説明

被覆電線の被覆剥き装置

【課題】刃部を被覆に切り込ませた瞬間から、刃部が被覆電線の芯線に接触したか否かを確認できる被覆電線の被覆剥き装置を提供する。
【解決手段】被覆電線Wを把持する把持部3と、被覆電線Wの被覆Pに切り込んで被覆Pを剥く刃部5と、刃部5の被覆電線Wへの切り込みに先立って、被覆Pが残る箇所において被覆電線Wの芯線Cに接触するまで刺される針部4と、刃部5と針部4との間の電気的導通を検出する接触検出手段6とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃部を被覆に切り込ませて被覆電線の被覆を剥く被覆電線の被覆剥き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被覆電線の被覆を皮剥刃を用いて皮剥きする方法としては、被覆が剥がされて芯線の一部が露出すると直ちに芯線接触手段を芯線に接触させ、芯線接触手段と皮剥刃との間の電気的な導通の有無を検出し、芯線接触手段と皮剥刃との間の電気的な導通が検出されると被覆の皮剥きを停止する被覆電線の皮剥き方法があった(特許文献1参照)。
【0003】
上述の構成によると、皮剥刃と芯線接触手段との電気的な導通が検出されたときは、皮剥刃が芯線に接触して芯線を傷つけ得る状態にあるため、被覆電線の皮剥き作業を中止する。一方、皮剥刃と芯線接触手段との電気的な導通が検出されないときは、皮剥刃が芯線に接触しておらず、皮剥刃によって芯線が傷つけられることがないため、皮剥き作業を継続する。したがって、特許文献1の記載によれば、被覆電線の皮剥き作業と、この皮剥き作業による芯線の傷の有無を検査する作業とを効率良く行うことができたとされている。
【特許文献1】特開2001−112137号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術は、皮剥刃によって被覆電線の芯線が一部露出されてから、芯線接触手段を芯線に接触させるものである。このため、皮剥刃を被覆電線に切り込ませてから芯線接触手段を芯線に接触させるまでの間は、皮剥き作業による芯線の傷の有無を検査することができなかった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑み、刃部を被覆に切り込ませた瞬間から、刃部が被覆電線の芯線に接触したか否かを確認できる被覆電線の被覆剥き装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る被覆電線の被覆剥き装置の第1特徴構成は、被覆電線を把持する把持部と、前記被覆電線の被覆に切り込んで該被覆を剥く刃部と、前記刃部の前記被覆電線への切り込みに先立って、前記被覆が残る箇所において前記被覆電線の芯線に接触するまで刺される針部と、前記刃部と前記針部との間の電気的導通を検出する接触検出手段とを備えたことにある。
【0007】
本構成によると、前記刃部被覆電線への切り込みに先立ち、前記被覆が残る箇所において針部を被覆電線の芯線に接触するまで刺すため、前記刃部を被覆電線に切り込ませた瞬間から刃部が芯線に接触したか否かを確認することができる。したがって、被覆剥き作業によって傷つけられた可能性がある芯線を見落とすことがなく、芯線を傷つけずに被覆が剥かれた被覆電線を得ることができる。
【0008】
本発明に係る被覆電線の被覆剥き装置の第2特徴構成は、前記針部と前記把持部とを共通の基部に設けたことにある。
【0009】
本構成によると、前記針部と前記把持部とを共通の基部に設けているため、被覆電線を把持する工程と被覆電線に針部を刺す工程とを同じ工程として行うことができる。このため、効率良く被覆電線の被覆剥き作業を行うことできる。
【0010】
本発明に係る被覆電線の被覆剥き装置の第3特徴構成は、前記針部が前記把持部に形成された孔部に摺動可能に設けられると共に、前記把持部は前記基部に対して離間するよう付勢され、前記把持部が前記被覆電線を把持するまでは前記針部が前記孔部に引退し、前記把持部が前記被覆電線を把持した後に前記針部が前記孔部から突出するよう構成したことにある。
