が小さすぎ、これをもって溶出特性の調節を行うには効果的でない。また、50質量%を超えると親水性が大きくなり溶出開始時期の調節が困難となる。
【0033】
ワックスの種類については、ワックスと樹脂との相溶性、結合性、間隙部への浸入性およびワックス自体の耐水性、さらに、ワックスと高吸水性樹脂の組み合わせによる肥料溶出特性で決定される。ワックスとしては、石油ワックス、ポリオレフィン系ワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖脂肪酸またはそのエステルが使用される。これらのうち、石油系ワックスが、溶出時期の遅延が起こらず、溶出パターンの溶出速度を適切に調節することができるので石油ワックス好ましく、パラフィンワックスが特に好ましく用いられる。
【0034】
石油ワックスには、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス(マイクロワックス)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等が含まれる。パラフィンワックスは、減圧蒸留留出油から分離精製した直鎖状炭化水素から主としてなる常温において固形の融点40〜80℃の石油ワックスであり、マイクロクリスタリンワックスは主として原油の減圧蒸留残渣油部分から取り出されるワックスで、分岐状炭化水素や飽和脂環式炭化水素を多く含みパラフィンワックスと比べ分子量が大きく、常温において固形の融点60〜100℃の石油ワックスである。
【0035】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst Wax PE520、Hoechst Wax PE130、Hoechst Wax PE190(ヘキスト製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業(株)製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業(株)製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wax PED121、Hoechst Wax PED153、Hoechst Wax PED521、Hoechst Wax PED522、同Ceridust 3620 、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同 Ceridust3715 (ヘキスト製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業(株)製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業(株)製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechist Wachs PP230(ヘキスト製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業(株)製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、およびビスコールTS−200(三洋化成工業(株)製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスが例示される。
【0036】
ワックスとしては、軟化点が40℃から150℃の範囲のもの、好ましくは軟化点が50℃から110℃の範囲のものを用いる。軟化点が40℃以下の場合は、屋外貯蔵時等においてワックスが融解し溶出性能を損ない、また、固結を生起する恐れがある。軟化点が150℃以上の場合は、被膜形成時にウレタン樹脂に混入させるのに高温を要するので樹脂の安定性が妨げられ、また、熱収縮等により均厚化が阻害され、目的の溶出性能のものを得ることが困難となる。
【0037】
これらのうち、石油ワックスはポリオールへの分散性にすぐれるので好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。石油ワックスのうち融点40〜100℃のものが好ましい。
【0038】
また、パラフィンワックスのうちでも融点40〜70℃のものが特に好ましく、融点50〜60℃のものがより好ましい。融点40〜70℃のパラフィンワックスは、ポリオールへの分散性にすぐれ、得られる被膜の強度が大きく溶出パターンがシグモイド型になるので好ましい。
【0039】
ワックスの効果としては、ポリオール成分とポリイソシアネート成分が反応する際に非反応成分であるワックスが一種の空隙として作用し、ウレタン樹脂本来の三次元構造が疎になり、その空隙への水の浸透が容易になりウレタン樹脂の耐水性を変化させる原因となることにあると推測される。また、肥料の溶出のパターンは、ワックスの添加率およびワックスの種類により、空隙の大きさ、密度が変化することによっても制御することができる。
【0040】
被覆粒状肥料が単層または複数の被膜を有する場合において、ワックスの添加量は、ワックス添加各層ごとにその質量の0.001〜80質量%の範囲が好ましく、0.001〜60質量%が好ましく、0.001〜50質量%がより好ましい。0.001質量%未満では、ワックスを混合した効果が充分ではなく、80質量%を超えるときには、被膜形成時にウレタン樹脂成分とワックスの混合状態において著しく粘度が上昇し、均一な被膜形成が困難となり好ましくない。
