被記録材上への蛍光絵柄形成方法、及び該方法を用いて蛍光絵柄が形成された物品、ならびに転写用積層体。
【課題】磁気カード等の積層体の表面から、太陽光や室内光に含まれる紫外光では蛍光が視認できず、更に太陽光や室内光の可視光の反射による蛍光印刷絵柄の存在の有無が視認不可能であって、一方、紫外線光源の照射により十分な強さの蛍光が得られる、磁気カード等の積層体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】磁気カード等作製用の転写用積層体における転写材中、または該転写材が転写される基材上に蛍光絵柄形成領域を形成し、該蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を転写用積層体のエージングによる加熱や、カード作製時の熱圧プレスによる加熱によって転写後の前記転写材の表面に近い方向へと拡散させることによって、カード等表面からの紫外線光源照射により識別可能な蛍光絵柄を形成する。
【解決手段】磁気カード等作製用の転写用積層体における転写材中、または該転写材が転写される基材上に蛍光絵柄形成領域を形成し、該蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を転写用積層体のエージングによる加熱や、カード作製時の熱圧プレスによる加熱によって転写後の前記転写材の表面に近い方向へと拡散させることによって、カード等表面からの紫外線光源照射により識別可能な蛍光絵柄を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材上に蛍光性の絵柄を形成する方法に関し、特に基材上に転写材を転写してなる積層体に蛍光性の絵柄を形成する方法に関する。さらに前記蛍光絵柄形成方法によって蛍光絵柄が形成された物品、積層体に関する。特にクレジットカード、銀行カードなどの磁気記録層を有する転写材を基材上に転写してなる磁気カードの磁気ストライプを含んだ表面上に形成される新規な蛍光性の絵柄形成方法、該絵柄形成方法に用いられる転写用積層体、及び該絵柄形成方法により製造される蛍光性の絵柄を有する磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
被記録材上に蛍光剤を含有するインクで印刷を行うことによって蛍光性の絵柄を設けることは広く行われている。このようにして作製された蛍光性の絵柄は、太陽光や室内光に含まれる紫外線によって蛍光発光を生じ、非蛍光性のインクを用いて作製された絵柄とは異なった、独特の意匠性を被記録材である各種物品に与える。
このような蛍光性の絵柄の中でも、通常の太陽光や室内光に含まれる程度の弱い紫外線ではその蛍光発光を認識することができず、紫外線強度の高い専用の紫外線照射装置を用いることによって初めてその蛍光発光を認識することのできる蛍光性の絵柄は、隠し印刷として真性製品の認証や贋作防止などに用いることができる。
特に、クレジットカード、銀行カードなどセキュリティ性を重要視される磁気カードにおいて、偽造防止の手段として磁気記録層とともに蛍光絵柄形成領域が設けられているものが知られている。この蛍光絵柄形成領域は、上述のように太陽光や室内光に含まれる程度の紫外線では視認できず、専用の紫外線照射装置による紫外線照射により初めて蛍光絵柄として視認できることが必要であり、これによりカードの真偽を判断することが行われている。
【0003】
上記の真偽判断に使用される磁気カードを作製する方法としては、磁気記録層と磁気記録層の色相を隠蔽する隠蔽層の間に蛍光絵柄形成領域を設ける方法が開示されている。(特許文献1参照)。
また、蛍光絵柄形成領域を有する磁気カードとして、磁気記録層の上に構成される層として、転写用基材上に剥離層、オーバーコート層、絵柄印刷層、隠蔽層、蛍光絵柄形成領域を順次形成し、これを磁気記録層を形成したカードに転写させて設ける磁気カードの形成方法(図11参照)、および該製造方法によって製造される磁気カード(図1参照)が開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
更に、蛍光絵柄形成領域を有する磁気カードの別の製造方法による磁気カードとして、カード基材上の磁気記録層上に第1隠蔽層、蛍光インキ印刷層、第2隠蔽層、プロセスインキ印刷層、表面保護層を順次形成する方法が開示されている(特許文献3参照)。
このようなカードにおいては、太陽光、室内光に含まれる程度の弱い紫外線ではその蛍光発光が視認できないように、また、蛍光絵柄形成層の存在がカード表面から直接的に認識されることを防ぐために、隠蔽層を設けて蛍光絵柄形成層を隠蔽している。蛍光絵柄形成層を隠蔽するためには、隠蔽層の膜厚は厚い方が好ましいが、一方、紫外線による真偽判別を行う場合には、真偽識別のための照射紫外線が隠蔽層を通過して蛍光絵柄形成層に到達するように、また、蛍光絵柄形成層からの蛍光発光が隠蔽層を通過してカードの表面から放出される必要があり、隠蔽層の厚みはおのずと制限される。そのためこのようなカードにおいては、蛍光発光特性を確保するために隠蔽層の厚さが2μm以下と薄くする必要がある。ここで、蛍光絵柄印刷層は、磁気記録層を含むカード基材と隠蔽層の間、もしくは第1隠蔽層と第2隠蔽層の間に設けられており、該蛍光絵柄印刷層はシルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの方式により形成されるため、その厚みが1μm以下とはいえ厚みを有しているため、蛍光絵柄印刷層上に設けられた隠蔽層はカード化後にこの蛍光絵柄形成層によって物理的な変形を受け、可視光において蛍光絵柄の輪郭が隠蔽層の変形という形で視認できてしまうという問題があった。
【0005】
特に隠蔽層としてアルミ粉などの鱗片状金属粉末を用いている場合、蛍光絵柄形成層による隠蔽層の物理的な変形は、鱗片状金属粉末の配向状態の乱れを引き起こし、外観的には大きな変形としてとらえられることとなり、蛍光絵柄層の存在がより容易に判明してしまうという欠点があった。このように隠蔽層を用いて蛍光絵柄層の存在を隠蔽する手法においては、蛍光発光性を確保するために隠蔽層の厚みを十分厚く設けることができないため、隠蔽層の物理的な変形として蛍光絵柄層の存在を認識されてしまう問題は、磁気記録媒体に限られたことではない。
【0006】
さらにこれらのカードにおいては、蛍光発光性を確保するために、蛍光絵柄形成層は磁気記録層よりもカード表層側に設けられる必要があった。磁気記録層よりもカード表層側に存在する層は、磁気記録及び再生の場合、磁気ヘッドと磁気記録層との間隙、すなわちスペーシングとなり、記録再生特性に悪影響を与える。特にスペーシングに厚薄がある場合、磁気カードの再生出力には変動が生じ、カード読みとりエラーの原因となる。蛍光絵柄形成層は一般的に蛍光絵柄に即した不連続な層であるため、蛍光絵柄形成層を設けることによって再生出力の変動が生じることは避けられず、これらのカードにおいて読みとりエラーが増大する原因となっている。
【特許文献1】実開平3−40615号公報
【特許文献2】特開平9−309287号公報
【特許文献3】特開2002−2160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線非照射時においては全く蛍光絵柄の存在が認識できず、紫外線照射時にのみその蛍光発光が確認できる蛍光絵柄形成方法を提供することにある。すなわち、強い紫外線を照射することによって蛍光発光し、通常の太陽光、室内光に含まれる弱い紫外線ではその蛍光発光が確認できず、かつ、蛍光絵柄形成領域による蛍光絵柄形成領域よりも上側に存在する層の物理的な形状変化がその表面から認識されないため、可視光の反射などによっても蛍光絵柄形成領域の存在が認識されることのない蛍光絵柄を形成する方法を提供することにある。また、該蛍光絵柄形成方法を用いて製造された蛍光絵柄を有する物品、積層体、磁気記録媒体を提供することである。
さらに本発明が解決しようとする課題は、転写工程を経て形成される積層体の表面に紫外線の照射により識別可能となり、しかも太陽光や室内光に含まれる紫外光ではその存在が確認できない蛍光絵柄の形成方法を提供することである。
さらに本発明が解決しようとする課題は、磁気ストライプを有するカードの該磁気ストライプ上に蛍光絵柄を形成する方法であって、紫外線の照射により識別可能となり、しかも太陽光や室内光に含まれる紫外光ではその存在が確認できない蛍光絵柄の形成方法、該形成方法に用いる転写用積層体、該製造方法より製造される磁気カードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被記録材上に紫外線照射により識別可能となる蛍光絵柄を形成する方法であって、前記被記録材上に近い側から、蛍光絵柄形成領域と、蛍光剤拡散層とを形成し、前記蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を、前記蛍光剤拡散層中へ、または前記蛍光剤拡散層を通って拡散させることを特徴とする蛍光絵柄形成方法を提供する。
また、本発明は、転写用基材上に形成された層状の転写材を基材上に転写してなる積層体へ、前記転写材表面からの紫外線照射により識別可能な蛍光絵柄を形成する蛍光絵柄形成方法であって、前記転写材中または前記基材上に予め形成された蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を、前記転写材の転写後の表面に近い方向へと、前記転写材中を通って拡散させることにより識別可能な蛍光絵柄を形成することを特徴とする蛍光絵柄形成方法を提供する。
また、本発明は、上記の蛍光絵柄形成方法を用いて作製された蛍光絵柄を有する物品、積層体、磁気記録媒体を提供する。
また、本発明は、転写用基材上に、層状の転写材が積層された転写用積層体であって、蛍光剤拡散層と蛍光絵柄形成領域をこの順に形成された転写用積層体を提供する。
さらに本発明は転写基材上に磁気記録層と蛍光絵柄形成領域を有する層状の転写材が形成された転写用積層体であって、前記蛍光絵柄形成領域が磁気記録層の上方に形成されたことを特徴とする転写用積層体を提供する。
【0009】
さらに本発明は、物品上の一部に紫外線の照射により識別可能な蛍光絵柄を付与された物品であって、前記蛍光絵柄を形成する蛍光剤は、物品上に形成された蛍光剤拡散層の膜厚全幅にわたって分布していることを特徴とする物品を提供する。
さらに本発明は、基材上に磁気記録層と、該磁気記録層表面からの紫外線の照射により識別可能な蛍光絵柄とを形成するための転写用積層体であって、転写用基材上に前記磁気記録層を含む層状の転写材を有し、前記蛍光絵柄を形成する蛍光剤は少なくとも前記磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布していることを特徴とする転写用積層体を提供する。
また本発明は、基材上に磁気記録層と、該磁気記録層側からの紫外線の照射により識別可能な蛍光絵柄を有する磁気カードであって、前記蛍光絵柄を形成する蛍光剤は、前記絵柄に対応する位置の少なくとも磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布していることを特徴とする磁気カードを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蛍光絵柄形成方法によれば、蛍光絵柄形成領域は、蛍光剤拡散層によって覆われており、その存在が直接目視によって認識されることはない。また、蛍光剤拡散層は照射された紫外線を透過する必要がないため、その厚みを厚くすることができる。そのため、蛍光絵柄形成領域の存在による蛍光剤拡散層の変形は、その層中で緩和され、その変形が目視可能にその表層まで影響を与えることはない。また、蛍光剤拡散層を不透明な層であれば一層、照射された紫外線が弱い場合、すなわち、太陽光や室内光に含まれる程度の紫外線である場合、その紫外線は蛍光剤拡散層のごく表層近傍の蛍光剤のみにしか到達することはできず、その結果、発せられる蛍光発光は非常に微弱なものとなり、認識されることはない。一方、紫外線照射装置などを用いて強い紫外線が照射された場合には、その紫外線は蛍光剤拡散層の比較的深部にまで到達し、その結果発せられる蛍光発光は認識することが十分可能なほどに強いものとなる。
したがって、太陽光や室内光などの通常光線下での蛍光絵柄形成領域の不可視性と、紫外線照射時の蛍光絵柄の良好な認識性を両立することができる。
【0011】
本発明の転写工程を有する絵柄形成方法によれば、前記転写材中または前記基材上に予め形成された蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を、前記転写材を通って前記転写材転写後の表面の方向に、拡散させることにより識別可能な蛍光絵柄を形成するため、蛍光剤は転写材の厚さ方向に分布することになる。このため前述のように蛍光絵柄形成領域を設けた場所に対応した箇所が、蛍光絵柄形成領域上の磁気記録層、着色層等の上から紫外線照射なしでその存在が識別可能となることがない。したがって偽造防止情報や識別情報をその印刷内容と印刷箇所から容易に知られること無い。
【0012】
本発明の蛍光絵柄形成方法によれば、磁気カード製造用の、磁気ストライプ用転写材を転写用基材上に例えば保護層、着色層、磁気記録層、接着剤層を形成し、その後に、感熱接着剤層上、またはカード基材上の磁気ストライプが転写される部位のどちらかもしくは両方に蛍光絵柄形成領域を形成する。その後に前記磁気ストライプ用転写材をカード基材上に転写することにより、蛍光絵柄の形成された磁気カードを製造することができる。蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は例えばオーバーシート上に前記磁気ストライプ用転写材を転写し、この磁気ストライプ付きオーバーシートをカード上の絵柄を施したセンターコアと反対面のオーバーシートと共に熱圧プレス加工を行い磁気ストライプ用転写材がカード基材に埋め込まれる工程において、転写後の磁気ストライプ用転写材の表面方向へと各層を通って拡散し、磁気記録層を含む磁気ストライプ用転写材各層の膜厚方向へと分布して、紫外線照射により識別される蛍光絵柄となる。このため当初の蛍光絵柄形成領域が原因となって、その上に形成される層が変形することがなく、偽造防止情報の有無、内容やその形成箇所が容易に識別されることがない。さらに蛍光絵柄を形成する蛍光剤は、磁気ストライプ用転写材の各層の内部に拡散し、磁気記録層上に特別の厚みを形成することがないので、磁気カードとしての記録再生出力に変動を発生させることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の蛍光絵柄形成方法では、被記録材上に蛍光絵柄形成領域を、例えば蛍光剤を含有する蛍光絵柄形成用インクを印刷するなどの手段によって設け、次に、この蛍光絵柄形成領域を完全に覆うように蛍光剤拡散層を設け、その後、蛍光剤拡散層中へ、または蛍光剤拡散層を通って、加熱による蛍光剤の拡散をさせることによって、被記録材に蛍光絵柄を作製することができる。
【0014】
蛍光剤拡散層は、蛍光絵柄形成領域の存在を隠蔽し、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤をその層内に拡散させることが可能であり、かつ、蛍光剤を紫外線照射による識別が可能なように表面近傍に保持するための専用の層であってもよく、他の機能層を兼用していてもよい。また、これら複数の層が積層された構造を有していてもよい。
たとえば、蛍光絵柄が形成された磁気記録媒体を作製する場合、基材上に蛍光絵柄形成領域を設けた後、その全面を覆うように蛍光剤拡散層として機能する磁気記録層、及び必要に応じてその他の機能を有する層を設け、ついで、加熱による蛍光剤の拡散を行うことができる。この場合、磁気記録層よりも下方に位置する蛍光絵柄形成領域の存在は、不透明な磁気記録層によって完全に隠蔽されており、通常の光線下では認識することはできない。
しかし蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は蛍光剤拡散層である磁気記録層へ、または磁気記録層を通って磁気記録媒体の表面近くへと拡散するため、紫外線照射装置からの紫外線照射によって蛍光発光を生じ、可視化される。
