説明

被覆線の皮剥器

【課題】 軽量で、且つ芯線を傷付けることなく容易に被覆材を剥ぎ取り、剥いだ被覆材を保持しておくことを可能とする被覆線の皮剥器を提供する。
【解決手段】 絶縁電線等の被覆線の端部における被覆材を剥ぎ取る皮剥器1であって、先端側が接離方向に変位する一対のアーム2,2を備えて本体部が構成されると共に、刃先の一部に切り欠き8,8を有する切刃3,3がそれぞれアームの先端側の接離方向と平行し且つ切り欠き同士が対向するようにして各アームの先端側に取り付けられ、しかも、前記切り欠き間を通って被覆線をアーム間に案内するガイド部11と、案内される被覆線を係止する係止部12とを備える被覆線保持部4が設けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧架空配電線等といった被覆線の端部における被覆材を剥ぎ取る被覆線の皮剥器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に高圧架空配電線は、撚った銅電線、アルミ電線や太い単線からなる芯線(銅電線)を、樹脂やゴム等の絶縁被覆材で被覆したもの(以下、単に「被覆線」と言う。)が使用されている。
【0003】
そして、これらの被覆線の端部を他の電線と接続したり、被覆線の端部同士をスリーブ等で締結して接続する工事においては、通電性を確保するため、被覆線の必要部分の被覆材を剥ぎ取って下地の芯線を露出させる必要がある。
【0004】
そこで、従来より、図5に示す如く、一方のくわえ部材31には、被覆線を固定するクランプ部32を備え、他方のくわえ部材33には、被覆材の切り込み用の切刃部34を備え、一対の柄部35,35を把握することで前記クランプ部32で被覆線を固定しつつ、前記切刃部34で被覆材に切り込みを入れ、柄部35,35の握り込みに応じて一対のくわえ部材31,33が左右に開くことで被覆材を剥ぎ取るペンチタイプの被覆線の皮剥器(以下、単に「皮剥器」と言う。)30が用いられている(特許文献1)。
【0005】
あるいは、図6に示す如く、作業者の手の届かない高所での被覆材の剥取作業や活線の被覆材の剥取作業においては、本体部41に回動可能に取り付けた有底筒状の回転筒42における開口43に、被覆線の端部を挿入して該回転筒42を回転させることで、その周面に取り付けられた切刃44が回転して被覆材を剥ぎ取る回転刃タイプの皮剥器40を遠隔操作・45に接続して使用している(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−186619号公報
【特許文献2】特開2000−288271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者のペンチタイプの皮剥器は、クランプ部や切刃部等を有することから構造が複雑で部品点数も多くなるために重くなり、作業者より高い位置での剥取作業や持ち運びに不便であるという問題があった。
【0007】
特に、手の届かない高所での作業や活線作業の際には、皮剥器を遠隔操作用ヤットコ等の遠隔操作・の先端に接続して使用しなければならず、皮剥器自体が重いと手に持って作業する場合よりもさらに重く感じ、作業負担が掛かる。
【0008】
また、後者の回転刃タイプの皮剥器は、切刃の回転と移動の二軸式の構造であるため、遠隔操作・の先端に接続して使用する際に、二軸の操作が必要であることから操作が複雑であった。また、被覆線の中心軸が回転刃の回転における中心に位置しないと回転刃が芯線に食い込んでしまい、芯線を傷付けてしまうという問題もあった。
【0009】
さらに、両タイプ共、剥いだ皮(被覆材)を網や手で受けなければ落下してしまうおそれがあり、高所での剥取作業においては、作業者の下方を通過している歩行者や車等に当たる可能性があって安全上好ましくないという問題もあった。
【0010】
そこで、本発明は、軽量で、且つ芯線を傷付けることなく容易に被覆材を剥ぎ取り、剥いだ被覆材を保持しておくことができる皮剥器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明に係る被覆線の皮剥器は、絶縁電線等の被覆線の端部における被覆材を剥ぎ取る皮剥器であって、先端側が接離方向に変位する一対のアームを備えて本体部が構成されると共に、刃先の一部に切り欠きを有する切刃がそれぞれアームの先端側の接離方向と平行し且つ切り欠き同士が対向するようにして各アームの先端側に取り付けられ、しかも、前記切り欠き間を通って被覆線をアーム間に案内するガイド部と、案内される被覆線を係止する係止部とを備える被覆線保持部が設けられることを特徴とする。