【0011】
本構成によると、前記針部は、前記把持部が前記被覆電線を把持するまでは前記孔部に引退し、前記把持部が前記被覆電線を把持した後に前記孔部から突出する。このため、針部を被覆電線の中心に向けて刺しやすくなり、針部が芯線に接触する確実性を高めることができる。したがって、刃部が芯線に触れたときの刃部と針部との間の電気的導通を確実に検出することができる。また、針部を被覆電線に刺すとき以外に、針部が被覆電線を傷つけることを防止できる。
【0012】
本発明に係る被覆電線の被覆剥き装置の第4特徴構成は、前記把持部が先端部にV字形状の溝を有すると共に、前記溝の底部に前記孔部が形成されたことにある。
【0013】
本構成によると、前記把持部が先端部にV字形状の溝を有し、前記溝の底部に前記孔部が形成されているため、被覆電線を把持するときに被覆電線が屈曲等していても、溝のV字形状に沿わせて被覆電線を底部へ案内することができる。このため、被覆電線をその底部で堅固に把持できると共に、針部を被覆電線の中心に向けて刺しやすくなり、針部が芯線に接触する確実性を高めることができる。したがって、刃部が芯線に触れたときの刃部と針部との間の電気的導通を確実に検出することができる。
【0014】
本発明に係る被覆電線の被覆剥き装置の第5特徴構成は、前記針部と前記芯線との間の電気的導通を検出する初期導通確認手段を備えたことにある。
【0015】
本構成によると、前記針部と前記芯線との間の電気的導通を検出する初期導通確認手段により針部が芯線に接触しているか否かを確認することができる。このため、針部が芯線に接触していることを確認してから、針部と刃部との間の電気的導通の検出作業を行うことができる。したがって、接触検出手段は、刃部が芯線に接触したときの刃部と針部との間の電気的導通を確実に検出することができ、被覆電線の被覆剥き装置の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る被覆電線の被覆剥き装置の実施形態として、針部と把持部と基部とを一対備えた例を図面に基づいて説明する。
【0017】
(全体構成)
被覆電線の被覆剥き装置1(以下、単に「被覆剥き装置1」とする)は、図1に示すごとく、基部2、把持部3、刃部5、針部4及び接触検出手段6から構成されている。把持部3は、被覆剥き作業中に被覆電線Wが動かないよう被覆電線Wを両側方から挟んで把持する。刃部5は、被覆電線Wの被覆Pに切り込み被覆Pを剥く。針部4は、刃部5の被覆電線Wへの切り込みに先立って、被覆Pが残る箇所において被覆電線Wの芯線Cに接触するまで刺される。把持部3と針部4とは共通の基部2に設けられている。接触検出手段6は、刃部5と針部4との間の電気的導通を検出する。
【0018】
被覆剥き装置1の動作の概要を説明すると、先ずは、図1(a)に示すごとく、把持部3によって被覆電線Wを把持した後、針部4を被覆Pに刺して芯線Cに接触させる。続いて、図1(b)のごとく、刃部5を被覆電線Wの被覆Pに切り込ませた瞬間から、接触検出手段6によって刃部5と針部4との間の電気的導通の検出を開始する。刃部5が芯線Cに触れると、接触検出手段6により電気的導通が検出される。
【0019】
本構成によると、刃部5を被覆電線Wに切り込ませた瞬間から、刃部5が芯線Cに接触したか否かを確認することができる。したがって、被覆剥き作業によって傷つけられた可能性がある芯線Cを見落とすことがなく、芯線Cを傷つけずに被覆Pが剥かれた被覆電線Wだけを得ることができる。
【0020】
(刃部)
刃部5は、図1に示すごとく、互いに近接し又は離間する左右一対の刃51、51から構成されている。被覆剥き作業を行うときは、刃部駆動機構(図示しない)により両刃51、51を互いに近接させて、被覆電線Wに刃51を切り込ませ、図4に示すごとく、引き抜くように被覆Pを剥く。
【0021】
刃51の被覆Pへの切り込み量は、刃51が芯線Cに触れない程度であり、かつ、被覆Pを引き抜くように剥くことができる程度に設定しているが、被覆電線Wが屈曲している場合や、被覆電線Wが不意に動いた場合等は、刃51が芯線Cに触れることがある。このため、本発明に係る被覆剥き装置1が必要となる。