【0015】
また、本発明の蛍光絵柄形成方法は、転写用基材上に蛍光剤拡散層を設けた転写用積層体を作製し、これを用いて蛍光剤拡散層を、あらかじめ蛍光絵柄形成領域を設けた被転写基材上に転写し、その後、加熱による蛍光剤拡散層中への蛍光剤の拡散を行うことによって行うこともできる。
たとえば、転写用基材上に蛍光剤拡散層としても機能する磁気記録層及び必要に応じてその他の機能層からなる転写材を設けて転写用積層体を作製しておく。次に被転写基材上に蛍光絵柄形成領域を設け、前記の転写用積層体を使用して、この蛍光絵柄形成領域を覆うように磁気記録層を含む転写材を転写し、その後、加熱による磁気記録層中へのもしくは磁気記録層を通っての蛍光剤の拡散を行うことによって蛍光絵柄が形成された磁気記録媒体を作製することができる。
【0016】
また、蛍光絵柄形成領域自体を転写工程によって形成してもよい。ここで転写とは、転写用基材上に転写材を設けた転写用積層体と被記録材である被転写用基材とを、転写材が被転写用基材と接するようにして重ね合わせ、接着し、その後、転写用基材を取り去って転写材のみを被転写用基材上に残す工程をいう。
また、本発明の蛍光絵柄形成方法は、転写用基材上に蛍光剤拡散層と蛍光絵柄形成領域とをこの順に設けて転写用積層体を作製し、これを用いて蛍光剤拡散層と蛍光絵柄形成領域の双方を被転写基材上に転写、その後、加熱による蛍光剤拡散層中への蛍光剤の拡散を行うことによって行うこともできる。また、この場合、蛍光剤の拡散は転写後に行うのではなく、転写前の転写用積層体の状態における加熱によっても行うことができる。
【0017】
本発明において蛍光剤拡散防止層を用いない時は、転写後に転写材の最上層となる部分を除けば、転写材中の任意の部分または、転写材が転写される位置の基材表面部分から選ばれる任意の位置に蛍光絵柄形成領域を形成することができる。蛍光剤拡散防止層を用いるときは、蛍光絵柄形成領域は、転写後に蛍光剤拡散防止層の直下に配置されなければよい。しかしデザイン上の変更が頻繁に行われる蛍光絵柄形成領域を形成する工程は、積層体を形成する工程のできるだけ最終部分にあることが好ましく、例えばカード用基体上の磁気ストライプの上に蛍光絵柄を形成するときは、磁気ストライプ形成用の転写用積層体の例えば感熱接着剤層上、または磁気ストライプが転写される基材側に蛍光絵柄形領域が形成されることが好ましい。このように、例えば予め蛍光絵柄を印刷しない無地の磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておくことで、絵柄を含む磁気カードのデザインが決定次第、転写用積層体またはカード用基材に蛍光絵柄印刷を行い、転写工程を経てカード製造を行うことが出来るため、受注から短納期で絵柄付き磁気ストライプを有する磁気カードの製造が可能となる。
【0018】
さらに蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が磁気記録層を通って拡散するように、転写用積層体の転写用基材から遠い側、すなわち磁気記録層の上方に蛍光絵柄形成領域を形成することにより、カード形成後、磁気記録層中に保持された蛍光剤は通常は識別できず、紫外線光源の照射によってはじめて識別できる。このため蛍光絵柄形成領域を被覆する隠蔽層を特に使用しなくても蛍光絵柄を隠すことが可能である。
【0019】
また本発明の絵柄形成方法は、絵柄形成領域の蛍光剤を転写材の表面方向に拡散させて紫外線照射により識別可能な蛍光絵柄を形成するため、蛍光絵柄形成領域上に蛍光剤が拡散して識別可能に保持される領域(蛍光剤拡散層)が必要である。該領域の膜厚は薄すぎると蛍光絵柄の形成が十分に行われず、また蛍光剤が横方向に拡散して図柄が不鮮明になりやすい。また、蛍光絵柄形成領域の膜厚の影響のため、従来の蛍光絵柄形成方法における隠蔽層と同様に変形を受けやすい。これに対して該領域の膜厚が厚すぎるとやはり拡散領域が広がり過ぎて蛍光絵柄が不鮮明となる可能性がある。このために蛍光絵柄形成領域の上方に位置する積層体の膜厚の総計は、蛍光剤拡散防止層の膜厚を除いて2μmを越えて50μm程度までの範囲が好ましく、3〜20μm程度がさらに好ましい。これはすなわち蛍光拡散層の膜厚である。
【0020】
本発明の蛍光剤拡散層は、蛍光絵柄形成領域からの蛍光剤が熱によって拡散し、また拡散の結果、表層近くにまで到達して、表面からの紫外線照射によって蛍光発光可能に保持される層である。すなわち、本発明においては蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が、表層近傍へ拡散して保持されるための膜厚方向の拡散経路に当たる部分が蛍光剤拡散層に該当する。したがって、蛍光剤の拡散経路にある着色層や隠蔽層はもとより、蛍光絵柄形成領域の形成箇所によっては磁気記録層や感熱接着剤層などもその本来の機能を果たしつつ、蛍光剤拡散層として機能しうる。蛍光剤拡散層は、これらの層のうち、いずれか単層、または複数の層のいくつかの組み合わせよりなる。蛍光剤拡散層においては、蛍光絵柄形成領域に近い部分は蛍光剤の拡散経路としての機能を主に果たし、表面に近い部分は紫外線の照射により視認可能に発色する蛍光剤の保持機能を主に果たす。蛍光拡散層は、蛍光剤の良好な拡散のためには構成成分である樹脂のTgが、エージングや転写材の熱圧着、熱圧プレスなどの加熱工程における加熱温度に比べて低いことが好ましい。また、蛍光剤拡散層は太陽光、室内光などによって蛍光絵柄形成領域の存在が認識されないように全体として不透明であることが好ましい。
【0021】
以下に、転写工程を有する本発明の蛍光絵柄形成方法の一実施態様を示しつつ、その手順と使用する材料種類、配合について記載する。
【0022】
まず初めに、本発明の磁気カード製造方法について詳細に説明する。
本発明の蛍光絵柄形成方法の実施態様の一つとして、磁気記録媒体である磁気カードを取り上げ、カード製造後に識別可能な蛍光絵柄を磁気ストライプ用転写材に形成する方法について図2と工程図である図9を参照しつつ説明を行う。図2は本発明の製造方法に用いる転写用積層体の断面図、図9は製造方法の流れである。図9においては蛍光絵柄形成からカード作製までの工定数が最も少なく、工程上最も有利な感熱接着剤層の上に蛍光絵柄形成領域を設ける場合について表示した。
【0023】
本方法においては図2に示すように、転写用基材9に必要に応じて蛍光剤拡散防止層1、着色層(隠蔽層)3を形成し、その上に磁気記録層4、さらにその上に必要に応じて感熱接着剤層5を積層して塗布形成し、無地の磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておく。磁気ストライプ上に形成する蛍光絵柄が決定次第、磁気ストライプ用転写材の磁気記録層上に設けた感熱接着剤上に蛍光絵柄印刷を施し蛍光絵柄形成領域を形成し、蛍光絵柄形成機能を有する転写用積層体を作製する。蛍光絵柄形成機能を有する磁気ストライプ用の転写用積層体は磁気ストライプ用転写材の状態での加熱(エージング)(図9−(1))によって、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が転写用積層体の転写用基材方向に拡散し、転写用基材近くまで到達しているため、磁気ストライプ用転写材を転写した後に転写用基材から剥離され、カード基材上に転写された磁気ストライプ用転写材表面から蛍光絵柄が紫外線の照射によって識別可能な状態となる(図3参照)。あるいは蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は、磁気ストライプ用の転写材をオーバーシートに転写させた後、センターコアと合体してカード用基材を一体化させる熱圧プレス工程(図9−(2))により、蛍光剤がオーバーシートへ転写後の磁気ストライプ用転写材の表面方向に拡散して、蛍光絵柄が磁気ストライプ表面より紫外線の照射によって識別可能となる。(図5参照)なお、転写用積層体の状態におけるエージング工程(図9−(1))を行うと、蛍光剤をより確実に拡散できるため好ましい。
【0024】
また、本発明のもう一つの実施態様として、蛍光絵柄形成領域をカード用基材であるオーバーシートの磁気ストライプが転写される部分に形成する方法について、図4と工程図10に示す。本方法は、予め蛍光絵柄を印刷しない磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておく部分までは前記工程図9で示す方法同じであるが、磁気ストライプの蛍光絵柄が決定次第、蛍光絵柄形成領域をオーバーシートの磁気ストライプが転写される部分に形成し、磁気ストライプ用転写材をオーバーシートに転写後、センターコアと合体しカード用基材を一体化させる熱圧プレス工程を行って、磁気ストライプ用転写材をカード基材に埋め込む。このときに、蛍光剤が磁気記録層を通ってオーバーシートに転写された磁気ストライプ用転写材表面方向に拡散することにより、蛍光絵柄が紫外線照射によって磁気ストライプ表面よりの紫外線の照射によって識別可能となる。(図5参照)
【0025】
このようにして製造される磁気カードの磁気ストライプ部分の断面図(図5)に示すように、センターコア7に積層されたオーバーシート6に磁気ストライプ用転写材の保護層を兼ねる蛍光剤拡散防止層1をカード表面に露出して磁気ストライプ用転写材が埋め込められており、磁気ストライプ用転写材の着色層3、磁気記録層4、感熱接着剤層5の厚み方向全てに亘って蛍光剤拡散領域2を有しているため、蛍光剤拡散防止層1側から、蛍光絵柄が紫外線の照射によって識別可能となっている。さらに蛍光剤は着色層2と蛍光剤拡散防止層1の間に高濃度で存在せず着色層2から磁気記録層の厚み方向に分散して存在するため、太陽光や室内光に含まれる紫外線または赤外線により蛍光絵柄が識別できない。
【0026】
以上の様な手順で磁気ストライプ部分に蛍光絵柄を有する磁気カードを形成することが出来るが、本発明の蛍光絵柄形成方法は磁気ストライプ以外の場所にも、また磁気カード以外の磁気記録媒体にもあるいは磁気記録層を有さない積層体の製造にも適用することができる。このような場合の蛍光絵柄形成方法には図9、図10の工程図において磁気記録層を省略したり、他の層を構成上付け加えたり、磁気記録層を他の機能層に置き換えることによって対応することができる。さらに磁気ストライプ用の転写用積層体は基材の一部を被覆するだけであるが、基材全面を被覆するような転写用積層体を用いてもよい。
【0027】
以下に本発明の製造方法に用いる転写用積層体を例にとり、各構成成分について、順を追ってさらに詳細に説明を行う。本発明の蛍光絵柄形成方法を用いてカード基体上に蛍光絵柄を有する磁気ストライプを形成するときに用いる磁気ストライプ用の転写用積層体(転写型磁気テープ)は、図2の断面構成図に示すように、転写用基材フィルム9、必要に応じて形成される蛍光剤拡散防止層1、必要に応じて形成される着色層3、磁気記録層4、必要に応じて形成される感熱接着剤層5を有する。そして、本発明の蛍光絵柄形成方法に使用可能な一つの実施態様に対応した構成として、感熱接着剤層上に蛍光絵柄形成領域10を設けている。
【0028】
本発明において蛍光絵柄形成方法に使用する転写用基材フィルムとしては公知慣用のフィルムがいずれも使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体、ポリアミド等のプラスチック等を挙げることができる。中でも抗張力や耐熱性を兼ね備えたポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、転写基材フィルムの厚さには特に制限はないが、通常3〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
【0029】
本発明の蛍光絵柄形成方法に使用する転写用積層体においては、蛍光剤拡散防止層を用いることができる。蛍光剤拡散防止層は熱により感熱接着剤層、磁気記録層、着色層を通して拡散した蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が蛍光剤拡散防止層を超えて更に外部に拡散することを防止する特性を有し、さらに転写材の転写工程において、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が転写用の金属板、プレス用の金属板などに付着するのを防止する。また、蛍光剤拡散防止層は、磁気ストライプ用転写材の磁気ストライプ用転写材の保護層としての機能と共に、蛍光剤拡散防止層の直下まで拡散してきた蛍光剤の絵柄を該蛍光拡散防止層を通して紫外線照射により容易に識別できるように紫外線及び可視光線の波長で実質的に透明な特性を有していることが好ましい。
【0030】
蛍光剤拡散防止層を構成する結着樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体、あるいは、さらにビニルアルコール、無水マレイン酸あるいはアクリル酸などを加えた共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、およびこれらの樹脂の混合物を挙げることができる。蛍光剤の外部への拡散を効果的に防止するためには前記樹脂のうちでガラス転移点が、蛍光剤が拡散するときの転写用積層体加熱温度や熱転写温度より高いものを使用することが好ましい。
【0031】
蛍光剤拡散防止層用塗料に使用する溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類を挙げることができ、これらの溶剤は、2種類以上を混合して使用することもできる。
さらに、蛍光剤拡散防止層中には、必要に応じて、皮膜改質剤として大豆レシチン、マイクロシリカ、あるいはワックス等を添加することができる。また、ポリイソシアネート化合物などの硬化剤を添加して、樹脂バインダー分子間を架橋することは、蛍光剤拡散防止層の耐久性を向上させるために好ましい。
蛍光剤拡散防止層は効果的に蛍光剤の拡散を防止出来るように、多孔質形状を有していないことが重要で、層中には空孔を生じやすい各種フィラーを含まないものが好ましい。蛍光剤拡散防止層は、上記のように調整した蛍光剤拡散防止層用塗料をリバース方式、グラビア方式、ダイコート方式等の公知慣用の方式で仮支持体フィルム上に塗布することにより得られる。
蛍光剤拡散防止層の乾燥塗膜厚は、記録再生特性からいえば薄いほど良いが、強度、耐久性等とのバランスを考慮すると0.1〜5μmが好ましく、0.3〜2μmがさらに好ましい。
【0032】
本発明の蛍光絵柄形成方法に使用する転写用積層体は着色層(隠蔽層)を有していても良い。該着色層は結着樹脂と着色剤を成分として含有しており、磁気記録層等の色相を隠蔽して着色層中を拡散する蛍光剤による蛍光絵柄の作製、識別を容易にする。
着色層に用いる顔料は、無機顔料としては、アルミナ、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、酸化亜鉛、硫酸バリウムなど、有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、インダンスレン系など多々あるが特に限定されるものではない。また、上記顔料に代え、あるいは併用してフタロシアニン染料、アゾ染料、ニトロ染料、キノリン染料、メチン染料、アジン染料、ファタレイン染料等の染料を用いることもできる。安定した着色のためには有機顔料または無機顔料が好ましい。
また、磁気層の色相を効果的に隠蔽可能な顔料として、リン片状金属粉も使用でき、金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等を使用することができる。リン片状金属粉は板状形状にボールミル等で調整されるが、これらの形状は、面方向の大きさは、5〜25μmが好ましく、さらに好ましくは10〜15μmである。厚みは0.1〜1μm程度である。
【0033】
