被記録媒体カセット、被記録媒体給送装置、記録装置
【課題】下段側トレイと上段側トレイとを備えた複数段構造の用紙カセットにおいて、下段側トレイへの用紙補給時の作業性を向上させる。
【解決手段】用紙カセット１００は、下段側トレイ５０と、この下段側トレイ５０の上部において給送可能位置と退避位置との間をスライド変位可能な上段側トレイ６０と、を備えた複数段式の用紙カセットである。上段側トレイ６０は、スライド部材５６に回動支点を有し、当該回動支点を中心にして側方に回動可能に設けられており、これにより下段側トレイ５０の先端側及び後端側のいずれの方向も空間が大きく確保される。よって、下段側トレイ５０への用紙補給時の作業性を向上させることができる。
【解決手段】用紙カセット１００は、下段側トレイ５０と、この下段側トレイ５０の上部において給送可能位置と退避位置との間をスライド変位可能な上段側トレイ６０と、を備えた複数段式の用紙カセットである。上段側トレイ６０は、スライド部材５６に回動支点を有し、当該回動支点を中心にして側方に回動可能に設けられており、これにより下段側トレイ５０の先端側及び後端側のいずれの方向も空間が大きく確保される。よって、下段側トレイ５０への用紙補給時の作業性を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、装置本体に対し着脱可能な被記録媒体カセットに関する。また本発明は、前記被記録媒体カセットを備えた被記録媒体給送装置、およびこれを備えた、ファクシミリやプリンター等に代表される記録装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
装置本体に対して着脱可能な用紙カセットは従来から広く用いられている。また、その中でも特許文献１や特許文献２に示されるように、一つの着脱自在な用紙カセット（トレイ）において下段と上段に用紙収容部を備えた２段式構造のものが知られている。尚、記録装置において用紙を収容する用紙収容部の呼称としては「カセット」、「トレイ」など種々のものがあるが、本明細書では装置本体に対して着脱可能な一つのユニット体全体を「カセット」と言い、このカセット内に設けられた複数の用紙収容部を「トレイ」と言うこととする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００６−２７３５６５号公報
【特許文献２】特開２００７−９１４４５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記従来の２段式構造の用紙カセットにおいては、上段トレイは下段トレイに対し、用紙の送り出し方向側（先端側）に回動することで下段トレイが開放される様に構成されている。この様な従来構成において、下段トレイに用紙を補給する場合には、上段トレイを上記の様に回動させるが、上段トレイが前進位置にある状態で当該上段トレイを回動させた場合には下段トレイの後端側から用紙を差し入れることとなる。
【０００５】
しかしながら、トレイの先端側には分離傾斜面が形成されている関係上、用紙の後端をガイドするエッジガイドのガイド面も分離傾斜面に合わせてアンダーカット形状となっていることが多く、この様な場合には一旦エッジガイドを退避させてから、用紙を補給し、その後再びエッジガイドを用紙後端に突き当てる必要があり、手間を要する。
【０００６】
また、上段トレイが後退位置にある状態で当該上段トレイを回動させた場合には、下段トレイの先端側から用紙を差し入れることとなる。しかしながらこの場合、下段トレイの上方には上段トレイが存在していることとなり、当該上段トレイが邪魔となって下段トレイへの用紙補給作業が行い難い。
【０００７】
更に、用紙の側端をガイドするエッジガイドには、用紙の積載枚数を規制する庇形状が設けられる場合があるが、この様な場合には下段側トレイの先端側、後端側いずれの方向から用紙を補給する場合でも、用紙が庇形状に引っ掛かり、用紙補給作業が行い難い。
【０００８】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、下段側トレイと上段側トレイとを備えた複数段構造の用紙カセットにおいて、下段側トレイへの用紙補給時の作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
上記課題を解決する為の、本発明の第１の態様に係る被記録媒体カセットは、被記録媒体を収容する下段側トレイと、被記録媒体の送り出し方向に対し交差する方向の側部に回動支点を有し、当該回動支点を中心にして、前記下段側トレイの上部において前記下段側トレイに対し側方に回動可能に設けられた、被記録媒体を収容する上段側トレイと、を備えて構成されたことを特徴とする。
【００１０】
本態様によれば、下段側トレイと上段側トレイとを備えた複数段構造の被記録媒体カセットは、上段側トレイが、被記録媒体の送り出し方向に対し直交する方向の側部に回動支点を有し、当該回動支点を中心にして側方に回動可能に設けられているので、下段側トレイへの被記録媒体補給時には上段側トレイを側方に回動させることで、下段側トレイの先端側及び後端側のいずれの方向も上部空間が大きく確保され、下段側トレイへの被記録媒体補給時の作業性を向上させることができる。
【００１１】
本発明の第２の態様は、第１の態様において、前記下段側トレイは、被記録媒体の一方側のサイドエッジをガイドする、被記録媒体のサイズに合わせて変位可能な可動エッジガイドと、被記録媒体の他方側のサイドエッジをガイドする、固定的に設けられた固定エッジガイドと、を備え、前記回動支点が、前記固定エッジガイドの側に設けられていることを特徴とする。
【００１２】
本態様によれば、上段側トレイが、下段側トレイにおいて固定的に設けられた固定エッジガイドの側の側部に回動支点を有しているので、上段側トレイを回動させて下段側トレイの被記録媒体収容空間を露呈させた際に、可動エッジガイドの操作を上段側トレイが邪魔することがない。
【００１３】
本発明の第３の態様は、第１のまたは第２の態様において、前記上段側トレイは、前記下段側トレイに対して被記録媒体の送り出し方向にスライドするスライド部材に対して回動可能に設けられ、前記スライド部材は、そのスライド方向に形成されたラックを有し、前記下段側トレイには、前記ラックと噛合するピニオン歯車が設けられ、当該ピニオン歯車の回転によって前記上段側トレイがスライド変位可能に構成されていることを特徴とする。
