説明

被覆部材の組付構造

【課題】給油開口構造からの被覆部材2の脱離を抑制でき、かつ、組付作業性に優れる被覆部材の組付構造を提供すること。
【解決手段】給油口構造1のフィラーネック12に鍔部16を設け、鍔部16を奥側開口11よりも車体奥側に配置し、奥側被覆部22と鍔部16との間に弾性変形可能な弾性当接部40を介在させる。弾性当接部40が奥側被覆部22と鍔部16との間で圧縮し弾性変形することで、奥側被覆部22のなかで奥側開口11よりも鍔部16側に位置する部分(奥側抜け止め部31)を弾性当接部40によって奥側周縁部18に向けて付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の給油口構造と、給油口構造を覆い泥や水などの給油口付近への侵入を防止する被覆部材と、の組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に燃料を供給するための給油口は、フィラーネックの先端から構成される。フィラーネックは、燃料タンクから延びるインレットフィラーパイプの先端部からなる。車体パネルには、インレットフィラーパイプの先端部を車体の外側(以下、単に外側と略する)に導くための給油開口が形成されている。一般には、車体の外側パネル(サイドメンバアウタ)には、インレットフィラーパイプの先端部を車体の外側に導くための給油開口(外側開口)が形成されている。車体の奥側パネル(ホイルハウスアウタ)にもまた、インレットフィラーパイプの先端部を車体の外側に導くための給油開口(奥側開口)が形成されている。外側開口と奥側開口とフィラーネックとからなる構造を、給油口構造と呼ぶ。
【0003】
ところで、パネルサイドメンバアウタの外側面は、車体の外側(側方または上方)に露出する。ホイルハウスアウタの奥側面は車体の奥側(下方、以下単に奥側と略する)に露出する。このため、雨水などが外側開口や奥側開口を介して車体の内部に侵入するおそれがある。車体の内部への雨水などの侵入を抑制するために、筒状の被覆部材によって外側開口および内側開口を覆う技術が提案されている。
【0004】
従来の被覆部材の一例を模式的に表す断面図を図7に示す。
【0005】
図7に示す被覆部材102は、外側開口110を覆う外側被覆部121と、奥側開口111を覆う奥側被覆部122と、外側被覆部121と奥側被覆部122とを連絡する被覆本体部120とを持つ。外側被覆部121の外周側部分には、外周側に開口する環溝状の外側係合部123が形成されている。外側係合部123の外径は外側開口110の開口径よりも大きく、外側係合部123は外側開口110の周縁部(外側周縁部117)と係合している。奥側被覆部122は外側被覆部121と同様の形状をなし、奥側被覆部122の奥側係合部130は奥側開口111の周縁部(奥側周縁部118)と係合している。したがって、図7に示す被覆部材102は、外側被覆部121の外側係合部123が外側周縁部117と係合し、奥側被覆部122の奥側係合部130が奥側周縁部118と係合することで、サイドメンバアウタ113に形成されている外側開口110と、ホイルハウスアウタ114に形成されている奥側開口111とに組み付けられている。
【0006】
また、外側被覆部121および奥側被覆部122には、被覆部材102と別体のリング部材が取り付けられている。詳しくは、外側被覆部121には内周側に開口する環溝状の外側リング保持部126が形成されている。外側リング保持部126には、外側リング部材129が圧入されている。外側リング部材129は、外側被覆部121よりも硬質の材料からなり、略C字状をなす。外側リング部材129は、外側被覆部121を拡径し、外側開口110からの外側被覆部121の脱離を抑制する。奥側被覆部122にも同様に奥側リング保持部131が形成されている。奥側リング保持部131には奥側リング部材128が圧入されている。奥側リング部材128もまた、奥側被覆部122を拡径し、奥側開口111からの奥側被覆部122の脱離を抑制している。したがってこの種の被覆部材102は給油口構造101から脱離し難い。さらに、この種の被覆部材102は、外側被覆部121によって外側開口110の内縁をシールするとともに外側周縁部117と外側被覆部121とのシール面圧を維持している。また、奥側被覆部122によって奥側開口111の内縁をシールするとともに奥側周縁部118と奥側被覆部122とのシール面圧を維持している。