【0012】
上記構成とすることで、被覆線の端部を被覆線保持部先端側から挿入すると、被覆線が切り欠き間に保持される。そして、この状態で一対のアームをその先端側が互いに接近する方向に変位させると、被覆線が切り欠き間から逸れることなく切刃の刃先が被覆線の被覆材に食い込んでいく。さらに同方向にアームの先端側を変位させ続けると、切り欠き同士が被覆線の芯線の直径に対応した直径の孔を形成し、これにより、各切刃が被覆材の外周側部分を切断しつつ芯線の外周付近まで被覆材に食い込む。
【0013】
そして、この状態を保ちながら皮剥器を被覆線の軸方向に沿って引くと、被覆材は剥ぎ取られ、芯線が露出する。一方、剥ぎ取られた被覆材は、被覆材保持部内空間に保持され続けるが、アームの先端側同士を離間方向に変位させない状態にしておくと、剥ぎ取られた被覆材は、被覆材保持部と切刃とで囲まれる空間内に確実に保持される。
【0014】
尚、被覆材の剥ぎ取り作業の際に、被覆線の端部を被覆材保持部の係止部へ当接するまで挿入すると、切刃から被覆材保持部の係止部までの距離が一定であることから、剥ぎ取る被覆材における軸芯方向の長さを一定にすることができる。
【0015】
ここで、本発明においては、前記被覆線保持部は、前記ガイド部が筒状周面を構成し、前記係止部が底面を構成する有底筒状に形成され、該周面の少なくとも底面に接する位置の一部に窓が形成される構成とすることが好ましい。
【0016】
上記構成とすることで、先端部が曲がった被覆線であっても、該被覆線の先端は、係止部まで逸れることなく容易に案内される。さらに、筒状周面の少なくとも底面に接する位置の一部に窓が形成されることから、被覆線の先端が係止部に当接しているか否かを外部から目視により容易に確認することができる。その結果、被覆線の先端を係止部に係止させた状態で被覆材の切断を行うことが容易となり、剥ぎ取られて露出する芯線の長さを確実に一定とすることができるようになる。
【0017】
また、前記被覆線保持部の先端側は、バネ等の弾性体で形成される支持部材を介して前記一対のアームのうちの少なくとも一方に連結され、該支持部材によってアーム間の中心方向へ付勢される構成とすることが好ましい。
【0018】
上記構成とすることで、アームの先端側が離間した状態では、切刃の刃先間に被覆線保持部先端側が位置するため、該被覆線保持部先端側に切刃が覆い被さることを防ぐことができる。その結果、被覆線の端部を被覆線保持部内に挿入する際に、切刃が邪魔になることがなく容易に挿入することができるようになる。
【0019】
さらに、支持部材が弾性体で形成されることから、アームの先端側を接近する方向に変位させた際に、被覆線保持部がアームと接触したとしても、支持部材が弾性変形することによって被覆線保持部と支持部材を介して連結されるアームとの距離を変化させることができるため、アームの変位を続けることができる。
【0020】
また、前記各アームにおける先端側であって、前記被覆線保持部の先端側と対向する位置に、アームの先端側が互いに接近した際に被覆線保持部の先端側と当接するストッパー部がさらに設けられる構成とすることが好ましい。
【0021】
上記構成とすることで、被覆材の剥ぎ取り作業において、アームの先端側を接近する方向に変位させると、ストッパー部が被覆線保持部の先端側を挟持するように当接してアームのそれ以上の変位が阻止される。その結果、切刃がそれ以上被覆材に食い込まないため、芯線を確実に傷付けることなく剥ぎ取り作業を行うことができるようになる。
【0022】
また、前記一対のアームに、遠隔操作用ヤットコ等の遠隔操作・を着脱自在に取り付け可能な接続部がさらに設けられる構成とすることが好ましい。
【0023】
上記構成とすることで、作業者の手の届かない位置にある被覆線における被覆材の剥取作業を容易に行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明に係る被覆線の皮剥器によれば、軽量で、且つ芯線を傷付けることなく容易に被覆材を剥ぎ取り、剥いだ被覆材を保持しておくことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る皮剥器の一実施形態について図面を参酌しつつ説明する。