【0022】
さらに、被覆Pの厚みに対応できるよう刃51の切り込み量は可変である。刃部5の構造は、従来使用されている刃部と同じであるため、詳細についての説明は省略する。
【0023】
(把持部)
図2に示すごとく、左右一対の把持部3、3が互いに対向して配置されており、夫々の把持部3は対応する基部2に摺動可能に備えられている。基部2を把持部駆動機構(図示しない)によって近接又は離間し、把持部3の先端部33に形成されたV字形状の溝34で被覆電線Wを挟んで把持する。
【0024】
基部2には、図3に示すごとく、その両側面を引退させて雄部22が形成されており、把持部3には雄部22の形状に対応した形状の雌部32が形成されている。把持部3は、その雌部32を雄部22に沿わせて基部2に対して摺動できる。
【0025】
図2(b)に示すごとく、基部2は突部23を有し、把持部3には突部23が挿入される長穴39が形成されている。把持部3の基部2に対する摺動に伴い、突部23は長穴39の内部を摺動するが、突部23が長穴39の両端部と当接したとき把持部3は停止する。このように、突部23と長穴39とを設けることによって、把持部3が基部2に対して摺動できる範囲を制限できる。
【0026】
図3に示すごとく、把持部3には孔部31が、基部2には固定用孔部21が形成されており、中空状の絶縁体12が固定用孔部21に挿入固定されつつ孔部31に挿入されている。針部4は絶縁体12の中空部13に挿入固定されている。このため、針部4は絶縁体12及び基部2と一体となって動作し、針部4は絶縁体12と共に孔部31に沿って把持部3に対して摺動可能となる。把持部3と基部2とが離間したとき針部4は孔部31の内部に引退し、把持部3が基部2に対して近接したとき孔部31から突出するよう針部4の長さ、針部4の摺動幅等を設定している。また、針部4が孔部31から最も突出したときの突出長さは、被覆Pの厚みよりも大きくなければならない。
【0027】
雄部22と雌部32との間にはスプリング11が配置されており、把持部3は基部2に対して離間するよう付勢されている。
【0028】
本構成によると、把持部3が被覆電線Wを把持するまでは針部4を孔部31に引退させておき、把持部3が被覆電線Wを把持してそれ以上互いに近接できなくなった後、さらに基部2同士を近接させる方向に力を加え、針部4を孔部31から突出させ、被覆電線Wに刺すことができる。また、被覆電線Wをより強く把持できる。このため、針部4を被覆電線Wの中心に向けて刺しやすく、針部4が芯線Cに接触する確実性を高めることができ、刃部5が芯線Cに触れたときの刃部5と針部4との間の電気的導通を確実に検出することができる。さらに針部4を被覆電線Wに刺すとき以外に、針部4が被覆電線Wを傷つける危険性がなくなる。
【0029】
また、把持部3と針部4とが共通の基部2に設けられているため、被覆電線Wを把持する工程と被覆電線Wに針部4を刺す工程とを同じ工程として行うことができる。このため、効率良く被覆電線Wの被覆剥き作業を行うことできる。
【0030】
把持部3は、図2に示すごとく、把持部3の先端部33に櫛状に配置された略三角形断面である4枚の歯を有し、各歯はその傾斜面36が交互に上、下を向いている。ここでは、傾斜面36が下を向いている歯を上歯37、傾斜面36が上を向いている歯を下歯38とする。このように、上歯37と下歯38とが交互に並んで、V字形状の溝34が構成されている。上歯37、下歯38の並びは、左右の把持部3において逆に構成している。このため、両把持部3、3が互いに近接したとき、一方の把持部3の上歯37と他方の把持部3の下歯38とが嵌み合う。歯の向きを交互である前記嵌合が4組形成され、その被覆電線Wを堅固に把持することができる。
【0031】
本構成によると、両把持部3、3が互いに近接し、一方の把持部3の溝34と他方の把持部3の溝34とで被覆電線Wが囲まれると、被覆電線Wが屈曲等していても、夫々の傾斜面36で形成されたV字形状に沿って被覆電線Wを溝34の底部35に案内することができる。このため、被覆電線Wをその底部35で堅固に把持できる。