【００１４】
本態様によれば、上段側トレイは、下段側トレイに対して被記録媒体の送り出し方向にスライドするとともにピニオン歯車と噛合するラックが形成されたスライド部材に対して回動可能に設けられているので、スライド変位し且つ回動する上段側トレイの可動部構造を、構造簡単にして低コストに構成することができる。
【００１５】
本発明の第４の態様は、第１から第３の態様のいずれかにおいて、前記上段側トレイの回動支点が、前記上段側トレイの側壁より外側に設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、上段側トレイの回動支点が、前記上段側トレイの側壁より外側に設けられているので、上段側トレイの回動支点を構成するに際して上段側トレイの被記録媒体収容空間を侵食することがない。
【００１６】
本発明の第５態様は、被記録媒体を給送する被記録媒体給送装置であって、第１から第４の態様のいずれかに係る被記録媒体カセットを備えていることを特徴とする。また本発明の第６の態様は、被記録媒体に記録を行う記録手段と、第５の態様に係る被記録媒体給送装置と、を備えたことを特徴とする記録装置である。これらの態様によれば、第１から第４の態様のいずれかと同様な作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明の一実施形態に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図２】本発明の一実施形態に係る用紙カセットの斜視図。
【図３】本発明の一実施形態に係る用紙カセットの斜視図。
【図４】本発明の一実施形態に係る用紙カセットの部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【００１８】
以下、図１乃至図３参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。図１は本発明に係る「記録装置」の一実施形態であるインクジェットプリンター（以下「プリンター」と言う）１の用紙搬送経路を示す側断面図、図２及び図３は本発明に係る「被記録媒体カセット」の一実施形態である用紙カセット１００の斜視図であり、図２は上段側トレイ６０の閉状態を、図３は上段側トレイ６０の開状態を、それぞれ示したものである。また、図４は用紙カセット１００の一部分を用紙送り方向と直交する面で切断した断面図である。尚、図１において右方向は用紙送り出し方向、図面表裏方向が用紙幅方向を示している。また、図４は側壁５０ｂと用紙との関係を模式的に示した図であり、それ以外に本来表れる構成要素は省略している。
【００１９】
以下、図１を参照しつつプリンター１の全体構成について概説する。プリンター１は、装置底部に給送装置２を備え、当該給送装置２から、「被記録媒体」の一例としての用紙（主として単票紙）を１枚ずつ給送し、記録手段４において記録（インクジェット記録）を行い、装置前方側（図１において左側）に設けられた図示しない排紙スタッカへ向けて排出される構成を備えている。
【００２０】
以下、用紙搬送経路上の構成要素について更に詳説する。
給送装置２は、用紙カセット１００と、ピックアップローラー１６と、ガイドローラー２０と、分離手段２１と、を備えている。
【００２１】
複数枚の用紙Ｐを積層状態でセット可能な用紙カセット１００は、給送装置２の装置本体に対し、装置前方側から装着及び取り外し可能であり、下部に位置して用紙カセット１００の基体を構成する下段側トレイ５０と、その上部に位置する、給送可能位置と退避領域との間をスライド可能な上段側トレイ６０と、の２つの用紙収容部を備えている。
【００２２】
尚、図１においては、下段側トレイ５０に収容される用紙を符号Ｐ１で、上段側トレイ６０に収容される用紙を符号Ｐ２で、それぞれ示している（以下特に区別する必要がない場合は「用紙Ｐ」と言う）。
【００２３】
図示しないモータによって回転駆動されるピックアップローラー１６は、揺動軸１８を中心に揺動する揺動部材１７に設けられており、上段側トレイ６０が最も装置後方側（図１において左方向：用紙カセット１００の引き抜き方向側）にスライドした状態、即ち上段側トレイ６０が退避領域にあるときは、下段側トレイ５０に収容された用紙Ｐ１の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙Ｐ１を下段側トレイ５０から送り出す。
【００２４】
また上段側トレイ６０が最も装置前方側（図１において右方向：用紙カセット１００の装着方向側）にスライドした突き当て位置にあるとき、即ち上段側トレイ６０の給送可能位置では、上段側トレイ６０に収容された用紙Ｐ２の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙Ｐ２を上段側トレイ６０から送り出す。
【００２５】
この上段側トレイ６０が給送可能位置に位置決めされた状態（図１の状態）では、下段側トレイ５０の分離斜面５４が、上段側トレイ６０の前方側内壁よりも上段側トレイ６０に収容された用紙先端側に突出するように構成されており、これにより分離斜面５４が上段側トレイ６０から用紙が送り出される際の分離手段として利用されるようになっている。即ち、下段側トレイ５０の分離斜面５４が、下段側トレイ５０と上段側トレイ６０の共通の分離手段として利用される様になっている。
【００２６】
次に、分離斜面５４の下流側には自由回転可能なガイドローラー２０が設けられ、このガイドローラー２０の下流側には、分離ローラー２２と駆動ローラー２３とを備えて構成された分離手段２１が設けられている。分離ローラー２２は、外周面が弾性材によって形成されるとともに駆動ローラー２３と圧接可能に設けられ、且つ、トルクリミッタ機構により、所定の回転抵抗が与えられた状態に設けられている。従って重送されようとする次位以降の用紙Ｐが、当該分離ローラー２２と駆動ローラー２３との間で止められ、即ち重送が防止される様になっている。尚、駆動ローラー２３は図示しないモータにより用紙Ｐを下流側へ送る方向に回転駆動される。
【００２７】