着色層用塗料に使用する結着樹脂としては、公知慣用の結着樹脂が使用できる。例えば、蛍光剤拡散防止層のところで述べた結着樹脂に加え、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリスチレン樹脂、セラック、アルキッド樹脂等が挙げられる。また、イソシアネート化合物を用いて熱硬化することもできる。着色層は蛍光剤拡散層として機能させることができ、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は着色層を通って転写材の表面方向に拡散させることができる。蛍光剤の拡散の速度、難易度は着色層に用いている結着樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と着色層に用いる結着樹脂を適宜選択して調整することができる。蛍光剤の拡散を容易にするためには着色層に用いる結着樹脂のTgが転写材に加えられる温度より低いことが好ましい。
【0034】
着色層用塗料に使用する溶剤としては、公知慣用の溶剤が使用でき、例えば、既に蛍光剤拡散防止層のところで述べた溶剤等が使用できる。
着色層の形成は、着色剤を結着樹脂、および結着樹脂を溶解する溶剤中に単独、もしくは2種類以上混合し、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ディスパー等の公知慣用の方法で分散させて、着色層用塗料を作成し、これをリバース方式、グラビア塗布方式、ダイコート方式等の公知慣用の方式で塗布、乾燥することにより、行うことができる。
着色層の膜厚は、磁気記録層の茶色または黒色を隠蔽するには厚いことが好ましい。しかしながら、着色層はカード化した際に磁気記録層よりもカードの表層側に位置することになるため、その膜厚を大きくしすぎると、スペーシングが大きくなり、再生出力特性が低下し、情報読み取り時のエラー発生の可能性が増大する。そのため、着色層の膜厚は、2〜5μm、特に3〜4μmであることが好ましい。
【0035】
本発明で用いる磁気記録層は、例えば磁性粉末、結着樹脂および結着樹脂を溶解する溶剤を含有する。
本発明の磁気記録層は、転写工程を経て作製するときは、例えば磁性粉末、結着樹脂および結着樹脂を溶解する溶剤を含有した磁気記録層用塗料を転写用基材上、または蛍光剤拡散防止層上、または着色層上に塗設して形成した転写用積層体を用いて作製することができる。
該磁気記録層中に含有される磁性粉末としては、γ−酸化鉄、マグネタイト、コバルト被着酸化鉄、2酸化クロム、鉄系メタル磁性粉、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の公知の磁性粉末を用いることができる。保磁力が20〜320kA/mの範囲のものが好ましい。
磁気記録層に用いる結着樹脂としては、公知慣用の結着樹脂が使用できる。例えば一般的に、着色層のところで述べた結着樹脂等を使用することができる。また、イソシアネート化合物を用いて熱硬化することもできる。また、磁気記録層用塗料に用いる溶剤としては、例えば一般的に蛍光剤拡散防止層のところで述べた溶剤等を使用することができる。
【0036】
磁気記録層用塗料には、必要に応じて界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル等の助剤類、さらにはカーボンブラックその他のフィラー類を添加することもできる。磁気記録層は蛍光剤拡散層として機能させることができ、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は磁気記録層を通って転写材表面へと拡散させることができる。蛍光剤の拡散の速度、難易度は結着樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と磁気記録層に用いる結着樹脂を適宜選択して調整することができる。蛍光剤の拡散を容易にするためには磁気記録層に用いる結着樹脂のTgが転写材に加えられる温度より低いことが好ましい。
【0037】
磁気記録層用塗料は、例えば上記磁性粉末、結着樹脂、溶剤を公知慣用の方法により、混練分散する事によって得られる。混練分散機としては、例えば二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ヘンシェルミキサー、コボルミル、サンドミル、ディスパー、ホモジナイザー、ニーダー、等が使用できる。
磁気記録層用塗料の塗布方法においては、特に制限はなく、公知慣用の塗布方式を使用して良く、磁気記録層用塗料を所定量塗布後、磁性粉末の磁化容易方向が磁気記録層の塗布長手方向になるように配向処理を行って乾燥を行う。塗布方式としては、例えばグラビア方式、リバース方式、トランスファロールコーター方式、キスコーター方式、ダイコーター方式等が使用できる。
また、上記塗布方式により塗布後は、塗膜が乾燥しないうちに磁場配向処理を行うことが記録再生特性の点で好ましく。磁場配向方法は、公知の方式、例えば反発対向永久磁石、ソレノイド型電磁石等を用いることができる。磁場強度としては1000〜6000Gの範囲が好ましい。
磁気記録層の乾燥膜厚は、好ましくは2〜50μmの範囲であり、さらに好ましくは5〜20μmの範囲である。
【0038】
本発明の蛍光絵柄形成方法及び転写用積層体には、転写用積層体とカード用基材を接着させる目的で感熱接着剤層を用いることができる。感熱接着剤層は、一般的には、感熱接着性を示す樹脂を含む。
感熱接着性を示す樹脂としては、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体、あるいは、さらにビニルアルコール、無水マレイン酸あるいはアクリル酸などを加えた共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。また、感熱接着剤層に用いる溶剤としては、例えば蛍光剤拡散防止層のところで述べた溶剤を使用することができる。感熱接着性を示す樹脂を溶剤に溶解させ、混合攪拌して感熱接着剤塗料を調整し、この感熱接着剤塗料を例えば磁気記録層上にリバース方式、グラビア方式、ダイコート方式などの公知の方式により塗布、乾燥することによって感熱接着剤層が得られる。
【0039】
感熱接着剤層の膜厚は0.5〜15μmが好ましく、特に0.5〜5μmが好ましい。感熱接着剤層は、蛍光剤拡散層として機能させることができ、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は感熱接着剤層を通って転写材の表面方向に拡散させることができる。蛍光剤の拡散の速度、難易度は感熱接着剤層に用いている樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と感熱接着剤層に用いる樹脂を適宜選択して調整することができる。蛍光剤の拡散を容易にするためには感熱接着剤層に用いる樹脂のTgが転写材に加えられる温度より低いことが好ましい。
【0040】
本発明の蛍光絵柄形成方法および転写用積層体における蛍光絵柄形成領域の形成は以下の蛍光絵柄形成用インクの印刷によって行うことができる。本発明の蛍光絵柄形成用インクは、結着樹脂、蛍光剤と溶剤を含んでいる。
蛍光絵柄形成用インクの蛍光剤としては有機系の蛍光物質を用いることができる。具体的な有機蛍光物質としては、ベンゾオキサゾールチオフィン系、ジアミノスチルベン系、イミダゾール系、クマリン系、ナフタルイミド系、希土類錯体系等の蛍光染料が拡散も良好で好ましい。また、市販されている蛍光物質としては、Chiba Special Chemicals社製の商品名UVITEX OB、日本化薬社製の商品名Kayalight OS、BASF社製の商品名Thermoplastシリーズ、商品名Fluorolシリーズ、 商品名Lumogenシリーズ、記録素材総合研究所社製 商品名ルミカラー等を用いることができる。
【0041】
蛍光絵柄形成用インクに使用する結着樹脂としては、公知慣用の結着樹脂が使用できる。例えば、蛍光剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、感熱接着剤層のところで述べた結着樹脂等が挙げられるが、蛍光絵柄印刷を施す感熱性接着剤およびカード用オーバーシート基材への付着性、磁気ストライプ用転写材をカード基材オーバーシートへ接着する際の接着性を阻害しない結着樹脂が好ましく、前記感熱接着剤層のところで述べた結着樹脂が好適に使用できる。
蛍光絵柄印刷用インクに使用する溶剤としては、公知慣用の溶剤が使用でき、例えば、既に蛍光剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、感熱接着剤層のところで述べた溶剤等が使用できる。
【0042】
蛍光絵柄形成用インクは、蛍光剤を結着樹脂、および結着樹脂を溶解する溶剤中に単独、もしくは2種類以上混合し、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ディスパー等の公知慣用の方法で分散させて作成する。蛍光絵柄の印刷には、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等の公知の印刷方法を用いることが出来るが、特に印刷品質、生産性の点から、特にグラビア印刷が適している。
蛍光絵柄形成領域は、蛍光絵柄の形状に設けられることから、一般的には不連続な層となる。また、複数の蛍光絵柄形成用インクを用いて多色の蛍光絵柄を印刷することもできる。また、毛抜き印刷などの手法により、一見連続した層とすることもできる。
蛍光絵柄形成領域の膜厚は、特に制限はないが膜厚が厚すぎると、一般的に磁気ストライプ用転写材はリール状に巻き上げているため、非印刷領域と印刷領域との膜厚差による段差が大きくなり、転写材を変形させ、磁気ストライプ用転写材とカード基材との接着性を悪化させる可能性があり、その膜厚は0.5〜5μmが好ましく、特に0.5〜2.0μmが好ましい。
【0043】
こうして蛍光絵柄形成用インクを使用して例えば磁気ストライプ用転写材の感熱接着剤面、もしくはカード用基材の磁気ストライプが転写される部分に蛍光絵柄形成領域を形成する。
こうして形成された蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を転写材内に拡散させる方法としては、転写工程前に転写基材上に転写材が存在する状態で、40〜80℃の高温環境下に数時間〜数日間放置させ、この熱により蛍光剤を転写用基体側に拡散させ、転写材の転写後に転写材側から識別可能な状態にする方法と、転写材をカード基材のオーバーシートに転写した後、カード上の絵柄を施したセンターコアと反対面のオーバーシートと共に熱圧プレス用金属板に挟み込み100〜160℃の温度をかけ数十分から数時間の熱圧プレス加工を行って、蛍光剤を転写後の転写材表面に拡散させて磁気カード表面より紫外線照射(または赤外線照射)により蛍光絵柄が識別可能な状態にする方法がある。
オーバーシートの厚みは例えば100μmであり、センターコアシートは1枚使用する場合は540μmであり、2枚使用する場合はそれぞれ270μmである。また、これらのカード基材は目的とする使用に耐えうる機械特性、耐水性、耐薬品性等が必要であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、非結晶コポリエステル(PET−G)等の合成樹脂シートが使用される。
【0044】
上記に転写工程を用いて磁気カードに蛍光絵柄を形成する方法を詳細に説明した。磁気カード状基材に換えてシート状、カード状、板状などの任意の形状の被記録材となる基材を用い、磁気記録層以外の蛍光剤拡散層を用いることによって、上記工程で示したのと同様の工程を用いて基材上に蛍光絵柄を作製し、積層体を作製することができる。蛍光剤拡散層、蛍光絵柄形成領域等、転写用積層体の構成は、各種基材への接着性、各積層体の用途を考慮して、最適な層構成となるように各層毎の配合を調整すればよい。
【0045】
本発明の蛍光絵柄形成方法で使用する蛍光絵柄形成領域や蛍光剤拡散層は、転写用積層体を用いた転写工程によって、適宜、被記録材上となる基材上に積層することができるが、転写工程を用いずに各層を形成する塗料やインクによる塗布工程や印刷工程を用いて、順次被記録材上に必要な層を積層することもできる。塗布工程や印刷工程においては、前述した各種の塗布、印刷方法に加え、インクジェット記録法による印刷も行うことができ、非平面で凹凸を有する被記録材上にも蛍光絵柄形成領域その他の、本発明の方法に必要な層を形成することができる。このようにして作製された加熱工程前の積層体は、転写工程における場合と同じように40〜80℃の恒温環境下におけるエージング、または熱圧プレス工程により、蛍光絵柄形成領域中の蛍光剤が蛍光剤拡散層中へ、もしくは蛍光剤拡散層を通って拡散し、表面からの紫外線照射によって識別可能な蛍光発光をさせることができる。
【0046】
本発明の蛍光絵柄形成方法を用いることにより、きわめて多様な基材に対して蛍光絵柄を形成することができる。本発明における被記録材としては、表面形状が極めて複雑な深い凹凸を有する基材、蛍光剤の拡散時における加熱温度で不安定な基材、多孔質性や溶剤吸収性の基材はあまり好ましくないが、特に限定されるものではない。被記録材としては蛍光絵柄形成領域が安定的に形成でき、熱拡散に必要な温度まで加熱できるような材質であることが好ましい。
【0047】
このようにカード状基材上に蛍光絵柄を形成して蛍光絵柄を有する磁気カードを作製した、上記本発明の実施態様は、本発明の可能な実施態様のごく一部にすぎない。例えば各種物品の一構成部品の塗装、着色工程で真偽判定や贋作防止の目的で上記方法により蛍光絵柄を形成することができる。物品によっては完成品の表面の一領域に上記方法で蛍光絵柄を形成することも可能である。本発明の物品の一例としては、紙幣、小切手、手形、トラベラーズチェック、パスポート、株券、証券、商品券、切手、はがき、図書券、保険証、運転免許証、証明書、プリペイドカード、フレキシブルディスク、MO、CD、DVD、ICカード、光カード、ポイントカード、会員カード、ブランドタグ、セキュリティシールなどが挙げられる。
【0048】
さらにエージングによってあらかじめ蛍光剤を拡散させた転写用積層体を用いると、該積層体による転写工程を用いることで、転写可能なあらゆる被記録材に対して蛍光絵柄を形成することができる。
また、シート状基材の上に蛍光絵柄形成領域と蛍光剤拡散層をこの順に設け、これらの層とシート状基材を挟んで反対側に接着剤層(粘着材層)を設けた後、エージングによって蛍光剤を蛍光剤拡散層に拡散させたラベルを用いることにより、多種多様の物品に蛍光絵柄を形成することができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない、尚、以下「部」は質量部を表すものとする。
実施例、比較例には以下に示す、転写基材フィルムおよび各塗料を使用する。
【0050】
転写用基材フィルム 厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルム
蛍光剤拡散防止層用塗料(保護層機能を兼ねる)
セルロースアセテート樹脂 8部
(ダイセル化学社製『L−20』)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂 2部
(イーストマンケミカル社製『CAP−504−0.2』
アセトン 25部
酢酸エチル 25部
トルエン 20部
シクロヘキサノン 20部
ポリイソシアネート 4部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』
上記の材料の内、ポリイソシアネートを除く全てを、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させた後に上記のポリイソシアネートを添加し、更にディスパーにて攪拌均一化を行い、蛍光剤拡散防止層用塗料を作製した。
【0051】
着色層用塗料
リン片状金属粉:アルミニウム粉末 20部
(昭和アルミパウダー社製『210EA』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 16部
(ユニオンカーバイド社製『VAGH』)
