説明

被験者の機能的残気量の決定

自動化された仕方で機能的残気量を決定するシステムおよび方法。被験者の機能的残気量の決定が、被験者によって呼吸されるガス中に存在する一つまたは複数の分子種のウォッシュアウトおよび/またはウォッシュインを解析することによって行われる。機能的残気量の決定は、酸素消費量の決定なしにできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的換気をされている被験者の機能的残気量の決定に関する。
【背景技術】
【0002】
機能的残気量(functional residual capacity)は、通常の息の終わりにおいて肺にあるガスの体積である。この体積は、機械的換気をされている患者において見られるいくつかの疾病状態では低下する。機能的残気量の減少に対処するため、呼吸療法の終末呼気陽圧(PEEP: Positive End-Expiratory Pressure)を調整することができる。いくつかの事例では、呼吸療法の他のパラメータも機能的残気量に基づいて調整してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
機能的残気量を測定する従来式の換気システムが知られている。しかしながら、これらのシステムは一般に、酸素消費の測定を必要とする。酸素消費の測定は、比較的高いO2濃度(たとえば80%を超える酸素濃度)では信頼できない傾向がある。酸素消費の測定はまた、典型的には、機能的残気量を決定するシステムを、被験者に呼吸療法を提供する全体的な換気システムに組み込むことを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの側面は、被験者の機能的残気量を決定するよう構成されたシステムに関する。ある実施形態では、本システムは、被験者の気道または気道近くにおけるガスと連絡する一つまたは複数のセンサーによって生成される出力信号を受信し、一つまたは複数のモジュールを実行するプロセッサを含む。前記一つまたは複数のモジュールは、濃度モジュール、組成変化モジュールおよび機能的残気量モジュールを含む。濃度モジュールは、プロセッサによって受信される出力信号から、被験者の吸気および呼気内の分子種の濃度を決定するよう構成される。組成変化モジュールは、濃度モジュールによって決定された濃度から、吸気組成変化を自動的に同定するよう構成される。ここで、吸気組成変化とは、時間的に近い息の間に被験者によって吸入されるガス中の少なくとも一つの分子種の濃度の少なくとも所定の大きさの変化である。機能的残気量モジュールは、同定された吸気組成変化の後の息について濃度モジュールによって決定された濃度に基づいて被験者の機能的残気量を決定するよう構成される。そのため、機能的残気量の決定は、同定された吸気組成変化によってトリガーされる。
【0005】
本発明のもう一つの側面は、被験者の機能的残気量を決定する方法に関する。ある実施形態では、本方法は、被験者によって吸入されるガス中の一つまたは複数の分子種の濃度を決定し;決定された濃度から吸入組成変化を自動的に同定し、ここで、吸入組成変化とは、時間的に近い息の間に被験者によって吸入されるガス中の少なくとも一つの分子種の濃度の少なくとも所定の大きさの変化であり;同定された吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中の一つまたは複数の分子種の濃度を決定し;同定された吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中のある分子種の濃度に基づいて被験者の機能的残気量を決定し、そのため、機能的残気量の決定は、同定された吸入組成変化によってトリガーされる。
【0006】
本発明のもう一つの側面は、被験者の機能的残気量を決定するよう構成されたシステムに関する。ある実施形態では、本システムは、被験者によって吸入されるガス中の一つまたは複数の分子種の濃度を決定する手段と;決定された濃度から吸入組成変化を自動的に同定する手段であって、吸入組成変化とは、時間的に近い息の間に被験者によって吸入されるガス中の少なくとも一つの分子種の濃度における少なくとも所定の大きさの変化である、手段と;同定された吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中の一つまたは複数の分子種の濃度を決定する手段と;同定された吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中のある分子種の濃度に基づいて被験者の機能的残気量を決定し、そのため、機能的残気量の決定は、同定された吸入組成変化によってトリガーされる、手段とを有する。
【0007】
本発明のこれらおよびその他の目的、特徴および特性ならびに構造の関係する要素および諸部分の組み合わせの動作方法および機能ならびに製造の経済は、以下の記述および添付の請求項を付属の図面を参照して考慮することで一層明白となるであろう。これらのすべては本明細書の一部をなすものである。同様の参照符号はさまざまな図における対応する部分を示す。しかしながら、図面は単に例解および説明のためであり、本発明の外縁を定義するものとしては意図されていないことをはっきりと理解しておくべきである。本明細書および請求項における用法では、単数形は、文脈からそうでないことが明らかであるのでない限り、複数の指示物をも含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一つまたは複数の実施形態に基づく、被験者の機能的残気量を決定するよう構成されたシステムを示す図である。