【0007】
ところで、この種の被覆部材102を給油口構造101に組み付ける場合には、奥側リング部材128を変形させつつ奥側被覆部122を奥側開口111の奥側に入れ込む必要がある。さらに、奥側リング部材128は硬質であるために、奥側リング部材128を変形させるためには大きな力が必要である。このため、この種の被覆部材102を給油口構造101に組み付ける作業は、作業性に劣る問題があった。
【0008】
特許文献1には、奥側被覆部を奥側周縁部にボルトで固定する技術が開示されている。この技術によると、奥側開口からの奥側被覆部の脱離を抑制でき、かつ、奥側被覆部を奥側開口に組み付ける作業にも大きな力を必要としない。しかし、奥側被覆部を奥側周縁部にボルトで固定する作業もまた非常に煩雑であり、この技術によっても給油口構造への被覆部材の組付作業性を向上させることはできない。このため、給油口構造からの被覆部材の脱離を抑制でき、かつ、組付作業性に優れる被覆部材の組付構造が求められている。
【特許文献1】特公平3−42206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情を考慮してなされたものであり、給油開口構造からの被覆部材の脱離を抑制でき、給油開口構造と被覆部材とのシール性を維持でき、かつ、組付作業性に優れる被覆部材の組付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の被覆部材の組付構造は、車体のサイドメンバアウタに形成されている外側開口と、車体のホイルハウスアウタに形成されている奥側開口と、先端部が該奥側開口の内部を経て該外側開口に向けて延びるフィラーネックと、からなる給油口構造と、筒状をなし該給油口構造を覆う被覆部材と、の組付構造であって、該被覆部材は、弾性材料からなり、筒状をなす被覆本体部と、該被覆本体部の軸方向の一端部に連続する筒状をなし該外側開口の内縁を覆うとともに該外側開口の周縁部と係合する外側被覆部と、該被覆本体部の軸方向の他端部に連続する筒状をなし該奥側開口の内縁を覆うとともに該奥側開口の周縁部と係合する奥側被覆部と、を持ち、該フィラーネックは、筒状をなすフィラーネック本体部と、該フィラーネック本体部の外表面から外方に延びる鍔部と、を持ち、該鍔部は該奥側開口よりも車体奥側に配置され、該奥側被覆部と該鍔部との間には弾性変形可能な弾性当接部が介在し、該弾性当接部は、該奥側被覆部と該鍔部との間で圧縮し弾性変形することで、該奥側被覆部のなかで該奥側開口よりも該鍔部側に位置する部分を該奥側開口の周縁部に向けて付勢することを特徴とする。
【0011】
本発明の被覆部材の組付構造は、下記の(1)〜(5)の何れかを備えることが好ましく、(1)〜(5)の複数を備えるのがより好ましい。
【0012】
(1)前記弾性当接部は、前記奥側被覆部および前記鍔部よりも弾性変形し易い。
【0013】
(2)前記弾性当接部は、前記奥側被覆部と前記鍔部との間に、圧縮状態で介在している。
【0014】
(3)前記弾性当接部は、前記奥側被覆部に一体化されている。
【0015】
(4)前記弾性当接部は、前記鍔部に一体化されている。
【0016】
(5)前記弾性当接部は尖端形状をなす。
【発明の効果】
【0017】
本発明の被覆部材の組付構造によると、フィラーネックに設けた鍔部によって、奥側被覆部を奥側から支持できる。このため、奥側開口から奥側に向けた奥側被覆部の脱離(以下、単に奥側被覆部の脱離と略する)を抑制でき、ひいては給油開口構造からの被覆部材の脱離を抑制できる。また、リング部材を用いずに奥側被覆部を奥側開口に組み付けることができるため、組み付け作業性に優れる。また、奥側被覆部と鍔部との間に介在する弾性当接部は、奥側被覆部が脱離する際や組付時等に、奥側被覆部と鍔部との間で圧縮し弾性変形する。そして弾性変形した弾性当接部は、奥側被覆部のなかで該奥側開口よりも該鍔部側に位置する部分(以下、奥側抜け止め部と呼ぶ)を、奥側開口の周縁部(以下、奥側周縁部と呼ぶ)に向けて付勢する。このため奥側被覆部は、鍔部よりも奥側に移動し難い。このことによっても、本発明の被覆部材の組付構造によると、奥側被覆部の脱離を抑制でき、給油開口構造からの被覆部材の脱離を抑制できる。
【0018】