ポリウレタン樹脂 4部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
メチルエチルケトン 75部
トルエン 75部
シクロヘキサノン 17部
ポリイソシアネート 5部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
上記の材料の内、ポリイソシアネートを除く全てを、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させた後に上記のポリイソシアネートを添加し、更にディスパーにて攪拌均一化を行い、着色層用塗料を作製した。
【0052】
磁気記録層用塗料
バリウムフェライト磁性粉 100部
(戸田工業社製『MC−127』;保磁力 220kA/m)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 15部
(日本ゼオン社製『MR−110』)
ポリウレタン樹脂 10部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
MEK 50部
トルエン 50部
シクロヘキサノン 25部
ポリイソシアネート 10部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
上記材料を用い、特開平09−059541に示す方法により磁気記録層用塗料を作製した。
【0053】
感熱接着剤塗料
ポリウレタン樹脂 1部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 4部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 45部
トルエン 50部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、感熱接着剤塗料を作製した。
【0054】
蛍光絵柄形成用インク〔A〕
蛍光物質〔A〕 2部
(Ciba Specialty Chemicals社製『UVITEX OB』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 44部
トルエン 44部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を作製した。
【0055】
蛍光絵柄形成用インク〔B〕
蛍光物質〔B〕 2部
(BASF社製『Lumogen F Violet 570』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 44部
トルエン 44部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、蛍光絵柄形成用インク〔B〕を作製した。
【0056】
(実施例1)
磁気ストライプ用転写材作成
転写用基材フィルムとして、厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルムの片面上に上記の蛍光剤拡散防止層用塗料、着色層用塗料、磁気記録層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ蛍光剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、蛍光剤拡散防止層が1μm、着色層が4μm、磁気記録層が9μm、そして接着剤層が1.5μmとなるようにした。
蛍光絵柄印刷
蛍光絵柄印刷として、上記作成した転写材の感熱接着剤層面上に蛍光絵柄形成用インク〔A〕をグラビア印刷方式により絵柄部分の膜厚が1μmとなるように図6に示すよう蛍光絵柄印刷を行い、60℃の恒温室に24時間放置した。
磁気カード作成
上記で作製した磁気ストライプ用転写材を所定の幅に裁断後、卓上型テストプレス機(テスター産業社製)によりポリ塩化ビニル製のカード基体用オーバーシート(太平化学社製)に転写材を転写した後、仮支持体フィルムを除去し、カード基体用センターコアと反対面のオーバーシートと共に温度130〜140℃、圧力20kg/cm2、時間20〜30分加熱加圧しての条件下で熱圧プレス加工し、その後、カード状に打ち抜いて磁気カード図8を作製した。
【0057】
(実施例2)
実施例1の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を蛍光絵柄形成用インク〔B〕とした以外は実施例1と同様にして磁気カードを作成した。
(実施例3)
実施例1の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄印刷後の磁気ストライプ用転写材を60℃の恒温室に24時間放置を行わない以外は、実施例1と同様にして、磁気カードを作成した。
(実施例4)
実施例2の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄印刷後の磁気ストライプ用転写材を60℃の恒温室に24時間放置を行わない以外は、実施例2と同様にして、磁気カードを作成した。
(実施例5)
実施例1において、磁気ストライプ用転写材は実施例1と同様に作成し、蛍光絵柄印刷をカード用基材「オーバーシート」の磁気ストライプが転写される部分に蛍光絵柄形成用インク〔A〕を用いてグラビア印刷方式により図7に示すように、蛍光絵柄印刷を行った。それ以降は、実施例1の磁気カード作成方法と同様にして磁気カードを作成した。
(実施例6)
実施例3の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を蛍光絵柄形成用インク〔B〕とした以外は実施例1と同様にして磁気カードを作成した。
【0058】
(比較例1)
磁気ストライプ付きカード基材作成
磁気ストライプ付きカード基材の透明オーバーシート、センターコア、透明オーバーシート、磁気テープをこの順に積層させて1度の加熱で同時に熱融着してカード基材を得る。
隠蔽カード用隠蔽層転写シート作成
転写用基材フィルムとして、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルムの片面上に上記の蛍光剤拡散防止層用塗料、着色層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ蛍光剤拡散防止層、着色層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、蛍光剤拡散防止層が1μm、着色層が4μm、そして接着剤層が1μm以下となるように形成した。感熱接着剤層を形成した後に蛍光絵柄形成用インク〔A〕をグラビア印刷方式により乾燥後の厚さが1μm以下となるように蛍光絵柄形成領域を形成した。
磁気カード作成
上記で作製した磁気ストライプ付きカード基材に隠蔽カード用隠蔽層転写シートの蛍光絵柄形成領域側を重ね、卓上型テストプレス機(テスター産業社製)により温度120〜130℃、圧力16〜18kg/cm2、時間15〜25分加熱加圧して隠蔽カード用隠蔽層転写シートを磁気ストライプ付きカード基材に接着させた後、転写シートのPETフィルムを剥離させ、磁気カードを作成した。
【0059】
(比較例2)
比較例1において、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を蛍光絵柄形成用インク〔B〕とする以外は比較例1と同様にして磁気カードを作成した。
【0060】
評価方法
(蛍光絵柄の隠蔽性I)
太陽光、室内光下にて、太陽光、室内光下含まれる紫外光による蛍光絵柄の蛍光発光の有無を目視で評価した。
○・・・蛍光発光が視認できず。
×・・・蛍光発光が視認できる。
【0061】
(蛍光絵柄の隠蔽性II)
太陽光、室内光下にて、可視光反射光による蛍光絵柄印刷の輪郭が視認性の有無を目視で評価した。
○・・・蛍光絵柄の輪郭が視認できず。
×・・・蛍光絵柄の絵柄が視認できる。
【0062】
(紫外線照射による蛍光発光)
紫外線照射による蛍光絵柄の蛍光発光強度を目視で評価。
○・・・十分な蛍光発光が得られる。
×・・・蛍光発光が不十分で蛍光絵柄の視認性が悪い。
【0063】
(出力変動)
得られた磁気カードについてISO/IEC7811−6に準拠し、BARNES社製MAGTESTER2000を用いてその記録再生特性の測定を行い、下記式により出力変動を求めた。なお、この磁気カードサンプルを作成するために使用した転写型磁気テープに関しては、それぞれのスペーシングにあわせて磁気記録層の膜厚を調整し、出力平均値が基準カード出力に等しくなるよう調整を行った。
出力変動(%)=((出力最大値−出力最小値)/出力平均値)×100
○・・・5%未満。 △・・・5%以上、10%未満。 ×・・・10%以上。
【0064】
【表1】
【0065】
表1の結果から明らかのように、本実施例1〜6は、従来の蛍光絵柄形成方法比較例1、2と同様の蛍光発光強度を確保でき、また太陽光や室内光に含まれる紫外線による蛍光発光により蛍光絵柄が視認されることは無い。さらに、本実施例1〜6は蛍光絵柄印刷に用いた蛍光剤が磁気記録層、着色層に拡散しているため、蛍光絵柄印刷は着色層に太陽光や室内光の可視光反射により蛍光絵柄印刷部分の輪郭が視認可能な変形を与えることが無い。また、蛍光絵柄部分と非蛍光絵柄部分で磁気ストライプ表面と磁気記録層の間の距離は実質的に変化しないため、蛍光絵柄形成領域の存在に起因する出力変動は全く発生しないため、これによりカードの真偽判定が確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】磁気ストライプ用転写材で磁気記録層と蛍光絵柄形成領域を形成した従来の磁気カードの拡大断面図である。
【図2】本発明の蛍光絵柄形成方法に使用する転写用積層体の一つの実施態様を示す断面図である。
【図3】前記転写用積層体のエージングを行ったときに、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が拡散する様子を概念的に示した断面図である。
【図4】本発明の蛍光絵柄形成方法の一つの実施態様であって、オーバーシート基材側に蛍光絵柄形成領域を形成する場合を概念的に示した断面図である。
【図5】本発明の蛍光絵柄形成方法によって形成された磁気カードの一つの実施態様を示す断面図である。
【図6】実施例1〜4で製造した磁気ストライプ形成用の転写用積層体と蛍光絵柄形成領域を示した概念図である。
【図7】実施例5の製造において蛍光絵柄形成領域を示した概略図である。
【図8】本発明の蛍光絵柄形成方法を用いて蛍光絵柄が形成された磁気カードの一つの実施態様を示す概略図である。
【図9】本発明の蛍光絵柄形成方法を用い、磁気記録層と蛍光絵柄を有する磁気カードを転写用積層体を用いて製造するときの工程の一例を表す図である。
【図10】本発明の蛍光絵柄形成方法を用い、磁気記録層と蛍光絵柄を有する磁気カードを転写用積層体を用いて製造するときの工程の他の例を表す図である。
【図11】磁気記録層と蛍光絵柄を有する磁気カードの従来の製造方法を表す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 蛍光剤拡散防止層
2 蛍光剤拡散領域
3 着色層
4 磁気記録層
5 感熱着色層
6 オーバーシート
7 センターコア
8 カード上の蛍光絵柄形成部
9 転写用基材
10 蛍光絵柄形成領域における蛍光絵柄形成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材上に蛍光性の絵柄を形成する方法に関し、特に基材上に転写材を転写してなる積層体に蛍光性の絵柄を形成する方法に関する。さらに前記蛍光絵柄形成方法によって蛍光絵柄が形成された物品、積層体に関する。特にクレジットカード、銀行カードなどの磁気記録層を有する転写材を基材上に転写してなる磁気カードの磁気ストライプを含んだ表面上に形成される新規な蛍光性の絵柄形成方法、該絵柄形成方法に用いられる転写用積層体、及び該絵柄形成方法により製造される蛍光性の絵柄を有する磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
被記録材上に蛍光剤を含有するインクで印刷を行うことによって蛍光性の絵柄を設けることは広く行われている。このようにして作製された蛍光性の絵柄は、太陽光や室内光に含まれる紫外線によって蛍光発光を生じ、非蛍光性のインクを用いて作製された絵柄とは異なった、独特の意匠性を被記録材である各種物品に与える。
このような蛍光性の絵柄の中でも、通常の太陽光や室内光に含まれる程度の弱い紫外線ではその蛍光発光を認識することができず、紫外線強度の高い専用の紫外線照射装置を用いることによって初めてその蛍光発光を認識することのできる蛍光性の絵柄は、隠し印刷として真性製品の認証や贋作防止などに用いることができる。
特に、クレジットカード、銀行カードなどセキュリティ性を重要視される磁気カードにおいて、偽造防止の手段として磁気記録層とともに蛍光絵柄形成領域が設けられているものが知られている。この蛍光絵柄形成領域は、上述のように太陽光や室内光に含まれる程度の紫外線では視認できず、専用の紫外線照射装置による紫外線照射により初めて蛍光絵柄として視認できることが必要であり、これによりカードの真偽を判断することが行われている。
【0003】
上記の真偽判断に使用される磁気カードを作製する方法としては、磁気記録層と磁気記録層の色相を隠蔽する隠蔽層の間に蛍光絵柄形成領域を設ける方法が開示されている。(特許文献1参照)。
また、蛍光絵柄形成領域を有する磁気カードとして、磁気記録層の上に構成される層として、転写用基材上に剥離層、オーバーコート層、絵柄印刷層、隠蔽層、蛍光絵柄形成領域を順次形成し、これを磁気記録層を形成したカードに転写させて設ける磁気カードの形成方法(図11参照)、および該製造方法によって製造される磁気カード(図1参照)が開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
更に、蛍光絵柄形成領域を有する磁気カードの別の製造方法による磁気カードとして、カード基材上の磁気記録層上に第1隠蔽層、蛍光インキ印刷層、第2隠蔽層、プロセスインキ印刷層、表面保護層を順次形成する方法が開示されている(特許文献3参照)。
このようなカードにおいては、太陽光、室内光に含まれる程度の弱い紫外線ではその蛍光発光が視認できないように、また、蛍光絵柄形成層の存在がカード表面から直接的に認識されることを防ぐために、隠蔽層を設けて蛍光絵柄形成層を隠蔽している。蛍光絵柄形成層を隠蔽するためには、隠蔽層の膜厚は厚い方が好ましいが、一方、紫外線による真偽判別を行う場合には、真偽識別のための照射紫外線が隠蔽層を通過して蛍光絵柄形成層に到達するように、また、蛍光絵柄形成層からの蛍光発光が隠蔽層を通過してカードの表面から放出される必要があり、隠蔽層の厚みはおのずと制限される。そのためこのようなカードにおいては、蛍光発光特性を確保するために隠蔽層の厚さが2μm以下と薄くする必要がある。ここで、蛍光絵柄印刷層は、磁気記録層を含むカード基材と隠蔽層の間、もしくは第1隠蔽層と第2隠蔽層の間に設けられており、該蛍光絵柄印刷層はシルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの方式により形成されるため、その厚みが1μm以下とはいえ厚みを有しているため、蛍光絵柄印刷層上に設けられた隠蔽層はカード化後にこの蛍光絵柄形成層によって物理的な変形を受け、可視光において蛍光絵柄の輪郭が隠蔽層の変形という形で視認できてしまうという問題があった。
【0005】
特に隠蔽層としてアルミ粉などの鱗片状金属粉末を用いている場合、蛍光絵柄形成層による隠蔽層の物理的な変形は、鱗片状金属粉末の配向状態の乱れを引き起こし、外観的には大きな変形としてとらえられることとなり、蛍光絵柄層の存在がより容易に判明してしまうという欠点があった。このように隠蔽層を用いて蛍光絵柄層の存在を隠蔽する手法においては、蛍光発光性を確保するために隠蔽層の厚みを十分厚く設けることができないため、隠蔽層の物理的な変形として蛍光絵柄層の存在を認識されてしまう問題は、磁気記録媒体に限られたことではない。