【図2】本発明の一つまたは複数の実施形態に基づく、累積肺胞換気量に対する呼気中のN2濃度のプロットを示す図である。
【図3】本発明の一つまたは複数の実施形態に基づく、機能的残気量を決定するためのN2ウォッシュアウトの実現を示すプロットを示す図である。
【図4】本発明の一つまたは複数の実施形態に基づく、機能的残気量を決定するためのN2ウォッシュアウトの実現を示すプロットを示す図である。
【図5】本発明の一つまたは複数の実施形態に基づく、機能的残気量を決定するためのN2ウォッシュアウトを使って得られる結果を示す図である。
【図6】本発明の一つまたは複数の実施形態に基づく、被験者の機能的残気量を決定する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、被験者12の機能的残気量を決定するよう構成されたシステム10を示す。具体的には、システム10は、O2消費の測定なしに被験者12の機能的残気量を決定する。これは、O2消費の測定がなされたらシステム10が機能できないということではなく、そのような測定は本決定のためには必要とされないということである。機能的残気量のシステム10による決定は、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで行われる。本稿での用法では、「ほぼリアルタイム」とは、当該処理の結果から被験者12に対する進行中の療法を提供するのに有用であるくらいにリアルタイムに十分近く実行される処理をいう。たとえば、ほぼリアルタイムでなされる機能的残気量の決定は、被験者12の現在の機能的残気量に関係した指標を提供し、該指標は、被験者12に提供されている呼吸療法の一つまたは複数の側面(たとえばPEEP)を動的に調整するためのフィードバック・パラメータとして使用できる。ある実施形態では、システム10は、換気システム14、電子的記憶装置16、センサー18およびプロセッサ20を含む。
【0010】
換気システム14は、被験者12に機械的換気を行うよう構成されている。よって、換気システム14は、ガス送達回路22および圧力発生器24を含む。ある実施形態では、換気システム14は、電子的記憶装置16、センサー18および/またはプロセッサ20のうちの一つまたは複数と一体で設けられる。ある実施形態では、換気システム14は、電子的記憶装置16、センサー18および/またはプロセッサ20のうちの一つまたは複数とは別個の分離したシステムである。
【0011】
ガス送達回路22は、換気の間、被験者12の気道にガスを送達し、気道からガスを受け取るよう構成される。ガス送達回路22は、導路26およびインターフェース器具28を含む。導路26は柔軟な導路であり、圧力発生器24とインターフェース器具28との間を走って両者の間でガスを連絡する。インターフェース器具28は、導路26からのガスを被験者12の気道に送達し、被験者12の気道から導路26中にガスを受け入れるよう構成される。インターフェース器具28は、導路26と被験者12の気道との間でガスを連絡させるための侵襲的または非侵襲的な器具を含みうる。たとえば、インターフェース器具28は鼻マスク、鼻/口マスク、フルフェイス・マスク、鼻カニューレ、気管内チューブ、LMA、気管チューブおよび/または他のインターフェース器具であってもよい。インターフェース器具28はまた、該インターフェース器具28を被験者12に取り付けたり取り除いたりするために、装着用ストラップまたはハーネスのようなヘッドギア組立体を含んでいてもよい。
【0012】
圧力発生器24は、被験者12に機械的換気を行うために、ガスを被験者12の肺に押し込み、肺から引き出す、回路22内の圧力を生成するよう構成される。圧力発生器24は単一のコンポーネントとして図1に示され、本開示において言及されているが、圧力発生器24は典型的には二つの別個のサブシステムを含むことを理解しておくべきである。回路22に陽圧を制御可能的に与えるサブシステムと、回路22に負圧を制御可能的に与えるサブシステムである。これらの別個のサブシステムのそれぞれは、(正または負の)圧力源と、該圧力源と回路14を制御可能的に連絡させる一つまたは複数のバルブを含んでいてもよい。圧力発生器24のサブシステムの一方または両方によって実装されうる圧力源の限定しない例は、壁ガス源(wall-gas source)、送風機(blower)、ガスの加圧タンクもしくは容器および/または他の圧力源を含む。ある実施形態では、圧力発生器24はまた、回路22を介して被験者12に与えられるガスの組成をも制御する。たとえば、この実施形態では、圧力発生器は被験者12に与えられるガス中の酸素濃度を制御してもよい。
【0013】
ある実施形態では、電子的記憶装置16は情報を電子的に記憶する電子的記憶媒体を有する。電子的記憶装置16の電子的記憶媒体は、システム10と一体的に(すなわち、実質的にリムーバブルでない)設けられるシステム記憶および/またはシステム10にたとえばポート(たとえばUSBポート、ファイアワイヤ・ポートなど)もしくはドライブ(たとえばディスク・ドライブなど)を介してリムーバブルに接続可能なリムーバブル記憶の一方または両方を含んでいてもよい。電子的記憶装置16は、光学式に読み取り可能な記憶媒体(たとえば光ディスクなど)、磁気的に読み取り可能な記憶媒体(たとえば磁気テープ、磁気ハードドライブ、フロッピードライブなど)、電荷ベースの記憶媒体(たとえばEEPROM、RAMなど)、半導体記憶媒体(たとえばフラッシュドライブなど)および/または他の電子的に読み取り可能な記憶媒体の一つまたは複数を含みうる。電子的記憶16はソフトウェア・アルゴリズム、プロセッサ20によって決定される情報、換気システム14を制御する際に実装される情報、センサー18によって生成される信号に関係する情報および/またはシステム10が適正に機能できるようにする他の情報を記憶しうる。電子的記憶16は、システム10内の別個のコンポーネントであってもよいし、あるいは電子的記憶16はシステム10の一つまたは複数の他のコンポーネント(たとえばプロセッサ20)と一体で設けられてもよい。