【0026】
図1(イ)及び(ロ)に示す如く、本実施形態に係る皮剥器1は、一対のアーム2,2の後端部を回動可能に連結し、その先端に切刃3,3を取り付ける。また。アーム2,2間には、被覆線保持部4が設けられると共にストッパー部5,5が設けられ、さらに、アーム2,2の外側面(先端側が離間する方向の面)には、遠隔操作・を着脱自在に取り付け可能な接続部6,6を設けた構成とする。
【0027】
より詳細に説明すると、前記アーム2,2は、その後端部を連結軸Gにより回動可能に連結して、該連結軸Gを中心にアーム2,2が回動することでアーム2,2の先端側が接離する「V」字状に構成される。また、前記アーム2,2は、途中位置(より詳しくは、後端から先端側へ約1/3の位置)で互いの先端が近づく方向に屈曲した「へ」字状に形成される。
【0028】
このアーム2,2の先端には、被覆線の被覆材を切断するための一対の切刃3,3が(ネジ7,7等の留め具によって)着脱自在に取り付けられる。
【0029】
前記切刃3は、一辺の中央部に略U字状の切り欠き8を設けた矩形状の板体として形成される。この切り欠き8が設けられた一辺に、被覆材を切断するための刃先が形成される。
【0030】
前記切り欠き8は、直線部9,9の間隔が皮を剥ぐ被覆線における芯線の直径と同一あるいは若干大きく、湾曲部10が該芯線の周縁に沿った半円形状である略U字状に形成される。
【0031】
この切刃3,3は、アーム2,2の先端側の接離方向(即ち、回動するアーム2,2の接線方向)と平行し且つ前記切り欠き8,8同士が対向するようにして各アーム2,2の先端に取り付けられる。
【0032】
さらに詳細に説明すると、図1及び図2に示す如く、アーム2,2の先端側が接近する方向に変位すると、即ち、連結部におけるアーム2,2のなす角度αを小さくすると、一方の切刃3の裏面Rと他方の切刃3の表面Sとが摺接し、両切刃3,3による剪断作用が生じる。さらに、前記角度αを小さくして最小になった時に、切り欠き8,8同士が被覆線の芯線に対応した寸法の孔11を形成するように取り付けられている。
【0033】
前記被覆線保持部4は、アーム2,2間に設けられ、前記切り欠き8,8間を通って被覆線をアーム2,2間に案内するガイド部11と、案内される被覆線を係止する係止部12とを備える。
【0034】
また、前記被覆線保持部4は、ガイド部11が筒状周面を構成し、係止部12が底面を構成する有底筒状に形成される。ガイド部(周面)11は円筒状であり、その直径は挿入される被覆線の直径に対応している。また、ガイド部11には、係止部(底面)12に接し且つ周面の対向する位置に窓13,13が形成される。
【0035】
前記窓13は、挿入した被覆線の先端が底面12に当接したか否かを外部から目視によって確認するために周面11に形成された長孔であり、軸方向に沿って、より詳しくは、底面12から軸方向に向かって被覆線保持部4の長さの約1/2で、幅が円筒における周縁の約1/4の長孔として形成される。
【0036】
この被覆線保持部4の先端側は、金属製の板を中央部で屈曲させて略V字状に形成した板バネ14を介して、一方のアーム2に連結される。一方、後端側は、底面12がアーム2,2の回動面に沿って回動可能に蝶番15を介して、先端側が連結されているアーム2に連結される。
【0037】
前記ストッパー部5は、アーム2,2の各先端部における内側面(アーム2,2の先端側が接近する方向の面)と切刃3,3とに接するように取り付けられる。換言すると、アーム2,2に取り付けられたストッパー部5,5は、アーム2,2を接近させると被覆線保持部4の開口部における周面11の対向する位置を挟持するような位置に取り付けられ、切刃3の台座としての機能も有する。
【0038】
このストッパー部5,5は、アーム2,2の先端側を接近させて被覆線保持部4と当接した状態で、切り欠き8,8同士による孔11が形成されると共に、該孔11の中心と被覆線保持部4における開口16の中心とが一致するような厚み(アーム2,2の先端側の接離方向の幅)に形成されている。
【0039】