【0006】
さらにこれらのカードにおいては、蛍光発光性を確保するために、蛍光絵柄形成層は磁気記録層よりもカード表層側に設けられる必要があった。磁気記録層よりもカード表層側に存在する層は、磁気記録及び再生の場合、磁気ヘッドと磁気記録層との間隙、すなわちスペーシングとなり、記録再生特性に悪影響を与える。特にスペーシングに厚薄がある場合、磁気カードの再生出力には変動が生じ、カード読みとりエラーの原因となる。蛍光絵柄形成層は一般的に蛍光絵柄に即した不連続な層であるため、蛍光絵柄形成層を設けることによって再生出力の変動が生じることは避けられず、これらのカードにおいて読みとりエラーが増大する原因となっている。
【特許文献1】実開平3−40615号公報
【特許文献2】特開平9−309287号公報
【特許文献3】特開2002−2160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線非照射時においては全く蛍光絵柄の存在が認識できず、紫外線照射時にのみその蛍光発光が確認できる蛍光絵柄形成方法を提供することにある。すなわち、強い紫外線を照射することによって蛍光発光し、通常の太陽光、室内光に含まれる弱い紫外線ではその蛍光発光が確認できず、かつ、蛍光絵柄形成領域による蛍光絵柄形成領域よりも上側に存在する層の物理的な形状変化がその表面から認識されないため、可視光の反射などによっても蛍光絵柄形成領域の存在が認識されることのない蛍光絵柄を形成する方法を提供することにある。また、該蛍光絵柄形成方法を用いて製造された蛍光絵柄を有する物品、積層体、磁気記録媒体を提供することである。
さらに本発明が解決しようとする課題は、転写工程を経て形成される積層体の表面に紫外線の照射により識別可能となり、しかも太陽光や室内光に含まれる紫外光ではその存在が確認できない蛍光絵柄の形成方法を提供することである。
さらに本発明が解決しようとする課題は、磁気ストライプを有するカードの該磁気ストライプ上に蛍光絵柄を形成する方法であって、紫外線の照射により識別可能となり、しかも太陽光や室内光に含まれる紫外光ではその存在が確認できない蛍光絵柄の形成方法、該形成方法に用いる転写用積層体、該製造方法より製造される磁気カードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被記録材上に紫外線照射により識別可能となる蛍光絵柄を形成する方法であって、前記被記録材上に近い側から、蛍光絵柄形成領域と、蛍光剤拡散層とを形成し、前記蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を、前記蛍光剤拡散層中へ、または前記蛍光剤拡散層を通って拡散させることを特徴とする蛍光絵柄形成方法を提供する。
また、本発明は、転写用基材上に形成された層状の転写材を基材上に転写してなる積層体へ、前記転写材表面からの紫外線照射により識別可能な蛍光絵柄を形成する蛍光絵柄形成方法であって、前記転写材中または前記基材上に予め形成された蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を、前記転写材の転写後の表面に近い方向へと、前記転写材中を通って拡散させることにより識別可能な蛍光絵柄を形成することを特徴とする蛍光絵柄形成方法を提供する。
また、本発明は、上記の蛍光絵柄形成方法を用いて作製された蛍光絵柄を有する物品、積層体、磁気記録媒体を提供する。
また、本発明は、転写用基材上に、層状の転写材が積層された転写用積層体であって、蛍光剤拡散層と蛍光絵柄形成領域をこの順に形成された転写用積層体を提供する。
さらに本発明は転写基材上に磁気記録層と蛍光絵柄形成領域を有する層状の転写材が形成された転写用積層体であって、前記蛍光絵柄形成領域が磁気記録層の上方に形成されたことを特徴とする転写用積層体を提供する。
【0009】
さらに本発明は、物品上の一部に紫外線の照射により識別可能な蛍光絵柄を付与された物品であって、前記蛍光絵柄を形成する蛍光剤は、物品上に形成された蛍光剤拡散層の膜厚全幅にわたって分布していることを特徴とする物品を提供する。
さらに本発明は、基材上に磁気記録層と、該磁気記録層表面からの紫外線の照射により識別可能な蛍光絵柄とを形成するための転写用積層体であって、転写用基材上に前記磁気記録層を含む層状の転写材を有し、前記蛍光絵柄を形成する蛍光剤は少なくとも前記磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布していることを特徴とする転写用積層体を提供する。
また本発明は、基材上に磁気記録層と、該磁気記録層側からの紫外線の照射により識別可能な蛍光絵柄を有する磁気カードであって、前記蛍光絵柄を形成する蛍光剤は、前記絵柄に対応する位置の少なくとも磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布していることを特徴とする磁気カードを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蛍光絵柄形成方法によれば、蛍光絵柄形成領域は、蛍光剤拡散層によって覆われており、その存在が直接目視によって認識されることはない。また、蛍光剤拡散層は照射された紫外線を透過する必要がないため、その厚みを厚くすることができる。そのため、蛍光絵柄形成領域の存在による蛍光剤拡散層の変形は、その層中で緩和され、その変形が目視可能にその表層まで影響を与えることはない。また、蛍光剤拡散層を不透明な層であれば一層、照射された紫外線が弱い場合、すなわち、太陽光や室内光に含まれる程度の紫外線である場合、その紫外線は蛍光剤拡散層のごく表層近傍の蛍光剤のみにしか到達することはできず、その結果、発せられる蛍光発光は非常に微弱なものとなり、認識されることはない。一方、紫外線照射装置などを用いて強い紫外線が照射された場合には、その紫外線は蛍光剤拡散層の比較的深部にまで到達し、その結果発せられる蛍光発光は認識することが十分可能なほどに強いものとなる。
したがって、太陽光や室内光などの通常光線下での蛍光絵柄形成領域の不可視性と、紫外線照射時の蛍光絵柄の良好な認識性を両立することができる。
【0011】
本発明の転写工程を有する絵柄形成方法によれば、前記転写材中または前記基材上に予め形成された蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を、前記転写材を通って前記転写材転写後の表面の方向に、拡散させることにより識別可能な蛍光絵柄を形成するため、蛍光剤は転写材の厚さ方向に分布することになる。このため前述のように蛍光絵柄形成領域を設けた場所に対応した箇所が、蛍光絵柄形成領域上の磁気記録層、着色層等の上から紫外線照射なしでその存在が識別可能となることがない。したがって偽造防止情報や識別情報をその印刷内容と印刷箇所から容易に知られること無い。
【0012】
本発明の蛍光絵柄形成方法によれば、磁気カード製造用の、磁気ストライプ用転写材を転写用基材上に例えば保護層、着色層、磁気記録層、接着剤層を形成し、その後に、感熱接着剤層上、またはカード基材上の磁気ストライプが転写される部位のどちらかもしくは両方に蛍光絵柄形成領域を形成する。その後に前記磁気ストライプ用転写材をカード基材上に転写することにより、蛍光絵柄の形成された磁気カードを製造することができる。蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は例えばオーバーシート上に前記磁気ストライプ用転写材を転写し、この磁気ストライプ付きオーバーシートをカード上の絵柄を施したセンターコアと反対面のオーバーシートと共に熱圧プレス加工を行い磁気ストライプ用転写材がカード基材に埋め込まれる工程において、転写後の磁気ストライプ用転写材の表面方向へと各層を通って拡散し、磁気記録層を含む磁気ストライプ用転写材各層の膜厚方向へと分布して、紫外線照射により識別される蛍光絵柄となる。このため当初の蛍光絵柄形成領域が原因となって、その上に形成される層が変形することがなく、偽造防止情報の有無、内容やその形成箇所が容易に識別されることがない。さらに蛍光絵柄を形成する蛍光剤は、磁気ストライプ用転写材の各層の内部に拡散し、磁気記録層上に特別の厚みを形成することがないので、磁気カードとしての記録再生出力に変動を発生させることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の蛍光絵柄形成方法では、被記録材上に蛍光絵柄形成領域を、例えば蛍光剤を含有する蛍光絵柄形成用インクを印刷するなどの手段によって設け、次に、この蛍光絵柄形成領域を完全に覆うように蛍光剤拡散層を設け、その後、蛍光剤拡散層中へ、または蛍光剤拡散層を通って、加熱による蛍光剤の拡散をさせることによって、被記録材に蛍光絵柄を作製することができる。
【0014】
蛍光剤拡散層は、蛍光絵柄形成領域の存在を隠蔽し、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤をその層内に拡散させることが可能であり、かつ、蛍光剤を紫外線照射による識別が可能なように表面近傍に保持するための専用の層であってもよく、他の機能層を兼用していてもよい。また、これら複数の層が積層された構造を有していてもよい。
たとえば、蛍光絵柄が形成された磁気記録媒体を作製する場合、基材上に蛍光絵柄形成領域を設けた後、その全面を覆うように蛍光剤拡散層として機能する磁気記録層、及び必要に応じてその他の機能を有する層を設け、ついで、加熱による蛍光剤の拡散を行うことができる。この場合、磁気記録層よりも下方に位置する蛍光絵柄形成領域の存在は、不透明な磁気記録層によって完全に隠蔽されており、通常の光線下では認識することはできない。
しかし蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は蛍光剤拡散層である磁気記録層へ、または磁気記録層を通って磁気記録媒体の表面近くへと拡散するため、紫外線照射装置からの紫外線照射によって蛍光発光を生じ、可視化される。
【0015】
また、本発明の蛍光絵柄形成方法は、転写用基材上に蛍光剤拡散層を設けた転写用積層体を作製し、これを用いて蛍光剤拡散層を、あらかじめ蛍光絵柄形成領域を設けた被転写基材上に転写し、その後、加熱による蛍光剤拡散層中への蛍光剤の拡散を行うことによって行うこともできる。
たとえば、転写用基材上に蛍光剤拡散層としても機能する磁気記録層及び必要に応じてその他の機能層からなる転写材を設けて転写用積層体を作製しておく。次に被転写基材上に蛍光絵柄形成領域を設け、前記の転写用積層体を使用して、この蛍光絵柄形成領域を覆うように磁気記録層を含む転写材を転写し、その後、加熱による磁気記録層中へのもしくは磁気記録層を通っての蛍光剤の拡散を行うことによって蛍光絵柄が形成された磁気記録媒体を作製することができる。
【0016】
また、蛍光絵柄形成領域自体を転写工程によって形成してもよい。ここで転写とは、転写用基材上に転写材を設けた転写用積層体と被記録材である被転写用基材とを、転写材が被転写用基材と接するようにして重ね合わせ、接着し、その後、転写用基材を取り去って転写材のみを被転写用基材上に残す工程をいう。
また、本発明の蛍光絵柄形成方法は、転写用基材上に蛍光剤拡散層と蛍光絵柄形成領域とをこの順に設けて転写用積層体を作製し、これを用いて蛍光剤拡散層と蛍光絵柄形成領域の双方を被転写基材上に転写、その後、加熱による蛍光剤拡散層中への蛍光剤の拡散を行うことによって行うこともできる。また、この場合、蛍光剤の拡散は転写後に行うのではなく、転写前の転写用積層体の状態における加熱によっても行うことができる。
【0017】
本発明において蛍光剤拡散防止層を用いない時は、転写後に転写材の最上層となる部分を除けば、転写材中の任意の部分または、転写材が転写される位置の基材表面部分から選ばれる任意の位置に蛍光絵柄形成領域を形成することができる。蛍光剤拡散防止層を用いるときは、蛍光絵柄形成領域は、転写後に蛍光剤拡散防止層の直下に配置されなければよい。しかしデザイン上の変更が頻繁に行われる蛍光絵柄形成領域を形成する工程は、積層体を形成する工程のできるだけ最終部分にあることが好ましく、例えばカード用基体上の磁気ストライプの上に蛍光絵柄を形成するときは、磁気ストライプ形成用の転写用積層体の例えば感熱接着剤層上、または磁気ストライプが転写される基材側に蛍光絵柄形領域が形成されることが好ましい。このように、例えば予め蛍光絵柄を印刷しない無地の磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておくことで、絵柄を含む磁気カードのデザインが決定次第、転写用積層体またはカード用基材に蛍光絵柄印刷を行い、転写工程を経てカード製造を行うことが出来るため、受注から短納期で絵柄付き磁気ストライプを有する磁気カードの製造が可能となる。
【0018】
さらに蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が磁気記録層を通って拡散するように、転写用積層体の転写用基材から遠い側、すなわち磁気記録層の上方に蛍光絵柄形成領域を形成することにより、カード形成後、磁気記録層中に保持された蛍光剤は通常は識別できず、紫外線光源の照射によってはじめて識別できる。このため蛍光絵柄形成領域を被覆する隠蔽層を特に使用しなくても蛍光絵柄を隠すことが可能である。
【0019】
また本発明の絵柄形成方法は、絵柄形成領域の蛍光剤を転写材の表面方向に拡散させて紫外線照射により識別可能な蛍光絵柄を形成するため、蛍光絵柄形成領域上に蛍光剤が拡散して識別可能に保持される領域(蛍光剤拡散層)が必要である。該領域の膜厚は薄すぎると蛍光絵柄の形成が十分に行われず、また蛍光剤が横方向に拡散して図柄が不鮮明になりやすい。また、蛍光絵柄形成領域の膜厚の影響のため、従来の蛍光絵柄形成方法における隠蔽層と同様に変形を受けやすい。これに対して該領域の膜厚が厚すぎるとやはり拡散領域が広がり過ぎて蛍光絵柄が不鮮明となる可能性がある。このために蛍光絵柄形成領域の上方に位置する積層体の膜厚の総計は、蛍光剤拡散防止層の膜厚を除いて2μmを越えて50μm程度までの範囲が好ましく、3〜20μm程度がさらに好ましい。これはすなわち蛍光拡散層の膜厚である。
【0020】
本発明の蛍光剤拡散層は、蛍光絵柄形成領域からの蛍光剤が熱によって拡散し、また拡散の結果、表層近くにまで到達して、表面からの紫外線照射によって蛍光発光可能に保持される層である。すなわち、本発明においては蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が、表層近傍へ拡散して保持されるための膜厚方向の拡散経路に当たる部分が蛍光剤拡散層に該当する。したがって、蛍光剤の拡散経路にある着色層や隠蔽層はもとより、蛍光絵柄形成領域の形成箇所によっては磁気記録層や感熱接着剤層などもその本来の機能を果たしつつ、蛍光剤拡散層として機能しうる。蛍光剤拡散層は、これらの層のうち、いずれか単層、または複数の層のいくつかの組み合わせよりなる。蛍光剤拡散層においては、蛍光絵柄形成領域に近い部分は蛍光剤の拡散経路としての機能を主に果たし、表面に近い部分は紫外線の照射により視認可能に発色する蛍光剤の保持機能を主に果たす。蛍光拡散層は、蛍光剤の良好な拡散のためには構成成分である樹脂のTgが、エージングや転写材の熱圧着、熱圧プレスなどの加熱工程における加熱温度に比べて低いことが好ましい。また、蛍光剤拡散層は太陽光、室内光などによって蛍光絵柄形成領域の存在が認識されないように全体として不透明であることが好ましい。
【0021】
以下に、転写工程を有する本発明の蛍光絵柄形成方法の一実施態様を示しつつ、その手順と使用する材料種類、配合について記載する。
【0022】
まず初めに、本発明の磁気カード製造方法について詳細に説明する。
本発明の蛍光絵柄形成方法の実施態様の一つとして、磁気記録媒体である磁気カードを取り上げ、カード製造後に識別可能な蛍光絵柄を磁気ストライプ用転写材に形成する方法について図2と工程図である図9を参照しつつ説明を行う。図2は本発明の製造方法に用いる転写用積層体の断面図、図9は製造方法の流れである。図9においては蛍光絵柄形成からカード作製までの工定数が最も少なく、工程上最も有利な感熱接着剤層の上に蛍光絵柄形成領域を設ける場合について表示した。