【0014】
ある実施形態では、センサー18は、回路22内のガスの一つまたは複数のパラメータを監視するよう構成された一つまたは複数のセンサーを含む。よって、センサー18は、回路22内のガスの前記一つまたは複数のパラメータについての情報を伝達する出力信号を生成する。前記一つまたは複数のパラメータは、フロー・レート、体積、ガス中に存在する一つまたは複数の分子種の濃度、圧力、温度、湿度および/または他のパラメータのうちの一つまたは複数を含んでいてもよい。ある実施形態では、センサー18は高速O2センサー、体積二酸化炭素測定センサー(出力はフローおよびCO2に関係)、流量センサー、圧力センサー、二酸化炭素計〔カプノメータ〕および/または他のセンサーのうちの一つまたは複数を含む。センサー18は回路22内に配置されるものとして図示されているが、ある実施形態では、センサー18の少なくとも一つは圧力発生器24内に一体的に配置される。この実施形態では、センサー18によって生成される出力信号は、圧力発生器24上に設けられる通信ポートまたはインターフェースを介して圧力発生器24外部のプロセッサ(たとえばプロセッサ20)と連絡されうる。
【0015】
プロセッサ20は、センサー18によって生成される出力信号(および/またはセンサー18によって生成される出力信号に関係する情報)を受信する。プロセッサ20は、システム10内の情報処理機能を提供するよう構成される。よって、プロセッサ20は、デジタル・プロセッサ、アナログ・プロセッサ、情報を処理するよう設計されたデジタル回路、情報を処理するよう設計されたアナログ回路、状態機械および/または情報を電子的に処理する他の機構のうちの一つまたは複数を含んでいてもよい。図1ではプロセッサ20は単一の実体として示されているが、これはあくまでも例解の目的のためである。いくつかの実装では、プロセッサ20は複数の処理ユニットを含んでいてもよい。これらの処理ユニットは、同じ装置内に物理的に位置していてもよいし、あるいはプロセッサ20は協働して動作する複数の装置の処理機能を表していてもよい。たとえば、ある実施形態では、プロセッサ20は、圧力発生器24を制御する換気システム14に付随するプロセッサおよび被験者12の機能的残気量を決定する別個の装置に付随するプロセッサによって与えられる処理機能を表していてもよい。
【0016】
図1に示されるように、ある実施形態では、プロセッサ20は濃度モジュール30、組成変化モジュール32、肺胞体積モジュール34、機能的残気量モジュール36および/またはその他のモジュールを含む。モジュール30、32、34および/または36はソフトウェア;ハードウェア;ファームウェア;ソフトウェア、ハードウェアおよび/またはファームウェアの何らかの組み合わせで実装されても、および/または他の仕方で実装されてもよい。モジュール30、32、34および36は図1では単一の処理ユニット内に一緒に位置されるものとして描かれているが、プロセッサ20が複数の処理ユニットを含む実装では、モジュール30、32、34および/または36は他のモジュールからリモートに位置されてもよい。さらに、以下に記述される種々のモジュール30、32、34および/または36によって与えられる機能は、例解の目的のためであり、限定することを意図したものではない。モジュール30、32、34および/または36のいずれも、記述されるよりも多くの機能または記述されるよりも少ない機能を与えてもよい。たとえば、モジュール30、32、34および/または36の一つまたは複数が消去されてもよいし、その機能の一部または全部がモジュール30、32、34および/または36の他のものによって提供されてもよい。もう一つの例として、プロセッサ20は、下記においてモジュール30、32、34および/または36の一つに帰される機能の一部または全部を実行しうる一つまたは複数の追加的モジュールを含んでいてもよい。
【0017】
濃度モジュール30は、被験者12によって吸入および吐出されるガス中の分子種の濃度を決定するよう構成される。濃度モジュール30はこの情報を、センサー18からプロセッサ20によって受信される出力信号から決定する。濃度モジュール30によって決定される濃度は、個々の吸入において被験者12によって吸入されるガス中のO2、CO2、N2、H2Oおよび/またはその他の分子種のうちの一つまたは複数の濃度を含む。濃度モジュール30によって決定される濃度は、個々の吐出において被験者12によって吐き出されるガス中のO2、CO2、N2および/またはその他の分子種のうちの一つまたは複数の濃度を含む。ある実施形態では、N2について決定される濃度はセンサー18によって直接測定されるのではない。この実施形態では、N2は、被験者12によって吸い込まれるまたは吐き出されるガスのうち、O2でもCO2でもないすべてであると想定される。この想定のもとで、N2の濃度は、次の関係に従って決定される:
FN2=1−FO2−FCO2 (1)
ここで、FN2はN2の濃度を表し、FO2はO2の濃度を表し、FCO2はCO2の濃度を表す。
【0018】