【0032】
また、孔部31は溝34の底部35を中心として設けられている。上述したように、被覆電線Wは底部35で把持されているため、針部4を被覆電線Wの中心に向けて刺しやすくなり、針部4が芯線Cに接触する確実性を高めることができる。したがって、刃部5が芯線Cに触れたときの刃部5と針部4との間の電気的導通を確実に検出することができる。
【0033】
本実施形態においては、それぞれの歯の傾斜面36を溝34の底部35において微小角度屈曲させている。このため、両把持部3、3が近接したとき、図4に示すごとく、溝34の底部35においては被覆電線Wを挟み込む隙間が生じるが、傾斜面36の上端周辺と下端周辺とにおいて隙間はほとんど生じない。したがって、被覆電線Wを把持したときに、把持部3同士のガタつきが生じにくい。
【0034】
針部4と把持部3又は基部2との間を絶縁体12によって絶縁しているため、把持部3、基部2、針部4が導電可能な素材で製造されている場合であっても、針部4が孔部31の内壁又は固定用孔部21の内壁と接触し無関係な電気反応を検出することがない。絶縁体12は、静電気を帯び易い素材でないならば、ポリ塩化ビニル等の一般的な合成樹脂製で良い。
【0035】
歯の枚数やその厚み、又は先端部33の形状は、底部35で被覆電線Wを堅固に把持できるならば、本実施形態のものに限定しない。
【0036】
(針部)
針部4、4は、上述したように、夫々の基部2、2の固定用孔部21に挿入固定され、孔部31に沿って夫々の把持部3、3に対して摺動可能である。針部4は、図3に示すごとく、被覆電線Wの芯線Cに接触する突先44を有する先端部41と、絶縁体12を介して基部2に固定される根元部42と、先端部41と根元部42との間の中間部43とから構成されている。基部2の固定用孔部21に固定された絶縁体12の内周と、根元部42の外周とにはネジ山が切ってあり、針部4は絶縁体12に着脱可能となっている。針部4を孔部31の所定の位置までねじ込み、ナット45を締めてその位置を保持する。このように、針部4の孔部31への挿入長さを調節することができる。
【0037】
先端部41の突先44は、図5に示すごとく、丸めてある。突先44が鋭利であると、被覆Pを突き破り、さらに芯線Cにまで突き刺さり芯線Cを傷つける可能性がある。突先44が丸いと、針部4が被覆Pの厚み以上突き刺さっても、芯線Cを圧迫する程度で済む。したがって、被覆Pの厚み及び硬さ、芯線Cの太さ等を勘案して、被覆Pを突き破ることができ且つ芯線Cを傷つけ得ない程度に突先44を丸めている。
【0038】
根元部42には接続部材46が設けてあり、一方の針部4の接続部材46と他方の針部4の接続部材46の間を配線接続している。
【0039】
(接触検出手段)
図1に示すごとく、双方の刃51、51、双方の針部4、4は、夫々配線接続されており、さらに、両刃51、51の接続回路61と両針部4、4の接続回路62とを接続回路63によって並列に接続している。接続回路63に接触検出手段6が設けられており、両刃51、51の少なくとも一方が芯線Cに接触すると接続回路63は電気的に導通し、接触検出手段6は刃部5と針部4との間の電気的導通を検出する。
【0040】
接触検出手段6としては、電流計、電圧計、抵抗測定器等が使用できる。
【0041】
(被覆剥きの工程について)
被覆Pを剥きたい被覆電線Wを、図2(a)に示すごとく、両把持部3、3で把持しやすい位置に配置し、基部2を把持部駆動機構によって水平移動させて互いに近接させ、把持部3の先端部33の溝34で被覆電線Wを挟んで把持する。被覆電線Wは溝34のV字形状に沿って、その底部35に案内されており、溝34の底部35で堅固に把持されている。刃部5は未だ被覆電線Wに切り込んでおらず、また、針部4は孔部31に引退している。
【0042】