【0041】
また、被覆粒状肥料が単層または複数の被膜を有する場合において、ワックスの添加量は、ワックスを添加しない層をも含んだ被膜全体としてその質量の0.001〜45質量%の範囲であり、10〜45質量%の範囲が好ましく、15〜45質量%がより好ましい。45質量%以下ではワックスの添加量を調節することにより肥料成分の溶出を調節することができるが、45質量%を超えると均一で強靭な被膜を形成することができず溶出パターンをシグモイド型とすることが困難であるので好ましくない。
【0042】
本発明にかかる被覆粒状肥料は、粒状肥料の外部に、粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスからなる被膜を有し、さらにその被膜の内部または外部に該ウレタン樹脂被覆組成物と異なる成分の被膜を有することができる。高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスからなる被膜はそれ自身複数回の塗布による層であってもよく、また、高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスからなる複数の被膜と、高吸水性物質の粒子またはワックスを含まないウレタン樹脂からなる複数の被膜を有していてもよい。それぞれのウレタン樹脂被覆組成物はその化学構造の異なるものであってもよい。高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスからなる被膜と、高吸水性物質の粒子またはワックスを含まないウレタン樹脂からなる層はどのような順序で積層されていても良い。
本発明にかかる被覆粒状肥料の好ましい層構成は、具体的には、(1)粒状肥料の表面が、粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスからなる被膜で被覆され、さらにその外部が該ウレタン樹脂と同一かまたは異なるウレタン樹脂からなる少なくとも1層の高吸水性物質の粒子を含まない被膜が被覆された被覆粒状肥料、(2)粒状肥料の表面が、ワックスを含まない高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂からなる被膜で被覆され、さらにその外部が粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子と該ウレタン樹脂と同一かまたは異なるウレタン樹脂からなる少なくとも1層の被膜が被覆された被覆粒状肥料、(3)粒状肥料の表面が、高吸水性物質の粒子を含まないウレタン樹脂からなる被膜で被覆され、さらにその外部が粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子と該ウレタン樹脂と同一かまたは異なるウレタン樹脂とワックスからなる少なくとも1層の被膜が被覆された被覆粒状肥料を挙げることができる。しかしながら、粒状肥料の最外層は高吸水性物質の粒子とワックスの何れをも含まない被膜またはワックスを含まないウレタン樹脂であることが好ましい。
【0043】
本発明において被覆される肥料は、粒状肥料であれば特に限定されない。その例としては、尿素、塩安、硫安、硝安、塩化カリ、硫酸カリ、硝酸カリ、硝酸ソーダ、燐酸カリ、燐酸アンモニア、燐酸石灰、またはこれらから選ばれた二種以上からなる複合肥料、および粒状の有機肥料等、通常の粒状肥料が挙げられる。
【0044】
また、実質的に本発明の被膜の性質を損なわない限り、被覆時の作業性の向上および肥効調節の補助的手段として、高吸水性物質以外にも被覆材組成物に有機系または無機系の添加材を加えることも可能である。添加材の例としては、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、脂肪酸エステル、ロジンおよびその誘導体、エステルガム、界面活性剤、石油樹脂、タルク、ケイソウ土、シリカ、尿素、イオウ粉末等が挙げられる。これらを本発明にかかるウレタン樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲で添加し、これらの種類および添加量によって作業性または肥料成分の溶出特性の調節を行うことも可能である。
本発明において粒状肥料に被膜を被覆する方法としては、被覆ができれば特に限定されないが、流動状態とした粒状肥料に被覆材を構成する成分を加えればよく、その際、被覆材を構成する成分はそれぞれ独立に粒状肥料に加えて被覆装置内で混合させてもよく、あるいは予め一部または全部の成分を混合してそれを粒状肥料に加えることもできる。高吸水性物質はアミン系ポリオールを含むかまたは含まないポリオール成分と予め混合・分散させて分散液を調製してそれをポリイソシアネート成分と混合した直後に粒状肥料に加えるか、または別々に被覆装置内の粒状肥料に加えるかすることができる。ワックスは、単独で加えることもできるが、ポリイソシアネート成分と予め混合して均一な液体として加えるのが好ましい。具体的には、例えば、流動または転動状態にある粒状肥料にワックスを含むポリオール成分、ポリイソシアネート成分、高吸水性物質およびアミン化合物からなる被覆材を添加して付着させ、これを熱風等で加熱することによって粒状肥料表面に硬化被膜を形成する方法をとることができる。粒状肥料の流動化には流動層または噴流層等の装置が使用でき、転動化には回転パンまたは回転ドラム等の装置が使用できる。