組成変化モジュール32は、吸入組成変化を自動的に同定するよう構成される。吸入組成変化は、所定の時間期間の間に被験者12によって吸入されるガス中の少なくとも一つの分子種の濃度の、少なくとも所定の大きさの変化である。前記所定の時間期間は、たとえば時間の単位で定義される、時間的に近接した息の数として定義される、などである。たとえば、ある実施形態では、組成変化モジュール32は、被験者12によって吸入されるO2の濃度を監視し、被験者12によって吸入されるO2の濃度が所定の大きさ以上の変化を受ける場合に、吸入組成変化を識別する。所定の大きさは、たとえば、約5%、約7.5%、約10%、約12.5%、約15%、約50%、約70%および/または他の大きさであってもよい。
【0019】
吸入のために換気システム14によって被験者12に与えられるO2の濃度は、多様な理由により、療法の間に変更されることがありうる。たとえば、換気システム14は、吸入のために被験者12に与えられるO2の濃度を、自動的に、手動で、および/または定期的に調整してもよく、それは、機能的残気量の監視のため、混合された静脈血内の分圧(PvO2)の調整のため、ケア担当者による要求に基づいて(たとえば患者吸引(suctioning)の間)、人工呼吸器療法の変更のため、酸素センサーの較正のため、および/または他の理由のためでありうる。
【0020】
ある実施形態では、組成変化モジュール32は、濃度モジュール30によって決定された濃度に基づいて吸入組成変化を識別する。ある実施形態では、組成変化モジュール32は、吸入のために被験者12に与えられるガスの組成を制御するために換気システム14内に設けられるプロセッサから、被験者12によって吸入されるガス中の一つまたは複数の分子種の濃度の測定に基づいて、吸入組成変化を識別する。
【0021】
肺胞体積モジュール34は、被験者12の呼吸の肺胞一回換気量(alveolar tidal volume)を決定するよう構成される。呼吸の肺胞一回換気量とは、被験者12の呼吸系において肺胞に到達するガスの体積(たとえば、肺において被験者12の血液とのガス交換のために利用可能なガスの体積)である。肺胞体積モジュール34は、この決定を、被験者12による個々の吸入および吐出のフローおよび/または体積に関係した情報を伝達するセンサー18によって生成された出力信号に基づき、かつ被験者12によって吸入および吐出されるガス中の分子種の濃度に基づいて行う。たとえば、所与の息の間に被験者12によって吸入および吐出されるO2および/またはCO2の濃度および全ガスの体積から、肺胞体積モジュールはその所与の息の肺胞一回換気量を決定してもよいし、あるいは一連の息から累積体積を決定してもよい。
【0022】
機能的残気量モジュール36は、被験者12の機能的残気量を決定するよう構成される。ある実施形態では、機能的残気量モジュール36は、被験者12によって呼吸されたガス中の一つまたは複数の分子種のウォッシュアウトまたはウォッシュインの解析から、被験者12の機能的残気量を決定する。この解析は、濃度モジュール30によって決定される被験者12によって吐き出されるガス中に存在する一つまたは複数の分子種の濃度に、および/または肺胞体積モジュール34によって行われる肺胞一回換気量の決定に基づく。
【0023】
呼吸の間、O2、CO2およびN2は被験者の肺から吸入および吐出される。吸入のために被験者12に与えられるガス中のこれらの分子種の濃度が一定に保持される場合、O2およびCO2の濃度は、吸気および呼気の間で、これらのガスが肺において交換されるにつれて変動する。他方、肺において交換されないN2の濃度は、被験者12によって吸入および吐出されるガスにおいて実質的に同じはずである。吸入のために被験者12に与えられるガス中のこれらの分子種の濃度が療法の間に変化させられるとき(たとえば療法上の目的のためにO2を上げたり下げたりするとき)、新しい組成をもつ呼吸ガスは、以前の組成をもつガス(たとえば、肺の機能的残気量によって保持されるガス)と肺において遭遇する。これらのガスは混合し、結果として吸い込まれたガスとは異なるN2濃度をもつガスを吐き出すことになる。次の数回の呼吸を経て、以前の組成をもつ肺の機能的残気量のガスは新しい組成をもつ吸入されたガスと混ざり合い、しまいにはN2のレベルは安定化し、吸気と呼気の両方において実質的に等しくなる。このプロセスは、N2のウォッシュアウトまたはウォッシュインと称される。被験者12によって吸い込まれるガスの組成の変化後、N2の濃度を安定させるために必要とされる呼吸回数および/またはガス量は、被験者12の機能的残気量の関数(たとえば、呼吸の終わりにおいて被験者12の肺に保持されている古い組成をもつガスの体積の関数)である。
【0024】
以上からわかるように、N2のウォッシュアウトまたはウォッシュインは、被験者12によって吸い込まれるガスの組成の変化によって引き起こされる。たとえば、被験者12によって吸い込まれるガス中のO2の濃度の変化は、被験者12の肺の機能的残気量からのN2のウォッシュアウトまたはウォッシュインにつながる。よって、機能的残気量モジュール36による機能的残気量の決定は、組成変化モジュール32による吸入組成変化の識別によってトリガーされる。
【0025】
ある実施形態では、N2のウォッシュアウトまたはウォッシュインから被験者12の機能的残気量を決定するために、機能的残気量モジュール36は、被験者12によって吐き出されるガス中のN2の濃度を、組成変化モジュール32によって識別された吸入組成変化後の呼吸についての累積肺胞換気量の関数として、解析する。例として、図2は、被験者によって吐き出されるガス中のN2の濃度を、識別された吸入組成変化後の被験者の機能的残気量からのN2のウォッシュアウトの間の呼吸の累積肺胞換気量の関数としてプロットしたもの38である。プロット38は、識別された吸入組成変化後の吐出において与えられるデータ点40と、データ点40に当てはめされた線42とを含む。