【0023】
本方法においては図2に示すように、転写用基材9に必要に応じて蛍光剤拡散防止層1、着色層(隠蔽層)3を形成し、その上に磁気記録層4、さらにその上に必要に応じて感熱接着剤層5を積層して塗布形成し、無地の磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておく。磁気ストライプ上に形成する蛍光絵柄が決定次第、磁気ストライプ用転写材の磁気記録層上に設けた感熱接着剤上に蛍光絵柄印刷を施し蛍光絵柄形成領域を形成し、蛍光絵柄形成機能を有する転写用積層体を作製する。蛍光絵柄形成機能を有する磁気ストライプ用の転写用積層体は磁気ストライプ用転写材の状態での加熱(エージング)(図9−(1))によって、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が転写用積層体の転写用基材方向に拡散し、転写用基材近くまで到達しているため、磁気ストライプ用転写材を転写した後に転写用基材から剥離され、カード基材上に転写された磁気ストライプ用転写材表面から蛍光絵柄が紫外線の照射によって識別可能な状態となる(図3参照)。あるいは蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は、磁気ストライプ用の転写材をオーバーシートに転写させた後、センターコアと合体してカード用基材を一体化させる熱圧プレス工程(図9−(2))により、蛍光剤がオーバーシートへ転写後の磁気ストライプ用転写材の表面方向に拡散して、蛍光絵柄が磁気ストライプ表面より紫外線の照射によって識別可能となる。(図5参照)なお、転写用積層体の状態におけるエージング工程(図9−(1))を行うと、蛍光剤をより確実に拡散できるため好ましい。
【0024】
また、本発明のもう一つの実施態様として、蛍光絵柄形成領域をカード用基材であるオーバーシートの磁気ストライプが転写される部分に形成する方法について、図4と工程図10に示す。本方法は、予め蛍光絵柄を印刷しない磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておく部分までは前記工程図9で示す方法同じであるが、磁気ストライプの蛍光絵柄が決定次第、蛍光絵柄形成領域をオーバーシートの磁気ストライプが転写される部分に形成し、磁気ストライプ用転写材をオーバーシートに転写後、センターコアと合体しカード用基材を一体化させる熱圧プレス工程を行って、磁気ストライプ用転写材をカード基材に埋め込む。このときに、蛍光剤が磁気記録層を通ってオーバーシートに転写された磁気ストライプ用転写材表面方向に拡散することにより、蛍光絵柄が紫外線照射によって磁気ストライプ表面よりの紫外線の照射によって識別可能となる。(図5参照)
【0025】
このようにして製造される磁気カードの磁気ストライプ部分の断面図(図5)に示すように、センターコア7に積層されたオーバーシート6に磁気ストライプ用転写材の保護層を兼ねる蛍光剤拡散防止層1をカード表面に露出して磁気ストライプ用転写材が埋め込められており、磁気ストライプ用転写材の着色層3、磁気記録層4、感熱接着剤層5の厚み方向全てに亘って蛍光剤拡散領域2を有しているため、蛍光剤拡散防止層1側から、蛍光絵柄が紫外線の照射によって識別可能となっている。さらに蛍光剤は着色層2と蛍光剤拡散防止層1の間に高濃度で存在せず着色層2から磁気記録層の厚み方向に分散して存在するため、太陽光や室内光に含まれる紫外線または赤外線により蛍光絵柄が識別できない。
【0026】
以上の様な手順で磁気ストライプ部分に蛍光絵柄を有する磁気カードを形成することが出来るが、本発明の蛍光絵柄形成方法は磁気ストライプ以外の場所にも、また磁気カード以外の磁気記録媒体にもあるいは磁気記録層を有さない積層体の製造にも適用することができる。このような場合の蛍光絵柄形成方法には図9、図10の工程図において磁気記録層を省略したり、他の層を構成上付け加えたり、磁気記録層を他の機能層に置き換えることによって対応することができる。さらに磁気ストライプ用の転写用積層体は基材の一部を被覆するだけであるが、基材全面を被覆するような転写用積層体を用いてもよい。
【0027】
以下に本発明の製造方法に用いる転写用積層体を例にとり、各構成成分について、順を追ってさらに詳細に説明を行う。本発明の蛍光絵柄形成方法を用いてカード基体上に蛍光絵柄を有する磁気ストライプを形成するときに用いる磁気ストライプ用の転写用積層体(転写型磁気テープ)は、図2の断面構成図に示すように、転写用基材フィルム9、必要に応じて形成される蛍光剤拡散防止層1、必要に応じて形成される着色層3、磁気記録層4、必要に応じて形成される感熱接着剤層5を有する。そして、本発明の蛍光絵柄形成方法に使用可能な一つの実施態様に対応した構成として、感熱接着剤層上に蛍光絵柄形成領域10を設けている。
【0028】
本発明において蛍光絵柄形成方法に使用する転写用基材フィルムとしては公知慣用のフィルムがいずれも使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体、ポリアミド等のプラスチック等を挙げることができる。中でも抗張力や耐熱性を兼ね備えたポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、転写基材フィルムの厚さには特に制限はないが、通常3〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
【0029】
本発明の蛍光絵柄形成方法に使用する転写用積層体においては、蛍光剤拡散防止層を用いることができる。蛍光剤拡散防止層は熱により感熱接着剤層、磁気記録層、着色層を通して拡散した蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が蛍光剤拡散防止層を超えて更に外部に拡散することを防止する特性を有し、さらに転写材の転写工程において、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が転写用の金属板、プレス用の金属板などに付着するのを防止する。また、蛍光剤拡散防止層は、磁気ストライプ用転写材の磁気ストライプ用転写材の保護層としての機能と共に、蛍光剤拡散防止層の直下まで拡散してきた蛍光剤の絵柄を該蛍光拡散防止層を通して紫外線照射により容易に識別できるように紫外線及び可視光線の波長で実質的に透明な特性を有していることが好ましい。
【0030】
蛍光剤拡散防止層を構成する結着樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体、あるいは、さらにビニルアルコール、無水マレイン酸あるいはアクリル酸などを加えた共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、およびこれらの樹脂の混合物を挙げることができる。蛍光剤の外部への拡散を効果的に防止するためには前記樹脂のうちでガラス転移点が、蛍光剤が拡散するときの転写用積層体加熱温度や熱転写温度より高いものを使用することが好ましい。
【0031】
蛍光剤拡散防止層用塗料に使用する溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類を挙げることができ、これらの溶剤は、2種類以上を混合して使用することもできる。
さらに、蛍光剤拡散防止層中には、必要に応じて、皮膜改質剤として大豆レシチン、マイクロシリカ、あるいはワックス等を添加することができる。また、ポリイソシアネート化合物などの硬化剤を添加して、樹脂バインダー分子間を架橋することは、蛍光剤拡散防止層の耐久性を向上させるために好ましい。
蛍光剤拡散防止層は効果的に蛍光剤の拡散を防止出来るように、多孔質形状を有していないことが重要で、層中には空孔を生じやすい各種フィラーを含まないものが好ましい。蛍光剤拡散防止層は、上記のように調整した蛍光剤拡散防止層用塗料をリバース方式、グラビア方式、ダイコート方式等の公知慣用の方式で仮支持体フィルム上に塗布することにより得られる。
蛍光剤拡散防止層の乾燥塗膜厚は、記録再生特性からいえば薄いほど良いが、強度、耐久性等とのバランスを考慮すると0.1〜5μmが好ましく、0.3〜2μmがさらに好ましい。
【0032】
本発明の蛍光絵柄形成方法に使用する転写用積層体は着色層(隠蔽層)を有していても良い。該着色層は結着樹脂と着色剤を成分として含有しており、磁気記録層等の色相を隠蔽して着色層中を拡散する蛍光剤による蛍光絵柄の作製、識別を容易にする。
着色層に用いる顔料は、無機顔料としては、アルミナ、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、酸化亜鉛、硫酸バリウムなど、有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、インダンスレン系など多々あるが特に限定されるものではない。また、上記顔料に代え、あるいは併用してフタロシアニン染料、アゾ染料、ニトロ染料、キノリン染料、メチン染料、アジン染料、ファタレイン染料等の染料を用いることもできる。安定した着色のためには有機顔料または無機顔料が好ましい。
また、磁気層の色相を効果的に隠蔽可能な顔料として、リン片状金属粉も使用でき、金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等を使用することができる。リン片状金属粉は板状形状にボールミル等で調整されるが、これらの形状は、面方向の大きさは、5〜25μmが好ましく、さらに好ましくは10〜15μmである。厚みは0.1〜1μm程度である。
【0033】
着色層用塗料に使用する結着樹脂としては、公知慣用の結着樹脂が使用できる。例えば、蛍光剤拡散防止層のところで述べた結着樹脂に加え、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリスチレン樹脂、セラック、アルキッド樹脂等が挙げられる。また、イソシアネート化合物を用いて熱硬化することもできる。着色層は蛍光剤拡散層として機能させることができ、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は着色層を通って転写材の表面方向に拡散させることができる。蛍光剤の拡散の速度、難易度は着色層に用いている結着樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と着色層に用いる結着樹脂を適宜選択して調整することができる。蛍光剤の拡散を容易にするためには着色層に用いる結着樹脂のTgが転写材に加えられる温度より低いことが好ましい。
【0034】
着色層用塗料に使用する溶剤としては、公知慣用の溶剤が使用でき、例えば、既に蛍光剤拡散防止層のところで述べた溶剤等が使用できる。
着色層の形成は、着色剤を結着樹脂、および結着樹脂を溶解する溶剤中に単独、もしくは2種類以上混合し、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ディスパー等の公知慣用の方法で分散させて、着色層用塗料を作成し、これをリバース方式、グラビア塗布方式、ダイコート方式等の公知慣用の方式で塗布、乾燥することにより、行うことができる。
着色層の膜厚は、磁気記録層の茶色または黒色を隠蔽するには厚いことが好ましい。しかしながら、着色層はカード化した際に磁気記録層よりもカードの表層側に位置することになるため、その膜厚を大きくしすぎると、スペーシングが大きくなり、再生出力特性が低下し、情報読み取り時のエラー発生の可能性が増大する。そのため、着色層の膜厚は、2〜5μm、特に3〜4μmであることが好ましい。
【0035】
本発明で用いる磁気記録層は、例えば磁性粉末、結着樹脂および結着樹脂を溶解する溶剤を含有する。
本発明の磁気記録層は、転写工程を経て作製するときは、例えば磁性粉末、結着樹脂および結着樹脂を溶解する溶剤を含有した磁気記録層用塗料を転写用基材上、または蛍光剤拡散防止層上、または着色層上に塗設して形成した転写用積層体を用いて作製することができる。
該磁気記録層中に含有される磁性粉末としては、γ−酸化鉄、マグネタイト、コバルト被着酸化鉄、2酸化クロム、鉄系メタル磁性粉、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の公知の磁性粉末を用いることができる。保磁力が20〜320kA/mの範囲のものが好ましい。
磁気記録層に用いる結着樹脂としては、公知慣用の結着樹脂が使用できる。例えば一般的に、着色層のところで述べた結着樹脂等を使用することができる。また、イソシアネート化合物を用いて熱硬化することもできる。また、磁気記録層用塗料に用いる溶剤としては、例えば一般的に蛍光剤拡散防止層のところで述べた溶剤等を使用することができる。
【0036】
磁気記録層用塗料には、必要に応じて界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル等の助剤類、さらにはカーボンブラックその他のフィラー類を添加することもできる。磁気記録層は蛍光剤拡散層として機能させることができ、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は磁気記録層を通って転写材表面へと拡散させることができる。蛍光剤の拡散の速度、難易度は結着樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と磁気記録層に用いる結着樹脂を適宜選択して調整することができる。蛍光剤の拡散を容易にするためには磁気記録層に用いる結着樹脂のTgが転写材に加えられる温度より低いことが好ましい。
【0037】
磁気記録層用塗料は、例えば上記磁性粉末、結着樹脂、溶剤を公知慣用の方法により、混練分散する事によって得られる。混練分散機としては、例えば二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ヘンシェルミキサー、コボルミル、サンドミル、ディスパー、ホモジナイザー、ニーダー、等が使用できる。
磁気記録層用塗料の塗布方法においては、特に制限はなく、公知慣用の塗布方式を使用して良く、磁気記録層用塗料を所定量塗布後、磁性粉末の磁化容易方向が磁気記録層の塗布長手方向になるように配向処理を行って乾燥を行う。塗布方式としては、例えばグラビア方式、リバース方式、トランスファロールコーター方式、キスコーター方式、ダイコーター方式等が使用できる。
また、上記塗布方式により塗布後は、塗膜が乾燥しないうちに磁場配向処理を行うことが記録再生特性の点で好ましく。磁場配向方法は、公知の方式、例えば反発対向永久磁石、ソレノイド型電磁石等を用いることができる。磁場強度としては1000〜6000Gの範囲が好ましい。
磁気記録層の乾燥膜厚は、好ましくは2〜50μmの範囲であり、さらに好ましくは5〜20μmの範囲である。
【0038】
本発明の蛍光絵柄形成方法及び転写用積層体には、転写用積層体とカード用基材を接着させる目的で感熱接着剤層を用いることができる。感熱接着剤層は、一般的には、感熱接着性を示す樹脂を含む。
感熱接着性を示す樹脂としては、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体、あるいは、さらにビニルアルコール、無水マレイン酸あるいはアクリル酸などを加えた共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。また、感熱接着剤層に用いる溶剤としては、例えば蛍光剤拡散防止層のところで述べた溶剤を使用することができる。感熱接着性を示す樹脂を溶剤に溶解させ、混合攪拌して感熱接着剤塗料を調整し、この感熱接着剤塗料を例えば磁気記録層上にリバース方式、グラビア方式、ダイコート方式などの公知の方式により塗布、乾燥することによって感熱接着剤層が得られる。
【0039】