分離手段２１の下流側には、図示しないモータにより回転駆動される駆動ローラー２６と、駆動ローラー２６との間で用紙Ｐをニップして従動回転するアシストローラー２７と、を備えて構成された第１中間送り部２５が設けられており、この第１中間送り部２５により、用紙Ｐが更に下流側へと送られる。尚、符号２９は、用紙Ｐが湾曲反転経路を通過する際の（特に用紙後端が通過する際の）通紙負荷を軽減する従動ローラーを示している。
【００２８】
従動ローラー２９の下流側には図示しないモータにより回転駆動される駆動ローラー３２と、駆動ローラー３２との間で用紙Ｐをニップして従動回転するアシストローラー３３と、を備えて構成された第２中間送り部３１が設けられており、この第２中間送り部３１により、用紙Ｐが更に下流側へと送られる。
【００２９】
第２中間送り部３１の下流側には、記録手段４が配置されている。記録手段４は、搬送手段５と、記録ヘッド４２と、下部紙案内３９と、排出手段６と、を備えている。搬送手段５は、モータによって回転駆動される搬送駆動ローラー３５と、該搬送駆動ローラー３５に圧接して従動回転するよう上部紙案内３７に軸支される搬送従動ローラー３６とを備えて構成されている。搬送手段５に到達した用紙Ｐは、搬送駆動ローラー３５と搬送従動ローラー３６とによってニップされた状態で搬送駆動ローラー３５が回転することにより、下流側へと精密送りされる。
【００３０】
続いて記録ヘッド４２はキャリッジ４０の底部に設けられ、当該キャリッジ４０は主走査方向（図１の紙面表裏方向）に延びるキャリッジガイド軸４１にガイドされながら、図示しない駆動モータによって主走査方向に往復動する様に駆動される。尚、キャリッジ４０はインクカートリッジを搭載しない所謂オフキャリッジタイプであり、インクカートリッジ（図示せず）がキャリッジ４０から独立して設けられ、インク供給チューブ（図示せず）を介してインクカートリッジから記録ヘッド４２へとインクが供給されるように構成されている。
【００３１】
記録ヘッド４２と対向する位置には下部紙案内３９が設けられ、当該下部紙案内３９によって、用紙Ｐと記録ヘッド４２との距離が規定されるようになっている。そして下部紙案内３９の下流側には、記録の行われた用紙Ｐを排出する排出手段６が設けられている。排出手段６は図示しないモータによって回転駆動される排出駆動ローラー４４と、当該排出駆動ローラー４４に接して従動回転する排出従動ローラー４５とを備えて構成され、記録手段４によって記録の行われた用紙Ｐは、排出手段６により、装置前方側に設けられた図示を省略するスタッカへと排出される。
【００３２】
以上がプリンター１の概要であり、以下、用紙カセット１００について図２及び図３をも併せて参照しつつ更に詳説する。
下段側トレイ５０は、その底面５０ａに、用紙送り方向（即ち、用紙長さ方向）にスライド可能なエッジガイド５１（図１）を備えており、このエッジガイド５１により後端エッジの位置が規制されるようになっている。
【００３３】
また、用紙送り方向と直交する方向（即ち、用紙幅方向）にスライド可能なエッジガイド５２も設けられており、このエッジガイド５２により、一方側のサイドエッジの位置が規制されるようになっている。尚、他方側のサイドエッジを規制するのは、下段側トレイ５０の側壁５０ｂ（図２、図４）となる。即ち、下段側トレイ５０の側壁５０ｂは、固定エッジガイドとして機能する。
【００３４】
ここで、用紙Ｐ１の後端位置を規制するエッジガイド５１は、ガイド面５１ａが、分離斜面５４とほぼ平行になるように傾斜面で形成されており、これによってエッジガイド５１を用紙後端に突き当てた際に、用紙束の先端が分離斜面５４に倣う様になっている。
【００３５】
また、用紙Ｐ１のサイドエッジを規制するエッジガイド５２には、庇部５３が形成されている。庇部５３は、積載された用紙の上方に迫り出す様に設けられており、これによりその下面が、用紙Ｐ１の積載枚数を規制する規制面として機能する様になっている。
【００３６】
次に、下段側トレイ５０の底面５０ａには、ピックアップローラー１６と用紙Ｐ１との接触位置に対応する場所に高摩擦材（不図示）が配置されており、この高摩擦材により、ピックアップローラー１６による用紙送り出し時に用紙束ごと下流側に送られないよう、当該用紙束が保持される様になっている。
【００３７】
一方、上段側トレイ６０についても下段側トレイ５０と同様に、その底面６０ａに、用紙長さ方向にスライド可能なエッジガイド６１と、用紙幅方向にスライド可能なエッジガイド（不図示）と、を備えている。またピックアップローラー１６と用紙Ｐ２との接触位置に対応する場所に高摩擦材６４（図２）が配置されている。
【００３８】
続いて、上段側トレイ６０の可動構造について説明する。下段側トレイ５０の側壁５０ｂ、５０ｃには、段差部が形成されており（図３、図４において側壁５０ｃ側に形成された段差部を符号５０ｄで示す）、側壁５０ｂ側に形成された段差部に沿って、スライド部材５６が用紙送り方向及びその逆方向にスライド変位可能に設けられている。
【００３９】
上段側トレイ６０は、用紙送り方向と直交する方向の一方側端部に設けられた接続部６０ｃ、６０ｄが、スライド部材５６の前後方向端部において回動可能に設けられており、これにより上段側トレイ６０は、図４に示すように側方に回動可能となっている。尚、本実施形態において上段側トレイ６０の回動限度は、図４に示す状態であり、即ち９０度より大きい。
【００４０】
上段側トレイ６０の他方側端部には、係止部６０ｅ、６０ｆが形成されており、この係止部６０ｅ、６０ｆが、下段側トレイ５０の側壁５０ｃに形成された段差部５０ｄに係止することで上段側トレイ６０が閉姿勢を規定される。そしてまた、係止部６０ｅ、６０ｆが、段差部５０ｄに対してスライドすることで、上段側トレイ６０がスライド変位できる様になっている。
【００４１】
次に、スライド部材６６の内側下面には、ラック５６ａが形成されており、このラック５６ａに、下段側トレイ５０に設けられたピニオン歯車５５が噛合する様に構成されている。即ち、ピニオン歯車５５が回転することにより、上段側トレイ６０がスライド変位する様に構成されている。
【００４２】
このピニオン歯車５５は、用紙カセット１００がプリンター１の装置本体に装着された際に、プリンター１の装置本体側に設けられた駆動歯車（不図示）と噛合可能となっている。この駆動歯車は、図示しないモーターにより回転駆動される様になっており、これによって上段側トレイ６０が駆動される様になっている。