【0026】
図2で見て取れるように、被験者の機能的残気量からのN2のウォッシュアウトは、一般には指数関数的減衰である。実際、被験者の肺が単一のチャンバであると考えられるならば、プロット38は単純な指数関数的減衰と考えることができ、減衰の体積定数は被験者の機能的残気量の体積となる。しかしながら、被験者の肺が健康でない事例では、肺のこのモデル(たとえば単一チャンバ)は、機能的残気量の正確な測定を与えないことがありうる。
【0027】
いくつかの事例では、被験者の肺からのN2のウォッシュアウトまたはウォッシュインは、n個のチャンバからのウォッシュアウトまたはウォッシュインとしてモデル化できる。ここで、nは1より大きく、各チャンバは未知の体積をもつ。n個のチャンバの機能的残気量は、プロット38をn個のチャンバを含むモデルによって与えられるデータとマッチングするデータ・マッチングおよび/または数値的探索アルゴリズムによって決定でき、肺の全体的な機能的残気量だけでなく、それらのチャンバの体積および換気量における均一性の何らかの指標(たとえば個々のチャンバの機能的残気量など)をも決定する。n個のチャンバのそれぞれは、特徴的な指数関数的ウォッシュアウトまたはウォッシュインをもつものとしてモデル化される。n個のウォッシュアウト曲線の平均がプロット38と比較される。
【0028】
例として、図3は、呼吸系を複数の別個のチャンバとしてモデル化するアプローチを例解するプロットを示している。具体的には、図3は、肺からの窒素のウォッシュアウトの指数関数的減衰を示す生データ(菱形の点)を表している。図3はさらに、被験者の呼吸系内の別個のモデル化されたチャンバに対応する三つのプロットと、これらの別個のチャンバについての曲線の総合とを表している。この総合は、生データに一致している。図3にプロットされたデータの被験者は健康な被験者であり、二つの実質的に均一な肺チャンバおよび気道の残りの部分を表す第三のより小さなチャンバがあったが、図4は、傷ついた(動物)被験者についての結果を例解するプロットを示している。図4では、三つの別個のチャンバ曲線の生データへの当てはめは、傷ついた被験者の肺チャンバが大まかに等価ではなかった(たとえば、傷ついた肺はそれほど傷ついていないまたは全く傷ついていない肺よりも小さな体積をもつ)ことを示す結果を与えた。
【0029】
図1に戻ると、ある実施形態では、機能的残気量モジュール36は、プロット38(図2に示され、上で議論した)に関して上で論じた技法の一つまたは複数を実装することによって、被験者12によって吐き出されるガス中のN2の濃度を、識別された吸入組成変化後の被験者12の全肺胞換気量の関数として解析する。機能的残気量モジュール36による機能的残気量の決定は、被験者12の肺の全体的な機能的残気量、被験者12の肺の個々のチャンバにおける機能的残気量、被験者12の肺の機能的残気量の均一性についての情報を伝える指標および/または被験者12の機能的残気量に関係した他の情報を含みうる。
【0030】
図5は、上記のシステムを実装して得られた実験結果を示している。具体的には、図5は、2550から5410mLまでの間で変えられる身体ボックスにおける実際の機能的残気量対上記のシステムで行った機能的残気量の測定値のプロットを与えている。図5に示される測定を行う際、0.5から1までの間の吸入酸素の変化が使用された。図5で見て取れるように、結果はよく相関しており、プロットの傾きはほぼ1である。
【0031】
図3〜図5はN2のウォッシュアウトについてのモデル化および結果を示しているが、これが限定することを意図されていないことは理解しておくべきである。図3〜図5によって例解され、上述された原理は、ガスの他の分子種にも、および/またはウォッシュアウトのほかウォッシュインにも適用可能である。
【0032】
図6は、機械的換気される被験者の機能的残気量を決定する方法44を示している。以下に呈示される方法44の動作は例示的であることが意図されている。いくつかの実施形態では、方法44は、記載されていない一つまたは複数の追加的な動作を用いて、および/または論じられている動作のうちの一つまたは複数なしで達成されてもよい。さらに、図6において示され、以下で記載される方法44の動作の順序は限定することを意図されたものではない。
【0033】
いくつかの実施形態では、方法44は、システム10(図1に示される)に関して上記したのと同様のコンポーネントを有するシステムによって実装されてもよい。しかしながら、方法44は先に述べた以外の多様な他のコンテキストおよび/またはシステムにおいて実装されうるので、これは以下の開示を限定するものではない。
【0034】
動作46では、被験者によって吸い込まれるガス中の一つまたは複数の分子種の濃度が決定される。前記一つまたは複数の分子種は、O2,CO2、N2および/またはその他の分子種のうちの一つまたは複数を含んでいてもよい。前記一つまたは複数の分子種の濃度は、前記ガスと連絡する一つまたは複数のセンサーによって生成された出力信号から、および/または被験者に吸入のためのガスを与えるよう構成された換気システムから決定されてもよい。ある実施形態では、動作46は、濃度モジュール30(図1に示され、上述した)と同じまたは類似の濃度モジュールによって実行される。
【0035】