このとき、両把持部3、3は互いに略接触して、それ以上近接できない。図4に示すごとく、さらに基部2を互いに近接させる方向に力を加えると、針部4が基部2と共に把持部3に対して摺動し、孔部31より突出し始める。そして、針部4の突先44は被覆Pを突き破り、芯線Cに接触する。上述したように、針部4は底部35から突出し、さらに、被覆電線Wは底部35にて把持されているため、針部4を被覆電線Wの中心に向けて刺しやすくなる。また、その摺動範囲は突部23と長孔とで制限されており、突先44が必要以上に被覆電線Wに刺ささり芯線Cを傷つけることはない。図4(a)は、把持部3によって被覆電線Wを把持した直後の把持部3等の断面を示し、図4(b)は、針部4を被覆電線Wに刺した状態の把持部3等の断面を示している。
【0043】
その後、刃部駆動機構(図示しない)により被覆Pに両刃51、51を切り込ませ、図4に示すごとく、引き抜くように被覆Pを剥く。このとき、刃部5と針部4との間の電気的導通を接触検出手段6によって検出する。両刃51、51の少なくとも一方が芯線Cに接触すると、接触検出手段6が電気的導通を検出する。
【0044】
そして、接触検出手段6の検出結果に基づいて、ランプや警報音による報知、被覆剥き装置1の強制停止、電気的導通が検出された被覆電線Wの廃棄等を行う。被覆剥き作業により芯線Cが傷つけられた可能性がある被覆電線Wを検出することができ、芯線Cを傷つけずに被覆Pが剥かれた被覆電線Wだけを得ることができる。
【0045】
本実施形態においては、針部4は孔部31から出退可能であるが、被覆電線Wを把持した上で、針部4を被覆電線Wに刺すことができる構成であれば、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すごとく、溝34が底部35に被覆電線Wの径に対応した半円状の切欠部81を有しており、その切欠部81に針部4としての固定針82が固定されているような構成であっても良い。
【0046】
(別の実施形態1)
両針部4、4の間の電気的導通を検出する初期導通確認手段7を設けた実施形態を図6に基づいて説明する。上述の実施形態と同様の構成については、説明は省略する。同じ構成の箇所には同じ符号を付すこととする。
【0047】
初期導通確認手段7は、接続回路62に設けられており、芯線Cを介した両針部4、4の間の電気的導通を検出する。初期導通確認手段7が電気的導通を検出しないときは、両針部4、4の一方又は両方が芯線Cに接触していないということになる。このため、両針部4、4が芯線Cに接触していることを確認してから、針部4と刃部5との間の電気的導通の検出作業を行うことができる。したがって、接触検出手段6は、刃部5が芯線Cに接触すれば必ず電気的導通を検出することができ、被覆剥き装置1の信頼性が向上する。
【0048】
(別の実施形態2)
上述の実施形態では把持部3及び基部2を水平移動によって互いに近接させる例を示したが、把持部3及び基部2を回転移動によって互いに近接させる場合の実施形態を図に基づいて説明する。
【0049】
基部2は、図7に示すごとく、枢支軸24を中心として揺動自在である。把持部駆動機構によって基部2が揺動し、基部2に備えられた把持部3は互いに近接し又は離間する。把持部3が互いに離間し開いた状態のときに、上方から被覆電線Wを左右の把持部3、3の間に配置する。
【0050】
把持部3の上歯37がR形状に加工してあるため、上歯37が略三角形断面である場合に比べて、把持部3の開きが小さくても、被覆電線Wを所定の位置に配置することができる。このため、基部2の揺動範囲は小さくても良く、被覆剥き装置1をコンパクトにすることができる。また、上歯37がR形状であるため、より滑らかに被覆電線Wを溝34の底部35に案内することができる。
【0051】
(別の実施形態3)
上述の実施形態では、一対の把持部で被覆電線Wを把持する例を示したが、一つの把持部3で被覆電線Wを把持する実施形態を図面に基づいて説明する。
【0052】
把持部3は、図9に示すごとく、先端部33にV字形状のV字歯83を二枚有し、両
V字歯83、83の間には平坦面84が設けられ、V字形状の溝34が構成されている。また、凸状断面を有する受部86が把持部3に対抗して固定配置されており、その凸面87に把持部3が近接し、凸面87と把持部3の平坦面84とで被覆電線Wを挟んで把持する。このため、被覆電線Wが屈曲等していても、V字歯83の傾斜面85に沿って被覆電線Wを溝34の底部35に案内することができる。