【0045】
ワックスはポリオール成分と予め混合して分散液として用いるのが取り扱いやすく好ましい。ポリオール成分とワックスは溶解しないので、ワックスの融点かそれより高い温度で混合し攪拌することで分散液を調製する。この温度は、融点より0〜50℃高い温度とし、0〜30℃が好ましく、0〜10℃がより好ましい。この温度が0℃未満では、ワックスは固体または半固体であるので実質的に分散液を調製できず、50℃を超えるとポリオール成分の分解や粘度の増加が見られ塗布操作が困難になることがあり好ましくない。調製の際の温度と塗布する際の粒状肥料の温度は実質的に同じ温度とするのが好ましいが、異なる温度をすることもでき、調製温度を粒状肥料の温度より高くすることもできる。この分散液は調製後保存して使用してもよいが、調整後直ちに使用することが好ましく、可能であれば塗布装置内への散布の直前に行うのが好ましい。
【0046】
被覆材の添加方法としては、効率よく分散添加できれば特に限定されず、噴霧、滴下に限らず実施することができるが、例えば圧縮空気を用いた二流体ノズルによって噴霧添加することによって良好な被膜を形成させることが可能である。
【0047】
被覆を硬化させるには通常室温(25℃程度)〜150℃、好ましくは40〜100℃程度で加熱を行うが、加熱時間、被覆材の組成比、粒状肥料の種類により適宜選定する。例えば、熱により分解ないし変質しやすい成分を含む粒状肥料の場合は、比較的低温で被覆することが必要であって、尿素の場合は90℃以下の温度で被覆することが好ましい。また、加熱時間は、加熱温度、触媒の種類、量により異なるが、通常、層ごとに1分〜2時間であり、2分〜1時間が好ましく、3〜30分がより好ましい。1分未満では急速な硬化となり均一な膜を塗布することが困難であり、2時間を超えると生産性が低下し好ましくない。
【0048】
本発明の被覆粒状肥料においては、肥料粒子間相互の固着を防止することを目的として、前記最外層表面を無機質粉末で処理することができる。無機粉末としては、例えばタルク、イオウ、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、ケイソウ土、クレー、金属酸化物が挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができるが、これらのうちタルクが取り扱いが容易であるので好ましい。
【0049】
無機質粉末は、樹脂に対して1〜15質量%用いることが好ましく、3〜10質量%であるのがより好ましい。1質量%未満では固着防止効果が弱く、15質量%を超えて使用しても被覆粒状肥料の表面に付着しないので無駄である。また、無機質粉末は、塗布工程でポリオール成分等のウレタン原料添加後に、粉末のままで転動又は流動状態にある粒状肥料に散布することが好ましい。さらに、無機質粉末はウレタン化反応が終了し、樹脂が硬化した後で且つ付着力を有する状態で散布するのが好ましい。この様にすると、無機質粉末が表面に留まり樹脂の中に入り込まないため、溶出も安定する。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を説明する。
[実施例1]
粒状尿素(粒径2.5〜4.0mm)1,000gを直径30cmのドラム型転動被覆装置に仕込み、30rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素温度を65℃に保持した。次に、3.5gの高吸水性樹脂(平均粒径25μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSA)と37.6gのひまし油(水酸基価160mgKOH/g)を混合したポリオール成分に65℃で6.8gのエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)と23.0gのパラフィンワックス(日本精蝋製 品名135 融点58℃)を添加した混合液と65℃に加熱した44.2gのMDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してNCO基の質量を全質量の19%としたイソシアネート基末端プレポリマー)を二流体ノズルから装置内に1時間かけて噴霧(塗布)した。噴霧後、65℃で30分間転動させ、粒状尿素上に被膜を形成させた。これを常温(約30℃)まで冷却し、目的の被覆粒状肥料を得た。次に、これらの被覆粒状肥料を縮分して被覆率((被膜質量/被覆粒状肥料の質量)×100)の測定、窒素の溶出試験及びBOD測定に供した。被覆率は10.0%であった。溶出試験は縮分した被覆肥料のうち一定量(10g)を採取して所定量(200cc)のイオン交換水に投入し、25℃の恒温槽内に保存して所定時間経過後に取り出し、水中に溶出した窒素分を定量して求めた。結果を図1に示す。
【0051】