上記(1)を備える本発明の被覆部材の組付構造における弾性当接部は、奥側被覆部および鍔部よりも弾性変形し易い。したがって弾性当接部は、奥側被覆部が脱離する際や組付時等には、奥側被覆部と鍔部との間で圧縮されて容易に弾性変形する。弾性変形した弾性当接部は、自身の弾性によって、奥側抜け止め部を奥側周縁部に向けて付勢する。このため、上記(1)を備える本発明の被覆部材の組付構造によると、奥側被覆部の脱離を信頼性高く抑制でき、給油開口構造からの被覆部材の脱離を信頼性高く抑制できる。
【0019】
上記(2)を備える本発明の被覆部材の組付構造によると、弾性当接部が奥側被覆部と鍔部との間に圧縮状態で介在している。このため弾性当接部は、組付状態において、奥側抜け止め部を常に奥側周縁部に向けて付勢する。よって、奥側被覆部の脱離をより信頼性高く抑制できる。さらに、組付状態において、弾性当接部が抜け止め部を常に奥側周縁部に向けて付勢することで、奥側被覆部と奥側周縁部とのシール性を高め得る。このため、上記(2)を備える本発明の被覆部材の組付構造は、奥側(車体下方)からサイドメンバアウタとホイルハウスアウタとの隙間への水や泥等の侵入を信頼性高く抑制できる。さらに、圧縮状態の弾性当接部は、奥側被覆部と鍔部との隙間(すなわち奥側被覆部とフィラーネックとの隙間)をシールする。このため、上記(2)を備える本発明の被覆部材の組付構造は、特に奥側から給油口付近への水や泥等の侵入を信頼性高く抑制できる。
【0020】
さらに、弾性当接部が奥側被覆部と鍔部との間に圧縮状態で介在しているために、奥側開口と鍔部とがフィラーネック本体の軸方向に位置ズレしても、弾性当接部が弾性変形することで奥側開口と鍔部との位置ズレ長さを吸収でき、かつ、奥側抜け止め部を奥側周縁部に向けて付勢できる。したがってこの場合にも、弾性当接部は奥側被覆部を奥側周縁部に向けて付勢でき、奥側周縁部と奥側被覆部とのシール面圧を十分な大きさに維持できる。
【0021】
上記(3)を備える本発明の被覆部材の組付構造によると、弾性当接部を奥側被覆部に一体化したことで、奥側被覆部と弾性当接部とを容易に位置決めできる。このため、上記(3)を備える本発明の被覆部材の組付構造によると、組み付け作業性がさらに向上する。
【0022】
上記(4)を備える本発明の被覆部材の組付構造によると、弾性当接部を鍔部に一体化したことで、弾性当接部と鍔部とを容易に位置決めできる。このため、上記(4)を備える本発明の被覆部材の組付構造によると、組み付け作業性がさらに向上する。
【0023】
上記(5)を備える本発明の被覆部材の組付構造によると、弾性当接部が変形し易くシール性を発揮し易い形状をなすために、鍔部と奥側被覆部との間をさらに信頼性高くシールでき、奥側から給油口付近への水や泥等の侵入をさらに信頼性高く抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を基に本発明の被覆部材の組付構造を説明する。
【0025】
(実施例1)
実施例1の被覆部材の組付構造は上記(1)〜(4)を備える。実施例1の被覆部材の組付構造を模式的に表す断面図を図1に示す。図1の要部拡大図を図2に示す。以下、実施例1において外側、奥側とは図1〜図2に示す外側、奥側を指す。
【0026】
図1に示すように、実施例1の被覆部材の組付構造における給油口構造1は、外側開口10、奥側開口11、および、フィラーネック12からなる。外側開口10は車体のサイドメンバアウタ13に形成され、奥側開口11は車体のホイルハウスアウタ14に形成されている。フィラーネック12は、インレットフィラーパイプの先端部分からなる。フィラーネック12の先端部は、奥側開口11の内部を経て外側開口10に向けて延び、奥側開口11と外側開口10との間に配置されている。フィラーネック12の先端は給油口を構成している。フィラーネック12は、フィラーネック本体部15と鍔部16とを持つ。フィラーネック本体部15は筒状をなす。鍔部16は、フィラーネック本体部15の外表面から外方に延びる鍔状をなす。鍔部16は、ホイルハウスアウタ14よりも奥側に配置されている。また、鍔部16の外径は奥側開口11の内径よりも大きく、鍔部16の周縁部全体は奥側開口11の外周側に配置されている。また、鍔部16はPP製であり硬質である。なお、インレットフィラーパイプの基端部は図略の燃料タンクに取り付けられている。