前記接続部6は、アーム2,2における先端側の外側面に取り付けられる。該接続部6は、図3(イ)及び(ロ)に示す如く、皮剥器1と後述する遠隔操作用ヤットコ50の把持部(以下、単に「把持部」と言う。)62,64(図4(イ)及び(ロ)を参照)とを着脱自在に取り付け可能とするためのアダプターであり、把持部62,64に係合する係合手段17を備える。また、下方側(アーム2,2の連結部側)には把持部62,64が挿入される挿入口18が開口し、前記挿入口18から内部に凹状の挿入部19が形成されている。
【0040】
係合手段17は、後述する把持部62,64の表面における凹部66,66(図3(イ)及び(ロ)参照)に係合する係合ピン20と、接続部6の本体表面に外側に向けて隆起すると共にその中央に前記挿入部19に連通し係合ピン20が摺動するピン孔21を有するピン受け部22と、一端を前記ピン孔21内に取り付け他端を係合ピン20に取り付けることにより係合ピン20を前記把持部62,64に向けて付勢させるスプリング23とから構成されている。尚、係合ピン20は、ヘッド部24と軸部25とから構成されている。
【0041】
このように係合手段17は、前記係合ピン20の軸部25の先端が前記挿入部19に突出するように常に付勢されており、その付勢は係合ピン20のヘッド部24が前記ピン受け部22に当接することで制限されている。
【0042】
次に、遠隔操作用ヤットコについて説明すると、図4(イ)及び(ロ)に示す如く、遠隔操作用ヤットコ50は、絶縁性の主軸51と、この主軸51の先端部に取り付けた把持具52と、この主軸51の基部に取り付けた操作具53と、前記把持具52の可動顎54と前記操作具53の操作レバー55とを連結し、この操作レバー55の手動操作を把持具52の把持操作に伝達する絶縁性の連結軸56とを備えている。
【0043】
主軸51は、絶縁性のパイプで、中間部に樹脂製の絶縁傘57を嵌合固定し、基端部にゴムキャップ58と、その近傍にストラップ59とを取り付けている。
【0044】
把持具52は、基部を主軸51の先端部に嵌合し固定された固定顎(把持具52の本体部)60と、中間部を固定顎60の中間部に連結軸61で方向aに回動可能に連結された可動顎(把持具52の本体部)54とから構成される。
【0045】
固定顎60には、先端に物を挟むための把持部62が設けられ、中間部に固定顎60と連結軸56の先端ジョイント63とを部分的に収納する空間部が設けられている。
【0046】
可動顎54には、先端に物を挟むための把持部64が設けられ、連結部65に前記先端ジョイント63が回動可能に連結されている。
【0047】
前記把持部62,64には、他の治具やアダプター等を取り付けることができるように、物を把持する面と反対面(表面)に凹部66,66が形成されている。
【0048】
操作具53は、主軸51の基部に固定具67と、この固定具67に回動可能に連結された操作レバー55と、この操作レバー55を固定具67に対し常に回動方向bへ押し付ける巻きバネ68とから構成される。操作レバー55には、連結部69に基端ジョイント70が回動可能に連結されている。
【0049】
連結軸56は、絶縁性のパイプ71と、このパイプ71の先端に固定された先端ジョイント63と、このパイプ71の基端に基端ジョイント70とから構成される。
【0050】
先端ジョイント63には、先端側に把持具52の可動顎54の連結部65が回動可能に連結されており、操作具53の操作レバー55を開放している時に巻きバネ68の復元力によって、操作レバー55開放時に把持部62,64間が離間する。
【0051】
基端ジョイント70には、操作具53の操作レバー55の連結部69が回動可能に連結されている。
【0052】
次に、本実施形態に係る皮剥器1の使用状態について説明するが、先ず、皮剥器1の前記把持部62,64への接続方法を説明する。
【0053】
本実施形態に係る皮剥器1の接続部6,6へ把持部62,64を接続させるが、先ず、係合ピン20のヘッド部24を掴み、その付勢に抗して引き上げる。その時、前記軸部25は前記ピン孔21内に入り込み、その先端が前記挿入部19に突出しない着脱可能状態となる。
【0054】
次に、前記把持部62(又は64)を接続部6の挿入口18から前記挿入部19内に所定長さ押し込む。そして、係合ピン20を手放せば、付勢力により係合ピン20が把持部62(又は64)表面の凹部66,66の底面に当接し、接続部6と把持部62(又は64)とは係合状態となる。尚、接続部6を把持部62(又は64)から取り外す動作は、これと逆の動作を行えば良い。
【0055】