動作48では、吸入組成変化が起こったかどうかについて判定がなされる。ここで、吸入組成変化とは、動作46において濃度が決定された分子種の少なくとも一つの組成における少なくとも所定の大きさの変化である。ある実施形態では、組成変化の大きさは、組成が異なったままである長さとの関連で考えられる。限定しない例として、ある実施形態では、動作48において吸入組成変化が決定される前に、組成における検出された変化が所定回数の呼吸または所定長さの時間内に起こらなければならない。動作48の決定は、動作46で決定された濃度に基づく。ある実施形態では、動作48は、組成変化モジュール32(図1に示され、上述した)と同じまたは類似の組成変化モジュールによって実行される。
【0036】
動作48において吸入組成変化が識別されない場合、方法44は動作46に戻る。動作48において吸入組成変化が識別される場合、方法44は動作50に進む。
【0037】
動作50では、識別された吸入組成変化後の呼吸において被験者によって吐き出されたガス中の一つまたは複数の分子種の濃度が決定される。動作50で決定される濃度は、被験者によって吐き出されるガスと連絡する一つまたは複数のセンサーの出力信号に基づいて決定される。ある実施形態では、動作50は濃度モジュールによって実行される。
【0038】
動作52では、識別された吸入組成変化後の呼吸における被験者の累積肺胞換気量が決定される。被験者の累積肺胞換気量は、識別された吸入組成変化後の個々の呼吸についての肺胞一回換気量の決定から決定されてもよい。肺胞換気量の決定(累積および/または個々の呼吸)は、動作50および/または46で決定された濃度に基づいていてもよく、および/または被験者によって吐き出されたガスと連絡するセンサーによって生成された、被験者の肺にはいるおよび/または被験者の肺から出るガスの全体積および/またはフローについての情報を担持する出力信号に基づいていてもよい。ある実施形態では、動作52は肺胞体積モジュール34(図1に示され、上述した)と同じまたは類似の肺胞体積モジュールによって実行される。
【0039】
動作54では、被験者の機能的残気量の決定がなされる。被験者の機能的残気量の決定は、動作48で識別された吸入組成変化に応答しての被験者の機能的残気量からの一つまたは複数の分子種のウォッシュアウトまたはウォッシュインの解析に基づいて行われる。前記一つまたは複数の分子種のウォッシュアウトまたはウォッシュインの解析は、(たとえば動作50において決定される)識別された吸入組成変化後の呼吸において被験者によって吐き出された前記一つまたは複数の分子種の濃度を、(たとえば動作52において決定される)識別された吸入組成変化後の呼吸における被験者の累積肺胞換気量の関数として解析することを含む。たとえば、被験者の機能的残気量を決定するために濃度が解析される前記一つまたは複数の分子種は、N2を含んでいてもよい。ある実施形態では、動作54は、機能的残気量モジュール36(図1に示され、上述した)と同じまたは類似の機能的残気量モジュールによって実行される。
【0040】
動作56では、被験者に提供されている呼吸療法が調整されるべきかどうかについての判定が、動作54で決定された被験者の機能的残気量に基づいてなされる。たとえば、動作56において、PEEPが調整されるべきであると決定されてもよいし、および/または被験者に提供されている療法の他の側面が被験者の機能的残気量に基づいて調整されてもよい。動作56の判定ができるよう、動作46、48、50、52および54はリアルタイムまたはほぼリアルタイムで行われる。ある実施形態では、動作56は、換気システム14(図1に示され、上述した)と同じまたは類似の換気システムを制御するプロセッサによって実行される。ある実施形態では、動作56は、ケア担当者および/または臨床担当者にアラートおよび/または一つまたは複数の推奨される療法調整を提供することと、ケア担当者および/または臨床担当者から人工呼吸器療法に対してなされるべき一つまたは複数の調整に関するコマンドを受け取ることを含んでいてもよい。ある実施形態では、方法44はモニタリング・モードで実装されてもよい。モニタリング・モードでは、機能的残気量の決定は患者換気を制御するために実装されるのではなく、患者の健康状態、治療に対する反応をモニタリングするためおよび/または他の目的のために行われてもよい。
【0041】
動作56において呼吸療法が調整されるべきではないとの判定がなされる場合、方法44は動作46に戻る。動作56において被験者に提供されている呼吸療法が調整されるべきであるとの判定がなされる場合、方法44は動作58に進む。動作58では、呼吸療法が動作56でなされた決定に従って調整される。
【0042】
本発明は、例解の目的のため、現在のところ最も実際的で好ましいと考えられる実施形態に基づいて詳細に記載してきたが、そのような詳細はそのような目的のためでしかなく、本発明は開示されている実施形態に限定されるものではなく、逆に、付属の請求項の精神および範囲内の修正および等価な構成をカバーすることが意図されていることは理解しておくべきである。たとえば、本発明は、可能な限りにおいて、任意の実施形態の一つまたは複数の特徴が他の任意の実施形態の一つまたは複数の特徴と組み合わされることができることを考えている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の機能的残気量を決定するよう構成されたシステムであって:
被験者の気道または気道近くにおけるガスと連絡するセンサーと;
前記センサーによって生成される出力信号を受信するプロセッサと;
前記出力信号から、被験者によって吸入および吐出されるガス中の分子種の濃度を決定するよう構成された濃度モジュールと;