感熱接着剤層の膜厚は0.5〜15μmが好ましく、特に0.5〜5μmが好ましい。感熱接着剤層は、蛍光剤拡散層として機能させることができ、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は感熱接着剤層を通って転写材の表面方向に拡散させることができる。蛍光剤の拡散の速度、難易度は感熱接着剤層に用いている樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と感熱接着剤層に用いる樹脂を適宜選択して調整することができる。蛍光剤の拡散を容易にするためには感熱接着剤層に用いる樹脂のTgが転写材に加えられる温度より低いことが好ましい。
【0040】
本発明の蛍光絵柄形成方法および転写用積層体における蛍光絵柄形成領域の形成は以下の蛍光絵柄形成用インクの印刷によって行うことができる。本発明の蛍光絵柄形成用インクは、結着樹脂、蛍光剤と溶剤を含んでいる。
蛍光絵柄形成用インクの蛍光剤としては有機系の蛍光物質を用いることができる。具体的な有機蛍光物質としては、ベンゾオキサゾールチオフィン系、ジアミノスチルベン系、イミダゾール系、クマリン系、ナフタルイミド系、希土類錯体系等の蛍光染料が拡散も良好で好ましい。また、市販されている蛍光物質としては、Chiba Special Chemicals社製の商品名UVITEX OB、日本化薬社製の商品名Kayalight OS、BASF社製の商品名Thermoplastシリーズ、商品名Fluorolシリーズ、 商品名Lumogenシリーズ、記録素材総合研究所社製 商品名ルミカラー等を用いることができる。
【0041】
蛍光絵柄形成用インクに使用する結着樹脂としては、公知慣用の結着樹脂が使用できる。例えば、蛍光剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、感熱接着剤層のところで述べた結着樹脂等が挙げられるが、蛍光絵柄印刷を施す感熱性接着剤およびカード用オーバーシート基材への付着性、磁気ストライプ用転写材をカード基材オーバーシートへ接着する際の接着性を阻害しない結着樹脂が好ましく、前記感熱接着剤層のところで述べた結着樹脂が好適に使用できる。
蛍光絵柄印刷用インクに使用する溶剤としては、公知慣用の溶剤が使用でき、例えば、既に蛍光剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、感熱接着剤層のところで述べた溶剤等が使用できる。
【0042】
蛍光絵柄形成用インクは、蛍光剤を結着樹脂、および結着樹脂を溶解する溶剤中に単独、もしくは2種類以上混合し、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ディスパー等の公知慣用の方法で分散させて作成する。蛍光絵柄の印刷には、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等の公知の印刷方法を用いることが出来るが、特に印刷品質、生産性の点から、特にグラビア印刷が適している。
蛍光絵柄形成領域は、蛍光絵柄の形状に設けられることから、一般的には不連続な層となる。また、複数の蛍光絵柄形成用インクを用いて多色の蛍光絵柄を印刷することもできる。また、毛抜き印刷などの手法により、一見連続した層とすることもできる。
蛍光絵柄形成領域の膜厚は、特に制限はないが膜厚が厚すぎると、一般的に磁気ストライプ用転写材はリール状に巻き上げているため、非印刷領域と印刷領域との膜厚差による段差が大きくなり、転写材を変形させ、磁気ストライプ用転写材とカード基材との接着性を悪化させる可能性があり、その膜厚は0.5〜5μmが好ましく、特に0.5〜2.0μmが好ましい。
【0043】
こうして蛍光絵柄形成用インクを使用して例えば磁気ストライプ用転写材の感熱接着剤面、もしくはカード用基材の磁気ストライプが転写される部分に蛍光絵柄形成領域を形成する。
こうして形成された蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を転写材内に拡散させる方法としては、転写工程前に転写基材上に転写材が存在する状態で、40〜80℃の高温環境下に数時間〜数日間放置させ、この熱により蛍光剤を転写用基体側に拡散させ、転写材の転写後に転写材側から識別可能な状態にする方法と、転写材をカード基材のオーバーシートに転写した後、カード上の絵柄を施したセンターコアと反対面のオーバーシートと共に熱圧プレス用金属板に挟み込み100〜160℃の温度をかけ数十分から数時間の熱圧プレス加工を行って、蛍光剤を転写後の転写材表面に拡散させて磁気カード表面より紫外線照射(または赤外線照射)により蛍光絵柄が識別可能な状態にする方法がある。
オーバーシートの厚みは例えば100μmであり、センターコアシートは1枚使用する場合は540μmであり、2枚使用する場合はそれぞれ270μmである。また、これらのカード基材は目的とする使用に耐えうる機械特性、耐水性、耐薬品性等が必要であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、非結晶コポリエステル(PET−G)等の合成樹脂シートが使用される。
【0044】
上記に転写工程を用いて磁気カードに蛍光絵柄を形成する方法を詳細に説明した。磁気カード状基材に換えてシート状、カード状、板状などの任意の形状の被記録材となる基材を用い、磁気記録層以外の蛍光剤拡散層を用いることによって、上記工程で示したのと同様の工程を用いて基材上に蛍光絵柄を作製し、積層体を作製することができる。蛍光剤拡散層、蛍光絵柄形成領域等、転写用積層体の構成は、各種基材への接着性、各積層体の用途を考慮して、最適な層構成となるように各層毎の配合を調整すればよい。
【0045】
本発明の蛍光絵柄形成方法で使用する蛍光絵柄形成領域や蛍光剤拡散層は、転写用積層体を用いた転写工程によって、適宜、被記録材上となる基材上に積層することができるが、転写工程を用いずに各層を形成する塗料やインクによる塗布工程や印刷工程を用いて、順次被記録材上に必要な層を積層することもできる。塗布工程や印刷工程においては、前述した各種の塗布、印刷方法に加え、インクジェット記録法による印刷も行うことができ、非平面で凹凸を有する被記録材上にも蛍光絵柄形成領域その他の、本発明の方法に必要な層を形成することができる。このようにして作製された加熱工程前の積層体は、転写工程における場合と同じように40〜80℃の恒温環境下におけるエージング、または熱圧プレス工程により、蛍光絵柄形成領域中の蛍光剤が蛍光剤拡散層中へ、もしくは蛍光剤拡散層を通って拡散し、表面からの紫外線照射によって識別可能な蛍光発光をさせることができる。
【0046】
本発明の蛍光絵柄形成方法を用いることにより、きわめて多様な基材に対して蛍光絵柄を形成することができる。本発明における被記録材としては、表面形状が極めて複雑な深い凹凸を有する基材、蛍光剤の拡散時における加熱温度で不安定な基材、多孔質性や溶剤吸収性の基材はあまり好ましくないが、特に限定されるものではない。被記録材としては蛍光絵柄形成領域が安定的に形成でき、熱拡散に必要な温度まで加熱できるような材質であることが好ましい。
【0047】
このようにカード状基材上に蛍光絵柄を形成して蛍光絵柄を有する磁気カードを作製した、上記本発明の実施態様は、本発明の可能な実施態様のごく一部にすぎない。例えば各種物品の一構成部品の塗装、着色工程で真偽判定や贋作防止の目的で上記方法により蛍光絵柄を形成することができる。物品によっては完成品の表面の一領域に上記方法で蛍光絵柄を形成することも可能である。本発明の物品の一例としては、紙幣、小切手、手形、トラベラーズチェック、パスポート、株券、証券、商品券、切手、はがき、図書券、保険証、運転免許証、証明書、プリペイドカード、フレキシブルディスク、MO、CD、DVD、ICカード、光カード、ポイントカード、会員カード、ブランドタグ、セキュリティシールなどが挙げられる。
【0048】
さらにエージングによってあらかじめ蛍光剤を拡散させた転写用積層体を用いると、該積層体による転写工程を用いることで、転写可能なあらゆる被記録材に対して蛍光絵柄を形成することができる。
また、シート状基材の上に蛍光絵柄形成領域と蛍光剤拡散層をこの順に設け、これらの層とシート状基材を挟んで反対側に接着剤層(粘着材層)を設けた後、エージングによって蛍光剤を蛍光剤拡散層に拡散させたラベルを用いることにより、多種多様の物品に蛍光絵柄を形成することができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない、尚、以下「部」は質量部を表すものとする。
実施例、比較例には以下に示す、転写基材フィルムおよび各塗料を使用する。
【0050】
転写用基材フィルム 厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルム
蛍光剤拡散防止層用塗料(保護層機能を兼ねる)
セルロースアセテート樹脂 8部
(ダイセル化学社製『L−20』)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂 2部
(イーストマンケミカル社製『CAP−504−0.2』
アセトン 25部
酢酸エチル 25部
トルエン 20部
シクロヘキサノン 20部
ポリイソシアネート 4部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』
上記の材料の内、ポリイソシアネートを除く全てを、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させた後に上記のポリイソシアネートを添加し、更にディスパーにて攪拌均一化を行い、蛍光剤拡散防止層用塗料を作製した。
【0051】
着色層用塗料
リン片状金属粉:アルミニウム粉末 20部
(昭和アルミパウダー社製『210EA』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 16部
(ユニオンカーバイド社製『VAGH』)
ポリウレタン樹脂 4部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
メチルエチルケトン 75部
トルエン 75部
シクロヘキサノン 17部
ポリイソシアネート 5部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
上記の材料の内、ポリイソシアネートを除く全てを、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させた後に上記のポリイソシアネートを添加し、更にディスパーにて攪拌均一化を行い、着色層用塗料を作製した。
【0052】
磁気記録層用塗料
バリウムフェライト磁性粉 100部
(戸田工業社製『MC−127』;保磁力 220kA/m)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 15部
(日本ゼオン社製『MR−110』)
ポリウレタン樹脂 10部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
MEK 50部
トルエン 50部
シクロヘキサノン 25部
ポリイソシアネート 10部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
上記材料を用い、特開平09−059541に示す方法により磁気記録層用塗料を作製した。
【0053】
感熱接着剤塗料
ポリウレタン樹脂 1部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 4部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 45部
トルエン 50部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、感熱接着剤塗料を作製した。
【0054】
蛍光絵柄形成用インク〔A〕
蛍光物質〔A〕 2部
(Ciba Specialty Chemicals社製『UVITEX OB』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 44部
トルエン 44部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を作製した。
【0055】
蛍光絵柄形成用インク〔B〕
蛍光物質〔B〕 2部
(BASF社製『Lumogen F Violet 570』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 44部
トルエン 44部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、蛍光絵柄形成用インク〔B〕を作製した。
【0056】
(実施例1)
磁気ストライプ用転写材作成
転写用基材フィルムとして、厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルムの片面上に上記の蛍光剤拡散防止層用塗料、着色層用塗料、磁気記録層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ蛍光剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、蛍光剤拡散防止層が1μm、着色層が4μm、磁気記録層が9μm、そして接着剤層が1.5μmとなるようにした。
蛍光絵柄印刷
蛍光絵柄印刷として、上記作成した転写材の感熱接着剤層面上に蛍光絵柄形成用インク〔A〕をグラビア印刷方式により絵柄部分の膜厚が1μmとなるように図6に示すよう蛍光絵柄印刷を行い、60℃の恒温室に24時間放置した。
磁気カード作成
上記で作製した磁気ストライプ用転写材を所定の幅に裁断後、卓上型テストプレス機(テスター産業社製)によりポリ塩化ビニル製のカード基体用オーバーシート(太平化学社製)に転写材を転写した後、仮支持体フィルムを除去し、カード基体用センターコアと反対面のオーバーシートと共に温度130〜140℃、圧力20kg/cm2、時間20〜30分加熱加圧しての条件下で熱圧プレス加工し、その後、カード状に打ち抜いて磁気カード図8を作製した。
【0057】
(実施例2)
実施例1の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を蛍光絵柄形成用インク〔B〕とした以外は実施例1と同様にして磁気カードを作成した。
(実施例3)
実施例1の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄印刷後の磁気ストライプ用転写材を60℃の恒温室に24時間放置を行わない以外は、実施例1と同様にして、磁気カードを作成した。
(実施例4)
実施例2の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄印刷後の磁気ストライプ用転写材を60℃の恒温室に24時間放置を行わない以外は、実施例2と同様にして、磁気カードを作成した。
(実施例5)
実施例1において、磁気ストライプ用転写材は実施例1と同様に作成し、蛍光絵柄印刷をカード用基材「オーバーシート」の磁気ストライプが転写される部分に蛍光絵柄形成用インク〔A〕を用いてグラビア印刷方式により図7に示すように、蛍光絵柄印刷を行った。それ以降は、実施例1の磁気カード作成方法と同様にして磁気カードを作成した。
(実施例6)
実施例3の蛍光絵柄印刷において、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を蛍光絵柄形成用インク〔B〕とした以外は実施例1と同様にして磁気カードを作成した。
【0058】
(比較例1)
磁気ストライプ付きカード基材作成
磁気ストライプ付きカード基材の透明オーバーシート、センターコア、透明オーバーシート、磁気テープをこの順に積層させて1度の加熱で同時に熱融着してカード基材を得る。
隠蔽カード用隠蔽層転写シート作成