本実施形態においては、このように皮剥器1を前記把持部62,64に接続した状態で高圧引下線の皮剥作業を行う。
【0056】
作業者は、遠隔操作用ヤットコ50の基端部を持つ。この時、遠隔操作用ヤットコ50の把持部62,64は巻きバネ68によって離間状態であることから、皮剥器1におけるアーム2,2の先端側も離間状態である。
【0057】
この離間状態で、先端に取り付けた皮剥器1の被覆線保持部4の開口16へ高圧引下線の端部を挿入するが、該端部が底面12に当接するまで挿入し続ける。その際、被覆線保持部4の周面(ガイド部)11に設けられた窓13より被覆線保持部4内部を見ることが可能であるため、前記高圧引下線の端部が底面12に当接しているか否かを目視によって確認しながら挿入することが可能となる。
【0058】
前記高圧引下線の端部が被覆線保持部4の底面12に当接した後、遠隔操作用ヤットコ50における操作具53の操作レバー55を作業者が把握すると、連結部69に連結された連結軸56がc方向へ移動し、この連結軸56の先端のジョイント63に連結された下動顎54の把持部64が固定顎60の把持部62に近づくように回動し、この一対の把持部62,64間が接近する。
【0059】
この把持部62,64の動きに対応して皮剥器1のアーム2,2における接続部6,6間が狭くなることでアーム2,2が連結軸Gを中心に回動してその先端側が接近し、アーム2,2の先端に取り付けられた切刃3,3が接近する。
【0060】
その際、高圧引下線(被覆線)は、被覆線保持部4に挿入されているので切刃3,3に設けられた切り欠き8,8間に保持される。従って、アーム2,2のなす角度αが最小になっても、被覆線は切り欠き8,8間から逸れることがない。また、前記角度αが最小になると、切り欠き8,8同士が芯線の直径に対応した寸法の孔11を形成することから、これにより切刃3,3が被覆材の外周側部分を切断しつつ芯線の外周付近まで被覆材に食い込む。その際、ストッパー部5,5によって被覆保持部4の開口部が挟持され、それ以上アーム2,2の先端側を接近させることができなくなる。その結果、切刃3,3がそれ以上被覆材に食い込んで芯線を傷付けることが防止される。
【0061】
この状態で作業者が遠隔操作用ヤットコ50の操作具53の操作レバー55を把握した状態を保ちつつ被覆線の軸方向に遠隔操作用ヤットコ50を引くことにより、被覆は剥ぎ取られ、芯線が露出する。
【0062】
この時、アーム2,2のなす角度αを最小角に保つと、切刃3,3と有底筒状の被覆線保持部4とで囲まれる空間内に剥ぎ取られた被覆材が保持され、下方に落下することはない。
【0063】
その後、所定の場所で作業者が操作レバー55の把握を開放すると、巻きバネ68の復元力によって一対の把持部62,64間は元の状態まで離間する。この動作に対応してアーム2,2の先端部が離間することで、被覆線保持部4の開口16を覆っていた切刃3,3同士も離間して、剥ぎ取られた被覆材を取り出すことができるようになる。
【0064】
以上より、本実施形態に係る皮剥器1は、構造がシンプルで部品点数が少ないことから皮剥器1の軽量化を図ることができる。
【0065】
また、被覆材の剥ぎ取り作業の際、被覆線を被覆材保持部4に挿入するだけで被覆線が切り欠き8,8間に固定されることから芯線を傷付けることなく容易に剥ぎ取り作業を行うことができる。また、被覆材保持部4の底面12に被覆線(高圧引下線)の端部を当接させるだけで、被覆材の剥ぎ取り長さを一定長さとすることができる。
【0066】
さらに、被覆材保持部4と切刃3,3とで囲まれた空間内に剥ぎ取った後の被覆材を不注意で下方に落とすことなく保持でき、剥ぎ取った後の被覆材の落下によって歩行者や車等に当たるのを回避できる。また、剥いだ後の被覆材の散乱による掃除等の手間を省くこともできるようになる。
【0067】
尚、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は可能である。
【0068】
例えば、一対のアーム2,2によって構成される本体部を、一本の部材を略U字状に湾曲させ、湾曲部のみを弾性変形可能とした本体部としても良い。そうすることで、構成部品点数をさらに減らすことができ、より軽量化且つコスト削減を行うことができる。
【0069】
また、切刃3,3又は/及び被覆材保持部4を取り替え可能とするのが好ましい。これにより、異なる直径の被覆線又は/及び芯線の皮剥作業を行うことができるようになる。