前記濃度モジュールによって決定された濃度から、吸入組成変化を自動的に識別するよう構成された組成変化モジュールであって、吸入組成変化とは、時間的に近接した息の間に被験者によって吸入されるガス中の少なくとも一つの分子種の濃度の少なくとも所定の大きさの変化である、組成変化モジュールと;
識別された吸入組成変化後の息についての前濃度モジュールによって決定された濃度の変化に基づいて被験者の機能的残気量を決定するよう構成され、そのため、機能的残気量の決定は、識別された吸入組成変化によってトリガーされる、機能的残気量モジュールとを有する、
システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムであって、前記機能的残気量モジュールは:
(a)識別された吸入組成変化後の息において被験者によって吐き出されるガス中のある分子種の濃度;
(b)識別された吸入組成変化後の息において被験者によって吐き出されるガス中の窒素の濃度;または
(c)識別された吸入組成変化後の息において被験者によって吐き出されるガス中の酸素の濃度、
に基づいて被験者の機能的残気量を決定するよう構成されている、システム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムであって、前記プロセッサによって受信される前記出力信号から被験者の呼吸の肺胞一回換気量を決定するよう構成された肺胞体積モジュールをさらに有しており、前記機能的残気量モジュールによる被験者の機能的残気量の決定はさらに、識別された吸入組成変化後の被験者の累積肺胞換気量に基づく、システム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムであって、前記機能的残気量モジュールは被験者の機能的残気量の決定を、識別された吸入組成変化後の息における被験者の累積肺胞換気量の関数として被験者によって吐き出されるガス中の前記分子種の濃度を解析することから行うよう構成されている、システム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムであって、被験者の機能的残気量の決定のために、被験者の累積肺胞換気量の関数として被験者によって吐き出されるガス中の前記分子種の濃度を解析することは、識別された吸入組成変化後の息における被験者の累積肺胞換気量の関数としての前記分子種の濃度の指数関数的減衰または指数関数的増大の体積定数に基づいて被験者の機能的残気量を決定することを含む、システム。
【請求項6】
請求項4記載のシステムであって、被験者の機能的残気量の決定のために、被験者の累積肺胞換気量の関数として被験者によって吐き出されるガス中の前記分子種の濃度を解析することは、識別された吸入組成変化後の被験者の累積肺胞換気量の関数としての被験者によって吐き出される前記分子種の濃度に、被験者の肺のモデルを当てはめするデータ・マッチングまたは探索アルゴリズムにおいて、n>1として、n個のチャンバの組としての被験者の肺のモデルを実装することを含む、システム。
【請求項7】
請求項1記載のシステムであって、前記機能的残気量モジュールが、被験者の機能的残気量を、少なくともほぼリアルタイムで決定する、システム。
【請求項8】
請求項1記載のシステムであって、前記機能的残気量モジュールが、二つ以上の識別された吸入組成変化の後の息についての前濃度モジュールによって決定された濃度の変化に基づいて被験者の機能的残気量を決定する、システム。
【請求項9】
被験者の機能的残気量を決定する方法であって:
被験者によって吸入されるガス中の一つまたは複数の分子種の濃度を決定する段階と;
決定された濃度から吸入組成変化を自動的に識別する段階であって、吸入組成変化とは、時間的に近接した息の間に被験者によって吸入されるガス中の少なくとも一つの分子種の濃度の少なくとも所定の大きさの変化である、段階と;
識別された吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中の一つまたは複数の分子種の濃度を決定する段階と;
識別された吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中のある分子種の濃度に基づいて被験者の機能的残気量を決定し、そのため、機能的残気量の決定は、識別された吸入組成変化によってトリガーされる、段階とを含む、
方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、被験者の機能的残気量の決定は、識別された吸入組成変化後の息において被験者によって吐き出されるガス中の窒素の濃度に基づく、方法。
【請求項11】
請求項9記載の方法であって、識別された吸入組成変化後の被験者の呼吸の肺胞換気量を決定する段階をさらに含み、被験者の機能的残気量の決定はさらに、識別された吸入組成変化後の被験者の累積肺胞換気量に基づく、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、被験者の機能的残気量の決定は、識別された吸入組成変化後の息についての被験者の累積肺胞換気量の関数として被験者によって吐き出されるガス中の前記分子種の濃度を解析することに基づく、方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって、被験者の機能的残気量の決定のために、被験者の累積肺胞換気量の関数として被験者によって吐き出されるガス中の前記分子種の濃度を解析することは、識別された吸入組成変化後の息についての被験者の累積肺胞換気量の関数としての前記分子種の濃度の指数関数的減衰の体積定数に基づいて被験者の機能的残気量を決定することを含む、方法。