【００４３】
以上説明した様に、本実施形態に係る用紙カセット１００においては、上段側トレイ６０が、用紙送り出し方向に対し直交する方向の側部に回動支点を有し、当該回動支点を中心にして側方に（本実施形態では図４に示す様に後方側から見て右側方に）回動可能に設けられているので、下段側トレイ５０への用紙補給時には上段側トレイ６０を側方に回動させることで、下段側トレイ５０の先端側及び後端側のいずれの方向も上部空間が大きく確保される。よって、下段側トレイ５０への用紙補給時の作業性を向上させることができる。
【００４４】
特に、本実施形態では、図１を参照しつつ説明した様に用紙後端位置を規制するエッジガイド５１のガイド面５１ａがアンダーカット状に傾斜しているので、仮にカセット後端側から用紙を補給する場合には一旦エッジガイド５１を後方に退避させてから、用紙を補給し、その後再度用紙後端に突き当てる必要がある。しかし、上述の通り用紙カセット１００は、先端側からも用紙の補給が可能であるので、上記の様なエッジガイド操作は不要となる。
【００４５】
尚、図３は上段側トレイ６０が突き当て位置にある状態で回動した様子を示しているが、上段側トレイ６０はその変位可能領域のいずれにあっても、図３に示す如く側方に回動することができる。
【００４６】
加えて、下段側トレイ５０に収容された用紙Ｐ１のサイドエッジを規制するエッジガイド５２には、図１を参照しつつ説明した様に庇部５３が形成されている為、用紙補給時に用紙が庇部５３に引っ掛かり、用紙補給作業を阻害し易いが、上段側トレイ６０は側方に回動するので、用紙補給時には用紙のエッジをエッジガイド５２に突き当ててから収容することができ、庇部５３の存在に拘わらず用紙補給作業が容易となる。
【００４７】
また本実施形態では、上段側トレイ６０は変位可能なエッジガイド５２の側ではなく、固定エッジガイドとして機能する側壁５０ｂの側の側部に回動支点を有するので、上段側トレイ６０を回動させて下段側トレイ５０の用紙収容空間を露呈させた際に、エッジガイド５２の操作を上段側トレイ６０が邪魔することがない。
【００４８】
更に、上段側トレイ６０は、下段側トレイ５０に対して用紙送り出し方向及びその逆方向にスライドするとともにピニオン歯車５５と噛合するラック５６ａが形成されたスライド部材５６に対して回動可能に設けられているので、スライド変位し且つ回動する上段側トレイ６０の可動部構造を、構造簡単にして低コストに構成することができる。
【００４９】
更に加えて、本実施形態では、上段側トレイ６０の回動支点が、上段側トレイ６０の側壁（より具体的には、当該側壁において上段側トレイ６０の用紙収容空間を形成する内壁）より外側に設けられているので、上段側トレイ６０の回動支点を構成するに際して上段側トレイ６０の用紙収容空間を侵食することがない。尚、本実施形態では、スライド部材５６が上段側トレイ６０の用紙収容空間を形成する側壁を兼ねている。
【００５０】
以上説明した実施形態は一例であり、これに限られないことは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、上段側トレイ６０をカセット後端側から見て右開きとなる様構成しているが、左開きとなる様構成しても良い。
【符号の説明】
【００５１】
１ インクジェットプリンター、２ 給送装置、４ 記録手段、５ 搬送手段、６ 排出手段、１６ ピックアップローラー、１７ 揺動部材、１８ 揺動軸、２０ 従動ローラー、２１ 分離手段、２２ 分離ローラー、２３ 駆動ローラー、２５ 第１中間送り部、２６ 駆動ローラー、２７ アシストローラー、２９ 従動ローラー、３１ 第２中間送り部、３２ 駆動ローラー、３３ アシストローラー、３５ 搬送駆動ローラー、３６ 搬送従動ローラー、３７ 上部紙案内、３９ 下部紙案内、４０ キャリッジ、４１ キャリッジガイド軸、４２ 記録ヘッド、４４ 排出駆動ローラー、４５ 排出従動ローラー、５０ 下段側トレイ、５０ａ 底面、５１、５２ エッジガイド、５３ 庇部、５４ 分離斜面、５５ ピニオン歯車、５６ スライド部材、６０ 上段側トレイ、６０ａ 底面、６１ エッジガイド、６４ 高摩擦材、１００ 用紙カセット、Ｐ、Ｐ１、Ｐ２ 記録用紙
【技術分野】
【０００１】
本発明は、装置本体に対し着脱可能な被記録媒体カセットに関する。また本発明は、前記被記録媒体カセットを備えた被記録媒体給送装置、およびこれを備えた、ファクシミリやプリンター等に代表される記録装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
装置本体に対して着脱可能な用紙カセットは従来から広く用いられている。また、その中でも特許文献１や特許文献２に示されるように、一つの着脱自在な用紙カセット（トレイ）において下段と上段に用紙収容部を備えた２段式構造のものが知られている。尚、記録装置において用紙を収容する用紙収容部の呼称としては「カセット」、「トレイ」など種々のものがあるが、本明細書では装置本体に対して着脱可能な一つのユニット体全体を「カセット」と言い、このカセット内に設けられた複数の用紙収容部を「トレイ」と言うこととする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００６−２７３５６５号公報
【特許文献２】特開２００７−９１４４５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記従来の２段式構造の用紙カセットにおいては、上段トレイは下段トレイに対し、用紙の送り出し方向側（先端側）に回動することで下段トレイが開放される様に構成されている。この様な従来構成において、下段トレイに用紙を補給する場合には、上段トレイを上記の様に回動させるが、上段トレイが前進位置にある状態で当該上段トレイを回動させた場合には下段トレイの後端側から用紙を差し入れることとなる。
【０００５】
しかしながら、トレイの先端側には分離傾斜面が形成されている関係上、用紙の後端をガイドするエッジガイドのガイド面も分離傾斜面に合わせてアンダーカット形状となっていることが多く、この様な場合には一旦エッジガイドを退避させてから、用紙を補給し、その後再びエッジガイドを用紙後端に突き当てる必要があり、手間を要する。