【0053】
また、底部35の延長線上であって平坦面84の任意の点を中心として孔部31が設けてある。上述したように、被覆電線Wは底部35で把持されるため、針部4を被覆電線Wの中心に向けて刺しやすくなり、針部4が芯線Cに接触する確実性を高めることができる。したがって、刃部5が芯線に触れたときの刃部5と針部4との間の電気的導通を確実に検出することができる。
【0054】
本実施形態において初期導通確認手段7を備える場合は、図示はしないが、被覆電線Wの長手方向の二箇所に針部4を刺せるよう、孔部31に二つの針部4を摺動可能に設ける。そして、両針部4、4を配線接続し、その接続回路62に初期導通確認手段7を設けると良い。このときも、接続回路62と刃51、51同士の接続回路61とを接続回路63で並列に接続し、接続回路63に接触検出手段6を設ける。本構成によれば、少ない部品点数の本実施形態の被覆剥き装置1においても、初期導通確認手段7によって、両方の針部4が芯線Cに接触しているか否かを確認することができる。したがって、接触検出手段6は、刃部5が芯線Cに接触すれば必ず電気的導通を検出することができ、信頼性の高い被覆剥き装置1を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】被覆剥き装置の概略を示す模式図であって、(a)は刃部が切り込む前の状態を示す図、(b)は被覆を剥いている状態を示す図
【図2】(a)は被覆電線把持前の被覆剥き装置の上面図、(b)はそのときの側面図
【図3】基部、把持部及び針部の断面図であって、(a)は被覆電線把持直後の状態を示す図、(b)は被覆電線把持後に針部を被覆電線に刺している状態を示す図
【図4】(a)は被覆剥き中の被覆剥き装置の上面図、(b)はそのときの側面図
【図5】芯線と針部との接触状態を示す図
【図6】初期導通確認手段を備えた別実施形態1の概略を示す模式図
【図7】別実施形態2の基部、把持部及び針部の断面図であって、(a)は被覆電線把持前の状態を示す図、(b)は被覆電線把持後に針部を被覆電線に刺している状態を示す図
【図8】把持部と針部との別の例を示す側面図
【図9】(a)は別実施形態3の把持部と針部の断面図、(b)はそのときの側面図
【符号の説明】
【0056】
1 被覆電線の被覆剥き装置
2 基部
3 把持部
4 針部
5 刃部
6 接触検出手段
7 初期導通確認手段
31 孔部
33 先端部
34 溝
35 底部
W 被覆電線
C 芯線
P 被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線を把持する把持部と、
前記被覆電線の被覆に切り込んで該被覆を剥く刃部と、
前記刃部の前記被覆電線への切り込みに先立って、前記被覆が残る箇所において前記被覆電線の芯線に接触するまで刺される針部と、
前記刃部と前記針部との間の電気的導通を検出する接触検出手段とを備えた被覆電線の被覆剥き装置。
【請求項2】
前記針部と前記把持部とを共通の基部に設けた請求項1に記載の被覆電線の被覆剥き装置。
【請求項3】
前記針部が前記把持部に形成された孔部に摺動可能に設けられると共に、
前記把持部は前記基部に対して離間するよう付勢され、
前記把持部が前記被覆電線を把持するまでは前記針部が前記孔部に引退し、前記把持部が前記被覆電線を把持した後に前記針部が前記孔部から突出するよう構成してある前記請求項1又は2に記載の被覆電線の被覆剥き装置。
【請求項4】
前記把持部が先端部にV字形状の溝を有すると共に、前記溝の底部に前記孔部が形成された請求項1乃至3のいずれか一項に記載の被覆電線の被覆剥き装置。
【請求項5】
前記針部と前記芯線との間の電気的導通を検出する初期導通確認手段を備えた請求項4に記載の被覆電線の被覆剥き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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