【0027】
被覆部材2は、被覆本体部20と外側被覆部21と奥側被覆部22とを持ち、筒状をなす。被覆本体部20は、蛇腹の筒状をなす。外側被覆部21は、被覆本体部20の軸方向の一端部(外側の端部)に連続する筒状をなし、外側開口10の内縁を覆う。奥側被覆部22は、被覆本体部20の軸方向の他端部(奥側の端部)に連続する筒状をなし、奥側開口11の内縁を覆う。被覆本体部20、外側被覆部21、および奥側被覆部22は、NBRとPVCとの混合材料などからなり、一体成形されている。
【0028】
図1〜図2に示すように、外側被覆部21の外周側部分には外側係合部23が形成されている。外側係合部23は、外周側に開口する環溝状をなし、外側開口10の周縁部(外側周縁部17)と係合している。外側被覆部21のなかで外側係合部23よりもさらに外側(端側)の部分は、外側抜け止め部24と、外側シール部25とを構成している。外側抜け止め部24は、筒状をなす。外側抜け止め部24の内周側部分には、外側リング保持部26が形成されている。外側リング保持部26は、内周側に開口する環溝状をなす。外側シール部25は、尖端形状(リップ状)をなし、外側抜け止め部24の外周側部分から奥側(外側係合部23側)に向けて突出している。外側シール部25は、外側抜け止め部24の全周にわたって形成されている。外側シール部25の先端部は、外側周縁部17の外側面(サイドメンバアウタ13の外側面)に弾接している。外側リング保持部26には外側リング部材29が挿入保持されている。外側リング部材29は、被覆部材2よりも硬質の材料からなり、略C字状をなす。外側リング部材29は、縮径状態で外側リング保持部26に保持され、外側被覆部21を拡径する。
【0029】
奥側被覆部22の外周側部分には、奥側係合部30が形成されている。奥側係合部30は、外周側に開口する環溝状をなし、奥側開口の周縁部(奥側周縁部18)と係合している。奥側被覆部22のなかで奥側係合部30よりもさらに奥側(端側)の部分は、奥側抜け止め部31と、奥側シール部32と、支持突部33とを構成している。奥側抜け止め部31は、筒状をなし、被覆部材2の他の部分よりも厚肉である。奥側シール部32は、尖端形状(リップ状)をなし、奥側抜け止め部31の外周側部分から外側(奥側係合部30側)に向けて突出している。奥側シール部32は、奥側抜け止め部31の外周全周にわたって形成されている。奥側シール部32の先端部は、奥側周縁部18の奥側面(ホイルハウスアウタ14の奥側面)に弾接している。支持突部33は、尖端形状(リップ状)をなし、奥側抜け止め部31の内周側部分から内周側(フィラーネック本体15側)に向けて突出している。支持突部33の先端部は、フィラーネック本体15の外周面に弾接している。したがって支持突部33はフィラーネック本体15を支持している。支持突部33は、奥側抜け止め部31の内周全周にわたって形成されている。
【0030】
奥側被覆部22には、弾性当接部40が一体形成されている。弾性当接部40は、被覆部材2と同じ弾性材料からなる。したがって、弾性当接部40は弾性変形可能である。また、弾性当接部40は、尖端形状(リップ状)をなし、奥側抜け止め部31よりも薄肉である。このため弾性当接部40は、奥側被覆部22に比べて弾性変形し易い。さらに、弾性当接部40は弾性変形なNBRとPVCとの混合材料などからなるため、鍔部16に比べても弾性変形し易い。弾性当接部40は、奥側抜け止め部31の外周側部分から奥側(鍔部16側)かつ被覆部材2の内周側(フィラーネック本体部15側)に向けて突出している。
【0031】
弾性当接部40の突出高さは、奥側被覆部22と鍔部16との距離よりも大きい。したがって弾性当接部40は、奥側被覆部22と鍔部16との間に挟み込まれて圧縮し、弾性変形している。そして弾性当接部40は、自身の弾性によって、奥側被覆部22を奥側周縁部18に向けて付勢している。弾性当接部40の先端は鍔部16に弾接し、奥側被覆部22の奥側抜け止め部31は、弾性当接部40を介して奥側周縁部18と鍔部16とで挟持されている。
【0032】
実施例1における被覆部材2と給油口構造1とは、以下の手順で組み付けられた。
【0033】