【０００６】
また、上段トレイが後退位置にある状態で当該上段トレイを回動させた場合には、下段トレイの先端側から用紙を差し入れることとなる。しかしながらこの場合、下段トレイの上方には上段トレイが存在していることとなり、当該上段トレイが邪魔となって下段トレイへの用紙補給作業が行い難い。
【０００７】
更に、用紙の側端をガイドするエッジガイドには、用紙の積載枚数を規制する庇形状が設けられる場合があるが、この様な場合には下段側トレイの先端側、後端側いずれの方向から用紙を補給する場合でも、用紙が庇形状に引っ掛かり、用紙補給作業が行い難い。
【０００８】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、下段側トレイと上段側トレイとを備えた複数段構造の用紙カセットにおいて、下段側トレイへの用紙補給時の作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
上記課題を解決する為の、本発明の第１の態様に係る被記録媒体カセットは、被記録媒体を収容する下段側トレイと、被記録媒体の送り出し方向に対し交差する方向の側部に回動支点を有し、当該回動支点を中心にして、前記下段側トレイの上部において前記下段側トレイに対し側方に回動可能に設けられた、被記録媒体を収容する上段側トレイと、を備えて構成されたことを特徴とする。
【００１０】
本態様によれば、下段側トレイと上段側トレイとを備えた複数段構造の被記録媒体カセットは、上段側トレイが、被記録媒体の送り出し方向に対し直交する方向の側部に回動支点を有し、当該回動支点を中心にして側方に回動可能に設けられているので、下段側トレイへの被記録媒体補給時には上段側トレイを側方に回動させることで、下段側トレイの先端側及び後端側のいずれの方向も上部空間が大きく確保され、下段側トレイへの被記録媒体補給時の作業性を向上させることができる。
【００１１】
本発明の第２の態様は、第１の態様において、前記下段側トレイは、被記録媒体の一方側のサイドエッジをガイドする、被記録媒体のサイズに合わせて変位可能な可動エッジガイドと、被記録媒体の他方側のサイドエッジをガイドする、固定的に設けられた固定エッジガイドと、を備え、前記回動支点が、前記固定エッジガイドの側に設けられていることを特徴とする。
【００１２】
本態様によれば、上段側トレイが、下段側トレイにおいて固定的に設けられた固定エッジガイドの側の側部に回動支点を有しているので、上段側トレイを回動させて下段側トレイの被記録媒体収容空間を露呈させた際に、可動エッジガイドの操作を上段側トレイが邪魔することがない。
【００１３】
本発明の第３の態様は、第１のまたは第２の態様において、前記上段側トレイは、前記下段側トレイに対して被記録媒体の送り出し方向にスライドするスライド部材に対して回動可能に設けられ、前記スライド部材は、そのスライド方向に形成されたラックを有し、前記下段側トレイには、前記ラックと噛合するピニオン歯車が設けられ、当該ピニオン歯車の回転によって前記上段側トレイがスライド変位可能に構成されていることを特徴とする。
【００１４】
本態様によれば、上段側トレイは、下段側トレイに対して被記録媒体の送り出し方向にスライドするとともにピニオン歯車と噛合するラックが形成されたスライド部材に対して回動可能に設けられているので、スライド変位し且つ回動する上段側トレイの可動部構造を、構造簡単にして低コストに構成することができる。
【００１５】
本発明の第４の態様は、第１から第３の態様のいずれかにおいて、前記上段側トレイの回動支点が、前記上段側トレイの側壁より外側に設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、上段側トレイの回動支点が、前記上段側トレイの側壁より外側に設けられているので、上段側トレイの回動支点を構成するに際して上段側トレイの被記録媒体収容空間を侵食することがない。
【００１６】
本発明の第５態様は、被記録媒体を給送する被記録媒体給送装置であって、第１から第４の態様のいずれかに係る被記録媒体カセットを備えていることを特徴とする。また本発明の第６の態様は、被記録媒体に記録を行う記録手段と、第５の態様に係る被記録媒体給送装置と、を備えたことを特徴とする記録装置である。これらの態様によれば、第１から第４の態様のいずれかと同様な作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明の一実施形態に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図２】本発明の一実施形態に係る用紙カセットの斜視図。
【図３】本発明の一実施形態に係る用紙カセットの斜視図。
【図４】本発明の一実施形態に係る用紙カセットの部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【００１８】
以下、図１乃至図３参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。図１は本発明に係る「記録装置」の一実施形態であるインクジェットプリンター（以下「プリンター」と言う）１の用紙搬送経路を示す側断面図、図２及び図３は本発明に係る「被記録媒体カセット」の一実施形態である用紙カセット１００の斜視図であり、図２は上段側トレイ６０の閉状態を、図３は上段側トレイ６０の開状態を、それぞれ示したものである。また、図４は用紙カセット１００の一部分を用紙送り方向と直交する面で切断した断面図である。尚、図１において右方向は用紙送り出し方向、図面表裏方向が用紙幅方向を示している。また、図４は側壁５０ｂと用紙との関係を模式的に示した図であり、それ以外に本来表れる構成要素は省略している。
【００１９】
以下、図１を参照しつつプリンター１の全体構成について概説する。プリンター１は、装置底部に給送装置２を備え、当該給送装置２から、「被記録媒体」の一例としての用紙（主として単票紙）を１枚ずつ給送し、記録手段４において記録（インクジェット記録）を行い、装置前方側（図１において左側）に設けられた図示しない排紙スタッカへ向けて排出される構成を備えている。
【００２０】
以下、用紙搬送経路上の構成要素について更に詳説する。