転写用基材フィルムとして、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルムの片面上に上記の蛍光剤拡散防止層用塗料、着色層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ蛍光剤拡散防止層、着色層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、蛍光剤拡散防止層が1μm、着色層が4μm、そして接着剤層が1μm以下となるように形成した。感熱接着剤層を形成した後に蛍光絵柄形成用インク〔A〕をグラビア印刷方式により乾燥後の厚さが1μm以下となるように蛍光絵柄形成領域を形成した。
磁気カード作成
上記で作製した磁気ストライプ付きカード基材に隠蔽カード用隠蔽層転写シートの蛍光絵柄形成領域側を重ね、卓上型テストプレス機(テスター産業社製)により温度120〜130℃、圧力16〜18kg/cm2、時間15〜25分加熱加圧して隠蔽カード用隠蔽層転写シートを磁気ストライプ付きカード基材に接着させた後、転写シートのPETフィルムを剥離させ、磁気カードを作成した。
【0059】
(比較例2)
比較例1において、蛍光絵柄形成用インク〔A〕を蛍光絵柄形成用インク〔B〕とする以外は比較例1と同様にして磁気カードを作成した。
【0060】
評価方法
(蛍光絵柄の隠蔽性I)
太陽光、室内光下にて、太陽光、室内光下含まれる紫外光による蛍光絵柄の蛍光発光の有無を目視で評価した。
○・・・蛍光発光が視認できず。
×・・・蛍光発光が視認できる。
【0061】
(蛍光絵柄の隠蔽性II)
太陽光、室内光下にて、可視光反射光による蛍光絵柄印刷の輪郭が視認性の有無を目視で評価した。
○・・・蛍光絵柄の輪郭が視認できず。
×・・・蛍光絵柄の絵柄が視認できる。
【0062】
(紫外線照射による蛍光発光)
紫外線照射による蛍光絵柄の蛍光発光強度を目視で評価。
○・・・十分な蛍光発光が得られる。
×・・・蛍光発光が不十分で蛍光絵柄の視認性が悪い。
【0063】
(出力変動)
得られた磁気カードについてISO/IEC7811−6に準拠し、BARNES社製MAGTESTER2000を用いてその記録再生特性の測定を行い、下記式により出力変動を求めた。なお、この磁気カードサンプルを作成するために使用した転写型磁気テープに関しては、それぞれのスペーシングにあわせて磁気記録層の膜厚を調整し、出力平均値が基準カード出力に等しくなるよう調整を行った。
出力変動(%)=((出力最大値−出力最小値)/出力平均値)×100
○・・・5%未満。 △・・・5%以上、10%未満。 ×・・・10%以上。
【0064】
【表1】
【0065】
表1の結果から明らかのように、本実施例1〜6は、従来の蛍光絵柄形成方法比較例1、2と同様の蛍光発光強度を確保でき、また太陽光や室内光に含まれる紫外線による蛍光発光により蛍光絵柄が視認されることは無い。さらに、本実施例1〜6は蛍光絵柄印刷に用いた蛍光剤が磁気記録層、着色層に拡散しているため、蛍光絵柄印刷は着色層に太陽光や室内光の可視光反射により蛍光絵柄印刷部分の輪郭が視認可能な変形を与えることが無い。また、蛍光絵柄部分と非蛍光絵柄部分で磁気ストライプ表面と磁気記録層の間の距離は実質的に変化しないため、蛍光絵柄形成領域の存在に起因する出力変動は全く発生しないため、これによりカードの真偽判定が確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】磁気ストライプ用転写材で磁気記録層と蛍光絵柄形成領域を形成した従来の磁気カードの拡大断面図である。
【図2】本発明の蛍光絵柄形成方法に使用する転写用積層体の一つの実施態様を示す断面図である。
【図3】前記転写用積層体のエージングを行ったときに、蛍光絵柄形成領域の蛍光剤が拡散する様子を概念的に示した断面図である。
【図4】本発明の蛍光絵柄形成方法の一つの実施態様であって、オーバーシート基材側に蛍光絵柄形成領域を形成する場合を概念的に示した断面図である。
【図5】本発明の蛍光絵柄形成方法によって形成された磁気カードの一つの実施態様を示す断面図である。
【図6】実施例1〜4で製造した磁気ストライプ形成用の転写用積層体と蛍光絵柄形成領域を示した概念図である。
【図7】実施例5の製造において蛍光絵柄形成領域を示した概略図である。
【図8】本発明の蛍光絵柄形成方法を用いて蛍光絵柄が形成された磁気カードの一つの実施態様を示す概略図である。
【図9】本発明の蛍光絵柄形成方法を用い、磁気記録層と蛍光絵柄を有する磁気カードを転写用積層体を用いて製造するときの工程の一例を表す図である。
【図10】本発明の蛍光絵柄形成方法を用い、磁気記録層と蛍光絵柄を有する磁気カードを転写用積層体を用いて製造するときの工程の他の例を表す図である。
【図11】磁気記録層と蛍光絵柄を有する磁気カードの従来の製造方法を表す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 蛍光剤拡散防止層
2 蛍光剤拡散領域
3 着色層
4 磁気記録層
5 感熱着色層
6 オーバーシート
7 センターコア
8 カード上の蛍光絵柄形成部
9 転写用基材
10 蛍光絵柄形成領域における蛍光絵柄形成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材上に紫外線照射により識別可能となる蛍光絵柄を形成する方法であって、前記被記録材に近い側から、蛍光絵柄形成領域と、蛍光剤拡散層とを形成し、前記蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を、前記蛍光剤拡散層中へ、または前記蛍光剤拡散層を通って拡散させることを特徴とする蛍光絵柄形成方法。
【請求項2】
前記蛍光剤を拡散させる前に、前記蛍光剤拡散層の前記蛍光絵柄形成領域とは反対側に、透明な蛍光剤拡散防止層を設ける請求項1に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項3】
前記蛍光剤拡散層はその層構成中に磁気記録層を有する請求項1から2のいずれか1項に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項4】
前記蛍光剤拡散層はさらに前記磁気記録層上で蛍光絵柄形成領域とは反対側に形成された着色層を有する請求項3に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光絵柄形成方法を用いて、蛍光絵柄が形成されたことを特徴とする物品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光絵柄形成方法を用いて、蛍光絵柄が形成されたことを特徴とする積層体。
【請求項7】
転写用基材上に形成された層状の転写材を基材上に転写してなる積層体へ、前記転写材表面からの紫外線照射により識別可能な蛍光絵柄を形成する蛍光絵柄形成方法であって、前記転写材中または前記基材上に予め形成された蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を、前記転写材の転写後の表面に近い方向へと、前記転写材中を通って拡散させることにより識別可能な蛍光絵柄を形成することを特徴とする蛍光絵柄形成方法。
【請求項8】
前記層状の転写材は磁気記録層を有しており、前記蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は前記磁気記録層を通って拡散するものである請求項7に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項9】
前記層状の転写材は転写用基材と磁気記録層の間に着色層を有し、前記蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は、前記磁気記録層と前記着色層を通って拡散し、前記着色層を背景として識別される請求項8に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項10】
転写用基材と磁気記録層の間に実質的に透明な蛍光剤拡散防止層を設けてなる請求項7〜9のいずれか1項に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項11】
請求項1に記載の蛍光絵柄形成方法によって蛍光絵柄を形成されたことを特徴とする積層体。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の絵柄形成方法によって絵柄を形成されたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項13】
転写基材上に識別可能な蛍光絵柄を形成するための層状の転写材が積層された転写用積層体であって、蛍光剤拡散層と蛍光絵柄形成領域がこの順に形成されたことを特徴とする転写用積層体。
【請求項14】
転写基材上に磁気記録層と蛍光絵柄形成領域を有する層状の転写材が形成された転写用積層体であって、前記蛍光絵柄形成領域が磁気記録層の上方に形成されたことを特徴とする転写用積層体。
【請求項15】
前記磁気記録層の下方にさらに着色層を有する請求項14に記載の転写用積層体。
【請求項16】
前記蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は熱により前記磁気記録層または前記着色層、または前記磁気記録層と前記着色層を通って、転写後における前記転写材の表面に近い方向に拡散するものである請求項14または15に記載の転写用積層体。
【請求項17】
基材上に磁気記録層と、該磁気記録層表面からの紫外線の照射により識別可能な蛍光絵柄とを形成するための転写用積層体であって、転写用基材上に前記磁気記録層を含む層状の転写材を有し、前記蛍光絵柄を形成する蛍光剤は少なくとも前記磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布していることを特徴とする転写用積層体。
【請求項18】
前記層状の転写材は転写用基材に最も近い側に蛍光剤拡散防止層を有する請求項13〜17のいずれか1項に記載の転写用積層体。
【請求項19】
基材上に磁気記録層と、該磁気記録層側からの紫外線の照射により識別可能な蛍光絵柄を有する磁気カードであって、前記蛍光絵柄を形成する蛍光剤は、前記絵柄に対応する位置の少なくとも磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布していることを特徴とする磁気カード。
【請求項20】
磁気記録層の上方に蛍光剤拡散防止層を有する請求項19に記載の磁気カード。
【請求項1】
被記録材上に紫外線照射により識別可能となる蛍光絵柄を形成する方法であって、前記被記録材に近い側から、蛍光絵柄形成領域と、蛍光剤拡散層とを形成し、前記蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を、前記蛍光剤拡散層中へ、または前記蛍光剤拡散層を通って拡散させることを特徴とする蛍光絵柄形成方法。
【請求項2】
前記蛍光剤を拡散させる前に、前記蛍光剤拡散層の前記蛍光絵柄形成領域とは反対側に、透明な蛍光剤拡散防止層を設ける請求項1に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項3】
前記蛍光剤拡散層はその層構成中に磁気記録層を有する請求項1から2のいずれか1項に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項4】
前記蛍光剤拡散層はさらに前記磁気記録層上で蛍光絵柄形成領域とは反対側に形成された着色層を有する請求項3に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光絵柄形成方法を用いて、蛍光絵柄が形成されたことを特徴とする物品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光絵柄形成方法を用いて、蛍光絵柄が形成されたことを特徴とする積層体。
【請求項7】
転写用基材上に形成された層状の転写材を基材上に転写してなる積層体へ、前記転写材表面からの紫外線照射により識別可能な蛍光絵柄を形成する蛍光絵柄形成方法であって、前記転写材中または前記基材上に予め形成された蛍光絵柄形成領域の蛍光剤を、前記転写材の転写後の表面に近い方向へと、前記転写材中を通って拡散させることにより識別可能な蛍光絵柄を形成することを特徴とする蛍光絵柄形成方法。
【請求項8】
前記層状の転写材は磁気記録層を有しており、前記蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は前記磁気記録層を通って拡散するものである請求項7に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項9】
前記層状の転写材は転写用基材と磁気記録層の間に着色層を有し、前記蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は、前記磁気記録層と前記着色層を通って拡散し、前記着色層を背景として識別される請求項8に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項10】
転写用基材と磁気記録層の間に実質的に透明な蛍光剤拡散防止層を設けてなる請求項7〜9のいずれか1項に記載の蛍光絵柄形成方法。
【請求項11】
請求項1に記載の蛍光絵柄形成方法によって蛍光絵柄を形成されたことを特徴とする積層体。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の絵柄形成方法によって絵柄を形成されたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項13】
転写基材上に識別可能な蛍光絵柄を形成するための層状の転写材が積層された転写用積層体であって、蛍光剤拡散層と蛍光絵柄形成領域がこの順に形成されたことを特徴とする転写用積層体。
【請求項14】
転写基材上に磁気記録層と蛍光絵柄形成領域を有する層状の転写材が形成された転写用積層体であって、前記蛍光絵柄形成領域が磁気記録層の上方に形成されたことを特徴とする転写用積層体。
【請求項15】
前記磁気記録層の下方にさらに着色層を有する請求項14に記載の転写用積層体。
【請求項16】
前記蛍光絵柄形成領域の蛍光剤は熱により前記磁気記録層または前記着色層、または前記磁気記録層と前記着色層を通って、転写後における前記転写材の表面に近い方向に拡散するものである請求項14または15に記載の転写用積層体。
【請求項17】
基材上に磁気記録層と、該磁気記録層表面からの紫外線の照射により識別可能な蛍光絵柄とを形成するための転写用積層体であって、転写用基材上に前記磁気記録層を含む層状の転写材を有し、前記蛍光絵柄を形成する蛍光剤は少なくとも前記磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布していることを特徴とする転写用積層体。
【請求項18】
前記層状の転写材は転写用基材に最も近い側に蛍光剤拡散防止層を有する請求項13〜17のいずれか1項に記載の転写用積層体。
【請求項19】
基材上に磁気記録層と、該磁気記録層側からの紫外線の照射により識別可能な蛍光絵柄を有する磁気カードであって、前記蛍光絵柄を形成する蛍光剤は、前記絵柄に対応する位置の少なくとも磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布していることを特徴とする磁気カード。
【請求項20】
磁気記録層の上方に蛍光剤拡散防止層を有する請求項19に記載の磁気カード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−44227(P2006−44227A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81306(P2005−81306)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
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