先ず、外側リング部材29を縮径方向に弾性変形させつつ被覆部材2の外側リング保持部26に挿入した。次いで、被覆部材2の奥側被覆部22および被覆本体部20を外側開口10の奥側に差し込んだ。そして、奥側係合部30に奥側周縁部18を挿入することで、奥側係合部30と奥側周縁部18とを係合させ、奥側開口11の内縁を奥側被覆部22によって覆った。
【0034】
次いで、外側被覆部21の外側係合部23に外側周縁部17を挿入し、外側係合部23と外側周縁部17とを係合させることで、外側開口10の内縁を外側被覆部21によって覆った。このとき外側シール部25の先端部は、外側周縁部17の外側面に弾接し、外側周縁部17と外側被覆部21との間をシールした。また、外側リング部材29が外側リング保持部26の内部で拡径することで、外側リング部材29が外側被覆部21を拡径した。このため、外側係合部23と外側周縁部17とが強固に係合し、かつ、外側シール部25が外側周縁部17に向けて押し付けられた。
【0035】
さらに、フィラーネック12を奥側から外側に引き出して、鍔部16を弾性当接部40に圧接させ、支持突部33をフィラーネック本体15の外周面に弾接させるとともに、奥側周縁部18と鍔部16とで奥側抜け止め部31および弾性当接部40を挟み込んだ。弾性当接部40は、奥側被覆部22(奥側抜け止め部31)と鍔部16との間で圧縮し、弾性変形した。弾性変形した弾性当接部40は、自身の弾性によって、奥側抜け止め部31を奥側周縁部18に向けて付勢した。以上の工程で、被覆部材2を給油口構造1に組み付けた。
【0036】
実施例1の被覆部材の組付構造における弾性当接部40は、組付時に、奥側被覆部22と鍔部16との間で圧縮して弾性変形する。奥側周縁部18に向けて付勢された奥側抜け止め部31は、鍔部16側(奥側)に移動し難い。したがって奥側被覆部22は奥側開口11から脱離し難い。
【0037】
また、鍔部16と奥側抜け止め部18との間に圧縮状態で介在している弾性当接部40は、奥側抜け止め部31を奥側周縁部18に向けて付勢する。このため、奥側被覆部22の奥側シール部32は、奥側周縁部18に圧接する。したがって、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できる。
【0038】
さらに、弾性当接部40が鍔部16に圧接していることで、奥側開口11と鍔部16とが軸方向に位置ズレしても、弾性当接部16の弾性変形によって位置ズレ長さを吸収できる。したがってこの場合にも、弾性当接部40は奥側被覆部22を奥側周縁部18に向けて付勢でき、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できる。
【0039】
さらに弾性当接部40は、弾性変形した状態で奥側抜け止め部31と鍔部16との間に介在することで、奥側抜け止め部31の鍔部16に対する移動を抑制する抵抗体として機能する。これは以下の理由による。
【0040】
実施例1の被覆部材の組付構造における奥側被覆部22は、奥側開口11から脱離するためには、鍔部16を乗り越える程度に拡径する必要がある。このとき奥側抜け止め部31は、鍔部16の外周側に移動する。しかし、奥側抜け止め部31と鍔部16との間には、弾性変形した状態の弾性当接部40が介在している。このため、奥側抜け止め部31が鍔部16の外周側に移動する際には、弾性当接部40が鍔部16に摺接する。弾性当接部40が鍔部16に摺接する際に生じる摩擦抵抗によって、奥側抜け止め部31の鍔部16に対する移動が干渉される。このため弾性当接部40は、奥側抜け止め部31の鍔部16に対する移動を抑制する抵抗体として機能し、奥側開口11からの奥側被覆部22の脱離を抑制する。
【0041】
さらに実施例1の被覆部材における支持突部33は、組付状態においてフィラーネック本体15の外周面に弾接している。このため、実施例1の被覆部材によると、支持突部33によってフィラーネック本体15と奥側抜け止め部31との隙間をシールできる。さらに、フィラーネック本体15が奥側開口11に対して径方向に位置ズレしている場合にも、支持突部33によってフィラーネック本体15の位置を適正な位置に矯正できる。このため、フィラーネック本体15の一部からなる鍔部16と、奥側被覆部22に一体化されている弾性当接部40との相対位置を適正化できる。よって、実施例1の被覆部材によると、奥側周縁部22と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できる。