給送装置２は、用紙カセット１００と、ピックアップローラー１６と、ガイドローラー２０と、分離手段２１と、を備えている。
【００２１】
複数枚の用紙Ｐを積層状態でセット可能な用紙カセット１００は、給送装置２の装置本体に対し、装置前方側から装着及び取り外し可能であり、下部に位置して用紙カセット１００の基体を構成する下段側トレイ５０と、その上部に位置する、給送可能位置と退避領域との間をスライド可能な上段側トレイ６０と、の２つの用紙収容部を備えている。
【００２２】
尚、図１においては、下段側トレイ５０に収容される用紙を符号Ｐ１で、上段側トレイ６０に収容される用紙を符号Ｐ２で、それぞれ示している（以下特に区別する必要がない場合は「用紙Ｐ」と言う）。
【００２３】
図示しないモータによって回転駆動されるピックアップローラー１６は、揺動軸１８を中心に揺動する揺動部材１７に設けられており、上段側トレイ６０が最も装置後方側（図１において左方向：用紙カセット１００の引き抜き方向側）にスライドした状態、即ち上段側トレイ６０が退避領域にあるときは、下段側トレイ５０に収容された用紙Ｐ１の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙Ｐ１を下段側トレイ５０から送り出す。
【００２４】
また上段側トレイ６０が最も装置前方側（図１において右方向：用紙カセット１００の装着方向側）にスライドした突き当て位置にあるとき、即ち上段側トレイ６０の給送可能位置では、上段側トレイ６０に収容された用紙Ｐ２の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙Ｐ２を上段側トレイ６０から送り出す。
【００２５】
この上段側トレイ６０が給送可能位置に位置決めされた状態（図１の状態）では、下段側トレイ５０の分離斜面５４が、上段側トレイ６０の前方側内壁よりも上段側トレイ６０に収容された用紙先端側に突出するように構成されており、これにより分離斜面５４が上段側トレイ６０から用紙が送り出される際の分離手段として利用されるようになっている。即ち、下段側トレイ５０の分離斜面５４が、下段側トレイ５０と上段側トレイ６０の共通の分離手段として利用される様になっている。
【００２６】
次に、分離斜面５４の下流側には自由回転可能なガイドローラー２０が設けられ、このガイドローラー２０の下流側には、分離ローラー２２と駆動ローラー２３とを備えて構成された分離手段２１が設けられている。分離ローラー２２は、外周面が弾性材によって形成されるとともに駆動ローラー２３と圧接可能に設けられ、且つ、トルクリミッタ機構により、所定の回転抵抗が与えられた状態に設けられている。従って重送されようとする次位以降の用紙Ｐが、当該分離ローラー２２と駆動ローラー２３との間で止められ、即ち重送が防止される様になっている。尚、駆動ローラー２３は図示しないモータにより用紙Ｐを下流側へ送る方向に回転駆動される。
【００２７】
分離手段２１の下流側には、図示しないモータにより回転駆動される駆動ローラー２６と、駆動ローラー２６との間で用紙Ｐをニップして従動回転するアシストローラー２７と、を備えて構成された第１中間送り部２５が設けられており、この第１中間送り部２５により、用紙Ｐが更に下流側へと送られる。尚、符号２９は、用紙Ｐが湾曲反転経路を通過する際の（特に用紙後端が通過する際の）通紙負荷を軽減する従動ローラーを示している。
【００２８】
従動ローラー２９の下流側には図示しないモータにより回転駆動される駆動ローラー３２と、駆動ローラー３２との間で用紙Ｐをニップして従動回転するアシストローラー３３と、を備えて構成された第２中間送り部３１が設けられており、この第２中間送り部３１により、用紙Ｐが更に下流側へと送られる。
【００２９】
第２中間送り部３１の下流側には、記録手段４が配置されている。記録手段４は、搬送手段５と、記録ヘッド４２と、下部紙案内３９と、排出手段６と、を備えている。搬送手段５は、モータによって回転駆動される搬送駆動ローラー３５と、該搬送駆動ローラー３５に圧接して従動回転するよう上部紙案内３７に軸支される搬送従動ローラー３６とを備えて構成されている。搬送手段５に到達した用紙Ｐは、搬送駆動ローラー３５と搬送従動ローラー３６とによってニップされた状態で搬送駆動ローラー３５が回転することにより、下流側へと精密送りされる。
【００３０】
続いて記録ヘッド４２はキャリッジ４０の底部に設けられ、当該キャリッジ４０は主走査方向（図１の紙面表裏方向）に延びるキャリッジガイド軸４１にガイドされながら、図示しない駆動モータによって主走査方向に往復動する様に駆動される。尚、キャリッジ４０はインクカートリッジを搭載しない所謂オフキャリッジタイプであり、インクカートリッジ（図示せず）がキャリッジ４０から独立して設けられ、インク供給チューブ（図示せず）を介してインクカートリッジから記録ヘッド４２へとインクが供給されるように構成されている。
【００３１】
記録ヘッド４２と対向する位置には下部紙案内３９が設けられ、当該下部紙案内３９によって、用紙Ｐと記録ヘッド４２との距離が規定されるようになっている。そして下部紙案内３９の下流側には、記録の行われた用紙Ｐを排出する排出手段６が設けられている。排出手段６は図示しないモータによって回転駆動される排出駆動ローラー４４と、当該排出駆動ローラー４４に接して従動回転する排出従動ローラー４５とを備えて構成され、記録手段４によって記録の行われた用紙Ｐは、排出手段６により、装置前方側に設けられた図示を省略するスタッカへと排出される。
【００３２】
以上がプリンター１の概要であり、以下、用紙カセット１００について図２及び図３をも併せて参照しつつ更に詳説する。
下段側トレイ５０は、その底面５０ａに、用紙送り方向（即ち、用紙長さ方向）にスライド可能なエッジガイド５１（図１）を備えており、このエッジガイド５１により後端エッジの位置が規制されるようになっている。
【００３３】
また、用紙送り方向と直交する方向（即ち、用紙幅方向）にスライド可能なエッジガイド５２も設けられており、このエッジガイド５２により、一方側のサイドエッジの位置が規制されるようになっている。尚、他方側のサイドエッジを規制するのは、下段側トレイ５０の側壁５０ｂ（図２、図４）となる。即ち、下段側トレイ５０の側壁５０ｂは、固定エッジガイドとして機能する。