一方、BOD測定については、縮分した10gの被覆肥料に針で穴をあけ、1,000ccのイオン交換水に肥料成分を溶出させた後、溶出殻を風乾した。この溶出殻のうち0.5gをミキサーで0.1〜0.5mmに粉砕し、BOD測定に供した。BOD測定はJISK6950に準拠し、粉砕サンプル0.05gを植種源としてBODシード(米国サイブロンケミカルズ社)を用い、培養温度30℃、培養期間20日間とした。結果を表1及び図2に示す。
【0052】
[実施例2〜5、比較例1〜3]
実施例1で使用した高吸水性樹脂、ひまし油、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物、パラフィンワックス、MDI変成ひまし油の量を表に示す量に変えたほかは実施例1と同様の方法、手順で被覆粒状肥料の製造と特性の測定を行った。結果を表1及び図2に示す。比較例1はワックスを添加しない標準の場合であり、シグモイド型であるがBOBが小さく生分解が期待できない。比較例2、3はパラフィンワックスの添加量をそれぞれ50%、60%としたものであり、シグモイド型からはずれた溶出特性であった。
【0053】
[実施例6]
粒状尿素(粒径2.5〜4.0mm)1,000gを直径30cmのドラム型転動被覆装置に仕込み、30rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素温度を65℃に保持した。次に、0.5gの高吸水性樹脂(平均粒径25μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSA)と4.3gのひまし油(水酸基価160mgKOH/g)を混合したポリオール成分に65℃で0.8gのエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)と5.8gのパラフィンワックス(日本精蝋製 品名135 融点58℃)を添加した混合液と65℃に加熱した5.1gのMDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してNCO基の質量を全質量の19%としたイソシアネート基末端プレポリマー)を二流体ノズルから装置内に1分間かけて噴霧した。噴霧後、65℃で9分間転動させた。さらに、前記被覆操作を6回実施した。最終噴霧後、65℃で30分間転動させ粒状尿素上に被膜を形成させた。これを常温(約30℃)まで冷却し、目的の被覆粒状肥料を得た。次に、これらの被覆粒状肥料を縮分して被覆率((被膜質量/被覆粒状肥料の質量)×100)の測定、窒素の溶出試験及びBOD測定に供した。被覆率は10.1%であった。尚、溶出試験及びBOD測定は実施例1と同様な方法で測定した。BOD値は0.36g/g-皮膜、溶出結果は図2に示す。
【0054】
[実施例7]
粒状尿素(粒径2.5〜4.0mm)1,000gを直径30cmのドラム型転動被覆装置に仕込み、30rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素温度を65℃に保持した。次に、1.8gの高吸水性樹脂(平均粒径25μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSA)と14.0gのひまし油(水酸基価160mgKOH/g)を混合したポリオール成分に65℃で2.5gのエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)と23.0gのパラフィンワックス(日本精蝋製 品名115 融点48℃)を添加した混合液と65℃に加熱した16.3gのMDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してNCO基の質量を全質量の19%としたイソシアネート基末端プレポリマー)を二流体ノズルから装置内に30分間かけて噴霧した。続いて、1.8gの高吸水性樹脂(平均粒径25μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSA)と23.9gのひまし油(水酸基価160mgKOH/g)を混合したポリオール成分に65℃で4.3gのエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)の65℃混合液と65℃に加熱した27.7gのMDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してNCO基の質量を全質量の19%としたイソシアネート基末端プレポリマー)を二流体ノズルから装置内に30分間かけて噴霧した。噴霧後、65℃で30分間転動させた。これを常温(約30℃)まで冷却し、目的の被覆粒状肥料を得た。次に、これらの被覆粒状肥料を縮分して被覆率((被膜質量/被覆粒状肥料の質量)×100)の測定、窒素の溶出試験及びBOD測定に供した。被覆率は9.9%であった。尚、溶出試験及びBOD測定は実施例1と同様の方法で測定した。BOD値は0.22g/g-皮膜、溶出結果は図2に示す。
【0055】
[実施例8]