【0042】
実施例1の被覆部材の組付構造によると、これらの協働によって、給油口構造1からの被覆部材2の脱離を信頼性高く抑制でき、かつ、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できる。
【0043】
また弾性当接部40が奥側抜け止め部31を奥側周縁部18に向けて付勢することで、奥側抜け止め部31に一体化されている奥側シール部32は、奥側周縁部18に強く弾接する。したがって奥側シール部32は、奥側抜け止め部31と奥側周縁部18との隙間を信頼性高くシールする。このため、実施例1の被覆部材の組付構造によると、奥側からサイドメンバアウタ13とホイルハウスアウタ14との隙間への水や泥等の侵入を信頼性高く抑制できる。
【0044】
また弾性当接部40は、奥側被覆部22と鍔部16との間で圧縮し、鍔部16に弾接する。このため弾性当接部40は、奥側被覆部22と鍔部16との隙間をシールする。したがって実施例1の被覆部材の組付構造によると、奥側被覆部22と鍔部16との隙間から給油口付近への水や泥などの侵入を信頼性高く抑制できる。
【0045】
さらに、実施例1の被覆部材の組付構造は、奥側リング部材を必要とせずに奥側開口11からの奥側被覆部22の脱離を抑制でき、かつ、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できるため、被覆部材2と給油口構造1との組付作業性に優れる。
【0046】
(実施例2)
実施例2の被覆部材の組付構造は、弾性当接部40の形状以外は実施例1の被覆部材の組付構造と同じである。実施例2の被覆部材の組付構造を模式的に表す要部拡大断面図を図3に示す。以下、実施例2において外側、奥側とは図3に示す外側、奥側を指す。
【0047】
実施例2の被覆部材の組付構造における弾性当接部40は、尖端形状(リップ状)をなし、奥側抜け止め部31の内周側部分から奥側(鍔部16側)かつ被覆部材2の外周側に向けて突出している。
【0048】
弾性当接部40は、組付状態において、奥側被覆部22と鍔部16との間に圧縮した状態で介在し、弾性変形している。したがって、弾性当接部40の先端は鍔部16に弾接している。このため実施例2の被覆部材の組付構造は、実施例1の被覆部材の組付構造と同様に、奥側被覆部22の奥側開口11からの脱離を抑制でき、給油開口構造からの被覆部材2の脱離を抑制できる。また、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できる。
【0049】
さらに、実施例2の被覆部材の組付構造は、実施例1の被覆部材の組付構造と同様に、奥側リング部材を必要とせずに奥側開口11からの奥側被覆部22の脱離を抑制でき、かつ、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できるため、被覆部材2と給油口構造との組付作業性に優れる。
【0050】
さらに、実施例2の被覆部材の組付構造における弾性当接部40は、被覆部材2の外周側に向けて突出しているため、容易に成形できる利点もある。
【0051】
(実施例3)
実施例3の被覆部材の組付構造は、弾性当接部40の形状以外は実施例1の被覆部材の組付構造と同じである。実施例3の被覆部材の組付構造を模式的に表す要部拡大断面図を図4に示す。以下、実施例3において外側、奥側とは図4に示す外側、奥側を指す。
【0052】
実施例3の被覆部材の組付構造における弾性当接部40は、尖端形状(リブ状)をなし、奥側抜け止め部31の外周側部分から奥側抜け止め部31の軸方向に沿って奥側(鍔部16側)に向けて突出している。実施例3の被覆部材の組付構造における弾性当接部40もまた、組付状態において、奥側被覆部22と鍔部16との間に圧縮した状態で介在し、弾性変形している。したがって、弾性当接部40の先端は鍔部16に弾接している。このため実施例3の被覆部材の組付構造は、実施例1の被覆部材の組付構造と同様に、奥側被覆部22の奥側開口11からの脱離を抑制でき、給油開口構造からの被覆部材2の脱離を抑制できる。また、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できる。
【0053】