【００３４】
ここで、用紙Ｐ１の後端位置を規制するエッジガイド５１は、ガイド面５１ａが、分離斜面５４とほぼ平行になるように傾斜面で形成されており、これによってエッジガイド５１を用紙後端に突き当てた際に、用紙束の先端が分離斜面５４に倣う様になっている。
【００３５】
また、用紙Ｐ１のサイドエッジを規制するエッジガイド５２には、庇部５３が形成されている。庇部５３は、積載された用紙の上方に迫り出す様に設けられており、これによりその下面が、用紙Ｐ１の積載枚数を規制する規制面として機能する様になっている。
【００３６】
次に、下段側トレイ５０の底面５０ａには、ピックアップローラー１６と用紙Ｐ１との接触位置に対応する場所に高摩擦材（不図示）が配置されており、この高摩擦材により、ピックアップローラー１６による用紙送り出し時に用紙束ごと下流側に送られないよう、当該用紙束が保持される様になっている。
【００３７】
一方、上段側トレイ６０についても下段側トレイ５０と同様に、その底面６０ａに、用紙長さ方向にスライド可能なエッジガイド６１と、用紙幅方向にスライド可能なエッジガイド（不図示）と、を備えている。またピックアップローラー１６と用紙Ｐ２との接触位置に対応する場所に高摩擦材６４（図２）が配置されている。
【００３８】
続いて、上段側トレイ６０の可動構造について説明する。下段側トレイ５０の側壁５０ｂ、５０ｃには、段差部が形成されており（図３、図４において側壁５０ｃ側に形成された段差部を符号５０ｄで示す）、側壁５０ｂ側に形成された段差部に沿って、スライド部材５６が用紙送り方向及びその逆方向にスライド変位可能に設けられている。
【００３９】
上段側トレイ６０は、用紙送り方向と直交する方向の一方側端部に設けられた接続部６０ｃ、６０ｄが、スライド部材５６の前後方向端部において回動可能に設けられており、これにより上段側トレイ６０は、図４に示すように側方に回動可能となっている。尚、本実施形態において上段側トレイ６０の回動限度は、図４に示す状態であり、即ち９０度より大きい。
【００４０】
上段側トレイ６０の他方側端部には、係止部６０ｅ、６０ｆが形成されており、この係止部６０ｅ、６０ｆが、下段側トレイ５０の側壁５０ｃに形成された段差部５０ｄに係止することで上段側トレイ６０が閉姿勢を規定される。そしてまた、係止部６０ｅ、６０ｆが、段差部５０ｄに対してスライドすることで、上段側トレイ６０がスライド変位できる様になっている。
【００４１】
次に、スライド部材６６の内側下面には、ラック５６ａが形成されており、このラック５６ａに、下段側トレイ５０に設けられたピニオン歯車５５が噛合する様に構成されている。即ち、ピニオン歯車５５が回転することにより、上段側トレイ６０がスライド変位する様に構成されている。
【００４２】
このピニオン歯車５５は、用紙カセット１００がプリンター１の装置本体に装着された際に、プリンター１の装置本体側に設けられた駆動歯車（不図示）と噛合可能となっている。この駆動歯車は、図示しないモーターにより回転駆動される様になっており、これによって上段側トレイ６０が駆動される様になっている。
【００４３】
以上説明した様に、本実施形態に係る用紙カセット１００においては、上段側トレイ６０が、用紙送り出し方向に対し直交する方向の側部に回動支点を有し、当該回動支点を中心にして側方に（本実施形態では図４に示す様に後方側から見て右側方に）回動可能に設けられているので、下段側トレイ５０への用紙補給時には上段側トレイ６０を側方に回動させることで、下段側トレイ５０の先端側及び後端側のいずれの方向も上部空間が大きく確保される。よって、下段側トレイ５０への用紙補給時の作業性を向上させることができる。
【００４４】
特に、本実施形態では、図１を参照しつつ説明した様に用紙後端位置を規制するエッジガイド５１のガイド面５１ａがアンダーカット状に傾斜しているので、仮にカセット後端側から用紙を補給する場合には一旦エッジガイド５１を後方に退避させてから、用紙を補給し、その後再度用紙後端に突き当てる必要がある。しかし、上述の通り用紙カセット１００は、先端側からも用紙の補給が可能であるので、上記の様なエッジガイド操作は不要となる。
【００４５】
尚、図３は上段側トレイ６０が突き当て位置にある状態で回動した様子を示しているが、上段側トレイ６０はその変位可能領域のいずれにあっても、図３に示す如く側方に回動することができる。
【００４６】
加えて、下段側トレイ５０に収容された用紙Ｐ１のサイドエッジを規制するエッジガイド５２には、図１を参照しつつ説明した様に庇部５３が形成されている為、用紙補給時に用紙が庇部５３に引っ掛かり、用紙補給作業を阻害し易いが、上段側トレイ６０は側方に回動するので、用紙補給時には用紙のエッジをエッジガイド５２に突き当ててから収容することができ、庇部５３の存在に拘わらず用紙補給作業が容易となる。
【００４７】
また本実施形態では、上段側トレイ６０は変位可能なエッジガイド５２の側ではなく、固定エッジガイドとして機能する側壁５０ｂの側の側部に回動支点を有するので、上段側トレイ６０を回動させて下段側トレイ５０の用紙収容空間を露呈させた際に、エッジガイド５２の操作を上段側トレイ６０が邪魔することがない。
【００４８】
更に、上段側トレイ６０は、下段側トレイ５０に対して用紙送り出し方向及びその逆方向にスライドするとともにピニオン歯車５５と噛合するラック５６ａが形成されたスライド部材５６に対して回動可能に設けられているので、スライド変位し且つ回動する上段側トレイ６０の可動部構造を、構造簡単にして低コストに構成することができる。
【００４９】
更に加えて、本実施形態では、上段側トレイ６０の回動支点が、上段側トレイ６０の側壁（より具体的には、当該側壁において上段側トレイ６０の用紙収容空間を形成する内壁）より外側に設けられているので、上段側トレイ６０の回動支点を構成するに際して上段側トレイ６０の用紙収容空間を侵食することがない。尚、本実施形態では、スライド部材５６が上段側トレイ６０の用紙収容空間を形成する側壁を兼ねている。
【００５０】
以上説明した実施形態は一例であり、これに限られないことは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、上段側トレイ６０をカセット後端側から見て右開きとなる様構成しているが、左開きとなる様構成しても良い。