粒状尿素(粒径2.5〜4.0mm)1,000gを直径30cmのドラム型転動被覆装置に仕込み、30rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素温度を75℃に保持した。次に、0.6gの高吸水性樹脂(平均粒径25μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSA)と4.7gのひまし油(水酸基価160mgKOH/g)を混合したポリオール成分に75℃で0.8gのエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)と7.7gのパラフィンワックス(日本精蝋製LUVAX−1266 融点69℃)を添加した混合液と75℃に加熱した5.4gのMDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してNCO基の質量を全質量の19%としたイソシアネート基末端プレポリマー)を二流体ノズルから装置内に1分間かけて噴霧した。噴霧後、72℃で9分間転動させた。さらに、前記被覆操作を2回実施した。続いて、0.6gの高吸水性樹脂(平均粒径25μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSA)と7.9gのひまし油(水酸基価160mgKOH/g)のポリオール成分と1.5gのエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)の75℃混合液と75℃に加熱した9.2gのMDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してNCO基の質量を全質量の19%としたイソシアネート基末端プレポリマー)を二流体ノズルから装置内に1分間かけて噴霧した。噴霧後、75℃で9分間転動させた。さらに、前記被覆操作を2回実施した。最終噴霧後、75℃で30分間転動させ粒状尿素上に被膜を形成させた。これを常温(約30℃)まで冷却し、目的の被覆粒状肥料を得た。次に、これらの被覆粒状肥料を縮分して被覆率((被膜質量/被覆粒状肥料の質量)×100)の測定、窒素の溶出試験及びBOD測定に供した。被覆率は10.0%であった。尚、溶出試験及びBOD測定は実施例1と同様の方法で測定した。BOD値は0.21g/g-皮膜、溶出結果は図2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
[比較例4〜6]
ワックスとして、ウレタン型ワックス(日本精蝋製 品名NPS−6010 融点74℃)、酸化ワックス(日本精蝋製 品名OX−020T 融点100℃)、合成ワックス(日本精蝋製 品名FNP−0115 融点115℃)を用いて実施例3と同様に被覆肥料を製造し、同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0058】
高吸水性樹脂、ひまし油、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物とワックスとからなる混合液(被覆材B)の調製はそれぞれのワックスの融点より5℃高い温度で行い、その温度に保った被覆材Bを90℃の粒状肥料に塗布し、その温度で硬化させて被覆肥料を製造した。得られた被覆肥料の溶出試験では、初期溶出を抑制できずシグモイド型の溶出パターンとはならなかった。
【0059】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1〜5及び比較例1〜3の試料についての各溶出日数での溶出率を示す線図である。
【図2】実施例6〜8の試料についての各溶出日数での溶出率を示す線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状肥料の外部が、粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂とワックスを含んでなる少なくとも1層の被膜で被覆された被覆粒状肥料であって、ワックスが融点40〜100℃の石油ワックスであり、かつワックスの質量が被膜の全質量の10〜45%であるる被覆粒状肥料。
【請求項2】
ワックスがパラフィンワックスである[1]の被覆粒状肥料。
【請求項3】
ウレタン樹脂が、芳香族ポリイソシアネートとひまし油またはひまし油誘導体ポリオールをアミン化合物で硬化させて得られたウレタン樹脂である請求項1または2に記載の被覆粒状肥料。
【請求項4】
流動状態または転動状態にある粒状肥料に、(a)芳香族ポリイソシアネートとひまし油またはひまし油誘導体ポリオールとから得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、(b)粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子を含むひまし油またはひまし油誘導体ポリオールとアミン系ポリオールとワックスからなるポリオール成分を塗布し、硬化させてウレタン樹脂被膜で被覆することからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆粒状肥料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−120785(P2010−120785A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293694(P2008−293694)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】