さらに、実施例3の被覆部材の組付構造は、実施例1の被覆部材の組付構造と同様に、奥側リング部材を必要とせずに奥側開口11からの奥側被覆部22の脱離を抑制でき、かつ、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できるため、被覆部材2と給油口構造との組付作業性に優れる。
【0054】
さらに、実施例3の被覆部材の組付構造における弾性当接部40はリブ状をなすために、リップ状をなす弾性当接部に比べて、突出方向に変形し難い。このため奥側被覆部22は、弾性当接部40に干渉されて、鍔部16に近接する方向に移動し難い。よって、奥側被覆部22は奥側に向けて移動し難く、奥側開口11から脱離し難い。
【0055】
(実施例4)
実施例4の被覆部材の組付構造は、弾性当接部40の形状以外は実施例1の被覆部材の組付構造と同じである。実施例4の被覆部材の組付構造を模式的に表す要部拡大断面図を図5に示す。以下、実施例4において外側、奥側とは図5に示す外側、奥側を指す。
【0056】
実施例4の被覆部材の組付構造における弾性当接部40は、尖端形状(リップ状)をなし、奥側抜け止め部31の外周側部分から奥側(鍔部16側)かつ被覆部材2の外周側に向けて突出している。
【0057】
実施例4の被覆部材の組付構造における弾性当接部40もまた、奥側被覆部22と鍔部16との間に圧縮した状態で介在し、弾性変形している。このため実施例4の被覆部材の組付構造は、実施例1の被覆部材の組付構造と同様に、奥側被覆部22の奥側開口11からの脱離を抑制でき、給油開口構造からの被覆部材2の脱離を抑制できる。また、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できる。
【0058】
さらに、実施例4の被覆部材の組付構造は、実施例1の被覆部材の組付構造と同様に、奥側リング部材を必要とせずに奥側開口11からの奥側被覆部22の脱離を抑制でき、かつ、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できるため、被覆部材2と給油口構造との組付作業性に優れる。
【0059】
さらに、実施例4の被覆部材の組付構造における弾性当接部40は、実施例2の被覆部材の組付構造における弾性当接部40と同様に、被覆部材2の外周側に向けて突出しているため、容易に成形できる利点もある。
【0060】
(実施例5)
実施例5の被覆部材の組付構造は、弾性当接部40が鍔部16に一体化されていることと、弾性当接部40の形状以外は、実施例1の被覆部材の組付構造と同じである。実施例5の被覆部材の組付構造を模式的に表す要部拡大断面図を図6に示す。以下、実施例5において外側、奥側とは図6に示す外側、奥側を指す。
【0061】
実施例5の被覆部材の組付構造における弾性当接部40は、尖端形状(リップ状)をなし、鍔部16の外周側部分から外側(奥側被覆部22側)かつ鍔部16の外周側に向けて突出している。弾性当接部40は弾性変形なTPOなどからなり、鍔部16に接合されている。
【0062】
実施例5の被覆部材の組付構造における弾性当接部40もまた、奥側被覆部22と鍔部16との間に圧縮した状態で介在し、弾性変形している。したがって弾性当接部40は、奥側被覆部22(奥側抜け止め部31)に弾接している。このため実施例5の被覆部材の組付構造は、実施例1の被覆部材の組付構造と同様に、奥側被覆部22の奥側開口11からの脱離を抑制でき、給油開口構造からの被覆部材2の脱離を抑制できる。また、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できる。
【0063】
さらに、実施例5の被覆部材の組付構造は、実施例1の被覆部材の組付構造と同様に、奥側リング部材を必要とせずに奥側開口11からの奥側被覆部22の脱離を抑制でき、かつ、奥側周縁部18と奥側被覆部22とのシール面圧を十分な大きさに維持できるため、被覆部材2と給油口構造との組付作業性に優れる。
【0064】