【符号の説明】
【００５１】
１ インクジェットプリンター、２ 給送装置、４ 記録手段、５ 搬送手段、６ 排出手段、１６ ピックアップローラー、１７ 揺動部材、１８ 揺動軸、２０ 従動ローラー、２１ 分離手段、２２ 分離ローラー、２３ 駆動ローラー、２５ 第１中間送り部、２６ 駆動ローラー、２７ アシストローラー、２９ 従動ローラー、３１ 第２中間送り部、３２ 駆動ローラー、３３ アシストローラー、３５ 搬送駆動ローラー、３６ 搬送従動ローラー、３７ 上部紙案内、３９ 下部紙案内、４０ キャリッジ、４１ キャリッジガイド軸、４２ 記録ヘッド、４４ 排出駆動ローラー、４５ 排出従動ローラー、５０ 下段側トレイ、５０ａ 底面、５１、５２ エッジガイド、５３ 庇部、５４ 分離斜面、５５ ピニオン歯車、５６ スライド部材、６０ 上段側トレイ、６０ａ 底面、６１ エッジガイド、６４ 高摩擦材、１００ 用紙カセット、Ｐ、Ｐ１、Ｐ２ 記録用紙
【特許請求の範囲】
【請求項１】
被記録媒体を収容する下段側トレイと、
被記録媒体の送り出し方向に対し交差する方向の側部に回動支点を有し、当該回動支点を中心にして、前記下段側トレイの上部において前記下段側トレイに対し側方に回動可能に設けられた、被記録媒体を収容する上段側トレイと、
を備えて構成された被記録媒体カセット。
【請求項２】
請求項１に記載の被記録媒体カセットにおいて、前記下段側トレイは、被記録媒体の一方側のサイドエッジをガイドする、被記録媒体のサイズに合わせて変位可能な可動エッジガイドと、被記録媒体の他方側のサイドエッジをガイドする、固定的に設けられた固定エッジガイドと、を備え、
前記回動支点が、前記固定エッジガイドの側に設けられている、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項３】
請求項１または２に記載の被記録媒体カセットにおいて、前記上段側トレイは、前記下段側トレイに対して被記録媒体の送り出し方向にスライドするスライド部材に対して回動可能に設けられ、
前記スライド部材は、そのスライド方向に形成されたラックを有し、
前記下段側トレイには、前記ラックと噛合するピニオン歯車が設けられ、当該ピニオン歯車の回転によって前記上段側トレイがスライド変位可能に構成されている、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項４】
請求項１から３のいずれか１項に記載の被記録媒体カセットにおいて、前記上段側トレイの回動支点が、前記上段側トレイの側壁より外側に設けられている、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項５】
被記録媒体を給送する被記録媒体給送装置であって、請求項１から４のいずれか１項に記載の被記録媒体カセットを備えている、
ことを特徴とする被記録媒体給送装置。
【請求項６】
被記録媒体に記録を行う記録手段と、
請求項５に記載の被記録媒体給送装置と、を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項１】
被記録媒体を収容する下段側トレイと、
被記録媒体の送り出し方向に対し交差する方向の側部に回動支点を有し、当該回動支点を中心にして、前記下段側トレイの上部において前記下段側トレイに対し側方に回動可能に設けられた、被記録媒体を収容する上段側トレイと、
を備えて構成された被記録媒体カセット。
【請求項２】
請求項１に記載の被記録媒体カセットにおいて、前記下段側トレイは、被記録媒体の一方側のサイドエッジをガイドする、被記録媒体のサイズに合わせて変位可能な可動エッジガイドと、被記録媒体の他方側のサイドエッジをガイドする、固定的に設けられた固定エッジガイドと、を備え、
前記回動支点が、前記固定エッジガイドの側に設けられている、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項３】
請求項１または２に記載の被記録媒体カセットにおいて、前記上段側トレイは、前記下段側トレイに対して被記録媒体の送り出し方向にスライドするスライド部材に対して回動可能に設けられ、
前記スライド部材は、そのスライド方向に形成されたラックを有し、
前記下段側トレイには、前記ラックと噛合するピニオン歯車が設けられ、当該ピニオン歯車の回転によって前記上段側トレイがスライド変位可能に構成されている、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項４】
請求項１から３のいずれか１項に記載の被記録媒体カセットにおいて、前記上段側トレイの回動支点が、前記上段側トレイの側壁より外側に設けられている、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項５】
被記録媒体を給送する被記録媒体給送装置であって、請求項１から４のいずれか１項に記載の被記録媒体カセットを備えている、
ことを特徴とする被記録媒体給送装置。
【請求項６】
被記録媒体に記録を行う記録手段と、
請求項５に記載の被記録媒体給送装置と、を備えたことを特徴とする記録装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１２−１３１６３２（Ｐ２０１２−１３１６３２Ａ）
【公開日】平成２４年７月１２日（２０１２．７．１２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−２８７０６８（Ｐ２０１０−２８７０６８）
【出願日】平成２２年１２月２４日（２０１０．１２．２４）
【出願人】（０００００２３６９）セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年７月１２日（２０１２．７．１２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１２月２４日（２０１０．１２．２４）
【出願人】（０００００２３６９）セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Ｆターム（参考）】
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