【請求項14】
請求項12記載の方法であって、被験者の機能的残気量の決定のために、被験者の累積肺胞換気量の関数として被験者によって吐き出されるガス中の前記分子種の濃度を解析することは、識別された吸入組成変化後の被験者の累積肺胞換気量の関数としての被験者によって吐き出される前記分子種の濃度に、被験者の肺のモデルを当てはめするデータ・マッチングまたは探索アルゴリズムにおいて、n>1として、n個のチャンバの組としての被験者の肺のモデルを実装することを含む、方法。
【請求項15】
請求項9記載の方法であって、被験者の機能的残気量の決定が、少なくともほぼリアルタイムで行われる、方法。
【請求項16】
請求項9記載の方法であって、決定された濃度から一つまたは複数のその後の吸入組成変化を自動的に識別する段階をさらに含み;
識別された吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中のある分子種の濃度に基づいて被験者の機能的残気量を決定する段階が、識別された前記吸入組成変化の後の息においておよび識別された前記その後の吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中の前記分子種の濃度に基づいて被験者の機能的残気量を決定することを含む、方法。
【請求項17】
被験者の機能的残気量を決定するよう構成されたシステムであって:
被験者によって吸入されるガス中の一つまたは複数の分子種の濃度を決定する手段と;
決定された濃度から吸入組成変化を自動的に識別する手段であって、吸入組成変化とは、時間的に近接した息の間に被験者によって吸入されるガス中の少なくとも一つの分子種の濃度における少なくとも所定の大きさの変化である、手段と;
識別された吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中の一つまたは複数の分子種の濃度を決定する手段と;
識別された吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中のある分子種の濃度に基づいて被験者の機能的残気量を決定し、そのため、機能的残気量の決定は、識別された吸入組成変化によってトリガーされる、手段とを有する、
システム。
【請求項18】
請求項17記載のシステムであって、被験者の機能的残気量の決定は:
(a)識別された吸入組成変化後の息において被験者によって吐き出されるガス中の窒素の濃度の変化;または
(b)識別された吸入組成変化後の息において被験者によって吐き出されるガス中の酸素の濃度の変化、
に基づく、システム。
【請求項19】
請求項17記載のシステムであって、識別された吸入組成変化後の被験者の呼吸の肺胞換気量を決定する手段をさらに有し、被験者の機能的残気量の決定はさらに、識別された吸入組成変化後の被験者の累積肺胞換気量に基づく、システム。
【請求項20】
請求項19記載のシステムであって、被験者の機能的残気量の決定は、識別された吸入組成変化後の息についての被験者の累積肺胞換気量の関数として被験者によって吐き出されるガス中の前記分子種の濃度の変化を解析することに基づく、システム。
【請求項21】
請求項20記載のシステムであって、被験者の機能的残気量の決定のために、被験者の累積肺胞換気量の関数として被験者によって吐き出されるガス中の前記分子種の濃度を解析することは、識別された吸入組成変化後の息についての被験者の累積肺胞換気量の関数としての前記分子種の濃度の指数関数的減衰の体積定数に基づいて被験者の機能的残気量を決定することを含む、システム。
【請求項22】
請求項20記載のシステムであって、被験者の機能的残気量の決定のために、被験者の累積肺胞換気量の関数として被験者によって吐き出されるガス中の前記分子種の濃度を解析することは、識別された吸入組成変化後の被験者の累積肺胞換気量の関数としての被験者によって吐き出される前記分子種の濃度に、被験者の肺のモデルを当てはめするデータ・マッチングまたは探索アルゴリズムにおいて、n>1として、n個のチャンバの組としての被験者の肺のモデルを実装することを含む、システム。
【請求項23】
請求項17記載のシステムであって、被験者の機能的残気量の決定が、少なくともほぼリアルタイムで行われる、システム。
【請求項24】
請求項17記載のシステムであって、決定された濃度から一つまたは複数のその後の吸入組成変化を自動的に識別する段階をさらに含み;
識別された吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中のある分子種の濃度に基づいて被験者の機能的残気量を決定する前記手段が、前記識別された吸入組成変化の後の息においておよび前記識別されたその後の吸入組成変化の後の息において被験者によって吐き出されるガス中の前記分子種の濃度に基づいて被験者の機能的残気量を決定する手段を含む、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−511339(P2012−511339A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539148(P2011−539148)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055425
【国際公開番号】WO2010/067254
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】