実施例1〜5の被覆部材の組付構造における弾性当接部40は、組付状態において奥側被覆部22と鍔部16との間で圧縮し弾性変形している。しかし、本発明の被覆部材の組付構造における弾性当接部40は、奥側被覆部22と鍔部16との間で圧縮し弾性変形できれば良く、組付状態で圧縮および弾性変形していなくても良い。この場合には、奥側被覆部22が奥側開口11から奥側に向けて脱離する際に、奥側被覆部22と鍔部16とが近接する。すると弾性当接部40は、奥側被覆部22と鍔部16との間で圧縮され、弾性変形する。そして弾性当接部40は、自身の弾性によって、奥側被覆部22を鍔部16の逆側(すなわち奥側周縁部18側)に向けて付勢する。このため、この場合にも奥側被覆部22は、奥側開口11から脱離し難い。これは、弾性当接部40が奥側被覆部22および鍔部16と別体であり奥側被覆部22および鍔部16に当接していない場合にも同様である。
【0065】
また、実施例1〜5の被覆部材2における外側被覆部21には外側リング部材29が取り付けられているが、被覆部材2の形状や被覆部材2と給油口構造1との相対位置などによっては、外側被覆部21には外側リング部材29を取り付けなくても良い。この場合には、外側抜け止め部24を奥側抜け止め部31と同様に厚肉にすることで、外側開口10からの外側被覆部21の脱離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例1の被覆部材の組付構造を模式的に表す断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】実施例2の被覆部材の組付構造を模式的に表す要部拡大断面図である。
【図4】実施例3の被覆部材の組付構造を模式的に表す要部拡大断面図である。
【図5】実施例4の被覆部材の組付構造を模式的に表す要部拡大断面図である。
【図6】実施例5の被覆部材の組付構造を模式的に表す要部拡大断面図である。
【図7】一般的な被覆部材の組付構造を模式的に表す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1:給油口構造 2:被覆部材
10:外側開口 11:奥側開口 12:フィラーネック
13:サイドメンバアウタ 14:ホイルハウスアウタ
15:フィラーネック本体部 16:鍔部 17:外側周縁部
18:奥側周縁部 20:被覆本体部 21:外側被覆部
22:奥側被覆部 29:外側リング部材 31:奥側抜け止め部
40:弾性当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のサイドメンバアウタに形成されている外側開口と、車体のホイルハウスアウタに形成されている奥側開口と、先端部が該奥側開口の内部を経て該外側開口に向けて延びるフィラーネックと、からなる給油口構造と、筒状をなし該給油口構造を覆う被覆部材と、の組付構造であって、
該被覆部材は、弾性材料からなり、筒状をなす被覆本体部と、該被覆本体部の軸方向の一端部に連続する筒状をなし該外側開口の内縁を覆うとともに該外側開口の周縁部と係合する外側被覆部と、該被覆本体部の軸方向の他端部に連続する筒状をなし該奥側開口の内縁を覆うとともに該奥側開口の周縁部と係合する奥側被覆部と、を持ち、
該フィラーネックは、筒状をなすフィラーネック本体部と、該フィラーネック本体部の外表面から外方に延びる鍔部と、を持ち、
該鍔部は該奥側開口よりも車体奥側に配置され、
該奥側被覆部と該鍔部との間には弾性変形可能な弾性当接部が介在し、
該弾性当接部は、該奥側被覆部と該鍔部との間で圧縮し弾性変形することで、該奥側被覆部のなかで該奥側開口よりも該鍔部側に位置する部分を該奥側開口の周縁部に向けて付勢することを特徴とする被覆部材の組付構造。
【請求項2】
前記弾性当接部は、前記奥側被覆部および前記鍔部よりも弾性変形し易い請求項1に記載の被覆部材の組付構造。
【請求項3】
前記弾性当接部は、前記奥側被覆部と前記鍔部との間に、圧縮状態で介在している請求項1または請求項2に記載の被覆部材の組付構造。
【請求項4】
前記弾性当接部は、前記奥側被覆部に一体化されている請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の被覆部材の組付構造。
【請求項5】
前記弾性当接部は、前記鍔部に一体化されている請求項1〜請求項4の何れか一つに記載の被覆部材の組付構造。
【請求項6】
前記弾性当接部は尖端形状をなす請求項4または請求項5に記載の被覆部材の組付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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