【0070】
また、被覆材保持部4の周面は、筒状でなくても良い。例えば、周面長手方向に複数のスリットを形成して周面が不連続な面であっても良く、スプリングのような螺旋状のスリットを形成した周面であっても良い。このようにしても、スリットから被覆線端部が底面13に当接したか否かを確認することができ、しかも軽量化を図ることができる。
【0071】
また、窓13を設けることなく、被覆線保持部4の周面を透明な材質で形成しても良い。このようにしても、挿入された被覆線の端部が底面12に当接したか否かを外部から確認することができる。
【0072】
また、被覆線保持部4における筒状部の形状は、円形でなくても良く、四角や星形等であっても、被覆線を挿入した際に中心軸がずれることなく保持できる形状であれば良い。さらに、被覆線保持部4は、一方のアーム2の内側面と支持部材6によって連結されているが、両方のアーム2,2の内側面と対向する被覆線保持部4の周面とをそれぞれ支持部材6,6によって接続しても良い。
【0073】
また、接続部6,6は、前記把持部62,64先端を挿入するアダプター方式でなくても良く、前記把持部62,64を直接ネジ止めする方式、又は、クランプ等で挟持固定する方式等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る皮剥器であって、(イ)はアームの先端側が離間状態の正面図、(ロ)はその平面図、を示す。
【図2】同実施形態に係る皮剥器であって、(イ)はアームの先端側が接近状態の正面図、(ロ)はその平面図、を示す。
【図3】同施形態に係る皮剥器における接続部であって、(イ)は拡大斜視図、(ロ)は拡大縦断面図、を示す。
【図4】同実施形態に係る遠隔操作用ヤットコであって、(イ)は正面図、(ロ)は底面図、を示す。
【図5】従来のペンチタイプの皮剥器の正面図を示す。
【図6】従来の回転刃タイプの皮剥器の分解した断面正面図を示す。
【符号の説明】
【0075】
1…皮剥器、2,2…アーム、3,3…切刃、4…被覆線保持部、8,8…切り欠き、11…ガイド部(周面)、12…係止部(底面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁電線等の被覆線の端部における被覆材を剥ぎ取る皮剥器であって、先端側が接離方向に変位する一対のアームを備えて本体部が構成されると共に、刃先の一部に切り欠きを有する切刃がそれぞれアームの先端側の接離方向と平行し且つ切り欠き同士が対向するようにして各アームの先端側に取り付けられ、しかも、前記切り欠き間を通って被覆線をアーム間に案内するガイド部と、案内される被覆線を係止する係止部とを備える被覆線保持部が設けられることを特徴とする被覆線の皮剥器。
【請求項2】
前記被覆線保持部は、前記ガイド部が筒状周面を構成し、前記係止部が底面を構成する有底筒状に形成され、該周面の少なくとも底面に接する位置の一部に窓が形成されることを特徴とする請求項1記載の被覆線の皮剥器。
【請求項3】
前記被覆線保持部の先端側は、バネ等の弾性体で形成される支持部材を介して前記一対のアームのうちの少なくとも一方に連結され、該支持部材によってアーム間の中心方向へ付勢されることを特徴とする請求項1又は2記載の被覆線の皮剥器。
【請求項4】
前記各アームにおける先端側であって、前記被覆線保持部の先端側と対向する位置に、アームの先端側が互いに接近した際に被覆線保持部の先端側と当接するストッパー部がさらに設けられることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の被覆線の皮剥器。
【請求項5】
前記一対のアームに、遠隔操作用ヤットコ等の遠隔操作・を着脱自在に取り付け可能な接続部がさらに設けられることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の被覆線の皮剥器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−333632(P2006−333632A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153871(P2005−153871)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】